(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】原料油の混合割合決定方法および原料油の混合割合決定装置
(51)【国際特許分類】
C10G 75/00 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
C10G75/00
(21)【出願番号】P 2019125135
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深津 直矢
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 喜啓
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0062860(US,A1)
【文献】特表2002-530486(JP,A)
【文献】特開平09-026391(JP,A)
【文献】未利用原油(含む非在来型原油)の輸入可能性および精製課題調査 -国内製油所での精製時における課題に関する調査ー,石油エネルギー技術センター 報告書,JPEC-2015P-03-02,日本,石油エネルギー技術センター,2016年03月,1-12,平成27年度 石油精製環境分析・情報提供事業
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 75/00
C10L 1/00-32
G01J 3/00-4/04,7/00-9/04
G01N 21/84-958
G01N 21/00-01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の原料油
である原油に第二の原料油
である原油を連続的にまたは逐次添加して、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を測定したときに、
前記第二の原料油
である原油の添加を開始した後、前記透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合を求める
ことを特徴とする原料油の混合割合決定方法。
【請求項2】
前記第一の原料油
である原油のAPI比重が前記第二の原料油
である原油のAPI比重よりも小さいか、または前記第一の原料油
である原油のAPI比重が前記第二の原料油
である原油のAPI比重よりも大きい請求項1に記載の原料油の混合割合決定方法
。
【請求項3】
第一の原料油
である原油を収容する第一の原料油容器と、第二の原料油
である原油を収容する第二の原料油容器と、
第一の原料油容器に前記第二の原料油容器から第二の原料油
である原油を連続的にまたは逐次送液、添加する送液管と、前記第一の原料油容器に収容された第一の原料油
である原油または原料油混合液の透過度、透過率または吸光度を経時的に測定する光学計とを有する
ことを特徴とする原料油の混合割合決定装置。
【請求項4】
前記第一の原料油
である原油のAPI比重が前記第二の原料油
である原油のAPI比重よりも小さいか、または前記第一の原料油
である原油のAPI比重が前記第二の原料油
である原油のAPI比重よりも大きい請求項
3に記載の原料油の混合割合決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料油の混合割合決定方法および原料油の混合割合決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石油精製プロセスにおいては、先ず原油が常圧蒸留装置で蒸留されて液化石油ガス(LPG)、ライトナフサ(L/N)、ヘビーナフサ(H/N)等の留分を生成し、これ等の留分が、必要に応じてさらに二次的な精製処理を施された上で、各種燃料油基材や石油化学製品の原料として供給されている。
【0003】
ところで、上記石油精製プロセスにおいては、二種以上の原油の混合物を常圧蒸留装置の処理対象としたり、二種以上の燃料油基材混合物を二次的な精製処理対象とすることにより、原料油コストを低減したり、精製処理時の装置への負荷を低減して運転効率を向上することが一般に行われている。
【0004】
しかしながら、特に重質な原料油を他の原料油と配合した場合、ファウラントやスラッジと称される析出物を生成し易くなることが知られている。
【0005】
上記析出物は、例えば石油精製プロセスの各種パイプ、タンク、熱交換器、炉管、精留塔または反応器中で生成し、圧力低下を生じて精製装置の運転効率を低減したり、閉塞を生じて装置が運転不能となる等して、多大なエネルギー損失や精製装置の運転効率の低下を招くことになる。
【0006】
また、一般に重油組成物は、上述した方法により得られる複数の燃料油基材、例えば、重質で粘性の高い減圧蒸留残渣油等の残渣油と、比較的軽質な軽油基材とを混合することにより調製されている。
しかしながら、上述した減圧蒸留残渣油や、熱分解装置から得られる熱分解重油、流動接触分解装置の精留塔ボトム油であるスラリーオイル等は、重質なアスファルテンを含有する基材として知られており、特にパラフィン成分を多量含有する基材と混合したときにアスファルテンを含む析出物を生成し易いことが知られている。
【0007】
このため、石油精製プロセスの処理対象とするために二種以上の原油や燃料油基材を混合したり、重油組成物を得るために複数の燃料油基材を混合する際に、担当者の経験や勘に基づいて、特定の原油や燃料油基材を回避したり組み合わせることにより、析出物の生成を抑制することが試行錯誤的に行われるようになっていた。
【0008】
一方、上記混合割合を試行錯誤的に決定する方法に代えて、混合対象となる原油の不溶解価Iと溶解ブレンド価Sを各々求めた上で、混合物の溶解ブレンド価Smixを求め、係る混合物の溶解ブレンド価Smixが混合対象となる原油の不溶解価の最大値Imaxとの関係でSmix/Imax>1.4となるように混合することにより、析出物の生成を抑制する方法が提案されるようになっている(特許文献1(特表2002-530486号公報))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1において、不溶解価Iや溶解ブレンド価Sは、トルエン当量(TE)およびへプタン希釈量(VH)に基づいて算出するものとされている。
しかしながら、本発明者等が検討したところ、上記トルエン当量(TE)は、原油に対してトルエンの混合割合を徐々に高めつつ調製した複数の混合液を各々濾紙上に添加、乾燥して得られる円形乾燥物において、円形乾燥物の中心付近にアスファルテンに起因する暗色のリングが形成されなくなる濃度を目視観察することで求めており、このリング消失の有無を確認するために多数の混合液を調製する必要があったり、リング消失の有無の判定が属人的になり易い(測定誤差を生じ易い)ことが判明した。
また、上記へプタン希釈量(VH)も、原油に対してヘプタンの含有割合を徐々に高めつつ調製した複数の混合液を各々濾紙上に添加、乾燥して得られる円形乾燥物において、円形乾燥物の中心付近にアスファルテンに起因する暗色のリングが形成されなくなる濃度を目視観察すること等により求めているが、この場合も、リング消失の有無を確認するために多数の混合液を調製する必要があったり、リング消失の有無の判定が属人的になり易い(測定誤差を生じ易い)ことが判明した。
【0011】
また、特許文献1記載の方法は、アスファルテンの安定化(アスファルテンの溶解性)を指標として原油の混合割合を決定するものであるが、混合対象となる原油が軽質原油やコンデンセート油等のようにアスファルテン含有量がかなり小さい(ほぼ含まれない)原油である場合にはそのまま適用することができず、原油の不溶解価Iや溶解ブレンド価Sを算出できないか、さらに煩雑な方法により混合割合を決定する必要があることが判明した。
【0012】
従って、本発明は、測定誤差の発生を抑制しつつ簡便かつ短時間に原料油の混合割合を決定する方法および原料油の混合割合決定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような状況下、本発明者等が鋭意検討したところ、第一の原料油に第二の原料油を連続的にまたは逐次添加して、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を測定したときに、前記第二の原料油の添加を開始した後、前記透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合を求めることにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)第一の原料油に第二の原料油を連続的にまたは逐次添加して、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を測定したときに、
前記第二の原料油の添加を開始した後、前記透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合を求める
ことを特徴とする原料油の混合割合決定方法、
(2)前記第一の原料油のAPI比重が前記第二の原料油のAPI比重よりも小さいか、または前記第一の原料油のAPI比重が前記第二の原料油のAPI比重よりも大きい上記(1)に記載の原料油の混合割合決定方法、
(3)前記第一の原料油および第二の原料油が原油である上記(1)または(2)に記載の原料油の混合割合決定方法、
(4)第一の原料油を収容する第一の原料油容器と、第二の原料油を収容する第二の原料油容器と、
第一の原料油容器に前記第二の原料油容器から第二の原料油を連続的にまたは逐次送液、添加する送液管と、前記第一の原料油容器に収容された第一の原料油または原料油混合液の透過度、透過率または吸光度を経時的に測定する光学計とを有する
ことを特徴とする原料油の混合割合決定装置、
(5)前記第一の原料油のAPI比重が前記第二の原料油のAPI比重よりも小さいか、または前記第一の原料油のAPI比重が前記第二の原料油のAPI比重よりも大きい上記(4)に記載の原料油の混合割合決定装置、
(6)前記第一の原料油および第二の原料油が原油である上記(4)または(5)に記載の原料油の混合割合決定装置
を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定誤差の発生を抑制しつつ簡便かつ短時間に原料油の混合割合を決定する方法および原料油の混合割合決定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一の原料油に第二の原料油を連続的に添加して、得られた混合油の透過率の経時的な変化を測定したときの、第二の原料油の混合割合に対する透過率の変化を例示する図である。
【
図2】第一の原料油に第二の原料油を連続的に添加して、得られた混合油の透過率の経時的な変化を測定したときの、第二の原料油の混合割合に対する透過率の変化を例示する図である。
【
図3】本発明に係る原料油の混合割合決定装置例の概略説明図である。
【
図4】実施例1で得られた、原油bの混合割合に対する混合油の透過率の変化を示すスペクトル図である。
【
図5】実施例2で得られた、原油αの混合割合に対する混合油の透過率の変化を示すスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法は、第一の原料油に第二の原料油を連続的にまたは逐次添加して、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を測定したときに、前記第二の原料油の添加を開始した後、前記透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合を求めることを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法においては、第一の原料油に第二の原料油を連続的にまたは逐次添加して、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を測定する。
【0019】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、第一の原料油または第二の原料油としては、混合割合を決定しようとする油種に応じて適宜選択すればよく、例えば、原油混合物の混合割合を決定しようとする場合には、第一の原料油および第二の原料油を各々混合対象となる原油とし、重油組成物の混合割合を決定しようとする場合には、第一の原料油および第二の原料油を各々混合対象となる燃料油基材とすればよい。
【0020】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、第一の原料油または第二の原料油としては、ファウラントやスラッジの生成原因となるアスファルテン含有物であることが適当である。
例えば、第一の原料油または第二の原料油が原油である場合、第一の原料油または第二の原料油としては、アラビアンヘビー原油、クウェートブレンド原油、マヤ原油、メレイ原油、ノーススロープアラスカ原油、カナディアンヘビー原油、ロシアンヘビー原油、タールサンドまたは石炭スラリー等を挙げることができる。
また、例えば、第一の原料油または第二の原料油が燃料油基材である場合、第一の原料油または第二の原料油としては、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、熱分解重油またはスラリーオイル等を挙げることができる。
【0021】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法においては、第一の原料油および第二の原料油は、実際に第一の原料油および第二の原料油を混合する際の態様に応じて適宜選択すればよい。例えば、原油Aの送液管に原油Bを供給して混合原油を調製しつつ送液する場合は、本発明に係る原料油の混合割合決定方法においても、第一の原料油を原油Aとし、これに第二の原料油を原油Bとして添加、混合すればよい。
【0022】
このため、第一の原料油としては、そのAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも小さいものであっても大きいものであっても特に制限されず、第一の原料油および第二の原料油を混合する際の態様に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、特に問題ない場合は、第一の原料油として、そのAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも小さいものを選定することが好ましい。
例えば、原油の供給ラインの態様が、送液バルブを切り替えることにより、原油Aの送液管に原油Bを供給して混合原油を調製しつつ送液したり、原油Bの送液管に原油Aを供給して混合原油を調製しつつ送液することが任意に選択できる場合は、本発明に係る原料油の混合割合決定方法においても、API比重の小さな原油(例えば原油A)を第一の原料油とし、これにAPI比重の大きな原油(例えば原油B)を第二の原料油として添加、混合して混合割合を決定した上で、実際に原油を混合する際もAPI比重の小さな原油(例えば原油A)の送液管にAPI比重の大きな原油(例えば原油B)を供給して混合原油を調製しつつ送液すればよい。
なお、API比重は通常の密度や比重とは大小が逆に表される。
【0024】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、特に問題ない場合は、第一の原料油として、そのAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも大きいものを選定してもよい。
一般に、重質な原料油においては、API比重の大きい(密度の小さな)原料油(例えば原油B)はn-パラフィン分の含有割合が相対的に多いと考えられる一方で、API比重の小さい(密度の大きな)原料油(例えば原油A)は析出物の原因物質となるアスファルテン分の含有割合が相対的に多いと考えられる。
この場合、API比重の大きい(密度の小さい)原料油にAPI比重の小さい(密度の大きな)原料油を添加すると、API比重の大きい(密度の小さい)原料油がいわゆる貧溶媒として作用してAPI比重の小さい(密度の大きな)原料油から析出物の生成を促すことから、より的確にかつ短時間に析出性を評価して、原料油の混合割合を決定することができる。
【0025】
上記第一の原料油および第二の原料油の密度は、API比重を用いて表すことが好ましい。
第一の原料油のAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも小さい場合、第一の原料油のAPI比重は、10°~39°であることが好ましく、10°~30°であることがより好ましく、10°~20°であることがさらに好ましく、第二の原料油のAPI比重は、40°~65°であることが好ましく、45°~65°であることがより好ましく、50°~65°であることがさらに好ましい。
また、この場合、第一の原料油のAPI比重と第二の原料油のAPI比重との差は、
10°~55°であることが好ましく、15°~55°であることがより好ましく、20°~55°であることがさらに好ましい。
第一の原料油のAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも大きい場合、第一の原料油のAPI比重は、40°~65°であることが好ましく、45°~65°であることがより好ましく、50°~65°であることがさらに好ましく、第二の原料油のAPI比重は、10°~39°であることが好ましく、10°~30°であることがより好ましく、 10°~20°であることがさらに好ましい。
また、この場合、第一の原料油のAPI比重と第二の原料油のAPI比重との差は、
10°~55°であることが好ましく、15°~55°であることがより好ましく、20°~55°であることがさらに好ましい。
【0026】
なお、本出願書類において、API比重とは、API(American Petroleum Institute)により制定された比重表示方法(ボーメ度)であって、JIS K 2249(原油および石油製品の比重試験方法並びに比重・質量・容積換算表)の換算表に基づいて算出される値を意味する。
【0027】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法においては、第一の原料油に第二の原料油を連続的にまたは逐次添加する。
【0028】
第二の原料油の添加対象となる第一の原料油の量は、後述する透過度、透過率または吸光度が最初に変化する点(第二の原料油の添加を開始した後、透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じる点)を特定し得る量であれば、特に制限されないが、分析の簡便性を考慮すると、5.0~20.0mlであることが好ましく、5.0~15.0mlであることがより好ましく、5.0~10.0mlであることがさらに好ましい。
【0029】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法においては、第一の原料油に第二の原料油を添加する添加量も、後述する透過度、透過率または吸光度が最初に変化する点(第二の原料油の添加を開始した後、透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じる点)を特定し得る量であれば、特に制限されない。
分析の簡便性を考慮すると、第一の原料油に添加する第二の原料油の量は、一分間あたり、1.0~5.0mlであることが好ましく、1.1~5.0mlであることがより好ましく、1.2~5.0mlであることがさらに好ましい。
【0030】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、第一の原料油に対して第二の原料油を添加する合計時間は、第一の原料油に対し第二の原料油の添加を開始した後、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化(得られた混合油の透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合)を求めることができる時間であれば、特に制限されない。
本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、第一の原料油に対して第二の原料油を添加する合計時間は、例えば、5~30分間とすることができ、7~30分間であることが好ましく、8~30分間であることがより好ましい。
【0031】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法においては、第一の原料油に第二の原料油の添加を開始した後、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を測定したときに、上記透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合を求める。
【0032】
本出願書類において、透過度とは、第一の原料油および第二の原料油の混合油に対して光を透過したときに、透過光強度I/入射光強度I0で表される光強度比を意味する。
また、本出願書類において、透過率とは、透過度を百分率により表した(透過度(I/I0)×100により算出される)値(%)を意味する。
さらに、本出願書類において、吸光度とは、上記透過度の逆数の常用対数(log10(I0/I))により算出される値を意味する。
本出願書類において、第一の原料油に第二の原料油を添加して得られる混合油の透過度、透過率および吸光度には、これ等いずれかに基づいて二次的に算出され、透過度、透過率または吸光度の増減と同様に増減する各種指標も含まれるものとする。
本出願書類において、透過度、透過率または吸光度は、紫外光~赤外光領域における任意の波長の光を含む照射光を照射したときに、所定の感度で検出し得る検出器で測定されたものであることが好ましく、650~900nmの波長領域における任意の波長の光を含む照射光を照射したときに、所定の感度で検出し得る検出器で測定されたものであることがより好ましい。このような検出器として、具体的には、190~1100nmの波長領域で強い感度を示すSiフォトダイオード検出器を挙げることができる。
【0033】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法においては、第一の原料油に対して第二の原料油の添加を開始した後、透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合が、析出物の生成を開始するかまたは析出物の生成を終了する混合割合であると考えられる。
このため、上記透過度、透過率または吸光度が増加から減少に最初に転じるときの混合割合(限界混合割合)を求め、第一の原料油に対して第二の原料油を上記限界混合割合未満の割合になるように混合したり、上記透過度、透過率または吸光度が減少から増加に最初に転じるときの混合割合(限界混合割合)を求め、第一の原料油に対して第二の原料油を上記限界混合割合を超える割合になるように混合することにより、析出物の生成を容易に抑制することができる。
【0034】
図1は、第一の原料油(例えば、重質原油a)に第二の原料油(例えば、軽質原油b)を連続的に添加して、得られた混合油の透過率の経時的な変化を測定したときの、第二の原料油の混合割合に対する混合油の透過率の変化を例示するものである。
図1に示すように、第一の原料油に第二の原料油の添加を開始した後、第二の原料油の混合割合がr
1体積%になるまでは透過率が漸次増加しているが、第二の原料油の混合割合がr
1体積%以上になると透過率が減少に転じることが分かる。
この場合、第一の原料油に対する第二の原料油の添加を開始した後、上記透過率が増加から減少に最初に転じる点、すなわち第二の原料油の混合割合がr
1体積%になるまでは析出物(アスファルテン等)を生じることなく透過率が徐々に増加するが、第二の原料油の混合割合がr
1体積%になると析出物(アスファルテン等)を生じて上記透過率が減少に転じると考えられるため、上記第一の原料油に第二の原料油を添加する場合、第一の原料油に対する第二の原料油の混合割合をr
1体積%未満とすることにより、析出物の生成を抑制し得ることが分かる。
【0035】
同様に、
図2は、第一の原料油(例えば、軽質原油β)に第二の原料油(例えば、重質原油α)を連続的に添加して、得られた混合油の透過率の経時的な変化を測定したときの、第二の原料油の混合割合に対する混合油の透過率の変化を例示するものである。
図2に示すように、第一の原料油に第二の原料油の添加を開始した後、第二の原料油の混合割合がr
2体積%になるまでは透過率が漸次減少しているが、第二の原料油の混合割合がr
2体積%を超えると透過率が増加に転じることが分かる。
この場合、第一の原料油に対する第二の原料油の添加を開始した後、上記透過率が減少から増加に最初に転じる点、すなわち第二の原料油の混合割合がr
2体積%になるまでは漸次析出物(アスファルテン等)を生じて透過率が徐々に減少するが、第二の原料油の混合割合がr
2体積%を超えると析出物(アスファルテン等)の生成を終えて上記透過率が増加に転じると考えられるため、上記第一の原料油に第二の原料油を添加する場合、第一の原料油に対する第二の原料油の混合割合をr
2体積%を超える割合とすることにより、析出物の生成を抑制し得ることが分かる。
【0036】
上記透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合は、例えば
図1や
図2に例示するスペクトル曲線において、接線の傾きが増加から減少または減少から増加に最初に転じる変曲点を求めることによって、数学的に算出してもよい。
【0037】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法は、例えば公知の中和滴定装置に光学計を組み合わせた装置により実施することができ、後述する本発明に係る原料油の混合割合決定装置により実施することが好ましい。
【0038】
本発明によれば、第一の原料油に第二の原料油を添加して、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を光学的に測定することにより、測定者の相違によって生じる測定誤差を抑制し得るとともに、測定に必要なサンプル調製や試験時間を大幅に短縮して、簡便かつ短時間に原料油の混合割合を決定する方法を提供することができる。
【0039】
次に、本発明に係る原料油の混合割合決定装置について説明する。
本発明に係る原料油の混合割合決定装置は、第一の原料油を収容する第一の原料油容器と、第二の原料油を収容する第二の原料油容器と、
第一の原料油容器に前記第二の原料油容器から第二の原料油を連続的にまたは逐次送液、添加する送液管と、前記第一の原料油容器に収容された第一の原料油または原料油混合液の透過度、透過率または吸光度を経時的に測定する光学計とを有する
ことを特徴とするものである。
【0040】
図3は、本発明に係る原料油の混合割合決定装置例を示す概略説明図であって、第一の原料油を収容する第一の原料油容器T
1と、第二の原料油を収容する第二の原料油容器T
2と、第一の原料油容器T
1に第二の原料油容器T
2から第二の原料油を連続的にまたは逐次送液、添加する送液管Lと、第一の原料油容器T
1に収容した第一の原料油または原料油混合液の透過度、透過率または吸光度を経時的に測定する光学計Oとを有する原料油の混合割合決定装置1を示すものである。
【0041】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置において、第一の原料油容器に収容する第一の原料油または第二の原料油容器に収容する第二の原料油としては、混合割合を決定しようとする油種に応じて適宜選択すればよく、例えば、原油混合物の混合割合を決定しようとする場合には、第一の原料油および第二の原料油は各々混合対象となる原油であり、重油組成物の混合割合を決定しようとする場合には、第一の原料油および第二の原料油は、各々混合対象となる燃料油基材となる。
【0042】
本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、第一の原料油または第二の原料油の具体例としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0043】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置においては、第一の原料容器に収容する第一の原料油および第二の原料容器に収容する第二の原料油は、実際に第一の原料油および第二の原料油を混合する際の態様に応じて適宜選択すればよい。例えば、原油Aの送液管に原油Bを供給して混合原油を調製しつつ送液する場合は、本発明に係る原料油の混合割合決定装置においても、第一の原料油として原油Aを第一の原料油容器に収容するとともに、第二の原料油として原油Bを第二の原料油容器に収容すればよい。
【0044】
第一の原料油容器に収容する第一の原料油は、そのAPI比重が第二の原料油容器に収容する第二の原料油のAPI比重よりも小さいものであっても大きいものであっても特に制限されず、第一の原料油および第二の原料油を混合する際の態様に応じて適宜選択すればよい。
【0045】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置において、特に問題ない場合は、第一の原料油容器に収容する第一の原料油として、第二の原料油容器に収容する第二の原料油のAPI比重よりもAPI比重の小さいものを選定することが好ましい。
また、本発明に係る原料油の混合割合決定方法において、特に問題ない場合は、第一の原料油として、そのAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも大きいものを選定してもよい。
【0046】
第一の原料油のAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも小さい場合と、第一の原料油のAPI比重が第二の原料油のAPI比重よりも大きい場合の各々の場合における、第一の原料油のAPI比重の好適な範囲および第二の原料油のAPI比重の好適な範囲は上述したとおりであり、API比重の測定方法も上述したとおりである。
【0047】
第一の原料油容器に収容する第一の原料油の量は、上述した透過度、透過率または吸光度が最初に変化する点(第二の原料油の添加を開始した後、透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じる点)を特定し得る量であれば、特に制限されないが、分析の簡便性や分析時間の短縮化を考慮すると、5.0~20.0mlであることが好ましく、5.0~15.0mlであることがより好ましく、5.0~10.0mlであることがさらに好ましい。
【0048】
また、第二の原料油容器に収容する第二の原料油の量も、上述した透過度、透過率または吸光度が最初に変化する点(第二の原料油の添加を開始した後、透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じる点)を特定し得る量であれば、特に制限されないが、分析の簡便性を考慮すると、10~100mlであることが好ましく、10~90mlであることがより好ましく、10 ~80mlであることがさらに好ましい。
【0049】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置において、第一の原料油容器に収容する第一の原料油量および第二の原料油容器に収容する第二の原料油量を、各々上記範囲内に制御することにより、運転時間(測定時間)を容易に短縮化することができ、また、第一の原料油容器や第二の原料容器を小型化して、装置全体の小型化や装置の運搬性の向上を容易に達成することができる。
【0050】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置は、第一の原料油容器に前記第二の原料油容器から第二の原料油を連続的にまたは逐次送液、添加する送液管を有している。
【0051】
上記送液管は、特に制限されないが、内径が、0.1~3.0mmであるものが好ましく、0.1~2.7mmであるものがより好ましく、0.1~2.5mmであるものがさらに好ましい。
本発明に係る原料油の混合割合決定装置において、送液管の内径が上記範囲内にあるものを採用することによって送液管の外径を容易に抑制することができるため、この場合も、装置の小型化や装置の運搬性の向上を容易に達成することができる。
【0052】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置においては、第一の原料油容器に対し第二の原料油容器から第二の原料油を添加する添加量も、上述した透過度、透過率または吸光度が最初に変化する点(第二の原料油の添加を開始した後、透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じる点)を特定し得る量であれば、特に制限されない。
分析の簡便性を考慮すると、第一の原料油容器に対して第二の原料油容器から添加する第二の原料油量は、一分間あたり、1.0~5.0mlであることが好ましく、1.1~5.0mlであることがより好ましく、1.2~5.0mlであることがさらに好ましい。
【0053】
図3に例示するように、第二の原料油容器T
2から第一の原料油容器T
1への第二の原料油の送液は、ポンプP等を使用して実施することができる。
【0054】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置においては、第一の原料油容器に収容する第一の原料油に対し、ポンプPの運転条件を適宜変更すること等によって、第二の原料油容器から第二の原料油を連続的にまたは逐次添加すればよく、装置の運転を簡便に行う上では、第一の原料油容器に収容された第一の原料油に対し第二の原料油容器に収容された第二の原料油を連続的に添加することが好ましい。
【0055】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置において、第一の原料油容器に収容された第一の原料油に対して第二の原料油容器に収容された第二の原料油を添加する合計時間は、第一の原料油に対し第二の原料油の添加を開始した後、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化(得られた混合油の透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じるときの混合割合)を求めることができる時間であれば、特に制限されない。
本発明に係る原料油の混合割合決定装置において、第一の原料油容器に収容する第一の原料油に対し、第二の原料油容器に収容する第二の原料油を添加する合計時間は、例えば、5~30分間とすることができ、7~30分間であることが好ましく、8~30分間であることがより好ましい。
【0056】
本発明に係る原料油の混合割合決定装置は、第一の原料油容器に収容された第一の原料油または原料油混合液の透過度、透過率または吸光度を経時的に測定する光学計とを有している。
上記光学計としては、上記透過度、透過率または吸光度を測定し得るものであれば特に制限されないが、例えば、紫外光~赤外光領域における任意の波長の光を含む照射光を照射し得る照射装置と、上記照射光を所定の感度で検出し得る検出器を有するものが好ましく、650~900nmの波長領域における任意の波長の光を含む照射光を照射し得る照射装置と、係る照射光を所定の感度で検出し得る検出器を有するものであることがより好ましい。上記検出器として、具体的には、190~1100nmの波長領域で強い感度を示すSiフォトダイオード検出器を挙げることができる。
【0057】
上記光学計としては、
図3に例示するように、第一の原料油容器T
1に収容した第一の原料油または原料油混合液を、循環ポンプCPにより導管C内を循環させつつ、循環経路内にフローセルFCを設け、当該フローセルFCに対して照射装置Iから照射光を照射し、フローセルFCから出射した出射光を検出器Dで検出する光学計Oを挙げることができる。
【0058】
上記光学計は、照射装置の光照射条件を制御したり、検出器から得られた透過度、透過率または吸光度データを格納したり、得られたデータを演算処理等する制御手段を有するものであってもよく、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の変化を表またはスペクトルとして表示する表示手段(ディスプレイ等)や、プリンタ等の出力手段を有するものが好ましい。
また、上記光学計の制御手段は、
図1は
図2等に例示するようなスペクトル曲線において、接線の傾きが増加から減少または減少から増加に最初に転じる変曲点(上記透過度、透過率または吸光度が増加から減少または減少から増加に最初に転じる点)を算出する演算手段を有するものであることが好ましい。
【0059】
本発明によれば、第一の原料油に第二の原料油を添加して、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の経時的な変化を光学的に測定することにより、測定者の相違によって生じる測定誤差を抑制することができるともに、測定に必要なサンプル調製や試験時間を大幅に短縮して、簡便かつ短時間に原料油の混合割合を決定する装置を提供することができる。
【0060】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0061】
(実施例1)
図3に示す装置構成を有する原料油の混合割合決定装置、すなわち、第一の原料油を収容する第一の原料油容器T
1(内容量:10mL)と、第二の原料油を収容する第二の原料油容器T
2(内容量:40mL)と、第一の原料油容器T
1に第二の原料油容器T
2から第二の原料油をポンプPにより送液、添加する送液管L(内径1.15mm)と、第一の原料油容器T
1に収容した第一の原料油または原料油混合液を循環ポンプCPにより導管C(内径1.0 mm)内を循環させつつ、その透過度、透過率または吸光度を経時的に測定する光学計O(照射装置I(光源:タングステン(ハロゲン)ランプ、照射波長範囲: 350nm~3000nm、スペクトルバンド幅1nm)、フローセルFC(材質:石英、厚さ(光路長)10mm)および検出器D(Siフォトダイオード)を備えるとともに、照射装置Iの光照射条件を制御し、検出器Dから得られた透過度、透過率または吸光度データを格納するとともに、得られたデータを演算処理等する(図示しない)制御手段と、得られた混合油の透過度、透過率または吸光度の変化を表またはスペクトルとして表示、出力する(図示しない)ディスプレイおよびプリンタを有するもの)を用いて、原料油の混合割合を決定した。
【0062】
第一の原料油容器T
1に、第一の原料油として、原油a(API比重30°)を10ml装入した。
第二の原料油容器T
2に、第二の原料油として、原油b(コンデンセート原油、API比重50°)を40ml装入し、係る原油bを、ポンプPを用いて送液管Lにより第一の原料油容器T
1に2.0ml/分間の供給速度で連続的に送液、添加しつつ、第一の原料油容器T
1内に配置したスターラーを回転させて混合処理した。
上記混合処理は、容器T
1中の原油混合液における原油bの混合割合が80体積%になるまで連続的に行うとともに、第一の原料油容器T
1中の測定液(原油aまたは原油aと原油bとの原油混合混合液)の透過率を連続的に測定した。
透過率は、
図3の概略説明図に記載しているように、第一の原料油容器T
1に収容した第一の原料油または原料油混合液を、循環ポンプCPにより導管C内を循環させつつ、循環経路内に設けたフローセルFCに対して照射装置Iから照射光を照射し、フローセルFCから出射した出射光を検出器Dで検出することにより測定した。
上記透過率の測定を開始してから測定を終了するまでに要した時間は、20分間であった。
【0063】
図4は、上記測定の結果得られた、原油bの混合割合に対する上記透過率の変化を示すスペクトルである。
図4より、原油aに原油bの添加を開始した後、原油bの混合割合が45体積%になるまでは透過率が漸次増加しているが、原油bの混合割合が45体積%以上となると減少に転じることが分かる。
このため、
図4より、容器T
1中の混合液における原油bの混合割合を45体積%未満とすることにより、得られる原油混合液において析出物の生成を抑制し得ることが分かる。
【0064】
(参考例1)
特許文献1記載の方法により、実施例1で使用した原油aと原油bの不溶解価Iと溶解ブレンド価Sを各々求めた上で、原油a:原油b(体積比)が、各々、(1)20:80、(2)30:70、(3)40:60、(4)45:55、(5)50:50、(6)55:45、(7)60:40、(8)70:30、(9)80:20となるように混合した測定試料を調製し、各測定試料のブレンド価Smixを求めた。
上記原油aおよび原油bの不溶解価Iのうち、値の大きな方を不溶解価の最大値Imaxとして、各測定試料におけるSmix/Imax値を算出した。
上記Smix/Imax値の算出までに要した全試験時間は、360分間であった。
結果を表1に示す。
なお、表1において、Smix/Imax>1.4となる測定試料を、析出物を生じない試料として「〇」と評価し、Smix/Imax≦1.4となる測定試料を、析出物を生じる試料として「×」と評価している。
【0065】
【0066】
表1より、従来法においても、原油aに対する原油bの混合割合を45体積%未満とすることにより、得られる原油混合物において析出物の生成を抑制し得るとの結果が示された。
実際、上記評価結果が「〇」である試料(3)を、濾紙上に添加、乾燥して円形乾燥物を得たところ、円形乾燥物の中心付近にアスファルテンに起因する暗色のリングは確認できず、また、試料(3)を顕微鏡観察しても析出物は確認できなかった。
一方、上記評価結果が「×」である試料(4)を、濾紙上に添加、乾燥して円形乾燥物を得たところ、円形乾燥物の中心付近にアスファルテンに起因する暗色のリングが確認でき、また、試料(4)を顕微鏡観察したところ析出物の粒子が確認された。
【0067】
実施例1および参考例1を対比することにより、実施例1においては、測定誤差の発生を抑制しつつ簡便かつ短時間に原料油の混合割合を決定し得ることが分かる。
【0068】
(実施例2)
実施例1と同様に、
図3に示す装置構成を有する原料油の混合割合決定装置、すなわち、第一の原料油を収容する第一の原料油容器T
1と、第二の原料油を収容する第二の原料油容器T
2と、第一の原料油容器T
1に第二の原料油容器T
2から第二の原料油をポンプPにより送液、添加する送液管Lと、第一の原料油容器T
1に収容された第一の原料油または原料油混合液の透過度、透過率または吸光度を経時的に測定する光学計Oとを有する原料油の混合割合決定装置1として、実施例1で用いたものと同一の装置を用いて、原料油の混合割合を決定した。
【0069】
第一の原料油容器T
1に、第一の原料油として、原油β(API比重50°)を10ml装入した。
第二の原料油容器T
2に、第二の原料油として、原油α(API比重30°)を40ml装入し、係る原油αを、ポンプPを用いて送液管Lにより第一の原料油容器T
1に2.0ml/分間の供給速度で連続的に送液、添加しつつ、第一の原料油容器T
1内に配置したスターラーを回転させて混合処理した。
上記混合処理は、容器T
1中の原油混合液における原油αの混合割合が80体積%になるまで連続的に行うとともに、第一の原料油容器T
1中の測定液(原油βまたは原油βと原油αとの混合液)の透過率を連続的に測定した。
透過率は、
図3の概略説明図に記載しているように、第一の原料油容器T
1に収容した第一の原料油または原料油混合液を、循環ポンプCPにより導管C内を循環させつつ、循環経路内に設けたフローセルFCに対して照射装置Iから照射光を照射し、フローセルFCから出射した出射光を検出器Dで検出することにより測定した。
上記透過率の測定を開始してから測定を終了するまでに要した時間は、20分間であった。
【0070】
図5は、上記測定の結果得られた、原油αの混合割合に対する上記透過率の変化を示すスペクトルである。
図5より、原油βに原油αの添加を開始した後、原油αの混合割合が40体積%になるまでは透過率が漸次減少しているが、原油αの混合割合が40体積%以上となると増加に転じることが分かる。
このため、
図5より、容器T
1中の混合液に対する原油αの混合割合を40体積%を超える割合とすることにより、得られる原油混合物において析出物の生成を抑制し得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、測定誤差の発生を抑制しつつ簡便かつ短時間に原料油の混合割合決定する方法および原料油の混合割合決定装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 原料油の混合割合決定装置
T1 第一の原料油容器
T2 第二の原料油容器
L 送液管
O 光学計
P ポンプ
CP 循環ポンプ
C 導管
D 検出器
I 照射装置
FC フローセル