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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】導波管アンテナによる通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/00 20060101AFI20230329BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20230329BHJP
   H01P 3/127 20060101ALI20230329BHJP
   E04G 21/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H04B5/00 A
H01Q13/22
H01P3/127
E04G21/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019130807
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021016114
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠一
(72)【発明者】
【氏名】傳野 悟史
(72)【発明者】
【氏名】八代 成美
(72)【発明者】
【氏名】安武 祐太
(72)【発明者】
【氏名】石野 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】箟 耕治
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-159564(JP,A)
【文献】特表平06-506810(JP,A)
【文献】特表2009-509416(JP,A)
【文献】Today's Topics [5G フレキシブルツイスト導波管],ニュースレター,タキテック株式会社,2018年09月02日,第1-3頁,[検索日2022.11.10], インターネット<URL:https://www.takitek.co.jp/images/newsletters/Takitek%20Newsletter-%20Oct.pdf>,https://achive.org/にて掲載日確認
【文献】ミリ波及びサブミリ波伝送用Eベンド導波管 - E-BEND Waveguide -,雄島試験研究所 ホームページ,雄島試験研究所,2019年05月07日,第1頁,[検索日2022.11.10], インターネット<URL:https://oshimashisaku.jp/m-Wave/wg_Eb.php>,https://achive.org/にて掲載日確認
【文献】What is the difference between E and H Waveguide Bends?,EverythingRF Newsletter,EverythingRF,2017年12月15日,第1頁,[検索日2022.11.10], インターネット<URL:https://www.everythingrf.com/community/what-is-the-difference-between-e-and-h-bends>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00
H01Q 13/22
H01P 3/127
E04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電波を伝送させ、前記電波を漏洩させる電波漏洩部と、
前記電波漏洩部と入力コネクタとを単管パイプにより長さ調節自在に連結し、前記電波を漏洩させない電波非漏洩部と
前記単管パイプを掴んで前記単管パイプの端部付近に固定されるクランプと、
前記クランプに固定される第一端部と、前記電波漏洩部に固定される第二端部とを有する接続部と
を備え
前記入力コネクタが無線アクセスポイントに接続され、前記無線アクセスポイントから伝送された前記電波のうち漏洩した前記電波により無線機と無線端末機との無線通信が行われ、
前記クランプは、連結ボルトが挿通される連結ボルト孔を有し、
前記接続部の第一端部は、前記単管パイプの先端部分に係合して前記先端部分の周囲を覆うジョイントを有し、
前記ジョイントは、連結ボルトが挿通される連結ボルト孔を有し、前記ジョイント及び前記クランプの連結ボルト孔に挿通された連結ボルトにより、前記接続部が前記クランプに固定され、
前記接続部の第二端部は、前記電波漏洩部に固定されるフランジジョイントを有す
ことを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、
前記電波漏洩部は、前記電波を漏洩させる二つのスロットが設けられ、
二つの前記スロット孔は、前記電波漏洩部の主軸に対して相互に逆方向に角度を有して設けられてい
ことを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項3】
内部に電波を伝送させ、前記電波を漏洩させる電波漏洩部と、
前記電波漏洩部と入力コネクタとを単管パイプにより長さ調節自在に連結し、前記電波を漏洩させない電波非漏洩部と
を備え
前記入力コネクタが無線アクセスポイントに接続され、前記無線アクセスポイントから伝送された前記電波のうち漏洩した前記電波により無線機と無線端末機との無線通信が行われ、
前記電波漏洩部は、前記電波を漏洩させる二つのスロット孔が設けられ、
二つの前記スロット孔は、前記電波漏洩部の主軸に対して相互に逆方向に角度を有して設けられてい
ことを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、
前記電波漏洩部を複数有し、
電波非漏洩部は、二つの前記電波漏洩部の間を単管パイプにより長さ調節自在に連結する、
ことを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、前記電波漏洩部と前記電波非漏洩部とは、交互に配置されて一つのユニットを形成し、複数のユニットを接続させることで任意の長さの導波管アンテナが形成されることを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、前記電波漏洩部は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は銅からなり、前記電波非漏洩部には、亜鉛メッキが施されることを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、
多層階建築物において縦系統に延びるアンテナ通路に仮設として設置され、前記電波を伝送する階層には少なくとも一つの前記電波漏洩部により前記電波を漏洩させ、前記電波を伝送しない階層にはスロット孔を有しない前記電波非漏洩部を用いることを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、各階に設けられた線アクセスポイントに前記電波漏洩部から漏洩した電波を伝達させ、前記無線アクセスポイントから各階に設けられた無線メッシュネットワークを通じて、前記各無線端末機に前記電波を伝送することを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、前記電波非漏洩部は、クランプ工具によりアンテナ通路内の仮設資材に固定されるか、又は、デッキプレートの鉄部に固定されることを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、端部に入力コネクタを備え、無線LANに接続された無線アクセスポイントと、前記入力コネクタとは、同軸ケーブルにより連結されて電波が伝送されることを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、前記無線アクセスポイントから平面方向に延びるアンテナ通路に少なくとも一つの前記電波漏洩部を配置して前記電波を平面方向に伝達することを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項12】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、縦系統又は平面方向の各アンテナ通路に複数の系統からなる前記導波管アンテナが配置され、前記各導波管アンテナは、それぞれ個別の情報を高層ビル内の前記各無線端末機に伝送する通信システムであることを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項13】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、前記各導波管アンテナは、それぞれ専用の無線アクセスポイントを有することを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【請求項14】
請求項に記載の導波管アンテナによる通信システムであって、前記各導波管アンテナは、それぞれ前記多層階建築物内に設けられた専用の環境センサと接続され、採取された環境データをデータセンタに伝送することを特徴とする導波管アンテナによる通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管アンテナによる通信システムに係り、特に、電波漏洩部を有して電波を漏洩させる導波管アンテナを用い、高層ビル等の建設現場の仮設時において導波管アンテナをウエーブガイドとして縦系統の無線通信に活用し、高層ビルの各階にて平面方向の無線メッシュにより無線通信ネットワークを形成し、本設設備にもそのまま適用可能な導波管アンテナによる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の建築物や土木建設物等の建設現場では、各種環境センサを用いた建設現場の環境モニタリングを行うことで各建設現場での徹底した災害防止や現場作業員の事故等の予防を行うことが望まれている。また、IT機器を駆使した各種の現場施工検査や施工データの取得を行うことで、現場施工における高度の品質管理を図ることが望まれている。
【0003】
この環境モニタリングには、例えば、建設現場における気温、湿度、雨量、風向、風速、積雪量などの気象条件の計測、酸素濃度、二酸化炭素濃度、一酸化炭素濃度、有毒ガスの発生、可燃性ガスの発生等の測定等が含まれる。これら環境モニタリングの測定結果は、建設現場で採取され通信データとして無線LAN等により建設現場内や遠隔地に設けられた監視センタ等に送信されることが望ましい。この環境モニタリング及びその測定結果の通信システムにより、工事現場での火災の発生、現場作業員の有毒ガスによる中毒、可燃性ガスによる爆発、ウイルスによる感染が未然に防止できる。
【0004】
また、この環境モニタリング及びその測定結果の通信システムにより、例えば、建設現場における気象データの計測により豪雨、日照り、積雪、強風、嵐等を事前に予測し、熱中症などの現場作業員の健康対策、強風による建設資材の破損や破壊対策、工事中の突然の豪雨等による建設仕上げ材のダメージ対策等を事前に講じることができる。
【0005】
本導波管アンテナによる通信システムと類似したシステムとして、LCX(漏洩同軸ケーブル)を用いた漏洩同軸システムがある。この漏洩同軸システムは、無線通信を利用した伝送ケーブルにより端末装置等に電波信号を送信する無線放送システムであり、漏洩同軸ケーブルにスリットを設け、このスリットから漏洩する電磁波をアンテナとして用いるシステムである。
【0006】
特許文献1には、設置・撤去が容易で、建設工事中の高層ビルの一時的な通信システムとして好適に用いることができる無線通信システムが開示されている。ここでは、高層ビルの内部に、工事の進捗に合わせて鉛直方向に伸長可能な中空導波管を設け、当該中空導波管の内部に基地局のアンテナを配置し、高層ビルの各階毎に、中空導波管に開口部をそれぞれ形成してそれら開口部の周縁から室内側に突出する筒状の放射ガイドをそれぞれ設けることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、無線端末にアクセスポイントからの電磁波を到達させ、屋内でのマルチパス干渉を防止する通信波搬送システムが開示されている。ここでは、通信波搬送媒体は金属製の材質で構成される矩形若しくは円形の開口形状であり、有効開口サイズは、伝播の対象とする電磁波の波長の1/2倍以上であり、この伝送媒体の室内側端部は、室内に向けて折り返しを設けた形状とし、伝送媒体の接合部は電磁波漏洩防止シールドがされていることが記載されている。
【0008】
特許文献3には、伝送する電磁波の周波数および伝搬モードを考慮した導波管が開示されている。ここでは、導波管は、例えば5.8GHzのマイクロ波をTE11モードで管軸方向に伝送するように外径φ1(電磁波の電界ベクトルの方向と直交する方向における被覆体の内面間の距離D)および内径φ2が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-159564号公報
【文献】特開2008-28549号公報
【文献】特開2016-149650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、建設現場においては、取得した環境モニタリング、及び、IT機器を駆使した各種の現場施工検査や施工データの伝送に関し、電話回線(3G,4G,5G)の届かない場所への情報伝達ができていなかった。特に、コンクリートや鉄骨等の電波を遮断する建設資材で覆われた高層ビルの上層階への通信、及び、トンネル内等の長距離通信は難しかった。
【0011】
本導波管アンテナによる通信システムは、当初建設現場において、本設の設備工事ではなく仮設工事の際に各種環境センサを用いて建設現場の環境モニタリングを行い監視センタ等に情報を伝達する通信システムとして開発された。そのため、この通信システム自体の製作コストが廉価であり、かつ通信システムの設置工事が簡易なシステムであることが要求される。また、建設現場の仮設時において故障や通信事故が起こりにくい頑丈な装置でなければならない
【0012】
また、建設現場において他の建設資材に簡易に取り付けることが可能であり、工事が完了すると他の建設資材から容易に取り外すことが可能でなければならない。そして、建設資材に取り付け、取り外しの際にダメージを与えないことが重要である。
【0013】
また、仮設資材として倉庫等にストックしておき、建設現場に持ち込み繰り返して使用できる装置でなければならない。つまり、取り付け、取り外しが簡易なだけではなく搬送自体も容易でなければならない。さらに、繰り返しによる再利用で性能が低下しない装置でなければならないという問題がある。
【0014】
本導波管アンテナによる通信システムは、建設現場の階段室、或いは、エレベータシャフト等のように縦系統に貫通したアンテナ通路に設置するのが望ましい。しかし、建物の各階は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の壁材や床材、或いは、鉄板とコンクリートの複合構造であるデッキプレートからなる床材から構成される。そのため、電波が通り易い階段室等であっても、コンクリート等が複雑な形状となる場合には、電波が遮断されてしまい縦系統に電波が通り易いアンテナ通路とはならないという問題がある。また、エレベータシャフトの場合は、仮設時に仮設エレベータに利用される場合には、電波が遮断される場合があり、仮設時の無線通信が安定しないという問題がある。
【0015】
さらに、建設現場においては、建設工事の進捗により階段室やエレベータホール等のアンテナ通路自体の完成度が変化するのが一般的であり、その都度、アンテナ通路の変化に対応しなければならないという問題がある。また、建設工事の進捗により電波を伝送すべき各階の領域が変化する場合があり、その都度、この電波を伝送すべき各階の領域の変化に柔軟に対応しなければならないという問題がある。
【0016】
一方、上述したLCX(漏洩同軸ケーブル)を用いた漏洩同軸システムは、本通信システムのように仮設工事ではなく本設設備であり、ケーブル伝送路とアンテナとの双方の機能を複合した通信システムであり、本装置とは使用目的が異なるため、上記課題を解決することができない。
【0017】
本願の目的は、かかる課題を解決し、建設現場のモニタリング結果や現場施工検査や施工データ等の情報を建設現場にて調達可能な建設資材を用い、確実に監視センタ等に伝達し、取り付けや取り外しを自在とし、レンタルにより繰り返しの使用を可能とすることで仮設設備に適した導波管アンテナによる通信システムを提供することである。
【0018】
本願の他の目的は、かかる課題を解決し、導波管アンテナにより建設現場のモニタリング結果や現場施工検査や施工データ等の情報を監視センタ等に確実に伝達する無線通信ネットワークを形成し、建設工事の進捗状況に柔軟に対応した簡易な導波管アンテナによる通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係る導波管アンテナによる通信システムは、内部に電波を伝送させ、電波を漏洩させる電波漏洩部と、電波漏洩部と入力コネクタとを単管パイプにより長さ調節自在に連結し、電波を漏洩させない電波非漏洩部とから構成され、入力コネクタが無線アクセスポイントに接続され、無線アクセスポイントから伝送された電波のうち漏洩した電波により無線機と無線端末機との無線通信が行われ、電波漏洩部と電波非漏洩部とを接続する接続部には、曲線又は折れ線のいずれか一方に対応自在な蛇腹部又はベント管のいずれか一方が取り付けられることを特徴とする。
【0020】
上記構成により、本発明に係る導波管アンテナによる通信システムは、電波漏洩部と電波非漏洩部とから構成される。電波非漏洩部は建設現場において足場等に多用されている単管パイプを用いて自在な長さに製作することができる。さらに、接続部は、一般的にパイプの接続に用いられるフランジジョイントを用いて簡易に製作することができる。従って、本導波管アンテナは、特殊な材料を用いることなく、建設現場にて資材調達が容易な材料を用いて製作することができる。また、電波非漏洩部と電波漏洩部と接続部とは、ボルト等により接合される。従って、建設現場にて取り付け及び取り外しが簡易にできる。また、一度製作した導波管アンテナは、特に複雑なディテールがないため、取り外して他の建設現場で容易に再利用することができる。さらに、複数のセットを製作して保管しておき、必要に応じてレンタルによる繰り返し使用をすることができる。
【0021】
また、本発明に係る導波管アンテナによる通信システムは、導波管アンテナの両端部の入力コネクタが無線アクセスポイントに接続され、無線機から発信された無線LANがアクセスポイントを介して導波管アンテナに伝送される。伝送された電波のうち電波漏洩部から漏洩した電波により無線機と電波漏洩部の周辺の無線端末機との無線通信が行われる。すなわち、高層ビルの場合、無線機から発信された電波は、縦系統へは導波管アンテナがウエーブガイドとして各階に対して確実に伝送し、各階に設けられた無線アクセスポイントを介して各階の無線端末機に情報伝達をすることができる。
【0022】
また、本発明に係る導波管アンテナによる通信システムは、電波漏洩部と電波非漏洩部とを接続する接続部を備えることが好ましい。これにより、本発明に係る導波管アンテナによる通信システムは、電波漏洩部、電波非漏洩部、及び接続部から構成される。
【0023】
また、導波管アンテナによる通信システムは、電波漏洩部は、電波を漏洩させるスロットが設けられ、電波非漏洩部は、建設現場で用いられる単管パイプに接続金物としてフランジジョイントが取り付けられることが好ましい。これにより、本発明に係る導波管アンテナは、特殊な材料を用いることなく、建設現場にて資材調達が容易な材料を用いて製作することができる。また、各構成要素を相互にボルト接合により接続可能とすることで、建設現場にて容易に取り付け及び取り外しができる。なお、上記接続金物は、フランジジョイントに限らず他の接続金物でも良い。
【0024】
また、導波管アンテナによる通信システムは、電波漏洩部と電波非漏洩部とは、交互に配置されて一つのユニットを形成し、複数のユニットを接続させることで任意の長さの導波管アンテナが形成されることが好ましい。これにより、導波管アンテナから電波を無駄に漏洩することなく導波管アンテナの長さを自在に調節することができ、導波管の内部において電波を確実に伝送させることができる。
【0025】
また、導波管アンテナによる通信システムは、接続部のフランジジョイントにおいて、板厚の異なる寸法調整用リングを用意し、そのうちのいずれかを用いることで長さ調整を容易に行うことが好ましい。これにより、建設現場において長さ調節が可能となり、各階の任意の位置に電波を伝送させることができる。
【0026】
また、導波管アンテナによる通信システムは、接続部には、曲線又は折れ線に対応自在な蛇腹部又はベント管取り付けられることが好ましい。これにより、建設現場における施工誤差を吸収して任意の位置に電波を伝送させることができる。また、アンテナ通路が湾曲している場合、又は折れ曲がっている場合に、導波管アンテナをそれらに追従させることができる。
【0027】
また、導波管アンテナによる通信システムは、電波漏洩部が、アルミニウム、ステンレス鋼、又は銅からなり、電波非漏洩部には、亜鉛メッキが施されることが好ましい。これにより、電波漏洩部及び電波非漏洩部等の導波管アンテナの表面がより平滑となり、導波管アンテナの内部を効率よく伝送させることができる。
【0028】
また、導波管アンテナによる通信システムは、多層階建築物において縦系統に延びるアンテナ通路に仮設として設置され、電波を伝送する階層には少なくとも一つの電波漏洩部により電波を漏洩させ、電波を伝送しない階層にはスロット孔を有しない電波非漏洩部を用いることが好ましい。これにより、電波を伝送する階層だけに電波を集中的に伝送させ、無線通信を効率化させることができる。
【0029】
また、導波管アンテナによる通信システムは、各階に設けられた無線アクセスポイントに漏洩した電波を伝達させ、無線アクセスポイントから各階に設けられた無線メッシュネットワークを通じて、各無線端末に電波を伝送することが好ましい。このように、導波管アンテナを用いた通信システムの無線メッシュネットワークを形成することにより、高層ビル等において下層階から上層階に至るまで、或いは各階の端部に至るまで確実に電波を伝送することができる。従来、この高層ビルにおける無線メッシュネットワークは、上下階を含む各階ごとには構築されていたが、この無線メッシュネットワークは、高層ビルの縦系統の通信には遮蔽物があるため向いていなかった。しかし、ウエーブガイドを縦系列の通信に用いることでこの問題を解決できた。また、LCXを縦系列に用いることでも同様の効果が可能であるが、建設現場ではシステムの堅牢性が求められるため、断線の虞があるLCXと比較した場合には、本導波管アンテナの方が優位である。
【0030】
また、導波管アンテナによる通信システムは、電波非漏洩部が、クランプ工具によりアンテナ通路内の仮設資材に固定されるか、又は、デッキプレートの鉄部に固定されることが好ましい。これにより、導波管アンテナの電波非漏洩部を活用して簡易に仮設資材やデッキプレート等に固定することができる。
【0031】
また、導波管アンテナによる通信システムは、端部に入力コネクタを備え、無線LANに接続された無線アクセスポイントと、入力コネクタとは、同軸ケーブルにより連結されて電波が伝送されることが好ましい。これにより、端部の入力コネクタとの接続は、曲線に対する追従性の良い同軸ケーブル等を使用することができる。なお、無線アクセスポイントと入力コネクタとの連結は、同軸ケーブルに限らず他の連結部材であっても良い。
【0032】
また、導波管アンテナによる通信システムは、無線アクセスポイントから平面方向に延びるアンテナ通路に少なくとも一つの電波漏洩部を配置して電波を平面方向に伝達することが好ましい。これにより、本発明をウエーブガイドと共に活用することで、無線LANを高層ビル内の各無線端末機に伝送する無線メッシュが構築できる。
【0033】
また、導波管アンテナによる通信システムは、縦系統又は平面方向の各アンテナ通路に複数の系統からなる導波管アンテナが配置され、各導波管アンテナが、それぞれ個別の情報を高層ビル内の各無線端末機に伝送する通信システムであることが好ましい。これにより、導波管アンテナを利用した通信システムとして、例えば、建設現場のモニタリング結果を第1の導波管アンテナにて伝送し、現場施工検査や施工データ等の情報を第2或いは第3等の他の導波管アンテナにより分離して伝送でき、電波の干渉等を避けることができる。
【0034】
また、導波管アンテナによる通信システムは、各導波管アンテナが、それぞれ専用の無線アクセスポイントを有することが好ましい。これにより、建設現場のモニタリング結果を第1の無線アクセスポイントを使用し、現場施工検査や施工データ等の情報を第2或いは第3等の他の無線アクセスポイントを用いて分離して伝送でき、電波の干渉等を避けることができる。
【0035】
また、導波管アンテナによる通信システムは、各導波管アンテナが、それぞれ多層階建築物内に設けられた専用の環境センサと接続され、採取された環境データをデータセンタに伝送することが好ましい。これにより、環境センサごとにデータ通信する導波管アンテナを異ならせて電波の干渉等を避けることができる。
【0036】
本願の他の目的は、かかる課題を解決し、導波管アンテナによる建設現場のモニタリング情報等を監視センタ等に確実に伝達する無線通信ネットワークを形成し、建設工事の進捗状況に柔軟に対応した簡易な導波管アンテナによる通信システムを提供することである。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明に係る導波管アンテナによる通信システムによれば、建設現場のモニタリング結果や現場施工検査や施工データ等の情報を建設現場にて調達可能な建設資材を用い、確実に監視センタ等に伝達し、取付けや取り外しを自在とし、レンタルにより繰り返しの使用を可能とすることで仮設設備に適し、本設設備にもそのまま適用できる導波管アンテナによる通信システムを提供することができる。
【0038】
また、本発明に係る導波管アンテナによる通信システムによれば、導波管アンテナを用いて建設現場のモニタリング結果や現場施工検査や施工データ等の情報を監視センタ等に確実に伝達する無線通信ネットワークを形成し、建設工事の進捗状況に柔軟に対応する簡易な導波管アンテナによる通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る導波管アンテナの一つの実施形態の概略の部品構成を示す側面図である。
図2】導波管アンテナの電波漏洩部の形状及び構成を示す斜視図及び側面図である。
図3】導波管アンテナの電波非漏洩部の形状及び構成を示す斜視図及び断面図である。
図4】導波管アンテナの接続部の形状及び構成を示す斜視図、断面図及び蛇腹部の側面図である。
図5】導波管アンテナの入力コネクタの形状及び構成を示す斜視図である。
図6】アンテナ通路に設置されたウエーブガイドによる無線通信システムの一つの実施例を示す説明図である。
図7】導波管アンテナが設置されていない高層ビルの2階における評価結果を示す説明図である。
図8】導波管アンテナが設置されていない高層ビルの9階における評価結果を示す説明図である。
図9】導波管アンテナが設置された高層ビルの2階における評価結果を示す説明図である。
図10】導波管アンテナが設置された高層ビルの9階における評価結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(導波管アンテナの構成)
以下に、図面を用いて本発明に係る導波管アンテナ1につき、詳細に説明する。図1に、本発明に係る導波管アンテナ1の一つの実施形態の概略構成を部品構成図で示す。図1(a)には、導波管アンテナ1の部品構成として、電波を漏洩する電波漏洩部2とその電波漏洩部2の両端に設けられる接続部4とを示す。この電波漏洩部2には、スロット孔7が設けられる。また、図1(b)には、図1(a)の部品構成に電波非漏洩部3を接続させ、さらに、導波管アンテナ1の端部に入力コネクタ6を接続させた導波管アンテナ1の基本ユニットを示す。また、図1(c)には、電波漏洩部2を3個含む導波管アンテナ1の部品構成を示す。
【0041】
このように、本発明に係る導波管アンテナ1は、基本ユニットとして電波漏洩部2、接続部4、及び電波非漏洩部3から構成される。この基本ユニットを繰り返して接続することで所定の長さとすることができる。この導波管アンテナ1を建設現場において縦系統に延びるアンテナ通路内に設置することで建設現場の無線通信システムとすることができる。ここで、「建設現場において縦系統に延びるアンテナ通路」とは、階段室、エレベータシャフト等のように本導波管アンテナ1が高層ビル等の建設現場において縦系統に延びることを妨げずに所定の各階に電波漏洩部2から電波を漏洩させることができるアンテナ通路をいう。ここでは、電波は導波管アンテナ1の内部を伝送し、アンテナ通路の内部を伝送するわけではないため、特許文献1のように鉄骨柱、クレーンのマスト、金属パイプにより中空導波管として使用するのとは異なる。
【0042】
(導波管アンテナの構成部品)
図2図6に導波管アンテナ1の構成部品ごとの形状と機能とを示す。図2(a)は、電波漏洩部2の斜視図であり、図2(b)は電波漏洩部2の側面図である。図3は、電波非漏洩部3の形状及び構成を示す斜視図及び断面図である。図4(a)及び図4(b)は、接続部4の形状及び構成を示す斜視図及び断面図である。また、図4(c)には、曲面に対応するために接続部4に用いる蛇腹部14を示す。図5は、入力コネクタ6の形状及び構成を示す斜視図である。
【0043】
図2(a)及び図2(b)に示すように、電波漏洩部2の一部には、2箇所にスロット孔7が設けられる。このスロット孔7は、電波漏洩部2の内部を伝送される電波が漏洩しやすいように主軸に対して相互に逆方向に角度を有して設けられる。
【0044】
図3に、電波非漏洩部3、及びこの電波非漏洩部3の一端を接続部4に連結させるためのクランプ5aと、この電波非漏洩部3の他端を入力コネクタ6に連結させるためのクランプ5bとを示す。図3)に示すように、このクランプ5a,5bには、クランプ固定ボルト孔23が設けられる。そして、クランプ固定ボルト22によりクランプ自体が電波非漏洩部3に固定される。また、クランプ5a,5bには、連結ボルト孔25が設けられ、電波非漏洩部3と接続部4及び入力コネクタ6を連結ボルト24によりそれぞれ連結する。
【0045】
この電波非漏洩部3は、建設現場で仮設材などに多用される単管パイプ9をそのまま使用することができる。また、クランプ5a,5bに関しても建設現場で仮設材などに多用されるランプ5a,5bをそのまま使用することができる。従って、建設現場にとって、日常的に使用する建設資材により導波管アンテナ1を製作することができる。また、余った単管パイプ9及びクランプ5a,5bは、建設現場に戻して使用することができる。
【0046】
図4に、接続部4を示す。図4(a)は、接続部4の斜視図であり、図4(b)は、この接続部4の断面図である。この接続部4には、一端を電波漏洩部2に連結させ、他端を電波非漏洩部3のクランプ5a,5bに連結させるため、両端部にフランジジョイント8a,8bが設けられ、このフランジジョイント8a,8bの連結方向には、連結ボルト孔25が設けられ、それぞれの方向に連結される部品と連結ボルト24により連結される。この接続部4のフランジジョイント8a,8bにおいて、図4(b)に示すように、板厚の異なる寸法調整リング10を用意し、そのうちのいずれかを用いることで接続部4の長さ調整を行うことができる。
【0047】
また、図4(c)に示すように、この接続部4には、曲線状に変化する場合に対応し、蛇腹部14を設けることができる。この蛇腹部14は、曲線又は折れ線に対応自在なフレキシブルホース等の部材が用いられる。そして、この蛇腹部14には、接続部4を流通する電波が漏れないようなシールが施される。この蛇腹部14を活用することでアンテナ通路の直線性が変化しても十分に対応することができる。
【0048】
図5に、導波管アンテナ1の入力コネクタ6の形状及び構成を示す。入力コネクタ6の先端にはコネクタ部18が設けられて同軸ケーブル17を介して無線アクセスポイント16に接続される。また、電波非漏洩部3のクランプ5a,5bと連結ボルト24により連結する連結ボルト孔25を有する。
【0049】
(ウエーブガイドを用いた通信システム)
図6に、アンテナ通路に設置されたウエーブガイド1による無線通信システムの一つの実施例を示す。導波管アンテナ1は、高層ビルの縦方向の無線通信システムに用いられる場合には、本明細書では、ウエーブガイド1と称する。図6では、高層ビルの連続するA階26、B階27、C階28のうちB階27の無線メッシュネットワーク36と、環境センサ30等によるモニタリングを行い、モニタリングの結果を監視センタ等に伝達する。
【0050】
ウエーブガイド1の末端には無線LANに接続された無線アクセスポイント16が設置され、ウエーブガイド1は、同軸ケーブル17により無線アクセスポイント16に接続されている。なお、ウエーブガイド1は、無線アクセスポイント16に直接接続されても良い。B階27では、ウエーブガイド1から漏洩された電波は、B階27の無線アクセスポイント16に伝送され、B階27の無線端末35の無線メッシュネットワーク36に送信される。
【0051】
一方、B階27では、環境センサ本体31、及び、例えば、温度センサボックス32、可燃性ガスセンサボックス33、ウイルス検知ボックス34等からなる環境センサ30がウエーブガイド1と無線通信を行っている。温度センサボックス32等の環境測定器は、建設現場の労働環境のモニタリングを行い、モニタリングの結果を監視センタ等に伝達する。また、建設現場に設けられた監視カメラ29等により施工状況等を把握することができる。さらに、現場施工検査や施工データについて、ウエーブガイド1を使用して監視センタ等に無線通信することができる。
【0052】
(ウエーブガイドによる評価結果)
図7に、ウエーブガイド1が設置されていない高層ビルの2階における電波測定の評価結果を示す。また、図8に、ウエーブガイド1が設置されていない高層ビルの9階における電波測定の評価結果を示す。また、図9に、ウエーブガイド1が設置された高層ビルの2階における電波測定の評価結果を示す。また、図10に、ウエーブガイド1が設置された高層ビルの9階における電波測定の評価結果を示す。この評価が行われたのは、9階建ての高層ビルの2階と9階である。図7及び図8は、エレベータシャフト又は階段室等のアンテナ通路にウエーブガイド1が設置されていない場合であり、図9及び図10は、エレベータシャフト又は階段室等のアンテナ通路にウエーブガイド1が設置されている場合であり、ウエーブガイド1の設置如何により廊下における受信電力レベル、或いは電波の強さがRSSI(dB)で測定され、評価結果が6段階(30dB以上、25~29dB、20~24dB、15~19dB、10~14dB、9dB以下)で表示されている。
【0053】
比較的受信レベルが高くなる2階における測定では、図7のウエーブガイド1が設置されていない場合では、階段室回りの廊下で最大20~24dBとなっているが、壁で閉鎖されている室内では10~14dBとなっている。一方、図9のウエーブガイド1が設置されている場合では、階段室回りの廊下で最大30dB以上となっているが、壁で閉鎖されている室内であっても25~29dBとなっており、軒並みウエーブガイド1の効果が表れていると言える。
【0054】
比較的受信レベルが低下する9階において、図8のウエーブガイド1が設置されていない場合では、ほとんど受信電力レベルが9dB以下である。一方、図10のウエーブガイド1が設置されている場合では、階段室回りの廊下で最大30dB以上となっており、2階並みの受信電力レベルを保持していることが分かる。
【0055】
これらの高層ビルの電波測定の評価結果から、ウエーブガイド1を用いた場合には、高層階での受信電力レベルの低下があまり見られないことから、ウエーブガイド1は、高さ方向に安定した特性を有することが証明された。
【0056】
以上の実施形態で説明された導波管アンテナ1又はウエーブガイド1の構成、形状、大きさ、及び配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 導波管アンテナ又はウエーブガイド、2 電波漏洩部、3 電波非漏洩部、4 接続部、5a,5b クランプ、6 入力コネクタ、7 スロット孔、8a,8b フランジジョイント、9 単管パイプ、10 寸法調整リング、14 蛇腹部、16 無線アクセスポイント、17 同軸ケーブル、18 コネクタ部、22 クランプ固定ボルト、23 クランプ固定ボルト孔、24 連結ボルト、25 連結ボルト孔、26 A階、27 B階、28 C階、29 監視カメラ、30 環境センサ、31 環境センサ本体、32 温度センサボックス、33 可燃性ガスセンサボックス、34 ウイルス検知ボックス、35 無線端末、36 無線メッシュネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10