IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特許7252864スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法
<>
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図1
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図2
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図3
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図4
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図5
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図6
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図7
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図8
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図9
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図10
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図11
  • 特許-スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】スタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20230329BHJP
   B60C 11/16 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
B29D30/06
B60C11/16 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019157903
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035735
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝治
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047759(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/070378(WO,A1)
【文献】特開昭55-170104(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087850(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00- 30/72
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのピン孔に向けてスタッドピンをガイドするガイド部と、
前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む押圧部と、
前記押圧部を移動させるアクチュエータと、を備え、
前記押圧部は、力覚センサを介して前記アクチュエータに取り付けられているスタッドピン打ち込み装置
【請求項2】
タイヤのピン孔に向けてスタッドピンをガイドするガイド部と、前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む押圧部と、を有する打ち込みヘッドと、
前記打ち込みヘッドを移動させるアクチュエータと、を備え、
前記打ち込みヘッドは、力覚センサを介して前記アクチュエータに取り付けられているスタッドピン打ち込み装置。
【請求項3】
前記力覚センサが前記押圧部と機械的に接続されている請求項1または2に記載のスタッドピン打ち込み装置。
【請求項4】
前記アクチュエータを駆動するサーボモータの推力によって前記押圧部が前記スタッドピンを押圧するように構成されている請求項1~3いずれか1項に記載のスタッドピン打ち込み装置。
【請求項5】
前記ガイド部が前記押圧部と弾性的に接続されている請求項1~4いずれか1項に記載のスタッドピン打ち込み装置。
【請求項6】
タイヤのピン孔にスタッドピンを打ち込むことによりスタッドタイヤを製造するスタッドタイヤの製造方法であって、
力覚センサを介してアクチュエータに取り付けられた押圧部を前記アクチュエータで移動させ、ガイド部で前記スタッドピンをガイドしながら前記押圧部で前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む工程を備え、
前記力覚センサの検出値に基づいて前記押圧部の姿勢を変化させるように前記アクチュエータを制御することを特徴とするスタッドタイヤの製造方法。
【請求項7】
タイヤのピン孔にスタッドピンを打ち込むことによりスタッドタイヤを製造するスタッドタイヤの製造方法であって、
ガイド部と押圧部とを有し且つ力覚センサを介してアクチュエータに取り付けられた打ち込みヘッドを前記アクチュエータで移動させ、前記ガイド部で前記スタッドピンをガイドしながら前記押圧部で前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む工程を備え、
前記力覚センサの検出値に基づいて前記押圧部の姿勢を変化させるように前記アクチュエータを制御することを特徴とするスタッドタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記力覚センサが前記押圧部と機械的に接続されている請求項6または7に記載のスタッドタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記アクチュエータを駆動するサーボモータの推力によって前記押圧部が前記スタッドピンを押圧する請求項6~8いずれか1項に記載のスタッドタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記スタッドピンを前記ピン孔に打ち込む際に、前記押圧部と弾性的に接続された前記ガイド部を前記タイヤに接触させる、請求項6~9いずれか1項に記載のスタッドタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのピン孔にスタッドピンを打ち込むためのスタッドピン打ち込み装置と、タイヤのピン孔にスタッドピンを打ち込む工程を含むスタッドタイヤの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッド面にスタッドピンが打ち込まれた空気入りタイヤは、スタッドタイヤ(またはスパイクタイヤ)と称され、主として氷雪路での走行に供される。かかるスタッドタイヤは、加硫済みタイヤのトレッド面に設けられた多数のピン孔にスタッドピンを打ち込むことにより製造される。一般に、スタッドピンを打ち込む工程では、所定の空気圧により駆動される空圧式のスタッドガンが用いられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
タイヤのピン孔は、その向きや内面形状が設計通りになっていないなど、変則的な形状を有している場合がある。空圧式のスタッドガンは、そのようなピン孔の状態に関係なく、常にスタッドピンを所定の方向に圧入しようとするため、打ち込み動作の精度が低下し、スタッドピンの突出高さに影響を及ぼすことがある。突出高さに過不足を生じると、たとえ修正が可能であっても、手直し作業の手間によって生産性が阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/087850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スタッドピンを精度良くピン孔に打ち込むことができるスタッドピン打ち込み装置及びスタッドタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るスタッドピン打ち込み装置は、タイヤのピン孔に向けてスタッドピンをガイドするガイド部と、前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む押圧部と、前記押圧部を移動させるアクチュエータと、を備え、前記押圧部は、力覚センサを介して前記アクチュエータに取り付けられているものである。
【0007】
この装置によれば、押圧部でスタッドピンを押圧してピン孔に打ち込む際に、その押圧部に作用する力やモーメントを力覚センサで検出し、その検出値に基づいて押圧部の姿勢を変化させることができる。このため、ピン孔が変則的な形状を有する場合であっても、スタッドピンを精度良くピン孔に打ち込むことができる。
【0008】
また、本発明に係る別のスタッドピン打ち込み装置は、タイヤのピン孔に向けてスタッドピンをガイドするガイド部と、前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む押圧部と、を有する打ち込みヘッドと、前記打ち込みヘッドを移動させるアクチュエータと、を備え、前記打ち込みヘッドは、力覚センサを介して前記アクチュエータに取り付けられているものである。
【0009】
この装置によれば、打ち込みヘッドの押圧部でスタッドピンを押圧してピン孔に打ち込む際に、その押圧部に作用する力やモーメントを力覚センサで検出し、その検出値に基づいて押圧部の姿勢を変化させることができる。このため、ピン孔が変則的な形状を有する場合であっても、スタッドピンを精度良くピン孔に打ち込むことができる。
【0010】
前記力覚センサが前記押圧部と機械的に接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、押圧部を介してピン孔に対するスタッドピンの姿勢を精度良く制御することができる。
【0011】
前記アクチュエータを駆動するサーボモータの推力によって前記押圧部が前記スタッドピンを押圧するように構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、スタッドピンを押圧する力を加減できるため、押圧部の姿勢を変化させてスタッドピンを打ち込むうえで有用である。これに対し、空気圧でスタッドピンを押圧する空圧式のスタッドガンでは、スタッドピンを押圧する力を加減することが難しい。
【0012】
前記ガイド部が前記押圧部と弾性的に接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、ガイド部をタイヤに接触させた際に力覚センサに及ぼす影響が抑えられるため、押圧部に作用する力やモーメントを精度良く検出できる。
【0013】
また、本発明に係るスタッドタイヤの製造方法は、タイヤのピン孔にスタッドピンを打ち込むことによりスタッドタイヤを製造するスタッドタイヤの製造方法であって、力覚センサを介してアクチュエータに取り付けられた押圧部を前記アクチュエータで移動させ、ガイド部で前記スタッドピンをガイドしながら前記押圧部で前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む工程を備え、前記力覚センサの検出値に基づいて前記押圧部の姿勢を変化させるように前記アクチュエータを制御するものである。
【0014】
この方法によれば、押圧部でスタッドピンを押圧してピン孔に打ち込む際に、その押圧部に作用する力やモーメントを力覚センサで検出し、その検出値に基づいて押圧部の姿勢を変化させることができる。このため、ピン孔が変則的な形状を有する場合であっても、スタッドピンを精度良くピン孔に打ち込むことができる。
【0015】
また、本発明に係る別のスタッドタイヤの製造方法は、タイヤのピン孔にスタッドピンを打ち込むことによりスタッドタイヤを製造するスタッドタイヤの製造方法であって、ガイド部と押圧部とを有し且つ力覚センサを介してアクチュエータに取り付けられた打ち込みヘッドを前記アクチュエータで移動させ、前記ガイド部で前記スタッドピンをガイドしながら前記押圧部で前記スタッドピンを押圧して前記ピン孔に打ち込む工程を備え、前記力覚センサの検出値に基づいて前記押圧部の姿勢を変化させるように前記アクチュエータを制御するものである。
【0016】
この方法によれば、打ち込みヘッドの押圧部でスタッドピンを押圧してピン孔に打ち込む際に、その押圧部に作用する力やモーメントを力覚センサで検出し、その検出値に基づいて押圧部の姿勢を変化させることができる。このため、ピン孔が変則的な形状を有する場合であっても、スタッドピンを精度良くピン孔に打ち込むことができる。
【0017】
前記力覚センサが前記押圧部と機械的に接続されていることが好ましい。かかる方法によれば、押圧部を介してピン孔に対するスタッドピンの姿勢を精度良く制御することができる。
【0018】
前記アクチュエータを駆動するサーボモータの推力によって前記押圧部が前記スタッドピンを押圧することが好ましい。かかる方法によれば、スタッドピンを押圧する力を加減できるため、押圧部の姿勢を変化させてスタッドピンを打ち込むうえで有用である。
【0019】
前記スタッドピンを前記ピン孔に打ち込む際に、前記押圧部と弾性的に接続された前記ガイド部を前記タイヤに接触させることが好ましい。ガイド部が押圧部と弾性的に接続されていることにより、ガイド部をタイヤに接触させた際に力覚センサに及ぼす影響が抑えられ、押圧部に作用する力やモーメントを精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るスタッドピン打ち込み装置の一例を示す側面図
図2】スタッドピン打ち込み装置の平面図
図3】打ち込みヘッドの正面視断面図
図4】打ち込みヘッドの側面視断面図
図5】ピン孔に打ち込まれたスタッドピンを示す図
図6】スタッドピン打ち込み装置の制御システムの構成を示すブロック図
図7】スタッドピンの打ち込み動作を説明する図
図8】押圧部の姿勢変化の一例を示す模式図
図9】スタッドピンの打ち込み動作を説明する図
図10】スタッドピンの打ち込み動作を説明する図
図11】打ち込みヘッドの変形例を示す正面視断面図
図12】打ち込みヘッドの変形例を示す正面視断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るスタッドピン打ち込み装置の一例を示す側面図である。図2は、そのスタッドピン打ち込み装置の平面図である。図1,2に示すように、スタッドピン打ち込み装置10(以下、単に「打ち込み装置10」と呼ぶ場合がある)は、ガイド部1と、押圧部2と、押圧部2を移動させるアクチュエータとしてのロボットアーム4とを備え、その押圧部2は、力覚センサ5を介してロボットアーム4に取り付けられている。本実施形態の打ち込み装置10は、更に、打ち込み装置10の動作を制御する制御部6を備えている。
【0023】
打ち込み装置10の前方には、タイヤ9を縦置き状態で支持するタイヤ支持装置90が設置されている。タイヤ9は、リム91に装着され、所定の空気圧でインフレートされている。タイヤ支持装置90には、リム91を介してタイヤ9をタイヤ周方向に回転させる回転機構92が設けられている。タイヤ9は加硫済みの空気入りタイヤであり、そのトレッド面93には多数のピン孔94が設けられている。このピン孔94にスタッドピン7(図3,4参照)を打ち込むことにより、スタッドタイヤが製造される。
【0024】
また、タイヤ9のトレッド面93と対向する位置には、レーザー変位計95が設けられている。レーザー変位計95は、スタッドピン7を打ち込む前のトレッド面93をスキャンしてピン孔94の位置を検出する。検出されたピン孔94の位置情報は制御部6に送られる。制御部6は、その位置情報を利用して、打ち込み装置10に打ち込み動作を実行させるためのデータを生成し、該データに基づいて回転機構92やロボットアーム4などの動作を制御する。本実施形態では、ピン孔94の位置を特定するためにレーザー変位計95を使用しているが、これに限られるものではない。
【0025】
図3及び図4に示すように、ロボットアーム4に力覚センサ5を介して打ち込みヘッド3が取り付けられている。打ち込みヘッド3は、ピン孔94に向けてスタッドピン7をガイドするガイド部1と、スタッドピン7を押圧してピン孔94に打ち込む押圧部2とを有する。本実施形態では、更に、打ち込みヘッド3が、ガイド部1にスタッドピン7を供給する供給部8を有する。打ち込みヘッド3は、供給部8により供給されたスタッドピン7をガイド部1でガイドしながら、そのスタッドピン7を押圧部2で押圧するように構成されている。
【0026】
ガイド部1は、筒状部材11と、その筒状部材11を支持する支持部材12とを有する。筒状部材11の先端側部分11aは、ピン孔94への侵入が容易になるよう、先細りに形成されている。先端側部分11aの内径は押圧ロッド21やスタッドピン7の外径よりも小さいが、それらが通過する際には弾性変形により拡径する(図9,10参照)。これに代えてまたは加えて、筒状部材11を拡縮可能な割り構造にしてもよい。筒状部材11の基端側部分11bは、その内径が押圧ロッド21の外径よりも大きく、好ましくは0.3~5mmほど大きい。
【0027】
支持部材12は板状に形成されており、その下面に筒状部材11の基端側部分11bが取り付けられている。支持部材12には、押圧部2の押圧ロッド21が挿通される挿通孔12aが設けられている。挿通孔12aの直径は押圧ロッド21の外径よりも大きく、基端側部分11bと同等かそれ以上の遊びが設けられている。後述のようにピン孔94の軸心に押圧部2の軸心(押圧ロッド21の軸心)が合うように押圧部2の姿勢を変化させるうえで、このような遊びが基端側部分11bや挿通孔12aに設けられていることが好ましい。
【0028】
押圧部2は、筒状部材11の軸方向に沿って延びた押圧ロッド21と、後述する接続部材25の上端部を支持する支持部材22とを有する。スタッドピン7には、押圧ロッド21の先端部が当接する。押圧ロッド21の基端部には、大径部23及びフランジ24が設けられている。支持部材22は板状に形成され、その上面に大径部23が取り付けられている。支持部材22には、押圧ロッド21が挿通される挿通孔22aが設けられている。フランジ24には力覚センサ5が接続されている。ボルト24aは、フランジ24に力覚センサ5を固定するための固定具となる。このように、押圧部2は、フランジ24を介して力覚センサ5に接続されている。
【0029】
本実施形態では、ガイド部1と押圧部2とが接続部材25を介して接続されている。接続部材25は筒状に形成されており、その下端部は支持部材12の上面に取り付けられ、上端部は支持部材22の下面に取り付けられている。押圧部2に対してガイド部1が相対的に変位できるよう、接続部材25は変形可能に構成されている。このため、タイヤ9に接触させたガイド部1は、押圧部2に対して相対的に、押圧ロッド21の軸方向に沿って変位したり、その軸方向に対して上記遊びの範囲内で傾斜したりできる(図9,10参照)。本実施形態では、接続部材25が弾性材としてのゴムで形成されており、ガイド部1が押圧部2と弾性的に接続されている。
【0030】
供給部8は、管体81と、その管体81の中途から分岐した分岐部に通じる供給管82と、管体81の接続されたシリンダ83とを有する。管体81は支持部材12に取り付けられており、供給部8はガイド部1と一体的に移動する。管体81には、図示しないスタッドピン貯留部から供給管82を通じてスタッドピン7が送り込まれる。シリンダ83のピストンロッド83aを伸長させることで、管体81からスタッドピン7が押し出され、投入口11cを通じて筒状部材11の内部に投入される。シリンダ83は、例えばエアシリンダで構成される。スタッドピン7を供給するため機構は、これに限られず、種々の機構を利用可能である。
【0031】
図3,4などでは単純な形状で描かれているが、実際のスタッドピン7は、例えば図5のような形状を有する。図5において、スタッドピン7は、円柱状の本体部71と、本体部71の下方にくびれ部72を介して接続されたフランジ部73と、本体部71の頂面から突出した突起部74とを有する。スタッドピン7は金属材により形成される。基準面となるタイヤ表面からの突出高さPHは、仕向国で定められた規格の範囲内に収める必要があり、精度の高い打ち込み動作が求められる。尚、使用されるスタッドピンの形状や材質、サイズなどは特に制限されない。
【0032】
力覚センサ5は、ロボットアーム4の先端部に取り付け固定されている。本実施形態では、力覚センサ5が押圧部2と機械的に接続されている。力覚センサ5は、XYZ三次元座標系において互いに直交するX,Y,Z軸方向の力と、そのX,Y,Z軸周りのモーメントとを検出する。力覚センサ5が検出した情報(検出値)は制御部6に送られる。本実施形態では、力覚センサ5が円板状に形成されており、その厚み方向に対応するZ軸方向を押圧部2による押圧方向(押圧ロッド21の軸方向)に合致させている。力覚センサ5としては、従来公知の製品を使用可能である。
【0033】
図6は、打ち込み装置10の制御システムの構成を示すブロック図である。制御部6は、打ち込み動作を実行するために必要な情報を記憶する記憶部61と、打ち込み動作を実行するために必要な演算処理を行う処理部62とを有する。制御部6は、例えばパーソナルコンピュータやPLC(Programmable Logic Controller)を用いて構成される。回転機構92は、制御部6からの制御信号に基づきサーボコントローラ92aがサーボモータ92bを回転させることで、タイヤ支持装置90で支持されたタイヤ9を回転させる。これによって、タイヤ周方向におけるピン孔94の位置を調整できる。
【0034】
既述のように、本実施形態では、打ち込みヘッド3を移動させるためのアクチュエータとしてロボットアーム4が用いられる。ロボットアーム4を使用することにより、X,Y,Z軸方向及び軸回り方向への制御機構が簡単に構築でき、増設も容易となる。ロボットアーム4としては汎用の製品を使用可能であり、6軸(または7軸)の垂直多関節型ロボットアームが好ましく用いられる。ロボットアーム4は、X,Y,Z軸方向及び軸回り方向に打ち込みヘッド3を移動可能な複数の軸(関節)と、その軸の各々に設けられた駆動機構とを有する。
【0035】
図6には、ロボットアーム4が有する複数の駆動機構のうち、二つの駆動機構41,42を示している。駆動機構41は、制御部6からの制御信号に基づきサーボコントローラ41aがサーボモータ41bを回転させることで、例えばロボットアーム4の上腕を上下に動かす。駆動機構42は、制御部6からの制御信号に基づきサーボコントローラ42aがサーボモータ42bを回転させることで、例えばロボットアーム4の手首を旋回させる。図示しない駆動機構も同様に構成されており、各サーボモータの力で各軸(関節)を動かすことにより、打ち込みヘッド3を所望の位置に移動させることができる。
【0036】
かかる打ち込み装置10を用いてタイヤ9のピン孔94にスタッドピン7を打ち込むことにより、スタッドタイヤが製造される。本実施形態のスタッドタイヤの製造方法は、押圧部2(を有する打ち込みヘッド3)をロボットアーム4で移動させ、ガイド部1でスタッドピン7をガイドしながら押圧部2でスタッドピン7を押圧してピン孔94に打ち込む工程を備える。その際、制御部6は、押圧部2と機械的に接続された力覚センサ5の検出値に基づいて押圧部2の姿勢を変化させるようにロボットアーム4を制御する。以下、スタッドピン7を打ち込む動作について、図7~10を参照しながら説明する。
【0037】
打ち込みヘッド3は、押圧部2の軸心をタイヤ径方向に向けた姿勢で配置され(図1,2参照)、その押圧ロッド21の位置をピン孔94の位置に合わせた状態でトレッド面93に近付けられる。図7は、打ち込みヘッド3をトレッド面93に近付ける過程で、ガイド部1がピン孔94に侵入した様子を示す。スタッドピン7を打ち込む際には、このようにしてガイド部1をタイヤ9に接触させる。この状態から打ち込みヘッド3を更にトレッド面93に近付けることで、スタッドピン7がガイド部1でガイドされながらピン孔94に打ち込まれる。ピン孔94の軸心94aはトレッド面93に対して垂直であることが理想的であるが、図7ではピン孔94の軸心94aが傾いている例を示す。
【0038】
本実施形態では、既述のように、力覚センサ5の検出値に基づいて押圧部2の姿勢を変化させるようにロボットアーム4を制御する。図8は、押圧部2の姿勢変化の一例を示す模式図である。力覚センサ5により反力を検出した場合、制御部6は、その反力の方向と大きさに基づき、ピン孔94の軸心94aに押圧部2の軸心2a(延いてはスタッドピン7の軸心)を一致させるための姿勢変化を計算し、図8の如く押圧部2の姿勢を変化させるようにロボットアーム4を制御する。これにより、実際のピン孔94が変則的な形状であっても、スタッドピン7を精度良くピン孔94に打ち込むことができる。
【0039】
図9は、押圧部2の姿勢を変化させた様子を示し、図10は、姿勢を変化させた押圧部2でスタッドピン7を打ち込む様子を示す。かかる打ち込み動作に伴って、接続部材25は弾性変形する。上述した押圧部2の姿勢変化によりスタッドピン7が精度良く打ち込まれることで、所望の突出高さPH(図5参照)が得られやすくなる。説明の便宜上、図7~10ではピン孔94を誇張して描いているが、実際のピン孔94の傾きは微小であり(但し、突出高さPHに影響を及ぼす)、タイヤ径方向に対してスタッドピン7が大きく傾斜しているわけではない。スタッドピン7がピン孔94の底面に到達したら押圧を完了し、打ち込みヘッド3を移動させてトレッド面93から遠ざける。
【0040】
押圧部2に力覚センサ5が機械的に接続されているため、このように押圧部2を介してピン孔94に対するスタッドピン7の姿勢を制御できる。このような力覚センサ5を利用した姿勢制御は、打ち込み動作の途中でも行われる。したがって、ピン孔94の内面形状が設計通りでなく、それ故にピン孔94の内面に打ち込み途中のスタッドピン7が干渉した場合には、スタッドピン7が的確に打ち込まれるよう、押圧部2の姿勢(延いてはスタッドピン7の姿勢)が修正される。力覚センサ5が所定以上の力やモーメントを検出した場合は、スタッドピン7の姿勢に問題があるとしてエラー判定してもよい。
【0041】
既述の通り、押圧部2は、ロボットアーム4に取り付け固定された力覚センサ5と機械的に接続されている。換言すると、押圧部2は、力覚センサ5を介して、ロボットアーム4を駆動するサーボモータ(サーボモータ41b,42bなど)と機械的に接続されている。よって、本実施形態では、ロボットアーム4を駆動するサーボモータの推力によって押圧部2がスタッドピン7を押圧する。かかる構成によれば、スタッドピン7を押圧する力の調整が可能であり、力覚センサ5による姿勢制御を精密に実行できる。この点は、スタッドピンを押圧する力を加減できない空圧式のスタッドガンと大きく異なる。
【0042】
また、本実施形態では、ガイド部1が押圧部2と弾性的に接続されているため、ガイド部1がタイヤ9に接触した際に力覚センサ5に及ぼす影響が抑えられ、その結果、押圧部2に作用する力やモーメントを力覚センサ5で精度良く検出できる。つまり、スタッドピン7を介して押圧部2に作用する力やモーメントを力覚センサ5により精度良く検出するうえでは、ガイド部1に作用する力やモーメントの押圧部2への伝達を抑えることが有効であり、そのための手法として、本実施形態では接続部材25を介してガイド部1を押圧部2に弾性的に接続している。
【0043】
打ち込みヘッド3の変形例として、例えば図11,12に示した構成が考えられる。これらの変形例は、ガイド部1と押圧部2とを接続する接続部材を除いて、前述の実施形態と同様に構成されているので、共通点を省略して主に相違点について説明する。尚、既に説明した構成と同一の構成には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0044】
図11の例では、ガイド部1と押圧部2とが接続部材26を介して弾性的に接続されている。接続部材26は、弾性材としてのコイルバネで形成されている。図12の例では、ガイド部1と押圧部2とが接続部材27を介して接続されている。接続部材27は、ボールジョイント28と、そのボールジョイント28の軸部28aに外挿されたコイルバネ29とを有する。ボールジョイント28の上端部は支持部材22に取り付けられ、その下端部は支持部材12の挿通孔12bに挿通されている。ボールジョイント28に代えてヒンジなどを用いることも可能である。
【0045】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0046】
前述の実施形態では、ガイド部1と押圧部2と(を有する打ち込みヘッド3)を単一のロボットアーム4で保持する例を示したが、これに限られない。例えば、押圧部2からガイド部1と供給部8を分離し、これらを別個のアクチュエータ(例えば、ロボットアーム)で保持してもよい。
【0047】
前述の実施形態では、スタッドピン7に生じる反力を力覚センサ5で検出する例を示したが、これに限られない。例えば、ガイド部に生じる反力を力覚センサで検出し、それに基づいて押圧部の姿勢を変化させてもよい。この場合、ガイド部は押圧部と機械的に接続されていることが好ましい。また、かかる場合には、空気圧によって押圧部がスタッドピンを押圧するように構成された空圧式のスタッドガンを使用しても一定の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ガイド部
2 押圧部
3 打ち込みヘッド
4 ロボットアーム(アクチュエータの一例)
5 力覚センサ
6 制御部
7 スタッドピン
9 タイヤ
10 スタッドピン打ち込み装置
21 押圧ロッド
25 接続部材
41b サーボモータ
42b サーボモータ
90 タイヤ支持装置
93 トレッド面
94 ピン孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12