(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ジカウイルスエピトープに特異的に結合する新規抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230329BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230329BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20230329BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230329BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230329BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230329BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230329BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230329BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230329BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230329BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230329BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230329BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230329BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230329BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P31/14
A61K39/395 S
A61K48/00
A61K31/713
A61K35/12
G01N33/569 L
G01N33/53 D
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2019501482
(86)(22)【出願日】2017-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2017067581
(87)【国際公開番号】W WO2018011283
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/066684
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516097907
【氏名又は名称】ヒューマブス バイオメド エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・コルティ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】Cell Host & Microbe,2016.05.11, Vol.19, pp.696-704
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
UniProt/GeneSeq
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカウイルスエピトープに特異的に結合し、ジカウイルス感染を中和する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、
以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含むことを特徴とする単離された抗体又はその抗原結合断片:
(i)配列番号1
で表されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号2で表されるCDRH2アミノ酸配列、配列番号3で表されるCDRH3アミノ酸配列、配列番号4で表されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号5で表されるCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号7で表されるCDRL3アミノ酸配列;
又は
(ii)配列番号1
で表されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号2で表されるCDRH2アミノ酸配列、配列番号3で表されるCDRH3アミノ酸配列、配列番号4で表されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号6で表されるCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号7で表されるCDRL3アミノ酸配列。
【請求項2】
Fc部分を含む請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記Fc部分に突然変異を含み、前記突然変異がFc受容体に対する前記抗体の結合を低減する請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
野生型IgG1又はIgG3のCH2における、4位のアミノ酸ロイシンがアラニンである突然変異、
5位のアミノ酸ロイシンがアラニンである突然変異、又はその両方を含む請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
以下を含む請求項1から4のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片:
(i)配列番号8で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくと
も90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異体、及び/又は配列番号9で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくと
も90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその配列変異
体。
【請求項6】
医薬としての使用のための請求項1から5のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
ジカウイルス感染の予防及び/又は治療における使用のための請求項1から6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を含むことを特徴とするベクター。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片を発現するか、又は請求項9に記載のベクターを含むことを特徴とする細胞。
【請求項11】
請求項1から6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項8に記載の核酸分子、請求項9に記載のベクター、及び/又は請求項10に記載の細胞を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
更に薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤、又は担体を含む請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
(i)ジカウイルス感染の予防又は治療;又は(ii)ジカウイルス感染の診断における使用のための、請求項1から6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項8に記載の核酸分子、請求項9に記載のベクター、請求項10に記載の細胞、又は請求項11から12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される、請求項13に記載の使用のための、抗体又はその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、細胞、又は医薬組成物。
【請求項15】
抗ジカワクチンの抗原が正確な立体構造の特異的エピトープを含有していることを確認することによって前記ワクチンの品質をモニタリングするための、請求項1から6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項8に記載の核酸分子、請求項9に記載のベクター、請求項10に記載の細胞、又は請求項11から12のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
(i)ジカウイルス感染の予防又は治療;又は(ii)ジカウイルス感染の診断における使用のためのキットであって、
請求項1から6のいずれかに記載の少なくとも1つの抗体又はその抗原結合断片、請求項8に記載の少なくとも1つの核酸分子、請求項9に記載の少なくとも1つのベクター、請求項10に記載の少なくとも1つの細胞、又は請求項11から12のいずれかに記載の少なくとも1つの医薬組成物を含むことを特徴とするキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカウイルス(ZIKV)エピトープに特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片に関する。このような抗体は、(i)ジカウイルス(ZIKV)の感染を強力に中和する、又は(ii)NS1 ZIKVに指向し、診断薬として使用することができる。本発明はまた、抗体及び抗原結合断片が結合する抗原性部位、並びに抗体をコードする核酸及びそのような抗体及び抗体断片を産生する不死化B細胞に関する。更に、本発明は、スクリーニング方法並びにZIKV感染の診断、予防、及び治療における本発明の抗体及び抗体断片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジカウイルス(ZIKV)は、蚊が媒介するフラビウイルスであり、公衆衛生上の緊急事態である。ZIKVは、ウガンダのジカ森林で1947年にマカクから最初に単離され(非特許文献1)、1954年にナイジェリアで最初のヒト感染が報告された(非特許文献2)。それ以来、アフリカや東南アジアでは、ZIKV感染が散発的に報告されている(非特許文献3)が、2007年にミクロネシアで(非特許文献4)、2013~14年にフランス領ポリネシアで流行が報告され、その後、大西洋大陸の他の国々にも広がっている(非特許文献5及び非特許文献6)。2015年にブラジルに入った後、ZIKVは急速に広がり、2016年2月に世界保健機関(WHO)は国際問題の公衆衛生緊急事態を宣言した(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。ZIKV感染の主な経路は、ヤブカ(Aedes mosquitos)による刺咬であるが、このウイルスはまた、性的に感染する(非特許文献10)、垂直感染する(非特許文献11)場合もある。ZIKV感染の大部分は、無症候性であるか軽度の症状しか引き起こさないが、ZIKV感染が成人のギラン・バレー症候群などの神経疾患合併症(非特許文献12)及び及び発達中の胎児における小頭症を含む先天性欠陥(非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)に至ることがあるというエビデンスがある。これは、ヒト神経前駆細胞に感染させる能力が高いことが原因である考えられる(非特許文献16)。
【0003】
ZIKVはフラビウイルス属に属し、これは、西ナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、及び脳炎を引き起こす可能性のある他のウイルスも含む。フラビウイルスはエンベロープウイルスであり、正20面体及び球形のジオメトリを有する。直径は約50nmである。ゲノムは線状のプラスセンスRNAであり、非セグメントであり、長さは約10~11kbのである。フラビウイルスのゲノムは、3つの構造タンパク質(カプシド、prM、及びエンベロープ)及び8つの非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、NS5、及びNS5B)をコードする。
【0004】
フラビウイルスエンベロープ(E)タンパク質は融合を媒介し、中和抗体の主な標的であるが、非構造タンパク質1(NS1)は感染細胞によって分泌され、免疫回避及び病因に関与する(非特許文献17)。2つの最近の構造研究は、ZIKVのEタンパク質と、デングウイルス(DENV)、黄熱病ウイルス(YFV)及び西ナイルウイルス(WNV)などの他のフラビウイルスのそれとの間の高い構造的類似性を示したが、ZIKV神経栄養と関連している可能性があるユニークな特徴も示した(非特許文献18;非特許文献19)。同様に、ZIKV NS1の構造解析は、異なる静電特性を示すものの、他のフラビウイルスのNS1とで保存された特性を示した(非特許文献20)。
【0005】
特定のフラビウイルスの特徴である現象は、異種ウイルスによる過去の感染によって惹起された交差反応性抗体の疾患増強活性である。4つの血清型が知られているデングウイルス(DENV)の場合、一次感染が同じ血清型による再感染から防御するが、異なる血清型による再感染時に重症疾患の発症の危険因子であるという疫学的証拠がある(非特許文献21)。疾患の悪化が、侵入するウイルスを中和することができないが、その代わりにFc受容体発現(FcR+)細胞によるその捕捉を高め、ウイルス複製及び交差反応性記憶T細胞の活性化をもたらすE及びprM特異的抗体によって引き起こされる。その結果として生じるサイトカインストームが、デング出血熱/デングショック症候群として知られる最も重篤な形態の疾患の基礎であると考えられる(非特許文献22;非特許文献23)。重度のデング熱における抗体の役割は、乳児における母体抗体の減少レベルが重度のデング熱の発生のリスクが高いことを示す研究によって裏付けられている(非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27)。
【0006】
最近、DENVエンベロープタンパク質に反応する大部分の抗体がZIKVに結合するが、主要線状融合ループエピトープ(FLE)を認識する抗体はZIKVを中和せず、代わりにZIKV感染の抗体依存性増強(ADE)を促進することが示された(非特許文献28)。
【0007】
更に、WHOによれば、小頭症及びジカウイルス感染に潜在的に関連する他の神経学的障害の症例数の最近の増加は、ジカウイルス感染を検出するための実験室での検査の需要の高まりを後押ししている。この文脈において、ZIKV感染を他のフラビウイルスの感染と区別するためには、抗体の高い特異性が必要である。しかし、知られた抗ジカ抗体は、典型的には、他のフラビウイルスに対して交差反応性であり、したがって、ZIKV感染を他のフラビウイルスの感染と区別するのに有用ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】G. W. A. Dick, S. F. Kitchen, A. J. Haddow, Zika virus. I. Isolations and serological specificity. Trans. R. Soc. Trop. Med. Hyg. 46, 509-520 (1952)
【文献】F. N. Macnamara, Zika virus: a report on three cases of human infection during an epidemic of jaundice in Nigeria. Trans. R. Soc. Trop. Med. Hyg. 48, 139-145 (1954)
【文献】D. Musso, Van Mai Cao-Lormeau, D. J. Gubler, Zika virus: following the path of dengue and chikungunya? The Lancet. 386, 243-244 (2015)
【文献】M. R. Duffy et al., Zika virus outbreak on Yap Island, Federated States of Micronesia. N Engl J Med. 360, 2536-2543 (2009)
【文献】V.-M. Cao-Lormeau, D. Musso, Emerging arboviruses in the Pacific. Lancet. 384, 1571-1572 (2014)
【文献】D. Musso, E. J. Nilles, V.-M. Cao-Lormeau, Rapid spread of emerging Zika virus in the Pacific area. Clin. Microbiol. Infect. 20, O595-6 (2014)
【文献】L. R. Baden, L. R. Petersen, D. J. Jamieson, A. M. Powers, M. A. Honein, Zika Virus. N. Engl. J. Med. 374, 1552-1563 (2016)
【文献】A. S. Fauci, D. M. Morens, Zika Virus in the Americas - Yet Another Arbovirus Threat. N Engl J Med, 160113142101009 (2016)
【文献】D. L. Heymann et al., Zika virus and microcephaly: why is this situation a PHEIC? Lancet. 387, 719-721 (2016)
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【文献】G. Calvet, R. S. Aguiar, A. Melo, S. A. Sampaio, Detection and sequencing of Zika virus from amniotic fluid of fetuses with microcephaly in Brazil: a case study. Lancet Infect Dis (2016), doi:10.1016/s1473-3099(16)00095-5
【文献】J. Mlakar et al., Zika Virus Associated with Microcephaly. N Engl J Med. 374, 951-958 (2016)
【文献】E. J. Rubin, M. F. Greene, L. R. Baden, Zika Virus and Microcephaly. N Engl J Med (2016), doi:10.1056/NEJMe1601862
【文献】H. Tang et al., Zika Virus Infects Human Cortical Neural Progenitors and Attenuates Their Growth. Stem Cell, 1-5 (2016)
【文献】D. A. Muller, P. R. Young, The flavivirus NS1 protein: molecular and structural biology, immunology, role in pathogenesis and application as a diagnostic biomarker. Antiviral Res. 98, 192-208 (2013)
【文献】L. Dai et al., Structures of the Zika Virus Envelope Protein and Its Complex with a Flavivirus Broadly Protective Antibody. Cell Host Microbe (2016), doi:10.1016/j.chom.2016.04.013
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【文献】J. Kim et al., Zika virus NS1 structure reveals diversity of electrostatic surfaces among flaviviruses, 1-6 (2016)
【文献】S. B. Halstead, Dengue Antibody-Dependent Enhancement: Knowns and Unknowns. Microbiol Spectr. 2, 249-271 (2014)
【文献】S. B. Halstead, Neutralization and antibody-dependent enhancement of dengue viruses. Adv Virus Res. 60, 421-467 (2003)
【文献】G. Screaton, J. Mongkolsapaya, S. Yacoub, C. Roberts, New insights into the immunopathology and control of dengue virus infection. Nat Rev Immunol. 15, 745-759 (2015)
【文献】S. B. Halstead, Neutralization and antibody-dependent enhancement of dengue viruses. Adv Virus Res. 60, 421-467 (2003)
【文献】S. B. Halstead et al., Dengue hemorrhagic fever in infants: research opportunities ignored. Emerging Infect Dis. 8, 1474-1479 (2002)
【文献】T. H. Nguyen et al., Dengue hemorrhagic fever in infants: a study of clinical and cytokine profiles. J Infect Dis. 189, 221-232 (2004)
【文献】A. L. Rothman, Dengue: defining protective versus pathologic immunity. J Clin Invest. 113, 946-951 (2004)
【文献】Dejnirattisai W, Supasa P, Wongwiwat W, Rouvinski A, Barba-Spaeth G, Duangchinda T, Sakuntabhai A, Cao-Lormeau VM, Malasit P, Rey FA, Mongkolsapaya J, Screaton GR: Dengue virus sero-cross-reactivity drives antibody-dependent enhancement of infection with zika virus. Nat Immunol. 2016 Jun 23. doi: 10.1038/ni.3515. [Epub ahead of print]
【0009】
前記に鑑みて、本発明の目的は、ZIKVエピトープに特異的に結合する新規抗体を提供することである。本発明の目的は、また、強力に中和する抗ZIKV抗体を提供することである。そのような抗体は、好ましくは、ジカウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)に寄与しない。また、本発明の目的は、ZIKV感染の診断及び検査に有用な高度に特異的な抗ZIKV抗体及びそのような抗体を用いる診断方法を提供することである。
【0010】
本発明の根底にある目的は、特許請求される主題によって解決される。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコル、及び試薬に、これらは変わる可能性があるので、限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。特段の断りがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0012】
以下に、本発明の要素について説明する。これら要素は、具体的な実施形態と共に列挙されるが、これらを任意の方式で任意の数組み合わせて更なる実施形態を生み出すことができることを理解すべきである。様々に記載される実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載される実施形態に限定することを意図するものではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態をサポート及び包含すると理解すべきである。更に、特に指定しない限り、本願における全ての記載された要素の任意の入れ換え及び組合せが本願の記載によって開示されるとみなすべきである。
【0013】
本明細書及びその後に続く特許請求の範囲全体を通して、特に必要としない限り、用語「含む」並びに「含み」及び「含んでいる」等の変形は、指定されている部材、整数、又は工程を含むが、任意の他の指定されていない部材、整数、又は工程を除外するものではないことを意味すると理解される。用語「からなる」は、任意の他の指定されていない部材、整数、又は工程が除外される、用語「含む」の具体的な実施形態である。本発明において、用語「含む」は、用語「からなる」を包含する。したがって、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」及び「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなっていてもよく、追加の何かを含んでいてもよい(例えば、X+Y)。
【0014】
用語「a」及び「an」及び「the」、並びに本発明の説明(特に、特許請求の範囲)において使用される同様の参照は、本明細書に指定されているか又は文脈上明示的に否定されていない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲内の各別個の値を個別に参照する簡易的な方法として機能することを意図する。本明細書において特に指定しない限り、各個別の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。明細書中のいずれの言語も、本発明の実施に必須の任意の請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0015】
用語「実質的に」は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含んでいなくてもよい。必要な場合、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略されることもある。
【0016】
数値xに関連する用語「約」は、x±10%を意味する。
【0017】
用語「疾患」は、本明細書で使用するとき、ヒト若しくは動物の身体又は正常な機能が損なわれているその部分のうちの1つの異常な状態を全て反映し、典型的には、識別可能な徴候及び症状によって顕在化し、且つヒト又は動物の寿命又は生活の質を低減するという点で、用語「疾病」及び(健康状態のような)「状態」と略同義であることを意図し、互換的に使用される。
【0018】
本明細書で使用するとき、被験体又は患者の「治療」に対する言及は、防止、予防、軽減、寛解、及び療法を含むことを意図する。用語「被験体」又は「患者」は、本明細書では互換的に使用されて、ヒトを含む全ての哺乳類を意味する。被験体の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、及びウサギが挙げられる。一実施形態では、患者はヒトである。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「抗原結合断片」、「断片」、及び「抗体断片」は、抗体の抗原結合活性を保持している本発明の抗体の任意の断片を指すために互換的に使用される。抗体断片の例としては、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvが挙げられるが、これらに限定されない。更に、用語「抗体」は、本明細書で使用するとき、抗体及びその抗原結合断片の両方を含む。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、本発明に係る特徴的な性質が保持されている限り、抗体全体、抗体断片、具体的には、抗原結合断片、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、組み換え抗体、及び遺伝子操作された抗体(変異体又は突然変異抗体)を含むがこれらに限定されない様々な形態の抗体を包含する。ヒト抗体及びモノクローナル抗体が好ましく、ヒトモノクローナル抗体、具体的には、組み換えヒトモノクローナル抗体が特に好ましい。
【0021】
ヒト抗体は、当技術分野において周知である(van Dijk,M.A.,and van de Winkel,J.G.,Curr.Opin.Chem.Biol.5(2001)368-374)。ヒト抗体は、免疫時に、内因性免疫グロブリンが産生されていなくてもヒト抗体の完全レパートリー又はセレクションを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)においても産生され得る。かかる生殖系列突然変異体マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを移植すると、抗原チャレンジ時にヒト抗体が産生される(例えば、Jakobovits,A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)2551-2555;Jakobovits,A.,et al.,Nature 362(1993)255-258;Bruggemann,M.,et al.,Year Immunol.7(1993)3340を参照)。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリでも産生され得る(Hoogenboom,H.R.,and Winter,G.,J.Mol.Biol.227(1992)381-388;Marks,J.D.,et al.,J.Mol.Biol.222(1991)581-597)。Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用可能である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);及びBoerner,P.,et al.,J.Immunol.147(1991)86-95)。好ましくは、ヒトモノクローナル抗体は、Traggiai E,Becker S,Subbarao K,Kolesnikova L,Uematsu Y,Gismondo MR,Murphy BR,Rappuoli R,Lanzavecchia A.(2004):An efficient method to make human monoclonal antibodies from memory B cells:potent neutralization of SARS coronavirus.Nat Med.10(8):871-5に記載の通り、改善されたEBV-B細胞の不死化を使用することによって調製される。用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用するとき、本明細書に記載されている本発明に係る性質を生じさせるために、例えば可変領域が改変されたかかる抗体も含む。本明細書で使用するとき、用語「可変領域」(軽鎖(VL)の可変領域、重鎖(VH)の可変領域)は、抗体の抗原に対する結合に直接関与する軽鎖及び重鎖の各対を意味する。
【0022】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG、IgM、即ち、α、γ、又はμ重鎖)であってよいが、好ましくは、IgGである。IgGアイソタイプの中でも、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のサブクラスであってよく、IgG1が好ましい。本発明の抗体は、κ又はλ軽鎖を有していてよい。
【0023】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、精製抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvである。
【0024】
したがって、本発明の抗体は、好ましくは、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、組み換え抗体、又は精製抗体であってよい。また、本発明は、本発明の抗体の断片、特に、前記抗体の抗原結合活性を保持している断片を提供する。かかる断片としては、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvを含むが、これらに限定されない。特許請求の範囲を含む明細書は、一部の箇所では、抗体の抗原結合断片、抗体断片、変異体、及び/又は誘導体に明示的に言及するが、用語「抗体」又は「本発明の抗体」は、抗体の全てのカテゴリー、即ち、抗体の抗原結合断片、抗体断片、変異体、及び誘導体を含むことが理解される。
【0025】
本発明の抗体の断片は、酵素、例えばペプシン若しくはパパインによる切断を含む方法によって、及び/又は化学還元によりジスルフィド結合を切断することによって前記抗体から得ることができる。或いは、抗体の断片は、重鎖又は軽鎖の配列の一部のクローニング及び発現によって得ることができる。抗体「断片」は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片を含む。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖に由来する単鎖Fv断片(scFv)を包含する。例えば、本発明は、本発明の抗体由来のCDRを含むscFvを含む。また、重鎖又は軽鎖の単量体及び二量体、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体に加えて、単鎖抗体、例えば、重鎖及び軽鎖の可変ドメインがペプチドリンカーによって結合している単鎖Fvも含まれる。
【0026】
本発明の抗体断片は、一価又は多価相互作用を付与し得、上記様々な構造に含有され得る。例えば、scFv分子を合成して、三価「トリアボディ」又は四価「テトラボディ」を作製することができる。scFv分子は、Fc領域のドメインを含んでいてよく、その結果、二価ミニボディが生じる。更に、本発明の配列は、本発明の配列が本発明のエピトープを標的とし、分子の他の領域が他の標的に結合する多重特異的分子の成分であってよい。例示的な分子としては、二重特異的Fab2、三重特異的Fab3、二重特異的scFv、及びダイアボディが挙げられるが、これらに限定されない(Holliger and Hudson,2005,Nature Biotechnology 9:1126-1136)。
【0027】
本発明に係る抗体は、精製形態で提供されてもよい。典型的には、抗体は、他のポリペプチドを実質的に含まない組成物、例えば、前記組成物の90(重量)%未満、通常60%未満、より通常は50%未満が他のポリペプチドで構成される組成物中に存在する。
【0028】
本発明に係る抗体は、ヒト及び/又は非ヒト(又は異種)宿主、例えば、マウスにおいて免疫原性であり得る。例えば、前記抗体は、非ヒト宿主では免疫原性であるが、ヒト宿主では免疫原性でないイディオトープを有し得る。ヒトで使用するための本発明の抗体は、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳類等の宿主から容易には単離することができず、且つ一般的にヒト化によって又はゼノマウスから入手することができないものを含む。
【0029】
本明細書で使用するとき、「中和抗体」は、宿主において感染を開始及び/又永続化させる病原体の能力を中和する、即ち、予防、阻害、低減、妨害、又は干渉することができるものである。用語「中和抗体」及び「中和する抗体」は、本明細書では互換的に使用される。これら抗体は、単独で使用してもよく、適切な製剤化に際して予防剤又は治療剤として、能動的ワクチン接種に関連して、診断ツールとして、又は本明細書に記載される生産ツールとして組み合わせて使用してもよい。
【0030】
用量は、多くの場合、体重に関連して表される。したがって、[g、mg、又は他の単位]/kg(又はg、mg等)として表される用量は、たとえ用語「体重」が明示的に言及されていないとしても、通常「体重1kg(又はg、mg等)当たりの」[g、mg、又は他の単位]を指す。
【0031】
用語「特異的結合」及び類似の参照は、非特異的固着を包含しない。
【0032】
用語「ワクチン」とは、本明細書で使用するとき、典型的には、少なくとも1つの抗原、好ましくは免疫原を提供する予防又は治療的物質であると理解される。抗原又は免疫原は、ワクチン接種に好適な任意の物質に由来し得る。例えば、抗原又は免疫原は、細菌若しくはウイルス粒子等の病原体、又は腫瘍若しくは癌性組織に由来し得る。抗原又は免疫原は、身体の適応免疫系を刺激して適応免疫応答を提供する。具体的には、「抗原」又は「免疫原」は、典型的には、免疫系、好ましくは適応免疫系によって認識され得、且つ例えば、適応免疫応答の一部として抗体及び/又は抗原特異的T細胞を形成することによって、抗原特異的免疫応答を誘発することができる物質を指す。典型的には、抗原は、MHC又はT細胞によって提示され得るペプチド又はタンパク質であってもよく、これらを含んでいてもよい。
【0033】
本明細書で使用するとき、「配列変異体」(「変異体」とも称する)は、レファレンス配列における任意の変化を指し、レファレンス配列は、「配列の表及び配列番号」(配列表)に列挙されている配列、即ち、配列番号1~配列番号407のいずれかである。したがって、用語「配列変異体」は、ヌクレオチド配列変異体及びアミノ酸配列変異体を含む。注目すべきは、本明細書に記載される配列変異体は、特に、機能的配列変異体、即ち、例えば抗体の生物学的機能を維持する配列変異体である。本発明の文脈において、そのような維持された生物学的機能は、好ましくは、ZIKV感染の中和、ZIKV Eタンパク質への抗体の結合、及び/又はZIKV NS1タンパク質への抗体の結合である。したがって、好ましい配列変異体は、参照配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する機能的配列変異体である。本明細書に使用される表現「少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する機能的配列変異体」という表現は、(i)配列変異体が本明細書に記載されるように機能的であり、かつ(ii)%配列同一性が高いほど、より好ましい配列変異体であることを意味する。換言すれば、表現「少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する機能的配列変異体」は、特に、機能的配列改変体がそれぞれの参照配列に対して少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも88%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも90%の配列同一性、、更により好ましくは少なくとも92%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも95%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも96%の配列同一性、特に好ましくは少なくとも97%の配列同一性、特に好ましくは少なくとも98%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有することを意味する。
【0034】
用語「配列変異体」は、特に、参照配列と比較して突然変異及び/又は置換を含むそのような変異体を含む。Fc部分配列の例示的な変異体には、CH2 4、CH2 5、又はその両方の位置でLからAへの置換を有するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
配列同一性は、通常、レファレンス配列(即ち、本願に列挙される配列)の完全長に対して計算される。本明細書において言及するとき、同一性パーセントは、例えば、NCBI(the National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定されたデフォルトパラメータ[Blosum62マトリクス;ギャップオープンペナルティ=11、及びギャップエクステンションペナルティ=1]を用いるBLASTを使用して決定することができる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「ヌクレオチド配列変異体」は、レファレンス配列におけるヌクレオチドのうちの1以上が欠失若しくは置換されているか、又は1以上のヌクレオチドがレファレンスヌクレオチド配列の配列に挿入されている、変化した配列を有する。ヌクレオチドは、標準的な一文字表記(A、C、G、又はT)によって本明細書に言及される。遺伝子コードの縮重に起因して、「ヌクレオチド配列変異体」は、それぞれのレファレンスアミノ酸配列を変化させる、即ち、「アミノ酸配列変異体」を生じさせる場合もあり、そうではない場合もある。好ましい配列変異体は、アミノ酸配列変異体を生じさせない(サイレント突然変異)ヌクレオチド配列変異体である。しかし、他の非サイレント突然変異も範囲内であり、具体的には、レファレンスアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一のアミノ酸配列を生じさせる、突然変異ヌクレオチド配列も範囲内である。
【0037】
「アミノ酸配列変異体」は、レファレンスアミノ酸におけるアミノ酸のうちの1以上が欠失、置換、又は1以上のアミノ酸がレファレンスアミノ酸配列の配列に挿入されている、変化した配列を有する。変化の結果、アミノ酸配列変異体は、レファレンス配列と少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一、最も好ましくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する。少なくとも90%同一の変異体配列は、レファレンス配列の100アミノ酸当たり10以下の変化、即ち、欠失、挿入、又は置換の任意の組合せを有する。
【0038】
非保存的アミノ酸置換を有することが可能であるが、置換は、置換されたアミノ酸がレファレンス配列における対応するアミノ酸と類似の構造的又は化学的性質を有する保存的アミノ酸置換であることが好ましい。一例として、保存的アミノ酸置換は、ある脂肪族又は疎水性のアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、及びイソロイシン)の別の脂肪族又は疎水性のアミノ酸による置換;あるヒドロキシル含有アミノ酸(例えば、セリン及びトレオニン)の別のヒドロキシル含有アミノ酸による置換;ある酸性残基(例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸)の別の酸性残基による置換;あるアミド含有残基(例えば、アスパラギン及びグルタミン)の別のアミド含有残基による置換;ある芳香族残基(例えば、フェニルアラニン及びチロシン)の別の芳香族残基による置換;ある塩基性残基(例えば、リジン、アルギニン、及びヒスチジン)の別の塩基性残基による置換;並びにある小アミノ酸(例えば、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン、及びグリシン)の別の小アミノ酸による置換を含む。
【0039】
アミノ酸配列の挿入は、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドに及ぶ長さの範囲のアミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、アミノ酸配列のN又はC末端のレポーター分子又は酵素への融合が挙げられる。
【0040】
重要なことに、配列変異体における変化は、それぞれのレファレンス配列の機能、本願の場合、例えば、抗体又はその抗原結合断片の配列が同じエピトープに結合する及び/又はZIKVの感染を十分に中和する機能を消失させるものではない。かかる機能を消失させることなしにそれぞれどのヌクレオチド及びアミノ酸残基を置換、挿入、又は欠失させることができるかを決定するための指針は、当技術分野において周知のコンピュータプログラムを使用することによって見出される。
【0041】
本明細書で使用するとき、指定の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に「由来する」核酸配列又はアミノ酸配列は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の起源を指す。好ましくは、特定の配列に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、これらが由来する配列又はその一部と本質的に同一のアミノ酸配列を有し、「本質的に同一」とは、上に定義した配列変異体を含む。好ましくは、特定のペプチド又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、特定のペプチド又はタンパク質における対応するドメインに由来する。それに関して、「対応する」とは、特に、同じ機能に言及する。例えば、「細胞外ドメイン」は、(別のタンパク質の)別の「細胞外ドメイン」に対応する、又は「膜貫通ドメイン」は、(別のタンパク質の)別の「膜貫通ドメイン」に対応する。したがって、ペプチド、タンパク質、及び核酸の「対応する」部分は、当業者によって容易に同定可能である。同様に、他の配列に「由来する」配列は、通常、前記配列中にその起源を有することが当業者によって容易に同定可能である。
【0042】
好ましくは、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質と同一であり得る。しかし、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に対して1以上の突然変異を有していてもよく、具体的には、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の上記機能性配列変異体であってよい。例えば、ペプチド/タンパク質において、1以上のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基で置換してもよく、1以上のアミノ酸残基の挿入又は欠失が生じていてもよい。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「突然変異」は、レファレンス配列、例えば、対応するゲノム配列と比較した、核酸配列及び/又はアミノ酸配列の変化に関する。例えばゲノム配列と比較した突然変異は、(自然界に存在する)体細胞突然変異、自然突然変異、例えば、酵素、化学物質、若しくは放射線によって誘導される誘導突然変異、又は部位特異的突然変異誘発(核酸配列及び/又はアミノ酸配列を特異的且つ故意に変化させるための分子生物学的方法)によって得られる突然変異であってよい。したがって、用語「突然変異」又は「突然変異する」とは、例えば、核酸配列及び/又はアミノ酸配列において突然変異を物理的に作製することも含むと理解されるものとする。突然変異は、1以上のヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、及び挿入に加えて、幾つかの連続するヌクレオチド又はアミノ酸の逆位も含む。アミノ酸配列に突然変異を生じさせるために、好ましくは、(組み換え)突然変異型ポリペプチドを発現させるために、前記アミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列に突然変異を導入してよい。突然変異は、例えば、あるアミノ酸をコードしている核酸分子のコドンを、例えば部位特異的突然変異誘発によって、変化させて異なるアミノ酸をコードしているコドンを生じさせることにより、又は核酸分子の1以上のヌクレオチドを突然変異させる必要無しに、ポリペプチドをコードしている核酸分子のヌクレオチド配列を理解し、ポリペプチドの変異体をコードしているヌクレオチド配列を含む核酸分子の合成を設計することによって、配列変異体を合成することにより行ってよい。
【0044】
本明細書の本文中には幾つかの文献が引用されている。本明細書中に引用した各文献(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造者の明細書、指示書などを含む)は、上記又は下記のいずれかにかかわらず、参照によりその全体を本明細書に援用する。本明細書中のいかなるものも、本発明が、先行する発明によってそのような開示よりも先行する資格がないと認めるものとして解釈されるものではない。
【0045】
本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコル、及び試薬に、これらは変わる可能性があるので、限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ用いられるのであって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。特段の断りがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0046】
ジカウイルス感染を強力に中和する抗体
本発明は、他の知見の中でも特に、ジカウイルスエピトープに特異的に結合する抗体の発見及び単離に基づく。このような抗体は、(i)ジカウイルスエンベロープ(E)タンパク質又はZIKV四次エピトープの抗原性部位に指向する場合、ジカウイルスを非常に強力に中和するか、又は(ii)ジカウイルスNS1タンパク質に指向する場合、ジカウイルス感染の診断に有用である。このような抗体は、ジカウイルスを中和するために少量の抗体しか必要としないので望ましい。特に、現在のところ、ジカウイルス感染に対して利用可能な予防/治療はない。本発明に係る抗体は、ジカウイルス感染の予防及び治療又は減弱において非常に有効である。更に、ジカウイルスに対する抗体の特異性のために、それらはADEを誘発せず、むしろADEを遮断する。診断において、Zika特異的抗体は、ジカウイルス感染を、デングウイルスなどの他のフラビウイルスによる感染から区別するための重要なツールを提供する。
【0047】
第1の態様において、本発明は、ジカウイルスエピトープに特異的に結合し、ジカウイルス感染を中和する、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。換言すれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルスのウイルス感染性を低下させる。
【0048】
実験室でウイルス感染性(又は「中和」)を研究及び定量するために、当業者は様々な標準的な「中和アッセイ」を知っている。中和アッセイのために、動物ウイルスを、典型的には、細胞及び/又は細胞系において増殖させる。本発明の文脈では、試験される抗体の存在下(又は非存在下)で培養細胞を一定量のジカウイルス(ZIKV)と共にインキュベートする中和アッセイが好ましい。例えば、リードアウトとして、フローサイトメトリを使用することができる。或いは、他のリードアウトも考えられ、例えば、培養上清中に分泌されるZIKV非構造タンパク質(例えば、ZIKV NS1)の量を測定するなどがある。例えば、ZIKV非構造タンパク質1(NS1)抗原捕捉酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)に基づく組織培養感染用量50(TCID50)試験(TCID50-ELISA)を、ジカウイルスを滴定するために、標準プラークアッセイに代えて使用することができる。これは、デングウイルス(DENV)の場合について次の文献に記載されているのと同様にして行われる:Li J, Hu D-M, Ding X-X, Chen Y, Pan Y-X, Qiu L-W, Che X-Y: Enzyme-linked immunosorbent assay-format tissue culture infectious dose-50 test for titrating dengue virus. PLoS ONE 2011, 6:e22553。このようなアッセイには、例えば、本願に記載のZIKV NS1結合抗体を有利に使用することができる。
【0049】
ZIKV中和アッセイの好ましい実施形態では、培養細胞、例えばVero細胞を、試験すべき抗体の存在下又は非存在下で、例えば約4日間、一定量のZIKVと共にインキュベートする。インキュベート後、細胞を洗浄し、更に培養することができる。ウイルスの感染性を測定するために、フローサイトメトリを使用することができる。この目的のために、例えば2%ホルムアルデヒドで細胞を固定し、例えばPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)中1%FCS(ウシ胎仔血清)0.5%サポニンを透過させ、例えばマウス抗体4G2で染色することができる。次いで、細胞を、Alexa Fluor488などの染料にコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgGとインキュベートし、フローサイトメトリで分析することができる。或いは、生細胞を、例えばWST-1試薬(Roche)を用いるフローサイトメトリによって検出することができる。そのような中和アッセイに使用される好ましいZIKV株は、ZIKV H/PF/2013である。
【0050】
本発明の抗体及び抗原結合断片は、高い中和力を有する。無抗体対照と比較して、ジカウイルスの50%中和に必要な抗体の濃度(IC50)は、例えば、最大約3μg/ml又は最大約1μg/mlである。好ましくは、ZIKVの50%中和に必要な本発明の抗体の濃度(IC50)は、最大約500ng/mlであり、より好ましくはZIKVの50%中和に必要な本発明の抗体の濃度(IC50)は、最大約250ng/mlであり、更により好ましくはZIKVの50%中和に必要な本発明の抗体の濃度(IC50)は、最大約150ng/mlである。最も好ましくは、ZIKVの50%中和に必要な本発明の抗体の濃度(IC50)は、約100ng/ml以下、例えば約90ng/ml以下、約80ng/ml以下、約70ng/ml以下、約60ng/ml以下、約50ng/ml以下、約45ng/ml以下、約40ng/ml以下、約35ng/ml以下、約30ng/ml以下、約25ng/ml以下、約20ng/ml以下、又は特に好ましくは約15ng/ml以下である。特に、ZIKVの50%中和に必要な本発明の抗体の濃度(IC50)は、好ましくは約50ng/ml以下である。これは、ZIKVの50%中和には、ごく低濃度の抗体しか必要とさらないことを意味する。ZIKVの50%中和に必要とされる本発明の抗体の濃度(IC50)は、当業者に知られている標準中和アッセイを用いて、又は特に上述のようにして測定することができる。
【0051】
一般に、抗体の結合は、当業者によく知られた標準的なELISA(酵素結合免疫吸着測定法)の使用によって評価することができる。例示的な標準的ELISAは、以下のように行うことができる。ELISAプレートを、それに対する抗体の結合が試験される例えばPBS中のタンパク質/複合体/粒子(例えば、以下に説明するDENV結合の場合、DENV Eタンパク質及び/又はDENV VLPを使用する)の十分量(例えば、1μg/ml)でコーティングする(例えば、4℃で一晩)。次いで、プレートを、PBS中のウシ血清アルブミン(BSA)の1%w/v溶液でブロッキングし、試験する抗体と共にインキュベートする(例えば、室温で約1.5時間)。洗浄後、例えば、アルカリホスファターゼと結合されたヤギ抗ヒトIgGを使用して抗体の結合を調べることができる。その後、プレートを洗浄し、必要な基質(例えば、p-NPP)を加え、プレートを、例えば405nmで読み取ることができる。抗体結合の相対的親和性は、飽和時の最大結合の50%を達成するために必要なmAb(EC50)の濃度を測定することによって決定することができる。EC50値は、可変スロープを有する4パラメータ非線形回帰を適用した結合曲線の補間によって計算することができる。
【0052】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、デングウイルス様粒子及び/又はデングエンベロープタンパク質に本質的に結合しない。より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、デングウイルス様粒子及び/又は4つのDENV血清型DENV1、DENV2、DENV3、及びDENV4のいずれかのデングエンベロープタンパク質に本質的に結合しない。「本質的に結合しない」とは、抗体又はその抗原結合性フラグメントについて、デングウイルス様粒子(DENV VLP)及び/又はデングエンベロープタンパク質(DENV Eタンパク質)に対する標準的ELISAにおいて、102ng/mlまで、好ましくは103ng/mlまで、より好ましくは5×103ng/mlまで、より好ましくは8×103ng/mlまで、最も好ましくは104ng/mlまで、EC50値を測定できないことを意味する。換言すれば、標準的ELISAにおけるデングウイルス様粒子(DENV VLP)及び/又はデングエンベロープタンパク質(DENV Eタンパク質)に対する飽和時の最大結合の50%(EC50)を達成するために必要な抗体又はその抗原結合断片の濃度は、典型的には102ng/ml超、好ましくは103ng/ml超、より好ましくは5×103ng/ml超、更により好ましくは8×103ng/ml超、最も好ましくは104ng/ml超である。
【0053】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントは、ジカウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)に寄与しない。より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)をブロックする。
【0054】
ADEは、例えば培養細胞又はK562細胞などの細胞株を用いるフローサイトメトリに基づくアッセイによって評価することができる。例えば、試験すべき抗体及びZIKVを37℃で1時間混合し、5000個のK562細胞/ウェルに加えることができる。4日間後、細胞を固定し、透過させ、m4G2で染色する。これは、例えば、中和アッセイについて前述した通りである。感染細胞数は、中和アッセイについて前述したように、フローサイトメトリによって測定した。
【0055】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体である。また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、好ましくはヒトモノクローナル抗体である。更に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、組換え抗体であることも好ましい。
【0056】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、Fc部分を含む。より好ましくは、Fc部分は、ヒト起源、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、及び/又はIgG4に由来し、ヒトIgG1が特に好ましい。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「Fc部分」とは、パパイン切断部位の直ぐ上流のヒンジ領域(例えば、重鎖定常領域の最初の残基が114であるとすると、ネイティブIgGにおける残基216)で始まり、免疫グロブリン重鎖のC末端で終わる免疫グロブリン重鎖の部分に由来する配列を指す。したがって、Fc部分は、完全Fc部分又はその一部(例えば、ドメイン)であってよい。完全Fc部分は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン(例えば、EUアミノ酸位置216~446)を少なくとも含む。時に、追加のリジン残基(K)がFc部分のC末端に存在するが、多くの場合、成熟抗体から切断される。Fc部分内のアミノ酸位置には、それぞれ、当技術分野において認識されているKabatのEU付番システムに従って番号が振られている。例えば、Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,U.S.Dept.Health and Human Services,1983 and 1987を参照。
【0058】
好ましくは、本発明において、Fc部分は、ヒンジ(例えば、上方、中央、及び/又は下方ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はこれらの変異体、一部、若しくは断片のうちの少なくとも1つを含む。好ましい実施形態では、Fc部分は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン又はCH3ドメインを少なくとも含む。より好ましくは、Fc部分は、完全Fc部分である。また、Fc部分は、天然Fc部分に対して1以上のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を含んでいてもよい。例えば、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、又はCH3ドメイン(又はこれらの一部)のうちの少なくとも1つが欠失していてもよい。例えば、Fc部分は、(i)CH2ドメイン(又はその一部)に融合しているヒンジドメイン(又はその一部)、(ii)CH3ドメイン(又はその一部)に融合しているヒンジドメイン(又はその一部)、(iii)CH3ドメイン(又はその一部)に融合しているCH2ドメイン(又はその一部)、(iv)ヒンジドメイン(又はその一部)、(v)CH2ドメイン(又はその一部)、又は(vi)CH3ドメイン又はその一部を含んでいてもよく、これらからなっていてもよい。
【0059】
天然Fc部分によって付与される少なくとも1つの望ましい機能を保持しながら、天然免疫グロブリン分子の完全Fc部分とアミノ酸配列が異なるようにFc部分を改変し得ることを当業者であれば理解するであろう。かかる機能としては、Fc受容体(FcR)の結合、抗体の半減期の変更、ADCC機能、プロテインAの結合、プロテインGの結合、及び補体の結合が挙げられる。天然Fc部分のどこがかかる機能に関与する及び/又は必須であるかは、当業者に周知である。
【0060】
例えば、補体カスケードを活性化するために、C1qは、抗原性標的に結合している少なくとも2分子のIgG1又は1分子のIgMに結合する(Ward,E.S.,and Ghetie,V.,Ther.Immunol.2(1995)77-94)。Burton,D.R.は、アミノ酸残基318~337を含む重鎖領域が補体結合に関与していると記載している(Mol.Immunol.22(1985)161-206)。Duncan,A.R.及びWinter,G.(Nature 332(1988)738-740)は、部位特異的突然変異誘発を使用して、Glu318、Lys320、及びLys322がC1qに対する結合部位を形成すると報告した。C1qの結合におけるGlu318、Lys320、及びLys322残基の役割は、これら残基を含有する短い合成ペプチドが補体媒介性溶解を阻害する能力によって確認された。
【0061】
例えば、FcR結合は、造血細胞における特殊な細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)と(抗体の)Fc部分との相互作用によって媒介され得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、抗体でコーティングされた病原体の免疫複合体の食作用による除去と、抗体依存性細胞媒介細胞傷害作用(ADCC;Van de Winkel,J.G.,and Anderson,C.L.,J.Leukoc.Biol.49(1991)511-524)を介する、対応する抗体でコーティングされた赤血球及び様々な他の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解とを両方媒介することが示されている。FcRは、免疫グロブリンクラスに対する特異性によって定義される;IgG抗体に対するFc受容体はFcγRと称され、IgEの場合はFcεRと称され、IgAの場合はFcαRと称され、新生児Fc受容体はFcRnと称される。Fc受容体結合は、例えば、Ravetch,J.V.,and Kinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.9(1991)457-492;Capel,P.J.,et al.,Immunomethods 4(1994)25-34;de Haas,M.,et al.,J Lab.Clin.Med.126(1995)330-341;及びGessner,J.E.,et al.,Ann.Hematol.76(1998)231-248に記載されている。
【0062】
ネイティブIgG抗体のFcドメイン(FcγR)による受容体の架橋は、食作用、抗体依存性細胞傷害作用、及び炎症メディエータの放出を含む広範なエフェクタ機能に加えて、免疫複合体のクリアランス及び抗体産生の調節も誘発する。したがって、受容体の架橋を提供するFc部分(FcγR)が好ましい。ヒトでは、3つのクラスのFcγRが特徴付けられている。即ち、(i)高い親和性で単量体IgGに結合し、マクロファージ、単球、好中球、及び好酸球で発現するFcγRI(CD64);(ii)中~低親和性で複合体化IgGに結合し、広く、特に白血球で発現し、抗体媒介性免疫において中心的な役割を果たすことが知られており、FcγRIIA、FcγRIIB、及びFcγRIICに分類することができ、免疫系において様々な機能を発揮するが、同様の低親和性でIgG-Fcに結合し、これら受容体のエクトドメインが高度に相同であるFcγRII(CD32);並びに(iii)中~低親和性でIgGに結合し、NK細胞、マクロファージ、好酸球、及び幾つかの単球、並びにT細胞でみられ、ADCCを媒介するFcγRIIIA及び好中球で高度に発現するFcγRIIIBの2つのタイプとして存在するFcγRIII(CD16)である。FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)でみられ、殺傷プロセスを活性化することができると考えられる。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすと考えられ、B細胞、マクロファージ、並びに肥満細胞及び好酸球でみられる。重要なことに、全てのFcγRIIBのうちの75%が肝臓でみられる(Ganesan,L.P.et al.,2012:FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes.Journal of Immunology 189:4981-4988)。FcγRIIBは、LSECと呼ばれる肝臓洞様血管内皮及び肝臓のクッパー細胞で多量に発現し、LSECは、小免疫複合体のクリアランスの主な部位である(Ganesan,L.P.et al.,2012:FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes.Journal of Immunology 189:4981-4988)。
【0063】
したがって、本発明では、FcγRIIbに結合することができるかかる抗体及びその抗原結合断片、例えば、FcγRIIbに結合するためのFc部分、特にFc領域を含む抗体、例えば、IgG型抗体が好ましい。更に、Chu,S.Y.et al.,2008:Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies.Molecular Immunology 45,3926-3933によって記載されている通り、突然変異S267E及びL328Fを導入することによってFc部分を改変してFcγRIIBの結合を強化することが可能である。それによって、免疫複合体のクリアランスを強化することができる(Chu,S.,et al.,2014:Accelerated Clearance of IgE In Chimpanzees Is Mediated By Xmab7195,An Fc-Engineered Antibody With Enhanced Affinity For Inhibitory Receptor FcγRIIb.Am J Respir Crit,American Thoracic Society International Conference Abstracts)。したがって、本発明では、特にChu,S.Y.et al.,2008:Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies.Molecular Immunology 45,3926-3933に記載されている通り、突然変異S267E及びL328Fを有する改変されたFc部分を含む係る抗体又はその抗原結合断片が好ましい。
【0064】
B細胞では、更なる免疫グロブリン産生及び例えばIgEクラスへのアイソタイプスイッチを抑制する機能を有すると考えられる。マクロファージでは、FcγRIIBは、FcγRIIAを介して媒介されたとき食作用を阻害する作用を有する。好酸球及び肥満細胞では、b形態は、IgEのその別個の受容体への結合を通してこれら細胞の活性化を抑制するのに役立ち得る。
【0065】
FcγRI結合に関しては、ネイティブIgGにおけるE233~G236、P238、D265、N297、A327、及びP329のうちの少なくとも1つを改変すると、FcγRIへの結合が減少する。233位~236位におけるIgG2残基をIgG1及びIgG4に置換すると、FcγRIへの結合が103倍減少し、抗体感作赤血球に対するヒト単球応答が排除された(Armour,K.L.,et al.Eur.J.Immunol.29(1999)2613-2624)。FcγRII結合に関しては、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292、及びK414のうちの少なくとも1つのIgG突然変異について、FcγRIIAの結合減少がみられる。FcγRIII結合に関しては、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338、及びD376のうちの少なくとも1つの突然変異について、FcγRIIIAへの結合減少がみられる。Fc受容体についてのヒトIgG1における結合部位のマッピング、上述の突然変異部位、並びにFcγIR及びFcγRIIAに対する結合を測定する方法は、Shields,R.L.,et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604に記載されている。
【0066】
重要なFcγRIIに対する結合に関しては、ネイティブIgG Fcの2つの領域、即ち、(i)IgG Fcの下方ヒンジ部位、特に、アミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EU付番)、及び(ii)IgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に、下方ヒンジ領域に隣接する上方CH2ドメイン、例えば、P331の領域におけるループ及び鎖は、FcγRII及びIgGの相互作用にとって重要であると考えられる(Wines,B.D.,et al.,J.Immunol.2000;164:5313-5318)。更に、FcγRIは、IgG Fcにおける同じ部位に結合すると考えられ、一方、FcRn及びプロテインAは、IgG Fcにおける異なる部位(CH2-CH3界面であると考えられる)に結合する(Wines,B.D.,et al.,J.Immunol.2000;164:5313-5318)。
【0067】
例えば、Fc部分は、FcRnの結合又は半減期の延長に必要であることが当技術分野において公知であるFc部分の部分を少なくとも含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。それに代えて又はそれに加えて、本発明の抗体のFc部分は、プロテインAの結合に必要であることが当技術分野において公知である部分を少なくとも含む、及び/又は本発明の抗体のFc部分は、プロテインGの結合に必要であることが当技術分野において公知であるFcc分子の一部を少なくとも含む。好ましくは、保持される機能は、ジカウイルス感染の中和であり、これはFcγRの結合によって媒介されると考えられる。したがって、好ましいFc部分は、FcγRの結合に必要であることが当技術分野において公知である部分を少なくとも含む。したがって、上に概説した通り、好ましいFc部分は、(i)ネイティブIgG Fcの下方ヒンジ部位、特に、アミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EU付番)、及び(ii)ネイティブIgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に、下方ヒンジ領域に隣接する上方CH2ドメイン、例えばP331の領域、例えば、ネイティブIgG Fcのアミノ酸320~340(EU付番)等のP331周辺のネイティブIgG Fcの上方CH2ドメインにおける少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の連続するアミノ酸の領域におけるループ及び鎖を少なくとも含み得る。
【0068】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、Fc領域を含む。本明細書で使用するとき、用語「Fc領域」とは、抗体重鎖の2以上のFc部分によって形成される免疫グロブリンの部分を指す。例えば、Fc領域は、単量体又は「単鎖」Fc領域(即ち、scFc領域)であってよい。単鎖Fc領域は、(例えば、単一の連続する核酸配列にコードされている)単一のポリペプチド鎖内で結合しているFc部分で構成される。例示的なscFc領域は、国際公開第2008/143954 A2号に開示されている。好ましくは、Fc領域は、二量体Fc領域である。「二量体Fc領域」又は「dcFc」は、2つの別個の免疫グロブリン重鎖のFc部分によって形成される二量体を指す。二量体Fc領域は、2つの同一のFc部分のホモ二量体(例えば、天然免疫グロブリンのFc領域)又は2つの非同一のFc部分のヘテロ二量体であってよい。
【0069】
Fc領域のFc部分は、同じ又は異なるクラス及び/又はサブクラスであってよい。例えば、Fc部分は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブクラスの免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン)に由来していてよい。好ましくは、Fc領域のFc部分は、同じクラス及びサブクラスである。しかし、Fc領域(又はFc領域の1以上のFc部分)はキメラであってもよく、キメラFc領域は、異なる免疫グロブリンクラス及び/又はサブクラスに由来するFc部分を含み得る。例えば、二量体又は単鎖Fc領域のFc部分のうちの少なくとも2つは、異なる免疫グロブリンクラス及び/又はサブクラスに由来していてよい。それに加えて又はそれに代えて、キメラFc領域は、1以上のキメラFc部分を含み得る。例えば、キメラFc領域又は部分は、第1のサブクラスの免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来する1以上の部分を含み得るが、一方、Fc領域又は部分の残りは、異なるサブクラスである。例えば、FcポリペプチドのFc領域又は部分は、第1のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4サブクラス)の免疫グロブリンに由来するCH2及び/又はCH3ドメインと、第2のサブクラス(例えば、IgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来するヒンジ領域とを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、第1のサブクラス(例えば、IgG4サブクラス)の免疫グロブリンに由来するヒンジ及び/又はCH2ドメインと、第2のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来するCH3ドメインとを含み得る。例えば、キメラFc領域は、第1のサブクラス(例えば、IgG4サブクラス)の免疫グロブリンに由来するFc部分(例えば、完全Fc部分)と、第2のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来するFc部分とを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、IgG4免疫グロブリンに由来するCH2ドメインと、IgG1免疫グロブリンに由来するCH3ドメインとを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、IgG4分子に由来するCH1ドメイン及びCH2ドメインと、IgG1分子に由来するCH3ドメインとを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、抗体の特定のサブクラスに由来するCH2ドメインの一部、例えば、CH2ドメインのEU292位~340位を含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、IgG4部分に由来するCH2の292位~340位のアミノ酸とIgG1部分に由来するCH2の残りとを含み得る(或いは、CH2の292~340は、IgG1部分に由来し、CH2の残りはIgG4部分に由来していてもよい)。
【0070】
更に、Fc領域又は部分は、(それに加えて又はそれに代えて)例えば、キメラヒンジ領域を含み得る。例えば、キメラヒンジは、例えば、一部はIgG1、IgG2、又はIgG4分子(例えば、上方及び下方の中央ヒンジ配列)に由来し得、一部はIgG3分子(例えば、中央ヒンジ配列)に由来し得る。別の例では、Fc領域又は部分は、一部がIgG1分子に由来し、一部がIgG4分子に由来するキメラヒンジを含み得る。別の例では、キメラヒンジは、IgG4分子由来の上方及び下方ヒンジドメインと、IgG1分子由来の中央ヒンジドメインとを含み得る。かかるキメラヒンジは、例えば、IgG4ヒンジ領域の中央ヒンジドメインにおけるEU228位にプロリン置換(Ser228Pro)を導入することによって作製され得る。別の実施形態では、キメラヒンジは、IgG2抗体に由来するEU233位~236位のアミノ酸及び/又はSer228Pro突然変異を含み得、この場合、ヒンジの残りのアミノ酸は、IgG4抗体由来である(例えば、配列ESKYGPPCPPCPAPPVAGPのキメラヒンジ)。更に、本発明に係る抗体のFc部分において用いることができるキメラヒンジは、米国特許出願第2005/0163783 A1号に記載されている。
【0071】
本発明では、Fc部分又はFc領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来するアミノ酸配列(例えば、ヒトIgG分子由来のFc領域又はFc部分)を含むか又はからなることが好ましい。しかし、ポリペプチドは、別の哺乳類種由来の1以上のアミノ酸を含み得る。例えば、霊長類Fc部分又は霊長類結合部位が被験体ポリペプチドに含まれていてもよい。或いは、1以上のマウスアミノ酸がFc部分又はFc領域に存在していてもよい。
【0072】
好ましくは、本発明に係る抗体は、特に上記Fc部分に加えて、定常領域、特にIgGの定常領域、好ましくはIgG1の定常領域、より好ましくはヒトIgG1の定常領域に由来する他の部分を含む。より好ましくは、本発明に係る抗体は、特に上記Fc部分に加えて、定常領域の他の部分全て、特にIgGの定常領域の他の部分全て、好ましくはIgG1の定常領域の他の部分全て、より好ましくはヒトIgG1の定常領域の他の部分全てを含む。
【0073】
定常領域の特に好ましい配列は、配列番号145~148のアミノ酸配列(配列番号149~152の核酸配列)である。好ましくは、IgG1 CH1-CH2-CH3のアミノ酸配列は、本明細書に記載の配列番号145又はその機能的配列変異体である。更により好ましくは、IgG1 CH1-CH2-CH3のアミノ酸配列は、「LALA」変異が維持されている本明細書に記載の配列番号146又はその機能的配列変異体である。
【0074】
上に概説した通り、本発明に係る特に好ましい抗体は、ヒトIgG1に由来する(完全)Fc領域を含む。より好ましくは、本発明に係る抗体は、特にヒトIgG1に由来する(完全)Fc領域に加えて、IgGの定常領域の他の部分全て、好ましくは、IgG1の定常領域の他の部分全て、より好ましくはヒトIgG1の定常領域の他の部分全ても含む。
【0075】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、ジカウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)は、抗体のFc部分、特にIgG分子の重鎖のFc部分のFc受容体、例えば、宿主細胞上のFcγ受容体への結合によってもたらされると考えられる。したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、Fc部分に1以上の突然変異を含むことが好ましい。突然変異は、抗体のFc受容体(FcR)への結合を低減する、特にFcγ受容体(FcγR)に対する抗体の結合を低減する任意の突然変異であることができる。一方、本発明に係る抗体は、(完全な)Fc部分/Fc領域を含み、FcRnとの相互作用/結合が損なわれないことが好ましい。したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、(i)Fcγ受容体に対する抗体の結合を低減するが、FcRnとの相互作用を損なわせない1以上の突然変異を含むことが特に好ましい。そのような突然変異の一例は、以下に記載される「LALA」突然変異である。
【0076】
一般に、抗体のFc受容体への結合は、当業者に公知の様々な方法、例えばELISA(Hessell AJ, Hangartner L, Hunter M, Havenith CEG, Beurskens FJ, Bakker JM, Lanigan CMS, Landucci G, Forthal DN, Parren PWHI, et al.: Fc receptor but not complement binding is important in antibody protection against HIV. Nature 2007, 449:101-104; Grevys A, Bern M, Foss S, Bratlie DB, Moen A, Gunnarsen KS, Aase A, Michaelsen TE, Sandlie I, Andersen JT: Fc Engineering of Human IgG1 for Altered Binding to the Neonatal Fc Receptor Affects Fc Effector Functions. 2015, 194:5497-5508)又はフローサイトメトリ(Perez LG, Costa MR, Todd CA, Haynes BF, Montefiori DC: Utilization of immunoglobulin G Fc receptors by human immunodeficiency virus type 1: a specific role for antibodies against the membrane-proximal external region of gp41. J Virol 2009, 83:7397-7410; Piccoli L, Campo I, Fregni CS, Rodriguez BMF, Minola A, Sallusto F, Luisetti M, Corti D, Lanzavecchia A: Neutralization and clearance of GM-CSF by autoantibodies in pulmonary alveolar proteinosis. Nat Commun 2015, 6:1-9)により評価することができる、
【0077】
一般に、本発明に係る抗体はグリコシル化されていてもよい。重鎖のCH2ドメインに結合したN-結合型グリカンは、例えば、C1q及びFcRの結合に影響を及ぼすことがあり、アグリコシル化抗体はこれらの受容体に対してより低い親和性を有する。したがって、本発明に係る抗体のFc部分のCH2ドメインは、グリコシル化残基が非グリコシル化残基で置換された1以上の突然変異を含み得る。グリカン構造はまた、活性に影響を及ぼし得る。例えば、補体媒介性細胞死の差は、グリカンの二分岐鎖の末端におけるガラクトース糖の数(0、1、又は2)に依存して見られることがある。好ましくは、抗体のグリカンは、投与後にヒト免疫原性応答を引き起こさない。
【0078】
更に、本発明に係る抗体は、FcRに対するそれらの結合親和性及び/又はそれらの血清半減期を非修飾抗体に比較して変化させるために、重鎖のCH2又はCH3ドメインの特定の領域にランダムなアミノ酸突然変異を導入することによって改変することができる。そのような修飾の例としては、アミノ酸残基250、314、及び428からなる群から選択される重鎖定常領域由来の少なくとも1つのアミノ酸の置換が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
特に好ましくは、本発明の抗体のFc部分は、CH2 4、CH2 5、又はその両方の位置に置換を含む。一般に、野生型IgG1及びIgG3のCH2の4位及び5位のアミノ酸はロイシン(「L」)である。好ましくは、本発明に係る抗体は、CH2 4、CH2 5、又はその両方の位置に、Lではないアミノ酸を含む。より好ましくは、本発明に係る抗体は、CH2 4、CH2 5、又はその両方の位置にアラニン(「A」)を含む。最も好ましくは、本発明に係る抗体は、CH2 L4A及びCH2 L5A置換の両方を含む。このような抗体は、本明細書では「LALA」変異体と称する。興味深いことに、Fc部分におけるそのような「LALA」突然変異は、ジカウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)におけるそれぞれの抗体の寄与の欠如をもたらすだけでなく、ジカウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)をブロックする。「LALA」突然変異を含むIgG1 CH1-CH2-CH3の例示的なアミノ酸配列は、配列番号146で表される。したがって、IgG1 CH1-CH2-CH3のアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号146又は「LALA」突然変異が維持された本明細書に記載のその機能的変異体である。
【0080】
好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルスエンベロープタンパク質のドメインIII(EDIII、「DIII」とも称される)に結合する。換言すれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルスエンベロープタンパク質のドメインIII(EDIII)の1以上のアミノ酸残基を含むジカウイルスエンベロープタンパク質のエピトープに結合することが好ましい。ZIKVは、コアタンパク質によって包まれた一本鎖RNAを含むヌクレオカプシドコアを含む。ヌクレオキャプシドコアは、「膜タンパク質」及び「エンベロープタンパク質」を有する脂質二重層膜によってカプセル化される。ZIKVエンベロープタンパク質(Eタンパク質)はドミナント抗原である。エンベロープタンパク質の外部ドメインは、次の3つの異なるドメインを含む:Eタンパク質ドメインI(EDI)、Eタンパク質ドメインII(EDII)、及びEタンパク質ドメインIII(EDIII)。EDIIIは、各種ZIKV株間で高度に保存されている(各種ZIKV株のEDIIIのアミノ酸配列のアラインメントについては
図12を参照)。
【0081】
したがって、抗体又はその抗原結合断片は、より好ましくは、ジカウイルスエンベロープタンパク質のドメインIII(EDIII)に結合し、EDIIIは、以下のアミノ酸配列(配列番号401)を有する。
ここで、Xは任意の(天然に存在する)アミノ酸であってもよい。換言すれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号401の1以上のアミノ酸残基を含むジカウイルスエンベロープタンパク質のエピトープに結合することが好ましい。
【0082】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルスエンベロープタンパク質のドメインIII(EDIII)に結合し、EDIIIは、以下のアミノ酸配列(配列番号407)を有することが好ましい。
ここで、X1は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはK、A、又はEであり得る;
X2は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはV、F、又はLであり得る;
X3は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはS又はFであり得る;
X4は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはI又はVであり得る;
X5は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはT又はVであり得る;
X6は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはL又はDであり得る;
X7は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはV又はGであり得る;
X8は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはA又はGであり得る;
X9は、Rを除く任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはT又はAあり得る;
X10は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはV又はIであり得る;
X11は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはA又はVであり得る;
X12は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはM又はTであり得る;
X13は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはS又はGであり得る;
X14は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはE又はKであり得る;
X15は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはV又はIであり得る;
X16は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはE、A、K、又はDであり得る;
X17は、任意の(天然に存在する)アミノ酸、好ましくはE、A、又はK、より好ましくはK又はAであり得る。
【0083】
換言すれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号407の1以上のアミノ酸残基を含むジカウイルスエンベロープタンパク質のエピトープに結合することが好ましい。
【0084】
例えば、EDIIIは、ZIKV H/PF/2013株(GenBank受託番号KJ776791)のZIKV Eタンパク質のアミノ酸309からアミノ酸403に亘る。したがって、抗体又はその抗原結合断片は、最も好ましくは、ジカウイルスエンベロープタンパク質のドメインIII(EDIII)に結合し、EDIIIは以下のアミノ酸配列(配列番号402)を有する。
【0085】
換言すれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号402の1以上のアミノ酸残基を含むジカウイルスエンベロープタンパク質のエピトープに結合することが好ましい。
【0086】
驚くべきことに、本発明者らは、ジカウイルスエンベロープタンパク質ドメインI/II(EDI/II)に結合する抗体と比較して、ジカウイルスエンベロープタンパク質のドメインIII(EDIII)に結合する抗体は、(i)ZIKVの中和の増大及び(ii)DENVとの交差反応性の低下(特にDENVとの交差反応性が本質的にない)を示すことを見出した。
【0087】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、EDIIIのラテラルリッジ(LR)の1以上のアミノ酸残基及び/又はEDI-EDIIIヒンジ領域の1以上のアミノ酸残基を含むジカウイルスエンベロープタンパク質のエピトープに結合する。EDIIIラテラルリッジ及びEDI-EDIIIヒンジ領域は当業者に知られており、例えば、次の文献に記載されている:Zhao, H., Fernandez, E., Dowd, K.A., Speer, S.D., Platt, D.J., Gorman, M.J., Govero, J., Nelson, C.A., Pierson, T.C., Diamond, M.S., et al. (2016). Structural Basis of Zika Virus-Specific Antibody Protection. Cell 166(4):1016-27 and in Kostyuchenko VA, Lim EX, Zhang S, Fibriansah G, Ng TS, Ooi JS, Shi J, Lok SM. Structure of the thermally stable Zika virus. Nature. 2016 May 19;533(7603):425-8。いかなる理論にも拘束されるものではないが、(i)LRへの結合が、ウイルスの融合遷移状態を捕捉することにより融合を阻害することができ、(ii)EDI-EDIIIヒンジ及びEDIIIへの結合が、EDIIIの動きを防ぎ、三量体の融合後構造を形成し、それによって膜融合を停止させると考えられる。
【0088】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ZIKVの付着後段階を阻害する(ことができる)ことが好ましい。「付着後」とは、典型的には、(ZIKVが標的とする細胞の)細胞膜にZIKVが付着した後のZIKV感染の任意の段階を意味する。例えば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、膜融合を防止する(ことができる)。更に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ZIKV(粒子)の凝集を引き起こす(ことができる)ことも好ましい。最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、(i)ZIKVの付着後工程を阻害し、(ii)ZIKV(粒子)の凝集を引き起こす(ことができる)。
【0089】
抗体又はその抗原結合断片が、ZIKV感染性ビリオン上に提示される四次エピトープ(quaternary epitope)に結合することもまた好ましい。かなりの中和活性にもかかわらず、そのような抗体は、典型的には、標準的な(前記のような)ELISA、即ち、インビトロで試験した場合、特に、精製された形態(即ち、ビリオン、ウイルス様粒子などの「外部/不含」ZIKV Eタンパク質)において組換えZIKV Eタンパク質又はZIKV EDIIIとの検出可能な結合を示さない。「検出可能な結合がない」とは、典型的には、標準的なELISAにおいてEC50が10000ng/mlまで検出されなかったことを意味する。換言すれば、標準的ELISAで検出可能なEC50が10000ng/mlを超える場合、それは「検出可能な結合がない」と称される。
【0090】
したがって、このような抗体は、本明細書では「中和非E結合」(NNB)抗体とも称される。ZIKV感染性ビリオン上に提示される四次エピトープは、典型的には、構造的エピトープである。例えば、ZIKV感染性ビリオン上に提示された四次エピトープは、二量体を構成する2つのエンベロープタンパク質単量体の界面に形成され得るか(「エンベロープ二量体エピトープ」;EDE)、又は隣接する二量体間に亘って形成され得る「ヘリンボーンエピトープ」)。
【0091】
一般に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、重鎖に(少なくとも)3個の相補性決定領域(CDR)及び軽鎖に(少なくとも)3個のCDRを含む。一般に、相補性決定領域(CDR)は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインに存在する超可変性領域である。典型的には、抗体の重鎖及び接続された軽鎖のCDRは共に抗原受容体を形成する。通常、3個のCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、可変ドメインに非連続的に配置される。抗原受容体は、典型的には、(2本の異なるポリペプチド鎖、即ち、重鎖及び軽鎖における)2つの可変ドメインで構成されるので、各抗原受容体につき6個のCDR(重鎖:CDRH1、CDRH2、及びCDRH3;軽鎖:CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)が存在する。単一の抗体分子は、通常、2個の抗原受容体を有するので、12個のCDRを含有する。重鎖及び/又は軽鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によって分離され得、フレームワーク領域(FR)は、CDRよりも「可変性」の低い可変ドメインにおける領域である。例えば、鎖(又はそれぞれの各鎖)は、3個のCDRによって分離されている4個のフレームワーク領域で構成され得る。
【0092】
重鎖に3個の異なるCDR及び軽鎖に3個の異なるCDRを含む本発明の例示的な抗体の重鎖及び軽鎖の配列を決定した。CDRアミノ酸の位置は、IMGT付番システムに従って定義される(IMGT:http://www.imgt.org/;Lefranc,M.-P.et al.(2009)Nucleic Acids Res.37,D1006-D1012を参照)。
【0093】
表1は、本発明に係る例示的な抗体の重鎖CDR(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)及び重鎖可変領域(「VH」と称される)のアミノ酸配列の配列番号を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0094】
以下の表2は、本発明に係る例示的な抗体の軽鎖CDR(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)及び軽鎖可変領域(「VL」と称される)のアミノ酸配列の配列番号を示す。
【表2】
【0095】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表1及び/又は表2に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0096】
本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号3、75、39、21、57、239、243、247、251、255、259、263、267、271、275、279、283、287、291、295、299、303、307、311、315、319、323、327、331、335、339、343、347、351、355、359、363、367、371、375、379、383、387、391、395、及び399のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなる。
【0097】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号3、21、39、57、及び75のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号3、21、39、及び75のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号3又は配列番号75で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。また、好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号21又は配列番号39で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号3で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。
【0098】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号1、19、37、55、73、237、241、245、249、253、257、261、265、269、273、277、281、285、289、293、297、301、305、309、313、317、321、325、329、333、337、341、345、349、353、357、361、365、369、373、377、381、385、389、393、及び397のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号2、20、38、56、74、238、242、246、250、254、258、262、266、270、274、278、282、286、290、294、298、302、306、310、314、318、322、326、330、334、338、342、346、350、354、358、362、366、370、374、378、382、386、390、394、及び398のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号3、21、39、57、75、239、243、247、251、255、259、263、267、271、275、279、283、287、291、295、299、303、307、311、315、319、323、327、331、335、339、343、347、351、355、359、363、367、371、375、379、383、387、391、395、及び399のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0099】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号1、19、37、55、及び73のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号2、20、38、56、及び74のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号3、21、39、57、及び75のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0100】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号1、19、37、及び73のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号2、20、38、及び74のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号3、21、39、及び75のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0101】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号1又は配列番号73で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号2又は配列番号74で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号3又は配列番号75で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0102】
また、好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号19又は配列番号37で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号20又は配列番号38で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号21又は配列番号39で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0103】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号1で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRH2は、配列番号2で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号3で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0104】
また、好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号4、22、40、58、及び76のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号5、6、23、24、41、42、59、60、77、及び78のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3アミノは、配列番号7、25、43、61、及び79のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0105】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号4、22、40、及び76のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号5、6、23、24、41、42、77、及び78のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3は、配列番号7、25、43、及び79のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0106】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号4又は配列番号76で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号5、6、77、及び78のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3は、配列番号7又は配列番号79で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0107】
また、好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号22又は配列番号40で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号23、24、41、及び42のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3は、配列番号25又は配列番号43で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0108】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号4で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号5又は6で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3アミノは、配列番号7で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0109】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列を含む:(i)配列番号1~3、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号19~21、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号37~39、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iv)配列番号55~57、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(v)配列番号73~75、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vi)配列番号237~239、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vii)配列番号241~243、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(viii)配列番号245~247、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ix)配列番号249~251、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(x)配列番号253~255、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xi)配列番号257~259、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xii)配列番号261~263、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xiii)配列番号265~267、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xiv)配列番号269~271、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xv)配列番号273~275、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xvi)配列番号277~279、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xvii)配列番号281~283、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xviii)配列番号285~287、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xix)配列番号289~291、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xx)配列番号293~295、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxi)配列番号297~299、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxii)配列番号301~303、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxiii)配列番号305~307、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxiv)配列番号309~311、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxv)配列番号313~315、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxvi)配列番号317~319、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxvii)配列番号321~323、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxviii)配列番号325~327、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxix)配列番号329~331、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxx)配列番号333~335、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxi)配列番号337~339、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxii)配列番号341~343、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxiii)配列番号345~347、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxiv)配列番号349~351、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配
列変異体;(xxxv)配列番号353~355、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxvi)配列番号357~359、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxvii)配列番号361~363、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxviii)配列番号365~367、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxxix)配列番号369~371、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xl)配列番号373~375、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xli)配列番号377~379、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xlii)配列番号381~383、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xliii)配列番号385~387、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xliv)配列番号389~391、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xlv)配列番号393~395、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(xlvi)配列番号397~399、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0110】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はまた、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含むことが好ましい:(i)配列番号1~5及び7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号1~4及び6~7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号19~23及び25、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iv)配列番号19~22及び24~25、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(v)配列番号37~41及び43、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vi)配列番号37~40及び42~43、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vii)配列番号55~59及び61、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(viii)配列番号55~58及び60~61、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ix)配列番号73~77及び79、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(x)配列番号73~76及び78~79、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0111】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はまた、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含む:(i)配列番号1~5及び7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号1~4及び6~7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号19~23及び25、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iv)配列番号19~22及び24~25、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(v)配列番号37~41及び43、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vi)配列番号37~40及び42~43、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vii)配列番号73~77及び79、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(viii)配列番号73~76及び78~79、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0112】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はまた、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含む:(i)配列番号1~5及び7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号1~4及び6~7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号73~77及び79、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(iv)配列番号73~76及び78~79、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0113】
また、好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はまた、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含む:(i)配列番号19~23及び25、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号19~22及び24~25、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号37~41及び43、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(iv)配列番号37~40及び42~43、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0114】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はまた、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含む:(i)配列番号1~5及び7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(ii)配列番号1~4及び6~7、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0115】
更に、また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び任意に軽鎖可変領域(VL)を含むことが好ましく、重鎖可変領域(VH)は、配列番号8、26、44、62、80、240、244、248、252、256、260、264、268、272、276、280、284、288、292、296、300、304、308、312、316、320、324、328、332、336、340、344、348、352、356、360、364、368、372、376、380、384、388、392、396、及び400のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなる。
【0116】
更に、また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下を含むことが好ましい:(i)配列番号8で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号9で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号26で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号27で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号44で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号45で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iv)配列番号62で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号63で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(v)配列番号80で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号81で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0117】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:(i)配列番号8で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号9で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号26で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号27で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号44で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号45で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(iv)配列番号80で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号81で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0118】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:(i)配列番号8で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号9で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(ii)配列番号80で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号81で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0119】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下を含むことが好ましい:(i)配列番号26で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号27で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(ii)配列番号44で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号45で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0120】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:配列番号8で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号9で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0121】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、gZKA190、gZKA64、gZKA230、gZKA185、又はgZKA78であり、好ましくは抗体又はその抗原結合断片は、gZKA190、gZKA64、gZKA230、又はgZKA185であり、より好ましくは抗体又はその抗原結合断片は、gZKA190又はgZKA64であり、最も好ましくは抗体又はその抗原結合断片は、gZKA190である。
【0122】
本発明者らは、本明細書においてZKA190、ZKA64、ZKA230、ZKA185、及びZKA78と称するモノクローナル抗体(mAb)を単離した(表1及び2の実施例1参照)。これらの抗体、これらの抗体、特にVH及びVL遺伝子に基づいて、本明細書で使用されるとき、用語「gZKA190」、「gZKA64」、「gZKA230」、「gZKA185」、及び「gZKA78」は、それぞれの「一般的な」抗体、又はその抗原結合断片を意味する。
【0123】
即ち、「gZKA190」は、配列番号1のCDRH1アミノ酸配列、配列番号2のCDRH2アミノ酸配列、配列番号3のCDRH3アミノ酸配列、配列番号4のCDRL1アミノ酸配列、配列番号5又は6のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号7のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号8のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0124】
「gZKA64」は、配列番号73のCDRH1アミノ酸配列、配列番号74のCDRH2アミノ酸配列、配列番号75のCDRH3アミノ酸配列、配列番号76のCDRL1アミノ酸配列、配列番号77又は78のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号79のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号80のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号81のアミノ酸配列を有する。
【0125】
「gZKA230」は、配列番号37のCDRH1アミノ酸配列、配列番号38のCDRH2アミノ酸配列、配列番号39のCDRH3アミノ酸配列、配列番号40のCDRL1アミノ酸配列、配列番号41又は42のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号43のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号44のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号45のアミノ酸配列を有する。
【0126】
「gZKA185」は、配列番号19のCDRH1アミノ酸配列、配列番号20のCDRH2アミノ酸配列、配列番号21のCDRH3アミノ酸配列、配列番号22のCDRL1アミノ酸配列、配列番号23又は24のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号25のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号26のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号27のアミノ酸配列を有する。
【0127】
「gZKA78」は、配列番号55のCDRH1アミノ酸配列、配列番号56のCDRH2アミノ酸配列、配列番号57のCDRH3アミノ酸配列、配列番号58のCDRL1アミノ酸配列、配列番号59又は60のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号61のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号62のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号63のアミノ酸配列を有する。
【0128】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、医薬としての使用のためのものである。換言すれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、医薬の調製に使用され得る。より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルス感染の予防及び/又は治療に用いるためのものである。換言すれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルス感染の予防及び/又は治療における医薬の調製又は使用において使用され得る。この側面については、以下、より詳細に説明する。
【0129】
核酸分子
別の態様では、本発明は、また、上記本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードしているポリヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。核酸分子及び/又はポリヌクレオチドの例としては、例えば、組み換えポリヌクレオチド、ベクター、オリゴヌクレオチド、RNA分子(例えば、rRNA、mRNA、miRNA、siRNA、又はtRNA)又はDNA分子(例えば、cDNA)が挙げられる。本発明の抗体の軽鎖、重鎖、及びCDRの一部又は全てをコードしている核酸配列が好ましい。したがって、好ましくは、本発明の例示的な抗体の軽鎖及び重鎖、特にVH及びVL配列並びにCDRの一部又は全てをコードしている核酸配列が本明細書に提供される。表1及び2は、本発明に係る例示的な抗体のCDR及びVH及びVLのアミノ酸配列の配列番号を提供する。
【0130】
以下の表3は、本発明に係る例示的な抗体のCDR並びにVH及びVLをコードしている例示的な核酸配列の配列番号を提供する。遺伝子コードの冗長性により、本発明は、これら核酸配列の配列変異体、特に、同じアミノ酸配列をコードしているかかる配列変異体も含む。
【0131】
核酸分子は、核酸成分を含む、好ましくはからなる分子である。核酸分子という用語は、好ましくは、DNA又はRNA分子を指す。特に、用語「ポリヌクレオチド」と同義で用いられる。好ましくは、核酸分子は、糖/リン酸骨格のホスホジエステル結合によって互いに共有結合しているヌクレオチドモノマーを含むか又はからなるポリマーである。また、用語「核酸分子」は、修飾核酸分子、例えば、塩基修飾、糖修飾、又は骨格修飾されたDNA又はRNA分子も包含する。
【0132】
表3は、本発明に係る5つの例示的な抗体(「ZKA190」、「ZKA64」、「ZKA230」、「ZKA185」、及び「ZKA78」)のCDR並びに重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の例示的な核酸配列を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0133】
好ましくは、本発明に係る核酸分子の配列は、配列番号10~18、28~36、46~54、64~72、及び82~90のいずれか1つに係る核酸配列又はその機能性配列変異体を含むか又はからなる。
【0134】
また、本発明に係る核酸配列は、本発明に係る(例示的な)抗体で使用されるCDR、VH配列及び/又はVL配列をコードしている核酸配列、例えば、表3に示す配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含むことも好ましい。
【0135】
一般に、核酸分子を操作して、特定の核酸配列を挿入、欠失、又は変更することができる。かかる操作による変化としては、制限酵素部位を導入する、コドン使用頻度を変更する、転写及び/又は翻訳調節配列を付加若しくは最適化する等の変化が挙げられるが、これらに限定されない。また、核酸を変化させて、コードされているアミノ酸を変更することも可能である。例えば、1以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等)のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を抗体のアミノ酸配列に導入することが有用であり得る。かかる点突然変異は、エフェクタ機能、抗原結合親和性、翻訳後修飾、免疫原性等を変化させることができたり、共有結合基(例えば、標識)を結合させるためのアミノ酸を導入することができたり、(例えば、精製目的のための)タグを導入することができたりする。突然変異は、特異的部位に導入することもでき、ランダムに導入し、続いてセレクション(例えば、分子進化)することもできる。例えば、本発明の(例示的な)抗体のCDR領域、VH配列及び/又はVL配列のいずれかをコードしている1以上の核酸をランダムに又は定向的に突然変異させて、コードされているアミノ酸に様々な性質を導入することができる。かかる変化は、初期変化が保持され、他のヌクレオチド位置に新たな変化が導入される反復プロセスの結果であり得る。更に、独立した工程で得られた変化を組み合わせてもよい。コードされているアミノ酸に導入される様々な性質としては、親和性の強化を挙げることができるが、これに限定されない。
【0136】
ベクター
本発明に係る核酸分子を含むベクター、例えば、発現ベクターも、本発明の範囲内に更に含まれる。好ましくは、ベクターは、上記核酸分子を含む。
【0137】
用語「ベクター」とは、核酸分子、好ましくは、組み換え核酸分子、即ち、自然界には存在しない核酸分子を指す。本発明におけるベクターは、所望の核酸配列を組み込むか又は保有させるのに好適である。かかるベクターは、ストレージベクター、発現ベクター、クローニングベクター、トランスファーベクター等であってよい。ストレージベクターは、核酸分子を便利に保管することができるベクターである。したがって、ベクターは、例えば、本発明にかかる所望の抗体又はその抗原断片に対応する配列を含み得る。発現ベクターは、例えばRNA(例えば、mRNA)、又はペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質等の発現産物を産生させるために使用することができる。例えば、発現ベクターは、プロモーター配列等のベクターの一続きの配列の転写に必要な配列を含んでいてよい。クローニングベクターは、典型的には、核酸配列をベクターに組み込むために用いることができるクローニングサイトを含むベクターである。クローニングベクターは、例えば、プラスミドベクター又はバクテリオファージベクターであってよい。トランスファーベクターは、細胞又は生物に核酸分子を移入するのに好適なベクター、例えば、ウイルスベクターであってよい。本発明におけるベクターは、例えば、RNAベクターであってもDNAベクターであってもよい。好ましくは、ベクターは、DNA分子である。例えば、本願におけるベクターは、クローニングサイト、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性因子)、及びベクターの増殖に好適な配列(例えば、複製起点)を含む。好ましくは、本願におけるベクターは、プラスミドベクターである。
【0138】
細胞
更なる態様では、本発明は、本発明にかかる抗体又はその抗原結合断片を発現する及び/又は本発明にかかるベクターを含む細胞も提供する。
【0139】
かかる細胞の例としては、真核細胞、例えば、酵母細胞、動物細胞、又は植物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、細胞は、哺乳類細胞、より好ましくは、哺乳類細胞株である。好ましい例としては、ヒト細胞、CHO細胞、HEK293T細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、骨髄腫細胞、又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0140】
特に、前記細胞に、本発明にかかるベクター、好ましくは発現ベクターをトランスフェクトしてよい。用語「トランスフェクション」とは、DNA又はRNA(例えば、mRNA)の分子等の核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞に導入することを指す。本発明において、用語「トランスフェクション」は、核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞、例えば哺乳類細胞に導入するための当業者に公知の任意の方法を含む。かかる方法は、例えば、エレクトロポレーション、(例えば、カチオン性脂質及び/又はリポソームに基づく)リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、又はカチオン性ポリマー(例えば、DEAE-デキストラン又はポリエチレンイミン等)に基づくトランスフェクションを含む。好ましくは、導入は、非ウイルス的である。
【0141】
更に、例えば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を発現させるために、本発明の細胞に本発明に係るベクターを安定的に又は一過的にトランスフェクトしてよい。好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードしている本発明に係るベクターを細胞に安定的にトランスフェクトする。或いは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードしている本発明に係るベクターを細胞に一過的にトランスフェクトすることも好ましい。
【0142】
抗体の任意の追加の特徴
本発明の抗体は、例えば、治療部位に送達するために薬物に結合させてもよく、対象となる細胞を含む部位のイメージングを容易にするために検出可能な標識に結合させてもよい。薬物及び検出可能な標識に抗体を結合させる方法は、検出可能な標識を使用するイメージング方法等、当技術分野において周知である。標識された抗体は、広範な標識を使用する広範なアッセイで使用することができる。本発明の抗体とHBsAg、対象となるエピトープとの間の抗体-抗原複合体の形成の検出は、検出可能な物質を抗体に結合させることによって容易になり得る。好適な検出手段としては、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光物質、化学発光物質、色素原、酵素物質又は補因子、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、色素等の標識の使用が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例は、ルミノールであり;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ;好適な放射活性物質の例としては、125I、131I、35S、又は3Hが挙げられる。かかる標識された試薬は、例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、例えば、ELISA、蛍光イムノアッセイ等の様々な周知のアッセイで使用することができる。したがって、本発明に係る標識された抗体は、例えば、米国特許第3,766,162号、同第3,791,932号、同第3,817,837号、及び同第4,233,402号に記載の通り、かかるアッセイにおいて使用することができる。
【0143】
本発明に係る抗体は、細胞毒、療法剤、又は放射性金属イオン若しくは放射性同位体等の治療部分にコンジュゲートさせることができる。放射性同位体の例としては、I-131、I-123、I-125、Y-90、Re-188、Re-186、At-211、Cu-67、Bi-212、Bi-213、Pd-109、Tc-99、In-111等が挙げられるが、これらに限定されない。かかる抗体コンジュゲートは、所与の生物学的応答を調節するために用いることができ、薬物部分は、古典的な化学療法剤に限定されると解釈すべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってよい。かかるタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、又はジフテリア毒素等の毒素を挙げることができる。
【0144】
かかる治療部分を抗体にコンジュゲートさせる技術は、周知である。例えば、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Reisfeld等編(Alan R.Liss,Inc.)、pp.243-256におけるArnon等(1985)「Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy」;Controlled Drug Delivery、Robinson等編(第2版;Marcel Dekker,Inc.)、pp.623-653におけるHellstrom等編(1987)「Antibodies for Drug Delivery」;Monoclonal Antibodies’84:Biological and Clinical Applications、Pinchera等編、pp.475-506(Editrice Kurtis,Milano,Italy,1985)におけるThorpe(1985)「Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Review」;Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、Baldwin等編(Academic Press,New York,1985)、pp.303-316における「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」;及びThorpe et al.(1982)Immunol.Rev.62:119-158を参照。
【0145】
或いは、抗体又はその抗原結合断片は、二次抗体又はその抗体断片にコンジュゲートさせて、米国特許第4,676,980号に記載の通り抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。更に、例えば米国特許第4,831,175号に記載の通り、標識と本発明の抗体との間にリンカーを使用してもよい。抗体又はその抗原結合断片は、放射性ヨウ素、インジウム、イットリウム、又は例えば米国特許第5,595,721号に記載の通り、当技術分野において公知の他の放射性粒子で直接標識し得る。治療は、例えば国際公開第00/52031号、同第00/52473号に記載の通り、同時に又は後で投与されるコンジュゲートした抗体及びコンジュゲートしていない抗体による治療との組合せからなっていてよい。
【0146】
また、本発明の抗体は、固体担持体に結合させてもよい。更に、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、例えば、その循環半減期を延長するために、共有結合によってポリマーにコンジュゲートさせることによって化学的に修飾してよい。ポリマー、及びそれをペプチドに結合させる方法の例は、米国特許第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、及び同第4,609,546号に示されている。幾つかの実施形態では、ポリマーは、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)から選択され得る。PEGは、室温で水に可溶性であり、一般式:R(O-CH2-CH2)nO-R(式中、Rは、水素、又はアルキル基若しくはアルカノール基等の保護基であってよい)を有する。好ましくは、保護基は、1個~8個の炭素を有し得る。例えば、保護基は、メチルである。記号nは、正の整数である。一実施形態では、nは、1~1,000である。別の実施形態では、nは、2~500である。好ましくは、PEGは、1,000~40,000の平均分子量を有し、より好ましくは、PEGは、2,000~20,000の分子量を有し、更により好ましくは、PEGは、3,000~12,000の分子量を有する。更に、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し得、例えば、PEGは、末端ヒドロキシ基を有し得る。例えば、それは、活性化されて阻害剤の遊離アミノ基と反応する末端ヒドロキシ基である。しかし、本発明の共有結合によってコンジュゲートされたPEG/抗体を得るために、反応性基の種類及び量を変更してもよい。
【0147】
水溶性ポリオキシエチル化ポリオールも本発明において有用である。例えば、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)等が挙げられる。一実施形態では、POGが用いられる。任意の理論に縛られるものではないが、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格は、例えば、動物及びヒトにおいて、モノ-、ジ-、トリグリセリドに天然に存在するのと同じ骨格であるので、この分岐は、身体において必ずしも異物として認識される訳ではない。POGは、PEGと同じ範囲の分子量を有し得る。循環半減期を延長するために用いることができる別の薬物送達系は、リポソームである。リポソーム送達系を調製する方法は、当業者に公知である。他の薬物送達系は、当技術分野において公知であり、例えば、Poznansky et al.(1980)及びPoznansky(1984)に記載されている。
【0148】
本発明の抗体は、精製形態で提供され得る。典型的には、抗体は、他のポリペプチドを実質的に含まない組成物中に存在し、例えば、組成物の90(重量)%未満、通常は60%未満、より通常は50%未満が他のポリペプチドで構成される。
【0149】
本発明の抗体は、非ヒト(又は異種)宿主、例えば、マウスにおいて免疫原性であり得る。特に、抗体は、非ヒト宿主において免疫原性であるが、ヒト宿主においては免疫原性でないイディオトープを有し得る。特に、ヒトで使用するための本発明の抗体は、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳類等の宿主から容易に単離することができず、且つ一般にヒト化によってもゼノマウスからも得ることができないものが挙げられる。
【0150】
抗体の産生
本発明に係る抗体は、当技術分野において公知の任意の方法によって作製することができる。例えば、ハイブリドーマ技術を使用してモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法論は、周知である(Kohler,G.and Milstein,C,.1975;Kozbar et al.1983)。一実施形態では、国際公開第2004/076677号に記載されている別のEBV不死化法を使用する。
【0151】
好ましい方法は、国際公開第2004/076677号に記載されている。この方法では、本発明の抗体を産生するB細胞を、EBV及びポリクローナルB細胞活性化剤で形質転換する。任意で、効率を更に高めるために、細胞の成長及び分化の更なる刺激剤を形質転換工程中に添加してもよい。これら刺激剤は、IL-2及びIL-15等のサイトカインであってよい。一態様では、IL-2を不死化工程中に添加して、不死化効率を更に向上させるが、その使用は必須ではない。次いで、これら方法を用いて産生された不死化B細胞を、当技術分野において公知の方法及びそれから単離された抗体を用いて培養してよい。
【0152】
別の好ましい方法は、国際公開第2010/046775号に記載されている。この方法では、プラズマ細胞を限定数又は単一プラズマ細胞としてマイクロウェル培養皿で培養する。プラズマ細胞培養物から抗体を単離することができる。更に、プラズマ細胞培養物からRNAを抽出することができ、当技術分野において公知の方法を使用してPCRを実施することができる。抗体のVH及びVL領域をRT-PCR(逆転写酵素PCR)によって増幅させ、配列を決定し、発現ベクターにクローニングし、次いで、HEK293T細胞又は他の宿主細胞にトランスフェクトすることができる。発現ベクターへの核酸のクローニング、宿主細胞のトランスフェクション、トランスフェクトされた宿主細胞の培養、及び産生された抗体の単離は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。
【0153】
抗体は、必要に応じて、濾過、遠心分離、及び様々なクロマトグラフィー法、例えば、HPLC又はアフィニティクロマトグラフィーを用いて更に精製することができる。医薬品グレードの抗体を産生するための技術を含む抗体、例えば、モノクローナル抗体を精製する技術は、当技術分野において周知である。
【0154】
本発明の抗体の断片は、酵素、例えばペプシン又はパパインによる切断を含む方法によって、及び/又は化学還元によりジスルフィド結合を切断することによって前記抗体から得ることができる。或いは、抗体の断片は、重鎖又は軽鎖の配列の一部のクローニング及び発現によって得ることができる。抗体「断片」は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片を含む。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖に由来する単鎖Fv断片(scFv)を包含する。例えば、本発明は、本発明の抗体由来のCDRを含むscFvを含む。また、重鎖又は軽鎖の単量体及び二量体、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体に加えて、単鎖抗体、例えば、重鎖及び軽鎖の可変ドメインがペプチドリンカーによって結合されている単鎖Fvも含まれる。
【0155】
本発明の抗体断片は、一価又は多価相互作用を付与し得、上記様々な構造に含有され得る。例えば、scFv分子を合成して、三価「トリアボディ」又は四価「テトラボディ」を作製することができる。scFv分子は、Fc領域のドメインを含んでいてよく、その結果、二価ミニボディが生じる。更に、本発明の配列は、本発明の配列が本発明のエピトープを標的とし、分子の他の領域が他の標的に結合する多重特異的分子の成分であってよい。例示的な分子としては、二重特異的Fab2、三重特異的Fab3、二重特異的scFv、及びダイアボディが挙げられるが、これらに限定されない(Holliger and Hudson,2005,Nature Biotechnology 9:1126-1136)。
【0156】
分子生物学の標準的な技術を用いて、本発明の抗体又は抗原断片をコードしているDNA配列を調製することができる。オリゴヌクレオチド合成技術を用いて所望のDNA配列を完全に又は部分的に合成することができる。部位特異的突然変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を適宜使用してよい。
【0157】
任意の好適な宿主細胞/ベクター系を、本発明の抗体分子又はその断片をコードしているDNA配列を発現させるために用いることができる。一部では、Fab及びF(ab’)2断片等の抗体断片、特にFv断片及び単鎖抗体断片、例えば単鎖Fvを発現させるために細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系を使用してよい。完全抗体分子を含むより大きな抗体分子を産生させるために、真核生物、例えば哺乳類の宿主細胞発現系を使用してよい。好適な哺乳類宿主細胞としては、CHO、HEK293T、PER.C6、NS0、骨髄腫、又はハイブリドーマ細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
また、本発明は、本発明に係る抗体分子を産生させるプロセスであって、本発明の核酸をコードしているベクターを含む宿主細胞を、本発明の抗体分子をコードしているDNAからタンパク質を発現させるのに好適な条件下で培養することと、前記抗体分子を単離することとを含むプロセスを提供する。
【0159】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含んでいてもよく、この場合、宿主細胞にトランスフェクトするために重鎖又は軽鎖ポリペプチドをコードしている配列のみを使用する必要がある。重鎖及び軽鎖の両方を含む産物を産生させる場合、第1のベクターが軽鎖ポリペプチドをコードしており、第2のベクターが重鎖ポリペプチドをコードしている2つのベクターを細胞株にトランスフェクトしてよい。或いは、軽鎖及び重鎖のポリペプチドをコードしている配列を含む単一のベクターを使用してもよい。或いは、本発明に係る抗体は、(i)例えば、本発明に係るベクターを使用することによって、宿主細胞で本発明に係る核酸配列を発現させ、(ii)発現した抗体産物を単離することによって産生され得る。更に、前記方法は、(iii)単離抗体を精製することを含み得る。形質転換されたB細胞及び培養したプラズマ細胞を、所望の特異性又は機能の抗体を産生するものについてスクリーニングしてよい。
【0160】
スクリーニング工程は、任意のイムノアッセイ、例えば、ELISAによって、組織若しくは細胞(トランスフェクトされた細胞を含む)を染色することによって、中和アッセイによって、又は所望の特異性若しくは機能を同定するための当技術分野において公知の多数の他の方法のうちの1つによって実施してよい。アッセイでは、1以上の抗原の単純な認識に基づいて選択することもでき、更に所望の機能に基づいて選択して、例えば、単なる抗原結合抗体ではなく中和抗体を選択したり、標的細胞の特徴(例えば、そのシグナル伝達カスケード、形状、成長速度、他の細胞に影響を与える能力、他の細胞又は他の試薬又は条件の変化による影響に対する応答、分化状態等)を変化させることができる抗体を選択したりすることもできる。
【0161】
次いで、陽性形質転換B細胞培養物から個々の形質転換B細胞クローンが産生され得る。陽性細胞の混合物から個々のクローンを分離するためのクローニング工程は、限界希釈、マイクロマニピュレーション、セルソーティングによる単一細胞沈着、又は当技術分野において公知の別の方法を使用して実施することができる。
【0162】
当技術分野において公知の方法を用いて、培養プラズマ細胞から核酸を単離し、クローニングし、HEK293T細胞又は他の公知の宿主細胞で発現させることができる。
【0163】
本発明の不死化B細胞クローン又はトランスフェクトされた宿主細胞は、例えば、モノクローナル抗体源として、対象となるモノクローナル抗体をコードしている核酸(DNA又はmRNA)源として、研究のため等、様々な方法で使用することができる。
【0164】
また、本発明は、本発明に係る抗体を産生する不死化記憶B細胞又はトランスフェクトされた宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0165】
本発明の不死化B細胞クローン又は培養プラズマ細胞は、後で組み換え発現させるために抗体遺伝子をクローニングするための核酸源として使用することもできる。例えば、安定性、再現性、培養の容易さ等の理由から、B細胞又はハイブリドーマから発現させるよりも、組み換え源から発現させる方が医薬目的では一般的である。
【0166】
したがって、本発明は、また、組み換え細胞を調製する方法であって、(i)対象となる抗体をコードしているB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から1以上の核酸(例えば、重鎖及び/又は軽鎖mRNA)を得る工程と、(ii)前記核酸を発現ベクターに挿入する工程と、(iii)宿主細胞において対象となる抗体を発現させるために、前記ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする工程とを含む方法を提供する。
【0167】
同様に、本発明は、組み換え細胞を調製する方法であって、(i)対象となる抗体をコードしているB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から核酸の配列を決定する工程と、(ii)工程(i)で得られた配列情報を使用して、宿主細胞において対象となる抗体を発現させるために、前記宿主細胞に挿入するための核酸を調製する工程とを含む方法を提供する。工程(i)と(ii)との間に、制限酵素部位を導入する、コドンの使用頻度を変更する、及び/又は転写及び/又は翻訳調節配列を最適化するために前記核酸を操作してもよいが、必須ではない。
【0168】
更に、本発明は、また、トランスフェクトされた宿主細胞を調製する方法であって、対象となる抗体をコードしている1以上の核酸を宿主細胞にトランスフェクトする工程を含み、前記核酸が、本発明の不死化B細胞クローン又は培養プラズマ細胞に由来する核酸である方法も提供する。したがって、まず核酸を調製し、次いで、それを使用して宿主細胞をトランスフェクトする手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時点で実施することができる。
【0169】
次いで、本発明のこれら組み換え細胞を発現及び培養目的のために使用することができる。前記組み換え細胞は、大規模に医薬品を生産するために抗体を発現させるのに特に有用である。また、前記組み換え細胞は、医薬組成物の活性成分として用いることもできる。静置培養、ローラーボトル培養、腹水液、中空繊維型バイオリアクタカートリッジ、モジュラーミニ発酵槽、撹拌槽、微粒子担体培養、セラミックコア灌流等が挙げられるがこれらに限定されない任意の好適な培養技術を使用することができる。
【0170】
B細胞又はプラズマ細胞から免疫グロブリン遺伝子を得、配列を決定する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Kuby Immunology、第4版、2000年の第4章)。
【0171】
トランスフェクトされた宿主細胞は、酵母及び動物細胞を含む真核細胞、特に、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、NS0細胞、ヒト細胞(例えば、PER.C6又はHKB-11細胞)、骨髄腫細胞、又はヒト肝細胞)に加えて、植物細胞であってよく、哺乳類細胞が好ましい。好ましい発現宿主は、特にそれ自体ヒトにおいて免疫原性ではない炭水化物構造で本発明の抗体をグリコシル価することができる。一実施形態では、トランスフェクトされた宿主細胞は、無血清培地において増殖することができる。更なる実施形態では、トランスフェクトされた宿主細胞は、動物由来の生成物が存在しなくても培養物中で増殖することができる。また、トランスフェクトされた宿主細胞を培養して、細胞株を得ることもできる。
【0172】
また、本発明は、対象となる抗体をコードしている1以上の核酸分子(例えば、重鎖及び軽鎖遺伝子)を調製する方法であって、(i)不死化B細胞クローンを調製するか又は本発明に係るプラズマ細胞を培養する工程と、(ii)対象となる抗体をコードしている核酸を、B細胞クローン又は培養プラズマ細胞から得る工程とを含む方法を提供する。更に、本発明は、対象となる抗体をコードしている核酸配列を得る方法であって、(i)不死化B細胞クローンを調製するか又は本発明に係るプラズマ細胞を培養する工程と、(ii)対象となる抗体をコードしているB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から得られた核酸の配列を決定する工程とを含む方法を提供する。
【0173】
本発明は、更に、対象となる抗体をコードしている核酸分子を調製する方法であって、本発明の形質転換B細胞クローン又は培養プラズマ細胞から得られた核酸を得る工程を含む方法を提供する。したがって、先ずB細胞クローン又は培養プラズマ細胞を得、次いで、前記B細胞クローン又は前記培養プラズマ細胞から核酸を得るための手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時点で実施することができる。
【0174】
また、本発明は、本発明に係る(例えば、製薬に使用するための)抗体を調製する方法であって、(i)対象となる抗体を発現する選択されたB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から1以上の核酸(例えば、重鎖及び軽鎖の遺伝子)を得る及び/又は配列を決定する工程と;(ii)前記核酸配列を発現ベクターに挿入するか又は前記核酸配列を使用して発現ベクターを調製する工程と;(iii)対象となる抗体を発現することができる宿主細胞にトランスフェクトする工程と;(iv)トランスフェクトされた宿主細胞を、前記対象となる抗体が発現する条件下で培養又は継代培養する工程と;任意で、(v)前記対象となる抗体を精製する工程とを含む方法を含む。
【0175】
また、本発明は、トランスフェクトされた宿主細胞集団、例えば、安定的にトランスフェクトされた宿主細胞集団を、対象となる抗体が発現する条件下で培養又は継代培養する工程と;任意で、前記対象となる抗体を精製する工程とを含む、抗体を調製する方法であって、前記トランスフェクトされた宿主細胞集団が、(i)上記の通り調製したB細胞クローン又は培養プラズマ細胞によって産生される、選択された対象となる抗体をコードしている核酸を提供し、(ii)前記核酸を発現ベクターに挿入し、(iii)前記対象となる抗体を発現することができる宿主細胞に前記ベクターをトランスフェクトし、(iv)挿入された核酸を含むトランスフェクトされた宿主細胞を培養又は継代培養して、前記対象となる抗体を産生させることによって調製される方法を提供する。したがって、先ず組み換え宿主細胞を調製し、次いで、それを培養して抗体を発現させるための手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時点で実施することができる。
【0176】
医薬組成物
また、本発明は、
(i)本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片;
(ii)本発明に係る抗体若しくは抗体断片をコードしている核酸;
(iii)本発明に係る核酸を含むベクター;及び/又は
(iv)本発明に係る抗体を発現するか若しくは本発明に係るベクターを含む細胞
のうちの1以上を含む医薬組成物を提供する。
【0177】
言い換えれば、本発明は、また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、及び/又は本発明に係る細胞を提供する。
【0178】
医薬組成物は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含有していてもよい。担体又は賦形剤は投与を容易にすることができるが、それ自体が、組成物を摂取する個体にとって有害な抗体の産生を誘導してはならない。また、毒性であってもならない。好適な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性ウイルス粒子等の、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子であってよい。一般的に、本発明に係る医薬組成物中の薬学的に許容し得る担体は、活性成分であっても不活性成分であってもよい。好ましくは、本発明に係る医薬組成物中の薬学的に許容し得る担体は、ジカウイルス感染に関して活性成分ではない。
【0179】
薬学的に許容し得る塩、例えば、鉱酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、及び硫酸塩)又は有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩)を用いてもよい。
【0180】
医薬組成物中の薬学的に許容し得る担体は、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノール等の液体を更に含有していてもよい。更に、湿潤剤若しくは乳化剤等の補助物質、又はpH緩衝物質がかかる組成物中に存在していてもよい。かかる担体によって、被験体に服用させるために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁剤として製剤化することができるようになる。
【0181】
本発明の医薬組成物は、様々な形態で調製することができる。例えば、前記組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射液として調製してよい。注射する前に液体ビヒクルの溶液又は懸濁液にするのに好適な固体形態を調製してもよい(例えば、保存剤を含有する滅菌水で再構成するための、Synagis(商標)及びHerceptin(商標)と同様の凍結乾燥組成物)。前記組成物は、例えば軟膏剤、クリーム剤、又は粉剤として、局所投与用に調製してもよい。前記組成物は、例えば錠剤若しくはカプセル剤として、噴霧剤として、又はシロップ剤として(任意で、風味付けされる)経口投与用に調製してもよい。前記組成物は、例えば微粉末又はスプレーを用いる吸入器として、肺内投与用に調製してもよい。前記組成物は、坐剤又は膣坐剤として調製してもよい。前記組成物は、例えば点眼剤として、鼻腔内、耳内、又は眼内投与用に調製してもよい。前記組成物は、被験体に投与する直前に複合組成物が再構成されるように設計されたキット形態であってもよい。例えば、凍結乾燥した抗体を、滅菌水又は滅菌バッファと共にキット形態で提供してよい。
【0182】
前記組成物中の活性成分は、抗体分子、抗体断片、又はこれらの変異体及び誘導体であることが好ましく、特に、前記組成物中の活性成分は、本発明に係る抗体、抗体断片、又はこれらの変異体及び誘導体である。したがって、消化管において分解されやすい。したがって、前記組成物が消化管を使用する経路によって投与される場合、前記組成物は、前記抗体を分解から保護するが、一旦消化管から吸収されたら前記抗体を放出させる剤を含有していてよい。
【0183】
薬学的に許容し得る担体についての詳細な検討は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,ISBN:0683306472から入手可能である。
【0184】
本発明の医薬組成物は、一般的に、5.5~8.5のpHを有し、幾つかの実施形態では、これは、6~8であり、他の実施形態では、約7である。pHは、バッファを使用することによって維持することができる。前記組成物は、無菌及び/又はパイロジェンフリーであってよい。前記組成物は、ヒトに対して等張であってよい。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、密封容器で提供される。
【0185】
幾つかの投与形態で存在する組成物が、本発明の範囲内であり、前記形態としては、例えば、ボーラス注射又は持続点滴等の注射又は点滴による非経口投与に好適な形態が挙げられるが、これらに限定されない。製品が注射又は注入用である場合、油性又は水性のビヒクルの懸濁液、溶液、又はエマルションの形態をとってもよく、懸濁化剤、保存剤、安定剤、及び/又は分散剤等の調合剤を含有していてもよい。或いは、抗体分子は、適切な無菌液体を用いて使用前に再構成するために乾燥形態であってもよい。ビヒクルは、典型的には、薬学的活性化合物等の化合物、特に、本発明に係る抗体を保存、輸送、及び投与するのに好適な物質であると理解される。例えば、ビヒクルは、薬学的活性化合物、特に、本発明に係る抗体を保存、輸送、及び/又は投与するのに好適な生理学的に許容し得る液体であってよい。製剤化すると、本発明の組成物を被験体に直接投与することができる。一実施形態では、前記組成物は、哺乳類、例えば、ヒト被験体への投与に適応する。
【0186】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、髄腔内、脳室内、経皮、経皮、局所、皮下、鼻腔内、経腸、舌下、膣内、又は直腸内経路が挙げられるがこれらに限定されない、任意の数の経路によって投与することができる。また、皮下噴射器を用いて、本発明の医薬組成物を投与してもよい。好ましくは、医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル剤等として経口投与用に、局所投与用に、又は例えば液体溶液又は懸濁液等の注射剤として調製することができ、前記医薬組成物は、注射剤であることが特に好ましい。注射前に液体ビヒクルの溶液又は懸濁液にするのに好適な固体形態も好ましく、例えば、医薬組成物は凍結乾燥形態である。
【0187】
静脈内、皮膚、若しくは皮下への注射、又は罹患部位への注射等の注射については、活性成分は、好ましくは、パイロジェンフリーであり且つ好適なpH、等張性、及び安定性を有する非経口的に許容し得る水溶液の形態である。当業者は、例えば、生食注射、リンゲル液、乳酸加リンゲル液等の等張ビヒクルを用いて好適な溶液をうまく調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び/又は他の添加剤が含まれていてもよい。個体に投与されるのが本発明に係るポリペプチドであろうと、ペプチドであろうと、核酸分子であろうと、他の薬学的に有用な化合物であろうと、個体に対して効果を示すのに十分な「予防的に有効な量」又は「治療的に有効な量」(場合による)が投与されることが好ましい。実際に投与される量、並びに投与の速度及び時間推移は、処置されるものの性質及び重篤度に依存する。注射の場合、本発明に係る医薬組成物を、例えばプレフィルドシリンジで提供してよい。
【0188】
上に定義された本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、又は液剤が挙げられるがこれらに限定されない任意の経口的に許容し得る剤形で経口投与してよい。経口使用するための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤も典型的に添加される。カプセル形態で経口投与する場合、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用のために水性懸濁剤が必要な場合、活性成分、即ち、上に定義された本発明のトランスポータ-カーゴコンジュゲート分子を乳化剤及び懸濁化剤と合わせる。必要に応じて、特定の甘味剤、着香剤、又は着色剤を添加してもよい。
【0189】
また、特に、治療の標的が、例えば皮膚又は任意の他のアクセス可能な上皮組織の疾患を含む、局所適用によって容易にアクセス可能な領域又は器官を含むとき、本発明の医薬組成物を局所的に投与してもよい。これら領域又は器官のそれぞれに好適な局所製剤が容易に調製される。局所適用の場合、本発明の医薬組成物は、1以上の担体に懸濁又は溶解している本発明の医薬組成物、特に、上に定義されたその成分を含有する好適な軟膏剤に製剤化してよい。局所投与用の担体としては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、本発明の医薬組成物は、好適なローション又はクリームに製剤化することもできる。本発明において、好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
投薬治療は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであり得る。特に、医薬組成物は、単回用量製品として提供することができる。好ましくは、医薬組成物中の抗体の量は、特に単回投与の製品として提供される場合、200mgを超えず、より好ましくは100mgを超えず、更により好ましくは50mgを超えない。
【0191】
例えば、本発明に係る医薬組成物は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、若しくは21日間、又はそれ以上の期間に亘って毎日、例えば、1日間当たり1回又は数回、例えば、1日間当たり1回、2回、3回、又は4回、好ましくは、1日間当たり1回又は2回、より好ましくは、1日間当たり1回、例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間の期間に亘って毎日投与してよい。好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、若しくは21週間、又はそれ以上の期間の期間に亘って毎週、例えば、1週間当たり1回又は2回、例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、若しくは12ヶ月間の期間の期間に亘って毎週、又は2年間、3年間、4年間、若しくは5年間の期間の期間に亘って毎週投与してよい。更に、本発明に係る医薬組成物は、好ましくは、1年間、2年間、3年間、4年間、若しくは5年間、又はそれ以上の期間の期間に亘って毎月、例えば、1ヶ月間当たり1回、又はより好ましくは2ヶ月間毎に投与してよい。また、生涯投与を継続することも好ましい。更に、特に特定の適応症に関しては、例えば、非免疫被験体における偶発的曝露の場合にジカウイルス感染を予防するために1回だけ投与することも企図される。しかしながら、最も好ましい治療スケジュールは、1回以上の単回投与がジカ感染後できるだけ早く投与される、曝露後予防(PEP)である。ジカ感染を予防する(即ち、ジカ感染前、特に非ジカ免疫化被験体において)ために1回以上の単回用量が投与される予防設定もまた好ましい。
【0192】
特に、単一用量、例えば、日用量、用量、又は月用量、好ましくは週用量については、本発明に係る医薬組成物中の抗体又はその抗原結合断片の量は、1gを超えない、好ましくは500mgを超えない、より好ましくは200mgを超えない、更により好ましくは、100mgを超えない、特に好ましくは50mgを超えないことが好ましい。
【0193】
医薬組成物は、典型的には、本発明の1以上の抗体を「有効」量、即ち、所望の疾患若しくは状態を治療、寛解、軽減、若しくは予防するか、又は検出可能な治療効果を呈するのに十分な量含む。治療効果は、病原性効力又は身体症状を低減又は軽減することも含む。任意の特定の被験体についての正確な有効量は、前記被験体の身長、体重、及び健康、状態の性質及び程度、並びに投与のために選択された治療法又は治療法の組合せに依存する。所与の状況についての有効量は、ルーチンな実験によって決定され、臨床医の判断の範囲内である。本発明の目的のために、本発明の抗体の有効量(例えば、医薬組成物中の抗体の量)は、一般的に、投与される個体の体重(例えば、kg)に関連して、約0.005mg/kg~約100mg/kg、好ましくは約0.0075mg/kg~約50mg/kg、より好ましくは約0.01mg/kg~約10mg/kg、更により好ましくは、約0.02mg/kg~約5mg/kgである。
【0194】
更に、本発明に係る医薬組成物は、更なる抗体、又は抗体ではない成分であってもよい追加の活性成分を含んでもよい。追加の活性成分は、好ましくはチェックポイント阻害剤である。本明細書に記載のZIKV中和抗体又はその抗原結合断片が、更なる活性成分(共薬剤)として本明細書に記載されるZIKV NS1結合抗体又はその抗原結合断片と組み合わされることも好ましい。それにより、ZIKVの中和に加えて、NS1の病原性機能がブロックされ得る。本発明に係る医薬組成物は、追加の活性成分の1以上を含んでもよい。これは、例えば、併用療法の文脈で以下に共薬剤として記載されるものである。
【0195】
本発明に係る抗体又は抗原結合断片は、追加の活性成分と同じ医薬組成物中に存在していてもよく、又は好ましくは、本発明に係る抗体又は抗原結合断片は、第1の医薬組成物に含まれ、追加の活性成分は、第1の医薬組成物とは異なる第2の医薬組成物に含まれる。したがって、1超の追加の活性成分が企図される場合、各追加の活性成分と本発明に係る抗体又は抗原結合断片とは、好ましくは、異なる医薬組成物に含まれる。かかる異なる医薬組成物は、合わせて/同時に、又は別々の時点で若しくは別々の箇所(例えば、身体の別々の部分)に投与してよい。
【0196】
好ましくは、本発明に係る抗体又は抗原結合断片と追加の活性成分とは、相加的治療効果、又は好ましくは相乗的治療効果を提供する。用語「相乗作用」とは、2以上の活性剤の併用効果が、各活性剤の個々の効果の合計よりも大きいことを説明するために用いられる。したがって、2以上の剤の併用効果によって活性又はプロセスの「相乗的阻害」が生じる場合、前記活性又はプロセスの阻害が、各活性剤の阻害効果の合計よりも大きいことを意図する。用語「相乗的治療効果」とは、(多数のパラメータのうちのいずれかによって測定される)治療効果が、それぞれの個々の治療で観察される個々の治療効果の合計よりも大きい、2以上の治療の組合せで観察される治療効果を指す。
【0197】
gZKA190、gZKA64、gZKA230、gZKA185、gZKA78に係る抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物が好ましい。
【0198】
一実施形態では、本発明の組成物は、本発明の抗体を含んでいてよく、前記抗体は、前記組成物中の全タンパク質の少なくとも50重量%(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)を構成し得る。かかる組成物では、抗体は、好ましくは、精製形態である。
【0199】
また、本発明は、医薬組成物を調製する方法であって、(i)本発明の抗体を調製する工程と、(ii)精製抗体を1以上の薬学的に許容し得る担体と混合する工程とを含む方法を提供する。
【0200】
別の実施形態では、医薬組成物を調製する方法は、抗体を1以上の薬学的に許容し得る担体と混合する工程を含み、前記抗体は、本発明の形質転換B細胞又は培養プラズマ細胞から得られたモノクローナル抗体である。
【0201】
治療目的のために抗体又はB細胞を送達する代りに、B細胞又は培養プラズマ細胞に由来する対象となるモノクローナル抗体(又はその活性断片)をコードしている核酸(典型的には、DNA)を被験体に送達することもでき、その結果、前記核酸は、被験体においてインサイチュで発現して所望の治療効果を提供することができる。好適な遺伝子療法及び核酸送達ベクターは、当技術分野において公知である。
【0202】
医薬組成物は、特に複数回投与フォーマットにパッケージ化されている場合、抗微生物剤を含んでいてよい。前記医薬組成物は、洗浄剤、例えばTween80等のTween(ポリソルベート)を含んでいてよい。洗浄剤は、一般的に、低濃度、例えば、0.01%未満で存在する。また、組成物は、等張にするためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含んでいてもよい。例えば、10±2mg/mLのNaCl濃度が典型的である。
【0203】
更に、医薬組成物は、特に、凍結乾燥される場合又は凍結乾燥物質から再構成された物質を含む場合、例えば、約15mg/mL~約30mg/mL(例えば、25mg/mL)の糖アルコール(例えば、マンニトール)又は二糖(例えば、スクロース又はトレハロース)を含んでいてよい。凍結乾燥用組成物のpHは、凍結乾燥前に5~8、又は5.5~7、又は約6.1に調整してよい。
【0204】
また、本発明の組成物は、1以上の免疫調節剤を含んでいてもよい。一実施形態では、免疫調節剤のうちの1以上は、アジュバントを含む。
【0205】
医学的処置、キット、及び使用
医学的処置
更なる態様では、本発明は、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の、(i)ジカウイルス感染の予防及び/又は治療;又は(ii)ジカウイルス感染の診断における使用を提供する。本発明に係る抗体又はその抗原結合断片(及び特にその前記好ましい実施形態)の使用は、(i)本明細書に記載されるジカウイルス感染の予防及び/又は治療;又は(ii)本明細書に記載されるジカウイルス感染の診断に好ましい。
【0206】
診断方法は、抗体又は抗体断片をサンプルと接触させることを含んでいてよい。かかるサンプルは、被験体から単離することができ、例えば、鼻道、鼻腔、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、眼、耳、胎盤、消化管、心臓、卵巣、脳下垂体、副腎、甲状腺、脳、皮膚、又は血液、好ましくは血漿又は血清から採取した単離組織サンプルであってよい。また、前記診断方法は、特に抗体又は抗体断片をサンプルと接触させた後に、抗原/抗体複合体を検出することを含んでいてよい。かかる検出工程は、典型的には、作業台で、即ち、ヒト又は動物の身体と全く接触することなしに実施される。検出方法の例は、当業者に周知であり、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)が挙げられる。
【0207】
ジカウイルス感染の予防とは、特に、予防的セッティングを意味し、ここで被験体は、ジカウイルス感染と診断されなかった(診断が行われなかったか、又は診断結果が陰性であった)及び/又は被験体は、ジカウイルス感染の症状を呈さない。したがって、ジカウイルス感染の予防は、「曝露後予防」(PEP)、即ち、可能なジカウイルス感染後、例えばジカウイルス感染地域における蚊の咬刺の後の予防的処置を含む。ジカウイルス感染の予防は、妊娠している被験体及び/又はジカウイルス感染地域に滞在する被験体(例えば、ジカウイルス感染地域に住む被験体又はジカウイルス感染地域を旅行する被験体)などの高リスク被験体において特に有用である。
【0208】
対照的に、治療的セッティングでは、被験体は典型的にはジカウイルスに感染し、ジカウイルス感染と診断されている、及び/又はジカウイルス感染の症状を呈している。ここで、ZIKV感染の「治療」及び「療法」/「治療的」という用語には、(完全な)治癒及びZIKV感染の減弱が含まれる。
【0209】
ジカウイルス感染の診断の好ましい方法は、本明細書に記載の診断方法であり、例えば、本発明に係る中和抗体又はその抗原結合断片及び/又は本発明に係るZIKV NS1結合抗体又はその抗原結合断片を用いる。
【0210】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、ジカウイルス感染と診断された被験体又はジカ感染の症状を示す被験体におけるジカウイルス感染の治療に好ましく使用される。
【0211】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、無症候性被験体におけるジカウイルス感染の予防及び/又は治療に使用されることが好ましい。これらの被験体は、ジカウイルス感染と診断されていても、診断されていなくてもよい。
【0212】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、妊娠している被験体におけるジカウイルス感染の予防及び/又は治療、特に先天性感染の予防に使用される。例えば、これは、Nigro G, Adler SP, La Torre R, Best AM, Congenital Cytomegalovirus Collaborating Group: Passive immunization during pregnancy for congenital cytomegalovirus infection; N Engl J Med 2005, 353:1350-1362に記載されているように、HCMV先天性感染の予防の場合と同様の方法で行うことができる。
【0213】
如何なる理論にも拘束されるものではないが、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、妊娠している被験体に投与されると、例えば、(i.v.)注射又は本明細書中に記載される他の投与経路で投与されると、FcRnとの相互作用を介して胎盤を通過することができると考えられる。重要なことには、本明細書に記載の抗体の「LALA」変異体とFcRnとの相互作用は損なわれない。FcRnは、胎盤の第1期に既に発現していると考えられる。
【0214】
或いは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、羊水外腔(extra-amniotic space)に投与することもできる。
【0215】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、ジカウイルス感染の予防及び/又は治療に使用され、前記抗体又はその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、又は医薬組成物は、(潜在的な)ジカウイルス感染後7日間まで、好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染後5日間まで、より好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染後4日間まで、更により好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染後3日間まで、最も好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染後1日間まで投与される。そのような治療スケジュールは、治療的セッティング及び予防的セッティング、特に曝露後予防(PEP)において有用であり得る。
【0216】
PEPにおいては、典型的には、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の投与は、潜在的なジカウイルス感染後、例えばZIKV感染地地域での蚊の咬刺後、できる限り早く行う。したがって、PEPにおいて、本発明に係る抗体又はその抗原結合性断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物最初の投与は、典型的には、前記のように、(潜在的な)ZIKV感染後1日間以上までである。
【0217】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、ジカウイルス感染の予防及び/又は治療のために使用され、前記抗体又はその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、又は医薬組成物が、(潜在的な)ジカウイルス感染前3ヶ月間まで、好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染前1ヶ月間まで、より好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染前2週間まで、更により好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染前1週間まで、最も好ましくは(潜在的な)ジカウイルス感染前1日間までに投与することが好ましい。そのような治療スケジュールは、特に、予防的セッティングを意味する。
【0218】
一般に、特にPEPにおいて、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の最初の投与の後、1回以上の後続の投与を行うことができ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1、15、16、17、18、19、20、又は21日間、1日ごと又は1日おきに一回量の投与を行う。また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の最初の投与の後、1回以上の後続の投与を行うことができ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1、15、16、17、18、19、20、又は21週間、1週間当たり1回又は2回の一回量の投与を行う。また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の最初の投与の後、1回以上の後続の投与を行うことができ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1、15、16、17、18、19、20、又は21週間、2週間又は4週間ごとに一回量の投与を行う。また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の最初の投与の後、1回以上の後続の投与を行うことができ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1、15、16、17、18、19、20、又は21ヶ月間、2ヶ月間又は4ヶ月間ごとに一回量の投与を行う。また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の最初の投与の後、1回以上の後続の投与を行うことができ、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10年間、1年間当たり1回又は2回、一回量の投与を行う。
【0219】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、0.005~100mg/kg体重の(単回)用量、好ましくは0.0075~50mg/kg体重の(単回)用量、より好ましくは0.01~10mg/kg体重の(単回)用量、更に好ましくは0.05~5mg/kg体重の(単回)用量、特に好ましくは0.1~1mg/kg体重の(単回)用量で投与される。
【0220】
本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、髄腔内、脳室内、経皮、経皮、局所、皮下、鼻腔内、経腸、舌下、膣内、又は直腸内経路などの、任意の数の経路によって投与することができる。静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内が好ましく、静脈内投与又は皮下投与がより好ましい。
【0221】
妊娠している被験体においては、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、羊水内又は羊水外(例えば注射により)投与することもできる。
【0222】
したがって、本発明はまた、被験体におけるジカウイルス感染を予防及び/又は治療する方法を提供し、前記方法は、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む。この方法の好ましい実施形態は、前述の(及び併用療法に関する以下の)医学的使用の好ましい実施形態に対応する。例えば、この方法における好ましい被験体は、ジカウイルス感染と診断された、又はジカウイルス感染の症状を呈する被験体である。この方法における別の好ましい被験体は、妊娠している被験体である。
【0223】
併用療法
本発明に係る方法及び使用における本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の投与は、単独で実施してもよく、特にZIKV感染を予防及び/又は治療するのに有用な助剤(本明細書では「追加の活性成分」とも称される)と組み合わせて実施してもよい。
【0224】
本発明は、ZIKV感染を治療及び/又は予防するのに有用な他の治療レジメン又は助剤の前、同時、又は後に被験体に投与される、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の投与を包含する。前記助剤と同時に投与される前記抗体、核酸、ベクター、細胞、又は医薬組成物は、同じ又は異なる組成物で、また、同じ又は異なる投与経路で投与してよい。
【0225】
前記他の治療レジメン又は助剤は、例えば、チェックポイント阻害剤であることができる。
【0226】
したがって、本発明の別の態様では、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、本明細書に記載の(医学的)使用のために、チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0227】
好ましいチェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1及び/又はCTLA4のブロックを目的とし、したがって、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び抗CTLA4抗体を含む。したがって、本発明に係る医薬組成物は、追加の活性成分のうちの1以上を含み得る。
【0228】
また、本明細書に記載のZIKV中和抗体又はその抗原結合断片は、更なる活性成分(共薬剤)として本明細書に記載されるZIKV NS1結合抗体又はその抗原結合断片と組み合わされることが好ましい。それにより、ZIKVの中和に加えて、NS1の病原性機能がブロックされ得る。したがって、本明細書に記載のZIKV NS1結合抗体又はその抗原結合断片は、好ましい更なる活性成分(共薬剤)である。
【0229】
本発明に係る抗体若しくは抗原結合断片は、追加の活性成分(助剤)と同じ医薬組成物中に存在していてもよく、又は好ましくは、本発明に係る抗体若しくは抗原結合断片は、第1の医薬組成物に含まれ、追加の活性成分(助剤)は、第1の医薬組成物とは異なる第2の医薬組成物に含まれる。したがって、1超の追加の活性成分(助剤)が企図される場合、各追加の活性成分(助剤)及び本発明に係る抗体又は抗原結合断片は、好ましくは、異なる医薬組成物に含まれる。かかる異なる医薬組成物は、合わせて/同時に、又は別々の時点で若しくは別々の箇所(例えば、身体の別々の部分)に投与してよい。
【0230】
好ましくは、本発明に係る抗体又は抗原結合断片と追加の活性成分(助剤)とは、相加的治療効果、又は好ましくは相乗的治療効果を提供する。用語「相乗作用」とは、2以上の活性剤の併用効果が、各活性剤の個々の効果の合計よりも大きいことを説明するために用いられる。したがって、2以上の剤の併用効果によって活性又はプロセスの「相乗的阻害」を生じる場合、前記活性又はプロセスの阻害が、各活性剤の阻害効果の合計よりも大きいことを意図する。用語「相乗的治療効果」とは、(多数のパラメータのうちのいずれかによって測定される)治療効果が、それぞれの個々の治療で観察される個々の治療効果の合計よりも大きい、2以上の治療の組合せで観察される治療効果を指す。
【0231】
更なる使用及びキット
更なる態様では、本発明は、また、抗ジカワクチンの抗原が正確な立体構造の特異的エピトープを含有していることを確認することによって前記ワクチンの品質をモニタリングするための、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の使用を提供する。チェックすべき抗ジカワクチンなどに含まれる好ましい抗原としては、(i)前記ZIKV Eタンパク質のドメインIII(EDIII)又は(ii)四次ZIKVエピトープを含むか、又はそれからなるZIKVエンベロープタンパク質又は任意の他の分子/複合体が挙げられる。
【0232】
更に、本発明は、また、ジカウイルス感染の診断における、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の使用を提供する。
【0233】
更に、単離された血液サンプル(例えば、全血、血清、及び/又は血漿)がジカウイルスに感染しているかどうかの判定における、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の使用も提供される。
【0234】
上記の通り、診断方法は、抗体又は抗体断片をサンプルと接触させることを含んでいてよい。かかるサンプルは、被験体から単離することができ、例えば、鼻道、鼻腔、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、眼、胎盤、消化管、心臓、卵巣、脳下垂体、副腎、甲状腺、脳、皮膚、又は血液、好ましくは血清又は血漿から採取した単離組織サンプルであってよい。また、前記診断方法は、特に抗体又は抗体断片をサンプルと接触させた後に、抗原/抗体複合体を検出することを含んでいてもよい。かかる検出工程は、典型的には、作業台で、即ち、ヒト又は動物の身体と全く接触することなしに実施される。検出方法の例は、当業者に周知であり、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)が挙げられる。
【0235】
更なる態様では、本発明はまた、本発明に係る少なくとも1つの抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る少なくとも1つの核酸、本発明に係る少なくとも1つの細胞、及び/又は本発明に係る少なくとも1つの医薬組成物を含むキットオブパーツを提供する。更に、前記キットは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を投与するための手段、例えば注射器又は容器、リーフレット、及び/又は前記のように投与される共薬剤を含むことができる。
【0236】
ジカウイルスのNS1タンパク質に特異的に結合する抗体
更なる態様では、本発明はまた、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0237】
ZIKV NS1タンパク質(非構造タンパク質1)は、細胞内に生じ、分泌され、細胞表面に会合し、特に分泌されたZIKV NS1タンパク質は、典型的には、ZIKVに感染した被験体の血清、唾液、尿などの体液中に見出される。分泌及び細胞表面会合NS1は免疫原性が高く、抗体産生を誘発する。NS1は、ZIKV感染の早期診断のための重要なバイオマーカーであることが知られている。したがって、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、例えばZIKV感染の診断に有用である。
【0238】
一般に、結合は、当業者に知られた、前記した標準的ELISAによって評価することができる。抗体結合の相対的親和性は、飽和時の最大結合の50%を達成するために必要な抗体の濃度(EC50)を測定することによって決定され得る。好ましくは、ZIKV NS1タンパク質に対する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片のEC50は、50ng/ml以下、好ましくは前記EC50が25ng/ml以下、より好ましくは前記EC50が15ng/ml以下、更により好ましくは前記EC50が10ng/ml以下、最も好ましくは前記EC50が5ng/ml以下、例えば約2又は3ng/mlである。
【0239】
好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、デングウイルス(DENV)NS1タンパク質に本質的に結合しない。「本質的に結合していない」とは、デングウイルス(DENV)NS1タンパク質に対する標準的ELISAにおいて、抗体又はその抗原結合性断片に関し、102ng/mlまで、好ましくは103ng/mlまで、より好ましくは5×103ng/mlまで、更により好ましくは8×103ng/mlまで、最も好ましくは104ng/mlまで、EC50値が測定できないことを意味する。換言すれば、標準的ELISAにおいて、デングウイルス(DENV)NS1タンパク質に対して飽和時の最大結合の50%を達成するために必要とする抗体又はその抗原結合断片の濃度(EC50)は、典型的には、102ng/ml超、好ましくは103ng/ml超、より好ましくは5×103ng/ml超、更により好ましくは8×103ng/ml超、最も好ましくは104ng/ml超である。
【0240】
また、好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)NS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、黄熱病ウイルス(YFV)NS1タンパク質、ウエストナイルウイルス(WNV)NS1タンパク質、日本脳炎ウイルス(JEV)NS1タンパク質、及び/又はダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)NS1タンパク質に本質的に結合しない。「本質的に結合しない」とは、抗体又はその抗原結合断片について、黄熱病ウイルス(YFV)NS1タンパク質、ウエストナイルウイルス(WNV)NS1タンパク質、日本脳炎ウイルス(JEV)NS1タンパク質、及び/又はダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)NS1タンパク質に対する標準的ELISAにおいて、抗体又はその抗原結合性断片に関し、102ng/mlまで、好ましくは103ng/mlまで、より好ましくは5×103ng/mlまで、更により好ましくは8×103ng/mlまで、最も好ましくは104ng/mlまで、EC50値が測定できないことを意味する。換言すれば、標準的ELISAにおいて、黄熱病ウイルス(YFV)NS1タンパク質、ウエストナイルウイルス(WNV)NS1タンパク質、日本脳炎ウイルス(JEV)NS1タンパク質、及び/又はダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)NS1タンパク質に対して飽和時の最大結合の50%を達成するために必要とする抗体又はその抗原結合断片の濃度(EC50)は、典型的には、102ng/ml超、好ましくは103ng/ml超、より好ましくは5×103ng/ml超、更により好ましくは8×103ng/ml超、最も好ましくは104ng/ml超である。
【0241】
好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体である。また、好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、好ましくはヒトモノクローナル抗体である。更に、また、好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、組換え抗体である。
【0242】
好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、Fc部分を含む。より好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、CH2L4A突然変異、CH2L5A突然変異、又はその両方を含む。Fc部分を含む及び/又はCH2L4A突然変異、CH2L5A突然変異、又はその両方を含む本発明に係る抗体又はその抗原結合断片の詳細な説明については、前記した本発明に係る中和抗体の文脈におけるFc部分及びCH2L4A突然変異、CH2L5A突然変異、又はその両方についての詳細な説明を参照する。したがって、対応する詳細な記載及び好ましい実施形態は、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片にも適用される。
【0243】
しかし、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、Fc部分を含まないことも好ましい。特に、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、精製抗体、一本鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvであることが好ましい。更により好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載されるように標識されており、例えばビオチン化されており、例えば、ビオチン化されたFab、Fab’、又はF(ab’)2断片である。
【0244】
好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルスNS1タンパク質の抗原性部位S1及び/又は抗原性部位S2に結合する。本発明者らは、驚くべきことに、ZIKV NS1タンパク質の抗原性部位S1及び/又は抗原性部位S2に結合する抗ZIKV NS1抗体は、デングウイルスNS1タンパク質(DENV NS1)と交差反応しないことを見出した。対照的に、ZIKV NS1タンパク質の抗原性部位S1にも抗原性部位S2にも結合しない抗ZIKV NS1抗体は、典型的にはDENV NS1と交差反応性である。この驚くべき知見は、ZIKV NS1上の抗原性部位S1及びS2を用いて、ZIKV NS1特異的抗体をDENV NS1と交差反応する抗体から区別することができることを示す。
【0245】
最も好ましくは、ジカウイルス(ZIKV)のNS1タンパク質に特異的に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ジカウイルスNS1タンパク質の抗原性部位S2に結合する。抗原性部位S2は、複数のZIKV系統において高度に保存されているが、他のフラビウイルスのNS1上の対応する部位と配列及び構造において相同ではなく、それによってZIKVに対する固有の特異性を提供する。
【0246】
ZIKV NS1タンパク質の抗原性部位S1及びS2は、実施例3、
図6に記載するように、本発明者らによって同定された。抗体が抗原性部位S1及び/又はS2に結合するかどうかは、例えば、以下に又は実施例3に記載されるように、交差競合試験を用いることによって当業者に容易に同定することができ、gZKA15(配列番号91~99)で表されるS1特異的抗体及び/又はgZKA35(配列番号127~135)で表されるS2特異的抗体を、「二次抗体」として使用することができる。そのような競合アッセイにおいて、gZKA15及び/又はgZKA35との任意の競合(完全又は部分)の存在は、試験される抗体がそれぞれ抗原性部位S1及び/又は抗原性部位S2に結合することを示す。
【0247】
一般に、競合アッセイのために、ForteBioによって提供される例えば「Octet(登録商標)RED96 System」などのタンパク質-タンパク質結合の特徴付けのための市販のシステムを、特にサプライヤの指示にしたがって使用することができる。
【0248】
例えば、ForteBioによって提供される「Octet(登録商標)RED96システム」を使用する例示的な競合アッセイにおいて、ZIKV-NS1タンパク質(例えば、PBS中に2.5μg/mlに希釈された)をAPS被覆センサーチップの表面上に固定することができる(例えば、7~9分間)。次いで、コーティングされたバイオセンサを、ブロッキング緩衝液(例えば、PBS中の0.1%BSA;例えば6分間)を含むウェルに入れ、遊離のバイオセンサ結合部位をブロックすることができる。次いで、コーティングされたバイオセンサーを、試験すべき抗体/複数の抗体(例えば、ブロッキング緩衝液中で10μg/mlに希釈された)とインキュベートすることができる(例えば、8分間)。試験すべき抗体の結合後(ステップ1)、バイオセンサーを「第2の抗体」、例えば、gZKA15及び/又はgZKA35を含むウェルに移した(例えば、8分間)(ステップ2)。会合なし(競合)、低会合(部分的競合)、又は(強い)会合(競合なし)のいずれが検出されるかによって、競合、部分的競合、又は競合なしをステップ2で決定することができる。
【0249】
前記したように、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、重鎖上の(少なくとも)3つの相補性決定領域(CDR)と、軽鎖上の(少なくとも)3つのCDRとを含む。一般に、相補性決定領域(CDR)は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインに存在する超可変領域である。典型的には、重鎖のCDR及び抗体の連結軽鎖が一緒になって抗原受容体を形成する。通常、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、可変ドメイン中で不連続に配置される。抗原受容体は、典型的に2つの可変ドメイン(2つの異なるポリペプチド鎖、即ち、重鎖及び軽鎖)から構成されるので、各抗原受容体には、6個のCDRが存在する(重鎖:CDRH1、CDRH2、及びCDRH3;軽鎖:CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)。単一の抗体分子は、通常、2つの抗原受容体を有し、したがって12個のCDRを含む。重鎖及び/又は軽鎖上のCDRは、フレームワーク領域によって分離されてもよく、フレームワーク領域(FR)はCDRよりも「可変」ではない可変ドメイン内の領域である。例えば、鎖(又はそれぞれの鎖)は、3つのCDRによって分離された4つのフレームワーク領域から構成され得る。
【0250】
重鎖上の3つの異なるCDR及び軽鎖上の3つの異なるCDRを含む、本発明の5つの例示的な抗体の重鎖及び軽鎖の配列を決定した。CDRアミノ酸の位置は、IMGTナンバリングシステム(IMGT: http://www.imgt.org/; cf. Lefranc, M.-P. et al. (2009) Nucleic Acids Res. 37, D1006-D1012)にしたがって定義される。
【0251】
表4は、本発明に係る例示的な抗体の重鎖CDR(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)及び重鎖可変領域(「VH」と称される)のアミノ酸配列の配列番号を示す。
【表4】
【0252】
表5は、本発明に係る例示的な抗体の軽鎖CDR(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)及び軽鎖可変領域(「VL」と称される)のアミノ酸配列の配列番号を示す。
【表5】
【0253】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表4及び/又は表5に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0254】
本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号93、111、129、155、159、163、167、171、175、179、183、187、191、195、199、203、207、211、215、219、223、227、231、及び235のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなる。
【0255】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号93、111、及び129のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号93で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。また、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号111で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。更に、また、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号129で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。
【0256】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号129で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなることが好ましい。
【0257】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号91、109、127、153、157、161、165、169、173、177、181、185、189、193、197、201、205、209、213、217、221、225、229、及び233のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号92、110、128、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226、230、及び234のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号93、111、129、155、159、163、167、171、175、179、183、187、191、195、199、203、207、211、215、219、223、227、231、及び235のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0258】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号91、109、及び127のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号92、110、及び128のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号93、111、及び129のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0259】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号91で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号92で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号93で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0260】
また、更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号109で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号110で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号111で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0261】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号127で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRH2は、配列番号128で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号129で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0262】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号94、112、及び130のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号95、96、113、114、131、及び132のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3は、配列番号97、115、及び133のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0263】
更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号94で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号95又は96で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3は、配列番号97で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0264】
また、更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号112で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号113又は114で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3は、配列番号115で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0265】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、
(i)少なくとも1つのCDRL1は、配列番号130で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;
(ii)少なくとも1つのCDRL2は、配列番号131又は132で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含み;及び/又は
(iii)少なくとも1つのCDRL3は、配列番号133で表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む。
【0266】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列を含む:(i)配列番号91~93、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号109~111、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号127~129、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iv)配列番号153~155、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(v)配列番号157~159、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vi)配列番号161~163、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(vii)配列番号165~167、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(viii)配列番号169~171、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ix)配列番号173~175、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(x)配列番号177~179、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xi)配列番号181~183、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xii)配列番号185~187、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xiii)配列番号189~191、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xiv)配列番号193~195、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xv)配列番号197~199、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xvi)配列番号201~203、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xvii)配列番号205~207、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xviii)配列番号209~211、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xix)配列番号213~215、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xx)配列番号217~219、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxi)配列番号221~223、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxii)配列番号225~227、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(xxiii)配列番号229~231、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(xxiv)配列番号233~235、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0267】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含むことが好ましい:(i)配列番号91~95及び97、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号91~94及び96~97、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iii)配列番号109~113及び115、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(iv)配列番号109~112及び114~115、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(v)配列番号127~131及び133、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(vi)配列番号127~130及び132~133、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0268】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下に示すCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含むことが好ましい:(i)配列番号127~131及び133、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(ii)配列番号127~130及び132~133、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0269】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び任意に軽鎖可変領域(VL)を含むことが好ましく、重鎖可変領域(VH)は、配列番号98、116、134、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228、232、及び236のいずれかで表されるアミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含むか又はからなる。
【0270】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下を含むことが好ましい:(i)配列番号98で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号99で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;(ii)配列番号116で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号117で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(iii)配列番号134で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号135で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0271】
最も好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下を含むことが好ましい:配列番号134で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号135で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。
【0272】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、gZKA15、gZKA25、又はgZKA35である、より好ましくは抗体又はその抗原結合断片は、gZKA25又はgZKA35である、更により好ましくは抗体又はその抗原結合断片は、gZKA35である。
【0273】
本発明者らは、本明細書においてZKA15、ZKA25、又はZKA35と称するモノクローナル抗体(mAb)を単離した(表4及び5の実施例1参照)。これらの抗体、これらの抗体、特にVH及びVL遺伝子に基づいて、本明細書で使用されるとき、用語「gZKA15」、「gZKA25」、及び「gZKA35」は、それぞれの「一般的な」抗体、又はその抗原結合断片を意味する。
【0274】
即ち、「gZKA15」は、配列番号91のCDRH1アミノ酸配列、配列番号92のCDRH2アミノ酸配列、配列番号93のCDRH3アミノ酸配列、配列番号94のCDRL1アミノ酸配列、配列番号95又は96のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号97のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号98のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号99のアミノ酸配列を有する。
【0275】
「gZKA25」は、配列番号109のCDRH1アミノ酸配列、配列番号110のCDRH2アミノ酸配列、配列番号111のCDRH3アミノ酸配列、配列番号112のCDRL1アミノ酸配列、配列番号113又は114のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号115のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号116のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号117のアミノ酸配列を有する。
【0276】
「gZKA35」は、配列番号127のCDRH1アミノ酸配列、配列番号128のCDRH2アミノ酸配列、配列番号129のCDRH3アミノ酸配列、配列番号130のCDRL1アミノ酸配列、配列番号131又は132のCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号133のCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を意味する。重鎖可変領域(VH)は、好ましくは配列番号134のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、好ましくは配列番号135のアミノ酸配列を有する。
【0277】
「抗体の産生」(前記セクション「抗体の産生」)及び「抗体の任意の追加の特徴」(前記セクション「抗体の任意の追加の特徴」)に言及する前記詳細な説明は、全ての抗体及びその抗原結合断片に適用される。即ち、それらのセクションは、本発明に係る中和抗体及びその抗原結合断片だけではなく、本発明に係るNS1タンパク質結合抗体及びその抗原結合断片にも適用される。
【0278】
特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合性断片は、標識されている、例えばビオチン化されていることが好ましい。
【0279】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合性断片は、ビオチン化されている。
【0280】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片が、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素にコンジュゲートされていることが好ましい。抗体のHRPへのコンジュゲーションは、例えば、Wisdom GB. Conjugation of antibodies to horseradish peroxidase. Methods Mol Biol. 2005;295:127-30又はAntibodies - a laboratory manual. Edited by Edward A. Greenfield, Second edition 2012, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN: 9781936113811に記載されている。
【0281】
例えば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、例えば測定可能性を提供する(例えば、定量化又は画像化を容易にするなど)ために、検出可能な標識に結合され得る。標識された抗体は、各種標識を使用する各種アッセイ、特にイムノアッセイで使用することができる。好ましい標識としては、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光剤、化学発光体、色素、酵素基質又は補因子、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、染料(例えば蛍光染料及びタンデム染料)などが挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、又はフィコエリトリンが挙げられ;発光材料の例は、ルミノールであり、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35S、又は3Hが挙げられる。このような標識された試薬は、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えばELISA)、蛍光イムノアッセイなどの各種知られたアッセイにおいて、好ましくはELISAにおいて使用することができる。したがって、本発明に係る標識された抗体は、例えばUS3,766,162、US3,791,932、US3,817,837、及びUS4,233,402などに記載されているアッセイで使用することができる。
【0282】
好ましい標識としては、(i)特に結合ブロックアッセイ(Blockade-of-binding assay)、ウェスタンブロッティング、ELISA、及び免疫組織化学における前記酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)又はアルカリホスファターゼ;(ii)特にELISA及び免疫組織化学における前記補欠分子族複合体、例えば、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン;(iii)特に免疫蛍光及びフローサイトメトリにおける前記蛍光剤、例えば蛍光色素及び蛍光タンパク質(例えば、(強化)緑色蛍光タンパク質(EGFP);TagBFP、Turquoise、Venus、KO2、Cherry、Apple、Kate2);及び(iv)フローサイトメトリにおけるタンデム色素が挙げられる。
【0283】
好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、ビオチン化されている。ビオチン化は迅速で特異的であり、ビオチンのサイズが小さい(MW=244.31g/mol)ため、分子の自然な機能を混乱させる可能性は低い。ビオチンは、非常に高い親和性、速いオンレート、及び高い特異性でストレプトアビジン及びアビジンに結合する。ストレプトアビジン及びアビジンへのビオチン結合は、極端な熱、pH、及びタンパク質分解に対して耐性であり、様々な環境でビオチン化分子の捕捉を可能にする。本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、化学的又は酵素的にビオチン化することができる。化学的ビオチン化は、アミンの非特異的ビオチン化をもたらすために種々のコンジュゲーション化学を利用する(例えば、NHS-カップリングは、抗体中の任意の1級アミンのビオチン化をもたらす、下記参照)。酵素的ビオチン化は、細菌ビオチンリガーゼの使用によって特定の配列内の特定のリジンのビオチン化をもたらす。
【0284】
更に、第2の抗体又はその抗体断片も、標識として使用することができる。この場合、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、第2の抗体又はその抗体断片にコンジュゲートされて、例えばUS4,676,980に記載される抗体ヘテロコンジュゲートを形成する。この場合、第2の抗体は、本明細書に記載されるように任意に標識されていてもよい。
【0285】
抗体を標識に結合させるための方法は、当技術分野で周知である。例えば、抗体又はその抗原結合断片において、第1級アミン(-NH2)で終結するリジンの側鎖を用いて、抗体又はその抗原結合断片に共有結合的に標識を連結することができる。多くの変異体標識手順が文献に記載されている。例えば、標識化アプローチは、NHSエステル、ヘテロ二官能性試薬、カルボジイミド、及び過ヨウ素酸ナトリウムからなる群から選択することができる。
【0286】
NHSエステルは、特に蛍光色素標識の場合に使用することができる。蛍光色素標識は、組み込まれたNHSエステル(「スクシンイミジルエステル」とも称される)を用いて標識の活性化形態で購入することができる。活性化された色素は、適切な条件下で抗体又はその抗原結合断片(例えば、リジン基を介して)と反応させることができる。過剰の反応性色素は、標識された抗体又はその抗原結合断片をイムノアッセイに使用する前に(例えば、カラムクロマトグラフィーによって)除去することができる。
【0287】
異種二官能性試薬は、特に、標識がタンパク質分子(例えば、HRP、アルカリホスファターゼ、又はフィコエリトリン)である場合に使用することができる。この場合、抗体又はその抗原結合断片及び標識は、複数のアミンを有していてもよい。この状況では、1つの分子上(例えば、抗体又はその抗原結合断片上の)のリジンの幾つかを修飾して、新たな反応基(X)生成する、標識上のリジンで、別の反応基(Y)を生成する(又は逆も然り)。次いで、「ヘテロ二官能性試薬」を用いてY基を導入し、その後、抗体及び標識が混合されたときにX基と反応し、このようにしてヘテロ二量体コンジュゲートを生成する。
【0288】
EDCなどのカルボジイミドを用いて、特にアミン含有分子とカルボキシル含有分子との間の共有結合を形成することができる。カルボジイミドは、カルボキシル基を活性化し、次いで活性化された中間体は、(例えば、抗体又はその抗原結合断片上のリジン残基によって提供される)アミンによって攻撃される。カルボジイミドを用いて、抗体をカルボキシル化粒子(例えば、ラテックス粒子、磁性ビーズ)、及びマイクロウェルプレート又はチップ表面などの他のカルボキシル化表面にコンジュゲートさせることができる。カルボジイミドはまた、抗体又はその抗原結合断片に色素又はタンパク質標識を結合するために使用することができる。
【0289】
過ヨウ素酸ナトリウムを、特に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識するために使用することができる。過ヨウ素酸塩は、HRP分子上の炭水化物鎖を活性化して抗体又はその抗原結合断片上のリジンと反応することができるアルデヒド基を生成する。HRPそれ自体は非常に少ないリジンを有するので、高程度のHRP重合なしに抗体-HRPコンジュゲートを生成することが比較的容易である。
【0290】
任意に、例えばUS4,831,175に記載されているように、標識と本発明の抗体との間にリンカーを使用してもよい。抗体又はその抗原結合断片は、例えばUS5,595,721に記載されているように、放射性ヨウ素、インジウム、イットリウム、又は当技術分野で公知の他の放射性粒子で直接標識することができる。
【0291】
したがって、本発明はまた、
(i)本発明に係る抗体又はその抗原結合断片;及び
(ii)前記した標識
を含む複合体を提供する。
【0292】
したがって、このような複合体は、好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートした標識である。好ましくは、標識と、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片とは、共有結合している。
【0293】
例えば、本発明に係る複合体は、(i)本発明に係る抗体と、(ii)蛍光ペプチド又はタンパク質(例えば、EGFP)などのペプチド又はタンパク質である標識とを含む融合タンパク質であることができる。
【0294】
別の態様では、本発明はまた、前記した本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子、又は特に本発明に係る複合体が前記した融合タンパク質である場合には、前記した本発明に係る複合体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。
【0295】
核酸分子及び/又はポリヌクレオチドの例としては、例えば、組換えポリヌクレオチド、ベクター、オリゴヌクレオチド、rRNA、mRNA、miRNA、siRNA、又はtRNAなどのRNA分子、又はcDNAなどのDNA分子が挙げられる。
【0296】
軽鎖及び重鎖の一部又は全部をコードする核酸配列及び本発明の抗体のCDRが好ましい。したがって、本発明の例示的抗体の軽鎖及び重鎖、特にVH及びVL配列及びCDRの一部又は全部をコードする核酸配列が好ましく提供される。表4及び表5は、本発明に係る例示的な抗体のCDR及びVH及びVLのアミノ酸配列の配列番号を示す。
【0297】
以下の表6は、本発明に係る例示的な抗体のCDR及びVH及びVLをコードする例示的な核酸配列の配列番号を示す。遺伝子コードの重複により、本発明はまた、これらの核酸配列の配列変異体、特に同じアミノ酸配列をコードするそのような配列変異体をも包含する。
【0298】
核酸分子は、核酸成分を含む、好ましくは核酸成分からなる分子である。核酸分子という用語は、好ましくは、DNA又はRNA分子を指す。特に、それは用語「ポリヌクレオチド」と同義に使用される。好ましくは、核酸分子は、糖/リン酸骨格のホスホジエステル結合によって互いに共有結合しているヌクレオチドモノマーを含むか又はそれらからなるポリマーである。「核酸分子」という用語は、塩基修飾、糖修飾、又は骨格修飾などされたDNA分子又はRNA分子などの修飾核酸分子も包含する。
【0299】
表6は、本発明に係る3つの例示的な抗体(「ZKA15」、「ZKA25」、「ZKA35」)のCDR及び重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の例示的な核酸配列を示す。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【0300】
好ましくは、本発明に係る核酸分子の配列は、配列番号100~108、118~126、及び136~144のいずれか1つで表される核酸配列を含むか又はからなる。
【0301】
また、好ましくは、本発明に係る核酸配列は、本発明に係る抗体における(例示的な)抗体におけるCDR、VH配列、及び/又はVL配列をコードする核酸、例えば表6に示される配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0302】
一般に、核酸分子は、特定の核酸配列を挿入、欠失、又は変更するよう操作することができる。そのような操作による変更には、制限部位の導入、コドン使用の修正、転写及び/又は翻訳調節配列の付加又は最適化などの変更が含まれるが、これに限定されない。核酸を変更してコードされているアミノ酸を変えることもできる。例えば、1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を抗体のアミノ酸配列に導入することが有用であり得る。このような点突然変異は、エフェクタ機能、抗原結合親和性、翻訳後修飾、免疫原性などを改変することができ、共有結合基(例えば、標識)の結合のためにアミノ酸を導入したり、タグ(例えば、精製目的のために)を導入することができる。突然変異は、特定の部位に導入することができる、又はランダムに導入することができ、その後、選択(例えば、分子進化)を行うことができる。例えば、本発明に係る(例示的な)抗体のCDR領域、VH配列、及び/又はVL配列のいずれかをコードする1以上の核酸は、コードされたアミノ酸に異なる性質を導入するように、ランダム又は指向的に突然変異させることができる。このような変化は、初期変化が保持され、他のヌクレオチド位置での新しい変化が導入される反復プロセスの結果であり得る。更に、独立したステップで達成される変化を組み合わせることができる。コードされたアミノ酸に導入される異なる特性は、増強された親和性を含み得るが、これに限定されない。
【0303】
更に、本発明に係る核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターも本発明の範囲内に含まれる。好ましくは、ベクターは、前記した核酸分子を含む。
【0304】
「ベクター」という用語は、核酸分子、好ましくは組換え核酸分子、即ち、天然には存在しない核酸分子を意味する。本発明の文脈におけるベクターは、所望の核酸配列を組み込む又は含むことに適している。そのようなベクターは、保存ベクター、発現ベクター、クローニングベクター、移入ベクターなどであることができる。保存ベクターは、核酸分子の便利な保存を可能にするベクターである。したがって、ベクターは、例えば、本発明に係る所望の抗体又はその抗体断片に対応する配列を含み得る。発現ベクターは、RNA(例えば、mRNA)、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質などの発現産物の産生に使用することができる。例えば、発現ベクターは、プロモーター配列などのベクターの配列範囲の転写に必要な配列を含むことができる。クローニングベクターは、典型的には、ベクターに核酸配列を組み込むために使用することができるクローニング部位を含むベクターである。クローニングベクターは、例えば、プラスミドベクター又はバクテリオファージベクターであることができる。移入ベクターは、核酸分子を細胞又は生物に移入するのに適したベクター、例えばウイルスベクターであることができる。本発明の文脈におけるベクターは、例えば、RNAベクター又はDNAベクターであることができる。好ましくは、ベクターはDNA分子である。例えば、本願の意味におけるベクターは、クローニング部位、抗生物質耐性因子などの選択マーカー、及び複製起点などのベクターの増殖に適した配列を含む。好ましくは、本願の文脈におけるベクターはプラスミドベクターである。
【0305】
更なる態様では、本発明はまた、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を発現する、及び/又は本発明に係るベクターを含む細胞を提供する。
【0306】
そのような細胞の例としては、酵母細胞、動物細胞、又は植物細胞などの真核細胞が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、細胞は哺乳類細胞、より好ましくは哺乳動物細胞系である。好ましい例としては、ヒト細胞、CHO細胞、HEK293T細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、骨髄腫細胞、又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0307】
特に、細胞は、好ましくは発現ベクターを用いて、本発明に係るベクターでトランスフェクトすることができる。「トランスフェクション」という用語は、DNA又はRNA(例えばmRNA)分子などの核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞に導入することを意味する。本発明の文脈において、用語「トランスフェクション」は、核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞、例えば哺乳動物細胞に導入するための当業者に公知の任意の方法を包含する。そのような方法には、例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション、例えば、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、又はDEAE-デキストラン又はポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーに基づくトランスフェクションを含む。好ましくは、導入は非ウイルス性である。
【0308】
更に、本発明の細胞は、例えば本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を発現させるために、本発明に係るベクターで安定的又は一過的にトランスフェクトすることができる。好ましくは、細胞は、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードする本発明に係るベクターで安定にトランスフェクトされる。或いは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードする本発明のベクターを、細胞に一過的にトランスフェクトすることも好ましい。
【0309】
更なる態様では、本発明はまた、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片;前記した本発明に係る複合体;前記した本発明に係る核酸分子;前記した本発明に係るベクター;又は前記した本発明に係る細胞を含む組成物を提供する。前記した本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、又は本発明に係る複合体を含む組成物が好ましい。
【0310】
そのような組成物は、中和抗体の文脈において前記した医薬組成物であってもよく、前記した医薬組成物の詳細な説明及び好ましい実施形態が、ZIKV NS1タンパク質に結合する、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片にも適用される。しかし、前記組成物は、診断(ZIKV感染の)又は分析目的のような非医薬目的のために使用することもできる。
【0311】
好ましくは、前記組成物は液体形態であり、例えば診断アッセイにおいて直接使用するための液体中に、例えば抗体又はその抗原結合性断片を提供する。液体(ビヒクル)は、目的に応じて、例えばアッセイに応じて選択することができる。好ましくは、本発明に係る組成物は、PBS(リン酸緩衝食塩水)又は他のバッファを含む。そのようなバッファは、好ましくは生物学的バッファであり、したがって、前記組成物は、MES、BIS-TRIS、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BIS-TRISプロパン、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、Trizma、POPSO、HEPPS、TRICINE、Gly-Gly、BICINE、HEPBS、TAPS、AMPD、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPS、及びCABSのいずれかを含むことができる。前記組成物がリンゲル液を含むことも好ましい。更に、前記組成物はTris、例えばTris-HClを含んでもよい。
【0312】
本発明に係る組成物はまた、Tween20又はTween80などのTween(ポリソルベート)などの洗浄剤を含むことができる。洗浄剤は、好ましくは、例えば0.01%未満の低濃度で存在する。組成物はまた、張性を与えるためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含むことができる。例えば、10±2mg/mlのNaClの濃度が典型的である。
【0313】
更に、本発明に係る組成物は、任意にBSA(ウシ血清アルブミン)又はHSA(ヒト血清アルブミン)などのタンパク質安定化剤を含んでいてもよい。必要に応じて本発明に係る組成物に含有させることができるタンパク質安定剤の更なる例としては、例えば前記したバッファ;塩化ナトリウムなどの塩;ヒスチジン、グリシン、及びアルギニンなどのアミノ酸;トレハロース及びスクロース(二糖類)、マンニトール、及びソルビトール(糖アルコール)などのポリオール/二糖類/多糖類;ポリソルベート20、ポリソルベート80などの界面活性剤、及びHSA又はBSAのようなタンパク質;デキストラン及びポリエチレングリコールなどのポリマー;抗酸化剤が挙げられる。
【0314】
更に、本発明に係る組成物は、任意に、アジ化ナトリウムなどの防腐剤を含んでもよい。防腐剤は、典型的には、微生物汚染を防ぐために使用される。
【0315】
更なる態様では、本発明はまた、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、又は本発明に係る組成物を含むキットオブパーツを提供する。
【0316】
そのようなキットオブパーツは、任意に、以下の1以上を更に含むことができる:
(i)1以上の溶液、例えば診断アッセイに使用される溶液、例えば、抗体又はその抗原結合断片を希釈するための溶液;
(ii)リーフレット、例えば使用説明書付きリーフレット;
(iii)前記した標識、及び任意に、標識に必要な溶液及び/又は更なる成分;及び/又は
(iv)容器又は装置、例えば診断アッセイに有用な容器又は装置、例えば1以上のELISAプレート。
【0317】
好ましくは、前記した本発明に係るキットはまた、発色のための基質を含む。そのような基質の例としては、特にアルカリホスファターゼによる検出の場合には、p-NPP;特に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の使用の場合には、ABTS、TMB、又はOPDのような酵素が挙げられる。任意に、基質は、適切なバッファ、例えば本発明に係る組成物の文脈において前記したバッファ中で希釈することができる。或いは、基質及びバッファは、キット中の別々の物として提供されてもよい。
【0318】
標識に関して、本発明に係るキットはまた、酵素コンジュゲートストレプトアビジン、又はプローブ抗体の結合を検出するための別の系を含むことができる。例えば、プローブ抗体はマウス化形態で作製することができ、この場合、ビオチン化を必要とせずに抗マウス二次抗体で結合を検出することができる。抗マウス二次抗体は、典型的には、ヒト抗体と反応しないためにポリクローナルである及び/又は交差吸着される。
【0319】
更に、本発明に係るキットは、好ましくは、1以上のELISAプレートを含む。より好ましくは、これらのELISAプレートは、ZIKV-NS1タンパク質でプレコートされる。任意に、そのようなプレコートELISAプレートは、予めブロックされていてもよい。
【0320】
ジカウイルス感染の診断
更なる態様では、本発明はまた、本発明のZIKV NS1タンパク質に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、本発明に係る組成物、又は本発明に係るキットオブパーツの、ジカジカウイルス(ZIKV)感染の診断における使用を提供する。
【0321】
ジカウイルス(ZIKV)感染の診断は、典型的には、インビトロで、例えば診断される被験体の単離試料中で行われる。被験体の好ましい単離試料には、体液の試料及び組織試料が含まれる。体液の試料がより好ましい。ZIKV感染の診断に好ましい体液には、血液(例えば、全血、血漿、血清)、唾液、及び尿が含まれる。血液、特に血漿又は血清が最も好ましい。
【0322】
したがって、本発明はまた、ZIKV NS1タンパク質に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、本発明に係る組成物、又は本発明に係るキットオブパーツの、単離血液試料などの(体液の)単離試料がジカウイルスに感染しているかどうかの決定における使用を提供する。前記したように、ZIKV感染を診断するための好ましい体液には、血液(例えば、全血、血漿、血清)、唾液、及び尿が含まれる。血液、特に血漿又は血清がより好ましい。
【0323】
ジカウイルス感染の診断のために、異なる診断アッセイを使用することができる。好ましい診断アッセイはイムノアッセイである。イムノアッセイの好ましい例としては、ELISA、免疫蛍光、免疫組織化学、及びフローサイトメトリが挙げられる。好ましくは、診断にはELISAが含まれる。例えば、標準的ELISA、サンドイッチELISA、又は結合アッセイのブロックを使用することができる。
【0324】
好ましくは、診断アッセイは、診断される被験体の(単離)試料中における、
(i)ZIKV NS1タンパク質それ自体(の存在);及び/又は
(ii)抗ZIKV NS1抗体(の存在)
を検出する。
【0325】
好ましくは、結合ブロックアッセイが使用される。このアッセイにおいて、診断される被験体からの単離試料(例えば、血液(例えば、全血、血漿、血清)、唾液、及び尿などの体液の試料)を、ZIKV NS1タンパク質でコーティングされたELISAプレートに添加し、結合のためインキュベートした(例えば、少なくとも約30分間又は少なくとも約1時間)。その後、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を添加する(「プローブ抗体」として)。ここで、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、標識されていることが好ましく、例えばビオチン化又は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされている。更なるインキュベーション時間(例えば、少なくとも約1分間、好ましくは少なくとも約3分間、より好ましくは少なくとも約5分間、更により好ましくは少なくとも約10分間、最も好ましくは少なくとも約15分間)の後、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片の結合の阻害を決定することができる。
【0326】
一般に、結合の阻害は、被験体の試料中の抗ZIKV NS1抗体が存在することを示し、したがって被験体のZIKV感染を示す。対照的に、非感染被験体の試料では、典型的には、結合の阻害が想定されない。重要なことに、本発明のZIKV NS1結合抗体を用いたこのようなアッセイは、既に他のフラビウイルスに感染している被験体においては陽性を示さない。フラビウイルスは、典型的には、ZIKVと交差反応する多数の抗体を誘導する。換言すれば、このアッセイは非常に特異的であり、交差反応性抗体によって影響されない。
【0327】
したがって、本発明はまた、以下の工程を含む、ジカウイルス感染のインビトロ診断のための結合ブロックアッセイを提供する:
(i)ZIKV NS1タンパク質で被覆されたプレートに、診断される被験体の単離試料を添加し、前記試料を前記プレート上でインキュベートすること、
(ii)請求項47~75のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、又は請求項76に記載の複合体を添加すること、
(iii)前記抗体又はその抗原結合断片の結合の結合の阻害を決定すること。
【0328】
好ましくは、診断される被験体由来の単離試料は、血液、唾液、及び尿から選択され、好ましくは、試料は、全血、血漿、又は血清などの血液試料である。
【0329】
また、工程(ii)で添加される抗体又はその抗原結合断片は、標識されている、好ましくはビオチン化されている、又は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされていることが好ましい。
【0330】
更に、診断される被験体由来の単離試料は、好ましくは例えば1:5~1:50、好ましくは1:5~1:25、例えば1:10で希釈される。
【0331】
好ましくは、工程(i)におけるインキュベーション時間は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも15分間、より好ましくは少なくとも30分間、更により好ましくは少なくとも45分間、最も好ましくは少なくとも60分間である。
【0332】
更に、抗体又はその抗原結合断片を添加した後の工程(ii)において、抗体又はその抗原結合断片を少なくとも1分間、好ましくは少なくとも3分間、より好ましくは少なくとも5分間、更により好ましくは少なくとも10分間、最も好ましくは少なくとも15分間、インキュベートすることが好ましい。
【0333】
好ましくは、結合アッセイのブロックにおけるプローブ抗体として使用される、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片が、本発明に係る好ましい抗体又はその抗原結合断片である。例えば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、ジカウイルスNS1タンパク質の抗原性部位S2に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片であることができる。最も好ましくは、結合アッセイのブロックにおいてプローブ抗体として使用される、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、以下で表されるCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列とCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列とを含む抗体又はその抗原結合断片である:(i)配列番号127~131及び133、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体;又は(ii)配列番号127~130及び132~133、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体。特に好ましくは、結合アッセイのブロックにおけるプローブ抗体として使用される、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号134で表される重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体、及び/又は配列番号135で表される軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその機能的配列変異体を含む抗体又はその抗原結合断片である。
【0334】
例えば、本発明に係る例示的なビオチン化抗体又はその抗原結合断片の結合の阻害は、ZIKV NS1タンパク質に対する70%最大結合を達成するための、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片の最適濃度を決定することによって評価することができる。例えば、ZIKV NS1タンパク質に対する70%最大結合を達成するための、例示的抗体gZKA15、gZKA25、及びgZKA35の最適濃度は、それぞれ38、17、及び7ng/mlであり得る。前記した結合ブロックアッセイを行った後、p-NPPなどの基質を加え、ELISAプレートを405nmで読み取ることができ、結合の阻害率は以下の式(I)によって計算することができる。
(I)%阻害=(1-[(OD試料-OD neg ctr)/(OD pos ctr-OD neg ctr)])×100
式中、「%阻害」は、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片のZIKV NS1タンパク質への結合の阻害のパーセンテージを意味し、「OD試料」は、試料の光学密度を意味し、「OD neg ctr」は、陰性対照の光学密度を意味し、「OD pos ctr」は、陽性対照の光学密度を意味する。
【0335】
このアッセイは、DENVなどの他のフラビウイルス感染と区別できる、個体レベルでの臨床的、サブ臨床的、及び無症状のZIKV感染を検出する能力などのいくつかの利点を提供する。特に、本発明に係る診断アッセイは、直接ELISA結合アッセイよりも高い精度を提供する。
【0336】
更に、本発明はまた、(単離試料における)ジカ感染の(インビトロでの)診断方法を提供し、ZIKV NS1タンパク質に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、本発明に係る組成物、又は本発明に係るキットオブパーツが、(体液の)単離試料(例えば、単離された血液試料)がジカに感染しているかどうかを判定するために使用される。
【0337】
診断における前記使用の好ましい実施形態が、診断方法にも適用される。例えば、(被験体の)好ましい単離された試料は、体液の試料及び組織試料を含む。体液の試料がより好ましい。ZIKV感染の診断に好ましい体液には、血液(例えば、全血、血漿、血清)、唾液、及び尿が含まれる。血液、特に血漿又は血清が最も好ましい。更に、好ましい診断アッセイはイムノアッセイである。イムノアッセイの好ましい例には、ELISA、免疫蛍光、免疫組織化学、及びフローサイトメトリが含まれる。好ましくは、診断にはELISAが含まれる。最も好ましくは、前記した結合ブロックアッセイが使用される。
【0338】
好ましくは、(単離試料中における)ジカ感染の(インビトロでの)診断のための方法は、
(i)単離試料を、ZIKV NS1タンパク質に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、又は本発明に係る組成物と接触させる工程を含む。
【0339】
より好ましくは、(単離試料中における)ジカ感染の(インビトロでの)診断のための方法は、以下の工程を含む:
(0)診断される被験体からの単離試料(例えば、血液(例えば、全血、血漿、血清)、唾液、及び尿などの体液の試料)をZIKV NS1タンパク質でコーティングされたELISAプレートに添加すること、
(i’)更に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をELISAプレートに添加すること(ここで、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは標識されている(例えばビオチン化されている))、
(ii)任意に、ELISAプレートを洗浄すること、及び
(iii)本発明に係る抗体又はその抗原結合断片の結合の阻害を決定することを含む。
【0340】
更なる態様では、本発明はまた、ZIKV NS1タンパク質に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、本発明に係る組成物、本発明に係るキットオブパーツ、又は本発明に係るZIKV診断方法を用いることにより、ジカウイルス感染と診断された被験体におけるZIKV感染の治療又は予防に用いるための、本発明に係る中和抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を提供する。
【0341】
更なる態様では、本発明はまた、ジカウイルス感染を予防及び/又は治療する方法を提供し、前記方法は、以下の工程を含む:
(i)ZIKV NS1タンパク質に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、本発明に係る組成物、本発明に係るキットオブパーツ、又は本発明に係るZIKV診断方法を用いることにより、被験体におけるジカウイルス感染を診断すること、及び
(ii)本発明に係る中和抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を、前記被験体に投与すること。
【0342】
好ましくは、ジカウイルス感染を予防及び/又は治療するこの方法において、ジカウイルス感染を診断する工程(i)は、(体液の)単離試料(例えば単離血液試料)についてのインビトロ診断として行われる。
【0343】
更なる態様では、本発明はまた、以下を含むキットオブパーツを提供する:
(i)ZIKV NS1タンパク質に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る複合体、本発明に係る組成物、又は本発明に係るキットオブパーツ、及び
(ii)本発明に係る中和抗体又はその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物。
【0344】
そのようなキットオブパーツは、前記した方法において特に有用である。そのような方法及び/又はそのようなキットを使用することにより、ZIKV感染を特異的に診断する、並びに予防及び/又は治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0345】
【
図1】
図1は、4つのZIKV免疫ドナー(ZKA、ZKB、ZKC、及びZKD)由来の抗体の、ZIKV及びDENV1-4のEタンパク質及びZIKV Eタンパク質のEDIIIドメイン;NNB中和非Eタンパク質結合抗体に対する反応性(ELISA)及びZIKV及びDENV1中和活性を示す。
【
図2】
図2は、4つのZIKV免疫ドナー(ZKA、ZKB、ZKC、及びZKD)由来の抗体の、ZIKV、DENV1-4、及び他のフラビウイルスのNS1タンパク質に対する反応性(ELISA)を示す。YFV-黄熱病ウイルス;WVN-西ナイルウイルス;JEV-日本脳炎ウイルス;及びTBEV-ダニ媒介性脳炎ウイルス(nd、測定されず)。
【
図3】
図3は、ELISAによって測定した、ZIKV及びDENV1 E及びZIKV EDIIIタンパク質に対するZKA190、ZKA78、及びZKA64抗体の結合を示す。
【
図4】
図4は、ELISAによって測定した、ZIKV E、DENV1 VLP、及びZIKV EDIIIタンパク質に対するZKA185及びZKA190抗体の結合を示す。
【
図5】
図5は、ELISAによって測定した、ZIKV及びDENV1-4 NS1タンパク質に対するZKA15、ZKA25、及びZKA35抗体の結合を示す。
【
図6】
図6は、実施例3について、交差競合オクテット結合研究を用いたZIKV NS1タンパク質抗原性部位マッピングを示す。(A~B)ZIKV NS1に特異的である(A)、又はDENV NS1と交差反応性である(B)24個のmAbに対してオクテットによって行われた交差競合マトリックス。+、二次Abの結合の欠如;+/-、二次mAbの結合の部分的損失;-、二次mAbの結合。取消線の施された細胞、試験されていない。(C)BLI(オクテット)交差競合を用いて定義されたZIKV NS1特異的mAbによって標的とされる抗原性部位の地図。
【
図7】
図7は、実施例4について、ZIKV免疫(n=4)、DENV免疫(n=5)、及び対照ドナー(n=48)(1/10希釈)に由来する血漿中のZIKV NS1を検出するためのプローブとして、mAb ZKA35を用いる結合アッセイのブロックを示す。血漿試料を、NS1に結合する能力(白色ドット)及びビオチン化mAb ZKA35のNS1への結合を阻害する能力(黒色ドット)について試験した。
【
図8】
図8は、実施例5について、フローサイトメトリで測定した、Vero細胞上のZIKV(H/PF/2013株)及びDENV1に対するZKA190、ZKA64、ZKA64-LALA、ZKA230、及びZKA78抗体の中和活性(感染細胞の%)を示す。
【
図9】
図9は、実施例5について、細胞生存率の読み出し(wst-1、Roche)で測定した、Vero細胞上のZIKV(H/PF/2013株)に対するZKA190、ZKA64、ZKA185、ZKA230、及びZKA78抗体の中和活性を示す。
【
図10】
図10は、実施例6について、フローサイトメトリで測定した、非許容性K562細胞上のZIKV(H/PF/2013株)に対するZKA190、ZKA64、ZKA64-LALA、ZKA185、ZKA230、及びZKA78抗体の感染増強活性(ADE、抗体依存性増強)(感染細胞の%)を示す。
【
図11】
図11は、実施例6について、4つのZIKV免疫血漿及び1つのDENV免疫血漿が、K562細胞のZIKV感染を増強するのと同様の能力を示したことを示す(上のパネル)。このADE効果は、EDIII特異的ZKA64-LALA抗体によって、5つの免疫血漿全てにおいて完全にブロックされた(下のパネル)。
【
図12】
図12は、2013年以降のアジア系統由来の39種のZIKV株(1947年に単離されたアフリカ系統の原型株MR766を含む)のEDIII領域のアミノ酸アラインメントを示す。
【
図13】
図13は、実施例5について、フローサイトメトリで測定した、Vero細胞上のZIKV(H/PF/2013、MR766及びMRS_OPY_Martinique_PaRi_2015)の3種の株に対するZKA190及びZKA190-LALA抗体の中和活性を示す(感染細胞の%)。
【
図14】
図14は、実施例7について、欧州住民のNS1結合ブロックを示す。イタリアとスイスで収集した試料のBOB値を示す。ZIKV、一次及び二次DENV-、WNV-、及びCHIKV感染個体に由来する試料及びスイスの健常献血者の試料のBOB値がプロットされている。
【
図15】
図15は、実施例8について、その量が増加するmAb(A)の存在下での感染Vero細胞のパーセンテージで測定される、ZIKVの4株のパネルに対して試験したZKA190及びC8 mAbの中和を示す。また、IC50値(B)及び統計値(C)も示す。データは、少なくとも2つの独立した実験を代表する。
【
図16】
図16は、実施例9について、抗体ZKA190によるZIKV感染の中和及び増強を示す。(A)Vero細胞のプラークアッセイ(左パネル)及びフルオロフォア標識抗E抗体を用いた感染hNPCの間接免疫蛍光(右パネル)によって測定される、ZKA190、ZKA190-LALA、及び対照mAbによるhNPCのZIKV PRVABC59株感染の中和。(B)ZKA190及びZKA190-LALAによる非許容性K562細胞のZIKV感染のADE。(C)異なるZIKV陽性患者からの血漿血清の連続希釈物と共にプレインキュベートされたときにK562細胞に誘導されたADE(左パネル)。ZKA190 LALAをZIKV-血清複合体に添加すると、ADEが阻害される(右パネル)。(D)ZIKVが、DENV免疫ドナー由来のprM交差反応性mAb(DV62)の連続希釈液とプレインキュベートされたときにK562細胞に誘導されるADE。ZKA190-LALAは、prM反応性抗体DV62と複合体化すると、ZIKVのADEを阻害する。(E)示されたmAbの連続希釈によるDENV2血漿(左パネル)又は抗prM DV62 mAb(右パネル)のピーク増強希釈によって誘導されるADEに対する効果。
【
図17】
図17は、実施例10について、ZKA190エピトープの同定及びZIKV株におけるその保存の分析を示す。(A)非標識化ZKA190 Fabの非存在下(黒色)又は存在下(赤色)における15N標識化ZIKV EDIIIの[15N、1H]-HSQCスペクトルのオーバーレイ。相違から、抗体結合によって影響されるEDIII残基を同定する。(B)ZKV EDIIIとの複合体中のZKA190 FabのNMRエピトープマッピング。化学シフト摂動(CSP、y軸)は、EDIII残基番号に対してプロットされている。抗体結合によって影響される残基は赤色である。(C)NMRエピトープマッピングによって同定されたFGループ中の残基は、Eタンパク質のmolモルAに一部隠れているが、molB及びmolCでは、大部分が露出している。Eタンパク質のEDIIIは青色で着色した。NMRエピトープマッピングによって同定される残基は、FGループ中のものが緑色で着色されていることを除いて、マゼンタで着色されている。隣接するEタンパク質は灰色表面として示される。(D)2016年11月24日現在のZIKV Resources(NCBI)データベースに見られる217種のZIKV株由来の配列の分析によって計算されるZKA190エピトープにおけるアミノ酸残基保存レベル。(E)エピトープとドッキング結果のパラトープとの間の電荷相補性を示すオープンブック表現。エピトープ及びパラトープの境界は緑色で囲まれている。Fabの重鎖と軽鎖の境界及びEDIII上の対応するフットプリントは、黄色の破線で示されている。
【
図18】
図18は、実施例10について、NMR及びドッキングによって同定されたZKA190エピトープを示す。(A)ZIKV EDIIIの12個の最も低いエネルギーのNMR構造のイラスト表示。ZKA190結合によって影響される残基は赤色で示される。コンストラクトのN末端における柔軟性は明らかである。(B)ZKA190のモデル:計算結果のドッキングと分子シミュレーションにより得られたEDIII複合体の、NMR結果による検証。EDIII(灰色)上のNMR同定されたエピトープは赤色である。ZKA190重鎖及び軽鎖は、それぞれ暗色及び薄緑色に着色されている。変異した場合に抗体結合に影響を及ぼす又は及ぼさないEDIII残基は、それぞれ橙黄色及び青色のスティックとして示される。(C)NMR同定されたZKA190エピトープ(赤色)は、ウイルス表面(白色)上で接近可能である。
【
図19】
図19は、実施例10について、wt又は変異したEDIIIのZKA190 IgGへの結合を示す。SPRデータ及び結合動力学が示される。結合に影響を及ぼす(赤色のハイライト)又は影響を及ぼさないEDIII変異体は、図に示される通りである。
【
図20】
図20は、実施例11について、共焦点顕微鏡検査実験の結果を示す。ZKA190 Fab又は完全IgGのいずれかのIC50値の10000倍を超える濃度でインキュベートしたZIKVをVero細胞に添加した。ZIKV:抗体複合体は細胞内で検出され(緑色)、エンドソームと共局在する(赤色、黄色のオーバーレイ)。エンドソーム及び酸性オルガネラは、Lysotracker redでマークされている。Alexa-488コンジュゲートZKA190は緑色である。核はDAPI(青色)で染色されている。
【
図21】
図21は、実施例12について、ZKA190の予防的及び治療的有効性を示す。(A)ZKA190は、致死量のZIKV株MP17451を投与するマウス((A)におけるA129及び(B)におけるAG129)に予防的に投与したとき、ZIKV感染に対して強力に防御的である。実験は、1群あたりN=4~8頭のマウスを使用した。Kaplan-Meier生存曲線を示す(A)。Mantel-Cox log-rank検定を用いて有意性を判定した。パネルA、左上:5、1、及び0.2mg/kgのZKA190対Ctr mAb、P=0.0031;0.04mg/kgのZKA190対Ctr mAb、P=0.0116;5、1、0.2、及び0.04mg/kgのZKA190-LALA対Ctr mAb、P=0.0031。パネルA、右上:14~15日間に亘ってモニターしたマウスの罹患率スコア(2つの異なるスコアリング方法を用いた;以下を参照(Dowall, S.D., Graham, V.A., Rayner, E., Atkinson, B., Hall, G., Watson, R.J., Bosworth, A., Bonney, L.C., Kitchen, S., and Hewson, R. (2016). A Susceptible Mouse Model for Zika Virus Infection. PLoS Negl Trop Dis 10, e0004658-13)。パネルA、下のパネル:マウスの体重。パネルB:ZKA190又はZKA190-LALAを、ZIKV感染後の異なる時点で15mg/kgで投与した。パネルB、左上:Kaplan-Meier生存曲線を示す。実験は、1群あたりN=5頭のマウスを使用した。Mantel-Cox log-rank検定を用いて有意性を判定した。1日目、2日目、3日目、又は4日目のいずれかに与えたZKA190及びZKA190-LALA対Ctr、P=0.0016。パネルB、右上:(Dowall et al。、2016)にしたがい、14日間に亘ってモニターしたマウスの罹患率スコア。マウスの体重減少について14日間に亘ってモニターした(パネルB、下のパネル)。対照抗体は、RSV Fタンパク質に特異的なMPE8である(Corti, D., et al. Cross-neutralization of four paramyxoviruses by a human monoclonal antibody. Nature 501, 439-443 (2013))。
【
図22】
図22は、実施例12について、ZIKV株MP1741に対する抗ZIKV EDIII特異的mAb ZKA190の予防的有効性を示す。(A)全ての動物の血中において、5日目にPFU/mlとして測定したウイルス血症を示す。(B)全ての動物の血中、及び試験終了時に動物を屠殺したとき、又は人道的エンドポイントが満たされたときの血液及び指定組織において、5日目にqPCRによってゲノムコピー数/mlとしてウイルス量を測定した。(C)マウスの体重減少について14日間に亘ってモニターした。(D)5つの血液試料中のヒト血清IgG濃度。ノンパラメトリックな対応のないマンホイットニーU検定による対照抗体治療と比較して有意性を決定した。
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001。
【
図23】
図23は、実施例12について、抗ZIKV EDIII特異的mAb ZKA190の治療効果を示す。(A)全ての動物の血中において、5日目にPFUとしてウイルス量を測定した。(B)全ての動物の血中、及び試験終了時に動物を屠殺したとき、又は人道的エンドポイントが満たされたときに血液及び指定組織において、5日目にqPCRによってゲノムコピー数としてウイルス量を測定した。ノンパラメトリックな対応のないマンホイットニーU検定による対照抗体治療と比較して有意性を決定した。
*p<0.05;
**p<0.01。(C)5日目の血液サンプル中のヒト血清IgG濃度。
【0346】
実施例
本発明の例示的な実施形態を、以下の実施例に提供する。以下の実施例は、説明のためにのみに示され、本発明の使用において当業者を助けるためのものである。これらの実施例は、本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【0347】
実施例1:ZIKV特異的抗体の単離及びモノクローナル抗体の産生
CD22マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて4体のZIKV感染ドナー(ZKA、ZKB、ZKC、及びZKD)の凍結保存末梢血単核細胞(PBMC)からIgG+記憶B細胞を単離し、その後、セルソーティングにより、IgM、IgD、及びIgAを有する細胞を枯渇させた。次いで、ZIKV感染ドナー由来の記憶B細胞を、これまでに記載されているように(Traggiai, E. et al., Nat. Med. 10, 871-875, 2004)、多数の複製ウェル中でEBV(エプスタイン・バール・ウイルス)及びCpG(CpGオリゴデオキシヌクレオチド2006)で不死化し、次いで培養上清を、ZIKV NS1タンパク質又はZIKV Eタンパク質へのそれらの結合を試験するために、384ウェルベースのマイクロ中和アッセイ及び結合アッセイ(ELISA)を並行して使用する一次スクリーニングで試験した。結合アッセイの結果を
図1(ZIKV Eタンパク質への結合)及び
図2(ZIKV NS1タンパク質への結合)に示す。
【0348】
中和アッセイをVero細胞で行った。384ウェルプレート中、感染率(m.o.i、感染多重度)が0.35となるZIKV H/PF/2013を、37%(5%CO2)で1時間、上清と共にインキュベートした後、予め播種した5,000個のVero細胞に添加した。これらを更に5日間インキュベートし、その後上清を除去し、WST-1試薬(Roche)を添加した。陽性培養物を回収して増殖させた。陽性培養物から、VH及びVL配列をRT-PCRによって回収した。抗体を、ヒトIgG1とIgカッパ又はIgラムダ発現ベクター(Michel Nussenzweig(Rockefeller University, New York, US)から厚意により提供)にクローニングした。これについては、本質的には、以下に記載されている(Tiller T, Meffre E, Yurasov S, Tsuiji M, Nussenzweig MC, Wardemann H (2008) Efficient generation of monoclonal antibodies from single human B cells by single cell RT-PCR and expression vector cloning. J Immunol Methods 329: 112-124)。モノクローナル抗体は、EBV不死化B細胞から、又は293 Freestyle細胞(Invitrogen)の一過性トランスフェクションによって産生した。B細胞又はトランスフェクトされた細胞からの上清を回収し、IgGをプロテインA又はプロテインGクロマトグラフィー(GE Healthcare)によってアフィニティー精製し、PBSに対して脱塩した。
【0349】
図1は、選択されたZIKV中和抗体の概要を提供する(それらのCDR及び重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列についての表1及び2参照)。
図1の最後の2列は、ZIKV及びDENV1(試験した場合)の中和活性(IC
50)を示す。他のカラムは、ZIKV Eタンパク質(ZIKV E)、DENV1 Eタンパク質(DENV1 E)、DENV2 Eタンパク質(DENV2 E)、DENV3 Eタンパク質(DENV3 E)、DENV4 Eタンパク質(DENV4 E)、DENV1ウイルス様粒子(DENV1 VLP)、DENV2ウイルス様粒子(DENV2 VLP)、DENV3ウイルス様粒子(DENV3 VLP)、及びDENV4ウイルス様粒子(DENV4 VLP)、並びにZIKV Eタンパク質のEDIII領域(DIII ZKA)に対する抗体の結合活性(EC
50)を提供する。
【0350】
追加の抗体を、ZIKV NS1タンパク質に結合する能力単離した(
図2参照)。陽性培養物を回収して増殖させた。陽性培養物から、VH及びVL配列をRT-PCRによって回収した。抗体を、ヒトIgG1とIgカッパ又はIgラムダ発現ベクター(Michel Nussenzweig(Rockefeller University, New York, US)から厚意により提供)にクローニングした。これについては、本質的には、以下に記載されている(Tiller T, Meffre E, Yurasov S, Tsuiji M, Nussenzweig MC, Wardemann H (2008) Efficient generation of monoclonal antibodies from single human B cells by single cell RT-PCR and expression vector cloning. J Immunol Methods 329: 112-124)。モノクローナル抗体は、EBV不死化B細胞から、又は293 Freestyle細胞(Invitrogen)の一過性トランスフェクションによって産生した。B細胞又はトランスフェクトされた細胞からの上清を回収し、IgGをプロテインA又はプロテインGクロマトグラフィー(GE Healthcare)によってアフィニティー精製し、PBSに対して脱塩した。
【0351】
図2は、選択されたZIKV NS1タンパク質結合抗体の概要を提供する(それらのCDR及び重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列についての表4及び5を参照)。即ち、
図2は、ZIKV NS1タンパク質(ZIKV NS1)、DENV1 NS1タンパク質(DENV1 NS1)、DENV2 NS1タンパク質(DENV2 NS1)、DENV3 NS1タンパク質(DENV3 NS1)、DENV4 NS1タンパク質(DENV4 NS1)、黄熱ウイルスNS1タンパク質(YFV NS1)、西ナイルウイルスNS1タンパク質(WNV NS1)、及び日本脳炎ウイルスNS1タンパク質(JEV NS1)、並びにダニ媒介性脳炎ウイルスNS1タンパク質(TBEV NS1)に対する抗体の結合活性(EC
50)を提供する。
【0352】
実施例2:抗体ZKA190、ZKA185、ZKA230、ZKA64、及びZKA78の特徴付け
実施例1において、多数のZIKV中和抗体を同定し、ZIKV、特にZIKV Eタンパク質及びZIKV EDIIIに対する特異性並びにDENVに対するそれらの交差反応性について特徴付けをした。次いで、実施例1に記載の抗体ZKA190(配列番号1~18)、ZKA185(配列番号19~36)、ZKA230(配列番号37~54)、ZKA64(配列番号73~90)、及びZKA78(配列番号55~72)を選択し、ELISAにより、ZIKV Eタンパク質(「ZIKV」)、ZIKV EDIII(「DIIIZI」)に対して更に試験し、またデングウイルス(DENV、血清型番号1)のEタンパク質に対しても試験した。この目的のために、標準ELISAを使用した。簡潔には、ELISAプレートを1又は3μg/mlのZIKV Eタンパク質でコーティングし、PBS中10%FCSでブロッキングし、血清又はヒト抗体と共にインキュベートし、洗浄した。APコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech)とのインキュベーションにより、結合した抗体を検出した。次いで、プレートを洗浄し、基質(p-NPP、Sigma)を添加し、プレートを405nmで読み取った。モノクローナル抗体結合の相対的親和性は、飽和時の最大結合の50%を達成するために必要な抗体の濃度(EC50)を測定することによって決定した。
【0353】
結果を
図3及び
図4に示す。注目すべきことに、ZKA64及びZKA190はZIKV E及びZIKV EDIII(「DIII ZI」)と低いEC
50値で結合し、これは、ZKA64及びZKA190がZIKV Eタンパク質のドメインIII(EDIII)に結合していることを示す。ZKA78は、ZIKV Eに結合するがZIKV EDIIIには結合せず、これは、ZKA78がZIKV Eに結合しているがEDIII領域を標的化しないことを示す。それらのかなりのZIKV中和活性(
図1参照)にもかかわらず、抗体ZKA185及びZKA230は、ZIKV E及びZIKV EDIIIに対する検出可能な結合を示さなかった(
図4)。したがって、ZKA185及びZKA230は、「中和非E結合」(NNB)抗体と称した。これらのNNB抗体は、ZIKV感染性ビリオン上に提示されるが、可溶性タンパク質上には提示されない四次エピトープを認識すると考えられる。
【0354】
更に、ZKA190、ZKA185、ZKA230、及びZKA64はいずれも、DENV Eタンパク質(
図1、DENV1-4血清型、及び
図3及び4)に対する検出可能な結合を示さず、これは、ZKA190、ZKA185、ZKA230、及びZKA64がZIKVに対して特異的であり、デング熱ウイルスと交差反応性ではないことを示す。対照的に、ZIKV EDI/IIに結合するがZIKV EDIIIには結合しないと考えられるZKA78(
図3参照)は、DENV Eタンパク質に結合し(
図1及び3)、これは、ZKA78がZIKVとDENVの両方に結合する交差反応性抗体であることを示す。
【0355】
これらの結果を更に確認するために、ZIKV Eタンパク質結合抗体ZKA190、ZKA64、及びZKA78を、デングウイルスのEタンパク質(DENV、血清型番号1~4)に対して更に試験した。ZKA64及びZKA190はDENV1-4 Eタンパク質に結合せず、これは、ZKA64及びZKA190がZIKVに特異的であることを裏付ける。対照的に、ZKA78はDENV1-4 Eに結合し、これは、ZKA78がZIKV及びDENVの両方のEタンパク質に結合する交差反応性抗体であることを裏付ける(
図1参照)。
【0356】
実施例3:血清学的診断のためのZIKV NS1特異的抗体の特徴付け
実施例1において、多数のNS1反応性抗体を同定し、ZIKV NS1に対する特異性及び他のフラビウイルスNS1タンパク質に対する交差反応性について特徴付けた(
図2)。次いで、ZIKV NS1及びDENV1 NS1、DENV2 NS1、DENV3 NS1、及びDENV4 NS1に対する結合について、抗体ZKA15(配列番号91~108)、ZKA25(配列番号109~126)、及びZKA35(配列番号127~144)を更に特徴付けた。この目的のために、標準ELISAを使用した。簡潔には、ELISAプレートを1μg/mlのZIKV NS1タンパク質でコーティングし、PBS中10%FCSでブロッキングし、血清又はヒト抗体と共にインキュベートし、洗浄した。APコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech)とのインキュベーションにより、結合した抗体を検出した。次いで、プレートを洗浄し、基質(p-NPP、Sigma)を添加し、プレートを405nmで読み取った。モノクローナル抗体結合の相対的親和性は、飽和時の最大結合の50%を達成するために必要な抗体の濃度(EC
50)を測定することによって決定した。
【0357】
結果を
図5に示す。3つの抗体(ZKA15、ZKA25、及びZKA35)はいずれもZIKV NS1に高い親和性で結合するが、DENV1-4 NS1抗原には結合しなかった(
図5)。
【0358】
抗体のZIKV NS1への結合を更に調べるために、バイオレイヤー干渉競合アッセイを用いた。ZIKV NS1に特異的な13種の抗体(即ち、DENV NS1と交差反応性ではない)(即ち、抗体ZKA24、ZKA15、ZKA32、ZKA19、ZKA50、ZKA37、ZKA46、ZKA10、ZKA48、ZKA35、ZKA25、ZKA44、及びZKA30)(
図6A参照)に対してバイオレイヤー干渉(BLI;Octet)を用いて交差競合マトリックスを生成した。
図2から理解することができるように、これらの13種の抗体はいずれも、DENV NS1に対する検出可能な結合を示さなかった。
【0359】
競合アッセイ及び抗原性部位決定は、Octet RED96システム(ForteBio)を用いて37℃で測定した。PBS中で2.5μg/mlに希釈したZIKV-NS1タンパク質をAPS被覆センサーチップの表面に7~9分間固定化した。コーティングされたバイオセンサーを、ブロッキングバッファー(PBS中0.1%BSA)を含むウェルに6分間入れ、遊離のバイオセンサー結合部位をブロックした。次いで、コーティングされたバイオセンサーを、ブロッキングバッファ中10μg/mlに希釈したZIKV-NS1に特異的な単一の精製mAbのセットと共に8分間インキュベートした。第1のセットのmAbの結合後(ステップ1)、バイオセンサーを異なるmAbを含むウェルに8分間移動させた(ステップ2)。第2のmAbの会合は、第1のmAbと比較して異なる抗原性部位の認識をもたらした(例えば、非競合)。会合が検出されないか、検出される会合が低いときに、ステップ2において競争又は部分競争がそれぞれ決定された。ZIKV NS1上の抗原性部位マッピングを予測するために、競合を複数回実行して、交差競合マトリックスを作成した。
【0360】
結果を
図6A及び6Cに示す。まず、試験したZIKV NS1特異的抗体はいずれも、抗原性部位S1及び/又はS2に結合していた(
図6A)。しかし、いくつかの抗体は他のものと競合しなかった。例えば、ZKA15はZKA25及びZKA35との結合に競合せず、その逆も同様であった(
図6A)。したがって、抗体ZKA15は抗原性部位S1に割り当てられ、抗体ZKA25及びZKA35は抗原性部位S2に割り当てられた(
図6C)。まとめると、使用された抗体に基づいて、ZIKV NS1上の抗原性部位(S1及びS2)が同定された(
図6C)。
【0361】
更に、ZIKV NS1タンパク質及びDENV NS1タンパク質に交差反応する10種の抗体(即ち、ZKA18、ZKA29、ZKA39、ZKA53、ZKA54、ZKB19、ZKB23、ZKC29、ZKC33、及びZKC34;
図6B)のZIKV NS1上の抗原性部位S1及び/又はS2への結合を調べた。
図2から理解することができるように、これらの10種の抗体はいずれも、DENV NS1への結合を示した。これらの10種の交差反応性抗体を、ZIKV NS1 S1特異的抗体ZKA15及びZIKV NS1 S2特異的抗体ZKA35に対して、(ZIKV NS1特異的抗体について)前記した交差競合アッセイで試験した。
【0362】
結果を
図6Bに示す。興味深いことに、試験した10種の交差反応性抗体はいずれも、ZIKV NS1上の抗原性部位S1及び/又はS2への結合について、ZKA15及び/又はZKA35と競合しなかった(
図6B)。これらの結果は、ZKA15及びZKA35抗原性部位がNS1交差反応性抗体によって標的とされないことを示す。したがって、NS1抗原性部位S1及びS2は、ZIKV特異的抗体の標的とされたが、交差反応性抗体の標的とはされなかった。
【0363】
実施例4:ZIKV感染の診断におけるZIKV NS1特異的抗体の使用
本実施例において、ZIKV感染の診断における本発明のZIKV NS1特異的抗体の有用性を調べた。より具体的には、ZIKV又はDENV感染ドナーの血漿試料中のZIKV NS1に対して誘発された抗体の存在又は非存在を特異的に検出するための、本発明のZIKV NS1特異的抗体の使用を決定した。
【0364】
この目的のために、「結合ブロック」アッセイを使用した。特に、ZIKV NS1反応性血漿抗体の、ZIKV NS1に対するビオチン化抗体ZKA35の結合を阻害する能力を測定した。この目的のために、ZIKV NS1特異的抗体ZKA35をEZ-Link NHS-PEO固相ビオチン化キット(Pierce)を用いてビオチン化した。標識されたZKA35をZIKV NS1への結合について試験して、最大結合の70%を達成するためのZKA35の最適濃度を決定した。ZIKV NS1でコーティングされたELISAプレートに、ZIKV(n=4)、DENV免疫(n=5)ドナー、及び対照(n=48)血漿(1/10希釈)由来の血漿試料を添加した。1時間後、ビオチン化抗ZIKV NS1抗体ZKA35を最大結合の70%を達成する濃度で添加し、混合物を室温で15分間インキュベートした。プレートを洗浄し、基質(p-NPP、Sigma)を添加し、プレートを405nmで読み取った。阻害パーセントは以下のように計算した:(1-[(OD試料-OD neg ctr)/(OD pos ctr-OD neg ctr)]))×100。
【0365】
結果を
図7に示す。注目すべきことに、NS1上の抗原性部位S2への抗体ZKA35結合は、ZIKV免疫ドナーからの血漿試料によってのみ阻害されたが、DENV免疫ドナーでは阻害されず、その結合は、48対照血漿試料によっても阻害されなかった(
図7)。したがって、このアッセイは、集団レベルで臨床的及びサブ臨床的なZIKV感染を特異的に検出するために使用することができる。
【0366】
実施例5:本発明に係る抗体は、ZIKV感染を強力に中和する
単離した抗体ZKA190、ZKA185、ZKA230、ZKA64、及びZKA78を、インビトロでZIKV及びDENV1感染を中和する能力について試験した。
【0367】
抗体によるDENV及びZIKV感染の中和は、マイクロ中和フローサイトメトリに基づくアッセイを用いて測定した。抗体の各種希釈物をZIKV(MOI0.35)又は弱毒化DENV1(いずれもMOI0.04)と37℃で1時間混合し、96ウェル平底プレート中の5000個のVero細胞/ウェルに添加した。ZIKVについては4日後、DENVについては5日後に、細胞を2%ホルムアルデヒドで固定し、PBS1%FCS0.5%サポニン中に透過し、マウスmAb4G2で染色した。細胞を、Alexa Fluor488(Jackson Immuno- Research、115485164)にコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgGとインキュベートし、フローサイトメトリで分析した。他の場合には、ZIKV中和データは、また、WST-1試薬(Roche)を用いて細胞生存度を測定することによって決定される。中和力価(50%阻害濃度[IC50])は、細胞のみの対照ウェルと比較して感染を50%低下させた抗体濃度として表した。
【0368】
結果を
図8、9、及び13に示す。EDIII特異的mAb ZKA64及びZKA190及びNNB mAb ZKA230は、ZIKV中和(H/PF/2013株)において非常に強力であり、9及び10ng/mlでIC
50値が93であった(
図8、上のパネル)。対照的に、交差反応性抗体ZKA78は、ZIKV感染性及び交差中和化DENV1感染性を部分的にしか中和しなかった(
図8、下のパネル)。同様のデータが、WST-1試薬で測定したZIKV誘発細胞変性効果を測定することによって得られた(
図9)。この第2のアッセイにおいて、NNB抗体ZKA185も試験抗体のパネルに含まれ、最も強力な抗体ZKA190(EDIII特異的)及びZKA230(NNB)と同様のIC50を示した。
【0369】
ZIKV H/PH/2013株を中和する能力(本実施例)に加えて、超強力なZKA64及びZKA190抗体は、それぞれZIKV株MR766及びSPH2015由来のEタンパク質及びEDIIIにも結合することに留意することが重要である(
図1及び
図3)。ZKA190及びZKA190-LALAは、2つの更なるZIKV株(MR766及びMRS_OPY_Martinique_PaRi_2015)を効果的に中和することも確認された(
図13)。まとめると、結果から、超強力ZKA64及びZKA190抗体は、異なる遺伝子型及び起源(ウガンダ、フランスポリネシア、マルティニーク、及びブラジルの東アフリカ及びアジア人)に属する複数のZIKV株と交差反応することが示される。
【0370】
実施例6:「LALA」突然変異は、血清抗体によるZIKV感染の抗体依存性の増強を阻害する
また、中和抗体を、非許容性K562細胞におけるZIKVの感染を増強する能力について試験した(抗体依存性増強アッセイ、ADEアッセイ)。ADEは、K562細胞を用いたフローベースのアッセイによって測定した。抗体及びZIKV H/PF/2013(MOI0.175)を37℃で1時間混合し、5000個のK562細胞/ウェルに添加した。4日後、細胞を固定し、透過処理し、m4G2で染色した。フローサイトメトリにより感染細胞の数を決定した。
【0371】
結果を
図10に示す。抗体はいずれも、広い濃度範囲で、非許容性K562細胞におけるZIKVの感染を増強し、ある濃度では、Vero細胞に対するZIKV感染を完全に中和した(
図10)。注目すべきことに、EDIII特異的抗体ZKA64及びZKA190は、1μg/mlを超えるK562細胞のZIKV感染を完全に中和したが、NNB抗体ZKA230では中和できず、この結果は、Fc-ガンマ-受容体内在化ウイルスに対する遊離ウイルスの中和メカニズムが異なることによる可能性がある。対照的に、ZIKV感染性を部分的にしか中和しない交差反応性ZKA78は、K562細胞のZIKV感染を効果的に増強した。これらの結果は、ZIKV又はDENV感染のいずれかによって惹起される交差反応性抗体が異種ADEを媒介し得ることを示す。
【0372】
これに鑑み、ADEが免疫血清によっても誘導され得るかどうか、及びこれが「LALA変異体」として送達される抗体を中和することによってブロックされ得るかどうかを調べた。LALA変異体を得るために、部位特異的突然変異誘発を用いて天然ロイシンに代えてアラニンを置換することにより、重鎖の各々をCH2ドメインのアミノ酸4及び5で突然変異させた。前記したように、(ヒトIgG1抗体の)LALA変異体は、Fc-ガンマ-受容体及び補体に結合しない。
【0373】
ZIKV ADEにおけるZKA64-LALA抗体の効果を調べるために、ADEアッセイの阻害を用いた。ZIKV又はDENV免疫血漿を用いてZIKVのADEが観察されたので、37℃で30分間、ZIKV(MOI0.175)を一次ZIKV又はDENV感染ドナー由来の血漿と混合した。ZKA64-LALA抗体を50μg/mlで添加し、5000個のK562細胞/ウェルと混合し、3日間インキュベートした。次いで、細胞を4G2で染色し、フローサイトメトリで分析した。
【0374】
結果を
図11に示す。相同的なセッティングでは、回復期の患者から回収した4種のZIKV免疫血漿及び1種のDENV免疫血漿は、K562細胞のZIKV感染を増強する同様の能力を示した(
図11、上のパネル)。このADE効果は、EDIII特異的ZKA64-LALA抗体によって完全にブロックされた(
図11、下のパネル)。
【0375】
注目すべきことに、ZIKV及びDENV免疫血漿のADE効果は、EDIII特異的ZKA64-LALA抗体によって完全にブロックされた。単一のEDIII特異的LALA抗体のADEブロッキング能は、血清増強抗体との競合において上回る(out-compete)能力だけでなく、一旦エンドソームに内在化したウイルスを中和する能力にも関連し得る。
【0376】
これらの結果は、「LALA」形態で発達したZKA190、ZKA230、ZKA185、又はZKA64などの強力に中和する抗体が、先天性ZIKV感染を予防するための予防的又は治療的設定(例えば、妊娠中の女性及び/又は高リスク領域に住む人々)で使用される有効性が高いことを示している。LALA形態の使用は、ZIKV ADEのリスクを回避し、前記のように、既にDENVに対して免疫されている患者の場合など、既存の交差反応性抗体のADEもブロックする可能性がある。
【0377】
実施例7:ZIKV感染の診断のためのZIKV NS1特異的抗体を用いた欧州住民由来の試料の分析
本実施例は、実施例4に記載の結合ブロックアッセイの遮断に基づく。ZIKV NS1 BOBアッセイの特異性を更に評価するために、DENV、WNV、又はチクングニアウイルス(CHIKV)に感染した患者から得られた多数の試料を試験した。
【0378】
この目的のために、「結合ブロック」アッセイを使用した。ポリスチレンプレートを1μg/mlのZIKV NS1で一晩コーティングし、1%BSAを含むPBSで1時間ブロッキングした。血漿又は血清(1:10希釈)をNS1コーティングELISAプレートに添加した。その後、例えば、1時間後、等体積のビオチン化抗NS1 ZKA35を加え、混合物を例えば、室温で15分間インキュベートした。プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジンを、例えば、30分間添加した。プレートを再度洗浄し、基質を添加した。阻害パーセントは以下のように計算した:(1-[(OD試料-OD neg ctr)/(OD pos ctr-OD neg ctr)]))×100。
【0379】
結果を
図14に示す。症状発症後10日超で採取したWNV患者からの32個の試料(96.9%)のうち31サンプルは、陰性であった。注目すべきことには、2016年に採取した試料が唯一陽性であった。症状発症後10日超で採取したDENV患者由来の27個の試料のうち2個は、陽性であり、2個の陽性試料は2次DENV感染由来であった。更に、チクングニア患者由来の試料又はYFVワクチンのいずれも陽性ではなかった。2010年から2016年までに採取されたスイスの血液ドナー(n=116)からの多数の血漿サンプルも試験した。これらのサンプルはいずれも陽性ではなかった。得られた結果は、NS1 BOB ELISAアッセイの高感度及び特異性を確認し、裏付けた。
【0380】
実施例8:本発明に係る抗体は、従来技術の抗体EDE1 mAb C8よりも強力にZIKVを中和する
従来技術の中和性が高い抗ZIKV抗体と本発明に係る中和抗体を比較するために、ZKA190の中和性能を従来技術の高中和性mAb EDE1 C8(Barba-Spaeth G, Dejnirattisai W, Rouvinski A, Vaney MC, Medits I, Sharma A, Simon-Loriere E, Sakuntabhai A, Cao-Lormeau VM, Haouz A, England P, Stiasny K, Mongkolsapaya J, Heinz FX, Screaton GR, Rey FA. Structural basis of potent Zika-dengue virus antibody cross-neutralization. Nature. 2016 Aug 4;536(7614):48-53)と比較した。両抗体の中和を、4種の異なるZIKV株(H/PF/2013;MR766、MRS-OPY、及びPV10552)のパネルに対して試験した。
【0381】
簡潔には、mAbによるZIKV感染の中和を、マイクロ中和フローサイトメトリに基づくアッセイを用いて測定した。mAbの各種希釈物をZIKV(MOI0.35)と37℃で1時間混合し、96ウェル平底プレート中の5000個のVero細胞/ウェルに添加した。ZIKVについては4日後に、細胞を2%ホルムアルデヒドで固定し、1%ウシ胎仔血清(Hyclone)及び0.5%サポニンを含有するPBSに透過させ、マウスmAb 4G2で染色した。細胞を、Alexa Fluor488(Jackson Immuno-Research、115485164)にコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgGと共にインキュベートし、フローサイトメトリで分析した。中和力価(50%阻害濃度[IC50])は、ウイルスのみの対照ウェルと比較して感染を50%低下させた抗体濃度として表した。
【0382】
結果を
図15に示す。ZKA190 mAbは、0.6~8ng/mlの範囲のIC50を有するアフリカ系、アジア系、及びアメリカ系株を強力に中和した。これと比較して、従来技術の抗体C8は約24倍弱かった。
【0383】
実施例9:抗体ZKA190の更なる特徴付け
抗体ZKA190の効力をインビトロ及びインビボで更に調べた。この目的のために、mAbをIgG1野生型(wt)フォーマット及びIgG1 Fc-LALAフォーマットで合成した。簡潔には、VH及びVL配列を、ヒトIgγ1とIgκ又はIgλ発現ベクター(Michel Nussenzweig(Rockefeller University, New York, US)から厚意により提供)にクローニングした。これについては、本質的には、以下に記載されている(Tiller T, Meffre E, Yurasov S, Tsuiji M, Nussenzweig MC, Wardemann H: Efficient generation of monoclonal antibodies from single human B cells by single cell RT-PCR and expression vector cloning. J Immunol Methods 2008, 329:112-124)。組換えmAbは、EXPI293細胞(Invitrogen)の一過性トランスフェクションによって産生し、プロテインAクロマトグラフィー(GE Healthcare)によって精製し、PBSに対して脱塩した。LALA変異体を得るために、部位特異的突然変異誘発を用いて天然ロイシンに代えてアラニンを置換することにより、重鎖の各々をCH2ドメインのアミノ酸4及び5で突然変異させた。前記したように、(ヒトIgG1抗体の)LALA変異体は、Fc-ガンマ-受容体及び補体に結合しない。
【0384】
図15Aに示し、実施例8に記載したように、ZKA190を4種のZIKV株のパネルに対して試験した。ZKA190 mAbは、0.004~0.05nMの範囲のIC50(
図15A;0.6~8ng/ml)でアフリカ系、アジア系、及びアメリカ系株を強力に中和した。
【0385】
ZIKVは、ヒト神経前駆細胞(hNPC)に感染し、細胞毒性の増大、細胞周期の調節不全、及び細胞増殖の減少を示すので、hNPCにおいてZKA190及びZKA190-LALAを試験した。この目的のために、Movement Disorders Bio-Bank(Neurogenetics Unit of the Neurological Institute ‘Carlo Besta’, Milan)から取得した成人男性線維芽細胞を、CytoTune-iPS 2.0 Sendaiキット(Life Technologies)を用いて再プログラム化した。hiPSCは、mTeSR1(Stem Cell Technologies)のフィーダーフリー条件で維持した。胚様体(EB)を生成するために、解離したhiPSCを、N2(0.5×)(ThermoFisher Scientific)、ヒトNoggin(0.5mg/ml、R&D System)、SB431542(5μM、Sigma)、Y27632(10μM、Miltenyi Biotec)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(1%、Sigma)(以下に記載:Marchetto MCN, Carromeu C, Acab A, Yu D, Yeo GW, Mu Y, Chen G, Gage FH, Muotri AR: A model for neural development and treatment of Rett syndrome using human induced pluripotent stem cells. Cell 2010, 143:527-539)を添加したmTeSR1中の低接着プレートにプレーティングした。ロゼットを得るために、EBを、10日間後に、N2(1:100)、非必須アミノ酸(1%、ThermoFisher Scientific)、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM/F12(Sigma)中のマトリゲル被覆プレート(1:100、マトリゲル成長因子低下、Corning)にプレーティングした。10日間後、細胞をAccutase(Sigma)で継代して、DMEM/F12、N2(0.25%)、B27(0.5%、ThermoFisher Scientific)、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びFGF2(20ng/ml、ThermoFisher Scientific)を含有するNPC培地中で、マトリゲル被覆フラスコに播種した。hNPC(3×10
4)を、PRVABC59株による感染の3日間前に、24ウェルプレート中のカバースリップ上にプレーティングした。ウイルスストックをhNPCへの添加前にmAb 1hと共にインキュベートして、0.5のMOIを得た。ウイルス吸着の4時間後、培養上清を除去し、mAbを含む新鮮な培地を再添加した。感染後96時間で上清を回収し、Vero細胞に対するプラークアッセイによってウイルス力価を測定した。間接免疫蛍光のために、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、Euroclone)中の4%パラホルムアルデヒド(PFA、Sigma)溶液中で細胞を30分間固定した。固定した細胞を、0.2%Triton X-100(Sigma)及び10%ロバ血清(Sigma)を含有するブロッキング溶液中で30分間(min)浸透させ、ブロッキング溶液中で一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。以下の抗体を検出に使用した:抗エンベロープ(1:200、Millipore、MAB10216)。次いで、細胞をPBSで洗浄し、Hoechst及び抗マウスAlexa Fluor-488二次抗体(ブロッキング溶液中1:1,000、ThermoFisher Scientific)と共に1時間インキュベートした。PBS洗浄後、細胞を再び洗浄し、マウントした。結果を
図16Aに示す。ZKA190及びZKA190-LALAのいずれも、hNPCにおけるZIKVの感染及び複製を完全に停止させた。
【0386】
次に、ADEを引き起こすZKA190及びZKA190-LALAの能力を、実施例6に記載したようにK562細胞株で試験した。簡潔には、ADEは、K562細胞を用いたフローベースのアッセイによって測定した。簡潔には、ZKA190については、ZKA190及びZIKV H/PF/2013(MOI0.175)を37℃で1時間混合し、5000個のK562細胞/ウェルに添加した。4日間後、細胞を固定し、透過処理し、mAb m4G2で染色した。フローサイトメトリにより感染細胞の数を決定した。ZKA190-LALAについては、ZIKV(MOI0.175)を、一次ZIKV感染ドナー由来の血漿と37℃で30分間混合した。ZKA190-LALAを50μg/ml添加し、5000個のK562細胞/ウェルと混合し、3日間インキュベートした。次いで、細胞を4G2で染色し、フローサイトメトリで分析した。結果を
図16Bに示す。ZKA190は、0.0001~1nMのADEを支持する。予想通り、ZKA190-LALAはADE活性を示さなかった。K562細胞中の4種のZIKV免疫ドナーからの血漿によって誘導されるADEを阻害するZKA190-LALAの能力も試験した。結果を
図16Cに示す。ZKA190-LALAは、血漿抗体によって誘導されるADEを完全に阻害することが分かった(
図16C)。
【0387】
抗prM抗体は、フラビウイルスに対するヒト免疫応答の間に誘発される主な抗体の一部を形成し、インビトロでウイルス感染を増強することが示されている(Dejnirattisai, W., Jumnainsong, A., Onsirisakul, N., Fitton, P., Vasanawathana, S., Limpitikul, W., Puttikhunt, C., Edwards, C., Duangchinda, T., Supasa, S., et al. (2010). Cross-reacting antibodies enhance dengue virus infection in humans. Science 328, 745-748)。K562細胞を、DENV免疫ドナーに由来するprM交差反応性抗体DV62(Beltramello, M., Williams, K.L., Simmons, C.P., Macagno, A., Simonelli, L., Quyen, N.T.H., Sukupolvi-Petty, S., Navarro-Sanchez, E., Young, P.R., de Silva, A.M., et al. (2010). The human immune response to Dengue virus is dominated by highly cross-reactive antibodies endowed with neutralizing and enhancing activity. Cell Host Microbe 8, 271-283))の連続希釈液でプレインキュベートした。結果を
図16Dに示す。DV62は、ZIKV prMタンパク質と交差反応し、広範囲の濃度でADEを引き起こした(
図16D)。ZKA190-LALAは、未成熟又は部分的に未成熟のZIKV粒子の抗prM DV62 mAb誘導ADEを完全にブロックすることができる(
図16D)。
【0388】
最後に、濃度が上昇したヒト抗DENV2血漿又はDV62の存在下でZIKVのADEを引き起こす又はブロックする各種濃度のZKA190、ZKA190-LALA、及びZKA190 Fabの能力を試験した。結果を
図16Eに示す。低濃度でのZKA190は、ZIKV感染のprM DV62媒介ADEを上昇させたが、これは、未成熟及び成熟ビリオンの両方の侵入を促進するその能力と整合し、一方で、1.3nM(即ち、200ng/ml)を超える濃度では、ZKA190は、DENV血漿及びmAb DV62の両方によって誘導されるADEをブロックした。ZKA190-LALA並びにそのFab断片は、0.06nMを超える濃度ではADEを減少させ、これは、両者が、融合などの付着後工程でウイルス感染を阻害することを示している
【0389】
実施例10:ZKA190は、EDIIIの保存された高度に接近可能な領域に結合する
残基レベルでのZKA190エピトープを決定するために、以下に記載されるように溶液NMR分光法を用いた:Bardelli, M., Livoti, E., Simonelli, L., Pedotti, M., Moraes, A., Valente, A.P., and Varani, L. (2015). Epitope mapping by solution NMR spectroscopy. J. Mol. Recognit. 28, 393-400; Simonelli, L., Beltramello, M., Yudina, Z., Macagno, A., Calzolai, L., and Varani, L. (2010). Rapid structural characterization of human antibody-antigen complexes through experimentally validated computational docking. J Mol Biol 396, 1491-1507; and Simonelli, L., Pedotti, M., Beltramello, M., Livoti, E., Calzolai, L., Sallusto, F., Lanzavecchia, A., and Varani, L. (2013). Rational Engineering of a Human Anti-Dengue Antibody through Experimentally Validated Computational Docking. PLoS ONE 8, e55561。
【0390】
簡潔には、Bruker Avance 700MHz NMR分光計を用いて300Kでスペクトルを記録した。バックボーン共鳴の帰属については、標準的三重共鳴実験(HNCO、HN(CA)CO、HN(CO)CACB、HNCACB)を用い、一方、側鎖は、HCCH-TOCSY及びHBHA(CO)NH実験を用いてアノテートした。NMR実験はいずれも、Topspin 2.1(Bruker Biospin)を用いて行い、CARAで分析した。NOESYクロスピークは、手動で割り当てられた化学シフトに基づくCYANA「noeassign」マクロを用いて自動的に割り当てた。標準的シミュレーテッドアニーリングプロトコルを用いたCYANAの構造計算に使用された上方距離制限は、70ms 15N及び13C分解NOESYスペクトルから誘導した。ZIKV EDIIIのバックボーンダイナミクスは、600及び700MHz分光計で記録された15N緩和測定値から誘導した。プロトン検出バージョンのCPMG(R2)、反転回復(R1)、及び15N{1H}定常状態NOEを利用した。T2シリーズの遅延設定は0~0.25秒間の範囲であり、T1シリーズの設定は0.02~2秒間の範囲とした。15N{1H}-NOE実験は、5秒間の緩和遅延を用いた。R1緩和率とR2緩和率は、自宅で作成したスクリプトを使用して測定データに対応する指数関数の最小二乗適合から導いた。緩和データは、ソフトウェアパッケージDYNAMICSを使用して、モデルフリーアプローチで分析した。プログラムROTDIFを用いて、緩和データ(8.5ns)から全体の相関時間を計算した。NMRエピトープマッピングは、これまでに記載されたように実施した(Bardelli et al., 2015; Simonelli et al., 2010; 2013)。簡潔には、遊離又はZKA190 Fabに結合した標識化EDIIIの15NHSQCスペクトルのオーバーレイは、複合体形成時にNMRシグナルが変化したEDIII残基の同定を可能にし、それらがZKA190結合の影響を受けたことを示す。変化は、手動検査及び化学シフト摂動(CSP)、CSP=((ΔσH)2+(ΔσN/10)2)1/2で確認した。NMRサンプルは、典型的には、20mMリン酸ナトリウム、50mM NaCl、pH6.0中の800μMの[15N、13C]標識化EDIIIであった。EDIII:ZKA190 Fab比が1:1.1であるNMRエピトープマッピングには、過重水素化(公称70%)2H、15N EDIII試料を使用した。EDIII濃度は、典型的には0.4mMであった。
【0391】
NMRシグナルは局所的な化学的環境に強く依存するので、複合体形成時の変化は抗体結合の影響を受ける抗原残基を直接又はアロステリック効果によって同定する。遊離及び結合EDIIIのNMRスペクトルを比較することにより(
図17A)、ZKA190によって影響を受けた残基は、EDIIIのLR、特にBC、DE、及びFGループ並びにEDI-EDIIIヒンジの一部にマッピングした(
図18A)。これらの残基は、ウガンダ1947単離株におけるV341I及びE393Dの置換を除いて、217種の既知のZIKV株の間でほぼ同一である(
図17D)。これらの突然変異は、ZKA190によって効率的に中和されたMR766株にも存在する(
図15A)。複合体化していないZIKV構造上のZKA190エピトープの分析は、5つ折頂点のFGループを除いて、エピトープが高度に接近可能であることを示した(
図18B及び17C、分子A)。
【0392】
計算ドッキングと、その後の、NMRに由来するエピトープ情報及びEDIII突然変異誘発によって導かれ、検証された分子動力学シミュレーションにより、ZKA190は、形状及び電荷相補性によって特徴づけられる界面を介して結合することが示された(
図18B及び
図17E)。ドッキングは、ZKA190とEDIII上のFGループとの間に直接の接触がないことを示し、抗体結合時のNMRシグナルの変化がアロステリック効果に由来することを示唆している。この概念は、組換えEDIII中(他のエピトープ領域中ではなく)のFGループ残基の突然変異が、EDIIIに対するZKA190の結合親和性に影響しないという事実によって支持される(
図18B及び
図19)。
【0393】
実施例11:ZKA190中和のメカニズム
ウイルスを効率的に中和するZKA190の能力は、細胞接着又は膜融合のいずれかの阻害を伴い得る。更なるメカニズムは、ウイルス粒子の架橋を介したウイルスの不活性化を伴い得る。
【0394】
ZKA190 Fabは、対応するIgGよりも効率は低いが、ZIKVを中和することができる。EDI-EDIIIリンカーに結合することによって、ZKA190(Fab及びIgGの両方)は、宿主細胞膜へのウイルス融合に必要とされるDIIIの~70度の回転を阻害し得る(Bressanelli, S., Stiasny, K., Allison, S.L., Stura, E.A., Duquerroy, S., Lescar, J., Heinz, F.X., and Rey, F.A. (2004). Structure of a flavivirus envelope glycoprotein in its low-pH-induced membrane fusion conformation. Embo J 23, 728-738; Modis, Y., Ogata, S., Clements, D., and Harrison, S.C. (2004). Structure of the dengue virus envelope protein after membrane fusion. Nature 427, 313-319)。或いは、ZKA190は、標的細胞へのZIKVの結合を妨げ得る。
【0395】
膜融合を阻害するZKA190の能力は、共焦点顕微鏡分析によって支持される。この目的のために、Vero細胞を24穴プレート中の直径12mmのカバースリップに7,500細胞/ウェルで播種し、一晩インキュベートした。中和濃度のAlexa-488コンジュゲートmAb(0.7μM)の存在下又は非存在下、37℃で3時間、細胞をZIKV H/PF/2013(MOI100)で感染させ、PBSで洗浄し、PBS中の2%パラホルムアルデヒドで室温で30分間インキュベートした。酸性化エンドソームは、固定前のインキュベーションの最後の30分間、細胞に色素(50nM)を添加することにより、Lysotracker red(Invitrogen)で同定した。固定化に続いて、PBS及び50mMグリシンで十分な洗浄を行い、最後に、DAPI(Vector Laboratories)を用いた蛍光のためのVectashieldマウンティング培地を用いた顕微鏡分析のためのカバースリップを調製した。63×/1.4N.A.対物レンズを備えたライカTCS SP5顕微鏡を用いた共焦点顕微鏡法により試料を分析した。FIJIソフトウェアを用いて画像解析及び処理を行った。
【0396】
結果を
図20に示す。共焦点顕微鏡分析は、IC50を10,000倍超える中和濃度でZIKVと複合体化して初めて、ZKA190(Fab又はIgG)がVero細胞に入ることができることを示す(
図20)。
【0397】
実施例12:EDIII特異的mAb ZKA190のインビボでの特徴付け
それらの予防的及び治療的特性を評価するために、ZKA190及びZKA190-LALAを、致死量のZIKV株MP1751(アフリカ系統)を摂取したA129マウスで試験した。それらの予防的効力を試験するために、ZKA190及びZKA190-LALAを、ウイルス摂取の1日前に投与した。
【0398】
5~8週齢の雌性A129マウス(IFN-アルファ/ベータ受容体-/-)及び野生型129Sv/Evマウスに、PBS中に各種用量で希釈したmAb(ZKA190、ZKA190-LALA、及び対照抗体MPE8(Corti, D., et al. Cross-neutralization of four paramyxoviruses by a human monoclonal antibody. Nature 501, 439-443 (2013))を、腹腔内(i.p.)経路で500μl投与した。ウイルス摂取の1日前又は1日、2日、3日、又は4日後に、mAbを投与した。動物に、102pfuのZIKV(MP1751株)を皮下接種し、14日間追跡した。体重及び温度を毎日モニターし、臨床観察を少なくとも1日2回記録した。摂取後5日目に、各動物から50μlの血液を、RNAprotect tube(Qiagen、UK)に回収し、-80℃で凍結した。試験終了後(摂取後14日目)又は動物が人道的エンドポイントに達したとき、剖検を行い、脳、脾臓、肝臓、腎臓、及び卵巣の血液及び切片をウイルス学的分析のために回収した。
【0399】
A129マウスからの組織試料をPBSに秤量し、セラミックビーズ及び自動ホモジナイザー(Precellys、UK)を用いて6500rpmで30秒間のギャップの5秒サイクルを6回行ってホモジナイズした。RNeasy Mini抽出キット(Qiagen、UK)を用いるRNA抽出のために、200μlの組織ホモジネート又は血液溶液を600μLのRLT緩衝液(Qiagen、UK)に移した。試料を最初のステップとしてQIAshredder(Qiagen、UK)に通した。被験動物からのウイルスRNAの検出のために、ZIKV特異的リアルタイムRT-PCRアッセイを利用した。プライマー及びプルーブ配列は、Quick et al.、2017(Quick, J, Grubaugh ND, Pullan ST, Claro IM, Smith AD, Gangavarapu K, Oliveira G, Robles-Sikisaka R, Rogers TF, Beutler NA, et al.: Multiplex PCR method for MinION and Illumina sequencing of Zika and other virus genomes directly from clinical samples. Nat Protoc 2017, 12:1261-1276)から採用し、インハウスでの最適化及び検証を、最適なマスターミックス及びサイクル条件を提供するために行った。リアルタイムRT-PCRは、SuperScript III Platinum One-step qRT-PCRキット(Life Technologies、UK)を用いて行った。最終的なマスターミックス(15μl)は、10μlの2×反応ミックス、1.2μlのPCRグレード水、0.2μlの50mM MgSO4、1μlの各プライマー(ZIKV1086及びZIKV1162c、いずれも18μMワーキング濃度)、0.8μlのプローブ(ZIKV 1107-FAM、25μMワーキング濃度)、及び0.8μlのSSIII酵素ミックスを含む。5μlの鋳型RNAをマスターミックスに加え、20μlの最終反応容積を得た。使用したサイクル条件は、50℃で10分間、95℃で2分間、続いて95℃で10秒間及び60℃で40秒間を45サイクル、最後に40℃で30秒間の冷却ステップである。蛍光を用いた定量分析は、各60℃ステップの終わりに行った。7500ソフトウェアバージョン2.0.6を使用して、7500 Fastプラットフォーム(Life Technologies、UK)で反応を実施し、分析した。サンプル中のウイルス量の定量は、一連の定量RNAオリゴヌクレオチド(Integrated DNA Technologies)を用いて行った。このオリゴヌクレオチドは、GenBankアクセッション番号AY632535.2に基づくアッセイによって標的化されたZIKV RNAの77塩基を含んでおり、HPLC精製で250nmolのスケールに合成された。
【0400】
結果を
図21、
図22、及び
図23に示す。ZKA190及びZKA190-LALAは、5、1、又は0.2mg/kgの濃度での死亡及び罹患からマウスを保護することが示された(
図21A~B)。ZKA190-LALA、及びより低い程度でZKA190は、0.04mg/kgの対照群と比較して、罹患及び死亡を遅延させた。血液及び器官におけるウイルス力価は、存在する血清抗体レベルが1μg/ml未満であっても、対照抗体処置動物と比較して有意に減少した(
図22A~D)。
【0401】
ZKA190の治療可能性を評価するために、ZIKV感染後の異なる時点でZKA190及びZKA190-LALAを投与した。15mg/kgの投与量では、80%~100%の生存率が達成され、感染後4日目に処置を行った場合でも罹患率は大幅に低下した(
図21E~G)。全ての感染後の時点でのZKA190及びZKA190-LALA処理は、対照抗体で処置した動物と比較して、ウイルス力価を有意に低下させ、処置が早いほど低下が大きいという明らかな傾向を示した(
図23A~21C)。注目すべきことに、ZKA190-LALAは、感染後4日目にmAbを与えた場合のZKA190と比較して、血液5日目の血液試料において有意に低下した抗ウイルス活性を示した。この結果は、コーティングされたビリオンの迅速なクリアランスを促進するLALA変異体の能力の低下に関連し得る。
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【配列表】