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特許7252890血友病を処置するための切断型フォン・ヴィルブランド因子ポリペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】血友病を処置するための切断型フォン・ヴィルブランド因子ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20230329BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230329BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230329BHJP
   C07K 14/59 20060101ALI20230329BHJP
   C07K 14/745 20060101ALI20230329BHJP
   C07K 14/76 20060101ALI20230329BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/14 20060101ALN20230329BHJP
   C12N 15/16 20060101ALN20230329BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
A61K38/36 ZMD
A61K47/64
A61P7/04
C07K14/59
C07K14/745
C07K14/76
C07K19/00 ZNA
C12N15/14
C12N15/16
C12N15/62 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019524343
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2017078834
(87)【国際公開番号】W WO2018087267
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】16198501.5
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518315254
【氏名又は名称】ツェー・エス・エル・ベーリング・レングナウ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・シュルテ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヴァイマー
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ・ペステル
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト・メツナー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ・ダウアー
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517691(JP,A)
【文献】A von Willebrand factor fragment containing the D'D3 domains is sufficient to stabilize coagulation factor VIII in mice,Blood,2014年05月21日,Volo. 124, No. 3,p. 445-452,doi: 10.1182/blood-2013-11-540534
【文献】Recombinant Human Serum Albumin Fusion Proteins and Novel Applications in Drug Delivery and Therapy,Current Pharmaceutical Design,2015年,Vol. 21, No. 14,p. 1899-1907,DOI : 10.2174/1381612821666150302120047
【文献】Extension of in vivo half-life of biologically active molecules by XTEN protein polymers,Journal of Controlled Release,2016年10月28日,Vol. 240,p. 52-66,https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2015.10.038
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/36
A61K 47/64
A61P 7/04
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液凝固障害の処置における使用のための、切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)及び半減期延長部分を含むポリペプチドを含む医薬組成物であって、該処置は、血液凝固障害を有しかつ内在性第VIII因子(FVIII)を有する被験体にポリペプチドを投与することを含み、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血症(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比べて減少しているが、ただし該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは正常ヒト血症(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、
切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)は、配列番号4のアミノ酸764~1242に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
該ポリペプチドは内在性FVIIIに結合することができ、
切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)は、内在性FVIIIに結合するためのポリペプチドの能力を提供し、
半減期延長部分は、アルブミンおよびヒト絨毛性ゴナドトロピン-βサブユニットのC末端ペプチドからなる群より選択され、
該ポリペプチドはダイマーであり、
該ダイマーのFVIIIに対する親和性は、ダイマーポリペプチドのモノマーサブユニットと同じアミノ酸配列を有するモノマーポリペプチドの該FVIIIに対する親和性より高く、
して内在性FVIIIレベルは、該ポリペプチドの投与後に増加し、そしてここで
- (i) 該ポリペプチドは、出血事象の予防のために投与され、ここで
a) 該処置はいずれも外来性FVIIIの同時投与を含まず、もしくは
b) 該処置は、外来性FVIIIが投与され、そしてそれにより該被験体において内在性FVIIIを提供することを含み;又は
- (ii) 該ポリペプチドは、出血事象の処置のため、又は予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、該ポリペプチドは外来性FVIIIを同時投与することなく投与される、
上記医薬組成物。
【請求項2】
内在性FVIIIレベルは、該ポリペプチドの投与後に、少なくとも1%のレベルまで増加する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)はヒト切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
該ポリペプチドを用いた処置の前の該被験体の内在性FVIIIの活性レベルは、NHPにおける内在性FVIIIの活性レベルの80%未満、60%未満、40%未満、30%未満、20%未満又は10%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
処置前の上記被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、好ましくはNHPにおける内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%又は少なくとも5%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
血液凝固障害は血友病A及びフォン・ヴィルブランド病から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
被験体はヒト被験体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ポリペプチドは静脈内又は血管外のいずれかに投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ポリペプチドは、1nM未満、好ましくは500pM未満、200pM未満、100pM未満、90pM未満又は80pM未満の解離定数KDにより特徴づけられるFVIII結合親和性を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
切断型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764~1242、(b)配列番号4のアミノ酸764~1242に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列のフラグメントからなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
内在性FVIIIの薬物動態パラメーターはポリペプチドの投与により改善され、特にここで内在性FVIIIの平均滞留時間(MRT)は増加し、かつ/又は内在性FVIIIの半減期は延長され、かつ/又は内在性FVIIIのクリアランスは減少する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ポリペプチドの血漿半減期は、内在性VWFの血漿半減期より長く、かつ/又は正常ヒト血漿(NHP)のVWFの血漿半減期より長い、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ポリペプチドの血漿半減期は、内在性VWFの半減期より少なくとも25%長く、かつ/又は正常ヒト血漿(NHP)の半減期より少なくとも25%長い、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ポリペプチドの投与後に、被験体の内在性FVIII活性レベルの増加が達成され、好ましくは内在性FVIII活性レベルは、生理的FVIIIレベル(100%=1IU/mL)まで増加するか、又はポリペプチドの投与後に生理的FVIIIレベルより高くは実質的に増加せず、好ましくはそれぞれ正常ヒト血漿の血漿中の平均FVIII活性レベ
ルの300%=3IU/mLを超えない、より好ましくは250%=2.5IU/mLを超えない、200%=2IU/mLを超えない、150%=1.5IU/mLを超えない、もしくは120%=1.2IU/mLを超えない内在性FVIII活性レベルの増加を生じる、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、血液凝固障害の処置を改善するための製品及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血液凝固因子の欠乏により引き起こされる様々な出血障害がある。最も一般的な障害は、それぞれ第VIII(FVIII)及び第IX血液凝固因子の欠乏により生じる血友病A及びBである。別の公知の出血障害はフォン・ヴィルブランド病(von Willebrand’s disease)(VWD)である。
【0003】
血漿中で、FVIIIは大部分はフォン・ヴィルブランド因子(VWF)との非共有結合複合体として存在し、そしてその凝固機能は、第X因子の第Xa因子への第IXa因子依存性変換を加速することである。
【0004】
古典的血友病又は血友病Aは遺伝性の出血性障害である。これは染色体X連鎖性血液凝固第VIII因子欠損から生じ、そして10,000人あたり1人と2人との間の発生率でほとんど男性のみに影響を及ぼす。X染色体欠損は、それら自体血友病ではない女性キャリアにより伝達される。血友病Aの臨床症状は増加した出血傾向である。
【0005】
予防的処置を受けている重篤な血友病A患者において、FVIIIは、約12~14時間というFVIIIの短い血漿半減期のために週に約3回静脈内(i.v.)投与されなければならない。各i.v.投与は煩雑であり、痛みを伴い、そして特に大部分は家庭で患者自身により、又は血友病Aと診断された児童の両親により行われるので、感染のリスクを伴う。
【0006】
従って、このようなFVIIIを含有する医薬組成物がより少ない頻度で投与されなければならないように、FVIIIの半減期を増加させることは非常に望ましいだろう。
【0007】
細胞受容体との相互作用を減少させることにより(特許文献1、特許文献2)、ポリマーをFVIIIに共有結合で結合することにより(特許文献3、特許文献4及び特許文献5)、FVIIIの封入により(特許文献6)、新しい金属結合部位の導入により(特許文献7)、ペプチド連結(特許文献8及び特許文献9)若しくはジスルフィド連結(特許文献10)のいずれかによりA2ドメインをA3ドメインに共有結合で結合することにより、又はA1ドメインをA2ドメインに共有結合で結合すること(特許文献11)のいずれかにより、非活性化FVIIIの半減期を延長させるための幾つかの試みがなされた。
【0008】
FVIII又はVWFの機能的半減期を増強するための別のアプローチは、FVIIIのPEG化(特許文献12、特許文献13、特許文献14)又はVWFのPEG化(特許文献15)によるもである。ペグ化VWFの増加された半減期は、血漿中に存在するFVIIIの半減期も間接的に増強するだろう。また、FVIIIの融合タンパク質も記載されている(特許文献16、特許文献17及び特許文献18)。
【0009】
フォン・ビルブラント病(VWD)の様々な形態において、欠失しているか、機能不全であるか又は減少した量でしか利用可能でないVWFは、哺乳動物の血漿中に存在するマルチマーの接着性糖タンパク質であり、多数の生理学的機能を有する。一次止血の間、VWFは、血小板表面上の特定の受容体とコラーゲンのような細胞外マトリックスの成分との間のメディエーターとして作用する。さらに、VWFは、プロコアグラント(procoagulant)FVIIIのための担体及び安定化タンパク質として役立つ。VWFは、内皮細胞及び巨核球において2813アミノ酸の前駆体分子として合成される。野生型VWFのアミノ酸配列及びcDNA配列は、非特許文献1に開示される。前駆体ポリペプチドのプレ-プロ-VWFは、N末端22残基のシグナルペプチド、続いて741残基のプロペプチド及び成熟血漿VWFにおいて見出される2050残基のポリペプチドからなる(非特許文献2)。小胞体におけるシグナルペプチドの切断後に、C末端ジスルフィド架橋が、VWFの2つのモノマー間に形成される。分泌経路を通るさらなる輸送の間に、12のN連結及び10のO連結炭水化物側鎖が付加される。より重要なことには、VWFダイマーは、N末端ジスルフィド架橋を介して多量体化され、そして741アミノ酸長のプロペプチドは、後期(late)ゴルジ体において酵素PACE/フューリンにより開裂される。
【0010】
血漿中に分泌されると、プロテアーゼADAMTS13は、VWFのA1ドメイン内で高分子量VWFマルチマーを切断することができる。従って、血漿VWFは、500kDaの単一のダイマーから、10,000kDaを超える分子量の20まで又は20より多くのダイマーからなるマルチマーまでの全範囲からなる。これによってVWF-HMWMは最も強い止血活性を有し、これはリストセチン補因子活性(VWF:RCo)で測定され得る。VWF:RCo/VWF抗原の比が高くなるほど、高分子量マルチマーの相対的な量が高くなる。
【0011】
血漿中で、FVIIIは高い親和性でVWFに結合し、これはそれを早期排出から保護し、従って、一次止血におけるその役割に加えてFVIIIを安定化するための重大な役割を果たし、FVIIIの血漿レベルを調節し、そして結果として、二次止血を制御する中心的因子でもある。VWFに結合した非活性化FVIIIの半減期は血漿中で約12~14時間である。VWFが全く又はほとんど存在しない3型フォン・ヴィルブランド病において、FVIIIの半減期は約2~6時間しかなく、このような患者ではFVIIIの減少した濃度に起因して軽度から中程度の血友病Aの症状を生じる。FVIIIに対するVWFの安定化効果はまた、CHO細胞におけるFVIIIの組み換え発現を補助するために使用されてきた(非特許文献3)。2N型フォン・ヴィルブランド病は、FVIIIのVWFに対する結合に影響を及ぼすVWFにおける変異に起因する低いFVIIIレベルに特徴づけられる。2N型VWD患者におけるFVIIIレベルは、VWF中の特定の変異に依存して約3IU/dLと30IU/dLとの間の範囲、典型的には20IU/dL未満である。1型フォン・ヴィルブランド病は、正常ヒト血漿における内在性FVIII活性レベルと比較して減少した内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる(非特許文献4)。
【0012】
VWF由来ポリペプチド、特にVWFフラグメントは、インビトロ及びインビボでFVIIIを安定化すると記載されている。特許文献19は、特定のVWFフラグメント及びFVIIIタンパク質を含むキメラタンパク質に関する。FVIII及びVWFフラグメントのこれらのキメラヘテロダイマーは、1:1のVWF対FVIIIの固定モル比を有する。特許文献20及び特許文献21は、VWFフラグメント及び血友病の処置のおけるそれらの使用を記載する。FVIIIのバイオアベイラビリティが、同様のモル量のVWFフラグメントの血管外同時投与で有意に改善され得るということが見出された。FVIIIに対する高モル過剰のVWFは望ましくないと言われ、そしてFVIIIと皮下当時投与されるVWFを用いた実験において、VWF用量はFVIIIバイオアベイラビリティに関して決定的ではないということが見出された。従って、FVIIIに対するVWFフラグメントのモル比は、最大50:1に制限され、そして最大で1.5:1までの範囲が好ましいとされた。特許文献22は、特定のVWFフラグメント及び抗体Fc領域を含む融合ポリペプチドを開示し、10:1までのFVIIIに対するVWFフラグメントの特定のモル比を提案する。特許文献23は、同時発現するFVIII又はVWFの切断型形態(truncated forms)を含むVWFポリペプチドを含むタンパク質を組み換えα-2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて製造するための方法を記載する。非特許文献5は、D’D3ドメインを含有するVWFフラグメントが、VWF欠損マウスにおいて第VIII因子を安定化するために十分であるということを見出した。しかし、VWF D’D3-Fc融合タンパク質は、FVIII欠損マウスに輸液された場合に顕著に長期の残存を示したが、VWF D’D3-Fc融合タンパク質は、同時輸液されたFVIIIの残存を延長しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】WO 03/093313A2
【文献】WO 02/060951A2
【文献】WO 94/15625
【文献】WO 97/11957
【文献】US 4970300
【文献】WO 99/55306
【文献】WO 97/03193
【文献】WO 97/40145
【文献】WO 03/087355
【文献】WO 02/103024A2
【文献】WO2006/108590
【文献】WO 2007/126808
【文献】WO 2006/053299
【文献】WO 2004/075923
【文献】WO 2006/071801
【文献】WO 2004/101740
【文献】WO2008/077616
【文献】WO 2009/156137
【文献】WO 2013/106787 A1
【文献】WO 2014/198699 A2
【文献】WO 2013/083858 A2
【文献】WO2011/060242 A2
【文献】WO2013/093760 A2
【非特許文献】
【0014】
【文献】Collins et al. 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4393-4397
【文献】Fischer et al., FEBS Lett. 351:345-348, 1994
【文献】Kaufman et al. 1989, Mol Cell Biol 9:1233-1242
【文献】Sadler J.E. and Blinder M., Von Willebrand Disease:Diagnosis, Classification, and Treatment;in:Hemostasis and Thrombosis, eds. Colman, Marder, Clowes, George, Aird, and Goldhaber, Lippincott Williams & Wilkins 2006, pp 905-921
【文献】Yee et al. (2014) Blood 124(3):445-452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
FVIIIの半減期を増加させる方法及び減少した投与頻度を用いるFVIII製品に対する継続した必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
内在性第VIII因子のインビボ半減期が、切断型半減期延長VWFポリペプチド(本発明のポリペプチド)の投与により延長され得るということが、本発明者らにより見出された。内在性第VIII因子のインビボ半減期が外来性FVIIIの同時投与を必要とすることなくとも本発明の上記ポリペプチドの投与により延長され得るということも見出された。患者は、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIのレベルと比べて上記ポリペプチドを用いた処置の前に減少したレベルの内在性FVIIIを有する。上記患者における内在性FVIIIのレベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIのレベルの少なくとも0.5%である。本発明のポリペプチドは、内在性FVIIIレベルを上昇させることができる。これは外来性FVIIIを同時投与する必要なく、患者の予防的処置を可能にする。外来性FVIIIが同時投与される場合、出血事象の経過観察処置を、本発明のポリペプチドのみを用いて、すなわち外来性FVIIIを継続した同時投与することなく行うことができる。外来性FVIIIの投与及びそれにより該被験体において内在性FVIIIを提供することにより、このような内在性第VIII因子のインビボ半減期が延長され、患者は本発明のポリペプチドを用いた処置から利益を得ることができるということも見出された。
【0017】
従って、本発明は特に以下の実施態様[1]~[91]に関する:
[1] 血液凝固障害の処置における使用のための、切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)及び半減期延長部分を含むポリペプチドであって、該処置は、血液凝固障害を有しかつ内在性第VIII因子(FVIII)を有する被験体にポリペプチドを投与することを含み、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比べて減少しているが、ただし該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは正常ヒト血症(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、ここでポリペプチドは内在性FVIIIに結合することができ、そして内在性FVIIIレベルは、該ポリペプチドの投与後に増加し、そしてここで
- (i) 該ポリペプチドは、出血事象の予防のために投与され、ここで
a) 該処置はいずれも外来性FVIIIの同時投与を含まず、もしくは
b) 該処置は、外来性FVIIIが投与され、そしてそれにより該被験体において内在性FVIIIを提供することを含み;又は
- (ii) 該ポリペプチドは、出血事象の処置のため、又は予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、該ポリペプチドは外来性FVIIIを同時投与することなく投与される、
上記使用のためのポリペプチド。
【0018】
本発明は特に、本発明のポリペプチドにより安定化することができる残りの低レベルの内在性FVIIIから利益を得ることができるという利点を提供する。内在性FVIIIの安定化は、FVIIIのより高い保護的血漿レベルを可能にし得る。本発明の特定の局面によれば、ポリペプチドは、切断型VWF及び半減期延長部分を含む上記ポリペプチドの血管外投与を場合により可能にする。さらに、本発明のポリペプチドを適用することにより投与頻度を減少させることができる。ポリペプチドの投与は、内在性FVIII活性レベルの増加を可能にし、これは生理的範囲に上昇され得るか又は生理的範囲で延長され得る。ポリペプチドの投与により、病理的aPTT値は生理的値まで減少され得る。本発明の治療によれば外来性FVIIIは必ずしも投与される必要はなく、FVIIIに対する阻害剤の形成の可能性は減少され得る。従って、患者はFVIIIの同時投与を必要とすることなくとも、本発明のポリペプチドを用いた処置から利益を受け得る。
【0019】
[2] 切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)は、内在性FVIIIに結合するポリペプチドの能力を提供する、実施態様[1]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0020】
[3] 内在性FVIIIレベルは、上記ポリペプチドの投与後に、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも1%、又は好ましくは少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%のレベルまで増加する、実施態様[1]又は実施態様[2]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0021】
[4] 切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)は、ヒト切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)である、実施態様[1]~[3]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0022】
[5] 上記ポリペプチドを用いた処置の前の上記被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、NHPにおける内在性FVIIIの活性レベルの80%未満、60%未満、40%未満、30%未満、20%未満又は10%未満である、実施態様[1]~[4]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0023】
[6] 上記被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、NHPにおける内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%又は少なくとも5%である、実施態様[1]~[5]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0024】
[7] 上記血液凝固障害は、血友病A又はフォン・ヴィルブランド病、好ましくは2N型フォン・ヴィルブランド病、3型フォン・ヴィルブランド病又は1型フォン・ヴィルブランド病である、実施態様[1]~[6]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0025】
[8] 上記血液凝固障害は、典型的には処置前又は未処置の内在性FVIII活性レベルがNHPにおける内在性FVIII活性レベルの1%~5%の間の範囲であることにより特徴づけられる中程度血友病Aである、実施態様[1]~[7]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0026】
[9] 処置選択肢(i)a)又は処置選択肢(ii)が適用されている、実施態様[8]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0027】
[10] 上記血液凝固障害は、典型的には、処置前又は未処置の内在性FVIII活性レベルがNHPにおける内在性FVIII活性レベルの5%より高くかつ40%までであることにより特徴づけられる軽度血友病Aである、実施態様[1]~[7]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0028】
[11] 処置選択肢(i)a)又は処置選択肢(ii)が適用されている、実施態様[10]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0029】
[12] 上記血液凝固障害は、典型的には、処置前又は未処置の内在性FVIII活性レベルが、通常は、NHPにおける内在性FVIII活性レベルの約1%~約20%に対応する約1IU/dLと約20IU/dLとの間の範囲のFVIII活性レベルであることにより特徴づけられる3型フォン・ヴィルブランド病である、実施態様[1]~[7]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。患者の大部分は10IU/dL未満の内在性FVIII活性レベル、従ってNHPにおける内在性FVIII活性レベルの10%未満のレベルを有する。
【0030】
[13] 上記血液凝固障害は、典型的には、処置前又は未処置の内在性FVIII活性レベルが、NHPにおける内在性FVIII活性レベルの約3%~約30%に対応する約3IU/dLと約30IU/dLとの間の範囲のFVIII活性レベルであることにより特徴づけられる2N型フォン・ヴィルブランド病である、実施態様[1]~[7]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。患者の大部分は20IU/dL未満の内在性FVIII活性レベル、従ってNHPにおける内在性FVIII活性レベルの20%未満のレベルを有する。従って、2N型フォン・ヴィルブランド病を有する被験体は、血漿中0.0IU/mL~0.3IU/mL、典型的には0.2IU/mL未満の内在性FVIII活性レベルを有する。
【0031】
[14] 上記血液凝固障害は、典型的には、NHPにおける内在性FVIII活性レベルと比較して減少している処置前又は未処置の内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる1型フォン・ヴィルブランド病である、実施態様[1]~[7]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0032】
[15] 処置選択肢(i)a)又は処置選択肢(ii)が適用されている、実施態様[12]~[14]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0033】
[16] 処置選択肢(i)b)が適用されている、実施態様[1]~[7]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0034】
[17] 上記血液凝固障害は血友病Aである、実施態様[16]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0035】
[18] 凝固障害は、NHPにおける内在性FVIII活性の1%未満である処置前又は未処置の内在性FVIII活性レベルにより典型的に特徴づけられる重症血友病Aである、実施態様[17]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0036】
[19] 上記外来性FVIIIは、上記ポリペプチドの投与前もしくは投与後に投与されたか;又は上記外来性FVIIIは上記ポリペプチドと同時に投与されている、実施態様[17]又は[18]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0037】
[20] 上記外来性FVIIIは上記ポリペプチドの前に投与された、実施態様[19]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0038】
[21] 被験体は、内在性FVIII活性の供給のためにFVIII遺伝子療法又はFVIII遺伝子導入アプローチにより現在処置されているか又は処置されたが、内在性FVIII活性レベルは好ましくは実施態様[5]において定義されるFVIII活性レベルのうちの1つより低い。実施態様[1]~[20]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0039】
[22] 処置選択肢(i)b)が適用されている一方で、「外来性」FVIIIがFVIII遺伝子療法又はFVIII遺伝子導入アプローチにより提供され、それにより内在性FVIIIを供給する、実施態様[21]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0040】
[23] 投与された外来性FVIIIから生じた被験体の血漿内のFVIIIの活性レベル及び被験体により内因的に形成された被験体の血漿内のFVIIIの活性レベルは、いずれかのFVIIIが被験体により形成される場合、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であるとみなされている、実施態様[16]~[20]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。他の言葉を用いて、この実施態様によれば、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%である内在性FVIIIは、外来性FVIIIが起源であるFVIII、好ましくは以前に投与されたFVIII、及び被験体により形成された内在性FVIIIの混合物であってもよく、又はFVIIIが被験体により形成されない場合に以前に投与された残留FVIIIだけでもよい。
【0041】
[24] ポリペプチドは静脈内及び/又は血管外に投与される、実施態様[1]~[23]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。血管外投与の場合、皮下投与が好ましい。
【0042】
[25] 外来性FVIIIは静脈内投与され、すなわち、従って内在性FVIIIを提供する、実施態様[16]~[23]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0043】
[26] 上記ポリペプチドは、VIIIと異なる経路を介して投与され、好ましくは上記ポリペプチドは皮下投与される、実施態様[25]に従う使用のためのポリペプチド。
【0044】
[27] 上記ポリペプチドは静脈内投与される、実施態様[16]~[25]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0045】
[28] 被験体はヒトである、実施態様[1]~[27]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0046】
[29] ポリペプチドはダイマーである、実施態様[1]~[28]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0047】
[30] 切断型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸776~805又は(b)配列番号4のアミノ酸776~805に対して少なくとも90%、少なくとも95%;少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施態様[1]~[29]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0048】
[31] 切断型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸766~864又は(b)配列番号4のアミノ酸766~864に対して少なくとも90%、少なくとも95%;少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施態様[1]~[30]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0049】
[32] 切断型VWFは、配列番号4のアミノ酸764~1242を含む、実施態様[1]~[32]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0050】
[33] 切断型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764~1242、(b)配列番号4のアミノ酸764~1242に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(c) (a)もしくは(b)のフラグメントからなる、実施態様[1]~[32]のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチド。
【0051】
[34] 切断型VWFは配列番号4のアミノ酸1243~2813を欠失している、実施態様[1]~[33]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0052】
[35] 半減期延長部分は、切断型VWFに融合された異種アミノ酸配列である、実施態様[1]~[34]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0053】
[36] 上記異種アミノ酸配列は、トランスフェリン又はそのフラグメント、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド、XTEN配列、ホモ-アミノ酸反復(HAP)、プロリン-アラニン-セリン反復(PAS)、アルブミン、アファミン、アルファ-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アルブミン又は免疫グロブリン定常領域に生理条件下で結合することができるポリペプチド、新生児型Fc受容体(FcRn)に結合することができるポリペプチド、特に免疫グロブリン定常領域及びその部分、好ましくは免疫グロブリンのFc部分、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択されるポリペプチドを含むか又は該ポリペプチドからなる、実施態様[35]に記載の使用のためのポリペプチド。免疫グロブリン定常領域又はその部分は、好ましくは、免疫グロブリンG1のFcフラグメント、免疫グロブリンG2のFcフラグメント又は免疫グロブリンAのFcフラグメントである。
【0054】
[37] 半減期延長部分はポリペプチドに結合されている、実施態様[1]~[36]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0055】
[38] 上記半減期延長部分は、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸(PSA)、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、ヒアルロン酸及びアルブミン結合リガンド、例えば脂肪酸鎖又はアルブミン結合ペプチド、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される、実施態様[37]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0056】
[39] 内在性FVIIIの薬物動態パラメーターはポリペプチドの投与により改善され、特にここで内在性FVIIIの平均滞留時間(MRT)は増加し、かつ/又は内在性FVIIIの半減期は延長され、かつ/又は内在性FVIIIのクリアランスは減少する、実施態様[1]~[38]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0057】
[40] 内在性FVIIIの血漿半減期を安定化及び/又は増加するための、実施態様[1]~[39]のいずれか1つにおいて定義されるポリペプチドの使用。
【0058】
[41] 提供された処置選択肢(ii)が適用され、そして上記ポリペプチドは、出血事象の処置のため、又は予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、該ポリペプチドは外来性FVIIIを同時投与することなく投与され、ここで外来性FVIIIに対する同時投与しようとするポリペプチドのモル比は50より大きい、実施態様[1]~[40]のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド。同時投与される外来性FVIIIは、血漿由来であってもいずれかの組み換えFVIIIであってもよい。組み換え外来性FVIIIは、例えば好ましくはアミノ酸配列配列番号5からなる単鎖第VIII因子であり得る。
【0059】
[42] 処置選択肢(i)b)又は処置選択肢(ii)が適用される場合、外来性FVIIIに対するポリペプチドのモル比は少なくとも50である、実施態様[1]~[41]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0060】
[43] 外来性FVIIIに対するポリペプチドのモル比は少なくとも75である、実施態様[42]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0061】
[44] 外来性FVIIIに対するポリペプチドのモル比は少なくとも100である、実施態様[42]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0062】
[45] 外来性FVIIIに対するポリペプチドのモル比は少なくとも200である、実施態様[42]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0063】
[46] 外来性FVIIIに対するポリペプチドのモル比は少なくとも300である、実施態様[42]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0064】
[47] 外来性FVIIIに対するポリペプチドのモル比は少なくとも400又は少なくとも500である、実施態様[42]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0065】
[48] ポリペプチドはN-グリカンを含む糖タンパク質であり、そしてここで該N-グリカンの少なくとも75%は、平均して、少なくとも1つのシアル酸部分を含む、実施態様[1]~[47]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0066】
[49] 上記N-グリカンの少なくとも85%は、平均して、少なくとも1つのシアル酸部分を含む、実施態様[48]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0067】
[50] 上記N-グリカンの少なくとも95%は、平均して、少なくとも1つのシアル酸部分を含む、実施態様[49]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0068】
[51] ポリペプチドはダイマーであり、好ましくは本明細書において開示される実施態様のうちの1つにおいて定義される2つのポリペプチド(モノマー)を含むホモダイマーであり、そしてダイマーを形成する2つのモノマーは、切断型VWF内のシステイン残基により形成される1つ又はそれ以上のジスルフィド架橋を介して互いに共有結合で連結される、実施態様[1]~[50]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0069】
[52] 1つ又はそれ以上のジスルフィド架橋を形成するシステイン残基は、Cys-1099、Cys-1142、Cys-1222、Cys-1225、Cys-1227及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくはCys-1099及びCys-1142であり、ここでアミノ酸番号付けは配列番号4を参照する、実施態様[51]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0070】
[53] 上記ダイマーポリペプチドのFVIII(外来性又は内在性FVIIIのいずれか)に対する親和性は、ダイマーポリペプチドのモノマーサブユニットと同じアミノ酸配列を有するモノマーポリペプチドの該FVIIIに対する親和性より高い、実施態様[51]~[52]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0071】
[54] 本発明のポリペプチドの比ダイマー:モノマーは、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5又は少なくとも3である、実施態様[51]~[53]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。最も好ましくは、本発明の全てのポリペプチドはダイマーとして存在する。
【0072】
[55] ポリペプチドは、1nM未満、好ましくは500pM未満、200pM未満、100pM未満、90pM未満又は80pM未満の解離定数Kにより特徴づけられるFVIII結合親和性を有する、実施態様[51]~[54]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0073】
[56] 解離定数Kは、0.1pM~500pM、0.5pM~200pM、0.75pM~100pM又は最も好ましくは1pM~80pMの範囲に及ぶ、実施態様[55]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0074】
[57] ダイマーポリペプチドは、解離定数Kにより特徴づけられるFVIII結合親和性を有し、そしてダイマーポリペプチドの該解離定数Kは、モノマーポリペプチドの解離定数Kと比較して、好ましくは少なくとも10分の1、少なくとも100分の1、少なくとも500分の1又は少なくとも1000分の1に減少する、実施態様[51]~[56]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0075】
[58] 内在性FVIIIの薬物動態パラメーターは、ポリペプチドの投与により改善され、好ましくはここで、特に正常ヒト血漿(NHP)における対応するFVIII薬物動態パラメーターと比較した場合、又はポリペプチドを投与されていない被験体における対応するFVIII薬物動態パラメーターと比較した場合に、内在性FVIIIの平均滞留時間(MRT)は増加し、かつ/又は内在性FVIIIの半減期は延長され、かつ/又は内在性FVIIIのクリアランスは減少する 実施態様[1]~[57]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0076】
[59] 内在性FVIIIのMRT及び/又は終末相半減期の上記増加は少なくとも50%である、実施態様[58]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0077】
[60] 内在性FVIIIのMRT及び/又は終末相半減期の上記増加は少なくとも100%である、実施態様[59]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0078】
[61] 内在性FVIIIのクリアランスはポリペプチドの投与により減少し、そして該減少は少なくとも25%である、実施態様[58]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0079】
[62] 上記減少は少なくとも50%である、実施態様[61]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0080】
[63] 上記減少は少なくとも100%である、実施態様[62]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0081】
[64] 上記ポリペプチドの血漿半減期は、内在性VWFの血漿半減期と比較した場合、かつ/又は正常ヒト血漿(NHP)のVWFの血漿半減期と比較した場合に増加する、実施態様[1]~[63]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0082】
[65] 上記ポリペプチドの血漿半減期は、内在性VWFの半減期及び/又は正常ヒト血漿(NHP)のVWFの半減期よりも少なくとも25%高く、特に少なくとも50%高く、少なくとも75%高く、又は少なくとも100%高い、実施態様[64]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0083】
[66] ポリペプチドのMRTは、内在性VWFのMRTと比較した場合、かつ/又は正常ヒト血漿(NHP)のVWFのMRTと比較した場合、特に少なくとも25%高く、少なくとも50%高く、少なくとも75%高く、又は少なくとも100%高く増加する、実施態様[1]~[65]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0084】
[67] ポリペプチドのMRT及び/又は血漿半減期は、参照ポリペプチドが半減期延長部分を欠いていることを除いて該ポリペプチドと同一である参照ポリペプチドのMRT及び/又は血漿半減期と比較した場合、増加している、実施態様[1]~[66]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0085】
[68] ポリペプチドは、未処置の被験体と比較して内在性第VIII因子の最大濃度(Cmax)が増加する、実施態様[1]~[67]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0086】
[69] 上記ポリペプチドの投与後に、FVIIIについてのCmaxは、少なくとも10mIU/mL、少なくとも25mIU/mL、少なくとも50mIU/mL、少なくとも100mIU/mL、少なくとも200mIU/mL、少なくとも300mIU/mL又は少なくとも400mIU/mLに達する、実施態様[68]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0087】
[70] ポリペプチドは、未処置の被験体と比較して、内在性第VIII因子のゼロから最終測定時点までの血漿濃度-時間曲線下ピーク面積(AUC)が増加する、実施態様[1]~[69]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0088】
[71] ポリペプチドの投与後に、内在性FVIIIについてのAUCは、少なくとも1000mIU*h/mL、少なくとも2000mIU*h/mL、少なくとも3000mIU*h/mL、少なくとも5000mIU*h/mL、少なくとも10000mIU*h/mL又は少なくとも20000mIU*h/mLの発色FVIII活性レベルまで増加する、実施態様[70]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0089】
[72] ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸は、野生型VWFのアミノ酸配列と比較して置換されており、ここでこのように改変されたポリペプチドのFVIIIに対する結合親和性は、上記改変以外は同じアミノ酸配列を有する参照ポリペプチドの結合親和性と比較して、該少なくとも1つの置換の導入によりさらに増加されている、実施態様[1]~[71]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0090】
[73] 切断型VWF内の上記少なくとも1つの置換は、ポリペプチドの投与後に内在性FVIIIの半減期をさらに増加させる能力を有し、かつ/又は組み換えポリペプチドの投与しようとする用量の減少を可能にし得る、実施態様[72]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0091】
[74] 置換は、アミノ酸番号付けに関して配列番号4の配列を参照して、S764G/S766Y、S764P/S766I、S764P/S766M、S764V/S766Y、S764E/S766Y、S764Y/S766Y、S764L/S766Y、S764P/S766W、S766W/S806A、S766Y/P769K、S766Y/P769N、S766Y/P769R、S764P/S766L、及びS764E/S766Y/V1083Aからなる組み合わせの群から選択される、実施態様[72]~[73]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0092】
[75] 上記置換は組み合わせS764E/S766Y又はS764E/S766Y/V1083Aのいずれかである、実施態様[74]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0093】
[76] 上記ポリペプチドは、血管外に、特に皮下投与され、そして投与後にポリペプチドは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%又は少なくとも80%のバイオアベイラビリティを示す、実施態様[1]~[75]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0094】
[77] ポリペプチドの投与後に、被験体の内在性FVIII活性レベルの増加が達成され、好ましくは内在性FVIII活性レベルは、生理的FVIIIレベル(100%=1IU/mL)まで増加するか、又はポリペプチドの投与後に生理的FVIIIレベルより高くは実質的に増加せず、好ましくは、それぞれ正常ヒト血漿における平均FVIII活性レベルの300%=3IU/mLを超えない、より好ましくは250%=2.5IU/mLを超えない、200%=2IU/mLを超えない、150%=1.5IU/mLを超えない、又は120%=1.2IU/mLを超えない内在性FVIII活性レベルの増加を生じる、実施態様[1]~[76]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0095】
[78] 血液凝固障害に罹患している被験体へのポリペプチドの投与後に、増加した血栓形成リスクが予防される、実施態様[1]~[77]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0096】
[79] 血栓形成リスクの予防は、ポリペプチドの投与後の被験体における内在性FVIII活性レベルの限定的増加のみによって決定されるか又は達成され、好ましくは内在性FVIII活性レベルは、生理的FVIIIレベル(100%=1IU/mL)まで増加するか、又はポリペプチドの投与後に生理的FVIIIレベルより高くは実質的に増加せず、好ましくは、それぞれ正常ヒト血漿の血漿中の平均FVIII活性レベルの300%=3IU/mLを超えない、より好ましくは250%=2.5IU/mLを超えない、200%=2IU/mLを超えない、150%=1.5IU/mLを超えない、又は120%=1.2IU/mLを超えない内在性FVIII活性レベルの増加を生じる、実施態様[78]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0097】
[80] 上記ポリペプチドの投与後に、ポリペプチドについての最大濃度(Cmax)は、少なくとも20nmol/kg、少なくとも40nmol/kg、少なくとも60nmol/kg、少なくとも80nmol/kg又は少なくとも160nmol/kgである、実施態様[1]~[79]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0098】
[81] 上記ポリペプチドの投与後に、投与されたポリペプチドについてのt=0からt=∞までの濃度対時間曲線下面積(AUC0-inf)は、少なくとも2nmol * h/mL、少なくとも3nmol * h/mL、少なくとも4nmol * h/mL、少なくとも20nmol * h/mL、少なくとも40nmol * h/mL、又は少なくとも80nmol * h/mLである、実施態様[1]~[80]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0099】
[82] 上記ポリペプチドの投与後に、ポリペプチドについてのクリアランス(CL)値は、参照処置と比較して少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に減少し、ここで該参照処置は、投与しようとするポリペプチドが半減期延長部分を含まないこと以外は上記処置と同じである、実施態様[1]~[81]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0100】
[83] ポリペプチドは、ポリペプチド少なくとも0.01mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.2mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも1mg/kg又は少なくとも3mg/kgの量で投与される、実施態様[1]~[82]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0101】
[84] 組み換えポリペプチドは、20mg/kgを超えない、15mg/kgを超えない、10mg/kgを超えない、又は5mg/kgを超えないポリペプチドの量で投与される、実施態様[1]~[83]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0102】
[85] ポリペプチドの投与後に、生理的活性化部分トロンビン時間(aPTT)値が達成され、特に病理的aPTT値が生理的値に減少する、実施態様[1]~[84]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0103】
[86] ポリペプチドの投与後に、活性化部分トロンビン時間(aPTT)は、少なくとも1.5分の1、少なくとも2分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも3分の1、少なくとも4分の1、少なくとも5分の1又は少なくとも10分の1に減少する、実施態様[85]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0104】
[87] ポリペプチドは、好ましくは月に1回、3週ごとに1回、2週ごとに1回、7日ごとに1回、週に2回、又は2日ごとに1回の投薬で繰り返し投与される、実施態様[1]~[86]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0105】
[88] 上記繰り返し、すなわち複数回のポリペプチドの投与の後に、被験体における内在性FVIII活性レベルの定常状態レベルが達成され、ここで定常状態FVIII活性レベルは、1%より高いトラフレベル、好ましくは5%より高いトラフレベル、好ましくは10%より高いトラフレベル、より好ましくは20%より高いトラフレベル、より好ましくは50%より高いトラフレベルをもたらし、そしてさらに最も好ましくは定常状態FVIII活性レベルは、本質的に生理的FVIII活性レベルの範囲内である、実施態様[87]に記載の使用のためのポリペプチド。
【0106】
[89] 上記繰り返し、すなわち複数回の投与の後に、活性化部分トロンビン時間(aPTT)の持続的減少が被験体において達成され、ここでaPTTは好ましくは、本質的にaPTTの生理的範囲内である、実施態様[87]~[88]のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド。
【0107】
[90] FVIIIを同時投与することなく、実施態様[1]~[89]のいずれか1つにおいて定義されるポリペプチドの有効量を患者に投与することを含む、血液凝固障害を処置する方法であって、該患者は内在性第VIII因子(FVIII)を有し、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該患者における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比較して減少するが、ただし該患者における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、そしてそれにより内在性FVIIIレベルは該ポリペプチドの投与後に増加する、上記方法。上記ポリペプチドは、好ましくは出血事象の予防のために投与され、ここで該処置は外来性FVIIIの同時投与を含まないか、又は該ポリペプチドは、出血事象の処置のためもしくは予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、外来性FVIIIを同時投与することなく該ポリペプチドが投与される。
【0108】
[91] 実施態様[1]~[89]のいずれか1つにおいて定義されるポリペプチドの有効量を患者に投与することを含む、血液凝固障害を処置する方法であって、該患者は内在性第VIII因子(FVIII)を有し、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該患者における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比較して減少しているが、ただし該患者における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、そしてそれにより内在性FVIIIレベルは該ポリペプチドの投与後に増加する、上記方法。該処置は、外来性FVIIIを投与し、それにより該被験体において内在性FVIIIを供給することを含む。該ポリペプチドは、好ましくは出血事象の予防のために投与される。好ましい実施態様によれば、ポリペプチドは皮下投与され、そしてFVIIIは静脈内投与される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1-1】図1は、実施例1.1に記載されるように、rD’D3-FPの静脈内(i.v.)投与後のCDラットにおけるrD’D3-FP曝露、FVIII活性及びaPTTを示す。図1Aは、そのアルブミン成分を介して定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータは時点あたりn=2~3匹のラットについて平均±SDとして示される;図1Bは、発色FVIII活性として定量されたFVIIIをIU/mLで示し、そしてデータは時点あたりn=1~3匹のラットについて平均±SDとして示される(投薬前(predose)データを除く:n=7)。点線は投薬前データの最小及び最大を表す。ULNと印をつけられた点線は正常の上限を表す;図1Cは、凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを標準の%で示し、そしてデータは時点あたりn=1~3匹のラットについての平均±SDとして示される(投薬前データを除く:n=7)。点線は投薬前データの最小及び最大を表す。ULNと印をつけられた点線は正常の上限を表す;図1Dは、上記のように発色又は凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを示す。AUCを時間ゼロから14日目までの血漿濃度-時間曲線下のピーク面積として計算した図1Eは、Pathromtin(R)SLを使用した活性化部分トロンビン時間を示し、そしてデータは時点あたりn=1~3匹のラットについての平均±SDとして示される(投薬前データを除く:n=7)。点線は投薬前データの最小及び最大を表す。
図1-2】図1-1の続き。
図1-3】図1-2の続き。
図2-1】図2は、実施例1.2に記載されるように、rD’D3-FPのi.v.投与後のウサギにおけるrD’D3-FP曝露、FVIII活性及びaPTTを示す。図2Aは、そのアルブミン成分を介して定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータは時点あたりn=1~3匹のウサギについての平均±SDとして示される;図2Bは、発色FVIII活性として定量されたFVIIIをIU/mLで示し、そしてデータは時点あたりn=1~3匹のウサギについての平均±SDとして示される。点線は投薬前データの最小及び最大を表す;図2Cは、凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを標準の%で示し、そしてデータを時点あたりn=1~3匹のウサギについての平均±SDとして示される。点線は投薬前データの最小及び最大を表す;図2Dは、上記のように発色又は凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを示す。AUCを時間ゼロから10日目までの血漿濃度-時間曲線下ピーク面積として計算した;図2Eは、Actin(R)FSLを使用した活性化部分トロンビン時間を示し、そしてデータを時点あたりn=1~3匹のウサギについての平均±SDとして示す。点線は投薬前データの最小及び最大を表す。
図2-2】図2-1の続き。
図2-3】図2-2の続き。
図3図3は、実施例1.3に記載されるように、rD’D3-FPのi.v.投与後のサルにおけるrD’D3-FP曝露及びFVIII活性を示す。図3Aは、そのアルブミン成分を介して定量された標準に対して定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータを時点あたりn=3匹のサルについての平均±SDとして示す;図3Bは、発色FVIII活性として定量されたFVIIIを標準の%で示し、そしてデータを時点あたりn=3匹のサルについての平均±SDとして示す。点線は投薬前データの最小及び最大を表し、そして破線は投薬前データの平均を表す(投薬前データ:n=22)。
図4-1】図4は、実施例1.4に記載されるように、rD’D3-FPのi.v.投与後のVWFノックアウトラットにおけるrD’D3-FP曝露、FVIII活性及びaPTTを示す。図4Aは、そのアルブミン成分を介して定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータを時点あたりn=1~4匹のラットについての平均±SDとして示す;図4Bは、発色FVIII活性として定量されたFVIIIをIU/mLで示し、そしてデータを時点あたりn=1~4匹のラットについての平均±SDとして示す(投薬前データを除く:n≦8)。VWFノックアウト(ko)ラットにおける投薬前データは定量限界未満であった。網掛け領域は健常CDラットからの投薬前データの最小及び最大を表し;ULNと印をつけられた点線は正常の上限を表す;図4Cは、凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを標準の%で示し、そしてデータを時点あたりn=1~4匹のラットについての平均±SDとして示す(投薬前データを除く:n≦8)。網掛け領域は健常CDラットからの投薬前データの最小及び最大を表し;ULNと印を付けられた点線は正常の上限を表す;図4Dは、上記のように発色又は凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを示す。AUCを時間ゼロから10日目までの血漿濃度-時間曲線下ピーク面積として計算した;図4Eは、Pathromtin(R)SLを使用した活性化部分トロンビン時間を示し、そしてデータを時点あたりn=1~3匹のラットについての平均±SDとして示す(投薬前データを除く:n≦7)。点線はVWF koラットの投薬前データの最小及び最大を表す。網掛け領域は健常CDラットからの投薬前データの最小及び最大を表す。
図4-2】図4-1の続き。
図4-3】図4-2の続き。
図5-1】図5は、実施例1.5に記載されるように、rD’D3-FPの投与後のVWFノックアウトマウスにおけるrD’D3-FP曝露及びFVIII活性を示す。図5Aは、そのアルブミン成分を介して定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータを時点あたりn=3匹のマウスについての平均±SDとして示す;図5Bは、発色FVIII活性として定量されたFVIIIをmIU/mLで示し、そしてデータを時点あたりn=3匹のマウスの平均±SDとして示す。VWF koマウスにおけるビヒクルデータは定量限界未満(LLOQ)である。網掛け領域は健常NMRIマウスからの投薬前データの最小及び最大を表す;図5Cは、凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを標準の%で示し、そしてデータを時点あたりn=3~4匹のマウスについての平均±SDとして示す。VWF koマウスにおけるビヒクルデータは検出限界未満である;図5Dは、上記のように発色又は凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを示す。AUCを時間ゼロから7日目までの血漿濃度-時間曲線下ピーク面積として計算した;
図5-2】図5-1の続き。
図6-1】図6は、実施例1.6に記載されるように、rD’D3変異体のi.v.投与後のVWFノックアウトラットにおけるrD’D3変異体曝露及びFVIII活性を示す。図6Aは、そのアルブミン成分を介して(rD’D3-FP)又はD’D3成分を介して(rD’D3-CTP)VWF koラットにおいて定量されたrD’D3-FP WT、rD’D3-FP EY、rD’D3-FP EYA又はrD’D3-CTPを示し、そしてデータを時点あたりn=3~4匹のラットについての平均±SDとして示す。点線はそれぞれアルブミン及びrD’D3-CTPについての検出限界を表す;図6Bは、VWF koラットにおいて発色FVIII活性として定量されたFVIIIをmIU/mLで示し、そしてデータを時点あたりn=1~4匹のラットについての平均±SDとして示す;図6Cは、VWF koラットにおける凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを標準の%で示し、そしてデータを時点あたりn=1~4匹のラットについての平均±SDとして示す;図6Dは、上記のように発色又は凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを示す。AUCを時間ゼロから10日目までの血漿濃度-時間曲線下のピーク面積として計算した。
図6-2】図6-1の続き。
図7-1】図7は、実施例1.7において記載されるように、rD’D3-FPのi.v.又は皮下(s.c.)投与後のFVIIIノックアウト、VWF ko及びNMRIマウス並びにVWF ko若しくはCDラット又はブタにおけるrD’D3-FP曝露を示す。図7A-1は、そのアルブミン成分を介してFVIII ko、VWF ko及びNMRIマウスにおいて定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータを時点あたりn=1~3匹のマウスについての平均±SDとして示す;図7A-2は、VWF ko及びCDラットにおいてそのアルブミン成分を介して定量されたrD’D3-FP を示し、そしてデータを時点あたりのn=2~4匹のラットについての平均±SDとして示す。点線はrD’D3-FPについての検出限界を表す;図7A-3は、そのアルブミン成分を介してブタにおいて定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータを時点あたりn=1~3匹のブタについての平均±SDとして示す。破線はrD’D3-FPについての検出限界を表す;図7B-1は、VWF koラットにおける発色FVIII活性として定量されたFVIIIを示し、そしてデータを時点あたりn=2~4匹のラットについての平均±SDとして示す。点線は未処置の健常CDラットからのデータの最小及び最大を表す;図7B-2は、ブタにおける発色FVIII活性として定量されたFVIIIを示し、そしてデータを時点あたりn=2~3匹のブタについての平均±SDとして示す。点線はブタからの投薬前値からの範囲を表す。
図7-2】図7-1の続き。
図7-3】図7-2の続き。
図8-1】図8は、実施例1.8に記載されるように、rD’D3-FPのi.v.又はs.c.投与後のFVIIIノックアウト、VWF ko及びNMRIマウス並びにVWF ko若しくはCDラット又はブタにおけるrD’D3-FP曝露及びFVIII発色活性を示す。図8Aは、そのアルブミン成分を介してVWF koラットにおいて定量されたrD’D3-FPを示し、そしてデータを時点あたりn=3匹のラットについての平均±SDとして示す。破線はrD’D3-FPについての検出限界を表す;図8Bは、VWF koラットにおいて発色FVIII活性として定量されたFVIIIを示し、そしてデータを時点あたりn=2~3匹のラットについての平均±SDとして示す。点線の付いた灰色網掛けは未処置の健常CDラットからのデータの最小及び最大を表す;図8Cは、VWF koラットにおいて凝固FVIII活性として定量されたFVIIIを示し、そしてデータを時点あたりn=2匹のラットについての平均±SDとして示す。灰色網掛けは未処置の健常CDラットからのデータの最小から最大の範囲を表す;図8Dは、VWF koラットにおいてPathromtin(R)SLを使用した活性化部分トロンビン時間を示し、そしてデータを時点あたりn=2匹のラットについての平均±SDとして示す。灰色網掛けはVWF koラットの投薬前データの最小及び最大を表す。網掛け領域は健常CDラットからの投薬前データの最小及び最大を表す。
図8-2】図8-1の続き。
図9-1】図9は、実施例1.9に記載されるように、rD’D3-FPのi.v.投与又は/及び又はs.c.投与と組み合わされた投与後のFVIII koラットにおけるrD’D3-FP及びFVIII曝露を示す。図9Aは、FVIII koラットにおいて発色FVIII活性として定量されたFVIIIを示し、そしてデータを時点あたりn=3匹のFVIII koマウスについての平均±SDとして示す。検出限界は健常CDラットからの投薬前データの最小及び最大を表す;図9Bは、FVIII koラットにおいて発色FVIII活性として定量されたFVIIIを示し、そしてデータを時点あたりn=2~3匹のFVIII koマウスについての平均±SDとして示す。検出限界は、健常CDラットからの投薬前データの最小及び最大を表す;図9Cは、FVIII koラットにおいて発色FVIII活性として定量されたFVIIIを示し、そしてデータを時点あたりn=2~3匹のFVIII koマウスについての平均±SDとして示す。検出限界は健常CDラットからの投薬前データの最小および最大を表す。
図9-2】図9-1の続き。
【発明を実施するための形態】
【0110】
詳細な説明
第一の局面において、本発明は、血液凝固障害の処置における使用のための、(i)切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)及び(ii)半減期延長部分を含むポリペプチドに関し、該処置は、血液凝固障害に罹患しており、かつ内在性第VIII因子(FVIII)を有する被験体にポリペプチドを投与することを含み、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比べて減少しているが、ただし該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、そしてそれにより内在性FVIIIレベルは、該ポリペプチドの投与後に増加し、そして該ポリペプチドは出血事象の予防のために投与され、ここで該処置は外来性FVIIIの同時投与を含まない。
【0111】
第二の局面において、本発明は、血液凝固障害の処置における使用のための、(i)切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)及び(ii)半減期延長部分を含むポリペプチドに関し、該処置は、血液凝固障害に罹患しており、かつ内在性第VIII因子(FVIII)を有する被験体にポリペプチドを投与することを含み、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比較して減少しているが、ただし該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、そしてそれにより内在性FVIIIレベルは該ポリペプチドの投与後に増加し、そしてここで該ポリペプチドは、出血事象の処置のため又は予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、該ポリペプチドは外来性FVIIIと同時投与すること無く投与される。
【0112】
第三の局面は、血液凝固障害の処置における使用のための、(i)切断型フォン・ヴィルブランド因子 (VWF)及び(ii)半減期延長部分を含むポリペプチドを含む医薬組成物に関し、該処置は、血液凝固障害に罹患しており、かつ内在性第VIII因子(FVIII)を有する被験体にポリペプチドを投与することを含み、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比較して減少しているが、ただし該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、そしてそれにより内在性FVIIIレベルは該ポリペプチドの投与後に増加し、そして該ポリペプチドは、出血事象の予防のために投与され、ここで該処置は外来性FVIIIの同時投与を含まない。
【0113】
第四の局面は、血液凝固障害の処置における使用のための、(i)切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)及び(ii)半減期延長部分を含むポリペプチドを含む医薬組成物に関し、該処置は、血液凝固障害に罹患しておりかつ内在性第VIII因子 (FVIII)を有する被験体にポリペプチドを投与することを含み、ここで該ポリペプチドを用いた処置前の該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比較して減少しているが、ただし該被験体における内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、そしてそれにより内在性FVIIIレベルは該ポリペプチドの投与後に増加し、そしてここで該ポリペプチドは、出血事象の処置のため又は予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、該ポリペプチドは外来性FVIIIと同時投与することなく投与される。
【0114】
第五の局面は、血液凝固障害の処置のための薬剤の製造のための、(i)切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)及び(ii)半減期延長部分を含む組み換えポリペプチドの使用に関し、該処置は、血液凝固障害に罹患しておりかつ内在性第VIII因子(FVIII)を有する被験体にポリペプチドを投与することを含み、ここで該ポリペプチドを用いた処置の前の該被験体の内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)におけるFVIIIの活性レベルと比較して減少しているが、ただし内在性FVIIIの活性レベルは、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも0.5%であり、そしてそれにより内在性FVIIIレベルは、該ポリペプチドの投与後の増加し、そしてここで
- (i) 該ポリペプチドは出血事象の予防のために投与され、ここで
該処置は外来性FVIIIの同時投与を含まず;又は
- (ii) 該ポリペプチドは、出血事象の処置のため若しくは予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、該ポリペプチドは外来性FVIIIを同時投与することなく投与される。
【0115】
切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)及び半減期延長部分を含むポリペプチドは、本明細書において「本発明のポリペプチド」と呼ばれる。
【0116】
切断型VWF
本明細書で使用される用語「フォン・ヴィルブランド因子」(VWF)は、天然に存在する(天然)VWFを含むが、天然に存在するVWFのFVIII結合活性を少なくとも保持するその変異体、例えば1つ又はそれ以上の残基が挿入、欠失又は置換されている配列変異体も含む。FVIII結合活性は、実施例2に記載されるFVIII-VWF結合アッセイにより決定される。
【0117】
本発明に従うVWFは、配列番号4に示されるアミノ酸配列により表されるヒトVWFであり、そして好ましくは切断型VWFである。配列番号4をコードするcDNAは配列番号3で示される。
【0118】
ヒト天然VWFをコードする遺伝子は、9kb mRNAに転写され、これが310,000 Daの推定分子量を有する2813アミノ酸のプレプロポリペプチド(pre-propolypeptide)に翻訳される。プレプロポリペプチドは、N末端22アミノ酸シグナルペプチド、続いて741アミノ酸プロポリペプチド(配列番号4のアミノ酸23~763)及び成熟サブユニット(配列番号4のアミノ酸764~2813)を含有する。741アミノ酸プロポリペプチドのN末端からの切断は、2050アミノ酸からなる成熟VWFを生じる。ヒト天然VWFプレプロポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号4に示す。別の指示がなければ、VWF分子が配列番号4の全ての残基を含むのではない場合でも、本出願におけるVWF残基のアミノ酸番号付けは配列番号4を参照する。
【0119】
天然VWFのプロポリペプチドは多数のドメインを含む。様々なドメインアノテーションを文献に見ることができる(例えば、Zhou et al. (2012) Blood 120(2):449-458を参照のこと)。VWFの天然プレプロポリペプチドの以下のドメインアノテーションが本出願において適用される:
D1-D2-D’-D3-A1-A2-A3-D4-C1-C2-C3-C4-C5-C6-CK
配列番号4に関して、D’ドメインは、アミノ酸764~865からなり;そしてD3ドメインはアミノ酸866~1242からなる。
【0120】
特徴「切断型(truncated)」は、成熟VWFのアミノ酸配列全体(配列番号4のアミノ酸764~2813)を含むのではないということを意味する。典型的には、切断型VWFは、配列番号4のアミノ酸764~2813全てを含むのではなく、そのフラグメントだけ含む。切断型VWFはまた、VWFフラグメントと呼ばれても、複数形でVWFフラグメントと呼ばれてもよい。
【0121】
典型的には、切断型VWFは第VIII因子に結合することができる。好ましくは、切断型VWFは、ヒト天然第VIII因子の成熟形態に結合することができる。切断型VWFは、内在性及び/又は外来性第VIII因子に結合することができる。特定の実施態様において、切断型VWFは、同時投与された組み換えFVIIIに、好ましくは本明細書に記載されるFVIIIに、より好ましくは配列番号5のアミノ酸配列からなる単鎖第VIII因子に結合することができる。切断型VWFの第VIII因子への結合は、実施例2に記載されるように、FVIII-VWF結合アッセイにより決定することができる。
【0122】
本発明の切断型VWFは、好ましくは配列番号4のアミノ酸776~805に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるものであり、かつFVIIIに結合することができる。好ましい実施態様において、切断型VWFは、配列番号4のアミノ酸776~805に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるものであり、かつFVIIIに結合することができる。最も好ましくは、切断型VWFは配列番号4のアミノ酸776~805を含むかこれらからなる。本明細書において別の指示がなければ、配列同一性は、参照配列(例えば、配列番号4のアミノ酸776~805)の全長にわたって決定される。
【0123】
本発明の切断型VWFは、好ましくは、配列番号4のアミノ酸766~864に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるものであり、かつFVIIIに結合することができる。好ましい実施態様において、切断型VWFは、配列番号4のアミノ酸766~864に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるものであり、かつFVIIIに結合することができる。最も好ましくは、切断型VWFは、配列番号4のアミノ酸766~864を含むか又はこれらからなるものである。
【0124】
別の好ましい実施態様において、切断型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764~1242に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)そのフラグメントからなるが、ただし、切断型VWFはなおFVIIIに結合することができる。より好ましくは、切断型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764~1242に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)そのフラグメントからなるが、ただし、切断型VWFは、なおFVIIIに結合することができる。最も好ましくは、切断型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764~1242、又は(b)そのフラグメントからなるが、ただし、切断型VWFは、なおFVIIIに結合することができる。
【0125】
以下により詳細に記載されるように、ポリペプチドは、切断型VWFを含むポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を使用する方法により製造され得る。核酸は、それ自体公知の技術により適切な宿主細胞に導入される。
【0126】
好ましい実施態様において、宿主細胞中の核酸は、(a)配列番号4のアミノ酸1~1242に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)そのフラグメントをコードするが、ただし、切断型成熟VWFはなおFVIIIに結合することができる。より好ましくは、核酸は、(a)配列番号4のアミノ酸1~1242に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)そのフラグメントをコードするが、ただし、切断型VWFはなおFVIIIに結合することができる。もっとも好ましくは、核酸は、(a)配列番号4のアミノ酸1~1242、又は(b)そのフラグメントをコードするが、ただし、切断型VWFはなおFVIIIに結合することができる。特に本発明のポリペプチドがダイマーである場合、たとえポリペプチドにおける切断型VWFがVWF(例えば配列番号4)のアミノ酸1~763を含まなくても、核酸はVWF(例えば配列番号4)のアミノ酸1~763をコードする配列を含む。
【0127】
他の実施態様において、切断型VWFは、それぞれが配列番号4を参照する以下のアミノ酸配列のうちの1つを含むか又はそれからなる:
776-805;766-805;764-805;776-810;766-810;764-810;776-815;766-815;764-815;
776-820;766-820;764-820;776-825;766-825;764-825;776-830;766-830;764-830;
776-835;766-835;764-835;776-840;766-840;764-840;776-845;766-845;764-845;
776-850;766-850;764-850;776-855;766-855;764-855;776-860;766-860;764-860;
776-864;766-864;764-864;776-865;766-865;764-865;776-870;766-870;764-870;
776-875;766-875;764-875;776-880;766-880;764-880;776-885;766-885;764-885;
776-890;766-890;764-890;776-895;766-895;764-895;776-900;766-900;764-900;
776-905;766-905;764-905;776-910;766-910;764-910;776-915;766-915;764-915;
776-920;766-920;764-920;776-925;766-925;764-925;776-930;766-930;764-930;
776-935;766-935;764-935;776-940;766-940;764-940;776-945;766-945;764-945;
776-950;766-950;764-950;776-955;766-955;764-955;776-960;766-960;764-960;
776-965;766-965;764-965;776-970;766-970;764-970;776-975;766-975;764-975;
776-980;766-980;764-980;776-985;766-985;764-985;776-990;766-990;764-990;
776-995;766-995;764-995;776-1000;766-1000;764-1000;776-1005;766-1005;764-1005;
776-1010;766-1010;764-1010;776-1015;766-1015;764-1015;776-1020;766-1020;764-1020;
776-1025;766-1025;764-1025;776-1030;766-1030;764-1030;776-1035;766-1035;764-1035;
776-1040;766-1040;764-1040;776-1045;766-1045;764-1045;776-1050;766-1050;764-1050;
776-1055;766-1055;764-1055;776-1060;766-1060;764-1060;776-1065;766-1065;764-1065;
776-1070;766-1070;764-1070;776-1075;766-1075;764-1075;776-1080;766-1080;764-1080;
776-1085;766-1085;764-1085;776-1090;766-1090;764-1090;776-1095;766-1095;764-1095;
776-1100;766-1100;764-1100;776-1105;766-1105;764-1105;776-1110;766-1110;764-1110;
776-1115;766-1115;764-1115;776-1120;766-1120;764-1120;776-1125;766-1125;764-1125;
776-1130;766-1130;764-1130;776-1135;766-1135;764-1135;776-1140;766-1140;764-1140;
776-1145;766-1145;764-1145;776-1150;766-1150;764-1150;776-1155;766-1155;764-1155;
776-1160;766-1160;764-1160;776-1165;766-1165;764-1165;776-1170;766-1170;764-1170;
776-1175;766-1175;764-1175;776-1180;766-1180;764-1180;776-1185;766-1185;764-1185;
776-1190;766-1190;764-1190;776-1195;766-1195;764-1195;776-1200;766-1200;764-1200;
776-1205;766-1205;764-1205;776-1210;766-1210;764-1210;776-1215;766-1215;764-1215;
776-1220;766-1220;764-1220;776-1225;766-1225;764-1225;776-1230;766-1230;764-1230;
776-1235;766-1235;764-1235;776-1240;766-1240;764-1240;776-1242;766-1242;764-1242;
764-1464;764-1250;764-1041;764-828;764-865;764-1045;764-1035;764-1128;764-1198;
764-1268;764-1261;764-1264;764-1459;764-1463;764-1464;764-1683;764-1873;764-1482;
764-1479;764-1672;及び764-1874。
【0128】
特定の実施態様において、切断型VWFは、成熟野生型VWFと比較して内部欠失を有する。例えば、A1、A2、A3、D4、C1、C2、C3、C4、C5、C6、CKドメイン又はそれらの組み合わせが欠失され得、そしてD’ドメイン及び/又はD3ドメインが保持される。さらなる実施態様において、切断型VWFは、血小板糖タンパク質Ibα(GPIbα)、コラーゲン及び/又はインテグリンαIIbβIII(C1ドメイン内のRGDS配列)についての結合部位を含まない。他の実施態様において、切断型VWFは、VWFの中央A2ドメインに位置するADAMTS13についての切断部位(Tyr1605-Met1606)を含まない。さらに別の実施態様において、切断型VWFはGPIbαについての結合部位を含まず、かつ/又はコラーゲンについての結合部位を含まず、かつ/又はインテグリンαIIbβIIIについての結合部位を含まず、かつ/又はVWFの中央A2ドメインに位置するADAMTS13についての切断部位(Tyr1605-Met1606)を含まない。
【0129】
他の実施態様において、切断型VWFは、前の段落において列挙されるアミノ酸配列のうちの1つに対して、少なくとも90%、又は少なくとも91%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかそれからなるものであり、ただし切断型VWFはFVIIIに結合することができる。
【0130】
本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドの2つのモノマーが共有結合で連結されている場合、本発明において「ダイマー」と称される。好ましくは、2つのモノマーサブユニットは、少なくとも1つのジスルフィド架橋により、例えば1つ、2つ、3つ又は4つのジスルフィド架橋を介して共有結合により連結される。少なくとも1つのジスルフィド架橋を形成するシステイン残基は、好ましくは本発明のポリペプチドの切断型VWF部分内に位置する。一実施態様において、これらのシステイン残基は、Cys-1099、Cys-1142、Cys-1222、Cys-1225、若しくはCys-1227又はそれらの組み合わせである。
【0131】
ダイマーは好ましくはホモダイマーであり、それにより各モノマーは好ましくは本明細書に開示される半減期延長部分を含む。本発明のポリペプチドがダイマーである場合、切断型VWFは、好ましくは配列番号4のアミノ酸764~1099、アミノ酸764~1142、アミノ酸764~1222、アミノ酸764~1225、又はアミノ酸764~1227に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ有する2つのポリペプチドを含むか又はそれからなるものであり、かつFVIIIに結合することができる。好ましい実施態様において、切断型VWFは、配列番号4のアミノ酸764~1099、アミノ酸764~1142、アミノ酸764~1222、アミノ酸764~1225、又はアミノ酸764~1227に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなるものであり、かつFVIIIに結合することができる。最も好ましくは、切断型VWFは、配列番号4のアミノ酸764~1099、アミノ酸764~1142、アミノ酸764~1222、アミノ酸764~1225、アミノ酸764~1227又はアミノ酸764~1242を含むか又はそれらからなる。
【0132】
切断型VWFは、WO 2013/106787A1、WO 2014/198699A2、WO 2011/060242A2又はWO 2013/093760 A2(その開示は本明細書に参照により加入される)において開示されるVWFフラグメントのいずれか1つであってもよい。
【0133】
さらなる好ましい実施態様によれば、上で開示される切断型VWFは、WO2016/000039A1に開示されるアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含み得る。切断型VWFのそれらの改変バージョンは、配列番号4に従う野生型VWFのD’ドメインのアミノ酸配列と比較して、そのD’ドメイン内に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。切断型VWFの改変バージョンのアミノ酸配列は、それぞれの野生型配列と比べて1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を有し得る。修飾された切断型VWFのD’ドメインのアミノ酸配列は、好ましくは配列番号4のD’ドメインと比べて1つ又は2つのアミノ酸置換を有する。配列番号4の位置764(配列番号2の位置1に対応する)におけるSが、G、P、V、E、Y、A及びLからなる群より選択されるアミノ酸で置換されていることが好ましい。配列番号4の位置766(配列番号2の位置3に対応する)におけるSが、Y、I、M、V、F、H、R及びWからなる群より選択されるアミノ酸で置換されていることも好ましい。置換の好ましい組み合わせとしては、配列番号4の配列を参照して、S764G/S766Y、S764P/S766I、S764P/S766M、S764V/S766Y、S764E/S766Y、S764Y/S766Y、S764L/S766Y、S764P/S766W、S766W/S806A、S766Y/P769K、S766Y/P769N、S766Y/P769R及びS764P/S766Lが挙げられる。本発明のポリペプチドのFVIIIに対する結合親和性は、上記修飾を除いて同じアミノ酸配列を有する参照ポリペプチドをの結合親和性と比較して、上記置換の導入によりさらに増加し得る。切断型VWF内の上記置換は、内在性FVIIIの半減期若しくは同時投与されるFVIIIの半減期をさらに増加するように寄与し得、かつ/又は投与しようとする本発明の組み換えポリペプチドの用量の減少を可能にし得る。
【0134】
半減期延長部分
ヒト血漿における内在性VWFの半減期は約16時間である(Lenting PJ、Christophe OD、Denis CV. von Willebrand factor biosynthesis、secretion、and clearance:connecting the far ends. Blood. 2015.125(13):2019-28)。
【0135】
本発明のポリペプチドは、特定の好ましい実施態様において、切断型VWFに加えて半減期延長部分をさらに含む。半減期延長部分は、切断型VWFに融合された異種アミノ酸配列であり得る。あるいは、半減期延長部分は、ペプチド結合と異なる共有結合により切断型VWFを含むポリペプチドに化学的に結合され得る。
【0136】
本発明の特定の実施態様において、本発明のポリペプチドの半減期は、化学修飾、例えば、ポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシルエチルデンプン(HES化)、ポリシアル酸、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー又はヒアルロン酸のような半減期延長部分の結合により延長される。別の実施態様において、本発明のポリペプチドは、アルブミンのようなHLEPに化学リンカーを介して結合される。この結合技術の原理は、Conjuchem LLCにより例となる方法で記載されている(例えば、米国特許第7,256,253号)。
【0137】
他の実施態様において、半減期延長部分は半減期増強タンパク質(HLEP)である。好ましくは、HLEPはアルブミン又はそのフラグメントである。アルブミンのN末端は、切断型VWFのC末端に融合され得る。あるいは、アルブミンのC末端は、切断型VWFのN末端に融合され得る。1つ又はそれ以上のHLEPは、VWFのN末端又はC末端部分に融合され得るが、ただしそれらは切断型VWFのFVIIIへの結合能を妨げず、消失もしない。
【0138】
組み換えポリペプチドは、好ましくは切断型VWFとHLEMとの間に位置づけられた化学結合又はリンカー配列を更に含む。
【0139】
上記リンカー配列は、互いに等しくても異なっていてもよい1つ若しくはそれ以上のアミノ酸、例えば1~50、1~30、1~20、1~15、1~10、1~5若しくは1~3(例えば、1、2又は3つ)のアミノ酸からなるペプチドリンカーであり得る。好ましくは、リンカー配列は野生型VWFにおける対応する位置には存在しない。上記リンカー配列に存在する好ましいアミノ酸としてはGly及びSerが挙げられる。リンカー配列は非免疫原性であるべきである。好ましいリンカーは、交互のグリシン及びセリン残基から構成され得る。適切なリンカーは例えばWO2007/090584に記載される。
【0140】
本発明の別の実施態様において、切断型VWF部分とHLEMとの間のペプチドリンカーは、ヒトタンパク質において天然ドメイン間リンカーとして役立つペプチド配列からなる。好ましくは、それらの天然の環境におけるこのようなペプチド配列は、この配列に対する天然の耐性を仮定することができるように、タンパク質表面の近くに位置し、そして免疫系に対してアクセス可能である。WO 2007/090584に例が示される。切断可能なリンカー配列は、例えばWO 2013/120939 A1に記載される。
【0141】
組み換えポリペプチドの好ましい実施態様において、切断型VWFとHLEMとの間のリンカーは、配列番号2のアミノ酸配列480~510を有するか又はこれらからなるグリシン/セリンペプチドリンカーである。
【0142】
一実施態様において、ポリペプチドは以下の構造を有する:
tVWF-L1-H、[式1]
式中、tVWFは切断型VWFであり、L1は化学結合又はリンカー配列であり、そしてHはHLEPである。
【0143】
L1は、化学結合、又は互いに等しくても異なっていてもよい1つ若しくはそれ以上のアミノ酸、例えば1~50、1~30、1~20、1~15、1~10、1~5若しくは1~3(例えば、1、2又は3つ)のアミノ酸からなるリンカー配列であり得る。通常は、リンカー配列は野生型VWFにおける対応する位置には存在しない。L1に存在する適切なアミノ酸の例としてはGly及びSerが挙げられる。リンカーは非免疫原性であるべきであり、そして切断不可リンカーでも切断可能リンカーでもよい。切断不可リンカーは、WO2007/090584において例示されるように交互のグリシン及びセリンから構成されていてもよい。本発明の別の実施態様において、切断型VWFとアルブミン部分との間のペプチドリンカーはペプチド配列からなり、これがヒトタンパク質における天然ドメイン間リンカーとして役立つ。好ましくは、それらの天然の環境におけるこのようなペプチド配列は、この配列に対する天然の耐性を仮定することができるように、タンパク質表面の近くに位置し、そして免疫系に対してアクセス可能である。例はWO2007/090584に示される。切断可能なリンカー配列は、例えばWO2013/120939 A1に記載される。
【0144】
好ましいHLEP配列は以下に記載される。それぞれのHLEPの正確な「N末端アミノ酸」若しくは正確な「C末端アミノ酸」への融合、又はそれぞれのHLEPの「N末端部分」若しくは「C末端部分」への融合が本発明により同様に包含され、これはHLEPの1つ又はそれ以上のアミノ酸のN末端欠失を含む。ポリペプチドは、1つより多くのHLEP配列、例えば、2つ又は3つのHLEP配列を含み得る。これらの多数のHLEP配列は、例えば連続的な繰り返しとして縦一列にVWFのC末端部分に融合され得る。
【0145】
半減期増強ポリペプチド(HLEP)
好ましくは、半減期延長部分は半減期延長ポリペプチド(HLEP)であり、より好ましくはHLEPは、アルブミン又はそのフラグメント、免疫グロブリン定常領域及び部分、例えばFcフラグメント、大きい流体力学的体積を有する溶媒和されたランダム鎖(例えばXTEN (Schellenberger et al. 2009;Nature Biotechnol. 27:1186-1190)、ホモアミノ酸反復(HAP)又はプロリン-アラニン-セリン反復(PAS))、アファミン、アルファ-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、トランスフェリン又はその変異体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン-βサブユニットのカルボキシル末端ペプチド(CTP)、生理的条件下でアルブミン又は免疫グロブリン定常領域に結合することができるポリペプチド又は脂質から選択される。
【0146】
本明細書で使用される「半減期増強ポリペプチド」は、好ましくは、アルブミン、アルブミンファミリーのメンバー、免疫グロブリンGの定常領域及びそのフラグメント、生理条件下でアルブミン、アルブミンファミリーのメンバー、さらには免疫グロブリン定常領域の部分に結合することができる領域及びポリペプチドからなる群より選択される。これは、本明細書に記載される全長半減期増強タンパク質(例えば、アルブミン、アルブミンファミリーのメンバー又は免疫グロブリンGの定常領域)でも、凝固因子の治療活性又は生物学的活性を安定化又は延長することができるその1つ又はそれ以上のフラグメントでもよい。このようなフラグメントは、HLEPフラグメントがHLEPを含まないそれぞれのポリペプチドと比較して少なくとも25%の機能的半減期延長をもたらす限り、10若しくはそれ以上のアミノ酸長のフラグメントであってもよく、又はHLEP配列からの少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約100、若しくはそれ以上の連続したアミノ酸を含んでいてもよく、又はそれぞれのHLEPの特定のドメインの一部若しくは全てを含んでいてもよい。
【0147】
本発明のポリペプチドのHLEP部分は、野生型HLEPの変異体であってもよい。用語「変異体(variants)」は、保存的又は非保存的のいずれかの、挿入、欠失及び置換を含み、ここでこのような変化は切断型VWFのFVIII結合活性を実質的に変更しない。
【0148】
特に、本発明の提案されたVWF HLEP融合構築物は、HLEP及びHLEPのフラグメントの天然に存在する多型変異体を含み得る。HLEPは、いずれかの脊椎動物、特にいずれかの哺乳動物、例えばヒト、サル、ウシ、ヒツジ、又はブタ由来であり得る。非哺乳動物HLEPとしては、限定されないが、ニワトリ及びサケが挙げられる。
【0149】
本開示の特定の実施態様によれば、半減期延長部分、特にHLEP、本発明のポリペプチドの一部は、代替の用語「FP」で特定され得る。好ましくは、用語「FP」は別の指示がなければヒトアルブミンを表す。
【0150】
特定の好ましい実施態様によれば、ポリペプチドは融合タンパク質である。本発明については融合タンパク質は、切断型VWF、さらにはHLEPをコードする少なくとも2つのDNA配列のインフレーム連結により生成されたタンパク質である。当業者は、融合タンパク質DNA配列の翻訳が単一のタンパク質配列を生じることを理解する。さらなる好ましい実施態様に従うペプチドリンカーをコードするDNA配列のインフレーム挿入の結果として、切断型VWF、適切なリンカー及びHLEPを含む融合タンパク質が得られ得る。
【0151】
HLEPとしてのアルブミン
用語「ヒト血清アルブミン」(HSA)及び「ヒトアルブミン」(HA)及び「アルブミン」(ALB)は、本出願において交換可能に使用される。用語「アルブミン」及び「血清アルブミン」はより広義であり、かつヒト血清アルブミン(並びにそのフラグメント及び変異体)、さらには他の種由来のアルブミン(並びにそのフラグメント及び変異体)を包含する。
【0152】
本明細書で使用される「アルブミン」は、集合的に、アルブミンポリペプチド若しくはアミノ酸配列、又はアルブミンの1つ若しくはそれ以上の機能的活性(例えば、生物学的活性)を有するアルブミンフラグメント若しくは変異体を指す。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミン若しくはそのフラグメント、特に本明細書において配列番号6で示されるヒトアルブミンの成熟形態又は他の脊椎動物由来のアルブミン若しくはそのフラグメント、又はこれらの分子若しくはそのフラグメントのアナログ若しくは変異体を指す。
【0153】
本開示の特定の実施態様によれば、代替の用語「FP」はHLEPを識別するため、特にアルブミンをHLEPとして定義するために使用される。
【0154】
特に、本発明の提案されたポリペプチドは、ヒトアルブミン及びヒトアルブミンのフラグメントの天然に存在する多型変異体を含み得る。一般的に言えば、アルブミンフラグメント又は変異体は、少なくとも10、好ましくは少なくとも40、最も好ましくは70より多いアミノ酸長である。
【0155】
本発明の好ましい実施態様は、FcRn受容体への増強された結合を有する本発明のポリペプチドのHLEPとして使用されるアルブミン変異体を含む。このようなアルブミン変異体は、野生型アルブミンとの切断型VWF融合物と比較して、切断型VWFアルブミン変異体融合タンパク質のより長い血漿半減期をもたらし得る。
【0156】
本発明のポリペプチドのアルブミン部分は、HAの少なくとも1つのサブドメイン若しくはドメイン又はそれらの保存的改変を含み得る。
【0157】
HLEPとしての免疫グロブリン
免疫グロブリンG(IgG)定常領域(Fc)は、治療的タンパク質の半減期を増加させることが当該分野で公知である(Dumont J A et al. 2006. BioDrugs 20:151-160)。重鎖のIgG定常領域は3つのドメイン(CH1~CH3)及びヒンジ領域からなる。免疫グロブリン配列は、いずれかの哺乳動物由来、又はそれぞれサブクラスIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4由来であり得る。抗原結合ドメインを含まないIgG及びIgGフラグメントもまた、HLEPとして使用され得る。治療的ポリペプチド部分は、好ましくは、切断可能であってもよい、抗体又はペプチドリンカーのヒンジ領域を介してIgG又はIgGフラグメントに接続される。いくつかの特許及び特許出願は、治療的タンパク質のインビボ半減期を増強するために免疫グロブリン定常領域に治療的タンパク質を融合させることを記載する。US 2004/0087778及びWO 2005/001025は、Fcドメイン又は免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部の、ペプチドの半減期を増加させる生物学的に活性なペプチドとの融合タンパク質を記載し、これは他の方法ではインビボで急速に排出される。Fc-IFN-β融合タンパク質は、増強された生物学的活性、延長された循環半減期及びより大きな溶解度を達成したと記載された(WO 2006/000448)。長い血清半減期及び増加したインビボ効力を有するFc-EPOタンパク質が開示され(WO 2005/063808)、さらに全て半減期増強特性を有する、G-CSF(WO 2003/076567)、グルカゴン様ペプチド-1(WO 2005/000892)、凝固因子(WO 2004/101740)及びインターロイキン-10(米国特許第6,403,077号)とのFc融合物も開示された。
【0158】
本発明に従って使用することができる様々なHLEPは、WO 2013/120939 A1において詳細に記載される。
【0159】
本発明のポリペプチドのN-グリカン及びシアリル化
本発明のポリペプチドは、好ましくはN-グリカンを含み、そして該N-グリカンの少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%は、平均して、少なくとも1つのシアル酸部分を含む。好ましい実施態様において、該N-グリカンの少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%は、平均して、少なくとも1つのシアル酸部分を含む。本発明者らは、高度にシアリル化されたVWFフラグエントを含むポリペプチドが、延長された半減期自体を有するだけでなく、同時投与されるFVIIIの半減期も延長することができるということを見出した。換言すれば、本発明のポリペプチドの投与は、同時投与されたFVIIIの延長された半減期及び/又は減少したクリアランスをもたらす。
【0160】
本発明のポリペプチドは、好ましくはN-グリカンを含み、そして糖タンパク質のN-グリカンのシアリル基の少なくとも50%は、α-2,6-連結シアリル基である。一般に、末端シアリル基は、α-2,3-又はα-2,6-連結を介してガラクトース基に結合され得る。典型的に、本発明のポリペプチドのN-グリカンは、α-2,3-連結シアリル基よりもα-2,6-シアリル基を多く含む。好ましくは、N-グリカンのシアリル基の少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%は、α-2,6-連結シアリル基である。これらの実施態様は、例えば、ヒトα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの哺乳動物細胞における同時発現により得ることができる。
【0161】
一実施態様において、本発明のポリペプチドのN-グリカンの少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%は、少なくとも1つのシアル酸基を含む。別の実施態様において、本発明のポリペプチドのN-グリカンの少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%は、少なくとも1つのシアル酸基を含む。
【0162】
別の実施態様において、本発明のポリペプチドのN-グリカンの15%未満、12%未満、10%未満、又は8%未満、又は6%未満、又は5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%未満がアシアロ-N-グリカンであり、すなわち、それらはシアル酸基を欠いたN-グリカンである。別の実施態様において、本発明のポリペプチドのN-グリカンの15%未満、12%未満、10%未満、又は8%未満、又は6%未満、又は5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%未満がアシアロ-N-グリカンであり、すなわち、それらはシアル酸基を有していない。
【0163】
このような糖タンパク質を製造する適切な方法は、係属中のPCT/EP2016/061440に記載される。従って、増加したシアリル化を有するN-グリカンを含む糖タンパク質を製造する方法がそこで記載され、この方法は、(i)切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)を含むポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を供給すること、及び(ii)該細胞を36.0℃未満の温度で培養することを含む。さらに、切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)を含む糖タンパク質のダイマーを製造するか、又は該糖タンパク質の二量体化を増加するための方法が記載され、この方法は、(i)糖タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸を含む細胞を供給すること、及び(ii)該細胞を36.0℃未満の温度で培養することを含む。さらに、増加したシアリル化を有するN-グリカンを含む糖タンパク質を製造する方法がそこで記載され、この方法は、(i)切断型フォン・ヴィルブランド因子(VWF)を含むポリペプチドをコードする核酸及びα-2,6-シアリルトランスフェラーぜをコードする組み換え核酸を含む細胞を供給すること、及び(ii)糖タンパク質及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの発現を可能にする条件下で細胞を培養することを含む。
【0164】
上記の実施態様は互いに組み合わされ得る。上述のN-グリカンのいずれのパーセンテージ、又はシアリル化度のいずれの指示も、平均のパーセンテージ又はシアリル化度と理解されるべきであり、すなわち、それらは単一の分子ではなく分子の集団を指す。糖タンパク質の集団内の個々の糖タンパク質分子のグリコシル化又はシアリル化がいくらかの不均質性を示すことは明らかである。
【0165】
ダイマー
本発明のポリペプチドは好ましくは高い比率のダイマーを有する。従って、本発明のポリペプチドは好ましくはダイマーとして存在する。従って、本発明のポリペプチドは好ましくはダイマーとして存在する。一実施態様において、ポリペプチドの少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%はダイマーとして存在する。別の実施態様において、本発明のポリペプチドのダイマー:モノマー比は、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5又は少なくとも3である。最も好ましくは、本発明の全てのポリペプチドはダイマーとして存在する。ダイマーがモノマーと比較して第VIII因子に対する改善された親和性を有するので、ダイマーの使用は有利である。本発明のポリペプチドのダイマー含有量、及びモノマーに対するダイマーの比は、実施例に記載されるように決定することができる。
【0166】
一実施態様において、第VIII因子に対する本発明のポリペプチドの親和性は、同じ第VIII因子分子に対するヒト天然VWFの親和性よりも高い。第VIII因子親和性は、ヒト天然第VIII因子、又は配列番号5により特徴づけられる第VIII分子を参照してもよい。
【0167】
高い比率のダイマーを有する本発明のポリペプチドの調製物は、第VIII因子に対して増加した親和性を有することが見出されている。このような第VIII因子に対する増加した親和性は、本発明のポリペプチドによる第VIII因子の増強された安定化をもたらす。あるいは、又は増加したダイマー比率と組み合わせても、第VIII因子に対する親和性を増加させる第VIII因子結合ドメイン内の変異を有する本発明に従うポリペプチドは、本発明の好ましい実施態様である。適切な変異は、例えばWO 2013/120939 A1に記載される。
【0168】
ポリペプチドの製造
本発明のポリペプチドをコードする核酸は、当該分野で公知の方法に従って製造され得る。VWFのcDNA配列(配列番号3)に基いて、上述の切断型VWF構築物又は本発明のポリペプチドをコードする組み換えDNAを設計し生成することができる。
【0169】
たとえ宿主細胞により分泌されるポリペプチドがVWFのアミノ酸1~763を含んでいなくても、ポリペプチドの細胞内前駆体をコードする核酸(例えば、DNA)が配列番号4のアミノ酸23~763に対して、又は好ましくはアミノ酸1~763に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むことが好ましい。最も好ましくは、ポリペプチドの細胞内前駆体をコードする核酸(例えば、DNA)は、配列番号4のアミノ酸23~763、又は配列番号4のアミノ酸1~763をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0170】
DNAが正確な方向で発現プラスミド中に挿入されたオープンリーディングフレーム全体を含有する構築物が、タンパク質発現のために使用され得る。典型的な発現ベクターは、プラスミド保有細胞において挿入された核酸に対応する大量のmRNAの合成を方向づけるプロモーターを含有する。これらはまた、宿主生物内でのそれらの自律増殖を可能にする複製起点配列、及び合成されたmRNAが翻訳される効率を増加させる配列を含み得る。安定な長期ベクターは、例えば、ウイルス(例えば、エプスタイン・バーウイルスゲノム由来のOriP配列)の調節エレメントを使用することにより自由に複製する実体として維持され得る。ゲノムDNA中にベクターを組み込まれた細胞株もまた製造され得、そしてこの方法では、遺伝子産物は連続して産生される。
【0171】
典型的に、供給しようとする細胞は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を哺乳動物宿主細胞に導入することにより得られる。
【0172】
細胞培養しやすく、かつ糖タンパク質を発現しやすいいずれかの宿主細胞が、本発明に従って利用され得る。特定の実施態様において、宿主細胞は哺乳動物である。本発明に従って使用され得る哺乳動物細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/ 1、ECACC番号:85110503);ヒト網膜芽細胞(retinoblasts)(PER.C6 (CruCell、Leiden、The Netherlands));SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(懸濁培養用にサブクローニングされた293又は293細胞、Graham et al.、J. Gen Virol.、36:59、1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞 +/-DHFR (CHO、Urlaub and Chasin、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77:4216、1980);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod.、23:243 251、1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);水牛ラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(HepG2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.、Annals NY. Acad. Sci.、383:44-68、1982);MRC 5細胞;PS4細胞;ヒト羊膜細胞(CAP);及びヒト肝細胞腫株(Hep G2)が挙げられる。好ましくは、細胞株は、齧歯動物細胞株、特にハムスター細胞株、例えばCHO又はBHKである。
【0173】
目的の糖タンパク質の発現を達成するために十分な核酸を哺乳動物宿主細胞に導入するために適した方法は、当該分野で公知である。例えば、Gething et al.、Nature、293:620-625、1981;Mantei et al.、Nature、281:40-46、1979;Levinson et al. EP 117,060;及びEP 117,058を参照のこと。哺乳動物細胞については、遺伝子材料を哺乳動物細胞に導入する一般的方法としては、Graham及びvan der Erbのリン酸カルシウム沈降法(Virology、52:456-457、1978)又はHawley-NelsonのlipofectamineTM(Gibco BRL)法(Focus 15:73、1993)が挙げられる。哺乳動物細胞宿主系形質転換の一般的局面は、米国特許第4,399,216号においてAxelにより記載されている。遺伝子材料を哺乳動物細胞に導入するための様々な技術については、Keown et al.、Methods in Enzymology、1989、Keown et al.、Methods in Enzymology、185:527-537、1990、及びMansour et al.、Nature、336:348-352、1988を参照のこと。
【0174】
ポリペプチドの発現を可能にする条件下で細胞を培養する。ポリペプチドは、当業者に公知の方法を使用して回収そして精製され得る。
【0175】
内在性FVIIIの最大濃度及び時間-濃度曲線下面積
本発明の好ましい局面によれば、本明細書の上で定義されたポリペプチドは、本発明のポリペプチド単独での、すなわちFVIIIを同時投与しない投与により、未処置の被験体と比較して内在性第VIII因子のCmax又はAUCを増加させるために使用される。
【0176】
最大濃度(Cmax)は、測定された最も高い血漿濃度値である。上記組み換えポリペプチドの投与後に、FVIIIについてのCmaxは、少なくとも10mIU/mL、少なくとも25mIU/mL、少なくとも50mIU/mL、少なくとも100mIU/mL、少なくとも200mIU/mL、少なくとも300mIU/mL又は少なくとも400mIU/mLであり得る。
【0177】
AUC0-tは、ゼロから最後の測定された時点までの血漿濃度-時間曲線下のピーク面積である。組み換えポリペプチドの投与後に、内在性FVIII増加についてのAUCは、少なくとも1000mIU*h/mL、少なくとも2000mIU*h/mL、少なくとも3000mIU*h/mL、少なくとも5000mIU*h/mL、少なくとも10000mIU*h/mL又は少なくとも20000mIU*h/mL 発色FVIII活性であり得る。
【0178】
皮下投与後のrD’D3-FPのバイオアベイラビリティ
本発明のさらなる局面は、本明細書の上で定義されるポリペプチドの皮下バイオアベイラビリティを提供するか又は改善することに関する。
【0179】
本明細書で使用される用語バイオアベイラビリティは、静脈内(i.v.)投与後の本発明のポリペプチドのAUC0-infに関して、皮下(s.c.)投与後の本発明のポリペプチドのAUC0-infのパーセンテージとして定義される。AUC0-infは、ゼロから無限大までの血漿濃度-時間曲線下面積である。AUC0-infの計算のための薬物動態データの評価のために、2コンパートメントモデル(二相薬物動態プロフィール)を適用した。
【0180】
特定の実施態様によれば、同時投与されたFVIIIの存在しない場合の組み換えポリペプチドのバイオアベイラビリティは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%である。
【0181】
特定の実施態様によれば、FVIIIの同時投与後の組み換えポリペプチドのバイオアベイラビリティは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%である。
【0182】
凝固障害の処置
本発明のさらなる局面は、それを必要とする患者に有効量の本明細書の上で定義されるポリペプチドを投与することを含む、血液凝固障害を処置する方法である。
【0183】
本発明のポリペプチドは、血友病A及びフォン・ヴィルブランド病を含む血液凝固障害を処置するために有用である。用語「血友病A」は、機能的凝固FVIIIの欠乏を指し、これは通常は遺伝性である。フォン・ヴィルブランド病は、2N型フォン・ヴィルブランド病、3型フォン・ヴィルブランド病、及び1型フォン・ヴィルブランド病からなる群より選択される。
【0184】
別の実施態様において、血液凝固障害は、NHPにおける内在性FVIII活性レベルと比較して減少している処置前の内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる1型フォン・ヴィルブランド病である。
【0185】
処置しようとする患者は、NHPにおける内在性FVIIIと比較して減少した内在性FVIIIの活性及び/又はレベルを有し得る。患者における内在性FVIII活性は、NHPにおける内在性FVIII活性の80%未満、又は70%未満、又は60%未満、又は50%未満、又は40%未満、又は30%未満、又は20%未満、又は20%未満、又は10%未満、又は5%未満であり得る。処置しようとする患者における内在性FVIII活性は、全血の0.8IU/ml未満、又は0.7IU/ml未満、又は0.6IU/ml未満、又は0.5IU/ml未満、又は0.4IU/ml未満、又は0.3IU/ml未満、又は0.2IU/ml未満、又は0.1IU/ml未満、又は0.05IU/ml未満であり得る。
【0186】
本発明のポリペプチドは、少なくとも0.005IU/mLの内在性FVIII活性を有する患者に投与されるべきである。特定の実施態様において、本発明のポリペプチドは、全血の0.01~0.4IU/ml、又は0.02~0.3IU/ml、又は0.03~0.2IU/ml、又は0.04~0.1IU/mlの内在性FVIIIの活性を有する患者に投与されるべきである。
【0187】
一実施態様において、血液凝固障害は中程度血友病Aである。中程度血友病Aは、好ましくはNHPにおける内在性FVIII活性レベルの約1%~約5%である内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる。典型的に、中程度血友病Aを有する被験体は、血漿中0.01~0.05IU/mLの内在性FVIII活性レベルを有する。
【0188】
別の実施態様において、血液凝固障害は軽度血友病Aである。軽度血友病Aは、好ましくはNHPにおける内在性FVIII活性レベルの約5%~約40%である内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる。典型的には、軽度血友病Aを有する被験体は、血漿中0.05~0.4IU/mLの内在性FVIII活性レベルを有する。
【0189】
別の実施態様において、血液凝固障害は重症血友病Aである。重症血友病Aは、NHPにおける内在性FVIII活性の1%未満の内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる。
【0190】
別の実施態様において、血液凝固障害は2N型フォン・ヴィルブランド病である。2N型フォン・ヴィルブランド病は、好ましくは、NHPにおける内在性FVIII活性レベルの約3%~約30%に対応する、約3IU/dLと約30IU/dL FVIII活性レベルとの間の範囲である処置前の内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる。患者の大部分は、20IU/dL未満の内在性FVIII活性レベル、従ってNHPにおける内在性FVIII活性レベルの20%未満のレベルを有する。従って、2N型フォン・ヴィルブランド病を有する被験体は、血漿中0.03IU/mL~0.3IU/mL、典型的には0.2IU/mL未満の内在性FVIII活性レベルを有する。
【0191】
別の実施態様において、血液凝固障害は、好ましくは、通常は、NHPにおける内在性FVIII活性レベルの約1%~約20%に対応する約1IU/dLと約20IU/dLとの間のFVIII活性レベル範囲である処置前の内在性FVIII活性レベルにより特徴づけられる3型フォン・ヴィルブランド病である。患者の大部分は、10IU/dL未満の内在性FVIII活性レベル、従ってNHPにおける内在性FVIII活性レベルの10%未満のレベルを有する。
【0192】
本発明のポリペプチドは、好ましくは、出血事象の予防のために被験体に投与される。この処置はいずれの外来性FVIIIの投与も含まない。本発明のポリペプチドはまた、出血事象の処置のために被験体に投与され得る。その場合、本発明のポリペプチドは、外来性FVIIIと同時投与され得る。出血事象のこのような処置の後、次いで経過観察処置が外来性FVIIIの同時投与をすることなく行われる。すなわち、経過観察処置は本発明のポリペプチドのみを用いて行われる。
【0193】
典型的には、本発明のポリペプチドのみを用いた処置、すなわち外来性FVIIIを当時投与しない処置を、出血事象が発生するまで継続する。本発明のポリペプチドのみを用いた処置、すなわち外来性FVIIIを同時投与しない処置の期間は、特に限定されず、通常は少なくとも1週間、又は少なくとも2週間、又は少なくとも3週間、又は少なくとも4週間、又は少なくとも2ヶ月継続される。
【0194】
疾患の処置は、いずれかの臨床病期であるか又は顕性化した疾患のいずれかの形態を有すると既に診断された患者の処置;疾患の症状若しくは徴候の開始若しくは発展若しくは増悪若しくは悪化を遅延させること;並びに/又は疾患の重症度を防止及び/若しくは低減させることを包含する。
【0195】
本発明のポリペプチドが投与される「被験体」又は「患者」は、好ましくはヒトである。特定の局面において、ヒトは小児患者である。他の局面において、ヒトは成人患者である。
【0196】
本発明のポリペプチド及び、場合によりFVIIIを含む組成物が本明細書に記載される。組成物は、典型的には薬学的に許容しうる担体を含む無菌医薬組成物の一部として供給される。この組成物は、(患者にそれを投与する所望の方法に依存して)任意の適切な形態であり得る。
【0197】
用語「第VIII因子」及び「FVIII」は、本明細書において交換可能に使用され、そして血漿由来のFVIII及び組み換えFVIIIの両方を包含する。組み換えFVIIIは、限定することなく、全長FVIII、さらには二本鎖Bドメイン欠失又は切断型変異体、さらには単鎖Bドメイン欠失又は切断変異体、例えばWO 2004/067566に記載されるもの及びBドメインの外側に変異を有するがFVIIIの生物学的活性を有する他のFVIII変異体を包含する。
【0198】
本発明のポリペプチドは、経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、腹腔内、筋内、局所(topically)又は局所(locally)のような様々な経路により患者に投与され得る。いずれかの所定の症例における投与に最も適切な経路は、特定のポリペプチド、被験体、並びに疾患の性質及び重篤度並びに被験体の身体状態に依存する。典型的には、本発明のポリペプチドは静脈内投与される。
【0199】
本発明によれば、本発明のポリペプチドを用いて処置される患者はまた、血液凝固第VIII因子を用いて処置されるが、ただし経過観察処置は、本発明のポリペプチドのみを用いて、すなわち外来性FVIIIを同時投与することなく行われる。本発明のポリペプチド及び第VIII因子は、同時に投与されても逐次的様式で投与されてもよく、両方の投与様式が用語「組み合わせ治療」及び「同時投与」により包含される。本発明のポリペプチド及び第VIII因子は、混合物として、すなわち同じ組成物内で投与されても、別々に、すなわち別個の組成物として投与されてもよい。
【0200】
ポリペプチド及び場合によりFVIIIは好ましくは静脈内または皮下に投与される。
【0201】
第一の実施態様において、ポリペプチド及び場合によりFVIIIの両方が静脈内投与される。第二の実施態様において、ポリペプチド及び場合によりFVIIIの両方が皮下投与される。
【0202】
別の実施態様において、FVIIIは静脈内投与され、そしてポリペプチドは異なる経路を介して投与される。さらなる実施態様において、ポリペプチドは皮下投与され、そしてFVIIIは異なる経路を介して投与される。例えば、ポリペプチドは皮下投与され得、そしてFVIIIは静脈内投与され得る。
【0203】
さらなる実施態様において、FVIIIは皮下投与され、そしてポリペプチドは異なる経路を介して投与される。さらなる実施態様において、ポリペプチドは静脈内投与され、そしてFVIIIは異なる経路を介して投与される。例えば、ポリペプチドは静脈内投与され得、そしてFVIIIは皮下投与され得る。
【0204】
本発明のポリペプチドを用いた処置の総投薬数、及び長さの決定は、当業者の能力の十分範囲内である。投与しようとする本発明のポリペプチドの投薬量は、内在性FVIIIの濃度、処置しようとする患者における内在性VWFの濃度、又はその両方に依存し得る。本明細書に記載される比に基づく有効投薬量は、本発明のポリペプチドの分子量を考慮して、当業者により決定され得る。FVIIIについての典型的な投薬量は、約20U/体重kg~100U/体重kgの範囲に及び得る。
【0205】
使用される組成物中の第VIII因子の濃度は、典型的には10~10,000IU/mlの範囲である。異なる実施態様において、本発明の組成物中のFVIIIの濃度は、本明細書において定義される本発明のVWFポリペプチドに対する比に関する要件が満たされることを条件として、10~8,000IU/ml、若しくは10~5,000IU/ml、若しくは20~3,000IU/ml、若しくは50~1,500IU/mlの範囲、又は3,000IU/ml、若しくは2,500IU/ml、若しくは2,000IU/ml、若しくは1,500IU/ml、若しくは1,200IU/ml、若しくは1,000IU/ml、若しくは800IU/ml、若しくは750IU/ml、若しくは600IU/ml、若しくは500IU/ml、若しくは400IU/ml、若しくは300IU/ml、若しくは250IU/ml、若しくは200IU/ml、若しくは150IU/ml、若しくは125IU/ml、若しくは100IU/ml、若しくは62.5IU/ml、若しくは50IU/mlであるが、ただし本明細書において定義される本発明のVWFポリペプチドに対する比に関する要件は満たされる。
【0206】
「国際単位」又は「IU」は、「IU」で較正された国際標準品に対して較正された標準を使用して一段階凝固アッセイ又は発色性基質FVIII活性アッセイにより測定されたFVIIIの血液凝固活性(効力)の尺度の単位である。一段階凝固アッセイは、N Lee、Martin L、et al.、An Effect of Predilution on Potency Assays of FVIII Concentrates、Thrombosis Research (Pergamon Press Ltd.)30、511 519(1983)に記載されるように、当該分野で公知である。一段階アッセイの原理:この試験は、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)-アッセイの改変バージョンとして行われる:リン脂質及び表面活性剤とともに血漿をインキュベートすることにより、内在凝固系の因子が活性化される。カルシウムイオンの添加が凝固カスケードを誘発する。測定可能なフィブリン血栓の形成までの時間が決定される。アッセイは、第VIII因子欠乏血漿の存在下で行われる。欠乏血漿の凝固能は、試験しようとするサンプル中に含まれる凝固第VIII因子により回復される。凝固時間の短縮は、サンプル中に存在する第VIII因子の量に比例する。凝固第VIII因子の活性は、国際単位で第VIIIの既知の活性を有する標準品との直接比較により定量化される。
【0207】
別の標準的なアッセイは、発色性基質アッセイである。発色性基質アッセイは、市販で購入され得る、例えばFVIII試験キット(Chromogenix-Instrumentation Laboratory SpA V. le Monza 338-20128 Milano、Italy)。発色性アッセイの原理:カルシウム及びリン脂質の存在下で、第X因子を第IXa因子により第Xa因子へと活性化させる。この反応は、補因子としての第VIIIa因子により刺激される。FVIIIaは、測定しようとするサンプル中のFVIII由来の混合物中の少量のトロンビンにより形成される。最適濃度のCa2+、リン脂質及び第IXa因子並びに過剰量の第X因子を使用する場合、第X因子の活性化は、第VIII因子の効力に比例する。活性化第X因子は、発色性基質S-2765から発色団pNAを放出する。従って、405nmで測定されるpNAの放出は、形成されたFXaの量に比例し、従って、サンプルの第VIII因子活性にも比例する。
【0208】
ポリペプチドの使用のいくつかの好ましい実施態様によれば、内在性FVIIIレベルは、上記ポリペプチドの投与後に、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの少なくとも1%、又は好ましくは少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも100%のレベルに増加する。
【0209】
さらなる好ましい実施態様において、内在性FVIIIレベルは、上記ポリペプチドの投与後に、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの1%~500%の間、好ましくは1%~400%の間、1%~300%の間、1%~200%の間、1%~150%の間、又は1%~100%の間の範囲にあるレベルに増加する。
【0210】
さらなる好ましい実施態様において、内在性FVIIIレベルは、上記ポリペプチドの投与後に、正常ヒト血漿(NHP)における内在性FVIIIの活性レベルの5%~400%の間、好ましくは5%~300%の間、10%~200%の間、10%~150%の間、20%~150%の間、又は40%~150%の間の範囲にあるレベルに増加する。
【0211】
さらなる好ましい実施態様において、内在性FVIIIレベルは、上記ポリペプチドの投与後に本明細書に記載されるレベルに増加し、それにより投与されるポリペプチドの投薬量及び/又はポリペプチドの投薬頻度は、被験体における内在性FVIIIレベルの上記レベルの達成のために調整される。
【0212】

特定の実施態様において、本発明のポリペプチドは、出血事象の処置のために、又は予防的処置レジメンの開始のために外来性FVIIIと一緒に同時投与され、ここで経過観察処置のために、上記ポリペプチドは外来性FVIIIを同時投与することなく投与される。本発明のポリペプチドを外来性FVIIIと一緒に同時投与することを含むこれらの実施態様について、本発明のポリペプチドは、好ましくは、同時投与しようとするポリペプチドの外来性FVIIIに対するモル比が50より大きくなるような用量で投与される。
【0213】
本発明のポリペプチドは、モノマーであっても、ダイマーであっても、又はそれらの混合物であってもよい。本発明に従うモル比は、実際にモノマーとして存在してもダイマーとして存在しても、本発明のポリペプチドのモノマーサブユニットのモル濃度の比を指す。比は、内在性FVIIIのモル濃度に対して、若しくは、少なくとも特定の実施態様については、同時投与されるFVIIIのモル濃度に対して、又は存在する場合は内在性VWFサブユニットのモル濃度に対して形成される。別の指示がなければ、本出願におけるFVIIIに対する本発明のポリペプチドの比は、投与しようとする本発明のポリペプチド(好ましくはダイマーとして存在する)に含まれるモノマーの量(モル)を、投与しようとするFVIIIの量(モル)で割ったものを指す。非限定的な例として、本発明のモノマーポリペプチド 100μMのFVIII 1μMとの同時投与は、比100を意味する。本発明のダイマーポリペプチド50μMがFVIII 1μMと同時投与される場合に同じ比100が得られる。
【0214】
内在性VWFは、存在する場合、本発明のポリペプチドを投薬しようとしている動物又はヒトの血漿中に存在するVWFである。これは通常、VWFの約2~40のモノマーサブユニットの様々な範囲のオリゴマーからなる。別の指示がなければ、本出願において内在性VWFに対する本発明のポリペプチドの比は、本発明のポリペプチドの投与直後の処置された被験体の体重1kgあたりの本発明のポリペプチドのモル血漿濃度を、処置された被験体の体重1kgあたりの内在性VWFのモル血漿濃度で割ったものを指す。本発明のポリペプチドの投与直後の本発明のポリペプチドの血漿モル濃度は、投与のすぐ後の投与された本発明のポリペプチドの希釈を40mL/kgと仮定して計算される。静脈投与された場合に投与直後の本発明のポリペプチドの量は、本発明の目的のために、投与された量と同じであると仮定される。
【0215】
本発明の一局面によれば、内在性VWFに対する本発明のポリペプチドのモル比は0.5より大きい。処置しようとする被験体の血漿中の内在性VWFの濃度は、例えば実施例に記載されるように、ELISA又は及び活性アッセイにより決定され得る。典型的には、測定される濃度はU/mLで与えられる。この値は、以下に記載されるようにモル濃度に変換され得る。
【0216】
正常ヒト血漿(NHP)は、定義により1U/mL又は100%の濃度でVWFを含有する。これは、約10μg/mLのタンパク質濃度に相当する(Haberichter S.L. and Montgomery R.R.、Structure and function of von Willebrand factor;Hemostasis and Thrombosis、eds. Marder、Aird、Bennett、Schulman and White、Lippincott Williams & Wilkins 2013、pp 197-207)。NHP中のこのVWF濃度及び18~19%のグリコシル化を含む約267,500 Daの成熟VWFモノマーの分子量に基づいて、約37 x 10-9 Mol/LのVWFモノマー単位の血漿モル濃度がNHPについて算出され得る。
【0217】
それぞれ正常ラット又はウサギの血漿中のラット又はウサギVWFサブユニットのモル濃度の計算のために、ヒトVWFに相当するモノマーサブユニットの分子量を、仮定された相当する特異的活性(100 U/mg)及びラット又はウサギ血漿中の測定された内在性VWF活性とともに使用した(267,500 Da)(実施例も言及する)。
【0218】
ヒト集団におけるVWFの濃度は、NHP中のVWF濃度約60%から約200%まで変化する。本発明の特定の実施態様において、内在性VWFの濃度は、NHP中の濃度として定義される。他の実施態様において、内在性VWFの濃度は、処置しようとする被験体において決定され、そしてポリペプチドの用量は、この個々の値に基づく。
【0219】
内在性VWFに対する投与されたポリペプチドのモル比は、好ましくは少なくとも2、又は少なくとも3、又は少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7、又は少なくとも8、又は少なくとも9、又は少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、又は少なくとも20、又は少なくとも25、又は少なくとも30、最も好ましくは少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも75である。
【0220】
内在性VWFに対する投与しようとする本発明のポリペプチドのモル比は、0.5~1,000、又は1~500、又は2~400、又は3~300、又は4~250、又は5~200、又は6~150、又は7~140、又は8~130、又は9~120、又は10~110の範囲に及び得る。好ましくは、内在性VWFに対する投与された本発明のポリペプチドのモル比は、3~100、又は4~90、又は5~80、又は6~75、又は10~60の範囲に及ぶ。
【0221】
投与しようとする本発明のポリペプチドの内在性FVIIIに対するモル比は、好ましくは少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50であり、より好ましくはこの比は50より大きく、又は少なくとも75、少なくとも100であり、又は100より大きく、又は少なくとも200、最も好ましくは少なくとも300、又は少なくとも400、又は少なくとも500である。
【0222】
投与しようとする本発明のポリペプチドの内在性FVIIIに対するモル比は、2~10,000、又は5~5,000、又は10~4,000、又は20~3,000、又は30~2,000、又は40~1,000の範囲に及び得る。好ましくは、投与しようとする本発明のポリペプチドの内在性FVIIIに対するモル比は、60~2,500、又は110~2,000、又は150~1,500、又は200~1,000の範囲に及ぶ。
【0223】
投与しようとする本発明のポリペプチドの、同時投与しようとする外来性FVIIIに対するモル比は、好ましくは少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50であり、より好ましくはこの比は50より大きく、又は少なくとも75、少なくとも100であり、又は100より大きく、又は少なくとも200、最も好ましくは少なくとも300、又は少なくとも400、又は少なくとも500である。
【0224】
投与しようとする本発明のポリペプチドの、同時投与しようとするFVIIIに対するモル比は、2~10,000、又は5~5,000、又は10~4,000、又は20~3,000、又は30~2,000、又は40~1,000の範囲に及び得る。投与しようとする本発明のポリペプチドの、同時投与しようとするFVIIIに対するモル比は、好ましくは50~10,000、又は50~5,000、又は50~4,000、又は50~3,000、又は50~2,000、又は50~1,000の範囲に及び得る。好ましくは、投与しようとする本発明のポリペプチドの、同時投与しようとするFVIIIに対するモル比は、60~2,500、又は110~2,000、又は150~1,500、又は200~1,000の範囲に及ぶ。
【0225】
医薬組成物
本明細書に記載される方法において適した本発明のポリペプチドの治療用製剤は、当該分野で典型的に使用される任意の薬学的に許容しうる担体、賦形剤又は安定剤(これらは全て本明細書で「担体」と呼ばれる)、すなわち、緩衝化剤、安定剤、保存料、等張化剤(isotonifiers)、非イオン性界面活性剤、抗酸化剤、及び他の種種雑多な添加物と、所望の程度の純度を有するポリペプチドを混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液としての貯蔵のために製造され得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences、16th edition(Osol、ed. 1980)を参照のこと。このような添加物は、使用される投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性でなければならない。
【0226】
緩衝化剤は、生理条件に近い範囲にpHを維持するために役立つ。これらは約2mM~約50mMの範囲に及ぶ濃度で存在し得る。適切な緩衝化剤としては、有機及び無機の両方のその酸及び塩、例えばクエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸酸ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸にナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)及び酢酸緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)が挙げられる。さらに、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液及びTrisのようなトリメチルアミン塩が使用され得る。
【0227】
保存料は微生物増殖を妨害するために添加され得、そして0.2%~1%(質量/体積)の範囲に及ぶ量で添加され得る。適切な保存料としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、及びアルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3-ペンタノールが挙げられる。「安定剤」としても知られる等張化剤は、液体組成物の等張性を確実にするために加えられ得、そしてこれらとしては多価糖アルコール、好ましくは三価又はそれ以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。安定剤は、増量剤から、治療剤を可溶化するか又は変性もしくは容器壁への付着を防止する添加剤に及ぶ機能を有し得る広義の賦形剤を指す。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上で列挙された);アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど、有機糖又は糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロールなど、(イノシトールのようなシクリトール類を含む);ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;硫黄含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(例えば、10残基又はそれ以下のペプチド);タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン 単糖、例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖、例えばラクトース、マルトース、スクロース及び三糖、例えばラフィノース;及び多糖、例えばデキストランであり得る。安定剤は、活性タンパク質1質量部あたり0.1~10,000質量部の範囲で存在し得る。
【0228】
非イオン性界面活性剤(surfactants)又は洗浄剤(detergents)(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の可溶化を促進するため、さらには撹拌誘導凝集に対して治療用タンパク質を保護するために加えられ得、これはまた、タンパク質の変性を引き起こすことなく圧力を加えられたせん断面に製剤が曝露されることを可能にする。適切な界面活性剤としては、ポリソルベート(20、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(R)-20、TWEEN(R)-80など)の非イオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、約0.05 mg/ml~約1.0 mg/mlの範囲、又は約0.07 mg/ml~約0.2 mg/mlの範囲で存在し得る。
【0229】
さらなる様々な賦形剤としては、増量剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、及び共溶媒が挙げられる。
【0230】
本明細書における製剤は、本発明のポリペプチドに加えて第二の治療剤も含んでいてもよい。適切な第二の治療剤の例は以下に示される。
【0231】
投薬スケジュールは、疾患の種類、疾患の重篤度、及び本発明のポリペプチドに対する患者の感受性を含む、多数の臨床因子に依存して月に1回から毎日まで変化し得る。特定の実施態様において、本発明のポリペプチドは、週に2回、5日ごと、週に1回、10日ごと、2週間毎、3週間ごと、4週間ごと、又は月に1回、又は前述の値のいずれか2つの間の任意の範囲で、例えば、4週ごとから毎月、10日ごとから2週ごと、又は週に2回から3回などで投与される。
【0232】
投与しようとする本発明のポリペプチドの投薬量は、特定のポリペプチド、被験体、並びに疾患の性質及び重篤度、被験体の身体状態、治療計画(例えば、第二の治療剤が使用されるかどうか)、及び選択された投与経路によって変わる;適切な投薬量は、当業者により容易に決定され得る。
【0233】
本発明のポリペプチドの最適な量及び個々の投薬の間隔は、処置される状態の性質及び程度、投与の形態、経路、及び部位、並びに処置される特定の被験体の年齢及び状態により決定されること、そして医師が、使用されるべき適切な投薬量を最終的に決定するということは、当業者により認識されるだろう。この投薬は、必要なだけ頻繁に繰り返され得る。副作用が発生する場合、投薬の量及び/又は頻度が、通常の臨床診療に従って変更されるか又は減少され得る。
【0234】
配列表に示されるヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を表1に要約する。
【表1】
【0235】
以下の実施例は本発明を説明するが、本明細書以下に記載される特定の実施態様に本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0236】
実施例1:rD’D3-FPの投与後の血漿におけるFVIIIレベル分析
我々は、内在性FVIIIレベルに対するrD’D3-FPの影響を特徴づけし、それにより、軽度から中程度若しくは重症の血友病Aの患者又は低レベルVWF及び機能的内在性FVIIIを有する特定の型のフォン・ヴィルブランド病の処置を広く支持することを目的とした。我々はこの影響を様々なアプローチで調べた:
- 健常被験体において静脈内(i.v.)rD’D3-FP投与後の内在性FVIIIの潜在的なさらなる増加を調べるための、正常内在性FVIII及びVWFレベルを有するモデル、すなわちラット(実施例1.1)、ウサギ(実施例1.2)及びサル(実施例1.3)への静脈内投与
- 病気の被験体におけるi.v. rD’D3-FP投与後の内在性FVIIIの増加の大きさを調べるための、VWF欠乏に起因して低FVIIIレベルを有するモデル、すなわちVWF koラット(実施例1.4)及びVWF koマウス(実施例1.5)への静脈内投与。
- 病気の被験体におけるrD’D3-FP変異体のi.v.投与後の内在性FVIIIの増加の大きさを調べるための、VWF欠乏に起因して低FVIIIレベルを有するモデル、すなわちVWF koラットへの静脈内投与(実施例1.6)。
- 正常又は低いFVIIIレベルを有するモデル、すなわちブタ、FVIII ko及びVWF koマウス並びにFVIII ko及びVWF koラット及び(実施例1.7)への皮下投与を、rD’D3-FPのi.v.及びs.c.バイオアベイラビリティさらには内在性FVIIIに対する効果を比較するために調べた。
- 最終実験は、VWF koラットにおける複数回rD’D3-FP用量(i.v.)の効果を調べた(実施例1.8)。
- 血友病Aモデル、すなわちFVIII koラットにおいて皮下投与されたrD’D3-FP及び静脈内投与されたrVIII-単鎖の調査(実施例1.9)。
【0237】
材料及び方法
実施例について、配列番号2において定義されるアミノ酸配列を有する切断型VWFを含むポリペプチドを使用した。この特定の融合タンパク質は、VWF D’D3領域を表すN末端アミノ酸配列1~479(ヒト天然VWFのアミノ酸764~1242)、続いて31アミノ酸のグリシン/セリンリンカーペプチド及びC末端ヒトアルブミンアミノ酸配列511~1095からなる。配列番号2において定義される配列を有するこの融合タンパク質は、以下においてrD’D3-FP又はrD’D3-FP WTと呼ばれる。
【0238】
半減期延長ポリペプチド(HLEP)としてアルブミンの代替として、いくつかの実施例において、アルブミンの代わりにグリシン/セリンリンカーを介してD’D3に融合されたCTP(ヒト絨毛性ゴナドトロピン-βサブユニットのC末端ペプチド)を有する別の半減期延長rD’D3変異体(本明細書以後でrD’D3-CTPと呼ばれる)を使用した。融合タンパク質rD’D3-CTPは配列番号7に定義される配列を有する。
【0239】
特定の実施例において、rD’D3-FPの高親和性変異体を使用した。1つの特定の変異体融合タンパク質は、VWF D’D3領域を表すN末端アミノ酸配列1~479(ヒト天然VWFのアミノ酸764~1242)、続いて31アミノ酸グリシン/セリンリンカーペプチド及びC末端ヒトアルブミンアミノ酸配列511~1095からなるが、ただし上記ポリペプチドのD’ドメイン内に2つのアミノ酸置換、すなわちS764E及びS766Yが存在する。この融合タンパク質は、D’D3領域内に上記2つの置換、すなわちS764E及びS766Yを有する配列番号2において定義される配列からなる。VWFアミノ酸S764は、配列番号2の配列内のアミノ酸番号1に対応する(表1も参照のこと)。rD’D3-FP EY変異体はWO2016/000039A1に記載されるように生成された。上記変異体は本明細書以後でrD’D3-FP EYと呼ばれる。
【0240】
特定の実施例において、rD’D3-FPの別の高親和性変異体を使用した。この特定の変異体融合タンパク質は、VWF D’D3領域を表すN末端アミノ酸1~479(ヒト天然VWFのアミノ酸764~1242)、続いて31アミノ酸グリシン/セリンリンカーペプチド及びC末端ヒトアルブミンアミノ酸配列511~1095からなるが、ただし上記ポリペプチドのD’D3ドメイン内に3つのアミノ酸置換、すなわちS764E、S766Y及びV1083Aが存在する。この融合タンパク質は、D’D3領域内に上記3つの置換S764E、S766Y、及びV1083Aを有する配列番号2において定義される配列からなる。上記変異体は本明細書以後においてrD’D3-FP EYAと呼ばれる。
【0241】
分析
全ての実施例において、rD’D3-FPは、ヒトアルブミンELISAにより定量された用量レベルで適用され、すなわちタンパク質のアルブミン部分を測定した。このrD’D3-FP ELISAを製剤及び血漿サンプルに使用した(関連するヒトアルブミン交差反応性を示したサル血漿サンプルを除く)。
【0242】
rD’D3-CTPをrD’D3変異体として使用した実施例において、ポリペプチドはOD280測定により定量された用量レベルで適用され、そしてタンパク質の量をrD’D3-FPと同じ高い範囲のモル濃度に調整した。
【0243】
(「標準的」)rD’D3-FP ELISAは、Bethyl Laboratories、Inc.(Montgomery、USA)からのポリクローナルヤギ抗ヒトアルブミン捕捉抗体を使用した。検出溶液は、ポリクローナルペルオキシダーゼ標識抗ヒトアルブミン検出抗体調製物(Bethyl Laboratories Inc.、Montgomery、USA)からなる。発色読み出し、すなわち、Siemens Healthcare(Eschborn、Germany)からのTMBを、停止直後に450/650nmでマイクロプレートリーダー(ELx808、BioTek、USA)において定量するために使用した。標準として、rD’D3-FPを含む薬物製剤を使用した。rD’D3-FPの量をmgアルブミンで示し、すなわち、分子のD’D3部分についての調整を行わなかった。
【0244】
サル血漿サンプルについてのrD’D3-FP ELISAを混合ELISAとして設定し、ここでD’D3ドメインを捕捉し、そしてアルブミンドメインを検出した。このアッセイは、抗D’D3モノクローナル捕捉抗体(CSL Behring、社内研究等級調製物)を使用した。検出溶液は、ポリクローナルペルオキシダーゼ標識抗ヒトアルブミン検出抗体調製物(Bethyl Laboratories Inc.、Montgomery、USA)からなる。発色読み出し、すなわちSiemens Healthcare (Eschborn、Germany)からのTMBを、停止直後に450/650nmでマイクロプレートリーダー(ELx808、BioTek Instruments Inc.、Winooski、USA)における定量のために使用した。標準として、rD’D3-FPを含有する薬物製剤を使用した。rD’D3-FPの量はをmgアルブミンで示し、すなわち分子のD’D3部分について調整を行わなかった。
【0245】
rD’D3-CTPを含有するPKの血漿サンプルを抗D’D3 ELISAにおいて測定した。この抗D’D3 ELISAは、2つのモノクローナル抗ヒトD’D3抗体をサンドイッチ形式で用いて行われた。捕捉及び検出のための両方の抗体は、社内研究調製物から誘導された。抗ヒトD’D3検出抗体をペルオキシダーゼ標識した。発色読み出し、すなわちSiemens Healthcare (Eschborn、Germany)からのTMBを、停止直後に450/650nmでのマイクロプレートリーダー(ELx808、BioTek Instruments Inc.、Winooski、USA)における定量のために使用した。標準として、rD’D3-CTPを含有する薬物製剤を使用した。rD’D3-CTPの量をrD’D3-CTP濃度として示す。
【0246】
ヒトFVIII:Ag血漿レベルを、試験指示マニュアルに従ってStago、S.A.S.、FranceからのFVIII Asserachrom ELISA試験キットを用いて決定した。Asserachrom試験キットは、停止液以外の全ての試薬を含んでおり、停止液はSiemens Healthcare(Eschborn、Germany)から入手した。標準として、rVIII-単鎖を含有する薬物製剤を使用した。
【0247】
FVIII発色活性血漿レベルを、COAMATIC(R)FVIIIアッセイ(FVIII:C発色アッセイ、Chromogenix、Instrumentation Laboratory SpA、Milan、Italy)により製造者の試験使用説明書マニュアルに従ってSiemens Healthcare Diagnostics(Marburg、Germany)からのBCS XP分析機で検出した。較正のために、標準ヒト血漿を使用した。あるいは、これらは、同じCOAMATIC(R)FVIIIアッセイにより、Siemens Healthcare Diagnostics(Marburg、Germany)からのヒトFVIII欠乏血漿中にサンプルを予備希釈(predilution)し、続いてTecan(Tecan Trading AG、Switzerland)からのInfinite M200 ELISA-リーダーで読み出しすることにより検出された。較正のために、ヒト血漿由来フォン・ヴィルブランド因子及びCSL BehringからのFVIII含有製品、Haemate(R)Pを使用した。サンプルを参照なしで405nmで測定した。一般に、FVIII発色活性はFVIII:Cと略される。
【0248】
FVIII凝固活性血漿レベルを、Pathromtin(R)SL、ヒトFVIII欠乏血漿及び塩化カルシウム溶液(これらはすべてSiemens Healthcare Diagnostics(Marburg、Germany)から市販されている)を含む一段階凝固アッセイを使用して検出した。Siemens Healthcare Diagnostics(Marburg、Germany)からのBCS XP分析機で測定を行った。較正のために、標準ヒト血漿を使用した。
【0249】
活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を、血漿サンプルにおいてPathromtin(R)SL試薬(マウス及びラット)又はActin(R)FSL(ウサギ)及び塩化カルシウム溶液を使用してSiemens Healthcare Diagnostics(Marburg、Germany)からのBCS XP分析機で分析した。全ての試薬はSiemens Healthcare Diagnostics(Marburg、Germany)から市販されている。
【0250】
実験動物
FVIII koマウス
FVIII遺伝子のエクソン16及び17を欠失し、したがって血漿第VIII因子活性を有していないので(Bi L. et al、Nature genetics、1995、Vol 10(1)、119-121;Bi L. et al、Blood、1996、Vol 88(9)、3446-3450)、(血友病A表現型を表す)FVIII koマウスを選択した。これは、これらのマウスの血漿におけるFVIII活性を定量することによりFVIIIを用いた処置後のFVIII活性レベルの分析を可能にする。
【0251】
FVIII koラット
血友病A表現型を表すFVIII koラットを、SAGE Labs (A Horizon Discovery Group Company、Saint Louis、MO 63146、USA)にてCRISPR/Cas9技術を使用して生成した。エクソン18内の位置23471~23472に2bp(塩基対)欠失及び1bp挿入を導入し、初期終止コドンをもたらす。生成されたFVIII ko変異は、FVIII機能を破壊されたFVIII koラットを生じた。これは、これらのラットの血漿におけるFVIII活性の定量化によりFVIIIを用いた処置後のFVIII活性レベルの分析を可能にする。
【0252】
VWF koマウス
VWF遺伝子のエクソン4及び5を欠いており、したがって血漿VWF活性を有していないので(Denis C. et al、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1998、Vol 95、9524-9529)、VWFノックアウト(ko)マウス(VWD表現型を表す)を選択した。これは、これらのマウスの血漿における内在性FVIII活性でのD’D3ポリペプチドの分析を可能にする。
【0253】
VWF koラット
VWD表現型を表すVWF koラットを、Sigma Advanced Genetic Engineering (SAGE) Labs (Saint Louis、MO 63146、USA)でCompoZrTM 亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術及びSAGEspeedTM動物ノックアウト製造プロセスを使用して生成した。ゲノム配列における位置33926bp~33941bpでの16bp(塩基対)欠失を、エクソン7内に誘導し初期終止コドンを生じた。一般にZFN技術を使用してSigma Advanced Genetic Engineering (SAGE) Labs (Sigma-Aldrich Biotechnology)によるノックアウトラットの生成は、X. Cui et al. (Nature Biotechnology、2010)、MH. Porteus & D. Carroll (Nature Biotechnology、2005)に記載される。生成されたVWF ko変異は、VWF機能が破壊されたVWF koラットを生じた。これは、これらのラットの血漿における内在性FVIII活性レベルに対するD’D3ポリペプチドの分析を可能にする
【0254】
D’D3アルブミン融合タンパク質(D’D3-FP)の生成:
VWFアミノ酸1~1242をコードするcDNA、グリシン/セリンリンカー及びヒトアルブミンのcDNAからなるD’D3-FPの発現カセットを、カスタム遺伝子合成(Eurofins Genomics、Ebersberg、Germany)により製造した。隣接する制限部位(EcoRI、NotI)を介して発現カセットを供給されたクローニングベクターから切除し、そしてEcoRI及びNotIと線状化したpIRESneo3ベクター(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ、USA)に挿入した。得られた発現プラスミドは、VWFプロペプチド、CMVプロモーター制御下にある短いリンカーコード配列を介してアルブミンコード配列に融合されたD’及びD3(配列番号4のVWFアミノ酸1~1242)をコードするヌクレオチド配列を含有していた。コード配列のヌクレオチド配列は配列番号1として表示され、成熟D’D3-FPのアミノ酸配列を配列番号2として示す。発現の間のD1D2 VWFプロペプチド(741アミノ酸)の存在は、合成されたポリペプチドの二量体化に不可欠である。
【0255】
同様のアプローチを使用して、グリシン/セリンリンカーを介して連結され、そして融合タンパク質のC末端で8つのヒスチジンによりタグ化された、ヒト絨毛性ゴナドトロピン-βサブユニットのC末端ペプチドへのD’D3融合タンパク質のための発現プラスミドを生成した。成熟rD’D3-CTPのアミノ酸配列を配列番号7として示す。
【0256】
上記の発現プラスミドをXL10 Gold(Agilent Technologies)中で増殖させ、そして標準的プロトコル(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して精製した。
【0257】
CHO K1細胞を、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を使用してトランスフェクトし、そして無血清培地(CD-CHO、Invitrogen)中で500~1000μg/mlジェネテシンの存在下にて増殖させた。WO2007/144173に記載されるようにPACE/フリン(pFu-797)をコードする発現プラスミドを、プロペプチド切断効率を最大にするために同時トランスフェクトした。単細胞由来クローンを増殖させ、そしてアルブミン特異的酵素イムノアッセイ(以下を参照のこと)により定量したそれらのD’D3-FP発現収率に従って選択した。D’D3-FP発酵のために最終的に選択した細胞株をT2050-CL3と呼んだ。
【0258】
発酵プロセスを灌流モードで適用してrD’D3-FPの製造をバイオリアクターで行った。rD’D3-FPの製造のための発酵プロセスは、細胞株T2050-CL3の解凍から開始し、続いて振盪フラスコで細胞増殖させ、そして最終的に発酵プロセスを灌流モードでSartorius BioStat B-DCU 5Lバイオリアクター及びBioStat STR 50L単回使用バイオリアクターを使用して行った。それぞれBioSeps 10L又は200L(Applikon)を細胞保持デバイスとして使用した。細胞培地は8mM L-グルタミン及び1μM CuSOを含むPowerCHO3 (Lonza BESP1204)又は10 mM L-グルタミン及び1μM CuSOを含むProCHO5 (Lonza BESP1072)のいずれかであった。
【0259】
振盪フラスコ中のシードトレインを37℃、7.5% COで振盪速度160rpmにて行った。
【0260】
5Lバイオリアクターに2.5x10細胞/mLの標的VCDを播種した。8mM L-グルタミン及び1μM CuSOを含むPowerCHO3中で+37.0℃の温度、pH7.00、及び30%酸素飽和にて細胞を培養した。+37℃でのバイオリアクター実行からの初期収穫を採取した後に+34.0℃への温度シフト(評価範囲+31℃~+35℃)を行った。酸として散布されたCO及び塩基としてNaHCOを使用してpHを制御した。オーバーレイ空気流量を0.5L/分に設定した。リングスパージャーを散布ユニットとして使用した。撹拌速度は、2倍ピッチ羽根を用いてダウンプルモードで150rpmだった。
【0261】
50Lバイオリアクターに標的VCD 3.0x10細胞/mLを播種した。10mM L-グルタミン及び1μM CuSOを含むProCHO5培地で+37.0℃の温度、pH6.90、及び30%酸素飽和で細胞を培養した。+34.0℃への温度シフトを初期の1又は2回の収穫後に行った。上記のPH制御、オーバーレイ空気流量を2L/分に設定した。マイクロスパージャーを散布ユニットとして使用した。撹拌速度は2倍ピッチ羽根を用いてダウンプルモードで90rpmだった。
【0262】
バイオリアクター中のVCDが≧1.0x10細胞/mLになった場合に灌流を開始した。灌流速度を1.0体積/体積/日に設定した。BioSepをバックラッシュモードで5(10)分ランタイム及び10秒バックラッシュで7(30)Wの電源入力で操作した(カッコ内の数字は50Lバイオリアクターを指す)。灌流液及びブリード(bleed)をインラインろ過し、そして48時間にわたって+2~+8℃にてバッグに集めた。能動的ブリードにより濁度プローブを使用して2g/Lグルコースの標的とともにパラメーターとしてグルコース消費を使用してVCDを制御した。収穫及びブリードをインラインろ過し、使い捨てフィルター及び使い捨てバッグからなる収穫システムを2日ごとに変更した。
【0263】
以下に記載されるPK分析のための材料を製造するために、収穫物をアフィニティ及びサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。手短には、バイオリアクターからの無細胞収穫物をTFFシステム(例えば、Pall Centramate 500 S)を使用して30kD膜(例えば、Pall Centramate OS030T12)を用いて30倍濃縮した。その濃縮物をNaCl及びEDTAを用いて最終濃度0.75M NaCl及び5mM EDTAまでスパイクし、そして終夜、20mM Tris緩衝液pH7.4で予め平衡化したCaptureSelectヒトアルブミンカラム(Life Technologies)にロードした。カラムを平衡緩衝液で洗浄した後、rD’D3-FPを溶出緩衝液(20mM Tris、2M MgCl、pH7.4)で溶出した。次いで溶出液を10倍濃縮し、そして50mM Tris、150mM NaCl、pH7.4に対して30kDカットオフを有する超遠心フィルター(例えば、Amicon. UFC903024)を用いて透析した。モノマー部分からrD’D3-FPダイマーを分離するために、その材料を50mM Tris、150mM NaCl、pH7.4で予め平衡化したSuperdex 200pgカラム(GE Healthcare コード:17-1069-01)にロードし、そしてD’D3-FPダイマーを含有するピークフラクションをプールした。ダイマー及びモノマーピークフラクションについての曲線下面積を使用して、ダイマー対モノマー比を計算した。上記D’D3アルブミン融合タンパク質のダイマー調製物を、実施例1.1~1.6における薬物動態実験に使用した。このようなダイマー調製物は、別の指示がなければ、以下においてD’D3-FP又はrD’D3-FPと呼ばれる。
【0264】
rD’D3-FP EY及びEYA変異体は同等の方法の工程により生成された。
【0265】
実施例1.1:ラットにおける生理的内在性FVIIIレベルに対するrD’D3-FPを用いた静脈内処置の影響
動物
200~294gの体重範囲の雌性Crl:CD(スプラーグドーリー)ラットをCharles River Laboratories(Sulzfeld、Germany)で飼育した。社内でこれらの動物を標準的飼育条件、すなわち20~24℃にて12時間/12時間明-暗サイクル下に維持した。動物に自由に標準的マウス及びラット食餌を与えた(Ssniff-Versuchsdiaeten、Soest、Germany)。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
1mg/kg群について、群サイズはn=9であり、コントロール(n=3動物のみ)を除いて3つのコホートに分けた。1mg/kg群の群サイズはn=6であり、2つのコホートに分けた。したがって、1時点あたりn=3の動物を常に使用した。
【0266】
実験詳細
試験品をラット(群あたりn=3)の外側尾静脈への単回注射により静脈内(i.v.)投与した。rD’D3-FPをヒトアルブミン値に基づいて1mg/kg又は3mg/kgの用量レベルで適用した。1mg/kg群の血液サンプルを後眼窩で(大動脈穿刺による10及び14日目の終末サンプリング)投薬前、静脈内ボーラス注射後の投与後(p.a.)6時間(h)並びに1、2、3、4、5、7、10及び14日後に採取した。3mg/kg群の血液サンプルを投与の0.083、3、8h並びに1、2、3及び4日後に採取した。これらをクエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてrD’D3-FP及び/又はFVIII活性の決定のために約ー70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用して構築物のアルブミン部分の測定により決定した。FVIII活性血漿レベルを、発色アッセイ、さらには一段階凝固アッセイを使用して検出した。
曲線下総ピーク面積(AUC)の計算をGraphPad Prism (GraphPad Software、La Jolla、California、USA)を用いて14日間の期間の間にわたって、ベースラインとして処置前の値を使用し、そして最小値から最大値までの距離が≦30%であるピークを同定して行った。
【0267】
結果
rD’D3-FPを投与後(p.a.)4日(d)(3mg/kg)又は14d(1mg/kg)まで定量し、そして測定されたデータは観察期間全体にわたって検出限界より十分高かった(図1A)。線形用量依存性が2つの試験された用量で観察された。
FVIII活性を1 mg/kg rD’D3-FPで処置された群について発色及び一段階凝固活性として測定し、そして両方のFVIII活性試験は、rD’D3-FPの投与後に食塩水コントロールと比較して、投与後2日目(発色活性)又は1日目(凝固活性)と5日目との間のピークで、内在性FVIIIレベルの一時的な増加を示した(図1B及び1C)。再び両方のアッセイについて、平均FVIII濃度は、投薬前最大値、すなわち発色FVIII活性について3.1IU/mL及び凝固FVIII活性について454%(4.5IU/mL)をほとんど超えることはなかった。サンプルの定量のために使用される1:4希釈を用いた正常値上限(ULN)にはいずれの動物も達しなかったということに言及するべきだろう。これと一致して、図1Dに示されるようにAUC(投与後0日目から14日目にわたって評価された)は、1mg/kg rD’D3-FPの用量で発色アッセイ、さらには凝固アッセイで増加した。
FVIII活性の増加と一致して、ビヒクル処置動物と比較して生理学的活性化部分トロンビン時間(aPTT)は減少し(図1E)、これは投与直後に始まり、投与後約7日目までピークを有していた。再び、平均値は投薬前範囲内の範囲に及び、そして投与後1日目にのみ、平均値は最低投薬前値16.5sを下回った。
少なくとも14日間のrD’D3-FPへの所定の曝露で、FVIII活性のわずかな増加が観察された。ピーク値は投与後1~5日後に得られ、これらはいずれの場合も食塩水処置動物よりも<2倍高く(FVIII発色活性:最大増加約1IU/mL又は100%から約3.5IU/mL=350%;FVIII凝固活性:最大増加約300%~約700%、大部分は約100%~約500% - ヒトと比較したこれらの動物におけるより高いベースライン値と一致)、そして大部分は生理的変動内であった。FVIII活性のこのわずかな増加はaPTTの短縮をもたらし、平均値は最小投薬前値よりわずかにかつ短期間低いだけであった。したがって、健常ラットにおいて、FVIIIレベルの僅かな増加は1mg/kg rD’D3-FPの用量で観察されたが、これらの値は生理的範囲外にはほとんど変化しなかった。
【0268】
実施例1.2:ウサギにおける生理的内在性FVIIIレベルに対するrD’D3-FPを用いた静脈内処置の影響
動物
2.0~3.2kgの体重範囲の雌性CHBウサギ(Bauer、Neuental、Germany)を、鋼線ケージで1ケージあたり1匹で標準的な飼育条件、すなわち20~23℃及び50%相対湿度で12時間/12時間明-暗サイクル下で飼育した。動物は水道水を自由に与えられ、そしてウサギペレット食餌を与えられた(Deukanin(R)、Deutsche Tiernahrung Cremer GmbH&Co.KG、Duesseldorf、Germany)。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
【0269】
実験詳細
試験品を、ウサギの外側耳介静脈(lateral ear vein)への単回注射によりi.v.投与した(群あたりn=3)。ヒトアルブミン値に基づいて1、3又は10mg/kgの用量でrD’D3-FPを適用した。血液サンプルを投薬前、静脈内ボーラス注射の後、投与後(p.a.)1、3及び6時間に採取し、続いて10日まで毎日サンプリングした。これらをクエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてrD’D3-FP及び/又はFVIII活性の決定のために約-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用して構築物のアルブミン部分の測定により決定した。FVIII活性血漿レベルを、発色アッセイさらには一段階凝固アッセイを使用して検出した。さらに、aPTTをActin(R)FSL試験を使用して定量した。いずれの凝固したサンプルも評価から除外した。
曲線下総ピーク面積(AUC)の計算を、GraphPad Prism (GraphPad Software、La Jolla、California、USA)を用いて10日の期間にわたってベースラインとして処置前の値を使用して行い、そして最小値から最大値まで≦30%の距離を有するピークを同定した。
【0270】
結果
rD’D3-FPを投与後10日目(10 d p.a.)まで定量し、そして測定されたデータは、7日目又はそれ以後にいくつかの動物において観察された低下を除いて、観察期間全体にわたって16又は31ng/mLの検出限界より十分高かった(図2A)。曝露のこの突然の低下は単一の動物において観察され、7~10日目に始まり、そして特により高い用量について観察された。一つの可能性のある原因は、試験した他の種と比較してウサギ及びヒトにおけるD’D3領域のより低い相同性と一致して、抗薬物抗体の形成であり得る。
FVIII活性を、発色及び一段階凝固活性として測定し、両方とも食塩水対照と比較して内在性レベルの増加を示した(図2B及び2C)。データは、rD’D3-FPの投与後に内在性FVIIIレベルのわずかな増加を示唆し、ピークは投与後3~7日目の間であった。それにもかかわらず、平均値は、発色FVIII活性試験において投薬前の値2.8IU/mL及び凝固FVIII活性試験において標準の611%(6.1IU/mL)の範囲を一時的に増加させたのみであった。このことと一致して、図2Dに示されるようにAUC(投薬後0~10日にわたって評価された)は増加した:発色アッセイでは、用量3mg/kgで開始したが、凝固アッセイでの効果は10mg/kgでしか見えななかった。このことは凝固アッセイにおけるベースライン値のより高い変動と関連している可能性があり、これは処置された群においてはすでにわずかにより高かった。
FVIII活性はわずかな増加を示したが、aPTTの減少は観察されなかった(図2E)。
少なくとも6日間rD’D3-FPに対する所定の曝露で、FVIII活性のわずかな増加が観察され、これは食塩水処置動物において観察されたレベルをわずかに超えていた。ピーク値は投薬後3~7日目に生じ、これは食塩水処置動物より<2倍高かった(FVIII発色活性:最大増加約1IU/mL又は100%~約3.5IU/mL=350%;FVIII凝固活性:最大増加約400%~約900%-ヒトと比較してこれらの動物におけるより高いベースライン値と一致)。これらの増加したFVIII活性レベルは、10mg/kgの用量で3~6日目にウサギにおける生理的レベルをわずかに超えただけであり、そしてaPTTを低減しなかった。したがって健常ウサギにおいて、FVIIIレベルのわずかな変化しか観察されなかった。
【0271】
実施例1.3:サルにおける生理的内在性FVIIIレベルに対するrD’D3-FPを用いた静脈内処置の影響
動物
約4~7kgの体重範囲、年齢約5~6歳の範囲の雄性カニクイザル(ベトナムから入手 - 証拠書類は健康スクリーニング及び到着前に施されたいずれかの処置を含んでいた - Huntingdon Life Sciences、Cambridgeshire、UKへ)を、標準的飼育条件、すなわち15~24℃及び相対湿度40~70%で12時間明-暗サイクル下で非ヒト霊長類を飼育するために特別に設計されたケージにおいて2匹一組で飼育した。動物に水道水を自由に供給し、そして旧世界サル食餌(毎日動物1匹あたり200g)及び栄養補助食餌(2つのビスケット栄養補助食品、各約25g、及び新鮮な果実製品)を与えた。
【0272】
実験詳細
試験品をサルの伏在静脈に単回注射により静脈内投与した(群あたりn=3)。rD’D3-FPをヒトアルブミン値に基づいて2.5mg/kgの用量レベルで適用した。投薬前、及び静脈内ボーラス注射の投薬の5、30分、2、6、16、30、48、72、96、120、144、168時間後に血液サンプルを大腿静脈から採取した。これらをクエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.2%+9部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてFVIII活性及び/又はrD’D3-FPの決定のために約-70℃で保存した。
分子のD’D3部分を捕捉する抗体を使用し、そしてアルブミンに対する抗体の検出を使用して構築物のアルブミン部分を測定することにより、rD’D3-FP曝露を決定した。FVIII発色活性血漿レベルをChromogenixアッセイにより検出した。
【0273】
結果
その成分の両方、アルブミン及びD’D3へのELISA結合を使用してrD’D3-FPを定量し、そして測定は投与後168時間(7日)までに行った。測定されたデータは観察期間全体にわたって検出限界より十分高かった(図3A)。
FVIII活性を図3Bに示されるように発色活性として測定した。基礎内在性レベルは関連して変化し、標準の83.6~314.8%の範囲(0.8~3.1IU/ml=図3Bにおける点線)及び標準の平均176.4%(1.8IU/mL、図3Bにおける破線)であった。ラット及びウサギにおけるように、標準の258.9%の平均最大値までの内在性FVIIIの小さな増加しか観察されず、そして変動性は非常に高かった。それにもかかわらず、個々の投薬前の値と比較して、約1IU/mL又は標準の約100%までの内在性FVIIIレベルの増加(約2.5IU/mL又は約2.5IU/mLまで - ヒトと比較してこれらの動物におけるより高いベースラインと一致)が実証され、それにもかかわらずこれらは(平均として)サルの生理的FVIIIレベルを超えなかった。
【0274】
実施例1.4:rD’D3-FPを用いた静脈内処置のVWF koラットにおける内在性FVIIIレベルに対する影響
動物
体重範囲261~598gの雄性及び雌性VWF koラットをCharles River Laboratories(Sulzfeld、Germany)で飼育した。社内で、動物を標準的飼育条件、すなわち20~24℃で12時間/12時間明-暗サイクル下に維持した。動物に標準的マウス及びラット食餌を自由に与えた(Ssniff-Versuchsdiaeten、Soest、Germany)。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
1及び10mg/kg群の群サイズはn=9であり、対照を除いて3つのコホートに分けた(n=3動物のみ)。したがって、時点あたりn=3の動物を全てのビヒクル、1及び10mg/kg rD’D3-FPの時点で使用した。3mg/kg群については、群サイズは時点あたりn=4であった。
【0275】
実験詳細
試験品を総体積2又は3mL/kgで外側尾静脈への単回注射により静脈内投与した。rD’D3-FPを、ヒトアルブミン値に基づいて1、3又は10mg/kgの投薬レベルで適用した。血液サンプルを、投薬前、投薬の6、24、48、72、96、120、168、240、336時間後(1及び10mg/kg)に交互サンプリングスキームを使用して、又は各個々の動物から伏在静脈から投薬前、投薬の1、24、48、72、120、192、240及び336時間後に(3mg/kg)短期間麻酔下で後眼窩から採取した。群あたりラットの3つのコホートから(1及び10mg/kg)又は個々の動物から(3mg/kg)PKプロフィールを取った。血液サンプルを、クエン酸(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてFVIII活性及び/又はアルブミンの決定のために-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用して構築物のアルブミン部分の測定により決定した。さらに、FVIII発色及び凝固活性、さらにはaPTTを測定した(後者は1及び10mg/kg rD’D3-FPで処置された群においてのみ)。
曲線下面積(AUC)の計算を、MATLAB R2017a (Natick、Massachusetts、USA)を用いてゼロから10日目まで台形法を使用して行った。
【0276】
結果
rD’D3-FPを、ヒトアルブミンに対するELISAを使用して定量し、そして測定を投薬後14日目まで行った。全ての測定されたデータは、14日目までの観察期間全体にわたって検出限界より十分高かった(図4A)。線形用量依存性が1~10mg/kg rD’D3-FPから示された。
【0277】
図4Bに示されるように発色活性として測定されたFVIII活性活性は、関連ベースラインFVIIIレベルを生じなかった:23のうち22のサンプルは検出限界(0.005IU/mL又は0.5%)未満であり、そして1匹の動物は0.007IU/mLの値を有していた。VWF koラットにおいて(CDラットと対照的に)、両方のラット系統のサンプルの定量のために使用された1:4希釈で正常上限(ULN、4IU/ml)に達した:rD’D3-FPの投与後に、レベルは2日以内に増加し、10mg/kg用量でさえ4IU/mL(又は400%)のアッセイの定量上限を超えた。VWF koラットにおいて、10mg/kg投薬後のFVIII活性レベルはrD’D3-FPは健常CDラットにおいて測定された値を一時的に超えた - が1又は3mg/kgは超えなかった。FVIII発色活性値は、10mg/kg rD’D3-FP投与後にも他の健常種、すなわちウサギ(10mg/kg rD’D3-FPまで投薬された)又はサル(2.5mg/kg rD’D3-FP)よりも高かった。10 mg/kg rD’D3-FPの投与後のラットにおける効果は10日目まで続いた。1mg/kg rD’D3-FPの用量でさえ、最も高い血漿濃度2.36IU/mL(又は236%)に2日目に達し、そして効果は7日目になお弱く見られた。3mg/kg rD’D3-FPでも同様に、最高FVIII血漿濃度に1日目に達した(2.09IU/mL又は209%)。これらのより低い2つの用量で、平均FVIII濃度はCDラットからの正常レベルの範囲内であった。
FVIII活性が図4Cにおいて示されるように凝固アッセイを用いて測定された場合、ベースラインFVIIIレベルは測定可能であった(未希釈サンプル:平均 標準の22.3%、最小 11.7%及び最大 40.9%、n=17;及び検出限界40%で、20サンプルが残った<40%)。したがって、CDラット及びウサギにおけるように、ベースライン値は非常に変化しやすい。rD’D3-FPの投与後の全てのサンプルが1:8の希釈工程を必要とし、それにより標準の1186.4%のULNを生じるということに言及する必要がある。再び、10mg/kgの用量でのrD’D3-FPの投与後に、内在性FVIIIレベルは2日以内にアッセイのULNを超えさえし、すなわちウサギにおけるより高かった。この効果は14日目まで高用量の10mg/kg rD’D3-FPで続いた。1mg/kgの用量でさえ、標準の388.8%の最高血漿濃度に2日目に達し、そして効果は7日目にもなお見られた。同様に3mg/kgの用量で、2日目に測定された最高血漿濃度は標準の435.2%であった。発色FVIII活性と同様に、10mg/kgの投与後にFVIII活性の生理的範囲を超え、そして1又は3mg/kg rD’D3-FPの投与直後に達した。
したがって、発色及び凝固活性データは、凝固活性データと一致して、わずかにより強い応答を示し、おそらくヒトFVIII標準に対してベースラインラットFVIIIの測定と関連する。FVIII活性の増加が観察され、健常CDラットにおいて観察されたレベルに達し(1及び3mg/kg)、又はそれらを超えた(10mg/kg)。10mg/kg用量については、ピーク値は検出上限より高く、したがって正常範囲のx倍の増加は決定することができなかった。
このことは、AUC(0~10日)において計算された増加と一致し、図4Dに示されるように1、3及び10mg/kg rD’D3-FPの用量の後の増加を示す。1及び3mg/kg rD’D3-FPの用量の後の増加は、ビヒクル処置と比較して発色FVIII活性について約10倍そして凝固FVIII活性について約80倍であり、10mg/kg rD’D3-FPでは発色について約50倍そしてAUC0-10dに対して430倍の効果であった。
FVIIIレベルのこれらの増加と一致して、活性化部分トロンビン時間(aPTT)は、病的な投薬前又はビヒクルデータから10mg/kg rD’D3-FP用量群において最低平均値12.5秒(s)まで関連して減少した(図4E)。この減少は両方の測定された用量群(1及び10mg/kg)において14日目まで続き、そしてaPTT値を健常CDラットにおいて観察された範囲(範囲16.5~36.6s)に(1mg/kg rD’D3-FP)又はその範囲よりわずかに低く(10mg/kg rD’D3-FP)した。
【0278】
実施例1.5:VWF koマウスにおけるrD’D3-FPを用いた静脈内処置の内在性FVIIIレベルに対する影響
動物
30~45gの体重範囲の雄性及び雌性VWF koマウスをCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)において飼育した。社内では、動物を標準的飼育条件、すなわち、20~24℃で12時間/12時間明-暗サイクル下で飼育した。動物に標準的マウス及びラット食餌(Ssniff-Versuchsdiaeten、Soest、Germany)を自由に与えた。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
群サイズはn=12であり、対照(n=4匹の動物)を除いて4つのコホートに分けた。したがって、時点あたりn=3~4匹の動物を使用した。
【0279】
実験詳細
試験品(rD’D3-FP又はビヒクル(等張食塩水))を、総体積5mL/kgで外側尾静脈への単回注射により静脈内投与した。rD’D3-FPをヒトアルブミン値に基づいて10mg/kgの用量レベルで適用した。血液サンプルを、短期間麻酔下で投与の4、7、16、24、48、72、96及び168時間後に交互サンプリングスキームを使用してrD’D3-FP投薬動物から、並びに投与の4及び168時間後にビヒクル処置動物から後眼窩で採取した。PKプロフィールを、群あたりマウスの4つのコホートから取った。血液サンプルを、クエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてFVIII活性及び/又はアルブミンの決定のために-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露をヒトアルブミンELISAを使用して構築物のアルブミン部分の測定により決定した。さらに、FVIII発色及び凝固活性を測定した。
曲線下総ピーク面積(AUC)の計算を、GraphPad Prism(GraphPad Software、La Jolla、California、USA)を用いて7日間の期間にわたって最小値から最大値までの距離≦10%を有するピークを同定して行った。
【0280】
結果
rD’D3-FPをヒトアルブミンに対するELISAを使用して定量し、そして測定を投与後7日目まで行った。全ての測定されたデータは観察期間全体にわたって検出限界より十分高かった(図5A)。
発色活性として測定されたFVIII活性は、関連するベースラインFVIIIレベルを生じなかった:ビヒクル処置動物からの全ての6つの測定されたサンプルは検出限界(10mIU/mL又は1%)未満であった。比較のために、健常NMRIマウスの発色活性は、約96~300mIU/mL、中央値230mIU/mL、平均206mIU/mL(標準の10~30%の範囲に及ぶ、未公開データ)の範囲に及び、すなわち他の動物種又はヒトにおいて観察されたよりも低かった。図5Bに従って、rD’D3-FPの投与後に、レベルは4時間以内に平均値138mU/mL(14%)まで急速に増加し、そしてさらに増加して投与48時間後に最大値に達し、平均421mU/mL(42%)で投与72時間後まで(429IU/ml又は43%)であった。投与168時間(7日)後の最後の時点に、なお194mU/mL(20%)が測定された。これを用いて、10 mg/kg rD’D3-FPを用いた処置後のFVIII発色活性は、NMRIマウスにおいて測定された生理的FVIII血漿レベルを超え、そして効果はVWF koラットに匹敵するものであった。
FVIII活性を凝固アッセイを用いて測定した場合、べースラインFVIIIレベルは測定可能であった(ビヒクル処置動物:標準の平均31.1、最小25.8及び最大41.8%、n=8)。したがって、他の種におけるように、ベースライン値は非常に変化しやすかった。再び、rD’D3-FPの投与後に、図5Cに示されるようにレベルは急速に増加し、そして1:60の希釈でしか測定することができなかった(一方、ベースライン値の定量のために使用されたビヒクル処置動物は1:10希釈で測定された)。投与4時間後の最初のサンプリング時点で、平均値はすでに標準の137%であり、そして投与16時間後までさらに増加し、平均で標準の218%であった。最大曝露に投与72時間後に達し、平均で標準の304%であった。投与168時間(7日)後の最後の時点で、なお標準の254%が測定された。
したがって、発色及び凝固活性データは、概してより強い応答を示す凝固活性データと一致しており、おそらくヒトFVIII標準に対するマウスFVIII(VWF ko動物において)の測定と関連していた。FVIII活性の増加が観察され、これは健常NMRIマウスにおいて観察されたレベルを<2倍超えた(FVIII発色活性:最大増加 0.1IU/mL=約10%~約0.4IU/ml=40% - ヒトと比較してこれらの動物におけるより低いベースラインと一致;FVIII凝固活性:約300%への最大増加(NMRIマウスからの範囲は決定されていない))。これは計算されたAUCの増加と一致し(0~7日目)、図5Dに示されるようにビヒクル処置動物と比較して10mg/kg rD’D3-FPの投薬後に大きな増加を示した。
【0281】
実施例1.6:VWF koラットにおける内在性FVIIIレベルに対する様々なrD’D3ポリペプチドを用いた静脈内処理の影響
動物
261~559gの体重範囲の雄性及び雌性VWF koラットをCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)で飼育した。社内では、動物を標準的飼育条件、すなわち20~24℃で12時間/12時間明-暗サイクル下にて維持した。動物に自由に標準的マウス及びラット食餌(Ssniff-Versuchsdiaeten、Soest、Germany)を与えた。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
群サイズは各群についてn=4であった。
【0282】
実験詳細
試験品を、総体積3mL/kgで外側尾静脈への単回注射により静脈内投与した。rD’D3-FPをヒトアルブミン値に基づいて3mg/kgの用量レベルで適用した。血液サンプルを、rD’D3-FP投薬動物から投薬前、投与の1、24、48、72、120、192、240及び336時間後に、そしてrD’D3-CTP処置動物から投薬前、1、24、48、72、96、168、240及び336時間後に伏在静脈から採取した。血液サンプルをクエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)を用いて抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてFVIII活性及び/又はアルブミンの決定のために-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用して構築物のアルブミン部分の測定により決定した。rD’D3-CTPをELISA技術により抗ヒトD’D3に対する抗体を使用して決定した。さらに、FVIII発色及び凝固活性を測定した。
0~10日目までの曲線下面積(AUC)の計算を、MATLAB R2017a(Mathworks、Natick、Massachusetts、USA)を用いて台形法を使用して行った。
【0283】
結果
rD’D3-FPをヒトアルブミンに対してELISAを使用して定量し、そして測定を投与14日後まで行った。rD’D3-FP変異体の全ての測定されたデータは、観察期間全体にわたって検出限界より十分高かったが、rD’D3-CTPは14日目にベースライン値に達した(図6A)。変異体EY及びEYAと比較してrD’D3-FP WTのわずかな有利性が回収率において観察されたが、クリアランスに関して関連する差異は見られなかった。rD’D3-CTPをヒトrD’D3に対してELISAを使用して定量し、そして測定値は投与後10日目を含めて10日目まで検出限界より十分高かった(図6A)。
発色活性として測定されたFVIII活性は、関連するベースラインFVIIIレベルを生じなかった:全18の測定された投薬前サンプルは検出限界(20mIU/mL又は2%)未満であった。図6Bによれば、rD’D3-FP変異体の投与後に、レベルは投与1時間後にすでに増加し(WT 197±20mIU/mL又は5%、EY 171±84mIU/mL又は17%、EYA 203±117mIU/mL又は20%及びCTP 110±102mIU/mL又は11%)、そしてさらに次の測定された時点でも増加した。1日目~8日目の間に最大に達し、WTについて2088mU/mL(209%)、EYについて2889mU/mL(289%)、EYAについて1044mU/mL(104%)、そしてCTPについて2214mU/mL(221%)の平均値であった。最後の測定可能なFVIII活性はWTについて10日目に(237±225mU/mL(24%))、EYについて10日目に(512±603mU/mL(51%))、EYAについて14日目に(最後の測定された時点、179±107mU/mL(18%)、及びCTPについて14日目に(22±4mU/mL(2%))観察された。これはrD’D3-CTP変異体の静脈内投与後に最も高い観察されたAUC0-10dをもたらした(表2、図6D)。
FVIII活性を凝固アッセイで測定した場合、ベースラインFVIIIレベルも測定可能ではなかった(n=20投薬前 処置された動物、検出限界40%)。図6Cに示されるように、再び、rD’D3-HLPの投与後に、レベルは投与の1時間後にすでに増加し(WT 47±4%、EY 41±1%、EYA 45±5%及びCTP 40±1%)、そしてさらに次の測定された時点でも増加した。WTについて435%、EYについて453%、EYAについて779%、そしてCTPについて358%の平均値で1日目~8日目の間に最大に達した。最後の測定可能なFVIII活性は、WTについて10日目に(85±39%)、EYについて10日目に(130±84%)、EYAについて14日目に(最後の測定された時点、46±7%)、そしてCTPについて7日目(57±29%)に観察された。最も高い観察されたAUC0-10dは、rD’D3-FP EYAの静脈内投与後に達成された(表2、図6D)。
【0284】
したがって、発色及び凝固活性データは、再びより強い応答を示した凝固活性データと概して一致していた。FVIII活性の増加は、発色FVIII活性について約1.5~2IU/mL(150~200%)まで、そして凝固活性について約300~700%まで観察され、したがって発色FVIII活性についてCDラットにおいてわずかに低い値及び凝固FVIII活性についてCDラットにおいてわずかに高い値(実施例1.4における図4B及び図4Cを参照のこと)であり - ヒトのベースラインと異なるこれらの動物におけるベースラインと一致した。
【0285】
【表2】
【0286】
したがって、発色及び凝固活性データは、概して、より高い絶対AUC0-10d値に関連してより高い絶対FVIII濃度を示す凝固活性データと一致していた。FVIII活性に対する効果が、凝固アッセイと比較して発色アッセイにおいてrD’D3-CTP投与後により強かったということに言及するべきである。全ての4つのrD’D3-FP変異体がほぼ匹敵する曝露を示したが、FVIIIに対して最も高い結合親和性を有するrD’D3-FP EYA変異体は、内在性FVIIIに対して最も長くかつ最も高い効果を示した。
【0287】
実施例1.7:FVIII ko、VWF ko及びNMRIマウス、VWF ko及びCDラット及びブタにおけるrD’D3-FPの皮下アベイラビリティ、並びにVWF koラット及びブタにおける内在性FVIIIレベルに対するその影響
動物
FVIII koマウス
20~30gの体重範囲の雄性及び雌性FVIII koマウスをCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)で飼育した。群サイズはn=12であり、4つのコホートに分けた。したがって、時点あたりn=3匹の動物を使用した。
【0288】
VWF koマウス
25~40gの体重範囲の雄性及び雌性VWF koマウスをCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)で飼育した。群サイズはn=12であり、4つのコホートに分けた。したがって時点あたりn=3匹のマウスを使用した。
【0289】
NMRIマウス
27~34gの体重範囲の雌性NMRIマウスをCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)で飼育した。群サイズはn=12であり、4つのコホートに分けた。したがって、時点あたりn=3匹の動物を使用した。
【0290】
CDラット
250~302gの体重範囲の雌性ラットCrl:CD (スプラーグドーリー)をCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)で飼育した。群サイズはn=6であり、2つのコホートに分けた。したがって、時点あたりn=3匹の動物を使用した。
【0291】
VWF koラット
222~559gの体重範囲の雄性及び雌性VWF koラットをCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)で飼育した。群サイズはn=4であった。
【0292】
社内では、マウス及びラットを、標準的な飼育条件、すなわち20~24℃にて12時間/12時間明-暗サイクル下に維持した。動物に標準的マウス及びラット食餌(Ssniff-Versuchsdiaeten、Soest、Germany)を自由に与えた。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
【0293】
ブタ
ヒトについてのその予測因子に関して皮下バイオアベイラビリティの良好なモデルを表すのでブタを選択した。群サイズは2(静脈内)又は3(皮下)であった。
【0294】
23~27kgの体重範囲の雄性ブタをSchlosser (Schwalmtal、Germany)で飼育した。社内では、動物を家畜小屋でわら上にて18~21℃に維持した。動物に損傷した穀物(bruised grain)を与えた。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
【0295】
実験詳細
FVIII ko、VWF ko及びNMRIマウス
試験品を、総体積5mL/kgで外側尾静脈への単回注射により静脈内投与、又は総体積5mL/kgで頸部への単回注射により皮下投与した。血液サンプルを短期間麻酔下で交互サンプリングスキームを使用して投与の3、8、16、24、32、48、72及び96時間後に後眼窩で採取し、そしてさらに投与5分後に静脈内で採取した。
血液サンプルをクエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)で抗凝固処理し、処理して血漿とし、そして-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用してタンパク質のアルブミン部分の測定により決定した。
【0296】
VWF koラット
試験品を、総体積3mL/kgで外側尾静脈への単回注射により静脈投与、又は総体積2mL/kgで側腹部の片側に単回注射により皮下投与した。
皮下群からの血液サンプルを、投薬前、投薬の4、24、48、72、96及び168時間後に各動物から、そして投薬前、投薬の1、24、48、72、120、192、240及び336時間後に静脈内群から伏在静脈から採取した。
血液サンプルを、クエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そして-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用するタンパク質のアルブミン部分の測定により決定した。さらに、FVIII発色活性を測定した。
【0297】
CDラット
試験品を、総体積3mL/kgで外側尾静脈への単回注射により静脈投与、又は総体積3mL/kgで腹側部の片側に単回注射により皮下投与した。
血液サンプルを、後眼窩で短期間麻酔下にて交互サンプリングスキームを使用して投与の3、8、24、48、72及び96時間後に、そしてさらに投与の5分後に静脈内で採取した。
血液サンプルを、クエン酸ナトリウム(2部クエン酸ナトリウム3.13%+8部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そして-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用したタンパク質のアルブミン部分の測定により決定した。
【0298】
ブタ
試験品を、0.211~0.751mL/kgの範囲に及ぶ総体積で単回注射により、側腹部に皮下投与又は耳静脈に静脈内投与した。
血液サンプルを耳又は伏在静脈から採取した。10mg/kg rD’D3-FP皮下群において時点は、投薬前、投薬の3、12、24、32、48、72、96、120、144及び168時間後であり、そして静脈内群では投薬前、投薬の5分、3、12、24、32、48、72、96、120、144及び168時間後であった。3mg/kg rD’D3-FP皮下群における時点は、投薬前、投薬の1、3、12、24、48、72、96、120、144、168、192、216、240及び264時間後であった。
PKプロフィールを個々の動物から取った。血液サンプルをクエン酸ナトリウム(1部クエン酸ナトリウム3.13%+9部血液)を使用して抗凝固処理し、処理して血漿とし、そして-70℃でFVIII抗原及びアルブミンの決定のために保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用したタンパク質のアルブミン部分の測定により決定した。さらに、FVIII発色活性を測定した。
【0299】
一般
rD’D3-FPを、ヒトアルブミン値に基づいて3、3.5又は10mg/kgの用量レベルで適用した。マウスにおいて、いくつかの群において、rVIII-単鎖を100又は200IU/kgの用量で同時投与した。PKプロフィールを、それぞれ群あたりマウスの4つのコホート若しくはラットの2つのコホートから、又は個々のブタから取った。
0から無限大までの曲線下面積(AUC)の計算をMATLAB R2017a(Natick、Massachusetts、USA)で行った。
【0300】
結果
rD’D3-FPをヒトアルブミンに対してELISAを使用して定量し、そして測定をマウスにおいて投与4日後まで、そしてラット及びブタにおいて投与14日後まで行った。全ての測定されたデータは観察期間全体にわたって検出限界より十分高かった(図7A)。
図7A-1は、様々なマウス系統におけるrD’D3-FPのPKプロフィールを示し、rFVIII同時投与の視覚的な影響はなかった。全3つの系統における曲線はほぼ同様であったが、それにもかかわらずNMRIマウスでは、曝露はFVIII ko又はVWF ko動物よりも急速に減少した。
rD’D3-FPのAUC0-inf及び得られたバイオアベイラビリティを表3にまとめる。FVIII koマウスにおいて、rVIII-単鎖を伴うか又は伴わないrD’D3-FPの静脈内投与は、rD’D3-FPの AUC0-infに対して影響を有していないということが示された(FVIIIを100%に設定 -> FVIII無しは89%と算出された)。したがって、この実験においてrD’D3-FP PKプロフィールに対するrVIII-単鎖の関連効果はなかった。様々な系統におけるAUC0-infの比較は、3つの系統間に主要な差異を示さず、順位はVWF ko動物(1197 h*μg/mL)より高いFVIII ko(1590 h*μg/mL)から、再びNMRI動物におけるわずかに低いAUC0-inf(940 h*μg/mL)であった。
【0301】
ラットにおけるPKプロフィールを図7A-2に示し、これはCD及びVWF koラットにおける皮下及び静脈内投与後のrD’D3-FPの同程度のクリアランスを示唆する。それにもかかわらず、皮下アベイラビリティは、CDラットと比較してVWF koラットにおいて最も低かった。図7A-3はブタにおけるPKプロフィールを示し、最も遅い2日目の後に同じ用量で同程度の曝露を示唆し、そしてrD’D3-FPのPKプロフィールに対するrVIII-単鎖からの影響はなかった。
【0302】
表4は種にわたるrD’D3-FPのバイオアベイラビリティをまとめる。ラットにおいて、バイオアベイラビリティの計算のためのAUC0-inf(CDラット)及びAUC0-inf(VWF koラット)の評価は、それぞれ40%及び11%の値を示し、すなわちVWF ko動物と比較してFVIII-形質転換受容性ラットにおいてより良好なバイオアベイラビリティが見られた。これは、マウスAUC0-inf inf評価における観察と対照的であり、VWF ko及びNMRI動物からのほぼ同程度のデータを示唆した。仮にそうであるとしても、VWF koマウスは、NMRIマウスと比較してより良好なAUC0-infを有するだろう。ブタにおいて、rD’D3-FPのAUC0-infは59~187%の範囲に及んだ。これらをもとに種にわたって比較すると、ブタは最も高いrD’D3-FPバイオアベイラビリティを示した。
【0303】
【表3】
【0304】
【表4】
【0305】
内在性FVIII発色活性は、静脈内(以前の実施例1.1~1.5を参照のこと)だけでなく、皮下rD’D-FP投与後も増加した(図7B)。
【0306】
図7B-1は、ラットにおいて、値が増加して1日目(3mg/kg i.v.)又は4日目(10mg/kg s.c.)に最大となることを示す。これにより、静脈内rD’D3-FP投与と比較した(rD’D3-FP用量と独立して)皮下投与後のFVIII AUC0-infに対する効果の減少を17%(発色)及び14%(凝固)活性と算出した。このわずかであるが、それにもかかわらず関連した内在性FVIII活性の増加が、静脈内、さらには皮下処置について観察され(主に約0.5~1IU/mL又は50~100%の範囲に及ぶ)、したがってCDラットにおいて達成されたレベルをわずかに下回る範囲に及んだ(図4Bを比較のこと)。
【0307】
ブタにおいて(図7B-2)、FVIII発色活性の増加がrD’D3-FPの皮下投与の約1日後に観察された。この効果は11日の期間全体にわたって続いた。この増加は、最大で投薬前の値の2倍であり(約10IU/mL=1000%への約5IU/mL又は500%の最大増加 - ヒトと比較してこれらの動物におけるより高いベースライン値と一致しており、すなわち、FVIII形質転換受容性動物への静脈内化合物投与後の小さな効果と一致していた。
したがって、これらのデータは、rD’D3-FPを用いた処置が静脈内を使用するだけでなく皮下化合物投与を使用しても行われ得るということを示唆する。
【0308】
実施例1.8:VWF koラットにおける内在性FVIIIレベルに対するrD’D3-FPの複数回静脈内投薬の影響
動物
281~504gの体重範囲の雄性及び雌性VWF koラットをCharles River Laboratories(Sulzfeld、Germany)で飼育した。群サイズはn=11であり、4つのコホートに分けた。したがって、時点あたりn=2~3匹の動物を使用した。
社内では、動物を標準的飼育条件、すなわち20~24℃で12時間/12時間明-暗サイクルに維持した。動物に標準的マウス及びラット食餌を自由に与えた(Ssniff-Versuchsdiaeten、Soest、Germany)。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
【0309】
実験詳細
試験品を、0日目(コホート1)、0+7日目(コホート2)、0+7+14+21日目(コホート3)又は0+7+14日目(コホート4)に総体積3mL/kgで外側尾静脈への複数回注射により静脈内投与した。動物あたり2つの血液サンプルをコホートに特定の時点に短期間麻酔下で後眼窩で採取した(コホート1:投薬前+投与7日後、コホート2:投与3+10日後、コホート3:投与17+24日後、コホート:投与14+21日後)。
rD’D3-FPを、ヒトアルブミン値に基づいて3mg/kgの用量レベルで適用した。PKプロフィールをVWF koラットの4つのコホートから取った。血液サンプルをクエン酸ナトリウム(2部クエン酸ナトリウム3.13%+8部血液)を用いて抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてアルブミンの決定のために-70℃で保存した。
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用して構築物のアルブミン部分の測定により決定した。さらに、FVIII発色及び凝固活性並びにPathromtin(R)SLを使用してaPTTを測定した。
【0310】
結果
rD’D3-FPをヒトアルブミンに対するELISAを使用して定量し、そして測定を24日目まで行った。全ての測定されたデータは観察期間全体にわたって検出限界より十分高かった(図8A)。4回の投与で、ピーク(151%まで)さらにはトラフ(128%まで)レベルにおいてわずかな蓄積が観察された。
FVIII発色(図8B)活性レベルは、2回目の投与後に検出限界未満の値から検出限界まで、CDラットにおいて観察された範囲に増加した(約1.8IU/mL=180%への最大増加)。FVIII凝固活性(図8C)は、CDラットにおいて測定されたデータよりなおわずかに高かった(約800%への最大増加 - ヒトと比較してこれらの動物におけるより高いベースラインと一致)。それにもかかわらず、4週間の期間にわたって2つのFVIII活性アッセイについて蓄積は見られなかった。
これと一致して、aPTTはCDラットからの正常値の上からCDラットの正常範囲より低い範囲の値まで減少した(図8D)。
これらをもとに、これらのデータは、rD’D3-FPを用いた複数回処置はrD’D3-FPのわずかな蓄積とともに行われ得るが、FVIIIレベルの蓄積もaPTTの正常化もないということを示唆する。
【0311】
実施例1.9:血友病Aモデル、すなわちFVIII koラットにおいて皮下投与されたrD’D3-FP及び静脈内投与されたrVIII-単鎖の調査
動物
220~487gの体重範囲の雄性及び雌性FVIII koラットをCharles River Laboratories (Sulzfeld、Germany)で飼育した。群サイズはn=6であり、2つのコホートに分けた。したがって、時点あたりn=3匹の動物を使用した。
社内では、動物を標準的飼育条件、すなわち20~24℃で12時間/12時間明-暗サイクル下で維持した。動物に標準的マウス及びラット食餌(Ssniff-Versuchsdiaeten、Soest、Germany)を自由に与えた。水道水を自由に供給した。動物畜産及び研究手順は独国動物福祉法及び欧州連合規則を順守した。
【0312】
実験詳細
試験品を、総体積3mL/kgで単回注射により、FVIII koラットの頸部に皮下投与(rD’D3-FP)又は外側尾静脈に静脈内投与(rVIII-単鎖)した。D’D3-FPを、ヒトアルブミン値に基づいて3mg/kgの用量で、rVIII-単鎖の10分前に適用した。動物を、rVIII-単鎖で200IU/kg発色FVIII活性の用量で静脈内処置した。rVIII-単鎖を注射用水で再構成し、そしてrD’D3-FPを水浴で解凍した。全ての場合に、用量体積3mL/kgを投与し、FVIII(rVIII-単鎖)について希釈緩衝液又は等張性食塩水(rD’D3-FP)を必要な場合に化合物の溶解のために使用した。
【0313】
血液サンプルを尾静脈のカニューレ挿入により採取した。群における時点は、投与の0.083、1、4、8、16、24、32、48及び72時間後であった。PKプロフィールを群あたりラットの2つのコホート、及び時点あたりn=3から取った。血液サンプルを、クエン酸ナトリウム(2部クエン酸ナトリウム3.13%+8部血液)を用いて抗凝固処理し、処理して血漿とし、そしてFVIII活性及びFVIII抗原の決定のために-70℃で保存した。
【0314】
rD’D3-FP曝露を、ヒトアルブミンELISAを使用した構築物のアルブミン部分の測定により決定した。さらに、FVIII発色活性及びヒトFVIII抗原を測定した。
【0315】
最大濃度(Cmax)、t=0からt=∞までの濃度対時間曲線下面積(AUC0-inf)、平均滞留時間(MRT)、クリアランス(CL)及び終末期半減期(t1/2)の推定を、静脈内計算における2コンパートメントモデル、及び皮下計算における2コンパートメント吸収モデルにより行った。パラメーター推定のために、重み付き最小2乗コスト関数を適用した。バイオアベイラビリティを、静脈内投与と比較した皮下投与後のAUC0-infのパーセンテージとして計算した。1、5及び10%トラフレベルまでの時間を、0.01、0.05又は0.1IU/mLに等しいモデル等式を設定し、時間について解くことにより計算した。
【0316】
結果
D’D3データの評価
rD’D3-FPは皮下投与後吸収された。rD’D3-FPを、72時間の観察期間全体にわたって定量することができ;すなわち、検出限界27ng/mLより高いままであった(図9A)。
max、AUC0-inf、クリアランス、MRT及びt1/2を表5に示し、そしてこれらは皮下投与後の時間にわたるrD’D3-FPの関連する曝露を裏付ける。
【0317】
【表5】
【0318】
FVIIIデータの評価
rD’D3-FPの皮下前投与後のrVIII-単鎖のFVIII PKプロフィールは、FVIII発色活性(図9B)さらにはFVIII抗原(図9C)について単独で投与されたrVIII-単鎖と比較して延長された。
【0319】
FVIII発色活性(図9B)は、rD’D3-FPが前投与された場合に投与72時間後の最後の時点まで検出限界より十分高かったが、これはFVIIIが単独で投与された場合は72時間目にベースラインに達した。視覚的に、曝露は投与の32時間後に始まってrD’D3-FPの皮下前投与で改善された。
【0320】
同様の観察がFVIII:Agについて行われたが(図9C)、曝露はすでに投与24時間後に始まってrD’D3-FPの前投与で改善され、そして単独で投与されたFVIIIで投与48時間後にすでにベースラインに達し、おそらく測定された濃度のより低い変動性に関連する。
【0321】
rD’D3-FPの前投薬(Predosing)は、FVIII発色活性及びFVIII.Agの両方についてクリアランス、MRT及びt1/2を改善した。
【0322】
AUC0-infは、FVIII発色活性を41%(表6)、そしてFVIII:Agについて49%(表8)改善した。Cmaxは、FVIII発色活性について30%、そしてFVIII:Agについて23%改善した(それぞれ表6及び8)。
【0323】
トラフまでの時間を、発色活性について(表7)及びFVIII:Agについて(表9)rD’D3-FPを用いるか又は用いない両方の投与スキームについて計算した。AUC0-infについては、rD’D3-FPの前投薬もまた発色活性さらにはFVIII抗原について有利なトラフを示した。それぞれ発色FVIII活性及びFVIII:Agについて、延長は、1%トラフについて6%及び18%であり、そして5%トラフについて9%及び19%であり、そして10%トラフについて8%及び18%であった。
【0324】
【表6】
【0325】
【表7】
【0326】
【表8】
【0327】
【表9】
【0328】
インビボ動物実験からの結論
これらの研究は、rD’D3-FPの静脈内又は皮下投与が、健常なラット、ウサギ、ブタ及びサルにおけるFVIIIの内在性レベルを増加し、これらの動物における既存の生理的FVIIIレベルさえも増加するということを実証する。投薬前の値はほとんど超えなかったが、それによりaPTTのわずかな短縮しか観察されないか又は短縮は見られなかった。
【0329】
血友病A出血型を示す動物(VWF koラット又はVWF koマウス、関連して減少したFVIII活性レベルを有する)において、この内在性FVIII活性の増加は健常動物におけるよりも強く、絶対FVIIIレベルは健常マウス及びラットのレベルにほぼ等しいかより高いレベルまで増加した。これらの動物において、生理的レベルは回復したか(生理的変動性の上端内のレベル、例えばVWF koラットにおける1及び3mg/kg rD’D3-FPの投与後の標準発色FVIII活性の200~300%まで - ヒトと比較してこれらの動物におけるより高いベースライン値と一致)、又は生理的範囲を超えた(例えばVWF koラットにおける10mg/kg rD’D3-FPの投与後の標準発色FVIII活性の≧400%)。ヒトと比較して発色FVIII活性に関してより低いベースライン値を有する例としてVWF koマウスにおいて、10mg/kg rD’D3-FPの用量で標準の約40%に達し、すなわち健常NMRIマウスにおいて観察されたレベルの<2倍高い増加。これは、初期に減少したFVIIIレベルを有する個体、すなわち血友病A表現型において、FVIII上昇効果は、健常被験体よりも潜在的に強くなり得る。
【0330】
同様の効果が、rD’D3-FP EYA若しくはEY変異体の同時投与により、又はrD’D3-CTPにより達成された。
【0331】
VWF koラットにおけるrD’D3-FPの複数回用量は、rD’D3-FPの経時的なわずかな蓄積をもたらしたが、FVIII活性は、生理的レベルに達したか(発色活性)又は生理的レベルをわずかに超えて(凝固活性)、そしてaPTTは正常値に回復した。
【0332】
理論に束縛されることは望まないが、これは、VWF koラット及びマウスと比較して、生理的FVIIIレベルを有する健常動物におけるFVIII合成の生理的下方調節により説明され得る。したがって、ヒト血友病A患者におけるFVIIIに対する効果は、VWF koラット及びマウスにおいて観察されたものと同程度であるはずであり、したがって、長期間持続する生理的レベルを達成するはずであるということが推測され得る。これらの効果は静脈内及び皮下投与後に示された。rD’D3-FPのさらなるバイオアベイラビリティは、種及び遺伝子型に依存して11~187%の範囲に及び、最も高い値は、皮下バイオアベイラビリティについて十分に予測可能なモデルであることが知られているブタにおいて達成された。それにより、これらのデータは、皮下処置も実行可能であるということを示唆する。
【0333】
実施例2:VWFフラグメントダイマー及びモノマーに対するFVIII親和性の決定
VWFフラグメント(1~1242)アルブミン融合物(D’D3-FP)をバイオリアクターで発現させた;上記のように精製してモノマー及びダイマーを単離した後、これらの調製物に対するFVIIIの親和性を、Biacore機器(T200、GE Healthcare)により表面プラズモン共鳴により評価した。
【0334】
抗アルブミン抗体(MA1-20124、Thermo Scientific)を、NHS (N-ヒドロキシスクシンイミド)及びEDC (エタノールアミン塩酸塩)(両方共GE Healthcareからのアミンカップリングキットに含まれる(BR1000-50))によりそのN末端を介して活性化CM 3チップに共有結合でカップリングした。固定のために、抗体3μg/mLを酢酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH 5.0)で希釈し、そして抗体溶液をチップ上に10μL/分の流量で7分間流した。固定化手順の後に、未カップリングデキストランフィラメントを、エタノールアミン溶液(1M、pH8.3)をチップ上に5分間流すことにより(流量10μL/分)飽和させた。フローセルを飽和させる目的は、チップへの検体の非特異的結合を最小にするためであった。参照フローセルを、空のフローセルを上記と同じ手順を使用することによりエタノールアミンで飽和させることにより設定した。
【0335】
それぞれダイマー及びモノマーD’D3-FPタンパク質を、チップ上にD’D3-FPタンパク質(5μg/mL)を3分間(流量10μL/分)流すことにより抗アルブミン抗体に共有結合でカップリングして固定した。
【0336】
FVIIIについての結合曲線を作成するために、各D’D3-FPタンパク質調整物をランニングバッファ(HBS-P+:0.1M HEPES、1.5M NaCl及び0.5%体積/体積Surfactant P20、pH7.4;製品コードBR100671、GE Healthcare)で濃度0.25nM、0.5nM、1nM、3nM及び4nMに希釈した。単一サイクル動力学(single cycle kinetic)を行うために、上昇する濃度の各希釈を有するサンプルを、チップ上に2分間流し(流量30μL/分)、ランニングバッファHBS-P+を用いた10分間の解離時間がそれに続いた。全ての測定を2回行った。測定手順についての温度を+25℃に調節した。
【0337】
結合パラメーターをBiaEvaluationソフトウェアを使用して計算した。曲線フィッティング方法はラングミュアの式に基づくものであった。計算用の入力データは、検体FVIII(rVIII-単鎖)のモル質量170kDaであり、max.RU及び勾配のような他のパラメーターは、フィッティングされた結合及び解離曲線から自動的に抽出された。BiaEvaluationソフトウェアの出力は結合速度定数及び解離速度定数であり、これらから親和性定数が計算される。結果を表10に示す。
【0338】
【表10】
【0339】
ダイマーD’D3-FPは、rVIII-単鎖のより早い結合及びより遅い解離を示したD’D3-FPモノマー(KD=30nM)と比較して、FVIIIに対して有意に(KD=34pM)増加した親和性を示す。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
【配列表】
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