(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】資源同化及び最適化による電力分配制御
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230329BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230329BHJP
H02J 3/28 20060101ALI20230329BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J3/38 130
H02J3/28
H02J3/32
H02J3/38 110
(21)【出願番号】P 2019564813
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 GB2018051423
(87)【国際公開番号】W WO2018215785
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-20
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517049389
【氏名又は名称】オリガミ エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボタ ソリン
(72)【発明者】
【氏名】バーストール オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ルルーシュ ジェルズィ
(72)【発明者】
【氏名】ストーキー マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター ウィリアム
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0124002(US,A1)
【文献】特開2008-067469(JP,A)
【文献】特表2014-535253(JP,A)
【文献】特表2014-514638(JP,A)
【文献】特開2016-146719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 13/00
G06Q 10/04
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力グリッドに接続された電力資源の振る舞いを表現する資源モデルを保持するサーバを有する電力制御システムであって、各資源モデルは、その電力資源とリアルタイム通信をすることで前記電力資源の状態を動的に知り、
電力資源に、機能を実行するよう前記資源に要求するコマンドを発行することによってテストを実行するための、前記サーバにおける手段と、
リアルタイムの物理パラメータを前記資源において測定し、前記物理パラメータを前記サーバに報告する、前記資源におけるセンサと、
前記コマンドの直接の結果として、前記資源が前記コマンドに応答したか、及びもし前記資源が応答したなら、どのような時間にわたって前記資源がどのくらいの電力を前記グリッドから吸収したか又は前記グリッドに放出したかに関して、時間の経過とともにどのように応答したかを、前記資源によって報告された前記パラメータから決定するための、前記サーバにおける手段と、
少なくともエネルギー貯蔵容量、時定数、及び、リカバリー時間であって、その経過後、前記資源が前記テストから回復したリカバリー時間、に関して前記資源のモデルを前記資源の決定された応答に基づいて確立及び更新するための前記サーバにおける手段であって、それによって、前記資源が前記資源の主機能の他に前記グリッドの利益になる機能を提供することを将来割り当てられ得るかどうかを前記サーバが決定し得る、前記サーバにおける手段と
を備える電力制御システム。
【請求項2】
前記コマンドは、オフであるならオンにするコマンド、又はオンであるならオフにするコマンドである
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サーバは、前記テストを異なる遅延で繰り返し、前記資源のリカバリー時間を確立する
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
負荷又は蓄電装置の各モデルは、前記負荷又は蓄電装置の充電エンベロープをモデル化する
請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
蓄電装置又は電源の各モデルは、前記蓄電装置又は電源の放電エンベロープをモデル化する
請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記サーバは、前記資源が前記サーバからの定められたコマンドに応答する確率を決定するためにテストを繰り返す
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
電力グリッドに接続された電力資源のシステムを制御する方法であって、
選択された電力資源に、前記資源が機能を実行するように要求するコマンドを発行することによって
、前記システムのサーバにおいてテストを実行することと、
前記コマンドの直接の結果として、前記資源が前記コマンドに応答したか、及びもし前記資源が応答したなら、どのような時間にわたって前記資源がどのくらいの電力を前記グリッドから吸収したか又は前記グリッドに放出したかに関して、時間の経過とともにどのように応答したかを、前記選択された資源において測定されたリアルタイムの物理パラメータに基づいて
、前記サーバにおいて決定することと、
少なくともエネルギー貯蔵容量、時定数、及び、リカバリー時間であって、その経過後、前記資源が前記テストから回復したリカバリー時間、に関して前記選択された資源のモデルを前記資源の決定された応答に基づいて
、前記サーバにおいて確立及び更新することであって、それによって、前記資源が前記資源の主機能の他に前記グリッドの利益になる機能を提供することを将来割り当てられ得るかどうかを前記サーバが決定し得る、確立及び更新することと、
そのように確立されたモデルに基づいて、前記電力資源の中から、前記機能を提供することを割り当てられ得る選択された電力資源に将来のコマンドを発行することと
を備える、電力資源のシステムを制御する方法。
【請求項8】
グリッドに接続された電力資源のセットを制御するための電力制御システムであって、
サーバと複数の電力資源とを備え、前記電力資源は前記サーバに接続されており、
各電力資源は、前記資源の主機能に従ってローカル制御ループの下で前記資源を制御するためのローカルコントローラを有し、前記サーバによって制御されるサービスモデルプロセスに従ってその動作に影響を与えるように命ずる命令を前記サーバから受信するように構成され、定められたサービスモデルプロセスは、前記サーバによってモデル化され制御されるグリッドレベルプロセスであり、かつ、そのプロセスに参加するいかなる電力資源の主機能に対しても二次的であり、前記サーバは、
(i)電力資源の振る舞いを表現する資源モデルであって、少なくともエネルギー貯蔵容量に関して各電力資源をモデル化し、各資源モデルは、その電力資源とリアルタイム通信をすることで前記電力資源の状態を動的に知り、各モデルはその電力資源のリカバリー時間を含み、前記リカバリー時間は遅延であって、その遅延の後に前記電力資源が、電力を前記グリッドから吸収する又は電力を前記グリッドへ放出するように命ずる命令をグリッドプロセスに従っていったん受信すると、再び電力の吸収又は放出をそれぞれ行うことによってそのようなグリッド命令に再び応答できる状況になる遅延、である、資源モデル、
(ii)それぞれが異なる電力資源に関係し得るグリッドレベルプロセスを表現する複数のグリッドサービスモデル、
(iii)電力資源を、それらの電力資源によって少なくとも部分的に遂行され得るグリッドレベルプロセスのためのグリッドサービスモデルにマッピングするマッピング、及び前記グリッドサービスモデルによってモデル化されたグリッドレベルプロセスを遂行する電力資源の最適選択を決定するためのオプティマイザ、並びに、
前記グリッドレベルプロセスを遂行することを試みるように命ずる命令を前記選択された電力資源に伝達する手段
を保持する電力制御システム。
【請求項9】
複数のグリッドサービスモデルが存在し、そのうちの少なくともいくつかは複数の資源に関係し、定められた資源は1つ以上のグリッドサービスモデルに同時に参加し得る
請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記グリッドサービスモデルのうちの少なくともいくつかは直交する目的群を有し、2つの目的は、もし両方のグリッドサービスモデルに割り当てられた資源がいずれの目的も妥協することなく両方の目的に同時に寄与できるなら、直交する
請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記直交する目的は、
(i)電力の需要をタイムシフトすること、
(ii)資源を電圧又は周波数の変化に応答できるようにすること、及び、
(iii)資源若しくはグリッド機器の寿命を延ばすこと、又は熱損失によって浪費される電力を減少させること
を含む請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記オプティマイザは、将来にわたる共通の時間の経過とともに行われる全てのグリッドサービスモデルの動作をモデル化する
請求項
8~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記オプティマイザは、時間の経過とともに行われる各電力資源の動作、並びに、時間及び他の次元における前記電力資源の将来の動作をモデル化し、全てのグリッドサービスモデルにわたる利益を最大化するために、パスサーチ最適化アルゴリズムを行って、電力資源をグリッドサービスモデルに割り当てるための最適パスを見つける
請求項
8~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
最適化パスサーチの実行毎に、前記オプティマイザは、将来の24時間の全てのグリッドサービスモデルの動作をモデル化する
請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
資源であって、その状態のため、定められたグリッドサービスモデルに参加することができない資源を含むパスが除去される
請求項
13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記オプティマイザは、その最適化を、所定の期間の各終了後、再実行する
請求項
13、14又は15に記載のシステム。
【請求項17】
グリッドに接続された電力資源のセットを制御する方法であって、各電力資源は、前記資源の主機能に従ってローカル制御ループの下で前記資源を制御するためのローカルコントローラを有し、サーバによって制御されるサービスモデルプロセスに従ってその動作に影響を与えるように命ずる命令を前記サーバから受信するように構成され、定められたサービスモデルプロセスは、前記サーバによってモデル化され制御されるグリッドレベルプロセスであり、そのプロセスに参加しているいずれの電力資源の主機能に対しても二次的であり、前記方法は、
電力資源の振る舞いを表現する資源モデルであり、少なくともエネルギー貯蔵容量に関して各電力資源をモデル化し、各資源モデルはその電力資源とリアルタイム通信をすることで前記電力資源の状態を動的に知り、各資源モデルはその電力資源のリカバリー時間を含み、前記リカバリー時間は遅延であって、その遅延の後に前記電力資源が、電力を前記グリッドから吸収する又は電力を前記グリッドへ放出するように命ずる命令をグリッドプロセスに従っていったん受信すると、再び電力の吸収又は放出をそれぞれ行うことによってそのようなグリッド命令に再び応答できる状況になる遅延、である資源モデル、を前記サーバに保持することと、
それぞれが異なる電力資源に関係し得るグリッドレベルプロセスを表現する複数のグリッドサービスモデル、及び、電力資源の、それらの資源によって少なくとも部分的に遂行され得るグリッドレベルプロセスのグリッドサービスモデルへのマッピングを保持することと、
前記グリッドサービスモデルによってモデル化されたグリッドレベルプロセスを遂行する資源を選択することを含む、電力資源の最適な配置を決定することと、
前記グリッドレベルプロセスを遂行することを試みるように命ずる命令を前記選択された電力資源に伝達することと
を備える電力資源のセットを制御する方法。
【請求項18】
各グリッドレベルプロセスは、前記命令の前記資源による受信から始まる設定された期間にわたって動作し、前記命令は前記設定された期間の間、有効である
請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記最適な配置を決定することは、前記設定された期間の多数倍の長さのサイクルの間、可能性のある配置にわたってサーチを行うことを備える
請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記物理パラメータは電力及び/又は温度の測定値である
請求項1~
6のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には電力制御システムの分野に関し、より具体的には、電力グリッドにおける電力供給及び需要と他の優先事項を能動的に管理するために、資源の電力管理及び他の機能への割り当て、及びそれら資源の制御/振る舞いを最適化するシステム、方法、及び装置の実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願WO2016/027041は、電力源、蓄電装置、及び応答性負荷から選択された少なくとも2つの異なる電力資源を備える電力資源のストリングを有する電力分配制御システムを記載する。それぞれの資源は、関連付けられたローカルルータを有する。この資源及び関連付けられたルータは、中央サーバと通信し、それらの間の電力移転の時間及び量を協議することによって、サーバの高レベルの目標を達成するよう試みる。電力資源に関連するパラメータは、データベース内に記憶される。サーバにおける制御システムは、需要及び供給の未来のピークのような、グリッド中の未来の活動を予想する。電力資源群は、ピアツーピアでそれらの間で通信し、グリッド中のイベントに応答してそれらの集合的な振る舞いを変更するそれらの能力をサーバに対して集合的に確約する。
【0003】
グリッド内のイベントに対する応答性は、サービスの一例である。ローカルレベルで主機能を果たすこと、例えば、ビルに暖房又は冷房を提供すること、又は物を冷蔵すること、又は電力を発生すること(再生可能な又はその他の)又はエネルギーを貯蔵することと同時に、資源は、単独で又は他の資源と組み合わせて、サービスをグリッドに提供でき、ここではなんらかの副機能がグリッドのレベルにおいて提供される。応答性負荷の提供は、そのようなサービスの一例である。
【0004】
よって、資源は、ローカル機能であり、その主機能に参加し得て、ここではローカル制御の下で動作し、典型的にはローカル制御ループ内で動作し、このループは、設定値を有することで、当該資源が駆動され(オン及びオフ又はアップ又はダウン)、設定値を追従するが、その一方で同時に、副機能にも参加し得て、この副機能は、グリッド機能つまりワイドエリア機能であり、ここでその動作は、サーバにおける制御システムによって影響される、例えば設定値の追従のタイミングに影響を与えたりすることによって、又は設定値を移動することによって、影響される(主機能を根本的に損なったり、又は不当に損なったりしないという制限内で)。副機能は、ここでは「サービス」と呼ばれる。サーバにおけるそのサービスのモデリングは、「サービスモデル」である。
【0005】
GB1515911.4は、ローカルサーモスタットに応答するローカル制御ループによって制御される冷蔵負荷を用いる応答性負荷システムを記載する。サーバは、応答性負荷の動作に介入し得る。これは、個別の冷蔵負荷のローカル制御ループをオーバーライドすることを含み得る。冷蔵装置の動作閾値が越えられない限り、つまり違反しない限り、すなわち、温度が所定の最大値及び最小値の間の範囲内に維持されている限り、システムは、電力グリッドにおける電力変動に対して高い応答性を示す点で、コスト削減につながり得る応答性冷蔵装置バンクを提供する。追加として、サーバは、冷蔵装置のコンプレッサの振る舞いを計画及び変更し得る。
【0006】
応答性負荷は、非常に短い予告において応答性を有し得て(例えばグリッド電位及び/又は周波数のローカルに測定された降下に対して)、又はよりゆっくりと(例えばソーラーファームを遮断する又は露出させる雲の層)又は予定したやり方で(例えば日中の期間の間、ソーラーファームから電力を吸収するのに利用可能である)変化するイベントに対して応答性を有し得る。これら例のそれぞれがサービスを代表する。
【0007】
より具体的には、サービスは、特にグリッド運用者に対する(ただしひょっとするとそのグリッドに接続された資源の所有者に対する)、ある種の物理的な電力サービスの提供であり、これは、電力を負荷に提供するという主機能におけるグリッドの基本動作に追加をする。サービスは、一般的には、電力ベースのサービス、エネルギーベースのサービス、及び信頼性ベースのサービスのカテゴリに分類される。
【0008】
資源は、応答性又は計画性であるサービスに寄与し得る。例えば、グリッド内でのエネルギーの浪費を避けることは、サービスであると考えられ得る。同様に、グリッド内の資源による発電、高調波を最小化することによって、グリッドの変電所の寿命を伸ばすことは、サービスだと考えられ得る。資源は、その主機能(平滑な正弦波で工場内の機械を駆動したり、発電したりすること)を実行しなければならないが、資源は、サーバによって低高調波の方法でそうすることをガイドされ得て、その副機能は、グリッドの運用に利益をもたらす(なぜならそれは、変電所における熱発生を低減し、それによって浪費を避け、また変電所の寿命を伸ばすからである)。
【0009】
Aris Dimeasらの2013年12月26日刊行の「Microgrids Control Issues」は、ローカルコントローラ(MC)が、マイクロソースの運用コスト関数、分散発電(DG)ユニットの所有者によって要求される利益率、及びマイクログリッド中央コントローラ(MGCC)によって提供される外部市場の価格を考慮するマイクログリッドを記載する。MGCCは、外部市場価格、DGソースによって受け取られるビッド、及び予想された負荷に従ってマイクログリッド運用を「最適化」すると言われる。それは、コミットされるべき、そしてもしあてはまるならその発電レベルを決定すべきDGソースのMCに信号を送る。エネルギーの価格を制御することによる需要及び供給のバランスの制御は、この文献で広範に説明されている。ビッド/オファーシステムにおいて、資源は、ビッド価格において参加することをオファーするか、又はオファー価格において参加する。同意された価格において、資源は、その主機能を実行する(それは暖房又は冷房又は発電又は蓄電を実行する)。
【0010】
同様に、US2014/0018969は、グリッド運用者による制御のための報告するインフラストラクチャを提案し、電力グリッドに利用可能な電力の管理のための「能動供給クライアント」を提案し、ここで、発電ソース供給要素によるか、又は蓄電ソース供給要素(電池、燃料電池、圧縮空気、貯蔵された水等のような)によるかは問わず、発電のバランスをとって、蓄電装置が再生可能エネルギー源を安定化及び調節することを目的とし、又はコスト、タイミング、価格、市場状況等のようなさまざまな要素に従って最適化することを目的とする。
【0011】
エネルギーの価格(及び予想価格)に従ったマイクログリッド運用の最適化は、複雑なシステムにおいて1つのパラメータに単に最適化することに過ぎない。エネルギーを発生させ消費することが、多くの他の可能なサービスの中の2つのサービスにすぎないということを考えれば、そのような複雑さは、何倍にも、多くの次元において(in many dimensions)増加し得る。
【0012】
さらに、与えられた資源は、1つより多いサービスを提供することに参加し得る(1つより多いサービスモデルで運用する)。サービスの即時の提供は、資源が未来の時点でサービスモデルに参加することを妨げ得る(その逆も成り立つ)。サービスモデルに参加する予定である資源は、そうすることを止めるかもしれない(状況の変化のために、又は異なるサービスへの参加による応答性のために)。
【0013】
サービスの提供の最適化の問題は、期間(例えば1日又は1時間又は半時間)に細分化され得る。最適化の粒状性が細かくなるほど、潜在的な利益は大きくなるが、それとともに、計算負荷も大きくなる。もし問題が小さな(例えば半時間)増分に分割されるなら、どんな最適化アルゴリズムでもその計算を時間増分よりも十分に短い時間内で完了できることが重要である。そうでなければ、次の時間増分の前に、資源のサービスモデルへの最適な割り当てを展開し、それら資源にそれらサービスを提供させるのには不十分な時間しか存在しないことになる。時間は、クライアント-サーバ報告及び制御準備におけるレイテンシのためにも考慮されなければならない。
【発明の概要】
【0014】
資源の振る舞いを表現する資源モデルを保持するサーバを有する電力制御システムであって、各資源モデルは、その資源とリアルタイム通信をすることで資源の状態を前記モデルに動的に知らせる電力制御システムが、提供される。機能を実行するよう資源に要求するコマンド(要求)を前記資源に発行することによってテストが実行される。前記資源におけるセンサは、物理パラメータを前記資源において測定し、これらを前記サーバに報告する。前記サーバは、前記資源が前記コマンドに応答したか、及びもし前記資源が応答したなら、時間の経過とともにどのように応答したかを決定する。前記サーバは、前記測定された応答に基づいて、少なくともエネルギー容量及び時定数に関して前記資源のモデルを確立(又は更新)する。
【0015】
前記コマンドは、オフであるならオンにすることの前記資源への要求、又はオンであるならオフにすることの要求であり得る。代替として、コマンドは、要求電力レベルを設定することのような、グリッドに関する特定の振る舞いを設定することであり得る。
【0016】
前記サーバは、前記テストを異なる遅延で繰り返して、前記資源のリカバリー時間を確立する-例えば、最初のテストに関する異なる遅延で行う。
【0017】
このようにして、前記サーバは、負荷又は蓄電装置の充電エンベロープ及び蓄電装置又は電源の放電エンベロープをモデル化し得る。
【0018】
前記サーバは、前記資源が前記サーバからの定められたコマンドに応答する確率を決定するためにテストを繰り返し得る。
【0019】
前記選択された資源に、設定された期間、例えば直後に続く30又は60分間にわたるそれらの振る舞いに影響を与えるために、前記サービスに参加するように命ずる命令を伝達するための手段が提供される。
【0020】
サービスの提供の確率が、前記システムの入力パラメータとして設定され得る。
【0021】
電力分配システムを制御する方法であって、電力資源の振る舞いを表現する資源モデルであり、各資源モデルはその資源とリアルタイムで通信することで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせ、各資源モデルはその資源の可能性のある振る舞いの分布を有する、資源モデルを保持することと、所望のサービスの少なくとも1つのサービスモデル及び前記サービスを遂行する可能性を有する資源を前記サービスモデルにマッピングするマッピングを保持することと、資源のグループの資源の振る舞いの分布を積み重ねることによって、前記サービスを遂行する資源の最適な組合せを探して、組み合わされた資源の振る舞いの全体の確率を決定することと、前記グループの全体の確率に基づいて、前記サービスを遂行する資源を選択することと、前記サービスに参加するように命ずる命令を前記選択された資源に伝送して、設定された期間にわたって資源の振る舞いに影響を与えることと、を備える電力供給システムを制御する方法も提供される。
【0022】
資源を選択することは、設定された確率までそのサービスを遂行する資源を選択することを好ましくは備える。資源を選択することは、前記サービスを提供することが可能な最低限より多くの資源を選択することを好ましくは備える。
【0023】
前記方法は、前記資源のそれぞれとの通信によって、各資源モデルの確率分布をリアルタイムで更新することを、好ましくは含む。これは、先行する期間において、前記サーバからのコマンドに前記資源が応答したか応答しなかったかを決定することによって促進される。これは、確率分布を確立するために多くの期間にわたって多くの回数行われ得る。
【0024】
本発明の他の局面によると、サーバは、資源の振る舞いを表現する資源モデルであって、各資源モデルは、その資源とリアルタイム通信をすることで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせ、各資源モデルはその資源の可能性のある振る舞いの分布を有する、資源モデルを保持する。1つ以上のサーバは、所望のサービスの少なくとも1つのサービスモデルを保持し、前記サービスを遂行する可能性を有する資源を前記サービスモデルにマッピングするマッピングを保持する。オプティマイザは、資源のグループの資源の振る舞いの分布を積み重ねることによって、前記サービスを遂行する資源の最適な組合せを探して、組み合わされた資源の振る舞いの全体の確率を決定し、前記グループの全体の確率に基づいて、前記サービスを遂行する資源を選択する。
【0025】
グリッドに接続された電力資源のセットを制御するための電力制御システムであって、各電力資源は、ローカル制御ループの下で前記資源を制御するためのローカルコントローラを有し、サーバによって制御されるサービスモデルプロセス(すなわち、前記サーバによってモデル化され制御される二次的プロセス)に従って前記資源の動作に影響を与えるように命ずる命令を前記サーバから受信することが可能である、電力制御システムも提供される。前記サーバは、資源の振る舞いを表現する資源モデルであって、各資源モデルは、その資源とリアルタイム通信をすることで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせる、資源モデルを保持する。前記サーバは、異なる電力資源に関係するサービスモデル(すなわち、二次的)プロセスを表現する複数のサービスモデルも保持し、資源を、サービスモデルであって、それぞれがそれらの資源によって遂行され得る二次的プロセスに対応するサービスモデルに、マッピングするマッピングを保持する。どの資源がどの二次的モデルに参加するべきかを決定する(よってどの資源モデルどのサービスモデルに参加するべきかを決定する)ためのオプティマイザが提供される。前記サーバは、前記サービスを遂行することを試みるように命ずる命令を前記選択された資源に送信する。より具体的には、定められた時間に実行するために前記サーバが選んだ各二次的プロセスのために、前記サーバは、最適化の結果として、そのサービスにマッピングされた前記選択された資源に、そのサービスを実現するために、それらの資源に要求する又は影響を与えるように命ずる命令を送信する。
【0026】
前記サーバから資源によって受信された命令は、前記資源のローカル制御ループのローカルな境界条件から逸脱することなく、前記資源の動作に影響を与える。
【0027】
グリッドに接続された電力資源のセットを制御する方法も提供される。前記方法は、資源の振る舞いを表現する資源モデルであり、各資源モデルは、その資源とリアルタイム通信をすることで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせる、資源モデルを前記サーバに保持することと、異なる電力資源に関係するサービスを表現する複数のサービスモデル、及び、資源の、それらの資源によって少なくとも部分的に遂行され得るサービスのサービスモデルへのマッピングを保持することと、前記サービスモデルによってモデル化されたサービスを遂行する資源を選択することを含む、資源の最適な配置(割り当て)を決定することと、前記サービスを遂行することを試みるように命ずる命令を前記選択された資源に伝達することと、を備える。
【0028】
各サービスは、前記命令の前記資源による受信から始まる設定された期間(例えば30分)にわたって提供され得て、前記命令は前記設定された期間の間、有効である。最適な配置を決定するステップは、前記設定された期間の多数倍の長さのサイクル(例えば24時間)の間、可能性のある配置にわたってサーチを行うことを備え得る。
【0029】
最適化を行うステップは、前記最適化の終了及び/又は前記選択された資源への伝達の後、前記資源モデルによって、将来における前記資源の状態を予測することを含む。
【0030】
好ましい実施形態及び例が、図面を参照して、例としてのみこれから説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態によるシステム全体の部分の説明図である。
【
図2A】
図2Aは、24時間の期間にわたって資源の取りうる状態を示す状態遷移図である。
【
図2B】
図2Bは、24時間の期間にわたって資源の取りうる状態を示す状態遷移図である。
【
図2C】
図2Cは、24時間の期間にわたって資源の取りうる状態を示す状態遷移図である。
【
図2D】
図2Dは、24時間の期間にわたって資源の取りうる状態を示す状態遷移図である。
【
図3】
図3は、対応する資源モデルと通信する複数の資源の例を示す。
【
図4】
図4は、説明される方法の一部を実行する、サーバ内のソフトウェアモジュールを示す。
【
図5】
図5は、全体の最大値のための多次元サーチを示す。
【
図6】
図6は、標準化された資源モデルを示すタイミング図である。
【
図7】
図7は、
図4の構成要素の動作を示すタイムラインである。
【
図8】
図8は、資源モデルとその資源との間の通信の例を示すメッセージフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照して、システムが図示されるが、いくつかの個別のサイト、つまり電力資源10,11,及び12が示され、それぞれはエネルギールータ13,14及び15を有する。図示されるように、エネルギールータは、互いにIP接続20及び21によって接続され、サーバ25に接続されている。他のサイト又は電力資源も、ルータがルータ13,14及び15に接続されて、含まれ得る。
【0033】
ある一例において、サイト10は、ソーラーファームのような電力源であり得て、サイト11は、熱負荷(暖房、エアコン、冷蔵、又は他の熱的負荷)のような応答性負荷であり得て、サイト12は、以下に記載される蓄電サイトであり得る。以下、「資源」という語は、グリッドに接続され、グリッドから電力を引き出し、又はグリッドに電力を供給し、又はそれらの両方を行い、サーバ25による独立した制御又は影響(直接又は間接)のためにサーバ25(又はサーバ群のうちの1つ)と通信するルータを有する電力資源(負荷、ソース、又は貯蔵)を表す。
【0034】
資源のさらなるストリングつまりクラスタがIPネットワーク26を介してサーバ25に接続されてもよい。「ストリング」は、単純に、サーバによって決定されたあるサービスを実現するためにサーバ25によって論理的にグループ分けされた資源群のグループであり、個別の資源の個別の目的を独立して達成することも行う。「クラスタ」もサーバ25によって論理的にグループ分けされた資源群のグループであり、これは、サーバ25によって予測又はモデル化されたやり方で集合的に振る舞うよう予想される(実際にはそう振る舞わないかもしれないが)。ストリング30は、例えば、資源群の均衡化されたストリング(balanced string)であり得て、クラスタ31及び32は、例えば応答性負荷であり得る。さまざまな資源は、サーバ25に、又は他のサーバ28及び29に接続する。
【0035】
「サービスモデル」は、サービスのコンピュータ記述である。よってサーバ25は、それぞれの資源のそれぞれの主機能のモデル(資源モデル)を保持し、別個に、それぞれの副機能(サービス)のモデルを保持する。後者のモデルは、前者のモデルに依存する。もちろん、これらさまざまなモデルは、互いに通信する別個のサーバ群の中に保持され得る。
【0036】
サーバ25,28及び29は、管理ユーザインタフェース41の管理下で、制御プラットフォーム40を共同で形成する。これらサーバは、セキュアな内部IPネットワーク42を介してデータベースクラスタ43に接続する。このデータベースクラスタは、これらのサイトを互いに接続し、これらのサイトをクラスタ31及び32のような他のクラスタに接続するエネルギーグリッドの詳細だけでなく、システム中の全ての利用可能なサイトについての広範な情報を、それらサイトのそれらのエネルギー要求及び能力についての詳細なパラメータと共に格納する。例えば、このデータベースは、それぞれの資源についての、(i)他の電力資源に対する電力グリッド中でのその位相幾何学的位置、(ii)その電力需要又は送電能力、及び(iii)それら電力需要又は能力がどの程度、柔軟性をもつかを示すパラメータを格納する。このデータベースは、電力需要又は能力の時間特性及び柔軟性パラメータを格納してもよい。さらにデータベースは、実時間の需要又は能力を表す電力資源によって報告されたパラメータ、及びそれら需要又は能力についての許容可能な変動を格納してもよい。
【0037】
例として、サイト10,11及び12に、及びクラスタ30に電力を供給するグリッド50は、なんらかの接続、変電所又はスイッチのかたちのピンチポイント51を有し得るが、このピンチポイントは、特定の定格仕様又は制限を有する。このような情報は、データベースクラスタ43中に格納される。
【0038】
クライアントインタフェース60は、クライアントユーザ61,62及び63がウェブサーバ64に(オプションとしてゲートウェイサーバ65に)アクセスするために設けられる。クライアントユーザインタフェース61から63は、パブリックIPネットワークによってウェブサーバ64に接続する。
【0039】
運用中、サイト10は、電力を発生し、この電力をグリッド50に給電する。後述するように、サイト11は、電力を消費し、その電力をグリッド50から取り込み、サイト12は、グリッド50から電力を貯蔵し、電力をグリッド50に配電する。運用中、サイト10,11及び12は、サービスモデルの一例にしたがって、ローカルレベルでエネルギーをやりとりすることによって、ローカルに電気システムを均衡化し、これは実効的にはマイクログリッドのように働く。それらは、例えば、サービスを提供し得て、それによって、グリッド50への、又はグリッド50からのエネルギーの正味の流れがなく、又はグリッド50への、又はグリッド50からのエネルギーの定常的な正味の流れが維持され、そうでなければグリッド50中の急速応答発電所から供給される必要があるはずの変動を均衡化する。「エネルギーの定常的な正味の流れ」とは、ある上限、例えば50MW/分(これはオープンサイクルガスタービンOCGTが必要なレートである)を超えない、好ましくは8MW/分(石炭火力発電機又はOCGT又は他の応答性発電機を要する)を超えない変化レートを有するエネルギーの流れを意味する。サイト10,11及び12の要件及び能力を均衡化することによって、グリッド50に対する需要のランプレートは、基準のレベルに維持され、このレベルにおいては、原子力発電所のような長期のゆっくり変化する電源がエネルギーの定常的な正味の流れを維持できる。
【0040】
同様に、ストリング30は、サイトの3種類、すなわち電源、応答性負荷、及び蓄電のうち2以上の混在した物を含む。よってストリング30は、グリッド50からの需要(又はグリッド50への供給)の変化の制御されたレートを同様に維持する。これら別個の均衡化ストリングをピンチポイント51のそれぞれの側に維持することによって、その点における仕様は満足されることに注意されたい。ピンチポイント51は、変電所又は給電線(すなわち変電所から変電所への、又は変電所から負荷へのケーブル)であり得る。ピンチポイントは、永続的でも一時的でもよい。例えば、故障は、特定の状況下の問題に過ぎない、送電線におけるなんらかの定格制限を示して報告され得る。この事実、故障の論理的位置、制限、ピンチポイントのいずれかの側の資源の相対的位置、ピンチポイントによって課される制限、及び状況がデータベース43中に格納され得る。
【0041】
コントローラ25は、パラメータをルータ13,14及び15に提供し、このパラメータは、これらのルータがそれぞれのサイトを制御することによって電力を供給又は消費するやり方(その詳細は後述される)に影響を与える。加えて、サーバ25は、下でより詳述されるように、長期間変動に従ってサイトを均衡化ストリング16又は均衡化ストリング30に割り当てをし、又はサイトをそれらのそれぞれの均衡化ストリングから除去する。
【0042】
プラットフォーム40は、サーバ25,28及び29を制御することができ、これらサーバが今度は、それらのドメイン内のさまざまなストリング(均衡化されていてもよく、されていなくてもよい)に影響を与えることによって、例えばグリッドメンテナンス時におけるような、需要におけるピークの低減、又は供給及び需要の一時的な再分配のような、全体的な目的(サービスモデル)を達成する。サーバ25,28及び29は、データベースクラスタ43上のデータにアクセスできる。
【0043】
新しいサイトがプラットフォーム40から利益を享受しようとするなら、それらは管理ユーザインタフェース41によって追加され得る。それぞれのエネルギー資源又は負荷の詳細がデータベースクラスタ43に入力され得る。データベースクラスタ43は、ピーク時及びオフピーク時のエネルギー価格のような任意の取引関連データも格納する。これらは、固定(年ごとに、又は月ごとに)であってもよく、又は変動(1時間単位で変化する)であってもよく、又はトライアド(TRIAD)スキーム(ピークシーズンの終わりまで未知である)に基づいてもよい。トライアド価格設定の場合、データベースクラスタは、確からしいピークタイム及びそれらの時点での確からしい価格についての情報を有し得る。いずれの場合も、そのような情報は、任意の所与のサイクルにおいて、サーバからルータへ送られるパラメータに影響を与える。変動価格設定の場合、価格設定の変化は、サーバからルータへのパラメータの新たなサイクルをトリガーし得る。
【0044】
図2Aを参照して、資源10,11又は12についてのエネルギー状態のシーケンスが示される。横軸は時間を表し、縦軸は資源のなんらかの変化を表す(エネルギー又はエントロピーの増加又は減少のような)。資源の状態は、時刻T0において決定され、一定の間隔で予測/モデル化され、それら未来の時刻で決定される。これらは、15分又は30分に1回又は1時間に1回又は数時間に1回又は24時間に1回であり得る。それぞれの資源の状態を評価する間の期間が短いほど、資源の使用のより高い融通性及び効率がもたらされ得るが、全ての資源の全ての状態を求め、未来に対する資源のサービスモデルへの最適な配置(割り当て)を見出すためには、ルータ及びサーバ間の通信負荷が増し、サーバにおける計算負荷が増す。好ましい間隔は、30分に1回である。資源によっては、30分ごとに報告することは可能ではないかもしれない(又は30分の期間にわたって変化しないかもしれず、この場合、これら資源は、より少ない頻度で、例えば1時間ごと、6時間ごと、又は1日に1回、報告し得る)。
【0045】
示されるように、状態200は、現在の状態であり、状態210,220,230及び240は、時刻T1,T2,T3及びT4における資源の未来の状態である。それぞれの未来の状態は、予測された未来の状態である。状態250は、時刻N、すなわち現在の予想サイクルの終わりにおける予測された状態であり、これは、6時間又は12時間又は2日又は1週間であり得るが、好ましくは23.5又は24時間である。
【0046】
図2Aに示されるように、資源は、時刻T1において2つの異なる状態(210又は212)のうちの1つを有しえる。例えば、それは、そのコンプレッサ(群)を時刻T0及びT1の間でオンになった結果、時刻T1においてそれがより冷たい状態にある冷蔵装置であり得て、これは状態212への実線による遷移で表現されている。代替として、それは、時刻T0及びT1の間でオンになり、T1においてより暖かい状態になっている暖房装置(例えば建物又はスイミングプール)であり得る。説明目的で及び簡単のため、2つの可能な状態(210及び212)しか図示されていないが、資源は、与えられた時刻において可能な状態群(例えば異なるレベル群の温度)を有し得るか、又はバッテリ/蓄電装置のような資源は、エネルギーを獲得し、又はエネルギーを失うことによって、より高いエネルギー状態又はより低いエネルギー状態に移動し得る。
【0047】
図2Aの実線で図示されるように、この資源が状態212から、状態212に類似する状態222、例えば類似の温度に移る場合が示されている。例えば(冷蔵装置の場合)、コンプレッサは、時刻T1及びT2の間で再び起動されていて、同じ低温度を維持する(つまり時刻T1からT2へ連続的に)。時刻T2の後に、資源は、その元の状態に戻ることを許される(例えばそれは、その元の温度状態まで暖めるか、又は涼しくすることが許される)。ある状態から他の状態への遷移は、エネルギーの注入(又は抽出)又は結果として生じる物理特性の変化を表し得る(例えば冷蔵装置において状態212及び222への遷移は、注入されたエネルギー又は抽出された熱の2つの測定値/数量を表し得る)。
【0048】
ここで
図2Bを参照すれば、同じシステムが図示されているが、異なるパスを辿っている。この場合、資源は、前と同じように状態200から状態212に進むが、それからその元の状態200に時刻T2において戻ることが許される。状態220から、資源は、それが状態222へと遷移し、それから時刻T4において状態240(状態200及び220と同様)へ戻るように以前のように動作させられる。よって、資源は、2つの異なるパスを介して時刻T4において状態240に到達する。例えば、それは、2つの連続する冷却動作、又は30分の間隔によって分離された2つの冷却動作を経り得る。いずれの場合においても、結果は同じ(ほぼ)であり、資源は、時刻T4においてある状態、例えばその時刻において要求される状態に到達する。それは、例えば、第1パスによると資源は、暖める前にさらに冷却する(又は冷却する前にさらに暖める)が、そうすることにおいて、資源は、そのローカル制御ループ動作パラメータ--例えばその局所的最小及び最大温度又は充電(charge)の局所的最小及び最大状態の外には逸脱しない。
【0049】
図2Cを参照して、本発明らは、予想された未来において資源が辿り得る動作状態の間に多くのパスが存在し得ることを特定した。資源があるパス又は他のパスに沿って進行するかどうかは、サーバ25によって決定され得て、すなわち、サーバは、与えられた時刻に資源に遷移を行わせるコマンドを資源のルータに発行し得る。もしこれが起これば、資源は、その自身のローカル制御ループの下で自らその前の状態(遷移以前)に戻り得るか、又はサーバのコマンドの下でそのようにし得る。したがって、本発明者らは、資源のサービスモデルへの割り当てを最適化することに対する有用なアプローチは、パスサーチ最適化アプローチであることを特定した。
【0050】
図2Dは、時刻T1において再計算された可能な状態の新しいセットを図示する。サーバは、新しい24時間の期間(又は他のサイクル)についての資源の振る舞いをモデル化し、時刻T
N+1まで前向きに予測する。(より具体的には、時間は、時刻にリセットされ、時刻T
Nに至るまでの新しいセットの状態がモデル化される。)資源モデルは、フルタイムサイクルについて前向きに予測される。資源(又は資源群の組み合わせ)によっては、あるパスに対して他のパスを辿ることの利益は、フルサイクルにわたってのみ決定され得る。例えば、バッテリのバンクと組み合わされるソーラーファームの場合においては、振る舞いは、フルソーラーサイクルにわたって好ましくはモデル化される(予測された天候情報を必要に応じて考慮して)。
【0051】
好ましくは、サーバは、資源についての可能なパスを制限する、資源についてのパスルールを記憶する。例えば、サーバは、資源のそのモデルから、及び記憶された資源についてのパラメータから、それが、連続する期間にわたって同じアクションを複数回経ることができないことを「知っている」かもしれない。例えば、それは、所定回数の連続するサイクルにわたって冷却するよう動作させることはできない(冷蔵装置の内容物が凍るので)か、又はそれは、所定回数の連続するサイクルにわたって休止状態を維持することはできない(内容物が溶けるか腐るので)。より一般的には、このルールは、与えられた第1アクションの次には第2アクションが与えられた期間内に来なければならず、又は第1アクションの次には与えられた期間内に第2アクションが来てはいけないことを定義し得る。
【0052】
いくつかの他の刺激(ローカル制御ループの外の)は、資源に遷移させ得て、そのような遷移は、サーバからのある時刻にそうしろという指示の下であり得て、それはサーバの制御の範囲外であり、ルータに委任されることに注意されたい。例えば(WO2016/027041に記載されるように)、ローカル資源は、グリッドからエネルギーを吸収すること、又はグリッドにエネルギーを戻すこと、又はそうでなければローカル制御ループによって要求されるであろう動作を延期することによって、その資源において測定された幹線電圧又は周波数の変化に応答し得る。
【0053】
図示されるように、単一の資源は、ある一つのサイクルにわたって状態から状態へと多くのパスに沿って遷移し得る。グループ(ストリング又はクラスタ)内に多くの資源が存在するとき、そのグループ内の全ての資源の状態の進行についての可能性の個数は、非常に大きい。サービスモデルに対する資源の配備を最適化して、サービスモデルの遂行を最適化することは、サーバの仕事である。より多くのサービスモデルを資源の集団に追加することは、価値を有するが、これは、同じセットの資源群から、より多くの目的が達成され得るからである。最適化するという仕事は、資源をサービスモデルにマッピングすること、すなわち資源のグループを形成することによって促進され得て、それぞれのグループは、あるサービスモデルを遂行するよう割り当てられるが、これはこの問題を、資源をグループに割り当てる問題と単に言い換えるに過ぎない。
【0054】
マッピングは、ある資源があるサービスを遂行することを許すルール群のセットである。それらは、地理学的情報及び位相幾何学的情報を好ましくは含み、その結果、それらは、どの資源がサービスを遂行するために接続され、どの資源が接続されていないかだけでなく、どの資源が他のどの資源に十分に地理的に近いので共にサービスを遂行できるか、及びどの資源はできないかについても特定する。サービスは、地理学的に又は位相幾何学的に典型的には限定される。例えば、その国のある部分において、あるレベルの応答性負荷(例えば1MWを30分間)を提供する必要がある場合、それがサービスの一例である。もし同様の必要がその国の異なる部分に存在するなら、それは異なるサービスになり得る。さらなるレベルの同じサービス(例えば同じ30分間に他の1MW)を提供することは、別個のサービス(又は2つのサービスが2MWを30分間提供する単一のサービスに結合され得る)と考えられ得る。
【0055】
マッピングは時間の次元を有する。資源と、ある期間(例えば30分の期間)のためのサービスモデルとの間のマッピング一式は、同じ資源と、異なる期間にわたる同じサービスモデルとの間のマッピングとは異なり得る。これは、部分的には、資源がサービスに出入りするのにつれて、又は資源がその状態を変化させ、異なるサービスモデルに利用可能又は不可能になるのにつれて、マッピングが更新され得るからである。
【0056】
与えられた資源は、同時に1つより多くのサービスモデルに割り当てられ得るということを、本発明者らは理解した。これは
図3に示されており、この図において、サーバ25は、資源321~325の振る舞いをそれぞれモデル化するモデル302~306を保持する。各資源は、電池又は蓄電装置(store)(以下で説明されるように)と等価であるとしてモデル化され得る。サーバ25に保持される各モデルは、それぞれの資源と、その資源に関連付けられたルータを通して通信する。したがって、各モデルは、その資源の物理的な状態で最新の状態に保たれる。
【0057】
資源が次のサービスモデル期間(典型的には次の半時間)に何をするべきか決定することがサーバ25の仕事である。サーバが資源をサービスモデルに割り当てることは、必ずしも必要ではないが、異なるサービスモデルを遂行するためにサーバが資源をグループで「割り当てている」とみなすことは便利である。
【0058】
図3において、それぞれグループA及びグループBと呼ばれる2つのグループ300及び310が示されている。多くのそのようなグループ(好ましくはサービスモデル当たり1つのグループのみ)が存在し得る。グループは単一の資源を備え得るが(例えばガスタービン発電所はそれ自身のサービスモデルを有し得る)、サービスモデルはたいてい、そのサービスモデルを遂行するために複数の資源のグループを必要とする。例えば、1MWの応答性負荷を提供するためには、それぞれが数十kW又は2、3百kWであるいくつかの応答性負荷のグループを形成する必要があり得る。同様に、応答が速いが長続きしない資源(電池のような)を含む資源のグループは、応答が遅いがより持続性のある他の資源(熱電併給ユニットのような)とグループ化され得、これらは共にある程度の応答性の時間エンベロープをもたらす。
【0059】
図3において見られるように、グループA及びグループBに同時に割り当てられる少なくとも1つの資源323が存在する。その対応する資源モデルは、各グループに組み入れられる。2つのグループに共通のいくつかの資源が存在し得る。資源は、同時に2つより多くのグループに割り当てられ得る。グループの資源は、同時に2つ以上の他のグループに割り当てられ得る。
【0060】
資源モデルによる一方のサービスモデルの遂行がその他方のサービスモデルを遂行する能力に影響しないという、「直交」であるサービスモデル群が存在し得る。例えば、短期サービスモデルと長期サービスモデルとが存在し得る。短期はわずか数ミリ秒又は数秒にわたり得るが、長期は測定される遷移間の全期間(例えば30分)にわたり得る。又は、短期はわずか数分に、長期は数時間にわたり得る。例えば、資源はグリッド周波数及び電圧における短期変動に応答し得るが(利益をもたらすサービスモデル)、同時により長い期間(例えば、バックアップの石炭火力発電機を使用できるようにし得る期間-利益ももたらすサービスモデル)にわたって需要と供給のバランスをとるのに利用可能であり得る。直交サービスモデルの他の例には、グリッドにおける容量の必要性に対処することと、周波数変化への応答性に対処することとがある。
【0061】
いくつかのサービスモデルは、互いに排他的である。例えば、周波数応答サービスモデルとトライアドプライシングサービスモデルとは、互いに排他的である。資源は両方には割り当てられ得ない。もし資源が両方に割り当てられ、資源が周波数の低下(需要の急激な増加のため)に応答することになっているのであれば、需要が最高であるときにまさにその時間(すなわち半時間)資源はそうし得る。これは、トライアドプライシングサービスモデルが避けようとしているより高額なプライシングの引き金となる。
【0062】
本発明者らは、厳密に直交ではなくオーバーラップ可能な2つ以上のサービスモデルに与えられた資源が割り当てられ得るということも理解した。資源による1つのサービスモデルの遂行が他のサービスモデルを遂行するその資源の能力に影響を与えないでおき得る(又はサーバによってそうするように命令された場合に第2サービスモデルに参加する確率を単純に低下させ得る)ときがそうである。そのような場合、資源の第2サービスモデルを遂行する可能性は、資源が第1サービスモデルの遂行に向けて行動(action)を起こすように命令されるか、又はどのような状況においてそう命令されるかに依存する。例えば、資源は同時に2つのサービスモデルで応答性負荷として働き得る。例えば、資源は、両方のサービスモデルに過剰な能力、すなわち、そのサービスモデルを遂行するのに必要な最低限を超えた能力、を提供し得る。もし資源が第1サービスモデルに割り当てられた資源のグループに割り当てられているという理由ですぐに応答する(例えば過剰なエネルギーを吸収する)ように命じられるなら、資源は、そのとき他の応答的負荷サービスモデルを遂行するのに利用可能であることをやめる(又はその参加確率が低下する)。これは、資源がサービスモデルに割り当てられる次の期間において、特定の資源が一時的に利用不可能であって他のいかなる応答性負荷にも割り当てられ得ないということを単に意味し得る。
【0063】
ここで注意を払うべき点は、時刻T0において資源は2つのサービスモデルに割り当てられ得るということである。時刻T1において、資源はそれらの状態をサーバに報告し(又はサーバが資源に問い合わせる)、このときサーバは、資源がもはやどちらのサービスモデルにも割り当てられ得ないと決定する。サーバは、その計算をリセットし(時刻は時刻T0にリセットされる)、最適化をもう1回行いサービスモデルへの資源割り当ての他のセットを演算する。このとき資源はそれらのサービスモデルには割り当てられない(他のサービスモデルに割り当てられ得る)。
【0064】
資源群の他のサービスモデル(特に直交サービスモデル)への最適な割り当てを決定するために、各サービスモデルの遂行の利益を共通の尺度に正規化する必要がある。したがって、重み付け因子がさまざまなサービスモデルに、それらを共通の尺度に正規化するために適用される。例えば、あるサービスモデルは太陽光発電のピークの時間の間の無駄になる電力を避けることを目指し得るのに対し、他のサービスモデルは送電線又は変電所におけるI2R発熱により無駄になる電力を避けることを目指し得る-そのようなサービスモデルは共通の尺度(電力)で既に測定可能であるが、正規化(例えば、ピーク電力の利益とオフピーク電力の利益との間を正規化すること)は必要であり得る。他のサービスモデルは、機器の消耗を避けること(例えば電池の寿命を延ばすこと)、又はピーク能力の用意を避けることのような、電力の単位では測定されない目標を要求し得る。この場合、これらの目標には、それら全てのサービスモデルが最適化のために共通の尺度で比較され得るように、重み付け因子が与えられなければならない。
【0065】
資源を1つ以上のサービスモデルに割り当てるこの能力は、最適化プロセスの複雑さを増加させる。この能力は、全ての利用可能な資源によってサイクル全体にわたるそれらのそれぞれの全て状態を通して辿られ得るパスの数を大きく増加させる。実際、資源をサービスモデルに割り当てる可能性は非常に高いので、1回の時間増分、すなわち、新たな計算の期限の前に利用可能な時間内に、資源のサービスモデルへの最適な割り当てを特定するのことは難題である。30分は、スーパーコンピュータ資源を使用せずに最適化計算を行うにはあまり長くない時間である。通常のコンピュータの計算能力の限度内において(又はクラウドコンピューティングを使用して)、計算は好ましくは2、3分で完了すべきである。もしそのような長さの又はより長い時間がかかるのであれば、各時間増分のうちのかなりの部分が、次の時間インターバルのための資源の最適配置を計算するために使い尽くされる。
【0066】
電力資源のサービスモデルへの過度の遅延なく計算及び実施され得る最適な配置を実施するためのシステムの必要性が存在する。
【0067】
図4を参照すると、サーバ25上のある計算モジュールの詳細が示されている。モデル化及びマッピング機能402と、最適化機能404とが存在する。モデル化及びマッピング機能402は、3つのサブ機能、すなわち、資源モデル406、マッピング機能408及びサービスモデル410を備える。資源モデル406を起動するための同化機能440が存在する。
【0068】
資源モデル406を最初に参照すると、各資源は、対応するモデル(
図3を参照して説明されたような)を有し、この資源と物理的に通信している(資源におけるルータを通して)。各資源は、それがその範囲内で動作しなければならないローカルパラメータ(温度の限度等)を有し、これらのパラメータは資源のためのモデル内に格納され得、及び/又は各資源はモデル内に格納され得る時間的振る舞い(どのくらいの期間それがオン又はオフであるか、それがオンになった後オンでオンでなければならない又はオフになった後オフでなければならないデッドタイム)を有する。モデルはその資源と連続又は周期的な通信をするので、モデルは資源が局所的な限度に達したかどうか(又はその限度に達する前にまだ応答できるか)を「知っており」、資源の最近の動作から、直後の期間において資源がオン又はオフにされ得るかどうかを「知っている」。
【0069】
資源はオン又はオフにするような機能を実行し得る。資源はサーバ25によってそのようにすることを要求され得、又はサーバからの条件付きコマンド(例えば、ローカルに測定された線間電圧及び/又は周波数又は他のグリッド測定値を条件とする)に応答してそのようにし得る。要求はエネルギールータから資源のローカルコントローラに渡される。もし(条件を受信すると、又は条件が生じるときに)そのようにすることができるのであれば、ローカルコントローラは要求を実行する。例えばそのようにするとローカル制御ループの境界条件を超えるので、もしできないのであれば、実行しない。資源が応答するとき(もし応答するなら)、その、グリッドの視点からの動作は、グリッドから電力を引き出すこと又はグリッドに電力を返すことのいずれかである。言い換えると、それは、
・充電容量
・内部抵抗、又はエネルギー吸収の変化率/エネルギー送出速度
のようなある一定のパラメータを有する電池としてモデル化され得る。
【0070】
このように各資源を、コマンドに応答するグリッドにおけるその振る舞いの見地からモデル化することは、他のプロセスの簡単化に適する均一性が説明されることを可能にする。
【0071】
マッピング機能は、資源を、例えば地理学若しくは位相幾何学によって又は他の理由で、サービスモデルの役割を果たす資源の能力にマッピングする。例えば、イングランドの東部にある資源は、南西部における短期サービスモデルにはマッピングされない。同様に、ある変電所に接続された資源は、送電線によってのみ接続された他の変電所に電力を送出することを要求する構成においてはマッピングされない(余剰電力は、ローカル又は中間レベルにおいて使用されるべきであり、送電線には供給され得ないので)。グリッドのトポロジー及びその変電所は、資源の不可能な組合せが除外され得るように、マッピング408に格納される。1つのサービスモデルでは働くが他のサービスモデルでは働かない組合せも、マッピングに格納される。
【0072】
サービスモデルは、各サービスモデルを遂行する利益を共通の尺度に正規化する重み付け因子とともに、モジュール410に格納される。
【0073】
基本的な動作では、資源モデルは来る24時間(又は他の)サイクルにわたって各資源に対して生成される。各モデルは、そのモデルの電力要求の多くの予測を有し得る。好ましくは、各モデルはあり得る予測の範囲に対する確率分布を生成する。資源のセットのための予測のセット(及び、使用される場合には、それらのそれぞれの確率分布)が、資源モデルモジュール406の出力430である。
【0074】
多くの資源モデルが、それらの資源が現在及びこの次のサイクルで利用可能な多くのサービスモデルにマッピングモジュール408においてマッピングされる。よって、マッピングモジュール408の出力は、多くの可能なマッピングに対応する予測の多くのグループである。
【0075】
サービスモデルモジュール410は、さまざまなサービスモデルに割り当てられた重みに従って、資源のグループが割り当てられ得るそれぞれのサービスモデルを遂行するそれぞれの利益を計算する。これらの利益は出力426を形成する。
【0076】
資源をサービスモデルに割り当てるそれぞれの利益は、全てオプティマイザ404への入力426である。多くのそのような組合せが存在し、したがって多くのそのような入力が存在する。したがってオプティマイザ404の仕事は、多次元最適化(「利益」又は「価値」を示す共通の正規化されたパラメータへの最適化)を行うことである。
【0077】
オプティマイザ404が動作する好ましいやり方は、パスサーチを行うことによってである。すなわち、オプティマイザ404は、資源、資源グループ及びサービスモデルの多くの組合せに対して利益を計算し、利益パラメータを最大化する資源とサービスモデルとの組合せを特定する最適パスを探し出す。
【0078】
その組合せを見つけること、及びそれらの資源をそれらのサービスモデルにその次に期間(例えば30分)割り当てることが、オプティマイザの仕事である。オプティマイザは、次のサイクルにわたって(例えば24時間)最大の利益を与えるためには、現在(時刻T0において)何が資源の最善の割り当てであるのかを決定する。「サイクル」は、固定された整数個の「期間」を好ましくは備えるということが留意され得る。
【0079】
資源をサービスモデルに割り当てることは、多くのやり方で物理的に明らかにされ得る。それは、例えば、コマンドがその資源に送信され、あるやり方で振る舞うこと、例えばローカルグリッドの測定値に応答すること、又はそのローカル制御ループが通常のヒステリシスループを抜け出すがより広いクリティカルなパラメータ内にとどまることを可能にすることを意味し得る。代替として、それは、次のコマンドが次の期間のうちにその資源に送信され、その資源をそのローカル制御ループではなくサービスモデルに従わせるということを意味し得る。例えば「オン」及び「オフ」コマンドが、その期間の全体にわたってサービスモデルが遂行されるように、その資源(及び同じグループの他の資源)に送信される。
【0080】
サーバ25は、来る期間にわたって遂行するためにどのサービスモデルが選択されるか、及びそれらがうまく遂行されたかどうかを監視する。サーバ25は、サービスモデル及び得られた個々の利益を示す報告をグリッドオペレータに対して生成する。
【0081】
資源モデル406にモデル化された500を超える資源(例えば500~1000個の資源)が存在する場合を考える。マッピング機能408において、これらの資源をグループ化する莫大な数のやり方が潜在的に存在し、モジュール410によって計算されるべきほとんど収拾不可能な数の可能性がある利益につながる。
【0082】
最適な組合せのためのサーチ分野が減らされる1つの好ましいやり方は、オプティマイザ404からマッピング機能408へのマッピング決定424を通してである。このフィードバックにおいて、オプティマイザ404は特定のサービスモデルに適しそうでないマッピングを除去する。例えば、オプティマイザ404は、(i)地理学的/位相幾何学的位置、(ii)資源タイプ、及び(iii)サービスモデルに基づいてマッピングを除去する。例えば、周波数応答を要求するサービスモデルは、地理的に分散した応答タイプの資源を要求し得る。それとは反対に、ローカルサービスを要求するサービスモデルは、ローカル資源にマッピングされる。
【0083】
マッピングを減少させる他の方法は、互いに対抗して働くサービスモデルへの資源のマッピングを除去することである。
【0084】
より一般的には、オプティマイザ404は、より最適な結果を探すために、モデル化及びマッピング機能402を制御し、資源モデル又はマッピングを変更又は改良し得る。これが行われ得る1つのやり方は、ヒューリスティック(発見的学習:heuristic)、すなわち、格納され、ときどき更新され得る所定のルールの適用を通して行われる。
【0085】
ヒューリスティックルールの例は、最適解における初期の「最良推測(best guess)」を、例えば最初に最大の資源をその資源に最も適しそうなサービスモデルに割り当て(例えば、資源の応答時間プロファイルに基づいて)、その次に大きい資源を同様に割り当てることを続け、「最良適合(best fit)」アルゴリズムで続けることによって、見つける初期サーチルールである。このようなヒューリスティックアプローチでは、各割り当ての利益の合計は各ステップにおいて行われる。もし割り当てが全体の合計の減少という結果であるなら、ステップは逆になり、全ての資源がサービスモデルに割り当てられるか、全てのサービスモデルが遂行されるまで、異なるパスが探索される(異なる資源対サービスモデル割り当て)。
【0086】
ヒューリスティックルールは、例えば、好ましい資源モデルとモデルのサービスモデルへの好ましいマッピングとに関係し、それはそれぞれの場合において、例えば資源の時間応答プロファイル及びサービスモデルの時間応答プロファイルに基づいて、又は蓄積された過去の経験に基づいて、与えられたサービスモデルに適合するタイプのサービスを行うより高い確率を有する。
【0087】
過去の経験が使用され得る1つの具体的なやり方は、オプティマイザに解を「導入する」し(初期サーチルールに基づいて、又は前回の解に基づいて)、その解の周囲で最適解を探すことによってである。例えば、資源の次の24時間の最適割り当ては、30分前に計算された資源の割り当て(又は、例えば、前の日の同じ時間に計算された資源の割り当て)に類似するというのは、よい推測である。これは、探索の開始点であり得る。オプティマイザ404は、この解を制御入力420として提供することができ、その解の周りに集まった一連の他の解を、例えばその解のヒューリスティックな又は確率論的な変動(variation)(又はそれらの組合せ)を用いて提供することができる。
【0088】
ヒューリスティックな変動の例は、選択された資源(又は自己選択資源-すなわち、もはや利用できないもの)の置き換えである。例えば、ある資源は、それが最後の期間(この例では最後の30分)にある動作を行うために呼び出された場合に、置き換えられ得るが、その結果、その資源がマッピングされたサービスモデルのためにその資源を必要とする動作を行うことができない(又はその動作を行う確率が閾値未満となる)。その資源を1つ以上の代替資源で置き換える解が、探索される。
【0089】
ヒューリスティックの他の例は、開始条件から遭遇した最初のピークに収束する「貪欲探索」である。
【0090】
置き換えられた資源は、以前に割り当てられたグループにおいて置き換えられているが、類似するサービスモデルには自由に再割り当てされ得ないが、直交サービスモデルに以前にマッピングされた異なるグループ(以前に形成されたグループ)又は新たに形成される予定のグループに自由に再割り当てされる。
【0091】
ヒューリスティックな変動の他の例は、以前に遂行されていないサービスモデル、例えば、優先順位が次である又はサイズ順位が次であるサービスモデル(例えば、比較的小さな容量しか必要としないサービスモデル)にマッピングされる予定の新たなグループの形成未遂である。
【0092】
解の確率論的な変動が探索され得るが、それぞれは少なくとも1つ、好ましくは数個の次元において、与えられた解からは変化している。次元の例は、グループに割り当てられた資源の数である。次元の他の例は、割り当てられた特定の資源(それらのいくつかは、動作を行ってほしいという依頼に応じる傾向-すなわち、確率-がより大きい又はより小さい)である。より一般的には、「次元」は、サービスモデル群にわたる利益の最大の合計を求めて調整され得る、また最大の合計を求めて調整され得る他の変数に直交する、オプティマイザにおける変数である。
【0093】
確率論的な変動の例として、前のマッピングにおいて定められた次元における小さな変動を有する解が探索され得る。例えば、10又は20個の資源のグループが、前もってストリングにまとめられ、特定のサービスモデルの役割を果たす場合、そのグループの資源の約10又は20%を同じ又は類似の結果を提供する容量を総合して有する代替資源で置き換える他の解が、探索され得る。例えば、1MWの応答性負荷を形成するストリングが、その合成物に、合計すると総計約1MWになるさまざまな資源を用いて変えられ得る。小さな変動の他の例は、資源のグループの容量におけるわずかな拡張(資源のグループのサービスモデルを提供するわずかな名目超過容量)、又は容量のわずかな減少(グループの名目容量が、必要な容量を満たす又はこれを超えながら、サービスモデルに必要とされる容量に近づくように、超過容量を減少させながら)である。
【0094】
オプティマイザは、資源のサービスモデルへの最適割り当てを計算し、その後、代替組合せを試みるためにマッピング又は他のパラメータを調整すること(ヒューリスティックに、又は確率論的に、又はヒューリスティックにその後確率論的に)によって、反復して動作し得る。
【0095】
最適化へのヒューリスティックなアプローチは、素早く、限られた数のサービスモデルを遂行する利用可能な資源が十分に供給されているときには、非常によい結果をもたらす。ヒューリスティックなアプローチとそれに続く確率論的アプローチ(例えばシミュレーテッドアニーリングアプローチ)との組合せは、資源の十分な余剰がないとき、又は利用可能な資源によって遂行され得るより多くのサービスモデルが存在する、すなわち、より多くの変動が探索されることができるのであれば遂行され得る更なるサービスモデル(又は時々あるサービスモデルの余剰)が存在するとき、利益の合計に小さいが価値のある改善をすることがわかる。そのようなアプローチは、新たな直交サービスモデルを考案すること、及びそれらの遂行の可能性を探索するのにも役立つ。
【0096】
各反復で、可能性のあるサーチ空間を減少させるために、新たな制御422が資源モデル406によってオプティマイザ404に与えられ得る。
【0097】
オプティマイザの動作を説明するために、
図5は、2つの局所的な極大値を有する簡単な2次元サーチ空間を示し、極大値のうちの1つのみが全体の最大値である。オプティマイザの仕事は、全体の最大値を求めることである。任意の点で開始し、反復してピークに向かって進むのでは十分ではない。単に最も近いピークに収束するのではないアルゴリズムが必要とされる。必要なのは、サーチ空間を妥当な数のステップで探索し、全体の最大値を突き止めるアルゴリズムである。調査すべき多くの次元、及び多くの局所的な極大値が存在し得る。ヒューリスティックなアプローチと確率論的なアプローチとの組合せは、非常に満足のいくものであることがわかる。最初のヒューリスティックなアプローチは、全ての次元における全てのパラメータにわたる簡単な粗いスキャンであり得、又は上述のアプローチのうちの1つを採用し得る。候補極大値、又は候補極大値群が見つかると、確率論的なアプローチが、各極大値の周りを探索するために使用され得、全体の最大値が見つかるまで、各極大値のより近くに進み、他の候補極大値より小さいことが発見された極大値を除去する。
【0098】
図6を参照すると、資源モデルの例が示されている。各資源は、電池又は蓄電装置としてモデル化され、標準化されたパラメータのセットを有する。例として、各資源は充電容量C、充電時定数t
c及び放電時定数t
dを有し得る。(これらは満充電の95%まで充電する時間及び蓄電量の95%を放電する時間のように、さまざまなやり方で測定され得る)。
【0099】
時間エンベロープを充電のあるレベルに達することにモデル化することの代わりに、又はそれの他に、時間エンベロープを、電力のあるレベルを供給すること又は吸収することにモデル化することが可能である。
【0100】
いくつかの資源(応答性負荷のような)の場合、tcは、サーバからのコマンドによってその資源が所定の量のエネルギー(C)を吸収するように要求されたときに、そうするのに要する時間を表し、tcは所定の量のエネルギーをもう一度吸収できる状況に回復する(サーバに干渉されないとき)のに要する時間を表す。負荷の場合、tcは典型的にはtdより短い。
【0101】
他の場合(蓄電装置のような)、充電及び放電行動の両方が、サーバの制御下で起こり得る応答性行動としてモデル化される。電池の場合、tcは典型的にはtdより長い。
【0102】
他の場合(電源(source)のような)、サイクルの放電側は時定数tdでモデル化され、モデルは充電サイクルを有さない(電源はグリッドに電荷を供給し得るが、電荷を吸収することはできないから)。
【0103】
この共通資源モデルは、資源をグループ化し資源のグループの振る舞いを予測する仕事を簡単にする。
【0104】
資源は、それらのモデルによって分類され得る。例えば、充電時間が短い資源及び長い資源が存在し得るし、放電時間が短い資源及び長い資源が存在し得る。電池は、非常に短い放電時間を有する電源として分類され得る。ガスタービンは、中程度の放電時間を有する電源として分類され得、石炭火力発電機は、長い放電時間を有する電源として分類され得る。(これらの後者の電源は、容量が限定されておらず発電を続けることができるが、モデルにおいて関心が持たれるのは、応答するためのコマンドの受信と放電を供給される電荷の定められたレベル又は供給されている電力の定められたレベルまで増やすこととの間の時間である、ということに注意されたい)。
【0105】
図4における同化プロセス440がこれから説明される。このプロセスにおいて、資源はグリッド50に接続され、その詳細は、グリッド内でのその位置、及びその動作にサーバ25が影響を与えることが許される特定のパラメータ(しかし、それ以外では、自身を制御するのは通常は自由でなければならない)に関してデータベース43に格納される。
【0106】
特定のサービスモデルが資源を異常なレベルに逸れさせることが許される異常な状況が存在し得る。例えば、グリッドの機器への損傷を防止することが意図されるサービスモデルが存在し得、それは、異常な状況において、冷蔵プラントがその内容物に損傷を与える点まで暖まる又は冷えることを可能にすることが許され得る。そのようなサービスモデルにおいて、モデル化機能410は、サービス提供のコスト(例えば冷蔵庫の内容物をだめにすること)に対してサービスモデルの価値(例えばグリッドの機器を損傷させないこと)を重くしなければならない。
【0107】
異常な状況は別にして、通常の動作に注目すると、同化プロセス440は、新たな機器を検査し、その動作をモデル化する立場にある。サーバ25は、その新たな機器にコマンドを発行する(例えばオンにする又はオフにするための)。資源における計測センサは、資源における物理パラメータ(例えば電力、温度等)を測定し、これらをサーバに報告する。サーバは、資源がコマンドに対して時間的にどのように応答したかを調べる。サーバは、その資源の価値C(どれだけの電荷又は電力が吸収又は放出されたか)、並びに充電及び/又は放電時定数を求める。サーバは、フルサイクル(例えば24時間の期間)までの異なる遅延でテストを繰り返し、その資源のリカバリー時間が何であるか(すなわち、その資源がその行動を繰り返す立場になるまでにサーバがどれだけ待たなければならないか)を調べる。
【0108】
例えば、最初のテストが行われ、資源が応答したかが確かめられると、選択された遅延の後に2番目のテストが行われ得る。選択された遅延は、30分の期間1つという短いものであり得(もしその期間内に最初のテストの後で資源から報告を受けるのに十分な時間があるなら)、又は、2つ、3つ又は多数の期間の後であり得る。もし、資源が最初に応答し、最初の遅延の後に再び応答しないなら、これは資源のリカバリー時間が選択された遅延より大きいということを示す。3番目及び更なるテストがより長い選択された遅延の後に、遅延であってその後に資源が応答する遅延が選択されるまで、行われ得る。これは、資源が最初のテストから回復したことを示す。その資源の名目リカバリー時間は、遅延であってその後に更なるテストが応答を果たす最短の遅延に対応する。
【0109】
異なる遅延での全テストが繰り返され(例えば次の日に)、資源のリカバリー時間の他の測定値を求める。資源のリカバリー時間は、さまざまな測定値の平均として、又は測定値の分布として表現され得る。
【0110】
同化プロセス440は、影響する手段がまさに発行されたコマンドの結果としてであるということを確実にするために、このテスト動作を数回繰り返し得る。同化プロセスは、資源の確率-すなわち、資源がサーバからのコマンドに応答する確率-も決定する。これは、時間に対する又は他の次元にわたる確率分布であり得る。例えば、多くの日にわたって異なる半時間におけるプロセスを繰り返すことは、1日のうちの時間に対する確率分布を生じさせ得る。同様に、熱負荷の場合には、異なる温度値における応答の確率(資源によってそのルータを通ってサーバに報告されるような)は、温度に対する確率分布を与え得る。資源の確率分布は、いくつかの次元(時間、温度等)を有し得る。同化プロセスが完了するとき、新たな資源のモデルはモデル化機能406に保存される。
【0111】
資源のモデルは、使用中にときどき更新されることができ、例えばより正確な時定数及び充電パラメータを提供し、確率の値又は分布を更新する。
【0112】
資源のオフタイムは典型的には期待される分布のパターンに従うが、全体的に言って時間は確定していない。もし資源が早くオンになる又は遅くオフになるなら、サービスを提供する能力に影響する。資源がどのように振る舞い得るかには、典型的にはある程度の不確実性が存在する。
【0113】
実行の好ましい局面において、個々の資源のこれらの個々の不確実性は積み重ねられ、サービスを提供するために選択され得る資源の候補セットのいくらかの全体的な不確実性を生じさせる。電力レベルが最適化され得るのみではなく、サービスを提供する確率も最適化され得る。言い換えると、資源のセットは、所望の確率レベル(例えば95%)まで選択されたサービスを提供するために選択され得る。資源の各候補セットの全体的な不確実性を用いることによって、所望の確率でサービスを提供するためにより小さな候補セットが選択され得る場合もあれば、個々の資源の個々の不確実性に基づいてより大きなセットが必要とされ得る場合もある。資源のより小さなセットが選択され得る場合、これは、資源を使えるようにして他のサービスを遂行するために割り当てられるようにする。
【0114】
全体の不確実性を引き起こす個々の不確実性の積み重ねが数学的な複雑性に加わる一方(不規則な分布、複雑な相互作用、2つの不連続な状態の間の状態変化の確率のため)、これを達成する確立された体系、特にモンテカルロマルコフチェーンに基づく統計学が存在する。
【0115】
したがって、サーバが資源の振る舞いを表す資源モデルを保持する電力制御システムが提供され、各資源モデルはその資源とリアルタイムで通信してモデルに資源の状態を動的に通知し、各資源モデルはその資源のあり得る振る舞いの分布を有する。サーバは、所望のサービスのための少なくとも1つのサービスモデルを保持し、サービスを遂行する可能性のある資源をサービスモデルにマッピングする(map)マッピング(mapping)を有する。オプティマイザは、サービスを遂行する資源の組合せを、資源のグループの資源振る舞いの分布を積み重ねることによって探し、組み合わされた資源振る舞いの全体的な確率を決定する。オプティマイザは、グループの全体的な確率に基づいて、サービスを遂行する資源を選択する。サービスに参加する資源を選択すると、サーバはそれらの資源に、設定された期間にわたってそれらの振る舞いに影響を与えるようにという指示を発行する。設定された期間は、好ましくは直後の30分であるが、より短い又はより長い時間であり得る。
【0116】
グループの全体的な確率に基づいて、サービスを遂行する資源を選択する際に、オプティマイザは、設定された確率まで、そのサービスを遂行する資源を選択する。例えば、もし設定された確率が95%であるなら、これはそのサービスがほとんど確実に提供されることを意味する。そのような高いレベルの確実性を達成することは、そのサービスに割り当てられるべきより多くの資源を必要とし得る。確率をより低く、例えば80%に設定することにより、グループ化される必要がある資源がより少なくなり得る。より多くの数の資源の積み重ねられた確率分布は、サービスを提供する全体の確率をより高くし、一方、より少ない数の資源の積み重ねられた確率は、サービスをより低い確率で提供する。前者の場合、そのサービスを提供する際により多くの資源が「独り占めして使用」される(直交する他のサービスに提供することのみ自由である)。後者の場合、より多くの資源が他のサービスに自由に割り当てられる。
【0117】
好ましくは、サービスの提供の設定された確率は、管理ユーザインタフェース41で操作者によって設定され得る入力パラメータである。
【0118】
好ましくは、各資源モデルの確率分布は、資源との通信によってリアルタイムで更新される。それは、前の期間において、サーバからのコマンドに資源が応答したか又は応答しなかったかどうかを決定することによって更新される。この決定は、確率分布を確立するために多くの期間にわたって多くの回数行われる。
【0119】
資源の確率分布はいくつかの次元を有し得るが、各次元はその資源のためのパラメータである。例えば、資源のためのパラメータは、その温度であり得る。オン又はオフの確率は、このパラメータの分布としてモデル化され得る。他の例としてのパラメータは、最後にオフにしてから、又は最後にオンにしてからの時間である。
【0120】
図7を参照すると、動作のタイムラインが示されている。オプティマイザがその機能を実行する最適化時間701が存在し、その後、最適解が特定の資源のための命令に変換される何らかの処理時間702と、それらの命令がそれぞれの資源に伝達される通信時間703とが続く。時刻t
0において、資源はそれらの命令を受信し、動作のサイクルを開始する(例えばそれらの命令に従って次の30分間動作する)。
【0121】
理想的には、オプティマイザは、時刻t0において資源の最適な配置が何であるかを予測している。すなわち、オプティマイザがその機能を実行するために使用するデータは、将来の時刻、すなわち、最適解が用いられるべき時刻t0において予測されるデータである。
【0122】
もし、最適化プロセスの開始と時刻t0との間で、何らかの基本が変化してしまい、最適解がもはや正しくない(例えば関係する資源の1つの状態の変化のため、もはや実行できない)なら、単にその変化を無視してその解を用いるより優れた多くの選択肢が存在する。例えば、オプティマイザが再び動作している間、現状が維持され得る。代替として、次善解が最適化の過程で特定され格納され得、その解はその変化の影響を受けず(例えばまだ実行可能)、その場合これは解として用いられ得る。
【0123】
説明されてきたように、サーバ25は、各資源のための資源モデルを保持する。
図8を参照すると、資源モデルとその資源との間の通信の更なる詳細が、資源19(負荷である)を参照して(例としてのみ)説明される。
【0124】
時刻t0において、資源19のためのエネルギールータ15は、その命令をサーバから受信する。この例において、命令は条件付きコマンド-すなわち、ルータ15における計測ユニットによって測定されるグリッド50内のイベントによってトリガーされ得るコマンド-である。このコマンドは、トリガーイベントを規定するパラメータ及び取られるべき行動を規定するパラメータとともに受信される。例えば、トリガーイベントは、x%(例えば2%又は1Hz)のグリッド周波数の低下、又はy%(例えば2%又は5ボルト)のグリッド電圧の低下であり得る。取られるべき行動は、単に「オフにする」であり得る。他の資源は、グリッド周波数及び/又はグリッド電圧(例えば蓄電装置の場合、装置はグリッドへ放電し得る)の低下を修正するのに寄与し得る他の行動を有し得る。
【0125】
もしグリッドでトリガーイベントが起こるなら、これは、矢印802によって表されているように、ルータによって測定され得る。応答において、資源はその行動を行ってもよいし、行わなくてもよい。資源がそうするかどうかは、それ自身のローカル制御ループ次第である。もし、例えば、資源が上限温度より十分低く冷却される冷蔵ユニットであるなら、資源は安全にオフに切り替わる。資源は、それ自身の制御ループの下で、やがて再びオンに切り替わる。他の熱に関する資源は同様に振る舞う。
【0126】
ルータ15は、資源の新たな状態をサーバ25に報告する。これはメッセージ804によって行われる。メッセージ804は、必ずしも、取られた(又は取られなかった)行動の報告ではない、ということに注意されたい。それは単なる状態報告であり得、その場合、それはサーバ25における資源モデルに残されて、所望の行動が取られたかどうかを決定するために、報告された状態を以前に知られている状態と比較する。状態メッセージ804は、一定の頻繁な間隔で(例えば1分毎、2、3分毎、又は1分に数回)報告され得る。
【0127】
30分の期間(又は他の期間)の後、プロセスは繰り返される。説明される例において、無条件の-すなわち、グリッドにおけるいかなるイベントにも依存しない-新たなメッセージ810が送信される。それはコマンドであって、それに基づいて行動が行われるべきコマンドであると言った方がよい。それは、要求された行動を実行する立場にある資源のローカル制御ループにおいては(以前と同様に)条件付きである。メッセージは、状態を変更することを求める要求、又は状態を変更しない(現在の状態を維持する)ことを求める要求であり得る。説明される例において、メッセージは、ルータ15に、812において資源19のローカル制御ループに介入させる。ルータは資源の状態を監視し、814において状態をサーバ25に報告する。
【0128】
サーバと各ルータとの間には、標準のインターネット通信プロトコルが存在する。ルータとその資源との間の通信は、多くの形態を取りうるリアルタイムのローカルバスである。ルータがその資源を監視する無限の機会が存在し得るが、ルータがサーバに報告する機会はシステムにおいて規定されている。機会は、ルータに設定され、又はサーバによって決定された間隔でポーリングされる。
【0129】
バイオマス発電機は、異なるサービス、例えば計画されトリガーされるサービスに、異なる応答を提供し得る資源の例である。バイオマス火力発電所、例えばバイオマス火力CHPは、制御可能であり天候の状況に依存しない。それらの出力は予測可能であり、かつ連続する。よって、バイオマス発電所は、需要が高いときに電気出力を増加させるために予備として、又は断続的な再生可能電源を支援するために使用され得、需要が低いときには熱のみを出力するために運転される。更に、バイオマス発電所は、要求される電力サービスに基づいて限られた時間で素早く介入するために、オフに切り替えられ得る。
【0130】
図9を参照すると、例えばUS8017366で説明されているように、バイオマス発電機が示されている。バイオマス発電機は、バイオマスタンク901と、メタンタンク902と、攪拌機モータ903と、発電機904と、熱出力905をと有する。バイオマス発電機は、グリッド912に接続された電気出力906と電気入力910とを有する。
【0131】
動作中、タンク901内のバイオマス材料は、嫌気性で消化し、熱出力905において熱を、(要求されたように)電気を電気出力906において生成する。ときどき、タンクは攪拌機モータ903によって攪拌される。これが起きるとき、システムはグリッド912上で正味負荷である。タンクを攪拌すること(及び他の動作を行うこと)は、熱生成とメタン生成(それは今度は電気の生成に影響する)との間のバランスを変える。
【0132】
バイオマス発電機は、熱電併給ユニットとしてそれぞれの負荷と組み合わせてモデル化され得る。バイオマス発電機は、時には電力ユニット(すなわち、電気を生成する電源)として動作し、他の時には負荷として動作する(タンクが攪拌されるとき)。他のバイオマス発電所は、他のやり方で動作し(例えば木の切れ端材料を燃やす)、機械設備を動作させるために電気入力をときどき必要とする。
【0133】
バイオマス発電所がその異なるモードでいつ動作するかという点で柔軟性が存在する。サーバ25はこれらのモードに高度に影響を与え得る。例えば、グリッド912にエネルギーの余剰があるときに機械設備に動作するように求め(例えばモータにタンクを攪拌するように)、又は不足があるときに発電機904に発電するように求める。
【0134】
このように、異なるタイプの資源のポートフォリオを、相補的であり協力して働いて新たな独特の電力サービスを成し遂げる異なる特徴と混合及び組み合わせることを含めて、システムのさまざまな局面が説明された。例えば、使用が限られた複数の低出力資源は、冗長性を提供するために、高価で非常に利用される高出力資源のバックアップであり得る。又は高周波応答資源(速いが容量が限られる)は、応答が速く高出力の発電機を提供するために、遅いが容量が大きい資源と組み合わされ得る。これにより、安価な需要資源、例えば冷蔵庫において柔軟性を活用することが可能になり、冷蔵庫がウォーミングアップするときに冷蔵庫にエネルギーが供給され、需要資源はエネルギー貯蔵装置のように振る舞う。
【0135】
資源は、トリガーが起きたときにサービスを提供するのみではない。資源は、しばらく待機して、協力を手伝い複数の資源の能力を組み合わせて、サービスを共同して提供することもできる。1つの例は、冷蔵貯蔵である。いくらかのエネルギーの使用をタイムシフトする利益とともにトリガーに応答する柔軟性を得るために、オフにする点が見つけられ得る。
【0136】
資源はたいてい、トリガーに対して反応する、又は計画された時刻に電力を供給するのいずれかをするように設計されている。トリガーに反応する柔軟性を維持しながら、計画された時刻に電力を供給するために、これらの概念は結合される。
【0137】
柔軟性は、トリガーに直ちに応答して提供される瞬時電力を変更するシステムの能力である。柔軟性のために最適化することは、オプティマイザの同化する現在の能力より速くサービスを処理する能力を有することである。これは、トリガーされるサービスへの準備ができている最良の位置に資源ポートフォリオを置くことによって達成される。いくつかの資源は1つ以上の計画されたサービスにマッピングされ、いくつかの資源は1つ以上のトリガーされるサービスにマッピングされる。これらの資源は、上述のようにオーバーラップし得る。
【0138】
トライアド回避行動が、資源所有者に代わって引き受けられ得る。トライアド予測が利用可能であり、これはサーバ25への入力として使用される。この行動は自動的に生じるが、システムも、資源の前提条件がトライアドを最もよく回避することを可能にする。精度の確率付きの予測(1日前)は、有益な特徴であり、資源の特性の知識とともにトライアドのイベントにおいて改善された業績を提供する。
【0139】
オプティマイザは、システムに利用可能な全ての資源を見ることができるが、区分することは有利であり得る。最適化問題の複雑さは、資源とマッピングの数の多項式として大きくなる。しかし、マッピングはアイランド、すなわち、相互作用を伴う資源を生み出す。相互作用を有さない異なるアイランドを分離することによって、最適化は簡単化される。アイランドは別々に最適化され得、解を提供するために再び結合され得る。確率論的最適化のためには、より開始点を有することが重要である。オプティマイザの検索は、複雑さを減らすために、例えばアイランドのためのよい開始点を得るために決定論的なルーチンを用いて、前もって種がまかれ得る。
【0140】
資源の振る舞いを表現する資源モデルを保持するサーバを有する電力制御システムであって、各資源モデルは、その資源とリアルタイム通信をすることで資源の状態を前記モデルに動的に知らせ、機能を実行するよう資源に要求するコマンドを前記資源に発行することによってテストを実行する、前記サーバにおける手段と、物理パラメータを前記資源において測定し、前記物理パラメータを前記サーバに報告する、前記資源におけるセンサと、前記資源が前記コマンドに応答したか、及びもし前記資源が応答したなら、時間の経過とともにどのように応答したかを決定する、前記サーバにおける手段と、前記測定された応答に基づいて、少なくともエネルギー容量及び時定数に関して前記資源のモデルを確立又は更新する、前記サーバにおける手段とを備える電力制御システムが、説明された。
【0141】
サーバは、異なる遅延でテストを繰り返し得、資源のリカバリー時間を確立する。負荷又は蓄電装置の各モデルは、負荷又は蓄電装置の充電エンベロープ、及び/又は負荷又は蓄電装置の放電エンベロープをモデル化し得る。サーバは、資源がサーバからの定められたコマンドに応答する確率を決定するためにテストを繰り返し得る。
【0142】
電力制御システムであって、サーバが、資源の振る舞いを表現する資源モデルであって、各資源モデルはその資源とリアルタイムで通信することで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせ、各資源モデルはその資源の可能性のある振る舞いの分布を有する、資源モデルと、所望のサービスの少なくとも1つのサービスモデル及び前記サービスを遂行する可能性を有する資源を前記サービスモデルにマッピングするマッピングを保持するサーバ手段と、資源のグループの資源の振る舞いの分布を積み重ねることによって、前記サービスを遂行する資源の組合せを探して、組み合わされた資源の振る舞いの全体の確率を決定し、かつ、前記グループの全体の確率に基づいて、前記サービスを遂行する資源を選択するためのオプティマイザ手段と、を保持する電力システムが説明された。
【0143】
前記システムは、前記サービスに参加するように命ずる命令を前記選択された資源に伝送して、設定された期間にわたって資源の振る舞いに影響を与えるための手段を更に備え得る。設定された期間は、直後に続く30又は60分であり得る。
【0144】
前記システムは、サービスの提供の確率を前記システムへの入力パラメータとして設定するための手段を更に備え得る。
【0145】
電力分配システムを制御する方法であって、電力資源の振る舞いを表現する資源モデルであり、各資源モデルはその資源とリアルタイムで通信することで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせ、各資源モデルはその資源の可能性のある振る舞いの分布を有する、資源モデルを保持することと、所望のサービスの少なくとも1つのサービスモデル及び前記サービスを遂行する可能性を有する資源を前記サービスモデルにマッピングするマッピングを保持することと、資源のグループの資源の振る舞いの分布を積み重ねることによって、前記サービスを遂行する資源の最適な組合せを探して、組み合わされた資源の振る舞いの全体の確率を決定することと、前記グループの全体の確率に基づいて、前記サービスを遂行する資源を選択することと、前記サービスに参加するように命ずる命令を前記選択された資源に伝送して、設定された期間にわたって資源の振る舞いに影響を与えることと、を備える電力供給システムを制御する方法が説明された。
【0146】
資源を選択することは、設定された確率までそのサービスを遂行する資源を選択することを好ましくは備えるが、前記サービスを提供することが可能な最低限より多くの資源を選択することを備え得る。
【0147】
前記方法は、前記資源のそれぞれとの通信によって、各資源モデルの確率分布をリアルタイムで更新することを、好ましくは更に備える。
【0148】
前記方法は、先行する期間において、前記サーバからのコマンドに前記資源が応答したか応答しなかったかを決定することを、好ましくは備える。そのような決定は、確率分布を確立するために多くの期間にわたって多くの回数行われ得る。
【0149】
グリッドに接続された電力資源のセットを制御するための電力制御システムであって、各電力資源は、ローカル制御ループの下で前記資源を制御するためのローカルコントローラを有し、サーバによって制御される二次的プロセスに従って前記資源の動作に影響を与えるように命ずる命令を前記サーバから受信することが可能である。前記サーバは、(i)資源の振る舞いを表現する資源モデルであって、各資源モデルは、その資源とリアルタイム通信をすることで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせる、資源モデルと、(ii)異なる電力資源に関係する二次的プロセスを表現する複数のサービスモデルと、(iii)資源を、それらの資源によって遂行され得るサービスモデルにマッピングするマッピングとを保持する。オプティマイザは、どの資源がどのサービスモデルに参加するべきかを決定する。
【0150】
複数のサービスモデルが存在し得るが、そのうちの少なくともいくつかは複数の資源に関係し、定められた資源は1つより多くの資源モデルに参加し得る。少なくともいくつかのサービスモデルは、直交する目的を有する。2つの目的は、もし両方のサービスモデルに割り当てられた資源がいずれの目的も妥協することなく両方の目的に同時に寄与できるなら、直交する。前記直交する目的は、電力の需要をタイムシフトすること、資源を電圧又は周波数の変化に応答できるようにすること、及び、資源若しくはグリッド機器の寿命を延ばすこと、又は熱損失によって浪費される電力を減少させること、を含む。
【0151】
前記オプティマイザは、将来にわたる共通の時間の経過とともに行われる全てのサービスモデルの動作を好ましくはモデル化する。前記オプティマイザは、時間の経過とともに行われる各資源の動作、並びに、時間及び他の次元における前記資源の将来の動作をモデル化し、全てのサービスモデルにわたる利益を最大化するために、好ましくはパスサーチ最適化アルゴリズムを行って、資源をサービスモデルに割り当てるための最適パスを見つける。最適化パスサーチの実行毎に、前記オプティマイザは、将来の24時間の全てのサービスモデルの動作をモデル化する。資源であって、その状態のため定められたサービスモデルに参加することができない資源を含むパスが除去される。前記オプティマイザは、所定の期間(15分、30分、1時間又は24時間までの複数時間)の各終了後、最適化を再実行する。各再実行時に、前記オプティマイザは、前記パスサーチを案内するために以前の結果を使用し得る、又はヒューリスティックに決定された開始点からサーチを開始し得る。前記オプティマイザは、前記パスサーチを限定するヒューリスティック制約のセットを保持し得る。前記ヒューリスティック制約は、どの資源がそれぞれのサービスモデルに参加するのにより適している又はより適していないかの表示を含み得る。
【0152】
グリッドに接続された電力資源のセットを制御する方法であって、前記方法は、資源の振る舞いを表現する資源モデルであり、各資源モデルは、その資源とリアルタイム通信をすることで前記資源の状態を前記モデルに動的に知らせる、資源モデルを前記サーバに保持することと、異なる電力資源に関係するサービスを表現する複数のサービスモデル、及び、資源の、それらの資源によって少なくとも部分的に遂行され得るサービスのサービスモデルへのマッピングを保持することと、前記サービスモデルによってモデル化されたサービスを遂行する資源を選択することを含む、資源の最適配置を決定することと、前記サービスを遂行することを試みるように命ずる命令を前記選択された資源に伝達することと、を備える電力資源のセットを制御する方法が説明された。
【0153】
各サービスは、前記命令の前記資源による受信から始まる設定された期間にわたって提供され、前記命令は前記設定された期間の間、有効である。最適配置を決定するステップは、前記設定された期間の多数倍の長さのサイクルの間、可能性のある配置にわたってサーチを行うことを好ましくは備える。最適化を行うステップは、前記最適化の終了及び/又は前記選択された資源への伝達の後、前記資源モデルによって、将来における前記資源の状態を予測することを含み得る。
【0154】
実施形態及び例の上述の説明は、例としてのみ示されている。本発明のさまざまな局面及び実施形態は、組み合わされ得る。さまざまな局面及び実施形態は、他の局面及び実施形態に従って修正され得る。本発明の範囲は、実施形態の詳細によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される。