(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ディジタル分子アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230329BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230329BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230329BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20230329BHJP
C12Q 1/6823 20180101ALI20230329BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N33/53 M
G01N33/53 D
G01N37/00 102
G01N21/41 102
C12Q1/6823 Z
(21)【出願番号】P 2019570354
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 US2018022061
(87)【国際公開番号】W WO2018169885
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-11
(32)【優先日】2017-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519326688
【氏名又は名称】イリティカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ILYTICA LLC
【住所又は居所原語表記】1700 Owens Street, Suite 515, San Francisco, CA 94158 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ,ティ.グローブス
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-157923(JP,A)
【文献】特開2005-049297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0256593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 37/00
G01N 21/41
C12Q 1/6823
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つのアナライトの存在又は濃度の決定方法であって、
少なくとも1つのタイプのアナライト分子と共にインキュベートされた少なくとも1つのタイプの光学レポーター分子により発せられる複数のシグナルの画像中で、
各タイプの光学レポーター分子に対して、前記光学レポーター分子を活性又は
ヌルのどちらかとして分類することと、
アナライト分子に結合された活性光学レポーター分子である結合活性光学レポーター分子と、アナライト分子に結合されていない活性光学レポーター分子である非結合活性光学レポーター分子と、を個別に解像することにより、前記画像中で、前記結合活性光学レポーター分子の数と、前記非結合活性光学レポーター分子の数と、を決定することと、
前記結合活性光学レポーター分子及び前記非結合活性光学レポーター分子の全数に対する分率として又はその分率に比例するものとして
前記結合活性光学レポーター分子の数からアナライトの存在又は濃度を決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアナライトの濃度が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アナライトが、
・ヌクレオチド配列、及び
・抗原
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学レポーター分子が、
・前記アナライトに結合する1つ以上のヌクレオチド配列、及び
・前記アナライトに結合する抗体又はそのフラグメント
から選択されるキャプチャーエレメントを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各光学レポーター分子がプラズモンナノ粒子を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光学レポーター分子が、1つ以上のプラズモンナノ粒子上に機能化された1つ以上のヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記光学レポーター分子が、1つ以上のプラズモンナノ粒子上に機能化された1つ以上の抗体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記光学レポーター分子からの前記シグナルが、
・光の波長、
・シグナルの強度、
・明るさ、
・シグナル又はスペクトルの形状、及び
・スペクトルバンドの存在又は不在
から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記結合活性光学レポーター分子及び前記非結合活性光学レポーター分子が、
・特定波長超又は未満のスペクトル中心のシフト、
・シグナルのサイズ又は強度の変化、
・明るさの増加又は減少、
・シグナル形状の変化、
・スペクトルバンドの存在又は不在、及び
・スペクトル形状の変化
により個別に解像される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光学レポーター分子により発せられる前記シグナルが光の波長であり、
前記結合活性光学レポーター分子及び前記非結合活性光学レポーター分子が、特定波長超又は未満のスペクトル中心のシフトにより個別に解像される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法がサンドイッチ型アッセイを利用する、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
各固着光学レポーター分子が空間分解可能なように、第1のタイプの光学レポーター分子が表面(レポーター表面)に固着され、前記第1のタイプの光学レポーター分子が、プラズモンナノ粒子上に機能化されたアナライトキャプチャーエレメントを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2のタイプの光学レポーター分子が前記サンプルと共に又はその後に添加され、前記第2のタイプの光学レポーター分子が、プラズモンナノ粒子上に機能化された前記アナライトキャプチャーエレメントを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アナライトが抗原であり、各光学レポーター分子が前記キャプチャーエレメントとして抗体又はそのフラグメントを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アナライトがヌクレオチド配列であり、各光学レポーター分子が、前記キャプチャーエレメントとして前記アナライトヌクレオチド配列に相補的な1つ以上のヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、モバイルデバイスを含むディジタル分子アッセイシステムで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
サンプル中のアナライトの濃度を決定するためのディジタルアッセイシステムであって、
・イメージセンサー、
・画像を表示可能なスクリーン、
・マイクロプロセッサー、
・メモリー、
・イメージセンサーによりキャプチャーされたデータの解析及びデータのディジタル分類が可能である、メモリーに記憶されてプロセッサーにより実行可能な画像解析ソフトウェア、及び
・任意に通信インターフェース
を含み、
・キャプチャーエレメントを用いて機能化されたプラズモンナノ粒子を含む光学レポーター分子が片側に固着されてガラス又はポリマーで作製されたレポーター表面、及び
・レポーター表面の反対側に接触する暗視野顕微鏡法に好適な導波路
を追加的に含み、
各固着光学レポーター分子が空間分解可能であり、かつ、活性か
ヌルかを分類可能である、ディジタルアッセイシステム。
【請求項18】
前記アナライトが抗原であり、各光学レポーター分子が、前記キャプチャーエレメントとして抗体又はそのフラグメントを含む、請求項17に記載のディジタルアッセイシステム。
【請求項19】
前記アナライトがヌクレオチド配列であり、各光学レポーター分子が、前記キャプチャーエレメントとして前記アナライトヌクレオチド配列に相補的な1つ以上のヌクレオチド配列を含む、請求項17に記載のディジタルアッセイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月12日出願の米国仮特許出願第62/470,303号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その開示はあたかもその全体が本明細書に記載されるがごとく本出願によって参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポイントオブケア診断及び現場で実施可能な他のアッセイが必要に迫られている。アッセイたとえば診断試験とりわけ血液試験の結果を分析のために専用検査施設に送ることに伴う遅延及び費用を排除できれば、より効率的且つ効果的に反応を行えるであろう。臨床検査施設は、精度の良い卓上機器で生化学的アッセイを実施することにより診断試験の結果を送達する。こうした機器を小型化したり又はその機能をモバイル電子デバイスで再現したりする取組みは困難を伴う。多くの場合、結果は使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
必要とされているのは、安価であるが正確なポイントオブケアアッセイ、たとえば、医師やその患者などに即時の正確な結果を提供する診断試験である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に提供されるのは、個々に分解されたアナライト/レポーター結合イベントの直接ディジタル測定による結合イベントのアッセイによりアナライトの迅速且つ正確な測定を行うためのシステム、デバイス、及び方法である。本明細書に開示されるディジタル分子アッセイのシステム、デバイス、及び方法は、単一アナライト分子の結合を検出して報告する光学レポーター分子を用いて粒子の1つ1つを読み取ってかかる結合の各々をバイナリー形式で報告することが可能である。かかるディジタル分子アッセイのシステム、デバイス、及び方法は、さまざまな用途に、たとえば、現場で使用されるモバイル電子デバイスなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、アナログアッセイの概念説明図である。
【
図2】
図2は、アナログアッセイ手順の概念図である。
【
図3】
図3は、アナログアッセイ結果のシミュレーションである。
【
図4】
図4は、ディジタル分子アッセイシステムの一部の概念図である。
【
図5】
図5は、代替ディジタル分子アッセイシステムの一部の概念図である。
【
図6】
図6は、ディジタル分子アッセイ画像データの概念図である。
【
図7】
図7は、ディジタル分子アッセイデータの画像である。
【
図8】
図8は、ディジタル分子アッセイ結果のシミュレーションである。
【
図9】
図9は、クリップオンアッセイチップリーダーを有するモバイル電子デバイスを示す。
【
図10】
図10は、ディジタル分子アッセイに組み込みうるコードを例示する。
【
図11】
図11は、レポーター分子に及ぼすレポーターボリューム厚さの変動の影響を示す。この図では、1はレポーターボリュームを表し、2はレコーダーデバイスの表面を表し、3はレポーター分子を表し、且つ4はレポーター分子からレコーダーデバイスまでの光路を表す。
【
図12】
図12は、薄いレポーターボリューム及びその性質を示す。この図では、1はレポーターボリュームを表し、2はレコーダーデバイスの表面を表し、3はレポーター分子を表し、4はレポーター分子からレコーダーデバイスまでの光路を表し、且つ5はレポーター分子4に装着される又はそれを含有するより大きな粒子を表す。
【
図13】
図13は、光学スペクトルへの曲線当てはめ法の適用を示す。水平軸はnm単位の波長を表し、且つ垂直軸は光学シグナルの強度を表す。
【
図14】
図14は、強結合レポーター分子(上側の曲線)及び弱結合レポーター分子(下側の曲線)の結合等温線プロットを示す。
【
図15】
図15は、低レポーター分子飽和におけるアナライト濃度の決定に及ぼす誤差の影響を示す。水平軸はアナライト濃度であり、且つ垂直軸は結合/全体レポーター分子濃度比である。1で表される濃色の水平及び垂直の矢印は、レポーター分子濃度及びアナライト濃度の「適正」決定を表す。2で表される薄色の水平及び垂直の矢印は、レポーター分子濃度及びアナライト濃度の「不適正」決定を表す。
【
図16】
図16は、高レポーター分子飽和におけるアナライト濃度の決定に及ぼす誤差の影響を示す。水平軸はアナライト濃度であり、且つ垂直軸は結合/全体レポーター分子濃度比である。1で表される濃色の水平及び垂直の矢印は、レポーター分子濃度及びアナライト濃度の「適正」決定を表す。2で表される薄色の水平及び垂直の矢印は、レポーター分子濃度及びアナライト濃度の「不適正」決定を表す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
モバイル電子デバイスで生化学的アッセイを実施する大きな需要が存在するが、従来のアッセイを単純に小型化して専門臨床検査施設の制御環境外でそれを実施する試みは、これまで成功していない。従来の生化学的アッセイは、本質的にアナログ測定であるため、確実に小型化することができない。
【0007】
ディジタルアッセイは、次の少なくとも3つの方法でアナログアッセイに固有の不確実性を排除する。(1)ディジタルアッセイは、アナログノイズ耐性の高いバイナリーイベントに基づく。(2)ディジタルアッセイは、アナログアッセイにおける不活性アッセイ分子の未知画分に由来する誤差を排除する。(3)ディジタルアッセイは、不均一な照明などの空間不均一性に伴う問題を排除する。
【0008】
たとえば、既知濃度の抗体と混合されたサンプルで抗原濃度を測定するように設計された抗原-抗体アッセイを考えられたい。このアッセイでは、抗原に結合する抗体が結合しないものとは異なる光学シグナルを発する光学リードアウトが得られる。(たとえば、非結合抗体はシグナルを発しないものでありうる。)抗原-抗体結合の親和性を考慮して、バルク光学リードアウトシグナルは抗原濃度の推定に使用しうる。
【0009】
この手順は、厳格な品質管理下の専門検査施設環境でかなり良好な機能を可能にしうる。しかしながら、悲惨なことに、現場環境でモバイルデバイスで実施したとき機能しない。従来のアナログ生化学的アッセイはデリケートであり、セルフォン、タブレット、及び類似のデバイスで実施したときかなり不正確な結果を与える。
【0010】
問題点の1つは、厳格な検査施設プロトコルを用いないと推測される既知濃度の抗体の大部分が不活性になるおそれがあることである。現場環境では、抗体の10%~100%のいずれかは、不適正な取扱い、汚染、変性、及び他の問題が原因で不活性化されるおそれがある。さらに悪いことに、不活性抗体の画分は未知である。それは観測不能であり、観測データを平均することにより排除できない系統誤差となる。非結合抗体の画分及び不活性抗体の画分は交絡するので、それらのシグナルは識別不能である。
【0011】
ディジタルアッセイは、何百万もの結果を平均するのではなく、アナライトとレポーター分子との間、たとえば、抗原と抗体又は相補的ヌクレオチド配列との間の個別の結合イベントをカウントすることにより、この問題を軽減又は排除する。モバイルデバイスは、何百万もの生化学的イベント、すなわち、1イベント/ピクセル又は何千万イベント/露光程度のサンプリングが可能な高品質カメラを備えているので、ディジタルアッセイに好適である。モバイルデバイスは、画像解析のための顕著な処理能力並びに結果報告及び所要によりオフロード処理のための通信機能も備えている。
【0012】
ディジタルアッセイでは、画像中のフィーチャーを選択してバリッド又はヌルとして分類する。たとえば、位置、明るさ、波長、又は形状に関して特定の判定基準を満たさないものが画像中にあれば、いずれもヌルフィーチャーに含める。不活性抗体は、通常のヌルフィーチャー源であるが、不規則なサンプル照明、不正確な光学アライメント、サンプルの不規則性はすべて、不適正制御下のモバイル環境及び他のシナリオにおける通常の問題であり、これらもまた一因となる。ディジタルアッセイでは、ヌルフィーチャーはデータ解析で廃棄され、バリッドフィーチャーのみがアッセイ結果に寄与する。バリッドフィーチャーは結合又は非結合としてカウントされ、これらのみが利用可能となる。あり又はなし、1又は0。ディジタルアッセイでは、463個のバリッドフィーチャーが結合としてカウントされ、且つ886個のフィーチャーが非結合としてカウントされる場合、結合画分は、463/(463+886)=463/1349=0.343である。このような結果はディジタルプロセスから得られる。既知のアナライト結合親和性と組み合わせたとき、それは所望のアナライト濃度を提供する。ヌルとして分類されるイベントの画分は、結果に差を生じさせない。
【0013】
ディジタルであるのはアッセイ自体であることを念頭におくことが役に立つ。こうした概念は、アナログ結果のユビキタスなディジタル化とはなんら関係がない。アナログアッセイにより生成されるシグナルは、分析又は記憶のためにディジタル化しうるが、アナログシグナルをディジタル化してもそれに「焼き付けられた」系統誤差を除去できない。類推として、アナログ装置を用いて行われる音楽録音は、録音がディジタル記憶されるとしても、アナログ記録プロセスで音楽と不可分な静的なポップ及びヒスを保持する。
【0014】
次に、図面に目を向けると、
図1はアナログアッセイの概念説明図である。キュベットはサンプルを含有する。サンプルは、たとえば、抗原と抗体とを含有する溶液でありうる。抗体は、光学励起によりインテロゲートされたとき抗原分子への結合により新たに形成された抗体-抗原複合体が光学シグナルを発するように標識しうる。光学シグナルは、スペクトル測定結果すなわち光強度対波長でありうる。キュベットは、たとえ小サンプルボリュームを保持しうるとしても、ちょうど数ミリリットルが通常のサイズであり、何十億もの抗体分子及び抗原分子を含有する。観測スペクトルは、何十億もの結合された標識抗体-抗原複合体により発せられる複合スペクトルである。しかし、抗体の未知画分は機能せず、アグリゲートに詰め込まれたり、変性したり、又は他の問題を有していたりするので、抗原に結合できない。
【0015】
図2は、アナログアッセイ手順の概念図である。アッセイは、未知抗原濃度と抗体濃度との混合から始まる。活性抗体(抗原に即結合可能)と不活性抗体(抗原に結合不能又は利用不能)との比は未知である。専門検査施設環境では、熟練技術者は、制御環境下で厳密な手順に従って活性対不活性の比を高く又は少なくとも一貫して維持可能である。しかしながら、現場環境又はポイントオブケア環境では、活性抗体対不活性抗体の比はかなり低く、さらに悪いことにまったく一貫性がない。
【0016】
活性抗体は、抗原-抗体親和性、抗原濃度、及び活性抗体の未知濃度により決定される速度で抗原に結合する。
【0017】
図3は、アナログアッセイ結果のシミュレーションである。バルクスペクトル(太い実線の曲線)は、アナログアッセイで観測されるもの(「スペクトル出力」)を表す。多数の薄い破線の曲線は、単一の抗原-抗体結合イベントのスペクトルを表す。しかしながら、これらのスペクトルは、アナログアッセイで観測できない。
図3のシミュレーションでは、非結合活性抗体は、495nm近傍の波長の光を発し、一方、結合状態の活性抗体は505nm近傍の波長の光を発する。未知数の不活性抗体は光を発しない。つまり、バルクスペクトルは、すべての活性抗体の画分として結合抗体の数を測定するのに十分な情報を提供しない。
【0018】
実際の実験では、不活性抗体が依然として光を発しうるが抗原結合に関する情報を提供しないので、状況はさらに悪くなる。それは単に系統誤差の一因になるにすぎない。
【0019】
図4は、ディジタル分子アッセイシステムの一部の概念図である。
図4に例示されるディジタル分子アッセイは、たとえばスマートフォンカメラで実施されるモバイル暗視野顕微鏡法によりプラズモンナノ粒子サンドイッチ型イムノアッセイの画像をキャプチャーする例を示す。このアッセイでは、全内部反射(TIR)基材は、対象抗原に結合するように設計されたキャプチャー抗体を用いて機能化されたプラズモンナノ粒子で被覆される。同一又は異なる抗体(すなわち、抗原の等価な部分又は異なる部分に結合するように設計されたもの)を用いて機能化された追加のプラズモンナノ粒子は、サンプル中の対象抗原と共に導入される。励起光は、エッジから基材に導入される。結合抗体は、非結合抗体や不活性抗体とは異なる光学シグナルを発する。抗体は、多くの因子たとえば分解又はより一般的にはアグリゲーションが原因で不活性になりうる。異なるサイズ、明るさ、スペクトル、形状などとして異なるシグナルが画像に現われうるとともに、これらの因子の1つ以上を考慮して活性又はヌルとして選別されうる。
【0020】
図5もまた、ディジタル分子アッセイシステムの一部の概念図であり、対象アナライトDNA/RNAの一部に相補的なDNA又はRNAのキャプチャーヌクレオチド配列を用いて機能化されたプラズモンナノ粒子でTIR基材が被覆される以上の例の代替案である。異なるcDNA/cRNA(すなわち、アナライトDNA/RNAの他のセクションに結合するように設計されたもの)を用いて機能化された追加のプラズモンナノ粒子は、サンプル中のアナライトDNA/RNAと共に導入される。結合DNA/RNA配列は、非結合抗体や不活性抗体とは異なる光学シグナルを発する。
【0021】
図6は、ディジタル分子アッセイの画像データ、すなわち、暗視野顕微鏡として動作するモバイルデバイスカメラによりキャプチャーされた画像の一部の概念図である。画像は、結合抗原-抗体複合体により生成されたスポットと、非結合抗体のスポットと、不活性抗体又はヌル抗体のスポットと、いくつかの理由のいずれかで欠損した画像領域でありうる欠損ゾーンと、を含む。画像の照明は、不均一で均一からは程遠いものでありうる。空間照明パターンが既知である限り、たとえば照明波長で画像を記録することにより、画像中のいずれの点の結果も既知の照明に規格化しうる。
【0022】
図7は、顕微鏡として動作するモバイルデバイスカメラにより得られたディジタル分子アッセイデータの描画図である。図は、本開示のようにグレースケールで示したとき元のカラー画像と比較してそれほど印象的でないので、黒白の提出物に手動で強調処理を行った。白色の円は、活性抗体に対応する画像中のスポットの周りに描かれている。画像中の他のスポットはすべて、ヌル抗体又は不活性抗体である。活性抗体のうち、4/11は結合されており、これらは例として白色の円の周りに灰色の円を用いて示される。活性対ヌル及び結合対非結合の同定は、画像解析ソフトウェアにより実施される。画像解析は、モバイルデバイスで実施しうる。代替案として、モバイルデバイスは、画像を他のプロセッサーに送信しうる。たとえば、画像をコンピュータークラウドの仮想サーバーに送信しうる。
【0023】
ディジタル分子アッセイで結合抗体と非結合抗体とを識別する画像処理の例として、
図8は、ディジタルアッセイ結果のシミュレーションである。
図8は、ディジタルアッセイの画像中の6つのスポットのスペクトルを表す。結合対非結合の判定基準は、スポットのスペクトルが500nm超又は未満の波長に位置するかである。図に示される範囲に含まれないスペクトルを有するスポットはヌルである。上から下の方向に、スペクトルは、非結合、非結合、結合、不活性(ヌル)、非結合、及び結合の抗体部位のスポットに対応する。2つの陽性、3つの陰性、及び1つのヌルの結果が存在する。そのため、結合抗体の分率は2/5である。上述したように、実際の実験は、不活性抗体の光学シグナルにより複雑化される。そのため、選択判定基準は、ある特定の波長超又は未満のスペクトル中心よりも複雑化しうる。例として、判定基準は、狭スペクトルバンド、強度判定基準、スペクトル形状、及び空間形状を含みうる。
【0024】
選択判定基準は、空間照明パターンに関する知見も考慮に入れる。発光波長で測定された強度は、画像中の同一位置の励起波長の照明強度により規格化される。これは、アナログ測定で問題となる空間不均一性の問題を排除する。アッセイは、各粒子の「励起入力」及び「スペクトル出力」を考慮して粒子の1つ1つに基づいてディジタル方式で進められる。所与の粒子の結果は、0又は1のみでありうる。
【0025】
ディジタル分子アッセイは、クリップオンアッセイチップリーダーを備えたモバイル電子デバイスを示す
図9に例示されるモバイルデバイスを用いて実施しうる。たとえば、アッセイチップリーダーは、モバイルデバイスカメラを暗視野イメージングに適合させる光学コンポーネントを含みうる。アッセイチップは、アナライト溶液を受け取るように設計され、且つ抗体でプレコートしうる。
【0026】
ディジタルアッセイはイメージング及び画像解析に基づくので、コードは、アッセイチップ上に配置しうるとともに、結合イベントの測定に使用された同一の画像から読み取りうる。
図10は、ディジタルアッセイに組み込みうるコードを例示する。例としては、バーコード、クイックレスポンス(QR)コード、工学操作波長の光を発する量子ドット、温度、湿度、光暴露、ガス暴露、及び他の環境データのナノ粒子レポーターが挙げられる。特定のアッセイタイプ又はサンプル識別を表す識別マークも含まれうる。
【0027】
以上で考察した例は、抗原-抗体結合を用いて提示される。抗原及び抗体は、アッセイリードアウトのために光学レポーター分子に結合しうる。他の架橋機序を含むアッセイもディジタル方式で実施しうる。たとえば、相補的なDNA断片又はRNA断片が抗原分子及び抗体分子の代わりをするディジタル分子アッセイとして、光学レポーター分子に結合されたDNA断片又はRNA断片のハイブリダイゼーションに基づくアッセイを実施しうる。例として、短いDNA配列の第1の部分を光学レポーターに結合しうるとともに、短いDNA配列の第2の部分を他の光学レポーターに結合しうる。第1及び第2の部分がより長い相補的DNA配列に結合したとき、2つの光学レポーターは近接一体化されることにより、より遠く離れたときと比較して異なる光学シグナルを発する。このようなアッセイは、相補的DNA配列の検出に使用しうる。
【0028】
結論として、アナログアッセイを用いた専門検査施設の機器の代わりにモバイルデバイスを使用しても徒労に終わる。ディジタル分子アッセイは、単一アナライト分子とレポーター分子との間の個別の相互作用のリードアウトを粒子の1つ1つで可能にすることにより、従来のアッセイに付随する実用上の問題に関わらないようにする。アナログアッセイに見いだされる通常の系統誤差源を低減又は排除した診断結果を提供するためにモバイルデバイスのイメージング及び画像処理の能力を利用して、ディジタル分子アッセイは、医師及び患者が重要な健康情報を迅速且つ安価に得るのに役立つポイントオブケア診断試験などの現場での評価並びに広範にわたる用途でデータの収集及び解析を可能にする。
【0029】
用語及び定義
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。
【0030】
本明細書で用いられる場合、以下の用語は、指定された意味を有する。
【0031】
値の範囲が開示され且つ「n1~n2」という表記が用いられた場合(ただし、n1及びn2は数である)、とくに明記されていない限り、この表記は、数自体及びそれらの間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、端値を含めてそれらの間の整数であってもそれらの間で連続したものであってもよい。例として、炭素は整数単位で現れるので、「2~6個の炭素」という範囲は、2、3、4、5、及び6個の炭素を含むことが意図される。例として、「1~3μM(マイクロモル)」という範囲と比較されたい。この場合、1μM、3μM、及びいずれかの有効桁数までそれらの間のすべて(たとえば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが意図される。
【0032】
「約」という用語は、本明細書で用いられる場合、それにより修飾された数値が誤差の許容範囲内で変動可能な値を表すことを認めることが意図される。データの図又は表に与えられた平均値に対する標準偏差などの特定の誤差の許容範囲が挙げられていない場合、「約」という用語は、挙げられた値を包含する範囲、且つ有効数字を考慮して、その数値の切上げ又は切下げを行うことにより含まれる範囲を意味するものと理解すべきである。
【0033】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「確度」という用語は、真値に対する報告値又は推定値の近似度を意味するものとして用いられる。不正確な測定値、観測値、又は推定値は、真値から外れる。正確な測定値、観測値、又は推定値は、真値から外れない。
【0034】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「アナライト」又は「アナライト分子」という用語は、サンプル中の存在若しくは不在又は量が元々未知であり且つサンプル中の存在若しくは不在又は量に関する知見が有用でありうる分子又は粒子を記述するために用いられる。アナライトの例としては、バイオ分子、たとえば、ペプチド、タンパク質、サイトカイン、及びプリオン、抗体及びそのフラグメント、核酸(DNA/RNA)及びそれを含有する粒子、たとえば、ヒストン、小さな有機分子及びバイオ無機分子、たとえば、炭水化物、脂質、ホルモン、並びに代謝の中間体及び産物、マクロ分子、たとえば、マクロ環、バイオポリマー(たとえば、オリゴ糖、ポリフェノール、及びプラスチック)、並びにウイルス、ウイルス粒子、ウイルス産物(たとえば、ウイロカイン)が挙げられる。また、アナライトは、バイオマーカー、すなわち、生物の生物学的状態(たとえば、疾患状態や非疾患状態などの状態)に関連する並びに疾患、傷害、又は細胞若しくは生物の損傷の存在を報告しうる、組成物及び/若しくは分子又は組成物及び/若しくは分子の複合体としてカテゴリー化しうる。かかるマーカーが抗体又はそのフラグメントに結合したとき、それは抗原といいうる。本明細書に開示されたディジタル分子アッセイにより検出されるアナライトの有意(たとえば、正常及び異常)レベルの値は、関連技術分野の当業者に公知であろう。
【0035】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「エリア検出器」という用語は、発生源の画像を記録可能な、すなわち、入射光学シグナル強度だけでなく光学シグナル源も記録可能な記録デバイスを意味する。エリア検出器の通常の例は、テレビカメラ、ディジタルSLRカメラ、及びセルフォンカメラである。
【0036】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「アッセイチップ」という用語は、レポーター表面上にスポットされた又は他の形で堆積させたレポーター分子(たとえば光学レポーター分子)のマイクロアレイを意味し、任意に、光学レポーター分子のキャプチャーエレメントとアナライトとの間の相互作用を観測できるように、アナライトを含有するサンプルに暴露可能な比較的薄いフラットなキュベットたとえばスライドの中に閉じ込められる。アッセイチップの製造技術は、当技術分野で公知である。アッセイチップは、抗体、タンパク質、DNA、RNAなどを用いて機能化されたプラズモンナノ粒子を光学レポーター分子として含みうる。
【0037】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「アッセイチップリーダー」という用語は、アッセイチップからのシグナルを観測及び記録するためのシステム又はデバイスを意味する。アッセイチップリーダーは、本明細書に開示されるディジタル分子アッセイシステムの一部でありうるとともに、典型的には、アッセイチップを受け取るためのチャンバーと、イメージセンサー(たとえばカメラ)などの記録デバイスと、アッセイで収集されたデータをメモリーに送信するための手段と、任意に発光ダイオード(LED)などの光源と、を含む。そのほか、アッセイチップリーダーは、マイクロ流体ハードウェア、たとえば、ポンプ、チャネル、溶液用チャンバー、バルブ、ミキサーなど、並びに少なくともなんらかのデータ解析を実施するためのハードウェア及び/又はソフトウェアを含有しうる。ある特定の実施形態では、アッセイチップリーダーは、スマートフォン又は他のモバイルデバイスと連動させてポータブルアッセイシステムの一部として使用とうるとともに、小型マイクロプレート及びチップリーダーは、当技術分野で公知である。
【0038】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「結合等温線」という用語は、アナライトのさまざまな濃度におけるアナライト分子への結合レポーター分子の結合度を意味する。一般的には、結合/全体レポーター分子比として定義可能な結合度は、アナライト濃度の増加に伴って増加して、ほぼすべてのレポーター分子がアナライト分子に結合されると最終的には1に近づく。
【0039】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「ビニング」という用語は、2つ以上のピクセルからのシグナルを組み合わせて1つのシグナルにすることに意味する。ビニングは、シグナル対ノイズを改善するために空間分解能を犠牲にできるとき使用可能である。例として、「2×2のビニング」とは、ピクセルを2×2の正方形にグループ化して各正方形に含まれるピクセルからのシグナルの和をとることを意味する。
【0040】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「バイオ分子」という用語は、限定されるものではないがペプチド、タンパク質、核酸、糖、単糖及び多糖、脂質、リポタンパク質、全細胞などを含めて、検出(定性的又は定量的のどちらか)が望まれうるいずれかのタイプの有機分子又はバイオ無機分子を含む。
【0041】
本明細書で用いられる「カメラ」という用語は、ビジュアル画像をたとえばディジタル画像として記録するタイプのイメージセンサーを意味する。「メガピクセルカメラ」とは、百万又は何百万ピクセル/画像を記録可能なカメラのことである。多くのスマートフォンカメラは、10メガピクセル又はそれ以上のカメラを含む。
【0042】
本明細書で用いられる「通信インターフェース」という用語は、本明細書で用いられるデバイス又はシステムから他のデバイス又はシステムにデータを転送するための手段を意味する。たとえば、無線通信インターフェースの例としては、モバイルフォンなどの無線デバイスで使用されるもの、たとえば、セルラー、wi-fi、及びBluetooth(登録商標)の技術が挙げられる。
【0043】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「濃度」という用語は、単位溶液ボリューム当たりの溶液中溶質量を意味する。濃度は、モル濃度、すなわち、溶液1リットル当たりの溶質モル数、又は数濃度、すなわち、溶液1リットル当たりの溶質分子数で特定可能である。モル濃度及び数濃度は、容易に相互変換可能である。本明細書で用いられる「濃度」という用語は、従来の「溶液」の定義の範囲外の系、たとえば、固体担体にテザー連結された分子を含有する系を含むように拡張される。
【0044】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「デコンボリューション」という用語は、複数の光学レポーター分子の個別の光学シグナルで構成される集団の光学シグナルから個別の光学レポーター分子の個別の光学シグナルを決定する方法を記述するために用いられる。デコンボリューションは、スペクトル領域が部分的にオーバーラップし組み合わされて単一の集団のスペクトルを形成した個別の光学レポーター分子の個別の分光特性を決定するために曲線当てはめ技術を使用可能である。デコンボリューションは、検出器の空間領域が部分的にオーバーラップし組み合わされて単一の集団の画像を形成した個別の光学レポーター分子の個別の画像を決定するために曲線当てはめ技術を使用可能である。デコンボリューション技術が光学レポーター分子の小グループにとくに有用であることは理解されよう。
【0045】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「検出する」又は「検出」という用語は、サンプル中のアナライトの実在、存在、又は実態の決定方法を記述するために用いられる。
【0046】
「発散」という用語は、記録デバイスに含まれる垂直からの逸脱を意味する。理想化されたエリア検出器型記録デバイスは、検出器の平面に垂直な光線のみを受け取るであろう。実際のエリア検出器は、垂直からある角度ずれて到達する光線を許容するであろう。この特性はシグナル対ノイズを増加させる可能性があるが(検出器がより多くの光線を受け取るため)、それに加え、許容される発散角の大きさ、及びエリア検出器のピクセルサイズ、及びエリア検出器とサンプル平面との間の距離に依存して、空間分解能を減少させる。
【0047】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「インキュベートする」という用語は、アナライト分子を潜在的に含有する可能性のあるサンプルにレポーター分子を暴露するプロセスを記述するために用いられる。
【0048】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「オブロング」という用語は、等しくない寸法を有するボリュームを記述するために用いられる。オブロングボリュームの例としては、端面間の距離が端面に平行な寸法よりも有意に長いか又は有意に短いかのどちらかであるプリズム又はシリンダーが挙げられる。オブロングボリュームのさらなる例は、1つの軸が他の軸よりも有意に長いか又は有意に短いかのどちらかである楕円体である。
【0049】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「光路」という用語は、レポーター分子から検出器までの経路を記述するために用いられる。
【0050】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「光学レポーター分子」又は同義的に「光学レポーター」という用語は、アナライト分子の存在若しくは不在又は量若しくは濃度を光学シグナルで報告可能なレポーター分子を記述するために用いられる。光学レポーター分子に接触するアナライト分子の存在又は不在(任意に、ある特定のアッセイ方式では他の光学レポーター分子を併用する)は、光学シグナルの変化を誘発する。アナライトに結合された光学レポーター分子(「結合光学レポーター分子」)は、アナライトに結合されない光学レポーター分子(「非結合光学レポーター分子」)とは異なるシグナルを発するであろう。
【0051】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「光学シグナル」という用語は、光学レポーター分子に由来するシグナルを記述するために用いられる。光学シグナルは、スペクトルの可視領域内又はスペクトルの可視領域外に含まれうる。シグナルは、たとえば、
・光の波長、
・シグナルの強度、
・明るさ、
・シグナル又はスペクトルの形状、
・スペクトルバンドの存在又は不在、
・吸収バンドの吸光係数、
・吸収バンドのλmax、
・発光バンドの量子収率、又は
・発光バンドの蛍光異方性
でありうる。光学レポーター分子の光学シグナルは、アナライト分子の結合により変化しうる。結合による光学シグナルの変化は、以下:
・特定波長超又は未満のスペクトル中心のシフト、
・最大強度(λmax)波長のシフト、
・シグナルのサイズ又は強度の変化、
・明るさの増加又は減少、
・シグナル形状の変化、
・スペクトルバンドの存在又は不在、
・スペクトル形状の変化、
・吸収バンドの吸光係数の変化、
・吸収バンドのλmaxの変化、
・発光バンドの量子収率の変化、及び
・発光バンドの蛍光異方性の変化
の1つでありうる。
【0052】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「ピクセル」という用語は、他のピクセルとは独立してシグナルを測定可能である、イメージセンサーなどのエリア検出器上の領域を意味する。エリア検出器は、通常、エリア検出器製造業者により決定された各ピクセルサイズ及び二方向のピクセル数で二次元グリッドのピクセルに分割される。
【0053】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「精度」という用語は、報告値又は推定値に伴う誤差の推定を意味するものとして用いられる。低精度の測定、観測、又は推定は、実際の値に対するこの数値の近似度が高度の不確実性を伴う。高精度の測定、観測、又は推定は、実際の値に対するこの数値の近似度が低度の不確実性を伴う。精度は、多くの場合、グラフ上のエラーバー又は数値の範囲を用いることにより定量可能である。たとえば、10.5±0.1として報告された推定値は、真値が10.4~10.6である可能性が非常に高く真値がこの範囲外にある可能性がゼロではないが小さいことを示唆する。
【0054】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「オリゴペプチド」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、ペプチド結合により連結一体化された2つ以上のアミノ酸を含むいずれかの組成物を含む。ポリペプチドが20天然アミノ酸と通常いわれる20アミノ酸以外のアミノ酸を含有しうることは、分かるであろう。また、ポリペプチドは、末端アミノ酸を含めて当技術分野で公知の任意の手段により修飾された(天然又は非天然にかかわらず)1つ以上のアミノ酸を含みうる。ポリペプチド修飾の例としては、たとえば、グリコシル化又は他の翻訳後修飾が挙げられる。本開示のポリペプチドに存在しうる修飾としては、限定されるものではないが、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリケーション、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、たとえば、アルギニル化、及びユビキチン化が挙げられる。
【0055】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「定性分析」という用語は、サンプル中のアナライト分子の不在又は存在の決定方法を記述するために用いられる。いくつかの実施形態では、定性分析法は、サンプル中のアナライトの単一分子の存在又は不在を報告する。いくつかの実施形態では、定性分析法は、ある特定の閾値未満のレベルでアナライトを含有するサンプル中のアナライトの不在を不正確に報告する。
【0056】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「定量分析」という用語は、サンプル中のアナライト分子の量の決定方法を記述するために用いられる。
【0057】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「記録デバイス」という用語は、光学シグナルを記録するためのデバイスを意味する。ある特定の実施形態では、光学シグナルは電気シグナルに変換される。ある特定の実施形態では、記録デバイスは電荷結合(「CCD」)デバイスである。ある特定の実施形態では、記録デバイスは相補型金属酸化物半導体(「CMOS」)デバイスである。
【0058】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「レポーター分子」という用語は、アナライト分子の存在若しくは不在又は量若しくは濃度のどれかを報告可能であり且つ単独又は他のレポーター分子との組合せでディジタル分子アッセイにおいて検出可能なシグナルを生成可能である分子を記述するために用いられる。典型的には、レポーター分子はアナライト分子に結合するであろう。また、レポーター分子/アナライト分子複合体は1つ以上の分光特性が有意に異なるであろう。レポーター分子は、抗体又はそのフラグメント、核酸、タンパク質、及びペプチドでありうるとともに、そのいずれかは、化学修飾又は生化学修飾を行いうる。レポーター分子はまた、生化学的起源の部分と合成部分とを含むキメラ分子でありうる。例としては、抗体機能化プラズモンナノ粒子及びヌクレオチド機能化プラズモンナノ粒子が挙げられる。レポーター分子は、核酸又はペプチドのどちらかをベースとするアプタマーでありうる。
【0059】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「レポーターボリューム」という用語は、レポーター分子が位置する測定デバイスのボリュームを記述するために用いられる。レポーターボリュームは、サンプルコンパートメントと実質的に同一でありうるか、又はレポーターボリュームはより小さくしうる。ある特定の実施形態では、レポーター分子に対する光路に平行なレポーターボリュームの寸法は、小さいであろう。ある特定の実施形態では、レポーターボリュームは単層を構成するであろう。
【0060】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「サンプル」という用語は、対象アナライトを含有する組成物を記述するために用いられる。サンプルは、多くの場合、流体状態たとえば水性溶液であろう。サンプルは、化学的又は生物学的なものでありうる。試験対象源に由来する血液、血漿、若しくは水、又は植物、動物、若しくはヒトの組織サンプルに由来する抽出物は、生物学的サンプルの例である。化学的サンプルは、生物起源の物質を含有していないもの、たとえば、石油化学廃棄物又は産業廃棄物を含有する水サンプルでありうる。生物から取り出される生物学的サンプルとしては、限定されるものではないが次のもの:血液、血清、血漿、尿、粘液、唾液、痰、糞便、及び他の生理学的分泌物、さらには組織抽出物、及び又は対象標的粒子を含有しうる身体のいずれかの他の構成要素が挙げられうる。他の類似の検体、たとえば、細胞又は組織の培養物又は培養ブロスも対象となる。
【0061】
生物学的サンプルは、新鮮であっても貯蔵されていてもよい(たとえば、血液バンクに貯蔵された血液又は血液画分)。生物学的サンプルは、本発明のアッセイのための特別に得られた体液であっても、本発明のアッセイのためのサブサンプル化しうる他の目的で得られた体液であってもよい。一実施形態では、生物学的サンプルは全血である。全血は、標準的臨床手順を用いて被験者から得られうる。他の一実施形態では、生物学的サンプルは血漿である。血漿は、抗凝固処理血液の遠心分離により全血サンプルから得られうる。かかるプロセスは、白血球成分のバフィーコート及び血漿の上清を提供する。他の一実施形態では、生物学的サンプルは血清である。血清は、抗凝固剤フリーのチューブに採取された全血サンプルの遠心分離により得られうる。血液は、遠心分離前に凝固させてもよい。遠心分離により得られる帯黄帯赤色流体は血清である。他の一実施形態では、サンプルは尿である。サンプルは、所要により適切な緩衝溶液への希釈により前処理したり、ヘパリン処理したり、所望により濃縮したり、又はいくつかの方法のいずれかにより、たとえば、限定されるものではないが超遠心分離、高速液体クロマトグラフィー(FPLC)分画、若しくはデキストラン硫酸によるアポリポタンパク質B含有タンパク質の沈殿、又は他の方法により分画したりしうる。生理pHのいくつかの標準的水性緩衝溶液のいずれか、たとえば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などを使用可能である。
【0062】
結合現象に関して本明細書で用いられる「飽和」という用語は、ほぼすべてのレポーター分子がアナライト分子に結合された状態を意味する。飽和状態の特徴は、アナライトの濃度の増加がレポーター分子の結合度の小さな増加を引き起こすことである。
【0063】
本明細書で用いられる「スマートフォン」という用語は、モバイルオペレーティングシステムと、音声、SMS、及びインターネットデータ通信、典型的にはwi-fiのための統合モバイルブロードバンドセルラーネットワーク接続と、を備えたハンドヘルドパーソナルコンピューターを意味する。
【0064】
本明細書で用いられる「タブレットコンピューター」又は「タブレット」という用語は、典型的には、モバイルオペレーティングシステム、LCDタッチスクリーンディスプレイ、再充電可能電池、及び無線(任意にセルラー)通信インターフェースを備えた薄型でフラットなポータブルパーソナルコンピューターを意味する。
【0065】
実施形態
以下の実施形態により本発明をさらに説明する。
【0066】
実施形態1。本開示は、
少なくとも1つのタイプのアナライト分子と共にインキュベートされた少なくとも1つのタイプの光学レポーター分子により発せられる複数のシグナルの画像中で、
各タイプの光学レポーター分子に対して、結合及び非結合光学レポーター分子を個別に解像することにより画像中でアナライト分子に結合された離散光学レポーター分子(「結合光学レポーター分子」)の数とアナライトに結合されていない離散光学レポーター分子(「非結合光学レポーター分子」)の数とを決定することと、
光学レポーター分子の全数に対する分率として又はその分率に比例するものとして結合光学レポーター分子の数からアナライトの存在又は濃度を決定することと、
を含む、サンプル中の少なくとも1つのアナライトの存在又は濃度の決定方法を提供する。
【0067】
実施形態2。ある特定の実施形態では、本開示は、
少なくとも1つのタイプのアナライト分子と共にインキュベートされた少なくとも1つのタイプの光学レポーター分子により発せられる複数のシグナルの画像中で、
各タイプの光学レポーター分子に対して、
ある特定の画像領域で結合及び非結合光学レポーター分子を個別に解像することにより、及び
2つ以上の光学レポーター分子のグループが解像されないある特定の他の画像領域でグループ中の結合光学レポーター分子及び非結合レポーター分子の数を提供する計算又は数学デコンボリューションを実施することにより、
画像中でアナライト分子に結合された離散光学レポーター分子(「結合光学レポーター分子」)の数とアナライトに結合されていない離散光学レポーター分子(「非結合光学レポーター分子」)の数とを決定することと、
光学レポーター分子の全数に対する分率として又はその分率に比例するものとして結合光学レポーター分子の数からアナライトの存在又は濃度を決定することと、
を含む、サンプル中の少なくとも1つのアナライトの存在又は濃度の決定方法を提供する。
【0068】
実施形態3。光学レポーター分子がレポーター表面上にアレイ化される、実施形態1又は2に記載の方法。
【0069】
実施形態4。光学レポーター分子がランダムにアレイ化される、実施形態3に記載の方法。
【0070】
実施形態5。光学レポーター分子があるパターンでアレイ化される、実施形態3に記載の方法。
【0071】
実施形態6。結合光学レポーター分子の分率がサンプルの導入前に記録された非結合光学レポーター分子の数から決定される、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0072】
実施形態7。少なくとも1つのアナライトの濃度が決定される、実施形態1~6のいずれか一つに記載の方法。
【0073】
実施形態8。サンプルが生物学的又は化学的サンプルである、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法。
【0074】
実施形態9。アナライトが、
・ヌクレオチド配列、及び
・抗原
から選択される、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法。
【0075】
実施形態10。光学レポーター分子が、
・アナライトに結合する1つ以上のヌクレオチド配列、及び
・アナライトに結合する抗体又はそのフラグメント
から選択されるキャプチャーエレメントを含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の方法。
【0076】
実施形態11。各光学レポーター分子がプラズモンナノ粒子を含む、実施形態#1~10のいずれか一つに記載の方法。
【0077】
実施形態12。光学レポーター分子が、1つ以上のプラズモンナノ粒子上に機能化された1つ以上のヌクレオチド配列を含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載の方法。
【0078】
実施形態13。光学レポーター分子が、1つ以上のプラズモンナノ粒子上に機能化された1つ以上の抗体を含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載の方法。
【0079】
実施形態14。光学レポーター分子からのシグナルが、
・光の波長、
・シグナルの強度、
・明るさ、
・シグナル又はスペクトルの形状、及び
・スペクトルバンドの存在又は不在
から選択される、実施形態1~13のいずれか一つに記載の方法。
【0080】
実施形態15。光学レポーター分子へのアナライトの結合により1つのシグナルが生成される、実施形態1~14のいずれか一つに記載の方法。
【0081】
実施形態16。光学レポーター分子へのアナライトの結合及びアナライトへの第2のレポーター分子の結合によりもう1つのシグナルが生成される、実施形態1~15のいずれか一つに記載の方法。
【0082】
実施形態17。結合光学レポーター分子及び非結合光学レポーター分子により生成されるシグナルが異なる、実施形態1~16のいずれか一つに記載の方法。
【0083】
実施形態18。結合及び非結合光学レポーター分子が、以下:
・特定波長超又は未満のスペクトル中心のシフト、
・シグナルのサイズ又は強度の変化、
・明るさの増加又は減少、
・シグナル形状の変化、
・スペクトルバンドの存在又は不在、及び
・スペクトル形状の変化
により個別に解像される、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法。
【0084】
実施形態19。光学レポーター分子により発せられるシグナルが光の波長である、実施形態1~18のいずれか一つに記載の方法。
【0085】
実施形態20。結合及び非結合光学レポーター分子が特定波長超又は未満のスペクトル中心のシフトにより個別に解像される、実施形態1~19のいずれか一つに記載の方法。
【0086】
実施形態21。各固着光学レポーター分子が空間分解可能なように、光学レポーター分子の少なくともいくつかが表面(レポーター表面)に固着される、実施形態1~20のいずれか一つに記載の方法。
【0087】
実施形態22。固着光学レポーター分子がグリッド状又はその近似形状でアレイ化される、実施形態21に記載の方法。
【0088】
実施形態23。各固着光学レポーター分子が記録デバイスの1つのピクセルとして解像可能である、実施形態21に記載の方法。
【0089】
実施形態24。活性光学レポーター分子及び不活性光学レポーター分子が異なる光学シグナルを発する、実施形態1~23のいずれか一つに記載の方法。
【0090】
実施形態25。方法が、画像中でアナライト分子に結合された離散活性光学レポーター分子(「結合活性光学レポーター分子」)の数とアナライトに結合されていない離散光学レポーター分子(「非結合活性光学レポーター分子」)の数とを決定する、実施形態1~24のいずれか一つに記載の方法。
【0091】
実施形態26。サンプルの不均一照明がアナライトの存在又は濃度の決定に影響を及ぼさない、実施形態1~25のいずれか一つに記載の方法。
【0092】
実施形態27。画像が既知の照明波長で記録される、実施形態1~26のいずれか一つに記載の方法。
【0093】
実施形態28。画像中のいずれの点の結果も既知の照明に規格化される、実施形態1~27のいずれか一つに記載の方法。
【0094】
実施形態29。発光波長で測定された強度が画像中の同一位置の励起波長の照明強度により規格化される、実施形態1~28のいずれか一つに記載の方法。
【0095】
実施形態30。画像を記録したセンサーの1つ以上のセクションの欠損がアナライトの存在又は濃度の決定に影響を及ぼさない、実施形態1~29のいずれか一つに記載の方法。
【0096】
実施形態31。1つのタイプの光学レポーター分子が使用される、実施形態1~30のいずれか一つに記載の方法。
【0097】
実施形態32。2つ以上のタイプの光学レポーター分子が使用される、実施形態1~31のいずれか一つに記載の方法。
【0098】
実施形態33。方法がサンドイッチ型アッセイを利用する、実施形態1~32のいずれか一つに記載の方法。
【0099】
実施形態34。各固着光学レポーター分子が空間分解可能なように、第1のタイプの光学レポーター分子が表面(レポーター表面)に固着される、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
【0100】
実施形態35。第1のタイプの光学レポーター分子が、プラズモンナノ粒子上に機能化されたアナライトキャプチャーエレメントを含む、実施形態1~34のいずれか一つに記載の方法。
【0101】
実施形態36。第2のタイプの光学レポーター分子がサンプルと共に又はその後に添加される、実施形態1~35のいずれか一つに記載の方法。
【0102】
実施形態37。第2のタイプの光学レポーター分子が、プラズモンナノ粒子上に機能化されたアナライトキャプチャーエレメントを含む、実施形態1~36のいずれか一つに記載の方法。
【0103】
実施形態38。アナライトが抗原である、実施形態1~37のいずれか一つに記載の方法。
【0104】
実施形態39。各光学レポーター分子がキャプチャーエレメントとして抗体又はそのフラグメントを含む、実施形態38に記載の方法。
【0105】
実施形態40。アナライトがヌクレオチド配列である、実施形態1~37のいずれか一つに記載の方法。
【0106】
実施形態41。各光学レポーター分子がキャプチャーエレメントとしてアナライトヌクレオチド配列に相補的な1つ以上のヌクレオチド配列を含む、実施形態40に記載の方法。
【0107】
実施形態42。方法が、モバイルデバイスを含むディジタル分子アッセイシステムで実施される、実施形態1~41のいずれか一つに記載の方法。
【0108】
実施形態43。実施形態50~70のいずれか一つに記載のディジタル分子アッセイシステムで実施される、実施形態1~41のいずれか一つに記載の方法。
【0109】
実施形態44。以下:
抗原と共にインキュベートされた抗体を含む少なくとも1つのタイプの光学レポーター分子により発せられる複数のシグナルの画像中で、結合及び非結合光学レポーター分子を個別に解像することにより画像中で抗原に結合された離散活性抗体(「結合活性抗体」)の数と抗原に結合されていない離散活性抗体(「非結合活性抗体」)の数とを決定することと、
活性抗体の全数に対する分率として又はその分率に比例するものとして結合活性抗体の数から抗原の存在又は濃度を決定することと
を含む、サンプル中の抗原の存在又は濃度の決定方法。
【0110】
実施形態45。実施形態3~11及び13~39のいずれか一つに記載の限定を含む、実施形態44に記載の方法。
【0111】
実施形態46。実施形態50~70のいずれか一つに記載のディジタル分子アッセイシステムで実施される、実施形態45に記載の方法。
【0112】
実施形態47。以下:
a)標的ヌクレオチド配列の第1の部分に相補的な第1のキャプチャーヌクレオチド配列を含む光学レポーター分子、並びに
b)標的ヌクレオチド配列に結合された、標的ヌクレオチド配列の一部に相補的な第1のキャプチャーヌクレオチド配列を含む第1の光学レポーター分子及び標的ヌクレオチド配列の第2の部分に相補的な第2のキャプチャーヌクレオチド配列を含む第2の光学レポーター分子(「結合複合体」)、
により発せられる複数のシグナルの画像中で、
相補的ヌクレオチド配列の第1及び第2の部分を含む光学レポーター分子に結合された離散標的ヌクレオチド配列(「結合複合体」)の数を決定することと、
検出可能シグナルを発する光学レポーター分子の全数に対する分率としての結合複合体の数の分率として又はそれに比例するものとして標的ヌクレオチド配列の存在又は濃度を決定することと、
を含む、サンプル中の標的ヌクレオチド配列の存在又は濃度の決定方法。
【0113】
実施形態48。実施形態3~12及び13~37のいずれか一つに記載の限定を含む、実施形態47に記載の方法。
【0114】
実施形態49。システムが実施形態50~70のいずれか一つに記載される、実施形態48に記載の方法。
【0115】
実施形態50。以下:
・イメージセンサー、
・画像を表示可能なスクリーン、
・マイクロプロセッサー、
・メモリー、
・イメージセンサーによりキャプチャーされたデータの解析及びデータのディジタル分類が可能である、メモリーに記憶されてプロセッサーにより実行可能な画像解析ソフトウェア、及び
・任意に通信インターフェース
を含む、サンプル中のアナライトの濃度を決定するためのディジタルアッセイシステム。
【0116】
実施形態51。イメージセンサーが暗視野顕微鏡の一部として操作可能である、実施形態50に記載のディジタルアッセイシステム。
【0117】
実施形態52。イメージセンサーがメガピクセルカメラである、実施形態51に記載のディジタルアッセイシステム。
【0118】
実施形態53。イメージセンサーが相補的金属酸化物半導体(CMOS)カメラである、実施形態49~52のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0119】
実施形態54。光源又は他の電磁線源を追加的に含む、実施形態49~53のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0120】
実施形態55。光源が発光ダイオード(LED)を含む、実施形態49~54のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0121】
実施形態56。任意に取出し可能なサンプルチャンバーを追加的に含む、実施形態49~55のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0122】
実施形態57。以下:
・キャプチャーエレメントを用いて機能化されたプラズモンナノ粒子を含む光学レポーター分子が片側に固着されてガラス又はポリマーで作製されたレポーター表面、及び
・レポーター表面の反対側に接触する暗視野顕微鏡法に好適な導波路
を追加的に含む、実施形態49~56のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0123】
実施形態58。各固着光学レポーター分子が空間分解可能である、実施形態49~57のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0124】
実施形態59。固着光学レポーター分子がグリッド状又はその近似形状でアレイ化される、実施形態58に記載のディジタルアッセイシステム。
【0125】
実施形態60。各固着光学レポーター分子が記録デバイスの1つのピクセルとして解像可能である、実施形態58又は59に記載のディジタルアッセイシステム。
【0126】
実施形態61。キャプチャーエレメントが、
・アナライトに結合する1つ以上のヌクレオチド配列、及び
・アナライトに結合する抗体又はそのフラグメント
から選択される、実施形態49~60のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0127】
実施形態62。アナライトが抗原である、実施形態49~61のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0128】
実施形態63。各光学レポーター分子がキャプチャーエレメントとして抗体又はそのフラグメントを含む、実施形態49~62のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0129】
実施形態64。アナライトがヌクレオチド配列である、実施形態49~63のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0130】
実施形態65。各光学レポーター分子がキャプチャーエレメントとしてアナライトヌクレオチド配列に相補的な1つ以上のヌクレオチド配列を含む、実施形態49~64のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0131】
実施形態66。マイクロプロセッサー、メモリー、イメージセンサー、ソフトウェア、画像を表示可能なスクリーン、及び通信インターフェースがすべて単一のポータブルデバイス内に含まれる、実施形態49~65のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0132】
実施形態67。通信機能が無線である、実施形態49~66のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0133】
実施形態68。単一のポータブルデバイスがスマートフォン及びタブレットコンピューターから選択される、実施形態49~67のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0134】
実施形態69。単一のポータブルデバイスがスマートフォンである、実施形態49~68のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0135】
実施形態70。スマートフォンとサンプルチャンバーと光源とを安定にごく近接させて配置するためにケースを追加的に含む、実施形態49~69のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステム。
【0136】
また、以上のエレメントを含むデバイスが提供される。
【0137】
実施形態71。また、実施形態1~41、44、45、47、及び48のいずれか一つに記載の方法を実施可能な実施形態#~#のいずれか一つに記載のディジタルアッセイシステムも提供される。
【0138】
実施形態72。以下:
抗原と共に抗体をインキュベートすることと、
複数の抗体の画像を得ることと、
画像中に見られる抗体を活性又はヌルのどちらかとして分類することと、
活性抗体を結合又は非結合のどちらかとして分類することと、
画像中の結合及び非結合の抗体の数を決定することと、
活性抗体の数に対する分率として結合抗体の数から抗原の濃度を測定することと、
を含む、生化学的アッセイの実施方法。
【0139】
実施形態73。抗体が表面に装着される、実施形態72に記載の方法。
【0140】
実施形態74。抗体及び抗原が光学レポーター分子で標識される、実施形態72に記載の方法。
【0141】
実施形態75。画像がモバイルデバイスカメラで得られる、実施形態72に記載の方法。
【0142】
実施形態76。以下:
短いDNA配列の第1の部分に結合された光学レポーター分子を短いDNA配列の第2の部分に結合された光学レポーター分子と共にインキュベートすることと、
複数の光学レポーター分子の画像を得ることと、
画像中に見られる分子複合体を活性又はヌルのどちらかとして分類することと、
活性分子複合体を結合又は非結合のどちらかとして分類することと、
画像中の結合及び非結合の複合体の数を決定することと、
活性複合体の数に対する分率として結合複合体の数から短いDNA配列の第1及び第2の部分の両方に相補的なDNA配列の濃度を測定することと、
を含む、生化学的アッセイの実施方法。
【0143】
実施形態77。短いDNA配列が表面に結合される、実施形態76に記載の方法。
【0144】
以上に対する追加の実施形態を以下で詳述する。
【0145】
用途
本明細書に開示されるディジタル分子アッセイの方法、システム、及びデバイスは、さまざまな分野及び用途に役立つ。特定的には、ディジタル分子アッセイは、「現場」すなわちポータブル環境で役立つであろう。たとえば、ディジタル分子アッセイは、とくに遠隔地では、すなわち、サービスが不十分又はアクセスが困難な地域(たとえば、暴力的紛争が原因で)、伝染病に侵されている地域、そのほか従来のアッセイ装置及び/又は専門家へのアクセスが制限される地域では、医学的評価及び診断並びに病原体の検出に役立つであろう。また、病院内若しくは診療所内でも又はポイントオブケア若しくはベッドサイドで実施しうる家庭訪問環境でも有用であろう。
【0146】
ディジタル分子アッセイは、獣医診察室であるか、牧場若しくは農場であるか、又は検査を必要とする動物がいるいずれの場所であるかにかかわらず、医学的環境と同様に獣医学的環境でも有用であろう。また、植物若しくは土壌の病原体若しくは共生微生物を試験したり、又は他の対象となる遺伝子型及び表現型を検出したりするために、園芸用途又は農業用途でも使用しうる。
【0147】
ディジタル分子アッセイはまた、たとえば、細菌、藻類、若しくは真菌、又はそれらの毒性産物による、石油又はその製品及び副製品による、並びに産業廃棄物による汚染に関して、水の試験に使用しうる。かかるアッセイは、食品安全性試験及び農業用途、たとえば、病原体、毒素、不純物、汚染物質、及び有害生物に関して、現場又は処理施設の試験に役立つであろう。
【0148】
アッセイ
多くのタイプの生化学的アッセイは、本明細書に開示されるディジタル分子アッセイ方式に適合可能である。例としては、抗体又はそのフラグメントにより抗原がキャプチャー及び結合されるイムノアッセイ、アナライトをキャプチャーするために対象アナライトDNA/RNAに相補的な1つ以上のDNA又はRNAセグメントが使用されるハイブリダイゼーションアッセイ、及びレセプター、酵素、若しくは他のタンパク質に対する結合パートナー又はその逆のものがパートナーアナライト(たとえば、タンパク質又はその断片)に対するキャプチャー剤として使用されるリガンド結合アッセイが挙げられる。
【0149】
イムノアッセイ及びハイブリダイゼーションアッセイでは、前述のアナライト分子たとえば抗原又は標的DNA/RNAに対する結合パートナー対たとえば抗体又はcDNA/RNAが使用されるサンドイッチ方式を利用可能であることは、分かるであろう。そのため、本開示は、結合パートナー対、たとえば、両方の抗体が同一の分子たとえば同一の抗原に特異的であり且つその対の一方又は両方のメンバーが本明細書に記載の光学レポーター分子を含む場合の抗体を包含する。多数のキャプチャーエレメントとレポーターエレメントとの組合せは、依然としてシグナル生成構成体を形成し、多数の光学レポーター分子を含むが、それ自体依然として光学レポーター分子と称しうる。
【0150】
キャプチャー結合パートナーと検出結合パートナーとの対、たとえば、キャプチャー用及び検出用の抗体又はヌクレオチドの対は、レポーター分子に使用可能である。そのため、本明細書に開示されるディジタル分子アッセイは、アナライトの標識フリー検出を可能にするが、いくつかの実施形態では、ヘテロジニアスアッセイプロトコルが使用され、典型的には、2つの結合パートナー、たとえば、2つの抗体又は2つのDNA若しくはRNA配列が使用される。一方の結合パートナーは、キャプチャーパートナーであり、通常、プラズモンナノ粒子などの固体担体に固定され、他方の結合パートナーは、検出結合パートナーであり、典型的には、もう1つのプラズモンナノ粒子などの検出可能標識に装着される。抗体及び抗体対は市販されており、当技術分野で周知の方法により設計及び調製も可能である。
【0151】
レポーター分子は、非特異的吸着又は特異的共有結合のどちらかによりレポーター表面に装着可能である。レポーター分子のロード率は、調製溶液中のレポーター分子の濃度により主に決定されるであろう。より濃厚な溶液は、より高密度のレポーター分子を提供するであろうが、同時に、2つ以上の粒子を含有するレポーター分子のクラスターの数を増加させるであろう。この後者の影響は、操作の成功になんら致命的ではなく、レポーター分子のより小さなクラスターは、以下で考察される曲線当てはめ技術を用いて解析可能であり、一方、こうした技術に適さないより大きなクラスターは、不活性としてフラグを立てることが可能である。レポーター分子数の増加と取扱い可能な少数のレポーター分子クラスターの維持との矛盾する目標を考慮して、ある特定の実施形態では、約1レポーター分子/平方ミクロンの最大ロード率が最適であることが証明されよう。単一分子の検出では、1アナライト分子(光学レポーター分子に結合されたもの)/ピクセル以下に等しい密度が有用であろう。
【0152】
サンドイッチアッセイを用いた分析は、次の多工程手順により実施可能である。キャプチャー分子を用いて機能化されたレポーター表面をアナライトに暴露する。ある特定の分率のキャプチャー分子は、アナライト濃度に依存してアナライトに結合するであろう。第2の工程では、レポーター表面を検出分子を有する溶液に暴露する。第1の工程でアナライトに結合されたキャプチャー分子のみが、第2の工程で検出分子に結合するであろう。この方法の明らかな利点は、非結合キャプチャー分子と比較してキャプチャー分子/アナライト/検出分子のアセンブリーから送達される光学シグナルを最適化するように、キャプチャー分子及び検出分子を選択可能であることである。
【0153】
本明細書に開示される方法は、臨床診断された疾患状態に関連する対象となる表現型又は遺伝子型の状態を同定するために使用可能である。かかる疾患状態としては、たとえば、癌、心血管疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、感染疾患、妊娠関連障害が挙げられる。代替的に、健康状態は、マーカーを用いて検出可能である。
【0154】
本明細書に開示される方法は、遺伝子変異を検出するために使用可能である。本明細書の遺伝子変異としては、限定されるものではないが、ヌクレオチド配列(たとえば、DNA及びRNA)並びにタンパク質(たとえば、ペプチド及びタンパク質)の1つ以上の置換、逆位、挿入、欠失、又は突然変異、1つ以上マイクロ欠失、1つ以上の希少対立遺伝子、多型、単一ヌクレオチド多型(SNP)、大規模遺伝子多型、たとえば、逆位及び転座、1つ以上のヌクレオチド分子(たとえば、DNA)の存在量及び/又はコピー数の差(たとえば、コピー数変異体CNV)、トリソミー、モノソミー、及びゲノム再構成が挙げられうる。いくつかの実施形態では、遺伝子変異は、癌などの疾患の転移、存在、不在、及び/又はリスク、薬動学的変動性、薬剤毒性、有害イベント、再発、及び/又は、被験者における臓器移植拒絶の存在、不在、又はリスクに関連しうる。たとえば、HER2遺伝子のコピー数変化は、乳癌患者がハーセプチン治療に反応するかに影響を及ぼす。同様に、妊娠女性の血液における21番染色体(又は18若しくは13番染色体又は性染色体)のコピー数の増加の検出は、未生子におけるダウン症候群(又はパトー症候群又はエドワーズ症候群)の非侵襲的診断として使用しうる。そのほかの例は、レシピエントゲノムに存在しない移植臓器の対立遺伝子の検出であり、こうした対立遺伝子の頻度又はコピー数をモニターすることにより潜在的な臓器拒絶の徴候を同定しうる。
【0155】
測定デバイス及びシステム
本明細書に記載のディジタル分子アッセイ法では、測定デバイス又はシステムが利用され、どちらもサンプルの分析に必要とされる部分を含む。測定デバイスは、対象サンプルの直接添加又はそれ自体が対象サンプルを含有するキュベット若しくはスライドの挿入のどちらかによりサンプルが導入されるサンプルコンパートメントを含有する。サンプルコンパートメントはさらに、対象アナライトに結合して光学シグナルを生成する機能を有するレポーター分子を含有するコンポーネントを提供する。発光法に依拠する設計では、測定デバイスは、レポーター分子に含まれるクロモフォアを励起するための照明デバイスを提供する。測定デバイスは、レポーター分子の光学シグナルを検出及び記録する記録デバイス(たとえば、ディジタルカメラなどのイメージセンサー)を含有する。最後に、測定デバイスは、追加のコンポーネント、たとえば、操作の制御手段、分析結果を表示又は報告するデバイス、及び外部コンピューターとのインターフェースを含有しうる。任意の各種コンポーネント及びそれらの特注品の存在は、測定デバイスの各種設計によって異なりうる
【0156】
システム又はデバイスは全体として、便利なサンプル添加又は取出しのためにデバイスの向きを変えるマウントを搭載可能である。システムは、モバイルコンピューティングデバイスと連動させうる。モバイルコンピューティングデバイスは、スマートフォン、ハンドヘルドコンピューター、タブレットコンピューター、又は類似のポータブル計算デバイスでありうる。いくつかの例では、モバイルコンピューティングデバイスは、(i)サンプルの導入、(ii)光学励起、(iii)サンプル品質及び最適暴露時間を評価するための任意のサンプルプレスクリーニング、(iv)記録デバイスによる画像の記録、(v)所要により検出器バイアスの低減、(vi)検出器シグナルのディジタル化、(vii)不揮発性メモリーへのディジタルシグナルの記録、(viii)所要により検出器のリサイクル処理、及び(ix)ディジタルシグナルの処理などの工程を高度に自動化して実施できるようにするために、すべての必要なコンポーネント、たとえば、ディスプレイ、プロセッサー、メモリー、及びメモリーに記憶されプロセッサーにより実行可能なプログラム命令を含む。機能はさらに、ディジタルアッセイの結果を決定してその結果を目に見える形でエンドユーザーに伝えることを含みうる。
【0157】
ディジタル分子アッセイ用の検出機器としてスマートフォン又は他のモバイルコンピューティングデバイスを使用すれば、安価でポータブルな多機能のシステムにより現場すなわち検査施設外でアッセイの実施が可能になる。用途としては、中央検査施設へのサンプルの輸送を必要とすることなくウイルス負荷、栄養状態、疾患バイオマーカー、又は環境汚染物質を測定するためのポイントオブケア診断システムが挙げられうる。かかる試験は、私邸、法執行施設、グローバルヘルス施設、及び医療診療所で実施しうる。モバイルコンピューティングデバイスはインターネットに接続可能であるので、センサーデータと患者情報及び地理的位置との組合せが可能になろう。外部計算施設への接続能力は、データ解釈、地理的・デモグラフィックマッピング、データベースの構築及び維持、並びに遠隔地の医療専門家及び関係当局への通知の送達のために提供可能である。コンパクトで現地操作可能なディジタル測定デバイスは、検査施設における熟練技術者の必要性をアッセイから取り除くであろう。その代わりに、こうしたアッセイは、検出システムのサイズ及び手頃な価格のおかげで誰でも実施しうる。
【0158】
バイオセンサー
本明細書に開示されるディジタル分子アッセイのシステム又はデバイスは、「バイオセンサー」とも称しうるエレメントを含む。バイオセンサーとは、化学物質の存在を検出するために生物学的分子(たとえば、1つ以上の酵素、抗体、又はヌクレオチド配列)を使用するデバイスのことである。多くの種類のバイオセンサーをディジタル分子アッセイに使用可能である。バイオセンサーは、典型的には、一緒になって本明細書に開示されるレポーター分子を構成するキャプチャー成分(「バイオレセプター」と称されることも多い)及びレポーター成分(「バイオトランスデューサー」)と、さらには検出器、プロセッサー、及びディスプレイ、任意に他のエレメント、たとえば、シグナル増幅器、拡大レンズ、及び光源を含むシステムと、からなる。アナライトとキャプチャーエレメントとの間の相互作用(典型的には結合)は、測定可能な物理化学的シグナルを生成するレポーターエレメントの変化を引き起こす。この相互作用は、サンプル中の標的アナライトの存在又は濃度を示すシグナルを生成する。
【0159】
本明細書に開示されるレポーター成分は、プラズモンナノ粒子、他の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)系、プラズモン散乱系、フォトニック結晶、並びに単一分子の検出及び光学シグナルの生成を可能にするいずれかの他の技術をはじめとする光学トランスデューサーを含む。
【0160】
キャプチャーエレメントは、天然又は工学操作のバイオ分子、たとえば、抗体又はそのフラグメント(Fab、Fv、若しくはscFv)若しくはドメイン(VH、VHH)、或いは核酸(対象アナライトに相補的なDNA又はRNAの1つ以上のセクション)でありうる。
【0161】
キャプチャーエレメントは、たとえば、機能化及び層状堆積、又はマトリックス、たとえば、ヒドロゲル若しくはキセロゲル、たとえば、ゾル-ゲルへの閉込めにより、レポーターエレメントに装着される。レポーター分子(キャプチャーエレメントとレポーターエレメントとを含む)が装着されるセンサーの表面は、「レポーター表面」と称され、たとえば、ポリマー若しくはガラス、又は金属で被覆されたガラス若しくはレポーターエレメントを含む金属ナノ粒子(たとえば、金又は銀であり、チタン、クロム、銅などの他の金属も使用されている)を担持したガラスでありうる。この表面は、アナライト溶液が流入又は貫流するチャンバー又はフローセルの少なくとも1つの壁を形成するか又はそれに沿ってアライメントされる。
【0162】
プラズモンナノ粒子バイオセンサーの例では、チャンバー又はフローセルは、ガラス又はポリマーで作製しうるとともに、ガラス又はポリマーのレポーター表面は、当技術分野で公知の方法により適用された、キャプチャーエレメントを用いて機能化された金ナノ粒子を担持しうる。暗視野顕微鏡法を用いた分析では、光は、レポーター表面の平面に直交する、ガラス又はポリマーのレポーター表面のエッジを通り抜ける。
【0163】
サンプルコンパートメント
測定デバイスは、対象サンプルの導入に好適なサンプルコンパートメントを提供する。光学測定技術を利用する測定デバイスは、短い寸法を有するオブロングのサンプルコンパートメントの恩恵を受けるであろう。レポーター分子から記録デバイスまでの光学シグナルの光路は、短い寸法と平行にアライメントされるであろう。この配置は、より長い光路で問題となるおそれのある光学シグナルの吸収及び分散を最小限に抑えるであろう。この尺度は、角柱状又は円柱状のどちらのサンプルコンパートメントの使用も可能にする。
【0164】
レポーターボリューム
サンプルコンパートメントは、レポーター分子を含有する、レポーターボリュームと称されるコンポーネントを含む。このコンポーネントは、対象サンプルへのレポーター分子の添加の必要性を回避し、その代わりに、レポーター分子のリサイクル処理を可能にするであろう。より重要なこととして、レポーター分子は、本質的に静置配置で保持されるであろうから、測定デバイスの臨床使用前に不活性レポーター分子の同定及び記録が可能になる。
【0165】
いくつかの実施形態では、レポーターボリュームは、それ自体内にレポーター分子を保持する物理エンクロージャーにより規定される。物理エンクロージャーは、アナライトをレポーターボリュームに流入させてレポーター分子との接触を可能にするために多孔性でありうる。いくつかの実施形態では、レポーターボリュームは、物理エンクロージャーにより規定されない。その代わりに、レポーター分子をレポーターボリューム内に保持してレポーター分子を静置状態に維持するための他の手段を提供可能である。
【0166】
ある特定の実施形態では、レポーター分子は三次元担体に関連付けられる。1つの設計では、レポーター分子は三次元担体に共有結合される。代替的に、レポーター分子は三次元担体に共有結合されないが、かかる方式では三次元担体からの拡散を妨害するために三次元担体に含浸される。かかる設計では、レポーター分子は、三次元担体に実質的に閉じ込められて静置状態にある。
【0167】
レポーターボリュームは、好ましくは、レポーター分子に対する光路に垂直な寸法が狭いであろう。このジオメトリーは、次の重要な利点を提供する。すなわち、第1のレポーター分子からの光路は、記録デバイスに到達する前に第2のレポーター分子に遭遇する可能性が低い。このことは
図11に示される。狭いレポーターボリュームは、右側に記録デバイスを有して
図11(a)に示され、レポーターボリューム内のレポーター分子の配置は不均一である。このジオメトリーでは、レポーター分子から記録デバイスまでの光路は十分に分離されていることが分かるであろう。これとは対照的に、広いレポーターボリュームは
図11(b)に示される。このジオメトリーでは、少なくとも1つのレポーター分子は、第2のレポーター分子にオーバーラップする。このオーバーラップは、次の2つの理由で不利である。すなわち、(a)第2のレポーター分子は、第1のレポーター分子からのシグナルを部分的に再吸収して誤差を生じる可能性があり、(b)レポーター分子からの遊離状態及び結合状態のシグナルの正確な測定を必要とする不活性レポーター分子の同定は、より複雑になるであろう。
【0168】
光路のオーバーラップ度は、レポーター分子の特定の分布(ランダム、セミランダム、アグリゲート化、秩序化)、レポーター分子の濃度及び有効サイズ、並びにレポーターボリュームの厚さを含めて、レセプターボリュームを規定する少数のパラメーターから推定可能である。本開示のある特定の実施形態では、レポーター分子と記録デバイスとの間の光路は実質的にすべて、他のレポーター分子に遭遇しない。ある特定の実施形態では、レポーター分子と記録デバイスとの間の光路は実質的にすべて、多くとも1つの他のレポーター分子に遭遇する。
【0169】
いくつかの実施形態では、レポーターボリュームは、レポーター分子の単層を可能にするのに十分な程度に薄い。この設計では、
図12(a)に示されるように、すべてのレポーター分子が光路に垂直且つ記録デバイスに平行な平面内に実質的に存在するので、光路のオーバーラップは不可能である。かかる系を得るために、界面活性分子を使用するなどの各種単層技術を使用可能である。界面活性分子を架橋することにより、レポーター分子を静置状態にすることが可能である。レポーター表面についての考察は以下で詳細に示される。
【0170】
異なるレポーター分子の光路の好ましい最近接距離は、レポーター分子のサイズ(1つの分子の光路が第2の分子に進入するかを決定しうる)だけでなく検出器の空間分解能及びとくにピクセルサイズによっても決定されることに留意すべきである。理想的には、各レポーター分子は、不活性レポーター分子の同定及び活性レポーター分子からの光学シグナルの観測が最も容易になるように、いずれの近接レポーター分子からも少なくとも1ピクセルだけ分離されるであろう。さらに、記録デバイスに進入する光路の発散に依存して、かなり大きな分離が望ましいこともある。これは
図12(b)に示される。この図では、明確さを期して、レポーターボリュームと記録デバイスとの間の距離を大きくしてあり、記録デバイスに進入する光学シグナルの発散は小さいがゼロでない。たとえレポーター分子が互いに物理的にオーバーラップしなくても、近くに位置するレポーター分子からの光学シグナルが潜在的にオーバーラップする可能性があることは、明らかであろう。
【0171】
異なるレポーター分子の光路間のオーバーラップを最小限に抑えるために、レポーター分子のアグリゲーションを最小限に抑えるか又は反対にレポーター分子間の分離を増加させる特性及び技術が有利であることは明らかであろう。一実施形態では、個別のレポーター分子は、より大きな粒子、たとえば、マイクロスフェア又はマイクロ粒子又はナノ粒子と連動されよう。より大きな粒子にレポーター分子を結合させると、より大きな粒子のサイズに起因してレポーター分子間の平均距離が大きくなる傾向があろう。このことは
図12(c)に示される。この図では、レポーター分子3は、より大きな粒子5の表面又は内部に装着される。
【0172】
レポーター表面
ある特定の実施形態では、サンプルコンパートメントは、レポーター分子を結合させるためのレポーター表面を含む。レポーター表面は、レポーター分子から記録デバイスまでの光路を最小限に抑えるためにオブロングのサンプルコンパートメントの最短寸法に垂直な方向を向く。レポーター分子をこうして配置すると、固体担体へのレポーター分子の装着が容易になるうえに、狭いレポーターボリュームが提供されるので、以上で考察した理由で有益である。
【0173】
レポーター表面は、レポーター分子により生成されたシグナルを実質的に透過するウィンドウの反対方向を向く。透明レポーター表面は、暗視野顕微鏡法に好適な導波路に接触可能である。ある特定の実施形態では、レポーター表面は金属層を含む。ある特定のさらなる実施形態では、金属層は表面プラズモン共鳴に好適である。レポーター表面及び透明ウィンドウは、角柱状サンプルコンパートメントの2つの端面上に位置しうるか、又は代替的に円柱状サンプルコンパートメントの2つの端面上に位置しうる。ある特定の実施形態では、端面は平行且つ近接し、アッセイスライド又はアッセイチップを模造又は形成する。
【0174】
レポーター分子
測定デバイス及びシステムは、さまざまなレポーター分子を含み、そして本明細書に開示される方法は、それらを利用する。一実施形態では、各種濃度のアナライトに対して良好な挙動の結合反応を提供する単一タイプのレポーター分子を利用する。代替的に、以下にさらに詳細に記載されるように、単一タイプのレポーター分子を有する測定デバイスよりも広範にわたるアナライト濃度に適合可能な、同一のアナライトに対して異なる親和性を有する2つ以上の異なるレポーター分子を利用可能である。ある特定の実施形態では、異なるアナライトに対して親和性を有する2つ以上の異なるレポーター分子が提供される。
【0175】
レポーター分子はクロモフォアを含みうる。ある特定の実施形態では、クロモフォアはレポーター分子に共有結合され、代替的には、それは機能化によりレポーター分子に、たとえば、量子ドット又はプラズモンナノ粒子の表面に、装着しうる。ある特定の実施形態では、クロモフォアは電磁線を吸収する。ある特定の実施形態では、クロモフォアは、可視及び紫外から選択されるスペクトル領域の電磁線を吸収する。代替的に、クロモフォアは電磁線を散乱しうる。ある特定の実施形態では、クロモフォアは発光性である。ある特定の実施形態では、クロモフォアは蛍光性である。ある特定の実施形態では、クロモフォアは燐光性である。
【0176】
本開示のある特定の実施形態では、レポーター分子は、アナライトの結合により光学シグナルを提供するクロモフォアを各々含みうる。光学シグナルは、吸収バンドの吸光係数の変化、吸収バンドのλmaxの変化、発光バンドの量子収率の変化、発光バンドの蛍光異方性の変化、特定波長超又は未満のスペクトル中心のシフト、最大強度(λmax)の波長のシフト、シグナルのサイズ又は強度の変化、明るさの増加又は減少、シグナルの形状の変化、スペクトルバンドの存在又は不在、及びスペクトルの形状の変化でありうる。
【0177】
本開示のある特定の実施形態では、光学シグナルは、アナライトとクロモフォアとの相互作用により生じる。ある特定の実施形態では、光学シグナルは、レポーター分子へのアナライトの結合により間接的に生じる。ある特定の実施形態では、レポーター分子によるアナライトの結合は、クロモフォアの吸収又は発光の特性に影響を及ぼすコンフォメーション変化を引き起こす。ある特定の実施形態では、レポーター分子によるアナライトの結合は、アナライト上のクロモフォアとレポーター分子上のクロモフォアとの相互作用を引き起こす。
【0178】
本開示のある特定の実施形態では、レポーター分子は2つのクロモフォアを含む。ある特定の実施形態では、レポーター分子によるアナライトの結合は、2つのクロモフォア間の非放射性相互作用を増加させるレポーター分子の幾何学的変化を引き起こす。ある特定の実施形態では、レポーター分子によるアナライトの結合は、2つのクロモフォア間の非放射性相互作用を減少させるレポーター分子の幾何学的変化を引き起こす。ある特定の実施形態では、非放射性相互作用は蛍光クエンチングである。ある特定の実施形態では、非放射性相互作用は蛍光エネルギー移動である。ある特定の実施形態では、非放射性相互作用は燐光エネルギー移動である。ある特定の実施形態では、非放射性相互作用はプラズモン結合共鳴エネルギー移動である。
【0179】
ある特定の実施形態では、クロモフォアは、プラズモンナノ粒子及び/又は量子ドットである。プラズモンナノ粒子及び/又は量子ドットは、キャプチャーエレメントを担持するように機能化しうる。キャプチャーエレメントが生物学的分子、たとえば、抗体、ヌクレオチド、ペプチド、又はそれらのフラグメントである場合、クロモフォア-キャプチャーエレメントは、光学レポーター分子及びバイオセンサーになる。抗原や相補的ヌクレオチドなどのアナライトに接触(たとえば結合)させると、電子伝達、エネルギー移動、プラズモン共鳴、粒子の質量及び運動性の変化などの効果により、質量が変化しナノ粒子の分光特性が変化する。
【0180】
不活性レポーター分子
本明細書に記載の方法は、不活性なある特定の分率のレポーター分子に対処する。すなわち、こうした不活性レポーター分子からの光学シグナルは、不在であるか又はバルクのレポーター分子とは実質的に異なるかどちらかである。この挙動は、レポーター分子がアナライトに結合できないことに起因しうる。代替的に、レポーター分子は、アナライトに結合可能であるが、光学シグナルを生成しないか又は光学分子の残りの部分とは実質的に異なる光学シグナルを生成する。
【0181】
ある特定の実施形態では、システムは、レポーター分子としてナノ粒子を利用する。ナノ粒子は、他のナノ粒子とのアグリゲーションにより不活性になりうる。
【0182】
本開示のある特定の実施形態では、不活性レポーター分子は、アグリゲート化した個別のタンパク質(抗体を含む)、正確にフォールディングされなかったペプチド又はタンパク質、不適正残基や欠損クロモフォアを含むペプチド又はタンパク質を含む。
【0183】
不活性レポーター分子の数は、とくに不活性レポーター分子が欠損組成を有する場合、測定デバイスの動作寿命の間、実質的に一定に維持可能である。また、レポーター分子の化学分解、特定的には光源への高強度暴露の繰返しにより引き起こされる光化学分解又はレポーター分子の一部を形成するタンパク質のアグリゲーションに起因して、不活性分子の数は、測定デバイスの動作寿命の間、増加する可能性もある。
【0184】
不活性レポーター分子は、光学挙動の変化、すなわち、アナライト分子への暴露により光学シグナルを生成できなくなるか又はアナライト分子への暴露によりバルクのレポーター分子とは有意に異なる光学シグナルを生成するかのどちらかにより同定可能である。
【0185】
ある特定の実施形態では、複数のレポーター分子はランダムに分配される。ある特定の実施形態では、複数のレポーター分子はレポーター分子のアグリゲートを構成する。ある特定の実施形態では、複数のレポーター分子は1つ以上の寸法の規則的幾何学的秩序を構成する。ある特定の実施形態では、各レポーター分子は、他のレポーター分子が位置しないが排他的ゾーンを伴う。
【0186】
記録デバイス及び顕微鏡
記録デバイスは、レポーター分子からの光学シグナルを記録するために提供される。ある特定の実施形態では、レポーター分子からの光学シグナルは、サンプルコンパートメントの透明ウィンドウを通り抜ける。ある特定の実施形態では、記録デバイスは、カメラなどのイメージセンサーであろう。たとえば、CMOS(相補的金属酸化物半導体)カメラは、各ピクセルを個別に読取り可能であるので有用であり、そのほか、CMOSカメラは、ごくわずかな電力しか消費しないので、現場でデバイスの一部として使用するときより長持ちする。スマートフォンカメラはほとんどすべて、CMOSカメラを有し、10メガピクセルを超える分解能を有するものが多いので、本明細書に開示される方法、システム、及びデバイスに有用である。
【0187】
本開示のある特定の実施形態では、記録デバイスは、サンプルコンパートメントからの1つ以上のシグナルの観察を可能にする。ある特定の実施形態では、複数のシグナルの各々は、サンプルコンパートメントの異なる領域に由来する。ある特定の実施形態では、複数のシグナルの各シグナルは、サンプルコンパートメント全体に広がる規則的幾何学的グリッドの1ピクセルに由来する。
【0188】
ある特定の実施形態では、記録デバイスのピクセルは、長方形又は正方形のアレイで配置される。ある特定の実施形態では、記録デバイスのピクセルは、512×512正方形アレイ、1024×1024正方形アレイ、2048×2048正方形アレイ、又は4096×4096正方形アレイで配置される。ある特定の実施形態では、各ピクセルからのシグナルは、すべての他のピクセルとは独立して記録される。ある特定の実施形態では、ピクセルの2×2セットからのシグナルは、一緒にビニングされる。
【0189】
測定デバイスは、異なる領域の複数のレポーター分子からの複数のシグナルの観察を可能にしうる。ある特定のさらなる実施形態では、異なる領域の複数のレポーター分子は、規則的グリッドで配設される。代替的に、実質的にすべてのレポーター分子からの個別の光学シグナルは、いずれの他のレポーター分子による干渉も受けることなく観測可能である。
【0190】
ある特定の実施形態では、記録デバイスは、個別のピクセル及び/又は個別のレポーター分子をキャプチャー可能である。キャプチャーエレメントが機能化される基材としてプラズモンナノ粒子/量子ドットを使用すると、この検出が促進される。拡大レンズとの組合せで使用すると、記録デバイスは、さらに小さなシグナルを検出可能になる。かかるレンズは当技術分野で周知である。
【0191】
記録デバイスは、レポーター分子/アナライトの複合体の検出及び定量を行うために当技術分野で公知のいずれかの技術を使用可能である。記録デバイスは、レポーター分子設計で対をなす光吸収及び発光の方法を使用可能である。
【0192】
記録デバイスは、光吸収測定を行うことが可能である。たとえば、レポーター分子との結合は、アナライトの存在下で着色物を生成する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)と連動させうる。ELISAをプラズモンナノ粒子上又は量子ドット上に機能化した場合、アナライトの存在及び量は、たとえば、吸収特性の波長、強度などにより報告され、バルクシグナルとは対照的な各ナノ粒子からのシグナルを生成するであろう。
【0193】
代替的に、光出力は、光源により励起されたレポーター分子上のフルオロフォア又はレポーター分子と連動させたフルオロフォアのどちらかからの蛍光発光を含みうる。次いで、アナライトの存在及び量は、蛍光発光の強度により報告されよう。フルオロフォアは、蛍光発光が増強されるようにフォトニック結晶などの表面に近接させうる。望ましいアウトカムが得られるように多数のフルオロフォアを利用して蛍光シグナルを調整可能である。その場合、光学シグナルは、2つ以上のフルオロフォア間の励起移動により変調可能である。
【0194】
蛍光及び燐光の量子収率、λmaxシフト、及び異方性が本開示で想定される。
異方性測定では、励起又は発光のどちらか又はその両方の光路に偏光子を導入可能である。光源は発光方法と連動させうる。光源は、従来のブロードバンド光源、発光ダイオード、又はレーザーでありうるとともに、直接的か又は励起を最適化するためにグレーティングなどの波長選択デバイスを介するかのどちらかによりサンプルに送達可能である。光は、導波路が組み込まれた且つレポーター表面のベースを形成する全内部反射コンポーネントを介して方向付けられ、暗視野励起を提供する。
【0195】
いくつかの実施形態では、光学アッセイ媒体は、表面増強ラマン散乱(SERS)用として構成された表面を含みうる。そのため、光出力は、SERS表面上のレポーター分子による光源のラマン散乱を含みうる。次いで、アナライトの存在及び量は、ラマン散乱の強度により報告されよう。
【0196】
不活性レポーター分子の同定
本明細書には、「識別法」と称される不活性レポーター分子を識別する方法が提供される。ある特定のシステムでは、アナライトフリーの第1の溶液と高濃度のアナライトの第2の溶液との2つの溶液が、レポーター表面に逐次的に接触されよう。これらの2つ溶液がアナライトの結合したレポーター分子の不在及びアナライトの結合したレポーター分子のほぼ飽和をそれぞれ引き起こすだろうことは、分かるであろう。画像は、記録デバイスを用いて記録され、アナライトフリー状態及びアナライト飽和状態の画像間で比較が行われる。選択判定基準を満たさないレポーター分子は、不活性としてマークされる。
【0197】
ナノ粒子アグリゲーションに起因する不活性化の場合には、不活性レポーター分子の識別は容易であろう。アグリゲートの形成は、記録デバイスからの画像の目視検査により明らかになるであろう。また、以上に概説した「アナライトフリー」及び「アナライト飽和の」手順を必要としないであろう。
【0198】
識別法は、測定デバイス中のレポーター分子の位置の記録を維持する。レポーター分子の位置は、たとえば、測定デバイス中の適切な幾何学的グリッドを基準にして又はレコーダーデバイス上のピクセル座標を基準にして、x/y座標により参照可能である。不活性レポーター分子の記録は、不揮発性コンピューターメモリーに維持可能である。
【0199】
識別法は、レポーター分子に不活性としてタグ付けする判定基準を提供するであろう。判定基準は、挙動不良のレポーター分子を使用しないように排除することと、一方、測定デバイスの特定の確度及び感度が得られるように十分に多くのレポーター分子数を維持することと、の間でバランスをとるように設定される。バイアスを排除して自動タグ付けを可能にするために、観測される光学シグナルのタイプに基づいて数値閾値を選択可能である。単なる例にすぎないが、ある特定のレポーター分子は、アナライト分子への結合により発光λmaxのシフトを引き起こしうるとともに、この例ではバルクの化合物に対して20ナノメートル(nm)だけλmaxのシフトを引き起こしうる。5nmのシフトの閾値は、この特定の例に対して選択しうる。
【0200】
確度及び感度の要件を満たすために、ある特定の分率のレポーター分子を排除するように数値閾値を選択可能である。前の例を参照すると、レポーター分子の95%で12nmのλmaxシフトを観測しうる。その場合、レポーター分子の95%を活性として維持するとともにレポーター分子の5%を不活性として廃棄するように、12nmのλmaxの閾値を選択しうる。
【0201】
不活性状態を割り当てるために、さまざまな判定基準を適用可能である。重要なこととして、いずれの判定基準も、レポーター分子を不活性として割り当てるように選択可能である。いずれの1つのレポーター分子の結合も他のレポーター分子のいずれにも依存しないので、活性レポーター分子のプールからレポーター分子を排除しても、残りの分子の挙動に影響を及ぼさない。
【0202】
必要があれば、以上に記載の識別法は、測定デバイスの動作寿命の間、定期的に繰り返しうる。これを実施することは、経時により性能が劣化しやすいレポーターデバイスではとくに有益であろう。理想的には、識別法は、測定デバイスがすべての所要の工程を自動で実施する場合、最小限のオペレーターの介入を必要とするであろう。ナノ粒子ベースのレポーター分子の場合には、画像を定期的に記録可能であり、経時により起こりうるいずれのアグリゲーションも、パターンマッチングソフトウェアにより識別可能である。
【0203】
識別法はまた、中間濃度のアナライトを含有する1つ以上の溶液に測定デバイスを暴露する工程を含みうる。これは、ある範囲のレポーター分子飽和が想定されるアナライトの定量測定にとくに重要となろう。ある範囲のアナライト濃度にわたりいくつかの溶液を用いることにより、光学報告データとアナライト濃度とをより良好にマッチさせるように検量線を構築可能である。
【0204】
レポーター分子の領域からの空間分解シグナルを使用することの主な利点は、とくに問題となる記録デバイスの領域にそのようなフラグを立てて後続の解析で廃棄することが可能であることである。これには、不活性レポーター分子、すなわち、不適正にフォールディングされた抗体だけでなく、難題を呈するいずれの領域も含まれる。これには、2つ以上の近くに位置するレポーター分子のオーバーラップスポット又はどんな理由があるにせよ遊離状態と結合状態とが識別不良であるレポーター分子が含まれうる。各個別のレポーター分子の結合は他のいずれにも依存しないので、光学シグナルの小さなセットを廃棄しても、感度にごくわずかな影響を与えるだけで確度又は精度を向上させうる。
【0205】
確度/精度/感度
開示されるディジタル測定法の確度は、従来のアナログ法と少なくとも同程度に良好であろうと予想される。ディジタル測定法は、定義によれば低確度源であるいくつかの誤差源を最小化又は排除するであろう。例として、1つの誤差源は、不活性なレポーター分子、すなわち、アナライト分子に結合しないか又はアナライト分子に結合するが予想光学シグナルを提供しないかのどちらかから生じる。どちらの状況でも考慮に入れなければ、観測シグナルが予想よりも低くなるので、アナライト濃度の推定に誤差が入り込む。
【0206】
開示されるディジタル測定法の精度は、従来のアナログ測定と少なくとも同程度に良好であろうと予想される。レポーター分子全体からのバルクシグナルを観測する従来の方法は、ほとんどの場合、各種統計法及び数値法を用いて精度の良い推定値を提供可能であるが、必ずしもすべての場合というわけではない。
【0207】
クロモフォアを含む一群のレポーター分子を含有する
図3に示されるような系を考えられたい。バルクシグナルの観測スペクトルシフトはすべてのシフトの平均でありうるから(もしあれば)、低アナライト濃度ではきわめて小さくなるおそれがある。このシフトは、各クロモフォアを取り囲むマイクロ環境が異なるため、とりわけ曲線の広がり考えると、識別が困難になることもある。
【0208】
これとは対照的に、ディジタル分子アッセイを用いて各レポーター分子に対するスペクトルシフトを観測すると、遊離レポーター分子はゼロシフトを呈し、一方、結合レポーター分子は完全シフトを呈するであろう。中間状態は存在しない。当然のことながら、すべてのクロモフォアが同一値だけシフトするとは限らないが、現場で使用する前に予想される値及び範囲を決定可能である。外れ値を有するレポーター分子は、不活性として廃棄可能である。
【0209】
開示されるディジタル法のシグナル対ノイズは、従来の方法と少なくとも同程度に良好であろうと予想される。バルク検出では、アナライトの濃度が低くなるとより弱いバルクシグナルを生じるであろう。ディジタル検出では、アナライトの濃度が低くなると、各々同一の強度又は値を有するより少数の離散シグナルを生じるであろう。
【0210】
曲線当てはめ
図8にシミュレーションとして示される離散レポーター分子の個別のシグナルは、シグナル対ノイズ比を向上させうる曲線当てはめ技術に役立つ。各活性レポーター分子からのシグナルは、レポーター分子の予備知識に基づいて理想化されたノイズフリーの曲線(
図8の曲線に対応する)を構築可能なスペクトルの2つの領域のどちらかに含まれるであろう。各レポーターは遊離状態又は結合状態のみでありうるので、レポーター分子からの観測シグナルは、遊離又は結合のどちらかに割当て可能である。これは、観測シグナルをモデリングするためにさまざまな比の2つ以上の状態からのシグナルの重合せに対処しなければならない多くの曲線当てはめ用途とは対照的である。
【0211】
曲線当てはめの例は
図13に示される。2つのシグナルの発光を合わせて灰色で示し、「ノイズ」をシミュレートして追加し、黒色で示される正味の観測シグナルを形成する。シグナルは、
図7に示されるものに類似しており、
図12の垂直の破線は、
図8で考察した500nmのアナライトフリー及びアナライト結合のレポーター分子の同一の線引きに対応する。観測シグナルが与えられると、曲線当てはめ技術により、組み合わせて全シグナルを与える個別のシグナルを推定可能である。少数の十分に分離された個別のシグナルを含む観測シグナルは、高確度且つ高精度の曲線当てはめを用いた曲線当てはめにより評価可能である。さらに、結合がディジタル性であるので、すなわち、レポーター分子はアナライトに結合されているか又はアナライトフリーであるかのどちらかであるので、単一のレポーター分子は、中間状態の可能性を有することなくアナライト結合状態及びアナライトフリー状態に対応する2つの可能なシグナルの1つのみを提供可能である。
図12に示される例では、観測シグナルは、一方が500nm未満の発光を有し他方が500nm超の発光を有するアナライト結合及びアナライトフリーのレポーター分子に対応する2つのレポーター分子に明確に帰属可能である。この実験のディジタル性は、曲線当てはめプロセスを実質的に単純化するであろう。
【0212】
そのほか、曲線当てはめ技術の使用は、光学シグナルを空間分解できない2つ以上のレポーター分子を取り扱うのに有利でありうる。シグナルを互いに分解できない2つのレポーター分子の場合には、4つの状態:(a)両方のレセプターが結合状態、(b)両方のレセプターが遊離状態、並びに(c)及び(d)一方のレポーターが遊離状態(最後の2つの状態は類似しているが、必ずしも等しい光学シグナルを有するとは限らないと予想されうる)が可能である。この状況は、必然的に単一のレポーター分子よりも複雑になるが、依然として、バルクサンプルからの光学シグナルと比較して非常に管理しやすい。
【0213】
曲線当てはめ法は、光学シグナルが部分的に空間分解される2つ以上のレポーター分子を取り扱うために使用可能である。すなわち、2つ以上のレポーター分子からの光学シグナルは、いくつかのピクセルにわたり均等に広がっていない。このシナリオは、とりわけ微細に離間されたピクセルを有する記録デバイスでは、2つ以上のレポーター分子からの完全な空間オーバーラップよりも一般的であろうと予想されうる。このシナリオは、単一のピクセルからの単一でないスペクトル(又は近くに位置する一群のピクセルからのスペクトルを合わせたもの)ではなく、その代わりに、(部分オーバーラップ)スポットのプロファイルと組み合わせて、近くに位置する一群のピクセルからの一群の個別のスペクトルの曲線当てはめを行うのに有益でありうる。
【0214】
結合等温線
結合レポーター分子の数とアナライトの濃度との関係は、「結合等温線」として知られ、複雑且つ間接的である。簡単に言えば、結合/全体レポーター分子比は、遊離アナライトの濃度の増加に伴って漸近的に1まで増加する。(一般的には、アナライトは、かなり低濃度のレポーター分子と比較して過剰に存在するので、遊離アナライト濃度及び全アナライト濃度はほぼ等しい。この近似をこの考察全体にわたり使用する。)より高い親和性のレポーター分子は、いずれかの所与のアナライト濃度でより高い割合でアナライト分子に結合するであろう。重要なこととして、全レポーター分子濃度は、活性レポーター分子のみを対象とする。
【0215】
図14に示されるのは、2つの結合等温曲線である。水平軸はアナライト濃度に対応し、垂直軸は結合/全体レポーター分子比に対応する。曲線は、いずれかの所与のアナライト濃度で結合/全体レポーター分子比を決定する2つの結合等温線を表す。各曲線に対して、結合/全体レセプター比は、アナライト濃度が増加するにつれて及びレポーター分子が飽和に近づくにつれて漸近的に1に近づく。すなわち、レポーター分子はほとんどすべて、アナライト分子に結合する。上側の濃い曲線は、より高い親和性のレポーター分子に対応し、下側の曲線は、より低い親和性のレポーター分子に対応する。アナライトに対するレポーター分子の親和性がさまざまなアナライト濃度範囲でアナライトを容易に定量するうえで大きな役割を果たすことは、明らかであろう。
【0216】
図14では、結合/全体比はアナライト濃度に依存するので、垂直軸(結合/全体レポーター分子比)は従属変数であり、アナライト濃度は独立変数である。分析目的では、グラフは逆に使用される。すなわち、結合/全体比は実験から得られ、垂直軸上に位置する。グラフ及び結合等温曲線から、対応する遊離アナライト濃度は水平軸上に見いだされる。視覚的には、このプロセスは、アナライト濃度を見いだすために、y軸上の観測された結合/全体比から等温曲線に対して水平線を引き、x軸に対して垂直線を下ろすことにより理解可能である。(実際には、このプロセスは、数学的又は数値的に行われるが、依然として誤差解析を伴う。)
【0217】
図15は、約0.72の結合/全体比に対応する約0.10の遊離アナライト濃度を有するサンプルに対応する。この状態は、黒丸として結合等温線上に示される。垂直軸上の結合/全体比に対する0.72の「適正」決定は、結合等温線に対して水平にトレースされ、水平軸に下ろされる。このプロセスは2つの黒矢印により表される。結合/全体比を約5%過小評価した結果は、結合等温線上の対応する灰色の丸と共に2つの灰色の矢印で示されている。
【0218】
図16は、約0.92の結合/全体比に対応する約0.40のより高い遊離アナライト濃度を有するサンプルに対応し、この場合も結合等温線上に黒丸が付されている。適正決定は、前の例と同様に2つの黒矢印で表される。結合/全体比の5%過小評価は、この場合も灰色の矢印及び灰色の丸で示される。この例では、結合/全体比の5%過小評価は、アナライト濃度の約40%の実質的誤差をもたらす。
図15と
図16との間の挙動差は、これらの2つのグラフに示される2つのスポットにおける結合等温線グラフの異なる傾きに起因し、この誤差伝播は、結合等温曲線がよりフラットなより高濃度のアナライトでより深刻になる。
【0219】
アナライトの定量のために分子結合を利用する分析デバイスは、もう1つの誤差源、すなわち、多くの場合、すべてのレポーター分子がアナライトの結合に関して活性であるとは限らないことによる影響を受けやすい。これは結合/全体比の推定に誤差を引き起こすので、以上に概説したように、推定アナライト濃度に実質的誤差が伝播する可能性がある。
【0220】
例として、レポーター分子の10%が不活性である測定デバイスを考えられたい。レポーター分子の10%が光学シグナルを提供できないので(アナライトに結合できないため、又はレセプター/アナライト複合体が光学シグナルを生成できないため)、レポーター分子が飽和しても、予想最大シグナルの90%のみを生成するであろう。
図15及び16を調べれば、とくに高いアナライト濃度で測定に入り込む実質的誤差が明らかになろう。この誤差は、飽和条件下で測定デバイスをプレスクリーニングして最大シグナルを推定し、これを将来的測定のベンチマークとして使用することにより、ある程度対処可能である。しかしながら、完全飽和は決して達成できないので、この手順は理想ではない。
【0221】
図14に示されるのは、2つの結合等温曲線である。上側の濃い曲線は、より高い親和性のレポーター分子に対応する。このレポーター分子を用いる利点は、比較的低濃度でほぼ完全飽和を達成できることであり、0.40nMで、レポーター分子は90%飽和される。このレポーター分子は、以上で考察したように結合等温曲線の浅い領域では有意な誤差を生じやすいので、約0.10nMのより低濃度の定量で有用なことが欠点である。
【0222】
これとは対照的に、下側の薄い曲線(より低い親和性のレポーター分子に対応する)は、曲線が全範囲にわたり比較的急勾配であるので、より広範にわたるサンプル濃度の定量に有用である。しかしながら、レポーター分子は、この範囲で多くとも70%の飽和を達成し、100%の飽和に対応するシグナルの決定を達成するのは困難であろう。
【0223】
本明細書に開示されるディジタル分子アッセイ法は、結合/全体レポーター分子濃度の誤差に対する測定の感受性を低減させることにより推定アナライト濃度の精度を向上させるサンプル希釈の工程を含みうる。例として、結合挙動が
図15に示される以上で考察したサンプルを考えられたい。レポーター分子飽和度が高いので、結合等温曲線は、0.40のアナライト濃度の近傍領域で非常に浅く、したがって、アナライト濃度の決定は、結合/全体レポーター分子濃度の小さな誤差でさえも非常に影響を受けやすい。この比は、以上で考察したように、ディジタル測定によりより正確になるが、アナライト濃度の決定は、最初から、結合/全体レポーター分子濃度の誤差の影響を受けにくいことが好ましいであろう。
【0224】
このサンプルの4倍希釈、すなわち、アナライトの濃度を0.40から0.10に低下させるのに十分な量の溶質の添加の影響を考えられたい。この希釈倍率の結果として、今度は結合挙動が
図14に表されるようになるであろう。0.10の新たなアナライト濃度の近傍領域はより急勾配の結合等温曲線であるので、アナライト濃度の決定は、結合/全体レポーター濃度の誤差の影響をかなり受けにくい。
【0225】
ディジタル測定の感度特性は、サンプル希釈の工程を精度を向上させるための魅力的な手順にする。結合レポーター分子濃度のバルク「アナログ」測定の精度がサンプル希釈の影響を受けることは、容易に分かるであろう。
図14から
図13に移ると、結合レポーター分子濃度は、結合濃度の22%の低下を示して0.92から0.72に低下する。結合レポーター分子濃度に比例するバルクアナログシグナルは、大きさが22%低下するであろう。こうした大きさの低下は、ノイズの大きさが一定に維持されるであろうから、ほとんど間違いなくシグナル対ノイズの増加を伴うであろう。したがって、以上に記載の結合等温線効果に起因する精度の増加は、結合レポーター濃度の決定時のシグナル対ノイズの悪化に起因する精度の減少により相殺させるであろう。
【0226】
これとは対照的に、ディジタル測定は、希釈によるこうしたシグナル対ノイズの劣化に対する感受性がかなり低い。以上で考察したように、結合レポーター分子数の減少は、ディジタル測定にアナログ測定とは異なる影響を及ぼす。アナログ測定のバルクシグナルが弱まってシグナル対ノイズが悪化するのではなく、結合レポーター分子数の減少は、レポーターデバイスから受け取る離散光学シグナル数を単に低減させるにすぎないであろう。重要なこととして、これらの離散光学シグナルの各々の強度は、不変のままであろう。
【0227】
こうした理由から、以上に記載される精度を向上させる希釈方法は、アナログシグナル対ノイズ効果に起因する精度の減少を伴わないので、ディジタル測定に有益であることが証明されよう。測定法は、測定デバイスへの導入前にサンプルをあらかじめ希釈する工程を含みうる。代替的に、測定法は、アナライト濃度の報告後にサンプルの繰返し測定が精度を向上させることをユーザーに知らせることが可能であり、さらに、推奨希釈レベルに関してユーザーに助言することが可能である。
【0228】
測定法は、最適希釈を提案するためにアナライト濃度の低精度推定値を迅速に提供するように最適化されたサンプルの迅速プレスクリーニングを含みうる。
【0229】
開示された方法で想定される多くの使用で、臨界値に対応する閾値又はカットオフが確立されている。これらの閾値又はカットオフは、環境法により設定された規制レベルに対応可能であるか、又はある特定の健康状態に対応する重要なバイオマーカーレベルに対応可能である。測定法は、意図された使用に適切な測定条件を提供するために、推奨スキャンパラメーター及び希釈レベルを調整可能である。
【0230】
ある特定の実施形態では、測定デバイスは、サンプルの自動希釈機構を提供可能である。これは、既存のサンプルの画分を取り出して希釈のために溶質を導入することにより達成可能である。これはまた、溶質を用いてあらかじめ希釈された新たなサンプルを導入することにより達成可能である。
【0231】
ある特定の実施形態では、推奨希釈レベルは、測定デバイスを導入されたか又は測定デバイスに接続されたかのどちらかのコンピューティングデバイスにより計算可能である。コンピューティングデバイスは、インターフェース(たとえば、ディスプレイ、プリントアウト、又は合成音声レポート)を介して推奨希釈レベルをオペレーターに提供可能である。コンピューティングデバイスはまた、測定デバイスを直接制御することにより、ユーザー介入を必要とすることなく希釈サンプルを自動解析する必要のあるいずれかの工程を実施可能である。
【0232】
ある特定の実施形態では、閾値又はカットオフは、閾値又はカットオフの変更時に任意に更新可能なファームウェアの形態又はソフトウェアの形態のどちらかで、コンピューティングデバイスによりあらかじめ設定可能である。そのほか、オペレーティングソフトウェアは、測定されるサンプルのさらなる入力をユーザーに促すことが可能である。たとえば、バイオマーカーの測定の場合には、ユーザーは、閾値又はカットオフを変化させうる、したがって、所与の測定に必要とされる精度に影響を及ぼしうる年齢、体重、性別などの被験者の履歴パラメーターを入力可能である。
【実施例】
【0233】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。
【0234】
実施例1:プラズモンサンドイッチイムノアッセイ
ディジタル分子アッセイの一実現形態では、二重抗体イムノアッセイ方式が本明細書に記載される。二重抗体イムノアッセイは、古典的臨床アッセイで広く使用されており、この用途の標準的抗体対は容易に入手可能である。検出のために、サンドイッチイムノアッセイでアナライトを介して結合状態になる金属ナノ粒子間のプラズモン結合は、粒子へのアナライト分子の結合のロバストなリードアウトを提供する。結合粒子の散乱波長が個別粒子の散乱波長と実質的に異なりうるので、セルフォンカメラでさえも単一粒子レベルで色により容易に識別される異なる色変化をもたらすという点で、プラズモン結合は大きな強度を提供する。
【0235】
この実施例では、球状金ナノ粒子(たとえば、直径10nm~100nm)は十分に機能しうる。本発明の目的では、標識フリー検出は不要であり、検出はシグナルエンハンサーとしての二次金属ナノ粒子により達成される。これは、第2の抗体を介してもう1つのナノ粒子(金)の結合を含み、その結果、2つのナノ粒子間のプラズモン結合を引き起こして顕著なスペクトルシフトをもたらす。このストラテジーは、タンパク質及びDNA分子のコンフォメーション変化の検出に利用されており、単純なカメラたとえばセルフォンで利用可能なものを用いて取得される画像で単一のアナライト結合の容易な検出を可能にするであろう。第2のナノ粒子により増強される色変化は、第2のナノ粒子のサイズさらにはナノ粒子間の実効距離に依存する。我々のアッセイで予想される粒子間分離(抗体I-アナライト-抗体II)は20~30nmであろう。これは有効プラズモン結合の範囲内である。我々は典型的には40nm金ナノ粒子を使用するが、粒子間距離に伴うプラズモン結合の指数関数的減衰が第2のナノ粒子のサイズに依存性するので(すなわち、より小さなナノ粒子は、より大きなものと比較してプラズモン結合の急激な減少を示す)、さらに大きな金ナノ粒子を用いれば、スペクトルシフトの微調整が可能になる。
【0236】
暗視野イメージングは、アッセイで個別粒子対からの散乱光をモニターする1つの適切な方法である。暗視野顕微鏡法は、サンプルを直接照明しない光学技術である。その代わりに、物体を可視化するために散乱光が使用され、その結果、ほぼ黒色のバックグラウンドの強度を生じて、物体とバックグラウンドとの大きく増強されたコントラストがもたらされる。実際には、ナノプラズモン物質は、明滅したり、光漂白したり、従来のバイオセンシングアッセイで一般に使用される蛍光ベースの検出を損なう現象を生じたりすることなく、多数の光子を生成するので、単純な光学構成で個別粒子の観察を可能にする。
【0237】
ディジタル分子アッセイの鍵は、視野内の各粒子の個別評価である。
これは各種方法で達成可能であるが、一方法は事前及び事後の画像比較を含み、この場合、最初にキャプチャー粒子が基材上にアレイ化される(ランダム又はパターン状)。
アレイ粒子は、サンプル導入前にイメージングされ、「事前」情報を提供する。
次いで、二次標識抗体と一緒にサンプルがチャンバーに流入される。アナライトキャプチャーが成功すると、二次標識粒子は、キャプチャー粒子に関連付けられ、明るさ及び色の規定の変化をもたらす。事前画像の各粒子は、単一のキャプチャー粒子の予想される明るさ及び色を有するかを決定するように特徴付けられよう。いずれのアグリゲート粒子も他の改変粒子も、後続の分析で無視されよう。アナライトキャプチャー後、良好なキャプチャー粒子の位置の物体のすべての画像が解析される。不合格(たとえば、アグリゲート粒子又は非特異的結合粒子)とクリーンアナライトキャプチャーとを識別するために、画像解釈の統計的判断基準が利用される。バックグラウンド解析及び誤差補正は、基準マーカーとして非機能化粒子を含めることにより強化される。これらは、溶媒浸透の成功、空気暴露、又は粒子領域の一部を使用不能にする可能性のあるさまざまな他の不合格モードのいずれかを感知するために使用可能である。バルクアッセイでは、こうした誤差は単純にシグナルを劣化させる。しかし、ディジタル分子アッセイ方式では、かかる誤差は事前に除去可能である。実際には、多くの単一分子蛍光イメージング実験では、各種理由で視野の大きな領域が使用不能であるが、それらの間には多くの良好な分子があるので、実験は依然として成功しうる。
【0238】
実施例2:プラズモンハイブリダイゼーションアッセイ
以上の例の変更形態では、表面結合核酸プローブのハイブリダイゼーションは、ナノ粒子間のプラズモン結合と組み合わされて核酸アナライトに対してディジタル分子アッセイを提供する。表面は、第1のナノ粒子が装着された第1のオリゴヌクレオチドで改質される。表面改質は、非共有結合吸着又は共有結合により実施可能である。第1のオリゴヌクレオチドの配列は、所望のアナライト核酸に含まれる第1の相補的配列にハイブリダイズするように選択される。その場合、改質表面の暴露は、アナライトと第1の短いオリゴヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションを引き起こす。この時点で、第2のナノ粒子が添加された第2のオリゴヌクレオチドが導入される。第2のオリゴヌクレオチドの配列は、所望のアナライト核酸に含まれる第2の相補的配列にハイブリダイズするように選択され、第1及び第2の相補的配列は、第1及び第2の両方のオリゴヌクレオチド配列の同時ハイブリダイゼーションを可能にするように互いに十分に分離される。
【0239】
アナライト核酸と第1及び第2のオリゴヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションにより生じる超分子集合体は、以上に記載のサンドイッチイムノアッセイに関連して第1及び第2のナノ粒子がごく近接した状態になるように設計可能である。このシステムの設計の成功に絶対に必要という訳ではないが、ハイブリダイズされたアナライトヌクレオチドがカノニカル螺旋構造をとれば、分子幾何学形状が単純化され、配列長並びにナノ粒子への装着の性質及び配置のようなパラメーターの選択が容易になろう。
【0240】
本出願に引用されている米国又は外国の参照文献、特許、又は出願はすべて、あたかもそれら全体が本明細書に記載されたがごとく本出願をもって参照により組み込まれる。なんらかの矛盾を生じた場合、本明細書に実際に開示されたものが優先する。
【0241】
以上の説明から、当業者であれば、本発明の本質的特性を容易に確認することが可能であり、その趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明に種々の変更及び修正を加えて種々の用途及び条件に適合させることが可能である。