(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】複数バーナー回転炉溶融のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F23D 23/00 20060101AFI20230329BHJP
F23C 5/08 20060101ALI20230329BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20230329BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20230329BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20230329BHJP
F27B 3/06 20060101ALI20230329BHJP
F27B 3/20 20060101ALI20230329BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
F23D23/00 Z
F23C5/08
F23N5/00 Q
F23N1/02 K
F23G5/44 C
F27B3/06
F27B3/20
F27D19/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020176679
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2021-02-01
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル ジェイムズ ヘワートソン
(72)【発明者】
【氏名】シャイレッシュ プラディープ ギャンゴリ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ.ブルース ケンワージー
(72)【発明者】
【氏名】ホー シアオイー
(72)【発明者】
【氏名】アナップ バサント サネ
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03098512(EP,A1)
【文献】国際公開第2009/087227(WO,A1)
【文献】特開2006-153389(JP,A)
【文献】特開平05-172327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0030308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 23/00
F23C 5/08
F23N 5/00
F23N 1/02
F23G 5/44
F27B 3/06
F27B 3/20
F27D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2パスの傾斜回転炉中で装填物を溶解する方法であって、炉が閉口端から開口端へ延在する軸を有する略円筒状の壁によって囲まれたチャンバーと開口端をカバーするように構成された扉
であって、下部と上部とを独立して開放することができるように分けられている扉とを有していて、前記方法が
固体を含有する装填物をチャンバーに加えること;
軸に対する回転の方向で炉を回転させること;
扉の下部に取り付けられた第一のバーナーを第一の燃焼量(firing rate)で操作して、ある長さを有する第一の火炎を生じさせること;
扉の下部の上で扉の上部に取り付けられた第二のバーナーを第二の燃焼量で操作して、第一の火炎と比較して装填物から離れている、ある長さを有する第二の火炎を生じさせること;
装填物より上で扉に位置する煙道を通して、第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出すること;
初期段階において、装填物中の固体が第一の火炎の発達を妨げるとき、第一の燃焼量より大きくなるように第二の燃焼量を制御すること;並びに
後の段階において、第一の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶融した後に、第二の燃焼量より大きくなるように第一の燃焼量を制御すること
を含む方法。
【請求項2】
初期段階の間に、第一の火炎の長さが第二の火炎の長さより短くなるように第一のバーナー及び第二のバーナーを制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第一のバーナー中でステージングされて(staged)、第一のバーナーのステージング比を調節することによって第一の火炎の長さが制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第二のバーナー中でステージングされて、第二のバーナーのステージング比を調節することによって第二の火炎の長さが制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも250ft/sの速度の、高いモーメンタムを有する火炎を生じさせるように第二のバーナーを操作することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
回転の方向の結果として、円筒状の壁が回転して装填物中に入る没入界面が形成され、円筒状の壁が回転して装填物から出る浮上界面が形成され;第一のバーナー及び第二のバーナーが浮上界面より没入界面の近くに位置し、煙道が没入界面より浮上界面の近くに位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第一のバーナーを燃料リッチで操作して還元性の第一の火炎を生じさせること;及び第二のバーナーをストイキで操作することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2パスの回転炉中で装填物を溶解するための複数バーナーシステムであって、略円筒状の壁によって囲まれたチャンバーと、閉口端から開口端へ延在する軸と、開口端をカバーするように構成された扉
であって、下部と上部とを独立して開放することができるように分けられている扉と、回転の方向とを有していて、チャンバーが装填物を含有していて、
扉の下部に取り付けられ、ある長さを有する第一の火炎をチャンバー中へ方向づけるように位置する第一のバーナー;
扉の上部に取り付けられ、ある長さを有する第二の火炎を第一の火炎と比較して装填物から離れているチャンバー中へ方向づけるように位置する第二のバーナー;
扉の上部に位置していて、チャンバーから第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出する煙道;並びに
炉中の溶融操作の段階に応じて、第一の燃焼量及び第一のストイキで第一のバーナーを操作するように、かつ第二の燃焼量及び第二のストイキで第二のバーナーを操作するようにプログラムされた制御装置
を備え、初期段階において、装填物中の固体が最初の火炎の発達を妨げるとき、第一の燃焼量より第二の燃焼量が大きく、後の段階において、第一の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶融した後に、第二の燃焼量より第一の燃焼量が大きいシステム。
【請求項9】
制御装置が、溶融操作の初期段階の間に、第二の火炎の長さより短くなるように第一の火炎の長さを制御するようにプログラムされた、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第一のバーナー中でステージングされていて、第一のバーナーのステージング比の調節によって第一の火炎の長さが制御されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第二のバーナー中でステージングされていて、第二のバーナーのステージング比の調節によって第二の火炎の長さが制御されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
炉が、円筒状の壁が回転して装填物中に入る形成された没入界面と、円筒状の壁が回転して装填物から出る形成された浮上界面とをさらに備え、第一のバーナー及び第二のバーナーが浮上界面より没入界面の近くに位置し、煙道が没入界面より浮上界面の近くに位置する、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
1パスの炉中で装填物を溶解する方法であって、炉が第一の端壁、第二の端壁及び第一の端と第二の端とを連結する少なくとも1つの側壁によって囲まれたチャンバー
と、下部と上部とを独立して開放することができるように分けられている扉とを有していて、前記方法が
固体を含有する装填物をチャンバーに加えること;
扉の下部に取り付けられた第一のバーナーを第一の燃焼量で操作して、第一の長さを有する第一の火炎を生じさせること;
扉の上部に取り付けられた第二のバーナーを第二の燃焼量で操作して、第二の長さを有する第二の火炎を生じさせること;
端壁の1つに位置する煙道を通して、第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出すること;
初期段階において、装填物中の固体が第一の火炎と第二の火炎とのうち少なくとも1つの発達を妨げるとき、第一の燃焼量と第二の燃焼量とのうち少なくとも1つを制御して煙道から出る熱損失及び炉の過熱を最小化すること;並びに
後の段階において、第一の火炎及び第二の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶解した後に、第一の燃焼量及び第二の燃焼量を制御して装填物への熱伝達を最大化すること
を含む方法。
【請求項14】
1パスの炉中で装填物を溶解するための複数バーナーシステムであって、第一の端壁、第二の端壁及び少なくとも1つの側壁によって囲まれたチャンバー
と、下部と上部とを独立して開放することができるように分けられている扉とを有していて、チャンバーが装填物を含有していて、
扉の下部に取り付けられ、第一の長さを有する第一の火炎をチャンバー中へ方向づけるように位置する第一のバーナー;
扉の上部に取り付けられ、第二の長さを有する第二の火炎をチャンバー中へ方向づけるように位置する第二のバーナー;
端壁の1つに位置していて、チャンバーから第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出する煙道;並びに
炉中の溶融操作の段階に応じて、第一の燃焼量及び第一のストイキで第一のバーナーを操作するように、かつ第二の燃焼量及び第二のストイキで第二のバーナーを操作するようにプログラムされた制御装置
を備え初期段階において、装填物中の固体が第一の火炎の発達を妨げるとき、第一の燃焼量より第二の燃焼量が大きく、後の段階において、第一の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶解した後に、第二の燃焼量より第一の燃焼量が大きいシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる、2019年10月21日に提出された米国仮出願62/923848号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
回転炉の溶融操作を改善するために、複数バーナーシステム及び方法が本明細書において説明される。
【0003】
図1は、扉44に単一バーナー10を有する回転炉100中において、障害物がない場合に、どのように拡散火炎12が自然に展開するかを例示している。煙道ガス18は煙道ダクト16を通って出る前に溶融金属浴14の上を循環する。しかし、炉100が加熱又は溶融するための材料で装填されるとき、燃焼空間は
図2に例示されるように2種類に、典型的には炉100の上部に位置する高い材料ポロシティ、しばしば99%より高い材料ポロシティを有する燃焼空間20(すなわちオープンである空間)と、典型的には炉100の下部に位置する低い材料ポロシティ、しばしば99%以下のポロシティを有する燃焼空間22(すなわち部分的に又は完全に装填材料によってブロックされている空間)とに分けられる場合がある。
【0004】
エネルギーが優先的に装填物に伝達されるのを確実にするために、従来では、バーナーは(耐火物の近くではなく)装填される材料の近くに位置している。スクラップへの直接の熱伝達速度は高いが、煙道の位置によっては、(1)スクラップに当たる前の不完全な混合又は燃焼、(2)煙道への流れの短絡をもたらす燃料と酸化剤との分離、及び(3)
図3及び4に示すような、装填物の片側の過熱を、一方で他方の側の熱不足をもたらす不均質な熱分布、を含むプロセスの難点についての傾向が存在する。これらの難点の組み合わせは、(低温端における蓄積物のために)より大きい燃料消費、酸化性の溶損及び減少した炉容積をもたらす場合がある。これらの問題点はまた、どれだけ強く炉を加熱することができるかを限定し、バーナーによる加えるエネルギー投入についての利益を急速に減少させる。
図3において、装填物24は火炎12の完全な展開をブロックしていて、炉100の高温の前部26及び炉100の低温の後部28をもたらす。この装填物24は、スクラップの大きい塊、スクラップの大きい堆積物、インゴット又はドロスである場合がある。加えて、高温の前部26及び装填物24への火炎の衝突の結果として、装填物24の一部が過熱して酸化されて、収量の損失をもたらす場合がある。
図4は、同じ回転炉100の上面図を示す。
【0005】
例えばスクラップ又は装填物のポロシティが低い(すなわち、大きい、密度が高い装填物)とき、これらの難点はより有意である。装填物が低密度でありポロシティが高いとき、火炎は部分的に装填物を通過して炉の後部に到達することができる。
【発明の概要】
【0006】
典型的な工業的金属溶融炉又は再加熱炉は「バッチ式」であり、材料が装填、溶融/再加熱されて、次いで炉の外に循環的な方法でタップ切り/取り出しされる。大きいサイズのスクラップ若しくはドロスの導入又は炉の設計容積を超過した炉の装填は、炉における火炎の十分な展開を妨げ、従って、炉における熱伝達の効率及びエネルギー分布に影響を与える。このことは局所的な低温スポット及びスラグ蓄積物のような問題をもたらして、炉の容積及び生産性を減少させる。本明細書において説明されるシステム及び方法は、工業的溶融炉又は再加熱炉における複数のバーナーの方策的使用を扱って、プロセスの生産性、エネルギー効率及び金属回収を改善する。
【0007】
態様1
2パスの傾斜回転炉中で装填物を溶解する方法であって、炉が閉口端から開口端へ延在する軸を有する略円筒状壁によって囲まれたチャンバーと開口端をカバーするように構成された扉とを有していて、前記方法が
固体を含有する装填物をチャンバーに加えること;
軸に対する回転の方向で炉を回転させること;
扉の下部に取り付けられた第一のバーナーを第一の燃焼量(firing rate)で操作して、ある長さを有する第一の火炎を生じさせること;
扉の下部の上で扉の上部に取り付けられた第二のバーナーを第二の燃焼量で操作して、第一の火炎と比較して装填物から離れている、ある長さを有する第二の火炎を生じさせること;
装填物より高くで扉に位置する煙道を通して、第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出すること;
初期段階において、装填物中の固体が第一の火炎の発達を妨げるとき、第一の燃焼量より大きくなるように第二の燃焼量を制御すること;並びに
後の段階において、第一の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶融した後に、第二の燃焼量より大きくなるように第一の燃焼量を制御すること
を含む方法。
【0008】
態様2
初期段階の間に、第一の火炎の長さが第二の火炎の長さより短くなるように第一のバーナー及び第二のバーナーを制御することをさらに含む、態様1に記載の方法。
【0009】
態様3
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第一のバーナー中でステージングされて(staged)、第一のバーナーのステージング比を調節することによって第一の火炎の長さが制御される、態様2に記載の方法。
【0010】
態様4
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第二のバーナー中でステージングされて、第二のバーナーのステージング比を調節することによって第二の火炎の長さが制御される、態様2に記載の方法。
【0011】
態様5
少なくとも250ft/sの速度の、高いモーメンタムを有する火炎を生じさせるように第二のバーナーを操作することをさらに含む、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0012】
態様6
回転の方向の結果として、円筒状の壁が回転して装填物中に入る没入界面が形成され、円筒状の壁が回転して装填物から出ている浮上界面が形成され;第一のバーナー及び第二のバーナーが浮上界面より没入界面の近くに位置する、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0013】
態様7
煙道が没入界面より浮上界面の近くに位置する、態様6に記載の方法。
【0014】
態様8
第一のバーナーを燃料リッチで操作して還元性の第一の火炎を生じさせること;及び第二のバーナーをストイキで操作することをさらに含む、態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0015】
態様9
炉の扉が下部と上部とを独立して開放することができるように分けられていて、装填又は注湯のために扉の下部が開いているとき、第二のバーナーの操作を続けてチャンバー中への入熱及びチャンバー中の正圧を保つことをさらに含む、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
態様10
2パスの回転炉中で装填物を溶解するための複数バーナーシステムであって、略円筒状の壁によって囲まれたチャンバーと、閉口端から開口端へ延在する軸と、開口端をカバーするように構成された扉と、回転の方向とを有していて、チャンバーが装填物を含有していて、
扉の下部に取り付けられ、ある長さを有する第一の火炎をチャンバー中へ方向づけるように位置する第一のバーナー;
扉の上部に取り付けられ、ある長さを有する第二の火炎を第一の火炎と比較して装填物から離れているチャンバー中へ方向づけるように位置する第二のバーナー;
扉の上部に位置していて、チャンバーから第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出する煙道;並びに
炉中の溶融操作の段階に応じて、第一の燃焼量及び第一のストイキで第一のバーナーを操作するように、かつ第二の燃焼量及び第二のストイキで第二のバーナーを操作するようにプログラムされた制御装置
を備え、初期段階において、装填物中の固体が最初の火炎の発達を妨げるとき、第一の燃焼量より第二の燃焼量が大きく、後の段階において、第一の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶融した後に、第二の燃焼量より第一の燃焼量が大きいシステム。
【0017】
態様11
制御装置が、溶融操作の初期段階の間に、第二の火炎の長さより短くなるように第一の火炎の長さを制御するようにプログラムされた、態様10に記載のシステム。
【0018】
態様12
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第一のバーナー中でステージングされていて、第一のバーナーのステージング比の調節によって第一の火炎の長さが制御されている、態様11に記載のシステム。
【0019】
態様13
燃料と酸化剤とのうち少なくとも1つが第二のバーナー中でステージングされていて、第二のバーナーのステージング比の調節によって第二の火炎の長さが制御されている、態様11に記載のシステム。
【0020】
態様14
炉が、円筒状の壁が回転して装填物中に入る形成された没入界面と、円筒状の壁が回転して装填物から出ている形成された浮上界面とをさらに備え、第一のバーナー及び第二のバーナーが浮上界面より没入界面の近くに位置する、態様10に記載のシステム。
【0021】
態様15
煙道が没入界面より浮上界面の近くに位置する、態様14に記載のシステム。
【0022】
態様16
炉の扉が下部と上部とを独立して開放することができるように分けられている、態様10~15のいずれか1つに記載のシステム。
【0023】
態様17
1パスの炉中で装填物を溶解する方法であって、炉が第一の端壁、第二の端壁及び第一の端と第二の端とを連結する少なくとも1つの側壁によって囲まれたチャンバーを有していて、前記方法が
固体を含有する装填物をチャンバーに加えること;
端壁の1つに取り付けられた第一のバーナーを第一の燃焼量で操作して、第一の長さを有する第一の火炎を生じさせること;
端壁の1つに取り付けられた第二のバーナーを第二の燃焼量で操作して、第二の長さを有する第二の火炎を生じさせること;
端壁の1つに位置する煙道を通して、第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出すること;
初期段階において、装填物中の固体が第一の火炎と第二の火炎とのうち少なくとも1つの発達を妨げるとき、第一の燃焼量と第二の燃焼量とのうち少なくとも1つを制御して煙道から出る熱損失及び炉の過熱を最小化すること;並びに
後の段階において、第一の火炎及び第二の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶解した後に、第一の燃焼量及び第二の燃焼量を制御して装填物への熱伝達を最大化すること
を含む方法。
【0024】
態様18
炉が回転炉であり、第一のバーナーが第一の端壁に取り付けられていて、第二のバーナーが第一の端壁に取り付けられていて、煙道が第二の端壁にある、態様17に記載の方法。
【0025】
態様19
炉が回転炉であり、第一のバーナーが第一の端壁に取り付けられていて、第二のバーナーが第二の端壁に取り付けられていて、煙道が第二の端壁にある、態様17に記載の方法。
【0026】
態様20
炉が反射炉であり、バーナーのうち少なくとも1つが煙道と同じ端壁に取り付けられている、態様17に記載の方法。
【0027】
態様21
1パスの炉中で装填物を溶解するための複数バーナーシステムであって、第一の端壁、第二の端壁及び少なくとも1つの側壁によって囲まれたチャンバーを有していて、チャンバーが装填物を含有していて、
端壁の1つに取り付けられ、第一の長さを有する第一の火炎をチャンバー中へ方向づけるように位置する第一のバーナー;
壁の1つに取り付けられ、第二の長さを有する第二の火炎をチャンバー中へ方向づけるように位置する第二のバーナー;
端壁の1つに位置していて、チャンバーから第一の火炎及び第二の火炎に起因する燃焼ガスを排出する煙道;並びに
炉中の溶融操作の段階に応じて、第一の燃焼量及び第一のストイキで第一のバーナーを操作するように、かつ第二の燃焼量及び第二のストイキで第二のバーナーを操作するようにプログラムされた制御装置
を備え、初期段階において、装填物中の固体が第一の火炎の発達を妨げるとき、第二の燃焼量が第一の燃焼量より大きく、後の段階において、第一の火炎の発達が妨げられないように十分に装填物中の固体が溶解した後に、第一の燃焼量が第二の燃焼量より大きいシステム。
【0028】
態様22
炉が回転炉であり、第一のバーナーが第一の端壁に取り付けられていて、第二のバーナーが第一の端壁に取り付けられていて、煙道が第二の端壁にある、態様21に記載のシステム。
【0029】
態様23
炉が回転炉であり、第一のバーナーが第一の端壁に取り付けられていて、第二のバーナーが第二の端壁に取り付けられていて、煙道が第二の端壁にある、態様21に記載のシステム。
【0030】
態様24
炉が反射炉であり、バーナーのうち少なくとも1つが煙道と同じ端壁に取り付けられている、態様21に記載のシステム。
【0031】
本発明は添付の図面とあわせて下で説明され、同じ符号は同じ要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】燃料と酸化剤とを炉中で混合している、遮られていない拡散火炎又は予混合火炎の完全な展開を示す側面の模式図である。
【
図2】特に固体材料がバーナーから出る火炎の完全な展開をブロックするときの、加熱及び/又は溶融するための固体材料で装填された炉中の燃焼域を示す側面の模式図である。
【
図3】炉中の火炎の完全な展開をブロックすること及び妨げることにおける、スクラップの大きい塊、インゴット又はドロスの存在の効果を示す側面の模式図である。
【
図4】
図3におけるものと同一の効果を示す上面の模式図である。
【
図5】異なる火炎特性を有する2つのバーナーを使用して、スクラップの大きい塊、インゴット又はドロスが炉中に存在していても、火炎の完全な展開及びより均一な熱伝達を可能とするシステムを示す側面の模式図である。
【
図6】複数バーナーの溶融操作における2つのバーナーの例示的構成を示す、炉の扉の端からの端面の模式図である。
【
図7】複数バーナーの溶融操作における、分かれた扉とあわせた、2つのバーナーの別の例示的構成を示す、炉の扉の端からの端面の模式図である。
【
図8A】本発明を説明するために行われた計算的な流体力学検討の結果を示すグラフであって、下部バーナー燃焼の場合の、単一バーナー及び複数バーナーシステムを有する炉の壁に沿った温度分布を示すグラフである。
【
図8B】本発明を説明するために行われた計算的な流体力学検討の結果を示すグラフであって、上部バーナー燃焼の場合の、単一バーナー及び複数バーナーシステムを有する炉の壁に沿った温度分布を示すグラフである。
【
図9】本発明を説明するために行われた計算的な流体力学検討の結果を示すグラフである。単一及び複数バーナーシステムの場合の、溶融に達する熱の計算値を示す。
【
図10】煙道と反対の炉の端に両方のバーナーを有する直線軸の1パスの回転炉における、複数バーナーシステムを使用する第一の実施態様を示す上面の断面図である。
【
図11】煙道と反対の炉の端に1つのバーナーを、煙道と同じ炉の端にもう1つのバーナーを有する直線軸の1パスの回転炉における、複数バーナーシステムを使用する第二の実施態様を示す上面の断面図である。
【
図12】直線軸の1パスの反射炉における、複数バーナーシステムを使用する第三の実施態様を示す側面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図5は、傾斜回転炉100中の溶融を向上して、装填物24の形態の大きい密度の高いスクラップの難点を克服するために使用することができる複数バーナーシステムを示す。例示的な実施態様において、2つのバーナーは扉44に方策的に位置し、溶融サイクルの早期に、炉中へのエネルギーのより深い浸透を可能とする。主バーナー30は、補助バーナー32の下で扉44に位置する。主バーナー30は、装填物24に衝突する主バーナー火炎34を生じさせ、一方で補助バーナー32は、装填物24の上で、扉44の反対の炉100の端へ方向づけられた補助バーナー火炎36を生じさせる。それぞれの火炎から装填物24への熱輸送を最適化するように、主バーナー火炎34は、補助バーナー火炎36と比較してより短い加熱プロファイルを有する。このことは
図5の加熱プロファイルのグラフにおいて見ることができ、グラフ中で、主バーナー火炎の加熱プロファイルはMでラベル付けされ、補助バーナー火炎の加熱プロファイルはAでラベル付けされている。この配置は2つのバーナーに限定されないこと、及び2より多くのバーナーを方策的に配置して同一の効果を得ることが可能であることに注意する。
【0034】
図5の実施態様において示されるように、有益なことには2つの異なる種類のバーナーを使用することができるか、又は例えば米国特許第9134025号明細書において教示されるように、異なる放熱プロファイルに変えることが可能な1つのバーナーを使用することができる。
【0035】
本明細書において説明される複数バーナーシステムを用いて、多くの要素を調節して最適な結果を達成することができる。
【0036】
バーナーは煙道ガスダクトからできる限り遠く、少なくとも煙道ガスダクトの直径の0.5倍、好ましくは煙道ガスダクトの直径の3倍より遠くに位置するべきである。
【0037】
バーナーのうち少なくとも1つ(例えば、
図5の補助バーナー32並びに
図5、6及び7の対応する補助バーナー火炎36)は、炉中に装填された材料に妨げられることなしに、炉の長さに沿って火炎が完全に展開するように、炉の頂部の比較的近くに及び装填物の幾らか上に位置するべきである。このバーナーの最適な位置は、優勢な装填行為に依存する。この構成は、特に、バーナー及び煙道が炉の同一の(扉)端に位置する2パスの回転炉において利用可能である。まず、静止した炉において、炉の頂部に局所的なホットスポットを生じさせる傾向がある。第二に、構成が1パスである炉において、装填物による任意の障害物が再度の方向づけ、増加した滞留時間及び燃焼の最終的な完了を、ガスが炉から出る前に平易にもたらすように、炉中のガスの全体の流れはバーナーの端から煙道の端へと進む。
【0038】
バーナーのうち他の少なくとも1つ(例えば、
図5の主バーナー30並びに
図5、6及び7の対応する主バーナー火炎34)は、その火炎の展開が短い距離で装填物によって妨げられるように位置し、好ましくは短い火炎長さを特徴とする(すなわち、燃焼が炉中への短い距離の中で完了する)バーナーの種類である。バーナーの1つのこのような種類は米国特許第9134025号明細書において説明されている。
【0039】
好ましくは、主バーナー30は、一度装填物が溶融すれば、火炎長さが伸ばされてエネルギー分布が炉中にさらに延長するように、燃料又は酸化剤をステージングしてエネルギー放出特性を変更することが可能である。
【0040】
好ましくは、補助バーナー32は、設計燃焼量で250ft/sより高い、好ましくは500ft/sより高い速度に対応する高いモーメンタムで炉に入る火炎を生じさせて、炉を浸透する火炎の能力を向上させる。
【0041】
好ましくは、補助バーナー32は燃料又は酸化剤をステージングすることができる。代わりに又は組み合わせて、バーナー32は、比較的均一に分散された加熱プロファイルを生じさせて耐火壁における過熱又はホットスポットを回避するための無炎燃焼又は空間燃焼(spacious combustion)が可能なものであってよい。バーナーの1つのこのような種類は米国特許第8696348号明細書において説明されている。
【0042】
主バーナー30及び/又は補助バーナー32は、酸化剤中に20.9%より多い酸素を有する酸化剤を使用することができる。
【0043】
図6の回転方向矢印42によって示されるように、主バーナー火炎34及び補助バーナー火炎36は、好ましくは回転して金属浴中に入る耐火物の近くに位置して、装填物との接触に至る直前に耐火物を加熱する。加えて、好ましくは、煙道ガスダクト16は、
図6にまた示されるように、バーナーの位置に対して炉の反対の(縦の)半分に位置する。
【0044】
例えば
図5及び6の配置において、補助バーナー32は、ほぼストイキで操作することができ、一方で(金属装填物と直接接触する火炎を生じさせる)主バーナー30は比較的燃料リッチである。例えば、操作の全体のストイキが1.8であり、かつ両方のバーナーがおおよそ同じ燃焼量を有する場合、主バーナー30は1.6(燃料リッチ)で操作することができ、一方で補助バーナー32は2.0(ストイキ)で操作することができる。
【0045】
操作の初期段階の間、主バーナー30からの火炎の発達を妨げる場合がある炉中の有意な固体装填物24が存在するとき、補助バーナー32は典型的には主バーナー30より大きい燃焼量で操作される。操作の後の段階において、固体スクラップ24が溶融浴14中にかなり溶け込んだとき、主バーナー30は補助バーナー32より大きい燃焼量で操作することができる。操作のこの順序は、より速い溶融、次ぐ溶融した装填物のより速い加熱を可能とする。例えば、合計の燃焼量が15MMBtu/hrであるとき、溶融サイクルの初期の2/3について、主バーナー30は5MMBtu/hrで操作され、一方で補助バーナー32は10MMBtu/hrで操作される。次いで、溶融サイクルの最後の2/3の間、主バーナー30は13MMBtu/hrで操作され、一方で補助バーナーは2MMBtu/hrで操作されるか又は停止される。初期段階と後の段階との間の溶融サイクルにおける遷移時間は様々な要素に依存するが、最も重要なことにはスクラップの種類、スクラップ片のサイズ及び密度に依存する。装填物24中のより大きいより密度の高いスクラップは、補助バーナー32を長時間、より大きい燃焼量で操作することを要求し、装填物24中のより小さい密度の低いスクラップは主バーナー30をより速く強めることを可能とする。センサー、例えば
図5に示される紫外線/赤外線センサー38及び/又は熱電対40等のセンサーは、この遷移についての決定を助けるために使用することができる。
【0046】
炉の扉44が分けられていて、炉の扉が扉の下部46に位置する主バーナー30及び扉の上部48に位置する補助バーナー32を有していて、扉の上部48が閉じられたままである間に扉の下部46が独立して開放可能である、
図6の実施態様のバリエーションが
図7に示されている。このことは、扉の下部を開放しつつ補助バーナー32の燃焼を続けることによって、装填又は溶融物のサンプリングの間に、炉においてエネルギー及び正圧が保持されることを可能とする。このことはまた、扉が開放しているとき、漂泊空気(tramp air)の取り込みを妨げるのに有用である。
【0047】
図8A、8B及び9は、傾斜回転炉における配置をシミュレートする計算的な流体力学検討の結果を示す。
図8Aは、溶融プロセスの初めに主バーナー30が炉中で個別に燃焼しているときの壁の温度分布を示している。
図8Bは、溶融プロセスの初めに補助バーナー32が個別に燃焼しているときの壁の温度分布を示している。プロセスの初期に存在する固体装填物があるために、主バーナー30は、後方に熱を伝達することに難点を有し、最後には炉の前方壁の過熱をもたらす。反対に、補助バーナー32は、火炎のための明らかな経路を有していて、従って火炎は炉の後方に到達して装填物に効果的に熱を伝達する。従って、補助バーナー32をプロセスの初期に、主バーナー30をプロセスの終期に向けて操作することは、バーナーからプロセスへの最適な熱伝達を達成することができる。
図9は、シミュレーションから計算された数値の形で熱伝達を示している。バーナーから溶融物への熱伝達は、補助バーナーの燃焼量の主バーナーの燃焼量に対する比が増加するに従って増加する。シミュレーションは、2つの異なる位置における燃焼量を分離すること及びその燃焼量の分離を時間とともに調整することが、溶融物への最適な熱伝達を提供することを示している。
【0048】
図10及び11は、1パスの回転炉に適用される複数バーナーシステムの代わりの実施態様を示している。複数バーナーシステムの流れの経路は、両方の図において略図が示されている。両方のこれらの実施態様において、煙道ダクト16は、複数バーナーシステムのバーナーのうち少なくとも1つのある壁と反対の壁にある。同一の壁にある主バーナー50と補助バーナー52との両方をあわせたバーナーの前に装填物24があるとき(
図10)、主バーナー50は短い距離における燃焼を可能とする短い火炎54を生じさせ、一方でより長い利用可能な燃焼空間を有する補助バーナー52はより長い火炎56を生じさせて炉の後方に熱を提供する。壁の1つにある煙道ダクト16を有する反対の壁にバーナーがあるとき(
図11)、主バーナー50と補助バーナー58との両方は、両側から装填物24を溶融させるように、比較的短い火炎52及び60を生じさせる。
図12は、1パスの反射炉に適用される類似の複数バーナーシステムを示していて、主バーナー62は低い材料ポロシティを有する燃焼空間22の近くに短い火炎66を生じさせ、補助バーナー64は高い材料ポロシティを有する燃焼空間20を通過することができるより長い火炎68を生じさせる。
【0049】
本発明は、機能的に等価である本発明の少数の態様と任意の実施態様との例示が本発明の範囲内にあることを意味する例において開示された具体的な態様又は実施態様による範囲に限定されない。本明細書において示され説明されたものに加えて、本発明の様々な変更したものが、当分野における当業者にとって明白となり、添付の請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。