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特許7252944アクチュエータ装置、アクチュエータ装置による対象物取出方法、及び、対象物取出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置、アクチュエータ装置による対象物取出方法、及び、対象物取出システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20230329BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B25J15/06 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020516178
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2019015093
(87)【国際公開番号】W WO2019208162
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018085411
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019009661
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】小澤 順
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台に載置される複数の対象物の1つを、前記対象物の側面を互いに接触させながら、吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置であって、
アクチュエータと、
第1の設定部と、
動作制御部と、
第1取得部とを備え、
前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出し、
前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定し、
前記動作制御部は、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、
前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得し、
(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得し、
ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、
(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御する、
アクチュエータ装置。
【請求項2】
前記載置台は、前記対象物が複数個充填された状態で配置される梱包箱であり、
前記梱包箱から前記1つの対象物を前記吸着ノズルにより吸着しかつ前記他の物体としての前記梱包箱内に残っている前記対象物の側面又は前記梱包箱の内壁に接触しながら取出す、
請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記対象物は直方体である、
請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記2つのモーメントの前記差が第1閾値以上であれば前記取出し動作を継続し、前記第1閾値未満であれば前記取出し動作の継続を中止するように制御する、
請求項1~3のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記吸着ノズルによる、前記対象物の第2の吸着位置を設定する第2の設定部を更に備え、
前記取出し動作の継続を中止した対象物に対して、前記載置台から取出す前の状態に戻した状態で、前記第2の設定部は、前記取出し動作を中止した前記第1の吸着位置とは異なる前記第2の吸着位置を設定し、
前記動作制御部は、前記第2の吸着位置で、前記対象物を吸着して、前記載置台からの取出し動作を行うように制御する、
請求項1~4のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続することにより、前記第1の取出し量よりも大きくかつ前記対象物の高さよりも大きな量だけ前記対象物を移動させて、前記対象物を前記載置台から前記載置台の外部に取出すように制御する、
請求項1~5のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記対象物の前記吸着位置は、ビニール又はセロハンで覆われている、
請求項1~6のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項8】
前記載置台は傾斜角度が鋭角の棚板に載置されている、
請求項1~7のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項9】
前記載置台は傾斜角度が0度の棚板に載置されている、
請求項1~7のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項10】
前記動作制御部は、前記吸着位置での吸着圧を、第1の吸着圧と、前記第1の吸着圧よりも大きな第2の吸着圧とに変更可能に制御し、
前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、前記アクチュエータによる前記取出し動作を継続しないように制御するとき、前記取出し動作を中止して前記対象物を前記載置台内の元の位置に戻した後、前記吸着位置での吸着圧を前記第1の吸着圧から前記第2の吸着圧に変更したのち、前記アクチュエータを動作制御して前記対象物を前記吸着位置で吸着しつつ前記取出し動作を再度行い、前記2つのモーメントの前記差を前記第1取得部により再び取得し、前記アクチュエータによる前記取出し動作を継続するか否かを制御する、
請求項1~9のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項11】
前記動作制御部は、前記2つのモーメントの前記差が前記第1閾値以上であるが、第2閾値を越えるとき、前記取出し動作の継続を中止するように制御する、
請求項1~10のいずれか1つに記載のアクチュエータ装置。
【請求項12】
載置台に載置される複数の対象物の1つを、前記対象物の側面を互いに接触させながら、吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出す、対象物取り出し方法であって、
アクチュエータと、
第1の設定部と、
動作制御部と、
第1取得部とを備えるアクチュエータ装置を使用して、
前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を前記第1の設定部で設定するとともに、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有する前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作を前記動作制御部で制御して、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出し、
(i)前記吸着ノズルに付加されかつ前記第1取得部で取得したモーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を前記第1取得部で取得し、
ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、
(ii)前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを前記動作制御部で制御する、
対象物取り出し方法。
【請求項13】
載置台に載置される複数の対象物の1つを、前記対象物の側面を互いに接触させながら、吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置の対象物取り出し用プログラムであって、
前記アクチュエータ装置は、
アクチュエータと、
第1の設定部と、
動作制御部と、
第1取得部とを備え、
前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、
コンピュータに、
前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出す機能と、
前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定する機能と、
前記動作制御部は、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、
前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得する機能と、
(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得する機能と、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、
(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御する機能と、
として機能させるための、
アクチュエータ装置の対象物取り出し用プログラム。
【請求項14】
複数の環境のそれぞれに配置されて、載置台に載置される複数の対象物の1つを、前記対象物の側面を互いに接触させながら、吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置を備える対象物取出しシステムであって、
各アクチュエータ装置は、
アクチュエータと、
動作制御部と、
第1取得部とを備え、
前記システムは、
第1の設定部と、
サーバと、
操作対象物データベースと、
操作結果データベースとを備え、
前記サーバは、前記アクチュエータ装置に接続されているとともに、前記第1の設定部と前記操作対象物データベースと前記操作結果データベースとに接続され、
前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出し、
前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定し、前記サーバを介して前記操作対象物データベースに記憶し、
前記動作制御部は、前記操作対象物データベースに記憶された前記対象物の取出し量を基に、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、
前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得し、
(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得し、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、
(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御する、
対象物取出しシステム。
【請求項15】
吸着ノズルを備えたアクチュエータと前記アクチュエータを制御するコンピュータを備えた装置であって、前記コンピュータは、
載置台に載置される複数の対象物の1つを、前記対象物の側面を互いに接触させながら、吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出す上で、
前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を取出している過程での前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得し、
前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御する、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つの吸着ノズルを備えたアクチュエータが対象物をノズルで吸着によって保持し、運搬を行う運搬ロボットシステムにおいて、充填状態にある対象物を吸着によって取り出す際の揺れの量を低下させるような取り出し動作が可能なアクチュエータ装置、アクチュエータ装置による対象物取出方法、及び、対象物取出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットシステムに対象物の取り出し動作を学習させる方法として、カメラ等のセンサを用いて対象物の状態の観測し、対象物のどの位置を把持すべきかを人が教示し、学習させる方法がある。このように、人が対象物の把持位置を教示する方法では、ロボットのシステムの手先の違いによっては、新たに教示をやり直す必要が生じる。また、人が教示した対象物の把持位置が、実は、ロボットシステムにとっては把持できない位置であることもある。そのため、ロボットシステムが実際に把持動作を実行し、その成否の結果から取り出し動作を学習することが効果的である。このように、対象物の状態の観測結果から、実際にロボットシステムが把持の動作を実行したときの取り出し動作の成否の結果を用いて、学習のための報酬関数を変更する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-64910号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1の場合、ばら積み状態にある対象物の取り出し動作を2指ハンドを備えたロボットシステムを用いて学習させている。しかしながら、倉庫環境では、対象物はバラ積みではなく、一つの大きな箱の中に整列して充填状態に詰め込まれていることが多い。このような充填状態では、詰められている対象物同士の間隔が狭く、多指ハンドで挟み込んで対象物を把持することは難しい。そのため、吸着によって対象物を保持することが効果的である。
【0005】
しかしながら、倉庫環境では、対象物を取り出し易いように収納棚の棚板に傾斜がつけられている。このように棚板に傾斜があることで、吸着による保持で対象物を取り出したときに対象物が吊り下げられる状態となって対象物に揺れが生じる。この揺れにより、吸着部分から対象物が外れて対象物を落としてしまう危険性がある。そのため、倉庫環境での取り出し動作では、取り出しても対象物が揺れないような動作をさせる必要がある。
【0006】
従って、本開示は、取出し動作を行うときに対象物の揺れが大き過ぎて対象物を落としてしまうことを防ぐことができる技術を提供する。
【0007】
本開示の一つの態様にかかるアクチュエータ装置は、載置台に載置される複数の対象物の1つを、前記対象物の側面を互いに接触させながら、吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置であって、アクチュエータと、第1の設定部と、動作制御部と、第1取得部とを備え、前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出し、前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定し、前記動作制御部は、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得し、(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得し、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御する。


【0008】
尚、この包括的又は具体的な態様は、方法、システム、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録媒体で実現されてもよく、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えばCD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の不揮発性の記録媒体を含む。
【0009】
本開示によれば、取出し動作を行うときに対象物の揺れが大き過ぎて対象物を落としてしまうことを防ぐことができる。
【0010】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】アクチュエータ装置で取り出しの対象となるにおける対象物の一例の図
図1B】対象物の一例の斜視図
図1C】対象物の別の例の斜視図
図1D】対象物の別の例の斜視図
図1E】対象物の別の例の斜視図
図2A】アクチュエータ装置による対象物の梱包箱からの取り出し動作の説明図
図2B】アクチュエータ装置のアクチュエータの説明図
図3A】アクチュエータの手先の説明図
図3B】アクチュエータの力覚センサの配置の説明図
図3C】アクチュエータの力覚センサによるモーメント計測の説明図
図3D】アクチュエータの力覚センサによるモーメント計測の説明図
図3E】アクチュエータの力覚センサによるモーメント計測の説明図
図3F】アクチュエータの力覚センサによるモーメント計測の説明図
図3G】アクチュエータの力覚センサにより計測されたモーメントM1の一例の説明図
図3H】アクチュエータの力覚センサにより計測されたモーメントM2の一例の説明図
図4A】傾斜角度θの棚板に載置された梱包箱から対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図4B】傾斜角度θの棚板に載置された梱包箱から対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図4C】傾斜角度θの棚板に載置された梱包箱から対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図4D】傾斜角度0度の棚板に載置された梱包箱から対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図4E】傾斜角度0度の棚板に載置された梱包箱から対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図4F】傾斜角度0度の棚板に載置された梱包箱から対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図4G】吸着位置により対象物が落下する場合と落下しない場合とがあることを説明するために、対象物の上面の中心位置が吸着位置の図
図4H】吸着位置により対象物が落下する場合と落下しない場合とがあることを説明するために、対象物の上面の中心位置が吸着位置の図
図4I】吸着位置により対象物が落下する場合と落下しない場合とがあることを説明するために、対象物の上面の中心位置が吸着位置であって、対象物の上面から見た図
図4J】吸着位置により対象物が落下する場合と落下しない場合とがあることを説明するために、対象物の上面の上端の位置が吸着位置の図
図4K】吸着位置により対象物が落下する場合と落下しない場合とがあることを説明するために、対象物の上面の上端の位置が吸着位置の図
図4L】吸着位置により対象物が落下する場合と落下しない場合とがあることを説明するために、対象物の上面の上端の位置が吸着位置であって、対象物の上面から見た図
図5A】傾斜角度20度の棚板に載置された梱包箱内から対象物を取り出すときの取り出し動作の一例の説明図
図5B図5Aの区間Aから区間Dを経て、対象物を落としてしまうまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフ
図6A図5Aの区間Aから区間Dを経て、対象物を吸着保持に成功するまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフ
図6B図5Aの対象物が置かれている棚板の傾斜角度θが0度の場合、対象物を吸着保持に成功するまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフを含む図
図6C図5Aの対象物が置かれている棚板の傾斜角度θが0度の場合、対象物を落としてしまうまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフ
図7】対象物が置かれている傾斜角度θによって異なる適正モーメントの範囲の値を示す図
図8A】アクチュエータ装置の一例としてのロボットアーム装置の機能ブロック図
図8B】アクチュエータ装置の一例としてのロボットアーム装置のより詳細な機能ブロック図
図9】記憶部に記憶されている、対象物の上面の吸着位置の座標と大きさと対象物1個の重さの例を説明する図
図10】梱包箱内の6個の対象物の6か所の吸着位置1~6を例示する説明図
図11A】変更前の元の吸着位置のXYZ座標を示す図
図11B】変更後の吸着位置1~5のXYZ座標を示す表形式の図
図11C】変更後の吸着位置2~5を示す対象物の上面の平面図
図11D】変更前の元の吸着位置と変更後の吸着位置1のZ座標を示す側面図
図12A】変更前の元の吸着位置1-0のXYZ座標を示す図
図12B】変更後の吸着位置1-1,1-2,2-1,2-2のXYZ座標を示す表形式の図
図12C図12Bの変更後の吸着位置を示す対象物の上面の平面図
図13A】アクチュエータ装置による対象物取り出し動作のフローチャート
図13B】アクチュエータ装置の対象物取り出し動作の具体例のフローチャート
図14図13BのステップS501の詳細な動作を示すフローチャート
図15図13BのステップS505の詳細な動作を示すフローチャート
図16図13BのステップS507の詳細な動作を示すフローチャート
図17図13BのステップS506の詳細な動作を示すフローチャート
図18】変形例1に係るアクチュエータ装置の一例としてのロボットアーム装置の機能ブロック図
図19図18の変形例1におけるアクチュエータの手先の説明図
図20図18の変形例1における、図13BのステップS505の詳細な動作を示すフローチャート
図21】変形例2において、所定の実験環境で計測されて記憶されているデータを用いて、別の倉庫での制御を実現する対象物取出しシステムを示す説明図
図22】変形例2において、設置角度が互いに異なる3つの棚板を説明するための説明図
図23】変形例2において、図21のシステムの操作対象物データベースの内容の例として対象商品のデータ情報を示す説明図
図24】変形例2において、吸着点の位置が対象物の中心の位置からのずれ量を説明する説明図
図25】変形例2において、倉庫実験環境でのモーメントと計測結果の例を示す説明図
図26】変形例2において、所定の実験環境で計測されて記憶されているデータを用いて、別の倉庫環境での制御を実現するシステムを示す説明図
図27A】変形例3において、柵付の矩形の載置板に載置した直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する側面図
図27B】変形例3において、図27Aの柵付の載置板に載置した直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図27C】変形例3において、図27Bとは柵の位置が異なる状態の載置板から直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図27D】変形例3において、図27Aの柵付の載置板を傾斜角度θだけ傾斜させた場合の直方体の対象物の取り出し動作を説明する側面図
図27E】変形例3において、図27Aの柵付の載置板を傾斜角度θだけ傾斜させた場合の直方体の対象物の取り出し動作を説明する側面図
図27F】変形例3において、図27Aの柵付の載置板を傾斜角度θだけ傾斜させた場合の直方体の対象物の取り出し動作を説明する側面図
図27G】変形例3において、矩形の載置板に載置した他の直方体の対象物と接触させながら直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する側面図
図27H】変形例3において、図27Gの矩形の載置板に載置した他の直方体の対象物と接触させながら直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図27I】変形例3において、図27Hとは他の直方体の対象物の位置が異なる状態の載置板から直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図27J】変形例3において、矩形の載置板に固定した支持部材と接触させながら直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する側面図
図27K】変形例3において、図27Jの矩形の載置板に固定した支持部材と接触させながら直方体の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図28A】変形例3において、柵付の矩形の載置板に載置した円柱状の対象物を取り出すときの動作を説明する斜視図
図28B】変形例3において、図28Aの柵付の載置板に載置した円柱状の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図28C】変形例3において、矩形の載置板に載置した他の円柱状の対象物と接触させながら円柱状の対象物を取り出すときの動作を説明する斜視図
図28D】変形例3において、図28Cの矩形の載置板に載置した他の円柱状の対象物と接触させながら円柱状の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図28E】変形例3において、矩形の載置板に固定した支持部材と接触させながら円柱状の対象物を取り出すときの動作を説明する斜視図
図28F】変形例3において、図28Eの矩形の載置板に固定した支持部材と接触させながら円柱状の対象物を取り出すときの動作を説明する平面図
図29A】変形例3において、対象物のさらに別の例として、多数の扁平な直方体の商品が1つに梱包されて集合体を構成する場合の説明図
図29B】変形例3において、対象物のさらに別の例として、多数の円柱形状の商品が1つに梱包されて集合体を構成する場合の説明図
図29C】変形例3において、対象物のさらに別の例として、多数の円柱形状の商品の例として缶ビール又は缶ジュースの包装のように、一部が柔軟物の包装用パッケージから露出して構成する場合の説明図
図29D】変形例3において、対象物のさらに別の例として、球状に構成する場合の説明図
図29E】変形例3において、対象物のさらに別の例として、複数個の球体が1つの集合体を構成する場合の説明図
図30A図27Aの柵付載置板に載置された対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図30B図27Gの載置板に載置された対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図30C図27Jの載置板に載置されかつ支持部材で支持された対象物を取り出すときの揺れの一例を説明するための図
図31】対象物が置かれている状況の例において、傾斜角度20度の載置板から、載置板に載置された対象物を取り出すときの取り出し動作の一例の説明図
図32A図31の区間Aから区間Dを経て、7.5cmの柵の高さの載置板から対象物を取り出して対象物を落としてしまうまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフとその取り出し停止時の説明図
図32B図31の区間Aから区間Dを経て、0.5cmの柵の高さの載置板から対象物を取り出して対象物を落としてしまうまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフとその取り出し停止時の説明図
図33A】重心位置の重心対応位置である中心の位置93bに対して柵に近い側に吸着位置を変更した後に、図31の区間Aから区間Dに対応する区間を経て、7.5cmの柵の高さの載置板から対象物を取り出して対象物を吸着保持に成功するまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフとその取り出し停止時の説明図
図33B】重心位置の重心対応位置である中心の位置93bに対して柵に近い側に吸着位置を変更した後に、図31の区間Aから区間Dに対応する区間を経て、0.5cmの柵の高さの載置板から対象物を取り出して対象物を吸着保持に成功するまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフとその取り出し停止時の説明図
図34】対象物が置かれている状況と対象物の傾斜角度θとによって異なる適正モーメントの範囲の値を示す図
図35図33Aとは異なり、図27Aに示すように対象物が置かれている状況での例外の動作として、取り出し動作を変更するときの、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフとその取り出し動作の説明図
図36図35とは異なり、図27Aに示すように対象物が置かれている状況での別の例外の動作として、取り出し動作を変更するときの、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフとその取り出し動作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
以下に、本開示にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
以下、図面を参照して本開示における実施形態を詳細に説明する前に、本開示の種々の態様について説明する。
【0014】
本開示の第1の態様によれば、側面が互いに接触した状態で複数個の対象物が載置台に載置される対象物の1つを吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置であって、アクチュエータと、第1の設定部と、動作制御部と、第1取得部とを備え、前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出し、前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定し、前記動作制御部は、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得し、(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得し、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御するアクチュエータ装置を提供する。
【0015】
前記態様によれば、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を前記第1取得部で取得し、取得したモーメントの差に基づき、更に、前記取出し動作を継続するか否かを前記動作制御部で制御する。このため、取出し動作を行うときに対象物の揺れが大き過ぎて対象物を落としてしまうことを防ぐことができる。
【0016】
本開示の第2の態様によれば、前記載置台は、前記対象物が複数個充填された状態で配置される梱包箱であり、前記梱包箱から前記1つの対象物を前記吸着ノズルにより吸着しかつ前記他の物体としての前記梱包箱内に残っている前記対象物の側面又は前記梱包箱の内壁に接触しながら取出す、第1の態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0017】
本開示の第3の態様によれば、前記対象物は直方体である、第1又は2の態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0018】
本開示の第4の態様によれば、前記動作制御部は、前記2つのモーメントの前記差が第1閾値以上であれば前記取出し動作を継続し、前記第1閾値未満であれば前記取出し動作の継続を中止するように制御する、第1~3のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0019】
前記態様によれば、前記2つのモーメントの前記差が第1閾値以上であるとき、前記取り出し動作を継続するように前記動作制御部で制御することができる。また、前記2つのモーメントの前記差が前記第1閾値未満のとき、前記取り出し動作を中止するように制御することができる。このように構成したので、取り出し動作を行うときに対象物の揺れが大き過ぎて対象物を落としてしまうことを防ぐことができる。
【0020】
本開示の第5の態様によれば、前記吸着ノズルによる、前記対象物の第2の吸着位置を設定する第2の設定部を更に備え、前記取出し動作の継続を中止した対象物に対して、前記載置台から取出す前の状態に戻した状態で、前記第2の設定部は、前記取出し動作を中止した前記第1の吸着位置とは異なる前記第2の吸着位置を設定し、
前記動作制御部は、前記第2の吸着位置で、前記対象物を吸着して、前記載置台からの取出し動作を行うように制御する、第1~4のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0021】
前記態様によれば、前記取出し動作の継続を中止した対象物に対して、前記載置台から取出す前の状態に戻した状態で、前記第2の設定部は、前記取出し動作を中止した前記第1の吸着位置とは異なる前記第2の吸着位置を設定して再度、取出し動作制御を行う。これにより、前記取出し動作の継続を中止したときに再度、人の手で新しい吸着位置を設定し直すことなく自律的に吸着位置の変更ができる。
【0022】
本開示の第6の態様によれば、前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続することにより、前記第1の取出し量よりも大きくかつ前記対象物の高さよりも大きな量だけ前記対象物を移動させて、前記対象物を前記載置台から前記載置台の外部に取出すように制御する、第1~5のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0023】
前記態様によれば、前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続することにより、前記対象物を前記載置台から前記載置台の外部に取出すように制御することができる。このように構成すれば、取り出し動作を行うときに前記対象物を落とすことなく、前記載置台から前記対象物を取り出すことができる。
【0024】
本開示の第7の態様によれば、前記対象物の前記吸着位置は、ビニール又はセロハンで覆われている、第1~6のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0025】
前記態様により、対象物の表面がビニール又はセロハンで覆われている場合でも、第1~6の態様と同じ効果を得られることができる。
【0026】
本開示の第8の態様によれば、前記載置台は傾斜角度が鋭角の棚板に載置されている、第1~7のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0027】
前記態様により、対象物の置かれている場所が、鋭角に傾斜した棚板上でも、第1~7の態様と同じ効果を得られることができる。
【0028】
本開示の第9の態様によれば、前記載置台は傾斜角度が0度の棚板に載置されている、第1~7のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0029】
前記態様により、対象物の置かれている棚板の傾斜角度が0度のときでも、第1~7の態様と同じ効果を得られることができる。
【0030】
本開示の第10の態様によれば、
前記動作制御部は、前記吸着位置での吸着圧を、第1の吸着圧と、前記第1の吸着圧よりも大きな第2の吸着圧とに変更可能に制御し、
前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、前記アクチュエータによる前記取出し動作を継続しないように制御するとき、前記取出し動作を中止して前記対象物を前記載置台内の元の位置に戻した後、前記吸着位置での吸着圧を前記第1の吸着圧から前記第2の吸着圧に変更したのち、前記アクチュエータを動作制御して前記対象物を前記吸着位置で吸着しつつ前記取出し動作を再度行い、前記2つのモーメントの前記差を前記第1取得部により再び取得し、前記アクチュエータによる前記取出し動作を継続するか否かを制御する、第1~9のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0031】
前記態様によれば、前記アクチュエータによる前記取出し動作を継続しないように制御するときに、吸着圧を、元の吸着圧である第1の吸着圧よりも大きくした第2の吸着圧に変更したのち、再度、取出し動作を行う。このため、吸着に失敗したときに元の吸着圧よりも大きくして再度吸着を行うことができる。
【0032】
本開示の第11の態様によれば、前記動作制御部は、前記2つのモーメントの前記差が前記第1閾値以上であるが、第2閾値を越えるとき、前記取出し動作の継続を中止するように制御する、第1~10のいずれか1つの態様に記載のアクチュエータ装置を提供する。
【0033】
本開示の第12の態様によれば、側面が互いに接触した状態で複数個の対象物が載置台に載置される対象物の1つを吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出す、対象物取り出し方法であって、アクチュエータと、第1の設定部と、動作制御部と、第1取得部とを備えるアクチュエータ装置を使用して、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を前記第1の設定部で設定するとともに、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有する前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作を前記動作制御部で制御して、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出し、(i)前記吸着ノズルに付加されかつ前記第1取得部で取得したモーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を前記第1取得部で取得し、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、(ii)前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを前記動作制御部で制御する、対象物取り出し方法を提供する。
【0034】
前記態様によれば、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を前記第1取得部で取得し、取得したモーメントの差に基づき、更に、前記取出し動作を継続するか否かを前記動作制御部で制御する。このため、取出し動作を行うときに対象物の揺れが大き過ぎて対象物を落としてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
本開示の第13の態様によれば、側面が互いに接触した状態で複数個の対象物が載置台に載置される対象物の1つを吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置の対象物取り出し用プログラムであって、前記アクチュエータ装置は、アクチュエータと、第1の設定部と、動作制御部と、第1取得部とを備え、
前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、コンピュータに、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出す機能と、前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定する機能と、前記動作制御部は、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得する機能と、(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得する機能と、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御する機能と、として機能させるための、アクチュエータ装置の対象物取り出し用プログラムを提供する。
【0036】
前記態様によれば、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を前記第1取得部で取得し、取得したモーメントの差に基づき、更に、前記取出し動作を継続するか否かを前記動作制御部で制御する。このため、取出し動作を行うときに対象物の揺れが大き過ぎて対象物を落としてしまうことを防ぐことができる。
【0037】
本開示の第14の態様によれば、複数の環境のそれぞれに配置されて、側面が互いに接触した状態で複数個の対象物が載置台に載置される対象物の1つを吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置を備える対象物取出しシステムであって、各アクチュエータ装置は、アクチュエータと、動作制御部と、第1取得部とを備え、前記システムは、第1の設定部と、サーバと、操作対象物データベースと、操作結果データベースとを備え、前記サーバは、前記アクチュエータ装置に接続されているとともに、前記第1の設定部と前記操作対象物データベースと前記操作結果データベースとに接続され、前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、前記吸着ノズルにより前記対象物データベースに記憶された前記対象物の取り出し位置を基に、前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出し、前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定し、前記動作制御部は、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得し、(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得し、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記操作結果データベースに記憶された前記対象物の取出し情報を基に、前記取出し動作を継続するか否かを制御し、制御した結果と、前記2つのモーメントの前記差といった取り出し情報をサーバを介して前記操作結果データベースに記憶する、対象物取出しシステムを提供する。
【0038】
前記態様によれば、前記動作制御部は前記操作結果データベースに記憶された前記対象物の取り出し量を基に、前記アクチュエータによる吸着、および取り出し動作の制御を行い、前記2つのモーメントの前記差に基づいて前記取り出し動作を継続するかを制御し、制御した結果を取り出し情報としてサーバを介して前記データベースに記憶する。これにより、実験室で記憶された操作結果を工場等の別の場所での操作時に活用できる。特に、商品を配送する物流配送センターにおいては、各倉庫で規格化された商品を扱うことが多く、実験室または他の配送センターで得られたパラメータの値を共用することで、効率的な取出し分配作業を行うことが可能になる。さらには、商品を取出す棚も同一什器を利用することが多く、複数の配送センターでデータで、棚の角度等を共用することで、効率化を行うことが可能になる。
【0039】
以下、図面を参照して本開示における第1実施形態を詳細に説明するにあたり、最初に行った基本実験について説明する。
【0040】
(基本実験)
本開示では、例えば物流倉庫環境において、アクチュエータ装置の一例としてのロボットアーム装置を駆動して、対象物を吸着保持するときの実験例を説明して、そのときに発生する課題及び解決策の概要について考察する。
【0041】
図1A図1Eに示すように、一例として、同じ形状、種類、及び重量の複数個の商品92を、例えばビニール又はセロハンなどの柔軟物94で一部又は全部を包装することにより束ねて1つの直方体の集合体93を構成し、吸着位置が柔軟物94で覆われている。この集合体93を複数個整列して1つの大きな直方体の梱包箱91内に充填された状態となっている。ここでは、この1つの集合体93を対象物93の一例とする。また、1つの大きな直方体の梱包箱91は、複数個の対象物93の側面が互いに接触した状態で複数個の対象物93が載置される載置台90の一例とする。
【0042】
図1B図1Eでは、理解しやすくするため、柔軟物94の部分をハッチングで示す。図1A及び図1Bは、複数個の商品92が整列した直方体の集合体の全面が柔軟物94で包装されている場合の対象物93の例を示す。図1Cは、複数個の商品92が整列した直方体の集合体において、左右の側面の中央部分以外の面が、柔軟物94で包装されている場合の対象物93の別の例を示す。図1Dは、複数個の商品92が整列した直方体の集合体において、上面と、下面と、上面の4辺から下向きに部分的に張り出した部分と、下面の4辺から上向きに部分的に張り出した部分とが、柔軟物94で包装されている場合の別の対象物93の例を示す。図1Eは、複数個の商品92が整列した直方体の集合体において、上面と、上面の4辺から下向きに部分的に張り出した部分とが、柔軟物94で包装されている場合の別の対象物93の例を示す。これらの例の対象物93では、吸着位置が位置する上面は、すべて柔軟物94で覆われている。
【0043】
なお、対象物93としては、このように同じ形状、種類、及び重量の複数個の商品92を束ねたものに限られるものではなく、少なくとも、対象物93の全体形状として直方体で、柔軟物94で直方体の一部又は全部を包装して、対象物93の吸着位置が柔軟物94で覆われている物体である。
【0044】
物流倉庫環境の一例としては、図2A及び図2Bに示すように、作業者が対象物93を取出しやすくするため、対象物93を収納した梱包箱91は、棚板95上に載置されている。棚板95は、その奥部分よりも手前部分が低くなるように鋭角θに傾斜がつくように配置されている。このように棚板95を傾斜させるのは、作業者が梱包箱91内の対象物93の確認と、梱包箱91からの対象物93の取り出し作業とを容易にするためである。また、梱包箱91内から対象物93を完全に取り出して梱包箱91を棚板95から取り除けば、取り除いた梱包箱91よりもさらに上に隣接して配置されている梱包箱91が、取り除いた梱包箱91の位置まで、自重により自動的に移動させるためでもある。
【0045】
一方、アクチュエータ装置の一例であるロボットアーム装置200の例を図2A及び図2Bに示す。ここでは、ロボットアーム201がアクチュエータの一例である。このロボットアーム装置200は、ロボットアーム制御部201aとロボットアーム201とで構成している。ロボットアーム装置200のロボットアーム201は、対象物93を取り出す動作を行う。ここでは、ロボットアーム201には、6個の回転関節206を持つ6以上の自由度を持たせる構成とする。ロボットアーム201の手先202には、図3Aに示すような、カメラ203付き吸着ノズル205を取り付けている。第2取得部の一例としてのカメラ203で梱包箱91内の対象物93の吸着位置(例えば第1の吸着位置)を検出する。検出後、吸着ノズル205により、吸着による保持で梱包箱91からの対象物93の取り出し動作を実現して、別のトレー等に仕分け動作可能とする。
【0046】
図3A、に示すように、力覚センサ204は、手先202の一部と手先202の一部との間に設けられている。力覚センサ204と吸着ノズル205との間に手先202の一部が設けられている。力覚センサ204は、互いに直交する3軸方向の座標系を有する。図3Cに示すように、本実施形態の力覚センサ204は、中心軸を原点し、互いに直交するx軸y軸z軸を有する。Z軸は力覚センサの厚み方向の軸であり、x軸y軸は、z軸に垂直な平面内において、互いに直交する軸である。
【0047】
力覚センサ204は、前記x軸方向とy軸方向とz軸方向のそれぞれに作用する力Fx,Fy,Fzを計測する。また力覚センサ204は、x軸回り、y軸回り、z軸回りのモーメントMx,My,Mzを計測する。本基本実験において、力覚センサは、株式会社ワコーテック社製を用いた。尚、x軸、y軸とz軸の座標は、センサ内部に備えた固有の座標であっても、世界座標であってもよい。
【0048】
本実施形態において、図3Aに示す様に、同一のx軸、y軸、z軸を用いて吸着ノズル205と力覚センサ204を表現した場合、吸着ノズル205のz軸方向の中心軸と力覚センサ204のz軸方向の中心軸が一致する。さらに、z軸に垂直な吸着ノズル205の断面と、Z軸に垂直な力覚センサ204の断面は中心が同一な2つの円であってもよい。吸着ノズル205と力覚センサ204の距離は、吸着ノズルに加えられる力と力覚センサで計測した力を比較する観点において短い。吸着ノズル205と力覚センサ204の距離は、吸着ノズルに加えられるモーメントと力覚センサで計測したモーメントを比較する観点において短い。つまり、吸着ノズルに加えられる力は、力覚センサで計測した力とみなせるし、吸着ノズルに加えられるモーメントは、力覚センサで計測したモーメント力とみなせる。
【0049】
吸着ノズルが対象物93を保持するときに、吸着ノズル205を介して力覚センサ204に発生するモーメントM1,M2を計測する。図3Gは、吸着位置1~5において対象物を吸着ノズルにより吸着したとき,力覚センサ204が検出する、各軸に作用する力(Fx,Fy,Fz)と、x軸回り、y軸回り、z軸回りのモーメント(Mx,My,Mz)とを例示する。モーメントM2の一例を図3Hに示す。モーメント計測部105の力覚センサ204により取得した2つのモーメントM1,M2の差ΔMは、演算部204aでのM2-M1の演算で求めることができる。
【0050】
ここで、対象物93が梱包箱91内に充填状態にある場合、隣接する対象物93同士の隙間が小さいため、グリッパのような多指を隙間に挿入することができず、多指で対象物93を挟み込むように把持することは難しい。そのため、吸着ノズル205で対象物93の吸着による保持が効果的である。しかしながら、対象物93の吸着による保持の場合は、多指による挟み込みほど、把持における安定性がない。特に、吸着ノズル205の吸着パッドのベローズが多段であったり、対象物93の表面がビニールなどの柔軟物94で梱包されていたりする場合に、その傾向は顕著である。
【0051】
すなわち、ビニールなどの柔軟物94でそれぞれ梱包されている複数個の対象物93が梱包箱91内で充填状態にあり、梱包箱91が傾斜した棚板95に置かれている場合、梱包箱91から対象物93を取り出すときに、対象物93の柔軟物94で覆われている吸着位置を吸着ノズル205で吸着保持したのち、梱包箱91から対象物93を取り出そうとする。ところが、対象物93が柔軟物94で吊り下げられた状態で梱包箱91から対象物93を隣接する対象物93の側面を摺動しつつ取り出すことになり、吸着ノズル205に対して対象物93が大きく揺れ、ときには、対象物93が吸着ノズル205から外れて落としてしまうことがある。
【0052】
これは、対象物93を吸着保持したのち梱包箱91から対象物93を取り出すとき、対象物93を覆っているビニールなどの柔軟物94が対象物93の吸着位置を全て覆っているため、吸着ノズル205は柔軟物94を吸着できるが、対象物93自体を直接吸着保持することができない。このため、柔軟物94が対象物93の自重で伸びてしまい、対象物93が吸着ノズル205から柔軟物94で吊り下げられた状態になり、梱包箱91から対象物93を取り出した直後に、隣接する対象物93の側面の支持が無くなるため、吸着ノズル205で吸着された部分を中心に対象物93が揺動することに起因する。
【0053】
言い換えれば、この揺動は、吸着ノズル205の対象物93に対する吸着位置の鉛直下部に、対象物93の重心がないときで、かつ、梱包箱91から対象物93を取り出した直後で、隣接する対象物93の側面の支持が無いときに、大きく揺動することになる。図4A図4Cのように、棚板95の傾斜により傾いていた対象物93が、充填状態の梱包箱91から取り出され、対象物93が、他の物体、例えば、梱包箱91の内壁又は梱包箱91内に残っている他の対象物93の側面などの隣接する他の物体の支えが無くなったときに、対象物93の重力により対象物93の吸着位置の鉛直下方に対象物93の重心が位置するように、吸着ノズル205に対して対象物93が姿勢を変えるように回転することに起因する。この現象は、傾斜角度が0度、つまり、平らな場所に対象物93が置かれていたとしても、対象物93の重心位置から離れた位置を吸着ノズル205で吸着した場合には、同様なことが起きる(図4D図4F)。よって、吸着ノズル205は、対象物93に対して適切な吸着位置で吸着を行う必要がある。
【0054】
しかしながら、倉庫環境のように、対象物93を構成する商品の種類が多数存在し、新規商品が日々追加される環境では、事前に、対象物93を梱包箱91から取り出しても対象物93が揺れない吸着位置を調べて設定することは非常に困難であり、現実的ではない。それゆえに、充填状態の梱包箱91から対象物93を取り出す前に、対象物93が揺れずに取り出せる対象物93の吸着位置を見つける方法が必要となる。
【0055】
例えば、図4A図4C及び図4G図4Iに示すように、傾斜角度θで傾いた棚板95上の梱包箱91内に充填されている直方体の対象物93に対して、対象物93の四角形の上面93aの中心の位置93bを吸着位置として、梱包箱91から矢印の方向Pに引き出して取り出す。すると、図4Cに示すように、対象物93を梱包箱91から引き出して取り出した瞬間に、対象物93が吸着ノズル205に対して左右に大きく揺れてしまい、吸着ノズル205から対象物93を落下させてしまう。なお、対象物93の側面の中央の小さな丸93gは、対象物93の重心の位置を示す。
【0056】
一方で、図4J図4Lに示すように、対象物93の吸着位置を、四角形の上面93aの中心の位置93bから上側の上端にずらした位置93cとし、この吸着位置93cで吸着して梱包箱91から対象物93を引き上げて取り出す。このようにすることで、梱包箱91から対象物93を取り出した後に、対象物93が吸着ノズル205に対して左右に揺れることなく安定して保持させることができる。対象物93を吸着ノズル205から落下させないためには、対象物93を梱包箱91から完全に取り出す前に、対象物93が吸着ノズル205に対して揺れてしまうか否かを推定できれば、吸着位置を修正することが可能になる。
【0057】
次に、揺れを推定するために行った本実験の内容を説明する。
【0058】
図5Aの区間A~区間Cに示すように、傾斜角度θをつけて配置された梱包箱91内で充填状態にある対象物93に対して、傾斜した棚板95の表面に対して垂直な方向Pに対象物93の高さの半分程度引き上げて部分的に取り出し、一旦、停止させたのち、再び、対象物93を対象物93の高さ以上に引き上げて取り出す。このような動作を行うときの、吸着位置に付加されるモーメントを力覚センサ204で時系列的に計測する(図5B参照)。このように計測したモーメントを基に、対象物93を梱包箱91から完全に取り出す前に、対象物93を梱包箱91から完全に取り出した後に対象物93に大きな揺れが生じるか否かを推定できることを実験的に検証する。
【0059】
まず、動作を詳しく説明する。θ=20度の傾斜角度のある棚板95に置かれた梱包箱91から対象物93を吸着保持するとき、対象物93の中心の位置93bを吸着ノズル205の吸着位置となるように、ロボットアーム201を動作させた。これを実験1とする。すなわち、図5Aの区間Aでは、ロボットアーム201が駆動されて、梱包箱91内で充填状態にある対象物93の吸着位置に吸着ノズル205が接触して、対象物93を吸着ノズル205で吸着する状態までの区間である。
【0060】
次いで、区間Bでは、ロボットアーム201が駆動されて、吸着ノズル205で吸着した対象物93を、矢印方向Pに、対象物93の高さの半分程度(例えば10cm)だけ引き上げて部分的に取り出すために移動させる。
【0061】
次いで、区間Cでは、ロボットアーム201の駆動により、吸着ノズル205で吸着した対象物93を、対象物93の高さの半分程度(例えば10cmだけ)引き上げて部分的に取り出し、一旦停止する。この状態では、対象物93は梱包箱91から完全に取り出されず、下半部が隣接する対象物93又は梱包箱91の内壁に接触して揺動不可に支持されている状態となっている。
【0062】
その後、区間Cに続く区間Dでは、ロボットアーム201の駆動により、対象物93を対象物93の高さの半分程度(例えば10cm)だけ引き上げて部分的に取り出した状態から、さらに引き上げて、梱包箱91から完全に取り出すために移動する。このとき、区間Dでは、対象物93を梱包箱91から完全に取り出すと同時に、対象物93に大きなモーメントが瞬間的にかかり、対象物93が吸着ノズル205に対して大きく揺れ、吸着ノズル205による対象物93の吸着保持が外れてしまい、吸着ノズル205から対象物93を落としてしまい、対象物93の取り出しに失敗した。
【0063】
図5Bは、区間Aから区間Dまで、つまり対象物を吸着し、対象物93を落としてしまうまで、吸着位置に付加されるモーメント(単位:Nm)の時系列データをグラフで表現したものである。ここでは、区間Aと区間Cとでは、モーメントの差がほとんど変わらず、第1閾値である所定の値相当の差になっていないことがわかる。
【0064】
次に、対象物93の吸着位置を、対象物93の中心の位置93bよりも傾斜方向上側の位置93cに変更した上で、吸着ノズル205で吸着保持するように、ロボットアーム201を動作させる。すなわち、θ=20度の傾斜角度のある棚板95に置かれた梱包箱91から対象物93を吸着保持するとき、対象物93の中心の位置93bよりも傾斜方向上側の位置93cを吸着ノズル205の吸着位置となるように、ロボットアーム201を動作させた。これを実験2とする。
【0065】
このとき、区間Dの後、対象物93を梱包箱91から完全に取り出した際に対象物93は少し揺れはしたものの落ちることはなかった。図6Aは、区間Aから区間Dを経て、対象物93を吸着保持に成功するまで、吸着位置に付加されるモーメント(単位:Nm)の時系列データをグラフで表現したものである。ここで、区間A、B、Cで表される動作は、図5Bの区間A、B、Cで表される動作とそれぞれ同じである。実験2の区間Dの動作では、実験1の区間Dの動作とは異なり、対象物93に大きなモーメントがかかることなく、梱包箱91から完全に取り出すことに成功した。ここで、図6Aの区間Aと区間Cとでは、モーメントに大きな差が生じており、第1閾値相当の差になっていることがわかる。
【0066】
この結果、実験1,2から、対象物93を梱包箱91から取り出したときの揺れを推定するためには、区間Aと区間Cとで対象物93にかかるモーメントの差を利用することができることが分かった。
【0067】
まず、実験1において、図5Bに示すように区間Aでかかるモーメントと区間Cでかかるモーメントとの値に差がほとんどない。が、対象物93を完全に取り出すときである区間Dでは、一気に急激に大きなモーメントが対象物93にかかったために、対象物93を吸着ノズル205から落とすことになった。
【0068】
一方、実験2では、区間Cで、すでに区間Aよりも大きなモーメントがかかっている。そのため、区間Dにおいては、区間Cのモーメントに対してほとんどモーメントが増加していない。このことから、区間Aの対象物93を吸着したときにかかるモーメントと、区間Cの対象物93を対象物93の高さの半分程度持ち上げたときにかかるモーメントとを比較することで、対象物93を梱包箱91から取り出したときに、対象物93がどれだけ揺れるのかを推定できる。
【0069】
今回の実験においては、対象物93が置かれている棚板95の傾斜角度θが20度の場合の実験結果を示した。
【0070】
さらに、対象物93が置かれている棚板95の傾斜角度θが0度の場合の実験結果を図6Cに示す。
【0071】
これらの実験の結果、区間Aと区間Cとでのモーメントの値の差が、図7で示すように、傾斜角度θに応じて異なる、適正モーメントの範囲の値であれば、対象物93を梱包箱91から取り出したときに、対象物93を落下させることはない。例えば、傾斜角度θ=0度の場合には、適正モーメントの範囲の値は-0.1~0.1Nmであり、傾斜角度θ=20度の場合には、適正モーメントの範囲の値は0.2~0.4Nmである。
【0072】
このように、適正モーメントの範囲の値は、対象物93が置かれている傾斜角度θによって異なる。このため、図7に示すように、傾斜角度θと適正モーメントとの関係の情報を実験で予め取得したのち、後述する操作結果データベースなどの記憶部に予め記憶させる。そして、記憶した情報と傾斜角度θとを基に、後述するモーメント計測部105で取得するモーメントから、対象物93を取り出した後に落下するか否かを推定することが可能になる。なお、区間Aと区間Cとで値が変動する場合には、一例として、所定時間のモーメントの平均値を用いて算出する。
【0073】
図6B及び図6Cに、対象物93の置かれている棚板95の傾斜角度θが0度でかつ吸着位置が異なる場合の実験結果を示す。傾斜角度θが0度、つまり平らなとき、対象物93の中心の位置93bを吸着することで、対象物93を揺らすことなく、対象物93を梱包箱91から取り出すことができた(図6B参照)。ここでは、区間Aでかかるモーメントと区間Cでかかるモーメントとの値が第1閾値相当の差になっていた。しかしながら、対象物93の中心の位置93bからずれた位置を吸着した場合、対象物93を梱包箱91から取り出したときに、対象物93を落としてしまった(図6C参照)。ここでは、区間Aでかかるモーメントと区間Cでかかるモーメントとの値に大きな差が生じており、第1閾値よりも大きな差になっていた。
【0074】
これらの知見に基づき、対象物93の落下を事前に推定できるための具体的な構成を、以下に、実施の形態として説明する。
【0075】
(実施の形態1)
図8Aに本開示の一態様に係るアクチュエータ装置の一例としてのロボットアーム装置200の機能ブロック図を示す。図8Bに、図8Aのロボットアーム装置のより詳細な機能ブロック図を示す。図8Bに示すロボットアーム装置は、梱包箱91内に複数個充填された状態で配置される対象物93の一つを吸着ノズル205により吸着しかつ対象物93の側面が他の物体に接触しながら梱包箱91から取り出すアクチュエータ装置である。
【0076】
ロボットアーム装置200は、アクチュエータの一例としてのロボットアーム201と、ロボットアーム制御部201aとで構成されている。
【0077】
ロボットアーム制御部201aは、少なくとも、取り出し量設定部の一例として機能する第1の設定部112と、動作制御部100とを備えている。取り出し量設定部は、ロボットアーム201による梱包箱91からの対象物93の取出し量を設定する。
【0078】
より詳しくは、ロボットアーム制御部201aは、さらに、吸着位置設定部として機能する第2の設定部101と、決定部の一例として機能する第2の判定部108とを備えている。さらに、必要に応じて、ロボットアーム制御部201aは、記憶部113と、入力部114とを備えている。吸着位置設定部は、吸着ノズル205による、対象物93の第1の吸着位置、又は、第1の吸着位置及び第2の吸着位置を設定する。
【0079】
ロボットアーム201は、対象物93を吸着する1つの吸着ノズル205と、第1取得部の一例のモーメント計測部105とを有する。モーメント計測部105は、吸着ノズル205に付加されるモーメントを取得する。より詳しくは、モーメント計測部105は、モーメントとして、吸着ノズル205により対象物93を吸着したときの吸着ノズル205に付加される第1のモーメントと、吸着ノズル205により対象物93を第1の取出し量で梱包箱91から取出すときの吸着ノズル205に付加される第2のモーメントとの差を取得する。ここで、第1の取出し量は、梱包箱91から対象物93を取出すまでの量である。
【0080】
第2の設定部101は、吸着ノズル205による、対象物93の吸着位置(例えば第1の吸着位置)を設定する。
【0081】
第1の設定部112は、吸着ノズル205による対象物93の吸着後、ロボットアーム201により対象物93を梱包箱91から引き上げて部分的に取り出すとき、対象物93の高さH(図5A参照)より小さい値であり、かつ、梱包箱91から対象物93を完全に取り出していない途中取り出し動作を行うときの途中取り出し量D1(図5A参照)と、対象物93の高さHより大きい値であり、かつ、梱包箱91から対象物93を完全に取り出した完全取り出し動作を行う完全取り出し量D2(図5A参照)とを設定する。
【0082】
動作制御部100は、ロボットアーム201による吸着及び取出し動作の制御を行う。詳しくは、動作制御部100は、モーメント計測部105により取得した2つのモーメントの差に基づいて、更に、取出し動作を継続するか否かを制御する。具体的には、動作制御部100は、第2の設定部101及び第1の設定部112によりそれぞれ設定された吸着位置及び途中取り出し量D1及び完全取り出し量D2に基づいてロボットアーム201を動作制御して、対象物93を駆動部115で吸着位置に移動し、吸着位置で吸引装置116により吸着しつつ駆動部115で途中取り出し動作及び完全取り出し動作をそれぞれ行う。一例として、動作制御部100は、第1の制御部102と第2の制御部103とで構成することができる。
【0083】
モーメント計測部105は、吸着ノズル205により対象物93を吸着したときの吸着ノズル205に付加されるモーメントM1と、吸着ノズル205により第1の取出し量D1だけ対象物93を取り出したとき、すなわち、対象物93を途中まで取り出したときの吸着ノズル205に付加されるモーメントM2との差ΔMを取得する。
【0084】
第2の判定部108は、モーメント計測部105により取得した2つのモーメントM1,M2の差ΔMに基づいて、動作制御部100の制御の下にロボットアーム201が対象物93を吸着ノズル205の吸着によって保持して完全取り出し動作を行うときの対象物93の揺れを予測して、第2の制御部103の制御の下にロボットアーム201による完全取り出し動作を行うか否かを判定する。
【0085】
なお、後述する第1の判定部107と第2の判定部108とで動作判定部110を構成している。
【0086】
前記構成に加えて、ロボットアーム装置200は、さらに、第1の判定部107と、吸着圧計測部104と、吸着位置更新部106と、記憶部113と、入力部114とを備えることもできる。入力部114は、必要に応じて、吸着位置の座標など、途中取り出し量D1又は完全取り出し量D2の入力など、取り出し動作の制御に関するパラメータなどを入力して記憶部113に記憶させることができる。
【0087】
以下、各構成要素について説明する。
【0088】
(記憶部113)
記憶部113は、各設定部101,112及び各制御部102,103で使用する情報が記憶されている他、必要に応じて、各判定部107,108で使用する情報も記憶されていてもよい。
【0089】
記憶部113は、図9に示すように、少なくとも対象物93の上面の吸着位置の座標、すなわち、x、y、zの座標と、ロール軸(すなわちx軸回り)、ピッチ軸(すなわちy軸回り)、ヨー軸(すなわちヨーz軸回り)の回転角(α、β、γ)と、対象物93の高さHとが記憶されている。さらに、一例として、記憶部113は、対象物93の上面93aの縦横(すなわち、幅と奥行)寸法と、重量と、吸着圧とが記憶されている。なお、一例として、対象物93に関係なく、吸着位置のz座標は記憶部113に固定値として記憶することができる。記憶部113に、対象物93である集合体を構成する各商品92の上面の縦横寸法と、高さHと、商品92の個数とが記憶されている場合には、集合体を構成する商品の個数と各商品の上面の縦横寸法と、高さHとから、対象物93の上面93aの縦横寸法を予め演算して記憶しておくこともできるし、第2の設定部101で演算して求めることもできる。
【0090】
記憶部113は、ロボットアーム装置200内に配置されていてもよいし、通信部などを介して情報を通信可能な状態で、ロボットアーム装置200の外部のサーバなどに配置されていてもよい。
【0091】
(ロボットアーム201)
ロボットアーム装置200のロボットアーム201はアクチュエータの一例である。ロボットアーム201は、対象物93を梱包箱91から取り出す動作を行う。一例として、ロボットアーム201は、6個の回転関節206を持つ6以上の自由度を持つ構成とする。各回転関節206には、正逆回転駆動するモータMTなどの駆動装置で構成される駆動部115が配置されて、それぞれ独立して駆動される。一例として、駆動部115を構成する各モータMTには、エンコーダECが取付けられて、xyz軸方向の移動量及びそれぞれの軸回りの回転量を検出可能としている。
【0092】
ロボットアーム201の手先202には、前記ロボットアーム201と同様に、図3Aに示すような、カメラ203付き吸着ノズル205を取り付けている。すなわち、吸着ノズル205にカメラ203が取付けられており、カメラ203で、梱包箱91内の対象物93の上面93aの吸着位置を検出する。検出後、吸着ノズル205により、対象物93の上面93aの吸着位置で吸着を行い、吸着による保持で梱包箱91からの対象物93の取り出し動作を実現して、別のトレー等に仕分け動作可能とする。
【0093】
吸着ノズルは、対象物93を保持するときに、吸着ノズル205を介して力覚センサ204に発生する力と、モーメントM1(Mx,My,Mz),と、M2(Mx,My,Mz)とを計測する。
【0094】
図3Gは、図11Bに示す吸着位置番号1~5で特定される吸着位置において対象物を吸着ノズルにより吸着したとき,力覚センサ204が検出する、各軸に作用する力(Fx,Fy,Fz)と、x軸方向回り、y軸方向回り、z軸方向回りのモーメントM1(Mx,My,Mz)とを例示する。
【0095】
図3Hは、図11Bに示す吸着位置番号1~5で特定される吸着位置において対象物を吸着ノズルにより持ち上げ動作を実施したとき,力覚センサ204が検出する、各軸に作用する力(Fx,Fy,Fz)と、x軸方向回り、y軸方向回り、z軸方向回りのモーメントM2(Mx,My,Mz)の一例を示す。
【0096】
モーメント計測部105の力覚センサ204により取得した2つのモーメントM1,M2の差ΔMは、演算部204aでのM2-M1の演算で求める。
【0097】
なお、力覚センサ204を備えずに、吸着圧を計測する圧力センサで制御することも可能である。
【0098】
(第2の設定部101)
第2の設定部101は、吸着ノズル205による吸着により対象物93を保持するための吸着位置(例えば第1の吸着位置)を、対象物93の上面93aに設定して、設定した吸着位置の情報を動作制御部100に入力する。吸着位置は、ロボットアーム201のxyz座標における、x、y、zの座標と、ロール軸(すなわちx軸回り)、ピッチ軸(すなわちy軸回り)、ヨー軸(すなわちz軸回り)の回転角(α、β、γ)とによって与えられる。一例として、図9に、「A」と「B」とで示す2種類の対象物93のそれぞれに対する6か所の吸着位置1~6のそれぞれのx、y、zの座標とロール軸(すなわちx軸回り)、ピッチ軸(すなわちy軸回り)、ヨー軸(すなわちz軸回り)の回転角(α、β、γ)とを例示する。図10には、梱包箱91内の6個の「A」の種類の対象物93が充填して収納されており、6個の対象物93に対して1か所ずつの合計6か所の吸着位置1~6を例示する。設定した情報は、記憶部113に記憶されている。なお、後述するが、吸着位置が更新されたときには、吸着位置更新部106から更新された吸着位置の情報が第2の設定部101に入力されて、吸着位置の情報を更新し、第2の設定部101は、更新した吸着位置(例えば第2の吸着位置)を対象物93の上面93aに設定し直す。
【0099】
(第1の設定部112)
第1の設定部112は、途中取り出し量D1と完全取り出し量D2とをそれぞれ設定して、第2の制御部103に入力する。
【0100】
途中取り出し量D1は、吸着ノズル205による対象物93の吸着後、第2の制御部103の制御の下にロボットアーム201により対象物93を梱包箱91から引き上げて部分的に取り出すとき、対象物93の高さHより小さい値であり、かつ、梱包箱91から対象物93を完全に取り出していない途中取り出し動作を行うときの梱包箱91の底からの移動距離である。一例として、途中取り出し量D1は、対象物93の高さHの半分の値とすることができるが、これに限られるものではなく、対象物93を梱包箱91から完全に取り出せない距離ならば、任意の値でもよい。この途中取り出し時は、取り出す対象の対象物93が、当該対象物93よりも下側の梱包箱91の壁又は別の対象物93の側面に当接して若干支持することになるため、この状態では揺動で落下することはない。
【0101】
対象物93の高さHは、記憶部113に記憶されている高さHの情報である。
【0102】
完全取り出し量D2は、吸着ノズル205による対象物93を吸着して、途中取り出し動作を行った後、第2の制御部103の制御の下に、さらにロボットアーム201により対象物93を梱包箱91から引き上げて取り出すときの梱包箱91の底からの移動距離である。この完全取り出し量D2は、対象物93の高さHより大きい値であり、かつ、梱包箱91から対象物93を完全に取り出すことができた完全に取り出し動作を行うときの梱包箱91の底からの移動距離である。実際には、途中取り出し動作を行った後、完全取り出し量D2と途中取り出し量D1との差(D2-D1)だけ、さらに梱包箱91から対象物93を引き上げればよい。一例として、完全に取り出し量D2は、対象物93の高さHよりも大きい値ならば、任意の値でもよい。
【0103】
(第1の制御部102)
第1の制御部102は、第2の設定部101で設定された吸着位置に向けてロボットアーム201の手先202の吸着ノズル205を移動させ、吸着ノズル205を対象物93の上面93aの吸着位置に接近又は接触させ、吸着ノズル205による対象物93の吸着を行う。
【0104】
具体的には、第1の制御部102は、後述する第2の制御部103を介して駆動部115を駆動して、吸着ノズル205を吸着位置に向けて移動させ、吸着ノズル205を対象物93の上面93aの吸着位置に接近又は接触させる。次いで、第1の制御部102は、吸引装置116の駆動制御し、吸着ノズル205による吸着動作を実施する。なお、必要に応じて、吸引装置116による吸着ノズル205の吸着圧を少なくとも2つの吸着圧に変更可能としてもよい。第1の制御部102において、吸着動作制御を行う情報が、第1の判定部107に入力される。
【0105】
(第1の判定部107)
第1の判定部107は、第1の制御部102で吸着動作制御を行った結果、吸着圧計測部104で計測された吸着圧を基に、吸着に成功しているか否かを判定する。具体的には、吸着圧計測部104から第1の判定部107に入力された吸着圧が所定の吸着圧(例えば-25kPa)よりも負圧になっていれば、吸着に成功していると第1の判定部107で判定する。この吸着成功判定の情報は、第2の制御部103に入力される。吸着圧が所定の吸着圧よりも負圧ではない場合には、吸着に失敗していると第1の判定部107で判定する。この吸着失敗判定の情報は、第2の制御部103に入力されるとともに、吸着位置更新部106にも入力される。
【0106】
(第2の制御部103)
第2の制御部103は、第1の判定部107から吸着成功判定の情報が入力されると、第2の判定部108で完全取り出し動作を行うか否かを判定するために、まず、駆動部115を制御して、対象物93を取り出し途中まで引き上げて途中取り出し動作を行う。この途中取り出し動作は、第2の制御部103により駆動部115を制御して、途中取り出し量D1だけ、対象物93を梱包箱91から取り出した時点で、一旦、駆動部115を停止させる。そして、動作判定部110すなわち第2の判定部108からの判定情報を待つ。第2の判定部108からの成功判定の情報が第2の制御部103に入力されれば、第2の制御部103は、駆動部115を制御して、対象物93を梱包箱91から完全に取り出すまで引き上げて完全取り出し動作を行う。完全取り出し動作は、第2の制御部103により駆動部115を制御して、最終的に完全取り出し量D2だけ対象物93を引き上げて、梱包箱91から完全に取り出す。
【0107】
もし、第2の判定部108からの失敗判定の情報が第2の制御部103に入力されれば、第2の制御部103により駆動部115を制御して、途中取り出し量D1だけ、対象物93を下降させて梱包箱91の中に対象物93を戻したのち、途中取り出し動作のやり直しを行う。途中取り出し動作のやり直しとは、吸着圧を変えて吸着し直すか、又は、吸着位置でのz軸の座標又はx軸の座標又はy軸の座標を変えて吸着し直すなどの動作が例示できる。ここで、吸着圧を変えて吸着し直すとは、動作制御部100による、以下の動作を意味している。2つのモーメントM1,M2の差ΔMに基づいて、ロボットアーム201による取出し動作を継続しないように制御するとき、取出し動作を中止して対象物93を梱包箱91内の元の位置に戻す。その後、吸着位置での吸着圧を第1の吸着圧から第2の吸着圧に変更する。その後、ロボットアーム201を動作制御して対象物93を吸着位置で吸着しつつ取出し動作を再度行い、2つのモーメントM1,M2の差ΔMをモーメント計測部105により再び取得し、ロボットアーム201による取出し動作を継続するか否かを制御する。
【0108】
一方、第2の制御部103は、第1の判定部107から吸着失敗判定の情報が入力されると、対象物93を梱包箱91内の元の位置に戻すために駆動部115を駆動したのちは駆動部115の駆動は行わずに、第1の判定部107から吸着成功判定の情報が入力されるまで待機する。
【0109】
(吸着圧計測部104)
吸着圧計測部104は、第1の制御部102による吸着動作制御時に、吸着ノズル205での対象物93の上面93aに対する吸着圧を測定し、測定値を第1の判定部107に入力する。
【0110】
(モーメント計測部105)
モーメント計測部105は、具体的には力覚センサ204で構成され、第2の制御部103によって対象物を吸着時と途中取り出し動作時とのそれぞれのロボットアーム201の手先202にかかるy軸回りのモーメントMyを力覚センサ204で計測して、2つの計測値の差ΔMを演算部204aで演算して求めたのち、第2の判定部108に入力する。この2つの計測値の差ΔMは、動作制御部100による取出し動作の制御に使用されるデータである。
【0111】
具体的には、力覚センサ204は、ロボットアーム201の手先202のy軸回りのモーメントMyの値を計測する。図5Bに計測されるモーメントMyの値を時系列データでグラフに表した一例を示す。力覚センサ204は、より正確な値を計測するために、吸着したときと、途中取り出し動作が完了したときとから、それぞれ所定の時間(例えば1秒)経過後のモーメントMyの値の時系列データを計測値として取得することができる。又は、力覚センサ204は、吸着後に、途中取り出し量D1だけ手先202が移動して、途中取り出し動作が完了したときから所定の時間(例えば3秒)の間のモーメントMyの値の平均値を、途中取り出し動作時の計測値として取得しても良い。
【0112】
また、迅速に計測を完了するために、力覚センサ204は、途中取り出し動作の完了時のモーメントMyの値を計測値として取得しても良い。力覚センサ204で取得した計測値は、第2の判定部108に入力される。
【0113】
(第2の判定部108)
第2の判定部108は、第1の制御部102の制御の下での吸着動作時と第2の制御部103の制御の下での途中取り出し動作時とのそれぞれの力覚センサ204で計測したy軸方向のモーメントMyの計測値の差ΔMに基づき、梱包箱91から対象物93を完全に取り出したときの対象物93の揺れの大きさを推定し、完全取り出し動作の実行の可否を判定する。
【0114】
具体的には、前記第1の制御部102の制御の下で吸着ノズル205で対象物93を吸着したときのy軸回りのモーメントMyの値と前記第2の制御部で対象物93を途中取り出し動作したときのy軸回りのモーメントMyの値との差ΔMを第2の判定部108で以下のように判定する。すなわち、第2の判定部108で判定対象の差ΔMが第1の閾値の一例である図7の適正モーメント値の範囲内のとき、例えば、差ΔMが第1閾値以上のとき、対象物93を完全取り出し動作したときの揺れは、完全取り出しに失敗しない程度に小さいと第2の判定部108で判定する。よって、この場合には、完全取り出し動作の実行可能と第2の判定部108で判定する。そうでない場合には、完全取り出し動作は実行不可と第2の判定部108で判定する。例えば、差ΔMが第1閾値未満であれば、取出し動作の継続を中止すると、第2の判定部108で判定する。第2の判定部108での判定結果の情報は、第2の制御部103と吸着位置更新部106とに入力される。
【0115】
完全取り出し動作は実行可能であると第2の判定部108で判定したとき、第2の制御部103の制御の下に完全取り出し動作を実行する。一方、完全取り出し動作は実行不可であると第2の判定部108で判定したとき、吸着位置更新部106で吸着位置を更新する。
【0116】
(吸着位置更新部106)
吸着位置更新部106は、第1の判定部107で吸着に失敗していると判定されたとき、対象物93に対する吸着位置を変更して、記憶部113の記憶情報を更新するとともに、変更した吸着位置の情報を第2の設定部101に入力して、第2の設定部101で、変更した吸着位置に設定し直す。また、吸着位置更新部106は、第2の判定部108で揺れが大きく取り出しが不可と判定されたとき、対象物93に対する吸着位置を変更して吸着位置を更新する。このときも、変更した吸着位置の情報を第2の設定部101に入力して、第2の設定部101で、変更した吸着位置に設定し直す。これらのとき、それぞれ変更される値は、xの座標値及びyの座標値、又はzの座標値で、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸の回転角は変更しない。
【0117】
具体的には、吸着に失敗していると第1の判定部107で判定したときは、まず、z軸方向の負の方向に吸着位置を吸着位置更新部106で変更し、変更した吸着位置の情報を第2の設定部101に入力して、第2の設定部101で、変更した吸着位置に設定し直す。一例として、図11Aの吸着位置を図11B及び図11Dの1番の吸着位置に変更する。この1番の吸着位置は、図11Aの吸着位置と比較して、z軸方向が座標Z1から距離α1だけ負の方向の座標Z2に変更されている。このようにz軸方向に吸着位置を吸着位置更新部106で変更して、第2の設定部101で設定し直ししたのち、第1の制御部102の制御の下に吸着動作を行い、再び、第1の判定部107で吸着を判定する。それでもなお、吸着に失敗した場合は、x軸方向又はy軸方向に吸着位置を吸着位置更新部106で変更させる。一例として、図11Bの1番の吸着位置を図11B及び図11Cの3番の吸着位置に変更する。この3番の吸着位置は、図11Bの1番の吸着位置と比較して、x軸方向が座標X1から距離α2だけ負の方向の座標X3に変更されている。このようにx軸方向に吸着位置を吸着位置更新部106で変更したのち、第1の制御部102の制御の下に吸着動作を行い、再び、第1の判定部107で吸着を判定する。吸着位置の変更の仕方は、一例であり、対象物93に応じて、x軸方向又はy軸方向に又はz軸方向に吸着位置を変更する順番を吸着位置更新部106で予め決定しておくことができる。
【0118】
また、第2の判定部108で対象物93の揺れが大きいため完全取り出し動作の実行不可と判定したとき、かつ、第1の閾値の範囲外であるため、図12Aに示すように、x軸の正の方向に、座標X1の吸着位置から座標X4の吸着位置1-1まで大きく移動させる。このようにx軸の正の方向に吸着位置を吸着位置更新部106で変更したのち、第2の制御部103の制御の下に途中取り出し動作を行い、モーメントMyを力覚センサ204で計測した上で、再び、第2の判定部108で対象物93の揺れが大きいか否かを判定する。それでもなお、対象物93の揺れが大きいため完全取り出し動作の実行不可と第2の判定部108で判定されたときは、変更後に第1の閾値の範囲からの外れ方がより小さい場合は、変更後の吸着位置に近い位置2-1、そうでない場合は、元の吸着位置1-0に近い位置2-2に変更する。ここで、ここで、第1の閾値の範囲からの外れ方がより小さいか否かは、記憶部113に第2の判定部108の結果を記憶しておき、次回に第2の判定部で参照して判定を行うことができる。
【0119】
(対象物取り出し動作)
対象物取り出し動作は、図13Aに示すように、少なくとも、ステップS501の吸着動作、ステップS503の途中取り出し動作、ステップS507の第2の判定動作、及び、ステップS508の完全取り出し動作を備えている。さらに、対象物取り出し動作は、ステップS506の吸着位置変更動作を備えることもできる。
【0120】
この対象物取り出し方法は、ロボットアーム装置200を使用して、梱包箱91内に複数個充填された状態で配置される対象物93の1つを吸着ノズル205により吸着しかつ対象物93の側面が他の物体に接触しながら梱包箱91から取り出す、対象物取り出し方法である。
【0121】
まず、ステップS501の吸着動作では、第2の設定部101で設定した対象物93の吸着位置を、ロボットアーム201が有する吸着ノズル205で吸着する。
【0122】
次いで、ステップS503では、吸着つつロボットアーム201により対象物93を梱包箱91から、対象物93の高さHより小さい値である途中取り出し量D1だけ取り出すような、梱包箱91から対象物93を完全に取り出していない途中取り出し動作を行う。
【0123】
次いで、ステップS507の第1の判定動作では、吸着ノズル205により対象物93を吸着したときの吸着ノズル205に付加されるモーメントM1と吸着ノズル205により対象物93を途中まで取り出したときとの吸着ノズル205に付加されるモーメントM2との差ΔMに基づいて、ロボットアーム201が対象物93を吸着ノズル205の吸着によって保持して、対象物93の高さHより大きい値であり、かつ、梱包箱91から対象物93を完全に取り出した完全取り出し動作を行うときの対象物93の揺れを第1の判定部107で予測判定し、第2の制御部103の制御の下にロボットアーム201による完全取り出し動作を行うか否かを第2の判定部108で判定する。
【0124】
完全取り出し動作を行うと第2の判定部108で判定したとき、ステップS508の完全取り出し動作において、完全取り出し量D2に基づいて、ロボットアーム201を動作制御して対象物93を吸着位置で吸着しつつ完全取り出し動作を行う。
【0125】
完全取り出し動作を行わないと第2の判定部108で判定したとき、ステップS506の吸着位置変更動作において、途中取り出し動作を中止して対象物93を梱包箱91内の元の位置に戻した上で、吸着位置の変更を行う。
【0126】
以上が、対象物取り出し方法の基本的な動作である。
【0127】
より具体的に、図13Bに、ロボットアーム装置200の対象物取り出し動作の具体例のフローチャートを示す。この対象物取り出し動作は、ステップS501の吸着動作、ステップS502の第1のモーメントM1の計測動作、ステップS503の途中取り出し動作、ステップS504の第2のモーメントM2の計測動作、ステップS505の第1の判定動作、ステップS506の吸着位置変更動作、ステップS507の第2の判定動作、及び、ステップS508の完全取り出し動作を備えている。
【0128】
(ステップS501)
ステップS501では、まず、第2の設定部101は、吸着により対象物93を保持するための対象物93の上面93aの吸着位置を設定する。吸着位置は、x、y、及びzの座標とピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸の回転角によって与えられる。
【0129】
対象物93の上面93aのうち、吸着位置として設定可能な範囲は、事前に設定されており、その範囲に収まる値が設定される。ここまでは、吸着動作の準備動作である。
【0130】
吸着位置設定後に、吸着動作の準備のため、第1の制御部102は、駆動部115を駆動してロボットアーム201の先端の手先202の吸着ノズル205の先端を、第2の設定部101で設定された吸着位置へ移動させる。
【0131】
吸着位置に移動した後、ロボットアーム201の手先202を移動させ、第1の制御部102で吸引装置116を駆動制御して対象物93に対して吸着ノズル205の吸着による保持を行う。
【0132】
より具体的には、ステップS501では、図14に示すように、以下の動作を行う。
【0133】
まず、ステップS5011で、第2の設定部101により吸着位置を設定する。
【0134】
次いで、ステップS5012で、第1の制御部102は、第2の制御部103を介して駆動部115を駆動して、ステップS5011で設定された吸着位置まで、吸着ノズル205を移動させる。
【0135】
次いで、ステップS5013で、第1の制御部102は、吸引装置116を駆動制御して、吸着位置で、吸着ノズル205による対象物93の吸着動作を行う。
【0136】
次いで、ステップS5014で、吸着動作時の吸着圧を吸着圧計測部104で測定し、測定値を第1の判定部107に入力する。
【0137】
次いで、ステップS5015で、吸着圧が所定の吸着圧よりも負圧であるか否かを第1の判定部107で判定する。吸着圧が所定の吸着圧よりも負圧であると第1の判定部107で判定されれば、ステップS502に進み、吸着保持時のモーメントM1をモーメント計測部105で測定する。
【0138】
ステップS5015で、吸着圧が所定の吸着圧よりも負圧でないと第1の判定部107で判定されれば、ステップS506に進み、途中取り出し動作を中止して対象物93を梱包箱91内の元の位置に戻した上で、吸着位置の変更を行う。
【0139】
以上が、ステップS501の詳細な動作である。
【0140】
(ステップS502)
次いで、モーメント計測部105は、ステップS501で対象物93が吸着によって保持したときのロボットアーム201の吸着ノズル205にかかるy軸回りのモーメントMyを力覚センサ204より計測して、計測値を第1のモーメントM1として取得し、内蔵するタイマーからの時間情報とともに記憶部113に記憶する。
【0141】
ステップS501で対象物93が吸着によって保持したときか否かは、吸着圧計測部104で計測した吸着ノズル205にかかる圧力の変化により検出することができる。例えば、吸着圧計測部104で計測した圧力が負圧になっている場合には、対象物93を吸着保持したときであるとして、そのときの時間と、力覚センサ204でのモーメントの大きさを第1のモーメントM1として取得することができる。又は、ステップS501で対象物93が吸着によって保持したときとは、第1の制御部102での吸着動作制御を行ったときである、としてもよい。
【0142】
(ステップS503)
次いで、第2の制御部103の制御の下に、駆動部115を駆動して、ステップS501で吸着ノズル205により吸着した対象物93を、対象物93の高さHの半分程度の高さである途中取り出し量D1まで、梱包箱91から引き上げて、途中取り出し動作を行う。第2の制御部103は、吸着ノズル205を持つ手先202が、対象物93を吸着した位置からz方向に途中取り出し量D1だけ移動したのち、駆動部115の駆動を一旦停止するように制御する。
【0143】
(ステップS504)
次いで、モーメント計測部105は、第2の制御部103で対象物93が対象物93の高さHの半分の高さである途中取り出し量D1だけ引き上げられて部分的に取り出したときのロボットアーム201の吸着ノズル205にかかるy軸回りのモーメントMyを力覚センサ204より計測して、計測値を第2のモーメントM2として取得し、内蔵するタイマーからの時間情報とともに記憶部113に記憶する。
【0144】
対象物93が対象物93の高さHの半分の高さまで引き上げられたか否かは、第2の制御部103の制御で駆動部115により手先202が途中取り出し量D1だけ移動したことにより検出することができる。
【0145】
(ステップS505)
次いで、第1の判定部107は第1の判定動作を行う。すなわち、第1の判定部107は、吸着圧計測部104で計測した吸着ノズル205にかかる圧力から、吸着に成功しているか否かを判定する。言い換えれば、第1の判定部107は、吸着ノズル205で対象物93を梱包箱91から完全に取り出すのではなく途中まで取り出して、途中取り出し動作に成功しているか否かを判定する。吸着圧計測部104で計測した圧力が負圧になっている場合には、途中取り出し動作に成功していると第1の判定部107で判定する。途中取り出し動作に成功していると第1の判定部107で判定した場合は、ステップS507に進む。そうでないと第1の判定部107で判定した場合は、ステップS506に進む。
【0146】
図15は、このステップS505の詳細な動作を示している。
【0147】
まず、ステップS5051では、吸着圧計測部104で吸着ノズル205における吸着圧を計測している。
【0148】
次いで、ステップS5052では、吸着圧計測部104で計測した圧力が負圧になっているか否かを第1の判定部107で判定する。
【0149】
吸着圧計測部104で計測した圧力が負圧になっていると第1の判定部107で判定した場合には、ステップS507に進む。
【0150】
そうでないと第1の判定部107で判定した場合は、ステップS506に進む。
【0151】
(ステップS507)
次いで、第2の判定部108は、途中取り出し動作に成功したとの第1の判定動作の判定結果の後、第2の判定動作を行う。図16に第2の判定動作のステップS507の詳細な動作を示す。
【0152】
すなわち、まず、第2の判定部108は、図16のステップS5071で、ステップS502で計測した吸着保持時のy軸周りのモーメントM1を取得する。
【0153】
次いで、第2の判定部108は、ステップS5072で、ステップS504で計測した途中取り出し動作時のy軸周りのモーメントM2を取得する。
【0154】
次いで、第2の判定部108は、ステップS5073で、吸着保持時のy軸周りのモーメントM1と途中取り出し動作時のy軸周りのモーメントM2との差ΔM(=M2-M1)に基づいて、完全に取り出すときの吸着ノズル205に対する対象物93の揺れを推定する。吸着保持時のy軸周りのモーメントM1は吸着保持時から所定の時間(例えば1秒)経過後の値を計測値として採用できる。または吸着保持時のy軸周りのモーメントM1は吸着保持時から所定の時間内(例えば3秒間)における値の平均値,最大値もしくは最小値を計測値として採用できる。なお,本実施形態では吸着保持時のy軸周りのモーメントM1は吸着保持時から所定の時間内(例えば3秒間)における値の平均値を計測値として採用した。途中取り出し動作時のy軸周りのモーメントM2は吸着保持時から所定の時間(例えば1秒)経過後の値を計測値として採用できる。または途中取り出し動作時のy軸周りのモーメントM2は吸着保持時から所定の時間内(例えば3秒間)における値の平均値,最大値もしくは最小値を計測値として採用できる。なお,本実施形態では途中取り出し動作時のy軸周りのモーメントM2は吸着保持時から所定の時間内(例えば3秒間)における値の平均値を計測値として採用した。ステップS502で計測したy軸周りのモーメントM1とステップS504で計測したy軸周りのモーメントM2との差ΔMは、モーメント計測部105で求めておいてもよいし、又は、第2の判定部108で演算により求めてもよい。
【0155】
揺れの推定は、差ΔMが所定の値の範囲内に入っているか否かを第2の判定部108で判定することにより行う。
【0156】
第2の判定部108で、モーメントの差ΔMが、第1の閾値の一例である図7の適正モーメント値の範囲内のとき、対象物93を完全取り出し動作したときの揺れは、完全取り出しに失敗しない程度に小さいと第2の判定部108で判定する。よって、この場合には、完全取り出し動作の実行可能と第2の判定部108で判定する。そうでない場合には、揺れが大きく、完全取り出し動作が実行不可であると第2の判定部108で判定して、ステップS506に進む。
【0157】
第2の判定部108が完全取り出し動作を実行可能と第2の判定部108で判定した場合、ステップS508に進む。
【0158】
(ステップS506)
ステップS506では、第1の制御部102の制御の下に途中取り出し動作を中止して対象物93を梱包箱91内の元の位置に戻した上で、吸着位置更新部106は、第2の設定部101で設定される対象物93に対する吸着ノズル205の吸着位置の変更を行う。吸着位置の変更後は、ステップS501に戻る場合を例示しているが、これに限られるものではなく、図13Bに一点鎖線で示すように、ステップS504とステップS505との間に戻るようにしてもよい。
【0159】
ステップS506での吸着位置更新動作は、第1の判定部107で吸着動作に失敗していると判定したときの吸着位置更新動作と、第2の判定部108で完全取り出し動作の実施不可と判定したときの吸着位置更新動作との2種類に分けられる。
【0160】
まず、第1の判定部107で吸着動作に失敗していると判定したときの吸着位置更新動作は、具体的には、図17に示すように行う。すなわち、第1の判定部107で吸着動作に失敗していると判定したときは、まず、第1の制御部102の制御の下に途中取り出し動作を中止して対象物93を梱包箱91内の元の位置に戻した上で、ステップS5061aで、z軸方向の負の方向に吸着位置を変更する。例えば、図11Aの吸着位置を図11B及び図11Dの1番の吸着位置に変更する。
【0161】
次いで、ステップS5061bで、第1の制御部102の制御の下に吸着動作を行う。
【0162】
次いで、ステップS5061cで、吸着圧計測部104で計測した吸着ノズル205にかかる吸着圧を基に、第1の判定部107で吸着動作の成否を判定する。すなわち、吸着圧が所定の吸着圧(例えば-25kPa)よりも負圧になっていれば、第1の判定部107で吸着動作が成功と判定し、ステップS5061dに進み、途中取り出し動作を開始する。その後、ステップS502とステップS503とを順次行うか、又は、ステップS505に戻ってもよい。
【0163】
一方、吸着圧が所定の吸着圧(例えば-25kPa)よりも負圧になっていなければ、第1の判定部107で吸着動作が失敗と判定して、ステップS5062aに進む。
【0164】
これらのステップS5061a~ステップS5061cでは、z軸方向の負の方向に吸着位置を変更しても吸着動作を失敗したため、ステップS5062a以降では、例えば、x軸方向に吸着位置を変更する。
【0165】
具体的には、ステップS5062aで、x軸方向の負の方向に吸着位置を変更する。例えば、図11Bの1番の吸着位置を図11B及び図11Cの3番の吸着位置に変更する。
【0166】
次いで、ステップS5062bで、第1の制御部102の制御の下に吸着動作を行う。
【0167】
次いで、ステップS5062cで、吸着圧計測部104で計測した吸着ノズル205にかかる吸着圧を基に、第1の判定部107で吸着動作の成否を判定する。すなわち、吸着圧が所定の吸着圧(例えば-25kPa)よりも負圧になっていれば、第1の判定部107で吸着動作が成功と判定し、ステップS5062dに進み、途中取り出し動作を開始する。その後、ステップS502とステップS503とを順次行うか、又は、ステップS505に戻ってもよい。
【0168】
一方、吸着圧が所定の吸着圧(例えば-25kPa)よりも負圧になっていなければ、第1の判定部107で吸着動作が失敗と判定して、ステップS5063aに進む。
【0169】
これらのステップS5062a~ステップS5062cでは、x軸方向の負の方向に吸着位置を変更しても吸着動作を失敗したため、ステップS5063a以降では、例えば、y軸方向に吸着位置を変更する。
【0170】
具体的には、ステップS5063aで、y軸方向の正の方向に吸着位置を変更する。
【0171】
次いで、ステップS5063bで、第1の制御部102の制御の下に吸着動作を行う。
【0172】
次いで、ステップS5063cで、吸着圧計測部104で計測した吸着ノズル205にかかる吸着圧を基に、第1の判定部107で吸着動作の成否を判定する。すなわち、吸着圧が所定の吸着圧(例えば-25kPa)よりも負圧になっていれば、第1の判定部107で吸着動作が成功と判定し、ステップS5063dに進み、途中取り出し動作を開始する。その後、ステップS502とステップS503とを順次行うか、又は、ステップS505に戻ってもよい。
【0173】
一方、吸着圧が所定の吸着圧(例えば-25kPa)よりも負圧になっていなければ、第1の判定部107で吸着動作が失敗と判定して、ステップS5063eに進む。
【0174】
これらのステップS5063a~ステップS5063cでは、y軸方向の正の方向に吸着位置を変更しても吸着動作を失敗したため、ステップS5063eでは、失敗通知をユーザに行う。失敗通知の仕方は、具体的に図示しないが、警告灯の点灯又は点滅、警報音の発生、又は、表示装置での警告の表示などが例示できる。
【0175】
第2の判定部108で完全取り出し動作の実施不可と判定したときの吸着位置更新動作は、一例として、以下のように行う。
【0176】
第2の判定部108で完全取り出し動作不可と判定した場合、第1の閾値の範囲外となる場合には、図12Aの元々の吸着位置(X1,Y1,Z1)を、図12B及び図12Cに示すように、x軸の正の方向に、例えば距離αだけ離れた位置1-1まで大きく移動させる。位置1-1は、吸着ノズル205で吸着可能なx軸の正の方向の最大値の位置である。
【0177】
吸着位置を位置1-1に変更してもなお、完全取り出し動作実施不可と第2の判定部108で判定された場合は、さらに変更する。例えば、吸着位置1-1への変更後に、第1の閾値の範囲外への外れ方が、より小さくなっている場合は、吸着位置変更後の吸着位置1-1に近い位置2-1に変更する。
【0178】
吸着位置を位置2-1に変更してもなお、完全取り出し動作実施不可と第2の判定部108で判定された場合は、元々の吸着位置(X1,Y1,Z1)にさらに近い位置2-2に変更する。
【0179】
吸着位置を位置2-2に変更してもなお、完全取り出し動作実施不可と第2の判定部108で判定された場合は、x軸の負の方向に、吸着ノズル205で吸着可能なx軸の負の方向の最大値の位置1-2に変更する。
【0180】
これは、x軸の吸着位置の変更の仕方の一例であるが、z軸の吸着位置の変更の仕方又はy軸の吸着位置の変更の仕方にも適用可能であり、また、各軸の吸着位置の変更の仕方は、これに限られるものではない。
【0181】
(ステップS508)
ステップS508では、第2の制御部103の制御の下に、駆動部115を駆動して、ステップS501で吸着ノズル205により吸着した対象物93を、対象物93の高さHよりも大きい、完全取り出し量D2まで、梱包箱91から引き上げて、完全取り出し動作を行う。これにより、吸着ノズル205により吸着した対象物93を、別のトレー等まで、仕分け動作のために搬送可能とする。
【0182】
以上のように、本実施形態によれば、梱包箱91から対象物93を完全に取り出していない途中取り出し動作で一旦停止して、モーメント計測部105でモーメントM1,M2を計測し、計測したモーメントの差ΔMに基づき、完全取り出し動作を行ったときの揺れの大きさを第2の判定部108で推定し、揺れが十分小さいと推定した場合に完全取り出し動作を行う。このため、完全取り出し動作を行うときに対象物93の揺れが大き過ぎて対象物93を落としてしまうことを防ぐことができる。
【0183】
<変形例1>
なお、本開示は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0184】
<ロボットアーム201の手先にかかるz軸方向の力の値を基に、取り出し動作の判定を行う>
本変形例1は、前記実施形態と異なり、吸着によって対象物93を途中取り出し動作したときの成否をロボットアーム201の手先202にかかるz軸方向の力の値に基づいて第2の判定部108で判定するものである。図18に、変形例1に係るアクチュエータ装置の一例としてのロボットアーム装置の機能ブロック図を示す。
【0185】
先の実施形態にかかる図8Bの構成との相違点は、図19に示すように、手先202の力を計測する力計測部109が力覚センサ204の位置に追加配置されている点である。力計測部109としては、力とモーメントを測定する装置である力覚センサを例示することができる。力覚センサでの計測値の例は、図3Gに示す。
【0186】
本変形例1における取り出し動作は、前記実施形態と比較して、完全取り出し動作の成否を判定する動作ステップS505が異なる。
【0187】
本変形例1におけるステップS505の処理について、図20に詳細に示す。ここでは、ステップS505は、ステップS5056と、ステップS5057と、ステップS5058とで構成されている。
【0188】
まず、図20のステップS5056では、力計測部109で手先202のz軸方向の力を計測する。
【0189】
次いで、ステップS5057では、第2の判定部108が、力計測部109からz軸方向の力を取得する。
【0190】
次いで、ステップS5058では、ステップS5057で力計測部109から取得した力の計測値に基づいて、第2の判定部108が途中取り出し動作に成功しているか否かを判定する。具体的には、力計測部109で計測された力の値が、記憶部113に記憶されている対象物93の重量の半分以上であれば、途中取り出し動作に成功していると第2の判定部108で判定する。具体的には、ステップS5058でYesとなれば、ステップS507でモーメントの差ΔMを使用する。ステップS5058でNoとなれば、ステップS506に進む。
【0191】
力計測部109で計測された力の値が、記憶部113に記憶されている対象物93の重量の半分以上であり、途中取り出し動作に成功していると第2の判定部108で判定した場合は、ステップS507へ進む。そうでない、すなわち、力計測部109で計測された力の値が、記憶部113に記憶されている対象物93の重量の半分以上ではないと第2の判定部108で判定した場合は、ステップS506に進む。
【0192】
この様態によれば、力覚センサ204から得られた力の情報により、対象物93を吸着により保持しているかを判定する。このことにより、途中取り出し動作の段階で対象物93を吸着により保持しているかを判断でき、保持できていない場合はモーメントによる判定を行わずに吸着位置の変更に進むことができる。
【0193】
<変形例2>
本実施の形態のロボットアーム装置200においては、倉庫環境においてロボットアーム201を設置し、倉庫環境で、対象物93の所定吸着位置において、ロボットアーム201で対象物93を梱包箱91から所定量取出したときのモーメントを計測することで、対象物93の揺れを予測する装置である。
【0194】
このようなロボットアーム装置200が倉庫A~Cの複数の倉庫環境304A~304Cにそれぞれ配置され、同じ種類で同じ形状及び大きさの取出し対象の対象物93の取出し動作を行う場合の対象物取出しシステム300について、図21を基に説明する。
【0195】
このような対象物取出しシステム300では、各ロボットアーム装置200は、先の実施形態と同様に、ロボットアーム制御部201aとロボットアーム201とを有している。
【0196】
ロボットアーム制御部201aは、入出力部302をさらに有している。入出力部302は、記憶部113と、第2の設定部101と、第1の設定部112とに接続されて、データなどが入出力可能となっている。各ロボットアーム制御部201aの入出力部302は、ネットワーク303に接続されている。ネットワーク303には、データ共有サーバ305を介して、操作対象物データベース306と操作結果データベース307とが接続されている。さらに、ネットワーク303には、倉庫実験環境301に配置されたロボットアーム装置200のロボットアーム制御部201aの入出力部302も接続されて、倉庫実験環境301でのロボットアーム制御部201aで取得したデータを、入出力部302とネットワーク303とデータ共有サーバ305とを介して、操作対象物データベース306に記憶可能となっている。
【0197】
操作対象物データベース306には、例えば、少なくとも対象物93の上面の吸着位置の座標、すなわち、x、y、zの座標と、ロール軸(すなわちx軸回り)、ピッチ軸(すなわちy軸回り)、ヨー軸(すなわちヨーz軸回り)の回転角(α、β、γ)と、対象物93の高さHとが記憶されている。さらに、一例として、記憶部113は、対象物93の上面93aの縦横(すなわち、幅と奥行)寸法と、重量と、吸着圧とが記憶されている。さらに、操作対象物データベース306には、図23に示すように、対象物93の高さHと、取出し量D1,D2と、設置されている棚板95の角度θと、対象物93の揺れを抑えるための適正モーメントとが記憶されている。
【0198】
操作結果データベース307には、例えば、取り出し動作時(取出し成功時と失敗時)の吸着位置と計測されたモーメント等が、取出し成功か否かの情報と共に記憶されている。よって、取出し成功の情報を使用すれば、取出し失敗を防止することができることになる。
【0199】
データ共有サーバ305は、複数のロボットアーム装置200で共有できるデータを共有するものであり、効率的な対象物取出しシステム300を構築することができる。具体的には、倉庫環境304A~304Cにおいて、それぞれ取出し対象の対象物93の高さHと、取出し量D1,D2と、設置されている棚板95の角度θ等をロボットアーム制御部201aの記憶部113に記憶すると、入出力部302とネットワーク303とを介してデータ共有サーバ305に入力され、操作対象物データベース306に記憶して共有することが可能である。
【0200】
また、所定の倉庫実験環境301で計測されたモーメントを用いて、対象物93の揺れを抑えるための吸着位置を操作対象物データベース306に記憶しておくことができる。これにより、操作対象物データベース306に既に記憶されているデータを用いて、別の倉庫での取出し動作の制御を実現することも可能である。特に、現状稼働している倉庫環境で実験することが困難な場合には、疑似的な倉庫実験環境301を用いて、適切な吸着位置に関する実験でデータを操作対象物データベース306に記憶することができる。
【0201】
以下に、このような構成の対象物取出しシステム300の動作例について説明する。
【0202】
例えば、倉庫実験環境301において、稼働している倉庫環境304A~304Cで対象としている対象物93が、図22に示すように、倉庫環境304A~304Cと同様に棚板95に載置されており、この倉庫実験環境301で取出し動作の実験を実施することが可能である。図22では、日常的に作業者が取出し易い環境とするため、下に設置されている対象物93ほど、棚板95の設置角度θが小さくなっている。
【0203】
さらに、図21において、操作対象となる対象物93の操作対象物データベース306の例として、図23に示すように、対象物93のIDと、対象物93の高さHと、途中までの取り出す量D1と、完全に取り出す量D2と、対象物93が設置されている棚板95の設置角度θと、さらに、対象物93と設置されている棚板95の角度θに応じて揺れを所定量に抑えるための適正モーメントとに関するデータが蓄積されている。
【0204】
このような対象物取出しシステム300において、稼働している倉庫環境304A~304Cでロボットアーム201をそれぞれ制御して動かす前に、倉庫実験環境301でロボットアーム201を稼働させることで、吸着点の位置が対象物93の中心の位置からのずれ量(図24)に対して、所定量を持上げたときのモーメントを力覚センサ204で計測する。その計測結果のデータを図25に示す。この計測結果のデータは、倉庫実験環境301のロボットアーム制御部201aの入出力部302及びデータ共有サーバ305を介して、操作結果データベース307に記憶している。
【0205】
図25のデータでは、対象物IDが001の対象物93を棚板95の設置角度θ=0度において取出した時には、モーメント差(ΔM)が0.08であったことを示している。このように過去に取出した履歴を、図25のようにデータ共有サーバ305に接続された操作結果データベース307に記憶することで、他の倉庫で同様の商品が、同じ傾斜角度の棚板95に配置されていたときに、実験することなく、揺れが少ない吸着位置を操作結果データベース307で検索して探し出すことが可能になる。
【0206】
なお、本変形例2においては、倉庫実験環境301での取得実験でのデータを共有する仕組みについて説明したが、例えば稼働している倉庫環境304A~304Cでのデータをデータ共有サーバ305で共有する仕組みを用いてもよい。
【0207】
これにより、例えば倉庫環境304Cで初めて設置される商品であったとしても、前記した検索により、他の倉庫環境304Aでの取出し実績のデータが探し出して取得できれば、そのデータを用いて、揺れの少ない吸着点を設定することが可能になる。
【0208】
なお、第2の設定部101と第1の設定部112とを各ロボットアーム装置200のロボットアーム制御部201aに備える代わりに、サーバ側に1つずつ備えて、複数のロボットアーム装置200で共有するようにしてもよい。そのような対象物取出しシステム300Aの例を図26に示す。
【0209】
図26では、第2の設定部101に対応する第2の設定部1101と、第1の設定部112に対応する第1の設定部1112とがデータ共有サーバ305に接続されており、第2の設定部1101と第1の設定部1112とでそれぞれ設定されたデータは、データ共有サーバ305を介して操作対象物データベース306及び/又は操作結果データベース307に記憶される。各ロボットアーム制御部201aには、第2の設定部101と第1の設定部112とを備える必要はなく、それ以外の構成は先の実施形態と同じである。すなわち、対象物取出しシステム300Aは、動作制御部100などを有するロボットアーム制御部201aと、モーメント計測部105などを有するロボットアーム201とを備えている。
【0210】
このような構成の対象物取出しシステム300Aでは、各倉庫環境毎に個別の制御又は計測すべき情報に関係する動作制御部100とモーメント計測部105となどは各ロボットアーム装置200に備え、情報共有可能な制御対象の情報、例えば、対象物93に関する情報、各制御機器等で取得されたセンサの値に関する情報などは、サーバ側で保持して、共有できる構成とすることができる。
【0211】
<変形例3>
これまでの実施形態及び変形例では、梱包箱91を載置台90の例として説明しているが、本開示は、これに限られるものではない。
【0212】
本開示としては、載置台90の別の例として、箱ではなく、平板などで構成される載置板89としてもよい。この載置板89は、一例として、図27Aに示すように、矩形の載置板89の一端に、対象物93の少なくとも1つの側面の下部が接触可能な柵89aが固定され、対象物93を吸着により持ち上げたときに柵89aが対象物93の側面の下部に接触して、対象物93の揺動を抑制する。このとき、柵89aは、隣接する他の物体による支えとして機能する。対象物93の底面が載置板89から少しでも浮いたときに前記した揺れ判定は可能である。
【0213】
上から平面視的に見たとき、柵89aは、図27Bに示すように、取り出す対象物93の側面の全面に配置されるものに限らず、図27Cに示すように、取り出す対象物93の側面の一部に配置されて支持するものであってもよい。
【0214】
また、図27Dに示すように、柵89a付の載置板89を、棚板95のように傾斜角度θだけ傾斜させるようにしてもよい。また、図27E及び図27Fに示すように、載置板89に複数個の対象物93を載置するとき、柵89aに近い側の対象物93から順に取り出せば、傾斜角度によっては、取り出した対象物93に対して、柵89aとは反対側に隣接する対象物93が柵89aまで滑って摺動し、取り出し作業が行いやすくなる。
【0215】
また、載置台90の別の例として、図27Gに示すように、柵89aが無い代わりに、持ち上げる対象物93の少なくとも1つの側面93jが他の対象物93の側面93hに接触可能とし、対象物93を吸着により持ち上げたときに他の対象物93の側面93hが対象物93の側面93jの下部に接触して、対象物93の揺動を抑制する。このとき、他の対象物93の側面93hは、隣接する他の物体の支えとして機能することができる。また、上から平面視的に見たとき、他の対象物93の側面93hは、図27Hに示すように、取り出す対象物93の側面93jの全面に配置されるものに限らず、図27Iに示すように、他の対象物93の位置が、取り出す対象物93の位置とは対向面沿いにずれて、取り出す対象物93の側面93jの一部に接触して支持するものであってもよい。
【0216】
また、載置台90のさらに別の例として、図27J及び図27Kに示すように、柵89aが無い代わりに、対象物93の少なくとも1つの側面が棒状の支持部材88に接触可能とし、対象物93を吸着により持ち上げたときに棒状の支持部材88が対象物93の側面に接触して、対象物93の揺動を抑制する。このとき、棒状の支持部材88は、隣接する他の物体の支えとして機能することができる。棒状の支持部材88は、対象物93の少なくとも1つの側面に対して直交する方向から接触して、当該側面を支持可能としている。棒状の支持部材88は、一例として、載置板89から柵89aの高さと同程度の高さで側面を支持することができるように、載置板89に固定されている。
【0217】
このように、梱包箱に対象物93が充填されている場合のみではなく、柵89aにもたれているとき、他の対象物93に接触しているとき、又は、棒状の支持部材88で押されているときでも、同じような揺れ防止機能は、後述するように達成可能である。
【0218】
また、対象物93の別の例としては、直方体形状の対象物に限らず、図28A図28Fに示すように、円柱状の対象物でもよい。
【0219】
また、対象物93のさらに別の例としては、図29Aに示すように、多数の扁平な直方体の商品が1つに梱包されて集合体となり、全体として立方体に近い形状の物体でもよい。
【0220】
また、対象物93のさらに別の例としては、図29Bに示すように、多数の円柱形状の商品が1つに梱包されて集合体となった物体でもよい。また、図29Cに示すように、多数の円柱形状の商品の例として缶ビール又は缶ジュースの包装のように、一部が柔軟物94の包装用パッケージから露出していてもよい。
【0221】
また、対象物93のさらに別の例としては、図29Dに示すように、球状の対象物でもよい。
【0222】
対象物93の別の例として、図29Eに示すように、複数個の球体が1つの集合体として梱包されている物体でもよい。
【0223】
なお、図29Cを除き、図29A図29Eでは柔軟物94は透明で対象物93の全体を包んでいるため、図示を省略している。
【0224】
図30A図30Cは、対象物が置かれている状況の例として、図27Aの柵付載置板89、図27Gの載置板89、図27Jの支持部材88付載置板89にそれぞれ載置された対象物93を吸着ノズル205で吸着して持ち上げるときの揺れの一例の説明図である。
【0225】
まず、図30A図30Cのそれぞれの(a)に示すように、対象物93の重心位置93gを通る上下方向と上面とが交差する位置(すなわち、重心対応位置)とは異なる位置(例えば、図の例では、重心対応位置から左側にずれた位置)を、吸着ノズル205で吸着する。そして、ロボットアーム201で、対象物93を、載置板89の載置面に対して垂直方向に、柵89a又は他の対象物93又は支持部材88に接触させつつ持ち上げる。
【0226】
次いで、図30A図30Cのそれぞれの(b)に示すように、対象物93の持ち上げの高さが柵89a又は他の対象物93又は支持部材88より低いときは、持ち上げられる対象物93が、図30A図30Bにおいて反時計周りに又は図30Cにおいて時計周りに回転しようとするが、周囲の環境、言い換えれば、対象物93に隣接する他の物体の例としての柵89a又は他の対象物93又は支持部材88に支えられており、対象物93の姿勢の変化は発生しない。
【0227】
次いで、図30A図30Cのそれぞれの(c)に示すように、柵89a又は他の対象物93又は支持部材88よりも対象物93が高く持ち上げられると、柵89a又は他の対象物93又は支持部材88による支持が無くなり、対象物93の重心位置93gが吸着位置の鉛直下方になるように対象物93の姿勢に変化が起こり、対象物93に揺れが発生する。
【0228】
よって、これらの変形例においても、吸着ノズル205は、対象物93に対して適切な吸着位置で吸着を行う必要があるが、先の実施形態と同様に、対象物93を吸着ノズル205から落下させないためには、対象物93を載置台90から完全に取り出す前に、対象物93が吸着ノズル205に対して揺れてしまうか否かを推定できれば、吸着位置を修正することが可能になる。
【0229】
そこで、先の実施形態と同様に、揺れを推定するための実験を行った。
【0230】
図31に、対象物が置かれている状況の例として、傾斜角度20度の柵付載置板89から、柵付載置板89に載置された対象物93を取り出すときの取り出し動作の一例の説明図を示す。ここでは、図30A図30B図30Cとの3つの対象物93が置かれている状況の例のうちの図30Aの例を代表的に図示している。図31の上側のグラフは、区間Aから区間Dを経て、対象物93を落としてしまうまで、吸着位置に付加されるモーメントの時系列データを示すグラフであり、図30Bの例と図30Cの例とでも、それぞれ、ほぼ同じようなグラフとなる。図31の下側の図は、区間Aから区間Dまでの動作の説明図である。
【0231】
図31の区間A~区間Cに示すように、傾斜角度θをつけて配置された載置板89に載置された対象物93に対して、傾斜した載置板89の表面に対して垂直な方向Pに、柵89a又は隣接対象物93の側面93h又は支持部材88(以下、この図31の説明では「柵など」と称する。)の高さよりも低い高さまで引き上げて、一旦、停止させる。その後、再び、対象物93を、柵などの高さよりも高く引き上げて、完全に取り出す。このような動作を行うときの、吸着位置に付加されるモーメントを力覚センサ204で時系列的に計測する(図31の上側のグラフ参照)。このように計測したモーメントを基に、対象物93を載置板89から完全に取り出す前に、対象物93を載置板89から完全に取り出した後に対象物93に大きな揺れが生じるか否かを推定できることを実験的に検証する。
【0232】
まず、動作を詳しく説明する。一例として、θ=20度の傾斜角度のある載置板89から対象物93を吸着保持するとき、対象物93の中心の位置93b(図4I参照)を吸着ノズル205の吸着位置となるように、ロボットアーム201を動作させた。これを実験3とする。すなわち、図31の区間Aでは、ロボットアーム201が駆動されて、載置板89に載置された対象物93の吸着位置に吸着ノズル205が接触して、対象物93を吸着ノズル205で吸着する状態までの区間である。
【0233】
次いで、区間Bでは、ロボットアーム201が駆動されて、吸着ノズル205で吸着した対象物93を、矢印方向Pに、柵などの高さ程度(例えば7.5cm)だけ引き上げて部分的に取り出すために移動させる。
【0234】
次いで、区間Cでは、ロボットアーム201の駆動により、吸着ノズル205で吸着した対象物93を、柵などの高さ程度(例えば7.5cmだけ)引き上げて部分的に取り出し、一旦停止する。この状態では、対象物93は載置板89から完全に取り出されず、下半部が柵などに接触して揺動不可に支持されている状態となっている。
【0235】
その後、区間Cに続く区間Dでは、ロボットアーム201の駆動により、対象物93を柵などの高さ程度(例えば7.5cm)だけ引き上げて部分的に取り出した状態から、さらに引き上げて、柵などの高さよりも高い高さまで載置板89から完全に取り出すために移動する。このとき、区間Dでは、対象物93が柵などから離れるように対象物93を載置板89から完全に取り出すと同時に、対象物93に大きなモーメントが瞬間的にかかり、対象物93が吸着ノズル205に対して大きく揺れ、吸着ノズル205による対象物93の吸着保持が外れてしまい、吸着ノズル205から対象物93を落としてしまい、対象物93の取り出しに失敗した。
【0236】
ここで、図31の上側のグラフは、区間Aから区間Dを経て、対象物93を落としてしまうまで、吸着位置に付加されるモーメント(単位:Nm)の時系列データをグラフで表現したものである。ここでは、区間Aと区間Cとでは、モーメントの差がほとんど変わらず、第1閾値相当の差になっていないことがわかる。
【0237】
この実験3に対して、図31すなわち図32Aにも示すように、対象物93を柵などの高さ程度(例えば7.5cm)だけ引き上げて部分的に取り出した状態に対して、引き上げ量を小さくして、図32Bに示すように、対象物93を柵などの高さ程度(例えば0.5cm)だけ引き上げて部分的に取り出した状態としても、図31すなわち図32Aと同様に、区間Dでは、吸着ノズル205から対象物93を落としてしまい、対象物93の取り出しに失敗した。
【0238】
よって、柵などの高さを変更して、対象物93を引き上げて部分的に取り出すときの高さが異なったとしても、同様に落下することがわかった。
【0239】
これに対して、次に、図33及び図33Bに示すように、対象物93の吸着位置を、対象物93の中心の位置93bよりも、他の物体の例としての柵89aに近い側である、傾斜方向の上側の位置93cに変更する。この状態で、図31の区間Aから区間Dに対応する区間の動作として、吸着ノズル205で吸着保持するように、ロボットアーム201を動作させる。すなわち、θ=20度の傾斜角度の載置板89から対象物93を吸着保持するとき、対象物93の中心の位置93bよりも傾斜方向の上側の位置93cを吸着ノズル205の吸着位置となるように、ロボットアーム201を動作させた。これを実験4とする。
【0240】
このとき、区間Dの後、対象物93を載置板89から完全に取り出した際に対象物93は少し揺れはしたものの、落ちることはなかった。図33A及び図33Bのそれぞれの上側のグラフは、区間Aから区間Dを経て、対象物93を吸着保持に成功するまで、吸着位置に付加されるモーメント(単位:Nm)の時系列データをグラフで表現したものである。ここで、区間A、B、Cで表される動作は、実験3の図31及び図32A及び図32Bの区間A、B、Cで表される動作とそれぞれ同じである。実験4の区間Dの動作では、実験3の区間Dの動作とは異なり、対象物93に大きなモーメントがかかることなく、載置板89から完全に取り出すことに成功した。ここで、図33A及び図33Bのそれぞれの区間Aと区間Cとでは、モーメントに大きな差が生じており、第1閾値相当の差になっていることがわかる。
【0241】
この結果、実験3,4から、対象物93を載置板89から取り出したときの揺れを推定するためには、先の実験1,2の場合と同様に、区間Aと区間Cとで対象物93にかかるモーメントの差を利用することができることが分かった。
【0242】
まず、実験3において、図31及び図32A及び図32Bに示すように、区間Aでかかるモーメントと区間Cでかかるモーメントとの値には差がほとんどない。が、対象物93を完全に取り出すときである区間Dでは、一気に急激に大きなモーメントが対象物93にかかったために、対象物93を吸着ノズル205から落とすことになった。
【0243】
一方、実験4では、図33A及び図33Bに示すように、区間Cで、すでに区間Aよりも大きなモーメントがかかっている。そのため、区間Dにおいては、区間Cのモーメントに対してほとんどモーメントが増加していない。このことから、区間Aの対象物93を吸着したときにかかるモーメントと、区間Cの対象物93を柵などの高さまで持ち上げたときにかかるモーメントとを比較することで、対象物93を載置板89から取り出したときに、対象物93がどれだけ揺れるのかを推定することができる。
【0244】
今回の実験3,4においては、対象物93が置かれている載置板89の傾斜角度θが20度の場合の実験結果を示した。
【0245】
さらに、対象物93が置かれている載置板89の傾斜角度θが0度及び10度の場合も実験を行った。
【0246】
なお、実験3,4より、対象物93の持ち上げ動作時の高さについては、対象物93が載置面から離れておれば、持ち上げ動作時の高さの大小にかかわらず、対象物93の挙動としてはすべて同じである。持ち上げ動作の持ち上げ量としては、対象物93の底面が載置板89の載置面から離間する高さが最低限必要である。その載置面から離間する高さの例としては、0.1cmでもよく、例えば、実験時は0.5cmであった。
【0247】
これらの実験3,4の結果、区間Aと区間Cとでのモーメントの値の差が、図34で示すように、傾斜角度θと、図27A図27G図27Jとの対象物93が置かれているそれぞれの状況とに応じて異なる適正モーメントの範囲の値であれば、対象物93を載置板89から取り出したときに、対象物93を落下させることはない。
【0248】
例えば、図27Aに示すように対象物93が置かれている状況では、傾斜角度θ=0度の場合には、適正モーメントの範囲の値は-0.1~0.1Nmであり、傾斜角度θ=10度の場合には、適正モーメントの範囲の値は0.05~0.1Nmであり、傾斜角度θ=20度の場合には、適正モーメントの範囲の値は0.1~0.15Nmである。
【0249】
また、図27Gに示すように対象物93が置かれている状況では、傾斜角度θ=0度の場合には、適正モーメントの範囲の値は-0.1~0.1Nmであり、傾斜角度θ=10度の場合には、適正モーメントの範囲の値は0.1~0.2Nmであり、傾斜角度θ=20度の場合には、適正モーメントの範囲の値は0.2~0.4Nmである。
【0250】
さらに、図27Jに示すように対象物93が置かれている状況では、傾斜角度θ=0度の場合には、適正モーメントの範囲の値は-0.1~0.1Nmであり、傾斜角度θ=10度の場合には、適正モーメントの範囲の値は0.1~0.3Nmであり、傾斜角度θ=20度の場合には、適正モーメントの範囲の値は0.3~0.5Nmである。
【0251】
従って、例えば、図27Gの対象物93が置かれている状況で、傾斜角度θ=20度の場合には、持ち上げ動作時の載置面からの高さに関わらず、区間Aと区間Cとのモーメントの差が、適正モーメント値の0.2~0.4Nmの範囲外のときは、取り出し動作時に落下することになる。一方、持ち上げ動作時の載置面からの高さに関わらず、区間Aと区間Cとのモーメントの差が、適正モーメント値の0.2~0.4Nmの範囲内のときは、対象物93を落下させることなく,取り出し動作に成功することになる。
【0252】
このように、適正モーメントの範囲の値は、対象物93が置かれている状況と対象物93が置かれている傾斜角度θとによって異なる。このため、図34に示すように、傾斜角度θと対象物93が置かれている状況と適正モーメントとの関係の情報を実験で予め取得したのち、後述する操作結果データベースなどの記憶部に予め記憶させる。そして、記憶した情報と対象物93が置かれている状況と傾斜角度θとを基に、後述するモーメント計測部105で取得したモーメントから、対象物93を取り出した後に落下するか否かを推定することが可能になる。なお、区間Aと区間Cとで値が変動する場合には、一例として、所定時間のモーメントの平均値を用いて算出する。
【0253】
なお、一例として、図27Aに示すように対象物93が置かれている状況での例外の動作として、図35に示すように、対象物93において、中心位置よりも柵89aに近い側に重心位置93gが位置する場合、重心位置93gの重心対応位置に対して柵89aから遠い側に吸着位置を変更した後に、区間Cの持ち上げ動作を行うとする。この場合、区間Cの持ち上げ後の静止時におけるモーメントの変化(すなわち、最大値と最小値の差)が一定値(例えば0.1Nm)以上のとき、取り出し動作を変更することもできる。動作の変更例としては、以後の動作を中止する、又は、警告を発する、などが挙げられる。この例では、柵89aの高さは2.8cmである。
【0254】
また、別の例として、図27Aに示すように対象物93が置かれている状況での別の例外の動作として、図36に示すように、対象物93において、中心位置よりも柵89aに遠い側に重心位置93gが位置する場合、重心位置93gの重心対応位置に対して柵89aに近い側に吸着位置を変更した後に、区間Cの持ち上げ動作を行うとする。この場合、区間Cの持ち上げ後では、柵89aに接触して対象物93が静止するが、さらに持ち上げられた区間Eでは、落下こそしなかったが、適正モーメントの最大値(すなわち、第2閾値)である0.1Nmを越えているため、対象物93が大きく揺れていた。このような場合にも、取り出し動作を変更することもできる。動作の変更例としては、以後の動作を中止する、又は、警告を発する、などが挙げられる。
【0255】
なお、本開示を実施形態及び変形例に基づいて説明してきたが、本開示は、前記実施形態及び変形例に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本開示に含まれる。
【0256】
第1の制御部102,第2の制御部103のそれぞれの一部又は全部は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各制御部は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0257】
例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0258】
なお、前記実施形態又は変形例における各制御部を構成する要素の一部又は全部を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。
【0259】
つまり、このプログラムは、側面が互いに接触した状態で複数個の対象物が載置台に載置される対象物の1つを吸着ノズルにより吸着しながら前記載置台から取出すアクチュエータ装置の対象物取り出し用プログラムであって、前記アクチュエータ装置は、アクチュエータと、第1の設定部と、動作制御部と、第1取得部とを備え、前記アクチュエータは、前記対象物を吸着する前記吸着ノズルを有し、コンピュータに、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の吸着位置で吸着しかつ前記対象物の側面が他の物体に接触しながら前記載置台から前記対象物を取出す機能と、前記第1の設定部は、前記アクチュエータによる前記載置台からの前記対象物の取出し量を設定する機能と、前記動作制御部は、前記アクチュエータによる吸着及び取出し動作の制御を行い、前記第1取得部は、前記吸着ノズルに付加されるモーメントを取得する機能と、(i)前記第1取得部は、前記モーメントとして、前記吸着ノズルにより前記対象物を吸着したときの前記吸着ノズルに付加される第1のモーメントと、前記吸着ノズルにより前記対象物を第1の取出し量で前記載置台から取出すときの前記吸着ノズルに付加される第2のモーメントとの差を取得する機能と、ここで、前記第1の取出し量は、前記載置台から前記対象物を取出すまでの量であり、(ii)前記動作制御部は、前記第1取得部により取得した前記2つのモーメントの前記差に基づいて、更に、前記取出し動作を継続するか否かを制御する機能と、として機能させるための、アクチュエータ装置の対象物取り出し用プログラムである。
【0260】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD-ROMなどの光ディスク、磁気ディスク、又は、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。
【0261】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0262】
なお、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本開示に係るアクチュエータ装置、アクチュエータ装置による対象物取出方法、及び、対象物取出システムは、吸着による保持機構を持つ自律動作可能な例えばロボットアームなどのアクチュエータを有するアクチュエータ装置及びそれを使った対象物取出方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0264】
88 棒状の支持部材
89 載置板
89a 柵
90 載置台
91 梱包箱
92 商品
94 柔軟物
95 棚板
100 動作制御部
101 第2の設定部
102 第1の制御部
103 第2の制御部
104 吸着圧計測部
105 モーメント計測部
106 吸着位置更新部
107 第1の判定部
108 第2の判定部
109 力計測部
110 動作判定部
112 第1の設定部
113 記憶部
114 入力部
115 駆動部
116 吸引装置
200 ロボットアーム装置
201 ロボットアーム
202 手先
203 カメラ
204 力覚センサ
204a 演算部
205 吸着ノズル
206 回転関節
300,300A 対象物取出しシステム
301 倉庫実験環境
302 入出力部
303 ネットワーク
304A 倉庫Aの環境
304B 倉庫Bの環境
304C 倉庫Cの環境
305 データ共有サーバ
306 操作対象物データベース
307 操作結果データベース
1101 第2の設定部
1112 第1の設定部
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図27C
図27D
図27E
図27F
図27G
図27H
図27I
図27J
図27K
図28A
図28B
図28C
図28D
図28E
図28F
図29A
図29B
図29C
図29D
図29E
図30A
図30B
図30C
図31
図32A
図32B
図33A
図33B
図34
図35
図36