(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20230329BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230329BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230329BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C09J7/29
B32B27/00 B
B32B27/00 M
B32B27/32 103
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2020516281
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2019016599
(87)【国際公開番号】W WO2019208378
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-09-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2018083419
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】安井 浩登
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏嘉
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】鈴木 聡一郎
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-38556(JP,A)
【文献】特開2013-87131(JP,A)
【文献】特開2009-132867(JP,A)
【文献】特開2018-6541(JP,A)
【文献】国際公開第2015/64574(WO,A1)
【文献】特開2014-175334(JP,A)
【文献】特開2000-17239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/29
B32B 27/00
B32B 27/32
C09J 201/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を加工するために用いられる粘着性フィルムであって、
基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備え、
前記凹凸吸収性樹脂層は、熱可塑性樹脂を含み、
示差走査熱量計(DSC)により測定される、前記凹凸吸収性樹脂層の融点(Tm)が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、
前記電子部品は回路形成面を有し、前記電子部品の厚みが250μm以下になるように、前記電子部品の当該回路形成面とは反対側の面を研削するために用いられ
、
前記熱可塑性樹脂はエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・極性モノマー共重合体を含む粘着性フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着性フィルムにおいて、
動的粘弾性測定装置(ねじりモード)により測定される、70℃での前記凹凸吸収性樹脂層の貯蔵弾性率G'が1.0×10
4Pa以上1.0×10
6Pa以下である粘着性フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着性フィルムにおいて、
150℃で30分間熱処理したときの前記基材層の熱収縮率が0.05%以上1.2%以下である粘着性フィルム。
【請求項4】
請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記エチレン・極性モノマー共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む粘着性フィルム。
【請求項5】
請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記凹凸吸収性樹脂層に含まれる前記エチレン・α-オレフィン共重合体および前記エチレン・極性モノマー共重合体の合計量を100質量部としたとき、
前記凹凸吸収性樹脂層中の前記エチレン・極性モノマー共重合体の含有量が10質量部以上70質量部以下である粘着性フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記電子部品は前記回路形成面にバンプ電極を有する粘着性フィルム。
【請求項7】
回路形成面を有する電子部品と、前記電子部品の前記回路形成面側に貼り合わされ、かつ、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する準備工程と、
前記電子部品の前記回路形成面側とは反対側の面を研削する研削工程と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の電子装置の製造方法において、
前記研削工程では、前記電子部品の厚みが250μm以下になるまで前記電子部品の前記回路形成面側とは反対側の面の研削をおこなう電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程の中で、電子部品を研削する工程においては、電子部品を固定したり、電子部品の損傷を防止したりするために、電子部品の回路形成面に粘着性フィルムが貼り付けられる。
このような粘着性フィルムには、一般的に、基材フィルムに粘着性樹脂層を積層させたフィルムが用いられている。
一方で、回路形成面の凹凸が大きい電子部品に関しては、粘着性フィルムに凹凸吸収性を付与するために、基材フィルムと粘着性樹脂層との間に凹凸吸収性樹脂層を設けた粘着性フィルムが検討されている。
【0003】
このような凹凸吸収性を有する粘着性フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2014-11273号公報)および特許文献2(特開2010-258426号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、高弾性基材フィルムの片側の面に少なくとも1層以上の低弾性率層を有し、該低弾性率層上に放射線硬化型粘着剤層を有し、該高弾性基材フィルムのヤング率が5.0×108Pa~1.1×1010Paであり、該低弾性率層の25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)が2.5×105Pa~4.0×105Paで、60℃での貯蔵弾性率G’(60℃)が0.2×105Pa~1.5×105Paであって、その比G’(60℃)/G’(25℃)が0.5以下であり、該低弾性率層の25℃での損失正接tanδ(25℃)が0.08~0.15であり、60℃での損失正接tanδ(60℃)との比tanδ(60℃)/tanδ(25℃)が4.0以上であり、かつ、該放射線硬化型粘着剤層の厚みが5~100μmであって、該低弾性率層と該放射線硬化型粘着剤層の厚みの比、放射線硬化型粘着剤層厚み/低弾性率層厚み、が1/2以下であることを特徴とする半導体ウエハ加工用粘着テープが記載されている。
【0005】
特許文献2には、基材と少なくとも一層以上の中間層と粘着剤層をこの順番で積層してなる半導体ウエハ保護用粘着シートを半導体ウエハの表面に貼り合わせる方法であって、該粘着シートと半導体ウエハの貼り合わせ温度が50℃~100℃であり、粘着剤層と接する側の中間層の貼り合わせ温度における損失正接(tanδ)が0.5以上であることを特徴とする半導体ウエハ保護用粘着シートの貼り合わせ方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-11273号公報
【文献】特開2010-258426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、携帯電話等のデジタル・モバイル機器に使用されるSiP(System in Package)等の普及に伴い、例えば厚さ100μm以下の半導体ウエハ等の電子部品を実現する薄仕上げ研削技術への要求が高まっている。
本発明者らの検討によれば、薄研削をおこなった電子部品に反りが発生する場合があることが明らかになった。電子部品に反りがあると、搬送工程で不具合が生じたり、電子部品に割れが生じたりする懸念がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、研削後の電子部品の反りを抑制することが可能な電子部品加工用の粘着性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備える粘着性フィルムにおいて、融点(Tm)が特定の範囲にある凹凸吸収性樹脂層を用いることにより、研削後の電子部品の反りを抑制することができることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下に示す粘着性フィルムが提供される。
【0011】
[1]
電子部品を加工するために用いられる粘着性フィルムであって、
基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備え、
上記凹凸吸収性樹脂層は、熱可塑性樹脂を含み、
示差走査熱量計(DSC)により測定される、上記凹凸吸収性樹脂層の融点(Tm)が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、
上記電子部品は回路形成面を有し、上記電子部品の厚みが250μm以下になるように、上記電子部品の当該回路形成面とは反対側の面を研削するために用いられる粘着性フィルム。
[2]
上記[1]に記載の粘着性フィルムにおいて、
動的粘弾性測定装置(ねじりモード)により測定される、70℃での上記凹凸吸収性樹脂層の貯蔵弾性率G’が1.0×104Pa以上1.0×106Pa以下である粘着性フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の粘着性フィルムにおいて、
150℃で30分間熱処理したときの上記基材層の熱収縮率が0.05%以上1.2%以下である粘着性フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記熱可塑性樹脂はエチレン・α-オレフィン共重合体を含む粘着性フィルム。
[5]
上記[4]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記熱可塑性樹脂はエチレン・極性モノマー共重合体をさらに含む粘着性フィルム。
[6]
上記[5]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記エチレン・極性モノマー共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む粘着性フィルム。
[7]
上記[5]または[6]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記凹凸吸収性樹脂層に含まれる上記エチレン・α-オレフィン共重合体および上記エチレン・極性モノマー共重合体の合計量を100質量部としたとき、
上記凹凸吸収性樹脂層中の上記エチレン・極性モノマー共重合体の含有量が10質量部以上70質量部以下である粘着性フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記電子部品は上記回路形成面にバンプ電極を有する粘着性フィルム。
[9]
回路形成面を有する電子部品と、上記電子部品の前記回路形成面側に貼り合わされ、かつ、上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する準備工程と、
上記電子部品の上記回路形成面側とは反対側の面を研削する研削工程と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法。
[10]
上記[9]に記載の電子装置の製造方法において、
上記研削工程では、上記電子部品の厚みが250μm以下になるまで上記電子部品の上記回路形成面側とは反対側の面の研削をおこなう電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、研削後の電子部品の反りを抑制することが可能な電子部品加工用の粘着性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
【
図1】本発明に係る実施形態の粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】バンプ吸収径を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0016】
1.粘着性フィルム
図1は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る粘着性フィルム100は、電子部品を加工するために用いられる粘着性フィルムであって、基材層10と、凹凸吸収性樹脂層20と、粘着性樹脂層30と、をこの順番に備え、凹凸吸収性樹脂層20は、熱可塑性樹脂を含み、示差走査熱量計(DSC)により測定される、凹凸吸収性樹脂層20の融点(Tm)が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、上記電子部品は回路形成面を有し、上記電子部品の厚みが250μm以下になるように、上記電子部品の当該回路形成面とは反対側の面を研削するために用いられる。
【0017】
上述したように、回路形成面の凹凸が大きい電子部品に関しては、粘着性フィルムに凹凸吸収性を付与するために、基材フィルムと粘着性樹脂層との間に凹凸吸収性樹脂層を設けた粘着性フィルムが検討されている。
ここで、近年、携帯電話等のデジタル・モバイル機器に使用されるSiP(System in Package)等の普及に伴い、例えば厚さ100μm以下の半導体ウエハ等の電子部品を実現する薄仕上げ研削技術への要求が高まっている。
しかし、本発明者らの検討によれば、薄研削をおこなった電子部品に反りが発生する場合があることが明らかになった。電子部品に反りがあると、搬送工程で不具合が生じたり、電子部品に割れが生じたりする懸念がある。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備える粘着性フィルムにおいて、融点(Tm)が10℃以上50℃以下の範囲にある凹凸吸収性樹脂層を用いることにより、研削後の電子部品の反りを抑制することができることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態によれば、基材層10と粘着性樹脂層30との間に、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が10℃以上50℃以下である凹凸吸収性樹脂層20を設けることによって、研削後の電子部品の反りを抑制することが可能な電子部品加工用の粘着性フィルム100を得ることができる。
本実施形態に係る粘着性フィルム100を用いることにより、研削後の電子部品の反りを抑制することが可能である理由は明らかでないが、以下の理由が考えられる。
まず、本発明者らの検討によれば、電子部品を研削する工程において、電子部品が摩耗することによって、電子部品および粘着性フィルムの温度が上がり、その結果、電子部品の熱膨張と粘着性フィルムの熱膨張との差によって、電子部品に応力が生じ、その結果、電子部品に反りが生じてしまうことを知見した。本発明者らは、上記知見をもとにさらに検討を重ねた。その結果、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が10℃以上50℃以下の範囲にある凹凸吸収性樹脂層20を設けることによって、電子部品の熱膨張と粘着性フィルムの熱膨張との差による電子部品への応力が緩和でき、その結果、研削後の電子部品の反りを効果的に抑制することができると考えられる。
【0018】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、研削後の電子部品の反りをより一層効果的に抑制する観点から、動的粘弾性測定装置(ねじりモード)により測定される、70℃での凹凸吸収性樹脂層20の貯蔵弾性率G’は、好ましくは1.0×104Pa以上、より好ましくは5.0×104Pa以上、さらに好ましくは1.0×105Pa以上、そして、好ましくは1.0×106Pa以下、より好ましくは5.0×105Pa以下、さらに好ましくは2.0×105Pa以下である。
70℃での凹凸吸収性樹脂層20の貯蔵弾性率G’は、例えば、凹凸吸収性樹脂層20を構成する各成分の種類や配合割合を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0019】
本実施形態に係る粘着性フィルム100全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは25μm以上1000μm以下であり、より好ましくは100μm以上800μm以下であり、さらに好ましくは150μm以上600μm以下である。
【0020】
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、本発明の効果を損なわない範囲で、各層の間に接着層や帯電防止層(図示せず)等の他の層を設けてもよい。接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。また、帯電防止層によれば、粘着性フィルム100の帯電防止性を向上させることができる。
【0021】
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、電子装置の製造工程において、電子部品の表面を保護したり、電子部品を固定したりするために用いられ、より具体的には電子装置の製造工程の一つである電子部品を研削する工程(バックグラインド工程とも呼ぶ)において電子部品の回路形成面(すなわち回路パターンを含む回路面)を保護するために使用するバックグラインドテープとして好適に用いられる。具体的には電子部品の回路形成面に粘着性フィルム100を貼付けて保護し、当該回路形成面とは反対側の面を研削する工程に用いられる。回路形成面にバンプ電極を有する場合、凹凸吸収性樹脂層20を備える本実施形態に係る粘着性フィルム100を好適に適用することができる。
なお、本実施形態に係る粘着性フィルム100は、研削工程以外の加工にも用いることができる。例えば、半導体ウエハやエポキシモールドウエハをダイシングして複数の個片化された半導体チップやパッケージを得るための、いわゆるダイシングテープとして用いることができる。
また、厚みが250μm以下になるまで電子部品を薄く研削する場合に電子部品の反りが発生しやすくなるため、本実施形態に係る粘着性フィルム100は電子部品の厚みが250μm以下になるように、電子部品を薄く研削するために特に好適に用いられる。
【0022】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム100を構成する各層について説明する。
【0023】
<基材層>
基材層10は、粘着性フィルム100の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は、電子部品を加工する際に加わる外力に耐えうる機械的強度があれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
基材層10を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミドイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンエーテル;ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー等のエラストマー;等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、機械物性および透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、およびポリブチレンテレフタレートから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0024】
150℃で30分間熱処理したときの基材層10の熱収縮率は、研削後の電子部品の反りをより一層抑制する観点から、0.05%以上1.2%以下であることが好ましく、0.05%以上1.0%以下であることがより好ましく、0.1%以上0.6%以下であることが特に好ましい。基材層10の熱収縮率が上記上限値以下であると、加熱下で電子部品に粘着性フィルム100を貼り付ける場合や、研削時に粘着性フィルム100の温度が上がった場合においても、基材層10の寸法変化を抑制でき、その結果、電子部品にかかる応力が低減され、電子部品の反りをより一層抑制することができる。また、熱収収縮率が上記下限値以上であると生産性良く、製造することができ、コストパフォーマンスの観点で好ましい。
ここで、基材層10の熱収縮率は、熱処理前の基材層10の流れ方向(MD方向)の長さをL0とし、150℃で30分間熱処理した上で、室温(23℃)に冷却した後の、基材層10のMD方向の長さをL1としたとき、100×(L0-L1)/L0により算出することができる。
【0025】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層10の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。基材層10は研削後の電子部品の反りを抑制する観点から、予めアニール処理されているものが好ましい。基材層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0026】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、25μm以上100μm以下が好ましい。
【0027】
<凹凸吸収性樹脂層>
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、基材層10と粘着性樹脂層30との間に凹凸吸収性樹脂層20を備える。
凹凸吸収性樹脂層20は、粘着性フィルム100の回路形成面への追従性を良好にし、回路形成面と粘着性フィルム100との密着性を良好にすることを目的として設けられる層である。
【0028】
凹凸吸収性樹脂層20は、熱可塑性樹脂を含み、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が10℃以上50℃以下であり、好ましくは15℃以上40℃以下であり、さらに好ましくは15℃以上35℃以下である。示差走査熱量計(DSC)により測定される凹凸吸収性樹脂層20の融解熱は、好ましくは10J/g以上100J/g以下、より好ましくは15J/g以上80J/g以下、さらに好ましくは20J/g以上60J/g以下である。
熱可塑性樹脂を2成分以上含むと、2つ以上の融点が観測されることもあるが、少なくとも一つの融点(Tm)が上記範囲にあればよい。当該2つ以上の融点がいずれも10℃以上50℃以下であることが好ましい。
融点および融解熱は、次に示す測定条件でDSC測定を行った際の2nd加熱時のグラフにおいて、吸熱ピークのピークトップを与える温度を融点、吸熱ピークの面積を融解熱とする。
<測定条件>
1st加熱:30℃から230℃まで10℃/分で昇温し、230℃で5分間保持
冷却:230℃から-100まで10℃/分で降温し、-100℃で5分間保持
2nd加熱:再度、230℃まで10℃/分で昇温
【0029】
凹凸吸収性樹脂層20は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含むことが好ましく、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)およびエチレン・極性モノマー共重合体(B)を含むことがより好ましい。これにより、研削後の電子部品の反りをより一層効果的に抑制することが可能となる。
【0030】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、凹凸吸収性樹脂層20に含まれるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)およびエチレン・極性モノマー共重合体(B)の合計量を100質量部としたとき、凹凸吸収性樹脂層20中のエチレン・極性モノマー共重合体(B)の含有量は、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。また、凹凸吸収性樹脂層20中のエチレン・極性モノマー共重合体(B)の含有量は、研削後の電子部品の反りをより効果的に抑制する観点から、70質量部以下が好ましく、60質部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、40質量部以下がさらにより好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
【0031】
(エチレン・α-オレフィン共重合体(A))
本実施形態に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、例えば、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合することによって得られる共重合体である。
α-オレフィンとしては、例えば、炭素数3~20のα-オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα-オレフィンであり、特に好ましいのは炭素数が3~8のα-オレフィンである。このようなα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。中でも、入手の容易さからプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体(A)はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0032】
ここで、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)としては、例えば、三井化学社製のタフマー(商標登録)、DOW社製のENGAGE(商標登録)、エクソンモービル社製のEXACT(商標登録)、日本ポリエチレン社製のカーネル(商標登録)等が挙げられる。
【0033】
ASTM D1505に準拠し測定される、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の密度は、好ましくは850~900kg/m3、より好ましくは850~880kg/m3、さらに好ましくは850~870kg/m3である。
密度が上記下限値以上であると、ブロッキングなどのハンドリングトラブルを回避できる。また、密度が上記上限値以下であると、凹凸吸収性に優れる凹凸吸収性樹脂層20を得ることができる。
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のメルトフローレ-ト(MFR)は、好ましくは0.1~50g/10分であり、より好ましくは0.2~30g/10分、さらに好ましくは0.5~20g/10分、特に好ましくは1.0~10g/10分である。
MFRが上記下限値以上であると、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の流動性が向上し、凹凸吸収性樹脂層20の加工性をより良好にすることができる。
また、MFRが上記上限値以下であると、より一層均一な厚みの凹凸吸収性樹脂層20を得ることができる。
【0034】
(エチレン・極性モノマー共重合体(B))
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体(B)としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・マレイン酸ジメチル共重合体、エチレン・マレイン酸ジエチル共重合体、エチレン・フマル酸ジメチル共重合体、エチレン・フマル酸ジエチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・クロトン酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびそれらの塩;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体:エチレン・スチレン共重合体等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、上記エチレン・極性モノマー共重合体(B)としては、その入手容易性と性能とのバランスからエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことが特に好ましい。
【0035】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であり、例えばランダム共重合体である。
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有割合は、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上45質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上40質量%以下である。酢酸ビニルの含有量がこの範囲にあると、粘着性フィルム100の柔軟性、耐熱性、透明性、機械的性質のバランスにより一層優れる。また、凹凸吸収性樹脂層20を成膜する際にも、成膜性が良好となる。
酢酸ビニル含有量は、JIS K7192:1999に準拠して測定可能である。
【0036】
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンおよび酢酸ビニルのみからなる二元共重合体が好ましいが、エチレンおよび酢酸ビニルの他に、例えばギ酸ビニル、グリコール酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、或いはこれらの塩もしくはアルキルエステル等のアクリル系単重体;等から選択される一種または二種以上を共重合成分として含んでもよい。上記エチレンおよび酢酸ビニル以外の共重合成分を含む場合、エチレン・酢酸ビニル共重合体中の上記エチレンおよび酢酸ビニル以外の共重合成分の量を0.5質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
【0037】
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される、エチレン・極性モノマー共重合体(B)のメルトフローレ-ト(MFR)は、好ましくは0.1~50g/10分であり、より好ましくは0.2~45g/10分、さらに好ましくは0.5~40g/10分である。
MFRが上記下限値以上であると、エチレン・極性モノマー共重合体(B)の流動性が向上し、凹凸吸収性樹脂層20の成形加工性をより良好にすることができる。
また、MFRが上記上限値以下であると、分子量が高くなるためチルロール等のロール面への付着が起こり難くなり、より一層均一な厚みの凹凸吸収性樹脂層20を得ることができる。
【0038】
凹凸吸収性樹脂層20は、例えば、各成分をドライブレンドまたは溶融混練した後、押出成形することにより得ることができる。また、必要に応じて、酸化防止剤を添加することができる。
【0039】
凹凸吸収性樹脂層20の厚さは、電子部品の回路形成面の凹凸を埋め込むことができる厚さであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上800μm以下であることが好ましく、50μm以上600μm以下であることがより好ましく、100μm以上500μm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
<粘着性樹脂層>
本実施形態に係る粘着性フィルム100は粘着性樹脂層30を備える。
粘着性樹脂層30は、凹凸吸収性樹脂層20の一方の面側に設けられる層であり、粘着性フィルム100を電子部品の回路形成面に貼り付ける際に、電子部品の回路形成面に接触して粘着する層である。
【0041】
粘着性樹脂層30を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0042】
また、粘着性樹脂層30を構成する粘着剤としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着剤を用いることが好ましい。
放射線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層30は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、粘着性フィルム100から電子部品を剥離し易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0044】
放射線架橋型の(メタ)アクリル系粘着剤としては、分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂と、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物と、光開始剤を含み、必要に応じて架橋剤により上記(メタ)アクリル系樹脂を架橋させて得られる粘着剤を例示することができる。
【0045】
分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂は、具体的には次のようにして得られる。まず、エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーを共重合させる。次いで、この共重合体に含まれる官能基(P)と、該官能基(P)と付加反応、縮合反応等を起こしうる官能基(Q)を有するモノマーとを、該モノマー中の二重結合を残したまま反応させ、共重合体分子中に重合性炭素-炭素二重結合を導入する。
【0046】
上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー、酢酸ビニルの如きビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等のエチレン性二重結合を有するモノマーの中から、1種又は2種以上が用いられる。
【0047】
上記官能基(P)を有する共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
上記エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーの割合は、上記エチレン性二重結合を有するモノマーが70~99質量%であり、官能基(P)を有する共重合性モノマーが1~30質量%であることが好ましい。さらに好ましくは、上記エチレン性二重結合を有するモノマーが80~95質量%であり、官能基(P)を有する共重合性モノマーが5~20質量%である。
上記官能基(Q)を有するモノマーとしては、例えば、上記官能基(P)を有する共重合性モノマーと同様のモノマーを挙げることができる。
【0048】
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーとの共重合体に、重合性炭素-炭素二重結合を導入する際に反応させる官能基(P)と官能基(Q)の組み合わせとして、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基等、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。又、付加反応に限らずカルボン酸基と水酸基との縮合反応等、重合性炭素-炭素二重結合が容易に導入できる反応であれば如何なる反応を用いてもよい。
【0049】
分子中に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。分子中に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは5~18質量部である。
【0050】
光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いてもよい。光開始剤の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは5~10質量部である。
【0051】
上記紫外線硬化型粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。上記紫外線硬化型粘着剤は、溶剤タイプ、エマルションタイプ、ホットメルトタイプ等の何れでもよい。
【0052】
架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数が(メタ)アクリル系樹脂中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
(メタ)アクリル系粘着剤中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層30の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0053】
粘着性樹脂層30は、例えば、凹凸吸収性樹脂層20上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等の従来公知の塗布方法を採用することができる。塗布された粘着剤の乾燥条件は特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と(メタ)アクリル系樹脂との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0054】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層30の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上80μm以下であることがより好ましく、5μm以上60μm以下がさらに好ましい。
【0055】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム100の製造方法の一例を説明する。
まず、基材層10の一方の面に凹凸吸収性樹脂層20を押出しラミネート法によって形成する。次いで、凹凸吸収性樹脂層20上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって粘着性樹脂層30を形成し、粘着性フィルム100を得ることができる。
また、基材層10と凹凸吸収性樹脂層20とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の凹凸吸収性樹脂層20とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0056】
2.電子装置の製造方法
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の2つの工程を少なくとも備えている。
(A)回路形成面を有する電子部品と、上記電子部品の上記回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルム100と、を備える構造体を準備する準備工程
(B)上記電子部品の上記回路形成面側とは反対側の面を研削する研削工程
そして、粘着性フィルム100として、本実施形態に係る粘着性フィルム100を使用する。本実施形態に係る電子装置の製造方法は、電子部品の裏面を研削する際に、本実施形態に係る粘着性フィルム100を、いわゆるバックグラインドテープとして用いることに特徴がある。
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0057】
(工程(A))
はじめに、回路形成面を有する電子部品と、電子部品の回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルム100と、を備える構造体を準備する。
このような構造体は、例えば、粘着性フィルム100の粘着性樹脂層30から離型フィルムを剥離し、粘着性樹脂層30の表面を露出させ、その粘着性樹脂層30上に、電子部品の回路形成面を貼り付けることにより作製することができる。
【0058】
ここで、粘着性フィルム100に電子部品の回路形成面を貼り付ける際の条件は特に限定されないが、例えば、温度は30~80℃、圧力は0.05~0.5MPa、貼り付け速度は0.5~20mm/秒とすることができる。
【0059】
工程(A)は、電子部品の回路形成面に粘着性フィルム100を加温して貼り付けることにより構造体を作製する工程(A2)をさらに含むことが好ましい。これにより、粘着性樹脂層30と電子部品との接着状態を長時間にわたって良好にすることができる。加温温度としては特に限定されないが、例えば、60~80℃である。
【0060】
粘着性フィルム100を電子部品に貼り付ける操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行うことができる。
【0061】
粘着性フィルム100に貼り付ける電子部品としては特に限定されないが、回路形成面を有する電子部品であることが好ましい。例えば、半導体ウエハ、エポキシモールドウエハ、モールドパネル、モールドアレイパッケージ、半導体基板等が挙げられ、好ましくは半導体ウエハおよびエポキシモールドウエハである。
また、半導体ウエハは、例えば、シリコンウエハ、サファイアウエハ、ゲルマニウムウエハ、ゲルマニウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、タンタル酸リチウムウエハ等が挙げられるが、シリコンウエハに好適に用いられる。エポキシモールドウエハは、ファンアウト型WLPの作製方法のひとつであるeWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)プロセスによって作製されたウエハが挙げられる。
回路形成面を有する半導体ウエハおよびエポキシモールドウエハとしては特に限定されないが、例えば、表面に配線、キャパシタ、ダイオードまたはトランジスタ等の回路が形成されたものに用いられる。また、回路形成面にプラズマ処理がされていてもよい。
【0062】
電子部品の回路形成面は、例えば、電極を有することにより、凹凸面となっている。
また、電極は、例えば、電子装置を実装面に実装する際に、実装面に形成された電極に対して接合されて、電子装置と実装面(プリント基板等の実装面)との間の電気的接続を形成するものである。
電極としては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプ、ピラーバンプ等のバンプ電極が挙げられる。すなわち、電極は、通常凸電極である。これらのバンプ電極は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
バンプ電極の高さおよび径は特に限定されないが、それぞれ、好ましくは10~400μm、より好ましくは50~300μmである。その際のバンプピッチにおいても特に限定されないが、好ましくは20~600μm、より好ましくは100~500μmである。
また、バンプ電極を構成する金属種は特に限定されず、例えば、はんだ、銀、金、銅、錫、鉛、ビスマス及びこれらの合金等が挙げられるが、粘着性フィルム100はバンプ電極がはんだバンプの場合に好適に用いられる。これらの金属種は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
(工程(B))
次に、上記電子部品の上記回路形成面側とは反対側の面(以下、裏面とも呼ぶ。)を研削(バックグラインドとも呼ぶ。)する。
ここで、研削するとは、電子部品を割ったり、破損したりすることなく、所定の厚みまで薄化加工することを意味する。
例えば、研削機のチャックテーブル等に上記構造体を固定し、電子部品の裏面(回路非形成面)を研削する。
【0064】
このような裏面研削操作において、電子部品は、厚みが250μm以下になるまで研削される。必要に応じて、100μmより薄く削ることもある。研削する前の電子部品の厚みは、電子部品の直径、種類等により適宜決められ、研削後の電子部品の厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。
ここで、厚みが250μm以下になるまで電子部品を薄く研削する場合に電子部品の反りが発生しやすくなるが、本実施形態に係る粘着性フィルム100を用いれば、この電子部品の反りを抑制することが可能となる。
したがって、本実施形態に係る電子装置の製造方法において、研削工程(B)では、電子部品の反りを抑制しながら、電子部品の厚みが250μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下になるまで電子部品の回路形成面側とは反対側の面の研削をおこなうことが可能である。
本実施形態に係る電子部品の厚みには、電極等の凹凸の高さは含まれない。すなわち、本実施形態に係る電子部品の厚みは、ウエハや基板の厚みをいう。
【0065】
裏面研削方式としては特に限定されないが、公知の研削方式を採用することができる。それぞれ研削は、水を電子部品と砥石にかけて冷却しながら行うことができる。必要に応じて、研削工程の最後に研削水を用いない研削方式であるドライポリッシュ工程を行うことができる。裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、弗化水素酸、硝酸、硫酸、酢酸等の単独若しくは混合液からなる酸性水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着性フィルム100を貼着した状態で電子部品を浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、電子部品の裏面に生じた歪みの除去、電子部品のさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。
【0066】
(工程(C))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、研削工程やケミカルエッチング終了後、粘着性フィルム100を電子部品表面から剥離する剥離工程(C)をおこなってもよい。この一連の操作は、人手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置により行うことができる。
粘着性フィルム100を剥離した後の電子部品の表面は、必要に応じて洗浄してもよい。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、電子部品の表面の汚染状況により適宜選択することができる。
【0067】
(その他の工程)
工程(A)~工程(C)を行った後、電子部品をダイシングして個片化し、半導体チップを得る工程や、得られた半導体チップを回路基板に実装する工程等をさらに行ってもよい。これらの工程は、公知の情報に基づいておこなうことができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
粘着性フィルムの作製に関する詳細は以下の通りである。
【0070】
<凹凸吸収性樹脂層形成用の樹脂>
樹脂1:エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、商品名:タフマーP0275、密度:861kg/m3、メルトフローレート(190℃):2.9g/10分)
樹脂2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル社製、商品名:エバフレックスEV170、酢酸ビニル含量:33質量%、密度:960kg/m3、メルトフローレート(190℃):1g/10分)
樹脂3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル社製、商品名:エバフレックスEV150、酢酸ビニル含量:33質量%、密度:960kg/m3、メルトフローレート(190℃):30g/10分)
【0071】
<粘着剤ポリマー(アクリル系樹脂)>
アクリル酸エチル49質量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル20質量部、アクリル酸メチル21質量部、メタクリル酸グリシジル10質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合した。得られた混合物を、トルエン65質量部および酢酸エチル50質量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、得られた溶液を冷却し、冷却した溶液にキシレン25質量部、アクリル酸5質量部、およびテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.5質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で32時間反応させ、粘着剤ポリマー溶液を得た。
【0072】
<粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液>
粘着剤ポリマー(固形分)100質量部に対して、光開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF社製、商品名:イルガキュア651)7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名:オレスターP49-75S)1質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社製、商品名:アロニックスM-400)12質量部を添加し、粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液を得た。
【0073】
[実施例1]
凹凸吸収性樹脂層となるタフマーP0275(80質量部)およびエバフレックスEV170(20質量部)をドライブレンドした。次いで、基材層となるポリエチレンテレフタレートフィルム(50μm)上に、単軸押出機を用いて、上述の凹凸吸収性樹脂のドライブレンド物を厚さ350μmとなるように、押出しラミネートし、基材層と凹凸吸収性樹脂層の積層フィルムを得た。
【0074】
次いで、粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液をシリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(38μm)に塗布し、次いで、乾燥させて、厚み40μmの粘着性樹脂層を形成した。次いで、得られた粘着性樹脂層を上述の積層フィルムの凹凸吸収性樹脂層側に貼り合わせることで、粘着性フィルムを得た。得られた粘着性フィルムについて、以下の各評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0075】
<評価>
(1)基材層の熱収縮率
JIS C2151に準拠し、基材層を150℃で30分間熱処理し、100×(L0-L1)/L0により基材層の熱収縮率を算出した。ここで、熱処理前の基材層10のMD方向の長さをL0とし、150℃で30分間熱処理した上で、室温に冷却した基材層10のMD方向の長さをL1とした。
【0076】
(2)凹凸吸収性樹脂層の70℃における貯蔵弾性率G’
凹凸吸収性樹脂層を厚さ2mmになるように重ね合わせ、次のような条件でプレス成形を行った。得られたプレスシートをφ25mmの円形に切り出し、試験片とした。
<プレス条件>
加熱温度:200℃、予熱時間:2分
本加圧荷重:15MPa、本加圧時間:2分
冷却温度:20℃、冷却時間:3分
次いで、動的粘弾性測定装置(ティーエーインスツルメンツ社製、製品名:ARES-G2)を用いて、得られた試験片を直径25mmのパラレルプレートに挟み、昇温速度5℃/分、温度範囲40℃~150℃、角周波数6.3rad/s、ねじりモードの条件での動的粘弾性の温度依存性を測定した。
得られたグラフから、70℃での凹凸吸収性樹脂層の貯蔵弾性率G’をそれぞれ求めた。
【0077】
(3)凹凸吸収性樹脂層の融点(Tm)および融解熱
凹凸吸収性樹脂層の融点(Tm)および融解熱は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、示差走査型熱量計(SII社製、製品名:X-DSC7000)によって測定した。試料約10mgをアルミパンの中に入れ、30℃から230℃まで10℃/分で昇温した後(1st加熱)、5分間保持した。次いで、-100℃まで10℃/分で冷却し、5分間保持した後、再度230℃まで10℃/分で昇温した(2nd加熱)。横軸に温度、縦軸にDSCをとった際の2nd加熱時のグラフにおいて、吸熱ピークから融点(Tm)および融解熱を求めた。融点は吸熱ピークのピークトップを与える温度から、融解熱は吸熱ピークの面積からそれぞれ求めた。
【0078】
(4)バンプ吸収径評価
図2はバンプ吸収径を説明するための模式図である。バックグラウンド用保護テープ貼り付け装置(日東精機社製、DR3000II)を用いて、粘着性フィルム100を8インチのバンプウエハ200(はんだバンプ250、バンプ高さ:200μm、バンプ径:270μm、バンプピッチ:400μm)に貼り付けた(テーブル温度:70℃、ラミネート荷重:90%、ラミネート速度:2mm/s)。得られた粘着性フィルム貼付ウエハを光学顕微鏡(オリンパス社製、MX61L)で観察し、画像計測モードによって浮きが観測される部位から粘着性フィルムのバンプ吸収径Dを測定した。
バンプ吸収径Dは小さいほうが周囲の浮きが小さく、バンプ吸収性に優れることを意味する。
【0079】
(5)研削後の半導体ウエハの反り量
バックグラウンド用保護テープ貼り付け装置(日東精機製、DR3000II)を用いて、上記粘着性フィルムを12インチのミラーシリコンウエハに貼り付けた(テーブル温度:70℃、ラミネート荷重:90%、ラミネート速度:2mm/s)。得られた粘着性フィルム貼付ウエハをグラインダ/ポリッシャ装置(ディスコ社製、DGP8760)を用いて、シリコンウエハを厚さ50μmまで研削した。得られた研削後の粘着性フィルム貼付ウエハを粘着性フィルムが上側になるように平坦な場所に置き、反り上がった距離を測定した。
【0080】
[実施例2]
凹凸吸収性樹脂層となるタフマーP0275およびエバフレックスEV170の配合を表1に示す値とした以外は実施例1と同様にして、粘着性フィルムを作製した。また、実施例1と同様に各評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3]
凹凸吸収性樹脂層となるタフマーP0275およびエバフレックスEV170の配合を表1に示す値とした以外は実施例1と同様にして、粘着性フィルムを作製した。また、実施例1と同様に各評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0082】
[比較例1]
凹凸吸収性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としてエバフレックスEV150を用いた以外は実施例1と同様にして、粘着性フィルムを作製した。また、次に示す(2)凹凸吸収性樹脂層の70℃における貯蔵弾性率G’を除いて、実施例1と同様に各評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(2)凹凸吸収性樹脂層の70℃における貯蔵弾性率G’
エバフレックスEV150のペレットを厚さ2mmになるように、次のような条件でプレス成形を行った。得られたプレスシートをφ25mmの円形に切り出し、試験片とした。
<プレス条件>
加熱温度:180℃、予熱時間:2分
本加圧荷重:15MPa、本加圧時間:2分
冷却温度:20℃、冷却時間:3分
次いで、動的粘弾性測定装置(ティーエーインスツルメンツ社製、製品名:ARES-G2)を用いて、得られた試験片を直径25mmのパラレルプレートに挟み、昇温速度5℃/分、温度範囲40℃~150℃、角周波数6.3rad/s、ねじりモードの条件での動的粘弾性の温度依存性を測定した。
得られたグラフから、70℃での凹凸吸収性樹脂層の貯蔵弾性率G’を求めた。
【0083】
【0084】
ここで、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が10℃以上50℃以下の範囲にある凹凸吸収性樹脂層を用いた実施例1~3の粘着性フィルムを用いた場合、研削後の半導体ウエハの反り量が小さく、良好な結果であった。また、実施例の粘着性フィルムのバンプ吸収径はバンプウエハのバンプ径270μmに近かった。すなわち、実施例の粘着性フィルムは凹凸吸収性にも優れていた。
以上から、基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備え、凹凸吸収性樹脂層の融点(Tm)が10℃以上50℃以下の範囲にある本実施形態に係る粘着性フィルム100は、研削後の半導体ウエハの反りを抑制することが可能であるとともに凹凸吸収性にも優れていることが理解できる。
これに対し、凹凸吸収性樹脂層の融点(Tm)が50℃を超える比較例1の粘着性フィルムは研削後の半導体ウエハの反り量が大きく、研削後の半導体ウエハの反りを抑制できないことが理解できる。また、ウエハのバンプ径よりも70μm大きなバンプ吸収径が観察された。すなわち、比較例の粘着性フィルムは、実施例の粘着性フィルムよりも凹凸吸収性に劣っていることが理解できる。
【0085】
この出願は、2018年4月24日に出願された日本出願特願2018-083419号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。