(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】湾曲したメディア経路を有するモジュラプリンタ用の保守モジュール構成
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230329BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2020523714
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2018075108
(87)【国際公開番号】W WO2019086163
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-13
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】プロファカ,マーク
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059597(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014208893(DE,A1)
【文献】特開2015-058673(JP,A)
【文献】特表2016-538157(JP,A)
【文献】特開平02-194967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0122107(US,A1)
【文献】特開2014-226938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 29/00
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディア供給方向に沿って印刷メディアを供給するための凸状に湾曲したメディア経路において、前記湾曲したメディア経路は先端部、前記先端部の上流の第1の部分、及び前記先端部の下流の第2の部分を有する、凸状に湾曲したメディア経路と、
印刷シャーシ上に装着された複数のプリントヘッドにおいて、前記複数のプリントヘッドは、前記湾曲したメディア経路に対して半径方向に配置され、前記第1の部分の上に印刷するために位置付けられた第1のプリントヘッド、及び前記第2の部分の上に印刷するために位置付けられた第2のプリントヘッドを含む、複数のプリントヘッドと、
前記複数のプリントヘッドをキャッピングするための複数のキャッパにおいて、各キャッパは、それぞれのプリントヘッドの1長手方向側面に位置付けられ、各キャッパは、キャッピングした位置とキャッピングしていない位置との間を横方向に動くことができる、複数のキャッパと、
保守位置と印刷位置との間で前記プリントヘッドを上下させるためのリフト機構とを含み、
それぞれのキャッピングしていない位置において、第1のキャッパは前記第1のプリントヘッドの下流に位置付けられ、第2のキャッパは前記第2のプリントヘッドの上流に位置付けられ、
前記第1のキャッパ及び前記第2のキャッパは、前記第1のプリントヘッド及び前記第2のプリントヘッドをキャッピングするために前記先端部から離れて反対方向に移動可能であり、
前記複数のキャッパは、前記湾曲したメディア経路に関連して固定して装着された保守シャーシ上に装着され、
前記リフト機構は、前記保守シャーシに関連して前記印刷シャーシを動かすことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタにおいて、前記印刷シャーシは、その上に装着された複数の印刷モジュールを含み、各印刷モジュールはそれぞれ1つの前記プリントヘッドを含むことを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1に記載のプリンタにおいて、前記リフト機構は、前記印刷シャーシ及び前記プリントヘッドを前記保守シャーシに対して垂直に移動させることを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項1に記載のプリンタにおいて、前記保守シャーシは、前記複数のプリントヘッドを保守するために複数の保守モジュールを含み、前記保守モジュールは、前記湾曲したメディア経路に対して半径方向に配置されることを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリンタにおいて、各保守モジュールはそれぞれ1つの前記キャッパを含むことを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のプリンタにおいて、各保守モジュールは、前記キャッピングした位置と前記キャッピングしていない位置とのそれぞれの間で前記キャッパを横方向に
展開又は格納させるための伸長機構を含むことを特徴とするプリンタ。
【請求項7】
請求項5に記載のプリンタにおいて、各保守モジュールは、それぞれのプリントヘッドを長手方向に拭き取るためのワイパキャリッジを更に含むことを特徴とするプリンタ。
【請求項8】
請求項7に記載のプリンタにおいて、各保守モジュールは、前記キャッパを収納する長脚及び前記ワイパキャリッジを収納する短脚を有するL字形枠を含むことを特徴とするプリンタ。
【請求項9】
請求項8に記載のプリンタにおいて、前記第2のキャッパを有する第2の保守モジュールは、前記第1のキャッパを有する第1の保守モジュールに対して180度だけ
回転した状態で配置されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
請求項8に記載のプリンタにおいて、各プリントヘッドは、前記印刷位置及び前記保守位置のそれぞれにおいてそれぞれの保守モジュールによって画定された空間を通って
展開又は格納することを特徴とするプリンタ。
【請求項11】
請求項1に記載のプリンタにおいて、前記湾曲したメディア経路を画定する複数のローラを有する支持シャーシを更に含み、前記保守シャーシは前記支持シャーシ上に固定して装着されることを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット・デジタル印刷機用の印刷エンジンに関する。本発明は、主に印刷モジュールの配列を短期間の印刷ジョブに適切な低コストのカラーインクジェット印刷機に一体化するために開発されてきた。
【背景技術】
【0002】
Memjet(登録商標)技術を用いるインクジェットプリンタは、デスクトッププリンタ、デジタル・インクジェット印刷機及び大型プリンタを含む、多くの異なる印刷形式用に市販されている。Memjet(登録商標)プリンタは、典型的には使用者が交換可能な1つ又は複数の固定インクジェット式プリントヘッド・カートリッジを含む。例えばデスクトップ・ラベルプリンタは、使用者が交換可能な単一の多色プリントヘッド・カートリッジを含み、高速ラベルプリンタは、メディア供給方向に沿って位置合わせされた使用者が交換可能な複数の単色プリントヘッド・カートリッジを含み、大型プリンタは、大型ページ幅に広がるようにずらして重ねた配置における使用者が交換可能な複数のプリントヘッド・カートリッジを含む。
【0003】
その内容が参照により本明細書に組み込まれた、2017年5月1日に出願された米国特許出願第15/582,998号明細書は、N×Mの二次元配列の印刷モジュールを含む市販のページワイド印刷システムについて記載している。モジュラ内のN×M配列のプリントヘッドの次元及び数を選択するためにOEM顧客に柔軟性を提供するので、費用効果があるキット形態は、オフセット印刷システムによって従来機能する広範囲の市販のデジタル印刷市場に接近することができる。
【0004】
典型的には、ウェブ系プリンタは、凸状に湾曲したメディア経路の上に供給した印刷メディア上に印刷する。メディア経路に凸状湾曲を付与することにより、ウェブは、1組の半径方向に位置付けられたローラの上に容易に引張することができる。湾曲したメディア経路では、各プリントヘッドはローラを中心に半径方向に配置することも必要である。その上プリントヘッドの保守を行うために、プリントヘッドは、理想的には湾曲したメディア経路に対して半径方向に持ち上げられるべきである。これにより、プリントヘッドと保守構成要素(例えばキャッパ及びワイパ)との間の距離が、プリンタ内の全てのプリントヘッドに一致することが確実になる。米国特許出願第15/582,998号明細書は、それによってプリントヘッドが湾曲したメディア経路に対して半径方向に持ち上げられ得る1つの手段について記載しており、各プリントヘッドは、保守シャーシ上に装着された専用リフト機構を有するそれぞれの印刷バー上に装着される。
【0005】
しかし各プリントヘッド(又は印刷バー)がそれ自体の専用リフト機構を有する必要なしに、一般的なリフト機構を同時に使用して印刷エンジン内で半径方向に配置されたプリントヘッドを持ち上げることが好都合である。その内容が参照により本明細書に組み込まれた、2017年9月26日に出願された米国仮特許出願第62/563,584号明細書は、湾曲したメディア経路を中心に半径方向に配置された4つのプリントヘッドの配列用の一般的なリフト機構を有する印刷エンジンについて記載している。米国仮特許出願第62/563,584号明細書に記載されたリフト機構は、各印刷モジュールを半径方向に動かす印刷モジュールの装着構成と組み合わせたシザーリフト機構を用いる。それにもかかわらずこの印刷モジュールの装着構成は、印刷エンジンの設計に複雑さを加える。
【0006】
半径方向に配置したプリントヘッドを一般的なリフト機構を使用して保守することができる印刷エンジンを提供することが望ましいはずである。印刷エンジン内に複雑な印刷モジュールの装着構成を回避することが更に望ましいはずである。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、
メディア供給方向に沿って印刷メディアを供給するための凸状に湾曲したメディア経路において、湾曲したメディア経路は、先端部、先端部の上流の第1の部分、及び先端部の下流の第2の部分を有する、凸状に湾曲したメディア経路と、
湾曲したメディア経路に対して半径方向に配置された複数のプリントヘッドにおいて、複数のプリントヘッドは、第1の部分の上に印刷するために位置付けられた第1のプリントヘッド、及び第2の部分の上に印刷するために位置付けられた第2のプリントヘッドを含む、複数のプリントヘッドと、
複数のプリントヘッドをキャッピングするための複数のキャッパにおいて、各キャッパは、それぞれのプリントヘッドの1長手方向側面に位置付けられ、各キャッパは、キャッピングした位置とキャッピングしていない位置との間を横方向に動くことができる、複数のキャッパと、
保守位置と印刷位置との間でプリントヘッドを上下させるためのリフト機構とを含み、
それぞれがキャッピングしていない位置において、第1のキャッパは第1のプリントヘッドの下流に位置付けられ、第2のキャッパは第2のプリントヘッドの上流に位置付けられる、プリンタが提供される。
【0008】
好ましくは、複数のプリントヘッドは印刷シャーシ上に装着される。
【0009】
好ましくは、印刷シャーシは、その上に装着された複数の印刷モジュールを含み、各印刷モジュールはそれぞれ1つのプリントヘッドを含む。
【0010】
好ましくは、複数のキャッパは、湾曲したメディア経路に関連して固定して装着された保守シャーシ上に装着され、リフト機構は保守シャーシに関連して印刷シャーシを動かす。
【0011】
好ましくは、リフト機構は、印刷シャーシ及びプリントヘッドを保守シャーシに対して垂直に移動させる。
【0012】
好ましくは、保守シャーシは、複数のプリントヘッドを保守するために複数の保守モジュールを含み、保守モジュールは、湾曲したメディア経路に関して半径方向に配置される。
【0013】
好ましくは、各保守モジュールはそれぞれ1つのキャッパを含む。
【0014】
好ましくは、各保守モジュールは、キャッピングした位置とキャッピングしていない位置とのそれぞれの間でキャッパを横方向に伸縮させるための伸長機構を含む。
【0015】
好ましくは、各保守モジュールは、それぞれのプリントヘッドを長手方向に拭き取るためのワイパキャリッジを更に含む。
【0016】
好ましくは、各保守モジュールは、キャッパを収納する長脚及びワイパキャリッジを収納する短脚を有するL字形枠を含む。
【0017】
好ましくは、第2のキャッパを有する第2の保守モジュールは、第1のキャッパを有する第1の保守モジュールに対して180度だけ回転される。
【0018】
好ましくは、各プリントヘッドは、印刷位置及び保守位置のそれぞれにおいてそれぞれの保守モジュールによって画定された空間を通って伸縮する。
【0019】
一部の実施形態では、プリンタは、湾曲したメディア経路を画定する複数のローラを有する支持シャーシを更に含み、保守シャーシは支持シャーシ上に固定して装着される。
【0020】
第2の態様では、
メディア供給方向に沿って印刷メディアを供給するための凸状に湾曲したメディア経路を画定する複数のローラを有する支持シャーシにおいて、湾曲したメディア経路は、先端部、先端部の上流の第1の部分、及び先端部の下流の第2の部分を有する、支持シャーシと、
支持シャーシに関連して固定して装着された複数の保守モジュールと、
支持シャーシの上に位置付けられた印刷シャーシにおいて、印刷シャーシは、湾曲したメディア経路に対して半径方向に配置された複数の印刷モジュールを含み、複数の印刷モジュールは、第1の部分の上に印刷するために位置付けられた第1のプリントヘッドを有する第1の印刷モジュール、及び第2の部分の上に印刷するために位置付けられた第2のプリントヘッドを有する第2の印刷モジュールを含む、印刷シャーシと、
保守位置と印刷位置との間で支持シャーシに対して保守シャーシを直線的に上下させるためのリフト機構とを含み、
各保守モジュールは、それぞれのプリントヘッドをキャッピングするためのキャッパを含み、各キャッパは、それぞれのプリントヘッドの1長手方向側面に位置付けられ、各キャッパは、キャッピングした位置とキャッピングしていない位置との間で横方向に動くことができ、
第1のキャッパは、そのキャッピングしていない位置で第1のプリントヘッドの下流に位置付けられ、
第2のキャッパは、そのキャッピングしていない位置で第2のプリントヘッドの上流に位置付けられる、印刷エンジンが提供される。
【0021】
第1の態様に関する好ましい態様は、当然のことながら第2の態様に等しく適用できる。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「インク」はあらゆる印刷流体を意味するとみなされ、印刷流体はインクジェット・プリントヘッドから印刷されてもよい。インクは、着色剤を含有してもしなくてもよい。従って用語「インク」は、従来の染料系インク又は顔料系インク、赤外線インク、固着剤(例えばプレコート及び仕上剤)、3D印刷流体などを含んでもよい。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「装着された」は、直接装着すること及び介在部を介して間接的に装着することの両方を含む。
【0024】
次に本発明の実施形態について、添付図面を参照して例のみとして記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、印刷位置における印刷エンジンの斜視図である。
【
図3】
図3は、保守位置にある
図1に示された印刷エンジンの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された印刷エンジンの概略側面図である。
【
図5】
図5は、比較印刷エンジンの概略側面図である。
【
図6】
図6は、拭き取り操作中の保守モジュールの斜視図である。
【
図7】
図7は、拭き取り操作中の保守モジュールの斜視図である。
【
図9】
図9は、プリントヘッド・カートリッジが分離された印刷エンジンの斜視図である。
【
図10】
図10は、印刷モジュールのインク入口モジュールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
印刷エンジン
図1~3を参照すると、メディアウェブの上に全色印刷をするための印刷エンジン1が示されている。印刷エンジン1は、個々の顧客の要件を満たすデジタル・インクジェット印刷機などのプリンタにOEMカスタマイズ用に設計されている。印刷エンジン1は、対向する支持シャーシの側板14の間に回転可能に装着された、1組の5つのガイドローラ12A~E(総称して「ガイドローラ12」)を有するメディア支持シャーシ10を含む。ガイドローラ12は、湾曲した(凸状)メディア供給経路を画定するように配置され、湾曲した(凸状)メディア供給経路は、ガイドローラの上にメディアウェブを引張するのに最適である。従来のオフセット印刷機(図示せず)に通常使用されるようなメディア供給機構は、ガイドローラ12の下に位置付けられた入力ローラ15に向かってメディアウェブを供給し、次いで適切な引張で印刷エンジン1から遠ざけるために使用されてもよい。
【0027】
中央のガイドローラ12Cは、メディア供給経路の先端部(
図2に破線Aで表示されている)の付近にある一方で、2つの上流のガイドローラ12A及び12Bは、先端部の1側部(上流)のメディア供給経路の第1の部分に位置付けられ、2つの下流のガイドローラ12D及び12Eは、先端部の反対側(下流)のメディア経路の第2の部分に位置付けられている。
【0028】
1組の4つの保守モジュール115A~D(総称して「保守モジュール115」)は、メディア支持シャーシ10に関連して固定して装着される(例えばその内容が参照により本明細書に組み込まれた、米国仮特許出願第62/563,584号明細書に記載されたような保守シャーシを介して固定して装着される)。加えて印刷シャーシ50は、メディア支持シャーシ10に関連して可動に装着され、4つの印刷モジュール200A~D(総称して「印刷モジュール200」)を支持し、印刷モジュール200は、対向する印刷シャーシ側板52の間に固定して装着され、印刷エンジン1の長さに沿って位置合わせされる。
【0029】
印刷シャーシ50は、リフト機構を用いてメディア支持シャーシ10に関連して垂直移動軸に沿って動くことができる(
図1及び3で両矢印Lによって概略的に表示されている)。当業者は、あらゆる適切なリフト機構が相対移動運動を提供するために用いられてもよいことを理解するであろう。例えば印刷シャーシ50及び支持シャーシ10を相互接続するシザー機構又はピストン伸長機構はどちらも適する。
【0030】
2つの第1のモジュール200A及び200Bは、メディア供給経路の第1の部分(先端部の上流)の上に印刷するために位置付けられ、2つの第2の印刷モジュール200C及び200Dは、メディア供給経路の第2の部分(先端部の下流)の上に印刷するために位置付けられる。
図1に示されたように、複数の(4つの)単色印刷モジュール200は、4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のそれぞれのために拡張可能なページワイド配列を提供するために、メディア供給経路に沿って積み重ねられる。しかしより少ない数又はより多い数の印刷モジュール200が印刷エンジン1に用いられてもよい(例えば追加のスポットカラー・インクジェット・モジュール)ことが理解されよう。更に印刷エンジン1は、印刷モジュール200の代替積層構成(例えばより広いメディア供給経路にわたってずれて重ねる)を用いてもよい。
【0031】
各印刷モジュール200は、印刷モジュールのそれぞれのプリントヘッド216を保守するために対応する保守モジュール115を有する。各保守モジュール115は、それぞれの印刷モジュール200の片側に沿って長手方向に延在する長脚117、及び印刷モジュールの1端に位置付けられるように長脚から横方向に延在する短脚119を含む、概ねL字形の枠120を有する。保守モジュール115の長脚117は、印刷モジュール200に向かって、及び印刷モジュール200から遠ざかって横方向に伸長可能なキャッパ130を収納する一方で、短脚119は、プリントヘッド216を拭き取るために印刷モジュールに沿って長手方向に可動のワイパキャリッジ122を収納する。保守モジュール115のキャッピング操作及び拭き取る操作は、
図6及び7に関連して以下により詳細に記載される。
【0032】
図2に最もよく示されているように、2つの第1の保守モジュール115A及び115Bは、それらの対応する第1の印刷モジュール200A及び200Bの比較的下流に位置付けられたそれらの長脚117(それぞれのキャッパ130を収納する)を有し、2つの第2の保守モジュール115C及び115Dは、それらの対応する第1の印刷モジュール200C及び200Dの比較的上流に位置付けられたそれらの長脚117(それぞれのキャッパ130を収納する)を有する。更に第2の保守モジュール115C及び115Dは、この反対の構成を達成するために第1の保守モジュール115A及び115Bに対して180度だけ回転される。それにもかかわらず第1の保守モジュール115A及び115Bは、第2の保守モジュール115C及び115Dと同一であり、印刷モジュール200は全て同じ配向を有する。
【0033】
湾曲したメディア供給経路を中心とした印刷モジュール200及び保守モジュール115の相対配置は、
図4及び5を参照して次に説明するように、好都合なことにローラ支持シャーシ10に関連して印刷シャーシ50の直線移動を介してプリントヘッドをキャッピングする(且つ拭き取る)ことができる。
図4及び5に示された概略的な印刷エンジンでは、凸状に湾曲したメディア供給経路3は、保守位置における相対的なキャッピング距離を詳述し、本発明の利点を実証するために誇張した湾曲で示されている。
【0034】
まず
図4を見ると、印刷エンジン1は、4つの印刷モジュール200A~Dが湾曲したメディア経路3を中心に間隔を空けて概略的に示されている。印刷モジュール200A~Dは、印刷位置を実線で、また上昇した保守位置を破線で示されている。各保守モジュール115は、2つのそれぞれの印刷/保守モジュールの対の間を一定に分離して、そのそれぞれの印刷モジュール200から所定の距離に位置付けられている。上(
図4)に記載したように保守モジュール115が印刷エンジン1内に配置された状態で、各印刷モジュール200は、保守位置に垂直に移動した時にそのそれぞれの保守モジュールに向かって動くことがわかる。保守モジュール115Aは、印刷モジュール200Aが保守位置にある時に理想的なキャッピング距離131A(すなわちプリントヘッドをキャッピングした時にキャッパ130によって動かされる横方向距離)を有する。保守モジュール115B用のキャッピング距離131Bは先端部Aに若干接近して増加するが、依然としてそのそれぞれのプリントヘッドをキャッピングするために許容可能な公差内にある。下流の保守モジュール115C及び115Dについては、キャッピング距離131C及び131Dは、保守モジュール115C及び115Dの逆の配置によって、キャッピング距離131B及び131Aのそれぞれと同じである。それゆえ印刷モジュール200の単純な直線移動は、印刷モジュール用のより複雑な半径方向の運動機構を必要とすることなく、十分にキャッピングする(且つ拭き取る)ために印刷モジュールを位置付けるために使用されてもよい。従ってリフト機構L及び/又は印刷モジュール用の装着配置は、印刷エンジン1内で単純化され得る。
【0035】
図5は、比較印刷エンジン80を概略的に示し、保守モジュール115は印刷エンジン80によって各印刷モジュール200の配列で同じ側面に位置付けられている。キャッピング距離131A~Dは、保守モジュール115Aから保守モジュール115Dに向かって連続的に増加することがわかる。具体的には、キャッピング距離131C及び131Dは、印刷モジュール200C及び200D上に装着されたプリントヘッドをキャッピングすることが実現不可能である程度まで増加している。
【0036】
保守モジュール115
保守モジュール115は、その内容が参照により本明細書に組み込まれた、「複数のプリントヘッド用のL字形保守モジュールを有するプリンタ」の名称で2017年5月1日に出願された、本出願人の米国特許出願第15/583,006号明細書に概ね記載されている通りである。
【0037】
各保守モジュール115は、対向する支持シャーシの側板14の間に固定して装着され、空間又は開口を画定し、それぞれの印刷モジュール200は、空間又は開口を通って印刷位置(
図1)と保守位置(
図3)との間でそれぞれ伸縮することができる。従って印刷位置では、各プリントヘッド216はメディアウェブから適切に離間して位置付けられる。
【0038】
図6及び7を参照すると、保守モジュール115のL字形枠120は、基板118Aを含み、短側板118B及び長側板118Cがそこから上方に延在する。短脚119は、短側板118B及び基板118Aの対応する部分を含み、長脚117は、長側板118C及び基板118Aの対応する部分を含む。L字形枠120は、プリントヘッド216を拭き取るためのワイパキャリッジ122、及びプリントヘッドをキャッピングするためのキャッパ130を収納する。
【0039】
図7に示されたように、ワイパキャリッジ122はその定位置又は保管位置にあり、それによってワイパはL字形枠120の短脚119内に位置付けられる。
図6に示されたように、キャッパ130はその定位置又は保管位置にあり、それによってキャッパはL字形枠120の長脚117内に位置付けられる。
【0040】
ワイパキャリッジ122は拭き取り材料123の長さを含み、拭き取り材料123は、プリントヘッド216を拭き取るために印刷モジュール200の長さに沿って長手方向に動く。ワイパキャリッジ122は、1つ又は複数のオーバーヘッドアーム125によって支持され、オーバーヘッドアーム125は、長側板118Cに固定され、枠120の長脚119に沿って延在するキャリッジレール126内で摺動的に係合される。
図6では、ワイパキャリッジ122はその定位置から動き、長手方向の拭き取る操作の途中にある。キャッパ130はその保管位置にあり、オーバーヘッドアーム125は、ワイパキャリッジ122が拭き取る動きをしている間にキャッパの上に架橋していることがわかる。ワイパキャリッジ122は、双方向性キャリッジモータ128及びベルト駆動機構129によって駆動される無端ベルト127を用いて移動する。拭き取り材料のウェブを運ぶキャリッジを有する型のプリントヘッド・ワイパは、例えば米国特許第4,928,120号明細書に記載されている。
【0041】
キャッパ130は、1対のヒンジ式アーム132を介してL字形枠120の長側板118Cに装着され、ヒンジ式アーム132は、米国特許出願第15/583,006号明細書に記載されたような適切な収縮機構140を用いて、プリントヘッド216によって占有された空間の中に、また空間から遠ざかってキャッパを横方向に伸縮させる。
図7では、キャッパ130は両方のアーム132が伸長した状態でそのキャッピング位置に示されている一方で、ワイパキャリッジ122は、その定位置に保管されている。
【0042】
キャッピング操作については、印刷シャーシ50は、まず印刷位置(
図1)から移動位置に持ち上げられる。印刷シャーシがその最も高い移動位置にある状態で、キャッパ130は伸長され、次いで印刷シャーシは、プリントヘッド216がそのそれぞれのキャッパの外周シール176によってキャッピングされるように保守位置(
図3)に緩やかに下げられる。逆の工程は、印刷エンジン1を印刷位置に戻す構成をする。
【0043】
同様に拭き取り操作については、印刷シャーシ50は、印刷位置から持ち上げられ、まず移動位置に上昇される。印刷シャーシ50がその最も高い移動位置にある状態で、ワイパキャリッジ122は、プリントヘッド216の真下に動き、印刷シャーシは、拭き取り材料123がプリントヘッドのノズル板に接触するように保守位置に緩やかに下げられる。典型的には、拭き取り材料123は、印刷シャーシ50が下がった時に緩い公差を可能にするように弾性的に装着される。一旦拭き取り材料123がプリントヘッド216と係合すると、ワイパキャリッジ122は、プリントヘッドのノズル板からインク及び/又はデブリを拭き取るためにプリントヘッドに沿って縦に移動される。
【0044】
印刷モジュール
次に印刷モジュール215について、
図8~10を参照に更に詳しく記載する。印刷モジュール215は、交換可能なプリントヘッド・カートリッジ252と係合した供給モジュール250を含み、プリントヘッド・カートリッジ252はプリントヘッド216を含む。プリントヘッド・カートリッジ252は、例えばその内容が参照により本明細書に組み込まれた、2017年5月1日に出願された、本出願人の米国特許出願第15/583,099号明細書に記載された型からなってもよい。
【0045】
供給モジュール250は、プリントヘッド216に電力及びデータを供給するための電気回路を収納する本体254を含む。ハンドル255は、ユーザが印刷バーシャーシ200のスリーブ208の1つに抜き差しするのを容易にするために、本体254の上部から延在する。
【0046】
本体254は、側面に本体の対向する側壁に位置付けられたインク入口モジュール256及びインク出口モジュール258がある。インク入口モジュール及びインク出口モジュールのそれぞれは、プリントヘッド・カートリッジ252の補完的入口結合部261及び出口結合部263と係合した、それぞれのインク結合部257及び259を有する。プリントヘッド・カートリッジ252は、インク送達システム(図示せず)からインク入口モジュール256を介してインクを供給され、インク出口モジュール258を介してインク送達システムにインクを循環して戻す。
【0047】
インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258は、それぞれが独立して本体254に関連してプリントヘッド・カートリッジ252に向かって、且つプリントヘッド・カートリッジ252から遠ざかって摺動して動くことができる。インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258が摺動して動くことにより、プリントヘッド・カートリッジ252を供給モジュール250に流体結合させ、及び供給モジュール250から流体分離させることができる。インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258のそれぞれは、レバー265の形のそれぞれのアクチュエータを有し、レバー265はモジュールを摺動して移動させる。各レバー265は、プリントヘッド216に直角な軸を中心に回転し、1対のピニオン281に作動可能に連結される。ピニオン281の回転により、入口モジュール256及び出口モジュール258は、上方に延在し、本体254に関連して固定して装着された補完的ラック283との係合を介して本体254に対して横方向に摺動運動する。このレバーの配置により、印刷モジュール215の全幅は最小になる。
図8及び10に示されたように、インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258はどちらも下がっており、プリントヘッド・カートリッジ252は供給モジュール250に流体結合されている。
図9に示されたように、インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258はどちらも上がっており、プリントヘッド・カートリッジ252は供給モジュール250から流体分離されている。
【0048】
依然として
図9を参照すると、供給モジュール250は、本体254の下部から延在するクランプ板266を有する。本体254の下部は、追加としてプリントヘッド・カートリッジ252が供給モジュール250に結合された時に、プリントヘッド・カートリッジ上の補完的接点(図示せず)の列を介してプリントヘッド216に電力及びデータを供給するために電気接点267の列を有する。
【0049】
1組の基準ピン268は、クランプ板266からインク入口モジュール256及びインク出口モジュール258の摺動運動の方向に対して直角に延在する。プリントヘッド・カートリッジ252を設置するために、各基準ピン268は、プリントヘッド・カートリッジ252内に画定された補完的開口270と位置合わせされ、補完的開口270内に受領される。プリントヘッド・カートリッジ252は、クランプ板266に向かって基準ピン268の方向に摺動される。一旦プリントヘッド・カートリッジ252がクランプ板266と係合されると、ヒンジ271を介して本体254に連結されたヒンジ式クランプ273は、クランプ板に対してプリントヘッド・カートリッジ252を締め付けるために下方に回る。プリントヘッド・カートリッジ252は、ヒンジ式クランプ273上で締結具272によって適所に係止される。最後にインク入口モジュール256及びインク出口モジュール258は、プリントヘッド・カートリッジ252を供給モジュール250に流体結合させるために、レバー265の駆動を介して下方に摺動される。逆の工程は、供給モジュール252からプリントヘッド・カートリッジ252を除去するために使用される。記載されたように手動の除去及び挿入工程は、ユーザによりわずか数分内でデジタル印刷機の中断時間が最小で容易に清潔に実行できる。
【0050】
インク供給モジュール256は、インク送達システム(図示せず)の入口線から調整された圧力でインクを受領するように構成される。本発明に用いた印刷モジュール215との連結に使用するための適切なインク送達システムは、その内容が参照により本明細書に組み込まれた、本出願人の米国特許出願第15/582,979号明細書に記載されている。インク入口モジュール256は、インクリザーバ(図示せず)から入口線275を介してインクを受領するための入口ポート274を有する一方で、インク出口モジュール258は、出口線277を介してインクリザーバにインクを戻すための出口ポート276を有する。
【0051】
インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258は、プリントヘッド216で局部圧力を調整し、インク圧力変動を抑制し、プリントヘッドのプライミング操作及びデプライミング操作を可能にし、輸送のためにプリントヘッドを分離する、その他のための様々な構成要素を独立して収納する。
図10では、インク入口モジュール256は、インク入口モジュールのある特定の構成要素を見せるためにカバーを除去して示されている。例えばインク圧力センサ及びマイクロプロセッサを有する制御PCB278が示されており、マイクロプロセッサはプリントヘッド216で局部圧力を制御するための制御弁279にフィードバックを提供する。これらの構成要素及び他の構成要素は、インク入口モジュール256及びインク出口モジュール258内に収納されてもよいことが理解されよう。
【0052】
前述から、本発明は、好都合なことにそれによって半径方向に配置されたプリントヘッドの配列が、各プリントヘッド用のより複雑な半径方向に持ち上げる構成と対照的に、単純な垂直(直線的)リフト機構を使用して上昇位置においてキャッピングされ得る手段を提供することが理解されよう。
【0053】
当然のことながら、本発明は例として記載されているに過ぎず、細部の修正は、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲内で行ってもよいことが理解されよう。