(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】連続検体測定のための生体適合性コーティング
(51)【国際特許分類】
C12M 1/40 20060101AFI20230329BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20230329BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230329BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20230329BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230329BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20230329BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20230329BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20230329BHJP
C12Q 1/32 20060101ALI20230329BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20230329BHJP
A61B 5/1459 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C12M1/40 B
A61L31/10
A61L31/14 400
A61L31/04 110
A61L31/14
A61L27/16
A61L27/34
A61L27/50
A61L27/56
C12Q1/32
A61B5/1486
A61B5/1459
(21)【出願番号】P 2020545112
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2019054657
(87)【国際公開番号】W WO2019166394
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-10-20
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ ポン
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】Langmuir,2010年,vol.26, no.8,p.6019-6027
【文献】Biomaterials,2013年,vol.34, no.4,p.888-901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/40
A61L 31/10
A61L 31/14
A61L 31/04
A61L 27/16
A61L 27/34
A61L 27/50
A61L 27/56
C12Q 1/32
A61B 5/1486
A61B 5/1459
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性層によって少なくとも部分的に覆われたセンサモジュールを含む、検体を決定するためのバイオセンサであって、前記生体適合性層は、-CO-NR
1R
2側基(式中、R
1及びR
2は、-H及びC
1~C
6アルキルから独立して選ばれる)を有するポリマーを含み、
前記ポリマーは、式(III)、(IIIa)、(IIIb)及び/又は(IIIc):
【化1】
(上式中、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり
、mとnの合計は1であり、R
5はさらなるポリマー分子又は拡散膜の分子である)に示される化学構造を含み、
前記バイオセンサはインプラント可能である、
バイオセンサ。
【請求項2】
R
1及びR
2は-H及びC
1~C
3アルキルから独立して選ばれ
る、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項3】
R
1
及びR
2
はメチル、-H及びエチルから独立して選ばれる、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項4】
R
1
及びR
2
はメチルである、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項5】
-CO-NR
1R
2側基を有する前記ポリマーはコポリマーで
ある、請求項1~
4のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項6】
-CO-NR
1
R
2
側基を有する前記ポリマーは統計コポリマーである、請求項1~5のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項7】
nは0.5~0.99であり、mは0.01~0.5であり、mとnの合計は1である、請求項1~
6のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項8】
拡散膜をさらに含み、前記拡散膜は親水性ポリウレタンポリマーを含む、請求項1~
7のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記バイオセンサは、皮下にインプラント可能である、請求項1~
8のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項10】
前記検体は、グルコース、マレート、エタノール、アスコルビン酸、コレステロール、グリセロール、尿素、3-ヒドロキシブチレート、ラクテート、ピルベート、ケトン及びクレアチニンからなるリストから選ばれ
る、請求項1~
9のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項11】
前記検体は、グルコースである、請求項1~9のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項12】
前記検体の決定は連続グルコースモニタリングである、請求項1~9のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【請求項13】
検体を決定するためのインプラント可能なバイオセンサを製造するための方法であって、請求項1~
7のいずれか1項に特定された生体適合性層で前記バイオセンサを少なくとも部分的にコーティングすることを含む、方法。
【請求項14】
インプラント可能なバイオセンサを製造するための、請求項1~
7のいずれか1項に特定された生体適合性層の使用。
【請求項15】
対象における検体の連続決定のための方法であって、前記方法は請求項1~
12のいずれか1項記載のバイオセンサによって前記検体を決定することを含む、方法。
【請求項16】
前記連続決定は、同じバイオセンサを使用した、少なくとも1週間、
少なくとも2週間、
少なくとも3週間、
又は少なくとも4週間の決定である、請求項
15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生体適合性層によって少なくとも部分的に覆われたセンサモジュールを含む検体を決定するためのバイオセンサであって、前記生体適合性層は、-CO-NR1R2側基(式中、R1及びR2は-H及びC1~C6アルキルから独立して選ばれる)を有するポリマーを含む、バイオセンサに関する。本発明はさらに、前記バイオセンサを製造するための方法ならびに前記バイオセンサに関連する使用及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
生体液中の検体を測定するためのバイオセンサ、特に埋め込み用に設計されたセンサは、様々な機能を発揮しなければならず、一方で、センサは、例えば、細胞などの体液の特定の化合物などから干渉されずに特定の敏感な測定を提供しなければならない。この目的のために、バイオセンサは、頻繁に、特定の化合物を排除する膜で覆われ、それにより、低分子量の化合物のみが実際のセンサモジュールにアクセスすることができる。さらに、埋め込まれたセンサでは、患者が頻繁にセンサを交換するのを避けるために、測定を悪化させることなく長期間にわたって適所に存続できるセンサが存在することが好ましい。したがって、埋め込まれたセンサは、身体が埋め込まれたセンサを認識して拒絶することを回避するために、生体適合性ポリマーで覆われる。さらに、適切な生体適合性層は、体液の成分がポリペプチド又は細胞などの膜上に堆積するのを防止すべきであり、堆積は膜の細孔の閉塞をもたらし、ノイズの増加及び測定の信号強度の低下を引き起こすからである。
【0003】
特に、埋め込まれたバイオセンサ上にしばしば細胞層が形成し、これにより、例えばグルコースを含む、細胞層を通して容易に拡散できない分子の通過を妨げることが観察された。したがって、バリア細胞層の形成を妨害する膜を提供し、生物活性剤をバイオインターフェース膜に含めることにより、インプラント可能なデバイスの感受性領域を生物付着物から保護することが提案された(US2006/0198864A1)。さらに、ADAPT(商標)製剤などの生体適合性ポリマーは、バイオセンサの性能を向上させるために使用されてきた。Hu及び同僚は、電気化学誘導原子移動ラジカル重合(eATRP)を使用したpSBMA(ポリN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ-アクリルオキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン)をベースとする酵素系バイオセンサのための防汚性双性イオンコーティングを開発した(Huら、Langmuir, 2016, 32, 11763-11770)。Krishnan及び同僚は、親水性PEG化ポリマー、双性イオンポリマー、及び、オリゴ糖部分を組み込んだポリマーを含む抗生物付着活性を有する様々なポリマーについて、主に海洋コーティングの関係で議論している(Krishnanら、J. Mater. Chem., 2008, 18, 3405-3413)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それにもかかわらず、現在使用されている生体適合性ポリマー、例えば、インプラント型連続グルコースモニタリング(CGM)バイオセンサは比較的短い装着時間の後に、測定可能な汚染の兆候を示し始めることがある。
【0005】
解決すべき問題
したがって、本発明の目的は、特に汚染及びカプセル化プロセスに関する先行技術の欠点を少なくとも部分的に回避して、バイオセンサをコーティングするための改善された手段及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
この問題は、独立請求項の特徴を備えた本発明の手段及び方法によって解決される。独立した方法又は任意の組み合わせで実現できる好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
したがって、本発明は、生体適合性コーティングによって少なくとも部分的に覆われたセンサモジュールを含む、検体を決定するためのセンサであって、前記生体適合性コーティングは、-CO-NR1R2側基(式中、R1及びR2は-H及びC1~C6アルキルから独立して選ばれる)を有するポリマーを含む、センサに関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下で使用されるときに、「有する」、「備える」又は「含む」という用語、又はそれらの任意の文法上の変形は非排他的な様式で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴以外に、この関係で記載されているものに対してさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」及び「AはBを含む」という表現は、B以外に他の要素がAに存在しない状況(つまり、AはBのみで排他的になる)と、B以外に、要素C、要素CとD又はなおもさらなる要素などの1つ以上のさらなる要素が実体Aに存在する状況との両方を指す場合がある。
【0009】
さらに、以下で使用されるときに、「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より具体的に」、「詳細に」、「より詳細に」又は類似の用語は、さらなる可能性を制限することなく、任意的な特徴との組み合わせで使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意的特徴であり、いかなる方法でも特許請求の範囲を制限することが意図されない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を使用することによって実施されうる。同様に、「本発明の実施形態」又は同様の表現によって導入される特徴は、本発明のさらなる実施形態に関する制限なし、本発明の範囲に関する制限なし、そして、このようにして導入される特徴を本発明の他の任意的又は非任意的特徴と組み合わせる可能性に関する制限なしに、任意的特徴であることが意図される。
【0010】
本明細書において使用されるときに、「標準条件」という用語は、特に明記しない限り、IUPAC標準周囲温度及び圧力(SATP)条件、つまり、1つの実施形態において、温度25℃及び絶対圧力100kPaに関係し、さらに、1つの実施形態において、標準条件はpH7を含む。さらに、特に明記しない限り、「約」という用語は、関連分野で一般に受け入れられている技術的精度で示される値に関係し、1つの実施形態において、示された値±20%に関係し、さらなる実施形態において±10%、さらなる実施形態において±5%に関係する。さらに、「本質的に」という用語は、示された結果又は使用に影響を与える偏差が存在しないことを示す。すなわち、潜在的な偏差は、示された結果を±20%を超えて、さらなる実施形態において±10%を超えて、さらなる実施形態において±5%を超えて逸脱させない。したがって、「から本質的になる」とは、指定された成分を含むが、不純物として存在する材料、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避な材料、及び、本発明の技術的効果の達成以外の目的で添加された成分を除く他の成分を排除するすることを意味する。例えば、「から本質的になる」という語句を使用して定義される組成物は、任意の既知の許容される添加剤、賦形剤、希釈剤、キャリアなどを包含する。1つの実施形態において、本質的に一組の成分からなる組成物は、5質量%未満、さらなる実施形態において3質量%未満、さらなる実施形態において1質量%未満、さらなる実施形態において0.1質量%未満の非指定成分を含む。
【0011】
「バイオセンサ」という用語は、本明細書で使用されるときに、本明細書で示されるとおりの手段を含むデバイスに関する。バイオセンサは、本明細書で以下に特定されるとおり、少なくともセンサモジュール及び生体適合性層を含む。1つの実施形態において、バイオセンサはインプラント可能なバイオセンサであり、1つの実施形態において、皮下にインプラント可能である。1つの実施形態において、バイオセンサは完全にインプラント可能であり、すなわち、外部通信手段を含むバイオセンサはインプラント可能であり、1つの実施形態において、手術のために対象の皮膚に開口部を必要とせずにインプラント可能である。したがって、1つの実施形態において、バイオセンサによる外部デバイスとの通信は無線である。当業者によって理解されるように、バイオセンサの挿入は、対象の皮膚に開口部を必要とする場合がある。
【0012】
1つの実施形態において、センサは、アパチャ、すなわち、センサモジュールが周囲媒体、特に体液と接触することを可能にする開口部をさらに含む。1つの実施形態において、前記アパチャは、センサモジュールの近傍に配置され、生体適合性層は、場合により拡散膜と組み合わせて、センサモジュールを分析流体から分離する。さらに、特にバイオセンサがインプラント可能なバイオセンサである場合に、バイオセンサはさらなる電気的及び電子的手段を含み、該手段として、例えば、バッテリーのようなエネルギー源、及び/又は、例えば、検体の測定値を報告するため外部デバイスと情報を交換するための通信ユニットが挙げられる。エネルギー源及び通信ユニットを提供するための適切な手段は当該技術分野でよく知られている。1つの実施形態において、バイオセンサは、検出可能な信号又はそこから導出される物理信号、例えば、電気信号を、読み出しユニット、例えばリーダに通信する信号に変換する処理ユニットをさらに含む。さらなる実施形態において、処理ユニットは、検出可能な信号又はそこから導出される物理信号を測定値、例えば、検体濃度に変換する。上記の手段は追加の機能を実行することができ、バイオセンサは当業者によって適切であると認められるさらなる手段を含むことができることが理解されるであろう。
【0013】
1つの実施形態において、バイオセンサは拡散膜をさらに含む。「拡散膜」という用語は、本明細書で使用されるときに、特に1μm~100μm、1つの実施形態において2.5μm~50μmの厚さを有する、検体の拡散を可能にするポリマーに関する。1つの実施形態において、拡散膜は、生体適合性ポリマー、特に、ブチルメタクリレート(BUMA)及び/又は2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマーを重合することによって生成されるポリマーを含むか、又はそれからなる。さらなる実施形態において、拡散膜は親水性ポリウレタンポリマー(HPU)を含む。さらなる実施形態において、拡散膜は検体の拡散を可能にするが、体液などの分析流体に含まれる高分子量成分の拡散は可能ではない。したがって、拡散膜は、1つの実施形態において、10kDa未満、1つの実施形態において5kDa未満、さらなる実施形態において1kDa未満の分子量を有する分子の拡散を特に可能にする。したがって、1つの実施形態において、拡散膜は、半透膜、特に透析膜であり、1つの実施形態において、生体適合性透析膜である。
【0014】
1つの実施形態において、バイオセンサは、生体適合性層によって完全に覆われている。さらなる実施形態において、センサは不活性材料から製造され、本明細書で上記に指定されたとおりのアパチャを含み、前記アパチャは少なくとも部分的に生体適合性層によって覆われ、又は、前記アパチャ及び/又はセンサモジュールは、少なくとも生体適合性層によって少なくとも部分的に覆われており、ここで、「少なくとも部分的に覆われた」とは、少なくとも、実施される検体の測定に十分な領域が生体適合性層によって覆われることを意味する。1つの実施形態において、少なくとも25%、さらなる実施形態において、少なくとも50%、さらなる実施形態において、少なくとも75%、さらなる実施形態において、少なくとも90%のアパチャ及び/又は本明細書中に特定されるとおりのセンサモジュールの試験フィールドの面積は生体適合性膜で覆われている。
【0015】
1つの実施形態において、バイオセンサは電気化学バイオセンサであり、したがって、バイオセンサは、さらなる電気リード線及び接点を含むことができる。1つの実施形態において、バイオセンサはさらなる電極を含み、該電極は以下に記載されるとおりの特徴を有する電極であることができ、又は、それと構造的及び/又は機能的に異なる電極であることができる。さらなる電極は、例えば、充填制御、温度センサなどとしての使用に適合されていることができる。1つの実施形態において、バイオセンサは、対電極をさらに含み、さらなる実施形態において、参照電極及び対電極をさらに含む。バイオセンサは、3つの電極であって、その1つがそれぞれ作用電極、対電極及び参照電極である電極(3電極構成)を含むことができ、あるいは、バイオセンサは、一方が作用電極であり、他方が対電極及び参照電極である2つの電極(「2電極構成」)を含むことができることが当該技術分野で知られている。上記のように、バイオセンサはまた、さらなる電極を含むことができる。本開示の関係で使用されるときに、少なくとも作用電極は、試験フィールドの少なくとも一部と電気的に接触しており、すなわち導電性である。
【0016】
1つの実施形態において、バイオセンサは光学バイオセンサであり、したがって、バイオセンサは、さらなる光学的手段、例えば、照明ユニット及び/又は光感受性要素、例えば、フォトセルを含むことができる。1つの実施形態において、センサモジュールは、本明細書の他の場所で特定されるとおりの試験フィールドの少なくとも一部を照らすための少なくとも1つの光源を含み、前記試験フィールドからの検出光を決定するように適合された少なくとも1つの光感受性要素を含む。したがって、1つの実施形態において、センサモジュールは、少なくとも1つの光源、例えば、発光ダイオード(LED)を含む。1つの実施形態において、検出光は、試験フィールドによって反射された光、試験フィールドによって透過された光及び試験フィールドによって放出された光からなる群より選ばれる。1つの実施形態において、光感受性要素は、光源によって放出され、そして試験フィールドによって反射及び/又は透過された光を検出するように適合された少なくとも1つの要素を含む。前記光感受性要素は、例えば、フォトダイオードであることができる。1つの実施形態において、光感受性要素は、光感受性要素の少なくとも1つの1次元又は2次元マトリックスを含み、1つの実施形態において、少なくとも1つのカメラチップを含み、そしてさらなる実施形態において、少なくとも1つのCCDチップを含む。1つの実施形態において、光信号は、その検出後に電気信号に変換され、したがって、バイオセンサは、当業者によって適切であると認められるような電気化学センサのための本明細書で上述したさらなる要素を含むことができる。
【0017】
「センサモジュール」という用語は、本明細書で使用されるときに、検体の存在下で検出可能な信号を生成する少なくとも1つの試験フィールドを含むユニット、及び、場合により、検出可能な信号を検出し及び/又はそれを出力信号、例えば電流、電圧などの電気出力信号に変換する信号検出ユニットに関する。1つの実施形態において、センサモジュールは、上記に特定されるとおりの光学センサモジュール及び電気化学センサモジュールから選ばれる。両方のタイプのセンサモジュールは、原則として、当該技術分野で知られている。
【0018】
「検出可能な信号」という用語は、本明細書で使用されるときに、検体の存在下で変化し、任意の種類の物理信号に変換することができる試験化学物質の任意の特性に関する。1つの実施形態において、測定可能な特性及び/又はそこから生成可能な信号の変化は、サンプル中の検体の濃度に比例する。1つの実施形態において、上述のように、測定可能な特性は、試験化学物質の色及び/又は色強度の変化、すなわち、1つの実施形態において、試験化学物質の吸収及び/又は発光スペクトルの変化である。したがって、測定可能な特性の変化において、1つの実施形態における光学特性は、反射特性、1つの実施形態において、反射率及び/又は低減率、透過特性、1つの実施形態において、吸収、色、発光、1つの実施形態において蛍光からなる群より選ばれる。また、1つの実施形態において、測定可能な特性は、還元又は酸化されたレドックス化合物、例えば、本明細書の他の場所に記載されているとおりのメディエータの濃度である。上記で規定されるとおりの測定可能な特性を測定値として読み取ることができる物理信号に変換する方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、EP 0 821 234、EP 0 974 303及びUS 2005/0023152に記載されている。
【0019】
1つの実施形態において、測定可能な特性は、試験化学物質に含まれるレドックス化合物のレドックス状態であり、電気化学的手段によって、例えば、電圧、容量、アドミタンス、電流又は当業者によって適切であると認められる任意のパラメータを測定することによって検出される。したがって、試験化学物質が検体と反応してサンプル流体中の検体の存在を表す電気化学信号を生成する化学試薬を含むことも本発明によって想定される。好ましい検体としてのグルコースの場合に、試験化学物質の活性成分は、典型的には、酵素を含み、1つの実施形態において、グルコース、そして場合により、レドックスメディエータを具体的に利用する。さらなる実施形態において、前記酵素はグルコースオキシダーゼ及びグルコースデヒドロゲナーゼのうちの少なくとも1つを含む。1つの実施形態において、酵素は、還元された補因子を生成し、例えば、検体の存在下でNAD(P)Hを生成し、そしてメディエータは、次いで、還元された補因子と反応する。その後、メディエータは、拡散により、検体生成物のレドックス相当物を電極表面にシャトルする。そこでメディエータは規定されたアノード電位で定量的に酸化され、結果として生じる電流は見かけのグルコース濃度に関連する。一般に、好ましいレドックスメディエータは、急速に還元及び酸化可能な分子である。例としては、フェリシアン化物、ニトロソアニリン及びそれらの誘導体、ならびにフェロセン及びその誘導体が挙げられる。別の実施形態において、酵素、例えば、グルコースオキシダーゼは、電気化学的に検出される過酸化物、特に過酸化水素を生成する。グルコースの検出に適した幾つかの試薬システムがあり、例は、AC励起、検体センサ及びバイオセンサ用途、米国特許第5,385,846号及び同第5,997,817号、ならびに米国(再発行)特許出願第10/008,788号(“Electrochemical Biosensor Test Strip”),”),”)、WO2007/012494、WO2009/103540、WO2011/012269、WO2011/012270及びWO2011/012271に記載されるとおりのcNAD化学及びEP 0 354 441、EP 0 431 456に記載されるとおりのSCV化学物質を含む。
【0020】
別の実施形態において、検出反応は試験化学物質又は少なくともその一部の色の変化を意味する。1つの実施形態において、試験化学物質は少なくとも1つの酵素を含み、それは、1つの実施形態において、直接又は間接的に検体と、1つの実施形態において、高い特異性をもって反応し、さらに、1つ以上の光学指標物質は試験化学物質中に存在し、少なくとも1つの酵素が検体と反応すると、少なくとも1つの光学的に検出可能な特性変化をもたらす。したがって、少なくとも1つの指示薬は、少なくとも1つの酵素と検体の酵素反応を示す変色反応を行う1つ以上の染料を含むことができる。光学的検出の例示的な実施形態はWO 2015/005953 A1に開示されている。
【0021】
「試験フィールド」という用語は、本明細書で使用されるときに、1つの実施形態において、少なくとも1つのキャリアフィルムなどの少なくとも1つのキャリアによって保持される、連続又は不連続量の試験化学物質に関する。したがって、本明細書の他の場所で特定される試験化学物質は、試験フィールドの1つ以上のフィルム又は層を形成するか、又はそれらに含まれ、及び/又は、試験フィールドは、1つ以上の層を有する層構成を含むことができ、これらの層のうちの少なくとも1つは試験化学物質を含む。したがって、試験フィールドは、キャリア上に配置された層構成を含むことができ、サンプルは、少なくとも1つの適用側から層構成に接触することができる。1つの実施形態において、試験フィールドは多層構成を有し、該多層構成は、少なくとも1つの試験化学物質を有する少なくとも1つの検出層を含み、体液に含まれる少なくとも1つの粒子成分を分離するように適合された少なくとも1つの分離層をさらに含み、ここで、分離層は、検出層とサンプルアクセス部位との間に位置する。
【0022】
「試験化学物質」又は「試験材料」という用語は、検体の存在下で少なくとも1つの測定可能な特性を変化させるように適合された1つの物質又は物質の混合物を指す。1つの実施形態において、試験材料は、検体の存在下で、少なくとも1つの光学的又は電気化学的に検出可能な検出反応を行う。1つの実施形態において、試験反応は、少なくとも部分的に少なくとも1つの酵素によって媒介され、したがって、1つの実施形態において、試験材料は、検体の存在下で少なくとも1つの酵素反応を行うように適合された少なくとも1つの酵素を含む。試験化学物質に関して、試験化学物質を設計する様々な可能性は当該技術分野で知られている。試験化学物質は評価される検体に関して選ばれる。
【0023】
「酵素」という用語は、本明細書で使用されるときに、検体の存在下で、検出可能な信号を提供する化合物を生成又は消費する化学反応を触媒する、生体高分子、特にポリペプチドに関する。1つの実施形態において、酵素は、酸化還元酵素、特に酸化酵素であり、さらなる実施形態において、酵素は検体の存在下で過酸化物を生成し、特に過酸化水素を生成し、したがって、1つの実施形態において、酵素は、過酸化水素生成性オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)、ヘキソースオキシダーゼ(EC 1.1.3.5)、コレステロールオキシダーゼ(EC 1.1.3.6)、ガラクトースオキシダーゼ(EC 1.1.3.9)、アルコールオキシダーゼ(EC 1.1.3.13)、L-グロノラクトンオキシダーゼ(EC 1.1.3.8)、NAD(P)Hオキシダーゼ(H2O2生成性、EC 1.6.3.1)、NADHオキシダーゼ(H2O2生成性、EC 1.6.3.3)又はカタラーゼ(EC 1.11.1.6)である。1つの実施形態において、本明細書の他の場所で特定されるとおり、検体はグルコースである。したがって、少なくとも1つの酵素は、基質としてグルコースを有する酵素、1つの実施形態においてオキシドレダクターゼ、特にグルコースオキシダーゼ及び/又はグルコースデヒドロゲナーゼを含むことができる。さらなる実施形態において、酵素はグルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)である。これに関して、上述の先行技術文献を参照することができる。具体的には、J. Hoenes ら: The Technology Behind Glucose Meters: Test Strips, Diabetes Technology & Therapeutics, Volume 10, Supplement 1, 2008, S-10 to S-26を参照することができる。しかしながら、他のタイプの酵素及び/又は他のタイプの試験化学物質又は試験化学物質の活性成分は使用されうる。
【0024】
「生体適合性層」という用語は、本明細書で使用されるときに、生体適合性材料からなる層、特にバイオセンサの最外層又はその一部に関する。1つの実施形態において、生体適合性層は、5nm~100μm、1つの実施形態において10nm~1μmの厚さを有する。1つの実施形態において、生体適合性層は、センサモジュールの試験フィールドを少なくとも部分的に覆い、さらなる実施形態において、センサモジュールを少なくとも部分的に覆い、さらなる実施形態において、バイオセンサの他の要素と接触しないセンサモジュールの部分を完全に覆い、さらなる実施形態において、バイオセンサを少なくとも部分的に又は完全に覆う。1つの実施形態において、生体適合性層は、センサモジュール及び/又はバイオセンサの最外層である。したがって、1つの実施形態において、生体適合性層の少なくとも一部は対象の体液と接触する。1つの実施形態において、生体適合性層は、本明細書の他の場所で特定されるとおりの検体に対して拡散を制限せず、さらなる実施形態において、生体適合性層は、2,000Da未満、1つの実施形態において1000Da未満の分子量を有する小分子に対して拡散を制限しない。1つの実施形態において、生体適合性層は添加された酵素を含まず、さらなる実施形態において、生体適合性層は添加されたポリペプチドを含まず、当業者に理解されるように、これは、酵素又はポリペプチド分子が隣接する層、組織又は体液から生体適合性層中に拡散することを排除するものではない。
【0025】
「生体適合性材料」という用語は、本明細書で使用されるときに、毒性、有害又は生理学的に反応性がない又は低いこと、及び/又は免疫学的拒絶を減少した程度に引き起こすか又は引き起こさないことにより、生体組織又は生体系での使用に適した材料に関する。。1つの実施形態において、生体適合性材料は、身体反応を誘発しない材料、例えば、不活性材料又は生体適合性層の近傍で身体反応が起こるのを防ぐ化学化合物を含む材料である。別の実施形態において、生体適合性材料は、細胞が前記生体適合性層に付着するのを防ぐ材料である。さらなる実施形態において、本明細書の上記に示されるように、バイオセンサは少なくとも2つの層を含み、その外層は、-C(O)-NR1R2側基を有する前記ポリマーを含む層、すなわち生体適合性層である。1つの実施形態において、第二の層は、本明細書の他の場所で特定されるとおりの拡散膜である。1つの実施形態において、生体適合性層及び拡散膜は、1つの実施形態において、本明細書で下記に特定されるとおりの架橋可能な側基を介して光活性化によって共有結合される。
【0026】
本明細書に開示されるとおりの生体適合性層は、-CO-NR1R2側基(式中、R1及びR2はH及びC1~C6アルキルから独立して選ばれる)を有するポリマーを含み、又は、1つの実施形態において、該ポリマーからなる。したがって、1つの実施形態において、ポリマーは非置換アミド側基を含む。1つの実施形態において、R1及びR2の最大で1つが-Hである。したがって、1つの実施形態において、ポリマーは、モノ-及び/又はジ-N-置換アミド側基を含む。
【0027】
本明細書で使用されるときに、「アルキル」という用語は、任意の炭素原子からの水素原子の除去によってアルカンから誘導される一価の側基に関する。1つの実施形態において、アルキルは直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基である。さらに、アルキル基は、直鎖アルキルであり、例えば、1つの実施形態において、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル又は分岐鎖アルキル基であり、例えば、-CH(CH3)2、-CH(CH2CH3)2、-C(CH3)3、-C(CH2CH3)3、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH2CH3)2、-CH2C(CH3)3、-CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2C(CH3)3又は-CH(CH3)CH2CH(CH3)2である。したがって、アルキル基としては、第一級アルキル基、第二級アルキル基及び第三級アルキル基が挙げられる。さらに想定されるアルキル基は、低級アルキル基、すなわち、1つの実施形態において、最大6個の炭素原子、さらなる実施形態において、最大3個の炭素原子、さらなる実施形態において、1つの炭素原子を有するアルキル基、すなわちメチル基である。1つの実施形態において、アルキルは直鎖低級アルキルであり、1つの実施形態において、n-ヘキシル、n-ペンチル、n-ブチル、n-プロピル、エチル及びメチルからなるリストから選ばれる。1つの実施形態において、R1及びR2は、-H及びC1~C3アルキルから独立して選ばれる。さらなる実施形態において、R1及びR2は、-H、エチル及びメチルから独立して選ばれ、さらなる実施形態において、R1及びR2のうちの少なくとも1つはメチルであり、さらなる実施形態において、R1及びR2は両方ともメチルである。
【0028】
1つの実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、本明細書において「モノマー組成物」と呼ばれる、本明細書において以下に特定されるモノマーを含む組成物から得られたものか又は得ることができる。1つの実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、一般構造(I)
【0029】
【0030】
(上式中、R3は重合性基である)のモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができる。適切な重合可能な化学基及びそれらの重合方法は当該技術分野で知られている。1つの実施形態において、R3は、C2~C4アルケニル基から選ばれる。
【0031】
本明細書で使用されるときに、「アルケニル」という用語は、水素がアルケンから除去されたときに形成される炭化水素基に関する。1つの実施形態において、R3は、ビニル(すなわち、エテニル、-CH=CH2)、プロペニル(-CH=CH-CH3)及びイソプロペニル(-C(CH3)=CH2)から選ばれる。さらなる実施形態において、R3はビニルであり、したがって、1つの実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、アクリルアミドモノマーを含み、1つの実施形態において、モノ-及び/又はジ-N-置換アクリルアミドモノマーを含む、モノマー組成物から得られたものであるか、又は得ることができる。
【0032】
1つの実施形態において、モノマー組成物は、上記で特定したとおりの一般構造(I)の多数の同一でないモノマー、例えば、一般構造(I)の少なくとも2つの同一でないモノマーを含む。例示的な実施形態において、モノマー組成物は、アクリルアミドモノマー及び少なくとも1つのタイプのモノ-及び/又はジ-N-置換アクリルアミドモノマーを含み、又は、モノマー組成物は、少なくとも1つのタイプのモノ-及び/又はジ-N-置換モノマー(R1及び/又はR2はC1~C3アルキルであり、1つの実施形態において、ポリマーの生体適合性を改善する)、及び、少なくとも1つのタイプのモノ-及び/又はジ-N-置換モノマー(R1及び/又はR2はC4~C6アルキルであり、1つの実施形態において、ポリマーの機械的特性を改善する)を含み、又は、モノマー組成物は、少なくとも1つのタイプのモノ-及び/又はジ-N-置換モノマー(R1及びR2はC1~C3アルキルである)、及び、少なくとも1つのタイプのモノ-及び/又はジ-N-置換モノマー(R1及びR2はC4~C6-アルキルである)を含む。
【0033】
1つの実施形態において、本明細書で特定されるとおりのモノマー組成物は、一般構造(I)に対応しない少なくとも1つのさらなるモノマーをさらに含む。1つの実施形態において、そのようなモノマーは、ポリマー鎖を架橋し及び/又は分岐させるのに適したモノマーである。両方のタイプのモノマーは当該技術分野で知られている。したがって、1つの実施形態において、モノマー組成物は、架橋可能な側基を含む少なくとも1つのモノマーをさらに含む。
【0034】
本明細書において使用されるときに、用語「架橋可能な側基」は、前記架橋可能な側基を含む分子からさらなる化学分子又は同じ分子の異なる部分への共有結合を確立するのに適した化学反応性又は活性化可能な基に関する。1つの実施形態において、架橋は、本明細書の他の場所で特定されているとおり、ポリマーのさらなる分子又は拡散膜に対するものである。当該技術分野で知られているように、架橋は、化学反応性基と反応することができる側基をポリマーに含めることによって、又は化学反応性又は活性化可能な側基をポリマーに含めることによって得ることができる。1つの実施形態において、架橋可能な基は、ポリマーに含まれる-OH又はNH2基を含む側基であり、該ポリマーは、当該技術分野で既知の多官能性の、1つの実施形態において二官能性の架橋剤によって架橋されることができ、該架橋剤としては、例えばジグリシジルエーテル、例えばポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル及びポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ビスアルデヒド及びスクシンイミジルエステルが挙げられる。さらなる実施形態において、架橋可能な側基は、活性化可能な側基、すなわち、標準条件下及び/又は暗所で化学的に本質的に非反応性であるが、適切な波長の照明によるなどの活性化後に化学的に反応性である側基である。1つの実施形態において、架橋可能な側基は、ベンゾフェノン、アリールアジド、アジドメチルクマリン、アントラキノン、特定のジアゾ化合物、ジアジリン及びソラレン誘導体からなるリストより選ばれる。さらなる実施形態において、架橋可能な側基はベンゾフェノン側基である。さらなる実施形態において、架橋可能な側基は、O-置換メタクリレートモノマーから、1つの実施形態において4-ベンゾイルフェニルメタクリレートモノマーから得られたものであるか、又は得ることができる。
【0035】
1つの実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、モノ-N-又はジ-N-置換アクリルアミドモノマーを含み、1つの実施形態においてN,N-ジメチル-アクリルアミドモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は、得ることができる。さらなる実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーはコポリマーであり、1つの実施形態において、統計コポリマーである。さらなる実施形態において、-CO-NR1R2以外に、コポリマーは、上記で特定したように、架橋、改善された生体適合性、又は機械的特性などの追加の機能を提供することができる、さらなる繰り返し単位を含む。
さらなる実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、モノ-N-又はジ-N-置換アクリルアミドモノマー及び/又はO-置換メタクリレートモノマーのコポリマーである。さらなる実施形態において、ポリマーは、式(II)又は(IIa)
【0036】
【0037】
(上式中、R4は架橋可能な側基であり、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、1つの実施形態においてmとnの合計は1である)に示される化学構造を含む。1つの実施形態において、nは0.5~0.99であり、mは0.5~0.01であり、mとnの合計は1である。当業者によって理解されるように、mとnの合計は、他の側鎖又は側基がポリマー中に含まれる場合に、1未満であることができる。したがって、1つの実施形態において、mとnの合計は最大で1であり、1つの実施形態において、mとnの合計は1であり、すなわち、ポリマーは、式(II)に示されるとおりの側基のみを有する。さらなる実施形態において、ポリマーは式(IIa)に示されるとおりの側基を有する。また、当業者に理解されるように、架橋可能な側基R4は、架橋された側基、すなわち、架橋後の架橋可能な側基であってもよく、ポリマーのさらなる分子又は拡散膜への共有結合を提供する。
【0038】
1つの実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、上記で特定されるとおりの一般構造(I)のモノマー、及び、架橋可能な側基を含むモノマー、1つの実施形態においてベンゾフェノン側基を含むモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができるコポリマーである。さらなる実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、-CO-NR1R2側基を有するポリマーの合計量に基づいて、1~50モル%、1つの実施形態において2~25モル%、さらなる実施形態において3~10モル%の、架橋可能な側基を含むモノマーから誘導される単位を含む。1つの実施形態において、ポリマーは、式(III)、(IIIa)、(IIIb)及び/又は(IIIc):
【0039】
【化3】
(上式中、R
5はさらなるポリマー分子又は拡散膜の分子である)に示される化学構造を含む。
【0040】
1つの実施形態において、ポリマーは、式(III)又は(IIIa)に示されるとおりの化学構造を含む。1つの実施形態において、ポリマーは、式(IIIb)又は(IIIc)に示されるとおりの化学構造を含む。
【0041】
したがって、1つの実施形態において、ポリマーは、式(IV)又は(IVa)に示されるとおりの化学構造を有する。
【0042】
【0043】
(上式中、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、R6は-CO-C6H5(ベンゾイル)又はC(OH)R5-C6H5であり、R5は本明細書中、上記に特定されたとおりであり、1つの実施形態において、mとnの合計は1である)。1つの実施形態において、nは0.5~0.99であり、mは0.5~0.01であり、mとnの合計は1である。
【0044】
さらなる実施形態において、-CO-NR1R2側基を有するポリマーは、本明細書の他の場所で特定されるとおりの少なくとも2つの同一でないモノ-N-又はジ-N-置換アクリルアミドモノマー及びO-置換メタクリレートモノマー、1つの実施形態において4-ベンゾイルフェニルメタクリレートモノマーのターポリマーである。
【0045】
「検体」という用語は、本明細書で使用されるときに、液体、特に体液中に存在する化合物に関する。1つの実施形態において、検体は有機分子であり、さらなる実施形態において、本発明による酵素の存在下でレドックス反応を受けることができる有機分子である。1つの実施形態において、検体は、対象の代謝の分子、すなわち、前記対象の少なくとも1つの組織で起こる少なくとも1つの化学反応によって生成及び/又は消費される分子である。また、1つの実施形態において、検体は低分子量の化合物であり、さらなる実施形態において、分子量が5000 u(5000Da; 1u=1.66×10-27kg)未満、さらなる実施形態において1000u未満、さらなる実施形態において500u未満である化合物であり、すなわち、1つの実施形態において、検体は生体高分子ではない。さらなる実施形態において、検体は、グルコース、マレート、エタノール、アスコルビン酸、コレステロール、グリセロール、尿素、3-ヒドロキシブチレート、ラクテート、ピルベート、ケトン及びクレアチニンからなるリストより選ばれ、さらに別の実施形態において、検体はグルコースである。
【0046】
「決定する」という用語は、本明細書で使用されるときに、体液のサンプル中に存在する検体の量の定量化、すなわち、1つの実施形態において、半定量的又は定量的に前記検体の量又は濃度を測定することに関する。検体の量の検出は、当業者に知られている、又は本明細書の他の場所で詳述されている様々な方法で達成することができる。本発明によれば、検体の量を検出することは、サンプル中の前記検体の量を検出するためのすべての既知の手段によって達成することができる。1つの実施形態において、決定は、本発明の検体を特異的に検出することである。1つの実施形態において、検体の決定は、生体内での前記検体の決定であり、さらなる実施形態において、検体の決定は、連続グルコースモニタリングであり、さらなる実施形態において連続生体内グルコースモニタリングであり、さらなる実施形態において、本明細書の他の場所で特定されるとおりの対象における連続生体内グルコースモニタリングである。
【0047】
「量」という用語は、本明細書で使用されるときに、本明細書で言及される検体の絶対量、本明細書で言及される検体の相対量又は濃度、ならびにそれに相関する任意の値又はパラメータを包含する。そのような値又はパラメータは、測定によって本明細書で言及される検体から得られるすべての特定の物理的又は化学的特性からの強度信号値を含む。前述の量又はパラメータに相関する値は、すべての標準的な数学的演算によっても取得できることを理解されたい。
【0048】
本明細書で使用されるときに、「体液」という用語は、間質液、血液、血漿、涙液、尿、リンパ液、脳脊髄液、胆汁、便、汗及び唾液を含む、本発明の検体を含むことが知られている又は含むものと思われる対象のすべての体液に関する。1つの実施形態において、体液は間質液又は血液であり、したがって、1つの実施形態において、体液は、少なくとも1つの粒子状成分、特に細胞を含む。さらなる実施形態において、体液は間質液である。「サンプル」という用語は当業者に理解されており、サンプルを試験要素に適用する前に対象から取り出された実施形態において、体液の任意の下位部分に関する。サンプルは、例えば、静脈又は動脈の穿刺、表皮の穿刺などを含む周知の技術によって得ることができる。
【0049】
有利なことに、本発明の基礎をなす研究において、記載のポリマーがバイオセンサ用の生体適合性コーティングとして特に適していることが見出された。驚くべきことに、本明細書に記載のポリマーは、生体高分子の蓄積及び/又は細胞の付着による汚染の傾向が低く、細胞毒性が低く、免疫活性化活性が低いことが判った。したがって、本発明のバイオセンサは、使用可能期間が長く、カプセル化の傾向が低い。
【0050】
上記の定義は、必要な変更を加えて以下に適用される。以下でさらに行われる追加の定義及び説明は、必要な変更を加えて、本明細書で説明されるすべての実施形態にも適用される。
【0051】
本発明はさらに、本発明による生体適合性層で前記バイオセンサを少なくとも部分的にコーティングすることを含む、検体を決定するためのインプラント可能なバイオセンサを製造する方法に関する。
【0052】
バイオセンサ及び/又はセンサモジュール上にポリマー層及びコーティングを製造する方法は当該技術分野で知られている。本明細書で使用されるときに、コーティングの方法は当業者によって適切であると考えられる任意の方法によって達成することができ、重合の開始の前に、それと同時に又はその後に、モノマーの溶液を塗布することによりコーティングを生成する方法を含み、また、製造済みの膜をバイオセンサに適用する方法を含む。1つの実施形態において、インプラント可能なバイオセンサを製造するための方法は、ディップコーティング、スプレイコーティング及び接触コーティングのうちの少なくとも1つを含む。また、ディップコーティング、スプレイコーティング、スピンコーティング、プレス法、ナイフ法又は滴下法から選ばれる方法を用いることができる。しかしながら、述べられた方法及び/又は他の方法の組み合わせも基本的に使用することができる。1つの実施形態において、生体適合性層は拡散膜上に生成される。1つの実施形態において、方法は、生体適合性層を下層、特に拡散膜に、例えば、365nmでの照射などにより架橋させる工程をさらに含む。1つの実施形態において、インプラント可能なバイオセンサを製造するための方法は、例えば、バイオセンサを溶媒、例えば有機溶媒及び/又は水で処理することにより、バイオセンサの生体適合性層から非重合モノマー及びオリゴマーを抽出する追加の工程をさらに含む。
【0053】
本発明はまた、インプラント可能なバイオセンサを製造するための本発明の生体適合性層の使用に関する。
【0054】
本発明はまた、検体の連続現場決定のための、本発明によるバイオセンサの使用に関する。本明細書の他の場所で特定されるように、検体は、1つの実施形態において、グルコースである。
【0055】
さらに、本発明は、対象における検体の連続決定方法であって、前記方法は、本発明によるバイオセンサにより前記検体を決定することを含む方法に関する。
【0056】
さらに、本発明は、対象中の検体の連続決定のための方法であって、前記方法は、
(a)本発明によるバイオセンサを前記対象の少なくとも1つの組織に埋め込むこと、及び、
(b)前記センサにより前記検体を決定すること、
を含む方法に関する。
【0057】
1つの実施形態において、本発明の検体の連続決定のための方法はインビボ法である。さらに、方法は、上記で明示的に言及されたものに加えて、工程を含むことができる。例えば、さらなる工程は、例えば、前記検体の決定に基づいて検体の量又は濃度を提供すること、又は前記検体が第一のしきい値未満又は第二のしきい値を超えると決定された場合に警報を提供することに関することができる。さらに、前記工程の1つ以上は自動機器によって実行されうる。1つの実施形態において、前記方法は前記測定に基づく疾患の診断を含まない。
【0058】
本明細書で使用されるときに、「対象」という用語は脊椎動物に関する。1つの実施形態において、対象は哺乳動物であり、さらなる実施形態において、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ハムスタ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ又はウマである。さらに別の実施形態において、対象は霊長類である。さらなる実施形態において、対象はヒトである。1つの実施形態において、対象は、少なくとも1つの検体の正常からの測定可能な逸脱に関連する疾患又は状態に罹患しているか、又は罹患している疑いがある。さらなる実施形態において、対象は糖尿病に罹患している。
【0059】
「連続測定」という用語は、本明細書で使用されるときに、対象における同じバイオセンサ、特に本明細書において開示されるバイオセンサの繰り返し使用による検体の測定に関する。したがって、連続決定という用語は、個別の複数の測定、1つの実施形態において少なくとも6時間ごとの測定、さらなる実施形態において少なくとも2時間ごとの測定、さらなる実施形態において少なくとも1時間ごとの測定を含む。しかしながら、より頻繁な測定、特に少なくとも30分ごと、さらなる実施形態において少なくとも15分ごと、さらなる実施形態において少なくとも10分ごと、さらなる実施形態において少なくとも5分ごとの測定も用語に含まれる。1つの実施形態において、この用語は、1つの実施形態において30秒ごと、さらなる実施形態において少なくとも20秒ごと、さらなる実施形態において少なくとも10秒ごと、さらなる実施形態において少なくとも5秒ごとの準連続測定に関する。しかしながら、さらに頻繁な測定も想定される。1つの実施形態において、連続決定は、同じバイオセンサを使用した、少なくとも1週間、1つの実施形態において少なくとも2週間、さらなる実施形態において少なくとも3週間、さらなる実施形態において少なくとも4週間の決定である。
【0060】
上記を考慮して、以下の実施形態は特に考えられる。
【0061】
1.生体適合性層によって少なくとも部分的に覆われたセンサモジュールを含む、検体を決定するためのバイオセンサであって、前記生体適合性層は、-CO-NR1R2側基(式中、R1及びR2は、-H及びC1~C6アルキルから独立して選ばれ、1つの実施形態において、最大でR1及びR2の1つは-Hである)を有するポリマーを含む、バイオセンサ。
【0062】
2.R1及びR2は-H及びC1~C3アルキルから独立して選ばれる、実施形態1記載のバイオセンサ。
【0063】
3.R1及びR2は-H、エチル及びメチルから独立して選ばれる、実施形態1又は2記載のバイオセンサ。
【0064】
4.R1及びR2の少なくとも1つはメチルである、実施形態1~3のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0065】
5.R1及びR2はメチルである、実施形態1~4のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0066】
6.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、一般構造(I)
【0067】
【0068】
(上式中、R3は重合性基であり、1つの実施形態において、ビニル、プロペニル及びイソプロペニルから選ばれ、1つの実施形態において、R3はビニルである)のモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができる、実施形態1~5のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0069】
7.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、モノ-N-及び/又はジ-N-置換アクリルアミドモノマーを含み、1つの実施形態においてN,N-ジメチルアクリルアミドモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができる、実施形態1~6のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0070】
8.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーはコポリマーであり、1つの実施形態において統計コポリマーである、実施形態1~7のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0071】
9.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、モノ-N-又はジ-N-置換アクリルアミドモノマー及び/又はO-置換メタクリレートモノマーのコポリマーである、実施形態1~8のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0072】
10.前記O-置換メタクリレートモノマーは4-ベンゾイルフェニルメタクリレートモノマーである、実施形態9記載のバイオセンサ。
【0073】
11.前記ポリマーは式(II)又は(IIa):
【0074】
【0075】
(上式中、R4は架橋可能な又は架橋した側基であり、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、1つの実施形態においてmとnの合計は1である)に示される化学構造を有する、実施形態1~10のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0076】
12.nは0.5~0.99であり、mは0.01~0.5であり、mとnの合計は1である、実施形態1~11のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0077】
13.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、実施形態6又は7において特定されるモノマー、及び、架橋可能な側基、1つの実施形態においてベンゾフェノン側基を含むモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができるコポリマーである、実施形態1~12のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0078】
14.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーの合計量に基づいて、1~50モル%、1つの実施形態において2~25モル%、さらなる実施形態において3~10モル%の、架橋可能な側基を含むモノマーに由来する単位を含む、実施形態1~13のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0079】
15.前記ポリマーは、式(III)、(IIIa)、(IIIb)及び/又は(IIIc):
【0080】
【0081】
(上式中、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、1つの実施形態においてmとnの合計は1であり、R5はさらなるポリマー分子又は拡散膜の分子である)に示される化学構造を含む、実施形態1~14のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0082】
16.拡散膜をさらに含み、前記生体適合性層は最外層である、実施形態1~15のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0083】
17.拡散膜をさらに含み、前記拡散膜は親水性ポリウレタンポリマーを含む、実施形態1~16のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0084】
18.前記バイオセンサはインプラント可能であり、1つの実施形態において皮下にインプラント可能である、実施形態1~17のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0085】
19.前記検体は1000Da未満の分子量を有する検体である、実施形態1~18のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0086】
20.前記検体は、グルコース、マレート、エタノール、アスコルビン酸、コレステロール、グリセロール、尿素、3-ヒドロキシブチレート、ラクテート、ピルベート、ケトン及びクレアチニンからなるリストから選ばれ、1つの実施形態において、前記検体はグルコースである、実施形態1~19のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0087】
21.前記検体の決定は、前記検体を生体内で決定することである、実施形態1~20のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0088】
22.前記検体の決定は連続グルコースモニタリングである、実施形態1~21のいずれか1項記載のバイオセンサ。
【0089】
23.検体を決定するためのインプラント可能なバイオセンサを製造するための方法であって、前記バイオセンサを生体適合性層で少なくとも部分的にコーティングすることを含み、前記生体適合性層は、-CO-NR1R2側基(式中、R1及びR2は、H及びC1~C6アルキルから独立に選ばれ、1つの実施形態において、最大でR1及びR2の1つは-Hである)を有するポリマーを含む、方法。
【0090】
24.R1及びR2は-H及びC1~C3アルキルから独立して選ばれる、実施形態23記載の方法。
【0091】
25.R1及びR2はH、エチル及びメチルから独立して選ばれる、実施形態23又は24記載の方法。
【0092】
26.R1及びR2の少なくとも1つはメチルである、実施形態23~25のいずれか1項記載の方法。
【0093】
27.R1及びR2はメチルである、実施形態23~26のいずれか1項記載の方法。
【0094】
28.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、一般構造(I):
【0095】
【0096】
(上式中、R3は重合性基であり、1つの実施形態において、ビニル、プロペニル及びイソプロペニルから選ばれ、1つの実施形態において、R3はビニルである)のモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができる、実施形態23~27のいずれか1項記載の方法。
【0097】
29.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、モノ-N-及び/又はジ-N-置換アクリルアミドモノマーを含み、1つの実施形態においてN,N-ジメチルアクリルアミドモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができる、実施形態23~28のいずれか1項記載の方法。
【0098】
30.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーはコポリマーであり、1つの実施形態において統計コポリマーである、実施形態23~29のいずれか1項記載の方法。
【0099】
31.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、モノ-N-又はジ-N-置換アクリルアミドモノマー及び/又はO-置換メタクリレートモノマーのコポリマーである、実施形態23~30のいずれか1項記載の方法。
【0100】
32.前記O-置換メタクリレートモノマーは4-ベンゾイルフェニルメタクリレートモノマーである、実施形態31記載の方法。
【0101】
33.前記ポリマーは式(II)又は(IIa):
【0102】
【0103】
(上式中、R4は架橋可能な側基であり、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、1つの実施形態においてmとnの合計は1である)に示される化学構造を有する、実施形態23~32のいずれか1項記載の方法。
【0104】
34.nは0.5~0.99であり、mは0.5~0.01であり、mとnの合計は1である、実施形態23~33のいずれか1項記載の方法。
【0105】
35.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、実施形態28又は29において特定されるモノマー、及び、架橋可能な側基、1つの実施形態においてベンゾフェノン側基を含むモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができるコポリマーである、実施形態23~34のいずれか1項記載の方法。
【0106】
36.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーの合計量に基づいて、1~50モル%、1つの実施形態において2~25モル%、さらなる実施形態において3~10モル%の、架橋可能な側基を含むモノマーに由来する単位を含む、実施形態23~35のいずれか1項記載の方法。
【0107】
37.前記ポリマーは、式(III)、(IIIa)、(IIIb)及び/又は(IIIc):
【0108】
【0109】
(上式中、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、1つの実施形態においてmとnの合計は1である)に示される化学構造を含む、実施形態23~36のいずれか1項記載の方法。
【0110】
38.前記バイオセンサを拡散膜で少なくとも部分的にコーティングすることをさらに含み、前記生体適合性層は最外層である、実施形態1~37のいずれか1項記載の方法。
【0111】
39.前記拡散膜は親水性ポリウレタンポリマーを含む、実施形態38記載の方法。
【0112】
40.インプラント可能なバイオセンサを製造するための生体適合性層の使用であって、前記生体適合性層は、-CO-NR1R2側基(式中、R1及びR2は、-H及びC1~C6アルキルから独立して選ばれ、1つの実施形態において、最大でR1及びR2の1つは-Hである)を有するポリマーを含む、使用。
【0113】
41.R1及びR2は-H及びC1~C3アルキルから独立して選ばれる、実施形態40記載の使用。
【0114】
42.R1及びR2はH、エチル及びメチルから独立して選ばれる、実施形態40又は41記載の使用。
【0115】
43.R1及びR2の少なくとも1つはメチルである、実施形態40~42のいずれか1項記載の使用。
【0116】
44.R1及びR2はメチルである、実施形態40~43のいずれか1項記載の使用。
【0117】
45.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、一般構造(I)
【0118】
【化11】
(上式中、R
3は重合性基であり、1つの実施形態において、ビニル、プロペニル及びイソプロペニルから選ばれ、1つの実施形態において、R
3はビニルである)のモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができる、実施形態40~44のいずれか1項記載の使用。
【0119】
46.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、モノ-N-及び/又はジ-N-置換アクリルアミドモノマーを含み、1つの実施形態においてN,N-ジメチルアクリルアミドモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができる、実施形態40~45のいずれか1項記載の使用。
【0120】
47.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーはコポリマーであり、1つの実施形態において統計コポリマーである、実施形態40~46のいずれか1項記載の使用。
【0121】
48.前記ポリマーは線形ポリマーである、請求項40~47のいずれか1項記載の使用。
【0122】
49.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、モノ-N-又はジ-N-置換アクリルアミドモノマー及び/又はO-置換メタクリレートモノマーのコポリマーである、実施形態40~48のいずれか1項記載の使用。
【0123】
50.前記O-置換メタクリレートモノマーは4-ベンゾイルフェニルメタクリレートモノマーである、実施形態49記載の使用。
【0124】
51.前記ポリマーは式(II)又は(IIa):
【0125】
【0126】
(上式中、R4は架橋可能な側基であり、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、1つの実施形態においてmとnの合計は1である)に示される化学構造を有する、実施形態40~50のいずれか1項記載の使用。
【0127】
52.nは0.5~0.99であり、mは0.5~0.01であり、mとnの合計は1である、実施形態40~51のいずれか1項記載の使用。
【0128】
53.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、実施形態45又は46において特定されるモノマー、及び、架橋可能な側基、1つの実施形態においてベンゾフェノン側基を含むモノマーを含む組成物から得られたものであるか、又は得ることができるコポリマーである、実施形態40~52のいずれか1項記載の使用。
【0129】
54.-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーは、-CO-NR1R2側基を有する前記ポリマーの合計量に基づいて、1~50モル%、1つの実施形態において2~25モル%、さらなる実施形態において3~10モル%の、架橋可能な側基を含むモノマーに由来する単位を含む、実施形態40~53のいずれか1項記載の使用。
【0130】
55.前記ポリマーは、式(III)、(IIIa)、(IIIb)及び/又は(IIIc):
【0131】
【0132】
(上式中、nは0.01~0.99であり、mは0.99~0.01であり、1つの実施形態においてmとnの合計は1である)に示される化学構造を含む、実施形態40~54のいずれか1項記載の使用。
【0133】
56.検体の連続現場決定のための、実施形態1~55のいずれか1項記載のバイオセンサの使用。
【0134】
57.対象における検体の連続決定のための方法であって、前記方法は実施形態1~22のいずれか1項記載のバイオセンサによって前記検体を決定することを含む、方法。
【0135】
58.対象における検体の連続決定のための方法であって、前記方法は、
(a)実施形態1~22のいずれか1項記載のバイオセンサを、前記対象の少なくとも1つの組織に埋め込むこと、及び、
(b)前記センサにより前記検体を決定すること、
を含む、方法。
【0136】
59.前記連続決定は、同じバイオセンサを使用した、少なくとも1週間、1つの実施形態において少なくとも2週間、さらなる実施形態において少なくとも3週間、さらなる実施形態において少なくとも4週間の決定である、実施形態57又は58記載の方法。
【0137】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、それらの開示内容全体及び本明細書で具体的に言及される開示内容に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
図面の説明
【図面の簡単な説明】
【0138】
【
図1a】
図1a:QCM実験におけるタンパク質吸着研究。周波数変化(Δf、[Hz])は時間[min]に対してプロットされており、タンパク質添加及びバッファー洗浄の時点を矢印で示す。a)20分における下方の曲線はp(BUMA/HEMA/HPMA)を使用した実験を表す曲線であり、20分における上方の曲線はp(DMAA)を使用した実験を表す曲線である。試験タンパク質はA)アルブミン及びB)フィブリノーゲンであった。
【
図1b】b)QCM実験におけるポリスチレン(PS)のタンパク質吸着研究。試験タンパク質は、A)アルブミン及びB)フィブリノーゲンであった。
【0139】
【
図2】
図2:機能化されていないガラス表面(-)、p(BUMA/HEMA/HPMA)ポリマーで機能化されたガラス基材、p(DMAA)ネットワーク(p(DMAA))で機能化されたガラス基材又はポリスチレン(PS)に対する20日間のインキュベーション時間後の細胞接着テスト。倍率は2.5倍又は20倍であった。p(DMAA)で20倍の倍率で見える細胞は、基材に付着していない細胞の塊であった。
【0140】
【
図3】
図3:3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT)アッセイ、又は2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキサニリド(XTT)アッセイにおける基準(培地)と比較した%細胞増殖であって、24時間のインキュベーション後に、p(DMAA)でコーティングされたサンプル(p(DMAA))、p(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされたサンプル又はラテックス片から抽出した。未処理の細胞培養培地を100%対照として使用した。ラテックス片を陽性対照として使用し、コーティングを有しないPET基材を陰性対照として使用した。
【0141】
【
図4】
図4:p(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)又はp(DMAA)でコーティングされたPETによって活性化されたフィブリノーゲンと接触するTHP-1細胞による相対的サイトカイン産生。コーティングされていないPETを陰性対照として使用し、PET上に直接コーティングされたフィブリノーゲンを基準として使用した(100%)。フィブリノーゲンで直接コーティングされたPET基材を基準として使用した(100%)。
【実施例】
【0142】
以下の実施例は、本発明を単に説明するものである。それらは、決して本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0143】
実施例において使用される試薬
p(BUMA/HEMA/HPMA):90:5:5のモル比を有するヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びブチルメタクリレートのコポリマー、PS:ポリスチレン、p(DMAA):97%のジメチルアクリルアミドと3%のベンゾフェノンメタクリレートのコポリマー、ラテックス:ACCUTech LOT 1307530704、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液(Lonzaにより入手可能なカルシウム又はマグネシウムを含まないDulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(BE17-512F);0.2g/lのKCl、0.2g/lのKH2PO4、8.0g/lのNaCl、2.16g/l Na2HPO4・7H2O)、滅菌生理食塩水溶液(SPSS)。
【0144】
タンパク質溶液:アルブミン溶液:PBSバッファー中10mg/mL、フィブリノーゲン溶液:PBS:SPSS=1:1の混合物中0.5mg/mL。
【0145】
細胞及び細胞増殖培地:L-929線維芽細胞(ATCC(登録商標)CCL-1(商標); RPMI-培地1640 GlutaMAX(Gibco 72400-021)中に維持され、10%FCS(Sigma F7524)、1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco 11360-070)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco 15140-122)が補充されている。
【0146】
XTTアッセイ:細胞をおよそ105/mLの密度に調整した。この懸濁液のうち、96ウェルプレートのウェルあたり100μLを使用した。
【0147】
実施例1:タンパク質吸着
ポリマー層によるタンパク質吸着は、Q-Sense QSX301デバイスを使用した水晶振動子マイクロバランス(QCM)実験で研究した。これらの実験において、まずQCM基材(Q-Sense)をポリマー又はポリマーネットワークでコーティングした。コーティングされたサンプルを測定セルに入れ、振動させた。共振振動周波数を記録した。その後、サンプル表面をPBS緩衝液で覆い、ポリマーコーティングが平衡状態になるまで膨潤し始め、平衡状態により共鳴振動周波数は変化しなくなった。次に、振動周波数を再度記録し、緩衝液中の最終共振振動周波数を記録することにより、タンパク質吸着実験を開始した。約15分後、サンプルの表面を緩衝液でさらに覆い、タンパク質溶液を測定セルに添加し、サンプルの表面を約15分間覆い、その後、表面を緩衝液で再度洗浄して、付着していないタンパク質を除去した。サンプル表面上に吸着されたタンパク質は周波数の低下を引き起こし、この低下は吸着されたタンパク質の量と相関している。我々の実験において、p(BUMA/HEMA/HPMA)ポリマーをQCM基材表面に直接コーティングした。p(DMAA)ネットワークでの機能化のために、最初にポリスチレン層を基材にコーティングし、その上にp(DMAA)をスピンコーティングでコーティングし、次いで、UV照射によりネットワークとして固定化した。
【0148】
p(BUMA/HEMA/HPMA)及びp(DMAA)ネットワークのタンパク質吸着実験の結果を
図1に示す。表面にアルブミン溶液を添加すると、p(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされた表面を有意な周波数の低下を生じる。この低下の大部分は、バッファーで表面を洗浄することで回復できるが、周波数はベースラインに戻らず、少量のタンパク質がp(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされた表面に不可逆的に吸着されたことを示す。アルブミン溶液をp(DMAA)表面に添加した後に、ずっと低い周波数の低下は観察され、これはバッファーで洗浄することで完全に回復できた。フィブリノーゲン吸着の場合には、p(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされた表面にタンパク質溶液を添加することにより生じる周波数の低下は、バッファーでの洗浄では元に戻せず、吸着されたタンパク質は2Hzの周波数低下を引き起こした。一方、アルブミンと同様に、p(DMAA)でコーティングされたサンプルの周波数は、表面がタンパク質溶液に曝露された後に、わずかしか低下しなかった。バッファーでタンパク質を除去することにより、周波数をベースラインに戻すことができた。したがって、p(DMAA)ネットワークは、アルブミン及びフィブリノーゲン吸着に対する耐性の向上を示した。
【0149】
実施例2:細胞接着
細胞接着を基材としてのガラスカバーガラスで試験した。カバーガラスは石英ガラスからなり、直径1.5cmの円形を有した(VWR、ECN631-1579)。カバーガラスは、各実験工程の間に、コーティングを上向きにして、低発塵及び低細菌環境で24ウェルプレートに単独で保管した。カバーガラスを真空ピンセットで取り扱った。カバーガラスの表面を、スピンコーティングにより直接p(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングした。p(DMAA)コーティングの場合に、最初にカバーガラス表面をスピンコーティングによってポリスチレン(PS)でコーティングし、次にスピンコーティングによってp(DMAA)でコーティングし、その後再びUV照射した(365nm、0.35W/m2、2分)。コーティングを有しないカバーガラス及びPSのみのコーティングを有するカバーガラスを対照として使用した。
【0150】
細胞の微生物汚染を避けるために、コーティングされたカバーガラスは、70%エタノール/水又はパフォーム(Perform)(25%エタノール、35%プロパン-1-オール及び40%水)に15秒間浸し、無菌フード内でカバーガラスを取り扱うことによって滅菌された。滅菌溶液を乾燥させた後に、500μLの細胞増殖培地を含む24ウェルプレートのウェルにカバーガラスを入れた。カバーガラスの下の気泡を、ピンセットでカバーガラスをウェルの底に押し付けることで回避した。使用前に、コーティングされたカバーガラスを細胞増殖培地中で約1時間膨潤させた。
【0151】
L929細胞をT75ボトル又はフラスコで最大90%の集密度まで培養した。Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で洗浄し、次いで、1mLのトリプシン/EDTAを加えることで、細胞を培養ボトルから分離した。細胞を37℃で約5分間トリプシン処理した後に、9mLの培地を加えた。細胞を注意深く再懸濁し、500x gで2分間遠心分離した。細胞ペレットを5mLの新鮮な培地に再懸濁した(最初に10mLの血清ピペットで、次に1mLのエッペンドルフピペットで再懸濁させた)。再懸濁した2mLの細胞を73mLの細胞増殖培地で希釈することにより、細胞密度を調整した。調整した懸濁液のうち、各1mLをカバーガラス上に置き、それにより、ウェルあたり約30,000個の細胞を適用した。播種後に、細胞を標準的なCO2インキュベータで培養した。
【0152】
20日間のインキュベーション時間後のこの実験の結果を
図2に示す。理解されるように、機能化されていないガラス基材の表面は完全に、例えば、集密的に、細胞層で覆われており、この表面が細胞接着に対して耐性がないことを示した。p(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされた表面上において、細胞は最初の3日間は接着できなかった。より長いインキュベーション時間の後に、一部の細胞は表面にうまく不可逆的に付着し、成長及び増殖し始めた。20日後に、p(BUMA/HEMA/HPMA)表面の大部分は細胞で覆われた(
図2)。有意な細胞接着は、p(DMAA)ネットワークでコーティングされた表面では観察されなかった。細胞は20日後にのみ互いに付着し、細胞塊を形成した。サンプルを静かに動かしたときに、細胞塊が浮き上がり、p(DMAA)ネットワークでコーティングされた表面に付着できなかったことが観察された。この実験の結果は、p(DMAA)ネットワークでコーティングされた表面が細胞接着に対して強い耐性を有することを示した。
【0153】
実施例3:毒性試験
毒性試験のために、PET基材(2*2cm)の両面を、p(DMAA)でスピンコーティングし、次いでUV照射を行うことにより、p(DMAA)ネットワークでコーティングした。サンプルを使用前に電子線(25kGy)で滅菌した。3つの試験サンプルを4mLの細胞培養培地に37℃で24時間浸した。インキュベートした細胞培養培地(溶出液)1mLを新しい96ウェルプレートのウェルに移し、L929線維芽細胞を加えてさらに24時間インキュベートし、その後に、細胞の生存率をXTT-テストを使用して測定した。結果は、基準(例えば100%)として未処理の細胞培養培地を使用して、%細胞増殖として示す。したがって、%増殖値が低いほど、細胞内のサンプルの毒性効果が強くなる。ラテックス手袋から切断された断片及びp(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされたPET基材から上記のように調製された溶出液を対照として使用した。例えば、ラテックス手袋から切り取った断片を陽性対照として使用し、コーティングを有しないPET基材を陰性対照として使用した。
図3に示すように、p(DMAA)コーティングはL929細胞上で検出可能な毒性を示さなかった。
【0154】
実施例4:フィブリノーゲンでコーティングされたポリマーによる細胞活性化
ポリマーの炎症誘発可能性を試験するために、ヒト細胞株THP-1を使用した。THP-1細胞は単球様細胞であり、外因性の刺激によって活性化されることができ、該刺激は細胞に培養培地へのサイトカインの分泌を増加させる。この活性化は、誘導材料との表面接触によって直接、又は、材料から放出された可溶性成分によって誘導することができる。さらなる選択肢は、ポリマーの表面との接触により活性化されるフィブリノーゲンによる細胞の活性化である。フィブリノーゲンのこの活性化は、構造の変化を引き起こし、THP-1細胞上の免疫受容体に結合する結合部位を露出させ、それによって細胞の活性化を引き起こす。さらに別の選択肢は、フィブリノーゲン吸着によるコーティング表面上の細胞の活性化である。この表面付着は、フィブリノーゲンの構造変化を引き起こし、それを介して結合部位が露出し、THP-1細胞上の免疫受容体に結合することができ、それによって細胞の活性化が引き起こされる。
【0155】
実験において、小さなPETプレート基材の片側をポリマー(p(BUMA/HEMA/HPMA)又はp(DMAA))でコーティングした。フィブリノーゲンでのコーティングは、2mg/mLのフィブリノーゲンの溶液を基材に添加し、37℃で16時間インキュベートすることにより行った。余剰のフィブリノーゲン溶液を除去し、THP-1細胞を加えた。インキュベータで37℃で48時間インキュベートした後に、上清を細胞から分離し、上清中に解放されたサイトカインを分析した。サイトカイン分析は、BD bioscienceの「Cytometric Bead Array(CBA)」アッセイキット(Human Chemokine Kit及びHuman Inflammatory Cytokine Kit、どちらも製造元の指示に従って)を使用して行った。フィブリノーゲンのみでコーティングされた基材を基準として使用した。
【0156】
p(BUMA/HEMA/HPMA)及びp(DMAA)表面上で観察されたサイトカインレベルは、対照表面上のサイトカインレベルに対して正規化され、
図4に百分率として示す。p(BUMA/HEMA/HPMA)でコーティングされたサンプル及びp(DMAA)でコーティングされたサンプルは、ヒトIL-1β、ヒトTNF及びヒトIL-8の活性化についての比較結果を示した。さらに、サイトカインMCP-1、ヒトVEGFの産生は、p(BUMA/HEMA/HPMA)表面上よりもp(DMAA)表面上でわずかに低かった。興味深いことに、p(DMAA)表面は、p(BUMA/HEMA/HPMA)表面よりも有意に低いヒトIP-10レベルを示した。このテストの結果は、p(BUMA/HEMA/HPMA)と比較して、p(DMAA)ネットワークでコーティングされた表面は生体適合性の向上を示していることを示した。
【0157】
引用文献:
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EP 0 821 234
EP 0 974 303
US 2005/0023152
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WO 2007/012494
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WO 2011/012269
WO 2011/012270
WO 2011/012271
EP 0 354 441
EP 0 431 456
WO 2015/005953 A1
J. Hoenes ら: The Technology Behind Glucose Meters:Test Strips, Diabetes Technology&Therapeutics, Volume 10, Supplement 1, 2008, S-10~S-26。