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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】工業製品製造用の熱処理設備
(51)【国際特許分類】
   F27B 11/00 20060101AFI20230329BHJP
   F27B 19/02 20060101ALI20230329BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
F27B11/00
F27B19/02
F27D5/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020545890
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2018052741
(87)【国際公開番号】W WO2019102092
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】1760986
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520177253
【氏名又は名称】セリザーム
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザンパロ,ジョヴァンニ
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第01247845(FR,A1)
【文献】特開平10-185440(JP,A)
【文献】特表2004-505175(JP,A)
【文献】特開2010-266176(JP,A)
【文献】特開2015-017790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 11/00
F27B 19/02
F27B 5/00-5/18
F27B 9/00-9/40
F27D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる温度特性を有するいくつかのチャンバと、被処理製品(22)を受容するための基部(18)を備えた支持体(1)を備えた、工業製品の製造のための熱処理設備であって、
前記支持体(1)は定置型であり、前記チャンバ(3,4;28,29,30)は軸線(7)周りに分散され、機械的手段(6,10)が、前記基部(18)と前記チャンバ(3,4;28,29,30)の相対移動および1つのチャンバと前記基部の間の結合を提供し、
前記機械的手段(6,10)は前記チャンバ(3,4;28,29,30)の組を前記軸線(7)周りに枢動させる電動式枢軸(6)と、前記基部(18)と前記チャンバの組(3,4;28,29,30)の相対移動を引き起こすための油圧シリンダー(10)を備えていることを特徴とする、熱処理設備。
【請求項2】
前記チャンバ(3,4;28,29,30)の前記軸線(7)は水平軸であることを特徴とする、請求項に記載の設備。
【請求項3】
前記基部(18)と前記チャンバ(3,4;28,29,30)の相対移動は垂直移動であることを特徴とする、請求項に記載の設備。
【請求項4】
前記垂直移動は、前記基部(18)に対する前記チャンバ(3,4;28,29,30)の移動であることを特徴とする、請求項に記載の設備。
【請求項5】
前記垂直移動は、前記チャンバ(3,4;28,29,30)に対する前記基部(18)の移動であることを特徴とする、請求項に記載の設備。
【請求項6】
前記チャンバの組は2つのチャンバ(3,4)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の設備。
【請求項7】
前記チャンバの組は3つのチャンバ(28,29,30)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品製造用の熱処理設備に関し、特に、複合材料および/または3D印刷の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この分野において、工業製品の製造に必要とされるオペレーションは、熱処理および/または制御雰囲気下での処理を含む。これら特定の処理は専用チャンバ内で実行され、専用チャンバ内の温度、圧力および/または雰囲気条件が、場合によっては長時間になり得る期間にわたり制御され維持され得る。これらのチャンバは、例えば、緩和チャンバ、蒸発または炭化による製造バインダーの除去のためのバインダー除去オーブン、焼成釜、乾燥または脱水オーブンである。往々にして、製造工程において、工業製品は、例えば乾燥チャンバと焼成チャンバ、またはバインダー除去チャンバと高温焼結チャンバのように異なる機能を有するいくつかのチャンバで逐次処理される。チャンバはそれぞれ特定の処理に特化しているため、製造工程中の工業製品は、各チャンバの位置と特定のレイアウトに対応するような方式でハンドリングされる。製造工程中の工業製品は、チャンバの利用可能性、それらの寸法特性およびそれらが受容するまたは指示するサポートの性質に従って分散される必要がある。さらに、チャンバは専用であるため、それらの処理時間は一般に固定されている。
【0003】
特許文献1は、異なる温度特性を備えた3つの固定チャンバを備えた、セラミック製品の焼成のための装置を記載しており、その処理温度は1400℃に達し得る。被処理製品は、チャンバ間で移動され得るトロリーに配置される。
【0004】
特許文献2は、処理済み製品を冷却するためと、被処理製品を供給するために交互に使用される2つの対向する入口を備えた電気加熱オーブンを記載している。有効なチャンバは1つのみであり、被処理製品は、トロリーを用いて水平に移動される。
【0005】
熱処理を利用する革新的な工業製品の場合、処理時間は適合可能である必要がある。1つの欠点は、製品の空間的レイアウトが各チャンバ内で利用可能な容積に合うように適合された状態で、製品を1つの処理チャンバから別の処理チャンバに移設する必要から派生する。これらの移設に伴うハンドリングオペレーションは数多くの困難の源である。それらは、構成要素の欠陥をもたらし得る。それらは、処理オペレーションの高速のシーケンシングとその自動化を妨げる。それらは、多額の投資コストを表し、多くの場合、それらを監視するオペレータの存在を要する。それらは、種々の処理段階間での、一般に冷却である製品の温度の変動につながり、これは直ちに製品の品質へのリスク、小さくはないエネルギーの浪費、および設備の生産性に関する損失を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】仏国特許第1247845号明細書
【文献】独国特許第1221253号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、上述の欠点を回避する、工業製品製造用の熱処理設備を提案することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、製品のハンドリングが、熱処理オペレーション間で、実働処理量における製品のスタッキングと分散に対応する製品の空間的整理に関する介入なしで、処理前の配置および除去後処理のオペレーションに製品のハンドリングが縮減される工業製品の製造のための熱処理設備を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題は、異なる温度特性を有するいくつかのチャンバと、被処理製品を受容するための基部を備えた支持体とを備えた工業製品の製造のための熱処理設備であり、支持体は定置型であり、チャンバは軸線周りに分散され、機械的手段が、基部とチャンバの相対移動およびチャンバと基部の間のカップリングを提供することを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、機械的手段はチャンバの組を軸線周りに枢動させる電動枢軸と、基部とチャンバの組の相対移動を引き起こすための油圧シリンダーを備えている。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、チャンバの枢軸は水平軸である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、基部とチャンバの相対移動は垂直移動である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、垂直移動は、基部に対するチャンバの移動である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、垂直移動はチャンバに対する基部の移動である。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、チャンバの組は2つのチャンバを含む。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、チャンバの組は3つのチャンバを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】安定化および/またはバインダー除去用第1チャンバへの製品の配置前の本発明による工業製品の製造のための熱処理設備の垂直断面図である。
図2】高温焼結第2チャンバへの製品の配置前の図1の熱処理設備の垂直断面図である。
図3】高温焼結第2チャンバへの製品の配置後の図2の熱処理設備の垂直断面図である。
図4図3の熱処理設備の左側からの図である。
図5図3の熱処理設備の右側からの図である。
図6】3つのチャンバが備わった本発明による熱処理設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態によれば、工業製品の製造のための熱処理設備は本質的に、被処理工業製品を受容するための固定支持体1と、いくつかの熱処理チャンバを担持する固定構台2から構成されている。
【0019】
図1の実施形態において、チャンバは安定化およびバインダー除去チャンバ3と高温焼結チャンバ4である。この2つのチャンバ3および4は、構台2によって担持された水平軸7の電動式枢軸6に固定された担持構造5内に収容されている。図1において、2つのチャンバ3および4は共通の垂直軸8を有し、安定化およびバインダー除去チャンバ3は、その開口部を固定支持体1の上にして配置されている。
【0020】
図2において、水平軸7の周りでの180°の回転後に、高温焼結チャンバ4は、その開口部を固定支持体1の上にして配置される。枢軸6は、好ましくは油圧シリンダーであるシリンダー10によって構台2内で垂直に移動され得るキャリッジ9によって担持される。
【0021】
安定化およびバインダー除去チャンバ3は、数百度Cの温度で動作する。安定化およびバインダー除去チャンバ3は、抵抗加熱素子12で包囲され、鉱物綿などの低温断熱材13でライニングされた密封ベルハウジング11で構成される。
【0022】
高温焼結チャンバ4は、1600℃前後まで高くなり得る温度で動作する。高温焼結チャンバ4は耐火レンガ14およびセラミックまたは鉱物綿製であり、そのアクティブキャビティ16は抵抗加熱素子15で包囲されている。アクティブキャビティ16はパラペット17によって縁取られている。
【0023】
固定支持体1は、被処理工業製品22を受容できるプレート21が上に載るリム20を備えた耐火保護部19を担持する基部18を備えている。プレート21の下に、基部18を貫通し処理チャンバ3または4を雰囲気制御システム24に接続するダクト23が開いている。雰囲気制御システム24は、ファン25によって、製品22の熱処理から生じたガスを抽出して、OCの二次燃焼のための区域26で処理し、送気管27を介してそれを排出する。雰囲気制御システム24は、チャンバ3または4に、与圧ガス貯留部から、処理中の特定の段階で窒素等の特定のガスを供給することもできる。
【0024】
図1乃至5の第1の実施形態において、キャリッジ9は上昇位置にあり、安定化およびバインダー除去チャンバ3は支持体1の上に提示されている。被処理製品22は、基部18によって担持されたプレート21上に配置されている。シリンダー10は、チャンバ3の縁が基部18に密封状態で当接するまでキャリッジ9を下降させる。安定化およびバインダー除去処理後に、シリンダー10はキャリッジ9を上げて上昇位置に戻す。枢軸6は、焼結チャンバ4が支持体1の上に提示されるように担持構造5を180°まで回転させる。シリンダー10は、チャンバ4の縁が基部18に密封状態で当接するまでキャリッジ9を下降させる。同時に、チャンバ4のアクティブキャビティ16のパラペット17は、基部18によって担持される耐火保護部19のリム20に密封状態で当接する。高温焼結処理後に、シリンダー10はキャリッジ9を上げて上昇位置に戻し、処理済み製品20はプレート21から取り出され得る。
【0025】
図6に模式的に示された第2の実施形態において、固定支持体1は、被処理製品22を担持する基部18によって象徴され、枢軸6は、描写していない担持構造5を介して、3つのチャンバ、すなわち乾燥チャンバ28、バインダー除去チャンバ29および高温焼成チャンバ30を担持する。枢軸を下降および上昇させるオペレーションは、上述のようにシリンダー10によって実行される。担持構造5の回転は、1つのチャンバから次のチャンバに移動するために120°までである。
【0026】
同様に図6の概要に対応する第3の実施形態において、構台2は枢軸6に固定された高さで当接し、基部18はシリンダーによって垂直に移動され得る。乾燥チャンバ28は基部18の上に位置決めされている。被処理製品22が基部18上に配置されている。シリンダーは基部18を乾燥チャンバ28のところまで上昇させる。乾燥オペレーションの後で、シリンダーは基部18を下降させる。枢軸6は、担持構造の120°までの回転を提供し、バインダー除去チャンバ29は基部18の上に提示される。シリンダーは基部18をバインダー除去チャンバのところまで上昇させる。バインダー除去後に、シリンダーは基部18を下降させ、枢軸6は120°までの回転を提供して高温焼成チャンバ30を提示する。シリンダーは基部18をチャンバ30のところまで上昇させ、焼成後に、処理済み製品22を回収できるように基部18を下降させる。
【0027】
この第3の実施形態では、基部18のみが垂直移動の対象となる。これは、基部の重みが、3つのチャンバ28,29,30が備わった担持構造5よりも顕著に小さいため、一定の省エネルギーをもたらす。一変形実施形態によれば、チャンバを担持する担持構造の枢軸は垂直軸を有し、チャンバは、開口部が下向きになった状態で担持構造上に並置されている。枢軸の、その垂直軸上での回転がチャンバの切り替えをもたらす。こうしてチャンバの個数は4個に増加され得る。基部をチャンバ内に配置するための垂直移動は、チャンバを下降させるかまたは基部を上昇させることによって提供され得る。
【0028】
本発明は、逐次熱処理のために、実働処理量における製品のスタッキングまたは分散等の製品の空間的整理への介入なしで、被処理製品上に逐次配置される専用チャンバの使用を特徴とする。基部は製品を受け入れ、製品がハンドリングされることなく、および/または制御のための人の介入なしで、処理チャンバそれぞれに逐次結合される。この工程は、各製造ステップが後続処理に連結することが必須である製造法に特によく適合する。例として、3D印刷の場合、製造時間は数十時間続き得る。製造バッチはプリンタの作業量に対応する。製造後、製品は脆弱であるため安定化の必要がある。安定化または緩和処理は、温度と相対湿度を制御した雰囲気内で48時間続き得る。次に、バインダー除去操作は、製品に含まれるバインダーを気化燃焼によって除去させることからなり、気化は真空または中性雰囲気下で実行されることが可能である。この操作は製品の複雑さに応じて2日乃至3日続き得る。製品を破壊する可能性がある急速過ぎる燃焼を回避するために、酸素濃度と温度が制御される。加熱は、ガスと加熱素子間の接触を回避するために電気式または間接的である必要がある。バインダー除去操作は、汚染ガスの分散を回避するために密封したベルハウジング下で実行される。一例示的実施形態によれば、区域26内の二次燃焼は、バインダー除去から生じるVOCを焼き切るために予定される。汚染されたガスは、ダクト23を介して基部から取り出される。
【0029】
上述の例示的実施形態において、説明した第2の操作は、バインダー除去のために密封チャンバを使用する。この密封チャンバは、真空または特定のガス雰囲気下での任意のタイプの熱処理に使用され得る。
【0030】
第3の操作は、1650℃までの高温での約24時間の焼成または焼結操作からなる。この操作は、バインダー除去チャンバのベルハウジングがその焼結温度に耐え得ないため、特別のチャンバ内で実行される必要がある。
【0031】
本発明による熱処理設備の利点は数限りない。単一の基部といくつかのチャンバを備えることは、ハードウェアの大部分と制御機能の大部分、特に、雰囲気制御と反応ガス抽出のためのガス入口および出口、その一部が多機能であるガスアナライザおよびセンサ、電力調整および制御システム、断熱、および基部と種々のチャンバの相対位置決めのための機構、を基部に一纏めにすることを可能にする。被処理製品の周りで移動せずに、熱処理操作が繋がれているという事実は、処理条件における迅速な変更を確実にし、製品劣化のリスクを低減し、省エネルギーをもたらす。
【0032】
最後に、熱処理工程の種々のステップによるチャンバの移動の自動化は、数日に及び得る工程期間にわたり、人員の存在を省く。
【符号の説明】
【0033】
1 支持体
3,4、28,29,30 チャンバ
6 電動式枢軸
7 軸線
8 枢軸
9 キャリッジ
10 油圧シリンダー
12、15 抵抗加熱素子
16 アクティブキャビティ
17 パラペット
18 基部
19 耐火保護部
20 リム
22 被処理製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6