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特許7252979ポリオール修飾ポリアルケニレンテレフタレートを製造するための連続プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ポリオール修飾ポリアルケニレンテレフタレートを製造するための連続プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/20 20060101AFI20230329BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20230329BHJP
   C07C 67/03 20060101ALI20230329BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C08G63/20
C07C69/82 B
C07C67/03
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020566971
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019064189
(87)【国際公開番号】W WO2019229237
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】18175592.7
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513284830
【氏名又は名称】エランタス ピー・ディー・ジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ELANTAS PDG, INC.
【住所又は居所原語表記】5200 N. Second Street, St. Louis, Missouri 63147, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】514191531
【氏名又は名称】アルタナ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マレー トーマス ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】バラドウェイ アディッティア
(72)【発明者】
【氏名】ハービソン ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】アスケボルド ビョルン
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-307779(JP,A)
【文献】特表2001-509197(JP,A)
【文献】特開平10-245478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 - 63/91
C07C 69/00 - 69/96
C07C 67/00 - 67/62
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを製造するための連続プロセスであって、
(a)反応ゾーンを含む連続反応器の中に、i)ポリアルキレンテレフタレート、ii)ポリオール、iii)エステル転移触媒及び1つ以上の任意選択の成分を導入するステップと、
(b)前記連続反応器の前記反応ゾーンにおいて、前記導入された成分を180℃~350℃の範囲の温度で反応させて、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを製造するステップと
を含み、
ステップa)のポリオールii)は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートであって、任意選択で、第2のポリオールをさらに含み、ステップ(a)において前記連続反応器の中に導入されるポリオールii)の量が、100gのポリアルキレンテレフタレートi)あたり0.5molから5molのOH基であり、
ステップb)は、ポリアルキレンテレフタレートi)の融解物で実施される、連続プロセス。
【請求項2】
連続プロセスが、押出機で実施される、請求項1に記載の連続プロセス。
【請求項3】
ポリアルキレンテレフタレートi)の前記融解物が、溶媒を実質的に有さない、請求項1又は2に記載の連続プロセス。
【請求項4】
ステップb)が、溶媒の不在下でポリアルキレンテレフタレートi)の前記融解物で実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の連続プロセス。
【請求項5】
ポリアルキレンテレフタレートi)が、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の連続プロセス。
【請求項6】
ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートのMn(数平均)分子量が、800~3000ダルトンの範囲にある、請求項1からのいずれか一項に記載の連続プロセス。
【請求項7】
ステップa)において導入されるエステル転移触媒iii)の量が、成分i)、ii)及びiii)の合計に基づいて算出された100~10000ppmの範囲にある、請求項1からのいずれか一項に記載の連続プロセス。
【請求項8】
前記エステル転移触媒iii)が、ルイス酸である、請求項1からのいずれか一項に記載の連続プロセス。
【請求項9】
第2のポリオールが、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びそれらの混合物から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の連続プロセス。
【請求項10】
前記連続反応器からポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを除去するステップc)をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の連続プロセス。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の連続プロセスによって得られたポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを溶解するプロセスであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の連続プロセスに、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを溶媒に溶解して、溶解したポリオール修飾ポリアルキレン(polylakylene)テレフタレートを製造するステップd)が続き、任意選択で、添加剤及び希釈剤から選択される1つ以上のさらなる成分が、溶解したポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートに添加される、プロセス。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の連続プロセスによって得られた修飾ポリアルキレンテレフタレートをワイヤに塗布するプロセスであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の連続プロセスに、任意選択で、溶媒の存在下で、ポリオール修飾ポリアルキレン(poylakylene)テレフタレートをワイヤに塗布するステップが続き、任意選択で、添加剤及び希釈剤から選択される1つ以上のさらなる成分が、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートに添加される、プロセス。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の連続プロセスによって得られた修飾ポリアルキレンテレフタレートをワイヤに塗布するプロセスであって、請求項11に記載のプロセスに、請求項11に記載のプロセスで得られた溶解したポリオール修飾ポリアルキレン(poylakylene)テレフタレートをワイヤに塗布するステップが続き、任意選択で、添加剤及び希釈剤から選択される1つ以上のさらなる成分が、溶解したポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートに添加される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール修飾ポリアルケニレンテレフタレートを製造するための連続プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートは、ワイヤエナメルの製造において使用される十分に確立された材料であり、特に、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート含有ポリエステルは、マグネットワイヤコーティングとして広く使用されてきた。
【0003】
ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートは、例えば、特許文献1に記載されるように、普通、バッチ式反応器中で、対応するモノマーの重縮合(polycondenstation)によって、又はポリエステルのエステル転移によって製造され得る。このプロセスの不利点は、バッチ式反応器を用いてそれを作業することは時間がかかり、モノマー並びに得られたポリマーは、溶媒、普通、クレゾール溶媒に溶解されなければならないことである。
【0004】
クレゾール溶媒は、環境に対して有害であると分類される。ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートが、重縮合(polycondenstation)によって製造される場合には、水が反応生成物として形成される。このような水の廃棄は、溶媒によって汚染されているので費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4,849,465号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、工業規模でのポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートの製造のためには、溶媒の使用を大幅に低減するか、又は含まない、時間及び費用効率の良いプロセスが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの問題は、本発明のプロセスによって解決される。
【0008】
本発明は、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを製造するための連続プロセスであって、
(a)反応ゾーンを含む連続反応器中に、i)ポリアルキレンテレフタレート、ii)ポリオール及びiii)エステル転移触媒及び1つ以上の任意選択の成分を導入するステップと、
(b)反応器の反応ゾーンにおいて、導入された成分を180℃~350℃の範囲の温度で反応させて、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを製造するステップと
を含み、
ステップa)のポリオールii)は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びグリセリンから選択され、任意選択で、第2のポリオールをさらに含み、
ステップb)は、ポリアルキレンテレフタレートi)の融解物で実施される、連続プロセスに関する。
【0009】
本発明のプロセスは、連続反応器で実施される。好ましくは、本発明のプロセスは、押出機で実施される。押出機では、高温を達成することができ、これによって、融解相でのポリアルキレンテレフタレート(therepthalate)及びその高粘度の取り扱いが可能となる。従来のバッチ式反応器は、溶媒を使用せずにポリアルキレンテレフタレートを融解するために必要な高温又は撹拌を取り扱うことができない。
【0010】
したがって、本発明のプロセスは、ポリアルケニレンテレフタレートの融解物中で実施されてもよく、その結果、溶媒なしで実施され得るプロセスへの溶媒の使用が大幅に削減される。
【0011】
本発明によれば、ポリアルキレンテレフタレートの融解物は、任意選択で、1つ以上の溶媒を含み、融解物中の溶媒の量は、ステップa)において充填されたポリアルキレンテレフタレートに対して20重量%未満であり、より好ましくは、15重量%未満の量で、より好ましくは、10重量%未満の量で、より好ましくは、5重量%未満の量で、より好ましくは、3重量%未満の量で、より好ましくは、2重量%未満の量で、より好ましくは、1重量%未満の量である。
【0012】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、ステップb)は、ポリアルキレンテレフタレートの融解物で実施され、ポリアルキレンテレフタレートの融解物は、溶媒を実質的に含まない。
【0013】
溶媒を実質的に含まない、少量又は低減された量の溶媒とは、溶媒が、ステップa)において充填されたポリアルキレンテレフタレートに対して、好ましくは、20重量%未満の量であり、より好ましくは、15重量%未満の量で、より好ましくは、10重量%未満の量で、より好ましくは、5重量%未満の量で、より好ましくは、3重量%未満の量で、より好ましくは、2重量%未満の量で、より好ましくは、1重量%未満の量であることを意味する。
【0014】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態では、ステップb)は、溶媒の不在下でポリアルキレンテレフタレートの融解物で実施される。
【0015】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、ポリアルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである。
【0016】
本発明のプロセスでは、ポリオールは、ポリアルキレンテレフタレートを修飾するために使用される。
【0017】
ポリオールは、複数のヒドロキシル基を含有する有機化合物である。2つ以上のヒドロキシル基を有する分子は、ポリオールであり、例えば、2つを有する場合は、ジオールであり、3つを有する場合は、トリオールであり、4つを有する場合は、テトロールであるなど。
【0018】
本発明の好ましいポリオールとして、2つ又は3つのヒドロキシル基を有するポリオールがあり、3つのヒドロキシル基を有する場合が最も好ましい。
【0019】
本発明のより好ましいポリオールは、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びグリセリンから選択される。
【0020】
第2のポリオールとしてより好ましいポリオールは、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びそれらの混合物から選択される。
【0021】
最も好ましいポリオールとして、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)がある。
【0022】
S.Inoueら(Kobunshi Ronbunshu、54巻、6号、407~411頁、1997年)に記載のとおり、THEICは、アルカリ金属酸化物の存在下で130℃で分解する。また、米国特許第4,849,465号には、THEICは、過剰のエチレングリコールの存在下で安定ではないことが記載されている。類似して、他の適したポリオールの融点は、例えば、ペンタエリスリトールについて260℃、トリメチロールプロパンについて60℃である。
【0023】
ポリアルキレンテレフタレート、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートは、少なくとも250℃の温度で融解する。
【0024】
したがって、このような高温で劣化する又は分解する、ポリオールを使用するエステル転移反応が、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレート(therepthalate)を生成するであろうということは驚くべきことである。特に、触媒の存在下でのポリオールの分解反応を考慮すると、このプロセスにおける場合のように、より低い温度でさえ開始する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のプロセスのステップa)において導入されるポリオールii)の量は、100gのポリアルキレンテレフタレートi)あたり少なくとも0.5molのOH基である。
【0026】
より好ましくは、本発明のプロセスのステップa)において導入されるポリオールii)の量は、100gのポリアルキレンテレフタレートi)あたり0.5~5molのOH基の範囲に、より好ましくは、100gのポリアルキレンテレフタレートi)あたり0.5~4molのOH基の範囲に、より好ましくは、100gのポリアルキレンテレフタレートi)あたり0.5~3molのOH基の範囲に、より好ましくは、100gのポリアルキレンテレフタレートi)あたり0.5~2molのOH基の範囲にある。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートのMn分子量は、800~3000ダルトンの範囲にある。好ましくは、800~2500ダルトンの範囲に、より好ましくは、800~2000ダルトンの範囲に。
【0028】
本発明のプロセスでは、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートの分子量は、連続反応器の真空若しくは圧力及び/又は温度を調整して制御され得る。特に、バッチ式プロセスと比較して過剰のグリコールは、満足のいくワイヤコーティングを作製しないであろう極めて低い分子量のオリゴマーを生成させるであろう。
【0029】
この調整によって、反応生成物としてのエチレングリコールのレベルが制御されることが可能であり、結果として、最終生成物の所望の分子量が影響を受け得る。
【0030】
本発明の目的の1つは、バッチ式プロセスにおいて得られるポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートの同様の特性を有するポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを連続プロセスによって得ることである。本発明の連続プロセスによって得られるポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートは、バッチ式プロセスにおいてと同様の方法で、特に、ワイヤエナメルで使用及び適用され得る。
【0031】
本発明の意味内で、ステップa)において導入されるエステル転移触媒ii)は、エステルに結合された有機基を、アルコールに結合された有機基と交換するエステル転移反応を触媒できる酸又は塩基触媒である。
【0032】
本発明の範囲のために、エステル転移反応に適した任意の触媒が使用され得る。
【0033】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、ステップa)において導入されるエステル転移触媒iii)は、ルイス酸である。
【0034】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、チタン化合物、亜鉛化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、ゲルマニウム化合物、イオン性液体及び鉛化合物から選択されるルイス酸。
【0035】
本発明の最も好ましい実施形態では、エステル転移触媒は、酢酸亜鉛及びテトラ-n-ブチルチタネート(TNBT)から選択される。
【0036】
好ましい実施形態では、エステル転移触媒は、成分i)、ii)及びiii)の合計に基づいて算出された少なくとも100ppmの量で存在する。好ましくは、エステル転移触媒は、100~10000ppmの範囲にある。より好ましくは、500~5000ppmの範囲に、最も好ましくは、1000~3000ppmの範囲に。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明のプロセスにおいて使用される押出機又は連続反応器は、異なる温度ゾーンを有する。好ましくは、押出機又は連続反応器は、供給ゾーンと、1つ以上の反応ゾーンを有する。
【0038】
供給(feed)ゾーン又は供給(feeding)ゾーンとは、成分が反応器中に導入される連続反応器のゾーンである。
【0039】
反応ゾーンとは、反応が起こる連続反応器のゾーンである。連続反応器では、1つ以上の反応ゾーンが存在し得る。好ましくは、本発明の連続反応器は、1つ、2つ、3つ又は4つの反応ゾーンを有する。
【0040】
好ましい実施形態では、すべてのゾーンが、異なる温度で働く場合がある。
【0041】
さらに好ましい実施形態では、供給ゾーン及び反応ゾーンは、同一温度で働く。
【0042】
別の好ましい実施形態では、供給ゾーンは、反応ゾーン(複数可)よりも低い温度を有する。
【0043】
誤解を避けるために、本発明の意味内で、供給ゾーンではない連続反応器又は押出機の任意のゾーンは、反応ゾーンである。
【0044】
好ましくは、反応器の供給ゾーンは、100℃~300℃の範囲の、好ましくは、100℃~200℃の範囲の温度を有し、より好ましくは、反応器の供給ゾーンは、100℃~150℃の範囲の温度を有する。
【0045】
好ましくは、反応器の反応ゾーン各々の温度は、同一である場合も、異なる場合もあり、200℃~350℃の範囲に、より好ましくは、250℃~350℃の範囲に、より好ましくは、250℃~320℃の範囲に、より好ましくは、270℃~350℃の範囲に、最も好ましくは、270℃~320℃の範囲にある。
【0046】
別の実施形態では、反応ゾーンの各々は、同一温度で働く。
【0047】
別の実施形態では、反応ゾーンの各々は、2つ、3つ又は4つの異なる温度で働く。
【0048】
本発明のプロセスの別の好ましい実施形態では、押出機の各温度ゾーンは、異なる温度で働く。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、成分i)ポリアルキレンテレフタレート、ii)ポリオール及びiii)エステル転移触媒は、供給ゾーンによって、ステップa)において反応器中に導入される。
【0050】
任意選択で、添加剤又は少量の1つ以上の溶媒、好ましくは、1つの溶媒が、供給ゾーンによって反応器に導入される。
【0051】
別の実施形態では、本発明のプロセスは、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを反応器から除去するステップc)をさらに含む。
【0052】
別の実施形態では、本発明のプロセスは、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを反応器から除去するステップc)と、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを溶媒に溶解して、溶解したポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを製造するステップd)とをさらに含む。
【0053】
別の実施形態では、本発明のプロセスは、任意選択で、添加剤及び希釈材から選択される1つ以上のさらなる成分の存在下で、及び任意選択で、1つ以上の溶媒、好ましくは、1つの溶媒の存在下で、溶解したポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートをワイヤに塗布するステップe)をさらに含む。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを製造するために、本発明のプロセスによって得られたポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを溶解するためのプロセスに関し、本発明のプロセスに、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを溶媒に溶解して、溶解したポリオール修飾ポリアルキレン(polylakylene)テレフタレートを製造するステップd)が続く。任意選択で、ステップd)では、添加剤及び希釈剤から選択される1つ以上のさらなる成分が、溶解したポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートに添加される。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、ポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを製造するための本発明のプロセスによって得られたポリオール修飾ポリアルキレン(polyakylene)テレフタレートを溶解するプロセスによって得られた溶解したポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートを、ワイヤに塗布するプロセスに関し、ポリオール修飾ポリアルキレン(polyakylene)テレフタレートを溶解するプロセスに、溶解したポリオール修飾ポリアルキレン(polyakylene)テレフタレートをワイヤに塗布するステップが続く。任意選択で、添加剤及び希釈剤から選択される1つ以上のさらなる成分が、溶解したポリオール修飾ポリアルキレンテレフタレートに添加される。
【0056】
本発明の意味内で、ポリアルケニレンテレフタレートの融解物において使用される溶媒は、ポリアルケニレンテレフタレートを溶解できる溶媒であり、好ましくは、それらはワイヤエナメル適用に適している。
【0057】
好ましい溶媒は、クレゾール溶媒又はフェノール溶媒である。好ましくは、クレゾール酸、フェノール又はそれらの混合物。
【0058】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、溶解したポリオール修飾ポリアルキレン(polyalkylelene)テレフタレートは、添加剤をさらに含む。
【0059】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、添加剤から選択される1つ以上の成分は、ステップa)において反応器に導入される。
【0060】
本発明のプロセスの別の好ましい実施形態では、少量の1つ以上の溶媒、好ましくは、1つが、ステップa)において反応器に導入される。
【0061】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、添加剤は、フェノール樹脂、ブロックイソシアネート、テトラ-n-ブチルチタネート(TNBT)、希釈剤及び流動添加剤から選択される。
【0062】
流動添加剤は、コーティング面を改善するシリコン流体などの材料である。
【0063】
希釈剤は、例えば、Solvent 100、キシレン及び本発明のポリマーの粘度を低減するために導入される他の溶媒である。
【0064】
最も好ましい実施形態では、本発明は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート修飾ポリエチレンテレフタレートを製造するための連続プロセスであって、
(a)反応ゾーンを含む押出機に、i)ポリエチレンテレフタレート、ii)トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、iii)酢酸亜鉛又はテトラ-n-ブチルチタネート及び1つ以上の任意選択の成分から選択されるエステル転移触媒を導入するステップと、
(b)250℃~350℃の範囲の温度で押出機の反応ゾーンにおいて導入された成分を反応させて、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート修飾ポリエチレンテレフタレートを製造するステップと
を含み、
ステップb)は、好ましくは、溶媒を実質的に含まないポリエチレンテレフタレートの融解物で、より好ましくは、溶媒の不在下で実施される、連続プロセスに関する。
【0065】
本発明を以下の実施例によってより詳細に説明する。
【0066】
略語のリスト
PET ポリエチレンテレフタレート(polyethylentherephtalate)
PBT ポリブチレンテレフタレート
THEIC トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
RPM 1分あたりの回転数
TNBT テトラ-n-ブチルチタネート
GPC ゲル透過クロマトグラフィー
TMP トリメチロールプロパン
THF テトラヒドロフラン
数平均分子量
重量平均分子量
【実施例
【0067】
すべての実験は、Brabender Co-Rotating Clamshell Twin Screw押出機モデル20/40Dを使用して実施した。押出機は、4つの加熱ゾーン、ダイアダプター加熱ゾーン及びダイ加熱ゾーンを含有していた。特に断りのない限り、第1の加熱ゾーンは供給ゾーンであり、残りのゾーンは反応ゾーンである。スクリュー設計には、順方向及び逆方向の搬送要素、順方向及び逆方向の混練ブロック、及び歯の要素が含まれていた。ポリエチレンテレフタレート(PET)(SKC Films Inc.)は、シングルスパイラルスクリュー定量供給機を介して供給した。トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)並びにシアヌル酸は、ツインコンケーブスクリュー定量供給機又はシングルオージェスクリュー定量供給機のいずれかを介して供給した。酢酸亜鉛又はテトラ-n-ブチルチタネート(TNBT)のいずれかを触媒として使用し、THEIC又はPETと予混合した。触媒の量が重量%で示されている場合には、このような量は、成分の総量に基づいて算出されている。すべての材料は、3Lのステンレススチールホッパーを介して投与した。特に断りのない限り、追加の装置は使用しなかった。
【0068】
(例1_比較例)
PETを、すべての温度ゾーンを270℃に設定して供給した。PET供給速度は、15g/分とし、押出機スクリュー速度は、100RPMに設定した。PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。得られた生成物は室温で固体であり、THFに不溶性であった。サンプルは、テトラヒドロフラン(THF)中でGPCによって測定できなかった。おそらくは、得られたポリマーの分子量が大きすぎ、したがって、THFに溶解できなかった。
【0069】
(例2_比較例)
PET及びTHEICを、触媒を用いず、すべてのゾーンを270℃に設定して供給した。PET及びTHEICの供給の速度は、それぞれ、15g/分及び12g/分とした。押出機スクリュー速度は、100RPMに設定した。得られたプラスチックを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。得られた生成物は室温で固体であり、THFにほとんど不溶性であった。分解は、材料の暗色化によって観察された。サンプルは、THF中でGPCによって測定できなかった。
【0070】
(例3)
PET及びTHEIC/酢酸亜鉛触媒プレミックスを、すべてのゾーンを270℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.43重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、15g/分及び12g/分とし、100gのPETあたり0.92molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、100RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。数及び重量平均分子量は、ワイヤエナメルコーティングにおいて使用されるバッチ製造されたTHEICポリエステルポリマーと同等である。赤外スペクトルは、従来のバッチ式プロセスによって製造されたTHEICポリエステルポリマーと一致する。H及び13C NMRもまた、バッチ式プロセスによって製造された材料と一致する。
【0071】
(例4)
PET及びTHEIC/酢酸亜鉛触媒プレミックスを、すべてのゾーンを300℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.43重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、15g/分及び12g/分とし、100gのPETあたり0.92molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、100RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。数及び重量平均分子量は、ワイヤエナメルコーティングにおいて使用されるバッチ製造されたTHEICポリエステルポリマーと同等である。赤外スペクトルは、従来のバッチ式プロセスによって製造されたTHEICポリエステルポリマーと一致する。H及び13C NMRもまた、バッチ式プロセスによって製造された材料と一致する。
【0072】
(例5)
PET及びTHEIC/酢酸亜鉛触媒プレミックスを、すべてのゾーンを270℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.86重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、15g/分及び12g/分とし、100gのPETあたり0.92molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、100RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。数及び重量平均分子量は、ワイヤエナメルコーティングにおいて使用されるバッチ製造されたTHEICポリエステルポリマーと同等である。赤外スペクトルは、従来のバッチ式プロセスによって製造されたTHEICポリエステルポリマーと一致する。H及び13C NMRもまた、バッチ式プロセスによって製造された材料と一致する。
【0073】
(例6_バッチ式プロセス)
機械的撹拌、窒素パージ及び加熱マンテルを備えたフラスコに、テレフタル酸(190g)、THEIC(170g)、エチレングリコール(52g)及びテトラブチルチタネート触媒(0.4g)を添加した。クレゾール酸溶媒(30g)を添加した。成分を220℃の温度に加熱し、水を除去して、12時間後に透明なプラスチック樹脂を形成した。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。赤外スペクトル、H及び13C NMRは、クレゾール酸溶媒の除去後にとった。
【0074】
例1~6から、連続反応器又は押出機を使用して、バッチ式プロセスと同等であるTHEICポリエステルを製造できることは明らかである。また、反応が合理的な時間量で起こるためには、PET、ポリオール及び触媒が存在することも重大である。触媒の高い負荷量レベルはまた、反応速度を増大する。
【0075】
【表1】
【0076】
(例9)
PET及びTHEIC/酢酸亜鉛触媒プレミックスを、それぞれ、供給ゾーンを100℃に設定し、第2のゾーンを270℃に設定し、残りの2つのゾーンを315℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.86重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、47g/分及び36g/分とし、100gのPETあたり0.87molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、250RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。押出機を通る滞留時間は、45秒であった。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。赤外スペクトルは、従来のバッチ式プロセスによって製造されたTHEICポリエステルポリマーと一致する。H及び13C NMRもまた、バッチ式プロセスによって製造された材料と一致する。
【0077】
(例10)
PET及びTHEIC/酢酸亜鉛触媒プレミックスを、それぞれ、供給ゾーンを100℃に設定し、第2のゾーンを270℃に設定し、残りの2つのゾーンを325℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.86重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、47g/分及び36g/分とし、100gのPETあたり0.87molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、250RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。押出機を通る滞留時間は、45秒であった。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。赤外スペクトルは、従来のバッチ式プロセスによって製造されたTHEICポリエステルポリマーと一致する。H及び13C NMRもまた、バッチ式プロセスによって製造された材料と一致する。
【0078】
例9及び例10は、300℃を超える高温を成功裏に使用して、バッチ式プロセスと同等の修飾ポリエステル樹脂を製造できることを実証する。
【0079】
【表2】
【0080】
(例15及び17)
PET及びTHEIC/TNBT触媒プレミックスを、供給ゾーンを120℃に設定し、残りのゾーンをそれぞれ285℃又は300℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.20重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、21g/分及び15g/分とし、100gのPETあたり0.81molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、250RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。押出機を通る滞留時間は、130秒であった。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。赤外スペクトルは、従来のバッチ式プロセスによって製造されたTHEICポリエステルポリマーと一致する。H及び13C NMRもまた、バッチ式プロセスによって製造された材料と一致する。
【0081】
例15及び17は、代替ルイス酸触媒を使用して、バッチ式プロセスと同等の特性を有するTHEICポリエステルを製造できることを実証する。
【0082】
【表3】
【0083】
(例23、25及び26)
PET及びTHEIC/TNBT触媒プレミックスを、供給ゾーンを130℃に設定し、残りのゾーンをそれぞれ290℃、310℃又は320℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.20重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、58g/分及び42g/分とし、100gのPETあたり0.83molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、350RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。
【0084】
例23~26は、温度を使用して、得られるTHEICポリエステル樹脂の分子量を制御できることを示す。温度が高いほど、高い分子量を有する材料が得られた。
【0085】
【表4】
【0086】
(例31~32)
PET及びトリメチロールプロパン(TMP)/TNBT触媒プレミックスを、供給ゾーンを100℃に設定し、残りのゾーンを310℃又は320℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.20重量%であった。PET及びTMPプレミックスの供給の速度は、それぞれ29g/分及び22g/分とし、100gのPETあたり1.67molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、250RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、周囲条件で冷却した。
【0087】
(例36)
PET及びグリセリン/TNBT触媒プレミックスを、供給ゾーンを100℃に設定し、残りのゾーンを320℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.20重量%であった。PET及びグリセリンプレミックスの供給の速度は、それぞれ、30g/分及び10g/分とし、100gのPETあたり1.1molのOHに対応していた。このシステムは、過剰のグリセリンを含有していた。押出機スクリュー速度は、250RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。
【0088】
例31、32及び36は、THEICに加えて代替ポリオールを使用して、修飾ポリエステルを製造できることを実証する。
【0089】
【表5】
【0090】
(例38~39)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びTHEIC/TNBT触媒プレミックスを、供給ゾーンを100℃に設定し、残りのゾーンを300℃又は320℃に設定して供給した。触媒負荷量は、0.20重量%であった。PET及びTHEICプレミックスの供給の速度は、それぞれ、20g/分及び13g/分とし、100gのPETあたり0.75molのOHに対応していた。押出機スクリュー速度は、250RPMに設定した。得られたポリオール修飾PETを、融解物として押出機から出し、缶中に集め、冷却した。透明生成物は、THFに可溶性であり、GPCによってさらに特性決定した。数及び重量平均分子量は、ワイヤエナメルコーティングにおいて使用されるバッチ製造されたTHEICポリエステルポリマーと同等である。赤外スペクトルは、THEICポリエステルと一致する。
【0091】
【表6】
【0092】
マグネットワイヤコーティング:例17から得た樹脂及び対照サンプル6を、マグネットワイヤコーティングのためのポリマーとして使用した。
【0093】
(例40)
対照の例6から得た樹脂(300g)を、100gのクレゾール酸及び300gのフェノールに溶解した。次いで、Solvent 100(225g)希釈剤を添加した。次いで、Phenolic 877-R-50(35g)を、Desmodur CT stable(25g)とともに添加した。テトラブチルチタネート(16g)架橋剤を最後に添加した。混合物を、従来のマグネットワイヤオーブン(MAG)を使用してモノリシックに1.0mm銅ワイヤに、ベースコートとして標準ポリアミドイミドトップコートとともに(75:25厚み)エナメル加工した。
【0094】
(例41)
対照の例17から得た樹脂(300g)を、100gのクレゾール酸及び300gのフェノールに溶解した。次いで、Solvent 100(225g)希釈剤を添加した。次いで、Phenolic 877-R-50(35g)を、Desmodur CT stable(25g)とともに添加した。テトラブチルチタネート(16g)架橋剤を最後に添加した。混合物を、従来のマグネットワイヤオーブン(MAG)を使用してモノリシックに1.0mm銅ワイヤに、ベースコートとして標準ポリアミドイミドトップコートとともに(75:25厚み)エナメル加工した。
【0095】
樹脂溶液を、粘度について調べ、25℃でおよそ500cPで同等であることがわかった。次いで、各コーティングをナイフコーターによってスチールパネルに塗布し、260℃のオーブン中で30分間硬化させた。次いで、パネルのサンプルを、ガラス転移(Tg)についてTMAによって分析した。例40及び41は、同等のガラス転移点を有するとわかった。
【0096】
【表7】
【0097】
ワイヤでの機械的特性は、以下の表に示されている。バッチ式プロセスエナメル(例40)は、連続プロセスによって合成された材料(例41)と特性において同等であった。
【0098】
【表8】
【0099】
【表9】
【0100】
【表10】
【0101】
【表11】
【0102】
測定
GPC測定を、Agilent Infinity 1260 GPCを使用して実施した。Infinity GPCはInfinity 1260デガッサーを備えている。Infinity GPCは、モデル番号Inifinity 1260でもあるイソクラティックポンプを備えている。シリアル番号は、DEAB902598である。次いで、Infinity GPCは、GPCカラム及びオートサンプラー機構をサーモスタット処理するためのアタッチメントを含有する。溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)であり、Honeywellによって供給される。純度は、99.9%であり、2mg/L未満の過酸化物レベルを有する。分析されるべきサンプルを、まず、穏やかに撹拌しながらTHFに溶解する。次いで、0.5ミクロンフィルターフィルターハウジングを備えた5mLシリンジを通してサンプルをろ過する。オートサンプラーに適した5mLバイアルを用いて溶液を集める。次いで、ゴム隔膜を備えた蓋を、Agilentによって供給されたバイアルクリンパーを使用してバイアル上に圧着する。すべてのサンプルをオートサンプラー中に充填した後、方法を開始する。方法は、Phenomenexによって供給される混合Dカラム(シリーズ中の2)を通るTHFの1mL/分の流速に設定される。混合Dカラムは、40℃でサーモスタット処理され、屈折率検出器はベースラインゼロにする。溶出物を適切な排出口を備えた適した容器中に集める。注入あたり0.5マイクロリットルの注入容積(volumn)を用いて、方法ごとにサンプルをカラム上に注入する。シグナルドリフトを防ぐために、屈折率検出器を40℃でサーモスタット処理する。シグナル極性は、ポジティブとする。カラムセットで許容される最大圧は、600バールである。分析は、Agilent Chemstationソフトウェアを用いて実施した。Agilentから購入したポリスチレンの参照サンプルを同様の方法で実行し、較正曲線を作成する。分子量の標準は、500~30,000ダルトンの範囲である。較正曲線は、利用されたカラムセットに応じて、線形フィット又は一次若しくは二次であり得る。この実験では、本発明者らは、一次フィットを使用した。
【0103】
手順IEC EN 60851-3に従って、柔軟性又はマンドレル試験を実施した。それには、マンドリル巻付け試験が記載されている。コーティングワイヤは、そのようなものとして取られ、5%、10%、15%、20%、25%、30%で事前延伸された。各測定点のために、3つのプローブを準備した。各ワイヤを、ワイヤと同一直径を有するスチール片である、磨かれたマンドリルの周りに巻きつけた。ワイヤをマンドリル上にすると、亀裂の存在を調べた。亀裂がないことは、コーティングワイヤの柔軟性を示す。
【0104】
剥離試験は、手順IEC EN 60851-3に従って実施した。それには、名目伝導体直径が1000mmを超えるエナメル加工丸ワイヤに適用可能な剥離試験が記載されている。
【0105】
タンデルタは、Danskタンジェントデルタ機器を使用して測定した。
【0106】
カットスルーラージプレートは、NEMA-MW1000及びJIS C3003仕様に適合するNova1005 Thermoplastic Cut-Throughテスターを使用して測定した。
【0107】
1H及び13C NMRスペクトルは、CDCl3で500MHz Varian NMRを使用して測定した。
【0108】
FT-IRは、ATRアタッチメントを使用するThermoscientific Nicolet FT-IRを使用して測定した。
【0109】
粘度は、Brookfield LV粘度計を使用して測定した。
【0110】
Tgは、貫通プローブを使用するTA Instruments Thermomechanical Analyzerを使用して測定した。加熱速度は、1分あたり10℃とした。