(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】プレリチオ化負極(Prelithiated negative electrode)、その作製方法、プレリチオ化負極を含むリチウムイオン電池、及びスーパーコンデンサー
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230329BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230329BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230329BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230329BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20230329BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20230329BHJP
H01G 11/40 20130101ALI20230329BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20230329BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20230329BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230329BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20230329BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/485
H01G11/42
H01G11/40
H01G11/36
H01G11/38
H01G11/86
H01G11/30
(21)【出願番号】P 2020573195
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2020082046
(87)【国際公開番号】W WO2021195835
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】519265907
【氏名又は名称】中能中科(天津)新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 兆勇
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 承浩
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】牟 瀚波
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109309194(CN,A)
【文献】国際公開第2012/099264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01G 11/42
H01G 11/40
H01G 11/36
H01G 11/38
H01G 11/86
H01G 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無溶媒のままで
、ジェットミリングの方法で、負極活物質、リチウム-骨格炭素複合材料粒子、結着剤、及び任意の導電剤を混合分散すること、得られる混合物を高温で押出し、所定の厚さの膜状材料に圧延すること、そして得られる膜状材料
を加圧複合により集電体に結着することを含み、
前記ジェットミリングで用いられる高圧ガスの露点は-40°F~-60°Fであり、含水量は15ppm未満であり、圧力は60~100PSIであり、
前記高温は180~350℃であり、
前記加圧複合において、圧延の圧力範囲は0.1~120MPaである、
ことを特徴とす
るプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項2】
前記高温
は210~300℃であることを特徴とする請求項
1に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項3】
前記加圧複合において、圧延の圧力範囲
は50~100MPaであることを特徴とする請求項
1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項4】
前記負極活物質は、シリコンカーボン複合材料、黒鉛、チタン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であるリチウム電池の負極材料、又は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンからなる群より選ばれる少なくとも一種であるスーパーコンデンサーの負極材料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項5】
前記リチウム-骨格炭素複合材料粒子における金属リチウムの質量百分率含有量は10%~95%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項6】
前記結着剤は、ポリオレフィン系材料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系材料は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする請求項6に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項8】
前記結着剤は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びポリエチレンオキサイド(PEO)のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項9】
前記結着剤の含有量は質量百分率で1%~5%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項10】
前記導電剤は、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンの一種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項11】
前記リチウム-骨格炭素複合材料の含有量は質量百分率で電極フィルムの全質量の0.5%~20%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【請求項12】
電極フィルムの厚さは5~100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレリチオ化負極の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的エネルギー貯蔵の技術分野に関し、特にリチウム-カーボンナノチューブ微小球材料を含むプレリチオ化負極及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度を有し、サイクル安定性に優れ、携帯電子機器、電気自動車、電力網におけるエネルギー貯蔵で広く用いられている。従来のリチウムイオン電池は、一般的に負極材料として黒鉛を用い、そのメカニズムは正負極の層状活物質層間のリチウムイオンの脱離/挿入であるが、黒鉛系負極材料の比容量限界は約372mAH/gであり、このような負極材料に基づいてリチウムイオン電池のエネルギー密度をさらに上げることは困難であり、より高いエネルギー密度のリチウムイオン電池に対する市場の需要に適応することは困難である。このため、より高い比容量を有する負極材料を開発する必要がある。シリコンカーボン材料のプレリチオ化は効果的な方法であり、シリコンカーボン材料の現在の商業的比容量が600mAH/gより大きく、現在の黒鉛電極の2倍以上であり、電池のエネルギー密度を効果的に向上させ、商業的ニーズを満たすことができるが、現在シリコンカーボンの商業用を制約する最大の問題は初回充放電効率が低く、80%以上に過ぎず、減衰が激しいことであり、事前にリチウムを補給する方法を採用することは、初回充放電効率が低いことを解決する効果的な方法である。
【0003】
リチウムイオンスーパーコンデンサーは、電力密度が高く、充放電時間が短く、サイクル寿命が長く、動作温度範囲が広いなどの利点を有する。従って、ピーク電力の補助、電源のバックアップ、再生エネルギーの貯蔵、替代電源等の様々な応用場面に広く応用でき、産業制御、電力、交通輸送、スマートメーター、消費型電子製品、国防、通信、新エネルギー自動車など多くの分野で大きな応用価値と市場可能性を有する。しかし、従来のスーパーコンデンサーは電気二重層の原理に基づいて設計されており、デバイス全体のエネルギー密度は5~8wh/kgであり、エネルギー密度が低いと、デバイスの適用先でのコストが高くなり、エネルギー密度に対する適用先のニーズを満たすことができない。リチウムイオンスーパーコンデンサーは、リチウムイオンを含む電解液を使用することで、デバイスの電気化学的ウィンドウを拡大するとともに、動作中にリチウムイオンと活物質が反応して一部の容量を提供するため、リチウムイオンスーパーコンデンサーはより高いエネルギー密度を有し、且つコンデンサーの高い電力密度と長いサイクル寿命の利点が維持される。より高いエネルギー密度を有するリチウムイオンスーパーコンデンサーを得るために、かつリチウムイオンスーパーコンデンサーは充放電過程でリチウムイオンを消費し、電解液における有効イオンの濃度を低下させるため、電極(負極)をプレリチオ化する必要がある。
【0004】
従来のリチウムイオン電池やスーパーコンデンサーは、いずれも湿式コーティングプロセスにより電極シートを作製する。プレリチオ化も、表面へのリチウム粉の散布から、電極シートの表面へのリチウムベルトの複合によるリチウムの補給を経験した。リチウム補給の操作後に、電解液に浸漬し、リチウムイオンを電極シートの内部に拡散させることが必要である。ここで2つの問題があって、1つは長い時間がかかること、もう1つは濃度勾配の問題が存在するため、拡散は比較的に不均一であることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、リチウム-カーボンナノチューブ微小球材料を含むプレリチオ化負極及びその作製方法を提供し、上記の方法における不足を効果的に解決することができる。
【0006】
具体的に、本発明は乾式電極作製プロセスにより、リチウム-カーボンナノチューブ微小球材料を含むプレリチオ化負極を使用し、リチウム電池の初回充放電効率が低く、スーパーコンデンサーのエネルギー密度が低いという課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の技術案を採用する。
【0008】
いくつかの実施例において、
負極活物質、リチウム-骨格炭素複合材料粒子、結着剤、及び任意の導電剤からなる無溶媒の膜状負極材料である電極フィルムと、
金属集電体と、を含み、
前記リチウム-骨格炭素複合材料粒子は、孔径が1~100nmである孔隙を有する炭素基多孔質微小球材料と、前記炭素基多孔質微小球材料の孔隙中及び表面上に存在する金属リチウムとからなる微粒子であり、前記微粒子の粒径D50は5~20μmであり、前記リチウム-骨格炭素複合材料粒子の含有量は質量百分率で電極フィルムの全質量の0.5%~20%であり、且つ電極フィルム全体において均一に分散しており、
前記電極フィルムは導電性結着剤で前記金属集電体に結着されているプレリチオ化負極を提供する。
【0009】
いくつかの実施例において、
無溶媒のままで、高せん断力で、負極活物質、リチウム-骨格炭素複合材料粒子、結着剤、及び任意の導電剤を混合分散すること、得られる混合物を高温で押出し、所定の厚さの膜状材料に圧延すること、そして、得られる膜状材料を圧力によって集電体に複合結着することを含むプレリチオ化負極の作製方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施例において、
前記プレリチオ化負極を含むリチウムイオン電池又はスーパーコンデンサーを提供する。
【0011】
本願は、乾式プロセスにより電極シートを作製し、リチウム-骨格炭素複合材料粒子(例えば、リチウム-カーボンナノチューブ微小球材料)を添加することでリチウムを補給する方法を提案する。乾燥粉末をあらかじめ分散混合し、均一な混合粉体を形成することで、電解液に浸漬するとき、リチウムは電極シートの均一な位置に存在するため、拡散時間が短く、均一性が良好である。本願のリチウム-骨格炭素複合材料は、従来の乾式電極リチウム補給プロセスよりも明らかに優位にある。現在の乾式プロセスで用いられるリチウム補給源はリチウムブロックとリチウム粉末である(Maxwell特許出願:CN201880026159.7)。リチウムブロックはリチウム補給源として、分散が困難であり、プロセス作業が難しく、均一性が悪く、バッチ操作に適さない。リチウム粉末はリチウム補給源として、市販のリチウム粉末のD50は40μm以上であり、黒鉛のD50 10~17μm、シリコンカーボンのD50 10~20μmを遥かに超え、成型した電極シート厚さは50μm程度に過ぎず、このようにリチウムを補給した後、電極シートの構造に不利な影響を及ぼす。まず、電解液に浸漬するとリチウムはイオンになり、電極シートは構造に空孔欠陥があり、構造安定性、イオン伝導性、及び電子伝導性に影響を与える。また、粒子が大きいため、均一な分散に不利である。しかしながら、本願のリチウム-骨格炭素複合材料を用いて、乾式プロセスによりリチウムを補給すれば、粒径D50が5~20μmと小さいため、分散に有利であり、かつプレリチオ化した後、リチウムは骨格炭素(例えば、カーボンナノチューブ微小球)を脱離するが、骨格炭素構造はやはり存在し、構造に空孔がなく、骨格炭素構造(例えば、カーボンナノチューブ微小球構造)は20MPaの圧力に耐えられ、骨格炭素自身が優れた導電剤であるため、リチウムが脱離した後、残りの骨格炭素は一部の導電剤としても使用でき、機能的に無駄がない。
【発明の効果】
【0012】
従って、本発明のプレリチオ化負極において、リチウム-骨格炭素複合材料は均一に負極に分布でき、リチウムイオン電池の初回サイクル寿命を効果的に増加させることができるとともに、スーパーコンデンサーのエネルギー密度を増加させることができ、導電剤として、電極シートの導電性を改善することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の乾式方法による電極作製のプロセス図である。
【
図2】
図2は、実施例1、比較例1におけるシリコンカーボン電極のプレリチオ化前後の放電データである。
【
図3】
図3は、実施例2、比較例2におけるシリコンカーボン電極の全電池プレリチオ化前後の放電データである。
【
図4】
図4は、実施例2、比較例2におけるシリコンカーボン電極の全電池プレリチオ化前後のサイクル放電データである。
【
図5】
図5は、実施例3、比較例3におけるスーパーコンデンサーのプレリチオ化前後のサイクル放電データである。
【
図6】
図6は、スーパーコンデンサーの乾式、湿式プロセスでのプレリチオ化前後のサイクル放電データである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一局面では、プレリチオ化負極材料は、負極活性材料に加え、リチウム-骨格炭素複合材料、結着剤、及び任意の導電剤を含むプレリチオ化負極を提供する。これらの材料から、無溶媒の膜状負極材料、即ち電極フィルムを構成する。電極フィルムの厚さは5~100μmであってもよく、10~80μmであることが好ましい。
【0015】
いくつかの実施例において、リチウム-骨格炭素複合材料は、孔径が1~100nmである孔隙を有する炭素基多孔質微小球材料と、前記炭素基多孔質微小球材料の孔隙中及び表面上に存在する金属リチウムとからなる微粒子材料であり、前記微粒子材料の粒径D50は5~20μmである。
【0016】
いくつかの実施例において、前記リチウム-骨格炭素複合材料の含有量が負極材料の全質量に占める百分率は0.5%~20%であり、例えば、3%~20%、又は5%~20%、又は5%~15%である。
【0017】
いくつかの実施例において、金属リチウム-骨格炭素複合材料における金属リチウムの質量百分率含有量は10%~95%、又は20%~70%、又は30%~70%、又は40%~70%であってもよい。
【0018】
いくつかの実施例において、リチウム-骨格炭素複合材料は、炭素繊維微小球、カーボンナノチューブ微小球、及びアセチレンブラックのうちの少なくとも一種を含み、前記炭素繊維微小球、カーボンナノチューブ微小球は、それぞれカーボンナノ繊維又はカーボンナノチューブが互いに絡み合って凝集することで形成してなり、微小球の内部はナノ繊維又はカーボンナノチューブ炭素で満たされ(中空構造ではなく、ほぼ中実の構造を形成する)、内部及び表面に多くのナノサイズの孔隙がある。
【0019】
いくつかの実施例において、前記カーボンナノチューブ微小球は球形又は類球状粒子であり、平均直径は1μm~100μmであってもよく、1μm~25μmであることが好ましい。比表面積は100~1500m2/gであってもよく、150~500m2/gであることが好ましい。微小球内に含まれる孔隙の孔径分布は1~100nmであってもよく、1~50nmであることが好ましい。
【0020】
いくつかの実施例において、前記カーボンナノチューブ微小球は、少なくとも微小球状中実凝集構造、球形凝集構造、類球形凝集構造、多孔質球形凝集構造、及びドーナツ形凝集構造のいずれか一種を有する。
【0021】
いくつかの実施例において、前記カーボンナノチューブ微小球又は炭素繊維微小球は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノ繊維を溶媒に分散させて分散液を形成し、そして噴霧乾燥することにより作製できる。
【0022】
例えば、作製方法は以下のステップを含んでもよい。
【0023】
A.カーボンナノチューブ又はカーボンナノ繊維を超音波処理により分散溶媒(界面活性剤を含まない)に分散させ、分散液を得る。
【0024】
B.ステップAで得られた分散液を噴霧乾燥機のノズルより噴出し、送風温度と吹出温度を予め設定し、噴霧過程において溶液を攪拌状態に保つ。
【0025】
C.冷却し、カーボンナノチューブ微小球又は炭素繊維微小球を得る。
【0026】
いくつかの実施例において、前記溶媒はカーボンナノチューブ/カーボンナノ繊維を均一に分散できる有機及び/又は無機液体、例えば、水、アンモニア水、塩酸溶液、エタノール、アセトン、イソプロパノールのいずれか一種又は複数種の組み合わせを使用する。
【0027】
いくつかの実施例において、前記溶媒は、体積比が1:10であるエタノールと水の混合物であってもよい。
【0028】
いくつかの実施例において、噴霧乾燥の条件は、送風温度150~250℃、吹出温度75℃以上、例えば、75~150℃、又は90℃以上を含んでもよい。好ましい噴霧乾燥の条件は、送風温度190~210℃、吹出温度90~110℃を含む。
【0029】
いくつかの実施例において、噴霧乾燥するときの噴霧速度は1mL/分~100L/分であってもよい。
【0030】
いくつかの実施例において、リチウム-骨格炭素複合材料は、溶融金属リチウムと炭素基多孔質微小球材料(多孔質骨格炭素材料)を混合し、冷却してから得られる。前記混合は、金属リチウムと多孔質骨格炭素材料を加熱(例えば、約200℃)しながら攪拌混合すること、又は多孔質骨格炭素材料を溶融金属リチウムに浸漬することを含んでもよい。金属リチウム-骨格炭素複合材料の作製は、不活性雰囲気で、例えば、アルゴン雰囲気のグローブボックスの中(水含有量<10ppm、酸素含有量<10ppm)で行われる。
【0031】
いくつかの実施例において、負極活物質は、リチウム電池に用いられる負極材料又はスーパーコンデンサーに用いられる負極材料を含む。リチウム電池の負極材料は、シリコンカーボン複合材料、黒鉛、チタン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である。スーパーコンデンサーの負極材料は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0032】
いくつかの実施例において、結着剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなポリオレフィン系材料、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びポリエチレンオキサイド(PEO)を含む。電極フィルムにおける結着剤の含有量は質量百分率で1%~5%であることが好ましい。
【0033】
いくつかの実施例において、前記負極材料は、導電剤を含んでもよいが、導電剤を含まなくてもよい。前記導電剤は、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、SuperP)、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンのうちの少なくとも一種である。
【0034】
いくつかの実施例において、前記プレリチオ化負極の電極シートはさらに金属集電体を含み、前記負極材料は前記金属集電体に担持されている。
いくつかの実施例において、前記金属集電体は銅箔を含む。銅箔の厚さは約10μm(+/-μm)であってもよい。
【0035】
いくつかの実施例において、負極材料は導電性結着剤を介して金属集電体に結着されている。前記導電性結着剤はエポキシ樹脂導電性結着剤、フェノール樹脂導電性結着剤、ポリウレタン導電性結着剤、熱可塑性樹脂導電性結着剤、及びポリイミド導電性結着剤のうちの少なくとも一種を含む。
【0036】
本発明のもう一局面では、負極活物質(例えば、シリコンカーボン複合材料)、リチウム-骨格炭素複合材料、結着剤、及び任意の導電剤の混合物を高速で分散させ、高温で押し出して成膜し、集電体に圧力かけて複合し、負極の電極シートを形成することを含むリチウムイオン電池のプレリチオ化負極の作製方法を提供する。
【0037】
本発明のさらにもう一局面では、スーパーコンデンサーの負極物質(例えば、活性炭素材料)、リチウム-骨格炭素複合材料、結着剤、及び任意の導電剤の混合物を高速で分散させ、高温で押し出して成膜し、集電体に圧力かけて複合し、負極の電極シートを形成すること含むスーパーコンデンサーのプレリチオ化負極の作製方法を提供する。
【0038】
以下、
図1を参照しながら、リチウム-骨格炭素複合材料が金属リチウム-カーボンナノチューブ骨格複合材料(Li-CNT)、結着剤がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である例を挙げ、本発明の電極作製プロセスのフローチャートを説明する。
【0039】
まず、乾燥材料(負極活性材料、Li-CNT、結着剤PTFE、及び導電剤を含む)を溶媒なしで高せん断速度で分散させる(せん断線速度は10/m/mimを超える)。高せん断力の下で、PTFEは変形する。この混合分散させるステップは、ジェットミリングの方法で実施でき、例えば、高圧ガス(高圧空気)でジェットミリングを実施でき、高圧ガスの露点は-40~-60°Fであってもよく、含水量は15ppm未満であり、圧力は60~100PSIであってもよい。
【0040】
そして、得られた混合物を高温(50~350℃、好ましくは180~350℃、より好ましくは210~300℃)で熱溶融押出し、押出及び圧延により所定の厚さの電極フィルムを形成する。圧延成型した電極フィルムの厚さは5~100μmであってもよい。
【0041】
最後に、得られた電極フィルムを集電体箔材に加圧複合し、(プレリチオ化)負極を形成する。電極フィルムを集電体箔材の片面又は両面に複合してもよい。両者の間は導電性結着剤で結着する。加圧複合において、少なくとも1つの加圧ローラは加熱処理され、圧延の圧力範囲は0.1~120MPaであり、50~100MPaであることが好ましい。
【0042】
本発明の目的、技術形態、及び利点をより明確にするため、以下、実施例及び比較例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。本願に記載されている具体的な実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。さらに、以下に説明する本発明の各実施方式に係る技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0043】
また、以下の実施例で使用される様々な製品構造パラメータ、様々な反応参加物、及びプロセス条件はすべて典型的な範例であるが、本発明者らは、上記に挙げた他の異なる構造パラメータ、他のタイプの反応参加物、及び他のプロセス条件も適用可能であり、本発明に述べられた技術的効果を達成することができることを大量の試験により検証した。
【0044】
合成実施例1
多層カーボンナノチューブ2g(山東大展納米有限公司)を脱イオン水200mLとエタノール20mLに加え、130W超音波プローブで5時間処理し、カーボンナノチューブを溶媒に均一に分散させる。そして、サンプルを噴霧乾燥機(上海雅程儀器設備有限公司、仕様YC-015)に入れ、設定パラメータは、送風温度200℃、吹出温度150℃、噴霧圧力40MPa、サンプル供給量500mL/h、噴霧乾燥して、カーボンナノチューブ微小球が得られる。
【0045】
アルゴンで満たされたグローブボックスの中で(水分含有量と酸素含有量は3ppmを超えない)、電池グレードの金属リチウム10g(天津中能リ業有限公司)とカーボンナノチューブ微小球5gをステンレス鋼反応釜付きの加熱器に入れ、200℃まで加熱し、1分間攪拌し、攪拌速度は100回転/分であり、そして230℃まで加熱し、20分間攪拌し、攪拌速度は500回転/分であり、室温まで冷却し、製品である金属リチウム-骨格炭素複合材料(D50:18.2μm、リチウム含有量66%)が得られる。
【0046】
合成実施例2
スーパーコンデンサーの正極の作製
ポリフッ化ビニリデン(Solvay 5130):アセチレンブラック(焦作市和興化学工業有限公司):活性炭素材料(クラレ):水=40mg:40mg:1500mg:20mlになるように各物質を秤量し、ガラス瓶に置いて一晩攪拌する(10時間を超える)。ただし、ポリフッ化ビニリデン(Sigma-Aldrich)は結着剤であり、アセチレンブラックは導電剤であり、活性炭素(日本クラレ)は活物質であり、水は溶媒である。均一に攪拌したスラリーをアルミニウム箔に塗布し、ブレードの厚さは250μmであり、アルミニウム箔の厚さは15μmである。60℃で電極シートを一晩真空(-0.1MPa)乾燥させて、そして乾燥した電極シートを56mm*43mmのサイズになるように裁断成型し、スーパーコンデンサーの正極の電極シートとする。
【0047】
合成実施例3
コバルト酸リチウム電池の正極の作製
ポリフッ化ビニリデン:アセチレンブラック:コバルト酸リチウム材料(天津巴莫科技有限公司):NMP=30mg:30mg:1000mg:12mlになるように各物質を秤量し、ガラス瓶に置いて6時間攪拌する。ただし、ポリフッ化ビニリデン(Sigma-Aldrich)は結着剤であり、アセチレンブラックは導電剤であり、コバルト酸リチウムは活物質であり、NMPは溶媒である。均一に攪拌したスラリーを銅箔に塗布し、ブレードの厚さは250μmであり、銅箔の厚さは10μmである。60℃で電極シートを一晩真空(-0.1MPa)乾燥させ、そして乾燥した電極シートを56mm*43mmのサイズになるように裁断成型し、コバルト酸リチウム電池の正極の電極シートとする。
【0048】
実施例1
ポリテトラフルオロエチレン:アセチレンブラック:シリコンカーボン(上海杉杉科技有限公司):金属リチウム-骨格炭素複合材料(合成実施例1で得られる)=4g:4g:200g :24gになるように各物質を秤量し、小型ジェットミル(北京賽美儀器設備有限公司)で2h研磨する。ただし、ポリテトラフルオロエチレンは結着剤であり、アセチレンブラックは導電剤であり、シリコンカーボンは活物質であり、リチウム-カーボンナノチューブはプレリチオ化材料である。均一に分散した材料を高温で押し出して成膜し、電極フィルムの厚さは90μmであり、そしてローラープレスで銅箔集電体に加圧複合し、銅箔の厚さは10μmであり、そして得られた電極シートを58mm*45mmのサイズになるように裁断成型し、プレリチオ化リチウムイオン電池の負極の電極シートとする。得られた電極シートを直径15.6cmの電極シートに打ち抜き、プレリチオ化リチウムイオン半電池として使用する。上記の過程はアルゴンで満たされたグローブボックスの中(水分含有量≦3ppm、酸素≦3ppm)で行われる。
【0049】
上記のシリコンカーボン電極とリチウムシートを半電池に組み立て、ボタン電池測定装置で電気化学測定を行う。
【0050】
比較例1
ポリテトラフルオロエチレン:アセチレンブラック:シリコンカーボン(上海杉杉科技有限公司)=4g:10g:200gとなるように各物質を秤量し、小型ジェットミル(北京賽美儀器設備有限公司)で2h研磨する。ただし、ポリテトラフルオロエチレンは結着剤であり、アセチレンブラックは導電剤であり、シリコンカーボンは活物質である。均一に分散した材料を高温で押し出して成膜し、電極フィルムの厚さは90μmであり、そしてローラープレスで銅箔集電体に加圧複合し、銅箔の厚さは10μmであり、そして得られた電極シートを58mm*45mmのサイズになるように裁断成型し、プレリチオ化されていないリチウムイオン電池の負極の電極シートとする。得られた電極シートを直径15.6cmの電極シートに打ち抜き、プレリチオ化されていないリチウムイオン半電池として使用する。上記の過程はアルゴンで満たされたグローブボックスの中(水分含有量≦3ppm、酸素≦3ppm)で行われる。
【0051】
上記のシリコンカーボン電極とリチウムシートを半電池に組み立て、ボタン電池測定装置で電気化学測定を行う。
【0052】
図2はシリコンカーボン電極のプレリチオ化前後の初回充放電曲線(リチウム電極に対する)であり、0.05Cの倍率で、プレリチオ化されていないシリコンカーボン電極の初回充放電効率は87.6%に過ぎず、プレリチオ化した後の初回充放電効率は100.5%に達し、顕著に初回充放電効率を向上させる作用があることが分かる。
【0053】
実施例2
正極の電極シート(合成実施例3で得られる)、セパレーター、負極の電極シート(実施例1で調製して得られる)を順に重ね合わせ、アルミニウム箔を外装ケースとし、電解液を加えてからパッケージングし、プレリチオ化したスーパーコンデンサー単体が得られる。電解液は1mol/L のLiPF6 EC/DMC/DEC(vol 1/1/1、東莞杉杉電池材料有限公司)であり、セパレーターはPPセパレーター(深セン市冠力新材料有限公司 Celgard 3105)である。ソフトパッケージ試験装置を用いて、得られたプレリチオ化コバルト酸リチウム電池の初回充放電及び充放電サイクルの測定を行う。
【0054】
比較例2
正極の電極シート(合成実施例3で得られる)、セパレーター、負極の電極シート(比較例1で調製して得られる)を順に重ね合わせ、アルミニウム箔を外装ケースとし、電解液を加えてからパッケージングし、プレリチオ化されていないスーパーコンデンサー単体が得られる。ただし、電解液は1mol/L LiPF6 EC/DMC/DEC(vol1/1/1、東莞杉杉電池材料有限公司)であり、セパレーターはPPセパレーター(深セン市冠力新材料有限公司Celgard 3105)である。ソフトパッケージ試験装置を用いて、得られたプレリチオ化されていないコバルト酸リチウム電池の初回充放電及び充放電サイクルの測定を行う。
【0055】
図3はプレリチオ化前後のシリコンカーボン電極とコバルト酸リチウムからなる全電池の初回充放電曲線であり、0.05Cの倍率で、プレリチオ化されていないシリコンカーボン電極の初回充放電効率は84.1%に過ぎず、プレリチオ化した後の初回充放電効率は94.2%に達し、明らかに初回充放電効率を向上させる作用があることが分かる。
【0056】
図4はプレリチオ化前後のシリコンカーボン電極とコバルト酸リチウムからなる全電池のサイクル充放電曲線であり、0.05Cの倍率で、プレリチオ化したシリコンカーボン電極の初回充放電効率は顕著に向上し、0.1Cの倍率で、グラム容量も178mAH/gから192mAH/gまで増加し、サイクル後の容量の保持率も大きく改善されたことが分かる。
【0057】
実施例3
ポリテトラフルオロエチレン:アセチレンブラック:活性炭素(クラレ):金属リチウム-骨格炭素複合材料(合成実施例1で得られる)=4g:4g:150g :20gとなるように各物質を秤量し、小型ジェットミル(北京賽美儀器設備有限公司)で2h研磨する。ただし、ポリテトラフルオロエチレンは結着剤であり、アセチレンブラックは導電剤であり、活性炭素は活物質であり、リチウム-カーボンナノチューブはプレリチオ化材料である。均一に分散した材料を高温で押し出して成膜し、電極フィルムの厚さは100μmであり、そしてローラープレスでアルミニウム箔集電体に加圧複合し、アルミニウム箔の厚さは15μmであり、そして得られた電極シートを58mm*45mmのサイズになるように裁断成型し、プレリチオ化リチウムスーパーコンデンサーの負極の電極シートとする。上記の過程はアルゴンで満たされたグローブボックス中(水分含有量≦3ppm、酸素≦3ppm)で行われる。
【0058】
正極の電極シート(合成実施例2で得られる)、セパレーター、前記負極の電極シートを順に重ね合わせ、アルミニウム箔を外装ケースとし、電解液を加えてからパッケージングし、プレリチオ化したスーパーコンデンサー単体が得られる。電解液は1mol/L LiPF6 EC/DMC/DEC (vol 1/1/1、東莞杉杉電池材料有限公司)であり、セパレーターはPPセパレーター(深セン市冠力新材料有限公司 Celgard 3105)である。スーパーコンデンサー測定装置を用いて、得られたプレリチオ化したスーパーコンデンサーの充放電サイクルの測定を行う。
【0059】
比較例3
ポリテトラフルオロエチレン:アセチレンブラック:活性炭素(クラレ)=4g:6g:150gとなるように各物質を秤量し、小型ジェットミル(北京賽美儀器設備有限公司)で2h研磨する。ただし、ポリテトラフルオロエチレンは結着剤であり、アセチレンブラックは導電剤であり、活性炭素は活物質である。均一に分散した材料を高温で押し出して成膜し、電極フィルムの厚さは100μmであり、そしてローラープレスでアルミニウム箔集電体に加圧複合し、アルミニウム箔の厚さは15μmであり、そして得られた電極シートを58mm*45mmのサイズになるように裁断成型し、プレリチオ化されていないリチウムスーパーコンデンサーの負極の電極シートとする。上記の過程はアルゴンで満たされたグローブボックス中(水分含有量≦3ppm、酸素≦3ppm)で行われる。
【0060】
正極の電極シート(合成実施例2で得られる)、セパレーター、負極の電極シートを順に重ね合わせ、アルミニウム箔を外装ケースとし、電解液を加えてからパッケージングし、プレリチオ化されていないスーパーコンデンサー単体が得られる。ただし、電解液は1mol/L LiPF6 EC/DMC/DEC(vol 1/1/1、東莞杉杉電池材料有限公司)であり、セパレーターはPPセパレーター(深セン市冠力新材料有限公司 Celgard 3105)である。スーパーコンデンサー測定装置を用いて、プレリチオ化されていないスーパーコンデンサーの充放電サイクルの測定を行う。
【0061】
図5はスーパーコンデンサープレリチオ化前後の充放電データであり、プレリチオ化した後のスーパーコンデンサーは、サイクル寿命が3500回から6200回に増加し、エネルギー密度が13Wh/kgから32Wh/kgに増加し、いずれも大幅に改善されたことがわかる。
【0062】
比較例4
ポリテトラフルオロエチレン:アセチレンブラック:活性炭素(クラレ):金属リチウム-骨格炭素複合材料(合成実施例1で得られる):水=40mg:10mg:1500mg:10mg:20mlとなるように各物質を秤量し、ガラス瓶で一晩(10時間を超える)攪拌する。ただし、ポリフッ化ビニリデン(Sigma-Aldrich)は結着剤であり、アセチレンブラックは導電剤であり、活性炭素(日本クラレ)は活物質であり、水は溶媒であり、金属リチウム-骨格炭素複合材料はリチウム補給材料である。均一に攪拌したスラリーをアルミニウム箔に塗布し、ブレードの厚さは250μmであり、アルミニウム箔の厚さは10μmである。60℃で電極シートを一晩真空(-0.1MPa)乾燥させ、そして乾燥した電極シートを56mm*43mmのサイズとなるように裁断成型し、湿式プロセスによるスーパーコンデンサーのプレリチオ化負極の電極シートとする。上記の過程はアルゴンで満たされたグローブボックスの中(水分含有量≦3ppm、酸素≦3ppm)で行われる。
【0063】
正極の電極シート(合成実施例2で得られる)、セパレーター、前記負極の電極シートを順に重ね合わせ、アルミニウム箔を外装ケースとし、電解液を加えてからパッケージングし、湿式プロセスによるプレリチオ化スーパーコンデンサー単体が得られる。ただし、電解液は1mol/L LiPF6 EC/DMC/DEC (vol 1/1/1、東莞杉杉電池材料有限公司)であり、セパレーターはPPセパレーター(深セン市冠力新材料有限公司Celgard 3105)である。スーパーコンデンサー測定装置を用いて、得られた湿式プロセスによるプレリチオ化したスーパーコンデンサーの充放電サイクルの測定を行う。
【0064】
図6は乾式湿式プロセスによるスーパーコンデンサーのプレリチオ化前後の充放電データであり、乾式プレリチオ化したスーパーコンデンサーは、サイクル寿命が(湿式プロセスの)5054回から6200回に向上し、エネルギー密度は27Wh/kgから32Wh/kgに向上し、乾式プロセスで作製された電極シートはより高いエネルギー密度とサイクル寿命があることが分かる。これは、乾式プロセスで作製された電極シートにおける活物質、導電剤の均一な分散、電極シートの高い圧縮密度に関係がある。
【0065】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨及び原則を逸脱しない範囲で行われるすべての修正、均等的な置き換え、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。