(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】単相エネルギー利用追従インバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230329BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02J3/38 150
(21)【出願番号】P 2020573292
(86)(22)【出願日】2019-05-01
(86)【国際出願番号】 US2019030253
(87)【国際公開番号】W WO2020005385
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521367857
【氏名又は名称】エルティー・(ユーエスエイ)・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ジェフリー・ウェン-タイ
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/149274(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0170336(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0181906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相DC/AC変換器を含むデバイスであって、前記単相DC/AC変換器は、
実質的に固定された電圧のDCエネルギー源から第1のエネルギー抽出を行うようにパルス幅変調器によって駆動される第1のDC/AC変換モジュールであって、第1の正弦波AC電力トレインを生成するように前記パルス幅変調器のパルス幅変調器信号のデューティサイクルの第1の部分内で前記第1のエネルギー抽出を行うように構成された前記第1のDC/AC変換モジュールと、
前記DCエネルギー源からの第2のエネルギー抽出を行うように前記パルス幅変調器によって駆動される第2のDC/AC変換モジュールであって、90度前記第1の正弦波AC電力トレインから位相がずれた第2の正弦波AC電力トレインを生成するように前記パルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号のデューティサイクルの第2の部分内で前記第2のエネルギー抽出を行うように構成され、前記デューティサイクルの前記第2の部分は前記デューティサイクルの前記第1の部分と重なり合わない、前記第2のDC/AC変換モジュールと、
前記第1の正弦波AC電力トレインおよび第2の正弦波AC電力トレインの両方が同じ位相を有するように、前記第1の正弦波AC電力トレインと第2の正弦波AC電力トレインとのうちの一方を90度位相シフトによって調整するように構成された位相調整器と
を含む、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第1のエネルギー抽出と前記第2のエネルギー抽出とが順次に行われるように、前記デューティサイクルの前記第2の部分は前記デューティサイクルの前記第1の部分に隣接する、デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスであって、前記単相DC/AC変換器は電力グリッドの電力線対に結合され、前記第1の正弦波AC電力トレインおよび第2の正弦波AC電力トレインの前記位相は前記電力グリッドの前記電力線対と同期する、デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスであって、前記位相調整器は単相変圧器を含む、デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスであって、前記位相調整器はインダクタを含む、デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のデバイスであって、前記位相調整器はキャパシタを含む、デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスであって、
3相DC/AC変換モジュールであって、前記単相DC/AC変換モジュールを第1のDC/AC変換モジュールとして含み、前記位相調整器は第1の位相調整器であり、前記パルス幅変調器は第1のパルス幅変調器であり、前記第1のDC/AC変換モジュールの前記第1の正弦波AC電力トレインおよび第2の正弦波AC電力トレインの前記位相は電力グリッドの第1の電力線対と同期する、前記3相DC/AC変換モジュール
を含むデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のデバイスであって、前記3相DC/AC変換モジュールは、
前記DCエネルギー源からの第3のエネルギー抽出を行うように第2のパルス幅変調器によって駆動される第3のDC/AC変換モジュールであって、第3の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第2のパルス幅変調器のパルス幅変調器信号のデューティサイクルの第1の部分内で前記第3のエネルギー抽出を行うように構成された前記第3のDC/AC変換モジュールと、
前記DCエネルギー源からの第4のエネルギー抽出を行うように前記第2のパルス幅変調器によって駆動される第4のDC/AC変換モジュールであって、第4の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第2のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号のデューティサイクルの第2の部分内で前記第4のエネルギー抽出を行うように構成され、前記第2のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第2の部分は、前記第2のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第1の部分と重なり合わない、前記第4のDC/AC変換モジュールと、
前記第3の正弦波AC電力トレインおよび第4の正弦波AC電力トレインの両方が前記電力グリッドの第2の電力線対と同期した位相を有するように、前記第3の正弦波AC電力トレインと第4の正弦波AC電力トレインとのうちの一方を90度位相シフトにより調整するように構成された第2の位相調整器と
をさらに含む、デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載のデバイスであって、前記第1の位相調整器は第1の単相変圧器を含み、前記第2の位相調整器は第2の単相変圧器を含む、デバイス。
【請求項10】
請求項8に記載のデバイスであって、前記3相DC/AC変換モジュールは、
前記DCエネルギー源からの第5のエネルギー抽出を行うように第3のパルス幅変調器によって駆動される第5のDC/AC変換モジュールであって、第5の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第3のパルス幅変調器のパルス幅変調器信号のデューティサイクルの第1の部分内で前記第5のエネルギー抽出を行うように構成された前記第5のDC/AC変換モジュールと、
前記DCエネルギー源からの第6のエネルギー抽出を行うように前記第3のパルス幅変調器によって駆動される第6のDC/AC変換モジュールであって、第6の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第3のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号のデューティサイクルの第2の部分内で前記第6のエネルギー抽出を行うように構成され、前記第3のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第2の部分は前記第3のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第1の部分と重なり合わない、前記第6のDC/AC変換モジュールと、
前記第5の正弦波AC電力トレインおよび第6の正弦波AC電力トレインの両方が前記電力グリッドの第3の電力線対と同期した位相を有するように、90度位相シフトによって前記第5の正弦波AC電力トレインと第6の正弦波AC電力トレインとのうちの一方を調整するように構成された第3の位相調整器と
をさらに含む、デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のデバイスであって、前記第1の位相調整器は第1の単相変圧器を含み、前記第2の位相調整器は第2の単相変圧器を含み、前記第3の位相調整器は第3の単相変圧器を含む、デバイス。
【請求項12】
請求項10に記載のデバイスであって、3相変圧器は、前記第1の位相調整器と、前記第2の位相調整器と、前記第3の位相調整器とを含む、デバイス。
【請求項13】
3相DC/AC変換モジュールを含むデバイスであって、前記3相DC/AC変換モジュールは第1の単相DC/AC変換器と第2の単相DC/AC変換器とを含み、
前記第1の単相DC/AC変換器は、
実質的に固定された電圧のDCエネルギー源から第1のエネルギー抽出を行うように第1のパルス幅変調器によって駆動される第1のDC/AC変換モジュールであって、第1の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第1のパルス幅変調器のパルス幅変調器信号のデューティサイクルの第1の部分内で前記第1のエネルギー抽出を行うように構成された前記第1のDC/AC変換モジュールと、
前記DCエネルギー源からの第2のエネルギー抽出を行うように前記第1のパルス幅変調器によって駆動される第2のDC/AC変換モジュールであって、第2の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第1のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号のデューティサイクルの第2の部分内で前記第2のエネルギー抽出を行うように構成され、前記第1のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第2の部分は前記第1のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第1の部分と重なり合わない、前記第2のDC/AC変換モジュールと、
前記第1の正弦波AC電力トレインおよび第2の正弦波AC電力トレインの両方が、電力グリッドの第1の電力線対と同期した同じ位相を有するように、前記第1の正弦波AC電力トレインと第2の正弦波AC電力トレインとのうちの一方を90度位相シフトによって調整するように構成された第1の位相調整器と
を含み、
前記第2の単相DC/AC変換器は、
前記DCエネルギー源から第3のエネルギー抽出を行うように第2のパルス幅変調器によって駆動される第3のDC/AC変換モジュールであって、第3の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第2のパルス幅変調器のパルス幅変調器信号のデューティサイクルの第1の部分内で前記第3のエネルギー抽出を行うように構成された前記第3のDC/AC変換モジュールと、
前記DCエネルギー源からの第4のエネルギー抽出を行うように前記第2のパルス幅変調器によって駆動される第4のDC/AC変換モジュールであって、第4の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第2のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号のデューティサイクルの第2の部分内で前記第4のエネルギー抽出を行うように構成され、前記第2のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第2の部分は前記第2のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第1の部分と重なり合わない、前記第4のDC/AC変換モジュールと、
前記第3の正弦波AC電力トレインおよび第4の正弦波AC電力トレインの両方が、前記電力グリッドの第2の電力線対と同期した位相を有するように、前記第3の正弦波AC電力トレインと第4の正弦波AC電力トレインとのうちの一方を90度位相シフトによって調整するように構成された第2の位相調整器と
を含む、
デバイス。
【請求項14】
請求項13に記載のデバイスであって、前記第1の位相調整器は第1の単相変圧器を含み、前記第2の位相調整器は第2の単相変圧器を含む、デバイス。
【請求項15】
請求項13に記載のデバイスであって、前記3相DC/AC変換モジュールは第3の単相DC/AC変換器をさらに含み、前記第3の単相DC/AC変換器は、
前記DCエネルギー源からの第5のエネルギー抽出を行うように第3のパルス幅変調器によって駆動される第5のDC/AC変換モジュールであって、第5の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第3のパルス幅変調器のパルス幅変調器信号のデューティサイクルの第1の部分内で前記第5のエネルギー抽出を行うように構成された前記第5のDC/AC変換モジュールと、
前記DCエネルギー源からの第6のエネルギー抽出を行うように前記第3のパルス幅変調器によって駆動される第6のDC/AC変換モジュールであって、第6の正弦波AC電力トレインを生成するように前記第3のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号のデューティサイクルの第2の部分内で前記第6のエネルギー抽出を行うように構成され、前記第3のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第2の部分は前記第3のパルス幅変調器の前記パルス幅変調器信号の前記デューティサイクルの前記第1の部分と重なり合わない、前記第6のDC/AC変換モジュールと、
前記第5の正弦波AC電力トレインおよび第6の正弦波AC電力トレインの両方が前記電力グリッドの第3の電力線対と同期した位相を有するように、90度位相シフトによって前記第5の正弦波AC電力トレインと第6の正弦波AC電力トレインとのうちの一方を調整するように構成された第3の位相調整器と
を含む、デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載のデバイスであって、前記第1の位相調整器は第1の単相変圧器を含み、前記第2の位相調整器は第2の単相変圧器を含み、前記第3の位相調整器は第3の単相変圧器を含む、デバイス。
【請求項17】
請求項15に記載のデバイスであって、3相変圧器は、前記第1の位相調整器と、前記第2の位相調整器と、前記第3の位相調整器とを含む、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]AC電力グリッドシステム(「AC電力グリッド」、「電力グリッド」、または単に「グリッド」とも呼ばれる)は、1つまたは複数の場合によっては分散した発電所で発電された電気を、電力線に並列に接続された負荷を有する消費者に配給するための少なくとも1対の電力線を有する電力システムである。このような負荷を本明細書では「負荷」または「グリッド負荷」と総称する。
【背景技術】
【0002】
[0002]グリッドの電力線に配給されるいかなる電気も、「電力グリッド規定」に準拠していることが必須である。電力グリッド規定によると、電力グリッドに配給されるエネルギーは、正弦波振動する交流(AC)電圧トレインの形態である必要がある。電力グリッド規定によると、各電力線対のAC電力トレインは、所定の固定ピーク電圧を有し、所定の固定周波数を有し、電力線対における電力線間の所定の固定位相差で同期しなければならない。
【0003】
[0003]グリッド接続単相DC/AC変換器は、直流(DC)電気を、グリッドの電力線のうちの特定の電力線対について電力グリッド規定に準拠したAC電力に変換することができ、そのAC電力をその特定の電力線対に供給する変換器である。そのようなDC/AC変換器は、電力グリッド接続インバータと呼ばれるか、または本明細書では「単相DC/AC変換器」と呼ぶ。単相DC/AC変換器に接続される特定の電力線の対を、本明細書では「電力線対」と呼ぶ。
【0004】
[0004]光起電(PV)発電所は、太陽光エネルギーを変換してDC電気エネルギーを発生させる。発生されたDCエネルギーは、次に、電力線対を介した配給のため、さらには負荷による消費のために、単相DC/AC変換器によってAC電力トレインに変換される。このAC電力トレインは、時間領域で振動する正弦波電圧トレインの形態であり、電力グリッド規定に準拠している。PV電気の発電所を本明細書では「PV発電所」と称する。
【0005】
[0005]本明細書で特許請求される主題は、いずれかの欠点を解消する実施形態、または上述のものなどの環境のみにおいて作用する実施形態には限定されない。そうではなく、本背景技術は、本明細書に記載の一部の実施形態が実施され得る例示の一技術分野を例示するためにのみ示されている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本明細書に記載の実施形態は、位相調整器と2つのDC/AC変換モジュールとを使用する単相インバータを含むデバイスに関する。本明細書に記載の原理によると、単相インバータは、DC源におけるエネルギーを抽出し、変換して、電力グリッド規定に準拠し、グリッドの電力線対と同期する第1の正弦波AC電力トレインを生成する第1のDC/AC変換モジュールを含む。この単相インバータは、本明細書で補完(余剰)電力と呼ぶ残存DC電力の少なくとも一部を抽出し、変換して、第2の正弦波AC電力トレインが電力線対に対して90度位相がずれている以外は電力グリッド規定に準拠している第2の正弦波AC電力トレインを生成する、第2のDC/AC変換モジュールをさらに含む。なお、この2つの変換デバイスは、時間領域で重なり合うことなく(例えば順次に)それぞれのエネルギーを抽出することに留意されたい。この余剰電力は、典型的には熱として失われることになるはずのものである。
【0007】
[0007]本明細書に記載の少なくとも一部の実施形態によると、単相変換器は、第2の正弦波AC電力トレインの位相を90度調整する位相調整器をさらに含む。第2の正弦波AC電力トレインは、次に、第1の正弦波AC電力トレインと位相同期するようになり、それによって両方の正弦波AC電力トレインが電力グリッド規定に準拠することができ、電力グリッドの電力線対と同期することができる。したがって、両方のAC電力トレインは、その電力線対で供給され得る。本明細書に記載の一部の実施形態によると、このデバイスは、3相電力グリッドのそれぞれの電力線対について1つずつ、3つのこのような単相DC/AC変換器を含む。
【0008】
[0008]この「発明の概要」は、以下の「発明を実施するための形態」で詳述されている選ばれた概念を簡潔な形で紹介するために提供されている。この「発明の概要」は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、特許請求される主題の範囲を判断する助けとして使用されることも意図していない。
【0009】
[0009]上記およびその他の利点および特徴が得られる方式を説明するために、様々な実施形態のより具体的な説明を、添付図面を参照しながら示す。これらの図面は、例示の実施形態のみを図示しており、したがって本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、これらの実施形態について添付図面を使用してさらに具体的かつ詳細に記載および説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】[0010]
図1Aは、本明細書で言及されているエネルギー抽出、調整、コンディショニング、DC/AC変換およびAC電力配給という用語を示し、明確にするための、太陽光発電シーケンスの各モジュールを示す図である。
【
図1B】[0011]
図1Bは、AC信号(DC/AC変換器出力)が電力グリッドシステムの特定の電力線対を介して送信されることを表す、正弦波時間変動(振動)AC電圧トレインを象徴的に示す図である。
【
図2A】[0012]ブーストDC/DC変換器の典型的な回路である、本明細書に記載の単相エネルギー抽出/調整(コンディショニング)デバイスを示す図である。
【
図2B】[0013]バックDC/DC変換器の典型的な回路である、本明細書に記載の単相エネルギー抽出/変換デバイスを示す図である。
【
図2C】[0014]
図2Cは、DC/DCバック変換器出力の極性を制御し、それにより
図1Bに示すようなその結果のAC電圧トレイン出力が生成されるスイッチのブリッジ構造を示す図である。[0015]
図2Dは、
図2Cのスイッチのブリッジに送られるDC/ACインバータ電力出力の脈動正弦波AC電力トレインを象徴的に示す図である。
【
図3】[0016]領域Iが抽出されたエネルギーを表し、領域IIおよび領域IIIが余剰エネルギー領域を表す、3つの領域として記載されている1PWMサイクル中にバック変換器によってコンディショニングされるDCエネルギーパルスを象徴的に示す図である。
【
図4A】[0017]本明細書に記載の原理による、太陽光電力の各モジュールと、単相EUTインバータシーケンスの入出力シーケンスとを示す図である。
【
図4B】[0018]極性コントローラである位相ずれロックスイッチブリッジに送られる、DC/AC変換モジュールの出力である90度位相ずれ脈動正弦波AC電力トレインを概略的に示す図である。
【
図4C】極性コントローラである位相ずれロックスイッチブリッジに送られる、DC/AC変換モジュールの出力である90度位相ずれ脈動正弦波AC電力トレインを概略的に示す図である。
【
図4D】[0019]それぞれの位相ずれブリッジ構造に供給される2つの電力トレインを概略的に示す図である。
【
図4E】[0020]位相ずれブリッジ構造の出力を概略的に示す図である。
【
図4F】位相ずれブリッジ構造の出力を概略的に示す図である。
【
図4G】[0021]最終的な1つの正弦波電力トレインを概略的に示す図である。
【
図4H】位相調整による遅延405Bの結果である、最終的な1つの正弦波電力トレインを概略的に示す図であり、遅延部分が破線で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0022]米国特許公開第2016/0036232号および第2017/0149250A1号は、従来の単相変換器が直流(DC)電力入力の半分未満しか抽出および変換することができないという発見を開示している。これらの特許公開は、エネルギー利用のために発電されたDC電気を効率的に抽出するために、発電されたDC電気エネルギーを有効かつ効率的に抽出するようにエネルギー抽出デバイスの特性を整合させる必要があることを教示している。
【0012】
[0023]また、これらの特許公開は、効率的なエネルギー利用のために抽出された電気のコンディショニングおよび/または配給を行うため、関連デバイスも整合させる必要があると教示している。太陽光発電所用の最適化装置として最大電力点追従(MPPT)デバイスを使用する代わりに、上記参照公開文献は、発電所、特にPV発電所用の最適化装置として「最大エネルギー利用点追従装置」を使用することを提案している。このような最適化装置を、本明細書では「MEUPT最適化装置」と呼ぶ。
【0013】
[0024]上記参照特許公開によると、MEUPT最適化装置は、参照特許公開で「余剰エネルギー」または「余剰電力」と呼んでいるものを捕捉するために設計されており、これを、発生されるが利用のために抽出および/または電力グリッドに配給されない電気エネルギー(またはそれぞれ、電力)と定義している。余剰エネルギー(または余剰電力)のこの定義を本明細書でも使用する。この余剰電力は、電力グリッドとは約90度の位相差を有しているので、余剰エネルギーを電力グリッドに直接販売することができない。MEUPT最適化装置は、捕捉されたすべての余剰エネルギーをエネルギー貯蔵器内に一時的に貯蔵し、次に、この電気エネルギーを調整し、利用のために電力グリッドに配給するようにも設計されている。したがって、MEUPT最適化装置を組み込むと、PV発電所の電気売上収益を向上させることができる。
【0014】
[0025]当技術分野におけるいくつかの技能を、DCエネルギー抽出、エネルギー調整、エネルギーコンディショニング、およびエネルギー配給において採用することができる。本明細書に記載の原理は、DCエネルギー源を問わず使用され得る。しかし、本開示は、本明細書で言及されるエネルギー抽出、調整、コンディショニングおよび配給という用語を例示し、明確にするために、太陽光発電ストリングをDCエネルギー源の一例として使用する。ただし、本明細書に記載の原理は、太陽光電力の文脈における抽出、調整、コンディショニングおよび配給には限定されない。「エネルギー」という用語と「電力」という用語は異なる物理的意味を有するが、これらの用語は当技術分野において交換可能であり、本明細書でも特に他の意味が明記されていない限り交換可能である。また、「AC電力トレイン」および「AC電圧トレイン」という用語は、特に他の意味が明記されていない限り交換可能である。
【0015】
[0026]
図1Aに、太陽光発電シーケンス10の構成要素を示す。このシーケンスは、一次エネルギー源としての光エネルギー(例えば太陽光エネルギー)から電気エネルギーを生成する光電エネルギー変換デバイス(PV太陽光ストリング)101から開始する。この電気エネルギーは、雲量、太陽の角度、PVセルの効率、および多くのその他の要因に依存する、時間変動電圧を有する。この電気エネルギーは、次に、DC/DCブースト変換器201によって調整され、コンディショニングされて、固定電圧を有するDCエネルギー源とされる。極性切り替えコントローラ224を追加すると、DC/AC変換モジュール223が、調整された固定電圧DC電力を、
図1Bに示す正弦波時間変動(振動)AC電圧トレインに変換する。
【0016】
[0027]一例として、DC/AC変換モジュール223は、パルス幅変調器(PWM)によって駆動されるバックモジュールであってよい。このように駆動されるバックモジュールを、DC/AC変換器とも呼ぶ。
図2Cに、ブリッジ構造224の一例を示す。図のように、ブリッジ構造224は、このDC/AC変換器のAC出力電圧トレインの同期と極性とを制御する4つのスイッチ(S1、S2、S3およびS4)の組からなる。ここで、「負荷」は、ブリッジ構造224から変圧器225を見た負荷を表す。デバイス201と223との組み合わせを、本明細書では「PWM抽出器」と呼ぶことがある。
【0017】
[0028]ブリッジ構造224によって生成されたAC電圧電力トレインは、電力グリッド規定に準拠する。再び
図1Aを参照すると、AC電力トレインは次に、グリッド負荷に接続されたグリッド300に電力を配給するために変圧器225を介して供給される。
図2Aに、変動電圧DCエネルギー源を制御して固定電圧DC源とすることができるブーストDC/DC変換器201の例示の典型的な回路設計を示す。
図2Bに、固定電圧DC源を正弦波AC電力トレインに変換する単相DC/ACインバータ223の典型的なPWM駆動バックモジュール回路設計の一例を示す。スイッチブリッジ構造224(
図2Cに示す)が、この単相DC/AC変換器223の出力の極性と同期とを制御する。単相DC/AC変換器223(または、ブーストDC/DC変換器201と単相DC/AC変換器223とを組み合わせる場合はPWM抽出器)は、3つの単相インバータからなる従来の3相DC/AC変換器の従来の単相逆変換モジュールにおけるエネルギー抽出/変換モジュールとしても機能可能である。
【0018】
[0029]第1節:従来のDC/AC変換の概説
[0030]一般に、実用太陽光ストリングにおける最大発電点(MPPPV)における電圧は、時間変動し、AC電力グリッドの規定ピーク電圧よりも低い。エネルギー抽出および調整のためにPV発電所では電圧ブースト抽出器が必要であり、電圧ブースト抽出器は、時間変動低電圧DC源をコンディショニングして固定高電圧DCエネルギー源とする。
【0019】
[0031]
図2Aに、インダクタLと、フィードバック制御デューティファクタ調整器FCDFA(図示せず)によって制御される制御可能スイッチQと、ダイオードDと、キャパシタCとからなる、DC/DCブーストモジュール201の電圧ブースタ回路を示す。スイッチQは、調節可能デューティファクタにより高周波数(市販製品では典型的には約18kHz)で切り替えられる。フィードバック制御デューティファクタ調整器(FCDFA)は、このDC/DCブーストモジュール201が実質的に一定のDC出力電圧(V
0)を生じさせるように、調節可能デューティファクタを制御する。言い換えると、このDC/DCブーストモジュール201は、時間変動電圧を有するDCエネルギー源に変更を加えて、シーケンスの後段のデバイス(すなわち、
図1Aの場合のDC/AC変換モジュール223)に適合する固定DC電圧V
0(典型的にはV
0=V
pk、ただしV
pkはACグリッドのピーク電圧)を有するエネルギー源とする。この後段のDC/AC変換モジュールは、規定ピーク電圧を有するDC電力を、電力グリッド規定に準拠した正弦波電力トレインの形態のAC電力に変換する。
【0020】
[0032]スイッチQがオンである期間に、上記設計のインダクタLは入力ユニット(
図1Aの場合、PV太陽光ストリング101)からエネルギーを抽出する。具体的には、インダクタLは、PWMスイッチのフィードバック制御デューティファクタによって規定される期間内に入力電力によって充電される。この充電が行われて、スイッチQの電圧v
swを、スイッチの電圧v
swが適正な値に達するまで入力電圧v
inに向かって昇圧させる。スイッチQがオフである期間には、インダクタLからダイオードDを通って電流が流れて上記設計キャパシタCに充電し、それによって所望の出力電圧と等しい定常電圧を生じさせる(グリッド接続の場合、v=v
0=v
pk)。フィードバック制御を使用して、適正に設計された固定PWM周波数のスイッチQのオン-オフ期間のデューティファクタを調節することによって、出力電圧をv
inからAC電力グリッド規定ピーク電圧v
0=v
pkに昇圧することができる。したがって、この電圧ブースト回路は、後段のDC/AC変換モジュールへの出力に適合するピーク電圧を生じさせることができる。上述の回路は、当技術分野では「ブーストDC/DC変換器」または「ブースト変換器」と称される。
【0021】
[0033]上述のように、ブースト変換器は時間変動電圧DC源(例えばPVストリング)に変更を加えて、AC電力グリッド用に規定されたピーク電圧値と等しくし得る実質的に一定した電圧を有するDC源とするように設計される。なお、通常動作の1ACサイクル中に供給ピーク電圧が減衰するのを防ぐために、
図2Aに示すブースト回路のキャパシタCの十分なキャパシタンスが設計される。すなわち、このキャパシタCは、1ACサイクルにわたって電圧を実質的に一定に保つためのものである。この記載の機能を実行するキャパシタは、当技術分野ではしばしば「DCリンク」キャパシタと称される。電力グリッド規定は、DCリンクの微小な電圧変動を許容する。したがって、DCリンクキャパシタは、大量の余剰エネルギーを蓄えるようには設計されないが、それはそのようにすれば、AC電力グリッドの最大許容電圧変動を超えないようにするために非常に大きな(したがって高額な)キャパシタが必要になるからである。
【0022】
[0034]
図2Bに、インダクタLLと、デューティファクタ調整器DFAによって制御される制御可能スイッチQQと、ダイオードDDと、DCリンクキャパシタCCとからなる典型的なDC/AC変換モジュール223を示す。スイッチQQは、調節可能デューティファクタにより高周波数(市販製品では典型的には約18kHz)で切り換えられる。スイッチQQ(しばしば「PWMスイッチ」と呼ばれる)は、パルス幅変調器(PWM)信号によって制御される。この変換モジュール223の発生AC電力トレインが電力グリッド規定に準拠するように、このPWMスイッチのデューティファクタは、デューティファクタ調整器DFAによって制御される。図のDC/AC変換モジュール223は、当技術分野では「バック変換器」と称される。DFAに関連付けられるバック変換器223は、規定ピーク電圧を有するDCエネルギー源を、正弦波AC電力トレインに変換することができる。この脈動AC電力トレインは、
図2Cに示す(
図1Aの極性/同期コントローラ224の一例である)スイッチブリッジ構造を介して送られ、次に、変圧器(例えば
図1Aの変圧器225)を介してグリッド(例えば
図1Aのグリッド300)に送られる。上述のように、スイッチブリッジ構造は極性および同期コントローラとして機能する。
【0023】
[0035]
図2Cに示すように、スイッチS1とS2が両方ともオンで、スイッチS3とS4が両方ともオフの場合、負荷に正電圧が印加される。逆に、スイッチS3とS4が両方ともオンで、スイッチS1とS2が両方ともオフの場合、負荷に負電圧が印加される。この切り替えが、電力グリッドにおける正/負電圧(またはゼロ電圧クロス)遷移を感知する同期レギュレータ(
図2Cには図示せず)によって制御される場合、このブリッジ構造224は(デューティファクタ調整器DFAと組み合わさって)、単相DC/AC変換器の出力極性および同期を有効に制御することができる。
【0024】
[0036]同期レギュレータは、必要AC角振動数ω、必要ACピーク電圧vpkで、位相θがグリッドの対応する電力線対と同期する、cos2(ωt+θ)によって表される純粋な正弦波電力波形が生成されるように、時間変動PWMデューティファクタ調整を適時に制御することができる。固定電圧DC入力と、グリッドにおける寄生インダクタンスおよび寄生キャパシタンスが組み込まれると、インダクタLLおよびキャパシタCCは、実際には小さくすることができ、または省くこともできる。当技術分野では、「変換器」という用語と「インバータ」という用語(さらには「変換」と「逆変換」)は、交換可能であり、したがって本明細書でも交換可能である。
【0025】
[0037]デューティファクタ調整器DFAは、バック変換器のスイッチQQをオン/オフする設計に従って、デューティファクタを時間の関数として調整する。したがって、適正に設計された回路および調整されたピーク電圧により、この変換モジュールは、AC電力グリッド規定およびグリッドの対応する電力線の位相の要件を含む、設計要件に応じた所望の出力電圧値、電力形態、周波数、および位相を生じさせることができる。グリッド接続ユニットの場合は、電力グリッドのピーク電圧がドリフトした場合、および/または、電力グリッドの周波数がドリフトした場合に、調整されたAC電力出力を電力グリッドとともにドリフトさせるために、AC同期レギュレータ(典型的にはDC/AC変換器に組み込まれる)が採用される。このような生成されたAC電力信号を
図3に示す。言い換えると、上述のPWMエネルギー抽出器を使用して、単相DC/AC変換器は、固定電圧DCエネルギー源からDC電気エネルギーを抽出し、電力グリッド規定に準拠したAC電力に変換することができる。
【0026】
[0038]きわめて重要なことであるが、上記の単相インバータの出力電力P(t)は、cos2(ωt+θ)の形態で時間変動することに留意されたい。したがって、特定の期間にわたって、電力グリッドの電力線を介して配給されるエネルギーは、当該期間にわたるその時間変動出力電力トレインの積分に等しい。その結果の積分値は、同じ期間にわたるエネルギー源の定DC電力の積分の2分の1に等しいに過ぎない。言い換えると、上述の従来の単相インバータは、最大でもDCエネルギー源によって供給されるエネルギーの半分のエネルギーしか抽出し、変換することができない。したがって、残りの未使用エネルギーは、利用可能な入力エネルギーの2分の1より多い。この残量は、上記の参照特許公開に記載されている余剰エネルギーのほとんどを占める。
【0027】
[0039]以下の分析のために、DCエネルギー源は、数AC電力サイクルの期間中の定電力P
mxのものであるとする。
図3に、(期間Dを有する)1PWMサイクル中の抽出DCエネルギーパルスを示す。以下で明らかにされるように、抽出DC電力P
xはDC電力P
mx以下である。生成される電力が電力グリッド規定に準拠したP
x*cos
2(ωt+θ)に実質的に等しくなるように、このPWMサイクルにおけるデューティファクタd(t)/Dが、d(t)/D=cos
2(ωt+θ)に等しい値に調整され、ここでθはグリッドの対応する電力線対の位相である。
図3(具体的には
図3の下半分)に、時間間隔Dが1PWM期間であり、入力DC電力がP
mxであり、抽出電力がP
xである、電力-時間空間(エネルギー空間と呼ぶ)も図示されている。
【0028】
[0040]
図3に示すように、このエネルギー空間は3つの領域に分割される。領域Iは、抽出電力P
x、存続期間D*cos
2(ωt+θ)の抽出DCエネルギーパルスを表し、これはPWM抽出時点に対応する任意の時点tにおいてP(t)=P
x*cos
2(ωt+θ)の単相AC電力に変換される。領域Iを、「エネルギー抽出区画」または「エネルギー抽出領域」とも呼ぶ。エネルギー源の電力P
mxと、電力P
xとの間の区画が領域IIIである。領域IIは、PWM期間D内のエネルギー抽出区画の後の区画である。領域IIと領域IIIとの組み合わせ区画は、エネルギー空間内の余剰エネルギー区画を表す。余剰エネルギー区画(領域)内のエネルギーは抽出されず、AC電力に変換されず、したがって従来は利用されない。そうされずに、この余剰エネルギーは最終的に熱として吸収される。
【0029】
[0041]繰り返すと、従来のDC/AC単相変換器は、時間変動電圧を有するDC電源に変更を加えて、グリッドのピーク電圧などの実質的に一定した特定の電圧を有するDC電源とする、電圧ブーストモジュールを採用する。このDC源は、PWM抽出器がDC入力エネルギーを抽出して変換するための入力DC源の役割を果たす。1PWMサイクル中のデューティファクタが時点tにおいてcos
2(ωt+θ)によって制御される場合(位相θは電力グリッドの対応する電力線の位相)、出力電力形式はAC電力規定に準拠する。高レベルでは、各PWMサイクルのエネルギー空間は2つの領域、すなわち抽出エネルギー領域(例えば
図3の領域I)と、余剰エネルギー領域(例えば
図3の領域IIおよび領域III)とからなる。したがって、抽出エネルギーはAC電力に変換され、電力グリッドの対応する電力線対に供給され、一方、余剰エネルギーは、捕捉されてMEUPT最適化装置などのデバイスに貯蔵されない限り熱になる。
【0030】
[0042]上述のように、参照特許公開は、数AC期間を通して積分すると、余剰エネルギーの量が少なくとも抽出エネルギーと同じ量であると教示している。言い換えると、従来の単相DC/AC変換器は最大でも入力DCエネルギーの2分の1しか抽出、変換することができない。言い換えると、従来の単相DC/AC変換器を使用した場合、入力DCエネルギーの少なくとも2分の1が余剰エネルギーになり、これは抽出されず、変換されず、電力グリッドに配給されず、負荷によって利用されず、最終的に熱になる。
【0031】
[0043]第2節:単相EUTインバータの原理
[0044]当業者には認識されていないが、実際に、単相インバータについての上述の望ましくない結果を軽減する2つの方法がある。第1の方法は、参照特許公開に記載されている原理に従ってエネルギーシステムにMEUPT最適化装置を組み込むことである。他方の方法は本明細書に記載の原理に従うことであり、この方法は、1組の2つのDC/AC変換モジュールと位相調整器とからなる単相インバータを設計し、2つのDC/AC変換モジュール間で交替するエネルギーを順次に抽出し、交替は位相調整器によって引き起こされることを提案する。この新規な単相インバータを、単相エネルギー利用追従インバータ、または単相EUTインバータと呼ぶ。
【0032】
[0045]単相EUTインバータの第1のDC/AC変換モジュールは、各PWMサイクルのエネルギー空間における第1のエネルギー領域(例えば
図3の領域I)を抽出し、変換することによって第1のAC電力トレインを生成する。それに対して、単相EUTインバータの第2のDC/AC変換モジュールは、領域Iの後のエネルギー領域(例えば
図3の領域II)を抽出し、変換することによって第2のAC電力トレインを生成する。したがって、時点tにおいて、第1のAC電力はP(t)=P
x*cos
2(ωt+θ)であり、一方、第2のAC電力はP’(t)=P
x-P
x*cos
2(ωt+θ)=P
x*(1-cos
2(ωt+θ))=P
x*sin
2(ωt+θ))である。この2つの出力AC電力トレインは、同じピーク電力と、同じ周波数とを有するが、互いに90度位相がずれている。これは、第1のAC電力トレインが電力グリッド規定および対応する電力線対の位相に準拠する場合、第2のAC電力トレインは、グリッドの対応する電力線対と90度位相がずれることを意味する。言い換えると、第1のAC電力トレインは電力グリッドの対応する電力線対に配給することができ、電気エネルギーを提供することができるが、一方、第2のAC電力トレインは、同じ電力線対に電力を供給および提供するのに適さない。
【0033】
[0046]本明細書に記載の原理によると、提案の単相EUTインバータは、位相調整器をさらに含む。この位相調整器は、上記の第2のAC電力トレインの位相を90度調整することができる。したがって、第2のAC電力トレインは、グリッドの対応する電力線対と同期するように変換される。前述のように、その後、単相EUTインバータの出力の両方(第1および第2のAC電力トレイン)が、同じ電力線対の電力グリッド規定に準拠することができる。したがって、2つの単相AC電力トレインは、接続負荷によるその後の消費のためにグリッドの同じ電力線対に配給され得る。
【0034】
[0047]
図4Aに、エネルギー生成と、単相EUTインバータ400への入力とを示すブロック図を概略的に示す。入力エネルギー(時間変動電圧を有することを特徴とする)は、PV太陽光ストリング401によって生成される。入力エネルギーは、固定電圧を有するDCエネルギー源を生成するようにエネルギーコンディショニングを行うブーストモジュール402を通る。ブーストモジュール402は、
図2Aのブーストモジュール201について上述したように構築され得る。
【0035】
[0048]ブーストモジュール402からの固定電圧DCエネルギーは、第1のPWM駆動DC/ACバックモジュール403Aによって部分的に抽出されて、グリッド規定に準拠し、電力グリッドの対応する電力線と同じ位相θを有する、第1のAC電力トレイン4031A(
図4B参照)P(t)=P
x*cos
2(ωt+θ)を生成する。
図2Bを参照し、これは、デューティファクタd1(t)/D=cos
2(ωt+θ)を有するようにデューティファクタ調整器DFAにスイッチQQを制御させることによって実現可能であることを想起されたい。第1のPWN駆動DC/ACバックモジュール403Aは、DFAが位相外れロックモジュール405にも結合されている点を除いて
図2Bに関して上述したDC/ACバックモジュール223と同様に構築され得る。
【0036】
[0049]また、ブーストモジュールからの固定電圧DCエネルギーは、第2のPWM駆動DC/ACバックモジュール403Bによっても部分的に抽出される。第2のDC/ACバックモジュール403Bは、第1のDC/ACバックモジュール403Aと同様に構築されてよく、第1のDC/ACバックモジュール403AのスイッチQQと、ダイオードDDと、インダクタLLと、キャパシタCCとが互いに接続するのと同様にして互いに接続するスイッチSQQと、ダイオードSDDと、インダクタSLLと、キャパシタSCCとを含む。また、第2のDC/ACバックモジュール403BのスイッチSQQと、ダイオードSDDと、インダクタSLLと、キャパシタSCCとは、第1のDC/ACバックモジュール403AのスイッチQQ、ダイオードDD、インダクタLL、およびキャパシタCCとそれぞれ同じ大きさを有し得る。
【0037】
[0050]しかし、第2のDC/ACバックモジュール403BのスイッチSQQは、位相ずれロックモジュール405を介してデューティファクタ調整器DFAに結合されている。位相ずれロックモジュール405は、第1のDC/ACバックモジュールのスイッチQQがオンのときに、第2のDC/ACバックモジュールのスイッチSQQが確実にオフとなり、またその逆となるようにする。したがって、スイッチSQQのデューティサイクルは、1-d1(t)=1-cos
2(ωt+θ)=sin
2(ωt+θ)となる。したがって、第2のDC/ACバックモジュール403Bによって生成される第2のAC電力トレイン4031B(
図4C参照)は、時間変動電力トレインP’(t)-P
x*sin
2(ωt)を有する。以下で詳述するように、この第2のAC電力トレインの位相は、第2のAC電力トレインの位相が となるように、位相調整器によってさらに調整される。
【0038】
[0051]
図4Bの電力トレイン4031Bは、その後、90度調整されてAC電力トレインP’’(t)=P
x*sin
2(ωt+θ+90
o)とされる。位相調整後、(P(t)=P
x*cos
2(ωt)+θである)第1のAC電力トレイン4031Aと(調整によりP’’(t)=P
x*sin
2(ωt+θ+90
o)=P
x*cos
2(ωt)+θとなる)第2のAC電力トレイン4031Bとが同期するようになり、グリッドの同じ電力線対に供給されるのに適するようになるため、AC電力トレイン(Pt)とP’’(t)の両方が同期するようになる。ここでは、第1の電力トレインP(t)(すなわち
図4Bの信号4031A)はロックブリッジスイッチ構造404Aに供給され、第2の電力トレインP’(t)(すなわち
図4Cの信号4031B)は、第1のロックブリッジ構造404Aと位相がずれている第2のロックブリッジ構造404Bに供給されると言うにとどめておく。位相ずれロックブリッジ構造404Aおよび404Bの動作と構造については
図4Dから
図4Hを参照して以下で詳述する。
【0039】
[0052]第3節:3相EUTインバータに適用される原理
[0053]従来の単相DC/AC変換器の非効率的エネルギー抽出の根本的原因は、従来の3相DC/AC変換器にも存在する。本質的に、従来の3相DC/AC変換器は、抽出と変換を行い、120度の位相差のある3対の電力線に同様の時間平均AC電力を配給する3つの単相DC/AC変換器を動作させる。したがって、単相DC/AC変換器で生じる余剰エネルギーは、従来の3相DC/AC変換器の3つの単相DC/AC変換器のそれぞれでも生じる。悪材料は、単相DC/AC変換器のエネルギー抽出の非効率性のいかなる根本的原因も従来の3相DC/AC変換器においては3倍存続することである。好材料は、単相インバータのエネルギー抽出の短所に適用可能な有効な改善策は、3相インバータのエネルギー抽出の短所に対して3倍有効な適用可能改善策ともなり得ることである。
【0040】
[0054]3相DC/ACインバータが3組の上述の単相EUTインバータからなる場合、その3相DC/ACインバータを3相EUTインバータと呼ぶ。3相EUTインバータの単相EUTインバータのそれぞれが、DCエネルギー源(例えばPVストリングまたはPV発電所)によって供給されるDC電力の3分の1(1/3)を抽出して2つの単相AC電力トレインに変換することができ、それらを3相電力グリッドの同じ電力線対に配給することができる。例えば、第1の単相EUTインバータは、DCエネルギー源によって供給されるDC電力の3分の1を抽出して2つの同期単相AC電力トレインの第1の組とし、その同期単相AC電力トレインの第1の組をグリッドの第1の対応する電力線対に配給することになる。第2の単相EUTインバータは、DCエネルギー源によって供給されるDC電力の別の3分の1を抽出して(第1の同期単相AC電力トレインの組とは120度位相がずれているが、グリッドの第2の電力線対と同期する)2つの同期単相AC電力トレインの第2の組とし、その同期単相AC電力トレインの第2の組をグリッドの第2の対応する電力線対に配給する。第3の単相EUTインバータは、DCエネルギー源によって供給されるDC電力のさらに別の3分の1を抽出して(第1および第2の同期単相AC電力トレインとは120度位相がずれているが、グリッドの第3の電力線対と同期する)2つの同期単相AC電力トレインの第3の組とし、その同期単相AC電力トレインの第3の組をグリッドの第3の対応する電力線対に配給する。
【0041】
[0055]したがって、3相EUTインバータの3つの単相EUTインバータの共働により、エネルギー源によって供給される入力DC電力全体のほぼ全部を抽出し、3相電力グリッドの3対の電力線に配給することができる。したがって、本明細書に記載の原理によると、3相EUTインバータを使用して従来の3相DC/ACインバータを置き換えた場合、消費用に3相電力グリッドに出力AC電力を配給するために、DCエネルギー源から抽出される2倍の量のエネルギーを抽出することができる。
【0042】
[0056]第4節:位相調整器の実装例
[0057]本明細書で言及されている位相調整器を設計するために、当技術分野におけるいくつかの技能を採用することができる。例えば、当技術分野でよく知られているように、単相変圧器は単相AC電圧トレインを、転極に関連するACサイクルの2分の1だけ遅延させ得る。これは単相変圧器が、波形または周波数を変化させることなくAC電力トレインの位相を90度シフトさせることができることを意味する。(一次と二次との巻数比が1に等しい)理想的な変圧器は、入力AC電力トレインのピーク電圧をさらに保持することができる。巻数比が1の実際の変圧器は、わずかなピーク電圧降下をもたらすことがある。しかし、この誘起されるピーク電圧降下は、一次対二次巻数比を適切な値に調整することによって補正することができる。したがって、単相変圧器は、本明細書に記載の原理にとってきわめて実際的な位相調整器であり得る。すべての単相EUTインバータが、その位相調整器として1つの適正な単相変圧器を採用することができる。3相EUTインバータは、それぞれがこのような位相調整器を備えた3つの単相EUTインバータを採用することができる。したがって、インダクタまたはキャパシタの使用により位相調整も行うことができる。
【0043】
[0058]また、3相変圧器は、波形または周波数を変更することなく、AC電力トレインの3相の位相のそれぞれを90度シフトさせることができる。したがって、上述のように、3相EUTインバータは、3相電力グリッドにおける3対の電力線と同期するように3つの位相外れAC電圧トレインのすべてを調整する複合位相調整器として1つの3相変圧器のみを採用することもできる。3相EUTインバータの3つの調整器を1つのみの複合調整器に置き換えることによって、この位相調整器候補は3相EUTインバータのコストをさらに削減することができる。
【0044】
[0059]第5節:まとめ
[0060]第1節で分析したように、従来のAC単相抽出器はPWM抽出器を使用してDC入力電力を抽出する。1PWMサイクル中のデューティファクタが時点tにおいてcos2(ωt+θ)によって制御される場合、出力電力は、適正な同期された位相θを想定すればAC電力規定に準拠する。なお、各PWMサイクルのエネルギー空間は2つの領域からなり、一方は抽出エネルギー領域であり、他方は余剰エネルギー領域であることに留意されたい。参照特許公開は、数AC期間を通して積分した場合、余剰エネルギーの量は少なくとも抽出エネルギーと同じであると教示している。言い換えると、単相DC/AC変換器は最大でも入力DC電力の半分しか抽出および変換することができない。抽出エネルギーはAC電力に変換され、電力グリッドに供給されるが、余剰エネルギーは捕捉されてMEUPTデバイスなどのデバイスに貯蔵されない限り、熱になる。
【0045】
[0061]第2節で説明したように、提案の新規な単相DC/AC変換器設計は、1組の2つのDC/AC変換モジュールと、位相調整器とを含み、これらを使用して順次エネルギー抽出を実施する。この新規な単相DC/AC変換器を本明細書では「単相EUTインバータ」とも称する。単相EUTインバータの第1のDC/AC変換モジュールは、各PWMサイクルのエネルギー空間における第1のエネルギー領域(例えば
図3の領域I)を抽出し、変換することにより第1のAC電力トレインを生成し、一方、第2のDC/AC変換モジュールは、その後のエネルギー領域(例えば
図3の領域II)を抽出し、変換することにより第2のAC電力トレインを生成する。したがって、時点tにおいて、第1のAC電力はP(t)=P
x*cos
2(ωt+θ)であり、第2のAC電力はP’(t)=P
x*sin
2(ωt+θ)である。この2つの出力AC電力トレインは同じピーク電力と、同じ周波数とを有するが、位相が互いに90度ずれている(
図4Bと
図4Cとを比較のこと)。これは、第1のAC電力トレインが電力グリッド規定に準拠し、電力グリッドの対応する電力線対と同期しているが、第2のAC電力トレインがグリッドの同じ電力線対と90度位相がずれていることを意味する。言い換えると、第1のAC電力トレインは、電力グリッドの対応する電力線対に配給されることができ、電気エネルギーを供給することができ、一方、第2のAC電力トレインは、同じ電力線対に電力を配給および供給するのに適さない。
【0046】
[0062]単相EUTインバータは、位相調整器をさらに含む。この位相調整器は、上述の第2のAC電力トレインを90度調整することができる。したがって、第2のAC電力トレインは、グリッドの対応する電力線対と同期するように変換される。前述のように、その後、単相EUTインバータの出力の両方(第1および第2のAC電力トレイン)が、同じ電力線対の電力グリッド規定に準拠することができる。したがって、単相EUTインバータの出力、2つの単相AC電力トレインが、グリッドの同じ電力線対に配給され、接続負荷により消費され得る。
【0047】
[0063]第3節で説明したように、3相DC/ACインバータが1組の3つの上述の単相EUTインバータからなる場合、3相DC/ACインバータを3相EUTインバータと呼ぶ。3相EUTインバータの単相EUTインバータのそれぞれが、DCエネルギー源(例えばPVストリング発電所)によって供給されるDC電力の3分の1を抽出し、2つの単相AC電力トレインに変換し、それらを3相電力グリッドの同じ電力線対に配給する。したがって、3相EUTインバータの3つの単相EUTインバータの共働により、エネルギー源によって供給される入力DC電力全体の全部を抽出し、3相電力グリッドの3対の電力線に配給することができる。したがって、本明細書に記載の原理によると、3相EUTインバータを使用して従来の3相DC/ACインバータを置き換えた場合、DCエネルギー源から抽出される2倍の量のエネルギーを抽出することができ、消費のために3相電力グリッドに出力AC電力を配給することができる。前述のように、従来の単相インバータのこの改善は、従来の3相インバータの改善でもある。
【0048】
[0064]第4節では、第2のAC電力トレインのために必要な90度位相調整を行うことができ、電力グリッド規定に準拠するための他のすべての仕様を維持することができる実用デバイスについて説明した。また、この候補は、3相EUTインバータにも適合する。
【0049】
[0065]本明細書に記載の原理で使用されている関連用語を例示し、明確にするために、
図4Aに単相EUTインバータ400のための太陽光電力入力および出力シーケンスの各モジュールを示す。この入力シーケンスは、電圧ブーストモジュール402への入力源の役割を果たす変動電圧を有するエネルギー源としての太陽光ストリング401において生成されるエネルギーから開始する。エネルギー源の出力は、キャパシタCに蓄積され、ほぼ一定した電圧DC源である。
【0050】
[0066]言い換えると、この電圧ブーストモジュール402は、変動電圧DCエネルギー源に変更を加えて、DCリンクキャパシタC(
図2AのキャパシタC参照)に蓄積される固定電圧DCエネルギー源とする。この固定電圧DCエネルギー源は、次に、2組のDC/AC変換モジュール403Aおよび403Bへの入力として提供される。この2つの変換モジュールは、DCリンクキャパシタCからの順次エネルギー抽出を行わせる位相ずれロックPWMスイッチQQおよびSQQによって動作させられる。したがって、DC/AC変換モジュールはそれぞれ、互いに90度位相がずれた、それぞれの脈動正弦波電力トレイン4031Aおよび4031B(やはり
図4Bおよび
図4Cに示す)を生成する。
図Dに示すように、この2つの90度位相がずれた脈動電力トレイン4031A(P’(t))および4031B(P’(t))は、次に、それぞれ、それぞれの位相ずれロックブリッジスイッチ構造404Aおよび404B(やはり
図4Dに示す)に送られる。ロックブリッジ構造404Aおよび404Bのそれぞれは、
図2Cのブリッジ構造224について説明したように構築され得るが、S1とスイッチSS1が位相ずれした状態に制御され、スイッチS2とS22が位相ずれした状態に制御され、スイッチS3とS33が位相ずれした状態に制御され、スイッチS4とS44が位相ずれした状態に制御される点が異なる。
【0051】
[0067]これらのブリッジ構造は、入力4031Aおよび4031Bの極性を制御し、それぞれ
図4Eおよび
図4Fの405Aおよび405Bとして示す90度位相が異なる2つのAC電圧トレインを生成する。
図4Fに示すように、第2のAC電圧トレイン405Bは90度位相調整器406に供給されることができ、その結果、第2のAC電圧トレイン405Bは第1のAC電圧トレイン405Aと位相同期するようになる。したがって、両方のAC電圧トレインはグリッドの同じ電力線対への(変圧器を介した)配給に適合する。完全を期すために、
図4Gおよび
図4Hに、一方の電力トレインが位相調整406による遅延の結果の信号407Bである、最終的な2つの同期した電力トレインも示す。遅延部分は、
図4Hに破線で示されている。他方の結果の電力信号407Aは遅延されない。
【0052】
[0068]本発明は、本発明の趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態でも実施され得る。記載の実施形態は、あらゆる点において例示的とみなされるべきであり、限定的とみなされるべきではない。したがって、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等の意味および範囲に含まれるすべての変更は、その範囲に包含されるものとする。