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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオール
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20230329BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20230329BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230329BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230329BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230329BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C08G64/02
C08G18/44
C08G18/10
C08G18/00 C
C09D175/04
C09D5/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021503953
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006730
(87)【国際公開番号】W WO2020179462
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019039374
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 英三郎
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216841(JP,A)
【文献】特開2015-143216(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190280(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016261(WO,A1)
【文献】特開平05-051428(JP,A)
【文献】特開平05-025264(JP,A)
【文献】Citation in opposition procedure,2017年01月,<URL:https://register.epo.org/application?documentId=E2VRUUT67433936&number=EP08850010&lng=en&npl=true>,[令和5年2月27日検索]、インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 - 64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを含み、
末端の0モル%より大きく3.0モル%以下が下記式(B)で表されるオキソラン末端であるポリカーボネートジオール。
【化1】
(式(A)中、R1は、炭素数2~12の二価の脂肪族炭化水素又は炭素数3~12の二価の脂環族炭化水素を表す。)
【化2】
(式(B)中、mは、1~6の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(A)で表される繰り返し単位が、下記式(C)で表される繰り返し単位と下記式(D)で表される繰り返し単位とを含み、
前記式(C)で表される繰り返し単位と前記式(D)で表される繰り返し単位とのモル比(式(C):式(D))が、10:90~90:10である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
【化3】
【化4】
(式(D)中、R2は、式(C)の構造を除く炭素数3~8の、二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【請求項3】
前記式(D)で表される繰り返し単位が、下記式(E)で表される繰り返し単位を含む、請求項2に記載のポリカーボネートジオール。
【化5】
(式(E)中、lは、4を除く3~6の整数を表す。)
【請求項4】
前記式(B)で表されるオキソラン末端が、下記式(F)で表されるオキソラン末端を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール。
【化6】
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを含む、コーティング組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含み、該ウレタンプレポリマーが末端イソシアネート基を持つ、コーティング組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、コーティング組成物。
【請求項8】
水、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタンを含む、水系コーティング組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを用いて得られる、熱可塑性ポリウレタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートジオールに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートジオールは、例えば、ポリウレタン、及び熱可塑性エラストマーなどのソフトセグメントとして、耐加水分解性、耐光性、耐酸化劣化性、耐熱性などの特性に優れた素材として知られている。しかしながら、ポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として用いた場合、基材によっては、基材への密着性が不足する場合がある。
【0003】
一方、ポリカーボネートジオールのカーボネート基に対するエーテル基の割合が0.01モル%以上0.7モル%以下であるポリカーボネートジオールが開示されている(例えば、特許文献1)。さらに、構造の一部にイソソルビド、イソマンニド、及びイソイディッドから選ばれる少なくとも1種のジオールに由来する構造単位及び1,4-ブタンジオールに由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールが開示されている(例えば、特許文献2)。また、分子末端にアリル基を0.35mg-KOH/g以下(ただし、0mg-KOH/gを除く)有するポリカーボネートジオールとイソシアネートとを反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015-194670号
【文献】特許第6252070号
【文献】特許第5013159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として用いられる場合、塗膜の耐薬品性及び/又は耐熱性の観点から、改善の余地を有している。また、特許文献2に記載のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として用いられる場合、塗膜の柔軟性及び/又は耐薬品性の観点から、改善の余地を有している。また、特許文献3に記載のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として用いられる場合、基材への密着性及び/又は塗膜強度の観点から、改善の余地を有している。
【0006】
そこで、本発明は、例えば、塗料の構成材料として用いる場合、耐薬品性と、基材への密着性と、の少なくとも一つを確保できる塗膜を得ることができるポリカーボネートジオールを提供することを目的とする。また、本発明は、例えば、ポリウレタンの原料として用いる場合、機械的強度と、耐熱性と、柔軟性と、の少なくとも一つを確保できるポリウレタンを得ることができるポリカーボネートジオールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造の末端を特定割合で有するポリカーボネートジオールを用いることで目的を達成できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、本発明の実施形態の構成の一例は以下のとおりである。[1]
下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを含み、末端の0モル%より大きく3.0モル%以下が下記式(B)で表されるオキソラン末端であるポリカーボネートジオール。
【化1】
(式(A)中、R1は、炭素数2~12の、二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【化2】
(式(B)中、mは、1~6の整数を表す。)
[2]
前記式(A)で表される繰り返し単位が、下記式(C)で表される繰り返し単位と下記式(D)で表される繰り返し単位とを含み、
前記式(C)で表される繰り返し単位と前記式(D)で表される繰り返し単位とのモル比(式(C):式(D))が、10:90~90:10である、[1]に記載のポリカーボネートジオール。
【化3】
【化4】
(式(D)中、R2は、式(C)の構造を除く炭素数3~8の、二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
[3]
前記式(D)で表される繰り返し単位が、下記式(E)で表される繰り返し単位を含む、[2]に記載のポリカーボネートジオール。
【化5】
(式(E)中、lは、4を除く3~6の整数を表す。)
[4]
前記式(B)で表されるオキソラン末端が、下記式(F)で表されるオキソラン末端を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール。
【化6】
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを含む、コーティング組成物。
[6]
[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含み、該ウレタンプレポリマーが末端イソシアネート基を持つ、コーティング組成物。
[7]
[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、コーティング組成物。
[8]
水、[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタンを含む、水系コーティング組成物。
[9]
[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを用いて得られる、熱可塑性ポリウレタン。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗料の構成材料として用いる場合、耐薬品性と、基材への密着性と、の少なくとも一つを確保できる塗膜を得ることができる、ポリカーボネートジオールを提供することができる。そして、本発明のポリカーボネートジオールは、ポリウレタンの原料として用いる場合、機械的強度と、耐熱性と、柔軟性と、の少なくとも一つを確保できるポリウレタンを得ることが可能である。
これらの特性(耐薬品性、基材への密着性、機械的強度、耐熱性、及び柔軟性から成る群から選択される少なくとも一つの特性)を確保できることから、本発明のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として、また、ポリウレタンの原料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを含む。
【化7】
(式(A)中、R1は、炭素数2~12の、二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。繰り返し構造に含まれる複数のR1は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
前記式(A)で表される繰り返し単位は、下記式(C)で表される繰り返し単位と下記式(D)で表される繰り返し単位とを含み、前記式(C)で表される繰り返し単位と前記式(D)で表される繰り返し単位とのモル比(式(C):式(D))が、10:90~90:10であることが好ましい。
【化8】
【化9】
(式(D)中、R2は、式(C)の構造を除く炭素数3~8の、二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。繰り返し構造に含まれる複数のR2は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0013】
前記式(C)で表される繰り返し単位と前記式(D)で表される繰り返し単位とのモル比(式(C):式(D))は、35:65~65:35であれば、ポリカーボネートジオールは室温で液状となる傾向にありより好ましく、40:60~60:40であれば、ポリカーボネートジオールは-5℃でも液状となる傾向があるためさらに好ましい。
【0014】
前記式(D)で表される繰り返し単位は、下記式(E)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化10】
(式(E)中、lは、4を除く3~6の整数を表す。繰り返し構造に含まれる複数のlは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
上記式(D)で表される繰り返し単位が上記式(E)で表される繰り返し単位を含むと、塗膜の耐薬品性が向上する傾向にある。
【0016】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、末端の0モル%より大きく3.0モル%以下が下記式(B)で表されるオキソラン末端である。
【化11】
(式(B)中、mは、1~6の整数を表す。)
【0017】
本実施形態のポリカーボネートジオールによれば、末端に上記式(B)の構造を特定割合有することで、例えば、塗料の構成材料として用いる場合、耐薬品性と、基材への密着性と、の少なくとも一つを確保することができる塗膜を得ることができる。一態様において、本実施形態のポリカーボネートジオールによれば、末端に上記式(B)の構造を特定割合有することで、例えば、塗料の構成材料として用いる場合、得られる塗膜の耐薬品性を損なうことなく、基材への密着性を向上させることができる。
末端に上記式(B)の構造を特定割合有することで、上記の効果が得られる理由については明らかではないが、本発明者は以下のように考えている。すなわち、
一般的に、ポリカーボネートジオール(末端はOH基)は、ポリカーボネート樹脂、又はポリカーボネート樹脂に類似する構造を有するポリエステル樹脂などに対して高い密着性を有するものの、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂などに対しては、密着性が十分でない傾向がある。他方、本実施形態のポリカーボネートジオールは、末端の特定割合が上記式(B)のオキソラン構造であるため極性が強くなり、基材への密着性が向上する。
また、一態様において、末端における上記式(B)のオキソラン構造の割合を特定範囲に収めることで、末端のOH基の割合が過度に低下することを防止できる。末端のOH基の割合が過度に低下することを防止できることで、架橋密度の低下を防止でき、その結果、耐薬品性、塗膜強度、及び耐熱性から成る群から選択され少なくとも一つの特性を確保することができる。
また、一態様において、末端における上記式(B)のオキソラン構造が存在することで、架橋密度を好適な範囲に制御でき、その結果、塗膜の柔軟性を確保することができる。
【0018】
一態様において、本実施形態のポリカーボネートジオールの末端における、上記式(B)のオキソラン構造の割合は、後述の実施例に記載する方法で求めたとき、検出限界以上であることが好ましい。本実施形態では、ポリカーボネートジオールの末端に、上記式(B)のオキソラン構造が特定割合内で含まれていれば、本発明の効果が得られることが期待される。
【0019】
また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、末端の0.003モル%以上、0.005モル%以上、0.008モル%以上、又は0.01モル%以上が上記式(B)の構造であれば、例えば、塗料の構成材料として用いる場合、得られる塗膜の密着性がより向上する傾向にあり、好ましい。他方、本実施形態のポリカーボネートジオールは、末端の2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.2モル%以下、1.0モル%以下、0.90モル%以下、0.85モル%以下、0.70モル%以下、0.55モル%以下又は0.50モル%以下が上記式(B)の構造であれば、例えば、塗料の構成材料として用いる場合、より強靭な塗膜が得られる傾向にあるため好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、末端における上記式(B)で表されるオキソラン末端の割合が0.01~2.0モル%であれば、例えば、熱可塑性ポリウレタンの原料として用いた場合、高分子量のポリウレタンが得られ、分子量の制御も容易となるのでより好ましい。本発明の効果を得易くする観点から、末端における上記式(B)で表されるオキソラン末端の割合は、0.01~1.5モル%であればさらに好ましく、0.02~1.2モル%であればよりさらに好ましく、0.02~0.1モル%であれば特に好ましい。
【0020】
なお、本実施形態において、上記式(B)で表されるオキソラン末端の割合は、後述の実施例に記載する方法で求めることができる。
前記式(B)で表されるオキソラン末端は、下記式(F)で表されるオキソラン末端を含むことが好ましい。
【化12】
【0021】
上記式(B)で表されるオキソラン末端が上記式(F)で表されるオキソラン末端を含むと、塗料の構成材料として用いる場合、得られる塗膜の密着性が向上する傾向にある。
【0022】
本実施形態のポリカーボネートジオールを得る方法は、特に限定されないが、例えば、上記式(B)で表されるオキソラン構造を有するモノマー(一例として、2-(1-ヒドロキシメトキシ)オキソラン、2-(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン、2-(3-ヒドロキシプロポキシ)オキソラン、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソラン、2-(5-ヒドロキシペンタオキシ)オキソラン、及び2-(6-ヒドロシキヘキオキシ)オキソランから成る群から選択される少なくとも1つの化合物)を、原料に混ぜて重合してもよく、また、目的の分子量になった後に加え、加熱撹拌してもよい。これらのオキソラン原料(上記式(B)で表されるオキソラン構造を有するモノマー)の量を調整することにより、上記式(B)で表されるオキソラン末端の割合を制御することができる。加熱撹拌の条件としては、例えば、100~200℃で30分から10時間撹拌することが好ましい。
【0023】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、室温(例えば25℃)で液状であれば、使用時に溶解する必要がなく好ましい。また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、-5℃で液状あれば、さらに好ましい。なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールの液状確認は、後述の実施例に記載する方法で行うことができる。
【0024】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン及びオキセパンからなる群より選ばれる少なくとも1種の環状エーテル化合物を含んでいてもよい。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、環状エーテル化合物の含有量が、0.01~50ppmであることが好ましく、0.01~5ppmであることがより好ましい。
【0025】
なお、本実施形態において、環状エーテル化合物の含有量は、後述の実施例に記載する方法で求めることができる。また、本実施形態において、ポリカーボネートジオール中に環状エーテル化合物、水分又は金属元素等の微量成分を含む組成物の状態であっても「ポリカーボネートジオール」と表記する。
【0026】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、柔軟性を付与する目的で、その分子内に下記式(G)の繰り返し単位で表される構造を含むこともできる。
【化13】
(式(G)中、R’はアルキレン基を表し、全繰り返しの単位において、該アルキレン基は2種以上あっても構わない。また、xは2以上の整数を表す。)
【0027】
ポリカーボネートジオールの分子内に上記式(G)の繰り返し単位を導入する方法は、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピレングルコール、ポリオキシエチレンテトラメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールなどのエーテル系ポリオールを原料ジオールに添加してもよく、重合途中でエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加させてもよい。
【0028】
本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、分子中の式(G)の繰り返し単位の含有量は、本発明に影響しない範囲であれば特に限定されるものではないが、以下の範囲が好ましい。すなわち、得られるポリウレタンの耐熱性及び/又はや耐薬品性の低下を抑制する観点から、ポリカーボネートジオールに式(G)で表される繰り返し単位を導入する場合には、式(A)で表されるカーボネートの繰り返し単位に対し式(G)で表される(エーテル由来の構造を有する)繰り返し単位が0.05~5モル%であることが好ましく、0.05~3モル%であることがより好ましい。
【0029】
本実施形態のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、300~5000であることが好ましい。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が300以上であれば、塗膜の柔軟性が得られる傾向にある。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が5000以下であれば、塗料の構成材料として用いる場合、塗料固形分濃度などが制限され難く、また得られるポリウレタンの成型加工性も低下し難いので好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、上記と同様の観点から、450~3000であることがさらに好ましい。
【0030】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、水分量は、1~500ppmであることが好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、水分量が500ppm以下であれば、水とイソシアネートとの反応により白濁し難く、平滑な塗膜が得られ易いので好ましい。また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、水分量が1ppm以上であれば、ポリカーボネートジオール中に容易にカーボネート化合物を分散させ易いので好ましい。該水分量が、5~250ppmであれば、その効果はさらに顕著になり、10~150ppmであれば、さらに好ましい。
【0032】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールの水分量は、後述の実施例に記載する方法で求めることができる。
【0033】
本実施形態のポリカーボネートジオールの色数は、5~100が好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、色数が100以下であれば、塗膜に着色が見られ難くなるので好ましい。また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、色数が5以上であれば、ポリカーボネートジオールの生産条件が制約を受け難くなるので好ましい。該色数が、5~50であれば、その効果はさらに顕著になり、5~30であれば、さらに好ましい。
【0034】
色数が前記範囲内のポリカーボネートジオールを得る方法としては、特に限定されないが、例えば、200℃以下の、好ましくは170℃以下の温度で重合する方法が挙げられる。
【0035】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールの色数は、後述の実施例に記載するポリカーボネートジオールの色数の決定により求めることができる。
【0036】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造方法は、特に限定されない。本実施形態のポリカーボネートジオールは、例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9~20(1994年)に記載される種々の方法で製造することができる。
【0037】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、特に限定されないが、例えば、ジオールとカーボネートとを原料として製造される。
【0038】
本実施形態に用いるジオールは、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオールなどの側鎖を持たないジオール;2-メチル-1、8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1、5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールなどの側鎖を持ったジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパンなどの環状ジオールが挙げられる。当該ジオールは1種類又は2種類以上をポリカーボネートジオールの原料として用いてもよい。1,4-ブタンジオールと、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールから1種類又は2種以上をポリカーボネートジオールの原料として用いた場合、塗膜の耐薬品性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0039】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造において、2種類以上のジオールを原料として用いる場合、それら原料の比は特に限定されない。モル比で10/90~90/10の間で仕込み量を設定することが好ましい。この範囲であれば、得られるポリカーボネートジオールの結晶性が低下し易く、柔軟な塗膜が得られ易い。35/65~65/35とすれば、得られるポリカーボネートジオールは室温で液状となるためさらに好ましく、40/60~60/40とすれば、-5℃以下でも液状となるのでより好ましい。
【0040】
さらに、本実施形態のポリカーボネートジオールの性能を損なわない範囲で、1分子に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどをポリカーボネートジオールの原料として用いることもできる。この1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料として過度に多く用いると、ポリカーボネートの重合反応中に架橋してゲル化が起きてしまう。したがって、1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料として用いる場合であっても、当該化合物は、ポリカーボネートジオールの原料として用いるジオールの合計モル数に対し、0.1~5モル%にするのが好ましい。この割合は0.1~1モル%であることが、より好ましい。
【0041】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造において、原料のカーボネートは、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートなどが挙げられる。これらの内から1種又は2種以上のカーボネートをポリカーボネートジオールの原料として用いることができる。入手のし易さ又は重合反応の条件設定のし易さの観点より、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートを用いることが好ましい。
【0042】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造では、触媒を添加することが好ましい。該触媒としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属のアルコラート、水素化物、オキシド、アミド、炭酸塩、水酸化物、窒素含有ホウ酸塩、さらに有機酸の塩基性アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。また、前記触媒として、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミニウム、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス、イッテルビウム、の金属、塩、アルコキシド、有機化合物が挙げられる。それらから1つ又は複数の触媒を選択し使用することができる。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カリウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、イッテルビウムの金属、塩、アルコキシド、有機化合物から1つ又は複数の触媒を用いた場合、ポリカーボネートジオールの重合が良好に行われ、得られるポリカーボネートジオールを用いたウレタン反応に対する影響も少ないので好ましい。前記触媒として、チタン、イットリビウム、スズ、ジルコニウムを用いた場合、さらに好ましい。
【0043】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、上記触媒を、ICP(誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)分析装置を用い測定した金属元素の量として、0.0001~0.02質量%含んでいてもよい。該触媒の含有量が前記範囲であれば、ポリカーボネートジオールの重合が良好に行われ、得られたポリカーボネートジオールを用いたウレタン反応に対する影響も少ない。該触媒の含有量は、0.0005~0.01質量%の場合より好ましい。
【0044】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、ICP分析装置により測定した際の、チタン、イットリビウム、スズ及びジルコニウムから成る群から選択される少なくとも1種の金属元素の含有量が、0.0001~0.02質量%であることが好ましく、0.0005~0.01質量%であることがより好ましい。また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、ICP分析装置により測定した際の、チタン、イットリビウム、スズ及びジルコニウムの総含有量が、0.0001~0.02質量%であることが好ましく、0.0005~0.01質量%であることがより好ましい。
【0045】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオール中の金属元素の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、例えば、ポリウレタンの原料として用いる場合、ポリカーボネートジオールの製造で用いた触媒を、リン化合物で処理することが好ましい。リン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートなどのリン酸トリエステル;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2-エチルへキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、アチレングルコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの酸性リン酸エステル;トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニル(モノデシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスルトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトなどの亜リン酸エステル類;さらに、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸などが挙げられる。
【0047】
本実施形態のポリカーボネートジオールに含まれるリン化合物の量は、ICP分析装置を用い測定した際のリン元素の含有量として、0.0001~0.02質量%であることが好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、リン化合物の量が前記範囲であれば、例えば、ポリウレタンの原料として用いた場合、該ポリウレタンの製造反応において、ポリカーボネートジオール製造で用いた触媒の影響を小さくすることが可能であり、また、リン化合物がポリウレタンの製造反応や反応生成物の物性に影響することも少ない。さらに、ポリカーボネートジオールにエステル交換反応触媒が存在する場合、ポリカーボネートジオール中に存在するカーボネート化合物の分解を抑制することができる。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、ICP分析装置により測定した際のリン元素の含有量は、0.0005~0.01質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造方法の具体例を以下に示す。本実施形態のポリカーボネートジオールの製造は、特に限定されないが、例えば、2段階に分けて行うことができる。ジオールとカーボネートとをモル比(ジオール:カーボネート)で、例えば、20:1~1:10の割合で、好ましくは10:1~1:2の割合で混和し、常圧又は減圧下、100~250℃で1段目の反応を行う。カーボネートとしてジメチルカーボネートを用いる場合、生成するメタノールをジメチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。カーボネートとしてジエチルカーボネートを用いる場合、生成するエタノールをジエチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。また、カーボネートとしてエチレンカーボネートを用いる場合、生成するエチレングリコールをエチレンカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。次いで、2段目の反応は、前記1段目の反応生成物を、減圧下、160~250℃で加熱して、未反応のジオールとカーボネートとを除去するとともに、低分子量ポリカーボネートジオールを縮合させて、所定の分子量のポリカーボネートジオールを得る反応である。
【0049】
<用途>
本実施形態のポリカーボネートジオールは、塗料又は接着剤の構成材料として、またポリウレタン又は熱可塑性エラストマーの原料として、さらにはポリエステル又はポリイミドの改質剤などの用途に用いることができる。特に、本実施形態のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として用いる場合、表面が平滑であり、強度、耐薬品性などの性能のバランスが良い塗膜が得られる。また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、ポリウレタンや熱可塑性エラストマーの原料として用いる場合、表面が平滑であり強靱で耐薬品性に優れるポリウレタン又は熱可塑性エラストマーを得ることができる。
【0050】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを用いて得ることができる。
【0051】
また、本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを含む。
【0052】
さらに、本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含み、該ウレタンプレポリマーがイソシアネート末端基を持つことが好ましい。
【0053】
またさらに、本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含むことがより好ましく、水、上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタンを含む、水系コーティング組成物であることがさらに好ましい。
【0054】
使用される有機ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の公知の芳香族ジイソシアネート、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等の公知の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等が挙げられる。これらの有機ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても構わない。またこれらの有機ポリイソシアネートは、ブロック剤でイソシアネート基をマスクして用いてもよい。
【0055】
また、ポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとの反応において、所望により共重合成分として鎖伸長剤を用いることができる。鎖伸長剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン業界における常用の鎖伸長剤、すなわち、水、低分子ポリオール、ポリアミン等が使用できる。鎖伸長剤の例として、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン等の低分子ポリオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミンが挙げられる。これらの鎖伸長剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても構わない。
【0056】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)を製造する方法としては、業界で公知の製造方法が用いられる。例えば、上述のポリカーボネートジオールから得られる塗料主剤と有機ポリイソシアネートからなる硬化剤とを塗工直前に混合する2液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート末端基を持つウレタンプレポリマーからなる1液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂からなる1液型溶剤系コーティング組成物;あるいは1液型水系コーティング組成物を製造することができる。
【0057】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)には、例えば、各種用途に応じて硬化促進剤(触媒)、充填剤、分散剤、難燃剤、染料、有機又は無機顔料、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、溶剤等を添加することができる。
【0058】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、水などを挙げることができる。これらの溶剤は、1種類又は複数種を混合して使用することができる。
【0059】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンを製造する方法としては、特に限定されず、ポリウレタン業界で公知のポリウレタン化反応の技術が用いられる。例えば、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを大気圧下に常温から200℃で反応させることにより、熱可塑性ポリウレタンを製造することができる。鎖延長剤を用いる場合は、反応の最初から加えておいてもよいし、反応の途中から加えてもよい。本実施形態の熱可塑性ポリウレタンの製造方法については、例えば、米国特許第5,070,173号を参照できる。
【0060】
ポリウレタン化反応においては、公知の重合触媒や溶媒を用いてもよい。用いられる重合触媒は、特に限定されないが、例えばジブチルスズジラウレートが挙げられる。
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンには、熱安定剤(例えば酸化防止剤)や光安定剤などの安定剤を添加することが好ましい。また、本実施形態の熱可塑性ポリウレタンには、可塑剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤等を添加してもよい。
【実施例
【0061】
次に、実施例及び比較例によって、本発明を説明する。
【0062】
以下の実施例は、本発明を例示するために記載するものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0063】
以下の実施例及び比較例において示す物性値は、下記の方法で測定した。
【0064】
1.ポリカーボネートジオール末端の決定
ポリカーボネートジオール末端における下記式(B)で表されるオキソラン末端の割合(以降、オキソラン末端割合と称する。)を以下のとおり決定した。
【化14】
(式(B)中、mは、1~6の整数を表す。)
【0065】
まず、70g~100gのポリカーボネートジオールを300mlのナスフラスコに秤取った。留分回収用のトラップ球を接続したロータリーエバポレーターを用い、前記ナスフラスコ中のポリカーボネートジオールを、0.4kPa以下の圧力下、約180℃の温度で加熱及び攪拌して、トラップ球に該ポリカーボネートジオールの約1~2質量%に相当する留分、即ち約1g(0.7~2g)の初期留分を得た。得られた留分を、約100g(95~105g)のアセトンに溶解させ溶液として回収した。回収した溶液をガスクロマトグラフィー分析(以下「GC分析」とも称す。)して、得られたクロマトグラフのピーク面積の値から、下記式(1)によりポリカーボネートジオールにおけるオキソラン末端割合を計算した。なお、GC分析は、カラムとしてDB-WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィー6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃から10℃/分で250℃まで昇温した後、その温度で15分間保持するプロファイルとした。GC分析における各ピークの同定は、下記ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)装置を用いて行った。ガスクロマトグラフ装置(GC装置)は、カラムとしてDB-WAX(米国J&W社製)を付けた6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用いた。GC装置において、初期温度40℃から昇温速度10℃/分で220℃まで昇温した。質量分析装置(MS装置)は、Auto-massSUN(日本JEOL製)を用いた。MS装置において、イオン化電圧70eV、スキャン範囲m/z=10~500、フォトマルゲイン450Vで測定を行った。
【0066】
オキソラン末端割合(%)=B÷(A+B)×100 (1)
A:ジオール(炭素数2~15)を含むアルコール類のピーク面積の総和
B:下記式(B-1)で表される化合物のピーク面積の総和
【0067】
【化15】
(式(B-1)中、mは、1~6の整数を表す。)
【0068】
2.ポリカーボネートジオールの組成の決定
ポリカーボネートジオールの組成を以下のとおり決定した。まず、100mlのナスフラスコに、サンプルを1g測り取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、混合物を得た。得られた混合物を100℃のオイルバスで1時間加熱した。前記混合物を室温まで冷却後、指示薬としてフェノールフタレインを前記混合物に1~2滴添加し、塩酸で中和した。その後、前記混合物を冷蔵庫で3時間冷却し、沈殿した塩を濾過で除去した後、濾液をガスクロマトグラフィー(GC)分析した。なお、GC分析は、カラムとしてDB-WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィーGC14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内部標準として用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/分で250℃まで昇温するプロファイルとした。
GC分析により得られたジオールの面積値を元に、ポリカーボネートジオールの組成を決定した。
【0069】
3.ポリカーボネートジオールの数平均分子量の決定
ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、無水酢酸及びピリジンを用い、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定する「中和滴定法(JIS K0070-1992)」によって水酸基価(OH価)を決定し、下記式(2)を用いて計算した。
【0070】
数平均分子量=2/{(OH価×10-3/56.1)} (2)
【0071】
4.ポリカーボネートジオールの性状の確認
80℃に加熱したポリカーボネートジオールを透明なサンプル瓶に入れ、室温(25℃)まで冷えた状態を目視で観察した。透明であり、かつサンプル瓶を傾けた時に僅かでも流動性がある場合を室温で液状とし、不透明又はサンプル瓶を傾けても状態が変化しない何れかの場合及び双方の場合を室温で固体として表した。さらに、-5℃に設定した冷凍庫に8時間放置後に目視で観察し、透明であり、かつサンプル瓶を傾けた時に僅かでも流動性がある場合を-5℃で液状とし、不透明又はサンプル瓶を傾けても状態が変化しない何れかの場合及び双方の場合を-5℃で固体として表した。
【0072】
5.含有元素の誘電結合プラズマ(ICP)分析装置による分析
ポリカーボネートジオール中に含有する各元素を以下のとおり分析した。まず、サンプルをテフロン(登録商標)製分解容器に秤取り、高純度硝酸(関東化学製)を加えてマイクロウエーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS TC)を用いて分解した。なお、サンプルは完全に分解され、得られた分解液は無色透明となった。分解液に純水を加えて検液を作製した。得られた検液について誘電結合プラズマ分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、iCAP6300 Duo)を用い、各元素の標準液を元に定量を行った。
【0073】
6.ポリカーボネートジオール中の環状エーテル化合物の定量
ポリカーボネートジオール中の環状エーテル化合物の量を、以下のとおり決定した。サンプル2gを精秤し、20mlのバイアルに入れて密栓した。バイアルを100℃で3時間加熱し、気相1mlを100℃に加熱したガスタイトシリンジで採取し、GC/MSで測定した。GC装置は、7890A(Agident社製)を、カラムは、Equity-1(シグマ・アルドリッチ社製)30m、膜厚0.25μmを使用した。昇温プロファイルは、40℃で7分保持した後、10℃/分で280℃まで昇温し、その温度で5分間保持するという昇温プロファイルを採用した。MS装置は、Jms-Q1000GC(日本電子株式会社製)を用い、イオン化電圧70eV、スキャン範囲m/z=10~500、フォトマルゲイン1300Vで測定を行った。定量は、1-ブタノールで検量線を作成して行った。
【0074】
環状エーテル化合物量(ppm)=(C/D)×1000 (3)
C:環状エーテル化合物の総和(mg)
D:サンプル量(g)
【0075】
7.ポリカーボネートジオール中の水分量の測定
水分測定装置(KF-100型、三菱化学アナリテック製)を用い、JIS K0068に準じ、容量分析法でポリカーボネートジオール中の水分量を測定した。
【0076】
8.ポリカーボネートジオールの色数の決定
JIS K0071-1に準じ、ハーゼン単位式数を測定することによりポリカーボネートジオールの色数を決定した。
【0077】
9.塗膜の耐薬品性
ガラス板(JIS R3202、75mm×150mm角、1mm厚)上に、乾燥膜厚が40~50μmになるように、板の両端に再剥離性の紙製粘着テープをスペーサーとして必要枚数貼り付けてから、調製したコーティング組成物を板の上部に滴下し、ガラス棒(直径8mm)を用いて塗工した。60℃で30分間焼付け後に、水平台の上で、23℃、50%相対湿度(RH)の雰囲気下、1週間乾燥させて塗膜を得た。水平台の上で、23℃、50%RHの雰囲気下、オレイン酸を含浸させたコットンボールを塗膜表面に3分間静置させた後の塗膜外観を目視で評価した。JIS K5600-8-1に準じて欠陥の程度及び量を等級0~5で表し、塗膜の耐薬品性を評価した。
【0078】
10.塗膜の密着性
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)板上に、乾燥膜厚が40~50μmになるように、板の両端に再剥離性の紙製粘着テープをスペーサーとして必要枚数貼り付けてから、調製したコーティング組成物を板の上部に滴下し、ガラス棒(直径8mm)を用いて塗工した。60℃で60分間焼付け後に、水平台の上で、23℃、50%RHの雰囲気下、1週間乾燥させて塗膜を得た。該塗膜を用い、JIS K5600-5-6(クロスカット法)に準じ0~5の6段階の分類で塗膜の付着性(密着性)を評価した。
【0079】
11.ポリウレタンフィルムの機械的物性及び柔軟性
ポリカーボネートジオールから得られたポリウレタンフィルムを10mm×80mmの短冊型に切り取り、23℃、50%RHの恒温室で3日間養生したものを試験体として得た。得られた試験体について、テンシロン引張試験器(ORIENTEC製、RTC-1250A)を用い、チェック間距離50mm、引張速度100mm/分で、破断強度(単位:MPa)及び破断伸度(単位:%)を測定した。尚、10%伸長時の応力(単位:MPa)をポリウレタンフィルムの柔軟性として評価した。
【0080】
12.ポリウレタンフィルムの耐熱性
ポリカーボネートジオールから得られたポリウレタンフィルムを10mm×80mmの短冊型に切り取って試験体を得た。得られた試験体を、120℃に設定した熱風乾燥機内に5日間放置した。上記11.ポリウレタンフィルムの機械的物性及び柔軟性の方法で、試験前後の破断強度を求め、下記式(4)でポリウレタンフィルムの耐熱性を求めた。
【0081】
耐熱性(%)=(E/F)×100 (4)
E:試験後の破断強度(MPa)
F:試験前の破断強度(MPa)
【0082】
[実施例1]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにジメチルカーボネートを660g(7.3mol)、1,4-ブタンジオールを400g(4.4mol)、1,6-ヘキサンジオールを500g(4.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.20gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で20時間反応を行った。その後、160℃へ徐々に上げて、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を10kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、160℃でさらに10時間反応を行った。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.04g添加し、160℃で1時間撹拌した。前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で6時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-1と略す。PC-1は、下記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、下記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0083】
【化16】
(式(A)中、R1は、炭素数2~12の、二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【化17】
【0084】
また、PC-1中、環状エーテル化合物量は1.2ppmであり、水分量は110ppmであった。
【0085】
[実施例2]
2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランの添加量を0.12gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-2と略す。PC-2は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0086】
[実施例3]
2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランの添加量を0.36gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-3と略す。PC-3は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0087】
[実施例4]
2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランの添加量を0.58gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-4と略す。PC-4は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0088】
[実施例1A]
2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランの添加量を0.01gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-21と略す。PC-21は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0089】
[実施例1B]
2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランの添加量を0.77gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-22と略す。PC-22は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0090】
[実施例5]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを750g(8.2mol)、1,4-ブタンジオールを400g(4.4mol)、1,6-ヘキサンジオールを500g(4.2mol)、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.05g仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.20gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-5と略す。PC-5は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0091】
[実施例6]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを680g(7.7mol)、1,4-ブタンジオールを200g(2.2mol)、1,6-ヘキサンジオールを650g(5.5mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.35gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.08g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-6と略す。PC-6は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。PC-6中、環状エーテル化合物量は0.7ppmであり、水分量は85ppmであった。
【0092】
[実施例7]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを640g(7.3mol)、1,4-ブタンジオールを260g(2.9mol)、1,6-ヘキサンジオールを520g(4.4mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.35gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.09g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-7と略す。PC-7は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0093】
[実施例8]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを800g(9.1mol)、1,4-ブタンジオールを510g(5.7mol)、1,6-ヘキサンジオールを400g(3.4mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.35gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.08g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-8と略す。PC-8は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0094】
[実施例9]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを750g(8.5mol)、1,4-ブタンジオールを550g(6.1mol)、1,6-ヘキサンジオールを290g(2.5mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.35gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.08g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-9と略す。PC-9は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0095】
[実施例10]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを690g(7.8mol)、1,4-ブタンジオールを650g(7.2mol)、1,6-ヘキサンジオールを80g(0.7mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.35gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.08g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-10と略す。PC-10は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0096】
[実施例11]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを750g(8.5mol)、1,4-ブタンジオールを550g(6.1mol)、1,6-ヘキサンジオールを290g(2.5mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.35gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに7時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.28g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-11と略す。PC-11は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0097】
[実施例12]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを690g(7.8mol)、1,4-ブタンジオールを650g(7.2mol)、1,6-ヘキサンジオールを80g(0.7mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.35gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに20時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.08g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-12と略す。PC-12は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0098】
[実施例13]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを760g(8.6mol)、1,4-ブタンジオールを380g(4.2mol)、2-メチル-1,3-プロパンジオールを400g(4.4mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.20gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整し、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.05g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.20g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-13と略す。PC-13は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0099】
[実施例14]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにエチレンカーボネートを680g(7.7mol)、1,4-ブタンジオールを360g(4.0mol)、1,5-ペンタンジオールを390g(3.8mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.30gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。反応開始温度を140℃に調整し、該温度で2時間撹拌した。その後反応温度を140~150℃、圧力3.0~5.0kPaに調整とし、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールとを留去しながら、150~160℃でさらに10時間反応した。その後、2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランを0.06g添加し、160℃で1時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.33g加え、前記フラスコ内の混合物を100℃で10時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。また、得られたポリカーボネートジオール中の環状エーテル化合物量は、5.4ppmであった。このポリカーボネートジオールをPC-14と略す。PC-14は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0100】
[実施例1C]
2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランの添加量を1.60gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-23と略す。PC-23は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基と、上記式(F)で表されるオキソラン末端とを含んでいた。
【0101】
[参考例1]
2-(4-ヒドロキシブトキシ)オキソランの添加量を0.002gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC-31と略す。PC-31は、上記式(A)で表される繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基とを含んでいたが、上記式(F)で表されるオキソラン末端は検出されなかった。すなわち、PC-31の末端における、上記式(B)で表されるオキソラン構造の含有割合は、上記の「1.ポリカーボネートジオール末端の決定」に記載する測定方法において、検出限界未満(ND:Not Detectable)であった(表1中、「ND」と記載)。
【0102】
【表1】
【0103】
[応用例1]
ポリカーボネートジオールPC-1を40g、レベリング剤としてBYK-331(BYKケミカル製)を0.75g、シンナー(キシレン/酢酸ブチル=70/30(質量比))に2質量%となるように溶解したジブチルスズジラウレート溶液を1.25g、並びにシンナーを40g混ぜて撹拌し、塗料主剤を得た。得られた塗料主剤に、硬化剤として有機ポリイソシアネート(デュラネートTPA-100、旭化成ケミカルズ製、イソシアネート(NCO)含量:23.1%)を7.5g加えて、コーティング組成物を調製した。該コーティング組成物を用いて物性の評価を行った。該評価結果を表2に示した。
【0104】
[応用例2~12]
ポリカーボネートジオールとして、PC-2~10、PC-13~14を用いた以外は、応用例1と同様にしてコーティング組成物を得た。該コーティング組成物を用いて物性の評価を行った。該評価結果を表2に示した。
【0105】
[応用例1A~1C]
ポリカーボネートジオールとして、PC-21~23を用いた以外は、応用例1と同様にしてコーティング組成物を得た。該コーティング組成物を用いて物性の評価を行った。該評価結果を表2に示した。
【0106】
[参考応用例1]
ポリカーボネートジオールとして、PC-31を用いた以外は、応用例1と同様にしてコーティング組成物を得た。該コーティング組成物を用いて物性の評価を行った。該評価結果を表2に示した。
【0107】
【表2】
【0108】
表2の結果において、耐薬品性及び密着性の評価結果ともに「5」が不良であると判定した場合、本実施形態の一態様であるポリカーボネートジオールは、いずれも、耐薬品性の評価結果を「0~4」の範囲内(好ましくは「0~3」の範囲内、より好ましくは「0~2」の範囲内)に抑えることができ、及び/又は、密着性の評価結果を「0~4」の範囲内(好ましくは「0~3」の範囲内、より好ましくは「0~2」の範囲内)に抑えることができることが確かめられた。
【0109】
[応用例13]
セパラブルフラスコに、ポリカーボネートジオールPC-1を110g、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネートを55g、N,N-ジメチルホルムアミドを100g、触媒としてジラウリン酸ジブチル錫を0.02g仕込み、80℃で2時間反応してウレタンプレポリマーを得た。その後、鎖伸長剤として1,4-ブタンジオールを9.9g、N,N-ジメチルホルムアミドを308g滴下し、更に4時間反応を行い、ポリウレタン樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液をガラス板上に流延し、室温で30分間放置して溶剤をとばした後、100℃の乾燥機に2時間入れて乾燥させてポリウレタンフィルムを得た。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行った。該評価結果を表3に示した。
【0110】
[応用例14~24]
ポリカーボネートジオールとして、PC-2~10、PC-13~14を用いた以外は、応用例13と同様にしてポリウレタンフィルムを得た。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行った。該評価結果を表3に示した。
【0111】
[参考応用例2A~2C]
ポリカーボネートジオールとして、PC-21~23を用いた以外は、応用例13と同様にしてポリウレタンフィルムを得た。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行った。該評価結果を表3に示した。
【0112】
[参考応用例2]
ポリカーボネートジオールとして、PC-31を用いた以外は、応用例13と同様にしてポリウレタンフィルムを得た。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行った。該評価結果を表3に示した。
【0113】
【表3】
本出願は、2019年3月5日出願の日本特許出願(特願2019-039374号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。