(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】歯科用付加型シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/60 20200101AFI20230329BHJP
A61K 6/70 20200101ALI20230329BHJP
A61K 6/76 20200101ALI20230329BHJP
A61K 6/90 20200101ALI20230329BHJP
【FI】
A61K6/60
A61K6/70
A61K6/76
A61K6/90
(21)【出願番号】P 2021508965
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2020010030
(87)【国際公開番号】W WO2020195749
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019063512
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】上之薗 佳也
(72)【発明者】
【氏名】大泉 智愛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲平
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-245748(JP,A)
【文献】特開2002-060311(JP,A)
【文献】特開平10-072307(JP,A)
【文献】特開2008-247812(JP,A)
【文献】エアロゾル研究,1990年,Vol.5, No.1, pp.32-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00- 6/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンと、
オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
メチルフェニルポリシロキサンと、
ヒドロシリル化触媒と、
疎水性シリカ粒子
と、
メジアン径1.5~10μmの熔融石英粒子を含み、
界面活性剤を実質的に含まず、
前記疎水性シリカ粒子は、BET比表面積が30m
2/g以上であり、
前記疎水性シリカ粒子に対する前記メチルフェニルポリシロキサンの質量比が0.01~5である、歯科用付加型シリコーン組成物。
【請求項2】
義歯床用裏装材の製造に用いられる、請求項1に記載の歯科用付加型シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用付加型シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、義歯床用裏装材を作製する際に、付加型シリコーン組成物が広く使用されている。
【0003】
特許文献1には、A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃に於ける粘度が0.5~20Pa・sであるオルガノポリシロキサン100重量部と、B)1分子中に珪素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン0.1~40重量部と、C)シリコーン可溶性白金化合物10~500ppm(AとBの合計量に対して)と、D)無機充填材10~200重量部と、E)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃に於ける粘度が1,000~20,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン生ゴム0.5~100重量部と、F)メチルフェニルポリシロキサン1~200重量部の5成分から成る義歯暫間裏装材組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の強度をさらに向上させると共に、歯科用付加型シリコーン組成物の練和物の垂れ及び硬化体の水中への溶出をさらに抑制することが望まれている。
【0006】
本発明の一態様は、硬化体の強度を向上させると共に、練和物の垂れ及び硬化体の水中への溶出を抑制することが可能な歯科用付加型シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、歯科用付加型シリコーン組成物において、アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、メチルフェニルポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、疎水性シリカ粒子と、メジアン径1.5~10μmの熔融石英粒子を含み、界面活性剤を実質的に含まず、前記疎水性シリカ粒子は、BET比表面積が30m2/g以上であり、前記疎水性シリカ粒子に対する前記メチルフェニルポリシロキサンの質量比が0.01~5である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、硬化体の強度を向上させると共に、練和物の垂れ及び硬化体の水中への溶出を抑制することが可能な歯科用付加型シリコーン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
[歯科用付加型シリコーン組成物]
本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物は、メチルフェニルポリシロキサンと、疎水性シリカ粒子を含み、界面活性剤を実質的に含まない。このため、歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の水中への溶出を抑制することができる。
【0011】
疎水性シリカ粒子のBET比表面積は、30m2/g以上であり、40m2/g以上であることが好ましい。疎水性シリカ粒子のBET比表面積が30m2/g未満であると、歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の強度が低下すると共に、歯科用付加型シリコーン組成物の練和物の垂れが発生する。
【0012】
疎水性シリカ粒子のBET比表面積は、500m2/g以下であることが好ましく、300m2/g以下であることがさらに好ましい。疎水性シリカ粒子のBET比表面積が500m2/g以下であると、本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の研磨性及び切削性が向上する。
【0013】
本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物中の疎水性シリカ粒子に対するメチルフェニルポリシロキサンの質量比は、0.01~5であり、0.02~3であることが好ましい。歯科用付加型シリコーン組成物中の疎水性シリカ粒子に対するメチルフェニルポリシロキサンの質量比が0.01未満であると、歯科用付加型シリコーン組成物の練和物の垂れが発生し、5を超えると、歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の強度が低下する。
【0014】
本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物は、アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒をさらに含むことが好ましい。
【0015】
ここで、アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応するため、本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物を硬化させることができる。
【0016】
[アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン]
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、平均組成式
R1
aSiO(4-a)/2
(式中、R1は、炭素数1~10、好ましくは1~8の置換又は無置換の1価の炭化水素基であり、aは1.95~2.05、好ましくは2.00~2.02であり、a個のR1のうち、0.0001~20mol%、好ましくは0.001~10mol%、さらに好ましくは0.01~5mol%が炭素数2~8、好ましくは2~6のアルケニル基である。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
ここで、R1における1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0018】
R1における置換基としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0019】
置換基により置換されているアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0020】
なお、R1におけるアルケニル基は、末端のケイ素原子及び末端以外のケイ素原子のいずれに結合していてもよいが、両末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0021】
また、R1におけるアルケニル基以外の基は、メチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0022】
ここで、アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、Mユニット(R3SiO1/2)と、Dユニット(R2SiO)を含むが、Tユニット(RSiO3/2)をさらに含んでいてもよい。
【0023】
また、アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、単独重合体及び共重合体のいずれであってもよい。
【0024】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がメチルジビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(80mol%)・メチルフェニルシロキサン(20mol%)共重合体、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(80mol%)・ジフェニルシロキサン(20mol%)共重合体、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(90mol%)・ジフェニルシロキサン(10mol%)共重合体、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0025】
なお、アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、二種以上を併用してもよい。
【0026】
[オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式
R2
bHcSiO(4-b-c)/2
(式中、R2は、炭素数1~10の置換又は無置換の1価の炭化水素基であり、bは0.7~2.1であり、cは0.001~1.0であり、b+cは0.8~3.0である。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0027】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するヒドロシリル基の個数は、2~300個であることが好ましく、3~200個であることがより好ましく、4~100個であることがさらに好ましい。
【0028】
ここで、R2は、アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンにおけるR1と同様であるが、脂肪族不飽和結合を有さないことが好ましい。
【0029】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位を有する共重合体等が挙げられる。
【0030】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。
【0031】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するケイ素原子の個数は、2~1,000個であることが好ましく、3~300個であることがより好ましく、4~100個であることがさらに好ましい。
【0032】
なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、二種以上を併用してもよい。
【0033】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンのアルケニル基に対する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基のモル比は、0.1~4.0であることが好ましい。
【0034】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンに対するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの質量比は、0.1~40%であることが好ましく、0.5~30%であることがさらに好ましい。
【0035】
[ヒドロシリル化触媒]
ヒドロシリル化触媒は、シリコーンオイルに可溶であることが好ましい。
【0036】
ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属触媒が挙げられる。
【0037】
なお、ヒドロシリル化触媒は、二種以上を併用してもよい。
【0038】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの総質量に対するヒドロシリル化触媒の質量の比は、0.001~0.1%であることが好ましく、0.005~0.05%であることがさらに好ましい。
【0039】
[メチルフェニルポリシロキサン]
メチルフェニルポリシロキサンは、シリコーンオイルであることが好ましい。
【0040】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンに対するメチルフェニルポリシロキサンの質量比は、0.01~2であることが好ましく、0.01~1であることがさらに好ましい。
【0041】
[疎水性シリカ粒子]
疎水性シリカ粒子としては、例えば、シランカップリング剤で表面処理されているシリカ粒子等が挙げられる。
【0042】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンに対する疎水性シリカ粒子の質量比は、5~50%であることが好ましく、10~45%であることがさらに好ましい。
【0043】
[界面活性剤]
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンに対する界面活性剤の質量比は、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
[無機充填材]
本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物は、BET比表面積が30m2/g以上である疎水性シリカ粒子以外の無機充填材(以下、無機充填材という)をさらに含むことが好ましい。これにより、本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の硬度及び切削性が向上する。
【0045】
無機充填材としては、BET比表面積が30m2/g以上である疎水性シリカ粒子以外の無機充填材であれば、特に限定されないが、例えば、煙霧質シリカ粒子、湿式系のシリカ粒子、結晶性シリカ粒子、カーボンブラック、ベンガラ粒子、酸化セリウム粒子、酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、チタン酸エステル粒子等が挙げられる。
【0046】
無機充填材のメジアン径は、0.5~50μmであることが好ましく、0.5~20μmであることがさらに好ましい。
【0047】
なお、無機充填材は、二種以上を併用してもよい。
【0048】
アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンに対する無機充填材の質量比は、0.01~10であることが好ましく、0.1~5であることがさらに好ましい。
【0049】
[他の成分]
本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物は、メチルフェニルポリシロキサン以外のシリコーンオイル、シリコーン生ゴム等をさらに含んでいてもよい。
【0050】
メチルフェニルポリシロキサン以外のシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0051】
シリコーン生ゴムは、ビニル基を有することが好ましい。
【0052】
シリコーン生ゴムとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン生ゴム、メチルフェニル生ゴム等が挙げられる。
【0053】
[歯科用付加型シリコーン組成物の使用方法]
本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物は、ヒドロシリル化触媒を含む第1剤と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む第2剤を有する2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物として、使用することが好ましい。
【0054】
一例としては、ヒドロシリル化触媒を含む第1剤と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む第2剤を練和した練和物を、トレー又は口腔内に築盛した後、口腔内で硬化するまで放置する。
【0055】
他の一例としては、ヒドロシリル化触媒を含む第1剤と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む第2剤を練和し、成形した後、室温で放置する、又は、50~200℃に加熱する。
【0056】
[歯科用付加型シリコーン組成物の用途]
本実施形態の歯科用付加型シリコーン組成物は、例えば、義歯床用裏装材、印象材等に適用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1~4、比較例1~4]
表1に示す配合量[質量部]で、ビニル末端ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリカ粒子、ヒドロシリル化触媒、疎水性シリカ粒子、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン生ゴム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを混合し、ペーストA(キャタリストペースト)及びペーストB(ベースペースト)を有する2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物を作製した。
【0059】
なお、表1における各成分の詳細は、以下の通りである。
【0060】
ビニル末端ジメチルポリシロキサンA:25℃における粘度が30Pa・sである両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン
ビニル末端ジメチルポリシロキサンB:25℃における粘度が3Pa・sである両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン
ビニル末端ジメチルポリシロキサンC:25℃における粘度が20Pa・sである両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン
ビニル末端ジメチルポリシロキサンD:25℃における粘度が100Pa・sである両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン
メチルハイドロジェンポリシロキサン:メチルハイドロジェンシロキシ基を40mol%含有する直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン
シリカ粒子A:メジアン径6μmの熔融石英粒子ヒューズレックスE2(龍森製)
シリカ粒子B:メジアン径10μmの熔融石英粒子ヒューズレックスE1(龍森製)
シリカ粒子C:メジアン径1.5μmの熔融石英粒子ヒューズレックスWX(龍森製)
ヒドロシリル化触媒:白金1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の0.4質量%シリコーンオイル溶液
疎水性シリカ粒子A:BET比表面積140m2/gの疎水性フュームドシリカAEROSIL RX200(日本アエロジル製)
疎水性シリカ粒子B:BET比表面積35m2/gの疎水性フュームドシリカAEROSIL RX50(日本アエロジル製)
疎水性シリカ粒子C:BET比表面積210m2/gの疎水性フュームドシリカAEROSIL RX300(日本アエロジル製)
メチルフェニルポリシロキサンA:25℃における動粘度が100mm2/sのシリコーンオイルKF50-100cs(信越シリコーン製)
メチルフェニルポリシロキサンB:25℃における動粘度が1000mm2/sのシリコーンオイルKF50-1000cs(信越シリコーン製)
ジメチルポリシロキサン:25℃における動粘度が100mm2/sのシリコーンオイルKF96-100cs(信越シリコーン製)
ジメチルポリシロキサン生ゴム:25℃における粘度が5000Pa・s、ビニル基の含有量が0.07mol%のジメチルポリシロキサン生ゴム
ポリオキシエチレンアルキルエーテル:界面活性剤ナロアクティーCL40(三洋化成製)
また、表1における質量比は、疎水性シリカ粒子に対するメチルフェニルポリシロキサンの質量比を意味する。
【0061】
[シリカ粒子のメジアン径]
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950(堀場製作所製)を用いて、シリカ粒子のメジアン径を測定した。
【0062】
[疎水性シリカ粒子のBET比表面積]
DIN 66131(容積測定法)により、疎水性シリカ粒子のBET比表面積を測定した。
【0063】
次に、2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の引き裂き強度、練和物の垂れ、硬化体の水中への溶出を評価した。
【0064】
[硬化体の引き裂き強度]
ペーストAとペーストBを質量比1:1で練和した後、JIS K 6252に準拠して、切り込みなしアングル形の金型に練和物を注入し、37℃の水中で5分間硬化させた。次に、金型より硬化体を取り出し、37℃の水中に1日間浸漬した後、引き裂き試験を実施した。
【0065】
[練和物の垂れ]
ペーストAとペーストBを質量比1:1で練和した後、義歯床を模した模型の辺縁に練和物を築盛した際に、辺縁より垂れ落ちるかどうかを確認し、練和物の垂れを評価した。
【0066】
[硬化体の水中への溶出]
ペーストAとペーストBを質量比1:1で練和した後、内径20mm、高さ8mmの金属リング内に練和物を注入し、室温で30分間硬化させた。次に、硬化体を金型より取り出した後、37℃の水中に浸漬し、溶出物が視認されたかどうかを確認し、硬化体の水中への溶出を評価した。
【0067】
表1に、2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物の硬化体の引き裂き強度、練和物の垂れ、硬化体の水中への溶出の評価結果を示す。
【0068】
【表1】
表1から、実施例1~4の2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物は、硬化体の引き裂き強度が高く、練和物の垂れ及び硬化体の水中への溶出を抑制できることがわかる。
【0069】
これに対して、比較例1の2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物は、疎水性シリカ粒子を含まないため、硬化体の引き裂き強度が低く、練和物の垂れが発生する。
【0070】
比較例2の2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物は、メチルフェニルポリシロキサンを含まないため、練和物の垂れが発生する。
【0071】
比較例3の2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物は、界面活性剤を含むため、硬化体の水中への溶出が発生する。
【0072】
比較例4の2剤型の歯科用付加型シリコーン組成物は、疎水性シリカ粒子に対するメチルフェニルポリシロキサンの質量比が20であるため、硬化体の引き裂き強度が低い。
【0073】
本願は、日本特許庁に2019年3月28日に出願された基礎出願2019-063512号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。