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特許7253040ビフェニル含有化合物の液体製剤及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ビフェニル含有化合物の液体製剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A01N 41/10 20060101AFI20230329BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20230329BHJP
   A01N 25/22 20060101ALI20230329BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20230329BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20230329BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230329BHJP
   C07H 15/26 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
A01N41/10 A
A01N25/02
A01N25/22
A01N31/14
A01P7/02
A01P7/04
C07H15/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021510308
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019092162
(87)【国際公開番号】W WO2020042730
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】201811004127.5
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516058241
【氏名又は名称】シェンヤン・シノケム・アグロケミカルズ・アールアンドディー・カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shenyang Sinochem Agrochemicals R&D Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.8-1 Shenliao East Road,Tiexi District,Shenyang,Liaoning 110021 China
(73)【特許権者】
【識別番号】506121881
【氏名又は名称】江蘇揚農化工股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】丑靖宇
(72)【発明者】
【氏名】遇▲ルー▼
(72)【発明者】
【氏名】宋玉泉
(72)【発明者】
【氏名】呉鴻飛
(72)【発明者】
【氏名】于海波
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/067500(WO,A1)
【文献】特開2009-023910(JP,A)
【文献】特開2013-060420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 41/10
A01N 31/08
A01N 25/02
A01N 25/22
A01N 31/14
A01M 1/20
A01P 7/02
A01P 7/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物Aを活性成分とし、そして、少なくとも1つの担体及び少なくとも1つの補助剤を含む、ビフェニル含有化合物の液体製剤であって、該液体製剤中の該活性成分の重量パーセントが0.1%~99%であり、該化合物Aの構造式が以下のとおりであり:
【化1】

(式中、R及びRは、独立して、水素、C~Cアルキル、ハロゲン化C~Cアルキル、C~Cアルケニル、ハロゲン化C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、ハロゲン化C~Cアルキニル、シアノC~Cアルキル、又はシアノハロゲン化C~Cアルキルから選択され;m及びnは、独立して、0、1、又は2から選択される)、該液体製剤中の該補助剤が、安定化剤も含み、該安定化剤がリクイリチンであること、該製剤が殺虫剤であることを特徴とする、ビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項2】
前記液体製剤が、溶液、油状物、展延性油状物、分散性液状物、エマルション(水中油型)、オイルエマルション、乳化性濃縮物、マイクロエマルション、懸濁液濃縮物、マイクロカプセル懸濁液濃縮物、油懸濁液濃縮物、油性懸濁液濃縮物、又は超低溶解液であることを特徴とする、請求項1記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項3】
前記液体製剤が、エマルション(水中油型)、懸濁液濃縮物、油性懸濁液濃縮物、乳化性濃縮物、又はマイクロエマルションであることを特徴とする、請求項2記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項4】
前記エマルション(水中油型)が、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~20質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 前記安定化剤、及び残部の脱イオン水を含み;
前記懸濁液濃縮物が、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 前記安定化剤、及び残部の脱イオン水を含み;
前記油性懸濁液濃縮物が、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 前記安定化剤、及び残部の分散媒油状物を含み;
前記乳化性濃縮物が、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 前記安定化剤、及び残部の溶媒を含み;
前記マイクロエマルションが、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~15質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 前記安定化剤、及び残部の脱イオン水を含む
ことを特徴とする、請求項2記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項5】
前記エマルション(水中油型)が、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~15質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 前記安定化剤、及び残部の脱イオン水を含み;
前記懸濁液濃縮物が、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 前記安定化剤、及び残部の脱イオン水を含み;
前記油性懸濁液濃縮物が、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 前記安定化剤、及び残部の分散媒油状物を含み、
前記乳化性濃縮物が、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 前記安定化剤、及び残部の溶媒を含み;
前記マイクロエマルションが、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~15質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 前記安定化剤、及び残部の脱イオン水を含む
ことを特徴とする、請求項4記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項6】
前記懸濁液濃縮物の前記湿潤分散剤が、ポリエチレンオキシドポリビニルエーテル、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ブロックコポリマー、アルキルビニルアリールフェニルエーテル、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルホルムアルデヒド縮合物スルホン酸塩又は高分子二親性(biparental)アニオン性非イオン性化合物界面活性剤のうちの1つ以上であり;
前記油性懸濁液濃縮物、エマルション(水中油型)、乳化性濃縮物、又はマイクロエマルション中の前記湿潤分散剤が、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェノールエトキシラート、脂肪アミンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル、酸アルコールエステル及びそのポリオキシエチレンエーテル、アルキルポリグリコールエーテル、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、脂肪アミド及びそのポリオキシエチレンエーテル、アルカノールアミド及びそのポリオキシエチレンエーテル、ブロックコポリマー、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルポリオキシエチレンエーテルのうちの1つ以上である
ことを特徴とする、請求項4又は5記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項7】
前記懸濁液濃縮物中の前記湿潤分散剤が、ポリエチレンオキシドポリビニルエーテルであり;
前記油性懸濁液濃縮物、エマルション(水中油型)、乳化性濃縮物、又はマイクロエマルション中の前記湿潤分散剤が、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル及び/又はブロックコポリマー界面活性剤である
ことを特徴とする、請求項6記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項8】
農業用殺ダニ剤であることを特徴とする、請求項1記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【請求項9】
前記製剤が、1ヘクタール当たり活性成分 10~5000グラムの用量で、防除される害虫又はその成長媒体に施用されることを特徴とする、請求項8記載のビフェニル含有化合物の液体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺ダニ剤の分野に属し、そして、ビフェニル含有化合物の液体製剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているビフェニル化合物(以下、化合物Aと称する)は、優れた防ダニ効果を有し、そして、幅広い市場への応用が見込まれる。化合物Aの構造は、以下のとおりである:
【化1】
【0003】
上記特許文献1に記載されているとおり、化合物Aは、乾燥粉末、湿潤性粉末、乳化性濃縮物、マイクロエマルション、ペースト、顆粒、溶液、懸濁液濃縮物等の形態で使用することができるが、該特許に記録されている化合物Aの使用形態は、公知の方法、例えば、任意で界面活性剤の存在下において、活性物質を溶媒媒体及び/又は固体希釈剤で希釈する又は溶解させることにより調製される。しかしながら、当技術分野において公知であるとおり化合物Aの使用する種類の選択は、具体的な用途に依存する。一方、殺虫剤製剤製品の実際の開発過程において、上記特許に記載されている製剤の形態は、汎用的に施用可能な製剤であり、そして、製品の粒径を制御できないことが判明した。更に、大規模なデータ検証後、この汎用的に施用可能な製剤は、明らかな粒径の増加が認められ、それによって、明らかに生物活性が影響を受けたり、又は更には製品が使用不可能になったりする。この製品には、クリーミング及び凝集の問題があり、そして、不適当な製品であると直ちに考えられる。化合物Aの融点は50~60℃であり、これは、液体製剤の典型的な不利点である。懸濁液濃縮物の調製条件は以下のとおりであることが、業界では周知である:融点が60℃超であり、水への溶解度が200mg/L未満であり、そして、活性成分が水溶液中で安定している。融点が54~58℃のペンジメタリン及び融点が63~68℃のマイクロブタニル等、幾つかの化合物の融点は約60℃であることが報告されている。懸濁液濃縮物の調製条件をある程度満たすことはできるが、融点が低いことから、殺虫剤製剤の国の基準における加速加熱保管試験において、クリーミング、凝集、結晶化、及び粒径の著しい増加等、物性が変化することがある。懸濁液濃縮物を常温に置いておいた後、粒径は更に増加する。この場合、懸濁液濃縮物、エマルション(水中油型)、マイクロエマルション、及び溶液を含むがこれらに限定されない殺虫剤液体製剤製品は、不適当であり得る。実際の施用の過程において、粒径の増加により、生物活性が明らかに影響を受けたり、又は更には製品が使用不可能であったりする。したがって、活性成分に好適であり、適切な特性を有し、かつ明らかな粒径の増加のない液体殺虫剤製剤を開発することには、大きな意義がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第105541682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概要
本発明の目的は、ビフェニル含有化合物の液体製剤及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を採用する:
【0007】
ビフェニル含有化合物の液体製剤は、化合物Aを活性成分とし、そして、少なくとも1つの担体及び少なくとも1つの補助剤を含む。液体製剤中の活性成分の重量パーセントは0.1%~99%であり、化合物Aの構造式は、以下のとおりである:
【化2】

(式中、R及びRは、独立して、水素、C~Cアルキル、ハロゲン化C~Cアルキル、C~Cアルケニル、ハロゲン化C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、ハロゲン化C~Cアルキニル、シアノC~Cアルキル、又はシアノハロゲン化C~Cアルキルから選択され;m及びnは、独立して、0、1、又は2から選択される)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
殺ダニ剤の液体製剤は、可溶性濃縮物、油混和性液状物、展延性油状物、分散性濃縮物、エマルション(水中油型)、エマルション(油中水型)、乳化性濃縮物、マイクロエマルション、懸濁液濃縮物、カプセル懸濁物、油混和性流動性濃縮物、油性懸濁液濃縮物、又は超低容量液状物である。
【0009】
殺ダニ剤の製剤は、エマルション(水中油型)、懸濁液濃縮物、油性懸濁液濃縮物、乳化性濃縮物、又はマイクロエマルションである。
【0010】
液体製剤中の補助剤は安定剤も含み、該安定剤はリクイリチンである。
【0011】
エマルション(水中油型)は、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~20質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 安定剤、及び残部の脱イオン水を含む。
【0012】
懸濁液濃縮物は、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 安定剤、及び残部の脱イオン水を含む。
【0013】
油性懸濁液濃縮物は、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 安定剤、及び残部の分散媒油状物を含む。
【0014】
乳化性濃縮物は、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 安定剤、及び残部の溶媒を含む。
【0015】
マイクロエマルションは、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~15質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0質量%~3質量% 安定剤、及び残部の脱イオン水を含む。
【0016】
好ましくは、エマルション(水中油型)は、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~15質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 安定剤、及び残部の脱イオン水を含む。
【0017】
懸濁液濃縮物は、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 安定剤、及び残部の脱イオン水を含む。
【0018】
油性懸濁液濃縮物は、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 安定剤、及び残部の分散媒油状物を含む。
【0019】
乳化性濃縮物は、2質量%~60質量% 化合物A、5質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 安定剤、及び残部の溶媒を含む。
【0020】
マイクロエマルションは、2質量%~60質量% 化合物A、2質量%~15質量% 溶媒、1質量%~30質量% 湿潤分散剤、0.01質量%~1.5質量% 安定剤、及び残部の脱イオン水を含む。
【0021】
懸濁液濃縮物の湿潤分散剤は、ポリエチレンオキシドポリビニルエーテル、リグニンスルホン酸塩、ポリマーカルボキシラート、ナフタレンスルホン酸塩、ブロックコポリマー、リン酸エステル、アルキルビニルアリールフェニルエーテル、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルホルムアルデヒド縮合物スルホン酸塩、又は高分子二親性(biparental)アニオン性非イオン性化合物界面活性剤のうちの1つ以上である。
【0022】
油性懸濁液濃縮物、エマルション(水中油型)、乳化性濃縮物、又はマイクロエマルション中の湿潤分散剤は、スルホナート、カルボキシラート、リン酸エステル塩、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェノールエトキシラート、脂肪アミンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル、酸アルコールエステル及びそのポリオキシエチレンエーテル、アルキルポリグリコールエーテル、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、脂肪アミド及びそのポリオキシエチレンエーテル、アルカノールアミド及びそのポリオキシエチレンエーテル、ブロックコポリマー、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルポリオキシエチレンエーテルのうちの1つ以上である。
【0023】
好ましくは、懸濁液濃縮物中の湿潤分散剤は、ポリエチレンオキシドポリビニルエーテル、ポリマーカルボキシラート、及び/又はリン酸エステル界面活性剤である。
【0024】
油性懸濁液濃縮物、エマルション(水中油型)、乳化性濃縮物、又はマイクロエマルション中の湿潤分散剤は、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル及び/又はブロックコポリマー界面活性剤である。
【0025】
湿潤分散剤は、TENSIOFIX 35600等のポリエチレンオキシドポリビニルエーテル、ポリマーカルボキシラート、及び/又はAtlox 4913等のリン酸エステルである。
【0026】
また、上記製剤中の補助剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性及び非イオン性化合物界面活性剤、並びに高分子界面活性剤のうちの1つ以上と、分散媒又は担体とを含み、また、増粘剤、消泡剤、防腐剤、及びpH調整剤を含んでいてもよいが、必ずしも含んでいなくてもよい。
【0027】
分散媒は、油、有機溶媒、及び水を含む。
【0028】
増粘剤は、キサンタンガム、ゼラチン、アカシアガム、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、シェラック、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、及びアルギン酸ナトリウムのうちの1つ以上であってよく、そして、製剤の物理的な層形成をある程度改善することができる。
【0029】
消泡剤は、消泡剤SAG1522、シリコーン、C8~10脂肪アルコール、リン酸エステル、C10~20飽和脂肪酸(例えば、カプリン酸)、及びアミド、又はその他のうちの1つ以上であってよい。
【0030】
防腐剤は、安息香酸ナトリウム、Kathon(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び(B)5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、又はその他のうちの1つ以上であってよい。
【0031】
上記製剤では、溶媒又は希釈剤として水を用いる場合、有機溶媒を補助溶媒又は凍結防止添加剤としても用いてもよい。
【0032】
有機溶媒は、芳香族炭化水素、塩素化芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素、植物油、及びメチルセロソルブから選択され得るが、これらに限定されるものではない。
【0033】
上に提供された製剤は、良好な物理的及び化学的施用性能を有する。活性成分Aは、担体中での分散性に優れている。一方で、活性成分Aは、選択された安定化剤リクイリチン、湿潤性分散剤、及び他の適合する補助剤の作用下で、均一な粒径、強い分散安定性、及び良好な薬効を有する。水で希釈した製剤を使用するプロセスにおいて、製剤は、強い接着性及び浸透性、並びに生理活性の強い伝達効果を有する。
【0034】
植物用殺ダニ剤としての液体製剤の用途である、ビフェニル含有化合物の液体製剤の用途が提供される。
【0035】
液体製剤の施用においては、優れた防除効果を確保するために液体製剤の粒径を制御し;そして、液体製剤は、作物にとって安全であり、そして、ハダニ科(tetranychidae)(ナミハダニ(tetranychus urticae koch)、ニセナミハダニ(tetranychus cinnabarinus)、リンゴハダニ(panonychus ulmi)、及びミカンハダニ(panonychus citri))、フシダニ科(eriophyidae)、及びホコリダニ科(tarsonemidae)に対して良好な防除効果を有する。
【0036】
液体製剤は、1ヘクタール当たり活性成分 10~5000グラムの用量で、防除される害虫又はその成長媒体に施用される。
【0037】
液体製剤は、水で希釈するか又は水と直接混合し、次いで、使用前にユーザが散布してもよく、そのまま使用してもよい。
【0038】
本発明は、以下の利点を有する:
本発明では、活性成分として低い融点を有する化合物Aを用いて液体製剤を調製する。得られた液体製剤は、既存の製剤を国の基準で規定された54±2℃の加速加熱保管条件に置いたときに活性成分粒子が溶解し、粒径が大幅に増加するという問題点を解決する。
【0039】
粒子が僅かに増加すると、粒径D98が明らかに増大し、そして、粒子が著しく増加すると、サンプルのクリーミングが発生し、製剤製品を使用することができなくなる。更に、本発明では、安定剤としてのリクイリチンを適切な補助剤系の選択及びマッチングの条件下で液体製剤に添加し、そして、特定の添加量を提供し、これにより、製品の粒径の増加を阻害することができる。リクイリチンと化合物Aの構造との相互作用は、液体製剤中の粒径の増加を阻害する効果を有する。リクイリチンの添加を通して、粒径が制御された後に製品の安定性が著しく改善し、これにより優れた殺ダニ活性が確保され;そして、液体製剤は、作物にとって安全である。
【0040】
本発明における特定の補助剤によって調製された液体製剤は、殺虫剤の生物活性が改善され、そして、施用量が低減されるように、活性成分の植物の葉への湿潤、展延、分散、保持、及び浸透の性能を改善し、それによって、植物表面における殺虫剤活性成分の保持量を増加させ、保持時間を延長し、そして、植物表皮の浸透能を改善する。本発明の液体製剤は、良好な補助剤系を通して液体製剤の粒径を制御することができ、そして、分散性が良好である、懸濁速度が速い、生物活性が良好である、施用量が少ない、コストが低い、雨で洗い流されることに対して抵抗性がある、残留が少ない、並びにヒト及び動物に対する毒性が低いという特徴を有する。
【0041】
詳細な説明
以下の具体的な実施態様を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。当業者に周知の方法は、本発明の範囲に含まれる。
【0042】
以下の処方におけるパーセント及び部は、重量基準である。活性成分化合物Aは、先行技術の記録(含有率93%~99%)に従って調製され、そして、100% 施用量で添加される。各成分の比率は重量%であり、そして、他の原材料は全て市販品である。使用した化合物Aの構造を表1に示す。
【化3】

【表1】
【実施例
【0043】
製剤の処方の実施態様
実施態様1. 5%化合物A-1懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する5%化合物A-1懸濁液濃縮物を得るために、5% 化合物A-1、5% D425、3% NNO、0.8% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0044】
実施態様2-1. 10%化合物A-2-1懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する10%化合物A-2-1懸濁液濃縮物を得るために、10% 化合物A-2、5% SK-24、3% TENSIOFIX DB08、0.6% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0045】
実施態様2-2. 10%化合物A-2-2懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する10%化合物A-2-2懸濁液濃縮物を得るために、10% 化合物A-2、5% SK-24、3% TENSIOFIX DB08、0.05% リクイリチン、0.6% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0046】
実施態様3. 15%化合物A-3懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する15%化合物A-3懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-3、5% DB08、3% TENSIOFIX DB08、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0047】
実施態様4-1. 15%化合物A-4-1懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する15%化合物A-4-1懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-4、5% YUS-FS3000、3% GYD07、3% Atlox 4913、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0048】
実施態様4-2. 15%化合物A-4-2懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する15%化合物A-4-2懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-4、5% YUS-FS3000、3% GYD07、3% Atlox 4913、0.05% リクイリチン、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0049】
参照例1: 15%化合物A-4懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する15%化合物A-4懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-4、5% AEO-3、3% NNO、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0050】
実施態様5. 30%化合物A-4懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する30%化合物A-4懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-4、4% GYD07、3% SP2728、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.2% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0051】
実施態様6-1. 10%化合物A-4-1油性懸濁液濃縮物の調製
処方の要件に従って、10% 化合物A-4、5% 分散剤NP-10、4% 殺虫剤乳化剤1602、2% ホワイトカーボンブラック、及び100%までの残部のオレイン酸メチルを、混合のために混合用タンクに連続的に添加した。この混合物を、高剪断を通して粗粉砕し、そして、均質化し、次いで、微粉砕のためにサンドミルに移して、10%化合物A-4-1油性懸濁液濃縮物を得た。
【0052】
実施態様6-2. 10%化合物A-4-2油性懸濁液濃縮物の調製
処方の要件に従って、10% 化合物A-4、5% 分散剤NP-10、4% 殺虫剤乳化剤1602、2% ホワイトカーボンブラック、0.5% リクイリチン、及び100%までの残部のオレイン酸メチルを、混合のために混合用タンクに連続的に添加した。この混合物を、高剪断を通して粗粉砕し、そして、均質化し、次いで、微粉砕のためにサンドミルに移して、10%化合物A-4-2油性懸濁液濃縮物を得た。
【0053】
実施態様7. 15%化合物A-4油性懸濁液濃縮物の調製
処方の要件に従って、15% 化合物A-4、5% 分散剤NP-10、4% 殺虫剤乳化剤1601、2% ホワイトカーボンブラック、及び100%までの残部のオレイン酸メチルを、混合のために混合用タンクに連続的に添加した。この混合物を、高剪断を通して粗粉砕し、そして、均質化し、次いで、微粉砕のためにサンドミルに移して、15%化合物A-4油性懸濁液濃縮物を得た。
【0054】
実施態様8. 5%化合物A-1エマルション(水中油型)の調製
処方の要件に従って、5% 化合物A-1、5% 殺虫剤乳化剤0201B、2% 殺虫剤乳化剤600、5% ジメチルホルムアミド、及び100%までの残部の水を混合釜に添加し、撹拌及び均一に混合し、そして、必要に応じて温水浴で加熱及び溶解させて、5%化合物A-1エマルション(水中油型)を得た。
【0055】
実施態様9. 10%化合物A-2エマルション(水中油型)の調製
処方の要件に従って、5% 化合物A-2、5% 殺虫剤乳化剤1602、2% 殺虫剤乳化剤600、5% 溶媒油200、及び100%までの残部の水を混合釜に添加し、撹拌及び均一に混合し、そして、必要に応じて温水浴で加熱及び溶解させて、10%化合物A-2エマルション(水中油型)を得た。
【0056】
実施態様10. 10%化合物A-3エマルション(水中油型)の調製
処方の要件に従って、10% 化合物A-3、5% YUS-110、6% YUS-D935、10% シクロヘキサノン、及び100%までの残部の水を混合釜に添加し、撹拌及び均一に混合し、そして、必要に応じて温水浴で加熱及び溶解させて、10%化合物A-3エマルション(水中油型)を得た。
【0057】
実施態様11-1. 15%化合物A-4-1エマルション(水中油型)の調製
処方の要件に従って、15% 化合物A-4、4% Atlox 4838B、7% YUS-110、10% 溶媒油150、及び100%までの残部の水を混合釜に添加し、撹拌及び均一に混合し、そして、必要に応じて温水浴で加熱及び溶解させて、15%化合物A-4-1エマルション(水中油型)を得た。
【0058】
実施態様11-2. 15%化合物A-4-2エマルション(水中油型)の調製
処方の要件に従って、15% 化合物A-4、4% Atlox 4838B、7% YUS-110、1% リクイリチン、10% 溶媒油150、及び100%までの残部の水を混合釜に添加し、撹拌及び均一に混合し、そして、必要に応じて温水浴で加熱及び溶解させて、15%化合物A-4-2エマルション(水中油型)を得た。
【0059】
実施態様12-1. 15%化合物A-4-3懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する15%化合物A-4-3懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-4、5% SPSC3、5% TENSIOFIX 35600、5% Atlox 4913、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0060】
実施態様12-2. 15%化合物A-4-4懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する15%化合物A-4-4懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-4、3% YUS-FS3000、5% TENSIOFIX 35600、5% Atlox 4913、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0061】
実施態様12-3. 15%化合物A-4-5懸濁液濃縮物の調製
処方は、良好な分散性を有する15%化合物A-4-5懸濁液濃縮物を得るために、15% 化合物A-4、3% YUS-FS3000、5% TENSIOFIX 35600、5% Atlox 4913、0.05% リクイリチン、1% ケイ酸アルミニウムマグネシウム、0.1% キサンタンガム、及び100%までの残部の水を含む。
【0062】
実施態様13. 15%化合物A-4ペーストの調製
処方は、良好な物性を有する15%化合物A-4ペーストを得るために、15% 化合物A-4、5% NNO、10% 澱粉、15% 水、及び100%までの残部の炭酸カルシウムを含む。
【0063】
実施態様14. 15%化合物A-4湿潤性粉末の調製
処方は、良好な物性を有する15%化合物A-4湿潤性粉末を得るために、15% 化合物A-4、5% リグノスルホン酸カルシウム、3% NNO、5% ホワイトカーボンブラック、及び100%までの残部の軽質炭酸カルシウムを含む。
【0064】
上記実施態様で得られた液体製剤の45±2℃及び54±2℃における常温粒径及び加熱保管粒径をそれぞれ測定した。詳細については表2を参照。
【0065】
表2のデータは、レーザー粒子分析装置によって測定したものであり、そして、粒径D98は、系における粒子の径の98%がこの値未満であることを意味する。したがって、D98の値が小さいほど、系の粒径が小さくなる。常温から54±2℃及び45±2℃の2つの保管条件(規格:Manual on development and use of FAO and WHO specifications for pesticidesを参照)への粒径の変化が小さいほど、粒径の制御がより効果的である。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から、実施態様1~5及び12-1~12-3の懸濁液濃縮物について、化合物Aによって調製された懸濁液濃縮物の粒径に対して様々な補助剤系がある程度の影響を有することが理解できる。製剤の粒径の制御は、特定の補助剤系の下で著しく改善される。リクイリチンを製剤に添加した後、リクイチリンを添加した実施態様2-2に明らかに示されているとおり、2つの加速加熱保管条件下において、リクイリチンを添加した後の懸濁液濃縮物は、粒径の制御を著しく向上させ、そして、改善する。先行技術と比較して、リクイリチンを添加した後の懸濁液濃縮物は、活性成分と補助剤系との相乗的な適合性を実現し、そして、活性成分を担体中により均一に分散させ、そして、特にリクイリチンの添加が製品系の粒径の制御を著しく改善することができることが理解できる。補助剤系を用いて調製した製剤製品の生物活性はより顕著である。
【0068】
実施態様及びの油性懸濁液濃縮物については、様々な補助剤系及び分散媒は、油性懸濁液濃縮物の粒径に対してもある程度の影響を有する。また、粒径の制御には特定の補助剤系が必要であり、そして、リクイリチンの添加も粒径の制御を著しく改善する。先行技術と比較して、活性成分と補助剤系との相乗効果が実現される。補助剤系を用いて調製した製剤製品は、分散性が良好であり、安定的な性能を有し、そして、粒径の増加がより良好に制御される。更に、希釈剤は、標的に対する付着量が多く、接着性が強く、浸透性が強く、そして、顕著な生物活性を有しており、それによって、活性成分の利用率が高まり、そして、更には薬剤の数及び施用量の削減という目的が達成される。また、希釈剤は環境への汚染がほとんどなく、そして、ヒト、家畜、鳥類、及び有益な生物にとって安全であり、生態系の均衡の保護により貢献する。
【0069】
実施態様~11のエマルション(水中油型)については、様々な補助剤系が粒径の制御に対してある程度の影響を有し、そして、リクイリチンの添加は、2つの保管条件下で粒径の増加を良好に制御することができる。
【0070】
実施態様13及び実施態様14の湿潤性粉末については、常温におけるサンプルの粒径が比較的大きい。先行技術に記載された特定の構造物質によって調製することができる従来の製剤は、特定の技術的欠陥を有することを示すことができる。すなわち、近似的な粒径及び更には良好な生物活性を達成するためには、製剤化技術の支援が必要である。
【0071】
以上をまとめると、上記実施態様で得られた液体製剤製品の粒径は制御されており、これが、製品の物性、製品の長期安定性、製品の生物活性、及び他の面において重要な役割を果たしていることが理解できる。
【0072】
一方、リクイリチンを具体的に添加した後、保管条件の変化の下で不純物又は化合物Aの構造の結晶形態の変化を有効に制御し、それによって、粒径の増加を制御するために、リクイリチンが化合物Aの構造と相互作用する。本発明に物質を添加したところ、予想外の結果が得られる。先行技術における低融点化合物の粒径の制御についての課題が解決され、それによって、優れた性能を有し、粒径が小さく、そして、優れた生理活性を有する殺虫剤製剤が得られる。
【0073】
生物活性の実施態様
粒径制御後の生物活性に対する影響を確認するために、以下の生物活性試験を行った。この試験では、ニセナミハダニに対する実施例4-1、実施例4-2、参考例1、及び化合物Aの生物活性を比較した。
【0074】
実施態様15 ニセナミハダニの生物活性試験-1
試験サンプル:98% 化合物A-4、実施態様4-1、実施態様4-2、及び参考例1の製剤。
【0075】
試験条件:殺虫剤実験室、常温。殺虫剤観察室では、温度、湿度、及び照度を適宜調整することができる。温室は、全天候型の太陽熱温室である。
【0076】
試験溶液の調製:電子化学天秤を用いて試験サンプルを正確に計量し;水を製剤に直接添加して必要な濃度の母液を調製し;まず化合物A-4を溶媒に完全に溶解させ、次いで、0.1% Tween 80水によって必要な濃度の母液に調製し;そして、母液を水で希釈して、試験デザインに従って特定の濃度勾配を有する一連の試験溶液にした。
【0077】
試験方法:ニセナミハダニ成虫についての試験サンプルの異なるバッチの活性を、鉢植え苗散布法により測定した。まず、第1の対の本葉平坦化段階において豆苗葉に同サイズのニセナミハダニ成虫を結びつけ、そして、ニセナミハダニ成虫が安定化した後に基本数をカウントした。次いで、ニセナミハダニ成虫を試験デザインに従って低用量から高用量まで成虫1匹あたり2mLずつ均一に散布し;そして、ブランク対照を設定した。
【0078】
調査方法:処理した試験材料を特定の条件下で観察室内に置き;定期的にニセナミハダニの死成虫数及び生存成虫数を調べ;死亡率を算出し;そして、DPSソフトウェアを用いて病原性回帰式、LC50値、及び95%信頼限界を算出した。
【表3】
【0079】
表3から、実施態様4-2が最も低いLC50値及び最良の活性を有することが理解できる;表2では、実施態様4-2の粒径がより小さく、そして、粒径の増加がより良好に制御されている。実施態様4-1の生物活性は、実施態様4-2よりもわずかに悪いが、化合物A-4よりは著しく良好である。したがって、リクイリチン添加後に懸濁液濃縮物の生物活性が改善し、そして、LC50値を更に低下させることができると判断することができる。補助剤系が適していないことに基づいて、表2に示すように、粒径の値が大きく、そして、粒径の増加幅も大きいことが、参照例1のLC50から理解できる。たとえ製剤を調製したとしても、粒径の制御が理想的ではないので、良好な生物活性を得ることができない。LC50の値は、元の殺虫剤よりも更に高い。
【0080】
したがって、懸濁液濃縮物、エマルション(水中油型)、及び油性懸濁液濃縮物であってよい化合物Aの液体製剤製品は、補助剤系の相乗効果が良好である場合のみ、生物活性を確保し、そして、参考文献中国特許出願公開第105541682号明細書に記載される従来の製剤の不利点を回避できると判断することができる。更に、粒径の制御は、液体製剤の生物活性において重要な役割を果たしている。
【0081】
実施態様16 ニセナミハダニの生物活性試験-2
試験サンプル:98% 化合物A-4、実施態様12-1、実施態様12-2、実施態様12-3、実施態様13、及び実施態様14。
【0082】
試験条件:実施態様15と同じ。(殺虫剤実験室、常温。殺虫剤観察室では、温度、湿度、及び照度を適宜調整することができる。温室は、全天候型の太陽熱温室である。)
【0083】
試験溶液の調製:実施態様15と同じ。(電子化学天秤を用いて試験サンプルを正確に計量し;水を製剤に直接添加して必要な濃度の母液を調製し;まず化合物A-4を溶媒に完全に溶解させ、次いで、0.1% Tween 80水によって必要な濃度の母液に調製し;そして、母液を水で希釈して、試験デザインに従って特定の濃度勾配を有する一連の試験溶液にした。)
【0084】
試験方法:実施態様15と同じ。(ニセナミハダニ成虫についての試験サンプルの異なるバッチの活性を、鉢植え苗散布法により測定した。まず、第1の対の本葉平坦化段階において豆苗葉に同サイズのニセナミハダニ成虫を結びつけ、そして、ニセナミハダニ成虫が安定化した後に基本数をカウントした。次いで、ニセナミハダニ成虫を試験デザインに従って低用量から高用量まで成虫1匹あたり2mLずつ均一に散布し;そして、ブランク対照を設定した。)
【0085】
調査方法:処理した試験材料を特定の条件下で観察室内に置き;定期的にニセナミハダニの死成虫数及び生存成虫数を調べ;死亡率を算出し;そして、DPSソフトウェアを用いて病原性回帰式、LC50値、及び95%信頼限界を算出した。
標的ダニの個体差及び成長段階に起因して、生物活性試験の異なるバッチでは、LC 50 値は異なる。このバッチ中の同じグループの試験データ間でのみ、各試験データ比較を行う。
【表4】
【0086】
実施態様15と同じ生物活性の検証の目的は、本発明の技術的解決策を更に確認することのみである。
【0087】
実施態様16における同様の技術的解決策に従って、3つの懸濁液濃縮物サンプルを調製した。得られたデータから、良好な補助剤系によって調製された懸濁液濃縮物サンプルは、制御可能な粒径の下で優れた生物活性を有し、LC50がそれぞれ0.7396mg/L、0.7354mg/L、及び0.5697mg/Lであり、化合物A-4のLC50 0.8202よりも著しく良好であることが理解できる。リクイリチンを含む実施態様12-3は、他のものよりも顕著な効果を有する。
【0088】
実施態様13及び実施態様14から、良好な生物活性を有する殺虫剤製剤は、業界で周知の技術的解決策に従っては調製できないことが理解できる。従来の手段に従って調製された実施態様13及び実施態様14の生物活性は、化合物A-4及び本発明における他の実施態様よりも著しく悪い。これは、先行技術に記載されている「組成物を、公知の方法(例えば、任意で界面活性剤の存在下において、活性物質を溶媒媒体及び/又は固体希釈剤で希釈して又は溶解させて対応する製剤を得る)で調製する」ことが、特定の技術的欠陥を有することを、粒径比較試験との組み合わせを通して更に示している。すなわち、殺虫剤製品を圃場で施用することができるという必要性を満たすために、本発明に記載の技術的解決策によって、好適な粒径、又は更には良好な生物活性が達成される。
【0089】
表3及び表4のデータはサンプルの室内鉢実験の生理活性であり、実際の圃場実験の結果ではないことを示すべきである。当技術分野で周知のとおり、界面活性剤の使用量を明らかに増加させることと等価である、化合物を極性溶媒で溶解し、そして、多量のTween水で希釈する方法によって、化合物の生理活性は評価される。使用量は、製剤の調製において使用される界面活性剤の使用量よりもはるかに多く、それによって、化合物の希釈した殺虫剤液体製剤の表面張力が大きく低下する。化合物の生物活性ではなく、このような観点から生物活性が改善される。上記条件下の化合物は、現実には圃場に施用することができない。一方では、環境保護要件から、大量の極性溶媒を圃場に流入させることができず;そして、他方では、現在実現可能な状況から、大量の界面活性剤を製剤系に添加することができない。したがって、表3及び表4の生物活性データの実際の圃場施用においては、化合物の活性は製剤の活性よりも悪くなる。すなわち、本発明の技術的解決策によって得られる技術的効果はより顕著になる。
【0090】
化合物A-4により調製された農業に応用可能な製剤は、上記実施態様に記載のハダニ科のニセナミハダニを凌駕して作物を防除することができる。化合物Aについての中国特許出願公開第105541682号明細書の記録によれば、化合物の製剤は、ハダニ科(ナミハダニ、リンゴハダニ、及びミカンハダニ)、フシダニ科、及びホコリダニ科に対してポジティブな防除効果を有すると推察できる。生物活性で使用された幾つかの製剤によれば、化合物A-4によって調製された他の製剤も優れた防除効果を有することできることが、合理的に推察できる。上記実施態様の生物活性判定方法によれば、化合物の他の構造A-1、A-2、及びA-3についても、実施態様と同じ調製方法を用いて生物活性試験を行うことができる。本明細書に詳細に記載されていない内容は、当業者に公知の先行技術に属する。