(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】スクリーン印刷された電極構造体のための改善された貴金属ペースト
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20230329BHJP
C03C 8/18 20060101ALI20230329BHJP
C04B 35/111 20060101ALI20230329BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20230329BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H01B1/22 A
C03C8/18
C04B35/111
H01B5/14 Z
H01B13/00 503Z
(21)【出願番号】P 2021528410
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2019079497
(87)【国際公開番号】W WO2020104147
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516311238
【氏名又は名称】ヘレウス ネクセンソス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ティム アスムス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ディートマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ニック
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-158873(JP,A)
【文献】特開平01-317183(JP,A)
【文献】特開2012-012960(JP,A)
【文献】特開2016-100243(JP,A)
【文献】特開平11-242913(JP,A)
【文献】特開2006-108530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C03C 8/18
C04B 35/111
H01B 5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導体配線を製造するためのスクリーン印刷ペースト組成物であって、
白金及び/又はパラジウムを含む粒子状の貴金属、
金属酸化物、並びに
有機バインダー及び/又は溶媒
を含み、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の割合が、白金及び金属酸化物の合計の量に対して5~15wt%であり、SiO
2、Al
2O
3及びBaOが、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の少なくとも
70wt%の割合を占める、スクリーン印刷ペースト組成物。
【請求項2】
粒子状の貴金属が、白金及び/又は白金合金の形態で、好ましくは白金の形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載のスクリーン印刷ペースト組成物。
【請求項3】
粒子状の白金が、球状の白金の形態でスクリーン印刷ペースト組成物中に存在し、好ましくは、以下の特性:
白金割合:≧99.7%
比表面積(BET):0.8~1.2m
2/g
粒径分布:
D10:0.2~0.5μm
D50:0.4~1.0μm
D90:≦2.5μm
粉末密度:9.0~11.5g/cm
3
を有するPt粉末をベースとしていることを特徴とする、請求項2に記載のスクリーン印刷ペースト組成物。
【請求項4】
SiO
2、Al
2O
3及びBaOが、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の少なくとも
80wt%、好ましくは少なくとも
90wt
%の割合を占めることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリーン印刷ペースト組成物。
【請求項5】
金属酸化物が、SiO
2、Al
2O
3及びBaOを、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の合計の重量に対して35~41wt%SiO
2、12~18wt%Al
2O
3及び42~48wt%BaOの割合で含み、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物に対する全てのさらなる酸化物成分の合計の割合が≦2wt%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のスクリーン印刷ペースト組成物。
【請求項6】
有機バインダーが、エチルセルロース及び/又は溶媒としての2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートを含み、好ましくはエチルセルロース及び/又は溶媒としての2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートからなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のスクリーン印刷ペースト組成物。
【請求項7】
セラミック基材に電気伝導体配線を製造するための方法であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載のスクリーン印刷ペースト組成物をセラミック基材に適用する工程、
スクリーン印刷ペースト組成物を乾燥して、次いでベーキングして、電気伝導体配線を作り出す工程
を含む、方法。
【請求項8】
セラミック基材と、セラミック基材の少なくとも1つの面上の電気伝導体配線とを備える複合体製品であって、電気伝導体配線が、白金及び/又はパラジウムを含む粒子状の、好ましくは球状の貴金属と、金属酸化物とをベースとしていて、金属酸化物の割合が、電気伝導体配線の重量に対して5~15wt%を占めていて、電気伝導体配線中の金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化バリウムを少なくとも
70wt%の割合で含有する、複合体製品。
【請求項9】
セラミック基材が酸化アルミニウムを含むことを特徴とする、請求項8に記載の複合体製品。
【請求項10】
電気伝導体配線中の金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化バリウムを、電気伝導体配線中の金属酸化物の少なくとも
80wt%、好ましくは少なくとも
90wt
%の割合で含有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の複合体製品。
【請求項11】
電気伝導体配線中の金属酸化物が、SiO
2、Al
2O
3及びBaOを、電気伝導体配線中の金属酸化物の合計の重量に対して35~41wt%SiO
2、12~18wt%Al
2O
3及び42~48wt%BaOの割合で含み、金属酸化物に対する全てのさらなる酸化物成分の割合が≦2wt%であることを特徴とする、請求項8~10のいずれか1項に記載の複合体製品。
【請求項12】
粒子状の白金が、以下の特性:
白金割合:≧99.7%
比表面積(BET):0.8~1.2m
2/g
粒径分布:
D10:0.2~0.5μm
D50:0.4~1.0μm
D90:≦2.5μm
粉末密度:9.0~11.5g/cm
3
を有するPt粉末をベースとしていることを特徴とする、請求項8~11のいずれか1項に記載の複合体製品。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の複合体製品を備える粒子センサーであって、電気伝導体配線が少なくとも2つの電極を有していて、少なくとも2つの電極が互いに分離している、好ましくは2つのかみ合った櫛形電極である、粒子センサー。
【請求項14】
請求項8~12のいずれか1項に記載の複合体製品を備える、加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導体配線を製造するための改善されたスクリーン印刷ペースト組成物に関するものであり、スクリーン印刷ペースト組成物は粒子状の貴金属、金属酸化物及び/又は高速バインダー及び/又は溶媒をベースとしていて、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の割合は、貴金属及び金属酸化物の合計の量に対して5~15wt%である。本発明はさらに、特定のスクリーン印刷ペースト組成物を使用して電気伝導体配線を製造するための方法、セラミック基材から作られる複合体製品、及びその方法によって製造される電気伝導体配線、並びに(すす)粒子センサー及び加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル粒子フィルターの場合において、特に車両運転の間の車両の場合において、法規制に従って、粒子排出は監視されなければならない。さらに、低効率の燃料節減再生サイクルの場合に高いシステム信頼性を確実にするために、及び費用効率の良いフィルター材料を使用することを可能とするために、再生監視のためのディーゼル粒子フィルターの負荷予測が必要である。
【0003】
このための1つの選択肢は、抵抗粒子センサーによって提示され、抵抗粒子センサーは、排出ガスに自由にさらされる少なくとも2つの電極を有する電極システムを有し、適用される電場の影響の下で、電極の上又は間に検出される粒子、一般にすす粒子が堆積され、このことは抵抗及び/又はインピーダンスの変化をもたらす。昨今、このような抵抗粒子センサーは、一般に白金から製造される。
【0004】
電極の基材への付着性を改善するために、及び白金含有量を減少させ、従ってコストを減少させるために、粒子検出のための電極は、大部分は、白金-セラミック混合物、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化セリウム、特にα-酸化アルミニウムを含む白金-セラミック混合物から製造される。一般に、この種類の電極は、非常に多孔性の構造を有するが、しかし、それゆえに排出ガスにとってアクセス可能な特に大きい表面を有する。このことは、約800℃の温度から、白金がますます酸化されて(PtO2)を形成し、腐食されるという欠点に繋がり、センサー特徴の緩やかな損失の結果をもたらす。
【0005】
この問題を解決するために、独国特許出願公開第102008041707号明細書において、白金とガラスとが電極中に均一に存在し、ガラスが≧1000℃の融解温度を有する白金-ガラス混合物から、対応する電極を製造することが提案された。このような電極構造のおかげで、電極内のポア及び中間スペースを最小化することができ、従って、白金への酸化攻撃が、相当によりされにくくなる。加えて、電極は、電極を形成する材料の混合物がセラミック基材に適用されるスクリーン印刷方法を使用して製造することができる。次いで、電極は、ガラス前駆体の融解温度より高い温度への混合物の次ぐ加熱によって製造される。
【0006】
独国特許出願公開第102008041707号明細書において、SiO2/B2O3/Al2O3をベースとしたガラスが例示的なガラス組成物として説明されていて、さらなる金属酸化物を、例えば酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び酸化バリウムを添加することができる。しかし、ホウ素イオンが白金毒として作用するため、このようなガラスの欠点は、それらの有意な割合のB2O3である。このことは、製造される伝導体トラックの、高温における安定性の損失をもたらす。
【0007】
独国特許出願公開第19842276号明細書は、金属にセラミックを溶着するためのペーストを説明していて、白金粒子、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び酸化バリウム、有機バインダー並びに可塑剤が使用されている。独国特許出願公開第19842276号明細書において説明される組成物は、比較的高い(白金金属酸化物の合計の量に対して20%より高い)含有量の酸化物材料を有し、このことは粒子検出器のために不十分な伝導性をもたらす。
【0008】
米国特許出願公開第2015/0203694号明細書は、伝導性厚膜を形成するためのペーストを説明していて、そのペーストは伝導性付与構成要素として白金粉末を含有する。白金に加えて、米国特許出願公開第2015/0203694号明細書において説明される膜ペーストは、7%以下の「フリットガラス」及び0~3%の無機酸化物を含有してよい。例として記載されているフリットガラス材料は、比較的高いB2O3の割合(約35%)を有する。
【0009】
韓国公開特許第2013-0107766号公報は、5~20wt%の無機バインダー、0.5~20wt%の有機バインダー及び4.5~20wt%の有機溶媒を有する電極ペースト組成物を開示している。9~22%のB2O3の含有量を有する特定のガラス粉末が無機バインダーとして説明されていて、それは、ベース材料としてBi2O3又はPbOのいずれかをベースとしている(すなわち、この材料はガラスにおけるもっとも多い成分を形成する)。
【0010】
伝導性印刷を製造するための公知のスクリーン印刷ペーストの1つの問題もまた、特に上昇した温度における、しばしば不十分な基材付着性に存在し、このことは、電気伝導体配線と、特にそれから製造される粒子センサーとの望ましくない低い耐久性をもたらす。この背景に対して、本発明の目的は、セラミック基材への適用に次いで、及び熱処理に次いで、高温においてであっても、確実に、かつ持続的にセラミック基材に付着する電極又は伝導体構造をもたらす、電気伝導体配線を製造するための改善されたスクリーン印刷ペーストを提示することにある。
【発明の概要】
【0011】
従って、第一の態様によれば、本発明は、電気伝導体配線を製造するためのスクリーン印刷ペースト組成物であって、スクリーン印刷ペースト組成物は、白金又はパラジウムを含む粒子状の貴金属、金属酸化物、並びに有機バインダー及び/又は溶媒を含有していて、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の割合が、貴金属及び金属酸化物の合計の量に対して5~15wt%である、スクリーン印刷ペースト組成物に関するものである。
【0012】
金属酸化物の合計の量に対して8~15wt%、さらに好ましくは10~14wt%、さらにより好ましくは11~13wt%、さらにより好ましくは約12wt%の、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の割合を、特に有益として明示することができる。
【0013】
本発明の文脈において、用語「貴金属」は、金属Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Au及びHgを指す。
【0014】
本スクリーン印刷ペースト組成物において使用される粒子状の貴金属は、いかなる関連する限定も受けないが、ただし、それから製造される電気伝導体配線の安定性を確実にするために、貴金属は、高温(>750℃)であっても、酸素接触の場合に可能な限り安定であるべきである。この要求を満たす貴金属は、特に白金、白金と他の貴金属とから、特に白金とロジウムとから作られる合金、又は銀/パラジウム合金である。合金でない白金は、白金/ロジウムから作られる記載された合金と比較して、高温においてであっても、外部酸化物層が形成されないという利点を有し(白金/ロジウムの場合においては酸化ロジウム被膜)、そのため、好ましくは、本発明の文脈において、粒子状の貴金属は、(合金でない)白金の形態で存在する。本発明の文脈において、少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.5%の純度を有する白金が、「合金でない」白金と呼ばれる。
【0015】
粒子状の貴金属の形状も、同様に、いかなる関連する限定も受けず;従って、球状の粒子、楕円体状の粒子、プレートレット形状の粒子などを使用することができる。しかし、好ましくは、粒子状の貴金属は球状の形状で存在する。
【0016】
貴金属の粒径分布は、スクリーン印刷ペースト組成物が使用されるべき用途に因る。すなわち、スクリーン印刷ペースト組成物中に存在する粒子の最大径は、可能な限り最大限に、それから製造される伝導体構造の厚さより小さいべきである。0.05~10μm、好ましくは0.1~5μm、特に好ましくは0.3~2μmが、特に適した平均粒径D50として明示される。この場合において、便宜上、粒径は、電子顕微鏡像の解析を用いて決定される。
【0017】
本発明の文脈において、以下の特性:白金割合:≧99.7%、比表面積(BET):0.8~1.2m2/g、粒径分布:D10:0.2~0.5μm、D50:0.4~1.0μm、D90:≦2.5μm及び粉末密度:9.0~11.5g/cm3を有する白金粉末が、粒子状の貴金属として非常に特に好ましい。
【0018】
本出願の文脈において、対イオンとして酸素を含有する金属の酸化物又はメタロイド、例えばケイ素、が「金属酸化物」と呼ばれる。先に記載されたように、酸化ホウ素は白金に対する触媒毒という性質であり、それゆえにスクリーン印刷ペースト組成物から製造される電気伝導体配線の機能性を害する場合があるため、本発明の文脈において、金属酸化物は、好ましくは酸化ホウ素、例えばB2O3を含まない。従って、金属酸化物中の酸化ホウ素の含有量は、好ましくは≦2wt%、特に好ましくは≦1wt%であるべきであり、ここで、wt%はスクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の合計の重量に対するものである。金属酸化物が、避けられない汚染物質とは別に酸化ホウ素を含有しない場合が、非常に特に好ましい。
【0019】
均質なガラスボディーを形成する「焼結」が1000~約1400℃の温度範囲で可能であるように、金属酸化物又はその混合物は、便宜上、1000~約1400℃の温度でそれらが軟化するように選択される。本発明の文脈において、SiO2、Al2O3及びBaOをベースとした混合物は、このために特に都合が良いことが分かった。これらの混合物について、これらの混合物が、スクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の合計の量に対して少なくとも60wt%、好ましくは少なくとも70wt%、さらに好ましくは少なくとも80wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%の割合でSiO2、Al2O3及びBaOを含有する場合が好ましい。
【0020】
本発明が基とした研究の文脈において、スクリーン印刷ペースト組成物の金属酸化物中のBaOの比較的高い含有量が有利であることが示された。従って、この割合は、好ましくは20wt%より高く、特には30wt%より高く、非常に特に好ましくは35wt%より高い。好ましくは、さらにより好ましいBaOの割合は、40~50wt%、特には40~49wt%、さらにより好ましくは42~48wt%、最も好ましくは約45wt%である。
【0021】
SiO2、Al2O3及びBaOをベースとした混合物中のSiO2の割合は、便宜上、33~43wt%、好ましくは33~42wt%、さらに好ましくは35~41wt%、特には約38wt%であるべきである。10~20wt%、好ましくは12~18wt%、特には約15wt%の割合を、Al2O3の適した割合として明示することができる。これらのデータにおいて、「wt%」は、それぞれの場合におけるスクリーン印刷ペースト組成物中の金属酸化物の合計の重量に対するものである。
【0022】
本発明によるスクリーン印刷ペースト組成物について、それが最小限の割合のさらなる(すなわちSiO2、Al2O3及びBaOとは異なる)酸化物成分を含有する場合がさらに好ましく、このようなさらなる酸化物成分について、≦2wt%、好ましくは≦1wt%を有する、適した重量での割合を明示することができる。
【0023】
適した処理性を達成するために、さらなる添加剤、例えば有機バインダー、溶媒、可塑剤などを、スクリーン印刷ペースト組成物に添加することができる。特に適した有機バインダーについての例として、とりわけエチルセルロースを挙げることができるが、代わりに、例えばポリビニルブチラール、ヒドロキシセルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、及び/又は短鎖(好ましくはC1~C4)アルコールのポリメタクリレートなどのバインダーもまた使用することができる。適した粘度を付与するために、有機溶媒を、スクリーン印刷ペースト組成物に添加することができる。本発明の文脈における適した有機溶媒は、エステルアルコール、及びα-若しくはβ-テルピネオールなどのテルペン、又はそれらの他の溶媒との混合物、例えばケロシン、セバシン酸ジブチル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、へキシレングリコール、セバシン酸ジオクチル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、又は高沸点アルコール、例えば2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールである。本発明によるスクリーン印刷ペースト組成物のための非常に特に好ましい溶媒は、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートである。
【0024】
特に、適した可塑剤は、フタレートベースの可塑剤、例えばジブチルフタレート又はジオクチルフタレートを含有する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、セラミック基材に電気伝導体配線を製造するための方法に関するものであり、
先に説明されたスクリーン印刷ペースト組成物をセラミック基材に適用する工程;及び
スクリーン印刷ペースト組成物を乾燥して、次いでベーキングして、電気伝導体配線を作り出す工程
を含む。
【0026】
便宜上、スクリーン印刷ペースト組成物の適用は、スクリーン印刷技術を使用して行われる。
【0027】
本方法の文脈において、便宜上、乾燥は、乾燥工程において、適用された組成物から、適した割合の溶媒が除去されるように行われるべきである。特に、60℃より高い温度、とりわけ80℃より高い温度が、乾燥のために適していることが分かった。少なくとも30分、好ましくは約60~90分を、乾燥のための適した期間として明示することができる。
【0028】
以下の経路を有する乾燥プロファイルが特に適していることが分かった。乾燥オーブンの温度を、室温から35℃に上昇させ、その温度で10分間保持する。次いで、温度を83℃に上昇させ、その温度で20分間保持する。次いで、温度を156℃に上昇させ、その温度で30分間保持する。
【0029】
貴金属粒子と金属酸化物との均質な複合体が形成するように、スクリーン印刷ペースト組成物の次ぐベーキングは、スクリーン印刷ペースト組成物中に未だ含有されている有機構成要素が分解してガス状生成物を形成する温度で行われる。加えて、金属酸化物混合物が(少なくとも部分的に)融解して貴金属粒子のポア及び中間スペースを充填するように、ベーキングの間の温度は、金属酸化物混合物の融点以上であり;結果として、貴金属についての酸化プロセスは上昇した温度で抑制される。
【0030】
少なくとも900℃、好ましくは1000~1400℃、非常に特に好ましくは約1200℃(すなわち±100℃、好ましくは±50℃)の温度を、ベーキングのために適しているとして明示することができる。
【0031】
ベーキングについて、好ましくは、金属酸化物の混合物の融点が、基材が焼結される温度より低くなるように、金属酸化物が選択される。好ましい実施態様の文脈において、乾燥されたスクリーン印刷ペースト組成物及び基材は、ベーキングの間に、金属酸化物混合物の融点以上、かつ基材の焼結温度以下の温度に加熱される。
【0032】
スクリーン印刷技術を使用してセラミック基材に適用されたスクリーン印刷ペーストは、ベーキングに次いで、超短パルスレーザーを用いて構築することができ、例えば特に細かい構造体を、100μmより小さい伝導体トラックスペース又は鋭いエッジを実現する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、セラミック基材と、先に説明された方法によって得ることができる電気伝導体配線とを備える複合体製品に関するものである。
【0034】
代わりに、本発明はまた、セラミック基材と、セラミック基材の少なくとも1つの面上の電気伝導体配線とを備える複合体製品に関するものであり、電気伝導体配線は、白金及び/又はパラジウム含む粒子状の貴金属、好ましくは球状の貴金属と、金属酸化物とをベースとしていて、金属酸化物の割合は、電気伝導体配線の重量に対して5~15wt%を占める。
【0035】
本発明による方法とあわせて先に記載されたその仕様は、この複合体製品のための好ましい構成として考えられる。従って、特に、電気伝導体配線中の金属酸化物が、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)及び酸化バリウム(BaO)を含有する場合が好ましく、電気伝導体配線中の金属酸化物の合計の量に対して少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、さらにより好ましくは少なくとも80wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%の割合を、これらの酸化物についての好ましい割合として明示することができる。
【0036】
さらに、電気伝導体配線中の金属酸化物が、電気伝導体配線中の金属酸化物の合計の重量に対して35~41wt%SiO2、12~18wt%Al2O3及び42~48wt%BaOの割合でSiO2、Al2O3及びBaOを含み、金属酸化物に対する全てのさらなる酸化物成分の割合が≦2wt%である場合が、この複合体製品について特に好ましい。
【0037】
最後に、この複合体製品について、粒子状の貴金属が球状の白金をベースとしている場合が特に好ましく、特性:白金割合:≧99.7%、比表面積(BET):0.8~1.2m2/g、粒径分布:D10:0.2~0.5μm、D50:0.4~1.0μm、D90:≦2.5μm及び粉末密度:9.0~11.5g/cm3、を有する白金粉末を、特に適したものとして明示することができる。
【0038】
先に明示された複合体製品の全てについて、セラミック基材が酸化アルミニウムを含むか、又は酸化アルミニウムからなる場合が好ましい。
【0039】
本発明のさらなる態様は、先に説明される複合体製品を備える粒子センサーに関するものであり、電気伝導体配線は、互いに分離している少なくとも2つの電極を有する。これらの電極について、これらの電極が2つのかみ合った櫛型電極として存在する場合が好ましい。
【0040】
電極を再生するために、本発明による粒子センサーは、加熱装置をさらに有してよい。さらに、本発明による粒子センサーは、温度測定装置を有してよい。この場合において、加熱装置及び/又は温度測定装置は、1つ又は複数の絶縁層及び/又は基材層を通るビアによって接触することができる。
【0041】
最後に、本発明のさらなる態様は、先に説明された複合体製品を備える加熱装置に関する。
【0042】
特に、先に概説された本発明の方法によって、以下の利点を実現することができる。
セラミック基材への、特にAl2O3へのベーキングされた貴金属ペーストの付着性が改善される。
対応する貴金属ペーストから製造されたセンサーの、例えば、排気列車における又はヒーターのためのすすセンサーの高温適用の場合において、基材からの電極の断絶の可能性が最小化される。
ベーキングの後に、貴金属ペーストが平滑になり、表面が金属光沢を有する、すなわち、適用された層は非常にち密となり多孔性でない。従って、適用された層は高い伝導性を有し、より安定である。
すす粒子フィルターの燃焼温度(約750℃)で、高融点の金属酸化物組成物は、貴金属層の融解をもたらさない。
ベーキングされたペーストの電気抵抗は、種々の製造バッチにおいて非常に良好に再現することができる。
【0043】
以下において、本発明は、幾つかの例示的な例に基づいて説明されるが、本出願の保護の範囲について明確にする形態であると考えられるべきではない。
【実施例】
【0044】
実施例1
(組成物中の金属酸化物及び白金粒子の合計の量に対して)100~85wt%の白金粒子含有量及び0~15wt%のガラス形成金属酸化物の含有量を有する組成物を、それらの付着性及び電気伝導性について調査した。ガラス形成金属酸化物の組成は、45wt%BaO、38wt%SiO2、15wt%Al2O3及び2wt%のさらなる酸化物成分であった。この場合、15wt%のガラス形成金属酸化物の含有量について、非常に良好な付着性が示された。シート抵抗は、ガラス形成金属酸化物の含有量が増加するに伴って増加した。
【0045】
同様の白金粉末をベースとした他のペースト(Tanaka TR-708EZ9又はTR-708HSC)の場合、対照的に、対応する付着性試験において不十分な付着性が示された。
【0046】
これらの調査の結果を表1に複写する。
表1
【表1】
【0047】
実施例2
白金粉末(実施例1において明示される通り)及びガラス形成金属酸化物の合計の重量に対して12wt%の割合を有する、金属酸化物の種々の混合物を、配合してペーストにした。ペーストは、約15wt%の割合で、バインダー及び溶媒としてエチルセルロース及びテキサノールを付加的に含有していた。
【0048】
次いで、スクリーン印刷を用いてペーストをアルミニウム基材に適用し、乾燥して、次いで1200℃でベーキングした。
【0049】
この方式で製造された電極を、電気抵抗及び熱膨張に関して試験した。使用したペーストの処理性を同様に評価した。これらの調査の結果を表2に記載する。
表2
【表2】
+、++及び+++ラベルは適用のために特に適した特性、-、--及び---ラベルはまだ許容可能~不十分である特性
【0050】
組成番号1が、電気抵抗、熱膨張及び処理性の最も有益な組み合わせをもたらした。
【0051】
混合物、それらの組成において、番号1~7による組成物とは相当に異なる混合物は、良好に十分には融解することができていなかったか、低すぎる電気抵抗を有していたか、又はすすセンサーとしての適用のために不十分な融点を有していたかのいずれかであった。