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特許7253057二次電池正極材製造用焼成炉および二次電池正極材の焼成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】二次電池正極材製造用焼成炉および二次電池正極材の焼成方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230329BHJP
【FI】
H01M4/525
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021535727
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2019018097
(87)【国際公開番号】W WO2020130669
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165659
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、 キヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 チュンモ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ユン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 スン チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ヤン ミン
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-103331(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2014-0088352(KR,A)
【文献】特開2017-017042(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1177545(KR,B1)
【文献】特開2010-014290(JP,A)
【文献】特開2003-240440(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1346960(CN,A)
【文献】特開2016-153704(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2008-0090058(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-4/62
H01M 10/04
H01M 10/05-10/0587
F27B 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間がヒーターによって加熱されるチャンバ;
前記チャンバの内部に設けられ、二次電池正極材の原料粉末が入れられた耐火匣鉢を一方向に移送する移送部;および
前記チャンバに設けられた給気ノズルおよび排気口を含み、
前記チャンバは、
昇温区間を含む前半部チャンバと、温度維持区間を含む後半部チャンバと、前半部チャンバと後半部チャンバの間に位置して前半部チャンバと後半部チャンバを分離させる中間チャンバを含み、
前記中間チャンバは内部空間の密閉のための入口シャッターと出口シャッターを備え、前記中間チャンバの排気口はガス排気のための排気装置と連結され
前記中間チャンバは給気ノズルを含み、前記給気ノズルは前記中間チャンバのガスが排気された後に前記中間チャンバの内部にドライエアーまたは酸素を供給する、二次電池正極材製造用焼成炉。
【請求項2】
前記中間チャンバは、前記温度維持区間と同じ温度を維持する、請求項1に記載の二次電池正極材製造用焼成炉。
【請求項3】
前記中間チャンバは、前記出口シャッターがおろされて前記入口シャッターが開放された状態で前記前半部チャンバから前記正極材の提供を受け、前記入口シャッターがおろされて内部空間が密閉される、請求項1又は2に記載の二次電池正極材製造用焼成炉。
【請求項4】
前記排気装置は、真空ポンプと吸引器および送風機のうちいずれか一つで構成され、密閉された前記中間チャンバ内部のガスを排気する、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池正極材製造用焼成炉。
【請求項5】
前記中間チャンバは、内部空間がドライエアーまたは酸素で満たされた後、前記出口シャッターの開放により前記正極材を前記後半部チャンバに移送する、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池正極材製造用焼成炉。
【請求項6】
前記中間チャンバは、前記前半部チャンバと前記後半部チャンバそれぞれより小さい内部体積を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池正極材製造用焼成炉。
【請求項7】
請求項1に記載の焼成炉を用いた二次電池正極材の焼成方法において、
前記正極材が前記耐火匣鉢に入れられて前記前半部チャンバに投入され、前記前半部チャンバで予熱および昇温区間を経る昇温段階;
前記出口シャッターが閉じられて前記入口シャッターが開放された状態で前記前半部チャンバの正極材が前記中間チャンバに移送される移送段階;
前記入口シャッターがおろされて前記中間チャンバが密閉され、前記排気装置が作動して前記中間チャンバ内部のガスを排気させる排気段階;および
前記出口シャッターが開放され、前記中間チャンバの正極材が前記後半部チャンバに移送され、前記後半部チャンバで温度維持区間を経て焼成する焼成段階を含み、
前記排気段階直後に前記中間チャンバの給気ノズルを介して前記中間チャンバの内部にドライエアーまたは酸素が供給される、二次電池正極材の焼成方法。
【請求項8】
前記排気段階における前記排気装置は真空ポンプと吸引器および送風機のうちいずれか一つで構成される、請求項に記載の二次電池正極材の焼成方法。
【請求項9】
前記入口シャッターと前記出口シャッターは同時に開放されないように作動が制御され、前記前半部チャンバのガスが前記後半部チャンバに拡散されることを遮断する、請求項7又は8に記載の二次電池正極材の焼成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の正極材(正極活物質)を製造するための焼成炉と、焼成炉を用いた二次電池正極材の焼成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池のうちリチウムを使用するリチウム二次電池はエネルギ密度が高く出力特性に優れ、軽量化に有利な長所がある。リチウム二次電池は正極材としてLiCoOを主に使用するが、近年、高価なコバルトの代わりに、重量当たり容量を高めるためにニッケル、コバルト、およびマンガンを含有したNCM系の正極材が研究されている。
【0003】
正極材の製造工程は原料粉末を入れた耐火匣鉢(sagger)を焼成炉で原材料の特性によって概ね400℃~1,100℃の温度で焼成する過程を含む。この際、焼成炉は直線型焼成炉であるローラーハースキルン(Roller Hearth Kiln,RHK)であってもよく、正極材の焼成過程は投入および予熱区間、昇温区間、温度維持区間、冷却区間、および常温冷却と排出区間からなる。
【0004】
正極材の焼成過程において、特に昇温区間および温度維持区間の初期でCOとHO(水蒸気)が大量発生し、発生ガスは正極材の反応時間と反応率などに全般的な影響を及ぼす。従来の焼成炉は下部給気と上部給気および側面給気による給気と、上部排気による排気を適宜調節して運用している。
【0005】
しかし、発生ガス中のHOの除去は比較的容易であるが、COは給気ガスとして使用されるドライエアーまたは酸素より分子量が大きいので排気が難しい。特に温度維持区間の初期以後の過程でCO分圧が高い場合、化学反応が行われないことがあるので、効率的なCOの除去方法が必要である。
【0006】
また、RHK焼成炉で正極材の充填量を増やすと陽極粉末とリチウムソース混合粉末から反応ガスが発生するが、反応ガスが排気されず残留すると正極材の反応率が低下する。したがって、COと反応ガスを迅速かつ効率的に除去するための方案が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面は、二次電池の正極材を焼成する過程で発生するCOと反応ガスを迅速かつ効率的に除去することによって正極材の反応率を高め、焼成時間を短縮させる二次電池正極材製造用焼成炉および二次電池正極材の焼成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による二次電池正極材製造用焼成炉は、内部空間がヒーターによって加熱されるチャンバと、チャンバの内部に設けられ、二次電池正極材の原料粉末が入れられた耐火匣鉢を一方向に移送する移送部と、チャンバに設けられた給気ノズルおよび排気口を含む。チャンバは、昇温区間を含む前半部チャンバと、温度維持区間を含む後半部チャンバと、前半部チャンバと後半部チャンバの間に位置して前半部チャンバと後半部チャンバを分離させる中間チャンバを含む。中間チャンバは内部空間の密閉のための入口シャッターと出口シャッターを備え、中間チャンバの排気口はガス排気のための排気装置と連結される。
【0009】
中間チャンバは温度維持区間と同じ温度を維持することができる。前半部チャンバは温度維持区間の序盤をさらに含んでもよく、後半部チャンバは温度維持区間の残りを含んでもよい。
【0010】
中間チャンバは、出口シャッターがおろされて入口シャッターが開放された状態で前半部チャンバから正極材の提供を受けることができ、入口シャッターがおろされて内部空間が密閉されてもよい。排気装置は真空ポンプと吸引器および送風機のうちいずれか一つで構成されてもよく、密閉された中間チャンバ内部のガスを排気してもよい。
【0011】
中間チャンバは給気ノズルを含んでもよく、給気ノズルは中間チャンバのガスが排気された後に中間チャンバの内部にドライエアーまたは酸素を供給してもよい。中間チャンバは内部空間がドライエアーまたは酸素で満たされた後、出口シャッターの開放により正極材を後半部チャンバに移送することができる。中間チャンバは前半部チャンバと後半部チャンバそれぞれより小さい内部体積を有してもよい。
【0012】
本発明の他の一実施形態による二次電池正極材の焼成方法は、正極材が耐火匣鉢に入れられて前半部チャンバに投入され、前半部チャンバで予熱および昇温区間を経る昇温段階と、出口シャッターが閉じられて入口シャッターが開放された状態で前半部チャンバの正極材が中間チャンバに移送される移送段階と、入口シャッターがおろされて中間チャンバが密閉され、排気装置が作動して中間チャンバ内部のガスを排気させる排気段階と、出口シャッターが開放され、中間チャンバの正極材が後半部チャンバに移送され、後半部チャンバで温度維持区間を経て焼成する焼成段階を含む。
【0013】
排気段階における排気装置は、真空ポンプと吸引器および送風機のうちいずれか一つで構成されてもよく、排気段階直後に中間チャンバの給気ノズルを介して中間チャンバの内部にドライエアーまたは酸素が供給されてもよい。入口シャッターと出口シャッターは同時に開放されないように作動が制御されて前半部チャンバのガスが後半部チャンバに拡散することを遮断することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、昇温区間で発生したガス、特にCOは中間チャンバの排気によって後半部チャンバに伝達されず、後半部チャンバはきわめて低いCO分圧を有する。したがって、温度維持区間を含む後半部チャンバで正極材の反応率を高めて残留リチウムを減少させて正極材の製造品質を高めることができ、全体の焼成時間を短縮させて正極材の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による二次電池正極材製造用焼成炉の構成図である。
図2図1に示す焼成炉の前半部チャンバの断面図である。
図3図1に示す焼成炉の中間チャンバの断面図である。
図4図1に示す焼成炉の後半部チャンバの断面図である。
図5図1に示す焼成炉の区間別の温度プロファイルを示す図である。
図6】本発明の一実施形態による二次電池正極材の焼成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0017】
図1は本発明の一実施形態による二次電池正極材製造用焼成炉(以下、「焼成炉」という)の構成図である。図2図3、および図4はそれぞれ図1に示す焼成炉の前半部チャンバ、中間チャンバ、および後半部チャンバの断面図である。
【0018】
図1図4を参照すると、焼成炉100は内部空間がヒーター21により加熱されるチャンバ10と、チャンバ10の内部に設けられ、二次電池正極材の原料粉末が入れられた耐火匣鉢(22,sagger)を一方向に移送する移送部30と、チャンバ10に設けられた給気ノズルおよび排気口を含む給排気装置を含む。
【0019】
チャンバ10は一方向に長い直線型チャンバであり、焼成炉100はローラーハースキルン(Roller Hearth Kiln,RHK)で構成することができる。移送部30はモータによって回転する複数のローラ31を含んでもよいが、ローラタイプに限定されず、耐火匣鉢22を一方向に移送できる機械的構成であればすべて適用可能である。
【0020】
チャンバ10は前半部チャンバ11、中間チャンバ12、および後半部チャンバ13に区分される。中間チャンバ12は前半部チャンバ11と後半部チャンバ13の間に位置して前半部チャンバ11と後半部チャンバ13を空間的に分離させる。すなわち、中間チャンバ12は前半部チャンバ11および後半部チャンバ13と直接接するように位置することができる。
【0021】
前半部チャンバ11は入口シャッターである第1シャッター51を備え、後半部チャンバ13は出口シャッターである第2シャッター52を備える。中間チャンバ12は入口シャッターである第3シャッター53と出口シャッターである第4シャッター54を備える。第3シャッター53は前半部チャンバ11と中間チャンバ12の間に位置し、第4シャッター54は中間チャンバ12と後半部チャンバ13の間に位置する。
【0022】
移送部30は前半部チャンバ11、中間チャンバ12、および後半部チャンバ13すべてに設けられ、耐火匣鉢22を連続して移送する。給排気装置は前半部チャンバ11、中間チャンバ12、および後半部チャンバ13それぞれに設けられた給気ノズルと排気口を含む。
【0023】
図2を参照すると、前半部チャンバ11における給排気装置は、前半部チャンバ11の下段に設けられた少なくとも一つの第1給気ノズル41と、前半部チャンバ11の側壁に設けられた少なくとも一つの第2給気ノズル42と、前半部チャンバ11の上段に設けられた少なくとも一つの第1排気口43を含むことができる。
【0024】
第1および第2給気ノズル41,42は前半部チャンバ11の内部にドライエアーまたは酸素を供給する。第1排気口43は送風機のような通常の排気装置と連結される。図1図2における前半部チャンバ11の第1排気口43の位置は図示する例示に限定されない。
【0025】
図3を参照すると、中間チャンバ12における給排気装置は、中間チャンバ12の上段に設けられた少なくとも一つの第2排気口46を含み、少なくとも一つの第2排気口46は排気装置60と連結される。排気装置60は真空ポンプと吸引器および送風機のうちいずれか一つであればよく、中間チャンバ12内部のガスを排気する作用をする。
【0026】
給排気装置は中間チャンバ12の下段に設けられた少なくとも一つの第3給気ノズル44と、中間チャンバ12の側壁に設けられた少なくとも一つの第4給気ノズル45を含むことができる。第3および第4給気ノズル44,45は排気が完了した中間チャンバ12の内部にドライエアーまたは酸素を供給することができる。第3給気ノズル44と第4給気ノズル45のうち一つは省略可能である。
【0027】
図4を参照すると、後半部チャンバ13における給排気装置は、後半部チャンバ13の下段に設けられた少なくとも一つの第5給気ノズル47と、後半部チャンバ13の側壁に設けられた少なくとも一つの第6給気ノズル48と、後半部チャンバ13の上段に設けられた少なくとも一つの第3排気口49を含むことができる。
【0028】
第5および第6給気ノズル47,48は後半部チャンバ13の内部にドライエアーまたは酸素を供給する。第3排気口49は送風機のような通常の排気装置と連結される。図1図4における後半部チャンバ13の第3排気口49の位置は図示する例示に限定されない。
【0029】
図5図1に示す焼成炉の区間別温度プロファイルを示す図である。
図5を参照すると、焼成炉は正極材の進行方向に沿って投入および予熱区間A10、昇温区間A20、温度維持区間A30、冷却区間A40、常温冷却および排出区間A50に区分される。ヒーター21はそれぞれの区間で発熱温度が制御されて設定された温度を実現する。
【0030】
焼成炉の温度は投入、予熱区間A10、および昇温区間A20で徐々に上昇し、温度維持区間A30で焼成温度を維持してから冷却区間A40と常温冷却および排出区間A50で徐々に下降する。正極材の焼成反応率は昇温区間A20で徐々に上昇し、温度維持区間A30で最大値を示す。昇温区間A20は焼成反応の初期に該当し、温度維持区間A30は焼成反応の中/後半期に該当する。
【0031】
しかし、昇温区間A20と温度維持区間A30の初期でCOとHO(水蒸気)が大量発生し、耐火匣鉢22に正極材の充填量を増やす時陽極粉末とリチウムソース混合粉から反応ガスも大量発生する。正極材の焼成反応初期には発生ガスの分圧が高くても反応が行われるが、焼成反応の中/後半期には発生ガスの分圧が高いと反応が行われない。
【0032】
特に焼成反応の中/後半期にCO分圧が高いと正極材の焼成反応が行われないので反応率が急激に低くなる。
【0033】
図1図5を参照すると、前半部チャンバ11は投入および予熱区間A10と昇温区間A20を含むことでき、後半部チャンバ13は温度維持区間A30、冷却区間A40、常温冷却および排出区間A50を含むことができる。
【0034】
また、前半部チャンバ11は投入および予熱区間A10、昇温区間A20、温度維持区間A30の序盤の一部を含んでもよく、後半部チャンバ13は温度維持区間A30の残り部分、冷却区間A40、常温冷却および排出区間A50を含んでもよい。二つの場合はいずれも、中間チャンバ12は温度維持区間A30と同じ温度を維持する。
【0035】
中間チャンバ12は第4シャッター54がおろされて後半部チャンバ13と空間的に分離した状態で開放された第3シャッター53を介して前半部チャンバ11からガスを大量放出した正極材の提供を受ける。その後、第3シャッター53がおろされて中間チャンバ12が前半部チャンバ11と空間的に分離し、排気装置60の稼動により第2排気口46を介して中間チャンバ12内部のガス(CO、水蒸気、反応ガス)が排気される。
【0036】
前半部チャンバ11において昇温過程を経た耐火匣鉢22の周囲には耐火匣鉢22の外側に発散するガスの流れと、耐火匣鉢22の中に閉じ込められているガスの流れがすべて存在する。耐火匣鉢22の外側に発散するガスの流れは排気が容易であるが、耐火匣鉢22の中に閉じ込められているガスの流れは排気が容易でない。特に耐火匣鉢22の積層数が多くなるほど耐火匣鉢22の中に閉じ込められているガスの流れは排気が難しくなる。
【0037】
単一チャンバで構成された従来の焼成炉において前述した二つのガスの流れを全部排気させるためには十分な排気時間を置くべきであるが、この場合、全体焼成時間が長くなるので生産性が低くなる。
【0038】
本実施形態では、ガスが大量発生している前半部チャンバ11をCO分圧が反応に大きな影響を及ぼす後半部チャンバ13と空間的に分離させ、正極材から大量発生したガスを中間チャンバ12から排気させることによって前半部チャンバ11のガスが後半部チャンバ13に転移しないようにする。
【0039】
このとき、中間チャンバ12は前半部チャンバ11および後半部チャンバ13より小さい内部体積を有する。したがって、短い時間に円滑な排気が行われ、耐火匣鉢22の外側に発散するガスの流れだけでなく耐火匣鉢22の中に閉じ込められているガスの流れも効果的に排気することができる。
【0040】
ガスの排出過程またはガスが全部排出された後、第3給気ノズル44と第4給気ノズル45を介して中間チャンバ12の内部にドライエアーまたは酸素が供給される。中間チャンバ12の内部が新たなガスの雰囲気に変わった後、第4シャッター54が開放され、中間チャンバ12の正極材が後半部チャンバ13に移送される。
【0041】
このとき、第3シャッター53と第4シャッター54は同時に開放されないように作動を制御することができ、前半部チャンバ11のCOは中間チャンバ12により阻まれて後半部チャンバ13に拡散されない。
【0042】
本実施形態の焼成炉100は、前半部チャンバ11と後半部チャンバ13を空間的に分離させる中間チャンバ12の存在と排気装置60の作動によって、後半部チャンバ13のCO分圧を効果的に下げることができる。その結果、正極材の反応率を高めて残留リチウムを減少させて正極材の製造品質を高めることができ、耐火匣鉢の積層数を増やし、全体の焼成時間を短縮させて正極材の生産性を高めることができる。
【0043】
図6は本発明の一実施形態による二次電池正極材の焼成方法を示すフローチャートである。
【0044】
図6を参照すると、二次電池正極材の焼成方法は、正極材が耐火匣鉢に入れられて前半部チャンバに投入されて予熱および昇温区間を経る第1段階(S10)と、前半部チャンバの正極材が中間チャンバに移送される第2段階(S20)と、中間チャンバが密閉されて中間チャンバ内部のガスが排気される第3段階(S30)と、中間チャンバの正極材が後半部チャンバに移送されて温度維持区間で焼成する第4段階(S40)を含む。
【0045】
図1図6を参照すると、第1段階(S10)において、正極材は原料粉末の形態で耐火匣鉢22に入れられて前半部チャンバ11に投入される。前半部チャンバ11は投入および予熱区間A10と、昇温区間A20を含むことができ、温度維持区間A30の序盤をさらに含んでもよい。
【0046】
正極材は昇温区間A20または昇温区間A20と温度維持区間A30の序盤で多量のガス(CO、水蒸気、反応ガス)を放出するが、特にCOは温度維持区間A30で焼成反応を阻害するので後半部チャンバ13にCOが拡散することを防がなければならない。
【0047】
第2段階(S20)において、中間チャンバ12は温度維持区間A30と同じ温度を維持し、第4シャッター(出口シャッター,54)が閉じられた状態で開放された第3シャッター(入口シャッター,53)を介して昇温区間A20を経た正極材の供給を受ける。
【0048】
第3段階(S30)において、中間チャンバ12の第3シャッター53がおろされ、排気装置60の作動によって中間チャンバ12内部のガスが排気される。排気装置60は中間チャンバ12の第2排気口46に連結された真空ポンプと吸引器および送風機のうちいずれか一つで構成することができる。
【0049】
中間チャンバ12は前半部チャンバ11および後半部チャンバ13より小さい内部体積を有し、短時間に円滑な排気が行われる。中間チャンバ12は耐火匣鉢22の外側に発散するガスの流れと耐火匣鉢22の中に閉じ込められているガスの流れをすべて効果的に排気させる。
【0050】
中間チャンバ12内部のガスが排気された後に、中間チャンバ12の第3給気ノズル44および第4給気ノズル45を介して中間チャンバ12の内部にドライエアーまたは酸素が供給される。これにより中間チャンバ12の内部は新たなガスの雰囲気に転換される。
【0051】
第4段階(S40)において、中間チャンバ12の第4シャッター54が開放され、中間チャンバ12の正極材が後半部チャンバ13に移送される。正極材は後半部チャンバ13において温度維持区間A30を経て焼成し、冷却区間A40と常温冷却および排出区間A50を経て排出される。
【0052】
昇温区間A20で発生したガス、特にCOは中間チャンバ12の排気によって後半部チャンバ13に伝達されず、後半部チャンバ13はきわめて低いCO分圧を有する。したがって、温度維持区間A30を含む後半部チャンバ13において正極材の反応率を高めて残留リチウムを減少させて正極材の製造品質を高めることができる。
【0053】
上述では本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付する図面の範囲内で多様に変形して実施することができ、これもまた本発明の範囲に属するのは当然である。
【符号の説明】
【0054】
100 焼成炉
10 チャンバ
11 前半部チャンバ
12 中間チャンバ
13 後半部チャンバ
21 ヒーター
22 耐火匣鉢
30 移送部
51 第1シャッター
52 第2シャッター
53 第3シャッター
54 第4シャッター
60 排気装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6