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特許7253069希土類永久磁石材料及びその原料組成物、製造方法、並びに応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】希土類永久磁石材料及びその原料組成物、製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20230329BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230329BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230329BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20230329BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F3/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021552778
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2020103430
(87)【国際公開番号】W WO2021017967
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】201910701203.6
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】藍琴
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】謝志興
(72)【発明者】
【氏名】牟維国
(72)【発明者】
【氏名】黄清芳
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2016/208508(JP,A1)
【文献】特表2019-511133(JP,A)
【文献】再公表特許第2005/123974(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
C22C 1/04- 1/05
C22C 5/00-25/00
C22C 27/00-28/00
C22C 30/00-30/06
C22C 33/02
C22C 35/00-45/10
H01F 1/00- 1/117
H01F 1/40- 1/42
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B系永久磁石材料であって、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.0~32.0wt.%、且つRにはRHが含まれ、前記RHの含有量が1wt.%より大きい、
Cu:0.30~0.50wt.%、但し0.50wt.%を含まない、
Co:0.10~1.0wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
B:0.92~0.98wt.%、
残部:Feおよび不可避の不純物、
ここで、前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbが含まれ、
前記R-T-B系永久磁石材料は、磁石の粒界に、組成比が(T1-a-b-Ti-Cu-Rである高Cu高Ti相が存在しており、
ここで、TはFeとCoを表し、1.5b<a<2b、70at%<x<82at%、18at%<y<30at%であり、at%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における各元素の原子含有量が占める割合を意味する、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料。
【請求項2】
前記Rの含有量は、29.5~32.0wt.%であり、及び/又は、
前記RHにはDyがさらに含まれ、及び/又は、
前記RHの含有量は、1.05~1.30wt.%であり、及び/又は、
前記Cuの含有量は、0.30~0.45wt.%であり、及び/又は、
前記Coの含有量は、0.10wt.%または0.50~1.0wt.%であり、及び/又は、
前記Tiの含有量は、0.05wt.%または0.10~0.20wt.%であり、及び/又は、
前記Bの含有量は、0.92~0.96wt.%または0.94~0.98wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項3】
前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
R:29.5~32.0wt.%、前記RHの含有量が1.05~1.3wt.%である、
Cu:0.30~0.45wt.%、
Co:0.50~1.0wt.%、
Ti:0.10~0.20wt.%、
B:0.92~0.96wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類永久磁石材料及びその原料組成物、製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
R-T-B系希土類永久磁石材料は、現代工業および電子技術において、例えば電子計算機、自動化制御システム、電動機および発電機、核磁気共鳴イメージ計、音響機器、材料縁切り装置、通信機器などの様々な分野で広く利用されている。新たな応用分野の開拓及び応用条件の苛酷化に伴い、高い保磁力を有する製品に対する需要はますます多くなっている。
【0003】
従来、一般的に、R-T-B系希土類永久磁石材料の成分にDy、Tbなどの中重希土類を添加することで、磁石の保磁力(intrinsic coercivity、Hcjと略称する)を向上することができるが、中重希土類が主相に入り、一部のPr、Ndを置換してDyFeBまたはTbFeBが形成され、DyFeBまたはTbFeBの飽和磁化がNdFeBより著しく低いため、残留磁束密度(remanence、Brと略称する)が低下し、主相におけるDy、Tbの利用率が低く、また、Dy、Tbが非常に高価であるため、製品コストが著しく上昇し、資源貯蔵量に乏しいDy、Tb重希土類元素の総合的な活用に不利であった。
【0004】
ほかの資源的に豊富な元素を用いて磁性体のHcjを高めることができることも検討されており、例えば、R-T-B系希土類永久磁石材料の成分にCu、Ga(R-T13-Ga相を形成する)やAlなどの原料を添加することで磁性体のHcjを高めることが検討されているが、これらの元素は液相融点が低く、結晶粒の異常成長を防止するために、焼結温度が低いとされ、焼結緻密性が悪く、永久磁石材料のBrが低くなってしまう。さらに、例えば、R-T-B系希土類永久磁石材料の成分にTiを添加して磁性体のHcjを高めることができるが、この成分が高融点のTiリッチ相を形成しやすいため、粒界拡散効果が悪くなってしまい、かえって磁性体のHcjの向上に不利である。
【0005】
これから分かるように、従来の成分では、BrとHcjとは通常トレードオフの関係にあり、Hcjの上昇はBrの一部を犠牲にし、両者を同時に高く維持することは困難である。従って、Hcjが高く、Brが高いR-T-B系希土類永久磁石材料を如何に得ることは、本分野において解決しようとする課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のR-T-B系希土類永久磁石材料におけるBr及びHcjの同時改善が難しいという欠点を解決し、希土類永久磁石材料及びその原料組成物、製造方法、並びに応用を提供することである。本発明におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れ、Br≧14.30kGs、Hcj≧24.1kOeであり、BrとHcjの同時改善を達成している。通常の成分に比べ、本発明におけるR-T-B系永久磁石材料では、0.30wt.%以上のCuと0.05~0.20wt.%のTiを添加し、一部のTiが粒界に入り込んで高CuリッチTi相を形成し、これらの相が粒界拡散において完全に溶解でき、粒界拡散に有利であるので、Hcjが大幅に向上される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.0~32.0wt.%、且つRにはRHが含まれ、前記RHの含有量が1wt.%より大きい、
Cu:0.30~0.50wt.%、但し0.50wt.%を含まない、
Co:0.10~1.0wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
B:0.92~0.98wt.%、
残部:Feおよび不可避の不純物、
ここで、前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbが含まれる。
【0008】
本発明において、前記Rには、本分野における通常の希土類元素、例えばPrがさらに含まれていてもよい。
【0009】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは29.5~32.0wt.%、例えば30.05wt.%、31.05wt.%、31.06wt.%、31.07wt.%、31.3wt.%、又は31.56wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0010】
本発明において、前記RHには、本分野における通常の重希土類元素、例えばDyがさらに含まれていてもよい。
【0011】
本発明において、前記RHの含有量は、好ましくは1.05~1.30wt.%、例えば1.05wt.%、1.06wt.%、1.07wt.%、又は1.30wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0012】
前記RHにはDyがさらに含まれる場合、好ましくは、前記Tbの含有量が0.5wt.%であり、前記Dyの含有量が0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0013】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは0.30~0.45wt.%、例えば0.30wt.%、0.35wt.%、0.40wt.%、又は0.45wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0014】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは0.10wt.%または0.50~1.0wt.%、例えば0.50wt.%、0.80wt.%、又は1.0wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0015】
本発明において、前記Tiの含有量は、好ましくは0.05wt.%または0.10~0.20wt.%、例えば0.10wt.%、0.15wt.%、又は0.20wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0016】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは0.92~0.96wt.%または0.94~0.98wt.%、例えば0.92wt.%、0.94wt.%、0.95wt.%、又は0.98wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0017】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
R:29.5~32.0wt.%、前記RHの含有量が1.05~1.3wt.%である、
Cu:0.30~0.45wt.%、
Co:0.50~1.0wt.%、
Ti:0.10~0.20wt.%、
B:0.92~0.96wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0018】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが29.0wt.%、Tbが1.05wt.%、Cuが0.30wt.%、Coが0.10wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0019】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.05wt.%、Cuが0.30wt.%、Coが0.10wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0020】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Tbが1.06wt.%、Cuが0.30wt.%、Coが0.10wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0021】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.05wt.%、Cuが0.35wt.%、Coが0.50wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0022】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.07wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが0.50wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0023】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.06wt.%、Cuが0.45wt.%、Coが0.50wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0024】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.06wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが0.8wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0025】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.07wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0026】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.06wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0027】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.05wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0028】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.05wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.20wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0029】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.06wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.95wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0030】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが1.05wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.98wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0031】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:PrNdが30wt.%、Tbが0.5wt.%、Dyが0.8wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが0.5wt.%、Tiが0.1wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0032】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料は、磁石の粒界に、組成比が(T1-a-b-Ti-Cu-Rである高Cu高Ti相が存在する。ここで、TはFeとCoを表し、1.5b<a<2b、70at%<x<82at%、18at%<y<30at%である。
【0033】
本発明において、at%とは、原子パーセントを意味し、具体的には、前記R-T-B系永久磁石材料における各種の元素の原子含有量が占める割合を意味する。
【0034】
ここで、前記aは、2.50~3.0at%であってもよい。
【0035】
ここで、前記yは、20.0~23.0at%であってもよい。
【0036】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、質量百分率で下記の成分を含み
R:29.0~31.5wt.%、且つRにはRHが含まれ、前記RHの含有量が0.1~0.9wt.%である、
Cu:0.30~0.50wt.%、但し0.50wt.%を含まない、
Co:0.10~1.0wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
B:0.92~0.98wt.%、
残部:Feおよび不可避の不純物、
ここで、前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素である。
【0037】
本発明において、前記Rには、本分野における通常の希土類元素、例えばPrがさらに含まれていてもよい。
【0038】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは29.5~31.0wt.%、例えば29.5wt.%、30.5wt.%、30.8wt.%、又は31.0wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0039】
本発明において、前記RHは、本分野における通常の重希土類元素、例えばTb及び/又はDyであってもよい。
【0040】
本発明において、前記RHの含有量は、好ましくは0.5~0.9wt.%、例えば0.5wt.%又は0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0041】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは0.30~0.45wt.%、例えば0.30wt.%、0.35wt.%、0.40wt.%、又は0.45wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0042】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは0.10wt.%又は0.50~1.0wt.%、例えば0.50wt.%、0.80wt.%、又は1.0wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0043】
本発明において、前記Tiの含有量は、好ましくは0.05wt.%又は0.10~0.20wt.%、例えば0.10wt.%、0.15wt.%、又は0.20wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0044】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは0.92~0.96wt.%又は0.94~0.98wt.%、例えば0.92wt.%、0.94wt.%、0.95wt.%、又は0.98wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0045】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物には、下記の成分が含まれ、
R:29.5~31.0wt.%、RH:0.5~0.9wt.%、
Cu:0.30~0.45wt.%、
Co:0.50~1.0wt.%、
Ti:0.10~0.20wt.%、
B:0.92~0.96wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0046】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが29.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.30wt.%、Coが0.10wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0047】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.30wt.%、Coが0.10wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0048】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.30wt.%、Coが0.10wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0049】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.35wt.%、Coが0.50wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0050】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが0.50wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0051】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.45wt.%、Coが0.50wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0052】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが0.8wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0053】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0054】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0055】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0056】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.20wt.%、Bが0.94wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0057】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.95wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0058】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.0wt.%、Tbが0.50wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが1.0wt.%、Tiが0.10wt.%、Bが0.98wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0059】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:PrNdが30wt.%、Dyが0.8wt.%、Cuが0.40wt.%、Coが0.5wt.%、Tiが0.1wt.%、Bが0.92wt.%、残部がFeであり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0060】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料の製造方法は、下記のステップを含み:前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結および粒界拡散処理して、前記R-T-B系永久磁石材料を得ており、前記粒界拡散処理における重希土類元素は、Tbを含んでいる。
【0061】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を本分野における通常の方法で製造することができ、例えば、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬すれば良い。前記溶解炉の真空度は、5×10-2Paであってもよい。前記溶解製錬の温度は、1500℃以下であってもよい。
【0062】
本発明において、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造工程であることができ、例えば、Arガス雰囲気(例えば5.5×10PaのArガス雰囲気下)において、10℃/秒~10℃/秒の速度で冷却すればよい。
【0063】
本発明において、前記破砕の工程は、本分野における通常の破砕工程であることができ、例えば、水素吸収、脱水素、冷却処理を経ていればよい。
【0064】
ここで、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.15MPaの条件下で行うことができる。
【0065】
ここで、前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができる。
【0066】
本発明において、前記粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕工程であることができ、例えば、ジェットミル粉砕である。
【0067】
ここで、前記ジェットミル粉砕は、酸化ガス含有量が150ppm以下の窒素ガス雰囲気下で行うことができる。前記酸化ガスは、酸素または水分の含有量を意味する。
【0068】
ここで、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.38MPaとすることができる。
【0069】
ここで、前記ジェットミル粉砕の時間は、3時間とすることができる。
【0070】
ここで、前記粉砕を行った後、本分野における常套手段で潤滑剤を添加することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛を添加する。前記潤滑剤の添加量は、混合後の粉末重量の0.10~0.15%、例えば0.12%とすることができる。
【0071】
本発明において、前記成形の工程は、本分野における通常の成形工程であることができ、例えば、磁場成形法またはホットプレス熱間成形法である。
【0072】
本発明において、前記焼結の工程は、本分野における通常の焼結工程であることができ、例えば、真空条件下(例えば5×10-3Paの真空下)で、予熱、焼結、冷却を経ていればよい。
【0073】
ここで、前記予熱の温度は、300~600℃であってもよい。前記予熱の時間は、1~2hとすることができる。前記予熱は、300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間予熱することが好ましい。
【0074】
ここで、前記焼結の温度は、本分野における通常の焼結温度、例えば900℃~1100℃、さらには例えば1040℃とすることができる。
【0075】
ここで、前記焼結の時間は、本分野における通常の焼結時間、例えば2hとすることができる。
【0076】
ここで、前記冷却の前に、ガス圧が0.1MPaに達するようにArガスを導入することができる。
【0077】
本発明において、前記粒界拡散処理は、本分野における通常の工程で処理を行うことができ、例えば、前記R-T-B系永久磁石材料の表面に、Tbを含有する物質を蒸着、塗布、またはスパッタ付着させて、拡散熱処理すればよい。
【0078】
ここで、前記Tbを含有する物質は、Tb金属、Tbを含有する化合物または合金であってもよい。
【0079】
ここで、前記拡散熱処理の温度は、800~900℃、例えば850℃であってもよい。
【0080】
ここで、前記拡散熱処理の時間は、12~48h、例えば24hであってもよい。
【0081】
ここで、前記粒界拡散処理の後に、さらに熱処理を行うことができる。前記熱処理の温度は、450~550℃、例えば500℃とすることができる。前記熱処理の時間は、3hとすることができる。
【0082】
本発明は、前記方法で製造されたR-T-B系永久磁石材料も提供する。
【0083】
本発明は、前記R-T-B系永久磁石材料がモーターにおいて電子部品としての応用をも提供する。
【0084】
ここで、前記応用は、モーター回転数3000~7000rpm及び/又はモーター作動温度80~180℃のモーターにおいて電子部品としての応用であってもよいし、高回転モーター及び/又は家電製品での電子部品としての応用であってもよい。
【0085】
前記高回転モーターは、一般的に、回転数が10000r/minを超えるモーターを指す。
【0086】
前記家電製品は、インバータエアコンであってもよい。
【0087】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好適な実施例を得ることができる。
【0088】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0089】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
(1)本発明におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れ、Br≧14.30kGs、Hcj≧24.1kOeであり、BrとHcjの同時改善を達成した。
(2)通常の成分に比べ、本発明におけるR-T-B系永久磁石材料では、Cuを0.30wt.%以上、Tiを0.05~0.20wt.%添加し、一部のTiが粒界に入り込んで高CuリッチTi相を形成し、これらの相が粒界拡散において完全に溶解でき、粒界拡散に有利であるので、Hcjが大幅に向上される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1図1は、実施例7で作製した永久磁石材料をFE-EPMAで面走査することによって形成したNd、Cu、Ti分布図(左から右へ順に、Nd元素、Cu元素およびTi元素の濃度分布図であり、図示例は、異なる色が異なる濃度値に対応することを示す。)であり、そのうち、点1を主相、点2を高CuリッチTi相とする。
図2図2は、比較例3で作製した永久磁石材料FE-EPMAで面走査することによって形成したNd、Cu、Ti分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
【0092】
下記の実施例および比較例において、Nd、Tbの純度は99.8%、Fe-Bの純度は工業用グレード純度であり、純鉄の純度は工業用グレード純度であり、Co、Cu、Tiの純度は99.9%であった。
【0093】
実施例および比較例におけるR-T-B系永久磁石材料の成分は、表1に示す通りである。表1および後述する表3におけるwt.%は、前記R-T-B系永久磁石材料における各原料の質量百分率を意味し、「/」は、当該元素が添加されていないことを示す。
【0094】
表1 R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の成分(wt.%)
【0095】
R-T-B系永久磁石材料の製造方法は、以下の通りである。
【0096】
(1)溶解製錬の工程:表1に示す成分に従って、調製した原料をアルミナ製の坩堝に入れ、高周波真空誘導溶解炉において5×10-2Paの真空中で1500℃以下の温度で真空溶解製錬した。
【0097】
(2)鋳造の工程:真空溶解製錬した後の溶解炉にArガスを導入し、気圧を5.5万Paにして鋳造し、10℃/秒~10℃/秒の冷却速度で急冷合金を得た。
【0098】
(3)水素破砕工程:急冷合金を置く水素破砕用炉を室温で真空引きした後、純度99.9%の水素ガスを水素破砕用炉内に導入して水素ガス圧力を0.15MPaに維持する。水素吸収を十分に行った後、真空引きしながら昇温し、十分に脱水素する。その後、冷却し、水素破砕した粉末を取り出す。
【0099】
(4)ジェットミル工程:水素破砕した粉末を、酸化ガス含有量150ppm以下の窒素ガス雰囲気下及び粉砕室圧力0.38MPaの条件下で3時間のジェットミル粉砕し、微粉を得る。酸化ガスは、酸素または水分を指す。
【0100】
(5)ジェットミル粉砕した後の粉末にステアリン酸亜鉛を添加し、ステアリン酸亜鉛の添加量を混合後の粉末重量の0.12%として、Vブレンダーで十分に混合した。
【0101】
(6)磁場成形の工程:上記のステアリン酸亜鉛を添加した粉末を、直角配向型の磁場成形機を用いて、1.6Tの配向磁場中及び0.35ton/cmの成形圧力で、一辺が25mmの立方体に一次成形し、一次成形後、0.2Tの磁場で減磁する。一次成形後の成形体を空気に触れさせないように、それをシールし、その後、二次成形機(静水圧成形機)を用いて、1.3ton/cmの圧力で二次成形を行う。
【0102】
(7)焼結の工程:各成形体を焼結炉に搬送して焼結し、5×10-3Paの真空下かつ300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間を保持し、その後、1040℃の温度で2時間焼結してから、Arガスを導入して0.1MPaまでガス圧を到達させた後、室温まで冷却した。
【0103】
(8)粒界拡散処理の工程:各組の焼結体を直径20mm、厚さ5mmの磁石に加工し、厚さ方向を磁場配向方向とし、表面を清浄化した後、それぞれTbフッ化物により調製された原料を用いて、磁石に全面噴霧してコーティングし、コーティングした磁石を乾燥し、高純度のArガス雰囲気で、磁石の表面にTb元素の金属をスパッタ付着させ、850℃の温度で24時間拡散熱処理する。室温まで冷却された。
【0104】
(9)熱処理の工程:焼結体を高純度のArガスにおいて500℃で3時間の熱処理を行った後、室温まで冷却して取り出した。
【0105】
[効果実施例]
実施例1-14、比較例1-11で得られたR-T-B系永久磁石材料の磁気特性および成分を測定し、その磁性体の結晶構造を電界放出電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)で観察した。
【0106】
(1)磁気特性の評価:中国計量院のNIM-10000H型BH大塊希土類永久磁石非破壊測定システムを用いて磁気特性検出を行った。以下の表2は、磁気特性検出の結果を示している。表2において、「Br」が残留磁束密度であり、「Hcj」が保磁力であり、「SQ」が角形比(squareness ratio)であり、「BHmax」が最大エネルギー積(maximum energy product)である。
【0107】
表2
【0108】
表2から分かるように、
(1)本願におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れ、Br≧14.30kGs、Hcj≧24.1kOeであり、BrとHcjの同時改善を達成した(実施例1-14)。
(2)本願の成分に基づいて、原料R、Cu、Co、Ti及びBの使用量が変化し、R-T-B永久磁石材料の性能が著しく低下した(比較例1-6)。
(3)発明者は研究過程において、Cu及び高融点のTiを比較的大量に添加し、一部のTiが粒界に入り込んで高Cu高Ti相を形成することは、R-T-B系永久磁石材料の性能の向上に有利であるが、性質が類似する元素はいずれもこの相を形成できるわけではなく、例えば、GaおよびAlの添加(比較例7)、さらに例えばZr、Mo、Wなどの高融点金属の添加(比較例8-10)は、いずれも本願におけるR-T-B系永久磁石材料を得ることができないことを発見した。
【0109】
(2)成分の測定:各成分に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて測定した。以下の表3に示すのは、成分検出の結果である。
【0110】
表3、成分検出の結果(wt.%)
【0111】
(3)FE-EPMAによる検出:永久磁石材料の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)で検出した。まず、FE-EPMAで面走査することにより、永久磁石材料におけるNd、Cu、Tiなどの元素の分布を特定し、その後、FE-EPMAで単一点(シングルポイント)定量分析することにより、キー相(key phase)におけるCu、Tiなどの元素の含有量を特定する。試験条件は、加速電圧15kv、プローブビーム50nAであった。
【0112】
実施例7で得られた永久磁石材料は、FE-EPMAによって検出され、その結果は、以下の表4および図1に示す通りである。
【0113】
ここで、図1は、Nd、Cu、Tiの濃度分布図である。図1から分かるように、Tiは主相内に分散的に分布しているほか、粒界においてTiリッチ相が存在している。Tiリッチ相においても、Cuの含有量が主相よりも高い。図1において、点1が主相、点2がTiリッチ相である。
【0114】
表4は、図1における当該Tiリッチ相をFE-EPMAで単一点定量分析した結果である。表4から分かるように、当該Tiリッチ相では、Tiの含有量がCuの含有量の1.8倍原子比であり、希土類の量が約21.3at%であった。同様に、他の実施例についてFE-EPMAによる検出を行ったところ、いずれにおいても粒界に存在している高Cu高Ti相が観測され、Tiの含有量がCuの含有量の1.5~2倍原子比であり、希土類の総量が18~30at%(at%は、原子パーセントを指し、具体的には、各種の元素の原子含有量が占める割合を意味する。)である。
【0115】
表4
【0116】
比較例3についてFE-EPMAによる検出を行ったところ、その結果は図2に示すように、Nd、Cu、Tiの濃度分布図をそれぞれ表す。結果から分かるように、Tiは主相内に分散的に分布しており、粒界において高Cu高Ti相が形成されていない。ほかの比較例について検出を行ったところ、永久磁石材料の粒界において高Cu高Ti相が観測されなかった。
図1
図2