IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7253070R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用
<>
  • 特許-R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用 図1
  • 特許-R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20230329BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230329BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230329BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20230329BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230329BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20230329BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20230329BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H01F1/057
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F3/00 F
B22F1/00 Y
B22F3/24 K
B22F9/04 E
B22F9/04 C
B22F9/04 D
C22C33/02 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021552781
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2020100585
(87)【国際公開番号】W WO2021109568
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】201911224209.5
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】藍琴
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】陳大崑
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210893(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208508(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
C22C 38/00
B22F 3/00
B22F 1/00
B22F 3/24
B22F 9/04
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B系永久磁石材料Iであって、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.0~32.5wt.%、かつRにはRHが含まれ、
Cu:0.30~0.50wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
B:0.85~1.05wt.%、
C:0.1~0.3wt.%、
Fe:66~68wt.%、
O:0~0.15wt.%、但し、0が含まれなく、
M:0~3wt.%、前記Mの種類は、CoまたはGaであり、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbおよび/またはDyが含まれ、
前記R-T-B系永久磁石材料Iは、磁石の粒界にCu-Ti-C粒界相を有し、前記Cu-Ti-C粒界相は拡散工程中に形成される、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料I。
【請求項2】
前記Oの含有量は、0.04~0.12wt.%の範囲であり、
および/または、前記MがCoを含む場合、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲であり、前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量は、0.2~0.5wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料I。
【請求項3】
前記Rには、Pr元素がさらに含まれ、
および/または、前記Rの含有量は、30~32.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記RHの含有量は、0.5~1.2wt.%の範囲であり、
および/または、前記Cuの含有量は、0.3~0.45wt.%または0.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記Tiの含有量は、0.1wt.%、0.15wt.%、または0.2wt.%であり、
および/または、前記Bの含有量は、0.9~1.0wt.%の範囲であり、
および/または、前記Cの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料I。
【請求項4】
R-T-B系永久磁石材料Iの製造方法であって、R-T-B系永久磁石材料IIを粒界拡散処理し、
前記粒界拡散処理における重希土類元素には、Tbおよび/またはDyが含まれ、
前記R-T-B系永久磁石材料Iは、磁石の粒界にCu-Ti-C粒界相を有し、前記Cu-Ti-C粒界相は拡散工程中に形成され、
前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記のステップで製造され:前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結し、
前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、質量百分率で、下記の成分を含み:R:29.0~32wt.%、RにはRHが含まれ、前記RHの含有量は0~0.5wt.%であり、Cu:0.30~0.50wt.%、Ti:0.05~0.20wt.%、B:0.85~1.05wt.%、Fe:66~68wt.%、M:0~3wt.%、前記Mの種類は、CoまたはGaであり、前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbまたはDyが含まれ、前記粉砕の工程は、酸化ガス含有量が100ppm以下の雰囲気下で行う、
または、
前記R-T-B系永久磁石材料IIは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.0~32wt.%、かつRにはRHが含まれ、前記RHの含有量が0~0.5wt.%であり、
Cu:0.30~0.50wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
C:0.1~0.3wt.%、
B:0.85~1.05wt.%、
O:0~0.15wt.%、但し、0が含まれなく、
M:0~3wt.%、前記Mの種類は、CoまたはGaであり、
Fe:66~68wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbまたはDyが含まれる、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料Iの製造方法。
【請求項5】
前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における前記RにはPr元素がさらに含まれる、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料Iの製造方法。
【請求項6】
前記Rの含有量は、29.5~31.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記Cu含有量は、0.3~0.45wt.%または0.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記Tiの含有量は、0.1wt.%、0.15wt.%、または0.2wt.%であり、
および/または、前記Bの含有量は、0.9~1.0wt.%の範囲であり、
および/または、前記Cの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲であり、
および/または、前記MがCoを含む場合、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲であり、前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量は、0.2~0.5wt.%の範囲であり、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料Iの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石材料は、電子部品をサポートするための重要な材料として開発され、開発の方向は、高磁気エネルギー積と高保磁力の方向に向かう。R-T-B系永久磁石材料(Rは希土類元素の少なくとも1つである)は、永久磁石の中で最高性能の磁石として知られ、ハードディスクドライブのボイスコイルモーター(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モーター、産業機器用モーターなどのさまざまなモーター及び家電製品に使用される。
【0003】
現在、R-T-B系永久磁石材料を製造する過程で、原材料の純度が不十分であるため、一定量の炭素が導入される。そのうえ、NdFeB粉末は活性があり、流動性が低いため、酸化防止剤、潤滑剤、離型剤などの有機添加剤を添加する必要があり、一定量の炭素も導入される。従来の製造工程において、炭素は活性なNdリッチと容易に結合してネオジムカーバイドを形成し、磁石の保磁力(intrinsic coercivity、Hcjと略称する)を低下する。
【0004】
したがって、現在の技術的問題は、一方では合金中の炭素元素の含有量を減らす必要があり、他方では、製造工程または原料のせいで、一定量の炭素源を導入しなければならない。このような矛盾した客観的な技術的問題を克服するために、R-T-B系永久磁石材料の新しい成分が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のR-T-B系永久磁石材料における炭素元素によって引き起こされた磁石Hcjの低下という欠点を解決し、R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術考案を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0007】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.0~32.5wt.%、かつRにはRHが含まれ、
Cu:0.30~0.50wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
B:0.85~1.05wt.%、
C:0.1~0.3wt.%、
Fe:66~68wt.%、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbおよび/またはDyが含まれる。
【0008】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、磁石の粒界にCu-Ti-C粒界相が存在する。
【0009】
本発明において、前記Rには、当技術分野における従来の希土類元素が含まれてもよく、例えば、Prが含まれる。
【0010】
本発明において、前記Rの含有量は、30~32.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、30.1wt.%、30.6wt.%、31.1wt.%、31.6wt.%または32.1wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0011】
本発明において、前記RHの含有量は、0.5~1.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.6wt.%、または1.10wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0012】
本発明において、前記Cuの含有量は、0.3~0.45wt.%または0.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%または0.45wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0013】
本発明において、前記Tiの含有量は、0.05~0.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.1wt.%、0.15wt.%、または0.2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0014】
本発明において、前記Bの含有量は、0.9~1.0wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.9wt.%、0.92wt.%、0.94wt.%、0.96wt.%、0.98wt.%または1wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0015】
本発明において、前記Cの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.12wt.%、0.14wt.%、0.16wt.%または0.18wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率でO0~0.15wt.%の成分をさらに含み、但し、0が含まれなく、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0017】
ここで、前記Oの含有量は、0.04~0.12wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.05wt.%、0.06wt.%、0.08wt.%、0.1wt.%、または0.12wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0018】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で、M0~3wt.%の成分をさらに含み、前記Mは、Co、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Ag、Au、Bi、MnおよびCrの少なくとも1つの元素を含む。
【0019】
ここで、前記Mの種類は、好ましくはCoまたはGaである。
【0020】
ここで、前記MがCoを含む場合、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲であることができ、例えば、0.6wt.%、0.7wt.%、1.0wt.%、または1.2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0021】
ここで、前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量は、0.2~0.5wt.%の範囲であることができ、例えば、0.3wt.%または0.4wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0022】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:
R:30~32.5wt.%、前記RHの含有量は0.5~1.2wt.%であり、
Cu:0.3~0.45wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
B:0.9~1wt.%、
C:0.1~0.2wt.%、
O:0.04~0.12wt.%、
Co:0.5~1.5wt.%、残部:Feおよび不可避的不純物、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0023】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:
R:30~32.5wt.%、前記RHの含有量は0.5~1.2wt.%であり、
Cu:0.3~0.45wt.%、
Ti:0.05~0.2wt.%、
B:0.9~1wt.%、
C:0.1~0.2wt.%、
O:0.04~0.12wt.%、
Co:0.5~1.5wt.%、
Ga:0.2~0.5wt.%、残部:Feおよび不可避的不純物、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0024】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが31wt.%、Tbが0.6wt.%、Cuが0.5wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.86wt.%、Cが0.1wt.%、Oが0.05wt.%、Coが0.5wt.%、およびGaが0.3wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0025】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Tbが0.6wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.9wt.%、Cが0.14wt.%、Oが0.08wt.%、Coが0.6wt.%、およびGaが0.4wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0026】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが31.5wt.%、Tbが0.6wt.%、Cuが0.35wt.%、Tiが0.1wt.%、Bが0.92wt.%、Cが0.16wt.%、Oが0.1wt.%、Coが0.7wt.%、およびGaが0.5wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0027】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Tbが0.6wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.92wt.%、Cが0.12wt.%、Oが0.13wt.%、Coが1wt.%、およびGaが0.5wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0028】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:PrNdが30.5wt.%、Tbが0.6wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.9wt.%、Cが0.1wt.%、Oが0.08wt.%、Coが0.5wt.%、およびGaが0.4wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0029】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Dyが0.6wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.9wt.%、Cが0.1wt.%、Oが0.08wt.%、Coが0.5wt.%、およびGaが0.4wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0030】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが29.5wt.%、Tbが1.1wt.%、Cuが0.3wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.94wt.%、Cが0.12wt.%、Oが0.08wt.%、およびCoが1wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0031】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが30wt.%、Tbが1.1wt.%、Cuが0.45wt.%、Tiが0.2wt.%、Bが0.96wt.%、Cが0.18wt.%、Oが0.06wt.%、およびCoが1wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0032】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが29wt.%、Tbが1.1wt.%、Cuが0.5wt.%、Tiが0.1wt.%、Bが0.98wt.%、Cが0.14wt.%、Oが0.12wt.%、およびCoが1.2wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0033】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、下記の成分を含み:Ndが29wt.%、Tbが1.1wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが1wt.%、Cが0.2wt.%、Oが0.15wt.%、およびCoが1wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0034】
本発明によりさらに提供されるR-T-B系永久磁石材料IIは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.0~32wt.%、かつRにはRHが含まれ、前記RHの含有量が0~0.5wt.%であり、
Cu:0.30~0.50wt.%、
Ti:0.05~0.20wt.%、
C:0.1~0.3wt.%、
B:0.85~1.05wt.%、
Fe:66~68wt.%、
前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbまたはDyが含まれる。
【0035】
本発明において、前記Rには、当技術分野における従来の希土類元素が含まれてもよく、例えば、Prが含まれる。
【0036】
本発明において、前記Rの含有量は、29.5~31.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、29.5wt.%、30wt.%、30.5wt.%、31wt.%または31.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0037】
本発明において、前記Cu含有量は、0.3~0.45wt.%または0.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%または0.45wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0038】
本発明において、前記Tiの含有量は、0.05~0.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.1wt.%、0.15wt.%、または0.2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。。
【0039】
本発明において、前記Bの含有量は、0.9~1.0wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.9wt.%、0.92wt.%、0.94wt.%、0.96wt.%、0.98wt.%、または1wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0040】
本発明において、前記Cの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.12wt.%、0.14wt.%、0.16wt.%または0.18wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0041】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、質量百分率でO0~0.15wt.%の成分をさらに含み、但し、0が含まれなく、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0042】
ここで、前記Oの含有量は、0.04~0.12wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.05wt.%、0.06wt.%、0.08wt.%、0.1wt.%、または0.12wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0043】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、質量百分率で、M0~3wt.%の成分をさらに含み、前記Mは、Co、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Ag、Au、Bi、MnおよびCrの少なくとも1つの元素を含む。
【0044】
前記MがCoを含む場合、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲であることができ、例えば、0.6wt.%、0.7wt.%、1.0wt.%、または1.2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0045】
前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量は、0.2~0.5wt.%の範囲であることができ、例えば、0.3wt.%または0.4wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0046】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:
R:29.5~31.5wt.%、かつRにはRHが含まれ、前記RHの含有量は0~0.5wt.%であり、
Cu:0.3~0.45wt.%、
Ti:0.05~0.2wt.%、
B:0.9~1wt.%、
C:0.1~0.2wt.%、
前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、
前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbまたはDyが含まれ、
残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0047】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが31wt.%、Cuが0.5wt.%、Tiが0.05wt.%、Bが0.86wt.%、Cが0.1wt.%、Oが0.05wt.%、Coが0.5wt.%、およびGaが0.3wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0048】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.9wt.%、Cが0.14wt.%、Oが0.08wt.%、Coが0.6wt.%、およびGaが0.4wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0049】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが31.5wt.%、Cuが0.35wt.%、Tiが0.1wt.%、Bが0.92wt.%、Cが0.16wt.%、Oが0.1wt.%、Coが0.7wt.%、およびGaが0.5wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0050】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.92wt.%、Cが0.12wt.%、Oが0.13wt.%、Coが1wt.%、およびGaが0.5wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0051】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:PrNdが30.5wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.9wt.%、Cが0.1wt.%、Oが0.08wt.%、Coが0.5wt.%、およびGaが0.4wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0052】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.9wt.%、Cが0.1wt.%、Oが0.08wt.%、Coが0.5wt.%、およびGaが0.4wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0053】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが29.5wt.%、Tbが0.5wt.%、Cuが0.3wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが0.94wt.%、Cが0.12wt.%、Oが0.08wt.%、およびCoが1wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0054】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが30wt.%、Tbが0.5wt.%、Cuが0.45wt.%、Tiが0.2wt.%、Bが0.96wt.%、Cが0.18wt.%、Oが0.06wt.%、およびCoが1wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0055】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが29wt.%、Tbが0.5wt.%、Cuが0.5wt.%、Tiが0.1wt.%、Bが0.98wt.%、Cが0.14wt.%、Oが0.12wt.%、およびCoが1.2wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0056】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み:Ndが29wt.%、Tbが0.5wt.%、Cuが0.4wt.%、Tiが0.15wt.%、Bが1wt.%、Cが0.2wt.%、Oが0.15wt.%、およびCoが1wt.%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0057】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料IIの製造方法は、下記のステップを含み:前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結する。
【0058】
前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、質量百分率で、下記の成分を含み:R:29.0~32wt.%、RにはRHが含まれ、前記RHの含有量は0~0.5wt.%であり、Cu:0.30~0.50wt.%、Ti:0.05~0.20wt.%、B:0.85~1.05wt.%、Fe:66~68wt.%、前記Rは希土類元素であり、前記Rには少なくともNdが含まれ、前記RHは重希土類元素であり、前記RHには少なくともTbまたはDyが含まれる。
【0059】
ここで、前記Rには、当技術分野における従来の希土類元素が含まれてもよく、例えば、Prが含まれる。
【0060】
ここで、前記Rの含有量は、29.5~31.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、29.5wt.%、30wt.%、30.5wt.%、31wt.%、または31.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0061】
ここで、前記Cuの含有量は、0.3~0.45wt.%または0.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%または0.45wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0062】
ここで、前記Tiの含有量は、0.05~0.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.1wt.%、0.15wt.%、または0.2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0063】
ここで、前記Bの含有量は、0.9~1wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.9wt.%、0.92wt.%、0.94wt.%、0.96wt.%、0.98wt.%または1wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0064】
ここで、前記Cの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.12wt.%、0.14wt.%、0.16wt.%または0.18wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0065】
ここで、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、質量百分率で、以下の成分をさらに含み:Mが0~0.3wt.%であり、前記Mは、Co、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Ag、Au、Bi、MnおよびCrの少なくとも1つの元素を含み、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0066】
前記MがCoを含む場合、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲であることができ、例えば、0.6wt.%、0.7wt.%、1.0wt.%、または1.2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0067】
前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量は、0.2~0.5wt.%の範囲であることができ、例えば、0.3wt.%または0.4wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0068】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の溶融液を本分野における通常の方法で製造することができ、例えば、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬すれば良い。前記溶解炉の真空度は、5×10-2Paであってもよい。前記溶解製錬の温度は、1500℃以下であってもよい。
【0069】
本発明において、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造工程であることができ、例えば、Arガス雰囲気(例えば5.5×10PaのArガス雰囲気下)において、10℃/秒~10℃/秒の速度で冷却すればよい。
【0070】
本発明において、前記破砕の工程は、本分野における通常の破砕工程であることができ、例えば、水素吸収、脱水素、冷却処理を経ていればよい。
【0071】
ここで、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.15MPaの条件下で行うことができる。
【0072】
ここで、前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができる。
【0073】
本発明において、前記粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕工程であることができ、例えば、ジェットミル粉砕である。
【0074】
ここで、好ましくは、前記粉砕の工程は、酸化ガス含有量が100ppm以下の雰囲気下で行うことができる。
前記酸化ガスは、酸素または水分の含有量を意味する。
【0075】
ここで、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.38MPaとすることができる。
【0076】
ここで、前記ジェットミル粉砕の時間は、3時間とすることができる。
【0077】
ここで、前記粉砕を行った後、本分野における常套手段で潤滑剤を添加することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛を添加する。前記潤滑剤の添加量は、混合後の粉末重量の0.10~0.15%、例えば0.12%とすることができる。
【0078】
本発明において、前記成形の工程は、本分野における通常の成形工程であることができ、例えば、磁場成形法またはホットプレス熱間成形法である。
【0079】
本発明において、前記焼結の工程は、本分野における通常の焼結工程であることができ、例えば、真空条件下(例えば5×10-3Paの真空下)で、予熱、焼結、冷却を経ていればよい。
【0080】
ここで、前記予熱の温度は、300~600℃であってもよい。前記予熱の時間は、1~2hとすることができる。前記予熱は、300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間予熱することが好ましい。
【0081】
ここで、前記焼結の温度は、本分野における通常の焼結温度、例えば900℃~1100℃、さらには例えば1040℃とすることができる。
【0082】
ここで、前記焼結の時間は、本分野における通常の焼結時間、例えば2hとすることができる。
【0083】
ここで、前記冷却の前に、ガス圧が0.1MPaに達するようにArガスを導入することができる。
【0084】
本発明は、前記方法で製造されたR-T-B系永久磁石材料IIも提供する。
【0085】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料Iの製造方法は、前記R-T-B系永久磁石材料IIを粒界拡散処理すればよい。
前記粒界拡散処理における重希土類元素は、Tbおよび/またはDyを含んでいる。
【0086】
本発明において、前記粒界拡散処理は、本分野における通常の工程で処理を行うことができ、例えば、前記R-T-B系永久磁石材料の表面に、Tbを含有する物質又はDyを含有する物質を蒸着、塗布、またはスパッタ付着させて、拡散熱処理すればよい。
【0087】
ここで、前記Tb又はDyを含有する物質は、Tb又はDy金属、Tb又はDyを含有する化合物または合金であってもよい。
【0088】
ここで、前記拡散熱処理の温度は、800~900℃、例えば850℃であってもよい。
【0089】
ここで、前記拡散熱処理の時間は、12~48h、例えば24hであってもよい。
【0090】
ここで、前記粒界拡散処理の後に、さらに熱処理を行うことができる。前記熱処理の温度は、450~550℃、例えば500℃とすることができる。前記熱処理の時間は、3hとすることができる。
【0091】
本発明は、前記方法で製造されたR-T-B系永久磁石材料Iも提供する。
【0092】
本発明は、前記R-T-B系永久磁石材料が電子部品としての応用も提供する。
【0093】
ここで、前記電子部品は、モーターにおける電子部品などの当技術分野の従来型であってもよい。
【0094】
ここで、R-T-B系永久磁石材料は、上記R-T-B系永久磁石材料Iおよび/またはR-T-B系永久磁石材料IIであってもよい。
【0095】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0096】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
(1)本発明におけるR-T-B系永久磁石材料Iは、Cu-Ti-C粒界相を含み、より高い炭素含有量を可能にし、炭素含有量に対して追加的な制御がなく、生産制御に役立つ。
(2)Cu-Ti-C粒界相は拡散工程中に形成され、Nd-Cの形成を抑制し、そのうえ、拡散チャネルを増やし、拡散工程においてHcjの向上を改善し、好ましい実施形態におけるTb拡散によってHcjは1162kA/mを増加し、Dy拡散によってHcjは883kA/mを増加する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1図1は、実施例2で作製したR-T-B系永久磁石材料をFE-EPMAで面走査することによって形成したNd、Cu、Ti、C分布図であり、ここで、点1はCu-Ti-C相である。
図2図2は、比較例2で作製したR-T-B系永久磁石材料をFE-EPMAで面走査することによって形成したNd、Cu、Ti、C分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。以下の表において、wt.%とは、成分が前記NdFeB磁石材料の原料組成物の総質量における質量百分率を意味し、「/」は、当該元素が添加されていないことを示し、「Br」は残留磁束密度(remanence)であり、「Hcj」は保磁力である。
【0099】
実施例および比較例におけるR-T-B系永久磁石材料IIの原料成分を表1に示す。
【0100】
表1 R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の成分と含有量(wt.%)
【0101】
【0102】
表2 R-T-B系永久磁石材料IIの成分と含有量(wt.%)
【0103】
【0104】
実施例1~5と7~10、および比較例1~9のR-T-B系永久磁石材料の製造方法は、以下の通りである。
【0105】
(1)溶解製錬の工程:表1に示す成分に従って、調製した原料をアルミナ製の坩堝に入れ、高周波真空誘導溶解炉において5×10-2Paの真空中で1500℃以下の温度で真空溶解製錬した。
【0106】
(2)鋳造の工程:真空溶解製錬した後の溶解炉にArガスを導入し、気圧を5.5万Paにして鋳造し、10℃/秒~10℃/秒の冷却速度で急冷合金を得た。
【0107】
(3)水素破砕工程:急冷合金を置く水素化粉砕用炉を室温で真空引きした後、純度99.9%の水素ガスを水素破砕用炉内に導入して水素ガス圧力を0.15MPaに維持する。水素吸収を十分に行った後、真空引きしながら昇温し、十分に脱水素する。その後、冷却し、水素破砕した粉末を取り出す。
【0108】
(4)ジェットミル工程:水素破砕した粉末を、酸化ガス含有量100ppm以下の窒素ガス雰囲気下及び粉砕室圧力0.38MPaの条件下で3時間のジェットミル粉砕し、微粉を得る。酸化ガスは、酸素または水分を指す。
【0109】
(5)ジェットミル粉砕した後の粉末にステアリン酸亜鉛を添加し、ステアリン酸亜鉛の添加量を混合後の粉末重量の0.12%として、Vブレンダーで十分に混合した。
【0110】
(6)磁場成形の工程:上記のステアリン酸亜鉛を添加した粉末を、直角配向型の磁場成形機を用いて、1.6Tの配向磁場中及び0.35ton/cmの成形圧力で、一辺が25mmの立方体に一次成形し、一次成形後、0.2Tの磁場で減磁する。一次成形後の成形体を空気に触れさせないように、それをシールし、その後、二次成形機(静水圧成形機)を用いて、1.3ton/cmの圧力で二次成形を行う。
【0111】
(7)焼結の工程:各成形体を焼結炉に搬送して焼結し、5×10-3Paの真空下かつ300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間を保持し、その後、1040℃の温度で2時間焼結してから、Arガスを導入して0.1MPaまでガス圧を到達させた後、室温まで冷却して、R-T-B系永久磁石材料IIを取得する。
【0112】
(8)粒界拡散処理の工程:各組の焼結体を直径20mm、厚さ3mmの磁石に加工し、厚さ方向を磁場配向方向とし、表面を清浄化した後、それぞれTbフッ化物による調製された原料を用いて、磁石に全面噴霧してコーティングし、コーティングした磁石を乾燥し、高純度のArガス雰囲気で、磁石の表面にTb元素の金属をスパッタ付着させ、850℃の温度で24時間拡散熱処理する。室温まで冷却された。
【0113】
(9)熱処理の工程:焼結体を高純度のArガスにおいて500℃で3時間の熱処理を行った後、室温まで冷却して取り出して、R-T-B系永久磁石材料Iを取得する。
【0114】
実施例6と比較例10のR-T-B系永久磁石材料の製造方法は、以下の通りである。
【0115】
表1に示される成分、および実施例1の製造工程によって実施例6と比較例10のR-T-B系永久磁石材料を製造し、その相違点は、「粒界拡散工程において、磁石の表面にDy元素の金属をスパッタ付着させる」という点にある。
【0116】
[効果実施例]
実施例1~10、比較例1~10で得られた、粒界拡散前の永久磁石材料(すなわち、R-T-B系永久磁石材料IIである)と粒界拡散後の永久磁石材料(R-T-B系永久磁石材料Iである)を含んでいるR-T-B系永久磁石材料の磁気特性および成分をそれぞれに測定し、その磁性体の結晶構造をFE-EPMAで観察した。
【0117】
(1)磁気特性の評価:中国計量院のNIM-10000H型BH大塊希土類永久磁石非破壊測定システムを用いて磁気特性検出を行った。以下の表3は、磁気特性検出の結果を示している。
【0118】
表3 磁気特性検出の結果
【0119】
【0120】
表3から分かるように、
(1)本願におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れ、Br≧1.4T、Hcjは拡散前の≧820kA/mから拡散後の≧1775kA/mに増加し、Hcjの2倍の増加を達成した(実施例1~10)。
(2)本願の成分に基づいて、原料Cu、Ti、およびCの使用量が変化し、Cu-Ti-C相を形成できなく、またはCu-Ti-C相を形成する割合が非常に少なくなり、R-T-B永久磁石材料の性能が著しく低下した(比較例1~10)。
(3)発明者は研究過程において、Oの含有量が高い場合、Cu-Ti-C相の形成に不利になり、磁気特性が低下する傾向があることを発見した(実施例10)。
【0121】
(2)成分の測定:R-T-B系永久磁石材料Iの各成分に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて測定した。以下の表4に示すのは、成分検出の結果である。
【0122】
表4 R-T-B系永久磁石材料Iの成分と含有量(wt.%)
【0123】
【0124】
(3)FE-EPMAによる検出:永久磁石材料の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)で検出した。実施例2と比較例2で得られたR-T-B系永久磁石材料Iは、FE-EPMAによって検出され、実施例2のR-T-B系永久磁石材料Iの粒界には、図1の点1に対応する粒界相が存在し、比較例2のR-T-B系永久磁石材料Iの粒界には、図2の点2に対応する粒界相が存在する。
図1
図2