(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】MOF化合物と非貴金属触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 19/00 20060101AFI20230329BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230329BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230329BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20230329BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20230329BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20230329BHJP
C07F 3/02 20060101ALI20230329BHJP
C07F 15/02 20060101ALI20230329BHJP
C07C 63/26 20060101ALI20230329BHJP
C07C 51/41 20060101ALI20230329BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C07F19/00
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/04 101
B01J31/22 M
H01M4/88 Z
H01M4/90 Z
C07F3/02 Z
C07F15/02
C07C63/26 Z
C07C51/41
C07D471/04 112T
(21)【出願番号】P 2021559482
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2019091842
(87)【国際公開番号】W WO2020199368
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】201910261121.4
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521438010
【氏名又は名称】中▲車▼工▲業▼研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】CRRC INDUSTRIAL INSTITUTE CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】章 ▲瀟▼慧
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲幇▼成
(72)【発明者】
【氏名】▲コン▼ 明
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109232901(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103992339(CN,A)
【文献】特表2011-517309(JP,A)
【文献】特開2014-004519(JP,A)
【文献】特開2016-193957(JP,A)
【文献】特表2015-531790(JP,A)
【文献】特表2018-531780(JP,A)
【文献】特表2018-538284(JP,A)
【文献】特表2009-537695(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039509(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108114748(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108114697(CN,A)
【文献】SU Xiao et al.,Postsynthetic Functionalization of Mg-MOF-74 with Tetraethylenepentamine: Structural Characterization and Enhanced CO2 Adsorption,ACS APPLIED MATERIALS & INTERFACES,2017年02月28日,Vol.9,p.11299-11306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機骨格MOF化合物を利用して非貴金属触媒を製造する方法であって、
前記MOF化合物の犠牲金属中心は、マグネシウムであり、且つ前記MOF化合物の反応活性サイトは、マグネシウム及び鉄を含み、前記MOF化合物の有機配位子はテレフタル酸及びトリエチレンジアミンであり、
Mg(NO
3
)
2
6H
2
O、Fe(NO
3
)
3
9H
2
O、及びトリエチレンジアミンを三口フラスコに加えるステップと、テレフタル酸を150℃のDMF10mLを入れるビーカーに溶解するステップと、ビーカーにおける溶液を三口フラスコに移行するステップと、DMF10mLでビーカーを洗浄した後に当該DMF10mLも三口フラスコに移行し、混合物を得るステップと、混合物を300回転/分の速度で撹拌し且つ150℃に予熱するアルミニウム製ボート上に置くとともに、ガラス栓で三口フラスコの二つの側フラスコ開口を密封し、且つ三口フラスコの中心開口を、冷水を通した凝縮器上に接続してDMFの蒸発を防止するステップと、2時間反応し、加熱及び撹拌を停止し、その後に一つのガラス栓と凝縮器を除去し、DMFをゆっくりと蒸発させるステップと、DMFが完全に蒸発した後、反応生成物を熱いDMFで洗浄し、且つ80℃で真空乾燥し、さらに前記MOF化合物を得るステップと、
前記MOF化合物と
o-フェナントロリンを質量比率2:1~5:1でボールミリング法により物理的に混合し、混合粉末を得るステップと、
アンモニアの雰囲気で、前記混合粉末を
700~1200℃で、10min~60min熱分解させ、非貴金属触媒を得るステップとを含む、
ことを特徴とする金属有機骨格MOF化合物を利用して非貴金属触媒を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電極触媒の技術分野に関し、特に、MOF化合物と非貴金属触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、エネルギー密度が高く、環境にやさしく、資源を節約するなどの利点を有し、理想的なエネルギー貯蔵機器の一つとなっている。空気電極又は酸素電極は、燃料電池の主な反応場として、複雑な酸素還元反応と酸素析出反応が発生しており、これらの反応は、反応動力学的特性が比較的に低いため触媒によって反応レートを向上させる必要がある。貴金属触媒は、高価で、資源不足で、触媒特性が単一であるなどという欠点があり、現在では、非貴金属触媒を採用して反応レートを向上させることが多い。
【0003】
関連技術では、亜鉛基-MOF(Metal-Organic Framework、金属-有機骨格)化合物を採用して非貴金属触媒を製造することが多く、しかしながら、亜鉛の沸点が907℃であるため、亜鉛基-MOF化合物を利用して非貴金属触媒を製造する時に熱分解温度は、一般的に900℃~1100℃の間にあり、この比較的に高い温度のため、活性金属中心が凝集し且つ非活性構造を形成し、これは、合成効率を制限し且つ製造された非貴金属触媒の活性を低減させる。
【発明の概要】
【0004】
これに鑑みて、本願は、MOF化合物と非貴金属触媒の製造方法を提供する。
【0005】
本願の第一の方面は、MOF化合物を提供し、前記MOF化合物の犠牲金属中心は、マグネシウムであり、前記MOF化合物の反応活性サイトは、マグネシウムを含む。
【0006】
さらに、前記MOF化合物の有機配位子は、テレフタル酸又はトリエチレンジアミンの少なくとも一つの物質を含む。
【0007】
さらに、前記MOF化合物の反応活性サイトは、鉄、コバルト又はニッケルのいずれか一つの物質をさらに含む。
【0008】
本願の第二の方面は、本願の第一の方面によって提供されるMOF化合物の製造方法を提供し、前記方法は、
マグネシウム塩を含む金属塩、有機配位子を有機溶媒の中で均一に混合し、混合物を得るステップと、
前記混合物を反応させ、反応生成物を得るステップと、
前記反応生成物に対して洗浄を行い、真空乾燥し、前記MOF化合物を得るステップとを含む。
【0009】
さらに、前記混合物を100℃~170℃の第一の指定温度範囲で反応させる。
【0010】
さらに、前記反応の反応時間範囲は、1h~3hである。
【0011】
さらに、前記金属塩は、鉄塩、コバルト塩又はニッケル塩のいずれか一つの物質をさらに含む。
【0012】
さらに、前記有機配位子は、テレフタル酸又はトリエチレンジアミンの少なくとも一つの物質を含む。
【0013】
さらに、前記金属塩は、Mg(NO3)26H2OとFe(NO3)39H2Oを含む。
【0014】
本願の第三の方面は、本願の第一の方面によって提供されるいずれか一つのMOF化合物を利用して非貴金属触媒を製造する方法を提供し、前記方法は、
前記MOF化合物と窒素を含む添加剤とを混合し、混合粉末を得るステップと、
アンモニアの雰囲気で、前記混合粉末を熱分解させ、非貴金属触媒を得るステップとを含む。
【0015】
さらに、前記混合粉末を700℃~1200℃の温度範囲で熱分解させる。
【0016】
さらに、前記熱分解の熱分解時間範囲は、10min~60minである。
【0017】
さらに、前記MOF化合物と前記窒素を含む添加剤との質量比率は、2:1~5:1である。
【0018】
さらに、前記窒素を含む添加剤は、o-フェナントロリンである。
【0019】
本願によるMOF化合物と非貴金属触媒の製造方法は、MOF化合物の犠牲金属中心がマグネシウムであり、反応活性サイトがマグネシウムを含み、マグネシウムの沸点が1089℃であるため、高温で熱分解する時、残留マグネシウムが活性金属中心の凝集を制限することにより、より多くのシングル原子サイトがグラファイト炭素の中に捕獲され、このように、製造された非貴金属触媒の活性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願の一例示的な実施例に示されるMOF化合物のXRD図である。
【
図2】本願の一例示的な実施例に示されるMOF化合物のSEM図である。
【
図3】本願の一例示的な実施例によるMOF化合物製造方法のフローチャートである。
【
図4】本願の一例示的な実施例による非貴金属触媒を製造するフローチャートである。
【
図5】本願の一例示的な実施例に示される非貴金属触媒のTEM図である。
【
図6】試験1で製造された非貴金属触媒が0.1M HClO
4溶液における線形走査ボルタンメトリー曲線である。
【
図7】試験2で製造された非貴金属触媒が0.1M HClO
4溶液における線形走査ボルタンメトリー曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここでは、例示的な実施例を詳細に説明し、その例が添付図面に示される。以下の記述が添付図面に関する時、別段の表示がない限り、異なる添付図面における同じ数字は、同じ又は類似の要素を表す。以下の例示的な実施例に記述される実施形態は、本願と一致するすべての実施形態を表すものではない。逆に、それらは、添付の特許請求の範囲に詳述された、本願のいくつかの方面と一致する装置と方法の例にすぎない。
【0022】
本願で使用される用語は、特定の実施例を記述することのみを目的としており、本願を制限することを意図するわけではない。本願と添付の特許請求の範囲で使用される単数形式の「1つ」、「前記」及び「この」は、文脈が他の意味を明確に示す場合を除き、複数形式を含むことも意図する。さらに理解すべきことは、本明細書で使用される用語「及び/又は」は、1つ又は複数の関連するリストされた項目の任意又はすべての可能な組み合わせを意味し、それを含む。
【0023】
理解すべきことは、本願において用語である第一、第二、第三等を採用して様々な情報を記述する可能性があるが、これらの情報は、これらの用語に限定されるべきではない。これらの用語は、同一のタイプの情報を区別するためにのみ用いられる。例えば、本願範囲を脱離しない場合、第一の情報は、第二の情報と呼ばれてもよく、同様に、第二の情報は、第一の情報と呼ばれてもよい。文脈に依存して、例えばここで使用される「もし」は、「~の時点で」又は「~の時に」又は「決定に応答する」と解釈されてもよい。
【0024】
本願は、活性金属中心の凝集を低減させ、活性が比較的に高い非貴金属触媒を製造するためのMOF(Metal-Organic Framework、金属-有機骨格)化合物と非貴金属触媒の製造方法を提供する。
【0025】
以下では、本願によるMOF化合物、MOF化合物の製造方法と非貴金属触媒の製造方法を詳細に説明するためのいくつかの具体的な実施例を示す。以下のいくつかの具体的な実施例は、互いに結合されてもよく、同じ又は類似の概念又はプロセスについては、なんらかの実施例では説明を省略する可能性がある。
【0026】
本願の第一の方面は、MOF化合物を提供し、前記MOF化合物の犠牲金属中心は、マグネシウムであり、反応活性サイトは、マグネシウムを含む。
【0027】
具体的には、金属マグネシウムの沸点は、1089℃であり、MOF化合物の犠牲金属中心は、金属マグネシウムであり、反応活性サイトが金属マグネシウムを含む時、MOF化合物の熱分解を利用して非貴金属触媒を製造する場合、金属マグネシウムが蒸発する前に、材料のグラファイト化程度が既に高く、残留マグネシウムが活性金属中心の凝集を制限することにより、より多くのシングル原子サイトがグラファイト炭素の中に捕獲され、このように、製造された非貴金属触媒の活性を向上させることができる。
【0028】
選択的に、前記MOF化合物の有機配位子は、テレフタル酸(TPA)又はトリエチレンジアミン(DABCO)の少なくとも一つの物質を含む。
【0029】
例えば、一実施例では、このMOF化合物は、シングル有機配位子化合物であり、このシングル有機配位子は、テレフタル酸又はトリエチレンジアミンである。さらに例えば、別の実施例では、このMOF化合物は、二重有機配位子化合物であり、この二重有機配位子は、テレフタル酸とトリエチレンジアミンである。
【0030】
説明すべきことは、MOF化合物は、有機配位子と金属イオン又はクラスタによって配位を介して組み立てて形成される分子内隙間を有する有機-無機ハイブリット材料である。MOF化合物において、金属原子及び有機配位子が高度に分散する。
【0031】
選択的に、前記MOF化合物の反応活性サイトは、鉄、コバルト又はニッケルのいずれか一つの物質をさらに含む。
【0032】
以下では、MOF化合物の犠牲金属中心がマグネシウムであり、反応活性サイトがマグネシウムを含み、且つこのMOF化合物の反応活性サイトが鉄をさらに含み、及びこのMOF化合物の有機配位子が二重配位子(テレフタル酸とトリエチレンジアミンとを含む)であることを例として説明する。具体的には、本例において、このMOF化合物は、Mg-Fe-DABCO-TPAと表すことができる。
【0033】
図1は、本願の一例示的な実施例に示されるMOF化合物のX放射線回折(XRD)図であり、MOFs構造を明確に解析することができ、
図2は、本願の一例示的な実施例に示されるMOF化合物のSEM図であり、典型的なMOFsトポグラフィを観察することができる。
【0034】
以下では、MOF化合物の製造方法を紹介し、
図3は、本願の一実施例によるMOF化合物製造方法のフローチャートである。
図3を参照して、この方法は、以下を含んでもよい。
【0035】
S301:
マグネシウム塩を含む金属塩、有機配位子を有機溶媒の中で均一に混合し、混合物を得る。
【0036】
具体的には、このマグネシウム塩は、硝酸塩であってもよく、例えば、一実施例では、このマグネシウム塩は、Mg(NO3)26H2Oである。さらに、有機配位子は、テレフタル酸又はトリエチレンジアミンの少なくとも一つの物質を含む。説明すべきことは、有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)であってもよい。
【0037】
選択的に、一実施例では、この金属塩は、鉄塩、コバルト塩又はニッケル塩のいずれか一つの物質をさらに含んでもよい。
【0038】
以下では、金属塩がマグネシウム塩(例えば、Mg(NO3)26H2Oであってもよい)と鉄塩(例えば、Fe(NO3)39H2Oであってもよい)とを含むことを例として説明する。本ステップにおいて、マグネシウム塩、鉄塩、有機配位子をDMFの中で均一に混合し、混合物を得る。
【0039】
S302:
上記混合物を反応させ、反応生成物を得る。
【0040】
具体的には、混合物をオイルバスの中で反応させ、反応が完了した後に冷却し(例えば、体系を開いて有機溶媒を揮発させる)、それにより反応生成物を得ることができる。
【0041】
S303:
上記反応生成物に対して洗浄を行い、真空乾燥し、MOF化合物を得る。
【0042】
具体的には、上記混合物を100℃~170℃の第一の指定温度範囲で反応させ、前記反応の反応時間範囲は、1h~3hである。
【0043】
具体的には、反応生成物は、DMFとエタノールの洗浄を経た後に濾過し、真空乾燥してMOF化合物を得ることができる。説明すべきことは、真空乾燥の温度は、60℃~90℃であってもよく、例えば、一実施例では、真空乾燥の温度は、80℃である。
【0044】
以下では、MOF化合物を製造する方法を詳細に説明するための一つの具体的な例を示す。この方法は、DMF15mLを三口フラスコに加え且つ150℃に加熱し、その後にMg(NO3)26H2O、Fe(NO3)39H2Oとトリエチレンジアミンを三口フラスコに加えるステップと、テレフタル酸を150℃のDMF10mLを入れるビーカーに溶解するステップと、ビーカーにおける溶液を三口フラスコに移行するステップと、DMF10mLでビーカーを洗浄した後にこのDMF10mLも三口フラスコに移行し、混合物を得るステップと、混合物を300回転/分の速度で撹拌し且つ150℃に予熱するアルミニウム製ボート上に置くとともに、ガラス栓で三口フラスコの二つの側フラスコ開口を密封し、且つ三口フラスコの中心開口を、冷水を通した凝縮器上に接続してDMFの蒸発を防止するステップと、2時間反応し、加熱及び撹拌を停止し、その後に一つのガラス栓と凝縮器を除去し、DMFをゆっくりと蒸発させるステップと、DMFが完全に蒸発した後、反応生成物を熱いDMFで洗浄し、且つ80℃で真空乾燥し、さらにMOF化合物を得るステップとを含んでもよい。
【0045】
以下では、本願による上記MOF化合物を利用して非貴金属触媒を製造する方法を紹介する。
【0046】
具体的には、
図4は、本願の一実施例による非貴金属触媒を製造するフローチャートである。
図4を参照して、前記方法は、以下のステップを含む。
【0047】
S401:
前記MOF化合物と窒素を含む添加剤とを混合し、混合粉末を得る。
【0048】
具体的には、本願において、MOF化合物を採用して非貴金属触媒の前駆体とする。それが前駆体とする主な原因は以下のとおりであり、(1)高度に秩序化された構造において、全ての必須触媒成分(活性金属中心、炭素と窒素)を含み、(2)MOF化合物において、金属原子が高度に分散する構造が高温熱処理プロセスにおける金属粒子の凝集の抑制に有利である。また、窒素を含む添加剤の導入は、炭素骨格における活性金属のアンカリングサイトを向上させることができ、さらに活性サイトを向上させることができる。
【0049】
具体的には、一実現形態において、ボールミリング法を使用してMOF化合物と窒素を含む添加剤とを物理的に混合し、混合粉末を得ることができる。ボールミリング法の具体的な操作ステップについては、関連技術における記述を参照してもよく、ここで説明を省略する。例えば、反応物を遊星型ボールミルの中で高速にボールミリングして衝突し、窒素を含む添加剤をMOF化合物の中に取り込み、混合粉末を得ることができる。
【0050】
別の実現形態において、溶媒法を使用してMOF化合物と窒素を含む添加剤とを混合し、且つ混合物を乾燥し、混合粉末を得ることができる。本実現形態において、主にDMFを溶媒とすることによってMOF化合物と窒素を含む添加剤を均一条件で均一に混合し、さらに混合物に対して超音波処理を行った後に遠心分離且つ乾燥し、混合粉末を得る。例えば、一実施例では、DMFを分散剤とすることによってMOF化合物と窒素を含む添加剤をDMF35mLの中に4:1の質量比率で混合し且つ1時間超音波処理した後に遠心分離し、さらに得られたサンプルを80℃で6h真空乾燥し、混合粉末を得る。
【0051】
説明すべきことは、溶媒法は、ボールミリング法と比べて、ボールミリングプロセスにおけるMOF化合物への破壊を最大限に減少することができる。
【0052】
さらに、窒素を含む添加剤は、o-フェナントロリン、ポリビニルピロリドン(PVP)又はメラミンのうちのいずれか一つであってもよい。
【0053】
具体的には、o-フェナントロリンは、窒素を含む添加剤とする時、触媒におけるピリジン窒素の含有量の上昇を促進し、活性中心と配位するN原子の数を増加させ、高活性の物質を生成することに役立つ。
【0054】
PVPは、高分子有機重合体として、それは、窒素を含む添加剤とする時、MOF化合物を被覆した後、内層と相互作用して一層の緻密な構造を形成することができ、熱分解プロセスにおいて、金属との相互作用によって活性金属中心の焼結を制限し、これは、大寸法の非活性ナノメータ粒子の形成を制限することにより、活性サイトの密度を向上させることができる。
【0055】
メラミンにおける窒素含有量が非常に高く、それは、窒素を含む添加剤とする時、熱分解プロセスにおいて、炭素骨格の中に取り込み、窒化炭素を生成しやすく、それにより最終生成物における窒素ドーピングの比率を増加させる、より多くの金属アンカリングサイトを提供する。
【0056】
S402:
アンモニアの雰囲気で、前記混合粉末を熱分解させ、非貴金属触媒を得る。
【0057】
説明すべきことは、熱分解のプロセスにおいて、MOF化合物の骨格構造が保持され、且つ金属原子が凝集しにくく、高度に分散する金属原子活性サイトを生成することができる。
【0058】
例えば、
図5は、本願の一例示的な実施例に示される非貴金属触媒のTEM図である。
図5を参照して、
図5から分かるように、金属粒子がMOF骨格上に高度に分散する。
【0059】
具体的には、本ステップにおいて、アンモニアの雰囲気で、上記混合粉末を迅速に熱分解させ、非貴金属触媒を得る。具体的に実現する時、混合粉末を管状炉に入れる前に、早期に管状炉を必要とする温度に予熱し、石英管の中にアンモニアを導入し続けることができる。さらに管状炉温度が必要とする温度に達する時、サンプルを管状炉の中に入れて15min反応した後に取り出し、自然冷却し、非貴金属触媒を得る。
【0060】
選択的に、上記混合粉末を700℃~1200℃の第二の指定温度範囲で迅速に熱分解させ、例えば、一実現形態において、第二の指定温度は、1100℃である。前記熱分解の熱分解時間範囲は、10min~60minである。例えば一実現形態において、前記熱分解の熱分解時間は、15minである。また、前記MOF化合物と窒素を含む添加剤との質量比率範囲は、2:1~5:1である。例えば、一実現形態において、前記MOF化合物と窒素を含む添加剤との質量比率は、4:1である。
【0061】
説明すべきことは、本願において、酸性条件で三極電気化学テストによって非貴金属Ptフリー触媒の活性を特徴づけ、開始点位と半波電位の二つのパラメータで非貴金属Ptフリー触媒の活性を評価する。また、開始電位は、体系の開放電位を特徴づけ、つまり反応体系の電流密度が0である時に位置する電位であり、このパラメータを計算する第一種の方法は、5%の限界電流密度が位置する電位を採用することであり、第二種の方法は、正酸化電流と負還元電流を補間して交線を作り、交線とゼロ電流点との交点は、すなわち開始電位点であることである。さらに、半波電位とは、電流密度が限界電流密度の半分に達する時の体系の電位であり、すなわち体系電流が限界電流密度の50%である時に位置する電位である。
【0062】
例えば、一実施例では、非貴金属触媒がHClO4溶液における線形走査ボルタンメトリー曲線は、以下のような方法を採用してテストして取得され、この方法は、非貴金属触媒5mg、脱イオン水235μL、エタノール235μLと電解質45μLを容器に置き、混合物を形成するステップと、上記混合物を30min超音波処理し、上記混合物を均一に混合するステップと、混合物20μLを一つの面積が0.196cm2のガラス炭素電極上に堆積するステップとを含む。最後に、三極電池装置で電気化学性能をテストする。
【0063】
具体的には、テストが開始する前に、参照電極をHClO4溶液の中にキャリブレーションし、さらに、0.1 M HClO4溶液において、0.01V/sの走査レートで0V~1.1Vの間に線形走査ボルタンメトリー法を運行し、触媒をアクティブ化し、次に、0.02V/sの走査レートで、1.1V~0Vの間に勾配ボルタンメトリー法を運行する。説明すべきことは、電流を測定する前に、各ステップの電位は、30秒間保持する必要があり、また、全てのテスト作動に対して、作動電極は、いずれも900rpmで回転する。このように、電流密度が0である時の電位を決定することによって開始電位を決定し、且つ限界電流密度の半分の時の電位を計算することによって半波電位を決定することができる。
【0064】
以下では、非貴金属触媒の製造方法を詳細に説明するためのいくつかの具体的な実施例を示す。
<試験1>
(1)質量比率が4:1のMOF化合物と窒素を含む添加剤とをボールミリング法によって物理的に混合し、混合粉末を得て、
(2)アンモニアの雰囲気で、混合粉末をそれぞれ950℃で迅速に15min熱分解させ、非貴金属触媒を得る。
【0065】
具体的には、本例において、MOF化合物がFe-Mg-DABCO-TPAであり、窒素を含む添加剤がo-フェナントロリンであることを例として説明する。さらに、
図6は、試験1で製造された非貴金属触媒が0.1 M HClO4溶液における線形走査ボルタンメトリー曲線である。
図6から分かるように、開始電位は、0.82Vであり、半波電位は、0.52Vであり、催化活性が比較的に高い。
<試験2>
(1)質量比率が4:1のMOF化合物と窒素を含む添加剤とをボールミリング法によって物理的に混合し、混合粉末を得て、
(2)アンモニアの雰囲気で、混合粉末をそれぞれ1100℃で迅速に15min熱分解させ、非貴金属触媒を得る。
【0066】
具体的には、本例において、依然として、MOF化合物がFe-Mg-DABCO-TPAであり、窒素を含む添加剤がo-フェナントロリンであることを例として説明する。
【0067】
さらに、
図7は、試験2で製造された非貴金属触媒が0.1 M HClO
4溶液における線形走査ボルタンメトリー曲線である。
図7から分かるように、開始電位は、0.80Vであり、半波電位は、0.38Vであり、催化活性が比較的に高い。さらに、
図6と
図7を同時に参照して、1100℃で製造された非貴金属触媒は、より低い開始電位と半坡電位を有することが分かる。
【0068】
説明すべきことは、MOF化合物の有機配位子が二重配位子である時、二重配位子MOF化合物は、形成プロセスにおいて競争関係が存在し、異なる配位構造のMOF化合物を形成することができる。例えば、DABCOは、窒素含有配位子として、金属配位子と垂直平面に配位し、一次元構造を形成することができる。TPAは、酸素含有配位子として、金属配位子と異なる角度で水平平面内に配位し、二次元構造を形成することができる。
【0069】
具体的には、有機配位子の間の比率を正確に調整することによって、MOF化合物の配位構造を制御し、活性種の比率を向上させ、活性サイトの密度を増加させることができる。
【0070】
さらに、シングル配位子MOF化合物と比べて、二重配位子MOF化合物によって製造された非貴金属触媒の触媒特性がより高い。
【0071】
衝突が発生しない場合、本願の上記各実施形態又は実施例の内容は、相互に補充することができる。
【0072】
上記の記載は、本願のより良い実施例にすぎず、本願を制限するものではなく、本願の精神及び原則の範囲内で、行われたいかなる修正、同等の置換、改善等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるものとする。