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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】骨誘導性骨再生材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/54 20060101AFI20230329BHJP
   A61L 27/46 20060101ALI20230329BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20230329BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20230329BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20230329BHJP
   C07K 14/51 20060101ALN20230329BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230329BHJP
   D04H 1/728 20120101ALN20230329BHJP
【FI】
A61L27/54 ZNA
A61L27/46
A61L27/58
A61L27/56
C07K7/08
C07K14/51
C12N15/12
D04H1/728
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022506711
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2021023279
(87)【国際公開番号】W WO2021261408
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】63/042,006
(32)【優先日】2020-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511267996
【氏名又は名称】ORTHOREBIRTH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126826
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克之
(72)【発明者】
【氏名】ルイス アルバレズ
(72)【発明者】
【氏名】西川靖俊
(72)【発明者】
【氏名】平良寛之
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/188435(WO,A1)
【文献】特表2009-519065(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093341(WO,A2)
【文献】J. APPL. POLYM. SCI.,2016年,42883,pp. 1-19,DOI: 10.1002/app.42883
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電界紡糸された生分解性繊維から形成された骨誘導性骨再生用材料を製造する方法であって、

前記複数の電界紡糸された生分解性繊維から形成される繊維状足場材料を作製し、前記複数の電界紡糸された生分解性繊維は、直径40~320μm、長さ5~20mmであり、

前記複数の電界紡糸された生分解性繊維は互いに絡み合って繊維間空間を有する綿形状構造を形成して、細胞成長のための微小環境をその中に形成しており、

前記電界紡糸された生分解性繊維は43~60vol%のβ-TCP粒子が前記生分解性繊維中に分散して含有されており、前記β-TCP粒子の一部がポリマー層によって被覆されることなく前記電界紡糸された生分解性繊維の表面に部分的に露出されており、

前記繊維状足場材料をBMP-2を含む溶液中に浸漬して、前記BMP-2が前記綿形状構造全体に微小環境を形成している前記繊維の表面に露出している前記β-TCP粒子に結合して、前記骨誘導性骨再生用材料を作製し、

前記電界紡糸された生分解性繊維の表面に露出したβ-TCP粒子上のBMP-2の結合サイトの面積は、前記電界紡糸された生分解性繊維に含まれるβ-TCP粒子の量によって調節されている、

前記複数の電界紡糸された生分解性繊維から形成された骨誘導性骨再生用材料を製造する方法。
【請求項2】
前記複数の電界紡糸された生分解性繊維の直径が70~250μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の電界紡糸された生分解性繊維がPLGAを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記β-TCP粒子の直径が2~5μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数の電界紡糸された生分解性繊維を含む骨誘導性骨再生材料であって、

前記複数の電界紡糸された生分解性繊維は、直径40~320μm、長さ5~20mmであり、

前記複数の電界紡糸された生分解性繊維は互いに絡み合って繊維間空間を有する綿形状構造を形成して、細胞成長のための微小環境をその中に形成しており、

前記電界紡糸された生分解性繊維は45~60vol%のβ-TCP粒子が前記生分解性繊維中に分散して含有されており、前記β-TCP粒子の一部がポリマー層によって被覆されることなく前記電界紡糸された生分解性繊維の表面に部分的に露出されており、

前記電界紡糸された生分解性繊維の表面に部分的に露出した前記β-TCP粒子にBMP-2が結合しており、

前記電界紡糸された生分解性繊維の表面に露出された前記β-TCP粒子上の前記BMP-2の結合サイトの面積は、前記複数の電界紡糸された生分解性繊維に含まれるβ-TCP粒子の量によって調節されている、

前記複数の電界紡糸された生分解性繊維を含む、骨誘導性骨再生材料。
【請求項6】
前記複数の電界紡糸された生分解性繊維の直径が70~250μmである、請求項に記載の骨誘導性骨再生材料。
【請求項7】
前記電界紡糸された生分解性繊維はPLGAを含む、請求項5又は6に記載の骨誘導性骨再生材料。
【請求項8】
前記β-TCP粒子の直径が2~5μmである、請求項5~7のいずれか一項に記載の骨誘導性骨再生材料。
【請求項9】
前記BMP-2が、配列番号1-38のいずれか1つ、または配列番号1-38からの2以上の配列の組み合わせを含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の骨誘導性骨再生材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨誘導性骨再生材料および骨誘導性骨再生材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人の一人は、β-TCPを含有する生分解性繊維からなる骨伝導性の骨再生材料をReBOSSISという商標の下で製造販売している。上記骨再生材料は、エレクトロスピニングプロセスを用いて製造され、そこにおいては、紡糸溶液はノズルから極細繊維として吐出され、電場の静電引力によって引っぱられてコレクターに堆積される。本願の出願人は、新規なエレクトロスピニング装置を用いて、このような生分解性繊維を、β-TCP及び生分解性樹脂を含む綿形状の構造に調製することに成功した。上記綿形状の構造は独特のものであり、(1)体液が骨移植材料の構造に容易に浸透することができるように組織内に大きな空間を有していること、(2)β-TCPからカルシウム及びリンの体液への放出を可能にするための広い表面積を提供すること、(3)骨修復部の形状に適合させることができる柔軟な構造を有していること、(4)他の生体活性又は骨形成因子を支援するための広い表面積を提供すること、のいくつかの特長を与えている。綿形状の複合材料を骨再生材料としてin vivo及びin vitroで評価した結果、複雑な骨欠損の修復において有利であることが実証された。
【0003】
骨形成性タンパク質-2(BMP-2)は、骨誘導を生じさせるタンパク質であり、骨の形成/再生を促進することが可能である。例えば、Infuse Bone Graft(メドトロニック)は、遺伝子組み換えヒトBMP-2(rhBMP-2)を含む骨移植材料であり、上顎洞底挙上術および局所的歯槽堤造成術における骨移植材料としての使用が米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。BMP-2は骨インプラント(INFUSE)に組み込まれ、骨欠損部位に運ばれる。BMP-2は骨欠損部位において徐々に放出され、骨形成を刺激する。BMPによる骨形成の刺激は局在化され、そこで数週間持続する。BMP-2が遠隔部位に漏出すると、悪影響が生じる。実際、rhBMP-2から生じるいくつかの副作用が報告されている。これらの副作用には、術後炎症とそれに伴う有害作用、異所性骨化、破骨細胞を介した骨吸収、不適切な脂肪生成などがある。
【0004】
従って、BMP-2をゆるやかに徐放することができるような態様でBMP-2を含有することが可能であり、他方で意図しない場所にこの骨形成因子が浸出することを許容しない骨移植材料が必要である。
【発明の概要】
【0005】
先行技術における骨誘導性骨移植材料の問題を解決するために、本発明の発明者らは、集中的な研究を行い、ReBOSSISの生分解性繊維の表面に露出したβ-TCP粒子が薄いポリマー層で覆われていないことを見出した。この知見に基づいて、本発明者の発明者らは、β-TCP粒子の露出部分を使用して、BMP-2を粒子に結合することができると結論した。BMP-2をβ-TCP粒子に結合させることにより、骨欠損部位でのBMP-2の徐々の放出を可能にするが、この成長因子の意図しない部位への浸出を許容しない骨誘導性骨再生材料のための足場としてReBOSSISを使用することができる。
【0006】
本発明の実施の形態は、ReBOSSIS繊維及び骨形成性タンパク質-2(BMP-2)を含む骨再生材料に関するものである。本発明の実施形態で使用するBMPは、BMP-2またはBMP-2の誘導体であり得る。BMP-2は、ヒトBMP-2またはアニマル(ペットまたは家畜など)BMP-2であり得る。BMP-2の誘導体には、1つまたは複数のβ-TCP結合ペプチドがと融合されたBMP-2を含み、それは「ターゲット型BMP-2」または「tBMP-2」と呼ばれる。これらの全ての異なる形態のBMP-2(遺伝子組換えヒトBMP-2、rhBMP-2および野生型BMP-2、wtBMP-2を含む)、アニマルBMP-2およびtBMP-2のようなBMP-2を一般的に「BMP-2」と呼ぶことができる。すなわち、「BMP-2」という語は、rhBMP-2、wtBMP-2、動物BMP-2およびtBMP-2を含む。
【0007】
ReBOSSISは、直径40~320μm、長さ5~20mmの複数の生分解性電界紡糸繊維で構成され、カルシウム化合物粒子(例えばβ-TCP粒子)及びポリ(乳酸)(PLLA)又は乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)等の生分解性樹脂を含む綿形状の構造を有する。生分解性繊維には、ケイ素を溶出するバテライト相炭酸カルシウム(ケイ素がドーピングされたバテライト相炭酸カルシウム、SiV)のような、その他のカルシウム化合物粒子を含むことができる。従って、ReBOSSIS繊維は、生分解性ポリマー(例:PLLAまたはPLGA)およびカルシウム化合物粒子(例:β-TCP粒子および/またはSIV粒子)を含むことができる。ここで使用される場合、「カルシウム化合物粒子」とは、β-TCP粒子、SiV粒子、又はβ-TCP粒子とSiV粒子の組み合わせであってもよい。
【0008】
ReBOSSISの生分解性電界紡糸繊維には、繊維上又は繊維中に多量のカルシウム化合物粒子が分散して含まれている。β-TCP粒子の一部は繊維の表面に露出して平坦でない表面形状を形成しており、β-TCP粒子の残りの部分は繊維の中に埋め込まれている。繊維の表面に露出したβ-TCP粒子は薄い樹脂層によって覆われていない。ReBOSSISを骨形成タンパク質2(tBMP-2を含むBMP-2)を含む溶液中に浸漬することによって、BMP-2は繊維の表面に露出したβ-TCP粒子及び/又はSiV粒子と結合されて、レボシスの綿形状の全体にわたって、BMP-2が繊維の表面に露出したβ-TCP粒子及び/又はSiV粒子によって捕捉されている。
【0009】
ReBOSSISの生分解性繊維の平坦でない表面形状は、幹細胞が繊維に付着するのを助ける。電界紡糸された生分解性繊維の表面に露出したβ-TCP粒子上のBMP-2の結合サイトの面積は、電界紡糸された生分解性繊維に含まれるβ-TCP粒子の量を増加または減少させることによって増加または減少させることができる。
【0010】
生分解性繊維は、直径約40~320μm、好ましくは約70~250μm、より好ましくは90~200μmの直径を有しており、直径約2~5μmのカルシウム化合物粒子(例えば、β-TCP及び/又はSiV粒子)を繊維中に分散させることができ、また、ReBOSSISを骨欠損部に埋植した後も綿形状構造物の機械的強度を維持することができる。
【0011】
本発明の一実施形態では、生分解性繊維の長さは、約5~20mm、より好ましくは4~10mmである。ReBOSSISはこのような短い繊維が絡み合って形成されているので、綿毛状の構造は手で簡単に細かく分けることができる。従って、外科医は、カッターまたははさみを使用することなく所望のより小さいサイズをReBOSSISから分離することにより、患者の骨欠損のサイズに応じて、綿形状材料を作製することができる。
【0012】
好ましくは、電界紡糸生分解繊維の直径は繊維性足場が十分な機械的強度を維持し、繊維性足場が骨欠損部位に埋め込まれた後、繊維性足場のチャンネルの平均サイズが10~300μmの範囲に収まるように適合されている。本明細書中で使用される場合、繊維性足場のチャネルは、繊維性足場材中の繊維間空間によって形成される通路を指す。
【0013】
ReBOSSISを骨欠損部に埋植後、間葉系幹細胞を含む体液が、β-TCP粒子上に捕捉されたBMP-2(rhBMP-2又はt-BMP-2等)に接触することができる。次いで、BMP−2(例えば、rhBMP−2またはtBMP-2)は、骨前駆細胞が骨芽細胞に分化することを促進する。BMP-2(rhBMP-2またはt-BMP-2など)を結合するβ-TCP粒子は、破骨細胞によって徐々に溶解される。その上で、骨芽細胞はβ-TCP粒子上に骨を形成する作用(すなわち骨リモデリング)を遂行する。
【0014】
ReBOSSISを骨欠損部に埋め込んだ後、電界紡糸繊維中の生分解性ポリマー(例:PLLA及び/又はPLGA)は、次第に繊維に埋め込まれたβ-TCP粒子が露出するように分解され、その結果新たに露出されたβ-TCP粒子が、繊維の表面に付着していたBMP-2(例:rhBMP-2またはtBMP-2)を再び捕捉することができる。ポリマーの分解が進むにつれて、新たに露出されたβ-TCP粒子によるBMP-2(rhBMP-2、tBMP-2等)を再び補足することにより、生分解性繊維の足場のネットワーク全体を通じて継続的に骨のリモデリングが行われ、その結果、骨欠損部において効率的な骨の形成が生じる。
【0015】
BMP-2(rhBMP-2、tBMP-2など)が、生分解性繊維の表面に固定されたβ-TCP粒子と結合するため、BMP-2が骨欠損部外へ漏洩することが防止される。その結果、BMP-2/ReBOSSISの使用の安全性が確保される。
【0016】
1つの態様において、本明細書では、約60重量%~約80重量%のカルシウム含有化合物を含む足場と、(i)VIGESTHHRPWS(配列番号23)、(ii)IIGESSHHKPFT(配列番号24)、(iii)GLGDTTHHRPWG(配列番号25)、(iv)ILAESTHHKPWT(配列番号26)、または(v)(i)~(iv)の2つ以上の組み合わせを含むターゲット型BMP-2を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、ターゲット型BMP−2は、VIGESTHHRPWS(配列番号23)を含む。いくつかの実施形態にでは、ターゲット型BMP-2は、IIGESSHHKPFT(配列番号24)を含む。いくつかの実施形態では、ターゲット型BMP−2は、GLGDTTHHRPWG(配列番号25)を含む。いくつかの実施形態では、ターゲット型BMP-2は、ILAESTHHKPWT(配列番号26)を含む。いくつかの実施形態では、ターゲット型BMP-2は、LLADTTHHRPWT(配列番号1)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ターゲット型BMP-2は、
QAKQRKQRKHKRKQRKHKSKRFVDFVDWNDVAPPGYHAFPGYHAFCHGECPLADHLNSTNHAVNSVNSKIPCCVPTELSAISMLYLDENEKVLKNYQDMVGCGCR(配列番号:32)を含む。いくつかの実施形態では、ターゲット型BMP-2は配列番号33~38のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態ではターゲット型BMP-2は、配列番号33を含む。いくつかの実施形態では、カルシウム含有化合物は、リン酸カルシウム、バテライト、またはリン酸カルシウムおよびバテライトを含む。いくつかの実施形態では、カルシウム含有化合物はβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)を含む。いくつかの実施形態において、β-TCPは足場中に足場材の約60重量%~約80重量%存在する。いくつかの実施形態において、β-TCPは、約70重量%足場中に存在する。いくつかの実施形態において、β-TCPは、足場材の約30重量%~約50重量%で足場中に存在する。いくつかの実施形態において、β-TCPは、足場材の約40重量%で足場中に存在する。いくつかの実施形態において、カルシウム含有化合物は、バテライトを含む。いくつかの実施態様において、バテライトは、足場材の約20重量%~40重量%で足場中に存在する。いくつかの実施態様において、バテライトは、約30重量%足場中に存在する。いくつかの実施形態において、バテライトはSiV(ケイ素ドープバテライト)を含む。いくつかの実施態様において、足場材は、生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、足場材は、ポリ(乳酸-コグリコール酸)(PLGA)を含む。いくつかの実施形態では、足場材は、約20重量%~約40重量%のPLGAを含む。いくつかの実施態様において、足場材は、約30重量%のPLGAを含む。さらに、本明細書に提供される組成物および/または構造で被験体を治療する方法が提供される。例えば、対象の骨欠損を治療するため。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1A図1Fは、ReBOSSIS繊維の電子顕微鏡画像である。図1Aは、200x倍率でのいくつかのReBOSSIS(85)繊維(PLGA 30重量%、SiV 30重量%、β-TCP 40重量%)の画像を示し、綿形状構造の繊維間の間隙空間を示す。図1Bは、一本のReBOSSIS(85)繊維の2000x倍率での画像を示す。繊維の表面のカルシウム粒子は、容易に識別することができる。図1Cは、同じ繊維を5000x拡大で示しており、この中で、白色の矢印はβ-TCP粒子を示し、暗い矢印はSiV粒子を示す。図1Dは、200x倍率でいくつかの繊維(PLGA30wt%、β-TCP70wt%)の画像を示す。図1Eは、2000倍の倍率で繊維(PLGA 30重量%、β-TCP 70重量%)の画像を示す。図1Fは、5000x倍率で同じ繊維(PLGA30wt%、β-TCP70wt%)を示し、白い矢印はβ-TCP粒子を示す。
図2図2は、コントロール(BSA)と比較した場合の、配列番号33を有するtBMP-2のReBOSSIS(85)に対する結合を示すSDS-PAGEゲルイメージを示す。パネルAは、洗浄バッファーとして酸性バッファー(酢酸緩衝液)を使用して得られたゲル画像を示し、パネルBは、洗浄バッファーとして中性バッファー(PBS)を使用して得られたゲル画像を示す。各ゲル画像では、右の4レーンがtBMP-2の分析結果を示し、左の4レーンがBSAの分析結果を示している。
図3図3は、配列番号33を有するtBMP-2のいくつかのカルシウム含有材料への結合からのゲルイメージを示す。tBMP2はβ-TCPおよび/またはSiVを含有する材料(SiV70、ReBOSSIS(85)およびORB-03)によく結合する。レーン1はマーカーであり、レーン2は空であり、レーン3-6はPLGA(レーン3)、SiV70(レーン4)、ReBOSSIS(85)(レーン5)またはORB-03(レーン6)に結合したBSAの量を示し、レーン7は空であり、レーン8-11はPLGA(レーン8)、SiV70(レーン9)、ReBOSSIS(85)(レーン10)またはORB-03(レーン11)に結合したtBMP-2の量を示し、レーン12は空である。図10は、結合アッセイのための手順を説明する。
図4図4は、rhBMP-2(β-TCP結合ペプチドに連結されていない組換えヒトBMP-2)のいくつかのカルシウム含有材料への結合からのゲルイメージを示す。rhBMP-2は、主としてβ-TCP(ReBOSSIS(85)およびORB-03)を含有する材料上に保持されるが、SiVのみを含有する材料上には保持されていない。レーン1はマーカーであり、レーン2は空であり、レーン3-6はPLGA(レーン3)、SiV70(レーン4)、ReBOSSIS(85)(レーン5)、またはORB-03(レーン6)に結合したBSAの量を示し、レーン7は空であり、レーン8-11はPLGA(レーン8)、SiV70(レーン9)、ReBOSSIS(85)(レーン10)、またはORB-03(レーン11)に結合したrhBMP-2の量を示し、レーン12は空である。図10は、結合アッセイのための手順を説明する。
図5図5は、Chronic Caprine Critical Defect(CCTD)モデルの概略を示している。処置前において、骨格的に成熟した雌ヤギに5cmセグメントの重大な欠損を形成する。欠損部には、5cm×直径2cmのポリメチルメタクリレート(PMMA)スペーサーが設置されて、生体膜を生じさせる。4週間後、PMMAスペーサーは緩やかに取り外され、移植材料と交換される。欠損部の治癒を評価するために、4週間ごとに正中X線写真を撮影する。図では、APは頭尾方向を表し、MLは内外側方向を表す。白い矢印は、PMMAスペーサーの配置における移植材料を示す。
図6図6A~6Bは、移植手術の8週間後(図6A)および12週間後(図6B)に撮影したX線写真(内外側(ML)および頭蓋尾(AP)投影像)を示す。投与群あたり6頭のヤギ。配列番号33を有するtBMP-2含有群(第2群(0.15mg/cc tBMP-2)および第3群(1.5mg/cc tBMP-2))は、第1群(tBMP-2なし)と比較して、より高い割合の新たな骨形成を示した。第1群のX線像を最初の二つの欄に、第2群のX線像を二番目の二つの欄に、第3群のX線像を図の最後の二つの欄にそれぞれ示す。
図7図7は、固定X線装置で撮影した12の外植脛骨のX線写真(中外側(ML)および頭尾(AP)投影)を示す。高用量tBMP-2群(1.5mg/cc群、第3群)では、大量の新生骨が得られた。TCPおよびReBOSSISにtBMP-2を加えると、CCTDモデルにおける骨治癒が促進された。第1群のX線像を最初の二つの欄に、第2群のX線像を第二番目の二つの欄に、第3群のX線像を図の最後の二つの欄にそれぞれ示す。
図8図8は、パーコレーション現象の概念図であり、β-TCP粒子の量がパーコレーションしきい値を超える場合のβ-TCP粒子クラスターの形成を説明するものである。
図9図9(A)は、β-TCP粒子を50wt%(24.3vol%)含有する電界紡糸PLGA繊維の表面を示している。図9(B)は、70wt%(42.9vol%)のβ-TCP粒子を含む電界紡糸PLGA繊維の表面を示したものである。図9(C)は、80wt%(56.3vol%)のβ-TCP粒子を含む電界紡糸PLGA繊維の表面を示したものである。図9(D)は、85wt%(64.6vol%)のβ-TCP粒子を含む電界紡糸PLGA繊維の表面を示している。
図10図10は、SDS-PAGEによる分析のためのサンプル回収方法を説明する図である。
図11図11は、本発明の一実施形態による骨再生のメカニズムを説明する概念図を示す。
図12図12は、本発明の一実施形態による骨再生のメカニズムを説明する概念図を示す。
図13図13A~13Dは、70重量%のβ-TCP粒子を含有する電界紡糸された生分解性繊維の表面上に露出したβ-TCP粒子がポリマーによって被覆されていないことを証明する実験結果を示す。
図14図14A~14Eは、50重量%のβ-TCP粒子を含有する電界紡糸された生分解性繊維の表面上に露出したβ-TCP粒子がポリマーによって被覆されないことを証明する実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態は、β-TCP及び骨形成性タンパク質-2(rhBMP-2又はtBMP-2ようなBMP-2)を含む骨再生材料に関するものである。また、本願発明の骨再生材料は、綿形状の構造体上の表面積が大きいBMP-2が、骨の修復部位において体液と相互に作用することにより、骨誘導プロセスが促進されるような綿形状の構造を有するものである。
【0019】
骨誘導には、骨前駆細胞を刺激して骨芽細胞に分化させ、それから新たな骨形成を開始させることが含まれる。これに対し、骨伝導は骨移植材料が新生骨を成長させるための足場として機能する場合に生じるものであり、それは欠損部位を取り囲んでいる生体骨の周縁から既に生体内に存在している骨芽細胞によって継続される。
【0020】
本発明の実施形態は、遺伝子組換えBMP-2(rhBMP-2等)又はターゲット型BMP-2を使用することができる。ターゲット型BMP-2とは、BMP-2が骨再生材料中のβ-TCPにタイトに結合できるようにβ-TCP結合ペプチドとBMP-2を融合したタンパク質(すなわち融合タンパク質)である。β-TCP結合ペプチドは、BMP-2のN-ターミナルまたはC-ターミナルに融合されることができる。
【0021】
BMP-2は強力な骨形成活性を有し、脊椎固定術などの整形外科用途に用いられる。しかし、BMP-2が治療部位から漏れ出てしまうと、意図しない部位で骨形成を誘導する可能性がある。これらのBMP-2関連合併症は症例の20%~70%に及ぶ比較的高い頻度で発生し、これらの有害作用は生命を脅かす可能性がある。(Aaron W.James et al.,“A review of the Clinical Side Effects of Bone Morphogenetic Protein-2,”Tissue Eng.Part B Rev.,2016,22(4):284-297)従って、BMPを治療部位に閉じ込めることが不可欠である。例えば、BMP-2を骨再生/修復材料に確実に結合させ、BMP-2を治療部位から離れて拡散させないようにすることが不可欠である。
【0022】
本発明の実施の形態は、1つ又は複数のβ-TCP結合ペプチドを含むrhBMP-2またはBMP-2融合タンパク質を使用することができる。これらのBMP-2融合タンパク質は、ターゲット型BMP-2またはtBMP-2と呼ばれる。tBMP-2は、tBMP-2がβ-TCP及び/又はSiVを含有する骨再生/修復材料と共に使用され、そこにおいて、tBMP-2はβ-TCP及び/又はSiVと密接に結合しており、治療部位から拡散せず、それによる悪影響を除去又は最小限に抑えるように設計されている。
【0023】
本発明の骨再生・修復材料は、β-TCP及び生分解性ポリマー(例えば、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体;PLGA))を含む生分解性繊維からなる綿形状の構造を有する。tBMP-2融合タンパク質は、これらの綿形状の構造物上で、β-TCP及び/又はSiV粒子にタイトに結合することができ、かつ、治療部位から離れて拡散しない。
【0024】
綿形状の構造は、(1)体液が骨移植材料の構造に容易に浸透することができる大きな間隙を有していること、(2)β-TCPからカルシウム及びリンが生体液に溶出されることを可能にする大きい表面積を提供すること、(3)rhBMP-2又はtBMP-2のような他の生理活性又は骨形成要因を支持/運搬するための広い表面積を提供すること、(4)骨修復部位の形状に適合させることができる柔軟な構造を有すること、といういくつかの利点を与える。
【0025】
綿形状の構造物は、生分解性ポリマー及びβ-TCPを含有する溶液を電界紡糸することにより製造される。綿形状構造物の製造の詳細は、米国特許番号8,853,298, 10,092,650、米国特許出願公開番号2016/0121024, 2018/0280569に記載されている。それらの記載は、引用によって全て組み込まれている。これらの綿形状材料は、商標「ReBOSSIS」のもとでORTHOREBIRTH株式会社(横浜)から入手可能である。
【0026】
ReBOSSISは、β-TCP及び/又はSiV粒子並びに乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)又はポリ乳酸(PLLA)のような生分解性ポリマーを含む電界紡糸された複数の生分解性繊維からなる綿形状の構造を有する。生分解性繊維はβ-TCP又はケイ素含有炭酸カルシウム(SiV)等のその他のカルシウム化合物粒子を含有することができる。ケイ素がドープされたバテライト相炭酸カルシウム粒子は、生分解性複合材料における細胞活性を高める能力を有することが判明している。(Obata等、「Enhanced in vitro cell activity on silicon-doped vaterite/poly(lactic acid)composites」、Acta Biomater.、2009、5(1):57~62;doi:10.1016/j.actbio.2008.08.004)。
【0027】
ReBOSSISでは、電界紡糸された生分解性繊維は当該繊維中に多量のカルシウム化合物粒子(β-TCP及び/又はSIV粒子)を含有する。典型的なReBOSSIS繊維においては、カルシウム化合物粒子(例えば、β-TCP粒子又はβ-TCP+SIV粒子)の含有量は約30~85wt%、好ましくは約50~80wt%、さらに好ましくは約70~80wt%である。カルシウム化合物粒子の量が85重量%を超えると、PLGAとカルシウム化合物粒子との混合物を混練してポリマー中に分散させることが困難になる。
【0028】
カルシウム化合物粒子はPLGAより密度が高い。例えば、PLGAは1.01g/cm3の密度を有し、β‐TCPは3.14g/cm3の密度を有する。したがって、wt%とvol%は、次のような相関関係がある:
【0029】
【表1】
【0030】
いくつかの実施形態では、約60重量%~約80重量%のカルシウム化合物を含む足場材または繊維が提供される。非限定的な例として、リン酸カルシウム(例えば、β-リン酸三カルシウム(β-TCP))およびバテライト(例えば、シリコンドープバテライト(SiV))が挙げられる。いくつかの実施例では、足場材または繊維は、約70重量%のカルシウム化合物を含む。一つの例では、足場材または繊維は、約70重量%のβ-TCPを含む。別の例では、足場材または繊維は約40重量%のβ-TCPを含む。さらに別の例では、足場材または繊維は約40%のβ-TCPおよび約30%のSiVを含む。本発明の実施形態によれば、ReBOSSIS(85)繊維の含有量は、重量%または容量%のいずれかで参照することができる。例えば、いくつかのReBOSSIS(85)繊維は、β-TCPを約25~65vol%の量で含有し、PLGAを約75~35vol%、より好ましくはβ-TCP粒子を40~60vol%、PLGAを60~40vol%の量で含有することができる。
【0031】
本発明の実施の形態に従って、ReBOSSIS繊維は、カルシウム化合物粒子(例えば、β-TCP粒子、又はSiV粒子、又はβ-TCP+SiV粒子)の一部を繊維の表面に露出する一方、カルシウム化合物粒子の残存部分は繊維の内部に埋め込まれている。例えば、図1A-1Fは、2つのReBOSSISサンプルの走査電子顕微鏡画像を示している。ReBOSSIS(85)はPLGA(30wt%または50.8vol%)、SIV(30wt%または27.4vol%)、およびβ-TCP(40wt%または21.8vol%)、ORB-03はPLGA(30wt%または57.1vol%)およびβ-TCP(70wt%または42.9vol%)からなる。
【0032】
図1Aは、200倍の拡大倍率でのいくつかのReBOSSIS(85)繊維(PLGA 30重量%、SiV 30重量%、β-TCP 40重量%)の画像を示し、綿形状構造の繊維間の間隙空間を示す。繊維間の大きな間隙容量は、生体液の灌流を促進する。図1Bは、2000倍の拡大倍率における一本のReBOSSIS(85)繊維のイメージを示している。繊維の表面のカルシウム粒子は、容易に識別することができる。図1Cは、同じ繊維を5000倍の拡大倍率で示しており、この中で、白色の矢印はβ-TCP粒子を示し、暗い矢印はSiV粒子を示している。繊維の表面に露出した多数のカルシウム粒子は、BMP-2またはtBMP-2が結合する場所を提供する。加えて、露出したカルシウム粒子は、骨リモデリングや新骨形成の際に、破骨細胞や骨芽細胞との相互作用を容易にする。
【0033】
図1Dは、200倍の拡大倍率におけるいくつかのORB-03繊維(PLGA 30wt%/β-TCP 70wt%)の画像を示しており、綿形状構造における繊維間の間隙空間を示している。繊維間の大きい間隙容量は、生体液の灌流を促進する。図1Eは、1本のORB-03ファイバーの画像を2000倍の倍率で示している。繊維の表面のカルシウム粒子は、容易に識別することができる。図1Fは、同じ繊維を5000倍の拡大倍率で示しており、白の矢印は、β-TCP粒子を示す。繊維の表面に露出した多数のカルシウム粒子は、BMP-2またはtBMP-2が結合する場所を提供する。加えて、露出したカルシウム粒子は、リモデリングや新骨形成の際に、破骨細胞や骨芽細胞との相互作用を促進する。
【0034】
本発明の実施形態によれば、足場材及び繊維(例えばReBOSSIS(85)、ORB-03)は、好ましくは約40μm~約320μm(範囲内の全ての数を含む)、好ましくは約70μm~約250μm、より好ましくは約90μm~約200μmの直径を有し、その結果、1~5μmの直径を有するカルシウム化合物粒子を繊維中および繊維上に分布させることができ、綿形状構造の機械的強度は、骨欠損部位に足場材又は繊維を移植後に所望の形状を維持するのに十分である。前記足場材又は繊維の綿形状構造体の嵩密度は約0.01~0.2g/cm3、好ましくは約0.01~0.1g/cm3であり、綿形状構造体内の繊維間のギャップは、約1~1000μm、より好ましくは約1~100μmであり、これにより、体液が繊維間のギャップを通して透過することができ、骨形成のためのスペースが綿形状構造体全体にわたって確保される。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、生分解性繊維の長さは、好ましくは約5~20mm、より好ましくは約4~10mmである。本発明の一実施形態によれば、混練工程を用いて製造された紡糸溶液は、70wt%または43vol%などの多量のカルシウム粒子を含有する。紡糸溶液をノズルから噴射すると、カルシウム粒子は、ポリマーによって互いに結合されて、長手方向に長い繊維を形成する。しかし、電場の反発力により飛行中に放出されたファイバーの軌跡が激しく揺れると、カルシウム粒子とバインダーポリマーから形成されたファイバーは、もはやその長手方向の形状を維持することができず、引きちぎられてより短いファイバーを形成する。
【0036】
骨欠損部位に足場材又は繊維を埋植後、間葉系幹細胞を含む体液が、β-TCP粒子上で捕獲されたBMP-2(rhBMP-2、tBMP-2など)に接触する。そうするとBMP-2は骨前駆細胞を骨芽細胞に分化させるのを促進する。BMP-2と結合するβ-TCP粒子は、破骨細胞またはその他の生理活性物質によって徐々に溶解される。そして、骨芽細胞は、骨リモデリングプロセスにおけると同様にβ-TCP粒子上に新しい骨を形成するように働く。
【0037】
骨欠損部位に足場材又は繊維を埋植後、電界紡糸繊維のPLGAポリマーは、繊維に埋め込まれたβ-TCP粒子が露出するように徐々に分解し、新たに露出されたβ-TCP粒子は、繊維の表面に露出したBMP-2を再捕獲する。PLGAの分解が進むにつれて、新たに露出したβ-TCP粒子によってBMP-2が再捕獲されて、生分解性繊維の足場のネットワーク全体を通じて継続的に骨のリモデリングが発生し、その結果、骨の欠損部位で効率的な骨の形成が生じる。
【0038】
本発明の実施の形態において、BMP-2(例えば、rhBMP-2又はtBMP-2)は、BMP-2が綿形状構造全体を通じて繊維に捕捉されるように、繊維の表面に露出したβ-TCP及び/又はSiV粒子と結合する。β-TCP結合ペプチドの融合は、BMP-2のN-ターミナルまたはC-ターミナルに対してすることができる。
【0039】
tBMP-2は、従来の分子生物学的手法又は当該技術分野において知られている他の技術(例えば、BMPへのβ-TCP結合ペプチドの化学的又は酵素的結合)を用いて製造することができる。例えば、BMPの塩基配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、β-TCP結合ペプチドの塩基配列につなげることができる。あるいは、融合タンパク質の塩基配列を化学的に合成することができる。その後、融合タンパク質のコンストラクトは、制限場所において適切な発現ベクターに組み込まれる。そして、発現ベクターを、タンパク質の発現系(例えば、大腸菌、酵母、又は、CHO細胞)にトランスフェクションする。次に、発現させたタンパク質を精製する。タンパク質の精製を容易にするために、特定のタグ(例えば、ヒスチジンタグ)を、当該の発現に組み込むことができる。これらのプロセスと技術はすべて、既知の慣用的なものである。当業者であれば、過度の実験を行うことなくこれらを実施することができる。
【0040】
本発明の実施形態に従って、β-TCP結合ペプチドは、アミノ酸配列LLADTTHHRPWT(SEQ ID NO:1),GQVLPTTTPSSP(SEQ ID NO:2),VPQHPYPVPSHK(SEQ ID NO:3),HNMAPATLHPLP(SEQ ID NO:4),QSFASLTNPRVL(SEQ ID NO:5),HTTPTTTYAAPP(SEQ ID NO:6),QYGVVSHLTHTP(SEQ ID NO:7),TMSNPITSLISV(SEQ ID NO:8),IGRISTHAPLHP(SEQ ID NO:9),MNDPSPWLRSPR(SEQ ID NO:10),QSLGSMFQEGHR(SEQ ID NO:11),KPLFTRYGDVAI(SEQ ID NO:12),MPFGARILSLPN(SEQ ID NO:13),QLQLSNSMSSLS(SEQ ID NO:14),TMNMPAKIFAAM(SEQ ID NO:15),EPTKEYTTSYHR(SEQ ID NO:16),DLNELYLRSLRA(SEQ ID NO:17),DYDSTHGAVFRL(SEQ ID NO:18),SKHERYPQSPEM(SEQ ID NO:19),HTHSSDGSLLGN(SEQ ID NO:20),NYDSMSEPRSHG(SEQ ID NO:21),又はANPIISVQTAMD(SEQ ID NO:22)を含むことができる。これらは米国特許法第10,329,327号B2号に開示されており、その開示は、その全てを引用することにより本発明に組み込まれる。いくつかの実施形態では、β−TCP結合ペプチドは、VIGESTHHRPWS(配列番号23)、IIGESSHHKPFT(配列番号24)、GLGDTTHHRPWG(配列番号25)、またはILAESTHHKPWT(配列番号26)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、β−TCP結合ペプチドは、LLADTTHHRPWT(配列番号1)、VIGESTHHRPWS(配列番号23)、IIGESSHHKPFT(配列番号24)、GLGDTTHHRPWG(配列番号25)、およびILAESTHHKPWT(配列番号26)を含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施例に従い、β-TCP結合ペプチドは、上記の配列から選択された2つ以上の配列を含むことができる。この2つ以上の配列は、互いに直接結びつけることができ、あるいは、その間に短いペプチド・リンク体を相互に綴じて、より長いβ-TCP結合ペプチドを形成することができる。
非限定的な例として、β-TCP結合ペプチドは、LLATHWTHVISIHGHPGTHGLGHTHWGHGHGHGHGHGILESHKPWTHPWT(配列番号:27)、LLADTTHHRPWTVIGESTHHRPWS(配列番号28)、LLADTTHHRPWTVIGESTHHRPWS(配列番号29)、LLADTTHHRPWTVIGESTHHRPWS(配列番号30)、およびVIGESTHHWSIHPKLGDLGDHGITHKPWT(配列番号31)を含む。さらなる例として、β-TCP結合ペプチドは、第1のペプチドが配列番号:1を含み、第2のペプチドが配列番号:23、24、25または26のうちの1つまたは複数を含み、第2のペプチドが配列番号:1、25または26のうちの1つまたは複数を含み、第1のペプチドが配列番号:25を含み、第2のペプチドが配列番号:23、24、1または26のうちの1つまたは複数を含み、第1のペプチドが配列番号:26を含み、第2のペプチドが配列番号:23、24、25のうちの1つまたは複数を含む。第1のペプチドは配列番号1を含み、第2のペプチドは配列番号23、24、25又は26の2以上を含み、第1のペプチドは配列番号を含む:第1のペプチドは配列番号1、24、25または26のうちの2つ以上を含み、第2のペプチドは配列番号23、25または26のうちの2つ以上を含み、第2のペプチドは配列番号23、24、1または26のうちの2つ以上を含み、第2のペプチドは配列番号23、24、25または1のうちの2つ以上を含み、第2のペプチドは配列番号23、25または26のうちの3つ以上を含み、第1のペプチドは配列番号23、24、25のうちの3つ以上を含む。第1のペプチドは配列番号24を含み、第2のペプチドは配列番号23、1、25または26のうちの3つ以上を含み、第1のペプチドは配列番号25番目のペプチドは配列番号23、24、1または26の3つ以上を含み、2番目のペプチドは配列番号26を含み、2番目のペプチドは配列番号23、24、25または1の3つ以上を含む。
【0042】
β-TCP-結合ペプチドが存在するために、tBMP-2のβ-TCP粒子への結合は非常に密になっており、それによってtBMP-2が骨欠部の外部に流出することがさらに防止される。その結果、本明細書においてtBMP-2/繊維を使用することの安全性はさらに保証される。
ReBOSSIS
【0043】
ReBOSSISは、生分解性繊維で形成された綿形状の構造を有する骨欠損部充填材料である。ReBOSSISの詳細は、米国特許第8,853,298号、米国特許第10,092,650号、米国特許出願公開第2016/0121024号、および米国特許出願公開第2018/0280569号に説明されている。これらの文献の開示は、引用によってその全部が本出願に組み込まれている。
【0044】
ReBOSSISの電界紡糸された生分解性繊維の直径は、約5~100μm、好ましくはできれば約10~100μm、さらに好ましくは約10~60μmの範囲である。これに対し、従来の電界紡糸繊維の直径は、通常数十ナノメートルないし数百ナノメートル(nm)である。Orthorebirth社は、電界紡糸(ES)溶液を高速で大径ノズルに送り、ES装置の上部から下部に繊維を落下させることによって紡糸することによって、より太く電界紡糸された繊維を得た。カルシウム化合物粒子の量が増加するにつれて、電界紡糸繊維の直径はさらに太くなり、最終的に直径は60μmを超えることになる。電界紡糸法は極めて細いナノファイバーを製造する方法として知られているので、Orthorebirth社が太い生分解生繊維を製造するために用いる方法は独特である。2019年9月13日出願のPCT/JP2019/036052に、Orthorebirth社の方法の詳細が記載されている。この太い電界紡糸された生分解性繊維を製造することにより、本発明者らは、繊維上に粒子が露出するように、繊維中に多量のカルシウム化合物粒子を含有させることが可能となった。また、太い繊維は、骨修復部位に埋植した後に繊維の形状を維持する機械的強度を有する。
【0045】
ReBOSSISの生分解性繊維には、カルシウム粒子(例えば、β-TCP、SiV、又はβ-TCP+SiV)が多量に含まれている。このような多量のカルシウム粒子を混入することは、混練工程を用いることによって達成される。簡単に言えば、生分解性樹脂とカルシウム粒子の混合物を強い力で練ることによって複合体を製造する。次に、この複合体を溶剤(例えば、クロロホルム)に溶解して紡糸溶液を製造する。混練工程の詳細は、2017年4月28日に出願されたWO2017/188435に記載されている。
【0046】
ニーダーの中でカルシウム粒子を樹脂に加えて生分解性樹脂とカルシウム粒子の混合物を混練することによって、カルシウム粒子はマトリックス樹脂中に均一に分散される。しかし、カルシウム粒子の容積比がしきい値を超えると、パーコレーシン現象の発生により、粒子はもはや均質分散状態を維持することができなくなり、クラスター相が現れ始める(図8参照)。粒子のクラスター相の形成の結果、一部のカルシウム粒子は生分解性繊維の表面に露出する(図1A~1F参照)。これにより、BMP-2が、生分解性繊維上のβ-TCP粒子に結合することが可能となる。発明者等の経験によれば、このパーコレーション効果は、無機粒子の容積パーセントが約25vol%を超える場合に現れる。カルシウム粒子の相対的vol%は、生分解性繊維中の全成分(すなわち、生分解性ポリマーおよびカルシウム化合物)の総体積(100体積%)に基づいて計算される。本発明の一実施形態において、電界紡糸された生分解性繊維の表面上に露出されたβ-TCP粒子とBMP-2との結合サイトの面積は、電界紡糸された生分解性繊維に含まれるβ-TCP粒子の量によって調整される。
【0047】
図9A~9Dには、本発明のREBOSSIS繊維のSEM画像が示されており、生分解性繊維に含まれるβ-TCP粒子のvol%の割合が増加するにつれて、生分解性繊維へのβ-TCP粒子の露出が増加していることが示されている。図9Aは、β-TCPを有する繊維(50wt%、24.3vol%)を示しており、繊維の表面に露出したβ-TCP粒子は多くない。図9Bは、β-TCPを有する繊維(70wt%、42.9vol%)を示しており、繊維の表面には多くのβ-TCP粒子が露出している。図9Cは、β-TCPを有する繊維(80wt%、56.3vol%)を示しており、繊維の表面に露出したβ-TCP粒子はさらに多い。図9Dは、β-TCPを有する繊維(85wt%、64.6vol%)を示しており、繊維の表面に露出したβ-TCP粒子はさらに多い。
一部のβ-TCP粒子が繊維上に露出していることの確認
方法
【0048】
次の組成を有する繊維性シートを1mol/LのHCLに10秒間、1分間、5分間浸漬した。
・PLGA 30重量%、β-TCP 70重量% 又は
・PLGA 50重量%、β-TCP 50重量%
【0049】
β-TCP粒子がポリマーによって被覆されていればβ-TCP粒子はHClによって溶解されない。したがって、変化はないであろう。他方、β-TCP粒子がHClによって溶解されれば、β-TCP粒子は露出していて、ポリマーによって被覆されていないと考えられる。
【0050】
図13A~13Dに示されるように、β-TCP粒子がHCLによって溶解されることが確認された。PLGAはHClによって溶解しなかった。β-TCP率が高いほど、繊維表面のβ-TCP粒子の曝露量が増加する。これらの実験から明らかなように、繊維中のβ-TCP粒子の一部はポリマーによって完全には覆われていない。したがって、HClはこれらのβ-TCP粒子を溶解することができる。図13A~13Dおよび図14A~14Eに示されるように、β-TCP粒子のポリマーに対する比率を変化させることによって、β-TCP粒子の曝露の程度を制御することができる。従って、繊維状足場へのBMP-2の結合サイトは、繊維上のβ-TCP粒子の曝露を増加または減少させることによって制御することができる。
tBMP-2
【0051】
本発明のいくつかの実施形態は、β-TCP結合ペプチドがBMP-2と融合されているターゲット型BMP-2(tBMP-2)を使用する。非限定的な例として、BMPは、QAKQRKQRKHKQRKQRKSKVDFVDPVDPVPGYHAFPHAFPGECFPLANSTNVNSQTLVNSKIPKCCVPTELSAILYLDENEKVKNYQDMVGCGCR(配列番号32)を含み、tBMP-2は、本発明の発明者の一人によって開発されたβ-TCP結合ペプチドと融合されている。β-TCP結合ペプチドの詳細は、米国特許第10,329,327 B2号および「Tethering of Epidermal Growth Factor(EGF)to Beta Tricalcium Phosphate(β TCP)via Fusion to a High Affinity,Multimeric β-TCP binding Peptide:Effects on Human Multipotent Stromal Cells/Connective Tissue Progenitors,”Alvarez et al.,PLoS ONE DOI:10.1371/journal.pone.0129600,June 29,2015」に説明されている。これらの文献の開示は、引用によってその全部が本出願に組み込まれている。
【0052】
本発明の実施形態において、β−TCP結合ペプチドは、アミノ酸配列LLADTTHHRPWT(配列番号1)、GQVLPTTTPSSP(配列番号3)、HNMAPATLHPLP(配列番号4)、QSFASLTNPRVL(配列番号5)、HTTPTTTYAAPP(配列番号7)、QYGVVSHLTHTP(配列番号8)、IGRISTHAPLHP(配列番号9)、MNDPSPWLRSPR(配列番号10)、QSLGSMFQEGHR(配列番号11)、KPLFTRYGDVAI(配列番号12)、MPFGARILSLPN(配列番号13)、QLQLSNSMSSLS(配列番号14)、TMNMPAKIFAAM(配列番号15)を含み得る。EPTKEYTTSYHR(配列番号16)、DLNELYLRSLRA(配列番号17)、DYDSTHGAVFRL(配列番号18)、SKHERYPQSPEM(配列番号19)、HTHSSDGSLLGN(配列番号20)。NYDSMSEPRSHG(配列番号21)、ANPIISVQTAMD(配列番号22)、VIGESTHHRPWS(配列番号23)、IIGESSHHKPFT(配列番号24)、GLGDTTHHRPWG(配列番号25)、又はILAESTHHKPWT(配列番号26)、又はそれらの組み合わせを含み得る。本発明のいくつかの実施例において、β-TCP結合ペプチドは、上記の配列から選択された二つ以上の配列を含むことができる。前記β−TCP結合ペプチドは、LLADTTHHRPWT(配列番号1)、VIGESTHHRPWS(配列番号23)、IIGESSHHKPFT(配列番号24)、GLGDTTHHRPWG(配列番号25)、およびILAESTHHKPWT(配列番号26)を含むことができる。二つ以上の配列は、互いに直接結びつくことができ、あるいは、それらの間に短いペプチドを相互に綴じ合わせて、より長いβ-TCP結合ペプチドを形成することができる。
【0053】
本発明の実施形態において、tBMP-2で使用されるBMPには、ターゲット型BMP-2および組換えヒトBMP-2(rhBMP-2)を含むことができる。いくつかの実施形態において、提供されるtBMP-2は、β-TCP結合ペプチド(例えば、本明細書に開示された一つ以上のβ-TCP結合ペプチド)及びQAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSVNSKIPKACCVPTELSAISMLYLDENEKVVLKNYQDMVVEGCGCRを含む。上記β-TCP結合ペプチドは、リンカー、例えばペプチドリンカーを介してBMP配列に連結され得る。tBMP-2ペプチドの非限定的な例は、
MPIGSLLADTTHHRPWTVIGESTHHRPWSIIGESSHHKPFTGLGDTTHHRPWGILAESTHHKPWTASGAGGSEGGGSEGGTSGATGAGTSTSGGGASTGGGTGQAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSVNSKIPKACCVPTELSAISMLYLDENEKVVLKNYQDMVVEGCGCR(配列番号33),LLADTTHHRPWTVIGESTHHRPWSIIGESSHHKPFTGLGDTTHHRPWGILAESTHHKPWTASGAGGSEGGGSEGGTSGATGAGTSTSGGGASTGGGTGQAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSVNSKIPKACCVPTELSAISMLYLDENEKVVLKNYQDMVVEGCGCR(配列番号34),VIGESTHHRPWSIIGESSHHKPFTGLGDTTHHRPWGILAESTHHKPWTASGAGGSEGGGSEGGTSGATGAGTSTSGGGASTGGGTGQAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSVNSKIPKACCVPTELSAISMLYLDENEKVVLKNYQDMVVEGCGCR(配列番号35),IIGESSHHKPFTGLGDTTHHRPWGILAESTHHKPWTASGAGGSEGGGSEGGTSGATGAGTSTSGGGASTGGGTGQAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSVNSKIPKACCVPTELSAISMLYLDENEKVVLKNYQDMVVEGCGCR(配列番号36),GLGDTTHHRPWGILAESTHHKPWTASGAGGSEGGGSEGGTSGATGAGTSTSGGGASTGGGTGQAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSVNSKIPKACCVPTELSAISMLYLDENEKVVLKNYQDMVVEGCGCR(配列番号37),and ILAESTHHKPWTASGAGGSEGGGSEGGTSGATGAGTSTSGGGASTGGGTGQAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSVNSKIPKACCVPTELSAISMLYLDENEKVVLKNYQDMVVEGCGCR(配列番号38)を含む。
BMP-2のReBOSSISへの結合
【0054】
本発明の実施形態によれば、BMP-2はReBOSSIS繊維に結合することができる。ReBOSSIS繊維へのBMP-2結合の特性を評価するために、以下の試験を実施した(例として、tBMP-2およびrhBMP-2を用いた)。この試験では、ReBOSSISの生分解性繊維は、PLGA(30重量%)およびβ-TCP粒子(40重量%)およびSiV(バテライト相のケイ素ドープ炭酸カルシウム)粒子(30重量%)を含有する。β-TCP粒子及びSIV粒子は、繊維の内部及び繊維上に分散している。
巨視的に見ると、粒子の一部が繊維の表面の外部に露出している。
【0055】
4つのサンプル溶液を調製した。以下の4つの試料溶液中のtBMP-2またはrhBMP-2の濃度を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて対照試料と比較した。コントロール試料として、牛のアルブミン(BSA)を用いた。
【0056】
具体的には、以下の試薬を調製した:(a)tBMP-2(配列番号33、10mM Na-酢酸塩中、0.1M Ureaを含むまたは含まない0.1M NaCl、pH4.75);(b)酢酸塩洗浄緩衝液(-20℃で保存)に溶解したBSAストック溶液:42mg/ml;(c)酢酸塩洗浄緩衝液:5m M Na-酢酸塩pH4.75、100mM NaCl;(d)ReBOSSIS(OrthoRebirth);及び(e)PBS(Roche、cat# 11666789001、1X 溶液=137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2 HP04、1.8mM KH2 P04、pH7.0)。
【0057】
方法:20μgのtBMP-2またはBSA/mgのReBOSSIS(総量200μgのtBMP-2およびReBOSSIS10mg)を結合し、洗浄、溶出、非還元SDS-PAGEに負荷する。具体的なプロトコルは以下の通りである:
準備
1.ReBOSSIS10mgをスピンチューブに秤量;
2.BSAを調製する:BSAストック29μlを採取し、酢酸緩衝液971μlを加えて、pH4.75で1.22mg/mlのBSA希釈溶液を得る。
3.各チューブに500μlの酢酸塩洗浄緩衝液を添加することにより、酢酸塩洗浄緩衝液中でReBOSSISを予備洗浄する。ウェルを回転させて混合し、5分間インキュベートする。マイクロフュージの中で遠心沈殿させる。緩衝液を取り除くために、先端を管の底部に置いて。ReBOSSISはチューブ内に残る。
4.Gelサンプル:後のSDS-PAGE分析のために、一部のBSAロードとtBMP-2ロードを除外する。
評価
5.予め洗浄したReBOSSIS10mgにtBMP-2 200μgを加え、総容量は164μlとする;
6.10mgの予め洗浄したReBOSSISに200μgのBSAを総量164μlで添加する。
【0058】
【表2】
【0059】
7.30分結合(結合は20分近くで終了する);
結合されていない材料を回収
8.マイクロフュージで最高速度で4-5分間管をスピンする。
9.ピペットをチューブの上部の上清に挿入し、結合していないものをチューブにピペットで取り出す。(注:ピペットチップにReBOSSISが入っていないことを確認してください。余分な量を取り出してゲルを流し、管の底部にチップを入れ、残りを廃棄します。);
洗浄
10.PBS又はアセテート洗浄緩衝剤のいずれかの500マイクロルを加える;
11.ジェネリー・ボルテックス。終了後に5分間混合し、その後再度緩やかに離婚する;
12.マイクロフュージで最高速度で4-5分間スピニング管を抜き出す。洗浄を継続する;
溶出
13.164μlの非還元性1X SDS PAGEゲル色素(BMP2ダイマーを破壊するようなβ-メルカプトエタノールを含まない)を添加することにより溶出する;
14.ボルテックス、5分間インキュベート、リピートボルテックス;
15.溶出物をマイクロフュージで最高速度で4-5分間スピニング管で回収する;
16.ReBOSSIS Load:10μl、Non-Bound 10μl、Wash 10μl、Elution 11μlのようにゲルをロードします。
【0060】
SDS-PAGE分析用サンプルには、以下のようなラベルが付される(図2及び図10に示す)。
Ld:既知量のtBMP-2またはBSAを含む試料溶液(Loading)。
FT:LdをReBOSSISに供した後、ReBOSSISに保持されずに通過した画分を回収することにより得られたサンプル(Flow Through)
W:たん白質を保持しているReBOSSISを通過させた洗浄用緩衝液を回収することによって得られたサンプル(Wash)。
ReBOSSISに結合したタンパク質が洗浄緩衝液によって解離する場合、洗浄後に流出した画分は解離したタンパク質を含有する。
埋植部位のpH環境が酸性または中性であるとし、2種類の洗浄用緩衝液(pBS pH7.0及び酢酸緩衝液pH4.5)を調製し、試験を行った。
EL:洗浄用緩衝液によって洗浄した後のReBOSSISに、さらに溶出用緩衝液を供し、ReBOSSISを通過させた溶出用緩衝液を回収することにより得られるサンプル(Elution)
タンパク質の結合能の評価(SDS-PAGE)
【0061】
tBMP-2(またはBSA)のReBOSSISへの結合をSDS-PAGEにより評価し、染色溶液を用いてタンパク質バンドを検出した。検出されたタンパク質は、レーンにバンドとして現れる。タンパク質の量が既知の試料と、タンパク質の量が分かっていない試料の電気泳動のバンドのシグナル強度を比較することにより、タンパク質の量を定量的に推定することができる。画像解析用のソフトを使用することにより、シグナルの強度を定量的に評価することができる。
【0062】
この実験では、目視観察によってゲル画像を比較した。タンパク(tBMP-2又はBSA)を青色で染色することにより、レーンに表示された青色のバンドが得られた。バンドが濃いことは、タンパク質の量が多いことを示す。
【0063】
SDS-PAGEの泳動条件は、130Vの定電圧とした。泳動用ゲルにはNuPAGE 4-12%Bis-Trisタンパク質ゲル、1.0mm、12ウェル(Life Technologies、cat#NP0322BOX)、泳動用緩衝液にはNuPAGE MOPS SDS Running Buffer(20X)(Life Technologies、cat#NP0001)を使用した。電気泳動が終了後、タンパク質を染色するための染色液として、Gelcode Blue Sage Protein Stain(Thermos Scientific,cat # 24596)を使用した。
【0064】
図2に示すように、パネルAは、洗浄緩衝液に酸性緩衝液(酢酸緩衝液)を用いた場合のサンプルについて電気泳動を行うことにより得られたゲル画像を示し、パネルBは、洗浄緩衝液に中性緩衝液(PBS)を用いた場合のサンプルについて電気泳動を行うことにより得られたゲル画像を示す。各ゲルイメージでは、右の4レーンはtBMP-2の分析結果を示し、左の4レーンはBSAの分析結果を示している。
【0065】
Ldレーン(ローディングサンプル)では、tBMP-2およびBSAのメインバンドの位置を特定することができる。tBMP-2またはBSAがFT、W、またはELレーンに含まれる場合、そのバンドはLdレーンのバンドの位置と同じ位置に表示されることが予想される。
【0066】
図2において、点線で囲まれた部分は、条件AでBSAを用いて調製したサンプルのゲルイメージを示しており、BSAのメインバンドの位置は、BSAメインバンドと表記された長方形の実線ボックスによって示されている。各レーンにおけるBSAのメインバンドの強度の比較から、FT及びLdレーンは同等程度のタンパク質量を示しており、ほとんどのBSAはReBOSSISに結合せずに通過していることを示している。すなわち、BSAはネガティブコントロールとして振舞い、ReBOSSIS繊維には結合しない。WレーンとELレーンは、BSAバンドがやや確認できるものの、WレーンとELレーンのBSAバンドのレベルはLdレーンのレベルと比べてかなり低く、BSAはReBOSSISにほとんど結合しないことを示している。
【0067】
中性pHの緩衝液を洗浄バッファーとして用いた場合(パネルB)、BSAはReBOSSISに非特異的に結合することを示している。ほとんどのBSAはフロースルー画分(FL)において回収されており、このことは、ほとんどのBSAがReBOSSISファイバーに結合しないことを示す。洗浄バッファーによる画分(W)では、一部のBSAが引き続き回収されているが、その量はフロースルー画分(FL)で回収された量より少ない。溶出バッファーによる画分(EL)で回収される量はさらに少ない。これらの結果は、BSAはReBOSSIS繊維に対して非特異的に結合していることを示している。
【0068】
これに対し、tBMP-2はReBOSSISによく結合しており、酸性又は中性緩衝液のいずれを洗浄バッファーとして用いた場合でも、フロースルー(FT)又は洗浄(W)の画分からはtBMP-2はほぼ含まれておらず、溶出後(E)にのみ結合していたtBMP-2が回収された。(図2、パネルA及びパネルB)。このことは、tBMP-2がReBOSSISに特異的に結合していることを示している。
【0069】
この実験から、tBMP‐2はReBOSSIS繊維にタイトに結合すること、およびReBOSSIS繊維に結合したtBMP-2は酸性または中性の洗浄バッファーによってReBOSSIS繊維から分離されないことが確認された。
【0070】
この実験から、中性および酸性のいずれの条件においても、tBMP-2の98%以上がReBOSSISに結合され、保持されていることが確認された。このことは、破骨細胞によるカルシウム成分の吸収の影響下においても、tBMP-2のReBOSSISへの結合が持続することを意味する。
tBMP-2とrhBMP(INFUSE)との保持比較
【0071】
この実験は、tBMP-2およびrhBMP-2(INFUSE)の結合能を各ReBOSSIS繊維について比較するためのものである。下表のとおり、いくつかの組成比率の綿状物について比較試験を行った。
【0072】
【表3】
【0073】
結合性能を確認するための試験のプロトコルは上記の通り。図3は、tBMP-2を様々な材料に結合させた結果を示す。β-TCP及び/又はSiV(シロキサンを含有するバテライト)を含有する材料(SIV70、ReBOSSIS(85)及びORB-03)には、tBMP-2が十分に保持されている。tBMP-2の保持は、BSAとは明らかに異なる。
【0074】
図4は、組換えヒトBMP-2(rhBMP-2)の結果を示している。rhBMP-2は、β-TCP(ReBOSSIS(85)およびORB-03)を含む材料には保持されるが、SiVを含む材料には保持されない。rhBMP-2の結合能はtBMP-2の結合能より弱い。それにもかかわらず、rhBMP-2は、ReBOSSISで使用するのに依然として良好である。その理由は、ReBOSSISによるrhBMP-2の保持はtBMP-2の保持よりも少ないため、tBMP-2が治療部位から漏れる可能性は低いと予測することができるためである。したがって、本発明の好ましい実施形態は、rhBMP-2(例えば、INFUSE Bone Graft)と比較して、副作用が(もしあれば)より少ない副作用を有するtBMP-2を使用することができる。
慢性ヤギ脛骨欠損(CCTD)モデルにおけるReBOSSIS/tBMP-2の評価
【0075】
骨修復におけるtBMP-2/ReBOSSSの有用性を評価するために、ReBOSSIS上のターゲット型BMP-2(tBMP-2)の有効性をCCTDモデルで評価した。これは、挑戦的な長骨部分欠損ヤギモデルである。埋植部位での表面に結合されたtBMP-2の局所保持の長期化は、長骨部分欠損を是正する整形外科手術の安全性と有効性を、現行の慣行に比べて改善することが期待される。
スタディデザイン
動物の選択
【0076】
試験には40~60kgのヤギ(Spanish Boer種)12頭を使用した。以下の3つの試験群に分けられた:
グループ1 TCP+ReBOSSIS+BMAのみ
グループ2 TCP+ReBOSSIS+BMA+tBMP-2 @0.15g/cc欠陥
グループ3 TCP+ReBOSSIS+BMA+tBMP-2 @1.5g/cc欠陥
TCP、リン酸三カルシウム顆粒; BMA、骨髄吸引液
CCTDモデル
【0077】
CCTDモデルは、大動物モデルのハードルを「上げる」ことを目的としており、現在の大きな骨欠損に対する治療法が容認できない頻度で失敗し続けている厳しい臨床生物学的環境に、よりよくマッチするように設計されている。
【0078】
CCTDモデルには、骨の臨界サイズ(5cm)の脛骨部位の欠損が含まれている。CCTDモデルには急性欠損モデルとは異なるいくつかの特徴がある。
1.欠損部位の各端から2cmの骨膜を切除し、9cmの骨膜セグメント(5cmの欠損+両側2cm)を作成し、
2.欠損部位の周囲に10gの骨格筋を配置し、
3.髄内管をリーミングして欠損部位に隣接する骨髄と骨内膜を除去し、
4.移植前に4週間、PMMAスペーサーを欠損部に配置します。これにより繊維状の“誘導膜”(IM)または“マスカレット膜”によってスペーサーを包み込むことができる。
5.各動物は、これらの生物学的条件を作成するための「前処置」と、臨床的に関連する処置シナリオを実施することができる「処置手順」としてここで定義されている2つの手術を受ける。
【0079】
図5は、Chronic Caprine臨界欠陥(CCTD)モデルの概略を示している。前処置の間に骨格が成熟した雌ヤギに5cmの大欠損セグメントを作製する。欠陥には、長さ5cm×直径2cmのポリメチルメタクリレート(PMMA)スペーサーが生体膜を誘導するために配置されている。4週間後、PMMAスペーサーを緩やかに取り外し、骨充填剤と交換する。欠損部の治癒を評価するために、4週間ごとに直行X線写真を撮影する。図では、APは頭尾方向を表し、MLは中外測方向を表す。白い矢印は、PMMAスペーサーを配置する際の骨充填剤を示す。
【0080】
前処理は、以下の本質的な特徴からなる。
1.頭尾方向に皮膚切開を作成し、脛骨骨幹部および骨膜にたいして5cmのセグメントを切除
2.近位および遠位の骨セグメント上のさらに2cmの骨膜を切除。
3.前脛骨筋と腓腹筋を10cm3切除。
4.5cmの欠損を維持するために、カスタムスペーサークランプを用いたインターロッキング髄内釘を配置。
5.欠損部の爪の周りに、あらかじめ成形した長さ5cm×直径2cmのPMMAスペーサーを配置。
6.創部に一般的な生理食塩水(0.9%)を注入し、創部を閉鎖。
【0081】
前処置の4週間後に実施される処置手順は、次の通りである:
1.脛骨の頭蓋側面で前回の皮膚切開を開く。
2.PMMAスペーサーの周囲に“誘導膜”を“ボムベイ・ドア・オープニング(bomb bay door opening)”を使用して開く。
3.メンブレンや爪を傷つけずにスペーサーを除去する。
4.以下に定める適切な組織サンプルの収集。
5.欠損部に適切な治療法を配置。
6.誘導された膜を3-0ナイロンで閉鎖し、内在性マーカーと創傷閉鎖を提供。
放射線分析:
【0082】
脛骨、頭尾方向(AP)および内外側(ML)投影の透視画像撮影を、スペーサー処置(0週)、埋植処置(4週)、および経過観察(8週および12週)後に実施した。X線写真は、術後12週安楽死させた後(軟部組織の解剖後)に取得した。
サンプルの準備
【0083】
サンプル構成:5cc TCP+50cc ReBOSSIS+6cc BMA(tBMP-2の有無に依らない)。
tBMP-2のReBOSSISへの結合
1.無菌環境下で、50ccのReBOSSISをシャーレに入れて、均一な層になるように広げる。;
2.露出した表面の上で静かにピペッティングすることによりReBOSSISに30mLの結合バッファーを追加し、溶液中にReBOSSISを浸漬し、20分間結合させる。
3.10mLピペットを垂直に持ち、チップの先を表面に押し当てることによって、30mLの結合バッファーを除去する。表面を押さえながら注意深く液を吸い取る。ピペットを別の場所に移動させ、できるだけ多くの液体を回収するようにする。回収量を記録する。
4.40mlの滅菌されたPBSをReBOSSISに加え、10分間洗浄する。手順2と同様に加える;
5.手順3に記載されているように10mlのピペットを用いて40mlのPBSを取り除き、50mlのコニカルチューブにPBSを保管する;
6.手順4-5をもう1回繰り返す;
7.シャーレに蓋をし、端をパラフィルムで覆い、tBMP-2/ReBOSSISを密閉する。
tBMP-2のTCPへの結合
1.TCPの所望の量を測定し、滅菌チューブに入れる。
2.チューブに70%エタノールを充填し、2~4時間または一晩インキュベートすることによって、TCPを滅菌する。
3.アルコールを除去するために、滅菌された二段蒸留水で繰り返し3回洗浄。
4.TCPをTCP結合バッファー(10mM 酢酸ナトリウム pH4.75,100mM NaCl)で5分間、穏やかに攪拌しながら洗浄。
5.TCPを滅菌PBSで洗浄し、TCP結合バッファーを除去。
6.チューブ内のTCPに適量のtBMP-2を添加。
7.TCPを覆うのに十分なTCP結合バッファーを追加。
8.2時間、穏やかに混合。
9.TCP結合バッファーを除去するためにPBS繰り返し2回洗浄。
10.tBMP-2/TCPを無菌容器に4℃で保管。
術時
1.tBMP-2/ReBOSSISを入れたディッシュを1枚開く。
2.同じディッシュの隅に、tBMP-2でコーティングされたTCP 5ccを静かに移す。その後、骨髄吸引駅6ccをTCPに加え、均等に分散させる。
3.滅菌済みのスパーテルを用いてtBMP-2/TCP/BMAをReBOSSIS上に移し、それらがReBOSSIS上で全体にわたって均等に広がっていることを確認する。
4.上述のtBMP-2/TCP/BMAが均等に細かい小石の層のようにReBOSSIS上に分布しているので、滅菌済みの手袋を用いて穏やかに押し固める。
5.ReBOSSISをブリトーのようにそっとロールアップし、必要に応じて混ぜて形を整える。
結果
【0084】
ReBOSSISを添加することにより、埋植材料の外科的取扱い性が大幅に向上した。tBMP-2を含むグループ(グループ2及び3)はグループ1と比較してより高いパーセンテージの新生骨形成を示した。図6Aは埋植から8週間後、図6Bは埋植後12週で撮影されたに撮影されたX線写真(内側(ML)および頭尾方向(AP))を示す。各群につき、6頭のヤギを使用した。
【0085】
埋植後のX線写真では、グループ1(TCP+ReBOSSIS+BMA)の4頭のヤギ全てで欠損部位に新しい骨は得られなかった。グループ2(低用量tBMP-2)では、4頭のヤギのうち1頭は欠損部位での新生骨の形成が約75%であり、残り3頭では25%以下であった。グループ3(高用量tBMP-2)では、2頭のヤギが骨癒合を呈し、残り2頭のヤギが50%未満の新生骨を呈した。これらのデータは、スキャフォールドへのtBMP-2の添加が新生骨の形成を増加させたことを示している。
【0086】
図7は、固定X線装置で撮影した12本の摘出脛骨のX線写真(内側(ML)および頭尾方向(AP))を示している。高用量のtBMP-2群(1.5mg/cc)では、大量の新しい骨が得られた。
【0087】
これらの結果に示されるように、ReBOSSISは埋植材料の外科的な操作性を大幅に向上させた。TCPおよびReBOSSISへのtBMP-2の添加は、CCTDモデルにおける骨治癒を向上させた。これらの結果は、本発明の実施形態が、骨修復のために現在使用されている材料よりも優れているであろうことを示している。これらの特定の実施例はtBMP-2を使用しているが、rhBMP-2は、以前に実証されたのと同じ結果をもたらすであろう。
【0088】
図11および図12は、本発明の実施形態を使用して、向上された骨修復のための可能なプロセスを示す概略図である。簡単に述べれば、骨欠損部位にtBMP-2溶液中に浸漬されたReBOSSISを入れた後、繊維の表面は、体溶液中に存在する細胞外マトリックス(ECM)タンパク質または接着タンパク質によって被覆されていると考えられる。骨微小環境中の間葉系幹細胞(MSC)は、接着タンパク質によって被覆された繊維の表面に接着する。MSCはまた、それ自身のECMを形成するタンパク質を産生するかもしれない。tBMP-2はMSCが骨芽細胞に分化するように誘導し、その後、骨芽細胞はカルシウムが豊富な環境下で骨を形成する。
【0089】
本発明の実施形態は、限られた実施例を用いて例示されているが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の修正及び変形が可能であることを理解する。したがって、保護の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
【配列表】
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