(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】連続繊維強化樹脂複合材料及びその製造方法、並びに連続繊維強化樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
C08J5/04 CFG
(21)【出願番号】P 2022509985
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010660
(87)【国際公開番号】W WO2021193248
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2020058693
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 悠介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 努
(72)【発明者】
【氏名】小泉 徹
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208586(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181995(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/142803(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/163218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16,15/08-15/14
C08J5/04-5/10,5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料であって、
前記連続繊維強化樹脂複合材料の前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度が80℃以上であ
り、
前記連続強化繊維が、ガラス繊維の織物、一方向材、又はノンクリンプファブリックであり、
前記熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドとを、(A):(B)=50~99:50~1の質量比で含有し、前記熱可塑性樹脂に含まれるポリアミド100質量%中の、前記(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、20~50質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が15000~35000である
ことを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項2】
前記連続繊維強化樹脂複合材料のプッシュアウト試験による界面強度が1.58~5.00mN/μmである、請求項1に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項3】
下記式で表される前記連続繊維強化樹脂複合材料の界面定数が20~100である、請求項1又は2に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
(界面定数)=(連続繊維強化樹脂複合材料のカルボキシル末端基の濃度[μmol/g])×(界面が剥離する研磨圧力[MPa])×(強化繊維径[μm])/(強化繊維密度[g/cm
3])
2
【請求項4】
前記連続強化繊維複合材料がラマンピークを950~1050cm
-1に有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項5】
前記連続繊維強化樹脂複合材料のX線回折の(1,0,0)面のピーク強度が(0,1,0)面のピーク強度よりも強い、請求項1~
4のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項6】
前記連続繊維強化樹脂複合材料のX線回折において、(1,1,0)面のピークが検出される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項7】
前記(A)脂肪族ポリアミド及び前記(B)半芳香族ポリアミド1gに対する当量として表される封止された末端量が、5~180μ当量/gである、請求項
1~6のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項8】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂成形体であって、
前記連続繊維強化樹脂複成形体の前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度が80℃以上であり、前記連続繊維強化樹脂成形体のプッシュアウト試験による界面強度が1.58~5.00mN/μmであり、板状、枠状、箱状、又はこれらの組み合わせの形状を有
し、
前記連続強化繊維が、ガラス繊維の織物、一方向材、又はノンクリンプファブリックであり、
前記熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドとを、(A):(B)=50~99:50~1の質量比で含有し、前記熱可塑性樹脂に含まれるポリアミド100質量%中の、前記(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、20~50質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が15000~35000である
ことを特徴とする、連続繊維強化樹脂成形体。
【請求項9】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂を複合化する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法であって、
前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との動的濡れ性が3.0sec以下であることを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との静的濡れ性試験による接触角が38°以下である、請求項
9に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が2種類以上からなり、前記2種類以上の熱可塑性樹脂の各樹脂と前記連続強化繊維との動的濡れ性の差の最大値が3sec以上である、請求項
9又は
10に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度が、前記(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下である、請求項
9~
11のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記(A)脂肪族ポリアミドと前記(B)半芳香族ポリアミドのtanδのピーク温度の差が、45~100℃である、請求項
9~12のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記(A)脂肪族ポリアミドの重量平均分子量Mw
Aが、前記(B)半芳香族ポリアミドの重量平均分子量Mw
Bの1.5倍以上である、請求項
9~13のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維強化樹脂複合材料及びその製造方法、並びに連続繊維強化樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械や自動車等の構造部品、圧力容器、及び管状の構造物等には、マトリックス樹脂材料にガラス繊維等の強化材が添加された複合材料成形体が使用されている。特に強度の観点から強化繊維が連続繊維である連続繊維強化樹脂複合材料が望まれている。この連続繊維強化樹脂複合材料としては、強化繊維に添加する集束剤を工夫しているもの(例えば、以下の特許文献1参照)、融点と結晶化温度の差を工夫しているもの(例えば、以下の特許文献2参照)、樹脂材料に有機塩を加えているもの(例えば、以下の特許文献3参照)、成形前駆体の布帛を熱可塑性の樹脂で積層しているもの(例えば、以下の特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-238213号公報
【文献】特許第5987335号公報
【文献】特開2017-222859号公報
【文献】特開2009-19202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、従来技術の連続繊維強化樹脂複合材料では、いずれもマトリックス樹脂と強化繊維との界面特性が十分でなく、強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観に改善の余地があることを見出した。
【0005】
かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、マトリックス樹脂と強化繊維との界面特性を向上させ、強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観に優れた連続繊維強化樹脂複合材料、及びその製造方法、並びに連続繊維強化樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、連続繊維強化樹脂複合材料の界面の粘弾性特性を工夫することで、高い強度及び剛性と、優れた界面特性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観とを有する連続繊維強化樹脂複合材料が得られることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料であって、
前記連続繊維強化樹脂複合材料の前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度が80℃以上であり、
前記連続強化繊維が、ガラス繊維の織物、一方向材、又はノンクリンプファブリックであり、
前記熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドとを、(A):(B)=50~99:50~1の質量比で含有し、前記熱可塑性樹脂に含まれるポリアミド100質量%中の、前記(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、20~50質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が15000~35000である
ことを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料。
[2]
前記連続繊維強化樹脂複合材料のプッシュアウト試験による界面強度が1.58~5.00mN/μmである、[1]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[3]
下記式で表される前記連続繊維強化樹脂複合材料の界面定数が20~100である、[1]又は[2]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
(界面定数)=(連続繊維強化樹脂複合材料のカルボキシル末端基の濃度[μmol/g])×(界面が剥離する研磨圧力[MPa])×(強化繊維径[μm])/(強化繊維密度[g/cm3])2
[4]
前記連続強化繊維複合材料がラマンピークを950~1050cm-1に有する、[1]~[3]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[5]
前記連続繊維強化樹脂複合材料のX線回折の(1,0,0)面のピーク強度が(0,1,0)面のピーク強度よりも強い、[1]~[4]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[6]
前記連続繊維強化樹脂複合材料のX線回折において、(1,1,0)面のピークが検出される、[1]~[5]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[7]
前記(A)脂肪族ポリアミド及び前記(B)半芳香族ポリアミド1gに対する当量として表される封止された末端量が、5~180μ当量/gである、[1]~[6]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[8]
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂成形体であって、
前記連続繊維強化樹脂複成形体の前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度が80℃以上であり、前記連続繊維強化樹脂成形体のプッシュアウト試験による界面強度が1.58~5.00mN/μmであり、板状、枠状、箱状、又はこれらの組み合わせの形状を有し、
前記連続強化繊維が、ガラス繊維の織物、一方向材、又はノンクリンプファブリックであり、
前記熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドとを、(A):(B)=50~99:50~1の質量比で含有し、前記熱可塑性樹脂に含まれるポリアミド100質量%中の、前記(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、20~50質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が15000~35000である
ことを特徴とする、連続繊維強化樹脂成形体。
[9]
連続強化繊維と熱可塑性樹脂を複合化する、[1]~[7]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法であって、
前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との動的濡れ性が3.0sec以下であることを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
[10]
前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との静的濡れ性試験による接触角が38°以下である、[9]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
[11]
前記熱可塑性樹脂が2種類以上からなり、前記2種類以上の熱可塑性樹脂の各樹脂と前記連続強化繊維との動的濡れ性の差の最大値が3sec以上である、[9]又は[10]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
[12]
前記(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度が、前記(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下である、[9]~[11]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
[13]
前記(A)脂肪族ポリアミドと前記(B)半芳香族ポリアミドのtanδのピーク温度の差が、45~100℃である、[9]~[12]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
[14]
前記(A)脂肪族ポリアミドの重量平均分子量MwAが、前記(B)半芳香族ポリアミドの重量平均分子量MwBの1.5倍以上である、[9]~[13]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体は、高い強度及び剛性と、優れた界面特性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観とを発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
[連続繊維強化樹脂複合材料]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料であって、上記連続繊維強化樹脂複合材料の連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度が80℃以上であることを特徴とする。
本明細書において、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を、単に「複合材料」と称する場合がある。
【0010】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の損失正接tanδのピーク温度とは、温度を変化させながらそれぞれの温度で連続強化繊維と熱可塑性樹脂の界面のtanδを測定したときに、tanδの値が極大となるときの温度を意味する。極大となる温度が2つ以上ある場合は、その中で極大値が最大となるピークの温度をtanδのピーク温度とする。tanδのピーク温度は、例えば、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維の長さ方向に直行する断面における連続強化繊維の単糸1本に対して、ナノインデンターを用いて特定の周波数の振動を与えてナノインデンテーション(nanoDMA)することによって求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
連続繊維強化樹脂複合材料のtanδのピーク温度は、80℃以上であり、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。
連続繊維強化樹脂複合材料のtanδのピーク温度を上記範囲に調整する方法としては、例えば、樹脂中の芳香族環濃度を調整し、静的濡れ性を調整する方法が挙げられ、樹脂中の芳香族環濃度を上げ、静的濡れ性試験による接触角を小さくするとtanδのピーク温度が上昇する傾向にある。
【0011】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、ラマンピーク(ラマンスペクトルのピーク)を950~1050cm-1に有することが好ましく、970~1030cm-1に有することがより好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料のラマンピークは、例えば、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維の長さ方向に直行する断面における、樹脂領域のラマンスペクトルをレーザーラマン顕微鏡により測定することで求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。ラマンピークが上記範囲であると、強度、剛性、吸水特性、高温特性、外観が良好となる傾向にある。
【0012】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、X線回折の(1,0,0)面のピーク強度I(1,0,0)が(0,1,0)面のピーク強度I(0,1,0)よりも強いことが好ましい。具体的には、(1,0,0)面のピーク強度I(1,0,0)に対する(0,1,0)面のピーク強度I(0,1,0)の比率(I(0,1,0)/I(1,0,0))が、0.30~0.95であることが好ましく、0.40~0.90であることがより好ましく、0.50~0.87であることが更に好ましい。比率(I(0,1,0)/I(1,0,0))が上記範囲であると、強度、剛性、吸水特性、衝撃特性、高温特性、外観が良好となる傾向にある。
【0013】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、X線回折において、(1,1,0)面のピークが検出されることが好ましい。(1,1,0)面のピークが検出されると、強度、剛性、吸水特性、衝撃特性、高温特性、外観が良好となる傾向にある。
連続繊維強化樹脂複合材料のX線回折のピークは、例えば、X線回折装置を用いることで測定でき、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の界面強度(連続繊維強化樹脂複合材料のマトリックス樹脂と強化繊維との界面強度)は、1.58mN/μm以上であることが好ましく、1.65mN/μm以上であることがより好ましく、1.75mN/μm以上であることが更に好ましく、1.85mN/μm以上であることがより更に好ましい。また、界面強度は、5.00mN/μm以下であることが好ましく、4.50mN/μm以下であることがより好ましく、3.50mN/μm以下であることが更に好ましい。界面強度が上記範囲であると、強度、剛性、吸水特性、衝撃特性、高温特性が向上する傾向にある。
連続繊維複合材料の界面強度は、例えば、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維の長さ方向に直行する断面における連続強化繊維の単糸1本に対して、ナノインデンターを用いてプッシュアウト試験を行うことで求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料のプッシュアウト試験による界面強度を上記範囲に調整する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂と連続強化繊維との動的濡れ性と静的濡れ性とを調整する方法が挙げられ、動的濡れ性を小さくし、静的濡れ性試験による接触角を小さくすると界面強度が上昇する傾向にある。
【0015】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、下記式で表される界面定数が20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましく、65以上であることがより更に好ましい。また、界面定数は、100以下であることが好ましく、90以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
(界面定数)=(連続繊維強化樹脂複合材料のカルボキシル末端基の濃度[μmol/g])×(界面が剥離する研磨圧力[MPa])×(強化繊維径[μm])/(強化繊維密度[g/cm3])2
界面定数が上記範囲であると、強度、剛性、吸水特性、高温特性が良好となる傾向にある。
【0016】
上記式について、「連続繊維強化樹脂複合材料のカルボキシル末端基の濃度」は、1H-NMRを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
「界面が剥離する研磨圧力」とは、連続繊維強化樹脂の厚さ方向断面(連続強化繊維の長さ方向に直交する断面)を所定の大きさに切り出し、圧力を変えて研磨を行い、研磨後のサンプルのSEM観察を行った際に、連続強化繊維の長さ方向に直交する断面における該連続強化繊維1本と熱可塑性樹脂との間の極界面に空隙が生じた圧力である。
「強化繊維径」は、連続繊維強化樹脂の厚さ方向断面(連続強化繊維の長さ方向に直交する断面)を所定の大きさに切り出し、研磨を行い、研磨後のサンプルのSEM観察を行った際に、連続強化繊維の長さ方向に直交する断面における連続強化繊維の略丸断面から、連続強化繊維10本以上の直径を測定し、その平均値として求めることができる。
「強化繊維密度」は、連続繊維強化樹脂の熱可塑性樹脂を、例えば電気炉により焼き飛ばし、残った連続強化繊維を比重計により測定することで求めることができる。
【0017】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の引張応力(23℃、50%RH)は、500MPa以上であることが好ましく、540MPa以上であることがより好ましい。
また、連続繊維強化樹脂複合材料の80℃での引張応力保持率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、連続繊維強化樹脂複合材料の吸水時の引張応力保持率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
なお、引張応力は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。吸水時の引張応力については、試験片を80℃の恒温水槽に18時間浸漬したのち、80℃、57%RHの恒温恒湿槽中に150時間以上放置し、質量が一定になるまで調湿したものを吸水時のサンプルとすることができる。
80℃での引張応力保持率(%)及び吸水時の引張応力保持率(%)は、それぞれ下記式により求めることができる。
80℃での引張応力保持率=(80℃、50%RHでの引張応力/23℃、50%RHでの引張応力)×100
吸水時の引張応力保持率=(吸水時の引張応力/23℃、50%RHでの引張応力)×100
【0018】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の曲げ応力(23℃、50%RH)は、700MPa以上であることが好ましく、800MPa以上であることがより好ましい。
また、連続繊維強化樹脂複合材料の80℃での曲げ応力保持率は、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。
また、連続繊維強化樹脂複合材料の吸水時の曲げ応力保持率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
なお、曲げ応力は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。吸水時の曲げ応力については、上述の吸水時の引張応力測定用の試験片を同様に用いて測定することができる。
80℃での曲げ応力保持率(%)及び吸水時の曲げ応力保持率(%)は、それぞれ下記式により求めることができる。
80℃での曲げ応力保持率=(80℃、50%RHでの曲げ応力/23℃、50%RHでの曲げ応力)×100
吸水時の曲げ応力保持率=(吸水時の曲げ応力/23℃、50%RHでの曲げ応力)×100
【0019】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の曲げ弾性率(23℃、50%RH)は、26GPa以上であることが好ましく、27GPa以上であることがより好ましい。
また、連続繊維強化樹脂複合材料の80℃での曲げ弾性率保持率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、連続繊維強化樹脂複合材料の吸水時の曲げ弾性率保持率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
なお、曲げ弾性率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。吸水時の曲げ弾性率については、上述の吸水時の引張応力測定用の試験片を同様に用いて測定することができる。
80℃での曲げ弾性率保持率(%)及び吸水時の曲げ弾性率保持率(%)は、それぞれ下記式により求めることができる。
80℃での曲げ弾性率保持率=(80℃、50%RHでの曲げ弾性率/23℃、50%RHでの曲げ弾性率)×100
吸水時の曲げ弾性率保持率=(吸水時の曲げ弾性率/23℃、50%RHでの曲げ弾性率)×100
【0020】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の衝撃強度は、5.0kN/m以上であることが好ましく、5.5kN/m以上であることがより好ましい。
衝撃強度は、高速衝撃試験(JIS K7211-2;2006に準拠)により求めた最大衝撃強度(kN)を試験片の厚みで割った値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
(連続繊維強化樹脂複合材料の形態)
連続繊維強化樹脂複合材料の形態は、特に制限されず、以下の種々の形態が挙げられる。例えば、連続強化繊維の織物や編み物、組紐、パイプ状のものと熱可塑性樹脂とを複合化した形態、一方向に引き揃えた連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを複合化した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる糸を一方向に引き揃えて成形した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる糸を織物や編み物、組紐、パイプ状にして成形した形態、が挙げられる。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、平板であってよく、連続強化繊維の層と熱可塑性樹脂との層を含む積層体であってよい。例えば、連続強化繊維の長さ方向が平板の表面に略平行に配置されていてもよく、このとき、連続繊維強化樹脂複合材料における連続強化繊維の長さ方向に直行する断面は、連続繊維強化樹脂複合材料の厚さ方向断面としてよい。なお連続強化繊維の層とは、連続強化繊維(例えば、連続強化繊維基材)を含む層であり、連続強化繊維の内部に熱可塑性樹脂が含浸している層であってよい。
連続繊維強化樹脂複合材料の成形前の中間材料の形態としては、連続強化繊維と樹脂繊維との混繊糸、連続強化繊維の束の周囲を樹脂で被覆したコーティング糸、連続強化繊維に予め樹脂を含浸させテープ状にしたもの、連続強化繊維を樹脂のフィルムで挟んだもの、連続強化繊維に樹脂パウダーを付着させたもの、連続強化繊維の束を芯材としてその周囲を樹脂繊維で組紐としたもの、強化繊維の間に予め樹脂を含浸させたもの等が挙げられる。
【0022】
(連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法)
連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法は、特に制限されず、以下の種々の方法が挙げられる。
例えば、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材(例えば、連続強化繊維からなる基材、熱可塑性樹脂からなる基材)を、所望の複合材料に合わせて裁断し、目的とする製品の厚みを考慮して必要枚数積層させ、金型形状に合わせてセットする。
【0023】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法としては、熱可塑性樹脂と連続強化繊維とを複合化する方法であって、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との動的濡れ性が3.0sec以下であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂は2種類以上からなることが好ましい。
【0024】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂との動的濡れ性は、例えば、はんだ濡れ性試験機を用いて、溶融した熱可塑性樹脂に連続強化繊維の単糸を浸漬させ、連続強化繊維が熱可塑性樹脂に接して、荷重が負の極大値を取った時間から、荷重が0に戻るまでの時間(濡れ時間)を測定することにより評価することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
連続強化繊維と熱可塑性樹脂との動的濡れ性は、3.0sec以下であることが好ましく、2.5sec以下であることがより好ましく、2.0sec以下であることが更に好ましい。動的濡れ性が上記範囲であると、良好な界面を形成することができる。
また、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料が2種類以上の熱可塑性樹脂を含む場合、各熱可塑性樹脂間の動的濡れ性の差の最大値が3sec以上であってもよい。
【0025】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂との静的濡れ性試験による接触角は、38°以下であることが好ましく、36°以下であることがより好ましく、34°以下であることが更に好ましく、32°以下であることがより更に好ましく、30°以下であることが特に好ましい。静的濡れ性試験による接触角が上記範囲であると、良好な界面を形成することができる。
静的濡れ性試験による接触角は、例えば、ガラスカバーに連続強化繊維の単糸と熱可塑性樹脂のフィルムとを挟み、温度を上げた際の連続強化繊維と樹脂との接触角を光学顕微鏡で観察することで、測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
基材の裁断は、1枚ずつ行ってもよいし、所望の枚数を重ねてから行ってもよい。生産性の観点からは、重ねた状態で裁断することが好ましい。裁断する方法は任意の方法でよく、例えば、ウォータージェット、刃プレス機、熱刃プレス機、レーザー、プロッター等があげられる。断面形状にすぐれ、更に、複数を重ねて裁断する際に端面を溶着することで取扱い性がよくなる熱刃プレス機が好ましい。適切な裁断形状は、トライアンドエラーを繰り返すことでも調整できるが、金型の形状にあわせてCAE(computer aided engineering)によるシミュレーションを行うことで設定することが好ましい。
【0027】
基材を金型にセットした後に金型を閉じて圧縮する。そして、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度に金型を温調して熱可塑性樹脂を溶融させ賦型する。型締め圧力に特に規定はないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上である。また、ガス抜き等をするために一旦型締めをし、圧縮成形した後に一旦金型の型締め圧力を解除してもよい。圧縮成形の時間は、強度発現の観点からは、使用される熱可塑性樹脂が熱劣化しない範囲で長いほうが好ましいが、生産性の観点からは、好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内が適している。
【0028】
連続繊維強化樹脂複合材料は、さらにハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填してハイブリッド成形体としてもよい。ハイブリッド成形体の製造工程においては、金型内に基材をセットして金型を閉じ、加圧し、所定の時間後に、更に所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填して成形し、熱可塑性樹脂と、所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物とを接合させることにより、ハイブリッド成形体を製造してもよい。
【0029】
所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、両熱可塑性樹脂間の界面強度に大きく影響する。所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、基材を金型内にセットして金型を閉じた後に金型温度が熱可塑性樹脂の融点、ガラス転移温度以上に昇温してから、30秒以内が好ましい。
所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填する時の金型温度は、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物と接合する、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点以上又はガラス転移温度以上であることが好ましい。より好ましくは、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物と接合する、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点+10℃以上又はガラス転移温度+10℃以上であり、更に好ましくは、融点+20℃以上又はガラス転移温度+20℃以上、更により好ましくは融点+30℃以上又はガラス転移温度+30℃以上である。
【0030】
ハイブリッド成形体において、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂と、射出成形により形成されたハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物の接合部分は、互いに混じり合った凹凸構造となっていることが好ましい。
金型温度を射出するハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物の融点以上とし、射出成形時の樹脂保圧を高く、例えば、1MPa以上とすることは界面強度を高める上で有効である。界面強度を高めるためには、保圧を5MPa以上とすることが好ましく、10MPa以上とすることがより好ましい。
保圧時間を長く、例えば5秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは金型温度が熱可塑性樹脂組成物の融点以下になるまでの間の時間保持することは、界面強度を高める観点から好ましい。
【0031】
(射出成形用の樹脂)
ハイブリッド成形体を製造するために用いる射出成形用のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物としては、一般の射出成形に使用される熱可塑性樹脂組成物であれば特に限定されない。
ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の一種又は二種以上を混合した樹脂組成物が挙げられる。
【0032】
ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物には、各種充填材が配合されていてもよい。ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物は、着色剤を含む、黒色の樹脂組成物としてよい。
各種充填材としては、上記連続強化繊維と同種の材料の不連続強化材料である短繊維、長繊維材料等が挙げられる。
不連続強化材料にガラス短繊維、長繊維を用いる場合、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する上記連続強化繊維に塗布される集束剤と同様のもの用いてもよい。
サイジング剤(集束剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。シランカップリング剤、潤滑剤、結束剤の種類に関しては、上記連続強化繊維の集束剤と同様のものが使用できる。
【0033】
射出成形に用いるハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、接合する熱可塑性樹脂との界面強度の観点から、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する接合面の熱可塑性樹脂と類似のものが好ましく、同種類のものがより好ましい。具体的には、接合面の熱可塑性樹脂にポリアミド66を用いた場合には、射出成形用のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物の樹脂材料は、ポリアミド66が好ましい。
【0034】
その他として、基材を金型に設置してダブルベルトプレス機により圧縮する成形方法や、設置した基材の四方を囲むように型枠を設置し、ダブルベルトプレス機により加圧し成形する方法や、一つ又は複数の温度に設定した加熱用の圧縮成形機と、一つ又は複数の温度に設定した冷却用の圧縮成形機を用意し、基材を設置した金型を順番に、圧縮成形機に投入して成形する成形方法などが挙げられる。
【0035】
(連続強化繊維)
連続強化繊維としては、通常の連続繊維強化樹脂複合材料に使用されるものを用いてよい。
連続強化繊維としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維等が挙げられる。
機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維が好ましく、生産性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
連続強化繊維として、ガラス繊維を選択する場合、集束剤を用いてもよく、サイジング剤(集束剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましく、連続強化繊維の周りを被膜する樹脂と強い結合を作る集束剤であることにより、空隙率の少ない連続繊維強化樹脂複合材料を得ることができ、合成樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合には、集束剤は熱可塑性樹脂用の集束剤であることが好ましい。熱可塑性樹脂用の集束剤とは、例えば、ポリアミド樹脂を合成樹脂として選択する場合、シランカップリング剤として、ポリアミド樹脂の末端基であるカルボキシル基とアミノ基と結合しやすいものを選択する必要がある。具体的には例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシランやエポキシシランが挙げられる。結束剤としてはポリアミド樹脂と濡れ性のよい、又は表面張力の近い樹脂を用いる必要がある。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂のエマルジョンやポリアミド樹脂のエマルジョンやその変性体を選択することができる。潤滑剤としてはシランカップリング剤と結束剤を阻害しないものを用いる必要があり、例えば、カルナウバワックスが挙げられる。
【0036】
-シランカップリング剤-
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられ、界面接着強度向上に寄与する。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類、マレイン酸類等が挙げられる。合成樹脂としてポリアミドを用いる際には、アミノシラン類やマレイン酸類が好ましく、合成樹脂としてエポキシ樹脂を用いる際にはエポキシシラン類が好ましい。
【0037】
-潤滑剤-
潤滑剤は、ガラス繊維の開繊性向上に寄与する。
潤滑剤としては、目的に応じた通常の液体又は固体の任意の潤滑材料が使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系又は鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系エステル、芳香族系エーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
-結束剤-
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上に寄与する。
結束剤としては、目的に応じたポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。
結束剤としてのポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m-キシリレンジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)及びイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン系樹脂も好適に使用される。
アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000~90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~25,000である。
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。共重合性モノマーとして、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸のホモポリマー及びコポリマーの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20~90%とすることが好ましく、40~60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000~50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、複合成形体とした際の特性向上の観点から50,000以下が好ましい。
【0039】
結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。結束剤として用いられる熱可塑性樹脂は、連続強化繊維の周囲を被覆する樹脂と同種の熱可塑性樹脂及び/又は変性熱可塑性樹脂であると、複合材料となった後、ガラス繊維と熱可塑性樹脂の接着性が向上し、好ましい。
【0040】
更に、一層、連続強化繊維とそれを被覆する熱可塑性樹脂の接着性を向上させ、集束剤を水分散体としてガラス繊維に付着させる場合において、乳化剤成分の比率を低減、あるいは乳化剤不要とできる等の観点から、結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、変性熱可塑性樹脂が好ましい。
ここで、変性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂の主鎖を形成し得るモノマー成分以外に、その熱可塑性樹脂の性状を変化させる目的で、異なるモノマー成分を共重合させ、親水性、結晶性、熱力学特性等を改質したものを意味する。
結束剤として用いられる変性熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリアミド系樹脂、変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
結束剤としての変性ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、公知の方法で製造できる。オレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、オレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。
【0041】
オレフィン系モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられ、これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレフィン系モノマーと、当該オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合比率としては、共重合の合計質量を100質量%として、オレフィン系モノマー60~95質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー5~40質量%であることが好ましく、オレフィン系モノマー70~85質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー15~30質量%であることがより好ましい。オレフィン系モノマーが60質量%以上であれば、マトリックスとの親和性が良好であり、また、オレフィン系モノマーの質量%が95質量%以下であれば、変性ポリオレフィン系樹脂の水分散性が良好で、連続強化繊維への均一付与が行いやすい。
【0042】
結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂は、共重合により導入したカルボキシル基等の変性基が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類が挙げられる。結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、5,000~200,000が好ましく、50,000~150,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から5,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から200,000以下が好ましい。
【0043】
結束剤として用いられる変性ポリアミド系樹脂とは、分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖や3級アミン成分等の親水基を導入した変性ポリアミド化合物であり、公知の方法で製造できる。
分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖を導入する場合は、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の一部又は全部をジアミン又はジカルボン酸に変性したものを共重合して製造される。3級アミン成分を導入する場合は、例えばアミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、α-ジメチルアミノε-カプロラクタム等を共重合して製造される。
【0044】
結束剤として用いられる変性ポリエステル系樹脂とは、ポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合体で、かつ末端を含む分子骨格中に親水基を有する樹脂であり、公知の方法で製造できる。
親水基としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド基、スルホン酸塩、カルボキシル基、これらの中和塩等が挙げられる。ポリカルボン酸又はその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホテレフタル酸塩、5-スルホイソフタル酸塩、5-スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
これらの中で、変性ポリエステル系樹脂の耐熱性を向上させる観点から、全ポリカルボン酸成分の40~99モル%が芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。また、変性ポリエステル系樹脂を水分散液とする場合の乳化安定性の観点から、全ポリカルボン酸成分の1~10モル%がスルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
【0045】
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリオールとしては、ジオール、3官能以上のポリオール等が挙げられる。
ジオールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。3官能以上のポリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0046】
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合比率としては、共重合成分の合計質量を100質量%として、ポリカルボン酸又はその無水物40~60質量%、ポリオール40~60質量%であることが好ましく、ポリカルボン酸又はその無水物45~55質量%、ポリオール45~55質量%がより好ましい。
変性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量としては、3,000~100,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から3,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から100,000以下が好ましい。
【0047】
結束剤として用いる、ポリマー、熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結束剤の全量を100質量%として、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩より選択された1種以上のポリマーを50質量%以上、60質量%以上用いることがより好ましい。
【0048】
-ガラス繊維用の集束剤の組成-
連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、当該ガラス繊維の集束剤においては、それぞれ、シランカップリング剤を0.1~2質量%、潤滑剤を0.01~1質量%、結束剤を1~25質量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することが好ましい。
ガラス繊維用の集束剤におけるシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、0.1~2質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1質量%、更に好ましくは0.2~0.5質量%である。
【0049】
ガラス繊維用の集束剤における潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
ガラス繊維用の集束剤における結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、好ましくは1~25質量%、より好ましくは3~15質量%、更に好ましくは3~10質量%である。
【0050】
-ガラス繊維用の集束剤の使用態様-
ガラス繊維用の集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整してもよいが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液の形態とすることが好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する連続強化繊維としてのガラス繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維を乾燥することによって連続的に得られる。
集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与する。
ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付与量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0051】
尚、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合には、集束剤は、カップリング剤、潤滑剤、結束剤からなることが好ましい。カップリング剤としては炭素繊維の表面に存在する水酸基と相性の良いもの、結束剤としては選択した合成樹脂と、濡れ性が良いものや表面張力の近いもの、潤滑剤としてはカップリング剤と結束剤を阻害しないものを選択することができる。
【0052】
その他の連続強化繊維を用いる場合、連続強化繊維の特性に応じ、ガラス繊維、炭素繊維に用いる集束剤の種類、付与量を適宜選択すればよく、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
【0053】
-連続強化繊維の形状-
連続強化繊維は複数本のフィラメントからなるマルチフィラメントであり、単糸数は、取扱い性の観点から30~15,000本であることが好ましい。連続強化繊維の単糸径は、強度の観点、及び、取り扱い性の観点から2~30μmであることが好ましく、4~25μmであることがより好ましく、6~20μmであることが更に好ましく、8~18μmであることが最も好ましい。
連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RDは、連続強化繊維の取り扱い性と複合材料の強度の観点から、好ましくは5~100μm・g/cm3、より好ましくは10~50μm・g/cm3、更に好ましくは15~45μm・g/cm3、より更に好ましくは20~45μm・g/cm3である。
【0054】
密度Dは比重計により測定することができる。他方、単糸径(μm)は、密度(g/cm
3)と繊度(dtex)、単糸数(本)から、以下の式:
【数1】
により算出することができる。
【0055】
連続強化繊維の積RDを所定の範囲とするには、市販で入手可能な連続強化繊維について、連続強化繊維の有する密度に応じて、繊度(dtex)及び単糸数(本)を適宜選択すればよい。例えば、連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、密度が約2.5g/cm3であるから、単糸径が2~40μmのものを選べばよい。具体的には、ガラス繊維の単糸径が9μmである場合、繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、23となる。また、ガラス繊維の単糸径が17μmである場合、繊度11,500dtexで単糸数2,000本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、43となる。連続強化繊維として炭素繊維を用いる場合、密度が約1.8g/cm3であるから、単糸径が2.8~55μmのものを選べばよい。具体的には、炭素繊維の単糸径が7μmである場合、繊度2,000dtexで単糸数3,000本の炭素繊維を選択することにより、積RDは、13となる。連続強化繊維としてアラミド繊維を用いる場合、密度が約1.45g/cm3であるから、単糸径が3.4~68μmのものを選べばよい。具体的には、アラミド繊維の単糸径が12μmである場合、繊度1,670dtexで単糸数1,000本のアラミド繊維を選択することにより、積RDは、17となる。
連続強化繊維、例えば、ガラス繊維は、原料ガラスを計量、混合し、溶融炉で溶融ガラスとし、これを紡糸してガラスフィラメントとし、集束剤を塗布し、紡糸機を経て、ダイレクトワインドロービング(DWR)、ケーキ、撚りを入れたヤーン等の巻き取り形態として製造される。連続強化繊維はどのような形態でも構わないが、ヤーン、ケーキ、DWRに巻き取ってあると、樹脂を被覆させる工程での生産性、生産安定性が高まるため好ましい。生産性の観点からはDWRが最も好ましい。
【0056】
連続強化繊維の形態は、特に制限されず、織物や編み物、組紐、パイプ状のもの、ノンクリンプファブリック、一方向材等、種々の形態が挙げられる。中でも、織物、ノンクリンプファブリック、一方向材の形態で好ましく用いられる。
【0057】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂は、2種類以上であることが好ましい。2種類以上の熱可塑性樹脂を適宜組み合わせることにより、連続繊維強化樹脂複合材料の物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)を調整することができる。
また、前記2種類以上の熱可塑性樹脂は相溶していることが好ましい。連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる2種類以上の熱可塑性樹脂が互いに相溶していると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂が相溶している状態とは、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維の長さ方向に直行する断面において、熱可塑性樹脂を電子染色し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したときに、複数の熱可塑性樹脂によるドメインが形成されていない状態をいう。具体的には、後述の実施例に記載の方法により観察することができる。
【0058】
熱可塑性樹脂の粘度は、強度、剛性、成形性、外観の観点から50g/10min以下であることが好ましく、40g/10min以下であることがより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂の粘度は、MFR測定(ISO1133に準拠)により求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により観察することができる。
【0059】
2種類以上の熱可塑性樹脂の内、最も質量割合が大きい樹脂は、高温特性と吸水特性の観点から、二番目に質量割合が大きい樹脂の5倍以下の質量割合であることが好ましく、4倍以下の質量割合であることがより好ましく、3倍以下の質量割合であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂の質量割合が上記範囲であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
【0060】
熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド612、ポリアミド6I等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0061】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が更に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂がより更に好ましい。
【0062】
-ポリエステル系樹脂-
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。
ポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、ホモポリエステルであってもよく、また、共重合ポリエステルであってもよい。
共重合ポリエステルの場合、ホモポリエステルに適宜第3成分を共重合させたものが好ましく、第3成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。
また、バイオマス資源由来の原料を用いたポリエステル系樹脂を用いることもでき、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0063】
-ポリアミド系樹脂-
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、全芳香族系ポリアミド等があげられる。
【0064】
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカンラクタムやドデカラクタムが挙げられる。
ω-アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸が挙げられる。ラクタム又はω-アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2-メチルペンタンジアミンや2-エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p-フェニレンジアミンやm-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
【0065】
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)等の半芳香族ポリアミド、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合体、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合体が挙げられる。
【0066】
ポリアミド樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドを50~99質量部、及び、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドを1~50質量部、を含有することが好ましい。
熱可塑性樹脂が、上記範囲の(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドを含むと、ポリアミドとして(A)脂肪族ポリアミドのみを含む場合と比較して、連続繊維強化樹脂複合材料の物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂100質量%に対して、(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの合計含有量は、70~100質量%であることが好ましく、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
【0067】
上記(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとを含む熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、15000~35000であることが好ましく、17000~35000であることがより好ましく、20000~35000であることが更に好ましく、より更に好ましくは22000~34000であり、24000~33000が特に好ましく、25000~32000が最も好ましい。上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、上記範囲であると、強度、剛性が向上する傾向にある。
また、上記熱可塑性樹脂において、(A)脂肪族ポリアミドの重量平均分子量MwAは、(B)半芳香族ポリアミドの重量平均分子量MwBの1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。MwAがMwBの1.5倍以上であると、強度、剛性が向上する傾向にある。
なお、熱可塑性樹脂、(A)脂肪族ポリアミド、及び(B)半芳香族ポリアミドの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により観察することができる。
【0068】
上記(A)脂肪族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等が挙げられる。
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(A)脂肪族ポリアミドの含有量は、50~99質量%であることが好ましく、より好ましくは60~90質量%、更に好ましくは70~80質量%である。
【0069】
上記(B)半芳香族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド10I等が挙げられる。
上記イソフタル酸単位及び炭素数4~10のジアミン単位の合計量は、(B)半芳香族ポリアミドの全構成単位100モル%に対して、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることが更に好ましい。
なお、(B)半芳香族ポリアミドを構成する単量体単位の割合は、例えば、13C核磁気共鳴分光法(NMR)により測定することができる。
【0070】
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合は、少なくとも75モル%であり、好ましくは85モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
【0071】
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合は、少なくとも50モル%であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
【0072】
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~40質量%、更に好ましくは20~30質量%である。
【0073】
上記(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドは、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよく、(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとを合わせたポリアミド1gに対する当量として表される(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの封止された末端量の合計が、5~180μ当量/gであることが好ましく、10~170μ当量/gがより好ましく、20~160μ当量/gがさらに好ましく、30~140μ当量/gが特に好ましく、40~140μ当量/gが最も好ましい。封止された末端量が、上記範囲であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
ここで、封止された末端量とは、封止剤により封止されたアミノ末端及びカルボキシル末端の合計量である。封止された末端量は、1H-NMRを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0074】
(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度は、(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であることが好ましく、2/5以下であることがより好ましい。(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度が(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度は、1H-NMRを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0075】
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとは、tanδのピーク温度の差が45~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましく、60~90℃であることが更に好ましい。(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとのtanδのピーク温度の差が、上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドのtanδのピーク温度は、例えば、粘弾性測定解析装置を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0076】
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとの粘度の差が3倍以上であることが強度、剛性、成形性、外観の観点から好ましく、4倍以上であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の粘度はMFR測定(ISO1133に準拠)により求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により観察することができる。
【0077】
(着色剤)
熱可塑性樹脂は着色剤を含んでいてもよい。
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アルミ顔料、二酸化チタン、群青、シアニンブルー、シアニングリーン、キナクリドン、珪藻土、モノアゾ塩、ペリレン、ジスアゾ、縮合アゾ、イソインドリン、弁柄、ニッケルチタンイエロー、ジケトンピロロピロール、金属塩、ペリレンレッド、金属酸化物、バナジン酸ビスマス、コバルトグリーン、コバルトブルー、アンスラキノン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等が挙げられる。中でも、黒色の着色剤が好ましく、カーボンブラック、ニグロシンがより好ましい。
【0078】
(連続繊維強化樹脂複合材料の用途)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、航空機、車、建設材料、ロボット等の構造材料用途に好適に使用することができる。
車用途においては、以下に限定されるものではないが、例えば、シャーシ/フレーム、足回り、駆動系部品、内装部品、外装部品、機能部品、その他部品に使用できる。
具体的には、ステアリング軸、マウント、サンルーフ、ステップ、スーフトリム、ドアトリム、トランク、ブートリッド、ボンネット、シートフレーム、シートバック、リトラクター、リタラクター支持ブラケット、クラッチ、ギア、プーリー、カム、アーゲー、弾性ビーム、バッフリング、ランプ、リフレクタ、グレージング、フロントエンドモジュール、バックドアインナー、ブレーキペダル、ハンドル、電装材、吸音材、ドア外装、内装パネル、インパネ、リアゲート、天井ハリ、シート、シート枠組み、ワイパー支柱、EPS(Electric Power Steering)、小型モーター、ヒートシンク、ECU(Engine Control Unit)ボックス、ECUハウジング、ステアリングギアボックスハウジング、プラスチックハウジング、EV(Electric Vehicle)モーター用筐体、ワイヤーハーネス、車載メーター、コンビネーションスイッチ、小型モーター、スプリング、ダンパー、ホイール、ホイールカバー、フレーム、サブフレーム、サイドフレーム、二輪フレーム、燃料タンク、オイルパン、インマニ、プロペラシャフト、駆動用モーター、モノコック、水素タンク、燃料電池の電極、パネル、フロアパネル、外板パネル、ドア、キャビン、ルーフ、フード、バルブ、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブ、可変バルブタイミングユニット、コネクティングロッド、シリンダボア、メンバー(エンジンマウンティング、フロントフロアクロス、フットウェルクロス、シートクロス、インナーサイド、リヤクロス、サスペンション、ピラーリーンフォース、フロントサイド、フロントパネル、アッパー、ダッシュパネルクロス、ステアリング)、トンネル、締結インサート、クラッシュボックス、クラッシュレール、コルゲート、ルーフレール、アッパボディ、サイドレール、ブレーディング、ドアサラウンドアッセンブリー、エアバッグ用部材、ボディーピラー、ダッシュツゥピラーガセット、サスペンジョンタワー、バンパー、ボディーピラーロワー、フロントボディーピラー、レインフォースメント(インパネ、レール、ルーフ、フロントボディーピラー、ルーフレール、ルーフサイドレール、ロッカー、ドアベルトライン、フロントフロアアンダー、フロントボディーピラーアッパー、フロントボディーピラーロワー、センターピラー、センターピラーヒンジ、ドアアウトサイドパネル)、サイドアウターパネル、フロントドアウインドゥフレーム、MICS(Minimum Intrusion Cabin System)バルク、トルクボックス、ラジエーターサポート、ラジエーターファン、ウォーターポンプ、燃料ポンプ、電子制御スロットルボディ、エンジン制御ECU、スターター、オルタネーター、マニホールド、トランスミッション、クラッチ、ダッシュパネル、ダッシュパネルインシュレータパッド、ドアサイドインパクトプロテクションビーム、バンパービーム、ドアビーム、バルクヘッド、アウタパッド、インナパッド、リヤシートロッド、ドアパネル、ドアトリムボドサブアッセンブリー、エネルギーアブソーバー(バンパー、衝撃吸収)、衝撃吸収体、衝撃吸収ガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、ルーフサイドインナーガーニッシュ、樹脂リブ、サイドレールフロントスペーサー、サイドレールリアスペーサー、シートベルトプリテンショナー、エアバッグセンサー、アーム(サスペンション、ロアー、フードヒンジ)、サスペンションリンク、衝撃吸収ブラケット、フェンダーブラケット、インバーターブラケット、インバーターモジュール、フードインナーパネル、フードパネル、カウルルーバー、カウルトップアウターフロントパネル、カウルトップアウターパネル、フロアサイレンサー、ダンプシート、フードインシュレーター、フェンダーサイドパネルプロテクター、カウルインシュレーター、カウルトップベンチレータールーパー、シリンダーヘッドカバー、タイヤディフレクター、フェンダーサポート、ストラットタワーバー、ミッションセンタートンネル、フロアトンネル、ラジコアサポート、ラゲッジパネル、ラゲッジフロア、アクセルペダル、アクセルペダルベース等の部品として好適に使用することができる。
【0079】
[複合材料の成形]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、さらに成形することができる。上記の方法としては、例えば、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を、所定の大きさに切りだし、赤外線ヒーターで加熱し、プレス成形機で加熱圧縮プレスする方法等が挙げられる。
【0080】
[連続繊維強化樹脂成形体]
本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂成形体であって、前記連続繊維強化樹脂複成形体の連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度が80℃以上であり、前記連続繊維強化樹脂成形体のプッシュアウト試験による界面強度が1.58~5.00mN/μmであり、板状、枠状、箱状、又はこれらの組み合わせの形状を有することを特徴とする。
【0081】
本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体に含まれる連続強化繊維は、上述の連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維と同様としてよい。
また、本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体に含まれる熱可塑性樹脂は、上述の連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂と同様としてよい。
【0082】
本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体は、上述の連続繊維強化樹脂複合材料のtanδのピーク温度と同様に定義されるtanδのピーク温度が80℃以上であり、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。tanδのピーク温度が上記範囲であると、強度、剛性、吸水特性、衝撃特性、高温特性が向上する傾向にある。
連続繊維強化樹脂成形体のtanδのピーク温度を上記範囲に調整する方法としては、例えば、樹脂中の芳香族環濃度を調整し、静的濡れ性を調整する方法が挙げられ、樹脂中の芳香族環濃度を上げ、静的濡れ性試験による接触角を小さくするとtanδのピーク温度が上昇する傾向にある。
連続繊維強化樹脂成形体のtanδのピーク温度は、例えば、連続繊維強化樹脂成形体に含まれる連続強化繊維の長さ方向に直行する断面における連続強化繊維の単糸1本に対して、ナノインデンターを用いて特定の周波数の振動を与えてナノインデンテーション(nanoDMA)することによって求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0083】
本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体の界面強度(連続繊維強化樹脂成形体のマトリックス樹脂と強化繊維との界面強度)は、1.58mN/μm以上であり、1.65mN/μm以上であることが好ましく、1.75mN/μm以上であることがより好ましく、1.85mN/μm以上であることが更に好ましい。また、界面強度は、5.00mN/μm以下であり、4.50mN/μm以下であることが好ましく、3.50mN/μm以下であることがより好ましい。界面強度が上記範囲であると、強度、剛性、吸水特性、衝撃特性、高温特性が向上する傾向にある。
連続繊維強化樹脂成形体の界面強度は、例えば、連続繊維強化樹脂成形体に含まれる連続強化繊維の長さ方向に直行する断面における連続強化繊維の単糸1本に対して、ナノインデンターを用いてプッシュアウト試験を行うことで求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
連続繊維強化樹脂成形体のプッシュアウト試験による界面強度を上記範囲に調整する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂と連続強化繊維との動的濡れ性と静的濡れ性とを調整する方法が挙げられ、動的濡れ性を小さくし、静的濡れ性試験による接触角を小さくすると界面強度が上昇する傾向にある。
【0084】
本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体は、外観視で板状、枠状、箱状、又はこれらの組み合わせの形状を有する。
上記板状は、特に限定されず、例えば、平面視形状が、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、半円形、楕円形等であるものが挙げられる。また、上記板状は、屈曲した短冊状、例えば、L字状、V字状、コの字状、U字状等であってもよい。屈曲した短冊状である場合、厚み方向断面の形状は、特に限定されず、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、半円形、楕円形等であってもよい。
なお、上記多角形の角部や屈曲した部分は丸みを帯びていてもよい。また、局所的に平板部及び/又は屈曲部を有していてもよい。
【0085】
上記枠状とは、平面視において中央部が空間となっており、その空間を囲むように構成される形状を意味する。この空間を囲むように構成される形状は、完全に閉じた状態であっても、その一部が途切れた状態であってもよい。平面視による外周形状及び内周形状は、特に限定されず、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、半円形、楕円形等が挙げられ、外周形状と内周形状とが同じ形状(相似形等)であっても、異なっていてもよい。
なお、上記多角形の角部は丸みを帯びていてもよい。また、局所的に平板部及び/又は屈曲部を有していてもよい。
【0086】
上記箱状は、特に限定されず、例えば、平面視形状が、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、半円形、楕円形等であるものが挙げられる。また、1つの面が開口していてもよい。各面は、同じ形状であっても、異なっていてもよい。
なお、上記多角形の角部は丸みを帯びていてもよい。また、局所的に平板部及び/又は屈曲部を有していてもよい。
【0087】
なお、本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体は、外観視で全体的な形状が上記板状、枠状、箱状、又はこれらの組み合わせの形状であればよい。そのため、いずれの形状も、個々の面に、リブ、ボス等を含む凹凸、溝、貫通孔等を有していてもよく、また、縁が直線状であるものだけでなく、曲線状や切り込みが入った状態のもの等であってもよい。
【0088】
[連続繊維強化樹脂成形体の製造]
本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体は、例えば、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料を、所定の大きさに切りだし、赤外線ヒーターで加熱し、プレス成形機で加熱圧縮プレスする方法等が挙げられる。
【0089】
[連続繊維強化樹脂成形体の用途]
本実施形態の連続繊維強化樹脂成形体は、航空機、車、建設材料、ロボット、鉄道、発電機等の構造材料用途に好適に使用することができる。
車用途においては、以下に限定されるものではないが、例えば、シャーシ/フレーム、足回り、駆動系部品、内装部品、外装部品、機能部品、その他部品に使用できる。具体的には、上述の連続繊維強化樹脂複合材料の用途と同様の用途が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例、参考例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができることはいうまでもない。
【0091】
まず、実施例、参考例、比較例で用いた測定方法等について説明する。
[重量平均分子量]
連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、HLC-8020;東ソー株式会社)により、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒、ポリメチルメタクリレート分子量換算用標準サンプル(ポリマーラボラトリー社)を用いて測定した。なお、GPCカラムはTSK-GEL、GMHHR-M、及びG1000HHRを使用した。に
また、熱可塑性樹脂に(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドが含まれる場合は、(A)脂肪族ポリアミドの重量平均分子量MwA及び(B)半芳香族ポリアミドそれぞれの重量平均分子量MwBを測定し、その比率(MwA/MwB)を求めた。
【0092】
[動的濡れ性]
はんだ濡れ性試験機(Rehsca)を用いて、融点より20℃高い温度まで加熱した熱可塑性樹脂に連続強化繊維の単糸1本を浸漬速度1.0mm/sec、浸漬深さ0.5mmで浸漬し、荷重が負の極大値を取った時間から、荷重が0になるまでの時間(濡れ時間)(sec)を測定した。この時間が短いほど動的濡れ性が良いと評価した。
また、連続繊維強化樹脂複合材料が2種類以上の熱可塑性樹脂を含む場合は、各熱可塑性樹脂間の動的濡れ性の差の最大値(sec)も求めた。
【0093】
[静的濡れ性]
熱可塑性樹脂フィルムと強化繊維一本とをカバーガラスに挟み、ホットプレート上で100℃/minで280℃まで昇温し、5分放置したのち、50℃/minで降温した。室温になった際の強化繊維表面と熱可塑性樹脂とのなす角度(接触角)(°)を、光学顕微鏡で観察して測定した。この角度が小さいほど静的濡れ性が良いと評価した。
【0094】
[封止された末端量]
連続繊維強化樹脂複合材料に含まれるポリアミドの封止された末端量(μ当量/g)について、JEOL-ECZ500(日本電子株式会社)を用いて、1H-NMR測定により求めた。
【0095】
[tanδのピーク温度]
連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体から、それぞれ長さ1cm、幅0.2cm、厚み60μmの試験片を、連続強化繊維に直行する断面が得られるように研磨して準備した。得られた試験片の断面を測定面とし、当該断面における連続強化繊維の単糸1本に対して、ナノインデンター(TI980、Bruker)を用いて、nanoDMA試験を周波数10Hz、10℃刻みで30℃~150℃の温度範囲で行い、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度(℃)を求めた。
【0096】
[ラマンピーク]
連続繊維強化樹脂複合材料の厚さ方向断面(連続強化繊維の長さ方向に直交する断面)を任意の5か所について切り出し、エポキシ樹脂に包埋し、連続強化繊維が破損しないように注意しながら研磨を行った。
レーザーラマン顕微鏡(inViaQontor共焦点ラマンマイクロスコープ;株式会社レニショー)により該断面のマッピング画像を撮影し、得られた画像、スペクトルから、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる樹脂の種類を特定した。
また該断面の樹脂領域のラマンスペクトルのピーク(cm-1)を確認した。
【0097】
[熱可塑性樹脂の相溶性]
上記[ラマン測定]に記載の方法で、連続繊維強化樹脂複合材料の断面について1μmの分解能でマッピングを行った。また、連続繊維強化樹脂複合材料の断面を研磨し、12タングスト(VI)リン酸n水和物5wt%水溶液に18時間浸漬して樹脂を電子染色したのち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。複数の熱可塑性樹脂によるドメインが形成されていない場合は〇(相溶している)、ドメインが形成されていた場合は×(相溶していない)と判断した。
【0098】
[X線回折のピーク強度比]
X線回折装置(SmartLab、株式会社リガク)を用いて、X線源:CuKα、光学系:集中法、出力:45kV×200mA、検出器:D/tex Ultraにて大気下で測定を行った。
(1,0,0)面のピーク強度I(1,0,0)に対する(0,1,0)面のピーク強度I(0,1,0)の比率(I(0,1,0)/I(1,0,0))、及び(1,1,0)面のピークの有無を求めた。
【0099】
[界面強度]
連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を、それぞれ厚さ方向断面(連続強化繊維の長さ方向に直交する断面)が出るように切り出し、連続強化繊維が傷つかないように注意しながら研磨して厚み60μmの試験片を得た。試験片の断面を測定面とし、当該断面における連続強化繊維の単糸1本に対してナノインデンター(TI Premier、Bruker)を用いてプッシュアウト試験を行い、連続繊維複合材料の界面強度(mN/μm)を測定した。
【0100】
[連続繊維強化樹脂複合材料のカルボキシル末端基濃度]
連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂のカルボキシル末端基量(μmol/g)について、JEOL-ECZ500(日本電子株式会社)を用いて、1H-NMR測定により求めた。
【0101】
[界面が剥離する研磨圧力、強化繊維径]
連続繊維強化樹脂複合材料を連続繊維強化樹脂の厚さ方向断面(連続強化繊維の長さ方向に直交する断面)が出るようにバンドソーにより切削し、切削した試験片を研磨機(小型精密試料作成システムIS-POLISHER ISPP-1000(株式会社池上精機))により、研磨圧力を0.078MPa、0.167MPa、0.245MPa、0.382MPaと変化させて研磨した。研磨は耐水ペーパー番手#2000で10分間、炭化ケイ素フィルム粒度9μmで5分間、アルミナフィルム粒度5μmで5分間、アルミナフィルム粒度3μmで5分間、アルミナフィルム粒度1μmで5分間、バフ研磨紙発泡ポリウレタンを用いた粒度0.1μmのコロイダルシリカ(バイカロックス0.1CR)で5分間の順番で行い、各研磨で約7mL/minで水を加えながら研磨した。研磨したサンプルをSEM(S-4700、株式会社日立ハイテクノロジーズ)により観察し、連続強化繊維の長さ方向に直交する断面における該連続強化繊維1本と熱可塑性樹脂との間の極界面に空隙が生じた圧力を界面が剥離する研磨圧力(MPa)とした。
また、上記SEM観察において、連続強化繊維の長さ方向に直交する断面における連続強化繊維の略丸断面から、連続強化繊維10本の直径を測定し、その平均値を強化繊維径(μm)とした。
【0102】
[強化繊維密度]
連続繊維強化樹脂複合材料の熱可塑性樹脂を電気炉を用いて焼き飛ばし、残った連続強化繊維から比重計を用いて強化繊維密度(g/cm3)を測定した。
【0103】
[界面定数]
連続繊維強化樹脂複合材料について、得られたカルボキシル末端基の濃度、界面が剥離する研磨圧力、強化繊維径、及び強化繊維密度から、下記式により界面定数を求めた。
(界面定数)=(連続繊維強化樹脂複合材料のカルボキシル末端基の濃度[μmol/g])×(界面が剥離する研磨圧力[MPa])×(強化繊維径[μm])/(強化繊維密度[g/cm3])2
【0104】
[引張応力]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ70mm、幅10mm、肉厚2mmの短冊状の試験片を切り出し、インストロン万能試験機にて、試験片を、長手方向に30mmの間隔でチャッキングし、速度5mm/minで、23℃、50%RH環境下、及び80℃、50%RHの環境下で、それぞれ引張応力(MPa)を測定した。
下記式により、80℃での引張応力保持率(%)を求めた。
80℃での引張応力保持率=(80℃、50%RHでの引張応力/23℃、50%RHでの引張応力)×100
【0105】
[曲げ応力、曲げ弾性率]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ100mm、幅10mm、肉厚2mmの短冊状の試験片を切り出し、インストロン万能試験機にて、3点曲げ用の治具を用い、スパン間を32mmに設定して速度1mm/minで、23℃、50%RHの環境下、及び80℃、50%RHの環境下で、それぞれ曲げ応力(MPa)、曲げ弾性率(GPa)を測定した。
下記式により、80℃での曲げ応力保持率(%)及び曲げ弾性率保持率(%)を求めた。
80℃での曲げ応力保持率=(80℃、50%RHでの曲げ応力/23℃、50%RHでの曲げ応力)×100
80℃での曲げ弾性率保持率=(80℃、50%RHでの曲げ弾性率/23℃、50%RHでの曲げ弾性率)×100
【0106】
[吸水特性]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ100mm、幅10mm、肉厚2mmの短冊状の試験片を切り出し、80℃の恒温水槽に18時間浸漬したのち、80℃、57%RHの恒温恒湿槽中に150時間以上放置し、質量が一定になるまで調湿したものを吸水時のサンプルとした。上記[引張応力測定]及び[曲げ応力、曲げ弾性率測定]に記載の方法により、80℃、50%RHの環境下で引張応力(MPa)、曲げ応力(MPa)、及び曲げ弾性率(GPa)を測定した。
下記式により、吸水時の引張応力保持率(%)、曲げ応力保持率(%)、及び曲げ弾性率保持率(%)を求めた。
吸水時の引張応力保持率=(吸水時の引張応力/23℃、50%RHでの引張応力)×100
吸水時の曲げ応力保持率=(吸水時の曲げ応力/23℃、50%RHでの曲げ応力)×100
吸水時の曲げ弾性率保持率=(吸水時の曲げ弾性率/23℃、50%RHでの曲げ弾性率)×100
【0107】
[衝撃強度]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ60mm、幅60mm、肉厚2mmの試験片を切り出し、高速衝撃試験機(島津 HYDRO SHOT HITS-P10、株式会社島津製作所)にて、JIS K7211-2;2006に準拠して、ストライカー径20mmφ、受け径40mmφ、試験速度4.4m/sec、試験温度23℃、試験数n=5で試験を行った。変位に対する試験力のグラフを書き、当該グラフから求めた最大の衝撃強度(kN)を試験片の厚みで割り、5サンプルの平均値(kN/mm)で求めた。
【0108】
[材料の外観]
連続繊維強化樹脂複合材料の表面外観を観察し、表面にざらつきがなく、表面に光沢がある場合には〇(優れる)、表面にざらつきがなく、表面に光沢がない場合には△(良好)、表面にざらつきがある場合には×(不良)として評価した。
【0109】
実施例、参考例、比較例で用いた材料は以下のとおりである。
[連続強化繊維]
(ガラス繊維)
ER1200T-423(日本電気硝子株式会社)
(炭素繊維)
トレカT300(東レ株式会社)
[繊維クロス]
レピア織機(織幅1m)を用い、上記ガラス繊維又は炭素繊維を経糸、緯糸として用いて製織することでガラスクロス又は炭素繊維クロスを製造した。得られたガラスクロスの織形態は、平織、織密度は6.5本/25mm、目付は600g/m2であった。また、得られた炭素繊維クロスの織形態は、平織、織密度は6.5本/25mm、目付は425g/m2であった。
【0110】
[熱可塑性樹脂]
樹脂1:ポリアミド66(レオナ1300S(旭化成(株)))(重量平均分子量(Mw):45000、粘度:25g/10min、末端基濃度:100μmol/g、tanδのピーク温度:50℃)
樹脂2:ポリアミド6I(重量平均分子量(Mw):20000、粘度:35g/10min、末端基濃度:260μmol/g、tanδのピーク温度:130℃)
樹脂3:ポリアミド6(重量平均分子量(Mw):31000、粘度:97g/10min、末端基濃度:90μmol/g、tanδのピーク温度:50℃)
樹脂4:ポリプロピレン(粘度:20g/10min)
樹脂5:ポリアミド66(レオナ1500(旭化成(株)))(重量平均分子量(Mw):70000、粘度:2g/10min、末端基濃度:70μmol/g、tanδのピーク温度:50℃)
樹脂6:ポリアミド66(レオナ1300(旭化成(株)))(重量平均分子量(Mw):45000、粘度:25g/10min、末端基濃度:100μmol/g、tanδのピーク温度:50℃)
樹脂7:ポリアミド66(レオナ1402S(旭化成(株)))(重量平均分子量(Mw):45000、粘度:25g/10min、末端基濃度:100μmol/g、tanδのピーク温度:50℃)
樹脂8:ポリアミド6/12(グリロンC CF6S(エムスケミージャパン(株))(重量平均分子量(Mw):20000、粘度:34g/10min、末端基濃度:80μmol/g、tanδのピーク温度:50℃)
なお、熱可塑性樹脂の粘度、ポリアミドの末端基濃度、tanδのピーク温度は、それぞれ以下の方法により求めた。
樹脂9:ポリアミド6T(重量平均分子量(Mw):31000、粘度:30g/10min、末端基濃度:120μmol/g、tanδのピーク温度:125℃)
樹脂10:ポリアミドMXD6(重量平均分子量(Mw):29000、粘度:28g/10min、末端基濃度:160μmol/g、tanδのピーク温度:75℃)
樹脂11:ポリアミド6T/6I(重量平均分子量(Mw):27000、粘度:27g/10min、末端基濃度:160μmol/g、tanδのピーク温度:125℃)
樹脂12:ポリエーテルエーテルケトン樹脂(Victrex、PEEK90G):75質量部、ポリエーテルイミド樹脂(Sabic、UTM1010):25質量部、環状ポリアリーレンスルフィド(国際公開第2020/017287号公報に従って製造した。):20質量部、線状ポリアリーレンスルフィド(国際公開第2020/017287号公報に従って製造した。):5質量部をドライブレンドした後、真空ベントを具備した(株)日本製鋼所社製TEX30a型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が樹脂組成物の融点+20℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。Tg=154℃
樹脂13:ポリアミド9T(PA9T)樹脂組成物を以下のようにして得た。790gの1,9-ノナンジアミン、790gの2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1639gのテレフタル酸(1,9-ノナンジアミン:2-メチル-1,8-オクタンジアミン:テレフタル酸=50:50:98(モル比))、48.8gの安息香酸、3.3gの次亜リン酸ナトリウム、1100gの水を反応装置に入れ、窒素置換した。2時間かけて内部温度を200℃に昇温した。この時、反応装置は2MPaまで昇圧した。その後2時間、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次いで、30分かけて圧力を1.2MPaまで下げ、プレポリマーを得た。このプレポリマーを粉砕し、120℃、減圧下で12時間乾燥した。これを230℃、13.3Paの条件で10時間固相重合し、PA9Tを得た。
上記PA9Tを減圧下、120℃で24時間乾燥した後、PA9T100質量部に対してフェノール系熱安定剤であるスミライザーGA-80(住友化学株式会社製)を0.3質量部、LicoWax-OP(クラリアントケミカルズ株式会社製)を0.2質量部の割合でドライブレンドし、得られた混合物を二軸押出機(スクリュー径:30mm、L/D=28、シリンダー温度300℃、回転数150rpm)のホッパーからフィードして溶融混練し、ストランド状に押出した後、ペレタイザにより切断してペレット状のPA9T樹脂組成物を得た。Tg=136℃
(熱可塑性樹脂の粘度)
熱可塑性樹脂の粘度は、卓上型メルトインデクサ(L260、株式会社立山化学ハイテクノロジーズ社)を用いて、ISO1133に準拠し、ポリアミドは、270℃、荷重2.16kgの条件で、ポリプロピレンは、270℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(ポリアミドの末端基濃度)
ポリアミドの末端基濃度は、アミノ末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度をそれぞれ以下のとおり測定し、合計して求めた。
カルボキシル末端基濃度、アミノ末端基濃度の測定:JEOL-ECZ500を用いて、1H-NMRを測定し、ピーク面積と分子量、プロトン数から求めた。
(ポリアミドのtanδのピーク温度)
ポリアミドのtanδのピーク温度は、ナノインデンター(TI Premier、Bruker社)により、周波数10Hz、昇温速度10℃/minの条件で、厚さ0.1mmの試験片を用いて求めた。
【0111】
[熱可塑性樹脂フィルムの製造方法]
Tダイ押し出し成形機(株式会社創研製)を用いて成形することで熱可塑性樹脂フィルムを得た。フィルムの厚さは200μmであった。
【0112】
[実施例1]
樹脂1と樹脂2を樹脂1:樹脂2=7:3の質量比となるようドライブレンドし、前記方法で熱可塑性樹脂フィルム1を得た。
ガラスクロス5枚と熱可塑性樹脂フィルム1のフィルム6枚を、熱可塑性樹脂フィルム1が表面となるようにガラスクロスと熱可塑性樹脂フィルム1とを交互に重ねて成形を行い、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。
成形機として、ダブルベルトプレス機を使用した。上記ガラスクロスと上記熱可塑性樹脂フィルム1とを上記のように重ねて成形機に設置し、成形機内温度を330℃に加熱し、圧力3MPa、ベルト速度0.5m/minで圧縮成形を行った。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
更に、得られた連続繊維強化樹脂複合材料を300mm×300mm×2mmの大きさに切りだし、赤外線ヒーターで300℃に加熱した後、プレス成形機に設置してプレスすることにより、板状の連続繊維強化樹脂成形体(300mm×300mm×2mm)を得た。
【0113】
[参考例2]
熱可塑性樹脂として、樹脂2のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、1種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0114】
[実施例3]
熱可塑性樹脂として、樹脂3と樹脂2を樹脂3:樹脂2=7:3の質量比となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0115】
[実施例4]
熱可塑性樹脂として、樹脂4と樹脂2を樹脂4:樹脂2=7:3の質量比となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0116】
[参考例5]
熱可塑性樹脂として、樹脂1と樹脂2を樹脂1:樹脂2=95:5の質量比となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0117】
[参考例6]
熱可塑性樹脂として、樹脂1と樹脂2を樹脂1:樹脂2=88:12の質量比となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0118】
[実施例7]
ガラスクロスの代わりに一方向に引き揃えたガラス繊維(GFUD)を用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0119】
[実施例8]
ガラスクロスとして2×2綾織りのガラスクロスを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0120】
[参考例9]
連続強化繊維として炭素繊維を用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0121】
[実施例10]
熱可塑性樹脂として、樹脂5と樹脂2を樹脂5:樹脂2=7:3となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0122】
[実施例11]
熱可塑性樹脂として、樹脂6と樹脂2を樹脂6:樹脂2=7:3となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0123】
[実施例12]
熱可塑性樹脂として、樹脂7と樹脂2を樹脂7:樹脂2=7:3となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0124】
[参考例13]
熱可塑性樹脂として、樹脂9のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、1種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0125】
[参考例14]
熱可塑性樹脂として、樹脂10のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、1種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0126】
[参考例15]
熱可塑性樹脂として、樹脂11のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、1種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0127】
[比較例1]
熱可塑性樹脂として、樹脂1のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、1種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0128】
[比較例2]
熱可塑性樹脂として、樹脂1と樹脂3を樹脂1:樹脂3=7:3となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0129】
[比較例3]
熱可塑性樹脂として、樹脂1と樹脂4を樹脂1:樹脂4=7:3となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0130】
[比較例4]
ポリアミド66をガラスクロスに含浸したLanxess社製の「Tepex dynalite 101」(厚み2mm)を用いて実施例1と同様の試験をおこなった。また、実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を得た。
【0131】
[比較例5]
ポリアミド6をガラスクロスに含浸したLanxess社製の「Tepex dynalite 102」(厚み2mm)を用いて実施例1と同様の試験をおこなった。また、実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を得た。
【0132】
[比較例6]
ポリプロピレンをガラスクロスに含浸したLanxess社製の「Tepex dynalite 104」(厚み2mm)を用いて実施例1と同様の試験をおこなった。また、実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体を得た。
【0133】
[比較例7]
熱可塑性樹脂として、樹脂3のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、1種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0134】
[比較例8]
熱可塑性樹脂として、樹脂1と樹脂8を樹脂1:樹脂8=7:3となるようドライブレンドして用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、2種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0135】
[比較例9]
熱可塑性樹脂として、樹脂4のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。また、ラマン測定により、1種類の熱可塑性樹脂が確認できた。
【0136】
[比較例10]
炭素繊維束(東レ(株)、T700S-12K)が巻かれたボビンを16本準備し、それぞれのボビンから連続的に糸道ガイドを通じて炭素繊維束を送り出した。連続的に送り出された炭素繊維束(CFUD)に、含浸ダイ内において、充填したフィーダーから定量供給された、樹脂12を含浸させた。含浸ダイ内で樹脂12を含浸した炭素繊維を、引き取りロールを用いて含浸ダイのノズルから1m/minの引抜速度で連続的に引抜いた。炭素繊維を引抜く際の温度(加工温度)は445℃とした。引抜かれた炭素繊維束は、冷却ロールを通過して樹脂12が冷却固化され、連続繊維強化樹脂複合材料として巻き取り機に巻き取られた。
得られた連続繊維強化樹脂複合材料の厚さは0.08mm、幅は50mmであり、強化繊維は一方向に配列し、体積含有率が60%の連続繊維強化樹脂複合材料を得た。また、実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体(300mm×50mm×0.08mm)を得た。
【0137】
[比較例11]
120℃で開繊して幅30cmに広げた連続繊維(三菱レーヨン株式会社製炭素繊維TR50S15L(フィラメント数15000))(CFUD)を2m/分で引き取り、樹脂13と連続繊維とが質量比で約1:1となるよう、295℃で融解させた樹脂13を連続繊維上に均一に垂らした。これをポリイミドフィルムで挟み、ロールプレス機で295℃、2MPaの条件でプレスした後に冷却して、幅30cm、厚さ0.21mmの繊維強化ポリアミドシートを得た。
得られた繊維強化ポリアミドシート12枚を、12cm四方の金型の一辺(長さ12cm)に対して繊維方向が0°、90°、0°、90°、0°、90°、90°、0°、90°、0°、90°、0°となるよう積層し、上記金型にセットした。金型を真空プレス機にセットし、真空引きしながら金型温度を30℃から300℃まで40分で上昇させた。300℃で30分保持してから真空引きを停止し、5MPaの圧力をかけながら15分で30℃まで冷却して、厚さ2mm程度の連続繊維強化樹脂複合材料を得た。また、実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂成形体(120mm×120mm×2mm)を得た。
【0138】
【0139】
【0140】
上記表1から、実施例1、3、4、7、8、10~12、参考例2、5、6、9、13~15の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面におけるtanδのピーク温度が80℃以上であることにより、非常に高い引張応力、曲げ応力、曲げ弾性率、衝撃強度、吸水・高温時の物性を示した。また、実施例1、3、4、7、8、10~12、参考例2、5、6、9、15の連続繊維強化樹脂複合材料では、イソフタル酸単位を含むため、実用上重要である、吸水・高温特性に優れていた。一方、比較例1~11は、芳香族濃度や連続強化繊維と熱可塑性樹脂との静的濡れ性が十分でないため、界面におけるtanδのピーク温度が、樹脂自体が持つtanδのピーク温度よりも低くなり、80℃未満となることで、引張応力、曲げ応力、曲げ弾性率、衝撃強度、吸水・高温時の物性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、各種機械や自動車等の構造部品等、高レベルでの機械的物性が要求される材料の補強材として、また、熱可塑性樹脂組成物との複合成形体材料として、産業上の利用可能である。