(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】アクリルエラストマー共重合体およびその架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/36 20060101AFI20230329BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C08F220/36
C08L33/14
(21)【出願番号】P 2022546172
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028569
(87)【国際公開番号】W WO2022049958
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020147326
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-265531(JP,A)
【文献】特開2006-274111(JP,A)
【文献】特開2011-225645(JP,A)
【文献】国際公開第2009/096545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F20/、220/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体、(B)α,β-不飽和カルボン酸単量体および(C)一般式
(ここで、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基である)で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体の共重合体であるアクリルエラストマー共重合体。
【請求項2】
アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体 90~99.8重量%、α,β-不飽和カルボン酸単量体 0.1~5重量%、一般式〔I〕で表される(メタ)アクリレート単量体 0.1~5重量%の共重合体である請求項1記載のアクリルエラストマー共重合体。
【請求項3】
請求項2記載のアクリルエラストマー共重合体 100重量部当たり、架橋促進剤 0.1~5重量部を配合してなる架橋性組成物。
【請求項4】
架橋促進剤が、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンまたはその有機酸塩、1,3-ジフェニルグアニジンまたは1,3-ジ-o-トリルグアニジンである請求項3記載の架橋性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルエラストマー共重合体およびその架橋性組成物に関する。さらに詳しくは、カルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体が共重合されたアクリルエラストマー共重合体およびその架橋性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模の気候変動対策およびエネルギーの効率利用の観点から、自動車エンジンに代表される内燃機関で排出される二酸化炭素およびNOxガス等の排出量規制が一層厳しくなる傾向にある。その対応策として、自動車エンジンには高出力化、高熱効率化および排出ガスの低減と無害化が要求され、このためエンジンルーム内の温度は上昇する傾向にある。それに伴い、その周辺で使用されるゴム、プラスチック等の高分子材料には、さらなる耐熱性の向上が求められている。
【0003】
具体例として、エンジンの燃費改善を目的としたターボチャージャーシステムを搭載した車両の普及が進んでいる。このターボチャージャーからインタークーラーやエンジンに導かれる空気は高温高圧であることから、これを輸送するゴム製ホース材料には高い耐熱性が求められている。
【0004】
このように、自動車のエンジンに使用される高分子材料の使用環境の高温化や長寿命化の要求に伴い、その対策としてゴム製品部材の原料ゴム自体の耐熱性を向上させる取り組みや、適切な老化防止剤をゴム製品部材に添加することが行われている。
【0005】
例えば、アクリルゴム自体の耐熱性を向上させる取り組みとしては、架橋部位単量体を活性塩素含有不飽和単量体からα,β-不飽和カルボン酸単量体に変えることにより、高温環境下の使用に耐え得る強固な架橋構造を形成させることが行われる。
【0006】
また、ゴム部材の耐熱寿命を向上させるための代表的な老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤やアミン系老化防止剤が用いられ、特により高温の使用環境下で用いられるゴム部材ではアミン系老化防止剤が用いられる。
【0007】
例えば、アクリルゴムの場合、老化防止剤として4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンに代表されるアミン系老化防止剤が用いられている(特許文献1~4)。しかしながら、上記のアミン系老化防止剤をもってしても昨今の耐熱要求を十分に満足することはできない。
【0008】
近年ではゴム材料の老化防止剤としてフェノチアジン系老化防止剤が有効であるとされており、特許文献5には、加硫特性、機械的特性および熱老化特性にすぐれ、防振ゴム用途に特に好適なゴム材料として、(A)ジエン系ゴム、(B)ビスマレイミド化合物および(C)下記フェノチアジン化合物を含有するものが記載されている。
R
1、R
2:水素原子、芳香族環で置換されてもよい
C
1~C
8のアルキル基、アルコキシ基、
ハロゲン原子、シアノ基
R
3:水素原子、C
1~C
6の鎖状または環状の
アルキル基、ビニル基、芳香族基
m、n:0~2
5位の硫黄原子が-SO
2-のフェノチアジン化合物も知られており、例えば特許文献6に記載されている。
【0009】
かかる特許文献6には、下記一般式で示される縮合複素環化合物およびそれを含有する有機材料組成物が記載されており、酸化的、熱的あるいは光誘発性崩壊を受け易いポリマー等の有機材料に対し、高い加工安定性、耐熱性、長寿命を付与することが可能であると述べられている。
Y:化学的な単結合、-S(=O)-、-SO
2-
R
a、R
b:置換基を有してもよいC
1~C
30有機基
Z
a、Z
b:化学的な単結合、-SO
2-
X
1、X
2:水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、
シアノ基、ニトロ基、-OR
1、-O-CO-R
1、
-CO-OR
1、-O-CO-OR
1、-NR
2R
3、-NR
2-CO-R
1、
-CO-NR
2R
3、-O-CO-NR
2R
3
n、m:0~2、ただしいずれか一方は0ではない
【0010】
また、ゴム部材からのアミン系老化防止剤の揮散を防止するため、アミン系老化防止剤の高分子量化および高融点化の検討がなされている。しかしながら老化防止剤の高分子量化、高融点化に伴いゴムに対する分散性およびゴム内部での移行性が低下するなどの問題がある。
【0011】
さらに、老化防止剤の揮散を防止し高温環境下におけるゴム部品の長寿命化を図る目的のために、重合性不飽和基を有する老化防止剤を原料ゴムに共重合する方法も検討されている(特許文献7)。
【0012】
かかる老化防止剤としては、例えば、重合性不飽和基を有する老化防止剤ノクラックG-1(大内新興化学工業製品)やAPMA(精工化学製品)が例示される(非特許文献1~2)。
【0013】
しかしながら、上記老化防止剤ではジフェニルアミノ基のラジカル重合禁止作用により、重合性不飽和単量体とのラジカル共重合は実用的に困難である。
【0014】
一方、エラストマー性重合体の変性反応によりジフェニルアミノ構造を重合体に導入する方法が、いくつか開示されている。例えば、オレフィン系不飽和基を有するエラストマーの側鎖をヒドロホルミル化した後ジフェニルアミノ基を導入する方法(特許文献8)、ジエン系共重合体に遊離基発生剤の存在下で無水マレイン酸を付加させた後、ジフェニルアミノ基を導入する方法(特許文献9)などが知られている。しかしながらこれらの方法は、もととなる共重合体を製造した後にジフェニルアミノ基を導入する変性工程がさらに必要となり、製造コストの面から実用的ではない。
【0015】
このように原料ゴム自体の耐熱性向上、各種老化防止剤の性能向上および熱老化防止成分を原料ゴムに化学的に結合させる方法の何れをもってしても、昨今の耐熱要求を十分に満足することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開平11-21411号公報
【文献】WO 2011/58918 A1
【文献】特開2010-254579号公報
【文献】WO 2006/001299 A1
【文献】特開2015-227402公報
【文献】WO 2011/093443 A1
【文献】特開2009-209268号公報
【文献】特開平4-264106号公報
【文献】特開平5-230132号公報
【文献】特開2009-036960公報
【文献】特開2010-235955公報
【非特許文献】
【0017】
【文献】Rubber Chem.Technol.,46巻,106頁(1973)
【文献】Rubber Chem.Technol.,52巻,883頁(1979)
【文献】Journal of Photopolymer Science and Technology, 18巻,3号,419頁(2005)
【文献】Material Technology,25巻,6号,285頁(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、特に架橋剤を用いることなく、架橋物の耐熱性を改善せしめるアクリルエラストマー共重合体およびその架橋性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、(A)アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体、(B)α,β-不飽和カルボン酸単量体および(C)一般式
(ここで、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基である)で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体の共重合体であるアクリルエラストマー共重合体によって達成される。
【0020】
本発明のアクリルエラストマー共重合体は、そこに架橋促進剤を配合することにより架橋性組成物を形成させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、前記一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体をカルボキシル基含有アクリルエラストマーに導入せしめることにより、特に架橋剤を必要とすることのない自己完結架橋型アクリルエラストマー共重合体が提供される。かかる架橋システムは、共重合されたカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体のカルバミン酸エステル部分が、熱および塩基の作用により分解してアミノ基を遊離し、遊離したアミノ基が共重合されているα,β-不飽和カルボン酸単量体の活性部位と反応して架橋するものである。なおこの架橋では、分子内架橋と分子間架橋とが同時に引き起こされているものと考えられる。
【0022】
かかるアクリルエラストマー共重合体は、架橋物の熱酸化劣化の初期段階にみられる機械的強度の低下(軟化劣化)を改善することができることから、アクリルエラストマー共重合体の耐熱性向上といったすぐれた効果を奏する。
【0023】
なお、前記一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体とメチルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート単量体との共重合体は特許文献10、非特許文献3~4に記載されているが、この共重合体は光塩基発生剤とともに感光性平版印刷版材料の画像形成層の形成に向けられており、架橋促進剤とともに架橋性組成物を形成させることには向けられていない。
【0024】
ジカルバミン酸エステル化合物 R2(SO2)m(CH2)nOCONH-R1-NHCOO(CH2)n(SO2)mR2 (R1:2価の脂肪族アルキレン基、2価の脂環式シクロアルキレン基、2価の芳香族基、R2:フルオレニル基含有基、n:0~2、m:0~1)を用いてカルボキシル基を有するアクリルゴムを架橋できることも特許文献11に記載されているが、前記一般式〔I〕表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体を、アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体およびα,β-不飽和カルボン酸単量体と共重合させ、アクリルゴムの耐熱性向上を図ったアクリルエラストマー共重合体はいずれの文献にも教示乃至示唆されていない。
【0025】
このアクリルエラストマー共重合体は、架橋性組成物の製造に際し、芳香族または脂肪族ポリアミン系架橋剤を添加することなく架橋可能であるため、架橋剤を添加する工程を省くことが可能となるとともに、アクリルエラストマー共重合体に対する架橋剤の分散不良のリスクをも解消することができる。
【0026】
さらに、本発明のアクリルエラストマー共重合体を主成分とする架橋性組成物は、一次架橋により十分な機械的な強度を有する架橋物を与えうるといった効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における100%モジュラス変化率を、図式化(実線:実施例4、破線:比較例4)したものである。
【
図2】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における破断強度変化率を、図式化(実線:実施例4、破線:比較例4)したものである。
【
図3】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における破断時伸び変化率を、図式化(実線:実施例4、破線:比較例4)したものである。
【
図4】アクリルエラストマー共重合体架橋物の175℃における100%モジュラス変化率を、図式化(実線:実施例4、破線:比較例4)ものである。
【
図5】アクリルエラストマー共重合体架橋物の175℃における破断強度変化率を、図式化(実線:実施例4、破線:比較例4)したものである。
【
図6】アクリルエラストマー共重合体架橋物の175℃における破断時伸び変化率を、図式化(実線:実施例4、破線:比較例4)したものである。
【
図7】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における100%モジュラス変化率を、図式化(実線:実施例5、破線:比較例5)ものである。
【
図8】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における破断強度変化率を、図式化(実線:実施例5、破線:比較例5)したものである。
【
図9】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における破断時伸び変化率を、図式化(実線:実施例5、破線:比較例5)したものである。
【
図10】アクリルエラストマー共重合体架橋物の175℃における100%モジュラス変化率を、図式化(実線:実施例5、破線:比較例5)ものである。
【
図11】アクリルエラストマー共重合体架橋物の175℃における破断強度変化率を、図式化(実線:実施例5、破線:比較例5)したものである。
【
図12】アクリルエラストマー共重合体架橋物の175℃における破断時伸び変化率を、図式化(実線:実施例5、破線:比較例5)したものである。
【
図13】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における100%モジュラス変化率を、図式化(実線:実施例6、破線:比較例6)ものである。
【
図14】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における破断強度変化率を、図式化(実線:実施例6、破線:比較例6)したものである。
【
図15】アクリルエラストマー共重合体架橋物の190℃における破断時伸び変化率を、図式化(実線:実施例6、破線:比較例6)したものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のアクリルエラストマー共重合体は、(A)アルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体、(B)α,β-不飽和カルボン酸単量体、(C)一般式
(ここで、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基である)〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体を構成単量体としてなる。
【0029】
これらの各単量体は、(A)アルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体が90~99.8重量%、好ましくは90~99重量%、(B)α,β-不飽和カルボン酸単量体が0.1~5重量%、好ましくは0.5~5重量%および(C)一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体が0.1~5重量%、好ましくは0.5~5重量%の割合で共重合される。
【0030】
本発明のアクリルエラストマー共重合体を構成するアルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数7~20のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートおよび炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種類の(メタ)アクリレートが用いられる。ここで、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを指している。
【0031】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0032】
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばベンジル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0033】
また、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0034】
アルコキシアルキルアクリレートとアルキルアクリレートとは、それぞれ単独でも用いられるが、好ましくは前者が約60~0重量%、また後者が約40~100重量%の割合で用いられ、アルコキシアルキルアクリレートを共重合させた場合には耐油性と耐寒性のバランスが良好となり、ただしこれよりも多い割合で共重合させると常態物性と耐熱性が低下する傾向がみられるようになる。
【0035】
本発明のアクリルエラストマー共重合体を構成するα,β-不飽和カルボン酸単量体としては、一塩基性α,β-不飽和カルボン酸、二塩基性α,β-不飽和カルボン酸または二塩基性α,β-不飽和カルボン酸モノアルキルエステルが挙げられる。
【0036】
一塩基性α,β-不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0037】
二塩基性α,β-不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0038】
二塩基性α,β-不飽和カルボン酸モノアルキルエステルとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸のモノアルキルエステル等が挙げられる。具体例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-プロピル、マレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸モノn-ブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノn-ヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-プロピル、フマル酸モノイソプロピル、フマル酸モノn-ブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノn-ヘキシル、フマル酸モノシクロヘキシル等が挙げられる。
【0039】
本発明のアクリルエラストマー共重合体中のα、β-不飽和カルボン酸単量体は0.1~5重量%、好ましくは0.5~5重量%の割合で共重合される。
【0040】
本発明のアクリルエラストマー共重合体を構成する一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、
等が挙げられ、好ましくは製造の容易さから
が用いられる。
【0041】
一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、ウレタン化触媒の存在下で、イソシアナトアルキルアクリレートまたはイソシアナトアルキルメタクリレートと、9-フルオレニルメタノールとを反応させることにより容易に製造することができる。
【0042】
ウレタン化触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ビスマス化合物を用いることができる。ここで、有機スズ化合物としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ、ジブチルスズ(2,4-ペンタンジオネート)等が、有機チタン化合物としては、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等が、有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセテート)、ジルコニウムテトラ(アセチルアセテート)等が、有機ビスマス化合物としては、ビスマストリス(ネオデカノエート)等が挙げられる。
【0043】
反応は、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等の有機溶媒中、40~80℃で行われる。
【0044】
本発明のアクリルエラストマー共重合体中、一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体は約0.1~5重量%、好ましくは約0.5~5重量%の割合で共重合される。一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体がこれより多い割合で共重合されると架橋過多となり、架橋物の弾性が低下することがあり、一方これより少ない割合で用いられると架橋不足となり、架橋速度および架橋物の機械的強度が低下する傾向がみられるようになる。
【0045】
一般式〔I〕で表されるカルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体とα,β-不飽和カルボン酸単量体との構成比のおおよその目安は、W1/W2=M1/M2で求められるが、架橋速度および架橋物の諸物性等の因子を考慮して適宜調整することもできる。
W1(wt%):カルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量体
の重量分率組成
W2(wt%):α,β-不飽和カルボン酸単量体の重量分率組成
M1(g/mol):カルバミン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート単量
体の分子量
M2(g/mol):α,β-不飽和カルボン酸単量体の分子量
【0046】
ただし、架橋に際して本発明のアクリルエラストマー共重合体と通常のカルボキシル基含有アクリルエラストマーをブレンドして用いる場合、あるいは本発明のアクリルエラストマー共重合体に新たに多価アミン架橋剤を添加する場合には、W1/W2比は上式に限定されずそれぞれの場合に応じて適宜調整される。
【0047】
また、これら本発明のアクリルエラストマー共重合体の主要成分以外に、必要に応じて他の重合性不飽和単量体を用いることができる。
【0048】
重合性不飽和単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、エチレン、プロピレン、ピペリレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、シクロペンタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0049】
本発明のアクリルエラストマー共重合体は、一般的なアクリルゴムの重合方法によって製造される。共重合反応は、乳化重合法、けん濁重合法、溶液重合法、塊状重合法など任意の方法で行ない得るが、好ましくは乳化重合法またはけん濁重合法が用いられ、約-10~100℃、好ましくは約5~80℃の温度で反応が行われる。
【0050】
反応の重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルヒドロパーオキサイド、クミルヒドロパーオキサイド、p-メチレンヒドロパーオキサイド等の有機パーオキサイドまたはヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルアミジン等のジアゾ化合物、過硫酸アンモニウムによって代表されるアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の過酸化物塩などが単独であるいはレドックス系として用いられる。
【0051】
特に好ましい乳化重合法に用いられる乳化剤としては、アニオン系またはノニオン系の界面活性剤が、必要に応じて酸または塩基によりpH調整され、無機塩で緩衝溶液とした水溶液などとして用いられる。
【0052】
重合反応は、単量体混合物の転化率が90%以上に達する迄継続される。得られた水性ラテックスは、塩-酸凝固法、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムの如き塩を用いる方法、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物を用いる方法、熱による凝固法、凍結凝固法などによって凝固させ、得られた共重合体は十分に水洗、乾燥される。このアクリルゴムは、約5~100、好ましくは約20~80のムーニー粘度 PML1+4(100℃)を有する。
【0053】
本発明のアクリルエラストマー共重合体を主成分とする架橋性組成物は、好ましくはグアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物またはその有機酸塩等の架橋促進剤を添加することにより形成することができる。
【0054】
グアニジン化合物としては、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン等が挙げられ、好ましくは1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジンまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
ジアザビシクロアルケン化合物またはその有機酸塩としては、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンまたはその有機酸塩が好ましい。
【0056】
1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンの有機酸塩に用いられる有機酸としては、有機一塩基酸または有機二塩基酸が挙げられる。有機一塩基酸としては、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、n-カプリン酸、n-ラウリン酸、p-トルエンスルホン酸、フェノール等が、有機二塩基酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸等が挙げられ、好ましくは炭素数6~18のモノカルボン酸またはジカルボン酸が挙げられる。
【0057】
上記架橋促進剤は、本発明のアクリルエラストマー共重合体100重量部に対して約0.1~5重量部、好ましくは約0.3~3重量部用いられる。架橋促進剤がこれより少ないと、架橋速度の著しい低下、架橋後のアクリルエラストマーの機械的物性の低下および熱老化後の機械的物性の低下を招くことがある。一方、これより多く用いられると、アクリルエラストマーの耐圧縮永久歪特性の悪化を招くことがある。
【0058】
本発明のアクリルエラストマー共重合体は架橋剤を添加することなく架橋性組成物を形成しうるが、架橋速度または架橋物の機械的強度を調整するために、さらに架橋剤を添加することもできる。
【0059】
架橋剤としては脂肪族多価アミン化合物、脂肪族多価アミン化合物の炭酸塩、アミノ基が有機基で保護された脂肪族多価アミン化合物、芳香族多価アミン化合物を用いることができる。
【0060】
脂肪族多価アミン化合物としては、例えばヘキサメチレンジアミンが挙げられる。また、脂肪族多価アミン化合物の炭酸塩としては、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが挙げられる。アミノ基が有機基で保護された脂肪族多価アミンとしては、N,N′-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンまたは特許文献11に開示された化合物が挙げられる。
【0061】
芳香族多価アミン化合物としては、4,4′-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン、4,4′-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4′-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4′-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。
【0062】
上記に挙げた多価アミン化合物は単独で用いることもできるし、二つ以上を組み合わせて用いることもでき、好ましくはヘキサメチレンジアミンカーバメート、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが用いられる。
【0063】
上記架橋剤の添加量は、所望の架橋速度、架橋物の機械的強度および熱老化特性に応じて適宜調整される。
【0064】
本発明のアクリルエラストマー共重合体を主成分とする架橋性組成物には必要に応じて、例えば熱老化防止剤、充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、粘着付与剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐油性向上剤、スコーチ防止剤、滑剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0065】
充填剤としては、塩基性シリカ、酸性シリカ等のシリカ、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅等の金属硫化物;合成ハイドロタルサイト、ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック(MTカーボンブラック、SRFカーボンブラック、FEFカーボンブラック等)、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ウォラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤等が挙げられる。
【0066】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックス等の石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のポリグリコール;ワセリン、パラフィン等の脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、(ハロゲン化)ジアルキルスルフォン、界面活性剤等が挙げられる。
【0067】
可塑剤としては、例えばエポキシ樹脂、フタル酸誘導体やセバシン酸誘導体、軟化剤としては、例えば潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム、老化防止剤としては、例えばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩等が挙げられる。
【0068】
本発明のアクリルエラストマー共重合体を主成分とする架橋性組成物は、本発明のアクリルエラストマー共重合体に架橋促進剤および必要に応じて使用されるその他の配合剤などを配合し、バンバリーミキサや加圧ニーダー、オープンロール等を用いて混和することにより調製できる。それの架橋は、約120~250℃、約1~60分間の一次架橋および必要に応じて約120~200℃、約1~20時間のオーブン架橋(二次架橋)が行われる。
【実施例】
【0069】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0070】
【0071】
マグネット攪拌子、温度計、窒素ガス導入口と排出口および還流冷却管を備えた容量500mlの四口フラスコに、9-フルオレニルメタノール 14.7g(75ミリモル)、2-イソシアナトエチルメタクリレート 14.0g(90ミリモル)、ジラウリン酸ジブチルスズ0.6gおよびベンゼン 240mlを投入し、窒素ガス雰囲気下80℃で2時間反応させた。
【0072】
反応混合物を室温まで冷却した後パラメトキシフェノールを30mg加え、次いで減圧下でベンゼンを留去し粗反応生成物31.2gを得た。これを450mlのエタノールで再結晶することにより、無色の結晶として9FMMを23.2g(収率88%)得た。
1H-NMR(400MHz、Acetone d6、δ ppm):
1.91 (s, 3H, CH
2=C(C
H
3)-C(=O)-O-)
3.47 (q, J=5.6Hz, 2H, -O-CH
2C
H
2-NH-C(C=O)-)
4.21 (t, J=5.6Hz, 2H, -O-C
H
2CH
2-NH-C(C=O)-)
4.23 (t, J=7.2Hz, 1H, -C(=O)-OCH
2-C
H-Ar
2)
4.35 (d, J=7.2Hz, 2H, -C(=O)-OC
H
2-CH-Ar
2)
5.62 (s, 1H,カルボニル基に対して
trans-C
H
2=C(CH
3)-C(=O)-O-)
6.10 (s, 1H,カルボニル基に対して
cis-C
H
2=C(CH
3)-C(=O)-O-)
6.73 (brs, 1H, -O-CH
2CH
2-N
H-C(C=O)-
7.32 (t, J=7.6Hz, 2H, Ar-Ha)
7.41 (t, J=7.6Hz, 2H, Ar-Hb)
7.68 (d, J=7.6Hz, 2H, Ar-Hc)
7.86 (d, J=7.6Hz, 2H, Ar-Hd)
【0073】
実施例1
温度計、撹拌機、窒素ガス導入管およびジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコ内に、
水 187重量部
ラウリル硫酸ナトリウム 2 〃
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 2 〃
仕込み単量体混合物
アクリル酸エチル〔EA〕 97.8 〃
フマル酸モノn-ブチル〔MBF〕 0.8 〃
9FMM 1.4 〃
を仕込み、窒素ガス置換を行って系内の酸素を十分に除去した後、
ナトリウムホルムアルデヒド 0.008重量部
スルホキシレート
(富士フィルム和光純薬工業製品ロンガリット)
第3ブチルハイドロパーオキサイド 0.0047 〃
(日油製品パーブチルH69)
を加えて室温条件下で重合反応を開始させ、重合転化率が90%以上になる迄反応を継続した。得られた水性ラテックスを10重量%硫酸ナトリウム水溶液で凝析させた後、水洗、乾燥してアクリルエラストマー共重合体Aを得た。
【0074】
得られたアクリルエラストマー共重合体Aのムーニー粘度 PML1+4(100℃)は、46であった。モル分率組成を1H-NMR(400MHz、CD3C(=O)CD3、δ ppm)より下式を用いて求めたところ、9FMMは0.40モル%、EA+MBFは99.60モル%であった。
α:6.4-8.1ppmのシグナルの積分値
β:3.2-5.0ppmのシグナルの積分値
9FMM(mol%)=200×α/(9β-5α)
EA+MBF(mol%)=100-9FMM(mol%)
また、近似的な重量分率組成を下式より求めたところ、9FMMは1.4重量%、EA+MBFは98.6重量%であった。
9FMM(wt%)=(9FMM(mol%)×351.4×100)/
〔9FMM(mol%)×351.4+(EA+MBF(mol%))×100.5)〕
EA+MBF(wt%)=100-9FMM(wt%)
さらに、アクリルエラストマー共重合体Aの酸価を測定することによりMBF(wt%)を求めたところ、0.6重量%であった。
【0075】
比較例1
実施例1において、下記仕込み単量体混合物を用いてアクリルエラストマー共重合体Bを得た。
仕込み単量体混合物
アクリル酸エチル〔EA〕 98.4重量部
フマル酸モノn-ブチル〔MBF〕 1.6 〃
得られたアクリルエラストマー共重合体Bのムーニー粘度 PML1+4(100℃)は、32であった。また、アクリルエラストマー共重合体Bの酸価を測定することによりMBF(wt%)を求めたところ、1.2重量%であった。
【0076】
実施例2
実施例1において、下記仕込み単量体混合物を用いてアクリルエラストマー共重合体Cを得た。
アクリル酸エチル〔EA〕 57.8重量部
アクリル酸n-ブチル〔BA〕 40.0 〃
フマル酸モノn-ブチル〔MBF〕 0.8 〃
9FMM 1.4 〃
得られたアクリルエラストマー共重合体Cのムーニー粘度 PML1+4(100℃)は、33であった。また、アクリルエラストマー共重合体Cの酸価を測定することによりMBF含量(wt%)を求めたところ、0.6重量%であった。
また、モル分率組成を1H-NMR(400MHz、CD3C(=O)CD3、δ ppm)より下式を用いて求めたところ、9FMMは0.43モル%、EA+BA+MBFは99.57モル%であった。
α:6.4-8.1ppmのシグナルの積分値
β:3.2-5.0ppmのシグナルの積分値
9FMM(mol%)=200×α/(9β-5α)
EA+BA+MBF(mol%)=100-9FMM(mol%)
また近似的な重量分率組成を下式より求めたところ、9FMMは1.4重量%、EA+BA+MBFは98.6重量%であった。
9FMM(wt%)=(9FMM(mol%)×351.4×100)/
〔9FMM(mol%)×351.4+(EA+BA+MBF(mol%))×110.3)〕
EA+BA+MBF(wt%)=100-9FMM(wt%)
【0077】
比較例2
実施例1において、下記仕込み単量体混合物を用いてアクリルエラストマー共重合体Dを得た。
アクリル酸エチル〔EA〕 58.4重量部
アクリル酸n-ブチル〔BA〕 40.0 〃
フマル酸モノn-ブチル〔MBF〕 1.6 〃
得られたアクリルエラストマー共重合体Dのムーニー粘度 PML1+4(100℃)は、24であった。また、アクリルエラストマー共重合体Dの酸価を測定することによりMBF含量(wt%)を求めたところ、1.2重量%であった。
【0078】
実施例3
実施例1において、下記仕込み単量体混合物を用いてアクリルエラストマー共重合体Eを得た。
アクリル酸エチル〔EA〕 52.8重量部
アクリル酸n-ブチル〔BA〕 40.0 〃
メタクリル酸メチル〔MMA〕 5.0 〃
フマル酸モノn-ブチル〔MBF〕 0.8 〃
9FMM 1.4 〃
得られたアクリルエラストマー共重合体Eのムーニー粘度 PML1+4(100℃)は、40であった。また、アクリルエラストマー共重合体Eの酸価を測定することによりMBF含量(wt%)を求めたところ、0.6重量%であった。
また、モル分率組成を1H-NMR(400MHz、CD3C(=O)CD3、δ ppm)より下式を用いて求めたところ、9FMMは0.44モル%、EA+BA+MMA+MBFは99.56モル%であった。
α:6.4-8.1ppmのシグナルの積分値
β:3.2-5.0ppmのシグナルの積分値からγを引いた値
γ:3.4-3.6ppmのシグナルの積分値
9FMM(mol%)=600×α/(27β-13α+18γ)
EA+BA+MMA+MBF(mol%)=100-9FMM(mol%)
また近似的な重量分率組成を下式より求めたところ、9FMMは1.4重量%、EA+BA+MMA+MBFは98.6重量%であった。
9FMM(wt%)=(9FMM(mol%)×351.4×100)/
〔9FMM(mol%)×351.4+(EA+BA+MMA+MBF(mol%))×110.3)〕
EA+BA+MMA+MBF(wt%)=100-9FMM(wt%)
【0079】
比較例3
実施例1において、下記仕込み単量体混合物を用いてアクリルエラストマー共重合体Fを得た。
アクリル酸エチル〔EA〕 53.4重量部
アクリル酸n-ブチル〔BA〕 40.0 〃
メタクリル酸メチル〔MMA〕 5.0 〃
フマル酸モノn-ブチル〔MBF〕 1.6 〃
得られたアクリルエラストマー共重合体Fのムーニー粘度 PML1+4(100℃)は、31であった。また、アクリルエラストマー共重合体Fの酸価を測定することによりMBF含量(wt%)を求めたところ、1.2重量%であった。
【0080】
実施例4
アクリルエラストマー共重合体A 100重量部
FEFカーボンブラック(東海カーボン製品シーストGSO) 60 〃
ステアリン酸(ミヨシ油脂製品TST) 1 〃
ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸 0.5 〃
(東邦化学工業製品フォスファノールRL-210)
架橋促進剤(Safic-Alcan社製品Vulcofac ACT55) 1 〃
4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン 2 〃
(大内新興化学工業製品ノクラックCD)
【0081】
以上の各成分の内、アクリルエラストマー共重合体A、FEFカーボンブラック、ステアリン酸およびポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸を、バンバリーミキサで混和した。得られた混和物と残りの各成分とをオープンロールを用いて混和し、アクリルエラストマー共重合体組成物を得た。
【0082】
これを、100トンプレス成形機により180℃で8分間の一次架橋を行い、厚さ約2mmのシート状架橋物(ノンポストキュアシート)を得た。また、さらに175℃で4時間のオーブン架橋を行い、厚さ約2mmのシート状架橋物(ポストキュアシート)を得た。
【0083】
アクリルエラストマー共重合体組成物の架橋特性およびその架橋物の物性を、次のようにして測定した。
ムーニースコーチ試験:ISO 289-1に対応するJIS K6300-1準拠(125℃)
東洋精機製作所製ムーニービスコメーターAM-3を用い、最小
ムーニー粘度(ML min)とスコーチ時間(t5)の値を測定
架橋試験:ISO 6502に対応するJIS K6300-2準拠(180℃、12分間)
東洋精機製作所製ロータレス・レオメータRLR-3を用い、
ML、MH、tc(10)およびtc(90)の値を測定
ML:最小トルク
MH:最大トルク
tc(10):架橋トルクがML+(MH-ML)×0.1に達するまでに
要する時間
tc(90):架橋トルクがML+(MH-ML)×0.9に達するまでに
要する時間
常態物性:ISO 37に対応するJIS K6251、ISO 7619-1に対応する
JIS K6253準拠し、ノンポストキュアシートおよび
ポストキュアシートそれぞれについて測定
空気加熱老化試験:ISO 188に対応するJIS K6257準拠し、ポストキュア
シートについて測定(試験温度:175℃、190℃)
【0084】
比較例4
実施例4において、アクリルエラストマー共重合体Aの代りにアクリルエラストマー共重合体Bが用いられ、さらにヘキサメチレンジアミンカーバメート(ユニマテック製品ケミノックスAC6F)が0.6重量部添加された。
【0085】
実施例5
実施例4において、アクリルエラストマー共重合体Aの代わりにアクリルエラストマー共重合体Cが用いられた。
【0086】
比較例5
実施例4において、アクリルエラストマー共重合体Aの代りにアクリルエラストマー共重合体Dが用いられ、さらにヘキサメチレンジアミンカーバメート(ユニマテック製品ケミノックスAC6F)が0.6重量部添加された。
【0087】
実施例6
実施例4において、アクリルエラストマー共重合体Aの代わりにアクリルエラストマー共重合体Eが用いられた。
【0088】
比較例6
実施例4において、アクリルエラストマー共重合体Aの代りにアクリルエラストマー共重合体Fが用いられ、さらにヘキサメチレンジアミンカーバメート(ユニマテック製品ケミノックスAC6F)が0.6重量部添加された。
【0089】
以上の実施例4~6および比較例4~6で得られた結果は、次の表1~3および
図1~15に示される。
表1
測定結果 実施例4 比較例4
ムーニースコーチ試験(125℃)
ML min (pts) 70 66
t5 (分) 3.7 3.1
架橋試験(180℃)
tc(10) (分) 0.53 0.48
tc(90) (分) 5.73 5.03
ML (N・m) 0.25 0.31
MH (N・m) 0.93 1.13
常態物性(ノンポストキュア)
硬度 (Duro A) 60 62
100%モジュラス (MPa) 5.4 4.8
破断強度 (MPa) 16.1 14.6
破断時伸び (%) 260 280
常態物性(ポストキュア)
硬度 (Duro A) 64 69
100%モジュラス (MPa) 6.6 6.5
破断強度 (MPa) 16.3 16.9
破断時伸び (%) 210 230
熱老化試験(190℃、168時間)
硬度変化 (Duro A) +11 +8
100%モジュラス変化率 (%) -29 -46
破断強度変化率 (%) -35 -54
破断時伸び変化率 (%) +11 +39
熱老化試験(190℃、288時間)
硬度変化 (Duro A) +14 +9
100%モジュラス変化率 (%) -39 -54
破断強度変化率 (%) -57 -73
破断時伸び変化率 (%) +13 +39
熱老化試験(190℃、376時間)
硬度変化 (Duro A) +21 +17
100%モジュラス変化率 (%) -23 -29
破断強度変化率 (%) -61 -71
破断時伸び変化率 (%) -19 -26
熱老化試験(190℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +31 +32
100%モジュラス変化率 (%) - -
破断強度変化率 (%) -42 -38
破断時伸び変化率 (%) -84 -87
熱老化試験(175℃、70時間)
硬度変化 (Duro A) +7 +2
100%モジュラス変化率 (%) +3 -21
破断強度変化率 (%) -8 -22
破断時伸び変化率 (%) -2 +16
熱老化試験(175℃、250時間)
硬度変化 (Duro A) +7 +3
100%モジュラス変化率 (%) -17 -45
破断強度変化率 (%) -24 -46
破断時伸び変化率 (%) +13 +35
熱老化試験(175℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +9 +6
100%モジュラス変化率 (%) -30 -52
破断強度変化率 (%) -42 -63
破断時伸び変化率 (%) +17 +55
熱老化試験(175℃、750時間)
硬度変化 (Duro A) +17 +12
100%モジュラス変化率 (%) -30 -48
破断強度変化率 (%) -55 -72
破断時伸び変化率 (%) +18 +32
熱老化試験(175℃、1000時間)
硬度変化 (Duro A) +25 +20
100%モジュラス変化率 (%) -5 -18
破断強度変化率 (%) -56 -69
破断時伸び変化率 (%) -17 -22
表2
測定結果 実施例5
比較例5
ムーニースコーチ試験(125℃)
ML min (pts) 57 50
t5 (分) 3.3 3.0
架橋試験(180℃)
tc(10) (分) 0.58 0.51
tc(90) (分) 6.18 5.83
ML (N・m) 0.21 0.23
MH (N・m) 0.78 0.89
常態物性(ポストキュア)
硬度 (Duro A) 62 62
100%モジュラス (MPa) 7.4 4.8
破断強度 (MPa) 13.0 13.6
破断時伸び (%) 160 210
熱老化試験(190℃、100時間)
硬度変化 (Duro A) +5 +1
100%モジュラス変化率 (%) -19 -46
破断強度変化率 (%) -15 -38
破断時伸び変化率 (%) +15 +40
熱老化試験(190℃、200時間)
硬度変化 (Duro A) +7 +6
100%モジュラス変化率 (%) -28 -50
破断強度変化率 (%) -28 -54
破断時伸び変化率 (%) +11 +34
熱老化試験(190℃、300時間)
硬度変化 (Duro A) +12 +13
100%モジュラス変化率 (%) -26 -38
破断強度変化率 (%) -34 -57
破断時伸び変化率 (%) +4 +7
熱老化試験(190℃、400時間)
硬度変化 (Duro A) +19 +17
100%モジュラス変化率 (%) +0 +6
破断強度変化率 (%) -34 -55
破断時伸び変化率 (%) -23 -38
熱老化試験(190℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +25 +23
100%モジュラス変化率 (%) - -
破断強度変化率 (%) -33 -43
破断時伸び変化率 (%) -51 -59
熱老化試験(175℃、250時間)
硬度変化 (Duro A) +6 -3
100%モジュラス変化率 (%) -22 -46
破断強度変化率 (%) -16 -39
破断時伸び変化率 (%) +10 +32
熱老化試験(175℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +2 +0
100%モジュラス変化率 (%) -34 -48
破断強度変化率 (%) -31 -54
破断時伸び変化率 (%) +14 +22
熱老化試験(175℃、750時間)
硬度変化 (Duro A) +12 +10
100%モジュラス変化率 (%) -26 -38
破断強度変化率 (%) -32 -54
破断時伸び変化率 (%) +9 +17
熱老化試験(175℃、1000時間)
硬度変化 (Duro A) +22 +21
100%モジュラス変化率 (%) +5 +15
破断強度変化率 (%) -29 -52
破断時伸び変化率 (%) -20 -38
表3
測定結果 実施例6
比較例6
ムーニースコーチ試験(125℃)
ML min (pts) 57 56
t5 (分) 3.0 3.2
架橋試験(180℃)
tc(10) (分) 0.58 0.53
tc(90) (分) 6.40 6.02
ML (N・m) 0.21 0.23
MH (N・m) 0.80 0.87
常態物性(ポストキュア)
硬度 (Duro A) 63 65
100%モジュラス (MPa) 7.5 4.4
破断強度 (MPa) 14.3 13.1
破断時伸び (%) 180 230
熱老化試験(190℃、100時間)
硬度変化 (Duro A) +6 +1
100%モジュラス変化率 (%) -20 -39
破断強度変化率 (%) -22 -37
破断時伸び変化率 (%) +5 +34
熱老化試験(190℃、200時間)
硬度変化 (Duro A) +9 -2
100%モジュラス変化率 (%) -32 -45
破断強度変化率 (%) -34 -53
破断時伸び変化率 (%) +8 +35
熱老化試験(190℃、300時間)
硬度変化 (Duro A) +14 +11
100%モジュラス変化率 (%) -33 -41
破断強度変化率 (%) -45 -64
破断時伸び変化率 (%) +2 +22
熱老化試験(190℃、400時間)
硬度変化 (Duro A) +16 +14
100%モジュラス変化率 (%) -23 -22
破断強度変化率 (%) -45 -60
破断時伸び変化率 (%) -15 -6
熱老化試験(190℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +22 +20
100%モジュラス変化率 (%) +1 +17
破断強度変化率 (%) -42 -53
破断時伸び変化率 (%) -37 -38