(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】通信機器用部品
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20230329BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230329BHJP
C08K 7/08 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C08L71/12
C08K3/22
C08K7/08
(21)【出願番号】P 2022563581
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031202
(87)【国際公開番号】W WO2022107409
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2020191024
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】徳山 美希
(72)【発明者】
【氏名】倉光 匡人
【審査官】蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116870(JP,A)
【文献】特開2010-024326(JP,A)
【文献】特開2006-206689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 ~ 101/14
C08K 3/00 ~ 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物からなる成形品を有する通信機器用部品であって、
前記樹脂組成物は、(A)マトリクス樹脂、(B)二酸化チタンを含み、
前記(A)マトリクス樹脂は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、
前記(A)マトリクス樹脂100質量部に対する、前記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と、(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含むブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物と、の合計含有量が75質量部以上であり、
前記(B)二酸化チタンの平均L/Dが1.2以上6.0以下であり、L/Dが7.0を超える二酸化チタンの含有率が10%未満であ
り、
前記樹脂組成物100質量部に対し、前記(A)マトリクス樹脂及び前記(B)二酸化チタンの合計質量の割合が80質量部以上であり、
前記樹脂組成物100質量部に対し、前記(B)二酸化チタンを10質量部以上90質量部以下含む、
ことを特徴とする、通信機器用部品。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含むブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物を含む、請求項1に記載の通信機器用部品。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、(A-c)ポリスチレン系樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載の通信機器用部品。
【請求項4】
前記(A)マトリクス樹脂100質量部に対し、前記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を50質量部以上含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の通信機器用部品。
【請求項5】
前記(A)マトリクス樹脂100質量部に対し、ポリアミド及びポリフェニレンサルファイドを合計で10質量部以下含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の通信機器用部品。
【請求項6】
前記成形品を複数有し、前記複数の成形品が嵌合している構造を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の通信機器用部品。
【請求項7】
銅インクを塗布して回路形成可能である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の通信機器用部品。
【請求項8】
さらに金属回路、金属配線、及び金属基盤からなる群から選ばれる1つ以上を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の通信機器用部品。
【請求項9】
高周波数アンテナ用部品である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の通信機器用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエ-テルは機械的性質、電気的性質、及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性にも優れるため広い範囲で用いられている。特に1GHz以上の高周波帯で、アンテナ特性発現可能な材料が求められている。
【0003】
ここで、ポリフェニレンエーテルを含むマトリクス樹脂、二酸化チタンを含み、かつ耐熱性を持ち、導電性インク等を塗布して回路形成可能な材料を通信機器用部品として使用することでアンテナ特性が発現可能となる。この技術により、誘電率をコントロール可能で低誘電正接かつ金属で回路や配線、基盤が形成可能な通信機器用部品として提供可能となる。更には、回路や配線、基盤が形成可能であることから、通信機器用部品の金属代替材としても使用可能となる。
【0004】
一方、携帯電話等の移動体通信機器や無線LANに用いられる表面実装型誘電体アンテナとして、誘電体セラミックス単体、樹脂単体及びセラミックス含有樹脂組成物からなるものが提案されている。例えば、アンテナ基体がセラミックス単体や樹脂単体からなる表面実装型誘電体アンテナ(特許文献1参照)、めっき性の良好な、比誘電率実部が18程度のシンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂からなる発泡体及びその製造方法(特許文献2参照)が開示されている。さらに、樹脂材料に球状の誘電体セラミックス粉末を、組成物中の割合で40vol%~70vol%(体積%)混合した樹脂組成物(特許文献3参照)、高充填を可能とするためアスペクト比が3~5に調整されたチタン酸金属塩繊維と、これと熱可塑性樹脂等を複合した複合材料(特許文献4参照)が開示されている。
【0005】
更には、ポリフェニレンエーテルを含むマトリクス樹脂と二酸化チタンを含む組成物において、溶融混練後の二酸化チタンのアスペクト比を制御することにより高誘電率化する技術が知られている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-98015号公報
【文献】特開平10-45936号公報
【文献】特許第3930814号公報
【文献】特許第2992667号公報
【文献】特許第5187042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、携帯電話等の移動体通信機器の軽量化及び小型化に伴って、誘電体アンテナも軽量化及び小型化の要求が高まっている。誘電率の大きな二酸化チタンを用いて高誘電率化することでアンテナを小型化することができるが、球状の二酸化チタンでは誘電率を上げるために高濃度に充填する必要があり、樹脂としての流動性を悪化させ複雑形状の部品への使用が困難であるという課題があった。また、特許文献5に開示されたように、アスペクト比の大きい二酸化チタンを使用することで高誘電化は可能だが、誘電正接も同時に上がってしまい、アンテナ性能の向上が困難であった。さらには通信機器、例えばアンテナとして用いるため、金属を用いて回路や配線、基盤が形成できる材料が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、低誘電正接を維持しながら誘電率コントロールが可能で、金属を用いて回路や配線、基盤が形成可能な通信機器用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の問題を解決するために鋭意検討した結果、(A)マトリクス樹脂、(B)二酸化チタンを含有する組成物において、特定の組成とすることで誘電率をコントロールし、低誘電正接を保ちながら、耐熱性の高い材料を提供することで金属を用いて回路や配線、基盤が形成可能なアンテナ特性に優れた材料となり、更には金属回路が形成されていても割れない成形品が作製可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
樹脂組成物からなる成形品を有する通信機器用部品であって、
前記樹脂組成物は、(A)マトリクス樹脂、(B)二酸化チタンを含み、
前記(A)マトリクス樹脂は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、
前記(A)マトリクス樹脂100質量部に対する、前記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と、(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含むブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物と、の合計含有量が75質量部以上であり、
前記(B)二酸化チタンの平均L/Dが1.2以上6.0以下であり、L/Dが7.0を超える二酸化チタンの含有率が10%未満であり、
前記樹脂組成物100質量部に対し、前記(A)マトリクス樹脂及び前記(B)二酸化チタンの合計質量の割合が80質量部以上であり、
前記樹脂組成物100質量部に対し、前記(B)二酸化チタンを10質量部以上90質量部以下含む、
ことを特徴とする、通信機器用部品。
[2]
前記樹脂組成物が、(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含むブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物を含む、[1]に記載の通信機器用部品。
[3]
前記樹脂組成物が、(A-c)ポリスチレン系樹脂をさらに含む、[1]又は[2]に記載の通信機器用部品。
[4]
前記(A)マトリクス樹脂100質量部に対し、前記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を50質量部以上含む、[1]~[3]のいずれかに記載の通信機器用部品。
[5]
前記(A)マトリクス樹脂100質量部に対し、ポリアミド及びポリフェニレンサルファイドを合計で10質量部以下含む、[1]~[4]のいずれかに記載の通信機器用部品。
[6]
前記成形品を複数有し、前記複数の成形品が嵌合している構造を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の通信機器用部品。
[7]
銅インクを塗布して回路形成可能である、[1]~[6]のいずれかに記載の通信機器用部品。
[8]
さらに金属回路、金属配線、及び金属基盤からなる群から選ばれる1つ以上を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の通信機器用部品。
[9]
高周波数アンテナ用部品である、[1]~[8]のいずれかに記載の通信機器用部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低誘電正接を保ちながら誘電率をコントロール可能で、金属を用いて回路や配線、基盤が形成可能な通信機器用部品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の通信機器用部品は、樹脂組成物からなる成形品を有する。樹脂組成物は、(A)マトリクス樹脂、(B)二酸化チタンを含み、前記(A)マトリクス樹脂は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び任意に、(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含むブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物を含む。
ここで、(A)マトリクス樹脂100質量部に対する、前記(A-a)成分と前記(A-b)成分との合計含有量が75質量部以上である。また、(B)成分の平均L/Dが1.2以上6.0以下であり、L/Dが7.0を超える二酸化チタンの含有率が10%未満である。
【0014】
[(A)マトリクス樹脂]
上記(A)マトリクス樹脂とは、無機充填剤等を除いた樹脂成分のことを指す。かかる樹脂成分としては、例えば、成形用として利用される種々の樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、芳香族系樹脂等が挙げられる。
【0015】
上記(A)マトリクス樹脂は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む。
【0016】
上記(A)マトリクス樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマーや水添ブロック共重合体等の主として耐衝撃性を改良するための樹脂成分もこれに含むことができる。
【0017】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン単独重合体;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブチレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のポリオレフィン共重合体等が挙げられる。特に、ポリエチレン単独重合体としては、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0018】
また、上記水添ブロック共重合体としては、ポリスチレンブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体等が挙げられる。
水素添加前のブロック共重合体の構造としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレンブロック鎖をS、共役ジエン化合物重合体ブロック鎖をBと表すと、S-B-S、SB-S-B、(S-B-)4-S、S-B-S-B-S等の構造が挙げられる。
更には、添加剤として用いられる有機化合物、例えば、無水マレイン酸や、フェノール系安定剤等も樹脂成分として(A)マトリクス樹脂に含むことができる。
【0019】
[(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂]
上記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、単に「(A-a)成分」と称する場合がある)の具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52-17880号公報に記載されてあるような2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体や2-メチル-6-ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物である。
【0020】
上記(A-a)成分としては、例えば、下記式(1)で表される繰り返し単位構造からなるホモ重合体、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有する共重合体が挙げられる。
上記(A-a)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化1】
上記式(1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7の第1級アルキル基、炭素数1~7の第2級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される一価の基である。
【0021】
(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の製造方法は、公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、第一銅塩とアミンとのコンプレックスを触媒として用いて、例えば、2,6-キシレノールを酸化重合することによって製造する、米国特許第3306874号明細書に記載される方法や、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50-51197号公報、特公昭52-17880号公報及び同63-152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
【0022】
上記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の還元粘度(0.5g/dLクロロホルム溶液、30℃、ウベローデ型粘度管で測定)の好ましい範囲は0.30~0.80dL/g、より好ましくは0.35~0.75dL/g、最も好ましくは0.38~0.55dL/gである。(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の還元粘度がこの範囲にあると、耐衝撃性、耐熱性等の特性に優れ好ましい。
【0023】
上記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても、好ましく使用することができる。
【0024】
また、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の安定化の為、公知の各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して5質量部未満である。
【0025】
さらに、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂に添加することが可能な公知の添加剤等も(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
【0026】
上記(A-a)成分は、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、スチレン系モノマー若しくはその誘導体、及び/又はα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体と、を反応させることによって得られる変性ポリフェニレンエーテルであってもよい。ここで、上記スチレン系モノマー若しくはその誘導体及び/又はα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体のグラフト量又は付加量としては、(A-a)成分100質量%に対して、0.01~10質量%であることが好ましい。
【0027】
上記変性ポリフェニレンエーテルの製造方法としては、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80~350℃の温度下で反応させる方法等が挙げられる。
【0028】
上記ポリフェニレンエーテルとしては、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、上記変性PPEとの、任意の割合の混合物を用いてもよい。
【0029】
耐熱性と低誘電正接を保ちながら誘電率をコントロール可能とする観点から、上記(A)マトリクス樹脂100質量部に対する、上記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、50質量部以上であることが好ましく、55質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがさらに好ましい。また、成形性の観点から、85質量部以下であることが好ましい。
【0030】
[(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物]
本実施形態では、(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物(以下、単に「(A-b)成分」と称する場合がある)をさらに含んでいてもよく、含んでいることが好ましい。上記(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物とは、芳香族ビニル単量体単位を主体とする少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを含む非水素化ブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物をいう。
【0031】
なお、上記の芳香族ビニル重合体ブロックに関して「芳香族ビニル単量体単位を主体とする」とは、当該ブロックにおいて、50質量%以上が芳香族ビニル単量体単位であるブロックを指す。より好ましくは芳香族ビニル単量体単位が70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0032】
また、上記共役ジエン重合体ブロックの「共役ジエン単量体単位を主体とする」に関しても同様で、50質量%以上が共役ジエン単量体単位であるブロックを指す。より好ましくは共役ジエン単量体単位が70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0033】
また、上記の芳香族ビニル重合体ブロックは、例えば、芳香族ビニル重合体ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物が結合されてなる共重合体ブロックであってもよい。また、上記の共役ジエン重合体ブロックの場合も同様に、例えば、共役ジエン重合体ブロック中にランダムに少量の芳香族ビニル化合物が結合されてなる共重合体ブロックであってもよい。
【0034】
芳香族ビニル単量体単位を形成するために用いる芳香族ビニル化合物としては、特に制限はなく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
【0035】
共役ジエン重合体ブロックを形成するために用いる共役ジエン化合物としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0036】
上記ブロック共重合体の共役ジエン重合体ブロック部分のミクロ構造は、1,2-ビニル含量もしくは1,2-ビニル含量と3,4-ビニル含量との合計量(全ビニル結合量)が5~80%であることが好ましく、10~70%であることがより好ましい。
なお、全ビニル結合量は、赤外分光光度計を用いて測定することができる。
【0037】
上記ブロック共重合体の水素添加物(水素化ブロック共重合体)の製造に用いる非水素化ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロック(A)と共役ジエン重合体ブロック(B)が、A-B型、A-B-A型、A-B-A-B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましい。これらの内、異なる結合形式を有するブロック共重合体を組み合わせて用いても構わない。これらの中でもA-B-A型、A-B-A-B型から選ばれる結合形式を有することがより好ましく、A-B-A型の結合形式を有することがさらに好ましい。
【0038】
また、本実施形態で使用する(A-b)成分は、部分的に水素添加されたブロック共重合体(部分水素化ブロック共重合体)であることが好ましい。
【0039】
部分水素化ブロック共重合体とは、上述の非水素化ブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン重合体ブロックの脂肪族二重結合を、0%超100%未満の範囲で制御したものをいう。該部分水素化ブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上100%未満であり、より好ましくは80%以上100%未満、最も好ましくは98%以上100%未満である。
【0040】
さらに、上記(A-b)成分は、数平均分子量が30,000以上300,000未満であることが好ましい。これがこの範囲にあると、流動性、衝撃強度、及び難燃性に優れた組成物を得ることができる。
【0041】
樹脂組成物中の(A-b)成分の数平均分子量の評価方法を以下に示す。すなわち、(A-b)成分には良溶解性を示し、且つ、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂には難溶性を示す溶剤、例えばクロロホルムを用いて(A-b)成分を分取する。これを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置[GPC SYSTEM21:昭和電工(株)製]を用いて、紫外分光検出器[UV-41:昭和電工(株)製]で測定し、標準ポリスチレンで換算して数平均分子量を求める。
なお、測定条件は下記のとおりとしてよい[溶媒:クロロホルム、温度:40℃、カラム:サンプル側(K-G,K-800RL,K-800R)、リファレンス側(K-805L×2本)、流量10mL/分、測定波長:254nm、圧力15~17kg/cm2)]。
また、数平均分子量の測定の際、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分は含めない。当該低分子量成分は、分子量3000以下の成分を指すものとする。通常、計算された正しい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.0~1.1の範囲内である。
【0042】
これら本実施形態中で用いることのできる、(A-b)成分としてのこれらブロック共重合体は、本実施形態の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2-結合ビニル含有量もしくは1,2-結合ビニル含有量と3,4-結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等の各々について2種以上を混合して用いても構わない。
【0043】
また、本実施形態で用いることのできる、(A-b)成分としてのこれらブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたブロック共重合体であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
該変性されたブロック共重合体の製法としては、ラジカル開始剤の存在下又は不存在下で、(1)ブロック共重合体の軟化点温度以上、250℃以下の温度範囲で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、さらには(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
ここでいう「分子構造内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物」としては、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
【0044】
上記(A-b)成分の好ましい含有量は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を100質量部としたときに、1~40質量部であり、より好ましくは2~35質量部であり、さらに好ましくは2~30質量部である。
【0045】
また、本実施形態では、低誘電正接を保ちながら誘電率をコントロール可能とする観点から、上記(A)マトリクス樹脂100質量部に対する、上記(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と上記(A-b)成分との合計含有量は、75質量部以上であり、80質量部以上であることが好ましく、85質量部以上であることがより好ましい。
【0046】
[(A-c)ポリスチレン系樹脂]
本実施形態の(A)マトリクス樹脂は、ポリスチレン系樹脂を含んでもよい。ポリスチレン系樹脂としては、アタクチックポリスチレン、ゴム補強されたポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)、スチレン含有量が50重量%以上のスチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、及び該スチレン-アクリロニトリル共重合体がゴム補強されたABS樹脂等が挙げられ、アタクチックポリスチレン及び/又はハイインパクトポリスチレンが好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本実施形態における、(A-c)ポリスチレン系樹脂の好ましい含有量は、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を100質量部としたときに、0~100質量部であり、より好ましくは0~90質量部であり、さらに好ましくは0~80質量部である。
【0048】
[その他の樹脂成分]
本実施形態の(A)マトリクス樹脂における、その他の樹脂成分の例としては、ポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等である。
【0049】
その他の樹脂成分個々の具体的な好ましい添加量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、それぞれ、15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、その他の樹脂成分全体の好ましい添加量としては、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
特に、低誘電正接を保ちながら誘電率をコントロール可能とする観点から、(A)マトリクス樹脂100質量部に対するポリアミド及びポリフェニレンサルファイドの合計含有量は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部であってもよい。ポリアミド及びポリフェニレンサルファイドは少なくとも一方が含まればよいが、ポリアミド及びポリフェニレンサルファイドがともに含まれることが好ましい。
【0051】
[(B)二酸化チタン]
本実施形態の樹脂組成物は、特定形状を有する二酸化チタンを含有することにより、優れた誘電特性を有する。
一般的に樹脂、塗料の顔料として用いられる二酸化チタンは、その結晶形態によりルチル型とアナターゼ型の二種類に分けられ、どちらも使用可能であるが、誘電特性の観点からルチル型であることが好ましい。
【0052】
本実施形態において、誘電率コントロール、低誘電正接化の観点より、樹脂組成物中の(B)二酸化チタンの平均L/Dは、1.2以上6.0以下である。中でも、平均L/Dは1.3以上5.5以下が好ましく、更には平均L/Dは1.5以上5.5以下が好ましく、より好ましくは2.0以上4.5以下である。
樹脂組成物中の(B)二酸化チタンの平均L/Dが1.2以上であると、少量の二酸化チタンの添加で誘電率を高くできる傾向にあり、成形加工性が良好となる傾向にある。更には、樹脂組成物中の(B)二酸化チタンの平均L/Dが6.0以下であると、誘電正接を低く保ったまま誘電率を高くできる傾向にある。
なお、本明細書において、樹脂組成物中の二酸化チタンの平均L/Dは、以下の手法で求めることができる。たとえば、樹脂組成物を恒温昇温電気炉等で灰化し、樹脂成分のみを燃焼させた後、残った二酸化チタンを走査型電子顕微鏡で観察し、100個の二酸化チタンの最長径と最短径を測定し、平均L/Dを求める方法が挙げられる。具体的には、実施例に開示した方法で測定することができる。
誘電正接を低く保つ観点から、L/Dが過剰に大きい二酸化チタンの含有率を低く調整することが好ましく、そのことで、アンテナとしての性能を優れたものとすることができる。具体的には、L/Dが7.0を超える二酸化チタンの含有率が、上記樹脂組成物中に含まれる二酸化チタンの総数(100%)に対して、10%未満であることが好ましい。L/Dが7.0を超える二酸化チタンの好ましい含有率としては、8%未満であり、より好ましくは5%未満である。
二酸化チタンの平均L/Dは原料となる繊維状二酸化チタンのL/Dの調整、繊維状二酸化チタンと粒子状二酸化チタンとの併用によって調整可能である。また、混練条件によっても調整可能であり、2軸混練機への原料投入場所の変更や、混練機のスクリューパターンの変更で調整することが可能である。具体的には、二酸化チタンに混練時のシェアがかかる条件、例えば原料投入場所を上流側とすることや、スクリューパターンをより強練りとなるようなパターンとすることで、二酸化チタンの平均L/Dを小さくすることができる。
【0053】
また、樹脂組成物の原料に用いる二酸化チタン(以下、「原料二酸化チタン」と称する場合がある)は、例えば、公知の平均繊維径0.2~1.0μm、平均繊維長1~6μmの繊維状二酸化チタンを用いることが出来る。更には、平均L/Dを調整するため、繊維状二酸化チタンと、粒子状二酸化チタンを併用することも可能である。
【0054】
上記原料二酸化チタンとしての繊維状二酸化チタンとしては、平均繊維径が0.2~0.8μm、平均繊維長2~5μmである繊維状二酸化チタンが好ましく、さらにルチル型繊維状二酸化チタンであるとより好ましい。
原料二酸化チタンの平均繊維径が0.2μm以上であると、常用の単軸又は2軸混練機において、添加ホッパー内でラットホールが発生したり、同伴した空気や窒素が押出機原料投入口で逆流したりすることを防止することで安定的に添加でき、溶融混練により均一な樹脂組成物とすることが容易となり、吐出量を低下させず生産性が向上する傾向にある。さらに比表面積が小さくなる為、樹脂材料の劣化を防止できる傾向にある。
また、原料二酸化チタンの平均繊維径が0.8μm以下であると、ブロッキングを防止でき、原料二酸化チタンを安定に供給可能となり、溶融混練により均一な樹脂組成物としやすくなる傾向にある。また常用の単軸又は2軸混練機において、吐出量を低下させず生産性が向上する傾向にある。
【0055】
また、二酸化チタン製造時の分散性及び樹脂組成物中での分散性を向上させる目的で、二酸化チタンの表面を予め無機又は有機の処理剤で処理して用いてもよい。
【0056】
無機処理剤としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ及びこれらの混合物等が用いられる。シリカは吸水性が高く、樹脂組成物とした際、樹脂成分の分解、成形品外観不良等の水分の影響を受けやすいので、無機処理をする場合にはアルミナ、ジルコニアが好ましく、シリカを併用する場合はシリカが少量であることが好ましい。これら無機処理剤の使用量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、二酸化チタン100質量%に対して2~10質量%である。無機処理剤の含有量が酸化チタンに対して多すぎると、酸化チタン表面の無機処理層に含まれる吸着水により、樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の強度低下や外観不良が問題となる場合がある。逆に少なすぎても分散性が不十分となる等、改良効果が不十分である場合がある。
【0057】
有機処理剤としては、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基もしくはSi-H結合を有する有機シラン化合物又は有機シリコーン化合物等が挙げられる。好ましいのは、樹脂組成物中の分散性、樹脂成分との密着性等の観点から、Si-H結合を有する有機シリコーン化合物である。中でもハイドロジェンポリシロキサンが特に好ましい。これら有機処理剤の使用量は、二酸化チタン100質量%に対して、通常、0.5~5重量%、好ましくは1~3重量%である。
【0058】
本実施形態の(B)成分として繊維状二酸化チタンを用いた場合においては、繊維状二酸化チタン100質量%としたときそれら処理剤の含有量は8質量%以下であることが好ましい。
【0059】
本実施形態の(B)成分の含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、10質量部以上90質量部以下であることが、誘電率コントロール、成形性の観点から好ましい。当該含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、10質量部以上90質量部以下、10質量部以上85質量部以下、15質量部以上85質量部以下であることが好ましい。
であってもよく、80質量部以下であることが好ましく、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
また、上記(A)成分100質量部に対する上記(B)成分の質量割合としては、誘電率コントロール、成形性の観点から、20質量部以上250質量部以下であることが好ましく、より好ましくは20質量部以上230質量部以下、さらに好ましくは25質量部以上200質量部以下、特に好ましくは30質量部以上200質量部以下である。
【0060】
[着色剤]
本実施形態において、樹脂組成物の着色方法には特に制限はなく、公知の有機系染顔料、及び無機顔料から選ばれる1種以上の着色剤を使用することができる。
【0061】
有機染顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料、アジン系顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
このうち、カーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が250mL/100g未満、好ましくは150mL/100g未満、且つ窒素吸着比表面積900m2/g未満、さらに好ましくは400m2/g未満であることが好ましい。これらがこの範囲にあると、着色性、機械的強度、難燃性に特に優れた組成物を得ることができる。
ここでいうDBP吸収量、及び窒素吸着比表面積とは、それぞれASTM D2414、JIS K6217に定められた方法で測定した値をいう。
アジン系染料としては、例えばカラーインデックスにおけるソルベントブラック5(C.I.50415、CAS No.11099-03-9)、ソルベントブラック7(C.I.50415:1、CAS No.8005-20-5/101357-15-7)、アシッドブラック2(C.I.50420、CAS No.8005-03-6/68510-98-5)が挙げられる。
【0062】
無機顔料としては、例えば酸化亜鉛、酸化クロム等の酸化鉄を除く金属酸化物、チタンイエロー、コバルト青、群青等の複合金属酸化物等が挙げられる。
【0063】
上記着色剤の好ましい添加量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、カーボンブラックは2質量%以下、アジン系染料は2質量%以下、無機顔料は8質量%以下である。より好ましい量は、カーボンブラックは1質量%以下、アジン系染料は1質量%以下、無機顔料は5質量%以下である。
上記添加量で添加することで、耐衝撃性や機械特性のバランスを良好に保つことができる。また、難燃性が必要な用途の場合は、難燃性の観点より、上記添加量が好ましい。
【0064】
[無機充填剤]
本実施形態では、上記した成分のほかに、本実施形態の効果を損なわない範囲で必要に応じて無機充填剤を任意の段階で添加することができる。
【0065】
無機充填剤としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ゾノトライト、アパタイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン等の繊維状、粒状、板状、あるいは針状の無機質強化材が挙げられる。これら無機充填剤は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でより好ましい無機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、が挙げられる。また、無機充填剤はシランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理した物を用いても構わない。ただし、天然鉱石系充填剤は、しばしば鉄元素を微量ながら含有することがあるので、精製して鉄元素を除いたものを選定して用いる必要がある。
【0066】
無機充填剤個々の具体的な好ましい添加量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、それぞれ、15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、無機充填剤全体の好ましい添加量としては、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
[その他の成分]
本実施形態の樹脂組成物は、上述の成分以外に、その他の添加剤成分として、可塑剤(低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、帯電防止剤、核剤、流動性改良剤、補強剤、各種過酸化物、展着剤、銅系熱安定剤、ヒンダードフェノール系酸化劣化防止剤に代表される有機系熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、エチレンビスステアリン酸アミド等の滑剤、無水マレイン酸等の変性材等を含むことができる。
【0068】
その他の成分個々の具体的な好ましい添加量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、それぞれ、15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、その他の成分全体の好ましい添加量としては、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
以下、本実施形態の樹脂組成物の特性について述べる。
【0070】
本実施形態の樹脂組成物の荷重撓み温度(DTUL)(℃)としては、より大きな値となることが耐熱性の向上を示しており、好ましい。
なお、荷重撓み温度(DTUL)は、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。
高周波用のアンテナ部品は発熱が大きくなり、周波数が大きくなればなるほど発熱が大きくなり高い耐熱性を持つ樹脂が求められる。特に1GHz以上の周波数のアンテナ部品では100℃以上のDTULを持つ樹脂組成物であることが好ましく、耐熱性は高いほど好ましい。3GHz以上の周波数のアンテナ部品では110℃以上のDTULを持つ樹脂組成物が好ましく、4GHz以上の周波数のアンテナ部品になると120℃以上のDTULを持つ樹脂組成物が好ましい。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物の誘電正接は、より小さい値となることが、エネルギー損失率低減を示しており、好ましい。
なお、誘電正接は、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。
本実施形態の樹脂組成物においては、低誘電正接を維持しながら誘電率コントロールを行いやすくする観点から、測定周波数1GHzにおける誘電正接に対する誘電率の比(誘電率/誘電正接)が1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、2250以上であることがさらに好ましい。上記誘電率/誘電正接の上限は特に限定されないが、10000であることができ、8000であることができ、5000であることができ、4000であることができる。
【0072】
本実施形態の樹脂組成物は、成形加工性を維持したまま誘電率コントロールを行いやすくする観点から、樹脂組成物100質量%に対する無機物質の質量割合x(質量%)と、樹脂組成物の測定周波数1GHzにおける誘電率yとが、y>0.0006x2+0.021x+2.52の関係を満たすことが好ましく、y>0.00065x2+0.026x+2.52の関係を満たすことがより好ましく、y>0.0007x2+0.031x+2.52の関係を満たすことがさらに好ましい。また、特に限定されないが、樹脂組成物100質量%に対する無機物質の質量割合x(質量%)と、樹脂組成物の測定周波数1GHzにおける誘電率yとが、y<0.0060x2+0.105x+2.52、y<0.0045x2+0.092x+2.52、y<0.0030x2+0.080x+2.52のいずれかの関係を満たすことができる。
ここで、「無機物質」とは、樹脂組成物に含まれるすべての無機物質を指し、(B)二酸化チタンも含むものとする。二酸化チタン以外の無機物質としては、上述の無機充填剤、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂中の金属系安定剤、無機顔料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、「無機物質の質量割合」とは、樹脂組成物中に含まれる全ての無機物質の合計質量の割合をいう。
本実施形態においては、(A)マトリクス樹脂100質量部に対する、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と、(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含むブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物と、の合計含有量が75質量部以上であるというマトリクス樹脂成分の組成限定により、樹脂成分の誘電率がほぼ一定であり、無機物質の質量割合xと誘電率との間には、2次関数の関係が成り立つことが実験により確認されているため、上記関係は質量割合xあたりの誘電率向上効果を表すものである。無機物質に対する、二酸化チタンの含有率を高めることで、上記関係を満たすことができる傾向にあり、二酸化チタンの平均L/Dを大きくすることで、上記関係を満たすことができる傾向にある。当該観点から、無機物質100質量%に対する、二酸化チタンの含有率が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。また、上述の通り、二酸化チタンの平均L/Dは、1.2以上であり、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。ただし、上述した通り、L/Dの大きすぎる二酸化チタンを使用すると誘電正接が上がる傾向にあるため、二酸化チタンの平均L/Dは、6.0以下であることが好ましい。
成形品から樹脂組成物中の無機物質の質量割合xを測定する方法としては、成形体を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、得られた残渣分から無機物質の質量を測定し、xを計算することが挙げられる。
【0073】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分を構成する各成分、原料二酸化チタン、さらに必要に応じて着色剤、無機充填剤、その他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
【0074】
溶融混練を行う溶融混練機としては、以下に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、特に、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0075】
この際の溶融混練温度は、結晶性樹脂においてはその結晶性樹脂の融点温度以上、非結晶性樹脂においてはそのガラス転移温度以上で加熱溶融して無理なく加工できる温度を選ぶことができ、通常200~370℃の中から任意に選ぶことができる。
【0076】
押出機を用いた好ましい製造方法を以下に述べる。
【0077】
押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下であることが好ましく、より好ましくは30以上50以下である。
【0078】
押出機の構成については、特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口より下流に第1真空ベント、該第1真空ベントの下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、第2原料供給口の下流に、さらに第3、第4原料供給口を設けてもよい)、さらに該第2原料供給口の下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口との間にニーディングセクションを設け、第2~第4原料供給口と第2真空ベントとの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
【0079】
上記第2~第4原料供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものではないが、押出機第2~第4原料供給口の開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法がより安定して供給できる傾向にあるため好ましい。
【0080】
特に、原料に粉体が含まれ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減したい場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーを用いた方法がより好ましく、強制サイドフィーダーを第2~第4原料供給口に設け、これら原料の粉体を分割して供給する方法がさらに好ましい。
【0081】
また、液状の原材料を添加する場合は、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて押出機中に添加する方法が好ましい。
【0082】
そして、押出機第2~第4原料供給口の上部開放口は、同搬する空気を抜くための開放口として使用することもできる。
【0083】
樹脂組成物の溶融混練工程における溶融混練温度、スクリュー回転数に関しては、特に限定されないが、結晶性樹脂においてはその結晶性樹脂の融点温度以上、非結晶性樹脂においてはそのガラス転移温度以上で加熱溶融して無理なく加工できる温度を選ぶことができ、通常200~370℃の中から任意に選び、スクリュー回転数を100~1200rpmとする。
【0084】
二軸押出機を用いた、本実施形態の樹脂組成物の具体的な製法態様の一つとして、例えば、(A)成分を構成する各成分、原料二酸化チタンを、二軸押出機の第1原料供給口に供給し、加熱溶融ゾーンを熱可塑性樹脂の溶融温度に設定し、スクリュー回転数100~1200rpm、好ましくは200~500rpmにて溶融混練し、溶融混練する方法が挙げられる。また、(A)成分を構成する各成分、原料二酸化チタンを二軸押出機に供給する位置は、上記したように一括して押出機の第1原料供給口から供給しても良く、第2原料供給口、第3原料供給口及び第4原料供給口を設けてそれぞれの成分を分割して供給しても構わない。
【0085】
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させる場合、各原材料の押出機への添加経路における個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。上記添加経路としては、特に限定されないが、具体例としては、ストックタンクから順に、配管、リフィルタンクを保有した重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、二軸押出機、といった構成を挙げることができる。上記のような低い酸素濃度を維持するための方法としては、特に限定されないが、気密性を高めた個々の工程ラインに不活性ガスを導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持することが好ましい。
【0086】
上述した樹脂組成物の製造方法は、(A)成分中の熱可塑性樹脂がパウダー状(体積平均粒径が10μm未満)の成分を含む場合、本実施形態の樹脂組成物を二軸押出機を用いて製造する際に、二軸押出機のスクリューにおける残留物をより低減する効果をもたらし、さらには上述した製造方法で得られた樹脂組成物において、黒点異物や炭化物等の発生を低減化する効果をもたらす。
【0087】
本実施形態の樹脂組成物の具体的な製造方法としては、各原料供給口の酸素濃度を1.0体積%未満に制御した押出機を用い、かつ下記1~3のいずれかの方法を実施することが好ましい。
【0088】
1.本実施形態の樹脂組成物に含まれる(A)成分を構成する各成分の全量を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、原料二酸化チタンの全量を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
2.本実施形態の樹脂組成物に含まれる(A)成分を構成する各成分の全量及び原料二酸化チタンの一部を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、原料二酸化チタンの残量を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
3.本実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分の全量を溶融混練する方法。
特に、(A)成分に含まれる、(A-a)ポリフェニレンエーテル系樹脂等の一部の熱可塑性樹脂、原料二酸化チタンは粉体状であり、押出機への噛み込み性が悪く、時間当たりの生産量を増やすことが難しい。さらに樹脂の押出機中の滞留時間が長くなることから熱劣化が起きやすい。以上から、上記1、2の製造方法で得られる樹脂組成物は、3の製造方法で得られる樹脂組成物と比較して、二酸化チタンの噛み込み性が改善され、各成分の混合性に優れ、熱劣化による分解、架橋物や炭化物の発生を低減化させることができ、且つ樹脂の時間当たりの生産量を上げることができ、生産性、品質が優れた樹脂組成物が得られるため、より好ましい。
【0089】
〔成形品、通信機器用部品〕
本実施形態の成形品は、上述の樹脂組成物よりなる。本実施形態の成形品の製造方法は特に限定されないが、例えば射出成形により製造することができる。
また、このような方法で製造された成形品の表面に、塗料、金属や他種のポリマー等からなる被覆層を形成した形態で使用することもできる。
【0090】
本実施形態の通信機器用部品は、上記成形品を1つ又は複数有する。通信機器用部品は、複数の成形品が嵌合している構造を有していてよい。
【0091】
〔通信機器用部材の回路形成〕
本実施形態の通信機器用部品は、金属インクの塗布やメッキをして使用されることがある。
本実施形態の通信機器用部品は、金属回路、金属配線、金属基盤からなる群から選ばれる1つ以上を有していてよい。
当該観点から、本実施形態の成形品として、金属インク塗布可能である成形品が好ましく用いられる。金属インクについては、金、銀、銅を問わず使用することができる。更には、複数の金属を含むインクを使用することもできる。
メッキについても同様で、いかなる金属においても使用することができる。
本実施形態では、銅害防止性が高く、上記金属インクの塗布やメッキ後の割れを低減することができる。
【0092】
たとえば、金属インクを塗布したのちに様々な方法で樹脂に密着させる方法がある。レーザーを使用して密着させる方法等耐熱性が必要な方法でも本実施形態の通信機器用部品であれば使用可能である。
【0093】
たとえば、通信機器用部品にインクジェット法を利用して、導電性金属ペーストにより配線基板の回路パターンの描画形成を行なうことができる。この回路パターン形成方法は公知の方法(例えば特開2002-324966号参照)によればよい。
使用する導電性金属ペーストは、有機溶剤を含む熱硬化性樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストであり、この微細な平均粒子径の金属超微粒子は、その平均粒子径が1~100nmの範囲に選択され、金属超微粒子表面は、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆されているものが好適に使用できる。
上記導電性金属ペーストに含有される、微細な平均粒子径の金属超微粒子には、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、アルミニウムからなる群より選択される、一種類の金属からなる微粒子、または、2種類以上の金属からなる合金の微粒子が好適に使用できる。
回路パターンの形成方法は上記導電性金属ペーストを微小な液滴として、基板上に噴射・塗布して、前記導電性金属ペーストの塗布膜からなる回路パターンを描画する工程と、描画された導電性金属ペーストの塗布膜を、少なくとも前記熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度において、加熱処理する工程とを有する。
インクジェット方式による描画手段としては、加熱発泡により気泡を発生し、液滴の吐出を行うサーマル方式の描画手段や、ピエゾ素子を利用する圧縮により、液滴の吐出を行うピエゾ方式の描画手段がある。
【0094】
〔通信機器用部品の誘電特性〕
本実施形態の通信機器用部品は特に高周波領域において、低誘電正接の材料が求められる用途に用いることができる。当該用途では、損失が大きくなると通信機器用部材としての性能が落ちてしまうため、誘電正接のコントロールが重要な技術となる。本実施形態であれば、低誘電正接を維持しながら誘電率をコントロール可能な通信機器用部品を提供可能である。
【0095】
本実施形態の通信機器用部材は、通信機器用アンテナ、受信機、基地局に好適に使用することができる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例及び比較例によって本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び評価方法を以下に示す。
【0097】
[原材料]
(A-a)ポリフェニレンエーテル(以下、PPE)
(A-a-1)2,6-キシレノールを酸化重合して得られたポリフェニレンエーテル樹脂
該ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.52dL/gであった。
(A-a-2)2,6-キシレノールを酸化重合して得られたポリフェニレンエーテル樹脂
該ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.40dL/gであった。
(A-a-3)2,6-キシレノールを酸化重合して得られたポリフェニレンエーテル樹脂
該ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.32dL/gであった。
【0098】
(B)二酸化チタン
(B-1)繊維状二酸化チタン(石原産業株式会社製 商品名 タイペーク(商標) PFR404)、平均直径0.4μm、平均繊維長3μm、平均L/D7.5
(B-2)繊維状二酸化チタン(石原産業株式会社製 商品名 タイペーク(商標) FTL-300)、平均直径0.4μm、平均繊維長5μm、平均L/D12.5
(B-3)繊維状二酸化チタン(石原産業株式会社製 商品名 タイペーク(商標) FTL-400)、平均直径0.5μm、平均繊維長10μm、平均L/D20
(B-4)粒子状二酸化チタン(VENATOR社製 商品名 Tioxide(商標) RTC-30)、平均粒子径0.2μm、二酸化チタン含量94質量%。
【0099】
(A-b)芳香族ビニル単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つと、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを少なくとも1つとを含む、ブロック共重合体、及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物
水添ブロック共重合体(旭化成株式会社製タフテック(商標)H1051)
【0100】
(A-c)ポリスチレン系樹脂
(A-c-1)ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン株式会社製H9405)
(A-c-2)ハイインパクトポリスチレン(ペトロケミカルズ(株)製、商品名「CT-60」)
【0101】
(その他の樹脂成分)
(A-d)ポリアミド6,6(以下、PA66)
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2400gとアジピン酸100g、及び純水2.5リットルを5リットルのオートクレーブの中に仕込み、良く撹拌した。オートクレーブ内の雰囲気を充分窒素で置換した後、撹拌しながら室温から220℃まで約1時間かけて昇温した。この際、オートクレーブ内のゲージ圧は、水蒸気による自然圧で1.76MPaとなった。続いて、1.76MPa以上の圧にならないよう水を反応系外に除去しながら加熱を続けた。さらに2時間後内温が260℃に到達したら、加熱は続けながら、オートクレーブのバルブの開閉により約40分かけて、内圧が0.2MPaになるまで降圧した。その後、約8時間かけて室温まで冷却した。冷却後オートクレーブを開け、約2kgのポリマーを取りだし、粉砕した。
得られたポリアミドはMw=38700、Mw/Mn=2.1であった。なお、Mw、Mnは、GPC(移動層:ヘキサフルオロイソプロパノール、標準物質:PMMA(ポリメチルメタクリレート))を用いて求めた。
また、特開平7-228689号公報の実施例に記載されている末端アミノ基濃度の測定方法に従い測定した結果、末端アミノ基濃度は38μmol/gであった。
(A-e)MFR=2g/10分のポリプロピレン単独重合体
【0102】
(その他の成分)
(C)エチレンビスステアリン酸アミド:花王社製「カオーワックスEB-G」
(D)無水マレイン酸(日本油脂(株)製、「クリスタルMAN」)
(E)炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製 SL-2200)
【0103】
[評価方法]
実施例及び比較例で行った各評価試験は、以下のようにして行った。
【0104】
(1)誘電率・誘電正接
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で80mm×40mm×1.5mmの平板を作製した。また、平板を切削し、下記条件で測定した。
測定装置:vector network analyzer HP8510C(アジレント・テクノロジー)
synthesized sweeper HP83651A(同上)
test set HP8517B(同上)
試験片寸法:2mm×4mm×40mm
共振器の形状:内径229mm、高さ40mmの円筒
測定方向:1方向
測定周波数:1GHz付近(TM010モード)
前処理:C-90h/22±1℃/60±5%RH
試験環境:22℃/56%RH
誘電正接は低ければ低いほど性能が良いと判断した。
【0105】
(2)荷重撓み温度(DTUL)
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で評価用ISOダンベルを作製した。また、該ISOダンベルを切削し、荷重撓み温度(DTUL)測定用テストピースを作製した。上記荷重撓み温度測定用テストピースを用いて、荷重撓み温度:DTUL(ISO 75:1.80MPa荷重)の測定を行った。
値が大きいほど、耐熱性に優れていると判定した。
【0106】
(3)酸化銅インク塗布性
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で90mm×50mm×2.5mmの平板を作製した。また、該平板に対し、酸化銅インクを塗布し、レーザーで密着可能か判断した。密着した場合に〇、密着できなかった場合に×と表記し、密着できるものほど通信機器用部品として優れていると判断した。
【0107】
(4)アンテナ性能
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力250MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で150mm×150mm×2.0mmの平板を作製した。該平板にめっき処理を施した銅箔を接着してアンテナ電極を形成し、同一のアンテナ装置を実装し、電波暗室内で測定用アンテナから3m離し、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザーを用いたアンテナ利得評価装置に接続し、アンテナ特性を評価した。特定の指向性パターンが得られた場合にアンテナ性能に優れるとして〇、特定の指向性パターンが得られなかった場合にアンテナ性能に優れないとして×を記載した。
【0108】
(5)銅箔ピール強度
得られた樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250~350℃に設定した小型射出成形機(商品名:EC75-SXII、東芝機械社製)に供給し、金型温度70~130℃、射出圧力200MPa、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で90mm×50mm×2.5mmの平板を作製した。また、該平板に対し、銅箔フイルムを上下に挟み、熱プレスにて260℃で接着した。銅箔フイルムは三井金属鉱山製TQ-M7-VSPを用いた。接着した銅箔接着平板の銅箔ピール強度を引張試験機で測定した。荷重たわみ温度120℃以下のサンプルは加工温度に耐えられないため、測定不可とした。銅箔ピール強度は数値が高い程、回路形成に適した材料と評価した。
【0109】
(6)樹脂組成物中の(B)成分の平均L/D
得られた樹脂組成物ペレットを10g秤量し、650℃の恒温昇温電気炉(SK-3050F-SP)内で2時間灰化し、樹脂成分のみを燃焼させた後、残った(B)成分等を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製 S-4800)を用いて5000倍に拡大して観察し、視野の中から任意に500個の二酸化チタンの最長径と最短径を測定した。得られた最長径の相加平均と最短径の相加平均から平均L/Dを求めた。
また、同じ500個の二酸化チタンの最長径と最短径の測定結果から、各粒子のL/Dを算出し、L/Dが7.0を超える二酸化チタンの含有率が10%未満であるものは○、10%以上であるものは×として評価した。
【0110】
[実施例1~16、比較例1~5]
(A)マトリクス樹脂、(B)二酸化チタン、及びその他の成分を表1に示した組成で配合し、二軸押出機ZSK-40(COPERION WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用いて樹脂組成物の製造を行った。この二軸押出機において、原料の流れ方向に対して上流側に第1原料供給口を設け、これより下流に第1真空ベント、その下流に第2原料供給口、さらにその下流に第2真空ベントを設けた。
上記のように設定した押出機を用い、表1及び2に示す組成及び添加方法で各成分を添加し、押出温度250~320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/時間の条件にて溶融混練し、ペレットを製造した。
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、上述の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0111】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の通信機器用部材は、通信機器用アンテナ、受信機、基地局に好適に使用することができる等、産業上の利用可能性を有する。特に、高周波領域では誘電率コントロールが求められるので好適に使用することができる。