(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】気液反応方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20230329BHJP
B01J 8/02 20060101ALI20230329BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20230329BHJP
B01J 27/053 20060101ALI20230329BHJP
C07C 213/02 20060101ALI20230329BHJP
C07C 215/76 20060101ALI20230329BHJP
C07C 45/41 20060101ALI20230329BHJP
C07C 49/403 20060101ALI20230329BHJP
C07C 35/02 20060101ALI20230329BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B01J19/24 A
B01J8/02 Z
B01J23/44 Z
B01J27/053 Z
C07C213/02
C07C215/76
C07C45/41
C07C49/403 A
C07C35/02
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022568485
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2022021648
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021112315
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】水上 友人
(72)【発明者】
【氏名】牧 洋平
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104003(JP,A)
【文献】特開2012-130849(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031526(WO,A1)
【文献】特開2012-005966(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111215079(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/24
B01J 8/02 - 8/06
C07B 61/00
C07B 35/02
C07C 49/403
C07C 213/02
C07C 215/76
C07C 45/41
B01J 23/44
B01J 27/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体触媒を用いて行う気液反応において、
第1原料を含む気体原料と、第2原料を含む液体原料とを、前記固体触媒を保持している反応場に交互に流通させ、前記第1原料と前記第2原料とを前記固体触媒上で反応させることを含み、
下記の条件(A)及び条件(B)のうちの少なくとも一方を満たす、
反応方法:
(A)前記気体原料の各回の供給量が、反応温度における前記気体原料の体積換算で、前記反応場の容積と同じであるか、前記反応場の容積よりも大きいこと、及び
(B)前記液体原料の各回の供給量が、前記液体原料の体積として、前記反応場の容積と同じであるか、前記反応場の容積よりも大きいこと。
【請求項2】
条件(A)及び条件(B)の双方を満たす、請求項1に記載の反応方法。
【請求項3】
前記反応場が、ハニカム基材であり、かつ
前記固体触媒が、前記ハニカム基材上に保持されている、
請求項1に記載の反応方法。
【請求項4】
前記反応場が、ハニカム基材であり、かつ
前記固体触媒が、前記ハニカム基材上に保持されている、
請求項2に記載の反応方法。
【請求項5】
前記反応場を流通した後の前記液体原料を、回収して再流通させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応方法。
【請求項6】
前記第1原料が水素であり、かつ
前記第2原料が水素還元可能な化合物である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応方法。
【請求項7】
前記第1原料が酸素又は空気であり、かつ
前記第2原料が酸素酸化又は空気酸化可能な化合物である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応方法を行うための反応システムであって、
前記反応場と、
前記気体原料を収容するための気体原料収容部と、
前記液体原料を収容するための液体原料収容部と、
前記気体原料を前記反応場に断続可能に流通させるための気体原料供給部と、
前記液
体原料を前記反応場に断続可能に流通させるための液体原料供給部と、
を有する、反応システム。
【請求項9】
前記反応場を流通した後の前記液体原料を、回収して再び流通させる構成を有する、請求項8に記載の反応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体触媒を用いる気液反応は、例えば、液相反応物を含む液相中に、固体触媒を配置し、ここに気相反応物を供給することにより、行われる。このとき、液相反応物は、常に固体触媒と接触しているので、気相反応物が固体触媒に到達することにより、気液反応が進行する。
【0003】
しかし、気相反応物の液相への溶解性が低い場合には、気相反応物は固体触媒へ供給され難く、これが、気液反応の効率を低下させている。
【0004】
気液反応の効率を向上するために、従来技術では、例えば、気相の圧力を上げて、液体への気相反応物の溶解性を上げること、トリクルベッド方式の反応器を用いて、液相反応物、気相反応物、及び固体触媒の接触効率を改善すること、等が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、所定の面積の伝熱板を具備するトリクルベッド反応器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、固体触媒を用いる気液反応を、高い効率で行うことができる新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
【0009】
《態様1》固体触媒を用いて行う気液反応において、
第1原料を含む気体原料と、第2原料を含む液体原料とを、前記固体触媒を保持している反応場に交互に流通させ、前記第1原料と前記第2原料とを前記固体触媒上で反応させることを含む、
反応方法。
《態様2》前記気体原料の各回の供給量が、反応温度における前記気体原料の体積換算で、前記反応場の容積と同じであるか、前記反応場の容積よりも大きい、態様1に記載の反応方法。
《態様3》前記液体原料の各回の供給量が、前記液体原料の体積として、前記反応場の容積と同じであるか、前記反応場の容積よりも大きい、態様1又は2に記載の反応方法。
《態様4》前記反応場が、ハニカム基材であり、かつ
前記固体触媒が、前記ハニカム基材上に保持されている、
態様1~3のいずれか一項に記載の反応方法。
《態様5》前記反応場を流通した後の前記液体原料を、回収して再流通させる、態様1~4のいずれか一項に記載の反応方法。
《態様6》前記第1原料が水素であり、かつ
前記第2原料が水素還元可能な化合物である、
態様1~5のいずれか一項に記載の反応方法。
《態様7》前記第1原料が酸素又は空気であり、かつ
前記第2原料が酸素酸化又は空気酸化可能な化合物である、
態様1~5のいずれか一項に記載の反応方法。
《態様8》態様1~7のいずれか一項に記載の反応方法を行うための反応システムであって、
前記反応場と、
前記気体原料を収容するための気体原料収容部と、
前記液体原料を収容するための液体原料収容部と、
前記気体原料を前記反応場に断続可能に流通させるための気体原料供給部と、
前記液原料を前記反応場に断続可能に流通させるための液体原料供給部と、
を有する、反応システム。
《態様9》前記反応場を流通した後の前記液体原料を、回収して再び流通させる構成を有する、態様8に記載の反応システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の反応方法によると、固体触媒を用いる気液反応を、高い効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例及び比較例で用いた反応システムの概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《反応方法》
本発明の反応方法は、
固体触媒を用いて行う気液反応において、
第1原料を含む気体原料と、第2原料を含む液体原料とを、前記固体触媒を保持している反応場に交互に流通させて、前記第1原料と前記第2原料を前記固体触媒上で反応させることを含む、
反応方法である。
【0013】
〈本発明の反応方法が適用される反応〉
本発明の反応方法が適用される反応は、固体触媒上における第1原料と第2原料との気液反応である。
【0014】
(第1原料)
第1原料は気体状の反応物であり、本発明の方法では、気体の状態で反応場に供給される。ここで、第1原料が「気体状の反応物」であるとは、反応場に供給されるときに、反応場の温度及び圧力のもとで気体状であれば足り、常温常圧では気体状であってもなくてもよい。
【0015】
第1原料は、そのまま気体として本発明の方法に供されてよく、又は適当な希釈用気体で希釈されたうえで、本発明の方法に供されてもよい。
【0016】
希釈用気体は、第1原料及び第2原料、並びに固体触媒と反応しない気体であってよい。
【0017】
気体中の第1原料の濃度は、気液反応の種類、及び反応場の種類、スケール等によって、適宜に設定されてよい。
【0018】
第1原料は、1種のみであってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0019】
(第2原料)
第2原料は、液体原料中に含まれ、好ましくはこの液体原料中に溶解されている。第2原料単体では、固体、液体、及び気体の何れであってもよく、超臨界状態であってもよい。第2原料が、単体で液体以外の形態にあるときには、適当な溶媒に溶解されたうえで、本発明の方法に供されてよい。また、第2原料が、単体で液体であるときには、単体のまま本発明の方法に供されてよく、又は、適当な溶媒に溶解されたうえで、本発明の方法に供されてもよい。
【0020】
液体原料の溶媒は、第2原料を溶解又は分散することができ、かつ、第1原料及び第2原料、並びに固体触媒と反応しない液状物であってよい。
【0021】
液体原料中の第2原料の濃度は、気液反応の種類、及び反応場の種類、スケール等によって、適宜に設定されてよい。
【0022】
第2原料は、1種のみであってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0023】
(気液反応)
第1原料と第2原料との気液反応は、その種類を問わない。例えば、還元反応、付加反応、酸化反応、置換反応、重合反応、縮合重合反応、縮合反応、ホモカップリング反応、クロスカップリング反応、脱水反応、脱離反応、分解反応、電子環状反応、環化反応、電子移動反応、転移反応、ハロゲン化反応等であってよい。
【0024】
第1原料と第2原料との気液反応の例として、例えば、以下が挙げられる。
第1原料が水素であり、第2原料が水素還元可能な化合物であり、気液反応が水素還元反応である場合;
第1原料が水素であり、第2原料が炭素-炭素不飽和結合を有する化合物であり、気液反応が水素添加反応である場合;
第1原料が一酸化炭素及び水素であり、第2原料がアルケンであり、気液反応がヒドロホルミル化反応である場合;
第1原料がハロゲン化アリール又はハロアルカンであり、第2原料が末端アルキンであり、気液反応が薗頭クロスカップリング反応である場合;
第1原料が末端アルキンであり、第2原料がハロゲン化アリール又はハロアルカンであり、気液反応が薗頭クロスカップリング反応である場合;
第1原料が空気又は酸素であり、第2原料が酸素酸化又は空気酸化可能な化合物であり、気液反応が空気酸化又は酸素酸化反応である場合;
第1原料がアルコールであり、第2原料がカルボン酸であり、気液反応がエステル化反応である場合;
等。
【0025】
上記アルデヒド誘導体生成反応における、第2原料の炭化水素基を有する化合物は、アルキル基を有する化合物であってよく、特に、アルキル基を有する芳香族化合物であってよい。上記カルボン酸誘導体の生成反応における、第2原料のOH基を有する化合物は、第1級炭素原子に結合していているOH基を有する化合物であってよく、特に、第1級炭素原子に結合していているOH基を有する芳香族化合物であってよい。
【0026】
上記の水素還元反応の具体例としては、例えば、ニトロ基のアミノ基への還元反応が挙げられる。
【0027】
上記の酸素酸化反応又は空気酸化反応の具体例としては、例えば、
炭化水素基を有する化合物のアルデヒド誘導体への空気酸化又は酸素酸化反応;
1級アルコールのアルデヒドへの空気酸化又は酸素酸化反応;
1級アルコールのカルボン酸への空気酸化又は酸素酸化反応;
等が挙げられる。
【0028】
上記の水素添加反応の例としては、例えば、芳香環への水素添加反応が挙げられる。
【0029】
(固体触媒)
固体触媒は、第1原料と第2原料との気液反応を促進する機能を有する固体である。本明細書における「固体触媒」の語は、第1原料と第2原料との間の気液反応の活性化エネルギーを下げて、当該気液反応を直接的に促進する機能を有する固体の他、第1原料若しくは第2原料、又はこれらの双方を吸脱着して、第1原料と第2原料との接触頻度を上げることにより、当該気液反応を間接的に促進する機能を有する固体を含む概念である。
【0030】
固体触媒は、第1原料と第2原料との気液反応を促進する機能を有し、固体状であれば、その形態は問わない。例えば、単一の化学種から成る触媒、複数の化学種から成る触媒組成物、担体上に触媒活性種が担持されている担持触媒、触媒活性種自体が構造体(板、ワイヤー等)を形成している場合等であってよい。固体触媒は、気体(特に第1原料)を吸着する成分を含んでいてもよい。
【0031】
固体触媒の種類は、本発明の反応方法を適用する気液反応に応じて、適宜に選択されてよい。具体的には、固体触媒は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物等、及びこれら以外の固体酸、固体塩基等であってよい。金属は、貴金属、貴金属の合金等であってよく、特に、パラジウム、白金、ロジウム等の白金族金属、これらの1種または2種以上を含む合金であってよい。これらの金属は、適当な担体(例えば金属酸化物粒子)上に担持された状態で、反応場に保持されていてよい。
【0032】
〈反応場〉
本明細書において、反応場とは、第1反応物と第2反応物と固体触媒とが接触して、気液反応が起こる空間を意味する。この反応場は、例えば、ハニカム基材、反応容器、カラム、ワイヤー、メッシュ、粒子表面等であってよい。
【0033】
反応場には、固体触媒が保持されている。
【0034】
反応場は、
固体触媒が固定されて保持されている、固定床式の反応場であってよく;
固体触媒が流動可能に保持されている、流動床式の反応場であってよく;
固体触媒が、反応場の内外を循環し、反応場で気液反応に供された後、反応場外部に搬出され、反応場外部で再生された後に再び反応場に戻される、循環流動床式の反応場であってよい。
【0035】
本発明の反応方法における反応場は、具体的には特に、ハニカム基材であってよく、固体触媒は、ハニカム基材上に保持されていてよい。ハニカム基材上における固体触媒の保持は、ハニカム基材のセル壁上に直接固定されて保持されていてよく、又はハニカム基材のセル壁上に形成されたコート層中に固定されて保持されていてよい。
【0036】
ハニカム基材は、好ましくは多孔質状のセル壁によって区画された複数のセル流路を有することができる。ハニカム基材は、いわゆるストレートフロー型のハニカム基材であっても、ウォールフロー型のハニカム基材であってもよい。ここで、ストレートフロー型のハニカム基材では、複数のセル流路が、排ガス流れの上流端から下流端まで基材の長さ方向に貫通している。また、ウォールフロー型のハニカム基材は、排ガス流れの上流端が開口し下流端が封止されている入口側セル流路と、排ガス流れの上流端が封止され下流端が開口している出口側セル流路とを有し、それによって入口側セル流路に流入した排ガスが、多孔質状のセル壁を通過して出口側セル流路から排出されるように構成されている。
【0037】
ハニカム基材の構成材料は、セラミック、金属製、合成樹脂製等、及びこれらの組合せであってよい。セラミックは、コーディエライト等であってよい。金属は、ステンレス等であってよい。金属製のハニカム基材は、一体成形されたものであってもよいし、有孔又は無孔の波板状金属板と有孔又は無孔の平板状金属板とを積層及び巻回して構成されたものであってもよいし、エキスパンドメタルの巻回体であってもよい。
【0038】
本発明の反応方法における反応場は、複数のセル流路がセラミック製(例えばコーディエライト製)の多孔質状のセル壁で区画されている、ストレートフロー型又はウォールフロー型のハニカム基材が好ましい。このようなハニカム基材を反応場として用いると、固体触媒の比表面積を容易に高くすることができ、また、反応場に供給される第1原料及び第2原料と、固体触媒との接触確率を高めることができ、気液反応の反応効率が向上される。
【0039】
固体触媒が、ハニカム基材のセル壁上に直接固定されて保持されている場合、ハニカム基材のセル壁に、固体触媒又はその前駆体を含む塗工液を接触させ、必要に応じて焼成することによって製造できる。
【0040】
固体触媒が、ハニカム基材のセル壁上に形成されたコート層中に固定されて保持されている場合、ハニカム基材のセル壁に、コート層の主材料(例えば金属酸化物粒子)と、固体触媒又はその前駆体とを含む塗工液を接触させ、必要に応じて焼成することによって製造できる。また、この場合、コート層は、単層であっても2層以上の多層構成であってもよく、ハニカム基材の長さ方向の片端側から他端側に向かって、コート層構成が異なる複数の領域を有していてもよい。
【0041】
本発明の反応方法では、1つ又は2つ以上の反応場を用いてよい。2つ以上の反応場を用いる場合、各反応場の形式、及び各反応場が固体触媒を保持する態様は、互いに同じであってもよく、相違していてもよい。また、2つ以上の反応場は、直列又は並列に連結されていてよい。3つ以上の反応場を有する場合、直列の連結と並列の連結とが組み合わされていてもよい。
【0042】
反応場の温度及び圧力は、本発明の反応方法を適用する気液反応に応じて、適宜に設定されてよい。
【0043】
〈気体原料及び液体原料の流通〉
本発明の反応方法は、第1原料を含む気体原料と、第2原料を含む液体原料とを、固体触媒を保持している反応場に、交互に流通させることを含む。例えば、反応場に、第1原料を含む気体原料を所定時間供給する送気処理と、第2原料を含む液体原料を所定時間供給する送液処理とを、交互に繰り返して行ってよい。
【0044】
気体原料及び液体原料を反応場に交互に流通させると、例えば、気体原料中に含まれる第1原料が、反応場に保持されている固体触媒に吸着されて保持され、次いで流通される液体原料中の第2原料と固体触媒上で接触することになると考えられる。或いは、液体原料中に含まれる第2原料が反応場に保持されている固体触媒に吸着されて保持され、次いで流通される気体原料中の第1原料と固体触媒上で接触することとなると考えられる。
【0045】
本発明の反応方法は、第1原料を含む気体原料と、第2原料を含む液体原料とを、固体触媒を保持している反応場に、交互に流通させることが特徴である。気体原料と液体原料とを「交互に流通させる」とは、反応場に気体原料を供給する送気処理と、液体原料を供給する送液処理とを繰り返して行い、かつ、送気処理を行っているときには送液処理を行わず、送液処理を行っているときには送気処理を行わないことをいう。このような態様の気体原料と液体原料との交互流通は、気液反応が行われる反応時間の少なくとも一部、好ましくは全部において、行われてよい。
【0046】
このような交互流通を行うことにより、送液処理が行われていないとき、すなわち、固体触媒上に液体原料がほとんど存在しない状態(好ましくは固体触媒が液体原料で単に濡れている状態)にあるときに、送気処理が行われ、固体触媒上に気体原料に含まれる第1原料が供給される。したがって、第1原料は、液体原料中への溶解を実質的に要さずに、固体触媒に到達することができ、第1原料の反応効率を高くすることができる。
【0047】
また、送液処理が行われているとき、すなわち、固体触媒上に有意量の液体原料が存在する状態にあり、気体状の第1原料が、固体触媒上に到達するために液体原料中への溶解を要するときには、送気処理は行われず、固体触媒上に第1原料が供給されない。これにより、反応に寄与しない第1原料の消費を抑制することができる。
【0048】
本発明の反応方法では、上記の作用機構により、固体触媒による気液反応が効率的に進行し、かつ原料の使用効率が向上するものと推察される。ただし、本発明は、特定の理論に拘束されるものではない。
【0049】
第1原料を含む気体原料、及び第2原料を含む液体原料それぞれの流通時間、流通量、第1原料と第2原料との供給比等は、気液反応の種類、反応場の種類、スケール等によって、適宜に設定されてよい。
【0050】
第1原料を含む気体原料、及び第2原料を含む液体原料は、それぞれ独立に、予備加熱又は予備冷却したうえで、反応場に流通させてもよい。
【0051】
各回の送気処理における、流通気体量、気体温度、流通時間、流通方向等は、同じであっても異なっていてもよい。同様に、各回の送液処理における、流通液体原料量、液体原料温度、流通時間、流通方向等は、同じであっても異なっていてもよい。ある回の送気処理における気体原料の流通方向と、これに引き続く送液処理における液体原料の流通方向とは、同じ方向であっても対向する方向であっていてもよい。同様に、ある回の送液処理における液体原料の流通方向と、これに引き続く送気処理における気体原料の流通方向とは、同じ方向であっても対向する方向であっていてもよい。
【0052】
本発明の反応方法では、各回の送気処理における気体原料の供給量は、反応温度における気体原料の体積換算で、反応場の容積と同じであるか、これも大きくてよい。気体原料を、このような供給量で流通させることにより、直前の送液処理で送られた液体原料を、反応場からパージすることができ、気体原料と液体原料との交互流通の有利な効果が最大限に発揮されることになる。
【0053】
同様に、各回の送液処理における液体原料の供給量は、液体原料の体積として、反応場の容積と同じであるか、反応場の容積よりも大きくてよい。液体原料を、このような供給量で流通させることにより、直前の送気処理で送られた気体原料を、反応場からパージすることができ、気体原料と液体原料との交互流通の有利な効果が最大限に発揮される。
【0054】
本発明の方法では、
気体原料の各回の供給量を、反応温度における気体原料の体積換算で、反応場の容積と同じとするか、反応場の容積よりも大きくし、かつ、
液体原料の各回の供給量を、液体原料の体積として、反応場の容積と同じとするか、反応場の容積よりも大きくしてよい。
【0055】
気液反応に複数種の第1原料を使用する場合、該複数種の第1原料は、混合されて1種類の気体混合物として、本発明の方法に供されてよく、又は別々に準備されて、それぞれ交互に本発明の方法に供されてよい。例えば、2種類の第1原料(第1原料A及び第1原料B)と、1種類の第2原料とを用いる気液反応では、第1原料A及び第1原料Bを含む気体原料と、第2原料を含む液体原料とを、交互に反応場に流通させてもよいし、第1原料Aを含む気体原料と、第1原料Bを含む気体原料と、第2原料を含む液体原料とを、順々に反応場に流通させてもよい。
【0056】
気液反応に複数種の第2原料を使用する場合も、気体原料を液体原料に読み替えたうえで、上記と同様に操作してよい。
【0057】
第1原料を含む気体原料、及び第2原料を含む液体原料は、それぞれ独立に、反応場に1パスで流通させてもよいし、循環させて流通させてもよい。
【0058】
本発明のある実施態様では、第1原料を含む気体原料を、反応場に1パスで流通させる。
【0059】
本発明のある実施態様では、第2原料を含む液体原料を、反応場に流通させた後、流通後の液体原料を回収して再び流通させるように、循環的に流通させる。
【0060】
第1原料を含む気体原料、及び第2原料を含む液体原料のうちの少なくとも一方を、反応場に循環的に流通させると、循環的に流通された気体原料又は液体原料中で、経時的に、原料の濃度が減じ、生成物の濃度が増えてくる。したがって、この場合、気体原料又は液体原料中の成分濃度を追跡することにより、反応の進行の程度を知ることができ、これを反応終了の目安とできる。
【0061】
《反応システム》
本発明の別の観点では、本発明の反応方法を行うための反応システムが提供される。
【0062】
本発明の反応システムは、
反応場と、
気体原料を収容するための気体原料収容部と、
液体原料を収容するための液体原料収容部と、
気体原料を反応場に断続可能に流通させるための気体原料供給部と、
液体原料を反応場に断続可能に流通させるための液体原料供給部と、
を有する、反応システムである。
【0063】
本発明の反応システムの反応場については、本発明の反応方法における反応場の説明をそのまま採用してよい。反応場は、温度調整器、圧力調整器等を備えていてもよい。
【0064】
気体原料を収容するための気体原料収容部、及び液体原料を収容するための液体原料収容部としては、それぞれ、公知のタンク等の適宜の容器を使用してよい。気体原料収容部及び液体原料収容部は、それぞれ独立に、温度調節器、圧力調節器、圧力計、レベルメータ、各種センサ等を備えていてよい。
【0065】
気体原料を反応場に断続可能に流通させるための気体原料供給部は、開閉バルブ、気体流量調節器等を備える装置であってよい。必要に応じて、これらに加えて、ポンプ、圧力調節器等を備えていてよい。
【0066】
液体原料を反応場に断続可能に流通させるための液体原料供給部は、開閉バルブ、液体流量調節器、送液ポンプ、圧力調節器等を備える装置であってよい。
【0067】
本発明の反応システムは、反応場を流通した後の液体原料を、回収して再び流通させる構成を有していてよい。このような構成は、例えば、反応場を流通した後の液体原料を、液体原料収容部に戻す構成であってよい。
【0068】
本発明の反応システムは、本発明の反応方法を行うために、好適に用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下の実施例及び比較例では、
図1に示した反応システムを用いて反応を行った。この反応システムは、反応場(1)と、気体原料収容部(2)と、液体原料収容部(4)とを備えている。
【0070】
反応場(1)としては、各実施例及比較例で作製した触媒装置を用いた。気体原料収容部(2)には、所定の気体原料(3)が収容され、液体原料収容部(4)には、所定の液体原料(5)が収容される。
【0071】
また、気体原料供給部の一部として、気体原料供給バルブ(VG)を示したが、流量調節器等の他の装置の記載は省略されている。同様に、液体原料供給部の一部として、液体原料供給バルブ(VL)を示したが、流量調節器、送液ポンプ等の他の装置の記載は省略されている。
【0072】
図1の反応システムは、気体原料供給バルブ(V
G)及び液体原料供給バルブ(V
L)の開閉により、気体原料(3)及び液体原料(5)を、それぞれ独立に、反応場(1)に供給し、又は供給しないことができるように構成されている。
【0073】
以下の実施例及び比較例で使用した基材及び試薬は、以下のとおりである。
ハニカム基材:コーディエライト製、ウォールフロー型ハニカム基材、長さ50mm、直径30mm、見かけ容量35mL、セル数400cpsi(62セル/cm2)
ペレットカラム:ガラス製の円筒型カラム、長さ50mm、直径30mm、見かけ容量35mL
アルミナ1:γ-アルミナ、BET比表面積200m2/g、平均粒径(D50)3.6μm
アルミナ2:γ-アルミナ、BET比表面積170m2/g、平均粒径(D50)4.2μm
アルミナ3:θ-アルミナ、BET比表面積130m2/g、平均粒径(D50)4.5μm
硫酸バリウム1:BaSO4、BET比表面積20m2/g、平均粒径(D50)3.7μm
【0074】
I.4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの水素還元反応
実施例1~3及び比較例1~3では、4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの水素還元反応について、本発明の方法と、従来技術の気液混合供給による方法とを比較した。
【0075】
《実施例1及び比較例1》
ハニカム基材に、アルミナ1(1.9g)及び硝酸パラジウム(金属換算値0.10g)を含む水系塗工液を塗布し、乾燥及び焼成することにより、触媒金属としてのPdを含む、触媒装置を作製し、これを反応場(1)として用いた。
【0076】
気体原料収容部(2)には、気体原料(3)として水素を収容した。液体原料収容部(4)には、液体原料(5)として、4-ニトロフェノールの飽和メタノール溶液100mLを収容した。
【0077】
図1の反応システムでは、反応場(1)を通過した気体原料(3)は廃棄される。これに対して、反応場(1)を通過した液体原料(5)は、液体原料収容部(4)に戻されて再流通に供され、反応場(1)と液体原料収容部(4)との間を循環する。
【0078】
〈実施例1〉
実施例1では、反応場(1)を35℃に調温した後、
気体原料供給バルブ(VG)を開とし、液体原料供給バルブ(VL)を閉として、500mL/分(ntp)の流量にて、反応場(1)に気体原料(3)を供給する、1分間の送気処理と、
気体原料供給バルブ(VG)を閉とし、液体原料供給バルブ(VL)を開として、100mL/分の流量にて、反応場(1)に液体原料(5)を供給する、2分間の送液処理と、
を交互に繰り返して行い、合計90分間の反応を実施した(合計送気時間30分、合計送液時間60分)。
【0079】
この反応における、気体原料(3)(水素)の送気処理1回当たりの供給量は、標準状態換算で500mL(ntp)であり、液体原料(5)の送液処理1回当たりの供給量は200mLであり、いずれも、反応場(1)として用いたハニカム基材の見かけ容量(35mL)よりも大であった。
【0080】
この反応における、気体原料(3)(水素)の合計供給量は15,000mL(ntp)であり、液体原料(5)の累計供給量は6,000mLであった。
【0081】
この反応において、液体原料(5)中の4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの転換率は、87%であった。
【0082】
〈比較例1〉
比較例1では、反応場(1)を35℃に調温した後、気体原料供給バルブ(VG)及び液体原料供給バルブ(VL)を開として、
500mL/分(ntp)の流量にて気体原料(3)を供給する送気処理と、
100mL/分の流量にて液体原料(5)を供給する送液処理と、
を同時に行い、合計30分間の反応を実施した。
【0083】
この反応における、気体原料(3)(水素)の合計供給量は15,000mL(ntp)であり、液体原料(5)の合計供給量は3,000mLであった。
【0084】
この反応において、液体原料(5)中の4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの転換率は、69%であった。
【0085】
《実施例2及び比較例2》
実施例2及び比較例2では、反応場(1)として、以下のようにして製造された触媒装置を使用した他は、実施例1及び比較例1と、それぞれ同様にして行った。
【0086】
ハニカム基材に、アルミナ2(1.9g)及び硝酸パラジウム(金属換算値0.04g)を含む水系塗工液を塗布し、乾燥及び焼成することにより、触媒金属としてのPdを含む、触媒装置を作製し、これを反応場(1)として用いた。
【0087】
液体原料(5)中の4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの転換率は、実施例2では80%であり、比較例2では42%であった。
【0088】
《実施例3及び比較例3》
実施例3及び比較例3では、反応場(1)として、以下のようにして製造された触媒装置を使用した他は、実施例1及び比較例1と、それぞれ同様にして行った。
【0089】
ハニカム基材に、硫酸Ba(2.1g)及び硝酸パラジウム(金属換算値0.04g)を含む水系塗工液を塗布し、乾燥及び焼成することにより、触媒金属としてのPdを含む、触媒装置を作製し、これを反応場(1)として用いた。
【0090】
液体原料(5)中の4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの転換率は、実施例3では74%であり、比較例3では29%であった。
【0091】
II.レゾルシノールの1,3-シクロヘキサンジオンへの水素還元反応
実施例4及び比較例4では、レゾルシノールの1,3-シクロヘキサンジオンへの水素還元反応について、本発明の反応方法と、従来技術の気液混合供給による反応方法とを比較した。
【0092】
《実施例4及び比較例4》
反応は、
図1に示した反応システムを用いて行った。
【0093】
ハニカム基材に、アルミナ1(1.9g)及び硝酸パラジウム(金属換算値0.10g)を含む水系塗工液を塗布し、乾燥及び焼成することにより、触媒金属としてのPdを含む、触媒装置を作製し、これを反応場(1)として用いた。
【0094】
気体原料収容部(2)には、気体原料(3)として水素を収容した。液体原料収容部(4)には、液体原料(5)として、濃度1.8mol/Lのレゾルシノール水溶液100mLを収容した。
【0095】
〈実施例4〉
実施例4では、反応場(1)を60℃に調温した後、
10mL/分(ntp)の流量にて、反応場(1)に気体原料(3)を供給する、3分間の送気処理と、
30mL/分の流量にて、反応場(1)に液体原料(5)を供給する、3分間の送液処理と、
を交互に繰り返して行い、合計60分間の反応を実施した(合計送気時間30分、合計送液時間30分)。
【0096】
この反応における、気体原料(3)(水素)の送気処理1回当たりの供給量は、標準状態の体積換算で30mL(ntp)であり、反応温度(60℃)では約37mLに相当する量であった。また、液体原料(5)の送液処理1回当たりの供給量は90mLであった。気体原料の送気処理1回当たりの供給量及び液体原料(5)の送液処理1回当たりの供給量は、いずれも、反応場(1)として用いたハニカム基材の見かけ容量(35mL)よりも大であった。
【0097】
この反応における、気体原料(3)(水素)の合計供給量は300mL(ntp)であり、液体原料(5)の合計供給量は900mLであった。
【0098】
この反応において、液体原料(5)中のレゾルシノールの1,3-シクロヘキサンジオンへの転換率は、3.8%であった。
【0099】
〈比較例4〉
比較例4では、反応場(1)を60℃に調温した後、
10mL/分(ntp)の流量にて、反応場(1)に気体原料(3)を供給する送気処理と、
30mL/分の流量にて、反応場(1)に液体原料(5)を供給する送液処理と、
を同時に行い、合計30分間の反応を実施した。
【0100】
この反応における、気体原料(3)(水素)の合計供給量は300mL(ntp)であり、液体原料(5)の合計供給量は900mLであった。
【0101】
この反応において、液体原料(5)中のレゾルシノールの1,3-シクロヘキサンジオンへの転換率は、2.2%であった。
【0102】
以上の実施例1~4及び比較例1~4の結果を、表1にまとめて示す。
【0103】
【0104】
表1中、気体原料の供給時間帯(分)の「3n~3n+1」及び「6n~6n+3」、並びに液体原料の供給時間帯(分)の「3n+1~3(n+1)」及び「6n+3~6(n+1)」における「n」は、それぞれ、0以上の整数を示す。すなわち、例えば、実施例1~3において、「n」が0のとき、反応開始から0~1分(3×0~3×0+1(分))の間は、反応場に気体原料を供給し、1~3分(3×0+1~3×(0+1)(分))の間は液体原料を供給したことを示す。
【0105】
表1の結果から、気体原料の合計供給量が等しい時点で比較した場合、本発明の反応方法(実施例1~4)は、従来技術の気液同時供給による反応方法(比較例1~4)よりも、液体原料中の反応物(4-ニトロフェノール又はレゾルシノール)の転換率が高いことが確認された。
【0106】
したがって、本発明の反応方法は、従来技術の反応方法に比べて、気体原料の利用効率が高いことが検証された。
【0107】
III.反応場としての、ハニカム基材とペレットカラムとの比較
実施例5及び6では、
図1に示した反応システムを用いて、4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの水素還元反応について、反応場として、ハニカム基材を用いた場合と、ペレットカラムを用いた場合との比較を行った。
【0108】
《実施例5》
ハニカム基材に、アルミナ1(1.615g)及び硝酸パラジウム(金属換算値0.085g)を含む水系塗工液を塗布し、乾燥及び焼成することにより、触媒金属としてのPdを含む、触媒装置を作製し、これを反応場(1)として用いた他は、実施例1と同様にして、4-ニトロフェノールの水素還元反応を行った。
【0109】
実施例5において、液体原料(5)中の4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの転換率は、87%であった。
【0110】
《実施例6》
純水中で、アルミナ1(8.075g)及び硝酸パラジウム(金属換算値0.085g)を混合した後、固形分を回収して、乾燥及び焼成して、Pd担持Al触媒を得た。このPd担持Al触媒を、粉砕して、粒径範囲500μm~2,000μmのペレットとした。得られたペレットを、ペレットカラムに充填したものを反応場(1)として用いた他は、実施例1と同様にして、4-ニトロフェノールの水素還元反応を行った。
【0111】
実施例6において、液体原料(5)中の4-ニトロフェノールの4-アミノフェノールへの転換率は、79%であった。
【0112】
実施例5及び6の結果を、上述の比較例1の結果とともに、表2に示す。
【0113】
【0114】
表2中、「n」は、それぞれ、0以上の整数を示す。
【0115】
表2の結果から、本発明の反応方法によると、ハニカム基材を含む反応場を用いた実施例5,及びペレットカラムを含む反応場を用いた実施例6双方とも、従来技術の気液同時供給による反応方法(比較例1)よりも、液体原料中の反応物(4-ニトロフェノール)の転換率が高いことが確認された。特に、ハニカム基材を含む反応場を用いた実施例5において、液体原料中の反応物の転換率が高くなることが分かった。
【0116】
IV.シンナミルアルコールのシンナムアルデヒドへの酸素酸化反応
実施例7及び比較例5では、
図1に示した反応システムを用いて、シンナミルアルコールのシンナムアルデヒドへの酸素酸化反応について、本発明の方法と、従来技術の気液混合供給による方法とを比較した。
【0117】
《実施例7及び比較例5》
ハニカム基材に、アルミナ1(1.9g)及び硝酸パラジウム(金属換算値0.10g)を含む水系塗工液を塗布し、乾燥及び焼成することにより、触媒金属としてのPdを含む、触媒装置を作製し、これを反応場(1)として用いた。
【0118】
気体原料収容部(2)には、気体原料(3)として酸素を収容した。液体原料収容部(4)には、液体原料(5)として、シンナミルアルコールの飽和トルエン溶液100mLを収容した。
【0119】
〈実施例7〉
実施例7では、反応場(1)を100℃に調温した後、
気体原料供給バルブ(VG)を開とし、液体原料供給バルブ(VL)を閉として、220mL/分(ntp)の流量にて、反応場(17)に気体原料(3)を供給する、0.5分間の送気処理と、
気体原料供給バルブ(VG)を閉とし、液体原料供給バルブ(VL)を開として、100mL/分の流量にて、反応場(1)に液体原料(5)を供給する、4.5分間の送液処理と、
を交互に繰り返して行い、合計100分間の反応を実施した(合計送気時間10分、合計送液時間90分)。
【0120】
この反応における、気体原料(3)(酸素)の送気処理1回当たりの供給量は、標準状態の体積換算で110mL(ntp)であり、反応温度(100℃)では約150mLに相当する量であった。また、液体原料(5)の送液処理1回当たりの供給量は225mLであった。気体原料の送気処理1回当たりの供給量及び液体原料(5)の送液処理1回当たりの供給量は、いずれも、反応場(1)として用いたハニカム基材の見かけ容量(35mL)よりも大であった。
【0121】
この反応における、気体原料(3)(酸素)の合計供給量は2,200mL(ntp)であり、液体原料(5)の累計供給量は4,500mLであった。
【0122】
この反応において、液体原料(5)中のシンナミルアルコールのシンナムアルデヒドへの転換率は、73%であった。
【0123】
〈比較例5〉
比較例5では、反応場(1)を100℃に調温した後、気体原料供給バルブ(VG)及び液体原料供給バルブ(VL)を開として、
220mL/分(ntp)の流量にて気体原料(3)を供給する送気処理と、
50mL/分の流量にて液体原料(5)を供給する送液処理と、
を同時に行い、合計10分間の反応を実施した。
【0124】
この反応における、気体原料(3)(水素)の合計供給量は2,200mL(ntp)であり、液体原料(5)の合計供給量は500mLであった。
【0125】
この反応において、液体原料(5)中のシンナミルアルコールのシンナムアルデヒドへの転換率は、33%であった。
【0126】
以上の実施例7及び比較例5の結果を、表3に示す。
【0127】
【0128】
表3中、「n」は、0以上の整数を示す。
【0129】
表3の結果から、本発明の反応方法は、気体原料として水素を用いる水素還元反応の他、気体原料として酸素を用いる酸素酸化反応にも有効であることが検証された。
【符号の説明】
【0130】
1 反応場
2 気体原料収容部
3 気体原料
4 液体原料収容部
5 液体原料
VG 気体原料供給バルブ
VL 液体原料供給バルブ
【要約】
固体触媒を用いて行う気液反応において、第1原料を含む気体原料3と、第2原料を含む液体原料5とを、固体触媒を保持している反応場1に交互に流通させ、前記第1原料と前記第2原料とを前記固体触媒上で反応させることを含む、反応方法。