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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20230330BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230330BHJP
   F24F 1/0007 20190101ALI20230330BHJP
【FI】
B23Q11/12 A
G05B19/418 Z
F24F1/0007 331
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018200926
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020067890
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】520180688
【氏名又は名称】株式会社ジェーイー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 厳一
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-005955(JP,A)
【文献】特開2010-284723(JP,A)
【文献】特開2013-094889(JP,A)
【文献】特開昭60-211198(JP,A)
【文献】特開2019-000935(JP,A)
【文献】特開平06-210542(JP,A)
【文献】特開昭52-045147(JP,A)
【文献】特開2002-110492(JP,A)
【文献】特開2011-143490(JP,A)
【文献】特開2011-143493(JP,A)
【文献】米国特許第02335100(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10-14
G05B 19/418
F24F 1/0007
F24F 1/0059-1/0068
F24F 1/02、029、032
F24F 3/00-3/10
F28D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に使用する工作液が貯溜されるタンク内に備えられ、該タンク内の工作液を冷却する液冷却装置と、
前記タンク内の工作液を、製造工場内に設置される熱放散機器に送給して、当該熱放散機器からの放熱温度を下げる冷却手段と、を備え
前記液冷却装置の排気口には、該排気口からの排気の熱を吸収する排気冷却手段が近接して配置され、
前記排気冷却手段にて冷却された排気を、前記液冷却装置の空気の吸入口に案内するように構成されることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記タンク内からの工作液が循環され、前記熱放散機器からの排気の熱を吸収する熱交換器を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記熱放散機器は、前記工作機械、前記タンク内の工作液を前記工作機械に送給する電動ポンプ、前記工作機械に付設される油圧ユニット、前記工作機械に付設される制御盤クーラ、または前記工作機械に付設されるミストコレクターであることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の部品製造工場等内に設置される多数の熱放散装置に対して冷却効果を発揮して、当該製造工場内の高温化を抑制する冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の部品製造工場等には、例えば、切削盤、研削盤やマシニングセンタなどの工作機械に使用する切削油、研削油や主軸潤滑油等の工作液を冷却するための液冷却装置が使用されている。当該液冷却装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を接続した冷却回路と、凝縮器に対して空気流を供給する送風ファンと、を備えている。そして、液冷却装置の蒸発器によって工作液(液体)を冷却する構成となっている(特許文献1参照)。また、液冷却装置には、タンク内に貯溜される工作液を冷却する浸漬型と、工作液を内部に循環させて冷却する循環型と、が採用されている。
【0003】
また、製造工場内においては、工作機械に付設される、油圧ユニット、制御盤クーラ及びミストコレクター等の熱放散機器が多数設置されており、これら熱放散機器は、ほとんどが空冷式であり、作動中、高温の空気を外部に排出している。このため、これら熱放散機器からの放熱により、製造工場内の高温化が避けられず、作業環境が悪化する。この作業環境の悪化を防ぐために、製造工場内の空調設備等の冷却能力(空調設備への負荷)を上げるようとすると、消費電力が大きくなり、好ましくない。
【0004】
この製造工場内の高温化を抑制する対策として、多数の熱放散機器に、製造工場の屋外等に設置されているクーリングタワーの冷却水を供給して、当該各熱放散機器からの放熱温度を下げる方法が考慮される。しかしながら、この方法では、クーリングタワーから冷却水を導く配管が、多数の熱放散機器に対応して必要になり現実的ではない。しかも、この方法では、クーリングタワーから各熱放散機器へ供給する冷却水の圧力を高く(最大圧力:0.2~0.4MPa)設定する必要があり、これに対応するためには、熱放散機器に備える熱交換器等の流通管の形状及び厚みなどにおいて耐圧構造を採用する必要があり、熱交換効率が悪化し、しかも大型化も避けられず、ひいてはコストアップにも繋がり、好ましくない。
【0005】
さらに、製造工場内においては、上述の工作液が貯溜されるタンク等が設置され、浸漬型の液冷却装置が採用されている場合には、タンク内の工作液を工作機械に供給する電動ポンプが備えられている。そして、この電動ポンプからも高温の空気が排出されており、製造工場内がさらなる高温化に晒される状況となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-68524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、製造工場内には、多数の熱放散機器が設置されており、これらの熱放散機器から排出される高温の空気により、当該製造工場内の高温化が避けられず、対策する必要がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、コストアップを抑えたうえで、製造工場内の高温化を抑制する冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の態様)
以下に示す発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0010】
(1)工作機械に使用する工作液が貯溜されるタンク内に備えられ、該タンク内の工作液を冷却する液冷却装置と、前記タンク内の工作液を、製造工場内に設置される熱放散機器に送給して、当該熱放散機器からの放熱温度を下げる冷却手段と、を備え、前記液冷却装置の排気口には、該排気口からの排気の熱を吸収する排気冷却手段が近接して配置され、前記排気冷却手段にて冷却された排気を、前記液冷却装置の空気の吸入口に案内するように構成されることを特徴とする冷却システム(請求項1の発明に相当)。
(1)項に記載の冷却システムでは、冷却手段により、工作液が貯溜されるタンク内の工作液を利用して、熱放散機器からの放熱温度を下げることができ、またタンク内の工作液は、液冷却装置により冷却することができる。これにより、製造工場内の高温化を抑制することができる。また、この排気冷却手段の作用により、液冷却装置からの放熱温度を下げることができ、製造工場内の高温化を抑制することができる。
【0011】
(2)(1)項に記載の冷却システムであって、前記冷却手段は、前記タンク内からの工作液が循環され、前記熱放散機器からの排気の熱を吸収する熱交換器を含むことを特徴する冷却システム(請求項2の発明に相当)。
(2)項に記載の冷却システムでは、冷却手段としての、タンク内の工作液が循環される熱交換器を、熱拡散機器の排気口に近接して配置するので、既存の熱拡散機器を改造することなく、熱放散機器からの排気の温度を下げることができ、本冷却システムを構築するためのコストを削減することができる。言い換えれば、熱放散機器からの排気は、その排気口から熱交換器に導かれて、その熱が熱交換器を流れる工作液(冷却水)によって吸収されて、温度が下がった状態で外部に放出される。
【0012】
(3)(1)項または(2)項に記載の冷却システムであって、前記熱放散機器は、前記工作機械、前記タンク内の工作液を前記工作機械に送給する電動ポンプ、前記工作機械に付設される油圧ユニット、前記工作機械に付設される制御盤クーラ、または前記工作機械に付設されるミストコレクターであることを特徴とする冷却システム(請求項3の発明に相当)。
(3)項に記載の冷却システムでは、製造工場内の高温化の起因となっている多数の熱放散機器に対して冷却効果を発揮することができ、製造工場内の高温化を抑制することができる。
【0013】
(4)(1)項~(3)項いずれか一項に記載の冷却システムであって、前記液冷却装置は空冷式であって、該液冷却装置には、クーリングタワーからの冷却水により、外部への放熱温度を下げる排気冷却手段が付設されていることを特徴とする冷却システム。
(4)項に記載の冷却システムでは、排気冷却手段により、液冷却装置からの排気の温度を下げているので、液冷却装置による、製造工場内の高温化を抑制することができる。しかも、液冷却装置に排気冷却手段を付設するだけの構成で、且つ製造工場の屋外に必然的に設置されているクーリングタワーからの冷却水を利用して、液冷却装置からの放熱温度を下げているので、新たな冷却システムを構築する必要はなく、経済的に有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る冷却システムによれば、コストアップを抑えたうえで、製造工場内の高温化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る冷却システムの模式図である。
図2図2は、本冷却システムに採用される液冷却装置の斜視図である。
図3図3は、図2の液冷却装置の内部構成を模式的に示した図を含む、排気冷却手段の断面図である。
図4図4は、図3のA-A矢視図である。
図5図5は、本冷却システムに採用される液冷却装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図1図5に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る冷却システム1は、図1に示すように、工作液が貯溜されるタンクT内に備えられ、該タンクT内の工作液を冷却する液冷却装置2と、タンクT内の工作液を、製造工場内に備えられる多数の熱放散機器6に送給して、当該各熱放散機器6からの放熱温度を下げる冷却手段3と、を備える。タンクT内には、製造工場内の工作機械5に使用される工作液が貯溜される。熱放散機器6は、その放熱温度が基準値以上となる機器である。言い換えれば、熱放散機器6は、製造工場内の高温化の起因となるような機器である。熱放散機器6は、例えば、工作機械5(例えば、旋盤やマシニングセンター等)、タンクT内の工作液を工作機械5に送給する電動ポンプ7、工作機械5に付設される油圧ユニット8、工作機械5に付設される制御盤クーラ9、工作機械5に付設されるミストコレクター10等である。これら、ほとんどの熱放散機器6には、空冷式が採用されている。なお、熱放散機器6としての電動ポンプ7では、ポンプを駆動させる電動モータが発熱源となる。また、熱放散機器6としての工作機械5では、当該工作機械5の主軸等を駆動させるための電動モータ11等が発熱源となる。
【0017】
液冷却装置2は、図5に示すように、圧縮機13、凝縮器14、膨張弁15及び蒸発器16を接続した冷媒回路17を備えている。冷媒回路17では、圧縮機13の吐出口に凝縮器14が接続され、その凝縮器14に膨張弁15が接続される。そして、膨張弁15に蒸発器16の一端が接続され、その蒸発器16の他端がアキュームレータ18を介して圧縮機13の吸入口に接続される。そして、当該液冷却装置2では、圧縮機13から吐出された冷媒が、凝縮器14、膨張弁15、蒸発器16へと順に流れ、アキュームレータ18を介して圧縮機13に戻る冷却サイクル(冷却回路17)が形成される。
【0018】
圧縮機13では、低温・低圧の冷媒ガスを凝縮器14で容易に冷却・液化できるように高温・高圧の圧縮冷媒ガスに変化させる。凝縮器14では、圧縮機13で生成された圧縮冷媒ガスを空気にて冷却・凝縮して、常温・高圧の液状冷媒に変化させる。膨張弁15では、常温・高圧の液状冷媒を絞って減圧して、蒸発器16で容易に蒸発できるように低温・低圧の液状冷媒に変化させる。そして、蒸発器16では、膨張弁15により生成された液状冷媒が、タンクT内の工作液から熱を奪って蒸発(工作液が冷却)することで、再び低温・低圧の冷媒ガスが生成される。
【0019】
図2図4に示すように、当該液冷却装置2は浸漬型である。なお、図2では、膨張弁15、アキュームレータ18、及び冷却回路17を構成する配管等の図示は省略されている。該液冷却装置2は、装置本体21内に圧縮機13、凝縮器14及び膨張弁15が収容される。蒸発器16は、装置本体21の底壁部から下方に突設される。図1を参照して、この蒸発器16がタンクT内に溜められた工作液に浸漬される。そして、浸漬型の液冷却装置2にあっては、液冷却装置2の蒸発器16によりタンクT内の工作液が冷却される。この液冷却装置2は空冷式である。また、図3から解るように、液冷却装置2の凝縮器14は、装置本体21に形成された空気の吸入口23と対向するようには配置される。吸入口23の全域にフィルタが配置される。
【0020】
図3に示すように、装置本体21内には、凝縮器14に対して空気流を供給する送風ファン25が配置される。送風ファン25は、凝縮器14の空気流下流側に配置され、凝縮器14と対向するように配置される。送風ファン25が駆動されることによって発生した空気流は、装置本体21の吸入口23から凝縮器14に吸い込まれて、凝縮器14で熱交換されたあと、高温の排気となって装置本体21の上壁部に形成された排気口24から装置本体21の外部に吹き出される流れとなる。
【0021】
送風ファン25の空気流下流側には、圧縮機13およびアキュームレータ18(図4参照)が配置される。圧縮機13は、モータ(図示略)の駆動によって圧縮機構(図示略)にて冷媒ガスを圧縮するものである。蒸発器16は、装置本体21の底壁部から鉛直下方に配置されており、上下方向に沿ってコイル状に形成されている。また、装置本体21の底壁部から下方には、タンクT内の工作液を攪拌するための撹拌機28が配置されている。撹拌機28は、タンクT内の工作液を撹拌するためのものである。
【0022】
また、図2図4に示すように、液冷却装置2(装置本体21)の上壁部から上方に排気冷却手段30が配置される。当該排気冷却手段30は、液冷却装置2の上壁部全域を囲うようにして、当該上壁部から上方の空間を外部と遮断する遮断外壁部33と、該遮断外壁部33内に、液冷却装置2の上壁部に設けた排気口24に近接して設けられ、クーリングタワー40の冷却水を循環させて、該冷却水により排気口24からの排気の熱を吸収するラジエタ34と、該排気口24からの排気をラジエタ34に供給する送風ファン35と、該送風ファン35を通過した空気を、液冷却装置2の吸入口23に案内するひさし壁部36と、を備えている。なお、本実施形態では、排気冷却手段30として送風ファン35を備えているが、当該送風ファン35は必須ではなく、必要に応じて備えるようにしてもよい。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、液冷却装置2の吸入口23側を前側と称し、反対側を後側と称する。ひさし壁部36は、遮断外壁部33の前端から前方に一体的に延び、遮断外壁部33の前壁部の各送風ファン35を囲うようにして、且つ遮断外壁部33の前壁部と間隔を置いた位置にて湾曲して下方に垂れ下がるようにして形成される。このひさし壁部36と、遮断外壁部33の前壁部との間の空間が、各送風ファン35を通過した排気の排気通路38として機能する。
【0023】
ラジエタ34には、屋外に設置されているクーリングタワー40からの冷却水が循環される。そして、ラジエタ34を流れる冷却水により、ラジエタ34を通過する排気の熱を吸収することができる。なお、クーリングタワー40は、冷却塔のことで、製造工場内の各種装置や機器を冷却する目的で屋外に設置されている。クーリングタワー40は、冷却水を捨てずに繰り返し循環して使用できるように、冷却水を大気と直接的(開放型)または間接的(密閉型)に接触させて冷却する熱交換器である。
【0024】
図3から解るように、ラジエタ34は、遮断外壁部33内に配置される。ラジエタ34は、液冷却装置2(装置本体21)の上壁部と略同じ程度の大きさ(面積)を有する。ラジエタ34は、液冷却装置2の上壁部の全域を覆うように、該上壁部と上下方向に沿って間隔を置いて配置される。ラジエタ34は、液冷却装置2の上壁部と略平行に配置される。その結果、ラジエタ34は、液冷却装置2の排気口24の全域を覆うように、排気口24と略平行に該排気口24に近接して配置される。また、液冷却装置2の上壁部であって、排気口24の前端付近に接続されて、前方に向かって斜め上方に延びる案内板42が配置される。該案内板42の前端は、遮断外壁部33の前壁部で、ラジエタ34の前端の下端付近に接続される。図4も参照して、遮断外壁部33の前壁部には、ラジエタ34よりも上方の位置に送風ファン35が組み込まれている。該送風ファン35は、液冷却装置2の左右方向に沿って間隔を置いて複数配置されている。本実施形態では、送風ファン35は、3箇所配置されている。なお、上述しているように、送風ファン35は、必要に応じて備えるようにしている。
【0025】
そして、排気冷却手段30においては、液冷却装置2の駆動中、各送風ファン35を駆動させることにより、液冷却装置2の排気口24から排出される、高温の排気の略全てが案内板42に沿ってラジエタ34に導かれる。このとき、排気口24からの排気は、ラジエタ34全域に分散されて該ラジエタ34を通過する。そして、高温の排気がラジエタ34を通過することで、排気の熱がラジエタ34を循環する冷却水により吸収されて、各送風ファン35を通過して、遮断外壁部33の前壁部から外部に放出される。その後、外部に放出された低温の排気は、遮断外壁部33の前壁部と、ひさし壁部36との間の排気通路38を通り、液冷却装置2の前方(吸入口23側)を下方に向かって流れる。その後、低温の空気は、再び液冷却装置2の吸入口23から内部に吸い込まれる。図3に示す矢印は、空気の流れを示している。この排気冷却手段30の作用により、液冷却装置2からの放熱温度を下げることができ、製造工場内の高温化を抑制することができ、その結果として、製造工場内の空調設備等の冷却能力を上げる必要はなく、省エネルギー効果を得ることができる。しかも、液冷却装置2に排気冷却手段30を付設するだけの構成で、且つ製造工場に必然的に設置されているクーリングタワー40からの冷却水を利用することで、液冷却装置2からの放熱温度を下げることができるので、新たな冷却システムを構築する必要はなく、経済的に有効である。
【0026】
図1に示すように、冷却手段3は、各熱放散機器6(例えば、タンクT内の工作液を工作機械5に送給する電動ポンプ7、工作機械5に付設される油圧ユニット8、工作機械5に付設される制御盤クーラ9、工作機械5に付設されるミストコレクター10、工作機械5に備えられる電動モータ11等)の、高温の空気が排出される排気口(図示略)に近接して配置される熱交換器としてのラジエタ50と、各熱放散機器6の排気口からの排気をラジエタ50に供給する送風ファン51と、各熱放散機器6に備えたラジエタ50に、タンクT内の工作液を送給する電動ポンプ52と、を備えている。各熱放散機器6に備えたラジエタ50は、電動ポンプ52によりタンクT内の工作液(冷却水)が循環されることで、この循環される工作液により各熱放散機器6の排気口からの排気の熱を吸収するものである。送風ファン51は、熱放散機器6の排気口からの排気をラジエタ50に導くためのものである。なお、本実施形態では、冷却手段3として送風ファン51を備えているが、当該送風ファン51は必須ではなく、必要に応じて備えるようにしてもよい。なお、タンクT周辺にはろ過装置55が配置されており、該ろ過装置(フィルタ等)55は、工作機械5からタンクT内に戻ってくる工作液をろ過して、該工作液に混入されている異物を除去するものである。
【0027】
そして、本発明の実施形態に係る冷却システム1では、タンクT内の工作液は、電動ポンプ7により、工作機械5を循環しており、この高温となった工作液は、液冷却装置2により適宜温度まで冷却される。また、タンクT内の工作液は、電動ポンプ52により、各熱放散機器6、例えば、電動ポンプ7、油圧ユニット8、制御盤クーラ9、ミスコレクター10及び工作機械5の電動モータ11等に備えたラジエタ50、50・・・に循環される。その結果、各熱放散機器6、6・・・の排気口からの排気は、各送風ファン51、51・・・により各ラジエタ50に導かれて、その熱が各ラジエタ50、50・・・を流れる工作液(冷却水)によって吸収されて、温度が下がった状態で外部に放出される。
【0028】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る冷却システム1では、液冷却装置2により冷却されたタンクT内の工作液を利用して、製造工場内に設置された多数の熱放散機器6からの放熱温度を下げることができる。詳しくは、本冷却システム1は、タンクT内の工作液を、製造工場内に設置される多数の熱放散機器6に送給して、各熱放散機器6からの放熱温度を下げる冷却手段3を備えているので、製造工場内の熱放散機器6の排気口から排出される高温の排気が、冷却手段3のラジエタ50により熱交換され低温処理された状態で外部に放出される。しかも、本発明の実施形態に係る冷却システム1では、液冷却装置2に付設された排気冷却手段30により、液冷却装置2からの放熱温度をも下げることができる。
【0029】
これにより、製造工場内に多数設置される熱放散機器6、及び液冷却装置2からの放熱温度を下げることで、製造工場内の高温化を抑制することができる。その結果として、製造工場内の空調設備等の冷却能力を上げる必要はなく、省エネルギー効果を得ることができる。なお、各熱放散機器6とタンクTとの間の距離は、各熱放散機器6とクーリングタワー40との間の距離よりもはるかに短いために、タンクT内の工作液を各熱放散機器6に設けられたラジエタ50に送給する電動ポンプ52の圧力を低く設定(最大圧力:0.13MPa程度)できるので、各熱放散機器6に設けられたラジエタ50において耐圧構造を採用する必要なく、その結果、熱交換効率が良好となり、小型化が実現でき、ひいてはコスト削減に繋がる。
【0030】
また、本発明の実施形態に係る冷却システム1では、液冷却装置2により冷却されたタンクT内の工作液を利用しており、当該タンクT内の工作液は、クーリングタワー40からの冷却水(葉っぱや虫等の異物が大量に混入しており、カビや藻も大量発生している)よりも異物の混入がなくクリーンであるので、ラジエタ50の詰まり等の発生を抑制することができる。その結果、ラジエタ50のメンテナンスが容易で、その回数も少なくすることができ、本冷却システム1の維持コスト等を削減することができる。
【0031】
さらに、本発明の実施形態に係る冷却システム1では、冷却手段3として、タンクT内からの工作液が循環される熱交換器であるラジエタ50を採用して、このラジエタ50を各熱拡散機器6の排気口に近接して配置したので、製造工場に設置されてある既存の各熱拡散機器6を改造することなく、各熱放散機器6からの排気の温度を下げることができる。これにより、本冷却システム1を構築するためのコストを抑えることができる。
【0032】
なお、上述した本実施形態では、本冷却システム1における浸漬型の液冷却装置2には、空冷式が採用されており、液冷却装置2の排気口24からの高温の排気を排気冷却手段30(クーリングタワー40からの冷却水)により冷却して外部に放出しているが、クーリングタワー40からの冷却水を、液冷却装置2の発熱部位である凝縮器14に直接導いて、該凝縮器14を冷却する水冷式を採用してもよい。
【0033】
また、本冷却システム1において、電動ポンプ7に水冷式が採用された場合には、ラジエタ50及び送風ファン51を設けることなく、電動ポンプ7における電動モータの発熱部位に、タンクT内の工作液を直接導いて冷却するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 冷却システム,2 液冷却装置,3 冷却手段,5 工作機械,6 熱放散機器,7 電動ポンプ(熱放散機器),8 油圧ユニット(熱放散機器),9 制御盤クーラ(熱放散機器),10 ミストコレクター(熱放散機器),11 電動モータ(熱放散機器),50 ラジエタ(冷却手段の構成である熱交換器),51 送風ファン(冷却手段),53 電動ポンプ(冷却手段),T タンク
図1
図2
図3
図4
図5