IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社佐野商会の特許一覧 ▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-化粧料 図1
  • 特許-化粧料 図2
  • 特許-化粧料 図3
  • 特許-化粧料 図4
  • 特許-化粧料 図5
  • 特許-化粧料 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230330BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230330BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20230330BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20230330BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/81
A61Q19/00
A61Q17/04
A61K8/87
B82Y5/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021020052
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2018245915の分割
【原出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2021075562
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】505090595
【氏名又は名称】株式会社佐野商会
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 則夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 綾
(72)【発明者】
【氏名】吉原 大樹
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099364(JP,A)
【文献】特表2018-511623(JP,A)
【文献】特開2018-002664(JP,A)
【文献】特開2017-178887(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068300(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08B 1/00-37/18
B82Y 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘安定化剤のほか、平均繊維径10~1000nmのセルロースナノファイバーを含み、
前記セルロースナノファイバーは、パルプ粘度が1~10cpsであり、繊維径分布の変動係数が1.1以下となるものであり、
前記セルロースナノファイバーの原料パルプが化学パルプである、
ことを特徴とする化粧料。
【請求項2】
水相と油相からなり、
前記油相に油溶性皮膜形成剤が含まれ、
前記油溶性皮膜形成剤が部分架橋オルガノポリシロキサンである、
請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
前記化学パルプが針葉樹晒クラフトパルプである、
請求項記載の化粧料。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーの保水度が300~480%である、
請求項1記載の化粧料。
【請求項5】
前記増粘安定化剤の含有量が0.01~5質量%であり、
シリコーン化合物で処理された紫外線散乱剤が含まれる、
請求項1記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌のハリ感や抗シワ効果を標榜する化粧料が数多く発売されている。肌のハリや弾力性を高める方法としては植物抽出物を配合する方法や、ビタミンA誘導体を用いる方法などが知られている。これらの方法は即時的な効果実感に乏しいため、薬理効果が発現するまでの長期の連用を促すことが難しい。そのため、肌に化粧膜を形成させることにより、物理的にハリを与えて、即時的な効果を実感させる取り組みや、しわ等の凹凸を目立ちにくくし、視覚的にハリ・ツヤを付与する取り組みが行われている。
【0003】
特許文献1(特開2007-269723号公報)にはポリビニルアルコール等の水溶性皮膜形成剤と水溶性保湿剤及び特定のエステル油を配合した塗布時ののび広がりが良好で、しかも、ツヤ感が高く、ハリ感の付与に優れる化粧料が開示されている。特許文献2(特開2010-235472号公報)には固形油であるステアリン酸ステアリルと炭化水素を組合わせることにより、柔らかな皮膜で適度な肌のハリ感の付与に優れる乳化化粧料が得られることが開示されている。特許文献3(特開2013-136546号公報)には油溶性皮膜形成剤と揮発性の高い油剤を併用することで即効性のハリ感を付与することができると記載されている。
【0004】
しかしながらこれらで用いられる化粧膜を形成することによりハリ感付与に寄与する、水溶性高分子、固形油及び油溶性皮膜形成剤は、いずれも肌に塗布中及び塗布後にべたつきを感じるものであった。また形成される化粧膜が柔軟性に欠ける場合は、肌の動きにより、化粧膜の断裂が生じるという問題もあった。特許文献4(特開平11-180817号公報)には正反射光と拡散反射光がともに強い粉体を用いることにより、視覚的につややかでハリのある肌にすることができるハリ付与剤が得られることが開示されているが、これは化粧膜による物理的なハリ感を付与するものではない。
【0005】
一方セルロースナノファイバーは、複合材料の強度向上等の用途検討が為されているが、化粧料分野においては、増粘剤(特許文献5(特開2009-62332号公報))や、分散安定化剤(特許文献6(特開2011-57567号公報))としての利用が検討されているのみで、化粧膜の物性改良に利用されたことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-269723号公報
【文献】特開2010-235472号公報
【文献】特開2013-136546号公報
【文献】特開平11-180817号公報
【文献】特開2009-62332号公報
【文献】特開2011-57567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景技術の下に完成したものであり、その目的は、肌上にべたつきのない、柔軟で断裂の生じない化粧膜を形成することにより、肌に物理的なハリ感を付与し、視覚的にもきめ細かい肌に見せる化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、鋭意研究した結果、特定のセルロースナノファイバーを配合した化粧料が、上記課題を解決することを見出した、上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0009】
(請求項1に記載の手段)
増粘安定化剤のほか、平均繊維径10~1000nmのセルロースナノファイバーを含み、
前記セルロースナノファイバーは、パルプ粘度が1~10cpsであり、繊維径分布の変動係数が1.1以下となるものであり、
前記セルロースナノファイバーの原料パルプが化学パルプである、
ことを特徴とする化粧料。
【0010】
(請求項2に記載の手段)
水相と油相からなり、
前記油相に油溶性皮膜形成剤が含まれ、
前記油溶性皮膜形成剤が部分架橋オルガノポリシロキサンである、
請求項1記載の化粧料。
【0011】
(請求項3に記載の手段)
前記化学パルプが針葉樹晒クラフトパルプである、
請求項記載の化粧料。
【0012】
(請求項4に記載の手段)
前記セルロースナノファイバーの保水度が300~480%である、
請求項1記載の化粧料。
【0013】
(請求項5に記載の手段)
前記増粘安定化剤の含有量が0.01~5質量%であり、
シリコーン化合物で処理された紫外線散乱剤が含まれる、
請求項1記載の化粧料。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、肌に物理的なハリ感を付与し、視覚的にもきめ細かい肌に見せる化粧料となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】皮膜の柔軟性の試験結果を示す図である。
図2】皮膜の柔軟性の試験結果を示す図である。
図3】皮膜の柔軟性の試験結果を示す図である。
図4】皮膜の柔軟性の試験結果を示す図である。
図5】皮膜の柔軟性の試験結果を示す図である。
図6】皮膜の柔軟性の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0017】
本形態の化粧料は、増粘安定化剤のほかに、所定のセルロースナノファイバーを少なくとも含む。従来、増粘安定化剤としてセルロースナノファイバーが使用されたことはあった。しかしながら、本形態においては、セルロースナノファイバーを、例えば、皮膜形成成分として使用するものである。つまり、本形態においては、増粘安定化剤も別途配合しており、従来のセルロースナノファイバーは、本形態においては当該増粘安定化剤の一種に該当する(対応付けられる)ものである。
【0018】
なお、以下で詳細に説明するように、セルロースナノファイバーを皮膜形成成分として使用する場合、増粘安定化剤として使用可能なセルロースナノファイバーを全て使用することができるというものではなく、所定の条件が存在する。また、本形態においては、セルロースナノファイバーを増粘安定化剤として使用するものではないが、別途、増粘安定化剤としてセルロースナノファイバーを使用することを否定するものではない。
【0019】
(セルロースナノファイバー)
本形態においては、所定のセルロースナノファイバー(CNF)が、皮膜形成成分として機能する。また、所定のセルロースナノファイバーもセルロースナノファイバーの一種であるが故に、べとつき感を抑制する機能を有する。さらに、セルロースナノファイバーは、肌に塗布された後、化粧料中のその他の不揮発性成分と共に肌上において化粧膜を形成し、もって肌に物理的なハリ感を与え、視覚的にもきめ細かい肌に見せる機能を有する。
【0020】
本形態における所定のセルロースナノファイバーは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。
【0021】
セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0022】
ただし、不純物の混入を可及的に避け、セルロース成分の中でもアルカリに不溶なα-セルロースを高配合で得られることから非木材パルプや古紙パルプよりも木材パルプを使用する方が好ましい。アルカリで処理する事により、アルカリに可溶な成分を除去でき、セルロースの純度を高めることができる。
【0023】
木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0024】
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
【0025】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、前述したセルロース以外の不純物の混入を避けるため、特に広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプの使用が好ましい。
【0026】
セルロースナノファイバーの解繊に先立っては、化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。
【0027】
解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進される。
【0028】
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
【0029】
解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロースナノファイバーの分散液(以下、「スラリー」とも言う。)の脱水性が向上する。
【0030】
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、セルロースナノファイバーの均質性向上に資する。この点、化粧料の分野においては、化粧料全量に対するセルロースナノファイバーの配合量が少ないため、均質性向上は、重要なファクターとなる。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、特に皮膜形成成分として使用する場合においては、過度の前処理は避けるのが好ましい。
【0031】
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
【0032】
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、繊維径分布の変動係数、擬似粒度分布曲線におけるピーク値、パルプ粘度、分散液(スラリー)のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
【0033】
セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10~1000nm、より好ましくは10~100nm、特に好ましくは10~80nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回ると、皮膜形成成分としての機能が損なわれるおそれがある。つまり、肌の上に形成された化粧膜の柔軟性が劣るものになり、塗布後の皮膚の動きにより、化粧膜の断裂や亀裂が生じるおそれがある。また、セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回ると、化粧料の粘度が上昇するため、化粧料の伸ばし易さが低下するとの問題や、化粧料に所望の量のセルロースナノファイバーを配合することができなくなるおそれがある。その他、セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回ると、セルロースナノファイバーを含むスラリーの脱水性が悪化するおそれがある。
【0034】
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が1000nmを上回ると、化粧材料のざらつき、べたつき感やハリ感が劣るものになるおそれがある。このべたつき感やハリ感という点では、特にセルロースナノファイバーの平均繊維径が100nm以下であるのが好ましい。
【0035】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0036】
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液(スラリー)100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3000倍~30000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0037】
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ平均)は、好ましくは0.3~200μm、より好ましくは0.4~200μm、特に好ましくは0.5~200μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.3μmを下回ると、皮膜形成成分として機能しなくなるおそれがある。また、セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.3μmを下回ると、ハリ感に劣るものになるおそれもある。
【0038】
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維長が200μmを上回ると、繊維同士が絡み易くなり、凝集の問題が生じるおそれがある。なお、セルロースナノファイバーの凝集は、化粧料のざらざら感につながるおそれがあり、また、消しゴム様の固まり(よれ)が発生する原因になるおそれがある。
【0039】
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0040】
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
【0041】
セルロースナノファイバーは、繊維径分布の変動係数が、好ましくは0.1以上~1.5以下、より好ましくは0.3~1.1以下である。繊維径分布の変動係数が1.1を超えると繊維径分布が広くなり、ナノサイズのセルロース繊維だけではなく、マイクロサイズの大きさの繊維も含まれることとなり、化粧材料自体の流動性の低下のほか、肌に塗布した際のざらつきなどの不快感につながる。変動係数0.3以下であれば、ナノサイズの繊維径は、均一に揃う傾向となるが、前処理、解繊等による調整が困難となりやすい。
【0042】
繊維径分布の変動係数は、前述した平均繊維径の集計において集計した繊維径の平均値と標準偏差値を用いて、標準偏差値÷平均値を求めた値である。
【0043】
セルロースナノファイバーの保水度は、好ましくは500%以下、より好ましくは300~480%、である。セルロースナノファイバーの保水度が300%を下回ると、セルロースナノファイバーの分散性が悪化するおそれがある。また、セルロースナノファイバーの保水度が300%を下回ると、化粧材料のざらつきの原因となるおそれがある。
【0044】
他方、セルロースナノファイバーの保水度が500%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり、セルロースナノファイバーの脱水性が悪化するおそれがある。
【0045】
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0046】
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
【0047】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは2~9cps、特に好ましくは3~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。セルロース繊維の強度・剛性に関係する。重合度が高すぎるとハリ感が劣り、肌との親和性が失われる可能性が高く、重合度が低いと、繊維自体の強度も失われ、亀裂しやすい皮膜になりやすい。セルロースナノファイバーの重合度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、皮膜形成成分として機能させつつ、ざらざら感の発生も防ぐことができる。
【0048】
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値(以下、単に「ピーク値」とも言う。)は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、化粧料の原料として使用するのに好適である。
【0049】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば1~100μm、好ましくは3~80μm、より好ましくは5~60μmである。セルロースナノファイバーのピーク値が1μmを下回ると、セルロースの微細化が進行するが、他方、セルロースナノファイバーのピーク値が100μmを上回ると、繊維がナノサイズまで解繊できてないおそれがある。
【0050】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0051】
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO-13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
【0052】
以上のピーク値に加えて、セルロースナノファイバーは、粒径100μm以下の積算体積割合が、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。粒径100μm以下の積算体積割合が70%未満であれば、例えば、後述する試験例から推測可能なように、べたつき感やハリ感が損なわれると共に、皮膜形成成分としての機能が十分に発揮されないおそれがある。
【0053】
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、水系媒体中に分散して分散液(スラリー)としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0054】
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1.5%)のB型粘度は、好ましくは1,000cps~20,000cps、より好ましくは1,000~10,000cps、特に好ましくは1,000~5,000cpsである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、化粧料を構成する他の成分との混合が容易になり、また、スラリー(分散液)の脱水性が向上する。
【0055】
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(固形分濃度1.5%)は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
【0056】
セルロースナノファイバーの分散液は、水等の溶媒を加える等して、分散液中におけるセルロースナノファイバーの固形分濃度を調節すると好適である。セルロースナノファイバーの固形分濃度は、好ましくは0.1%~5.0%、より好ましくは0.3~4.0%、特に好ましくは0.5~3.0%である。セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.1%を下回ると、流動性が高くなり過ぎ、他の成分と混合するのが困難になるおそれがある。また、セルロースナノファイバーの固形分濃度が5.0質量%を上回っても流動性が著しく低下することで、他の成分と混合するのが困難になるおそれがある。
【0057】
セルロースナノファイバーは、化粧料中において水相及び油相のどちらに分散していても良い。ただし、水相中に分散している方が、化粧料の保存安定性、肌への伸ばし易さの点で好ましい。
【0058】
セルロースナノファイバーは、化粧料中における含有量が、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.05~2質量%、特に好ましくは0.1~1質量%である。セルロースナノファイバーの含有量が過度に少ないと、ハリ感が劣るものになり、また、皮膜形成成分としての機能が発揮されないおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの含有量が過度に多いと、化粧料の伸びが悪くなり、また、化粧膜の柔軟性が低下する。
【0059】
(油分)
本形態の化粧料には、分散相として油分が存在する。油分は、肌に塗布された後、セルロースナノファイバー等と共に化粧膜を形成し、肌にハリ感を与える働きを有する。
【0060】
油分としては、例えば、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、いずれをも使用することができる。
【0061】
油分としては、例えば、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油溶性紫外線吸収剤等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
より具体的には、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、モンタンワックス等の炭化水素類;
オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;
ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類;
セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類;
低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類;
パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類;
ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;
等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
化粧料中における油分の含有量は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%、特に好ましくは5~25質量%である。油分の含有量が1質量%を下回ると、化粧膜の柔軟性が劣るものになるおそれがある。他方、油分の含有量が50質量%を上回ると、ハリ感が低下し、また、べたつき感を取り去ることができないおそれがある。
【0064】
(粉体)
本形態の化粧料には、粉体を配合することができる。化粧料が粉体を含むと、化粧膜のべたつき感をより抑えることができる。また、本形態の化粧料をベースメイク化粧料として使用する場合においては、カバー力や仕上がり感を所望のものとすることができるようになる。
【0065】
粉体は、例えば、球状、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等によって限定されない。また、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素類、複合粉体類のいずれであってもよい。
【0066】
粉体としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、コンジョウ、群青、無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、スメクタイト、ベントナイト、カオリン、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類;
オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類;
ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン、ポリスチレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、セルロース、結晶セルロース、酢酸セルロース等の有機粉体類;
等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
以上の粉体には、必要により、表面処理剤であるアルミナ、シリカ、酸化鉄等の無機化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物、リン脂質、リン脂質誘導体、金属石鹸、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等によって表面処理して使用することもできる。
【0068】
以上の中でも、球状の有機粉体、例えば、ポリスチレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、セルロース、結晶セルロース、酢酸セルロース等を使用すると、毛穴・小じわなどの凹凸を効果的に隠蔽できるので好ましい仕上がりとなる。
【0069】
本形態の化粧料をベースメイク化粧料として使用する場合においては、粉体として酸化チタン、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等の無機粉体類の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用するのが好ましい。また、特に、シリカ等の金属酸化物で被覆した無機粉体類は、連続相である水相への分散が良好であるため、乳化安定性、色変化防止の点で優れている。
【0070】
シリカ被覆赤酸化鉄の市販品としては、例えば、日揮触媒化成社製のSYMPHOLIGHT RWを使用することができる。また、シリカ被覆黄酸化鉄の市販品としては、例えば、SYMPHOLIGHT Y10を使用することができる。
【0071】
粉体の含有量は、化粧料全量に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは3~30質量%、特に好ましくは5~25質量%である。粉体の含有量が1質量%未満であると、化粧膜がべたつく傾向にある。他方、粉体の化粧料が40質量%を上回ると、化粧膜の柔軟性が劣るものになるおそれがある。
【0072】
(紫外線防御剤)
本明細書において、紫外線防御剤とは、紫外線を吸収し(紫外線吸収剤)、あるいは散乱する(紫外線散乱剤)ことで肌や化粧料自体を紫外線から防御する成分を意味する。この点、化粧料に使用される一般的な紫外線散乱剤には、紫外線を吸収する能力もあると言われている。しかるに、本形態においては、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤を明確に区別する必要はなく、いずれも肌や化粧料自体を紫外線から防御するために使用するものである。そこで、本明細書においては、両者を含めて紫外線防御剤と定義することにする。
【0073】
紫外線吸収剤としては、水溶性紫外線吸収剤及び油分に分類される油溶性紫外線吸収剤が存在する。水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸及びその塩、フェニレン-ビス-ベンゾイミダゾール-テトラスルホン酸及びその塩等のベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤;
3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
油溶性紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;
ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;
サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸パラ-ターシャリーブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;
エチルヘキシルトリアゾン(2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン)、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;
4-ターシャリーブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、アントラニル酸メンチル、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
紫外線散乱剤は、微粒子粉体であり、前述した粉体に分類される。この紫外線散乱剤は、平均粒子径100nm以下の金属酸化物であると好ましい。具体的には、例えば、平均粒子径100nm以下の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
紫外線散乱剤としては、耐水性の点で疎水処理したものが好ましい。疎水処理法としては、通常の表面処理法を採用することができる。具体的には、例えば、粉体表面に油脂を吸着させ、あるいは水酸基等の官能基を利用し、エステル化やエーテル化を起こさせて粉体を親油的にする油脂処理法、脂肪酸の亜鉛塩やマグネシウム塩やアルミ塩を用いた金属石鹸処理法、ジメチルシロキサンやハイドゲンジメチコン等のシリコーン化合物を用いたシリコーン処理法、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物で処理する方法、アルキルアルコキシシランで処理する方法等を採用することができる。以上の処理法の中では、耐水性、乳化安定性の観点から、シリコーン化合物を用いたシリコーン処理を採用するのが好ましい。
【0077】
紫外線防御剤の含有量は、化粧料全体に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは3~30質量%、特に好ましくは5~25質量%である。紫外線防御剤の含有量が1質量%未満であると、紫外線防御効果が不十分である。他方、紫外線防御剤の含有量が40質量%を上回ると、化粧料の肌への伸ばし易さが低下するおそれがある。
【0078】
(皮膜成分)
本形態の化粧料には、水中油型乳化化粧料が含まれ、水溶性皮膜形成剤、油溶性皮膜形成剤、及び皮膜形成性ポリマーエマルションの中から選択される皮膜成分を1種以上含むと好適である。これらの皮膜成分を含むことで、肌のハリ感をより高めることができる。
【0079】
水溶性皮膜形成剤は、水性成分に溶解し、化粧膜を形成する。水溶性皮膜形成剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、変性コーンスターチ、加水分解水添デンプン等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
油溶性皮膜形成剤は、油性成分に溶解又は分散し、化粧膜を形成する。油溶性皮膜形成剤としては、例えば、トリメチルシロキシケイ酸、部分架橋オルガノポリシロキサン、トリメチルシロキシシリルプロピルカルバミド酸、フッ素変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、シリコーンデンドリマー変性樹脂化合物等のシリコーン系樹脂、ロジン酸ペンタエリスリット、ロジン酸グリセリル等のロジン酸系樹脂、キャンデリラ樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブチレン等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
ただし、以上の中でも、部分架橋オルガノポリシロキサンは、べたつきの少ない耐水性の化粧膜を形成することができるので、特に好ましい。部分架橋オルガノポリシロキサンは、液状油分に分散されたゲルの形態で入手することができる。部分架橋オルガノポリシロキサンの市販品としては、例えば、信越化学工業社製の(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー及びシクロペンタシロキサンからなるKSG-15、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー及びメチルトリメチコンからなるKSG-1510、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー及びジメチコンからなるKSG-16、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー及びジフェニルシロキシフェニルトリメチコンからなるKSG-18A、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー及び流動パラフィンからなるKSG-41A、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー及びトリエチルヘキサノインからなるKSG-43、(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコン)クロスポリマー及びイソドデカンからなるKSG-042Z、東レ・ダウコーニング社製のジメチコンクロスポリマー及びシクロペンタシロキサンからなる9040及び9045 Silicone Elastomer Blend、ジメチコンクロスポリマー及びジメチコンからなる9041 Silicone Elastomer Blend、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー及びジメチコンからなる3901Liquid Satin Blend、(ジメチコン/ビス-イソブチルPPG-20)クロスポリマー及びネオペンタン酸イソデシルからなるEL-8051 IN Silicone Organic Elastomer Blend、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のアルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー及びシクロペンタシロキサンからなるVelvesil 125、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー及びカプリリルメチコンからなるVelvesil 034、セテアリルジメチコンクロスポリマー及びジメチコンからなるVelvesil DM等が存在する。
【0082】
皮膜形成性ポリマーエマルションは、水不溶性高分子の水分散物である。皮膜形成性ポリマーエマルションとしては、例えば、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、スチレン・アクリル酸アルキル共重合体エマルション、スチレン・メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、酢酸ビニル重合体エマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、メタクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキルジメチコン共重合体エマルション等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
皮膜成分の含有量は、化粧料全量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。皮膜成分が少な過ぎると、ハリ感の増強効果が得られないおそれがある。他方、皮膜成分が多過ぎると、べたつき感を抑制することができないおそれがある。
【0084】
(増粘安定化剤)
本形態の化粧料には、増粘剤及び安定化剤の少なくともいずれかとして機能する増粘安定化剤を配合する。これにより、化粧料の伸ばしやすさ等の使用感を向上させ、乳化状態や分散状態を長期間安定に保つことができる。増粘安定化剤としては、例えば、水溶性皮膜形成剤以外の水溶性高分子や、粘土鉱物等を使用することができる。
【0085】
より具体的には、増粘安定化剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウムメタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、ポリアクリルアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリビニルメチルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カチオン化セルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、カラヤガム、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)、カラギーナン、キサンタンガム、デキストラン、プルラン、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト等の中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
ただし、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの中から1種又は2種以上を組み合わせて使用するのが好ましい。
【0087】
増粘安定化剤の含有量は、化粧料全量に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.02~4質量%、特に好ましくは0.05~3質量%である。増粘安定化剤の含有量が0.01質量%を下回ると、使用感の向上及び乳化・分散状態の安定化を図ることができない。セルロースナノファイバーは、従来、増粘安定化剤として使用されているが、本形態では、皮膜形成成分として使用されている。本形態ではセルロースナノファイバーを皮膜形成成分として機能させるため所定の条件で化粧料に配合し、前述の増粘安定化剤を別途配合することで増粘安定化を機能させている。
【0088】
(界面活性剤)
本形態の化粧料には、非イオン性界面活性剤、高分子乳化剤、陰イオン(アニオン)性界面活性剤、陽イオン(カチオン)性界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤等の界面活性剤を配合することができる。界面活性剤は、乳化剤としてのほか、例えば、可溶化剤、湿潤剤、洗浄剤等としても機能し得る。
【0089】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン、エーテルカルボン酸及びその塩、アミノ酸と脂肪酸の縮合等のカルボン酸塩、アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩とそのホルマリン縮合物のスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩等を例示することができる。
【0090】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアミノアルコール脂肪酸誘導体等のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩、ピリジウム塩、イミダゾリウム塩等を例示することができる。
【0091】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等を例示することができる。
【0092】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等を例示することができる。
【0093】
(保湿剤)
本形態の化粧料には、保湿剤を配合することができる。保湿剤としては、例えば、多価アルコール類、糖類、糖アルコール類、アミノ酸類、ペプチド類、水溶性高分子類等中から1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、保湿剤としては、例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、イサイヨバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等を配合することができる。
【0094】
(その他の成分)
本形態の化粧料には、例えば、抗菌剤、防腐剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美肌用成分、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、包接化合物等の通常の化粧料に配合する各種成分を配合することができる。
【0095】
(製造方法)
本形態の化粧料を製造するにあたっては、通常の製法、例えば、水相及び油相をそれぞれ調製した後、油相を水相に攪拌しながら徐々に添加して水中油型乳化料とする方法、セッケン乳化法、あるいは反応乳化法、D相乳化法等を採用することができる。
【0096】
(用途等)
本形態の化粧料は、クリーム状、ゲル状、乳液状、液状(希薄な乳液)のいずれの形態であってもよい。本形態の化粧料は、例えば、ファンデーション、下地等のメイクアップ化粧料とするに特に優れている。ただし、本形態の化粧料は、乳液状又はクリーム状のアイシャドウ、頬紅、コンシーラー等のメイクアップ化粧料とするにも優れている。
【実施例
【0097】
次に、各種試験結果を示し、本発明の効果をより明確にする。
表1に示す組成の水中油型乳化化粧料(試料)を下記の製造手順に従って調製した。次に、調製された各試料を、評価パネルの肌(顔)及び評価用のウレタン製人工肌(ビューラックス社製)に塗布し、室温で30分以上乾燥した。各種試料について、下記の基準で評価した。
【0098】
各試料に配合したセルロース繊維(CNF-A、CNF-B、MFC)の原料としては、針葉樹晒クラフトパルプを使用した。また、CNF-Cとしては、第一工業製薬株式会社の製品であるレオクリスタ(TEMPO酸化型CNF)を使用した。各セルロース繊維の物性を、表2に示した。なお、平均繊維幅は、CNF-A及びCNF-Bについては、前述した方法(SEM画像による観察)で求めた。また、CNF-Cについては、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して求めた。さらに、MFCについては、バルメット社製の繊維分析計「FS5」を使用して測定した。また、乾燥収縮率は、以下の方法で求めた。
【0099】
(乾燥収縮率)
まず、CNF等のセルロース繊維を水分散液とし、濃度を0.5質量%に調整した。次に、当該濃度に調整された水分散液を直径7.5cmのシャーレに30g-WET投入して105℃で乾燥した。そして、この乾燥によって得られたセルロース繊維膜の直径の収縮率を測定した。収縮率の計算は、セルロース繊維膜の直径を算出(4本線の平均を算出)し、以下の式にて求めた。
収縮率=セルロース繊維膜の直径÷容器内径(7.5cm)×100(%)
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
(製造手順)
表1に記載した処方の水中油型乳化ファンデーションを以下に示す製造手順にて調製し、「べたつきのなさ」、「ハリ感」、「ツッパリ感のなさ」、「仕上がりのきめ細かさ」、「皮膜の柔軟性」および「画像解析によるキメスコア」の各項目について評価した。表1について、
(1)番号1~4の各成分を表1に示す混合比で混合し、80℃に加熱溶解して水相(a)を調製した。
(2)番号5~11の各成分を表1に示す混合比で混合し、80℃に加熱溶解して油相(b)を調製した。
(3)水相(a)を撹拌しながら、同水相(a)に油相(b)を少量ずつ混合して乳化相(c)を調製した。
(4)乳化相(c)を冷却し、35℃で番号12~18の各成分を表1に示す混合比で混合して化粧料を調製した。
【0103】
(評価:使用感)
女子評価パネル(5名)の顔に各試料(実施例1、2及び比較例3~6)を塗布し、使用感(べたつきのなさ、ハリ感、つっぱり感のなさ、仕上がりのきめ細かさ)について、下記の基準に従って官能評価した。べたつきのなさ、ハリ感、仕上がりのきめ細かさの結果については表3に、つっぱり感のなさの結果については表4に示した。各項目別に「良い(評点:2)」「どちらとも言えない(評点:1)」「悪い(評点:0)」の3段階で評価し、評点の平均点から下記基準で性能の良否を判定した。
[判定] : [評点の平均点]
5 : 1.5以上
4 : 1.2以上1.5未満
3 : 0.8以上1.2未満
2 : 0.3以上0.8未満
1 : 0.3未満
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
(皮膜の柔軟性)
まず、前述した厚さ2mmのウレタン製人工肌(ビューラックス社製 肌模型No.77 2T#ブラック)を30mm×70mmの長方形に裁断し、30mm×50mmの面に各試料(実施例1、2及び比較例3~6)0.05gを均一に塗布し、室温で30分以上乾燥したものを試験片とした。サン科学社製レオメーターCR-100を用い、引張試験用冶具で試験片の長辺方向の上下の未塗布部位10mmを固定し、試料台速度 20mm/minで下降させ、20mm(140%)伸長時の状態を観察した。下記基準により判定した。皮膜の柔軟性の結果は表4及び図1図6に示した。図1図6の各図で(A)は伸長前の試験片、(B)は伸長後の試験片を撮影したものである。図1は実施例1の試料11を塗布したものである。図2は実施例2の試料12を塗布したものである。図3は比較例3の試料13を塗布したものである。図4は比較例4の試料14を塗布したものである。図5は比較例5の試料15を塗布したものである。図6は比較例6の試料16を塗布したものである。
[判定]
5 : 化粧膜の亀裂等が見られず、黒地の人工肌が隠蔽されている。
3 : 1mm未満の幅の亀裂が観察され、黒地が見える。
1 : 1mm以上の幅の亀裂が観察される。
(画像解析によるキメスコア)
20代女性2名の顔面(左右の頬部)に各試料(実施例1、2及び比較例3~6)を適量塗布し、皮膚画像解析装置VISIA EVOLUTION(Canfield社製)を用いて撮影し、付属の解析ソフトにより肌の滑らかさの指標であるキメ(Texture)スコアを算出した。撮影は、同一試料を左右の頬部各々について4箇所(合計8箇所)に塗布して行った。そして、撮影は、各試料(実施例1、2及び比較例3~6)について行った。この同一試料について算出されたキメスコアを、同一被験者の同一部位におけるセルロースナノファイバー無配合の試料(比較例1)について算出されたキメスコアで除した値をT値とした。
【0106】
(T値)=(各試料(実施例1、2及び比較例3~6)について算出されたキメスコア)/(比較例1について算出されたキメスコア)
この求められた8箇所あたりのT値を単純平均して(T)の平均値とし、下記基準により判定した。キメスコアの結果は表4に示した。
[判定] : [(T)の平均値]
5 : 0.9未満
3 : 0.9以上1.0未満
1 : 1.0以上
【0107】
(考察)
表3から、セルロースナノファイバーを配合すると、べたつき感が抑えられ、また、ハリ感が付与されることが分かる。もっとも、表4から明らかなように、セルロースナノファイバーの平均繊維径が小さ過ぎると、つっぱり感が生じてしまい、また、化粧膜の柔軟性に欠けることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、ファンデーション、ベースメイク化粧料等の化粧料として利用可能である。
【符号の説明】
【0109】
11 実施例1の試料
12 実施例2の試料
13 比較例3の試料
14 比較例4の試料
15 比較例5の試料
16 比較例6の試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6