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特許7253209マルチロボットシステム及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】マルチロボットシステム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 57/00 20060101AFI20230330BHJP
   H02S 40/10 20140101ALI20230330BHJP
   B62D 57/04 20060101ALI20230330BHJP
   B08B 1/04 20060101ALN20230330BHJP
   E04G 23/02 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
B62D57/00
H02S40/10
B62D57/04
B08B1/04
E04G23/02 A
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021153327
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2022064849
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】202011006700.3
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】520213274
【氏名又は名称】杭州孚亜科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hangzhou Fuya Science and Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 1109,1st Building,371 Mingxing rd.,Xiaoshan dist.,Hangzhou,Zhejiang,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黎 しん
(72)【発明者】
【氏名】趙 江宏
(72)【発明者】
【氏名】秦 杰
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2121892(KR,B1)
【文献】特開昭57-087562(JP,A)
【文献】特開昭62-018375(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0085889(KR,A)
【文献】実開昭50-108370(JP,U)
【文献】特開2018-177215(JP,A)
【文献】特開2019-034306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0012291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00- 1/04
B08B 5/00-13/00
B62D 57/00-57/04
E04G 23/00-23/08
H01L 31/04-31/06
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチロボットシステムであって、傾斜面移動機器及び搬送機器を備え、
前記傾斜面移動機器は、第1分割体、第2分割体、機能アセンブリを備え、前記機能アセンブリは、移動機構、可撓性接続装置、作業工具を備え、前記作業工具は前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられ、作業内容を実施するために用いられ、前記可撓性接続装置は前記第1分割体と前記第2分割体を接続して、前記第1分割体と前記第2分割体との間の距離を調節し、前記移動機構は前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられ、前記第1分割体及び/又は前記第2分割体を駆動して傾斜面上を移動させるために用いられ、前記第1分割体は傾斜面と接続及び分離するための吊り下げ機構を備え、
前記搬送機器は、移動機器本体及び機器ドッキング機構を備え、前記移動機器本体が空間を移動でき、前記機器ドッキング機構が前記移動機器本体に取り付けられ、前記傾斜面移動機器と前記搬送機器は、前記機器ドッキング機構を介して結合及び分離することができ、
前記機器ドッキング機構は、ブリッジプレート及びブリッジプレート調節機構を備え、前記ブリッジプレートが前記ブリッジプレート調節機構に取り付けられ、前記ブリッジプレート調節機構は、前記移動機器本体に取り付けられて、前記ブリッジプレートの位置及び姿勢を調節し、前記傾斜面移動機器は、傾斜面から前記ブリッジプレートに移動して前記搬送機器と互いに結合され、又は前記傾斜面移動機器は、前記ブリッジプレートから傾斜面に移動して、前記搬送機器と互いに分離される、ことを特徴とするマルチロボットシステム。
【請求項2】
前記傾斜面移動機器は、前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられ、前記第1分割体と前記第2分割体を互いに接続及び分離するための分割体接続機構をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチロボットシステム。
【請求項3】
前記可撓性接続装置は、ロープと、前記第1分割体と前記第2分割体との間の距離を変更して、前記ロープを緊張させたり弛緩させたりするロープ駆動機構とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチロボットシステム。
【請求項4】
前記ロープ駆動機構は、前記ロープを巻き取り及び巻き戻すことにより、前記第1分割体と前記第2分割体との間の前記ロープの長さを変更して、前記ロープを緊張させたり弛緩させたりするロープ巻き機構を備える、ことを特徴とする請求項3に記載のマルチロボットシステム。
【請求項5】
前記ロープ駆動機構は、前記第2分割体に設置されて前記第2分割体を駆動して前記ロープに沿って移動させるロープ登り機構を備える、ことを特徴とする請求項3に記載のマルチロボットシステム。
【請求項6】
前記機能アセンブリは、前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられて傾斜面に付着するための表面付着装置を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチロボットシステム。
【請求項7】
前記移動機器本体は、空中を飛行する飛行機器、又は地上を移動する車体、又は水上に浮かぶ船体である、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチロボットシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチロボットシステムの使用方法であって、
前記第1分割体及び/又は前記第2分割体、及び前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップi-1と、
前記第1分割体が傾斜面の指定位置に移動した後、前記第1分割体の前記吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップi-2と、
前記可撓性接続装置を介して、前記第1分割体と前記第2分割体との間の距離を調節し、前記第2分割体及び前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面上を移動し、同時に、前記作業工具が傾斜面で作業内容を実施するステップi-3と、
この回の作業内容が完了した後、前記第1分割体の前記吊り下げ機構は傾斜面と分離するステップi-4と、
上記ステップi-2~i-4を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続けるステップi-5と、
前記第1分割体及び/又は前記第2分割体、及び前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、前記傾斜面移動機器の傾斜面での作業を終了するステップi-6とを含む、ことを特徴とするマルチロボットシステムの使用方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチロボットシステムの使用方法であって、
作業者により、前記傾斜面移動機器を作業対象の傾斜面に搬送するステップii-1と、
前記第1分割体の前記吊り下げ機構を、作業者の補助により、傾斜面に接続するステップii-2と、
前記可撓性接続装置を介して、前記第1分割体と前記第2分割体との間の距離を調節し、前記第2分割体は傾斜面上を移動し、同時に、前記作業工具は傾斜面で作業内容を実施するステップii-3と、
この回の作業内容が完了した後、前記第1分割体の前記吊り下げ機構は作業者の補助により傾斜面と分離し、傾斜面から前記傾斜面移動機器を取り外すステップii-4と、
作業者により、前記傾斜面移動機器を別の作業対象の傾斜面に搬送し、上記ステップii-2~ii-4を繰り返すことにより、全ての傾斜面での作業内容が完了するまで次の回の作業内容を実施するステップii-5とを含む、ことを特徴とするマルチロボットシステムの使用方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチロボットシステムの使用方法であって、
前記第1分割体と前記第2分割体が一体として結合し、前記第1分割体、前記第2分割体、及び前記第1分割体と前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップiii-1と、
前記第1分割体、前記第2分割体、及び前記第1分割体と前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面の指定位置に移動し、前記第1分割体の前記吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップiii-2と、
前記第2分割体は前記第1分割体と互いに分離し、前記可撓性接続装置を介して、前記第1分割体と前記第2分割体との間の距離を調節し、前記第2分割体及び前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリは傾斜面上を移動し、同時に、前記作業工具は傾斜面で作業内容を実施するステップiii-3と、
この回の作業内容が完了した後、前記第1分割体と前記第2分割体が一体として結合し、前記吊り下げ機構は傾斜面と分離し、前記第1分割体及び/又は前記第2分割体、及び前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップiii-4と、
上記ステップiii-2~iii-4を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続けるステップiii-5と、
前記第1分割体及び/又は前記第2分割体、及び前記第1分割体及び/又は前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、前記傾斜面移動機器の傾斜面での作業を終了するステップiii-6とを含む、ことを特徴とするマルチロボットシステムの使用方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチロボットシステムの使用方法であって、
前記第1分割体及び前記第1分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面上を移動し、前記第2分割体及び前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面の下方に位置するステップiv-1と、
前記第1分割体は傾斜面の指定位置に移動し、前記第1分割体の前記吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップiv-2と、
前記可撓性接続装置を介して、前記第2分割体と前記第1分割体との間の距離を調節し、前記第2分割体及び前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリは傾斜面上を移動し、同時に、前記作業工具は傾斜面で作業内容を実施するステップiv-3と、
この回の作業内容が完了した後、前記第2分割体及び前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、前記可撓性接続装置は張力無しの弛緩状態にあり、前記第1分割体の前記吊り下げ機構が傾斜面と分離し、次に、前記第1分割体及び前記第1分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップiv-4と、
上記ステップiv-2~iv-4を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続けるステップiv-5と、
前記第1分割体及び前記第1分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、前記傾斜面移動機器の傾斜面での作業を終了するステップiv-6とを含む、ことを特徴とするマルチロボットシステムの使用方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチロボットシステムの使用方法であって、
前記傾斜面移動機器と前記搬送機器が前記機器ドッキング機構を介して互いに結合し、前記搬送機器が、前記傾斜面移動機器を作業対象の傾斜面に移送するステップv-1と、
前記傾斜面移動機器と前記搬送機器が前記機器ドッキング機構を介して互いに分離し、前記傾斜面移動機器が傾斜面上を移動するステップv-2と、
前記第1分割体が傾斜面のある指定位置に移動し、前記第1分割体の前記吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップv-3と、
前記可撓性接続装置により前記第1分割体と前記第2分割体との間の距離を調節し、前記第2分割体及び前記第2分割体に取り付けられた前記機能アセンブリが傾斜面上を移動し、同時に、前記作業工具が作業内容を実施するステップv-4と、
この回の作業内容が完了した後、表面付着装置と前記移動機構の一部又は全部を起動し、前記第1分割体の前記吊り下げ機構が傾斜面と分離し、前記傾斜面移動機器が傾斜面上を移動するステップv-5と、
上記ステップv-3~v-5を繰り返すことにより、傾斜面の異なる位置で次の回の作業内容を実施し、又は前記傾斜面移動機器と前記搬送機器が前記機器ドッキング機構を介して互いに結合し、前記搬送機器が前記傾斜面移動機器を別の傾斜面に移送し、上記ステップv-2~v-5を繰り返すことにより、全ての傾斜面での作業内容が完了するまで別の傾斜面で次の回の作業を実施するステップv-6とを含む、ことを特徴とするマルチロボットシステムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着技術応用の技術分野に属し、特に傾斜面移動機器及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの傾斜面では、いくつかの特定の作業内容を実施する必要があり、たとえば、建物の外壁面の表面亀裂検出、傾斜した太陽光発電パネルアレイの清掃などである。人件費の増加に伴って、これらの一定の危険性を伴う作業を完了するために、機器は徐々に作業者に取って代わっている。
【0003】
通常、壁登り機器に表面付着装置が取り付けられる。表面付着装置は、磁力技術(特許番号CN201910983947.1の特許に記載されている)、回転翼逆推力技術(特許番号CN201911117754.4の特許に記載されている)、負圧吸着技術(特許番号CN201910807463.1の特許に記載されている)などの方式で付着力を得て、壁登り機器が傾斜又は垂直な表面に付着して移動し、作業工具(たとえば、カメラ、探傷器、清掃工具など)を携帯して作業を実施することができるようにする。従来の壁登り機器は以下の欠点を有する。
(1)表面付着装置は壁登り機器のコア部材である。表面付着装置は常に作動状態にあり、安定した付着力を発生させる必要がある。安定した付着力がないと、壁登り機器は落下する。
(2)常に作動状態にある表面付着装置は大量のエネルギーを消費する。壁登り機器が作業表面上で停止しても、表面付着装置は常に作動していなければならない。壁登り機器が電池で給電される場合、電池の持続時間が大幅に短くなることが明らかである。
(3)表面付着装置が長時間作動すると、故障の発生率が大幅に増加する。たとえば、負圧吸着方式を採用した表面付着装置は、作動する時に外界の粉塵や異物を吸い込みやすい。粉塵や異物を長時間吸い込むと、真空ポンプの破損や真空管路の目詰まりを引き起こす。また、たとえば、電磁石吸着方式を採用した表面付着装置の場合、作動時に、電磁石が磁性粉塵(例えば、鉄さび、鉄屑)を吸着し、磁石で磁性粉塵がある程度蓄積すると、磁力が弱くなる。従って、表面付着装置は長時間作動すると、壁登り機器の落下の確率が高くなる。
(4)表面吸着装置が傾斜面上を広い範囲で移動すると、故障率が大幅に高くなる。たとえば、負圧吸着方式を採用した表面付着装置は、作動時に傾斜面上の粉塵や異物を吸い込む。明らかに、表面吸着装置の移動範囲が広いほど、吸い込まれる粉塵や異物の量は多くなり、真空ポンプの破損や真空管路の目詰まりを引き起こす恐れも高くなる。また、たとえば、電磁石吸着方式を採用した表面付着装置は、作動時に磁性粉塵(例えば、鉄さび、鉄屑)を吸着し、磁性粉塵が磁石である程度蓄積すると、磁力が弱くなる。明らかに、表面吸着装置の移動範囲が広いほど、表面付着装置に蓄積される磁性粉塵は多くなる。従って、表面付着装置が傾斜面上を広い範囲で移動すると、壁登り機器の落下の確率が高くなる。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、表面付着装置が断続的に作動し、小さい範囲で移動することを可能にし、構成が簡単で、使用しやすい傾斜面移動機器及びその使用方法を提供することである。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、第1分割体、第2分割体、機能アセンブリを備える傾斜面移動機器を提供し、前記機能アセンブリは、移動機構、可撓性接続装置、作業工具を備え、作業工具は第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられ、作業内容を実施するために用いられ、可撓性接続装置は第1分割体と第2分割体を接続して第1分割体と第2分割体との間の距離を調節し、移動機構は第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられ、第1分割体及び/又は第2分割体を駆動して傾斜面上を移動させるために用いられ、第1分割体は傾斜面と接続及び分離するための吊り下げ機構を備える。
【0006】
本発明において、傾斜面である表面と水平面との間の夾角は鈍角、直角又は鋭角であってもよい。
【0007】
さらに、第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられ、第1分割体と第2分割体を互いに接続及び分離するための分割体接続機構をさらに備える。
【0008】
さらに、可撓性締結装置は、ロープと、ロープを巻き取り及び巻き戻すためのロープ巻き機構とを備え、ロープ駆動機構は第1分割体と第2分割体との間の距離を変更して、ロープを緊張させたり弛緩させたりする。
【0009】
さらに、ロープ駆動機構は、ロープを巻き取り及び巻き戻すことにより第1分割体と第2分割体との間のロープの長さを変更して、ロープを緊張させたり弛緩させたりするロープ巻き機構を備える。
【0010】
さらに、ロープ駆動機構は、第2分割体に設置されて第2分割体を駆動してロープに沿って移動させるロープ登り機構を備える。
【0011】
さらに、前記機能アセンブリは、第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられて傾斜面に付着するための表面付着装置を備える。
【0012】
さらに、本発明は、上記傾斜面移動機器の使用方法を提供し、
第1分割体及び/又は第2分割体、及び第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップi-1と、
第1分割体が傾斜面の指定位置に移動した後、第1分割体の吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップi-2と、
可撓性接続装置を介して第1分割体と第2分割体との間の距離を調節し、第2分割体及び第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面上を移動し、同時に、作業工具が傾斜面で作業内容を実施するステップi-3と、
この回の作業内容が完了した後、第1分割体の吊り下げ機構が傾斜面と分離するステップi-4と、
上記ステップi-2~i-4を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続けるステップi-5と、
第1分割体及び/又は第2分割体、及び第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、傾斜面移動ロボットの傾斜面での作業を終了するステップi-6とを含む。
【0013】
さらに、本発明は、上記傾斜面移動機器の使用方法を提供し、
作業者により、傾斜面移動機器を作業対象の傾斜面に搬送するステップii-1と、
第1分割体の吊り下げ機構を、作業者の補助により、傾斜面に接続するステップii-2と、
可撓性接続装置を介して第1分割体と第2分割体との間の距離を調節し、第2分割体は傾斜面上を移動し、同時に、作業工具は傾斜面で作業内容を実施するステップii-3と、
この回の作業内容が完了した後、第1分割体の吊り下げ機構を、作業者の補助により傾斜面と分離し、傾斜面から傾斜面移動機器を取り外すステップii-4と、
作業者により、傾斜面移動機器を別の作業対象の傾斜面に搬送し、上記ステップii-2~ii-4を繰り返すことにより、全ての傾斜面での作業内容が完了するまで次の回の作業内容を実施するステップii-5とを含む。
【0014】
さらに、本発明は、上記傾斜面移動機器の使用方法を提供し、
第1分割体と第2分割体が一体として結合し、第1分割体、第2分割体、及び第1分割体と第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップiii-1と、
第1分割体、第2分割体、及び第1分割体と第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面の指定位置に移動し、第1分割体の吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップiii-2と、
第2分割体は第1分割体と互いに分離し、可撓性接続装置を介して第1分割体と第2分割体との間の距離を調節し、第2分割体及び第2分割体に取り付けられた機能アセンブリは傾斜面上を移動し、同時に、作業工具は傾斜面で作業内容を実施するステップiii-3と、
この回の作業内容が完了した後、第1分割体と第2分割体が一体として結合し、吊り下げ機構を傾斜面と分離し、第1分割体及び/又は第2分割体、及び第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップiii-4と、
上記ステップiii-2~iii-4を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続けるステップiii-5と、
第1分割体及び/又は第2分割体、及び第1分割体及び/又は第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、傾斜面移動ロボットの傾斜面での作業を終了するステップiii-6とを含む。
【0015】
さらに、本発明は、上記傾斜面移動機器の使用方法を提供し、
第1分割体及び第1分割体に取り付けられたアセンブリが傾斜面上を移動し、第2分割体及び第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面の下方に位置するステップiv-1と、
第1分割体は傾斜面の指定位置に移動し、第1分割体の吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップiv-2と、
可撓性接続装置を介して第2分割体と第1分割体との間の距離を調節し、第2分割体及び第2分割体に取り付けられた機能アセンブリは傾斜面上を移動し、同時に、作業工具は傾斜面で作業内容を実施するステップiv-3と、
この回の作業内容が完了した後、第2分割体及び第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、可撓性接続装置は張力無しの弛緩状態にあり、第1分割体の吊り下げ機構が傾斜面と分離し、次に第1分割体及び第1分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面上を移動するステップiv-4と、
上記ステップiv-2~iv-4を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続けるステップiv-5と、
第1分割体及び第1分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面の下方に移動し、傾斜面移動ロボットの傾斜面での作業を終了するステップiv-6とを含む。
【0016】
本発明は、上記傾斜面移動機器を備えるマルチロボットシステムをさらに提供し、さらに搬送機器を備え、前記搬送機器は移動機器本体及び機器ドッキング機構を備え、移動機器本体が空間を移動でき、機器ドッキング機構が移動機器本体に取り付けられ、前記傾斜面移動機器と搬送機器は、機器ドッキング機構を介して結合及び分離をすることができる。
【0017】
さらに、前記移動機器本体は、空中を飛行する飛行機器、又は地上を移動する車体、又は水上に浮かぶ船体である。
【0018】
さらに、前記機器ドッキング機構は、ブリッジプレート及びブリッジプレート調節機構を備え、ブリッジプレートがブリッジプレート調節機構に取り付けられ、ブリッジプレート調節機構は、前記移動機器本体に取り付けられてブリッジプレートの位置及び姿勢を調節し、前記傾斜面移動機器は、傾斜面からブリッジプレートに移動して搬送機器と互いに結合され、又は前記傾斜面移動機器は、ブリッジプレートから傾斜面に移動して搬送機器と互いに分離される。
【0019】
さらに、本発明は、上記マルチロボットシステムの使用方法を提供し、
傾斜面移動機器と搬送機器が機器ドッキング機構を介して互いに結合し、搬送機器が、傾斜面移動機器を作業対象の傾斜面に移送するステップv-1と、
傾斜面移動機器と搬送機器が機器ドッキング機構を介して互いに分離し、傾斜面移動機器が傾斜面上を移動するステップv-2と、
第1分割体が傾斜面のある指定位置に移動し、第1分割体の吊り下げ機構が傾斜面に接続するステップv-3と、
可撓性接続装置により第1分割体と第2分割体との間の距離を調節し、第2分割体及び第2分割体に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面上を移動し、同時に、作業工具が作業内容を実施するステップv-4と、
この回の作業内容が完了した後、表面付着装置と移動機構の一部又は全部を起動し、第1分割体の吊り下げ機構が傾斜面と分離し、傾斜面移動機器が傾斜面上を移動するステップv-5と、
上記ステップv-3~v-5を繰り返すことにより、傾斜面の異なる位置で次の回の作業内容を実施し、又は傾斜面移動機器と搬送機器が機器ドッキング機構を介して互いに結合し、搬送機器が傾斜面移動機器を別の傾斜面に移送し、上記ステップv-2~v-5を繰り返し、全ての傾斜面での作業内容が完了するまで別の傾斜面で次の回の作業を実施するステップv-6とを含む。
【0020】
従来技術に比べ、本発明の傾斜面移動機器及びその使用方法は以下の特徴を有する。
(1)吊り下げ機構は傾斜面と確実な固定接続の関係を形成し、傾斜面移動機器が故障した場合(たとえば、表面付着装置の故障、移動機構の故障、制御プログラムの故障、作業工具の故障など)でも、傾斜面移動機器を傾斜面に安全に吊り下げ続けることができ、落下することがない。
(2)吊り下げ機構が傾斜面と互いに接続される場合において、可撓性接続装置は、第2分割体と第2分割体に取り付けられた機能アセンブリの重力を平衡化することができ、従って、表面付着装置は、重力を平衡化するために、大きな吸着力を発生させる必要がない。傾斜面移動機器が作業を実施するプロセスにおいて、表面吸着装置は、作動停止状態又は低電力作動状態にすることができ、エネルギー消費量を大幅に削減できる。
(3)上記(2)のように、表面付着装置は、作動停止状態にすることができるため、作業時間を短縮でき、従って、表面付着装置の故障の発生率が大幅に低減し、耐用年数も大幅に延長される。
(4)傾斜面移動機器が、傾斜面を登って吊り下げ機構の配置及び回収を完了することができるため、操作者は地上で機器を操作するだけでよい。操作者は傾斜面に登っていかなる作業も行う必要がなく、それにより、操作者の高所での作業のリスクが完全に排除され、作業者の作業強度及び難しさも大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の傾斜面移動機器の実施例1の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器(第1分割体と第2分割体が結合した後)が傾斜面に吸着して移動する状態の概略図である。
図2図1の傾斜面移動機器の吊り下げ機構のフックが傾斜面の上縁に吊り下げられ、第1分割体と第2分割体が互いに分離する状態の概略図である。
図3】本発明の傾斜面移動機器の実施例2の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器の第1分割体が傾斜面に吸着して移動し、第2分割体は傾斜面の下の水平面に位置する状態の概略図である。
図4】本発明の傾斜面移動機器の実施例2の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器の吊り下げ機構のフックが傾斜面の上縁に吊り下げられ、第1分割体と第2分割体が全て傾斜面に位置する状態の概略図である。
図5】本発明の傾斜面移動機器の実施例3の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器が太陽光発電アセンブリの傾斜面に吸着して移動する状態の概略図である。
図6】本発明の傾斜面移動機器の実施例3の構造原理の平面概略図であり、図5におけるロープ挟持輪がロープを締め付ける概略図である。
図7】本発明の傾斜面移動機器の実施例4の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器が太陽光発電アセンブリの傾斜面で作業を行い、ロープ巻き機構が傾斜面の下方の平面に設置される状態の概略図である。
図8】本発明の傾斜面移動機器の実施例5の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器(第1分割体と第2分割体が結合した後)が太陽光発電アセンブリの傾斜面の対応する位置に位置して移動する状態の概略図である。
図9】本発明の傾斜面移動機器の実施例5の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器の吊り下げ機構のフックが太陽光発電アセンブリの傾斜面の上縁に吊り下げられ、第1分割体と第2分割体が互いに結合した状態の概略図である。
図10】本発明の傾斜面移動機器の実施例5の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器の吊り下げ機構のフックが太陽光発電アセンブリの傾斜面の上縁に吊り下げられ、第1分割体と第2分割体が互いに分離された状態の概略図である。
図11】本発明の傾斜面移動機器の実施例6の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器の第2分割体が太陽光発電アセンブリの傾斜面の下方の地上に位置し、作業者が長いロッドで吊り下げ機構のフックを太陽光発電アセンブリの傾斜面の上縁に吊り下げた状態の概略図である。
図12】本発明の傾斜面移動機器の実施例6の構造原理の平面概略図であり、傾斜面移動機器の第1分割体と第2分割体が一体に結合され、作業者が長いロッドで第2分割体を押し、吊り下げ機構のフックを太陽光発電アセンブリの傾斜面の上縁に吊り下げた状態の概略図である。
図13】本発明の傾斜面移動機器の実施例7の構造原理の平面概略図であり、搬送機器が傾斜面移動機器を太陽光発電アセンブリの傾斜面に移動し、傾斜面移動機器がブリッジプレートから傾斜面に移動するように準備する概略図である。
図14】本発明の傾斜面移動機器の実施例7の構造原理の平面概略図であり、太陽光発電アセンブリの傾斜面に位置する傾斜面移動機器が傾斜面からブリッジプレートに移動するように準備する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的手段及び有益な効果をより明瞭にするために、以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明を更に詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0023】
実施例1
図1及び図2を同時に参照して、本発明の傾斜面移動機器の構造及び使用方法の第1の実施例を示す。
【0024】
本発明の傾斜面移動機器は、第1分割体1、第2分割体2、機能アセンブリを備える。機能アセンブリは、表面付着装置3、移動機構4、可撓性接続装置、作業工具7を備える。可撓性接続装置は、ロープ5及びロープ駆動機構を備える。本実施例のロープ駆動機構は、ロープ5を巻き取り及び巻き戻すためのロープ巻き機構(図示せず)である。第1分割体1に吊り下げ機構が設けられる。本実施例の吊り下げ機構は回転可能なフック6を備え、フック6が傾斜面Pの上縁に引っ掛って、傾斜面Pと接続関係を形成する。
【0025】
第2分割体2に取り付けられた作業工具7は、傾斜面で作業内容を実施するために用いられる。表面付着装置3は第2分割体2に取り付けられ、傾斜面Pに付着するために用いられる。移動機構4は第2分割体2に取り付けられる。本実施例の移動機構4は第2分割体2に取り付けられた複数の駆動輪である。
【0026】
本発明において、移動機構4の上下移動が縦方向移動として定義され、地上に平行な移動(たとえば、傾斜面での左右移動又は前後移動)が横方向移動として定義される。
【0027】
第1分割体1と第2分割体2は可撓性接続装置を介して互いに接続される。ロープ巻き機構は第2分割体に取り付けられる。ロープ5の一端が第1分割体に接続され、ロープ5の他端がロープ巻き機構に接続される。ロープ巻き機構は、ロープの巻き取り及び巻き戻しにより、第1分割体1と第2分割体2との間の距離を変更して、ロープを緊張させたり弛緩させたりする。
【0028】
本発明は、上記のような傾斜面移動機器の第1の使用方法をさらに開示し、ステップ11~ステップ16を含む。
【0029】
ステップ11において、第1分割体1と第2分割体2は可撓性接続装置の締め付け作用により一体として結合し、第2分割体に取り付けられた表面付着装置3及び移動機構4を起動する。表面付着装置3は傾斜面Pに吸着する吸着力を発生し、吸着力により移動機構4と傾斜面Pとの間に摩擦力が生じ、摩擦力は、重力に抗して、第1分割体1、第2分割体2、及び第1分割体1と第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリを駆動して傾斜面P上を移動させる。
【0030】
ステップ12において、第1分割体1、第2分割体2、及び第1分割体1と第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリは、傾斜面Pの指定位置(吊り下げ機構のフック6の引っ掛けに便利な位置、たとえば、傾斜面Pにおける突起物、段差、シャックル、縁などの位置であり、本実施例では、指定位置は傾斜面Pの上縁である)に移動した後、吊り下げ機構のフック6が回転して傾斜面Pの上縁に引っ掛って、フック6は傾斜面Pと接続関係を形成する。
【0031】
ステップ13において、ロープ巻き機構によりロープを巻き戻し、第2分割体2と第1分割体1が互いに分離する。第2分割体2は、ロープ5の伸縮により傾斜面P上を縦方向に移動する。ロープ5は緊張状態にあり、ロープ5の張力は、第2分割体2に作用して、第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリの重力を平衡化する。この時、表面付着装置3の吸着力を低減させ、さらに表面付着装置3を完全に閉じても、傾斜面移動機器を傾斜面Pに安全に吊り下げることができ、落下することがない。本実施例では、作業工具7は傾斜面の表面状態を撮影するために用いられるビデオカメラである。ビデオカメラは、作動中に反力を生成せず、従って、表面付着装置3を完全に閉じてエネルギー消費量を削減し表面付着装置3を保護することができる。撮影プロセスの安定性を確保するために、表面付着装置3を起動して非常に小さい付着力を発生させてもよく、第2分割体2が傾斜面P上を移動する時に揺れることを回避することができる。
【0032】
ステップ14において、この回の作業内容が完了した後、ロープ巻き機構はロープ5を巻き上げ、第1分割体1と第2分割体2を一体として結合させ、表面付着装置3及び移動機構4を起動し、次に、フック6が回転して傾斜面Pの上縁と分離し、表面付着装置3及び移動機構4は、第1分割体1、第2分割体2、及び第1分割体1と第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリを駆動して傾斜面P上を移動させる。
【0033】
ステップ15において、上記ステップ12~14を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続ける。
【0034】
ステップ16において、第1分割体1、第2分割体2、及び第1分割体1と第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリは傾斜面Pの下方に移動し、傾斜面移動ロボットの傾斜面Pでの作業を終了する。
【0035】
本実施例では、可撓性接続装置は、可撓性ロープ5及びロープ巻き機構を利用して第1分割体1と第2分割体2を接続し、従来の機械的構造の接続に比べて、2つの分割体の間の接続が簡単でありながら非常に高い自由度を有することを確保し、第2分割体2の移動は剛性によって制限されず、また、可撓性ロープ5は、軽量で、小型であり、収納しやすい利点を有する。このような設計により、傾斜面移動機器の重量を大幅に低減させることができ、従って、もたらされた別の利点として、傾斜面移動機器は小さい吸着力で傾斜面Pに登ることができ、全体の出力を大幅に低減させる。
【0036】
実施例2
図3及び図4を同時に参照し、これは本発明の傾斜面移動機器の構造及び使用方法の第2の実施例を示す。
【0037】
本実施例では、第1分割体1に移動機構4及び表面付着装置3が取り付けられ、第2分割体2に移動機構4及び作業工具7が取り付けられる。第1分割体1に設置された移動機構4は駆動能力を有する主動輪を備え、第2分割体2に設置された移動機構4は、駆動能力を有さない従動輪であってもよく、駆動能力を有する主動輪であってもよい。吊り下げ機構は回転可能なフック6を備え、フック6が傾斜面Pの上縁に引っ掛って、傾斜面Pと接続関係を形成する。
【0038】
他の構造及び作用は実施例1と同じであり、繰り返し説明しない。
【0039】
本発明は、上記のような第2の傾斜面移動機器を使用した傾斜面移動機器の第2の使用方法をさらに開示し、ステップ21~ステップ26を含む。
【0040】
ステップ21において、第1分割体1に取り付けられた表面付着装置3及び移動機構4を起動し、第1分割体1及び第1分割体1に取り付けられた機能アセンブリを駆動して傾斜面P上を移動させ、第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリは傾斜面Pの下方にあり、ロープ巻き機構はロープを巻き戻し、ロープ5が張力無しの弛緩状態になるようにする。
【0041】
ステップ22において、第1分割体1が傾斜面の指定位置(吊り下げ機構のフック6の引っ掛けに便利な位置、たとえば、傾斜面Pにおける突起物、段差、シャックルなどの位置、本実施例では、指定位置は傾斜面Pの上縁である)に移動した後、吊り下げ機構のフック6が回転して傾斜面Pの上縁に引っ掛って、フック6は傾斜面Pと接続関係を形成する。次に、第1分割体1上の表面付着装置3を閉じる。
【0042】
ステップ23において、ロープ巻き機構はロープを巻き取り、ロープ5が緊張状態になるようにする。ロープ5は、張力を第2分割体2に加え、第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリの重力を平衡化し、第2分割体2を引っ張って傾斜面P上を移動させて作業内容を実施する。この時、第2分割体2に表面付着装置3が取り付けられなくても、第2分割体2を傾斜面Pに安全に吊り下げることができ、落下することがない。本実施例では、作業工具7は穿孔機であり、穿孔機は穿孔中で反力を生成し、従って、第2分割体2に表面付着装置3が取り付けられる作用により、吸着力を発生させ、反力を平衡化する。穿孔作業を実施する場合、第2分割体2上の表面付着装置3を起動して、穿孔による反力を抵抗するための吸着力を発生させる。穿孔作業を実施しない場合、エネルギー消費量を削減して表面付着装置3を保護するように、第2分割体2上の表面付着装置3を閉じる。
【0043】
ステップ24において、この回の作業内容が完了した後、第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリは傾斜面Pの下方に移動し、次に、ロープ巻き機構はロープを巻き戻し、ロープ5が張力無しの弛緩状態になるようにし、これにより、ロープ5は張力を第1分割体1に加えない。第1分割体1に取り付けられた表面付着装置3及び移動機構4を起動し、第1分割体1のフック6が回転して傾斜面Pの上縁と分離し、第1分割体1及び第1分割体1に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面P上を移動する。
【0044】
ステップ25において、上記ステップ22~24を繰り返すことにより次の回の作業内容を実施し続ける。
【0045】
ステップ26において、第1分割体1及び第1分割体1に取り付けられた機能アセンブリが傾斜面Pの下方に移動し、傾斜面移動ロボットの傾斜面での作業を終了する。
【0046】
実施例1に比べて、本実施例の傾斜面移動機器はさらに別の利点を有する。作業工具7が非常に重い場合、実施例1の第2分割体2は作業工具7を伴って傾斜面Pに登れない。そのため、本実施例では、先ず第1分割体1を傾斜面Pに登らせて吊り下げ機構を配置し、次に、第1分割体1に設けられた可撓性締結装置を介して第2分割体2及び作業工具7を引っ張りあげる。これにより、傾斜面移動機器の耐荷重能力及び作業能力を効果的に向上させることができる。
【0047】
実施例1及び実施例2では、吊り下げ機構は回転可能なフック6である。吊り下げ機構は、傾斜面P上の突起構造を套着できるカラーのような他の構造であってもよい。吊り下げ機構は、磁石又は真空吸盤のような吸着能力を有する機構であってもよく、吊り下げ機構は吸着作用により傾斜面に接続する。吊り下げ機構の磁石又は真空吸盤は常に吸着状態を維持する必要があるが、吸着位置は終始固定しており、つまり、磁石又は真空吸盤は傾斜面Pを広範囲に移動する必要がなく、それにより、磁石又は真空吸盤の傾斜面Pでの摩耗を回避して、粉塵や異物(たとえば、傾斜面P上の粉塵、鉄屑)の吸着量を低減させ、磁石又は真空吸盤の保護に有利である。
【0048】
実施例3
本実施例は実施例2の別の実施形態である。図5に示すように、ロープ駆動機構はロープ5に沿って移動可能なロープ登り機構(図示せず)である。ロープに沿って移動する機能を実現できる機構は様々である。たとえば、図6に示すように、ロープ登り機構は、第2分割体2に取り付けられた2つのロープ挟持輪8を備える。2つのロープ挟持輪8はロープ5を締め付けて、図6に示される方向に回転し、それにより、第2分割体2をロープ5に沿って上向きに移動させることができる。2つのロープ挟持輪8が逆方向に回転すると、第2分割体2はロープ5に沿って下向きに移動する。
【0049】
他の構造及び作用は実施例2と同じであり、繰り返し説明しない。
【0050】
実施例4
本実施例は実施例2の別の実施形態である。図7に示すように、ロープ巻き機構は傾斜面Pの下方に配置される。第1分割体1に滑車9が設けられる。ロープ5は滑車9を通ってロープ巻き機構10と第2分割体2とを接続する。ロープ巻き機構10は、ロープ5を巻き取り及び巻き戻すことにより第1分割体1と第2分割体2との間の距離を変更し、同時に、張力を第2分割体2に加えて、第2分割体2を駆動して傾斜面P上を移動させる。実施例2に比べ、本実施例は、ロープ巻き機構10が第2分割体2に取り付けられず、第2分割体2の重量を更に軽減し、作業者が第2分割体2を搬送及び回収する時の労働強度を低減させることに有利であるという優位性がある。
【0051】
他の構造及び作用は実施例2と同じであり、繰り返し説明しない。
【0052】
実施例5
図8図9及び図10を同時に参照し、本発明の傾斜面移動機器の構造及び使用方法の第5の実施例を示す。
【0053】
本実施例では、傾斜して設置された太陽光発電アセンブリアレイの清掃作業を例として、本発明をさらに詳細に説明する。太陽光発電所は野外の環境で建てられる。太陽光発電所は大量の太陽光発電アセンブリアレイで構成され、各太陽光発電アセンブリアレイは、並べられた10~20枚の太陽光発電パネルで構成される。太陽光発電アセンブリアレイの間は互いに接続せず、通常、太陽光発電アセンブリアレイの間に幅1~3メートルの道路がある。粉塵が太陽光発電アセンブリアレイに落ちて太陽光の効果的な照射を妨げ、光電変換効率に深刻な影響を与え、また、光の照射が不均一であるため、局所的な過熱が引き起こされてホットスポットが発生し、太陽光発電アセンブリを更に破壊する。空気中には多量の粉塵があるため、清掃した直後でも、太陽光発電アセンブリに粉塵が積もっている。従って、太陽光発電アセンブリを頻繁に清掃することは非常に必要である。
【0054】
現在、太陽光発電所の清掃作業はまだ主に人為的な清掃方式である。しかしながら、人為的清掃は様々な弊害(たとえば、人件費が高く、清掃効率が低く、清掃品質が不安定で、発電板を損傷しやすいなど)があるので、ロボット清掃が徐々に人為的清掃に取って代わっている。出願番号CN201711115056.1の特許出願は、太陽光発電アセンブリアレイの清掃機器を開示している。該清掃機器は、作業機器、縦方向走行レール、横方向走行レールを備える。作業機器は縦方向走行レールに設置され、縦方向走行レールは横方向走行レールを通って太陽光発電アセンブリアレイに設置される。作業機器は、縦方向走行レール及び横方向走行レールを介して、太陽光発電アセンブリアレイの表面を移動して、清掃、検出を実施するなどの作業内容を実現する。該特許技術には以下の問題がある。
【0055】
(1)縦方向走行レール、横方向走行レールが必要なため、装置全体の体積が大きく、重量が重くなり、その結果、取り付け及び取り外し作業がきつく複雑である。
(2)太陽光発電所は何百の太陽光発電アセンブリアレイを有し、各太陽光発電アセンブリアレイに1台の該発明の清掃機器を取り付けると、1つの太陽光発電所に対して何百の清掃装置を取り付ける必要があり、初期の投入コストが非常に高く、後期の運転メンテナンスコストも非常に高い。清掃装置の数を少なくするため、清掃装置を1つの太陽光発電アセンブリアレイから次の太陽光発電アセンブリアレイに人為的に搬送すれば、清掃装置の繰り返し使用率を向上させることはでき、それによって、清掃機器の数は減少する。しかしながら、清掃機器の体積が大きく、重量が重いので、取り付け及び取り外し作業がきつく複雑であり、時間がかかる。
【0056】
出願番号CN201810900530.Xの特許出願は、太陽光発電アセンブリアレイの清掃ロボットを開示している。該清掃ロボットの表面付着装置は負圧を生成し、ロボットを太陽光発電アセンブリの表面に吸着させて移動させ、清掃作業を実施することができる。表面付着装置が終始作動状態にあるので、エネルギー消費量が非常に高く、長時間の作動を維持するために、大容量の電池が必要である。大容量の電池を携帯するために、地上に電池搬送車を配置して、清掃ロボットに従って一緒に移動し、ケーブルを介して清掃ロボットに給電する必要がある。そして、表面付着装置が長時間作動すると、太陽光発電アセンブリの表面の粉塵や異物を吸い込む恐れがあり、その結果、真空ポンプの破損や真空管路の目詰まりを引き起こす。
【0057】
本実施例は、エネルギー消費量がより低く、より軽量で、より安全な太陽光発電アセンブリアレイ清掃用の傾斜面移動機器を提供し、本実施例では清掃移動機器と呼ばれる。該清掃移動機器は、第1分割体1、第2分割体2、機能アセンブリを備える。機能アセンブリは、表面付着装置3、移動機構4、可撓性接続装置のロープ5、及びロープ5を巻き取り及び巻き戻すためのロープ巻き機構(図示せず)を備える。第1分割体1はフック6である。表面付着装置3は真空吸盤であり、負圧を生成して太陽光発電アセンブリの表面に付着することができ、第2分割体2に取り付けられる。移動機構4も第2分割体2に取り付けられ、複数の全方向駆動輪であり、清掃機器が太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面P上を横方向及び縦方向に移動できるようにする。第1分割体1と第2分割体2は分割体接続機構を介して互いに一体として結合することができ、互いに分離することもできる。分割体接続機構は、スイングロッド11及び磁石12を備える。スイングロッド11は第2分割体2の前端に取り付けられ、磁石12はスイングロッド11の前端に取り付けられる。磁石12はフック6を引き付けることができる。ロープ5は第1分割体1と第2分割体2を接続する。ロープ巻き機構(図示せず)は第2分割体2に取り付けられる。ロープ5の一端がフック6に固定され、他端がロープ巻き機構に接続される。ロープ巻き機構は、ロープを巻き取り及び巻き戻すことにより、ロープ5の長さを変更して張力を発生させる。第2分割体2には、清掃作業用の柔らかい塵埃掻き取りストリップである作業工具7がさらに取り付けられる。移動機構4は第2分割体2を駆動して移動させ、更に柔らかい塵埃掻き取りストリップを駆動して移動させ、それにより、太陽光発電アセンブリの表面のほこりを除去することができる。作業工具7は、回転可能なブラシなどの他の工具であってもよい。第2分割体2には、太陽光発電アセンブリアレイの縁を検出するための複数の縁検出センサ13がさらに取り付けられる。清掃移動機器には、清掃移動機器の状態を促すためのアラーム(図示せず)がさらに取り付けられる。
【0058】
本発明は、該清掃移動機器の使用プロセスをさらに開示し、ステップ31~ステップ36を含む。
【0059】
ステップ31において、スイングロッド11の前端の磁石12がフック6を引き付け、すなわち、第1分割体1と第2分割体2は分割体接続機構を介して一体として結合し、作業者は清掃移動機器を太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面Pに配置する。第2分割体2に取り付けられる真空吸盤及び全方向駆動輪を起動する。真空吸盤は傾斜面Pを吸着する吸着力を発生し、吸着力により全方向駆動輪と傾斜面Pとの間に摩擦力が生じ、摩擦力は、重力に抗して、清掃移動機器を駆動して太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面P上を移動させる。
【0060】
ステップ32において、清掃移動機器が傾斜面Pの上縁に移動すると、縁検出センサ13が縁を検出し、移動機構は停止する。図9に示すように、スイングロッド11が下向きにスイングして、フック6をおろし、清掃移動機器が縦方向に下向きに移動することにより、フック6が太陽光発電アセンブリアレイの上縁に引っ掛って、真空吸盤が作動を停止する。
【0061】
ステップ33において、スイングロッド11は上向きにスイングして、磁石10とフック6を分離させ、すなわち、第2分割体2と第1分割体1が互いに分離する。第2分割体2はロープ5の伸縮により傾斜面P上を縦方向に移動する。ロープ5は緊張状態にあり、そして、張力を第2分割体2に加え、張力は第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリの重力を平衡化する。この時、表面付着装置3を閉じる。図10に示すように、第2分割体2の移動中、作業工具7が清掃作業を開始する。第2分割体2の移動機構4はさらに横方向に移動することができ、ロープ5を介してフック6を引っ張って横方向に移動させて、吊り下げ位置を変更することにより、傾斜面Pの平面全体で移動及び清掃作業を行うことができる。第2分割体2の縁検出センサ13により太陽光発電アセンブリアレイの縁を検出することができ、清掃移動機器が傾斜面Pから落下することを回避できる。
【0062】
ステップ34において、今回の清掃作業が完了した後、第2分割体2は上向きにフック6の近くまで移動し、スイングロッド11が下向きにスイングして、磁石12がフック6を引き付け、すなわち、第1分割体1と第2分割体2が一体として結合する。真空吸盤及び全方向駆動輪を起動し、次に、清掃ロボットは特定の距離で上向きに移動して、フック6を傾斜面Pの上縁から離間させ、続いて、フック6を回転して、傾斜面Pの上縁から完全に分離させる。清掃移動機器は傾斜面P上を移動する。
【0063】
ステップ35において、上記ステップ32~34を繰り返し、太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面の他の位置又は他の太陽光発電アセンブリアレイにおいて清掃作業内容を実施し続ける。
【0064】
ステップ36において、清掃移動機器が傾斜面Pの下方に移動し、清掃移動機器の傾斜面での作業を終了し、作業者は清掃移動機器を回収する。
【0065】
従来の太陽光発電アセンブリアレイの洗浄機器に比べ、本実施例の清掃移動機器は以下の優位性を有する。
【0066】
(1)フック6により、太陽光発電アセンブリアレイの上縁と確実な固定接続の関係が形成される。これにより、清掃移動機器が故障した場合(たとえば、真空吸盤の故障、全方向駆動輪の故障、制御プログラムの故障、作業工具の故障など)でも、清掃移動機器を太陽光発電アセンブリアレイに安全に吊り下げ続けることができ、落下することがない。
(2)真空吸盤は、清掃移動機器がフック6を配置及び回収するプロセスの間のみ起動される。従って、清掃移動機器が清掃作業を実施するプロセスで、真空吸盤は常に作動停止状態にあり、真空吸盤の作動時間が大幅に短縮され、全体のエネルギー消費量を大幅に低減させ、大容量、大重量の電池を必要とすることなく、長時間で作動することができ、また、真空吸盤3の故障の発生率を大幅に低減させ、耐用年数も大幅に延長させる。
(3)縦方向走行レールの代わりにロープ5を利用する。ロープ5の重量はほとんどゼロであり、また、ロープ巻き機構に巻き付けられる時に占める空間は非常に小さい。これにより、清掃移動機器が軽量で、小型になり、人為的搬送及び作業に有利である。軽量で、小型であるため、全方向駆動輪は清掃移動機器を駆動して横方向に移動させることができる。
(4)清掃移動機器はフック6の配置及び回収を完了することができ、操作者は、地上で機器を配置及び搬送するという簡単な操作を行うだけでよく、操作者の作業時間を大幅に短縮して、作業強度及び難しさを大幅に軽減する。
(5)作業者が清掃移動機器を配置し搬送する時間が短く、強度が小さいため、1人の作業者が複数台の清掃移動機器を同時に管理することができる。複数台の清掃移動機器が異なる太陽光発電アセンブリアレイで作業を実施する場合、作業を完了した清掃移動機器は作業者に信号を送信し、作業者は信号の指示に従って該清掃機器の所在位置に来て、該清掃機器を次の太陽光発電アセンブリアレイに移動し、清掃移動機器を起動した後、作業者はその場を離れることができる。従って、1人の作業者が複数の清掃移動機器を同時に管理するのに十分な時間及び体力を確保することができる。
【0067】
実施例6
図11及び図12を同時に参照し、本発明の傾斜面移動機器の構造及び使用方法の第6の実施例を示す。本実施例の傾斜面移動機器の構造と実施例5との相違点は、本実施例では、第1分割体1と傾斜面Pの接続及び分離が作業者によって実施されることである。
【0068】
また、太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面清掃を例とし、該清掃移動機器の使用プロセスはステップ41~ステップ46を含む。
【0069】
ステップ41において、作業者は清掃移動機器を作業対象の傾斜面Pの指定位置に搬送する。
【0070】
ステップ42において、図11に示すように、作業者は、一端に磁石12が取り付けられた長いロッド14を使用し、磁石12がフック6を引き付ける。作業者は、長いロッド14を利用してフック6を太陽光発電アセンブリアレイの上縁に移動し、フック6が太陽光発電アセンブリアレイの上縁から吊り上がるようにフックをおろす。作業者がフック6と傾斜面Pを接続するプロセスでは、第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリは傾斜面Pの下方に配置されており、ロープ巻き機構はロープを巻き戻して、ロープ5が終始弛緩状態にあるようにする。
【0071】
ステップ43において、ロープ巻き機構はロープ5を巻き上げ、第2分割体2はロープ5の伸縮により傾斜面P上を縦方向に移動する。ロープ5は緊張状態にあり、そして、張力を第2分割体2に加え、張力は第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリの重力を平衡化する。第2分割体2の移動中、作業工具7が清掃作業を開始する。第2分割体2の移動機構はさらに横方向に移動することができ、ロープ5を介してフックを引っ張って横方向に移動させ、吊り下げ位置を変更することにより、傾斜面Pの平面全体で移動し清掃作業を実施することができる。第2分割体2の縁検出センサ13により太陽光発電アセンブリアレイの縁を検出することができ、清掃移動機器が傾斜面から落下することを回避できる。
【0072】
ステップ44において、今回の清掃作業が完了した後、作業者は第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリを傾斜面Pの下方に配置し、次に、長いロッド14を利用してフック6を引き付けて傾斜面Pの上縁からフック6を取り外す。
【0073】
ステップ45において、作業者は清掃移動機器を傾斜面Pの他の位置に搬送して、上記ステップ42~ステップ44を繰り返すことにより、全ての傾斜面での作業内容が完了するまで次の回の清掃作業を実施する。
【0074】
図12は作業者がフック6を配置する別の種類の作業方法を示す。スイングロッド11の前端の磁石12はフック6を引き付け、すなわち、第1分割体1と第2分割体2は分割体接続機構を介して一体として結合し、作業者は清掃移動機器を太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面Pに配置する。次に、作業者は1本の長いロッド14を利用して清掃移動機器を支え、清掃移動機器を押して傾斜面Pに沿って上向きに移動させる。清掃移動機器が傾斜面Pの上縁に移動すると、スイングロッド11が下向きにスイングして、フック6をおろし、傾斜面Pと互いに接続する。今回の清掃作業が完了した後、作業者は再び長いロッド14を利用して清掃移動機器を支え、スイングロッド11が下向きにスイングして、磁石12がフック6を引き付けるようにし、次に、スイングロッド11が上向きにスイングして、フック6を傾斜面Pの上縁と分離する。清掃移動機器は下向きに移動し、作業者は清掃移動機器を回収して次の太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面に搬送する。
【0075】
実施例1~実施例5及び下記の実施例7では、第1分割体1の吊り下げ機構と傾斜面Pとの接続及び分離のプロセスは、作業者による外力の干渉を介さずに行われる。一方、本実施例では、第1分割体1の吊り下げ機構と傾斜面Pとの接続及び分離は、作業者の補助により行われる。作業者が1本の長いロッドを使用してフック6が傾斜面Pの上縁と接続及び分離することを補助する。人為的補助の方式は様々であり、たとえば、作業者が人字形はしごに立ってフック6を傾斜面Pに接続する。なお、ここでは個別に説明しない。
【0076】
作業者による外力の干渉のない実施例に比べ、本実施例の人為的補助の方式の利点は以下のとおりである。
【0077】
(1)清掃移動機器に表面付着装置を取り付ける必要がない。作業者は長いロッド14を利用してフック6と傾斜面Pの上縁との接続及び分離を実現するため、清掃移動機器は傾斜面P上を移動するために吸着力に依存する必要がなくなる。これは、清掃移動機器の重量、消費電力及びコストを更に削減することに有利である。
(2)人為的補助の方式は清掃移動機器の作業能力を高めることができる。たとえば、太陽光発電アセンブリアレイ上の頑固な汚れを洗浄するために、作業工具として、タンク、水噴射器及び高出力のブラシを備える必要がある。水噴射器はタンクの水を太陽光発電アセンブリの表面に噴射し、頑固な汚れを湿らせ、ブラシは迅速に回転して汚れを除去し、汚れを水流に伴って洗い流す。タンク、水噴射器及び高出力のブラシは、清掃移動機器の重量を大幅に増加させると同時に、表面が濡れるため車輪が滑る。その結果、清掃移動機器は傾斜した太陽光発電アセンブリアレイ上を移動することができず、実施例5のように太陽光発電アセンブリアレイの上縁に移動してフック6を配置する作動を完了することができない。この場合、人為的補助の方式でフック6を配置すれば、これらの問題をうまく解決することができる。
【0078】
実施例7
図8図9図10図13及び図14を同時に参照し、本発明の傾斜面移動機器の構造及び使用方法の第7の実施例を示す。図中の矢印で示される方向は清掃移動機器の移動方向である。
【0079】
前述の実施例では、操作者は清掃移動機器の搬送及び配置作業を完了する。本実施例は、人為的参加を必要としない解決手段を更に提案する。
【0080】
本実施例と実施例5及び実施例6との相違点は、本実施例のロボットシステムが清掃移動機器及び搬送機器を備えることである。搬送機器は、移動機器本体及び機器ドッキング機構を備える。移動機器は空間を移動でき、たとえば、空中を飛行する無人航空機、地上を移動する車体、又は水上に浮かぶ船体である。機器ドッキング機構は移動機器本体に取り付けられ、傾斜面移動機器が上記搬送機器と機器ドッキング機構を介して結合し分離することができる。本実施例では、移動機器本体は、一台の地上を移動できる巡航搬送車15である。ドッキング機構はブリッジプレート16及びブリッジプレート調節機構17を備える。ブリッジプレート調節機構17は巡航搬送車15に取り付けられ、ブリッジプレート16はブリッジプレート調節機構17に取り付けられる。ブリッジプレート調節機構17はブリッジプレート16の位置及び姿勢を調節することができる。他の構造及び機能は実施例5及び実施例6と同じであり、繰り返し説明しない。
【0081】
本実施例の傾斜面移動機器(すなわち、清掃移動機器)の使用方法は、ステップ51~ステップ56を含む。
【0082】
ステップ51において、清掃移動機器が搬送機器のブリッジプレート16に配置され、搬送機器は清掃移動機器を指定された太陽光発電アセンブリアレイに移送する。
【0083】
ステップ52において、搬送機器のブリッジプレート調節機構17は、ブリッジプレート16が太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面Pの下縁に接近して下縁と位置を合わせるように、ブリッジプレート16の位置及び姿勢を調節する。清掃移動機器はブリッジプレート16から傾斜面Pに移動すると同時に、清掃移動機器の真空吸盤を起動し、次に、清掃移動機器は傾斜面P上を移動する。
【0084】
ステップ53において、清掃移動機器が傾斜面Pの上縁に移動すると、縁検出センサ13が縁を検出し、移動機構4は停止する。図9に示すように、スイングロッド11が下向きにスイングして、フック6をおろし、清掃移動機器は縦方向に下向きに移動することにより、フック6が太陽光発電アセンブリアレイの上縁に引っ掛って、真空吸盤が作動を停止する。
【0085】
ステップ54において、スイングロッド11は上向きにスイングして、磁石12とフック6を分離させ、すなわち、第2分割体2と第1分割体1が互いに分離する。第2分割体2はロープ5の伸縮により傾斜面P上を縦方向に移動する。ロープ5は緊張状態にあり、また、張力を第2分割体2に加え、張力は第2分割体2及び第2分割体2に取り付けられた機能アセンブリの重力を平衡化する。この時、表面付着装置3を閉じる。図10に示すように、第2分割体2の移動中、作業工具7が清掃作業を開始する。第2分割体2の移動機構4はさらに横方向に移動することができ、ロープ5を介してフック6を引っ張って横方向に移動させ、吊り下げ位置を変更し、それにより、傾斜面P上で平面移動及び清掃作業を実施することができる。第2分割体2の縁検出センサ13は太陽光発電アセンブリアレイの縁を検出することができ、清掃移動機器が傾斜面から落下することを回避できる。
【0086】
ステップ55において、今回の清掃作業が完了した後、第2分割体2は上向きにフック6の近くまで移動し、スイングロッド11が下向きにスイングして、磁石12がフック6を引き付け、すなわち、第1分割体1と第2分割体2が一体として結合する。真空吸盤及び全方向駆動輪を起動し、次に、清掃移動機器は特定の距離で上向きに移動して、フック6を傾斜面Pの上縁から離間させ、続いて、フック6を回転して、傾斜面Pの上縁から完全に分離させる。清掃移動機器は傾斜面P上を移動する。
【0087】
ステップ56において、上記ステップ53~55を繰り返すことにより、傾斜面Pの異なる位置で次の回の清掃作業を実施する。又は清掃移動ロボットが搬送機器に指令信号を送信し、搬送機器が指令信号を受信した後、衛星測位システムの指導で清掃移動ロボットの所在する傾斜面Pの下方に移動し、搬送機器のブリッジプレート調節機構17は、ブリッジプレート16が太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面Pの下縁に接近して下縁と位置を合わせるように、ブリッジプレート16の位置及び姿勢を調節する。清掃移動機器は傾斜面Pからブリッジプレート16に移動し、次に、真空吸盤を閉じ、続いて、上記ステップ52~55を繰り返し、全ての傾斜面での作業内容が完了するまで、別の太陽光発電アセンブリアレイの傾斜面Pで次の回の清掃作業を実施する。
【0088】
実施例5及び実施例6に比べ、本実施例の清掃移動機器は以下の優位性を有する。
【0089】
(1)作業者の補助を必要とせず、太陽光発電所の自動化の清掃を実現する。
(2)巡航搬送車15は、清掃移動機器の清掃作業のプロセスに参加する必要がなく、清掃移動機器との間に接続ケーブルがなく、従って、一対多(すなわち、1台の巡航搬送車15が複数台の清掃移動機器に対応する)のシステムを構築することができ、巡航搬送車15の使用率を向上させ、巡航搬送車15の配置の数を減少させ、これにより、コストを削減し、後期のメンテナンス作業を軽減することに有利である。
【0090】
以上の内容は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の精神及び原則内で行われたいかなる修正、同等置換及び改良などは、いずれも本発明の特許範囲内に属すべきである。
図1
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