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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】毛髪処理剤、及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20230330BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20230330BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/365
A61Q5/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018235304
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097530
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】317016257
【氏名又は名称】清水 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡子
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515533(JP,A)
【文献】特開2019-031451(JP,A)
【文献】特開2005-213196(JP,A)
【文献】特開2013-028564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪に対してパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すための毛髪処理剤であって、
水、及び塩基性アミノ酸のみを含有し、還元剤を含有しない第1剤と、
水、及び有機酸を含有し、酸化剤を含有しない第2剤と、
を含
前記第2剤は、前記第1剤の処理後の前記毛髪に塗布される、毛髪処理剤。
【請求項2】
前記第1剤中、前記水はアルカリ性電解水を含有する、請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の毛髪処理剤を用いてパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を毛髪に施す方法であって、
前記第1剤を毛髪に塗布することと、
前記第1剤で前記毛髪を処理することと、
前記第1剤の処理後の前記毛髪に前記第2剤を塗布することと、
を含む、毛髪処理方法。
【請求項4】
前記第1剤の塗布後で、前記第2剤の塗布前に、前記毛髪を、促進機を用いて加熱する、請求項に記載の毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤、及び毛髪処理方法に関する。より詳細には、毛髪にパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すことに適した毛髪処理剤、及び毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーマネントウェーブにより毛髪にウェーブ形状を付与し、この形状を長期間維持させることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、チオグリコール酸等の還元剤、及びアンモニア等のアルカリ剤を含有する第1剤と、臭素酸塩等の酸化剤を含有し、pHが4.5以上8.0以下の酸化剤組成物からなる第2剤とを用いて、毛髪にパーマネントウェーブ処理によるウェーブ形状を付与することが提案されている。また、特許文献1によれば、第1剤中の還元剤が毛髪のジスルフィド結合を切断し、第2剤中の酸化剤が毛髪内でジスルフィド結合を再形成させることが記載されている。
【0004】
しかし、酸化剤でジスルフィド結合を再形成させた場合、毛髪中のシステイン残基が酸化剤により酸化されてシスチン酸(システイン酸ともいう)が生成されやすくなる。そして、このシスチン酸により、毛髪の指通りをはじめとする感触が低下されやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-129198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、処理時に毛髪中のジスルフィド結合を切断させることなく、さらにジスルフィド結合を再形成さなくても、毛髪にパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すことができる毛髪処理剤、及び毛髪処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る毛髪処理剤は、毛髪に対してパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すための毛髪処理剤であって、水、及び塩基性アミノ酸を含有する第1剤と、水、及び有機酸を含有する第2剤と、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係る毛髪処理剤において、前記第1剤は還元剤を含有せず、第2剤は酸化剤を含有しない、ことが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る毛髪処理剤において、前記第1剤中、前記水はアルカリ性電解水を含有する、ことが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る毛髪処理方法は、前記毛髪処理剤を用いてパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を毛髪に施す方法であって、前記第1剤を毛髪に塗布することと、前記第1剤で前記毛髪を処理することと、第1剤の処理後の前記毛髪に第2剤を塗布することと、を含む。
【0011】
本発明の一態様に係る毛髪処理方法において、前記第1剤の塗布後で、前記第2剤の塗布前に、前記毛髪を、促進機を用いて加熱する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理時に毛髪中のジスルフィド結合を切断させることなく、さらにジスルフィド結合を再形成さなくても、毛髪にパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例10~11及び15~16、並びに比較例3~5の各々において、パーマネントウェーブが施された黒髪毛束を垂下させた状態を示す写真である。
図2図2は、実施例24及び比較例7の結果を示す写真である。
図3図3は、実施例25及び比較例8において、縮毛矯正前後の毛髪を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、一実施形態に係る毛髪処理剤を説明する。
【0015】
(毛髪処理剤)
本実施形態に係る毛髪処理剤は、毛髪に対してパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すための処理剤であり、第1剤と、第2剤とを含む。この第1剤と、第2剤とは独立しているため、毛髪処理剤は多剤式の処理剤である。また、第2剤は、第1剤を毛髪に塗布した後に、用いられる。
【0016】
第1剤は、水、及び塩基性アミノ酸を含有する。第2剤は、水、及び有機酸を含有する。
【0017】
このような第1剤、及び第2剤を毛髪処理剤が含むことで、毛髪にパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すことができる。具体的には、第1剤で毛髪中のジスルフィド結合を切断させることなく、さらに第2剤でジスルフィド結合を再形成さなくても、毛髪にパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を施すことができる。
【0018】
第1剤中の水としては、例えば、アルカリ性電解水、イオン交換水、蒸留水、逆浸透水、電子水、及び超純水が挙げられる。これらのうち、1又は2種以上を組み合わせてもよい。この場合、水はアルカリ性電解水を含有することが好ましく、水はアルカリ性電解水であることがより好ましい。
【0019】
逆浸透水は、水道水等の原水に浸透圧よりも大きな圧力を加えることで、この原水中の水分を逆浸透膜を通過させた処理水である。この逆浸透水を作製するにあたって、任意の逆浸透膜を採用できる。電子水とは、備長炭等を用いた静電誘導により、水道水等の水を構成する水分子を振動させて水分子同士が水素結合で結びついた集合体(水クラスター)を小さくさせると共に、水中のマイナスイオン濃度を高めた処理水である。
【0020】
超純水は、有機体炭素、微粒子、生菌、及びシリカ成分等の不純物を、例えば水温25℃のときの比抵抗が18MΩcm程度になるまで除去させた処理水である。
【0021】
水がアルカリ性電解水を含有する場合、このアルカリ性電解水は、イオン交換水、蒸留水、逆浸透水、及び超純水等の一次処理水中の水素イオンを還元させて水素ガスを発生させることで、水酸化物イオン濃度が高められた二次処理水である。
【0022】
アルカリ性電解水を作製する際、例えば、JIS T 2004に準拠した電解水生成器を採用するか、或いは還元性のセラミックスボールを採用できる。
【0023】
還元性セラミックスボールを用いる場合、活性炭と、水道水とを混合し、その後、この混合物を放置して予備処理水を作製する。予備処理水を作製するにあたって、混合物の放置時間は、例えば、10時間以上20時間以下の範囲内である。また、活性炭の量は、例えば、1Lの水道水に対して、100g以上300g以下の範囲内である。次に、珪藻土と、濾紙とで、予備処理水から活性炭を濾別させることで一次処理水を作製する。この一次処理水を、還元性セラミックスボールが充填されたカラムを備える装置内で循環させることにより、循環時に一次処理水中の水素イオンを還元性セラミックスボールで還元させて水素ガスを発生させることで、水酸化物イオン濃度が高められた二次処理水が製造される。一次処理水の循環時間は、例えば、100時間以上150時間の範囲内である。
【0024】
アルカリ性電解水のpHは、7.5以上12.5以下の範囲内であることが好ましい。また、アルカリ性電解水は、アンモニア、モノエタノールアミン、苛性アルカリ等のアルカリ剤を含有しない。すなわち、第1剤はアルカリ剤を含有しない。この場合、処理後の毛髪中にアルカリ剤が残留しなくなるため、処理後に再乾燥させた毛髪においてキューティクルが開いたままにさせにくくできる。これにより、きしみ、及びパサつき等の抵抗感のある感触を毛髪に生じさせにくくできる。
【0025】
毛髪中のタンパク質は、その一部のアミノ酸残基として塩基性アミノ酸を含有する。このため、第1剤が塩基性アミノ酸を含有しても、この塩基性アミノ酸は、抵抗感のある感触に関与しないと考えられる。このため、塩基性アミノ酸はアルカリ剤に含まれない。
【0026】
塩基性アミノ酸として、例えば、オルニチン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、及びトリプトファンが挙げられる。これらの成分のうち、1種又は2種以上の成分を第1剤は含有できる。特に、第1剤は、アルギニンを含有することが好ましい。
【0027】
塩基性アミノ酸の含有量は、好ましくは、第1剤の全量に対して、1質量部以上25質量部未満の範囲内である。塩基性アミノ酸の含有量が25質量部以上である場合、第1剤中で塩基性アミノ酸が析出しやすくなる。塩基性アミノ酸の含有量は、より好ましくは20質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以下である。また、塩基性アミノ酸の含有量は、8質量部以上であってもよい。
【0028】
また、第1剤は還元剤を含有しない。この場合、第1剤が還元剤を含有しなくても、第1剤は毛髪を軟化させることができる。具体的には、第1剤は、毛髪中のジスルフィド結合を切断しなくても、毛髪を軟化させることができる。また、一般的なパーマネント処理では、ジスルフィド結合を切断するために、システインを還元剤として用いる場合がある。このため、第1剤は、システインを含有しない。
【0029】
第1剤が毛髪を膨潤、軟化させることで、この毛髪に形状を付与したときに、ジスルフィド結合を切断しなくても、この形状に応じてコルテックス等の毛髪中組織が毛髪内で移動しやすくなると考えられる。特に第1剤が塩基性アミノ酸を含有することで、第1剤が塗布された毛髪の水分量を高めることができる。また、この毛髪に水と塩基性アミノ酸とが浸透しているため、毛髪内部は塩基性になる。
【0030】
第1剤は、その塗布により毛髪を膨潤、軟化させることができれば、任意の化粧用賦形剤を含有できる。この化粧用賦形剤として、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、水溶性高分子、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、タンパク質、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、及び香料が挙げられる。
【0031】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキロールアミド、高級脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物、及びポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステルが挙げられる。
【0032】
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、及びセチルトリメチルアンモニウムサッカリンが挙げられる。
【0033】
アニオン界面活性剤として、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、N-アシルグルタミン酸塩、及び高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩が挙げられる。
【0034】
脂肪酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、及びラノリン脂肪酸イソステアリルが挙げられる。
【0035】
油脂としては、例えば、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、パーシック油、ククイナッツ油、月見草油、ハイオレイックヒマワリ油、メドウホーム油、へーゼルナッツ油、ピスタシオ種子油、及びホホバ油が挙げられる。
【0036】
シリコーンとして、例えば、ジメチコン、フェニルジメチコン、アモジメチコン、アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン共重合体、ジメチコノール、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びPCAジメチコンが挙げられる。
【0037】
水溶性高分子として、例えば、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、フコダイン、及びデンプン等の植物性高分子;デキストラン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、及びゼラチン等の動物性高分子;カルボキシメチルデンプン、及びメチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン誘導体高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体高分子;低分子馬プラセンタ;並びにヒアルロン酸及びその塩が挙げられる。
【0038】
多価アルコールとして、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等の二価アルコール;並びにグリセリン等の三価アルコールが挙げられる。
【0039】
高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、及びベヘニルアルコール等の直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコール等の直鎖状不飽和アルコール;並びにヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、及びイソステアリルアルコール等の分枝飽和アルコールが挙げられる。
【0040】
第1剤が化粧用賦形剤を含有しない場合、第1剤は、水、及び塩基性アミノ酸のみを含有してもよい。
【0041】
また、第2剤は、上記の通り、水、及び有機酸を含有する。
【0042】
水としては、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水、逆浸透水、及び超純水が挙げられる。これらのうち、1又は2種以上を組み合わせてもよい。第2剤中の水は、第1剤中の水と同じであってもよい。また、第1剤がアルカリ性電解水を含有する場合、第2剤中の水は、第1剤中の水と異なる。すなわち、第2剤はアルカリ性電解水を含有しない。これにより、第2剤の中で、有機酸をアルカリ性電解水で中和させにくくできるため、未使用時に有機酸を安定に保つことができる。
【0043】
有機酸は、第1剤により塩基性となった毛髪内部を酸性化させる成分である。このような有機酸として、例えば、乳酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びコハク酸が挙げられる。これらの成分のうち、1種又は2種以上の成分を有機酸は含有できる。有機酸はクエン酸を含有することが好ましく、有機酸はクエン酸であることがより好ましい。
【0044】
第2剤が有機酸を含有することで、第1剤で膨潤された毛髪を、この有機酸で収縮させることができる。これにより、第1剤が塗布された毛髪に形状を付与した後、第2剤を毛髪に塗布することで、この形状を維持させやすくできる。
【0045】
有機酸の含有量は、好ましくは、第2剤の全量に対して、3質量部以上25質量部以下の範囲内である。有機酸の含有量が3質量部以上である場合、毛髪を収縮させることができる。また、有機酸の含有量が25質量部以下である場合、処理後の毛髪内部を酸性にさせると共に毛髪を硬くさせることができる。
【0046】
また、第2剤は、過酸化水素、及び臭素酸塩等の酸化剤を含有しない。このように第2剤が酸化剤を含有しなくても、第1剤で膨潤された毛髪を、第2剤で収縮させることができる。
【0047】
第2剤は、その塗布により毛髪を収縮させることができれば、任意の化粧用賦形剤を含有できる。この化粧用賦形剤は、第1剤の化粧用賦形剤と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。第2剤が含有できる化粧用賦形剤として、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、水溶性高分子、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、タンパク質、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、及び香料が挙げられる。
【0048】
また、第2剤が化粧用賦形剤を含有しない場合、第2剤は、水、及び有機酸のみを含有してもよい。
【0049】
次に、一実施形態に係る毛髪処理方法について説明する。
【0050】
(毛髪処理方法)
本実施形態に係る毛髪処理方法は、上記の毛髪処理剤を用いてパーマネントウェーブ、又は縮毛矯正を毛髪に施す方法である。このため、本実施形態は、毛髪処理剤の詳細な説明を参照できる。
【0051】
毛髪処理方法は、第1剤を毛髪に塗布することと、第1剤で毛髪を処理すること、第1剤を洗い流すことと、第1剤が洗い流された毛髪に第2剤を塗布することと、を含む。
【0052】
第1剤を毛髪に塗布するにあたって、刷毛、及びアプリケータ等の任意の理美容用塗布具を採用できる。理美容用塗布具が刷毛である場合、この刷毛で第1剤を毛髪に塗布し、この塗布された第1剤をコームで塗り広げることができる。また、理美容用塗布具がアプリケータである場合、このアプリケータ内の第1剤を毛髪に塗布し、この塗布された第1剤をコームで塗り広げることができる。ただし、第1剤を塗り広げることができれば、コームを用いた態様に限定されない。毛髪に塗布された第1剤を、例えば、指に挟んで塗り広げることができる。
【0053】
ここで、毛髪に縮毛矯正を施す場合、第1剤が塗布された毛髪を、例えば、金属フィルム、及び樹脂フィルム等のフィルム材に挟んで放置するか、又はフィルム材の上に静置させる。また、毛髪にパーマネントウェーブを施す場合、第1剤の塗布前に毛髪をパーマ用ロッドに巻き付けてもよく、又は第1剤の塗布後に毛髪をパーマ用ロッドに巻き付けてもよい。毛髪をロッドに巻き付けた後に第1剤を塗布する場合、アプリケータで第1剤を塗布しながら、この第1剤を毛髪間に馴染ませる。このようにしてロッドに巻き付けられ、かつ第1剤が塗布された毛髪を、この状態で放置する。ロッドの直径は、パーマネントウェーブの形状に応じて、任意に選択できる。
【0054】
第1剤の塗布後、第1剤が塗布された状態の毛髪を、室温で処理してもよく、又は促進機を用いて加熱して処理してもよい。この場合、第1剤の塗布と、第1剤による処理とが連続して行われる。これにより、毛髪を第1剤で膨潤、軟化させると共に毛髪に形状を付与することができる。また、第1剤の塗布と、第1剤による処理とが連続して行われるため、第1剤の処理時間は、第1剤の塗布開始から毛髪が十分に軟化するまでの時間とする。第1剤の処理時間は、毛髪の軟化状態に応じて適宜に調節できる。毛髪の処理時間は、例えば、3分以上20分以下の範囲内である。
【0055】
毛髪を加熱する方法として、例えば、毛髪にパーマネントウェーブを施す場合、ドライヒータ、スチームヒータ、及びデジタルパーマ機等の促進機を用い、ロッドに巻き付けられた毛髪を加熱する。このような促進機のうち、デジタルパーマ機を用いることが好ましい。デジタルパーマ機は、その設定温度でロッドを発熱させるため、十分なパーマネントウェーブが得られやすい。また、毛髪に縮毛矯正を施す場合、ドライヒータ、スチームヒータ、及びヘアアイロン等の促進機を用い、毛髪を加熱する。このような促進機のうち、ヘアアイロンは、公知の縮毛矯正で採用されるヘアアイロンである。また、縮毛矯正で促進機を用いる場合、毛髪はロッドに巻き付けられていない。このような縮毛矯正では、毛髪を少なくとも2回加熱する。1回目の加熱(第1加熱)では、第1剤が付着したままで毛髪を加熱装置で加熱する。また縮毛矯正では、第1加熱の前に、毛髪の第1剤を流水で洗い流さない。
【0056】
第1剤の処理中、毛髪の加熱温度は、毛髪の軟化状態に応じて適宜に調節できる。毛髪の加熱温度は、例えば、60℃以上150℃以下の範囲内である。パーマネントウェーブの加熱温度は、例えば、60℃以上100℃以下の範囲である。また、縮毛矯正における第1加熱の加熱温度は、例えば、60℃以上150℃以下の範囲である。第1加熱の加熱時間は、例えば、1分間以上20分間以下の範囲内である。
【0057】
第1剤の処理後、この第1剤を流水で洗い流す。例えば、毛髪にパーマネントウェーブを施す場合、毛髪をパーマ用ロッドに巻き付けた状態で第1剤を洗い流す。この場合、公知のパーマネントウェーブ等と同様の手順で第1剤を洗い流す。洗髪後、公知のヘアドライヤで毛髪を乾燥させる。また、縮毛矯正の場合、第1加熱後、毛髪の第1剤を流水で洗い流す(流水リンス)。流水リンス後、毛髪に付着した水分をタオル等で粗く取り除く。その後、毛髪をヘアアイロンで再度加熱する(第2加熱)。このような縮毛矯正では、第2加熱の前に、流水リンスにより水分が付着した毛髪をドライヤ等で粗く乾燥(ハーフドライ)させてもよい。第2加熱の加熱温度は、縮毛矯正の程度に応じて適宜に調節できる。第2加熱の加熱温度は、例えば、100℃以上200℃以下の範囲である。第2加熱の加熱温度は、縮毛の、程度、量、及び長さなどに応じて任意に設定される。このため、本実施形態では、第2加熱の加熱温度は特に限定されない。
【0058】
次に、加熱された毛髪に第2剤を塗布する。そして、第2剤が塗布された状態のまま放置させる。これにより、第1剤で膨潤された毛髪を、第2剤中の有機酸で収縮させることができるため、加熱時に付与された形状を維持させやすくできる。第2剤を塗布するにあたって、刷毛、及びアプリケータ等の任意の理美容用塗布具を採用できる。例えば、毛髪にパーマネントウェーブを施す場合、毛髪がロッドに巻き付けた状態のまま、この毛髪にアプリケータで第2剤を塗布する。そして、第2剤が塗布された状態を放置させる。また、毛髪に縮毛矯正を施す場合、毛髪に理美容用塗布具で第2剤を塗布し、この塗布された第2剤をコーム等で塗り広げる。このようにして毛髪に第2剤が塗布された状態を放置させる。
【0059】
第2剤が塗布された毛髪の放置時間は、特に限定されることなく、毛髪の硬さに応じて適宜に調節できる。毛髪の放置時間は、例えば、5分以上15分以下の範囲内に調節できる。
【0060】
第2剤の処理後、公知のパーマネントウェーブ等と同様の手順で洗髪して第2剤を洗い流す。洗髪後、公知のヘアドライヤで毛髪を乾燥させる。
【0061】
また、本実施形態に係る毛髪処理方法では、第1剤の塗布前に公知のパーマネントウェーブ用前処理剤が用いられてもよく、第2剤を洗い流した後に公知のパーマネントウェーブ用後処理剤を用いられてもよい。
【実施例
【0062】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。ただし、この実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。
【0063】
<アルカリ性電解水の調製>
1Lの水道水に対して100gの活性炭を用意した。そして、活性炭と、水道水とを容量3Lの容器内で混合し、その後、この混合物を容器内で10時間放置して予備処理水を作製した。この予備処理水から、珪藻土と、濾紙とにより活性炭を濾別させることにより、一次処理水を作製した。そして、この一次処理水を、還元性セラミックスボールが充填されたカラム(コム・ラボ有限会社製)を備える装置内で120時間循環させることにより、pH10のアルカリ性電解水が調整された。このアルカリ性電解水を用いて、下記の手順で第1剤を調製した。
【0064】
<第1剤の調製>
{第1剤1-A}
水として97質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として3質量部のアルギニンと、を秤量した。そして、アルカリ性電解水と、アルギニンとを混合し、アルギニンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Aとした。
【0065】
{第1剤1-B}
水として95質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として5質量部のアルギニンと、を秤量した。これ以降は、第1剤1-Aと同様にして、アルギニンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Bとした。
【0066】
{第1剤1-C}
水として92質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として8質量部のアルギニンと、を秤量した。これ以降は、第1剤1-Aと同様にして、アルギニンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Cとした。
【0067】
{第1剤1-D}
水として90質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として10質量部のアルギニンと、を秤量した。これ以降は、第1剤1-Aと同様にして、アルギニンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Dとした。
【0068】
{第1剤1-E}
水として85質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として15質量部のアルギニンと、を秤量した。これ以降は、第1剤1-Aと同様にして、アルギニンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Eとした。
【0069】
{第1剤1-F}
水として80質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として20質量部のアルギニンと、を秤量した。これ以降は、第1剤1-Aと同様にして、アルギニンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Fとした。
【0070】
{第1剤1-G}
水として90質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として10質量部のリシンと、を秤量した。そして、アルカリ性電解水と、リシンとを混合し、リシンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Gとした。
【0071】
{第1剤1-H}
水として80質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として20質量部のリシンと、を秤量した。これ以降は、第1剤1-Gと同様にして、リシンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Hとした。
【0072】
{第1剤1-I}
水として90質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として10質量部のオルニチンと、を秤量した。そして、アルカリ性電解水と、オルニチンとを混合し、オルニチンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Iとした。
【0073】
{第1剤1-J}
水として100質量部のアルカリ性電解水を秤量した。このアルカリ性電解水を第1剤1-Jとした。
【0074】
{第1剤1-K}
水として75質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として25質量部のアルギニンと、を秤量した。これ以降は、第1剤1-Aと同様にして、アルギニンをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Kとした。
【0075】
{第1剤1-L}
チオグリコール酸を含有する第1剤(株式会社ダリヤ製ベネゼルウェーブパーマ液の1剤)を第1剤1-Lとして用いた。
【0076】
{第1剤1-M}
水として85質量部のアルカリ性電解水と、塩基性アミノ酸として10質量部のアルギニンと、5質量部のフコダインと、を秤量した。そして、アルカリ性電解水と、アルギニンと、フコダインとを混合し、アルギニンと、フコダインとをアルカリ性電解水に溶解させた。この溶液を第1剤1-Mとした。
【0077】
<第2剤の調製>
{第2剤2-A}
水として75質量部の水道水と、有機酸として25質量部のクエン酸と、を秤量した。そして、水道水と、クエン酸とを混合し、クエン酸を水道水に溶解させた。この溶液を第2剤2-Aとした。
【0078】
{第2剤2-B}
水として99質量部の水道水と、有機酸として1質量部のクエン酸と、を秤量した。これ以降は、第2剤2-Aと同様にして、クエン酸を水道水に溶解させた。この溶液を第2剤2-Bとした。
【0079】
{第2剤2-C}
過酸化水素を含有する第2剤(株式会社ダリヤ製ベネゼルウェーブパーマ液の2剤)を第2剤2-Cとして用いた。
【0080】
{第2剤2-D}
水として85質量部の水道水と、有機酸として10質量部のクエン酸と、5質量部のシルクパウダー(加悦総合振興有限会社製、かやシルクパウダー100)と、を秤量した。そして、水道水と、クエン酸と、シルクパウダーを混合し、この混合液を第2剤2-Dとした。
【0081】
<毛束>
各実施例及び比較例において、下記の人毛毛束を用いて評価した。
・黒髪毛束:全長21cm
・白髪毛束:白髪の割合30%、全長16cm
・ミディアムブリーチ毛束:全長21cm
・ハイブリーチ毛束:全長16cm。
【0082】
[実施例1~5及び比較例1~2]
上記の第1剤及び第2剤を用いて、実施例1~5及び比較例1~2を行った。
【0083】
<毛髪処理>
〔パーマネントウェーブ〕
[実施例1~5及び比較例1~2]
黒髪毛束に第1剤を塗布し、その後、第1剤が塗布された毛髪をパーマ用ロッド(フラスコ社製、直径12mm)に巻き付けた。このパーマ用ロッドと、デジタルパーマ機(フラスコ社製)とを接続し、加熱温度を60℃に設定した。そして、この加熱温度でパーマ用ロッドを発熱させることで毛髪を加熱した。その後、第1剤の塗布開始時から15分後に加熱を停止させ、毛髪がパーマ用ロッドに巻き付けられた状態で、第1剤を流水で洗い流した。第1剤を洗い流した後、毛髪に付着した水分を、パーマ用ロッドに巻き付けられた状態のまま、タオルで粗く取り除いた。タオルドライ後、パーマ用ロッドに巻き付けられた状態のまま、毛髪に第2剤を塗布し、15分間放置した。第2剤の処理後、毛髪をパーマ用ロッドから取り外し、第2剤を流水で洗い流した。第2剤を洗い流した後、毛髪をヘアドライヤで乾燥させた。
【0084】
【表1】
【0085】
[評価]
実施例1~5及び比較例1~2の各々で、以下の評価を行った。ただし、比較例2の第1剤では塩基性アミノ酸が析出したため、比較例2の第1剤を以下の評価に用いなかった。
【0086】
<毛髪の膨潤率>
まず、未使用の黒髪毛束の重量を測定した。この測定後、上記毛髪処理と同様の手順で第1剤の塗布、及び加熱を毛髪に施した。そして、第1剤を流水で洗い流し、毛髪をパーマ用ロッドから取り外した。その後、毛髪の処理部分がまとまらなくなるまで、毛髪に付着した水分をタオルで十分に取り除いた。そして、タオルドライ後の毛束の重量を測定し、第1剤による毛髪の膨潤率を下記式(1)に基いて算出した。
【0087】
膨潤率(%)=(第1剤による処理後の毛束重量/未使用の毛束重量)×100 ・・・(1)。
【0088】
[実施例6~14及び比較例3~4]
実施例6~14及び比較例3~4の各々を行い、黒髪毛束、白髪毛束、ミディアムブリーチ毛束、及びハイブリーチ毛束に対するパーマネントウェーブを評価した。パーマネントウェーブの結果を下記表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
<毛髪の縮毛率>
まず、未使用の毛束の全長を測定した。この測定後、上記の毛髪処理と同様の手順でパーマネントウェーブが施された毛束を垂下させた。この状態で、毛束の上端と下端との間の寸法を測定した。そして、パーマネントウェーブによる縮毛率を下記式(2)に基いて算出した。
【0091】
縮毛率(%)={(未使用の毛束寸法)-(パーマネントウェーブ処理後の毛束寸法)}/(未使用の毛束寸法)×100 ・・・(2)。
【0092】
[実施例15~16及び比較例5]
実施例15~16及び比較例5の各々を行い、黒髪毛束に対するパーマネントウェーブを評価した。パーマネントウェーブの結果を下記表3に示す。
【0093】
〔パーマネントウェーブ〕
黒髪毛束に第1剤を塗布し、その後、第1剤が塗布された毛髪をパーマ用ロッド(直径12mm)に巻き付けた。この状態で、室温で15分間、毛髪を第1剤で処理した。その後、毛髪がパーマ用ロッドに巻き付けられた状態で、第1剤を流水で洗い流した。第1剤を洗い流した後、毛髪に付着した水分を、パーマ用ロッドに巻き付けられた状態のまま、タオルで粗く取り除いた。タオルドライ後、パーマ用ロッドに巻き付けられた状態のまま、毛髪に第2剤を塗布し、15分間放置した。第2剤の処理後、毛髪をパーマ用ロッドから取り外し、第2剤を流水で洗い流した。第2剤を洗い流した後、毛髪をヘアドライヤで乾燥させた。
【0094】
【表3】
【0095】
<毛髪の縮毛率>
まず、未使用の毛束の全長を測定した。この測定後、パーマネントウェーブが施された毛束を垂下させた。この状態で、毛束の上端と下端との間の寸法を測定した。そして、パーマネントウェーブによる縮毛率を上記の式(2)に基いて算出した。
【0096】
[実施例17~22]
実施例17~22の各々を行い、黒髪毛束、及びミディアムブリーチ毛束に対するパーマネントウェーブを評価した。パーマネントウェーブの結果を下記表4に示す。
【0097】
〔パーマネントウェーブ〕
黒髪毛束、及びミディアムブリーチ毛束に第1剤を塗布し、第1剤が塗布された毛髪の処理時間を下記表4に示す時間にした以外は、実施例9と同様の手順で毛髪処理を行った。
【0098】
【表4】
【0099】
<毛髪の縮毛率>
毛束として、黒髪毛束、及びミディアムブリーチ毛束を用いた以外は、実施例1と同様にして縮毛率を算出した。
【0100】
[実施例23及び比較例6]
実施例23及び比較例6の各々を行い、黒髪毛束、及びミディアムブリーチ毛束に対するパーマネントウェーブの程度と、シャンプー回数との関係を評価した。この評価結果を下記表5に示す。
【0101】
〔パーマネントウェーブ〕
黒髪毛束、及びミディアムブリーチ毛束を用いた以外は、実施例23を実施例9と同様の手順で、比較例6を比較例5と同様の手順で毛髪処理を行った。ここで、第2剤を洗い流してから、ヘアドライヤで乾燥させた直後の毛髪を、シャンプー処理が0回の毛髪とした。
【0102】
<シャンプー処理>
毛髪処理後の毛束をシャンプー剤で洗浄し、その後、シャンプー剤を流水で洗い流した。流水後、毛髪をヘアドライヤで乾燥させた。以上の手順を1回として、下記表5に示される回数で毛髪処理後の毛束にシャンプー処理を施した。
【0103】
【表5】
【0104】
<毛髪の縮毛率>
まず、未使用の毛束の全長を測定した。この測定後、毛髪処理後で、かつ各回数でシャンプー処理が施された毛束を垂下させた。この状態で、毛束の上端と下端との間の寸法を測定した。そして、毛髪処理後にシャンプー処理が施された毛髪の縮毛率を下記式(3)に基いて算出した。
【0105】
縮毛率(%)={(未使用の毛束寸法)-(シャンプー処理後の毛束寸法)}/(未使用の毛束寸法)×100 ・・・(3)。
【0106】
[実施例24及び比較例7]
美容練習用ウィッグ(株式会社岡本商會;アメリSP-e)の毛髪を、ウィッグ正面から見て2ブロックに分けた。そして、実施例24では、一方のブロックの毛髪に対し、第1剤1-D及び第2剤2-Aを塗布し、実施例9と同様の手順でパーマネントウェーブを施した。また、比較例7では、他方の毛髪に対し、第1剤1-L及び第2剤2-Cを塗布し、比較例5と同様の手順でパーマネントウェーブを施した。実施例24及び比較例7でパーマネントウェーブが施された毛髪を、図2に示す。
【0107】
〔縮毛矯正〕
<縮毛作製>
黒髪毛束に第1剤1-Lを塗布し、その後、第1剤1-Lが塗布された毛髪をパーマ用ロッド(フラスコ社製、直径12mm)に巻き付けた。このパーマ用ロッドと、デジタルパーマ機(フラスコ社製)とを接続し、加熱温度を60℃に設定した。そして、この加熱温度でパーマ用ロッドを発熱させることで毛髪を加熱した。その後、第1剤1-Lの塗布開始時から15分後に加熱を停止させ、毛髪がパーマ用ロッドに巻き付けられた状態で、第1剤1-Lを流水で洗い流した。第1剤1-Lを洗い流した後、毛髪に付着した水分を、パーマ用ロッドに巻き付けられた状態のまま、タオルで粗く取り除いた。タオルドライ後、パーマ用ロッドに巻き付けられた状態のまま、毛髪に第2剤2-Cを塗布し、10分間放置した。第2剤2-Cの処理後、毛髪をパーマ用ロッドから取り外し、第2剤2-Cを流水で洗い流した。第2剤2-Cを洗い流した後、毛髪をヘアドライヤで乾燥させた。このようにして処理された毛髪を、縮毛とした。
【0108】
[実施例25]
フィルム材の上で縮毛に第1剤1-Mを塗布した。塗布後、第1剤1-Mが付着したままの縮毛をドライヒータで70℃で3分間加熱した。次に、加熱後の第1剤1-Mを流水で洗い流す流水リンスを行った。流水リンス後、第1剤1-Mで処理された毛髪に付着した水分をタオルで粗く取り除いた。その後、180℃に設定されたヘアアイロンで毛髪を再加熱した。このとき、毛髪をヘアアイロンで挟み、かつヘアアイロンをスライドさせて縮毛を引き延ばしながら再加熱を行った。再加熱後、毛髪に第2剤2-Dを塗布し、第2剤2-Dによる処理を10分間行った。第2剤2-Dの処理後、第2剤2-Dを流水で洗い流した。第2剤2-Dを洗い流した後、毛髪をヘアドライヤで乾燥させた。その結果を、図3に示す。
【0109】
[比較例8]
実施例25において第1剤1-Mを塗布する前の縮毛を比較例8とし、その結果を図3に示す。
【0110】
以上の実施例1~24及び比較例1~7の結果から、第1剤の有効成分として塩基性アミノ酸を用い、第2剤の有効成分として有機酸を用いることで、有益な結果が得られることが分かった。特に実施例1~23において、第1剤は還元剤を含有していなく、第2剤は酸化剤を含有していないため、第1剤の処理時に毛髪中のジスルフィド結合を切断させることなく、さらに第2剤の処理時にジスルフィド結合を再形成さなくても、パーマネントウェーブが施された毛髪を得ることができた。また、実施例24及び比較例8の結果から、実施例1~24と同様、第1剤が還元剤を含有していなく、第2剤が酸化剤を含有していなくても、縮毛を矯正してストレート化させた毛髪を得ることができた。
図1
図2
図3