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特許7253243重量感覚推定システム及び重量感覚推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】重量感覚推定システム及び重量感覚推定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20230330BHJP
   A61H 1/00 20060101ALN20230330BHJP
   A63B 26/00 20060101ALN20230330BHJP
   A63F 13/212 20140101ALN20230330BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A61H1/00
A63B26/00
A63F13/212
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019150162
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021029388
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】312015200
【氏名又は名称】H2L株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉城 絵美
(72)【発明者】
【氏名】細野 哲史
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 健一郎
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054956(JP,A)
【文献】H2L株式会社、株式会社NTTドコモ,H2LとNTTドコモ、「BodySharing技術」と5Gを活用した新サービスの創出に向け連携,報道発表資料,日本,H2L株式会社、株式会社NTTドコモ,2019年01月09日,「トピックス」、「別紙1」、「別紙2」、「参考」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61H 1/00 - 1/05
A63B 26/00
A63F 13/00 - 13/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの体表面に装着される筋肉センサ装置と、前記筋肉センサ装置と通信を行う重量感覚推定演算装置とよりなる重量感覚推定システムであって、
前記筋肉センサ装置は、
前記ユーザの前記体表面に密着するベルトと、
前記ベルトに複数個設けられ、赤外線LEDと光センサで構成されるフォトリフレクタである筋変位センサ群と、
前記筋変位センサ群から得られる筋変位データを前記重量感覚推定演算装置へ送信する送信部と、を具備し、
前記重量感覚推定演算装置は、
前記送信部から前記筋変位データを受信する受信部と、
前記受信部から受信した前記筋変位データを特徴ベクトルとして読み込み、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する回帰推定器と、を具備する、
重量感覚推定システム。
【請求項2】
前記回帰推定器は、前記筋肉センサ装置から得られる前記筋変位データを特徴ベクトルとして、前記ユーザの腕が任意の物品に与える力のデータである圧力データを教師データとして、学習処理を実行する回帰学習器が生成した近似関数パラメータを読み込んで、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する、
請求項1に記載の重量感覚推定システム。
【請求項3】
前記重量感覚推定演算装置は更に、
匿名ユーザに紐付けられ、前記匿名ユーザを一意に識別する匿名ユーザIDが格納される匿名ユーザIDフィールドと、前記匿名ユーザIDに紐付けられる前記匿名ユーザの体表面の直下に存在する筋肉から前記回帰学習器が生成した前記近似関数パラメータが格納される近似関数パラメータフィールドとを有する近似関数パラメータテーブルと、
前記筋変位データを特徴ベクトルとして読み込み、前記ユーザの筋肉の特徴に最も類似する匿名ユーザの匿名ユーザIDを推定する分類推定器と、
前記分類推定器が推定した前記匿名ユーザIDを用いて前記近似関数パラメータテーブルを検索し、前記匿名ユーザIDに紐付く前記近似関数パラメータを取得して、前記回帰推定器に読み込ませる、入出力制御部と、を具備する、
請求項2に記載の重量感覚推定システム。
【請求項4】
前記回帰推定器は、前記筋肉センサ装置から得られる前記筋変位データを特徴ベクトルとして、前記ユーザの腕が任意の物品に与える力のデータである圧力データと、匿名ユーザに紐付けられ、前記匿名ユーザを一意に識別する匿名ユーザIDを教師データとして、学習処理を実行する深層回帰学習器が生成した近似関数パラメータを読み込んで、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する深層回帰推定器である、
請求項1に記載の重量感覚推定システム。
【請求項5】
ユーザの体表面に密着するベルトと、
前記ベルトに複数個設けられ、赤外線LEDと光センサで構成されるフォトリフレクタである筋変位センサ群と、
前記筋変位センサ群から得られる筋変位データを特徴ベクトルとして読み込み、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する回帰推定器と、を具備する、
重量感覚推定装置。
【請求項6】
前記回帰推定器は、前記筋変位データを特徴ベクトルとして、前記ユーザの腕が任意の物品に与える力のデータである圧力データを教師データとして、学習処理を実行する回帰学習器が生成した近似関数パラメータを読み込んで、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する、
請求項5に記載の重量感覚推定装置。
【請求項7】
更に、
匿名ユーザに紐付けられ、前記匿名ユーザを一意に識別する匿名ユーザIDが格納される匿名ユーザIDフィールドと、前記匿名ユーザIDに紐付けられる前記匿名ユーザの体表面の直下に存在する筋肉から前記回帰学習器が生成した前記近似関数パラメータが格納される近似関数パラメータフィールドとを有する近似関数パラメータテーブルと、
前記筋変位データを特徴ベクトルとして読み込み、前記ユーザの筋肉の特徴に最も類似する匿名ユーザの匿名ユーザIDを推定する分類推定器と、
前記分類推定器が推定した前記匿名ユーザIDを用いて前記近似関数パラメータテーブルを検索し、前記匿名ユーザIDに紐付く前記近似関数パラメータを取得して、前記回帰推定器に読み込ませる、入出力制御部と、を具備する、
請求項6に記載の重量感覚推定装置。
【請求項8】
前記回帰推定器は、筋肉センサ装置から得られる前記筋変位データを特徴ベクトルとして、前記ユーザの腕が任意の物品に与える力のデータである圧力データと、匿名ユーザに紐付けられ、前記匿名ユーザを一意に識別する匿名ユーザIDを教師データとして、学習処理を実行する深層回帰学習器が生成した近似関数パラメータを読み込んで、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する深層回帰推定器である、
請求項5に記載の重量感覚推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の深部感覚の一種である重量覚と抵抗覚を推定する、重量感覚推定システム及び重量感覚推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の物理的感覚のうち、目による視覚、鼻による嗅覚、耳による聴覚、舌による味覚といった、特定の器官で得られる感覚を除く感覚を、体性感覚と呼ぶ。
体性感覚は、触覚、圧覚、温冷覚、痛覚の、皮膚表層で感じる表在感覚(皮膚感覚)と、関節、筋肉、腱等に生じる深部感覚よりなる。
深部感覚は、位置覚、運動覚、抵抗覚、重量覚の四種類がある。
位置覚は、生体の各部の位置、関節の屈伸状態等を把握する感覚である。
運動覚は、関節運動の加速度に基づいて生体の各部の運動量を把握する感覚である。
抵抗覚は、物品を持った時や、動いた時に関節にて感じる抵抗感覚である。
重量覚は、物品を持った時や、動いた時に筋肉にて感じる力の入れ具合の感覚である。
【0003】
発明者らは、先に特許文献1に記載されるような電気刺激装置を提案した。この特許文献1で提案した電気刺激装置は、ユーザの前腕に装着されるバンドに複数の電極を取り付けて、前腕の筋肉に電気刺激を与える装置である。
更に発明者らは、非特許文献1に記載される、筋肉の隆起を検出する赤外線センサを複数個装備した新たな電気刺激装置を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-104241号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「銃を撃った衝撃、指先に「じわっ」筋電刺激コントローラーUnlimited Hand」ASCII.JP×デジタル、2016年5月12日、2017年6月27日閲覧<http://ascii.jp/elem/000/001/161/1161772/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまで、人の深部感覚を客観的数値データとして検出する仕組みは存在していない。もし、深部感覚を客観的数値データとして取得できれば、ゲーム、スポーツ、整形外科、リハビリテーション等の様々な分野において、有力な生体感覚データとしての利活用が期待できる。
【0007】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、低価格な装置を用いて人の重量覚と抵抗覚を推定できる、重量感覚推定システム及び重量感覚推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の重量感覚推定システムは、ユーザの体表面に装着される筋肉センサ装置と、筋肉センサ装置と通信を行う重量感覚推定演算装置とよりなる。
筋肉センサ装置は、ユーザの体表面に密着するベルトと、ベルトに複数個設けられ、赤外線LEDと光センサで構成されるフォトリフレクタである筋変位センサ群と、筋変位センサ群から得られる筋変位データを重量感覚推定演算装置へ送信する送信部とを具備する。
重量感覚推定演算装置は、送信部から筋変位データを受信する受信部と、受信部から受信した筋変位データを特徴ベクトルとして読み込み、ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する回帰推定器とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低価格な装置を用いて人の重量覚と抵抗覚を推定することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る重量感覚推定システムの全体構成と使用状態を示す概略図である。
図2】筋肉センサ装置の外観斜視図である。
図3】筋肉センサ装置をユーザの腕に装着する最初の段階を示す図である。
図4】筋肉センサ装置をユーザの腕に装着した状態を示す図である。
図5】筋肉センサ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】重量感覚推定演算装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第一の実施形態に係る筋肉センサ装置と重量感覚推定演算装置の、学習モードにおけるソフトウェア機能を示すブロック図である。
図8】本発明の第一の実施形態に係る重量感覚推定システムの、推定フェーズにおけソフトウェア機能ブロック図である。
図9】本発明の第二の実施形態に係る重量感覚推定システムの、学習フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。
図10】本発明の第二の実施形態に係る重量感覚推定システムの、推定フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。
図11】本発明の第三の実施形態に係る重量感覚推定システムの、学習フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。
図12】本発明の第三の実施形態に係る重量感覚推定システムの、推定フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。
図13】筋肉センサ装置をユーザの太腿及びふくらはぎに装着した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一の実施形態:重量感覚推定システム101:全体構成]
図1Aは、本発明の実施形態に係る重量感覚推定システム101の、学習モードにおける全体構成と使用状態を示す概略図である。
図1Bは、本発明の実施形態に係る重量感覚推定システム101の、推定モードにおける全体構成と使用状態を示す概略図である。
図1A及び図1Bに示すように、重量感覚推定システム101は、筋肉センサ装置102と重量感覚推定演算装置103より構成される。
重量感覚推定演算装置103は、周知のパソコン等よりなる情報処理装置であり、学習アルゴリズムに基づく学習型情報処理プログラムが稼働する。このため、重量感覚推定演算装置103は学習モードと推定モードを有する。
【0012】
図1Aに示すように、学習モードにおける重量感覚推定システム101は、筋肉センサ装置102と重量感覚推定演算装置103に加え、圧力センサ104より構成される。圧力センサ104は、内部で自身に加わる力に比例した電圧信号を発生すると共に、この電圧信号をデジタルの圧力データに変換して、重量感覚推定演算装置103に出力する。
ユーザ105は筋肉センサ装置102を自らの腕105aに巻き付ける。そして、筋変位センサを複数個内蔵する筋肉センサ装置102と、重量感覚推定演算装置103との間でBlueTooth(登録商標)等の無線通信を確立した上で、筋肉センサ装置102を巻き付けた側の手指で、圧力センサ104に力を加える。
この時、筋肉センサ装置102はユーザ105の腕105aの筋肉の状態に由来するデータを重量感覚推定演算装置103へ常時送信する。
【0013】
重量感覚推定演算装置103は、学習型情報処理機能における特徴ベクトルとして、筋肉センサ装置102から得られる筋変位センサのデータを得る。
また同時に重量感覚推定演算装置103は、学習型情報処理機能における教師データとして、圧力センサ104から得られる圧力データを得る。
この結果、重量感覚推定演算装置103は、ユーザ105の腕105aの筋肉の状態から、ユーザ105の腕105aの筋肉が所定の対象物106に対して印加する力、すなわち重量覚と抵抗覚を推定することができる。
ユーザ105の腕105aの筋肉が所定の対象物106に対して印加する力に対する、ユーザ105の腕105aの筋肉の状態は、非線形関数の関係を有する。重量感覚推定演算装置103は学習フェーズを経ることで、ユーザ105の腕105aの重量覚と抵抗覚を推定する、非線形近似関数の機能を備える。
【0014】
重量感覚推定演算装置103は、重量覚と抵抗覚を区別なく推定する。つまり、重量覚が重量感覚推定演算装置103によって推定されると、抵抗覚も同時かつ同様に推定される。二つの感覚の違いは、「能動的か」あるいは「受動的か」だけであり、筋肉が膨らむ仕組みはどちらの感覚に依るものであっても同様であるからである。このため、本明細書では、重量覚と抵抗覚を包含する言葉として「重量感覚」という名称を用いている。
【0015】
図1Bに示すように、推定モードにおける重量感覚推定システム101は、筋肉センサ装置102と重量感覚推定演算装置103より構成される。
学習モードにおいて重量感覚推定演算装置103がユーザ105の筋肉の振る舞いを十分に学習できた場合には、推定モードにおいて重量感覚推定演算装置103は筋肉センサ装置102のデータが入力されると、ユーザ105の筋肉が感じる重量覚と抵抗覚を推定することができる。
筋肉センサ装置102を自らの腕105aに巻き付けたユーザ105が任意の対象物106を押すと、筋肉センサ装置102はユーザ105の腕105aの筋肉の状態に由来するデータを重量感覚推定演算装置103へ送信する。
【0016】
重量感覚推定演算装置103は、学習型情報処理機能における特徴ベクトルとして、筋肉センサ装置102から得られる筋変位センサのデータを得る。すると重量感覚推定演算装置103は、ユーザ105の腕105aの筋肉の状態に由来するデータに基づき、ユーザ105の腕105aが対象物106に与える力、転じて、ユーザ105の腕105aの筋肉が感じる重量覚と抵抗覚を推定する。
【0017】
重量感覚推定演算装置103がユーザ105の腕105aの筋肉が感じる重量覚と抵抗覚を推定する挙動は、ユーザ105が任意の対象物106を押す挙動に限られない。例えば、ユーザ105に何らかの物品を持たせる、何らかの物品を引っ張る等、任意の対象物106に対してあらゆる力を与える他、ユーザ105が腕立て伏せを行う等、ユーザ105自身の挙動においても、重量感覚推定演算装置103はユーザ105の重量覚と抵抗覚を推定することが可能である。
【0018】
[筋肉センサ装置102:外観]
図2Aは、本発明の実施形態の例である筋肉センサ装置102の表面側の外観斜視図である。図2Bは、本発明の実施形態の例である筋肉センサ装置102の裏面側の外観斜視図である。筋肉センサ装置102は、大まかに本体部201と、表側ベルト202と、裏側ベルト203で構成される。
本体部201には中央に電源スイッチ204が設けられており、内部に後述する近距離無線通信部とジャイロセンサ312等を含むマイコンと電子回路、そしてリチウム二次電池が収納されている。
【0019】
表側ベルト202は本体部201を覆い、筋肉センサ装置102のベルト部分の全体を構成する。表側ベルト202の親側202aの先端にはバックル205が設けられ、剣先側202bにはバックル205に対応する穴206が複数個設けられている。このバックル205と穴206は、裏側ベルト203をユーザ105の腕105aに適切に密着させる役割を果たす。
裏側ベルト203には円筒形状に形成されている筋変位センサの検出孔207が複数個設けられている。筋変位センサは近赤外線LEDとフォトトランジスタの組よりなるフォトリフレクタを構成する。詳細は図5にて後述する。
【0020】
[筋肉センサ装置102の装着状態]
次に、筋肉センサ装置102をユーザ105の腕105aに装着する方法について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、筋肉センサ装置102をユーザ105の腕105aに装着する最初の段階を示す。図4は、筋肉センサ装置102をユーザ105の腕105aに装着した状態を示す。
まず、筋肉センサ装置102を装着するユーザ105は、図3に示すように掌105bを上に向ける。次に、図3に示すように、筋肉センサ装置102の本体部201をユーザ105の手首105cの近傍に載せる。そして、腕時計を腕105aに装着する要領で、表側ベルト202の親側202aの先端に設けられているバックル205に、表側ベルト202の剣先側202bを通して、腕105aに巻き付ける。その後、剣先側202bに設けられている穴206をバックル205に嵌め込むことで、図4に示すように、筋肉センサ装置102をユーザ105の腕105aに固定することができる。
【0021】
筋肉センサ装置102をユーザ105の腕105aに固定すると、裏側ベルト203に複数個設けられている筋変位センサの検出孔207が、ユーザ105の腕105aの皮膚表面に密着する。円筒形状の検出孔207は、筋変位センサとユーザ105の腕105aの皮膚表面との距離を一定に保つ役割を担う。筋変位センサとユーザ105の腕105aの皮膚表面との距離が一定に保たれることで、筋変位センサはユーザ105の腕105aの筋肉の状態を、アナログ電圧信号に正しく変換することが可能になる。
【0022】
[筋肉センサ装置102:ハードウェア構成]
図5は、筋肉センサ装置102のハードウェア構成を示すブロック図である。
バス501に接続されているCPU502、ROM503、RAM504、A/D変換器505、そして第二シリアルインターフェース506(図5中「第二シリアルI/F」と略記)は、周知のワンチップマイコン507を構成する。
【0023】
図5では14個の筋変位センサが設けられている例が示されているが、筋変位センサの数はこれに限定されない。
筋変位センサ521は、赤外線LEDである赤外線発光素子521aと、光センサである赤外線受光素子521bで構成される。同様に、筋変位センサ522は、赤外線発光素子522aと赤外線受光素子522bで、…筋変位センサ534は、赤外線発光素子534aと赤外線受光素子534bで構成される。
筋変位センサ521、522、・・534を構成する赤外線LEDである赤外線発光素子521a、522a、・・534aのアノードは電源電圧ノード+Vccに接続されている。赤外線発光素子521a、522a、・・534aのカソードは第一マルチプレクサ508を通じて電流制限抵抗R509の一端に接続されている。電流制限抵抗R509の他端は接地されている。
なお、これ以降、筋変位センサ521、522、・・534を区別せず、一纏めに呼ぶ場合には、筋変位センサ群540と総称する。
【0024】
筋変位センサ521、522…534を構成するフォトトランジスタである赤外線受光素子521b、522b…534bのコレクタは電源電圧ノード+Vccに接続されている。赤外線受光素子521b、522b…534bのエミッタは第二マルチプレクサ510を通じてA/D変換器505に接続されていると共に、抵抗R511a、R511b、・・R511nを通じて接地されている。
【0025】
第一マルチプレクサ508及び第二マルチプレクサ510が、第二シリアルインターフェース506から制御信号を受けて、周期的に切り替え制御されることで、A/D変換器505には時分割で14個の筋変位センサ521、522、・・534の電圧信号が入力される。
この第一マルチプレクサ508及び第二マルチプレクサ510は、複数の筋変位センサ521、522…534のうちの1個を選択する。なお、第一マルチプレクサ508及び第二マルチプレクサ510を総称して、センサ用マルチプレクサと呼ぶ。
【0026】
ワンチップマイコン507のバス501には、周知のジャイロセンサ512と近距離無線通信部513も接続されており、ジャイロセンサ512が出力する姿勢情報及び加速度情報は、A/D変換器505でAD変換された14個の筋変位センサ521、522、・・534の情報と共に、近距離無線通信部513を通じて重量感覚推定演算装置103へ送信される。
ワンチップマイコン507のバス501には更に、第一シリアルインターフェース514(図5中「第一シリアルI/F」と略記)が接続されている。なお、この第一シリアルインターフェース514は、ROM503に格納されているファームウェアをアップデートする際に用いられる他に、不図示の蓄電池に電力を供給するためにも用いられる。
【0027】
筋変位センサ群540は、ユーザ105の皮膚に赤外線LEDを用いて近赤外線を照射し、その反射光をフォトトランジスタで受光することで、筋肉の緊張状態をアナログ信号として検出する。すなわち、筋変位センサ配置面から腕の筋肉の表面までの距離の変化を検出する。
筋肉が収縮すると、筋肉が存在する皮膚の部分に生じる隆起によって、フォトリフレクタと筋肉の表面部分との距離が変動する。フォトリフレクタはこの距離の変動によって生じる近赤外線反射光の強弱を、フォトトランジスタで検出する。近赤外線は皮膚表面を透過する性質を有するので、筋肉の隆起状態を検出することに適している。
【0028】
[重量感覚推定演算装置103:ハードウェア構成]
図6は、重量感覚推定演算装置103のハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のパソコン等の情報処理装置よりなる重量感覚推定演算装置103は、バス601に接続された、CPU602、ROM603、RAM604、表示部605、透明電極を有する静電式位置検出装置を含む操作部606を備える。
また、バス601には、電気的に書き換え可能なフラッシュメモリ等の不揮発性ストレージ607と、近距離無線通信部608が接続されている。
不揮発性ストレージ607には、ネットワークOSと、情報処理装置を重量感覚推定演算装置103として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0029】
なお、重量感覚推定演算装置103は、パソコンに代えて、周知のスマートフォンやタブレットPCでも実現可能である。この場合、表示部605は例えばLCDディスプレイであり、表示部605と操作部606は、周知のタッチパネルディスプレイ609を構成する。
【0030】
[第一の実施形態:重量感覚推定演算装置103:ソフトウェア機能]
これより、本発明の第一の実施形態に係る、筋肉センサ装置102と重量感覚推定演算装置103のソフトウェア機能について説明する。後述する第二の実施形態とは、このソフトウェア機能のみ異なる。すなわち、第二の実施形態のハードウェア構成は、第一の実施形態として図1から図6にて説明したものと同一である。
図7は、本発明の第一の実施形態に係る筋肉センサ装置102と重量感覚推定演算装置103の、学習モードにおけるソフトウェア機能を示すブロック図である。すなわち、図7図1Aの機能ブロック図である。
なお、本発明において、筋肉センサ装置102に内蔵されるジャイロセンサ512が出力する四元数データや三次元の加速度データは使用しないため、図7以降の説明を省略している。
【0031】
筋肉センサ装置102の筋変位センサ群540から出力される信号は、A/D変換器505によってデジタルの筋変位データに変換される。
筋変位データは、近距離無線送信部703によって変調され、重量感覚推定演算装置103へ送信される。
【0032】
重量感覚推定演算装置103の近距離無線受信部704は、筋肉センサ装置102から送信された電波を受信し、筋変位データを復調する。筋変位データは回帰学習器701に入力される。
一方、ユーザ105が筋肉センサ装置102を装着した腕105aの手指で圧力センサ104を押すと、圧力センサ104に内蔵されるA/D変換器702からデジタルの圧力データが出力される。圧力センサ104が出力するデジタルの圧力データは、回帰学習器701に入力される。
回帰学習器701は、例えばSVR(Support Vector Regression:サポートベクタ回帰)等の回帰学習アルゴリズムを採用する機械学習器である。回帰学習器701は、筋変位データを特徴ベクトルとして、また圧力データを教師データとして、学習処理を実行する。そして学習処理の結果、回帰学習器701は近似関数パラメータ705を生成し、またこれを更新する。
機械学習の成果である近似関数パラメータ705は、不揮発性ストレージ607に記憶される。
【0033】
図8は、本発明の第一の実施形態に係る重量感覚推定システム101の、推定フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。すなわち、図8図1Bの機能ブロック図である。なお、図8のうち、図7と同一の機能ブロックには同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0034】
重量感覚推定演算装置103の近距離無線受信部704は、筋肉センサ装置102から送信された電波を受信し、筋変位データを復調する。筋変位データは回帰推定器801に入力される。
回帰推定器801は、筋変位データを特徴ベクトルとし、学習フェーズにおいて回帰学習器701が作成した近似関数パラメータ705を読み込んで、回帰推定を行い、圧力推定データを出力する。この圧力推定データが、ユーザ105の腕105aの重量覚と抵抗覚に相当する。この圧力推定データは表示処理部802を通じて表示部605に表示される。
また、図示はしていないが、圧力推定データは外部の情報処理装置等に出力する等、様々な用途に利用される。
【0035】
発明者らによる実験では、パソコンにSVRのプログラムを稼働させ、圧力センサ104と筋肉センサ装置102のデータを与えただけで、高い推定精度を得ることができた。これは、筋変位センサ群540が近赤外線を用いたセンサであることから、室内の電灯線等から生じる電磁波ノイズに強いこと、また光センサ自身がその追従性能から積分要素を有すること等が要因として考えられる。
勿論、本発明に係る重量感覚推定演算装置103においても、一般的な生体センサの前処理として、筋変位データの各々の要素に対し、周知の移動平均等の外乱等除去処理を施してもよい。
【0036】
回帰学習器701及び回帰推定器801に採用する回帰学習アルゴリズムは、SVRに限られない。以下の回帰学習アルゴリズムがSVRに置換可能である。
例えば、線形回帰、ロジスティクス回帰、回帰木、自己回帰移動平均モデル、状態空間モデル、ランダムフォレスト、勾配ブースティング木、パーセプトロン、CNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Networks)、ResNet(Residual Networks)などで置換することができる。
【0037】
[第二の実施形態:重量感覚推定演算装置902:ソフトウェア機能]
第一の実施形態に係る重量感覚推定システム101は、予めユーザ105の腕の筋肉の特性を回帰学習アルゴリズムで学習することで、ユーザ105の腕の重量覚と抵抗覚を推定するものである。
ところで、人の体格は千差万別であることから、当然ながら、人の腕の筋肉の特性も千差万別である。つまり、第一の実施形態に係る重量感覚推定システム101は、個々のユーザに適合するシステムである。このため、あるユーザの腕の特性を学習した重量感覚推定システム101は、他のユーザに使用することができなくなる場合がある。
【0038】
もし、回帰学習器が予め多数の人の筋肉の特性を学習し、回帰推定器が未知の人の筋肉のデータから最も類似する人の筋肉の特性で推定することができれば、重量感覚推定システムにおいて図1A及び図7にて説明した学習フェーズを省略することが可能になる。
これより説明する第二の実施形態に係る重量感覚推定システム901と、第三の実施形態に係る重量感覚推定システム1101は、予め多数の人の筋肉の特性を学習することで、実使用において学習フェーズを省略することを可能にする点で第一の実施形態に係る重量感覚推定システム101とは異なる。
【0039】
図9は、本発明の第二の実施形態に係る重量感覚推定システム901の、学習フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。なお、図9のうち、図7と同一の機能ブロックには同一の符号を付して、その説明を省略する。
重量感覚推定演算装置902において、まず、入出力制御部903が筋変位データスイッチ904を分類学習器905の側に切り替える。そして、入出力制御部903内の案内画面生成処理部906が、「手を握って下さい」「手を開いて下さい」等の案内コンテンツを表示部605に表示するための、チュートリアル動画を生成する。案内画面生成処理部906が生成するチュートリアル動画データは、表示処理部802を通じて表示部605に表示される。そして、この時に筋肉センサ装置102から得られる筋変位データは、分類学習器905に入力される。
【0040】
分類学習器905は、例えばランダムフォレスト分類(Random Forest Classification)等の分類学習アルゴリズムを採用する機械学習器である。分類学習器905は、筋変位データを特徴ベクトルとして、また匿名ユーザID907をラベル(教師データ)として、学習処理を実行する。そして、学習処理の結果、分類学習器905は近似モデルパラメータ908を生成し、またこれを更新する。
匿名ユーザID907は、複数のユーザ105を、匿名性を担保しつつ一意に識別するためのものである。なお、匿名ユーザID907は、ユーザ105の匿名性を担保するために、例えばシリアルナンバーにハッシュ演算処理等を施すことで生成される。
【0041】
分類学習器905の学習処理が終わったら、入出力制御部903は筋変位データスイッチ904を回帰学習器701の側に切り替える。
回帰学習器701は、筋変位データを特徴ベクトル、圧力センサ104からA/D変換器702を通じて得られる圧力データを教師データとして回帰学習を行い、近似関数パラメータ705を生成し、更新する。回帰学習器701は、第一の実施形態と同一の回帰学習アルゴリズムを利用する。この回帰学習器701における学習処理は、図7にて説明した第一の実施形態における回帰学習処理と同じなので、詳細な説明を省略する。
【0042】
以上の手順にて、匿名ユーザID907、近似モデルパラメータ908、近似関数パラメータ705の3個の要素が揃った。この3個の要素は、個人別筋変位パラメータ群909として、例えば重量感覚推定演算装置902の不揮発性ストレージ607(図6参照)や、あるいは図示しない管理サーバ等において収集される。
特に、匿名ユーザID907と近似関数パラメータ705は、近似関数パラメータテーブル1002のレコードとして登録される。近似関数パラメータテーブル1002の詳細は図10にて後述する。
【0043】
本発明の第二の実施形態に係る重量感覚推定システム901は、上述した学習フェーズにおいて、少なくとも500人、望ましくは1000人以上の学習処理を遂行する。したがって、近似モデルパラメータ908は、例えば筋変位センサ群540のデータに対し、1000人分の学習済み匿名ユーザから最も筋肉の特性が類似する匿名ユーザID907を特定するためのパラメータである。また、後述する近似関数パラメータテーブル1002は、1000人分の匿名ユーザID907と近似関数パラメータ705を紐付けて記憶する。
【0044】
図10は、本発明の第二の実施形態に係る重量感覚推定システム901の、推定フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。
重量感覚推定演算装置902において、まず、入出力制御部903が筋変位データスイッチ904を分類推定器1001の側に切り替える。そして、入出力制御部903内の案内画面生成処理部906が、「手を握って下さい」「手を開いて下さい」等の案内を表示部605に表示するための、チュートリアル動画を生成する。案内画面生成処理部906が生成するチュートリアル動画データは、表示処理部802を通じて表示部605に表示される。そして、この時に筋肉センサ装置102から得られる筋変位データは、分類推定器1001に入力される。
【0045】
分類推定器1001は、筋変位データを特徴ベクトルとし、近似モデルパラメータ908を読み込む。そして、図9の学習フェーズにおいて学習した学習済み匿名ユーザから最も筋肉の特性が類似する匿名ユーザID907を出力する。
また、入出力制御部903は、分類推定器1001から得られた匿名ユーザID907を検索キーとして、近似関数パラメータテーブル1002を検索して、匿名ユーザID907に紐付けられた近似関数パラメータ705を取得する。
【0046】
近似関数パラメータテーブル1002は、匿名ユーザIDフィールドと近似関数パラメータフィールドを有する。匿名ユーザIDフィールドには、匿名ユーザに紐付けられる匿名ユーザID907が格納される。近似関数パラメータフィールドには、匿名ユーザID907に紐付けられる匿名ユーザの腕の筋肉から回帰学習器701が生成した近似関数パラメータ705が格納される。
【0047】
次に入出力制御部903は、筋変位データスイッチ904を回帰推定器801の側に切り替える。回帰推定器801は、筋変位データを特徴ベクトルとし、入出力制御部903によって与えられた近似関数パラメータ705を読み込んで、回帰推定を行い、圧力推定データを出力する。
圧力推定データは表示処理部802を通じて表示部605に表示される。また、図示はしていないが、圧力推定データは外部の情報処理装置等に出力する等、様々な用途に利用される。
【0048】
図10における回帰推定器801及び近似関数パラメータ705の動作及び役割は、図8に示した第一の実施形態に係る重量感覚推定演算装置103の同名機能ブロックと同じである。第二の実施形態に係る重量感覚推定演算装置902と第一の実施形態に係る重量感覚推定演算装置103との相違点は、重量感覚推定演算装置902が、筋変位データスイッチ904、分類推定器1001、近似モデルパラメータ908、近似関数パラメータテーブル1002及び入出力制御部903を備え、分類推定器1001が匿名ユーザID907を推定し、近似関数パラメータテーブル1002から近似関数パラメータ705を出力する点である。
【0049】
図9にて説明した、重量感覚推定システム901の学習フェーズでは、例えば1000人分の学習処理を行った。その結果、分類推定器1001は、任意のユーザ105から得られる筋変位センサのデータに対し、事前学習にて近似モデルパラメータ908から最も筋肉の特性が類似する匿名ユーザの匿名ユーザID907を出力する。この匿名ユーザID907は、近似関数パラメータテーブル1002において当該匿名ユーザの近似関数パラメータ705に紐付けられている。つまり、ユーザ105に腕の筋肉構造等の特徴が最も類似する匿名ユーザの近似関数パラメータ705を取得することができる。
すなわち、多数の個人別筋変位パラメータ群909から近似モデルパラメータ908と近似関数パラメータテーブル1002を作成することによって、事前学習をせずとも、ユーザ105に最も腕の筋肉構造等の特徴が類似する匿名ユーザの近似関数パラメータ705を用いて、ユーザ105の重量覚と抵抗覚の推定が可能になる。
【0050】
分類学習器905及び分類推定器1001に採用する分類学習アルゴリズムは、ランダムフォレストに限られない。以下の分類学習アルゴリズムがランダムフォレストに置換可能である。
すなわち、決定木、ナイーブベイズ、k近傍法(k-nearest neighbor algorithm:k-NN)、ブースティング、勾配ブースティング木、パーセプトロン、CNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Networks)、ResNet(Residual Networks)等に置換することができる。
【0051】
[第三の実施形態:重量感覚推定演算装置1102:ソフトウェア機能]
図11は、本発明の第三の実施形態に係る重量感覚推定システム1101の、学習フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。なお、図11のうち、図7乃至図10と同一の機能ブロックには同一の符号を付して、その説明を省略する。
重量感覚推定演算装置1102の近距離無線受信部704は、筋肉センサ装置102から送信された電波を受信し、筋変位データを復調する。筋変位データは深層回帰学習器1103に入力される。
【0052】
一方、ユーザ105が筋肉センサ装置102を装着した腕105aの手指で圧力センサ104を押すと、圧力センサ104に内蔵されるA/D変換器702からデジタルの圧力データが出力される。圧力センサ104が出力するデジタルの圧力データは、深層回帰学習器1103に入力される。
深層回帰学習器1103は、ディープラーニングとも呼ばれる、周知の多層ニューラルネットワークを採用する機械学習器である。深層回帰学習器1103は、筋変位データを特徴ベクトルとして、また圧力データと匿名ユーザID907を教師データとして、学習処理を実行する。そして、学習処理の結果、深層回帰学習器1103は近似関数パラメータ1104を生成し、またこれを更新する。
【0053】
図12は、本発明の第三の実施形態に係る重量感覚推定システム1101の、推定フェーズにおけるソフトウェア機能ブロック図である。
重量感覚推定演算装置1102の近距離無線受信部704は、筋肉センサ装置102から送信された電波を受信し、筋変位データを復調する。筋変位データは深層回帰推定器1201に入力される。
深層回帰推定器1201は、筋変位データを特徴ベクトルとし、学習フェーズにおいて深層回帰学習器1103が作成した近似関数パラメータ1104を読み込んで、回帰推定を行い、圧力推定データと匿名ユーザID907を出力する。匿名ユーザID907は使用しないため、そのまま破棄される。
圧力推定データは表示処理部802を通じて表示部605に表示される。
また、図示はしていないが、圧力推定データは外部の情報処理装置等に出力する等、様々な用途に利用される。
【0054】
第二の実施形態に係る重量感覚推定演算装置902では、複数のユーザ105の筋変位データを扱う際、匿名ユーザID907を特定するために、分類学習器905及び分類推定器1001を採用した。
これに対し、第三の実施形態に係る重量感覚推定演算装置1102では、深層回帰学習器1103及び深層回帰推定器1201を採用した。そして、深層回帰学習器1103の教師データとして、圧力データに加え、匿名ユーザID907を与えることにより、多数のユーザ105の筋変位データを区別して、重量覚と抵抗覚を推定することを可能にした。すなわち、第二の実施形態における分類学習器905と回帰学習器701の機能を、深層回帰学習器1103が担い、第二の実施形態における分類推定器1001と回帰推定器801の機能を、深層回帰推定器1201が担う。
【0055】
以上に述べた第一の実施形態、第二の実施形態、第三の実施形態では、図1乃至図4に示すように、筋肉センサ装置102をユーザ105の腕105aに装着して、ユーザ105の腕105aにおける重量覚と抵抗覚を推定する技術を説明した。筋肉センサ装置102は必ずしもユーザ105の腕105aにのみ装着するものではない。
図13は、筋肉センサ装置102をユーザ105の太腿105d及びふくらはぎ105eに装着した状態を示す概略図である。
ユーザ105の太腿105dに装着された筋肉センサ装置102aは、ユーザ105の足全体の重量覚と抵抗覚を推定するためのセンサとして機能する。
ユーザ105のふくらはぎ105eに装着された筋肉センサ装置102bは、ユーザ105の足首から下の重量覚と抵抗覚を推定するためのセンサとして機能する。
すなわち、筋肉センサ装置102は、ユーザ105の任意の体表面に装着して、重量感覚推定演算装置と組み合わせて機能させれば、装着された体表面の直下に存在する筋肉の重量覚と抵抗覚を推定するセンサとして機能させることが可能である。
【0056】
本発明の第一の実施形態においては、重量感覚推定システム101を開示した。
予め、ユーザ105の腕105aに筋肉センサ装置102を装着する。
まず、学習フェーズにおいて、重量感覚推定演算装置103の回帰学習器701は、筋肉センサ装置102から出力される筋変位データを特徴ベクトルとして、また圧力センサ104から得られる圧力データを教師データとして、回帰学習処理を実行する。そして学習処理の結果、回帰学習器701は近似関数パラメータ705を生成し、またこれを更新する。
次に、推定フェーズにおいて、重量感覚推定演算装置103の回帰推定器801は、筋変位データを特徴ベクトルとし、学習フェーズにおいて回帰学習器701が作成した近似関数パラメータ705を読み込んで、回帰推定を行い、圧力推定データを出力する。この圧力推定データが、ユーザ105の腕105aの重量覚と抵抗覚に相当する。
この第一の実施形態においては、低価格のシステム構成にて、人の重量覚と抵抗覚を高い精度で推定することが可能になる。
【0057】
本発明の第二の実施形態においては、重量感覚推定システム901を開示した。
第二の実施形態の重量感覚推定システム901は、複数のユーザ105に対し、事前学習処理を省略するため、複数の匿名ユーザの筋肉の特徴を分類学習器905で学習し、匿名ユーザID907を出力する構成としている。そして、匿名ユーザID907と近似関数パラメータ705を紐付ける、近似関数パラメータテーブル1002を作成する。
分類推定器1001は、任意のユーザ105の筋肉の特徴から最も類似する匿名ユーザの匿名ユーザID907を出力する。分類推定器1001は、近似関数パラメータテーブル1002から匿名ユーザID907に紐付く近似関数パラメータ705を取得して、回帰推定器801に与える。これにより、事前学習をすることなく、ユーザ105に腕の筋肉構造等の特徴が最も類似する匿名ユーザの近似関数パラメータ705を用いて、ユーザ105の重量覚と抵抗覚の推定が可能になる。
【0058】
本発明の第三の実施形態においては、重量感覚推定システム1101を開示した。
第三の実施形態に係る重量感覚推定演算装置1102では、深層回帰学習器1103の教師データとして、圧力データに加え、匿名ユーザID907を与えることにより、多数のユーザ105の筋変位データを区別して、重量覚と抵抗覚を推定することを可能にした。
【0059】
以上に述べた第一の実施形態、第二の実施形態、第三の実施形態の何れの場合においても、重量感覚推定システムは筋肉センサ装置102と重量感覚推定演算装置の組み合わせで構成され、筋肉センサ装置102と重量感覚推定演算装置は相互に近距離無線通信を行っていた。無線通信は、発明者らが開発し発売する製品に組み込まれている機能であるため、重量感覚推定演算装置との通信に利用している。
仮に、重量感覚推定演算装置と有線通信を行う筋肉センサ装置を構成しても、本発明は成立する。すなわち、本発明において無線通信は必須の構成要件ではない。
有線通信と無線通信の上位概念として、筋肉センサ装置には送信部が、重量感覚推定演算装置には受信部が設けられる。
【0060】
この場合、重量感覚推定システムは、
ユーザの体表面に装着される筋肉センサ装置と、前記筋肉センサ装置と通信を行う重量感覚推定演算装置とよりなる重量感覚推定システムであって、
前記筋肉センサ装置は、
ユーザの体表面に密着するベルトと、
前記ベルトに複数個設けられ、赤外線LEDと光センサで構成されるフォトリフレクタである筋変位センサ群と、
前記筋変位センサ群から得られる筋変位データを重量感覚推定演算装置へ送信する送信部と
を具備し、
前記重量感覚推定演算装置は、
前記送信部から前記筋変位データを受信する受信部と、
前記受信部から受信した前記筋変位データを特徴ベクトルとして読み込み、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する回帰推定器と
を具備する。
【0061】
更に、重量感覚推定演算装置の演算処理機能を筋肉センサ装置102に組み込むことも、原理的には可能である。この場合、筋肉センサ装置は重量感覚推定演算機能を包含する、重量感覚推定装置として機能する。重量感覚推定装置が算出する重量感覚推定演算結果は、周知のスマートフォン等に近距離無線通信等で送信して、ディスプレイに表示させればよい。
特に、第一の実施形態及び第二の実施形態は、単一の重量感覚推定装置を実現する可能性が高い。具体的には、先ず、回帰学習器701と分類学習器905をパソコン等で実行して近似関数パラメータ705と近似モデルパラメータ908を作成する。そして、回帰推定器801と分類推定器1001、そして近似関数パラメータ705と近似モデルパラメータ908を筋肉センサ装置102に内蔵されるマイコンで実現する。回帰推定器801と分類推定器1001の演算負荷は回帰学習器701と分類学習器905と比べて軽いので、筋肉センサ装置102に内蔵されるマイコンの演算能力を増強することで、筋肉センサ装置単体で重量感覚推定装置を実現する可能性が高い。
【0062】
この場合、重量感覚推定装置は、
ユーザの体表面に密着するベルトと、
前記ベルトに複数個設けられ、赤外線LEDと光センサで構成されるフォトリフレクタである筋変位センサ群と、
前記筋変位センサ群から得られる筋変位データを特徴ベクトルとして読み込み、前記ユーザの重量覚と抵抗覚の推定値である圧力推定データを出力する回帰推定器と
を具備する。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0064】
101…重量感覚推定システム、102…筋肉センサ装置、103…重量感覚推定演算装置、104…圧力センサ、105…ユーザ、106…対象物、201…本体部、202…表側ベルト、203…裏側ベルト、204…電源スイッチ、205…バックル、206…穴、207…検出孔、312…ジャイロセンサ、501…バス、502…CPU、503…ROM、504…RAM、505…A/D変換器、506…第二シリアルインターフェース、507…ワンチップマイコン、508…第一マルチプレクサ、510…第二マルチプレクサ、512…ジャイロセンサ、513…近距離無線通信部、514…第一シリアルインターフェース、540…筋変位センサ群、601…バス、602…CPU、603…ROM、604…RAM、605…表示部、606…操作部、607…不揮発性ストレージ、608…近距離無線通信部、609…タッチパネルディスプレイ、701…回帰学習器、702…A/D変換器、703…近距離無線送信部、704…近距離無線受信部、705…近似関数パラメータ、801…回帰推定器、802…表示処理部、901…重量感覚推定システム、902…重量感覚推定演算装置、903…入出力制御部、904…筋変位データスイッチ、905…分類学習器、906…案内画面生成処理部、908…近似モデルパラメータ、909…個人別筋変位パラメータ群、1001…分類推定器、1002…近似関数パラメータテーブル、1101…重量感覚推定システム、1102…重量感覚推定演算装置、1103…深層回帰学習器、1104…近似関数パラメータ、1201…深層回帰推定器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13