(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】アルファコアヘリックスを有する抗微生物ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/44 20060101AFI20230330BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230330BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230330BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
C07K14/44 ZNA
A61K38/17
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
(21)【出願番号】P 2019561986
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(86)【国際出願番号】 US2018032133
(87)【国際公開番号】W WO2018209127
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-06
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502170175
【氏名又は名称】ロサンゼルス バイオメディカル リサーチ インスティテュート アット ハーバー- ユーシーエルエー メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨーント、ナネッテ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤーマン、マイケル アール.
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2003-0061718(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0121384(US,A1)
【文献】国際公開第2017/048092(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232521(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0076173(US,A1)
【文献】米国特許第05607914(US,A)
【文献】Accession No. G1N9U6,Database UniProt [online],2011年,インターネット<https://www.uniprot.org/uniprot/G1N9U6.txt?version=1>[検索日2022年5月18日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列識別番号
8のアミノ酸配列、
または、1つの
保存的アミノ酸置換を有する配列識別番号
8に由来するアミノ酸
配列を備える単離ペプチドであって、
長さが
50アミノ酸残基より長くない、
抗微生物活性を有する、単離ペプチド。
【請求項2】
配列識別番号
8のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の単離ペプチド。
【請求項3】
1または複数の非天然のアミノ酸残基を含む、請求項1
または2に記載の単離ペプチ
ド。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の単離ペプチ
ド、および、薬学的に許容される担体を備える組成物。
【請求項5】
抗微生物剤を更に備える、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗微生物剤は、イミペネム、セフタジジム、コリスチン、クロロキン、アルテミシニン、バンコマイシンおよびダプトマイシンから成るグループから選択される、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
感染を治療するための請求項1から3のいずれか一項に記載の単離ペプチド。
【請求項8】
感染を治療するための請求項4から6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119条(e)の定めにより、2017年5月11日に出願された、米国仮特許出願第62/505,013号の利益を主張するものであり、その内容全体は参照によって本開示に組み込まれる。
【0002】
[配列表]
本願は、EFS‐Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、その全体は、参照によって、ここに組み込まれる。2018年5月9日に生成された上述のASCIIコピーの名称は、254302WO_ST25.txtであり、サイズは2,033,153バイトである。
【背景技術】
【0003】
抗微生物宿主防御ペプチド(AHDP)は、競合する微生物を無力化するための手段として、最初に原核生物において発生した、進化的には古い、宿主防御の武器である。その後、すべてのクラスの真核生物において、類似のペプチドが進化し、微生物の侵入者に対する防御の第一線として機能を続けている。ほぼ全部の生物のAHDPは、典型的には、サイズが小さく、カチオン性で両親媒性であり、この特性は、殺菌活性のために必須であると考えられている。微生物の表面電荷および膜電位が相対的に電気陰性であることを考慮すると、カチオン性は、微生物に対する選択性を付与すると考えられる。両親媒性は、AHDPが標的微生物膜に結合して透過性にすることに成功するために重要な特徴であることが示されている。
【0004】
真核生物のAHDPは、急激に進化する標的細菌に作用することを考慮すると、その効力を維持するために、必然的に同じように反応する必要がある。この宿主と微生物との軍拡競争は、これまで研究されてきた、最も急激に進化する配列の一部であることが示されたAHAPにおける非常に高い変異耐性を可能にする正の選択圧をもたらした。このプロセスは、進化的な時間スケールを通じて複雑化されたとき、殺菌効果を発揮することが可能な真核生物の配列および構造の、非常に多様性のあるレパートリーを生じさせた。
【0005】
真核生物のAHDPにおける固有の多様性は、共通の殺菌モチーフおよびSARの識別を困難にしてきた。多くの研究グループが、そのようなモチーフを同定することを試みるべく、コンピュータおよび/またはQSARの方法を利用してきたが、それらは概ね、改善された薬剤候補を識別することに焦点を当ててきた。その結果、これらの調査は、多くの最適化された、または、改善されたペプチドベースの治療を識別してきたが、天然型ペプチドに殺菌活性を付与する、統一的な物理化学的および3次元的特徴は、まだ完全に定義されていない。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、広いクラスの高等真核生物のαヘリックス抗微生物ペプチド(AHAP)を表すコンセンサスフォーミュラの識別を説明する。このフォーミュラが、プロテオームデータベースに対する論理検索方法のコンポーネントとして適用されるとき、既知のAHAPファミリーの大部分が一貫して取得される。更に、このコンセンサスフォーミュラは、多くの推定上の新規の殺菌性ペプチドを識別すること、および、そのような活性がまだ割り当てられていないタンパク質における抗微生物活性を変換することに役立った。従って、本開示の一実施形態によれば、殺菌性ペプチド、組成物、方法および使用、ならびに、コンセンサスフォーミュラを識別するための、および、殺菌性ペプチドを検索するためのコンピュータシステムおよび方法が提供される。
【0007】
一実施形態において、本開示は、配列識別番号1-14から成るグループから選択されるアミノ酸配列と、1つのアミノ酸置換を有する配列識別番号1-14のいずれか1つに由来するアミノ酸とを備えるペプチドを提供し、ペプチドは、長さが100アミノ酸残基より長くない。
【0008】
いくつかの実施形態において、ペプチドは抗微生物活性を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列識別番号1-14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列識別番号13または14のアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、長さが75アミノ酸残基より長くない。いくつかの実施形態において、ペプチドは、長さが60アミノ酸残基より長くない。
【0010】
いくつかの実施形態において、配列識別番号19-6860のアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸置換を有する配列識別番号19-6860の配列に由来するアミノ酸を備えるペプチドが提供され、ペプチドは、長さが100アミノ酸残基より長くない。
【0011】
いくつかの実施形態において、配列識別番号19-6860の配列、または、1つのアミノ酸置換を有する配列識別番号19-6860の配列に由来するアミノ酸から選択される第1断片と、抗微生物活性を有する第2断片とを備える融合ペプチドも提供され、融合ペプチドは、長さが100アミノ酸残基より長くない。いくつかの実施形態において、第2断片は、短いターン領域が挟まれる2つの逆平行βシートを含むガンマコアモチーフを含み、βシートの1つにGXCまたはCXG配列パターンが組み込まれる。いくつかの実施形態において、ガンマコアモチーフは、CPTAQLIATLKNGRKICLDLQ(配列識別番号15)、または、配列識別番号15との少なくとも85%の配列同一性を有する第1アミノ酸配列を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、ペプチドまたは融合ペプチドは、1または複数の非天然アミノ酸残基を含む。
【0013】
一実施形態において、ペプチドまたは融合ペプチド、および、薬学的に許容される担体を備える組成物も提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、抗微生物剤を更に備える。いくつかの実施形態において、抗微生物剤は、イミペネム、セフタジジム、コリスチン、クロロキン、アルテミシニン、バンコマイシンおよびダプトマイシンから成るグループから選択される。
【0014】
一実施形態において、治療を必要とする患者における感染を治療する方法であって、組成物の有効量を患者に投与する段階を備える方法が提供される。いくつかの実施形態において、感染は、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または、真菌によって引き起こされる。
【0015】
コンピュータ実装方法も提供される。一実施形態において、抗微生物活性を有するペプチドを識別する方法であって、抗微生物活性を有することが知られているアラインされたアミノ酸配列からコンセンサスフォーミュラを識別する段階と、周知の抗微生物活性を有する複数のタンパク質に対する試験検索でコンセンサスフォーミュラを調整する段階と、1または複数のプロセッサを用いて、タンパク質データベースにおいて、コンセンサスフォーミュラと一致するアミノ酸断片を検索する段階であって、検索は、入力として、タンパク質における断片の位置、タンパク質のサイズ、タンパク質の生物、および、タンパク質のシグナルペプチドから成るグループから選択された1または複数の基準を取る、段階とを備える方法が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、調整は、コンセンサスフォーミュラの長さを短くすること、または、1または複数のアミノ酸残基における置換の選択肢を変更することを含む。
【0017】
別の実施形態において、αヘリックス抗微生物ペプチドを識別するコンピュータ実装方法であって、1または複数のプロセッサを用いて、以下のコンセンサスフォーミュラ、X-[VILMCFWYAG]-[KRHEDNQSTAG]-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]-[VILMCFWYAG]-[KRHEDNQSTAG]-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]-X-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]に一致するアミノ酸断片をタンパク質データベースにおいて検索する段階であって、Xは任意のアミノ酸残基を示す、段階と、それぞれの前記タンパク質におけるシグナルペプチドの存在に基づいて、検索された断片をフィルタリングする段階と、疎水性モーメント、平均疎水性、正味電荷、KおよびRの頻度または比、および、等電点から成るグループから選択される1または複数の基準について、検索された断片を評価する段階とを備える方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本技術の様々な実施形態の特定の特徴は、特に、添付の特許請求において説明される。技術の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および、その添付図面を参照することによって、技術の特徴および利点がより良く理解されるであろう。
【0019】
【
図1A】αコア配列フォーミュラのグラフィック表示を示す。18残基αコア配列フォーミュラのヘリックスホイールの描画である。疎水性残基(F、W、Y、V、I、L、M、C、A、G)は、緑色で様々な網掛け表示がされている。疎水性が高いほど濃い色で示されている。親水性残基(K、R、H、E、D、N、Q、S、T、A、G)は、カチオン性が青色で、アニオン性が赤色で、非荷電極性が橙色で表される。アラニン(黄緑色)およびグリシン(黄色)は、親水性および疎水性の両方のグループに含まれる。H-疎水性、P-極性。
【
図1B】αコア配列フォーミュラのグラフィック表示を示す。線状フォーミュラを表す概略図である。
図1Aの説明を参照。
【0020】
【
図2A】αコア配列フォーミュラを有する典型的なAHAPのアライメントを示す。反復αコアフォーミュラをスキャンするための18の開始点を示し、SwissProtデータベースをクエリするためにProSiteパターン検索ツールが利用されるプロセスを表す。色彩は
図1A、
図1Bに従う。
【0021】
【
図3】αコアフォーミュラの反復最適化を示す。極性(親水性)または非極性(疎水性)残基の組のいずれかのコンポーネントとしてのグリシンおよび/またはアラニンの必要性を評価するべく、αコアフォーミュラの反復改良を実行した。400ペプチドより多くの対照AHAPデータセットから返された配列の割合を示す。
【0022】
【
図4】新しいAHAP配列を識別するプロセスを示す。
【0023】
【
図5】位置および空間的な両親媒性残基頻度をクラス別に示す。研究対象ペプチドの極性または非極性いずれかのペプチド面における個々の残基の割合が、様々な色のブロックによって表される。x軸の上の残基は、取得されたペプチドの極性面に見られ、軸の下の残基は、非極性面に見られる。 パネルA.節足動物 パネルB.両生動物 パネルC.高等脊椎動物
【0024】
【
図6】AHAPおよび毒素ヘリックスにおけるN
K/N
K+N
R比および疎水性の比較を示す。アルギニン(N
R)に対するリシン(N
K)の割合を、研究対象のAHAPおよび毒素における疎水性(H)に対する(N
K/N
K+N
R)によって表される。サドルスプレー規則によって予測されるように、アルギニンと比較したリシンの選好が、膜においてNGCを生成することが可能なペプチドについてのHの増加した値において反映される。
【0025】
【
図7】研究対象ペプチドにおける正味電荷と疎水性モーメントとのマッピングを示す。取得されたペプチドのデータセットについて、疎水性モーメント(μH)に対する正味電荷(Q)の値を示す。取得された配列の全部を灰色で示す。更なる特性評価のために選択されたペプチドグループを色で示す。比較のために、典型的なAHAPを桃色で示す。
【0026】
【
図8A】研究試験ペプチドのヘリックスホイール描画を示す。疎水性モーメント(μH)およびベクトル角度方向を示す。色分け:カチオン完全荷電(KR)‐青色、部分荷電(H)‐水色、アニオン‐赤色、極性‐黄色、小‐灰色、極性(NQ)‐桃色、(TS)‐紫色。
【0027】
【
図9】研究試験ペプチドの抗微生物活性を示す。天然の生理的(pH7.5)またはファゴリソソーム(pH5.5)環境を表す2つのpHにおける、典型的なグラム陽性(S. aureus)、グラム陰性(S. typhimurium, P. aeruginosa, A. baumannii)、および、真菌(C. albicans)病原体のパネルに対する、研究試験ペプチドの殺菌活性を示す。
【0028】
【
図10】いくつかの実装に係る方法のプロセスのフローチャートの例を示す。
【0029】
【
図11】本明細書において説明される実装のいずれかが実装され得るコンピュータシステムの例のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、説明された特定の実施形態に限定されるものではなく、従って、当然変化し得ることを理解されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって限定されるので、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0031】
本明細書および添付の特許請求において使用される場合、単数形式である「1」、「一」および「ある」は、文脈上明らかに別の意味を表す場合を除き、複数形を含むことに留意されたい。従って、例えば、「あるペプチド」という表現は、複数のペプチドを含む。
【0032】
[1.定義]
別段の定めが無い限り、本明細書において使用される全部の技術および科学用語は、本開示に関連する当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において使用される以下の用語は、以下の意味を有する。
【0033】
本明細書において使用される場合、「備える」または「含む」という用語は、組成物および方法が、列挙された要素を含むことを意味するが、他のものを除外しないことを意図する。「基本的に成る」は、組成物および方法を定義するために使用されるとき、記述される目的のための組み合わせにとって何らかの本質的な重要性を有する他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書において定義される要素から基本的に成る組成物は、請求される基本的かつ新規の特性に実質的な影響を与えない他の材料または段階を除外しないであろう。「から成る」は、微量以上の他の成分と、方法の実質的なステップとを除外することを意味するものとする。これらの転換語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0034】
「約」という用語は、数字の指定、例えば、温度、時間、量および濃度(範囲を含む)の前で使用されるとき、±10%、5%、または、1%だけ変化し得る近似値を示す。
【0035】
本明細書において使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間のアミノ酸残基またはヌクレオチド同一性の程度を指す。比較される配列内のある位置が、同一の塩基またはアミノ酸によって占められるとき、分子はその位置において同一である。ペプチド(またはポリペプチドまたはペプチド領域)が、別の配列と、特定の割合(例えば、少なくとも約60%、または、少なくとも約65%、または、少なくとも約70%、または、少なくとも約75%、または、少なくとも約80%、または、少なくとも約83%、または、少なくとも約85%、または、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%、または、少なくとも約98%、または、少なくとも約99%)の配列同一性を有することは、アラインされたとき、2つの配列の比較において、塩基(またはアミノ酸)の割合が同一であることを意味する。本出願において開示される任意の配列(「参考配列」)について、参考配列に対して少なくとも約60%、または、少なくとも約65%、または、少なくとも約70%、または、少なくとも約75%、または、少なくとも約80%、または、少なくとも約83%、または、少なくとも約85%、または、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%、または、少なくとも約98%、または、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列も、本開示内に含まれることに留意されたい。
【0036】
同様に、本開示はまたは、参考配列と比較して、1、2、3、4または5つのアミノ酸残基またはヌクレオチドの置換、欠失または追加を有する配列を含む。
【0037】
本明細書において説明される実施形態のいずれかにおいて、本明細書において説明される任意のアミノ酸配列を含むペプチドの類似体も提供される。これらは、参考アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、または、少なくとも約83%、または、少なくとも約85%、または、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%、または、少なくとも約98%、または、少なくとも約99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、類似体は、参考配列と比較して、アミノ酸残基の1、2、3、4、または5つの置換、欠失、または追加を含む。いくつかの実施形態において、置換は、保存的置換である。
【0038】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを指し、グリシン、D型およびL型光学異性体の両方、アミノ酸類似体、ならびに、ペプチド模倣体を含む。いくつかの実施形態において、非天然アミノ酸は、所望の抗微生物特性のために、ヘリックス、または、ペプチドもしくはタンパク質の他の二次もしくは三次構造を調整または改変するのに有用である。
【0039】
当技術分野において周知であるように、アミノ酸の「保存的置換」またはペプチドの「保存的置換バリアント」は、1)ペプチドの二次構造、2)アミノ酸の電荷または疎水性、および、3)側鎖の嵩高性、または、これらの特性のうち任意の1または複数を維持するアミノ酸置換を指す。例として、周知の用語である「親水性残基」は、セリンまたはスレオニンに関連する。「疎水性残基」は、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、またはアラニンなどを指す。「正電荷残基」は、リシン、アルギニン、オルニチン、またはヒスチジンに関連する。「負荷電残基」は、アスパラギン酸またはグルタミン酸を指す。「嵩高側鎖」を有する残基は、フェニルアラニン、トリプトファンまたはチロシンなどを指す。例示的な保存的アミノ酸置換のリストをテーブルAに示す。
[テーブルA]
【表1】
【0040】
代替的に、保存的アミノ酸置換の非限定的な例を下のテーブルBに提供する。0以上の類似性スコアは、2つのアミノ酸間の保存的置換を示す。
[テーブルB]
【表2】
【0041】
代替的に、保存的アミノ酸置換の非限定的な例は、下のテーブルCに示されるように、極性アミノ酸を異なる極性アミノ酸で置換すること、または、疎水性アミノ酸を異なる疎水性アミノ酸で置換することを含む。いくつかの実施形態において、極性アミノ酸または疎水性アミノ酸の各々は、AlaまたはGlyと置換できる。
テーブルC
【表3】
【0042】
本明細書において使用される場合、「組成物」という用語は、少なくとも1つの医薬活性成分を含む、治療目的のために意図した患者に投与することに適切な製剤を指し、その任意の固体形態を含む。組成物は、化合物の製剤化の改善を提供するために、好適な担体など、少なくとも1つの薬学的に許容される成分を含み得る。特定の実施形態において、組成物は、フィルム、ゲル、パッチ、または溶液として製剤化される。
【0043】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、指示された材料が、合理的に慎重な医療従事者が、治療される疾患または病状、および、それぞれの投与経路を考慮して、当該材料を患者に投与することを避けるような特性を有しないことを示す。例えば、そのような材料は、本質的に無菌であることが一般に要求される。
【0044】
[2.抗微生物αヘリックス抗微生物ペプチド]
本開示は、いくつかの実施形態において、周知のαヘリックス抗微生物ペプチドから系統的フォーミュラを生成するための、および、当該フォーミュラを使用して新しいαヘリックス抗微生物ペプチドをスクリーニングするためのコンピュータ的手法を説明する。系統的フォーミュラは、理想的な両親媒性の特徴、および/または、標準右手αヘリックスの最大18の位置に及ぶ抗微生物ヘリックスを統合する。結果は、ほぼ全部のファミリーの周知の抗微生物αヘリックスペプチドが当該フォーミュラとアラインすることを示す。加えて、多くの以前の未同定配列が、直接的な抗微生物活性を有することが予測された。選択された候補の合成、および、ヒト病原体に対するin vitroの有効性により、モデル予測の信憑性が確認され、αコアフォーミュラおよび検索方針の妥当性が立証された。その結果、新規のタンパク質およびペプチドファミリー、ならびに、それらの特異的な配列が、従来は有するとされなかった有効かつ直接的な殺菌効果を有するものとして識別された。
【0045】
識別されたタンパク質およびペプチドファミリー、ならびに、その特異的な配列を、テーブル2-4および配列識別番号518-6860に提供する。いくつかの実施形態において、テーブル2、3または4のアミノ酸配列、または、配列識別番号518-6860のいずれか1つ、または、1、2または3のアミノ酸置換を有する、それらに由来するアミノ酸を含む単離ペプチドが提供される。いくつかの実施形態において、置換は、保存的置換である。いくつかの実施形態において、置換は、極性アミノ酸を異なる極性アミノ酸(またはAまたはG)と置き換えること、または、疎水性アミノ酸を異なる疎水性アミノ酸(またはAまたはG)と置き換えることである。
【0046】
いくつかの実施形態において、配列識別番号1-14から成るグループから選択されるアミノ酸配列、および、1、2または3のアミノ酸置換を有する配列識別番号1-14のいずれか1つに由来するアミノ酸を含む単離ペプチドが提供される。いくつかの実施形態において、置換は保存的置換である。いくつかの実施形態において、置換は、極性アミノ酸を異なる極性アミノ酸(またはAまたはG)と置き換えること、または、疎水性アミノ酸を異なる疎水性アミノ酸(またはAまたはG)と置き換えることである。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列識別番号1-14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、天然タンパク質に由来する断片または融合ペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチドは、少なくともアミノ酸の置換、追加、または、欠失によって、天然タンパク質と異なる。
【0048】
いくつかの実施形態において、ペプチドの長さは、100アミノ酸残基より長くない。いくつかの実施形態において、ペプチドの長さは、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30または25アミノ酸残基より長くない。いくつかの実施形態において、ペプチドは抗微生物活性を有する。
【0049】
融合ペプチドも説明する。一実施形態において、本開示は、テーブル2、3または4の配列、または、配列識別番号518-6860のいずれか1つ、または、テーブル2もしくは3の配列に由来するアミノ酸、または、1、2または3のアミノ酸置換を有する配列識別番号518-6860のいずれか1つから選択される第1断片、および、抗微生物活性を有する第2断片を備える融合ペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、第2断片は、短いターン領域が挟まれる2つの逆平行βシートを含むガンマコアモチーフを含み、βシートの1つにGXCまたはCXG配列パターンが組み込まれる。
【0050】
本明細書において使用される場合、「ガンマコアモチーフ」または「γコア」という用語、および、それらの同等物は、多次元タンパク質シグネチャ、特に、多次元抗微生物シグネチャを指し、特に、短いターン領域が挟まれた2つの逆平行βシートを特徴とし、1つのβシートに、保存されたGXC(dextromeric)またはCXG(levomeric)配列パターンが組み込まれる。γコアモチーフを特徴付ける更なる特徴には、C末端方向への疎水性バイアス、および、βシートドメインの屈曲点および末端に位置するカチオン電荷が含まれ、γコアの長手方向軸に沿って電荷を分極させる。
【0051】
キノシジンγコア(γKCコア)シグネチャは、抗微生物ペプチドγコア(γAP)の反復であり、典型的には塩基性残基に隣接する中央の疎水性領域を有する13~17アミノ酸パターンを含む逆平行βヘアピンに一致する。γKCコアモチーフは、以下のコンセンサス配列フォーミュラを特徴とし得る。NH2 [C]-[X10-13]-[GX2-3C]-[X2]-[P] COOH
【0052】
キノシジンγコア(γKCコア)シグネチャを含むヒトIL-8は配列NH2 CANTEIIVKLSDGRELCLDP COOHを有する。
【0053】
IL-8配列のこの断片は、コンセンサスγ
KCコアモチーフと一致する。更に、多くのキノシジンは、繰り返しのアミノ酸位置パターンを示し、コンセンサスγ
KCコアフォーミュラと一致する。
【数1】
Zは、疎水性残基A、F、I、L、V、W、Yを表す。Bは、荷電または極性残基D、E、H、K、N、R、Qを表す。C、PまたはGは、システイン、プロリン、またはグリシンにそれぞれ対応する。Xは、可変アミノ酸位置を示す。括弧で囲まれた位置の数字の上付き文字は、相対頻度を百分率で示す。共通の代替的な残基を下に列挙する。
【0054】
一実施形態において、ガンマコアモチーフは、CPTAQLIATLKNGRKICLDLQ(配列識別番号15)、または、配列識別番号15と少なくとも85%の配列同一性を有する第1アミノ酸配列を含む、一態様において、γコアのバリアントは、CPTAQLIATLKNGRKICLDLQP(配列識別番号16)、CPTAQLIATLKNGRKICLDLQAP(配列識別番号17)、および、CPTAQLIATLKNGRKICLDLQA(配列識別番号18)を含み得る。
【0055】
好ましくは10アミノ酸以下の長さである第1断片と第2断片との間に、任意でリンカが含まれ得る。いくつかの態様において、スペーサの長さは、9、8、6、5、4、3、2アミノ酸であるか、または、より短い。スペーサは、Ala、Pro、Cys、およびGlyなどの任意のアミノ酸を含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、融合ペプチドは抗微生物活性を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物応答調節剤、医薬品、またはPEGと結合され得る。
【0057】
ペプチドは、放射性標識などの検出可能な標識を含み得る治療剤、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤または診断剤、薬剤または毒素であり得る細胞毒性剤、超音波造影剤、非放射性標識、それらの組み合わせ、および、当技術分野において周知である他の薬剤に結合または融合され得る。ペプチドは、化学発光化合物と結合させることによって、検出可能に標識できる。その後、化学発光標識された抗原結合ポリペプチドの存在は、化学反応の過程において生じる発光の存在を検出することによって判定される。特に有用な化学発光標識化合物の例には、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルがある。
【0058】
[3.抗微生物ペプチドの合成]
本明細書において説明されるペプチドは、商業的供給源から注文できる、または、当技術分野において周知である方法(例えば、化学的および/または生物工学的方法)を使用して部分的にまたは完全に合成できる。特定の実施形態において、ペプチドは、当技術分野において周知であるペプチド固相合成法のプロトコルに従って合成される。別の実施形態において、ペプチドは、周知のFmocプロトコルに従って固相担体上で合成され、トリフルオロ酢酸を用いて担体から切断され、当業者に周知の方法に従って、クロマトグラフィによって精製される。他の実施形態において、ペプチドは、当業者にとって周知である、バイオテクノロジーの方法を利用することによって合成される。一実施形態において、所望されるペプチドのためのアミノ酸配列情報をコードするDNA配列は、当業者に周知のDNA組換え技法によって、発現プラスミド(例えば、ペプチドのアフィニティ精製のためのアフィニティタグを組み込むプラスミド)の中に連結され、プラスミドは、発現のために宿主生物に導入され、ペプチドは次に、例えばアフィニティ精製によって宿主生物または成長培地から分離される。
【0059】
ペプチドは、組換え発現系を使用しても調製できる。これは一般的に、核酸分子を、その核酸分子にとって異種である(すなわち、その核酸分子が通常は存在しない)発現系に挿入することを伴う。本開示のペプチドをコードする1または複数の所望の核酸分子は、ベクターの中に挿入され得る。複数の核酸分子が挿入されるとき、複数の核酸分子は、同一の、または異なるペプチドをコードし得る。異種の核酸分子は、プロモーターおよび任意の他の5'調節分子、ならびに、正しいリーディングフレームに対して適切な読み取り(5'→3')方向となるように発現系またはベクターの中に挿入される。
【0060】
精製されたペプチドは、いくつかの方法によって取得され得る。ペプチドは、好ましくは、従来の技法によって、精製された形態(好ましくは、少なくとも約80%もしくは85%の純度、より好ましくは、少なくとも約90%もしくは95%の純度)で生成される。組換え宿主細胞が、ペプチドを成長培地の中に分泌するように作成されている(参照によって全体が本明細書に組み込まれる、Bauer et al.の米国特許第6,596,509号を参照されたい)かどうかに応じて、ペプチドは、(分泌されたペプチドを含む上清から細胞成分を分離するための)遠心分離、および、それに続く、上清の逐次的な硫酸アンモニウム沈殿によって分離および精製できる。他のタンパク質からペプチドを分離するために、ペプチドを含む分画は、適切な大きさのデキストランまたはポリアクリルアミドのカラムにおいてゲル濾過を受ける。必要な場合、ペプチド分画は、HPLCによって更に精製され得る。
【0061】
[4.抗微生物組成物および製剤]
本明細書において開示されるような任意の1または複数のペプチドを含む組成物および製剤も提供される。一実施形態において、組成物は、任意の1または複数のペプチド、および、薬学的に許容される担体を含む。
【0062】
「薬学的に許容される担体」とは、本開示の組成物において使用され得る任意の希釈剤、賦形剤、または、担体を指す。薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミンなどの塩もしくは電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が含まれる。好適な医薬担体は、当技術分野における標準的な参考文書である、Mack Publishing CompanyのRemington's Pharmaceutical Sciencesにおいて説明されている。好適な医薬担体は、好ましくは、意図される投与形態、すなわち、経口錠剤、カプセル、エリキシル剤、およびシロップなどを考慮して、かつ、従来の薬学的な慣行と一致するように選択される。
【0063】
本開示の医薬組成物は、とりわけ従来の顆粒化、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、または、乳化プロセスなどの、当技術分野において周知である方法によって製造できる。組成物は、顆粒、沈殿物、微粒子、(冷凍乾燥、回転乾燥、または噴霧乾燥された粉末を含む)粉末、非晶質粉末、注射液、エマルション、エリキシル剤、懸濁液、または溶液を含む様々な形態で生成され得る。製剤は、安定剤、pH調節剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調節剤、および、これらの組み合わせを任意で含み得る。
【0064】
医薬製剤は、油、水、アルコール、および、それらの組み合わせなどの無菌液体を使用して、懸濁液または溶液として調製され得る。経口投与または非経口投与のために、薬学的に好適な界面活性剤、懸濁剤、または乳化剤が添加され得る。懸濁液は、落花生油、ゴマ油、綿実油、コーン油、およびオリーブ油などの油を含み得る。また、懸濁製剤は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド、およびアセチル化脂肪酸グリセリドなどの、脂肪酸のエステルを含み得る。懸濁製剤は、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロール、およびプロピレングリコールなどのアルコールを含み得る。また、ポリ(エチレングリコール)などのエーテル、鉱油およびペトロラタムなどの石油系炭化水素、ならびに水が、懸濁製剤において使用され得る。
【0065】
本開示の組成物は、哺乳動物、好ましくは、ヒトへの医薬投与のために製剤化される。本開示のそのような医薬組成物は、様々な経路で、好ましくは非経口的に投与され得る。
【0066】
本開示の組成物の無菌注射液形態は、水性または油性の懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、当技術分野において周知の技法に従って製剤化され得る。また、無菌注射液の製剤は、例えば、1,3‐ブタンジオール溶液などの、非経口的に許容される非毒性の希釈剤または溶媒における無菌注射液の溶液または懸濁液であり得る。利用され得る許容可能な賦形剤および溶媒は、水、リンガー溶液、等張食塩水であり得る。加えて、無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁媒として従来利用されている。この目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む、任意の無菌性の不揮発性油が利用され得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油またはひまし油、特にそれらのポリオキシエチル化されたバージョンなどの薬学的に許容される天然の油と同様に、注射液の製剤において有用である。また、これらの油の溶液または懸濁液は、エマルションおよび懸濁液を含む、薬学的に許容される剤形の製剤において一般的に使用されるカルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤などの、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含み得る。Tween、Span、および他の乳化剤などの、一般的に使用される他の界面活性剤、または、薬学的に許容される固体、液体、もしくは他の剤形の製造において使用されるバイオアベイラビリティ促進剤も、製剤の目的のために一般的に使用され得る。ボーラス注射または持続注入などの、注射による非経口投与のために化合物が製剤化され得る。注射のための単位剤形は、アンプルまたは多回投与容器であり得る。
【0067】
上述の剤形に加えて、薬学的に許容される賦形剤および担体ならびに剤形は一般に、当業者に周知であり、本開示に含まれる。任意の特定の患者に対する具体的な投与および治療計画は、採用される具体的なペプチドの活性、年齢、体重、健康全般、性別および食事、患者の腎肝機能、投与時間、排泄率、併用薬剤、治療する医師または獣医の判断、治療される特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存することを理解すべきである。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物は、二次的な抗微生物剤を更に含み得る。そのような薬剤の非限定的な例には、イミペネム、セフタジジム、コリスチン、クロロキン、アルテミシニン、バンコマイシンおよびダプトマイシンが含まれる。
【0069】
[5.治療方法]
本開示のペプチド、組成物および製剤を使用する方法も説明する。一実施形態において、方法は、微生物の感染を予防または治療するためのものである。微生物は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌などの細菌、真菌または寄生虫であり得る。
【0070】
ペプチド、組成物および製剤はまた、創部膿瘍、カテーテルバイオフィルム、肺炎、菌血症などの感染に関連する疾患または病状を治療するのに有用である。
【0071】
いくつかの実施形態において、治療方法は更に、第2の二次的な抗微生物剤を同時に、または、順次に投与することを含む。そのような薬剤の非限定的な例として、イミペネム、セフタジジム、コリスチン、クロロキン、アルテミシニン、バンコマイシンおよびダプトマイシンが含まれる。
【0072】
本開示のペプチド、組成物および製剤は、非経口投与を介して、体循環に投与され得る。本明細書において使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内の注射または注入の技法を含む。しかしながら、感染が特定の場所(例えば、皮膚上)にある場合、組成物は、局所投与など、特定の場所において投与され得る。
【0073】
[6.コンピュータシステムおよび方法]
本開示は、いくつかの実施形態において、抗菌配列を識別するためのコンピュータ実装方法、および、関連するシステム、および、非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。一実施形態において、方法1000のプロセスフローチャートである
図10に示されるように、抗微生物活性を有するペプチドを識別するコンピュータ実装方法が提供される。
図10(および他の図面)に描画される様々なプロセス工程および/またはデータフローは、本明細書においてより詳細に説明される。説明される工程は、上で詳細に説明されるシステムコンポーネントの一部または全部を使用して実現され得る。一部の実装において、様々な工程は、異なる順序で実行され得て、様々な工程は省略され得る。更なる工程が、描画されたフロー図に示される工程の一部または全部と共に実行され得る。1または複数の工程は、同時に実行され得る。従って、示される(下でより詳細に説明される)工程は、本質的に例示的なものであり、したがって、限定的なものとしてみなされるべきではない。
【0074】
ステップ1002において、ユーザコマンドに従って、パーソナルコンピューティング装置などのシステムは、抗微生物活性を有することが知られている、アラインされたアミノ酸配列から、αヘリックス抗微生物ペプチドとして知られているものなど、コンセンサスフォーミュラを識別する。フォーミュラの例は、X-[VILMCFWYAG]-[KRHEDNQSTAG]-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]-[VILMCFWYAG]-[KRHEDNQSTAG]-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]-X-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]であり、Xは、任意のアミノ酸残基を示す。フォーミュラは、周知の抗微生物ペプチドを含むデータセットで試験でき、フォーミュラは、更に調整できる(ステップ1004)。例えば、フォーミュラは、短く、または、長くされ得て、または、特定のアミノ酸残基は、より多い、もしくは、より少ない置換を含むことができる。
【0075】
フォーミュラは次に、フォーミュラの要件に一致する配列または断片について、タンパク質データベースにおいて検索するために使用できる(ステップ1006)。いくつかの実施形態において、検索クエリは、タンパク質における断片の位置、タンパク質のサイズ、および、タンパク質の生物など、1または複数基準を含む(ステップ1008)。特に、一実施形態において、検索結果は更に、対応するタンパク質におけるシグナルペプチドの存在について評価される。
【0076】
いくつかの実施形態において、生物学的、化学的、物理学的、または、配列的な特性に関して、検索結果が更に評価される。特性の例には、疎水性モーメント、平均疎水性、正味電荷、KおよびRの頻度または比、ならびに等電点(PI)が含まれるが、これらに限定されない。これらの評価スコアの各々は、検索結果を優先付け、ランク付け、フィルタリングするために使用できる(ステップ1012)。任意で、検索結果の一部は、抗微生物活性について、実験室において合成および試験される。
【0077】
図11は、本明細書において説明される実施形態のいずれかが実装され得る例示的なコンピュータシステム1100のブロック図を示す。コンピュータシステム1100は、バス1102、または、情報を通信するための他の通信機構、および、情報を処理するためにバス1102に結合された1または複数のハードウェアプロセッサ1104を含む。ハードウェアプロセッサ1104は、例えば、1または複数の汎用マイクロプロセッサであり得る。
【0078】
コンピュータシステム1100はまた、プロセッサ1104によって実行される情報および命令を保存するためにバス1102に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)、キャッシュおよび/または、他の動的記憶装置など、メインメモリ1106を備える。メインメモリ1106はまた、プロセッサ1104によって実行される命令の実行中に、一時的な変数、または、他の中間情報を保存するために使用され得る。そのような命令は、プロセッサ1104からアクセス可能な記憶媒体に格納されるとき、コンピュータシステム1100を、命令において指定される操作を実行するようにカスタマイズされた特定用途向けマシンにする。
【0079】
コンピュータシステム1100は更に、プロセッサ1104のための静的情報および命令を保存するためにバス1102に結合されたリードオンリーメモリ(ROM)1108、または、他の静的記憶装置を備える。磁気ディスク、光学ディスク、または、USBサムドライブ(フラッシュドライブ)などの記憶装置1110は、情報および命令を保存するためにバス1102に提供および結合される。
【0080】
コンピュータシステム1100は、コンピュータユーザに情報を表示するべく、バス1102を介して、ブラウン管(CRT)またはLCDディスプレイ(またはタッチスクリーン)などのディスプレイ1112に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力装置1114は、情報およびコマンド選択をプロセッサ1104に通信するために、バス1102に結合される。別のタイプのユーザ入力装置は、指示情報およびコマンド選択をプロセッサ1104に通信するための、および、ディスプレイ1112上のカーソルの移動を制御するためのマウス、トラックボール、または、カーソル方向キーなどのカーソルコントロール1116である。この入力装置は、典型的には、第1軸(例えばx)および第2軸(例えばy)の2つの軸において、2自由度を有し、装置が平面における位置を指定することを可能にする。いくつかの実施形態において、カーソルコントロールと同一の方向の情報およびコマンド選択は、カーソル無しで、タッチスクリーン上のタッチを受信することを介して実装され得る。
【0081】
コンピューティングシステム1100は、コンピューティング装置によって実行される実行可能なソフトウェアコードとして、大容量記憶装置に格納され得るGUIを実装するために、ユーザインタフェースモジュールを含み得る。このモジュール、および、他のモジュールは、例えば、ソフトウェアコンポーネント、オブジェクト指向ソフトウェアコンポーネント、クラスコンポーネント、タスクコンポーネントなどのコンポーネント、プロセス、関数、属性、プロシージャ、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ、および、変数を含み得る。
【0082】
概して、本明細書において使用される場合、「モジュール」という単語は、ハードウェアまたはファームウェアにおいて具現化される論理、または、例えば、Java(登録商標)、C言語もしくはC++などのプログラミング言語で書かれた、入口点および出口点を有する可能性があるソフトウェア命令の集合を指す。ソフトウェアモジュールがコンパイルされ、実行可能なプログラムにリンクされ、動的リンクライブラリにインストールされ得る、または、例えば、BASIC、Perl、または、Pythonなど、インタープリタ型言語で書かれ得る。ソフトウェアモジュールは、他のモジュールから、または、自身から呼び出され得て、および/または、検出されたイベントまたは割り込みに応答して呼び出され得ることを理解されたい。コンピューティング装置上で実行されるよう構成されるソフトウェアモジュールは、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、フラッシュドライブ、磁気ディスク、または、任意の他の有形媒体など、コンピュータ可読媒体で、または、デジタルダウンロードとして(最初は、実行前にインストール、解凍または復号が必要な圧縮またはインストール可能形式で格納され得る)、提供され得る。そのようなソフトウェアコードは、コンピューティング装置による実行のために、実行するコンピューティング装置のメモリ装置に部分的に、または、完全に格納され得る。ソフトウェア命令は、EPROMなどのファームウェアに組み込まれ得る。ハードウェアモジュールは、ゲートおよびフリップフロップなどの接続された論理ユニットを含み得る、および/または、プログラマブルゲートアレイまたはプロセッサなどのプログラマブルユニットを含み得ることを更に理解されたい。本明細書において説明されるモジュールまたはコンピューティング装置の機能性は、ソフトウェアモジュールとして実装されることが好ましいが、ハードウェアまたはファームウェアで表され得る。一般に、本明細書において説明されるモジュールは、他のモジュールと組み合わされ得る、または、物理機構またはストレージに関係なくサブモジュールに分割され得る論理モジュールを指す。
【0083】
コンピュータシステム1100は、コンピュータシステムと組み合わされて、コンピュータシステム1100を特定用途向けマシンにする、または、そのようにプログラムする、カスタマイズされたハードワイヤードロジック、1または複数のASICまたはFPGA、ファームウェアおよび/またはプログラムロジックを使用して、本明細書において説明される技法を実装し得る。一実施形態によれば、本明細書における技法は、メインメモリ1106に含まれる1または複数の命令の1または複数のシーケンスを(1または複数の)プロセッサ1104が実行することに応答して、コンピュータシステム1100によって実行される。そのような命令は、記憶装置1110などの別の記憶媒体から、メインメモリ1106に読み込まれ得る。メインメモリ1106に含まれる命令のシーケンスの実行により、(1または複数の)プロセッサ1104は、本明細書において説明されるプロセスのステップを実行する。代替的実施形態において、ハードワイヤード回路は、ソフトウェア命令の代わりに、または、それと組み合わせて使用され得る。
【0084】
本明細書において使用される場合、「非一時的媒体」という用語、および、類似の用語は、特定の方式でマシンを動作させるデータおよび/または命令を格納する任意の媒体を指す。そのような非一時的媒体は、非揮発性媒体および/または揮発性媒体を含み得る。非揮発性媒体は、例えば、記憶装置1110などの、光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ1106などの動的メモリを含む。非一時的媒体の一般的形式は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、または、任意の他の磁気データ記録媒体、CD-ROM、任意の他の光学データ記憶媒体、穴のパターンを有する任意の物理媒体、RAM、PROM、および、EPROM、FLASH-EPROM、NVRAM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、および、それらのネットワーク接続されたバージョンを含む。
【0085】
非一時的媒体は、伝送媒体と異なるが、それと併せて使用され得る。伝送媒体は、非一時的媒体の間の情報の伝送に関与する。例えば、伝送媒体は、同軸ケーブル、銅線、および、光ファイバを含み、バス1102を含むワイヤを含む。伝送媒体はまたは、無線および赤外線データ通信において生成されるものなど、音波または光波の形式を取ることができる。
【0086】
様々な形式の媒体が、1または複数の命令の1または複数のシーケンスを、実行のためにプロセッサ1104へ搬送することに関与し得る。例えば、命令は最初に、リモートコンピュータの磁気ディスクまたはソリッドステートドライブにおいて搬送され得る。リモートコンピュータは、命令を動的メモリにロードし、モデムを使用して、電話線を介して命令を送信できる。コンピュータシステム1100のローカルモデムは、電話線でデータを受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換できる。赤外線検出器が、赤外線信号において搬送されるデータを受信でき、適切な回路が、バス1102上にデータを乗せることができる。バス1102は、データをメインメモリ1106へ搬送し、プロセッサ1104は、そこから命令を取得して実行する。メインメモリ1106によって受信される命令は、命令を取得して実行し得る。メインメモリ1106によって受信された命令は、任意で、プロセッサ1104による実行の前または後のいずれかに、記憶装置1110に格納され得る。
【0087】
コンピュータシステム1100はまた、バス1102に結合された通信インタフェース1118を備え得る。通信インタフェース1118は、1または複数のローカルネットワークに接続された1または複数のネットワークリンクに結合された双方向データ通信を提供する。例えば、通信インタフェース1118は、インテグレーテッドサービスデジタルネットワーク(ISDN)カード、ケーブルモデム、サテライトモデム、または、対応するタイプの電話線へのデータ通信接続を提供するモデムであり得る。別の例として、通信インタフェース1118は、対応するLANへのデータ通信接続を提供するためのローカルエリアネットワーク(LAN)カード(またはWANと通信するWANコンポーネント)であり得る。無線リンクも実装され得る。任意のそのような実装において、通信インタフェース1118は、様々なタイプの情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気、電磁または光信号を送信および受信する。
【0088】
ネットワークリンクは、典型的には、1または複数のネットワークを通して、他のデータ装置へのデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンクは、ローカルネットワークを通して、ホストコンピュータ、または、インターネットサービスプロバイダ(ISP)が運営するデータ機器への接続を提供し得る。ISPの方は、現在一般的に「インターネット」と称される世界規模のパケットデータ通信ネットワークを通して、データ通信サービスを提供する。ローカルネットワークおよびインターネットは両方とも、デジタルデータストリームを搬送する電気、電磁または光信号を使用する。コンピュータシステム1100との間でデジタルデータを搬送する、様々なネットワークを通る信号、および、ネットワークリンク上の、通信インタフェース1118を通る信号は、伝送媒体の形式の例である。
【0089】
コンピュータシステム1100は、ネットワーク、ネットワークリンクおよび通信インタフェース1118を通して、メッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信できる。インターネットの例において、サーバは、インターネット、ISP、ローカルネットワークおよび通信インタフェース1118を通して、アプリケーションプログラムのために、要求されたコードを送信し得る。
【0090】
受信されたコードは、受信されると、プロセッサ1104によって実行され得て、および/または、後の実行のために、記憶装置1110、または、他の不揮発性ストレージに格納され得る。
【0091】
上の章で説明されたプロセス、方法、および、アルゴリズムの各々は、コンピュータハードウェアを含む1または複数のコンピュータシステムまたはコンピュータプロセッサによって実行されるコードモジュールにおいて、具現化され得る、または、それによって、完全に、または、部分的に自動化され得る。プロセスおよびアルゴリズムは、特定用途向け回路において、部分的に、または、全体的に実装され得る。
【0092】
上述の様々な特徴およびプロセスは、互いに独立に使用され得る、または、様々な方式で組み合わされ得る。すべての可能な組み合わせ、または、部分的組み合わせは、本開示の範囲に属することが意図される。加えて、特定の方法またはプロセスブロックは、いくつかの実装において省略され得る。本明細書において説明される方法およびプロセスは、任意の特定の順序に限定されず、それらに関連するブロックまたは状態は、適切な他の順序で実行できる。例えば、説明されるブロックまたは状態は、具体的に開示されたもの以外の順序で実行され得て、または、複数のブロックもしくは状態は、単一のブロックもしくは状態に組み合わされ得る。ブロックまたは状態の例は、順次に、または、並列に、または、いくつかの他の方式で実行され得る。ブロックまたは状態が、開示された実施形態の例に追加され得る、または、それから削除され得る。本明細書において説明されるシステムおよびコンポーネントの例は、説明と異なるように構成され得る。例えば、開示された実施形態の例と比較して、要素の追加、除去、または、並び替えが行われ得る。
【0093】
条件付きの文言、とりわけ、「できる」、「得る」、「よく」、または、「よい」などは、別段の定めが無い限り、または、使用される文脈において別のように理解される場合を除き、一般に、特定の実施形態が、特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図する。したがって、条件付きの文言は一般に、特徴、要素および/またはステップが、1または複数の実施形態に、何らかの方式で必要であること、または、1または複数の実施形態が、ユーザの入力またはプロンプトの有無にかかわらず、任意の特定の実施形態において、これらの特徴、要素および/またはステップが含まれるかどうか、または、実行されるかどうかを決定するために、ロジックを必ず含むことを示唆することを意図するものではない。
【0094】
本明細書において説明される、および/または、添付図に描画されるフロー図における任意のプロセス説明、要素、または、ブロックは、プロセスにおける具体的な論理機能またはステップを実装するための1または複数の実行可能な命令を含む、コードのモジュール、セグメント、または、部分を表す可能性があるものと理解されるべきである。当業者であれば理解できるように、代替的な実装は、本明細書において説明される実施形態の範囲に含まれ、関与する機能性に応じて、要素または機能が削除され、示される、または、実質的に同時、もしくは、逆の順序を含む、説明されるものとは異なる順序で実行され得る。
【0095】
上で説明される実施形態に、多くの変形および修正が成され得ることが強調されるべきである。それらの要素は、他の許容可能な例に含まれるものと理解される。そのような修正および変形はすべて、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。上述の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、上述の説明が、文章においていかに詳細に見えようとも、発明は、多くの方式で実施できることを理解されたい。また、上述のように、特定の用語の使用は、本発明の特定の特徴または態様を説明するとき、当該用語が関連している発明の特徴または態様の任意の具体的な特性を含むように限定するために、本明細書において用語が再定義されることを示唆するものと解釈されるべきではないことに留意すべきである。本発明の範囲は、従って、添付の特許請求の範囲、および、それの任意の同等物に従うものと解釈されるべきである。
【0096】
[エンジン、コンポーネント、ロジック]
本明細書において、特定の実施形態は、ロジック、または、多くのコンポーネント、エンジンまたは機構を含むものとして説明される。エンジンは、ソフトウェアエンジン(例えば、機械可読媒体で具現化されるコード)またはハードウェアエンジンのいずれかを構成し得る。「ハードウェアエンジン」は、特定の工程を実行可能な有形のユニットであり、特定の物理的方式で構成または配置され得る。様々な例示的な実施形態において、1または複数のコンピュータシステム(例えば、スタンドアロンコンピュータシステム、クライアントコンピュータシステム、または、サーバコンピュータシステム)、または、コンピュータシステムの1または複数のハードウェアエンジン(例えば、プロセッサまたはプロセッサのグループ)は、本明細書において説明される特定の工程を実行するように動作するハードウェアエンジンとして、ソフトウェア(例えば、アプリケーションまたはアプリケーション部分)によって構成され得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、ハードウェアエンジンは、機械的、電気的、または、それらの任意の適切な組み合わせで実装され得る。例えば、ハードウェアエンジンは、特定の工程を実行するよう恒久的に構成される専用の回路またはロジックを含み得る。例えば、ハードウェアエンジンは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)などの専用プロセッサであり得る。また、ハードウェアエンジンは、特定の工程を実行するようソフトウェアによって一時的に構成されるプログラマブルロジックまたは回路を含み得る。例えば、ハードウェアエンジンは、汎用プロセッサ、または、他のプログラマブルプロセッサによって実行されるソフトウェアを含み得る。そのようなソフトウェアによって構成されると、ハードウェアエンジンは、構成された機能を実行するように独自に調整された専用のマシン(または、マシンの専用のコンポーネント)になり、もはや汎用プロセッサではない。ハードウェアエンジンを、恒久的に構成された専用の回路において機械的に実装するか、または、一時的に構成された回路(例えば、ソフトウェアによって構成される)において実装するかについての決定は、費用および時間を考慮して行われ得ることを理解されたい。
【0098】
従って、「ハードウェアエンジン」という語句は、特定の方式で動作するように、または、本明細書において説明される特定の工程を実行するように、物理的に構築される、または、恒久的に構成される(例えばハードワイヤード)、または、一時的に構成される(例えば、プログラム)エンティティである有形エンティティを含むものであると理解されるべきである。本明細書において使用される場合、「ハードウェア実装エンジン」は、ハードウェアエンジンを指す。ハードウェアエンジンが一時的に構成される(例えばプログラムされる)実施形態を考慮すると、ハードウェアエンジンの各々は、いかなる時点においても、構成または具現化される必要はない。例えば、ハードウェアエンジンは、専用プロセッサになるようにソフトウェアによって構成される汎用プロセッサを含み、汎用プロセッサは、異なる時間において、(例えば、異なるハードウェアエンジンを含む)それぞれ異なる専用プロセッサとして構成され得る。従って、ソフトウェアは、例えば、ある時点において、特定のハードウェアエンジンを構成するように、および、異なる時点において、異なるハードウェアエンジンを構成するように、特定のプロセッサ、または、複数のプロセッサを構成する。
【0099】
ハードウェアエンジンは、他のハードウェアエンジンとの間で情報を提供し、情報を受信できる。従って、説明されたハードウェアエンジンは、通信可能に結合されるものとみなされ得る。複数のハードウェアエンジンは同時に存在し、通信は、2以上のハードウェアエンジンの間の(例えば、適切な回路またはバスを通じた)信号伝送を通じて実現され得る。複数のハードウェアエンジンが異なる時間に構成または具現化される実施形態において、ハードウェアエンジン間の通信は、例えば、複数のハードウェアエンジンがアクセスできるメモリ構造における情報の格納および取得を通して実現され得る。例えば、1つのハードウェアエンジンは、操作を実行し、操作の出力を、通信可能に結合されたメモリ装置に保存し得る。次に、更なるハードウェアエンジンが、後に、メモリ装置にアクセスし、格納された出力を取得して処理し得る。ハードウェアエンジンはまた、入力または出力装置との通信を開始し得て、リソースに対して作用できる(例えば、情報の収集)。
【0100】
本明細書において説明される方法の例の様々な工程は、関連する工程を実行するよう(例えばソフトウェアによって)一時的に構成される、または、恒久的に構成される1または複数のプロセッサによって、少なくとも部分的に実行され得る。一時的に構成されるか、または、恒久的に構成されるかに関わらず、そのようなプロセッサは、本明細書において説明される1または複数の工程または機能を実行するよう動作するプロセッサ実装エンジンを構成し得る。本明細書において使用される場合、「プロセッサ実装エンジン」は、1または複数のプロセッサを使用して実装されるハードウェアエンジンを指す。
【0101】
同様に、本明細書において説明される方法は、少なくとも部分的に、プロセッサによって実装され得て、特定のプロセッサまたは複数のプロセッサはハードウェアの例である。例えば、方法の工程の少なくともいくつかは、1または複数のプロセッサまたはプロセッサ実装エンジンによって実行され得る。さらに、1または複数のプロセッサはまた、「クラウドコンピューティング」環境における関連する工程の実行を支持するように、または、「Software as a Service」(SaaS)として動作し得る。例えば、複数の工程の少なくともいくつかは、これらの工程をネットワーク(例えばインターネット)によって、また1または複数の適したインタフェース(例えば、アプリケーション・プログラム・インタフェース(API))によってアクセス可能にして、複数のコンピュータの集合によって(複数のプロセッサを含む複数の機械の複数の例として)実行され得る。
【0102】
特定の工程の実行は、プロセッサ間で分配され得て、単一のマシンだけに留まるのではなく、複数のマシンに展開される。いくつかの例示的な実施形態において、プロセッサまたはプロセッサ実装エンジンは、単一の地理的位置(例えば、家庭環境、オフィス環境、または、サーバファーム)に配置され得る。他の例示的な実施形態において、プロセッサまたはプロセッサ実装エンジンは、複数の地理的位置に分配され得る。
【0103】
[文言]
本明細書を通して、単一のインスタンスとして説明されたコンポーネント、工程、または、構造を複数のインスタンスが実装し得る。1または複数の方法の個々の工程が、別個の工程として示され説明されたが、個々の複数の工程の1または複数は同時に実行されてよく、複数の工程が示された順序に実行される必要は全くない。複数の例示的構成に別個の構成要素として提示された複数の構造及び機能は、組み合わせた構造または構成要素として実装され得る。同様に、単一の構成要素として提示された複数の構造及び機能は、別個の複数の構成要素として実装され得る。これら及び他の複数の変形、修正、追加、及び改善は、本明細書の主題の範囲に含まれる。
【0104】
具体的な例示的な実施形態を参照して、主題の概要を説明したが、本開示の実施形態の広い範囲を逸脱することなく、様々な修正および変更をこれらの実施形態に加えられ得る。主題のそのような実施形態は、本明細書において、個々に、または、集合的に、「発明」という用語で称され得るが、これは便宜上の目的に過ぎず、実際に1つより多くのものが開示されているとしても、本願の範囲を、任意の単一の開示または概念に自発的に制限することを意図するものではない。
【0105】
本明細書において示される実施形態は、当業者が開示の教示を実施できるほど十分に詳細に説明される。他の実施形態が使用され得て、または、それらから導出され得て、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更が行われ得る。従って、詳細な説明は、限定の意味と解されるべきでなく、様々な実施形態の範囲は、添付の特許請求だけによって、および、そのような特許請求の範囲の権利を有する同等物の全範囲と併せて定義される。
【0106】
「エンジン」、「システム」、「データストア」、および/または、「データベース」は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアおよび/または回路を含み得ることを理解されたい。一例において、プロセッサによって実行可能な命令を含む1または複数のソフトウェアプログラムは、本明細書において説明されるエンジン、データストア、データベースまたはシステムの1または複数の機能を実行し得る。別の例において、回路は、同一または類似の機能を実行し得る。代替的実施形態は、より多くの、より少ない、または、機能的に同等のエンジンシステム、データストア、または、データベースを含み得るが、それでも、本実施形態の範囲内にある。例えば、様々なシステム、エンジン、データストアおよび/またはデータベースの機能性は、異なるように、組み合わされ得る、または、分割され得る。
【0107】
本明細書において、「オープンソース」ソフトウェアは、任意で、修正および派生作品を可能にするライセンスと共に、よく知られた、インデックス付きのソース取得手段を用いて、ソースコードとして、および、コンパイル形式としての配付を可能にするソースコードとして定義される。
【0108】
本明細書において説明されるデータストアは、任意の適切な構造(例えば、アクティブデータベース、関係データベース、自己参照データベース、テーブル、マトリクス、アレイ、フラットファイル、ドキュメント指向ストレージシステム、非関係NoSQLシステムなど)であり得て、クラウドベースなどであり得る。
【0109】
[例]
[例1.新しい抗微生物αコアヘリックスの識別]
この例では、コンセンサス配列フォーミュラが作成され、抗微生物活性を有する新しいαヘリックス抗微生物ペプチド(AHAP)を検索するために使用される実験を説明する。
【0110】
これまでに知られている最も有効な天然抗生物質には、αヘリックス宿主防御ペプチドが含まれる。これらのペプチドは、侵入する病原体に対する防御の第一線として機能し、微生物からヒトに及ぶ種から単離されてきた。以前の多くの調査は、これらのペプチド送達機能を通して、個体およびクラス特異的な特性を解析してきたが、統一的な原理を定義する機械学習戦略、および、根底にある構造活性関係(SAR)が限定されてきた。この例において、標準右手αへリックスの最大18の位置に及ぶ理想的な両親媒性および/または抗微生物ヘリックスの特徴を含む系統的フォーミュラが設計された。次に、フォーミュラは、周知のタンパク質データベースを検索して、構造シグネチャを満たす周知または未知のタンパク質またはペプチドを探すために適用された。その結果は、ほぼ全部の周知の抗微生物αヘリックスペプチドのファミリーがこのフォーミュラと一致することを実証した。興味深いことに、このフォーミュラを使用する論理検索アルゴリズムは、直接的な抗微生物活性を有すると予測される、以前の多くの未同定配列を発見した。実験室の研究において、予測の信憑性が確認され、αコアフォーミュラおよび検索方針の妥当性が立証された。その結果、新規のタンパク質およびペプチドファミリー、ならびに、それらの特異的な配列が、従来は有するとされなかった有効かつ直接的な殺菌効果を有するものとして識別された。
【0111】
[方法および材料]
[αコアフォーミュラの識別]
AHAPのほぼ全部のクラスの代表的コンセンサスフォーミュラを識別するべく、CLUSTAL W (www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/)を使用して、典型的なαヘリックスペプチドとの複数の配列のアライメントを実行した。次に、MEGA6を使用して、アライメントを特定位置で手動で調整した。このプロセスの反復改良を通して、18残基の一般化された両親媒性フォーミュラが、ほぼ全部のAHAPのクラスの代表的な各位置における配列縮重と共に現れた。このフォーミュラは、標準化された18残基αヘリックスホイールを成す位置のいずれかで開始できる。
【0112】
[αコアフォーミュラにおける残基極性の割り当て]
フォーミュラにおいて、個々の残基は、ペプチド結合の寄与を含む、経験的に得られた尺度であるWimley-Whiteの疎水性尺度に従って、疎水性または親水性のいずれかとしてカテゴリ化された。1つの例外は、アラニン(A)である。これはまた、EisenbergおよびKyte-Doolittleの疎水性尺度に従って、疎水性残基と共に含まれた。この割り当ては、部分的に、多くの抗微生物ペプチドの疎水性面にアラニンが頻繁に局在する予備的な研究に起因して行われた。
【0113】
[ヘリックス配列の取得におけるフォーミュラの正確度]
ヘリックスドメインの識別におけるフォーミュラの忠実度を評価するために、上の両親媒性ヘリックスコンセンサスフォーミュラは、PDB 3D database (www.wwpdb.org)に対してクエリされた。最初の100の非冗長な取得された構造は、標的配列のヘリックス性についてスコアリングされた。標的配列が75%より高いヘリックスである場合、タンパク質は陽性ヒットであるとみなされた。
【0114】
[データベースクエリとしてのαコアフォーミュラの使用]
UniProtKB Swiss-Prot データベースの反復的パターン検索を実行するために、αコア配列フォーミュラは、ScanProsite (prosite.expasy.org/scanprosite/)ツールと共に使用された。最初の検索では、両親媒性配列フォーミュラの様々な長さでデータベースをクエリしたが、12残基の相対的に短いクエリ配列が、抗微生物ペプチド配列の大部分を取得するのに最も効率的であることが最終的に分かった。このクエリ配列の反復1を下に列挙する。X-[VILMCFWYAG]-[KRHEDNQSTAG]-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]-[VILMCFWYAG]-[KRHEDNQSTAG]-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]-X-[KRHEDNQSTAG]-[VILMCFWYAG]
【0115】
この最適化プロセスの後、配列フォーミュラは、UniProtKB Swiss-ProtおよびTrEMBLデータベースに対するクエリとして使用された。18残基ヘリックスホイール範囲全体を表すために、18の反復を通して、フォーミュラは、一度に1位置だけ進んだ。ScanProsite検索結果は更に、1)タンパク質サイズ(200残基未満)、2)真核生物、3)「X(0,50)>」論理演算子を使用するC末端領域へのパターンの局在によって更に限定された。
【0116】
[シグナルペプチドおよび生物物理パラメータの決定]
取得されたデータセットは、SignalP 4.1 (www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を使用して、シグナルペプチドの存在について、追加的にスクリーニングされた。疎水性モーメント(μH)、平均疎水性(H)、正味電荷(Q-KおよびR(+1);H(+0.5);DおよびE(-1))、KおよびR残基頻度は、この目的のために生成されたPythonアルゴリズムを使用して、バッチにおいて決定された。PIは、ExPasy Compute PIツール(web.expasy.org/compute_pi/)を使用して決定された。
【0117】
[候補ペプチドおよびHDP]
選択候補殺菌性ペプチドは、BioMatik (Biomatik USA, Wilmington, Delaware)によって、商業的に合成された。凍結乾燥ペプチドは、ddIH20を用いて再構成され、-20℃で一定分量を保存した。典型的なヒトAHAPであるLL-37(Peptides International, Louisville, KY)が、殺菌アッセイにおいて、比較のために使用された。
【0118】
[抗微生物活性のアッセイ]
pH5.5または7.5に調整された十分に確立された放射拡散法を使用して、殺菌活性について、推定上の抗微生物ペプチドのアッセイを行った。試験した微生物のパネル:グラム陽性Staphylococcus aureus (ISP 479C, ISP 479R)、グラム陰性Salmonella typhimurium (MS 5996s, MS 14028)、Pseudomonas aeruginosa (PA01), Acinetobacter baumanni (19606)、および、真菌Candida albicans (36082S, 36082R)。対数増殖期の生物を、アガロース緩衝液に接種(106 CFU/ml)し、プレートに撒いた。ペプチド(10μg)を、播種したマトリクスにおいて、ウェルに導入し、37℃で3時間インキュベートした。栄養重層培地を適用し、アッセイで、細菌を37℃で、または、真菌を30℃でインキュベートした。24時間後、阻止帯を測定した。独立した実験を最低限2回繰り返した。
【0119】
[結果]
[αコア配列フォーミュラの導出および反復改良]
最初の研究において、AHAPの主要なクラスの全部の代表的な原型とのアライメントが実行され、保存的配列要素を識別した。この解析では、これらの典型的なほぼ全部が、極性または非極性残基のいずれかが両親媒性ヘリックスに沿った位置に割り当てられた縮重配列フォーミュラとアラインできることが明らかにされた。ペプチドは、αヘリックスの3~4.5ターンに対応する、最小11~最大16残基範囲に及ぶ、このフォーミュラに従った。この解析に基づいて、AHAPの主要なクラスのほぼ全部の代表的なコンセンサスフォーミュラが抽出された(
図1A、
図1B、
図2A、
図2B)。
【0120】
この予備的なコンセンサスが定義されると、PDBタンパク質構造データベースに対するクエリとして使用されるときのαヘリックスドメインを返す効率を試験することによって、更に改良された。ベースラインとして、周知のヘリックス破壊剤プロリンおよびグリシンを欠いたフォーミュラのバージョンが実行された。これらの解析の結果、αヘリックスドメインの取得におけるフォーミュラの効率は非常に高いことが明らかにされ、これらのモチーフ(少なくとも75%のヘリックスである範囲として定義される)は92~94%の頻度を有することが識別された。
【0121】
多くのAHAPは、プロリンおよびグリシン残基を含むことが知られており、フォーミュラの効率に対するこれらの残基の影響を評価するために、その後の試験が実行された。プロリンが配列フォーミュラに含まれるとき、標的配列におけるαヘリックスドメインは、10%未満の割合で取得された。これらの発見は、プロリンは、側鎖および立体の制限に起因して、安定なαヘリックス形成と調和しないという理論を強く支持するものである。この理由により、プロリンはフォーミュラから除外された。
【0122】
対照的に、グリシンが配列フォーミュラにおいて許可されるときに、標的が水性環境において決定されたか、または非極性環境において決定されたかに応じて、構造データベースに対するクエリは、2つの異なる結果を明らかにした。水性環境において決定された構造については、単一グリシンが存在するとき、配列フォーミュラは、約74%の割合で、αヘリックスドメインを取得した。2以上のグリシン残基が存在するとき、値は40%に減少された。比較すると、標的構造が非極性環境(高濃度のTFE、SDS、または、ミセルコンポーネント)において決定されたとき、グリシンの存在は、ペプチドのヘリックス性に対して、非常に小さい影響しか与えなかった。これらの研究では、標的配列において4個ものグリシン残基が存在する場合、配列フォーミュラは、約92%の割合で、αヘリックスドメインを取得したことを明らかにした。この理由により、グリシンはAHAPにおいて高い割合を占めるので、この残基を配列フォーミュラに含めた。さらに、多数の生物物理学研究は、多くのグリシンリッチAHAPが水性環境において非構造化されているが、それらはほぼ常に、標的微生物の疎水性膜環境と相互作用するとき、αヘリックス形態をとることを実証した。
【0123】
[ヘリックスのアラニン/グリシン両面]
配列フォーミュラにおける極性または非極性残基のいずれかのグループに大部分の残基を割り当てることは、最初のAHAPコンセンサス、および、周知の残基特異的疎水性値に基づいて、相対的に容易であったが、アラニンおよびグリシンの配置は、極性および非極性環境における、それらの相対的に中立的なΔG値に起因して、あまり明らかでなかった。この理由から、400より多いAHAPペプチドを含む対照データセットに対するクエリを介した反復方式において、ヘリックスの極性または非極性面のいずれかに対するグリシンおよび/またはアラニンの要件を評価した(
図3)。アラニンおよびグリシンを欠くフォーミュラの予備的バージョンは、対照AHAP研究セットの多くの数(>10%)を取得することに失敗した(
図3)。両親媒性ヘリックスの極性面にアラニンを含めることにより、ペプチドの取得された部分が26%に増加した。極性および非極性の両方の検索語にアラニンが加えられたとき、取得されたAHAPは48%に増加した。グリシンに関して、類似の関係が判明した。クエリ配列の極性面にグリシンを追加したことにより、対照AHAPデータセットの約81%の識別につながった。極性および非極性面の両方にグリシンが含まれるとき、クエリにより、99%に近いAHAP研究セットを取得した。この解析の結果、アラニンおよびグリシンを、極性および非極性クエリ検索語の両方のコンポーネントとして含めた。
【0124】
[αコア配列フォーミュラ]
上の考慮に基づいて、下に示されるように、標準右手アルファヘリックスの全部で18の位置に及ぶ線状αコアフォーミュラが生成された。3次元に変換されるとき、フォーミュラは、明確な疎水性および親水性の面を有する理想的な両親媒性ヘリックスを示す。極性面と非極性面との間の位置には、線状フォーミュラにおける「X」の値が割り当てられ、極性角度(θ)の最大は180°、最小は140°であった。フォーミュラの縮重の性質に起因して、ヘリックス範囲に沿った各位置は、複数の極性または非極性残基によって表された(下、および、
図1A、
図1B、
図2A、
図2B)
【数2】
【0125】
[αコア配列フォーミュラを使用するプライマリデータベース検索]
改良されると、αコア配列フォーミュラは、SwissProtおよびTrEMBLタンパク質配列データベースに対するクエリとして使用された(
図4)。方法において説明されるように、データベースクエリは更に、真核生物起源、長さ200残基未満、C末端の50残基以内の配列に限定された。
【0126】
返された生データセットは、70000を超える配列から成り、単一タンパク質の両親媒性ヘリックス範囲に沿ってシフトされた複数の標的ヒットを表すことが多い。これらの返されたヒットの各々は、疎水性モーメントについてスコアリングされ、最高のμHを有する配列が抽出され、下流の研究のために、約13000の固有配列の非冗長データセットを生成した。また、データセットタンパク質は、シグナルペプチドの存在についてスコアリングされ、このモチーフを欠いた配列が除去され、約3800配列の最終データセットを生成した。
【0127】
[αコア配列フォーミュラの効率]
上のデータベースクエリの結果は、両親媒性配列アルゴリズムが非常にロバストであり、既知のAHAPファミリーのほぼ全部からメンバーを取得することを示した(テーブル1)。全体的に、フォーミュラは、全部の既知のAHAP分類の約94%を占める、106より多い異なるヘリックスペプチドファミリーのうち少なくとも1つのメンバーを取得した。さらに、フォーミュラは、理想的な両親媒性ヘリックス構造を説明するが、それにもかかわらず、SwissProtデータベースにおける全部の既知のAHAPの約88%を占める、827の個々の抗微生物ペプチド配列を返した。
[テーブル1.アルファコアフォーミュラ検索で取得されたαヘリックスペプチドファミリー]
【表4】
【表5】
【表6】
【0128】
高い割合の既知のAHAPを取得する他に、8.5以上のPIの配列に限定するとき、フォーミュラはまた、これらの配列を返す上で、相対的に特異的であった。検索は、シグナルペプチド試験が適用されたかどうかに応じて、0~50、または、51~200残基のいずれかのいくつかのステージで実行された。0~50の残基の組について、取得された配列の約71%は既知のAHAPであった。一方、51~200の残基の組について、識別された配列の約27%が、αヘリックス抗微生物タンパク質であった。553,000配列SwissProtデータベースにおいて、約940(方法を参照)の命名されたAHAPがあることを考慮すると(バージョン12-1-16)、これは、約130倍のin-silicoエンリッチメントを表す。
【0129】
配列フォーミュラによって取得された他のタンパク質に関して、2番目に高い割合を占めるグループは、データセットの約17%を構成する様々な毒素ペプチドであった。この他に、取得されたデータセットにおいて豊富である他のタンパク質ファミリーには、アポビテリン、レプチン、血管作動性腸タンパク質、および、未同定タンパク質が含まれる。
【0130】
[残基頻度]
αコア配列フォーミュラが、アラインされたデータセットを返すことを考慮すると、18残基両親媒性範囲に沿った各位置における様々な残基の存在量について、識別されたAHAPヘリックスをスコアリングすることが可能である。さらに、αコアフォーミュラが、ヘリックスを形式する可能性がある両親媒性パターンを識別することを考慮すると、特異的な残基が、これらの構造の極性面または非極性面のいずれかに局在することを想定することも可能である。AHAPの無脊椎動物と、高等および下等脊椎動物のクラスとの間の著しい進化的距離に起因して、データセットは、節足動物、両生動物、および、哺乳動物の配列を表す3つのグループに区分された(
図5)。
【0131】
残基頻度の解析は、返されたAHAPヘリックスにおける残基の組成、ならびに、親水性および疎水性の分布に関する多くの発見を明らかにした。留意すべき1つの発見として、グリシンは、下等生物のAHAPにおいて、高い割合を占め、節足動物および両生動物における標的両親媒性範囲における全部の残基の約30-35%を含む。グリシンは、哺乳動物においてもなお豊富であるが、頻度はより低く、返された配列における残基の約15%を占める。
【0132】
アラニンは、節足動物および両生動物の両親媒性範囲において豊富だが、哺乳動物の識別された配列において、はるかに少ないことが分かったことも興味深い。さらに、アラニンは、ペプチドの疎水性面において、より高い頻度で見つかったが、節足動物および両生動物のペプチドの極性面において、およそ10~30%の頻度で見つかった。
【0133】
荷電残基に関して、非哺乳動物の種における極性残基において、リシンが最も豊富であり(30%)、アルギニンと比較して、約12:1の比で、強く選好されることは興味深い。対照的に、哺乳動物において、この選好性は、大幅に減少し、この比は減少して、リシンとアルギニンとの存在量の比は3:1である。全部の種のグループにおいて、返された配列における、負に荷電したアスパラギン酸およびグルタミン酸残基が約5%の低い頻度で見つかったことも留意すべきである。
【0134】
[生物物理学シグネチャ]
返されたAHAPヘリックスにおける特異的な残基の頻度を計測する他に、正味電荷(Q)、等電点(PI)、疎水性モーメント(μH)、疎水性(H)、および、リシンとアルギニン(K/K+R)の比を含む、多くの生物物理パラメータについて、配列をスコアリングした。
【0135】
この解析において、研究対象のヘリックス(n=803)のAHAPサブセットについての平均正味電荷は+2.0であることが分かった。カチオンのみの配列(Q≧0.5;n=707)を考慮した場合、この値は、+2.7に上昇する。比較すると、研究対象の毒素ヘリックス(n=717)の平均正味電荷は、+1.3であり、他の研究対象のヘリックスについては、+0.6であった。疎水性モーメントに関して、AHAPヘリックスは、0.52の平均μHを有し、一方、毒素は、0.42の平均μHを有し、他のペプチドは0.39である。いくつかの報告では、平均疎水性は、AHAPより毒素の方が大きいことがあり得ると示唆されているが、この研究において、取得されたヘリックスにおける疎水性の値は類似であり、平均Hは、他のペプチド(0.39)と比較して、AHAPの場合0.42、毒素の場合0.34であった。
【0136】
[負のガウス曲率]
取得された配列はまた、リシン残基とアルギニン残基との比(N
K/N
K+N
R)についてスコアされた。以前の研究では、これらの残基の相対的存在量は、孔形成および膜透過性付与に関連する現象である、膜における負のガウス曲率(NGC)を誘導する所与のペプチドの傾向に著しく影響を与え得ることが実証された。以前の研究では、AHAPにおいて、リシン残基がアルギニンより選好されることが実証された。この置換は、NGCを効率的に誘導するために、ペプチド疎水性のレベルを増加させることを必要とする。本例において、取得されたAHAPヘリックスは、この規則に概ね従い、N
K/N
K+N
R比とペプチド疎水性との間の緩い正の相関を実証した(
図6)。比較すると、毒素の両親媒性ヘリックスは、この知見に従わず、N
K/N
K+N
R比とペプチド疎水性との間の負の相関が分かった。
【0137】
[以前の未同定抗菌配列を取得するためのαコア配列フォーミュラの適用]
抗微生物タンパク質の周知のクラスに加えて、αコアフォーミュラはまた、多くの未同定タンパク質、または、代替的な一次機能を有するタンパク質を取得した。フォーミュラが抗微生物ペプチドを取得する効率に基づいて、これらの更なる配列のいくつかが、1)未同定抗微生物タンパク質を表すか、または、2)未同定の抗微生物機能、または、大型タンパク質における抗微生物ドメインも有する、割り当てられた機能を有するタンパク質を表すかを決定することが興味深かった。
【0138】
推定上の殺菌性配列を識別するべく、研究セットのペプチドは、上述の生物物理パラメータ(μH、Q、H、K/K+R、PI)についてスコアリングされ、非殺菌性配列から既知のAHAPを分離する上で、どの因子および/または関係が最も効率的かを決定するために解析した。これらの解析の結果は、平均両親媒性(μH)、および、正味電荷(Q)(
図7)またはPIのいずれかが、他の配列から本物のAHAPを区別する最も効率的な手段であることを実証した。
【0139】
上記の解析に基づいて、カチオン性またはPI、および、疎水性モーメント(Q*μH)または(PI*μH)のいずれかについてデータセットタンパク質をスコアリングし、興味深い配列を優先した。この解析では、興味深い多くのペプチドが取得されたが、生物学的に重要ないくつかのファミリーが、上位スコア配列の間で一貫して見つかった。これらには、多くのインターフェロン配列と共に、γ鎖依存的インターロイキンファミリーのメンバーが含まれた。さらに、一貫して高いスコアの多くのペプチドはまた、世界中で影響のある植物病原体Phytophthora parasiticaに由来した。
【0140】
上の考慮事項を考慮して、これらのファミリーを表す10の有力候補を合成し、その結果、それらの抗微生物特性を決定できた(テーブル2)。テーブル2に示されるように、それらには、以下が含まれる。
インターロイキン
IL-5 ― Meleagris gallopavo(シチメンチョウ)
IL-7 ― ヒト
IL-13 ― ヒト
IL-21 ― ヒト
インターフェロン
IFN‐γ―Myotis davidii(ヒナコウモリ)
IFN-γ―ヒト
Phytophthora parasitica未同定配列
Pp-1 ― P. parasitica
Pp-2 ― P. parasitica
Pp-3 ― P. parasitica
Pp-4 ― P. parasitica
【0141】
C末端領域に対する、パターンの局在が緩和されたとき、更なる2つの候補が識別された。2つのそれぞれのより長いバージョンと共に、これら2つの候補は、テーブル3に列挙される。識別されたペプチドの更なる一覧をテーブル4、配列識別番号518-6029(局在が必要)および配列識別番号6030-6860(局在要件が緩和)に提供する。
[テーブル2 研究セットのペプチド]
【表7】
[テーブル3.局在要件が緩和された、識別された更なるペプチド]
【表8】
[テーブル4.優先アルファコアペプチド配列]
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【0142】
原型および重要なヒト病原体のパネルに対して評価したとき、研究試験ペプチドが、考慮された生物のほぼ全部に対して、有効な活性を有することが分かった(
図8A、
図8B)。特に、インターロイキンにおいて、シチメンチョウIL-5(tIL-5)に由来する配列は、生理学的に代表的なpH(pH7.5)および膿創(pH5.5)環境において、全部の生物に対して、著しく有効である。ヒトインターロイキン(hIL-7、hIL-13、hIL-21)に由来する配列は、pH7.5において、有効性が幾分低かったが、生理学的に重要なpH5.5において、著しい活性を維持した。同様に、ヒトおよびコウモリのIFN-γに由来するペプチドは、大部分の生物に対する著しい活性を有し、pH5.5よりpH7.5の方が、幾分有効性が高かった。研究試験ペプチドのうち、おそらく最も印象的なもののいくつかは、Phytophthoraに由来した。Pp-1およびPp-4は、多くの生物に対する著しい活性を有したが、Pp-2は、細菌および真菌に対して特に有効であり、pH5.5で活性が維持された。
【0143】
この例は、代替的なコンピュータ的手法を利用して、殺菌活性を付与し得る汎用配列および構造要素を発見するための手段として、AHAPの単一クラスに共通する保存された要素についてスクリーニングした。本明細書において、この例は第1に、既知のAHAPの大部分に共通のコンセンサス配列を識別した。このコンセンサスは次に、配列および構造データベースの両方とのアライメントに基づいて反復改良にかけられ、大部分の既知のAHAPを代表する両親媒性ヘリックス範囲を示す線状フォーミュラを生成した。特に、この配列フォーミュラは、以下の極性[EDKRHQNTS(AG)]残基および非極性[VMCILFWY(AG)]残基を含む18の残基範囲から成る。このαコアフォーミュラは、3次元の放射状アレイに変換されるとき、同等の極性および非極性面を含む理想的な両親媒性ヘリックスを示す(
図1A、
図1B、
図2A、
図2B)。
【0144】
関与するαコアフォーミュラの反復最適化の1コンポーネントは、対照AHAPデータセットに対するクエリを伴った。これらの研究は、AHAP両親媒性ドメインにおいて見つかるグリシンおよびアラニンが重大な要素であることを明らかにした。これらの残基を欠いたフォーミュラの予備的バージョンは、概ね失敗し、対照のAHAP配列の10%未満から取得された。αコアフォーミュラの固有の両親媒性頻度を考慮すると、両親媒性ヘリックスの極性または非極性面のいずれかに対する特異的な残基の位置要件を評価することが可能であった。グリシンを用いた最初の研究は、この残基が、極性および非極性残基の検索語の両方に含まれることが必須であることを示した。いずれかのグループから省略すると、対照データセットから返された配列の数が劇的に減少した。同様に、アラニンを用いた類似の研究は、対照データセットから大部分のAHAPを効率的に取得するために、極性および非極性残基のグループの両方にこの残基を含めることが重要であることを明らかにした。αコアフォーミュラは、3次元ヘリックスアレイに変換されるので、これらの研究は、アラニンおよびグリシンが、AHAP両親媒性ヘリックスの極性または非極性面のいずれかで見つかる可能性があることを更に示した。
【0145】
上の配列ベースの最適化研究と同様に、PDBデータベースとの構造ベースのアライメントも実行された。これらの研究は、フォーミュラにプロリンが含まれると、取得されるヘリックスの数が劇的に減少するが、グリシンおよびアラニンは容認され、ヘリックス範囲に共通に見られることを明らかにした。これらの研究は更に、αコア配列フォーミュラが、高い忠実度でヘリックス範囲を取得し、90%を超える回数で、そのようなドメインを正しく識別したことを明らかにした。αコアフォーミュラは、二次構造特性評価ツールとして設計されていないが、ヘリックス範囲を識別する効率は、xx~81.5%に及ぶ頻度でヘリックスを正しく識別する、そのようなツールと比較して、有利である。
【0146】
[データベース検索]
αコアフォーミュラが改良されると、SwissProtデータベースに対するクエリとして使用された。これらの研究は、相対的に高い特異性で、AHAPのほぼ全部のクラス(94%)、および、全部の周知の個々のAHAPの約89%を取得したことを明らかにした。調査の結果、フォーミュラによって取得されなかった、これらの個々のペプチド、または、ペプチドファミリーでは、C末端ヘリックス‐ターン‐ヘリックスドメインを有するものとして特徴付けられる両生動物の「ranabox」ペプチドなど、両親媒性または割りこまれたヘリックスドメインの広がりが相対的に短いことがしばしば分かった。
【0147】
フォーミュラは、理想的な完全な両親媒性ヘリックスを示すが、ほぼ全部のクラス、および、大部分の個々のAHAPを取得することに成功したことに留意すべきである。このことは、ほぼ全部のAHAPが、これらの研究においてクエリされたドメインのサイズを表す少なくとも12残基範囲のほぼ完全な両親媒性の範囲を有することを示唆している。この知見を考慮すると、両親媒性が、殺菌活性の重大な要素であり、AHAPの膜透過付与特性に必須である可能性があるという現在の仮説が支持される。
【0148】
[AHAPヘリックスにおける残基頻度]
αコア配列フォーミュラは、アラインされたデータセットを返すので、AHAPのαヘリックス範囲における様々な残基の相対頻度を評価することが可能であった。さらに、これらのデータは、AHAPヘリックスに共通の汎用的特徴に関して、いくつかの一般化を可能にした。全体的に、AHAPにおいて見つかった固有の両親媒性の他に、これらのデータは、いくつかの残基が、生物の様々なクラスに由来する両親媒性ヘリックスにおいて強く選好されることを明らかにした。
【0149】
[グリシン]
これらの研究の1つの留意すべき発見は、グリシンは、節足動物および両生動物のAHAPヘリックスにおいて高い割合を占め(すべての残基の30~35%)、哺乳動物においては、頻度が低いということである(全部の残基の15%)。
【0150】
[節足動物および両生動物のAHAPヘリックスにおけるグリシン]
周知のAHAPヘリックスの大部分におけるグリシンの存在は、最初予想されていなかった。なぜなら、この残基は、αヘリックス構造を不安定化させることが知られているからである。しかしながら、数多くの経験的証拠によって実証されたように、多くのαヘリックスペプチドは、水性環境において非構造化されており、疎水性環境においてのみ、αヘリックス形態をとる。これが生じる機構は知られていないが、標的においてペプチドが組織化され得る可能性がある。なぜなら、相対的に電気陰性である微生物表面は、カチオンおよび他の極性残基を、両親媒性ヘリックス構造の一面に向かせることに役立ち得るからである。類似の方式で、微生物の細胞壁の疎水性内部は、ペプチドにおける疎水性残基と選択的に相互作用することによって、ランダムなコイル構造を組織化することに役立ち得る。
【0151】
標的との相互作用の前の、両親媒性機構のこの欠如は、AHAPの選択的毒性の背景にある重要な機構であり得て、宿主に対する活性を制限することを可能にする一方で、標的微生物と相互作用するときに必要に応じて殺菌形態をとることが可能である。
【0152】
[高等真核生物のAHAPヘリックスにおけるグリシン]
AHAPヘリックスにおけるグリシンの存在に関する1つの注意点として、それは、下等生物において見られる短いペプチドにおいて共通であるが、高等真核生物のより長いAHAP、ならびに、ケモカイン、グラニュライシン、および、NKリシンなどの混合ドメインアーキテクチャを有するタンパク質において、生じる頻度が低い。グリシンが、標的微生物と相互作用する前に、AHAPを非構造化および非活性状態に維持するための重要な手段であると推測する場合、これらの大きいペプチドにおけるグリシンの欠如は、それらが、宿主に対する毒性を制限するための殺菌抑制の代替的な手段として使用され得ることを示唆する。
【0153】
[節足動物および両生動物のAHAPヘリックスにおけるカチオン残基]
残基頻度研究は、AHAPヘリックスにおいてグリシンが豊富であることを実証する他に、この研究において考慮されたAHAPの両親媒性ヘリックスにおいて、リシンがアルギニンより高く優先されることも明らかにした。リシンは、研究対象のAHAPヘリックスにおいて最も豊富なカチオン残基であるが、非哺乳動物ペプチドにおいて、アルギニンより強く選好され、12:1の比である。哺乳動物において、リシンはアルギニンよりなお選好されるが、程度は低く、3:1の比である。比較すると、リシンは、毒素において、存在量が低かったが、アルギニンより選好され、2:1の比である。
【0154】
生物物理学な測定により、リシンは、アルギニンと比較して、NGCを不安定化する膜を生成する上で、効率が低いことを実証したことは何らかの関連があり得る。なぜなら、それは、一度に単一の脂質ヘッドグループにだけ相互作用できるからである。この理由から、リシンが豊富なAHAPはしばしば、平均疎水性を増加させることによって、透過性付与能力のこの欠如を補償し、これは、「サドルスプレー曲率選択」規則と名付けられた。現在の研究において、AHAPヘリックスは、この規則を概ね支持し、リシンの相対存在量(NK/NK+NR)が増加するにつれて、平均ペプチド疎水性も増加することが分かった。
【0155】
[他のαヘリックスドメインと比較したAHAPヘリックスの生物物理学的特性]
残基頻度の測定の他に、Q、μH、Hを含む、αコアフォーミュラによって取得されるヘリックスの多くの更なる特性が決定された。ファミリー間で平均化したとき、これらの定量的データは、毒素および他のグループと比較した、取得されたAHAPヘリックスの生物物理学的特性に関する多くの洞察を明らかにした。
【0156】
AHAPの1つの決定的な特性として、それらは、典型的には、本質的にカチオンであり、この特性は、多くの微生物の相対的に電気陰性の表面に対する選択性を強化することが示された。この生物物理学的特性の汎用性は、AHAPに由来する両親媒性ヘリックスが、12の残基範囲にわたって、+2.0の平均正味電荷を有するという、現在の研究の発見により指示された。さらに、カチオンのみのAHAPが考慮される場合(803の取得された配列のうち707について、Q≧0.5)、この値は+2.7に上昇した。比較により、これらの研究において取得された毒素および他のヘリックスの平均電荷は、それぞれ、+1.3および+0.6であり、カチオン性は、他の両親媒性ペプチドと比較して、AHAPにおいて選択的に選好され得ることを示唆する。
【0157】
AHAPの別の特徴として、それらは、本質的に両親媒性である頻度が高く、この特性は、微生物に対する膜透過付与の活性に必須であるとみなされた。αコアフォーミュラが両親媒性配列を検索するとき、これらのクエリによって返されたヘリックスの全部は、本質的に、アプリオリな両親媒性であった。しかしながら、様々なクラスのペプチドの間で、μHによって定量化される、識別されたヘリックスの相対的な両親媒性を比較することも興味深い。現在の研究の結果は、両親媒性がAHAPの生物物理学的特性において必須であるという理論を支持する。研究対象のAHAPヘリックスの平均疎水性モーメントは、0.52であり、これは、セクロピンA(μHmax=0.61)またはLL-37(μHmax=0.78)など、典型的な両親媒性ヘリックスと比較したとき、相対的に高い値である。比較すると、毒素および他のタンパク質に由来するヘリックスの両親媒性は、それぞれ、μH=0.42および0.39と幾分低かった。
【0158】
加えて、平均疎水性(H)は、毒素(0.34)または他の研究対象ペプチド(0.39)より、AHAP(0.42)の方が、幾分大きかった。この知見は、疎水性の程度が適度であることは、AHAPの膜透過付与特性にとって必須であり得ることを示唆する。
【0159】
[新しい抗菌配列の識別]
αコア配列フォーミュラはまた、多数の未同定配列、および、代替的な一次機能を有するタンパク質を取得した。抗菌配列を取得する忠実度を考慮すると、これらの代替的な配列の一部も抗微生物特性を有するかどうかを決定することは興味深い。説明されたように、推定上の殺菌性配列は、他の配列からAHAPを分離する上で、最も特徴的な特性(μH*QまたはμH*PI)についてスコアリングされ、生物学的に関心のある有力候補を、更なる研究のために合成した。
【0160】
3つの別個の高スコアグループの代表的ペプチドヘリックスである、インターロイキン(tIL-5、hIL-7、hIL-13およびhIL-21)、インターフェロン(bIFN‐γ、hIFN‐γ)、ならびに、P.parasiticaの未同定配列を合成し、殺菌活性について試験した。留意すべきこととして、これらのペプチドの全部は、有効な殺菌活性を示し、それは多くの場合、LL-37など従来のAHAPより大きかった。これらのデータは、両親媒性配列フォーミュラが、抗微生物特性を有する両親媒性ヘリックスの識別を成功させることができることを強く示唆する。
【0161】
別段の定めが無い限り、本明細書において使用される全部の技術および科学用語は、本開示に関連する当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0162】
本明細書において例示的に説明される本開示は、本明細書において具体的に開示されない、1または複数の限定が無い、任意の要素または複数の要素が無くても適切に実施され得る。したがって、例えば、「含む」、「有する」、「備える」などの用語は、限定的でなく、広い意味で読み取ることができる。加えて、本明細書に採用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として用いられており、そのような用語および表現の使用において、示されている、および説明されている特徴、またその一部の任意の同等物を排除する意図はなく、様々な修正が特許請求されている開示の範囲内で可能であることが認識される。
【0163】
したがって、本開示は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書において具現化された開示の修正、改善および変形は、当業者によって成され得て、そのような修正、改善、および変形は、本開示の範囲内にあるとみなされるべきであることを理解すべきである。本明細書において提供される材料、方法、および例は、好ましい実施形態の代表であり、例示を目的としたものであり、本開示の範囲を限定する意図はない。
【0164】
本開示は、本明細書において広く、一般的に説明された。包括的な開示内に含まれるより狭い範囲の種および部分的なグルーピングの各々も本開示の一部を形成する。これには、削除された部材が本明細書に具体的に列挙されているかいないかに関わらず、任意の主題をその種類から取り除く但し書きまたは否定的な限定を用いた本開示の包括的な説明が含まれる。
【0165】
加えて、本開示の特徴または態様は、マーカッシュグループの観点で説明され、当業者であれば、本開示は、それにより、マーカッシュグループの個々のメンバー、または、メンバーのサブグループの観点で説明されることを認識するであろう。
【0166】
すべての刊行物、特許出願、特許、および、本明細書において言及される他の参照文献は、個々に参照によって各々が組み込まれる場合と同一の程度で、全体が参照によって明示的に組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先される。
【0167】
本開示は、上の実施形態と組み合わせて説明されたが、上述の説明および例は、本開示の範囲を制限するものではなく、例示することが意図されることを理解されたい。本開示の範囲における他の態様、特長、および修正は、本開示に関連する当業者にとって明らかであろう。
【配列表】