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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】モードコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20230330BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20230330BHJP
   G02B 6/14 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G02B6/02 411
G02B6/46
G02B6/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020503532
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007360
(87)【国際公開番号】W WO2019167959
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2018032718
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】百武 康弘
(72)【発明者】
【氏名】別府 芳忠
(72)【発明者】
【氏名】飯久保 忠久
(72)【発明者】
【氏名】菊田 知宏
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-242309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014195(WO,A1)
【文献】特開平02-120706(JP,A)
【文献】特開平02-042407(JP,A)
【文献】特開昭57-078002(JP,A)
【文献】特開昭62-299808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0301707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 - 6/036
G02B 6/10
G02B 6/12 - 6/14
G02B 6/44
G02B 6/46 - 6/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが連結されて光ファイバ連結体が形成され、
光ファイバ連結体が、間隔を空けて配列された二個一組以上の複数のボビンに巻回され、
ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが、別の組のボビンにそれぞれ巻回されており、
一対のボビン及び他の一対のボビンの直径はいずれも同じであり、
ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが捻られて螺旋箇所が形成され、
ステップインデックス型光ファイバに光が入射されて伝搬し、伝搬モードが平衡モード分布に変換されて光がステップインデックス型光ファイバから出射してグレーデッドインデックス型光ファイバに入射され、グレーデッドインデックス型光ファイバに入射された光が任意の低次モードにモード変換されるモードコントローラ。
【請求項2】
前記ステップインデックス型光ファイバと前記グレーデッドインデックス型光ファイバが連結されている連結部分が、前記組毎のボビンの間以外の箇所に形成されている請求項1に記載のモードコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モードコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ及び光関連測定器の挿入損失検査等に於いて、光源からの出射光を安定化するモードコントローラが用いられる。これらモードコントローラ(モードスクランブラ)の一例が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1記載のモードコントローラ(モードスクランブラ)は、複数のボビンに1本の光ファイバを巻き付けて構成されている。更に軸Rを回転軸として各々のボビンを、R1方向又はR2方向に回転させて光ファイバを捩り、光ファイバへの入射光から平衡モード分布(定常モード分布)の光を取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/014195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のモードコントローラから出射される光のニアフィールドパターン(NFP:Near Field Pattern)は、モードコントローラの光出射端部から13mm~30mmで平衡モード分布になる。従って、国際規格のIEC61300-1に記述の、エンサークルドフラックス(EF:Encircled Flux)境界条件に適合するEFをNFPで得られなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、IEC61300-1に記述のEF境界条件に適合するEFを示すNFPの光が出射可能な、モードコントローラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明のモードコントローラではステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが連結されて光ファイバ連結体が形成され、光ファイバ連結体が、間隔を空けて配列された二個一組以上の複数のボビンに巻回され、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが、別の組のボビンにそれぞれ巻回されており、一対のボビン及び他の一対のボビンの直径はいずれも同じであり、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが捻られて螺旋箇所が形成され、ステップインデックス型光ファイバに光が入射されて伝搬し、伝搬モードが平衡モード分布に変換されて光がステップインデックス型光ファイバから出射してグレーデッドインデックス型光ファイバに入射され、グレーデッドインデックス型光ファイバに入射された光が任意の低次モードにモード変換されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモードコントローラに依れば、グレーデッドインデックス型光ファイバに於けるコアとクラッドの境界面での光の漏洩により、ステップインデックス型光ファイバからグレーデッドインデックス型光ファイバに入射された光の伝搬モードを、グレーデッドインデックス型光ファイバのNFPで平衡モード分布から任意の低次モードにモード変換する事が可能となる。
【0009】
従って、グレーデッドインデックス型光ファイバから出射される光のNFPの伝搬モードを、任意の低次モードのモード分布とする事が出来る。依って、IEC61300-1に記述のEF境界条件に適合するEFを示すNFPの光が出射可能な、モードコントローラを実現する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るモードコントローラを模式的に示す斜視図である。
図2】(a) 本発明の実施形態に係るモードコントローラの構成を、模式的に示す説明図である。(b) 図2(a)に示す二個一組のボビンの何れかを回転させて、図1に示すモードコントローラを構成した状態を示す説明図である。
図3】本発明の実施例に係るモードコントローラを備えた、NFP測定装置の構成を模式的に示す説明図である。
図4図3のNFP測定装置に於いて、入射側光ファイバから出射される光のNFPの測定像である。
図5図3に於いて、ステップインデックス型光ファイバから出射される光のNFPの測定像である。
図6図3に於いて、グレーデッドインデックス型光ファイバから出射される光のNFPの測定像である。
図7】本発明の実施例に於けるEFの測定結果を示すグラフである。
図8】比較例として、グレーデッドインデックス型光ファイバに捻りを与えない場合の、EFの測定結果を示すグラフである。
図9】比較例に於いて、グレーデッドインデックス型光ファイバから出射される光のNFPの測定像である。
図10】本発明の実施例及び比較例に於けるNFPの測定結果を示すグラフである。
図11図1に示すモードコントローラの他の実施形態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態の第一の特徴は、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが連結されて光ファイバ連結体が形成され、光ファイバ連結体が、間隔を空けて配列された二個一組以上の複数のボビンに巻回され、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが、別の組のボビンにそれぞれ巻回されており、一対のボビン及び他の一対のボビンの直径はいずれも同じであり、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが捻られて螺旋箇所が形成され、ステップインデックス型光ファイバに光が入射されて伝搬し、伝搬モードが平衡モード分布に変換されて光がステップインデックス型光ファイバから出射してグレーデッドインデックス型光ファイバに入射され、グレーデッドインデックス型光ファイバに入射された光が任意の低次モードにモード変換されるモードコントローラとした事である。
【0012】
この構成に依れば、ステップインデックス型光ファイバからグレーデッドインデックス型光ファイバに入射された光の伝搬モードを、グレーデッドインデックス型光ファイバのNFPで平衡モード分布から任意の低次モードにモード変換する事が可能となる。従って、グレーデッドインデックス型光ファイバから出射される光のNFPの伝搬モードを、任意の低次モードのモード分布とする事が出来るので、IEC61300-1に記述のEF境界条件に適合するEFを示すNFPの光を出射可能なモードコントローラを実現する事が可能となる。
【0014】
更にステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが、別の組のボビンにそれぞれ巻回されている構成に依れば、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが巻回される二個一組のボビンが分けられる。従って、グレーデッドインデックス型光ファイバの長さや巻回数、及び捻り回数をステップインデックス型光ファイバと独立して設定可能となり、グレーデッドインデックス型光ファイバでのモード変換の状態のみ任意に調整可能となる。
【0015】
本実施の形態の第の特徴は、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが連結されている連結部分が、組毎のボビンの間以外の箇所に形成されているモードコントローラとした事である。
【0016】
この構成に依れば、螺旋箇所が形成された時、ステップインデックス型光ファイバとグレーデッドインデックス型光ファイバが連結されている連結部を、螺旋箇所に配置しない事で、連結部への張力の付与が抑制される。従って、連結部での光ファイバ連結体の切断が防止可能となる。
【0017】
以下に、図1図2を参照して、本発明の実施形態に係るモードコントローラ1を説明する。本実施形態に係るモードコントローラ1の基本構造は、光ファイバ連結体2と、二個一組以上の複数のボビン3a~3dとで構成される。図2は本発明の実施形態に係るモードコントローラ1の構成を模式的に示しており、図1図2の組毎のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)に於けるモードコントローラ1を模式的に示している。
【0018】
図2に示す様に、光ファイバ連結体2は、ステップインデックス型光ファイバ(SIF:Step Index Fiber)2aとグレーデッドインデックス型光ファイバ(GIF:Graded Index Fiber)2bが、コネクタ4を介して連結される事で、形成されている。光ファイバ連結体2が、間隔を空けて配列された二個一組以上の複数のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)とに、図2(a)のように所望の回数だけ巻回される。
【0019】
組毎の複数のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)は、図1及び図2に示す様に、ラテラル(Lateral)方向で各ボビン(3aと3b)又は(3cと3d)の軸方向が平行となる様に、互いに間隔を空けて配列される。図2では、合計四個で二組のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)を図示しており、二個一組のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)の計二組が、各軸方向BとCに平行に配列されている。
【0020】
最初にSIF2aのみが、二個一組のボビン3aと3bに1回以上の所望の回数で巻回される。SIF2aの巻回後、SIF2aの光出射側の端部がボビン3bから引き出され、引き出されたSIF2aの光出射側端部と、GIF2bの光入射側端部が、コネクタ4で連結される。
【0021】
コネクタ4によりSIF2aに連結されたGIF2bは、図2の場合は別の二個一組のボビン3cと3dに巻回される。GIF2bの巻回後、GIF2bの光出射側の端部1aがボビン3dから引き出されて、モードコントローラ1全体の光出射端部1aとなる。更に光出射端部1aは、図示しないNFP又はFFP(Far Field Pattern:ファーフィールドパターン)の測定装置に光学的に結合される。
【0022】
一方のSIF2aの光入射側端部は、入射側光ファイバ5にコネクタ6を介して連結される。入射側光ファイバ5は、光源7と光学的に結合される。入射側光ファイバ5には、例えばシングルモード光ファイバが使用可能である。
【0023】
SIF2aには、伝搬波長850nm、クラッド外径125μm、コア径数十μm、開口数0.2以上、許容曲げ半径数十mmのマルチモード光ファイバが使用され、任意の長さで切断後、GIF2bに連結されてモードコントローラ1に組み込まれる。
【0024】
またGIF2bとしては、伝搬波長850nm、クラッド外径125μm、コア径50μm以上、開口数0.2以上、許容曲げ半径数十mmのGI型のマルチモード光ファイバが使用される。任意の長さで切断されてSIF2aに連結され、モードコントローラ1に組み込まれる。
【0025】
二個一組以上の複数のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)に光ファイバ連結体2が巻回された後、図2(b)に示す様に、複数のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)が間隔を空けて配列された方向に平行な軸B又はCを回転軸として、組毎のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)の少なくとも一方が回転される。組毎で二個のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)が共に回転される場合、同軸で互いに対向する反対方向(例えば、ボビン3aと3cとをR1方向に、ボビン3bと3dをR2方向)に回転される。尚、各ボビン3a~3dの支持構造は、図示を省略している。
【0026】
このように組毎のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)の一方のみ回転、又は、互いを反対方向に回転させる事により、これらボビン(3aと3b)又は(3cと3d)に巻回されているSIF2aとGIF2bが捻られて捩れが生じ、複数本の光ファイバが互いに絡み合いながら捻れて螺旋箇所2a1又は2b1が形成される。螺旋箇所2a1又は2b1は、組毎のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)の間(図2(b)中の箇所A)に形成される。
【0027】
なお、何れのボビン(3a、3b、3c、3d)も回転させずに、予め光ファイバを捩って螺旋箇所2a1及び 2b1を形成したSIF2aとGIF2bを、組毎のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)に備えても良い。またGIF2bは捻らずに、SIF2aでの螺旋箇所2a1のみ形成するように変更すると、最高次モードを取り出すことが可能となる。
【0028】
光源7から入射側光ファイバ5を伝搬してSIF2aに入射された光は、SIF2aの捻りにより螺旋箇所2a1に於いてSIF2a内を伝搬する光が均一に分散される。従って、SIF2aの光出射側端部であるコネクタ4から出射される光のNFP(SIF2aの光出射側端部から13mm~30mmの位置)の伝搬モードは、安定した平衡モード分布に変換される。この平衡モード分布に変換された光がSIF2aから出射して、コネクタ4を介してGIF2bに入射される。
【0029】
SIF2aで伝搬モードが平衡モード分布に変換された光は、SIF2aから出射してGIF2bに入射される。GIF2bに入射された光はGIF2bの捻りにより、この螺旋箇所2b1に捩り応力が作用する。この捩り応力によりGIF2bの螺旋箇所2b1に於けるコアとクラッドの境界面で、光の伝搬時に光ファイバ外部へと光の漏洩が発生する。GIF2bでの光の漏洩により、SIF2aからGIF2bに入射された光のモードが抜かれる事となり、GIF2bの光出射端部1aから出射されてNFP(GIF2bの光出射側端部から13mm~30mmの位置)で測定される光の伝搬モードを、任意の低次モードのモード分布に変換する事が可能となる事を、本出願人は検証により明らかにした。より詳述すると、GIF2bに捻りを加えた時に、GIF2bの光出射端部1aから出射されるNFPの測定像の測定結果により、NFPで測定される光の伝搬モードが任意の低次モードのモード分布に変換可能となる事を明らかにした。
【0030】
従って、モードコントローラ1に依れば、GIF2bに於けるコアとクラッドの境界面での光の漏洩により、SIF2aからGIF2bに入射された光の伝搬モードを、GIF2bのNFPで平衡モード分布から任意の低次モードにモード変換する事が可能となる。
【0031】
依って、GIF2bから出射される光のNFPの伝搬モードを、任意の低次モードのモード分布とする事が出来るので、IEC61300-1に記述のEF境界条件に適合するEFを示すNFPの光が出射可能な、モードコントローラ1を実現する事が可能となる。更に、IEC61300-1に記述のEAF境界条件に適合するEAFを示すFFP の光が出射可能となる。
【0032】
加えてモードコントローラ1では、各光ファイバを捻って螺旋箇所2a1又は2b1を形成するだけの簡素な構造によって、GIF2bから出射される光の伝搬モードを、任意の低次モードのモード分布に変換している。この為、モードコントローラ1全体を安価に形成する事が出来る。
【0033】
なおGIF2bは、SIF2aが巻回されている二個一組の同じボビンに巻回しても良い。しかしSIF2aとGIF2bは、同じ一組のボビンに巻回されるよりも、図2に示す様に別の組のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)にそれぞれ巻回されていることがより望ましい。その理由は、SIF2aとGIF2bが巻回される二個一組のボビンを分けた方が、GIF2bの長さや巻回数、及び捻り回数をSIF2aと独立して設定可能となり、GIF2bでのモード変換の状態のみ任意に調整可能となる為である。
【0034】
また、図2に示す二組のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)は、同一軸上に配置しても良い。
【0035】
なお、SIF2aとGIF2bが連結されている連結部分(コネクタ4)は、組毎のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)の間(図2(b)中の箇所A)以外の箇所に形成される事が望ましい。その理由として、螺旋箇所2a1又は2b1が形成された時、SIF2aとGIF2bが連結されている連結部であるコネクタ4を、螺旋箇所2a1又は2b1に配置しない事で、コネクタ4への張力の付与を抑制し、連結部での光ファイバ連結体2の切断を防止する為である。
【0036】
加えて、螺旋箇所2a1又は2b1を図11に示す様に芯柱8に巻き付ける事により、屋外用光ファイバに代表される、光ファイバ外被が硬く最大直径が細い光ファイバに関しても、図1及び図2の構造と同様の効果を、高い汎用性と共に得られる。
【0037】
以下に本発明に係る実施例を説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例
【0038】
以下、図3図10を参照して本発明に係る実施例のモードコントローラ1と比較例とを説明する。なお、前記実施形態と図1及び図2と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略又は簡略化して記載する。
【0039】
図3に示すように、モードコントローラ1は、光ファイバ連結体2と、二組のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)とで構成した。光ファイバ連結体2は、SIF2aとGIF2bを、コネクタ4で連結して形成した。また二組のボビン(3aと3b)又は(3cと3d)は、各軸方向BとCに平行に配列した。
【0040】
SIF2aには、伝搬波長850nm、クラッド外径125μm、コア径50μm、開口数0.22のマルチモード光ファイバを使用し、長さ3mで切断後、3周巻きでボビン3aと3bに巻回した。一方のGIF2bには、光ファイバ型名G50、ISO/IEC11801及びJISX5110によるファイバ種別分類でOM2、伝搬波長850nm、クラッド外径125μm、コア径50μm、開口数0.2のマルチモード光ファイバを使用し、長さ2mで切断後にSIF2aに連結した。更にGIF2bは、1周巻きでボビン3cと3dに巻回した。またSIF2aとGIF2bの螺旋箇所2a1又は2b1に於ける捩り数は、SIF2aは1回、GIF2bは1回とした。
【0041】
更にGIF2bの光出射端部1aを、NFP又はFFPの測定装置に光学的に結合した。NFP又はFFPの測定装置に入射した光はイメージセンサに伝搬し、更に電流値又は電圧値の何れかがEAF(Encircled Angular Flux)アナライザモジュールとして使用したコンピュータに出力されて、EAFが解析された。
【0042】
一方のSIF2aの光入射側端部は、入射側光ファイバ5と光源7に光学的に結合した。光源7には、スーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)を用いると共に、光源7に入射側光ファイバ5を光学的に結合した。入射側光ファイバ5には、シングルモード光ファイバを使用した。なお光源7のカットオフ波長λcは、850nmとした。
【0043】
図3のNFP測定装置に於いて、光源7から入射されて入射側光ファイバ5端部(図3のOUT1)から出射された光のNFP(OUT1から13mmの位置)の測定像を図4に示す。また図5には、図3に於いてSIF2a光出射端部(図3のOUT2)から出射された光のNFP(OUT2から13mmの位置)の測定像を示す。図6には、図3に於いてGIF2b の光出射端部(即ち、図3のモードコントローラ1全体の光出射端部)1aから出射された光のNFP(前記光出射端部1aから13mmの位置)の測定像を示す。
【0044】
図4図5の比較により、入射側光ファイバ5から出射された光のNFPが、SIF2aの螺旋箇所2a1によって伝搬光が均一に分散されて、安定した平衡モード分布に変換されている事が確認された。更に、図5図6の比較により、GIF2bの螺旋箇所2b1で光の漏洩が発生し、GIF2bから出射された際のNFPでは光のモードが抜かれて、低次モードのモード分布に変換されている事が確認された。
【0045】
更に、図6の測定像に於けるNFPを測定したところ、図10内に実線で示すNFPのグラフが測定された。同時に図6の測定像に於けるEFを測定したところ、図7に示すEFのグラフが測定された。なお、図7及び図10のグラフの横軸は、光ファイバ(GIF2b)の半径位置(即ち、半径寸法)を表している。図7より本実施例のモードコントローラ1が、光ファイバの半径方向に亘ってIEC61300-1で規定されたEF境界条件内(図7中の横スリット内)に入っており、EF境界条件に適合するEFを示すNFPの光を出射している事が確認された。
【0046】
(比較例)
比較例として、図3のGIF2bに捻りを与えず、単にGIF2bをボビン3cと3dに巻回したのみのNFP測定装置に於ける、GIF2b の光出射端部1aから出射された光のNFP(前記光出射端部1aから13mmの位置)の測定像を図9に示す。螺旋箇所2b1以外の、比較例に於けるモードコントローラとNFP測定装置の構成は、実施例と同一とした。図6図9とを比較すると、GIF2bでの螺旋箇所2b1の有無により、図9の測定像が相対的に広がっている事が確認された。
【0047】
更に、図9の測定像に於けるNFPを測定したところ、図10内に破線で示すNFPのグラフが測定された。図10内の実線と破線とを比較すると、GIF2bでの螺旋箇所2b1を形成しないと、20μm超である光ファイバのコア及びクラッド境界面付近での強度が相対的に高くなる事が分かった。この測定結果により、コア及びクラッド境界面付近のNFPの測定像が広がって大きくなるものと本出願人は推測した。
【0048】
更に、図9の測定像に於けるEFを測定したところ、図8に示すEFのグラフが測定された。図8より比較例のモードコントローラが、コア及びクラッド境界面付近である20μm超の光ファイバの半径方向に於いて、IEC61300-1で規定されたEF境界条件外へと逸脱し、EF境界条件に不適合となった事が確認された。図8図9、及び図10の破線より、コア及びクラッド境界面付近でのNFPの強度の大きさと測定像の広がりが、EF境界条件からの逸脱に影響している事が分かった。
【0049】
なお、図8のグラフの横軸も、光ファイバ(GIF2b)の半径位置(即ち、半径寸法)を表している。
【0050】
更に、図7図8を比較した結果、特にGIF2bでの螺旋箇所2b1の有無が、光ファイバの半径方向に亘るIEC61300-1規定のEF境界条件への適合に、直接的に影響する事が見出された。
【符号の説明】
【0051】
1 モードコントローラ
1a グレーデッドインデックス型光ファイバの光出射側端部、又はモードスクランブラ全体の光出射端部
2 光ファイバ連結体
2a ステップインデックス型光ファイバ
2b グレーデッドインデックス型光ファイバ
2a1、2b1 螺旋箇所
3a、3b、3c、3d ボビン
4、6 コネクタ
5 入射側光ファイバ
7 光源
8 芯柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11