(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】AAV適合性ラミニン-リンカー重合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20230330BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230330BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230330BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230330BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230330BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230330BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230330BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230330BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230330BHJP
A61P 11/16 20060101ALI20230330BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N7/01 ZNA
A61K35/76
A61K48/00
A61P43/00 105
A61P21/04
A61P21/00
A61P25/28
A61P25/02
A61P25/08
A61P25/18
A61P11/16
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2020561690
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 US2019031369
(87)【国際公開番号】W WO2019217582
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-07-08
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510144959
【氏名又は名称】ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーチェンコウ,ピーター,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マッキー,カレン,ケー.
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513928(JP,A)
【文献】特表2017-505126(JP,A)
【文献】The Journal of Clinical Investigation,2017年,Vol. 127, No. 3,pp. 1075-1089
【文献】Matrix Biol.,2018年04月,Vol. 67,pp. 32-46
【文献】Molecular Biology of the Cell,2000年11月,Vol. 11,pp. 3911-3923
【文献】コスモ・バイオ株式会社,アデノ随伴ウイルス(AAV)発現ツール,インターネット, URL<https://www.cosmobio.co.jp/upfiles/catalog/pdf/catalog_11852.pdf>, 発行日: 2013-05-01, 検索日: 2022-05-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
alphaLNNdDeltaG2shortをコードする導入遺伝子を含む核酸配列を含
み、該alphaLNNdDeltaG2shortが配列番号1又は配列番号24を含む、組換えアデノ随伴ベクター(rAAV)。
【請求項2】
前記AAVはAAV8またはAAV-DJである、請求項1に記載の組換えAAV。
【請求項3】
CMVプロモーターをさらに含む、請求項1に記載の組換えAAV。
【請求項4】
前記CMVプロモーターは配列番号12を含む、請求項
3に記載の組換えAAV。
【請求項5】
前記組換えベクターは逆方向末端反復(ITR)をさらに含む、請求項1に記載の組換えAAV。
【請求項6】
前記逆方向末端反復(ITR)は、配列番号11を含む5’ITRである、請求項
5に記載の組換えAAV。
【請求項7】
前記逆方向末端反復(ITR)は、配列番号16を含む3’ITRである、請求項
5に記載の組換えAAV。
【請求項8】
請求項
1に記載の組換えAAVおよび医薬担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項
8に記載の組成物を含む容器ハウジングを含む、キット。
【請求項10】
請求項
1に記載の組換えAAVベクターを含む、対象におけるラミニン重合発現および基底膜アセンブリを回復させるための剤。
【請求項11】
請求項1に記載の組換えAAVベクターを含む、ラミニンα-2欠損候群の治療剤。
【請求項12】
請求項1に記載の組換えAAVベクターを含む、ラミニン欠損型筋ジストロフィーおよびラミニンα2欠損型筋ジストロフィーからなる群から選択されるラミニン欠損に関連する少なくとも1つの症状を軽減する剤。
【請求項13】
請求項1に記載の組換えAAVベクターを含む、筋変性、筋再生、慢性筋炎、筋線維症、脳白質異常、末梢神経伝導速度低下、発作、中度精神遅滞、および呼吸不全からなる群から選択されるラミニンα2欠損に関連する症状の少なくとも1つを軽減する剤。
【請求項14】
前記AAVはAAV8またはAAV-DJである、請求項1
1、1
2、または1
3に記載の剤。
【請求項15】
前記組換えAAVはCMVプロモーターをさらに含む、請求項1
1、1
2、または1
3に記載の剤。
【請求項16】
前記CMVプロモーターは配列番号12を含む、請求項
15に記載の剤。
【請求項17】
前記組換えベクターは逆方向末端反復(ITR)をさらに含む、請求項1
1、1
2、または1
3に記載の剤。
【請求項18】
前記逆方向末端反復(ITR)は、配列番号11を含む5’ITRである、請求項
17に記載の剤。
【請求項19】
前記逆方向末端反復(ITR)は、配列番号16を含む3’ITRである、請求項
17に記載の剤。
【請求項20】
前記組換えAAVは、医薬担体をさらに含む医薬組成物内に含まれる、請求項1
1、1
2、または1
3に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援の声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号R01-DK36425の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子データ提出された配列表を包含し、その全体が参照により本明細書に援用される。。2019年5月8日に作成された上記のASCIIコピーは、10491_006542-WO0_V2_ST25.txtという名称であり、170KB(174,236バイト)のサイズである。
【0003】
本発明は、組換えラミニンアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)構築物、および欠損哺乳動物または基底膜が不安定な哺乳動物におけるラミニン発現を回復させるための関連する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ラミニンは、基底膜(BM)およびそのアセンブリの必須構成要素である。これらの大きな糖タンパク質は、長いコイルドコイルに結合されたα、β、およびγサブユニットからなるヘテロ三量体である。ラミニンの基本的な役割は、(1)細胞外マトリックスを細胞表面および細胞骨格に付着させる、ならびに(2)ナイドジェン、コラーゲン、パールカン/アグリンといったヘパリン硫酸プロテオグリカン等の他の細胞外マトリックス成分が安定に付着するプラットフォームとして機能する、主要な足場を形成することである。
【0005】
多くの異なるタイプの疾患には、基底膜およびラミニンが関係している。転移性固形腫瘍は、基底膜を通過して血管系に到達する必要があり、さまざまな微生物およびウイルスは、ラミニンと直接相互作用することにより細胞に侵入する。マウスの遺伝的証拠に基づくと、少なくとも9つのラミニンが生命に不可欠である。いくつかのラミニンののラミニンN末端(LN)重合ドメインにおける変異は、筋肉、神経、および腎臓の疾患の原因となる。例えば、Scheele et al.,2007 J Mol Med 85(8):825-36を参照されたい。
【0006】
ラミニン-211(α2、β1およびγ1サブユニットで構成されるヘテロ三量体、Lm211と略される)は、骨格筋および末梢神経シュワン細胞(SC)の基底膜の主要なラミニンであり、脳毛細血管にも見られる。例えば、Aumailley et al.,(2005)Matrix Biol 24(5):326-32を参照されたい。
【0007】
胚形成中、ラミニンα2鎖は、発生の胎生11日目から筋肉が発生するにつれて発現する。ラミニンα2鎖をコードするLAMA2遺伝子内のLNドメインの変異は、ラミニンα2タンパク質サブユニット発現の完全またはほぼ完全な喪失をもたらし、ラミニンα2欠損型筋ジストロフィー(LAMA2-MD)を引き起こす可能性がある。LAMA2-MDは、通常、歩行不能な先天性筋ジストロフィー(CMD)として現れる常染色体劣性疾患であり、これは、先天性筋ジストロフィー1A型(MDC1A)としても知られており、出生時または乳児期に始まり、多くの場合、末梢神経および脳の関与を伴う、特に重度の歩行不能な先天性ジストロフィーである。
【0008】
イギリスのLAMA2 MD患者249人を対象とした最近の研究では、LAMA2の変異が最も多く見られ(37.4%)、ジストログリカノパチーとウルリッヒCMDがそれに続くことが明らかになった。Sframeli,et al.,(2017)Neuromuscul Disor 27(9):793-803を参照されたい。また、少数のミスセンス変異およびインフレーム欠失変異も存在し、そのほとんどが、より軽度の歩行可能なジストロフィーを引き起こすラミニンα2短腕重合ドメイン(LN)にマッピングされている。Allamand,et al.,(1997)Hum Mol Genet6(5):747-52;Gavassini,et al.,(2011)Muscle Nerve 44(5):703-9;Bonnemann,et al.,(2014)Neuromuscul Disord 24(4):289-311;Chan,et al.,(2014)Neuromuscul Disord 24(8):677-83を参照されたい。どちらも病態も、脳白質異常および末梢神経伝導速度低下を伴う、筋変性、筋再生、慢性筋炎および筋線維症からなる。Jimenez-Mallebrera,et al.,(20025)Cell Mol Life Sci 62(7-8):809-23を参照されたい。無発現変異のある患者は歩行することができず、末梢神経伝導障害、発作、中度精神遅滞を有する可能性があり、多くの場合、若年時に筋肉消耗および呼吸不全のために死亡する。α2-ラミニンに欠陥のある患者は、後年、それほど重症ではない歩行型のジストロフィー、通常は肢帯型筋ジストロフィーを呈し、末梢神経系および中枢神経系の欠陥も示す。Bonnemann,et al.,(2014)Neuromuscul Disord 24(4):289-311を参照されたい。治療は一般的に、状態の個々の兆候および症状を管理することに焦点を当てている。現在のところ、どちらの治療法も分かっていない。
【0009】
別の神経筋疾患であるピアソン症候群は、神経筋接合部の糸球体基底膜だけでなく、眼球内の筋肉、水晶体、および網膜にも顕著に発現するラミニンβ2鎖の欠損に関連している。ラミニンβ2鎖欠損は、LAMB2遺伝子のミスセンス変異およびインフレーム欠失変異によって引き起こされる。ピアソン症候群は、常染色体劣性疾患であり、主に腎臓と目に影響を及ぼす非常に稀な疾患である。罹患した小児のほとんどは、早期発症型の、慢性腎不全、神経発達障害、失明、筋緊張低下、精神運動遅延、片麻痺および異常な動きを含み得る明確な眼の異常を有する。Scheele et al.,(2007)J Mol Med 85:825-836を参照されたい。罹患した乳児は、生後数週間または数ヶ月を超えて生存できない場合がある。乳児期を超えて生存した乳児は、通常、神経障害および発達遅延を有する。ほとんどは、生後10年以内に末期腎疾患のために腎移植を必要とする。長期的な見通しは不良である。
【0010】
より良い治療法、特に患者におけるラミニン重合発現および基底膜アセンブリを回復させるための、具体的にはラミニンα2およびラミニンβ2の欠損を伴う疾患を治療するための遺伝子治療が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
特定の実施形態において、本発明は、alphaLNNdDeltaG2short(αLNNdΔG2’)をコードする導入遺伝子を含む核酸配列を含む組換えアデノ随伴ベクター(rAAV)に関する。特定の実施形態において、αLNNdΔG2’は、配列番号1を含む。特定の実施形態において、rAAVは、配列番号12を含むCMVプロモーターをさらに含む。特定の実施形態において、rAAVはAAV8またはAAV-DJである。特定の実施形態において、rAAVは、逆方向末端反復(ITR)をさらに含む。特定の実施形態において、ITRは、配列番号11を含む5’ITRおよび配列番号16を含む3’ITRである。
【0012】
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の組換えAAV’のいずれかを含む組成物に関する。特定の実施形態において、組成物は医薬担体をさらに含む。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の組成物を含む容器ハウジングを含むキットに関する。特定の実施形態において、容器はシリンジである。
【0014】
特定の実施形態において、本発明は、有効量の本明細書に記載の組換えAAVベクターのいずれかを対象に投与することを含む、対象におけるラミニン重合発現および基底膜アセンブリを回復させる方法に関する。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、有効量の本明細書に記載の組換えAAVベクターのいずれかを対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるラミニンα2欠損を治療する方法に関する。
【0016】
特定の実施形態において、本発明は、対象において、ラミニン欠損型筋ジストロフィーおよびラミニンα2欠損型筋ジストロフィーからなる群から選択されるラミニン欠損に関連する症状の少なくとも1つを軽減する方法に関し、該方法は、有効量の本明細書に記載の組換えAAVベクターのいずれかを対象に投与することを含む。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、対象において、筋変性、筋再生、慢性筋炎、筋線維症、脳白質異常、末梢神経伝導速度低下、発作、中度精神遅滞、および呼吸不全からなる群から選択されるラミニンα2欠損に関連する症状の少なくとも1つを軽減する方法に関し、該方法は、有効量の本明細書に記載の組換えAAVベクターのいずれかを対象に投与することを含む。
【0018】
特定の態様において、本発明の実施形態は、LAMA2遺伝子の欠損またはハプロ不全を特徴とする対象におけるラミニンα2欠損型筋ジストロフィーを治療するための方法に関する。この方法は、所望の細胞でαLNNdΔG2’産物を発現するプロモーター配列の制御下で、alphaLNNdDeltaG2short(αLNNdΔG2’)をコードする核酸配列(すなわち、導入遺伝子)を担持する有効量の組換えアデノ随伴ウイルスを対象に投与することを含み得る。特定の実施形態において、プロモーター配列は、基底膜におけるαLNNdΔG2’産物の発現を提供する。特定の実施形態において、導入遺伝子遺伝子の発現は、対象における所望のラミニン重合発現および基底膜アセンブリを回復させるまたは維持するために必要な産物を細胞に提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、ラミニンα2欠損型筋ジストロフィーの治療のための組成物を提供する。そのような組成物は、注射に適した担体および追加成分とともに製剤化され得る。
【0019】
本発明の他の態様および利点は、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明においてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】コア基底膜(BM)成分と相互作用する神経筋ラミニンを示す。関連するラミニンおよび他のタンパク質ドメインが標識されている。破線および点線は、ドメイン結合の相互作用を示している。略語:ラミニン(Lm)、ラミニン111(Lm111)、ラミニン411(Lm411)、硫酸化糖脂質(SGL)、α-ジストログリカン(αDG)、ナイドジェン(Nd)、Lmα2短腕重合ドメイン(LN)。
【
図2】筋肉および末梢神経におけるLm211およびLm411によって媒介されるBMアセンブリのモデルを示す。略語:ラミニン211(Lm211)、ラミニン411(Lm411)、硫酸化糖脂質(SGL)、α-ジストログリカン(αDG)、ナイドジェン(Nd)、Lmα2短腕重合ドメイン(LN);ラミニンコイルドコイルに結合するアグリンのN末端ドメイン(アグリン-NtA)、ラミニンG様ドメイン(LG)。
【
図3A】
図3A~Eは、ラミニン機能のリンカータンパク質修復を示す図、EM画像、およびSDS-PAGE画像である。
図3Aは、αLNNdおよびmagのドメイン構造と機能的活動を示す。ラミニン-α1に由来する領域は緑色であり、ナイドジェン-1に由来する領域はオレンジ色である。Magは、N末端領域(青)とC末端部分(赤)を有するアグリンの小型化形態である。
図3Bは、αLNNdおよびmag、ならびにラミニンとの複合体のロータリーシャドウ法によるEM画像を示している。
図3Cは、歩行型のLAMA2MDおよびそのdy2J/dy2Jマウスモデルにおいて、Lm-211の短縮型(「dy2J-Lm-211」)が発現されていることを示す。αLNNdは、ナイドジェン結合部位に結合し、機能的なLNドメインを含む人工短腕を形成する。αLNNdとmagの共発現は、重合およびαDG固定に必要なドメインを提供する。
図3Dは、G2ドメイン±2EGF様リピートを欠く重合リンカータンパク質の短縮型、すなわち、αLNNd、αLNNdΔG2、およびαLNNdΔG2を示す。
図3Eは、αLNNdΔG2とLmα1ΔLN-L4bとのリンカー-ラミニン複合体形成を示す。
【
図4】G2ドメイン±2EGF様リピートを欠くαLNNd重合リンカータンパク質の短縮型、すなわちαLNNd(alphaLNNd、ここでalphaはラミニンα1、LNはLNドメイン、Ndはナイドジェンを指す)、αLNNdΔG2(alphaLNNdDeltaG2)、およびαLNNdΔG2’(alphaLNNdDeltaG2short)を示す。
【
図5A】
図5A~Eは、SDS-PAGE、免疫蛍光画像、およびLm411に結合したαLNNdΔG2’およびmagのAAV発現、ならびにシュワン細胞上でのαLNNdΔG’-Lm411のアセンブリを示すグラフである。
図5Aおよび5Bは、それぞれ、Lm411を発現する293細胞のαLNNdΔG2’-AAVおよびmag5myc-AAV感染を示している。Lm411との複合体は、培地からのN末端FLAGタグ付きLm411の免疫沈降と、それに続く
図5AのLmα4の上部セグメントおよびαLNNdΔG2’の下部セグメントまたは
図5BのmagおよびαLNNdΔG2’の免疫ブロットで膜を切断することによって示される。
図5Cおよび5Dは、AAV生成αLNNdΔG2’に起因するLm411アセンブリの大幅な増加を示している。
図5Eは、1週齢のdy3K/dy3K、mag TgマウスへのAAV-αLNNdΔG2’の筋肉内注射による抗体染色αLNNdΔG2’(赤)およびラミニン(緑)の筋細胞膜における検出を示す。
【
図6】pAAV-MCS発現ベクターのマップである。
【
図9-1】
図9は、タンパク質BLASTアラインメントを用いた、αLNNdΔG2’タンパク質のマウスとヒトのアミノ酸配列の比較である。クエリ=ヒトαLNNdΔG2’アミノ酸配列。対象-マウスαLNNdΔG2’アミノ酸配列。
【
図10-1】
図10はAAVに挿入されたマウスαLNNdΔG2’(short-noG2)のオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を提供する。シグナルペプチドは、ヌクレオチド1~51によってコードされる(色:緑)。Lma1 LNは、ヌクレオチド52~804によってコードされる(色:青)。LEa1は、ヌクレオチド805~975によってコードされる(色:マゼンタ)。LEa2は、ヌクレオチド976~1185によってコードされる(色:緑)。LEa3は、ヌクレオチド1186~1356によってコードされる(色:赤)。Lea4は、ヌクレオチド1357~1503によってコードされる(色:シアン)。Lma1 LFセグメントは、ヌクレオチド1504~1536によってコードされる(色:青)。Nd egf-4は、ヌクレオチド1537~1668によってコードされる(色:赤)。Nd egf-5は、ヌクレオチド1669~1809によってコードされる(色:シアン)。NdTYは、ヌクレオチド1810~2091によってコードされる(色:マゼンタ)。Nd G3は、ヌクレオチド2092~2835によってコードされる(色:緑)。Nd egf-6は、ヌクレオチド2836~3006によってコードされる(色:赤)。
【
図11-1】
図11はAAVに挿入されたヒトαLNNdΔG2’(short-noG2)のオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を提供する。シグナルペプチドは、ヌクレオチド1~51によってコードされる(色:緑)。Lma1 LNは、ヌクレオチド52~804によってコードされる(色:青)。LEa1は、ヌクレオチド805~975によってコードされる(色:マゼンタ)。LEa2は、ヌクレオチド976~1185によってコードされる(色:緑)。LEa3は、ヌクレオチド1186~1356によってコードされる(色:赤)。LEa 4は、ヌクレオチド1357~1503によってコードされる(色:シアン)。LF断片は、ヌクレオチド1504~1536によってコードされる(色:青)。Nd egf-4は、ヌクレオチド1537~1668によってコードされる(色:赤)。Nd egf-5は、ヌクレオチド1669~1809によってコードされる(色:シアン)。NdTYは、ヌクレオチド1810~2091によってコードされる(色:マゼンタ)。Nd G3は、ヌクレオチド2092~2835によってコードされる(色:緑)。Nd egf-6は、ヌクレオチド2836~3006によってコードされる(色:赤)。
【
図12】AAVに挿入されたマウスαLNNdΔG2’(short-noG2)のオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列を提供する。
【
図13】マウスαLNNdΔG2’(short-noG2)のアミノ酸配列を提供する。
【
図14】AAVに挿入されたヒトαLNNdΔG2’(short-noG2)のオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列を提供する。
【
図15】ヒトαLNNdΔG2’(short-noG2)のアミノ酸配列を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ヘテロ三量体ラミニンは、全ての基底膜を決定づける要素であり、細胞関連ネットワークに自己集合する。哺乳動物において、全てのラミニンは、5つのα鎖のうちの1つ、3つのβ鎖のうちの1つ、および3つのγ鎖のうちの1つからなるヘテロ三量体である。合計で少なくとも45の潜在的なαβγ鎖の組み合わせがあるにもかかわらず、2010年の時点で、わずか15の異なるラミニンアイソフォームが報告されていた。インビトロ研究に基づいて、少なくとも16の認可されたラミニンアイソフォームが存在する(下の表1)。
【表1-1】
【表1-2】
【0022】
ラミニンは基底膜の重要な中心的オーガナイザーであり、恐らくそれは、細胞、自己、および他の基底膜成分に結合するラミニンの独特の能力の結果である。組織および分化した細胞の出現に必要な基底膜は、胚発生、組織恒常性、およびヒト疾患において重要である。
【0023】
十字型のラミニン分子の3本の短腕がネットワークノードを形成し、1つのα、1つのβ、および1つのγアームについて厳しい要件を伴う。相同な短腕は、遠位のラミニンN末端(LN)ドメインと、それに続く、未知の構造の球状ドメインが点在するラミニン型上皮成長因子様(LE)ドメインのタンデムリピートからなる。LNドメインは、ラミニン重合およびBMアセンブリに不可欠である。ラミニン重合は、ミエリン形成にとっても重要である。α3A、α4、およびβ2サブユニットを含むラミニンは、LNドメインの完全な相補体を有しないため、重合することができない(Hohenester and Yurchenco.2012.Cell Adh.Migr.2013.7(1):56-63において考察されている)。
【0024】
十字架の長腕(長さ75~80nm)は、3つ全ての鎖から形成されたαヘリックスコイルドコイルであるが、3つの短腕(35~50nm)はそれぞれ1つ鎖からなる。長腕の遠位端で、α鎖は、ラミニンの主要な細胞接着部位を含む5つのラミニンG様(LG)ドメインを追加する。長腕の端部にあるこの球状ドメインは、インテグリン、α-ジストログリカン、ヘパラン硫酸、および硫酸化糖脂質を含む細胞受容体に結合する。ラミニンネットワークの付加的な固定は、プロテオグリカンであるパールカンおよびアグリンによって提供される。次いで、IV型コラーゲンによって第2のネットワークが形成され、それがパールカンおよびアグリンのヘパラン硫酸鎖、ならびにナイドジェンによる追加の結合を介してラミニンネットワークと相互作用する。一般的に、Hohenester et al.(2013)Cell Ahd Migr.7(1):56-63を参照されたい。基底膜のこの成熟は、胚発生の後の段階で不可欠となる。
図1では、胚形成において発現した原型ラミニン(Lm)であるLm111が、細胞表面の硫酸化糖脂質(SGL)、インテグリン、α-ジストログリカン(αDG)、ナイドジェン(Nd)、アグリンに結合し、そのLNドメインを介して重合する。コラーゲンIVおよびパールカンはナイドジェンに結合する。インテグリンおよびαDGはアダプタータンパク質を介して細胞骨格に付着する。重合しないLmアイソフォームであるLm411は、非常に弱いインテグリンおよびαDG結合を示す。
【表1-3】
【0025】
Lm211およびLm411は、筋肉および末梢神経におけるBMアセンブリを媒介する。ラミニンは、スルファチド等の硫酸化糖脂質(SGL)に結合し、インテグリンα7β1およびα-ジストログリカン(αDG)に結合し、
図2に示すLN相互作用を介して重合することにより、初期の新生足場を形成する。ナイドジェン(主にナイドジェン-1)は、ラミニンおよびコラーゲン-IVに結合し、ブリッジとして機能し、コラーゲンが重合して第2のネットワークを形成する。全ての成分は、ラミニンを介して直接的または間接的に細胞受容体に繋ぎ止められるが、他のインテグリンと個別に相互作用することができる。Lm411は、神経内でLm211と共集合する非重合ラミニンである。αLNNdは、Lm411に結合し、重合活性を付与する。ミニアグリン(mag、mA)は、Lm411に結合し、αDG結合を付与する。(McKee et al.2017.J.Clin.Invest.127:1075-1089およびReinhard et al.2017,Sci.Transl.Med.28:9(396),pii:eaal4649.doi:10.1126/scitranslmed.aal4649を参照されたい)。
【0026】
シュワン細胞(SC)BMは、全体的な構造組織を筋肉BMと共有しているが、それらはいくつかの点で異なる:(i)β1-インテグリンはミエリン形成の主要なメディエーターであるが、筋肉ではαDGが最も重要な受容体である、(ii)いくつかのSCインテグリンがBMと相互作用するために利用可能であり(ただし、筋肉内ではα7β1のみ)、他のBM成分のインテグリン結合を可能にする、(iii)筋線維に存在しないLmα4は、ミエリン形成に寄与する正常なSCサブユニットである、(iv)SCは、α4-ラミニンの接着を可能にし得るスルファチドおよびCD146を発現する、(v)Dy2Jのミエリン消失は坐骨神経および神経根で最も顕著であり、ラミニン重合の特別な重要性を示唆している。アルファ2-ラミニンは、血液脳関門を形成する毛細血管にも見られる。ラミニンサブユニットの喪失により関門が水に漏れやすくなることが、ほぼ全てのLAMA2-MD患者でMRIによって検出される脳白質の変化の原因である可能性が高い。
【0027】
ラミニンα2欠損型筋ジストロフィー(LAMA2-MD)は、通常、歩行不能な先天性筋ジストロフィー(CMD)として現れる、LAMA2遺伝子内の変異によって引き起こされる常染色体劣性疾患である。ジストロフィーはしばしば末梢神経と脳の関与を伴う。LAMA2変異の大多数は、タンパク質サブユニットの発現、特にLm211の完全またはほぼ完全な喪失をもたらし、特に重症の歩行不能な先天性ジストロフィーを引き起こす。少数のミスセンス変異およびインフレーム欠失変異も存在し、そのほとんどが、より軽度の歩行可能なジストロフィーを引き起こすLmα短腕重合ドメイン(LN)にマッピングされている。LAMA2-MDでは、Lm411の転写およびタンパク質の蓄積が増加し、Lm511がわずかに増加する。Lm411は、筋肉のαDGおよびインテグリンに弱く結合し、重合する能力を欠いているという点で珍しい。Lm411はBMアセンブリには不十分であるため、他のラミニンと比較して細胞表面の蓄積には高いLm411濃度が必要であり、LAMA2変異をレスキューする能力が限られていることを説明している。これらの組成変化は、ラミニン-α2の非存在下で見られるBMの構造的減衰の根底にあるYurchenco et al.2017,Matrix Biology,pii:S0945-053X(17)30333-5.doi:10.1016/j.matbio.2017.11.009のレビューを参照されたい。
【0028】
ラミニンα2鎖欠損のいくつかのマウスモデルが利用可能であり、それらはまた、筋ジストロフィーならびに末梢神経系および中枢神経系のミエリン形成の欠陥を示す。LMα2鎖欠損筋肉では、BMが破壊され、LMα2鎖受容体と一部のBM関連タンパク質の発現が変化し、構造的欠陥とシグナル伝達欠陥の両方が正常な筋肉機能に有害である可能性がある。さらに、シュワン細胞の増殖およびオリゴデンドロサイトの拡散、ならびに末梢神経系中および枢神経系におけるミエリン形成をそれぞれ誘導するラミニンα2鎖の重要な役割が実証されている。Scheele et al.,(2007)J Mol Med 85:825-836を参照されたい。ラミニンα2は、dyW(dyW/dyW)マウスでは大幅に減少するが、dy3K(dy3K/dy3K)Lama2ノックアウトマウスには完全に存在しない。これらの2つのモデルは、ラミニンα2サブユニットを非常に低く発現するか、まったく発現しないLAMA2-MD患者の大多数を表している。マウスの中で最も深刻な影響を受けているdy3Kマウスは、非常に弱く、小さく、非常に短命である。第3のモデルはdy2J(dy2J/dy2J遺伝子型)マウスであり、ラミニンα2はわずかに減少し、ラミニンα4はやや増加する。LNドメインの損失のために、dy2JマウスのLm211は重合することができない。Dy2Jマウスは、約3週半の年齢で始まって、最初は後肢、その後、軸性筋組織および前肢筋組織に発症する進行性の衰弱および麻痺を特徴とし、シュワン細胞が軸索を選別して鞘に収めることができず、その結果としてミエリン喪失を引き起こす。しかしながら、これらのマウスは何ヶ月も生き残ることができる。
【0029】
LAMA2-MDの治療法の開発には課題がある。Lama1(Lmα1)の生殖系列遺伝子組換えによってラミニンの発現を回復させる直接的なアプローチは、マウスにおいて正常な機能を回復させる能力において効果的であるが、9.3kbのDNA構築物は利用可能な送達系には大き過ぎる。薬物療法は改善を示すが、重要なことに、根本的な構造上の欠陥を修正しない。炎症を起こした筋肉に非経口で送達されたEHS由来のLm111は、dyWマウスにおいて有益であることがわかっているが、このアプローチは、治療に必要な組換えラミニンでは効果的であることが示されていない。フレームシフト変異を修正するためのエクソンスキッピングがジストロフィン欠損を治療するために用いられてきたが、エクソンの境界がタンパク質ドメインの境界と一致せず、ほぼ全てのLAMA2エクソンをスキップするとシステイン不対合およびドメインのミスフォールディングが起こる可能性があるため、ラミニン欠損には問題がある。LAMA2-MD被験者の約20%に見られるスプライス欠陥の修復には、AAV由来のCRISPR/Cas9が使用されている。トランスジェニックミニアグリン(minagrin)(mag)の発現は、出生後に発現した場合でも、ラミニン-α2欠損型筋ジストロフィーのマウスモデルの筋病態生理を部分的に改善することが示された。mag遺伝子がAAVによって周産期のdyW(dyW/dyW)マウスに導入された場合にも、同様の利点が観察された。Qiao,et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2005)102(34):11999-2004.を参照されたい。ヒトのデュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療するための、マイクロジストロフィンのAAVによる送達が実証されている。Mendell,Neurosci Lett(2012)を参照されたい。本発明は、全てのLAMA2-MDを改善する可能性のある基底膜の修復を提供する。
【0030】
組換えラミニンとキメラリンカータンパク質は、LAMA2-MDのモデルにおいて基底膜の欠陥を修復することができる。BMアセンブリの要件を理解する上での最近の進歩は、ラミニン結合タンパク質が、LNドメインを欠いたラミニンでの重合のための代替の腕を提供し得ることを示している。αLNNd、βLNNd、およびγLNNdリンカータンパク質は、対応するαLN、βLN、およびγLNドメインを欠いたラミニンでの重合を可能にすることができる。McKee et al.,Matrix Biol(2018)www.//doi.org/10.1016/j.matbio.2018.01.012,Chimeric protein identification of dystrophic,Pierson and other laminin polymerization residuesを参照されたい。
図3Aおよび
図4に示すように、αLNNdは3つの球状ドメインからなり、Lmα1LN-Leaドメインとナイドジェン-1 G2-G3ドメインの融合から生じるロッドが介在している。LN球状ドメインは、重合ドメインである。G2はコラーゲンIVおよびパールカンに結合し、G3はLmγ1-LEb3ドメインに結合して、短腕の交差点近くの遺伝子座に結合する人工腕を形成する。α-LNドメインを欠く非重合ラミニンに結合すると、αLNNdはWTラミニンに悪影響を与えることなく、BMへの重合およびコラーゲンIV動員を可能にする。McKee,et al.,J Biol Chem,(2009)284(13):8984-8994を参照されたい。
【0031】
αLNNdのトランスジェニック発現は、dy2J筋ジストロフィーを改善することが示されており、また、受容体結合を増強するタンパク質であるミニアグリン(minagrin)と組み合わせると、より重度のdyWジストロフィーも改善することが示されている。McKee et al.,J Clin Invest(2017)127(3)1075-1089、Reinhard,et al.,Sci Transl Med(2017)9(396)を参照されたい。さらに注目すべきは、αLNNdタンパク質の代わりにβLNNdを使用してβ2LN変異を担持する糸球体Lm521への重合を回復させることにより、ラミニン自己集合の失敗に起因するピアソン症候群の患者を治療することが可能であり得ることである。
【0032】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、筋肉、末梢神経、および他の組織で高発現を達成することができる、最も有望な遺伝子送達系の1つである。潜在的なリスクとして、導入遺伝子産物に対する宿主細胞の免疫応答と、それに続くタンパク質の損失を伴うAAVキャプシドが挙げられる。しかしながら、この問題は、導入遺伝子のネオ抗原の形成を回避することにより解消されてきた。αLNNd、βLNNd、およびγLNNdリンカータンパク質のドメインは、通常、たとえジストロフィー状態であっても、より大きな基底膜タンパク質の一部として発現され、免疫原性である可能性は低い。CMVプロモーターが増強された、最大の挿入容量を有するAAV送達における最近の改善を利用するために、本発明のための好ましいAAVシステムは、混合された血清型キャプシドを含む増強されたCMVプロモーターを用いるAAV-DJ系であり、最大3.1kBの挿入が可能である(Cell Biolabs,Inc.、San Diego,CA)(
図6~
図8を参照)。
【0033】
αLNNdのAAV体細胞遺伝子発現の問題は、αLNNdがAAVによって発現されるのに十分小さい一方で、プロモーターは非常に小さくなければならず、良好な発現を提供する可能性が低いことである。この問題の潜在的な解決策は、AAVに適合するようにαLNNd DNAのサイズを4.17kBに縮小することであったが、サイズを縮小すると、基底膜アセンブリおよびミエリン形成のためのタンパク質の機能に影響し得るという懸念があった。N末端ドメインおよびC末端ドメインは不可欠であるため、内部ドメインのサイズを縮小することに重点が置かれた。作成され、αLNNdΔG2と称される最初の修飾タンパク質を
図3Aおよび
図4に示す。G2の除去により必要な縮小のほとんどが得られたが、コラーゲンIVおよびパールカンへの重合ラミニンの直接結合が失われるという犠牲を伴った。シュワン細胞、筋管、および後根神経節を用いて行われた実験により、G2およびその隣接する3kBまでのLE/EGF様ドメインは、試験システムにいくらかのナイドジェン-1が存在する限り消費可能であることが明らかになった。遺伝子組換えを用いた他の実験では、かなりのナイドジェン-1が基底膜に残っていることが示され、αLNNdリンカータンパク質のサイズ縮小を探究できることが示唆された。本発明は、内部G2および2つのEGF様スペーサードメインが除去され、ヌクレオチド配列のサイズが約2.9~3.0kBに縮小された、AAVによって発現されるには十分に小さいが、基底膜アセンブリおよびミエリン形成のためのタンパク質の機能を依然として保持する、αLNNdΔG2’と称される新しいαLNNdリンカータンパク質を提供する。
【0034】
本発明は、AAV-DJ-αLNNdΔG2’構築物を使用して、筋肉、末梢神経および他の組織におけるラミニン重合および基底膜アセンブリを回復し、LAMA2-MDを改善することに関する。そのような方法およびAAV-DJ-αLNNdΔG2’構築物は、ヒトの疾患に対する有効な治療となり得ることが期待される。参照を容易にするために、本明細書に記載のベクター構築物は、様々なAAV-DJ-αLNNdΔG2’構築物と称され、他の要素の中でも、マウスalphaLNNdDeltaG2shortタンパク質をコードする核酸配列を含むAAV-DJ構築物を意味する。
図9に示すように、ヒトalphaLLNdDeltaG2shortタンパク質は、マウスalphaLLNdDeltaG2shortタンパク質と87%の同一性を有する。コドン最適化されたヒト構築物は、筋肉、末梢神経および他の組織におけるラミニン重合および基底膜アセンブリを回復し、LAMA2-MDを改善するために、同じ所望の様式で機能することが期待される。β2LN変異を担持する糸球体Lm521への重合を回復させるために、alpha1セグメントをβLNNdタンパク質のベータ1セグメントに置き換えることにより、同じAAV-DJ構築物を使用してピアソン症候群の患者を治療することができると考えられる。
AAV適合性ラミニン-リンカータンパク質alphaLNNdDeltaG2short略語:
AAV:アデノ随伴ウイルス
rAAV:組換えアデノ随伴ウイルスまたはウイルスベクター
BM:基底膜
αLNNd:アルファラミニンN末端ドメイン結合タンパク質
αLNNdΔG2’:アルファラミニンN末端ドメインデルタG2短鎖タンパク質、alphaLNNdDeltaG2short
α-DG:α-ジストログリカン
βLNNdΔG2’:ベータラミニンN末端ドメインデルタG2短鎖タンパク質、betaLNNdDeltaG2short
ECM:細胞外マトリックス
γLNNdΔG2’:ガンマラミニンN末端ドメインデルタG2短鎖タンパク質、gammaLNNdDeltaG2short
LEドメイン:ラミニン型上皮成長因子様ドメイン
LGドメイン:ラミニンG様ドメイン
LMまたはLm:ラミニン
LNドメイン:ラミニンN末端ドメイン
【0035】
定義
本発明をより容易に理解することができるように、特定の技術的及び科学的用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で特に断りがない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている。
【0036】
添付の特許請求の範囲を含め、本明細書で使用される「a」、「an」、及び「the」などの単数形の単語は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限りそれらの対応する複数の言及を含む。
【0037】
細胞または受容体に適用される「活性化(activation)」、「刺激(stimulation)」、及び「処理(treatment)」は、例えば、文脈によって、または明白にそうでないことが示されない限り、リガンドによる細胞または受容体の活性化、刺激または処理と同じ意味をもち得る。「リガンド」は、天然及び合成のリガンド、例えばサイトカイン、サイトカイン変異体、類似体、突然変異タンパク質、及び抗体から誘導した結合化合物を包含する。「リガンド」はまた、小分子、例えばサイトカインのペプチド模倣物及び抗体のペプチド模倣物を包含する。「活性化」とは、内部機構並びに外部因子または環境因子によって調節されるような細胞活性化を意味する場合がある。例えば細胞、組織、器官、または生物の「応答」は、生化学的または生理学的挙動の変化、例えば生物学的コンパートメント内の濃度、密度、付着、または遊走、遺伝子発現率、または分化状態の変化を包含するが、その場合に変化は活性化、刺激、または治療、あるいは遺伝的プログラミングのような内部メカニズムと相関する。
【0038】
分子の「活性」は、リガンドへのまたは受容体への分子の結合、触媒活性、遺伝子発現または細胞シグナル伝達、細胞分化若しくは細胞成熟化を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性調節などを説明または意味してもよい。分子の「活性」はまた、細胞-細胞相互作用の調節または維持における活性、例えば、付着、または細胞構造、例えば細胞膜若しくは細胞骨格の維持における活性を指す場合がある。「活性」はまた、比活性、例えば[触媒活性]/[mgタンパク質]、または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生物学的コンパートメント中の濃度等を意味し得る。「活性」は、先天的または適応免疫系の構成要素の調節を意味し得る。
【0039】
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官、または体液に適用される「投与」及び「治療」は、外因性の医薬、治療薬、診断薬、または組成物の動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官、または体液への接触を意味する。「投与」及び「治療」は、例えば治療方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法、及び実験方法を指す場合がある。細胞の処理は、細胞への試薬の接触、並びに液体が細胞と接触している場合に試薬と液体との接触を包含する。「投与」および「治療」はまた、例えば、試薬、診断薬、結合化合物による、または別の細胞による、細胞のインビトロおよびエクスビボでの処理を意味する。用語「対象」は任意の生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒト患者を含むヒトを含む。
【0040】
「alphaLNNd」(αLNNd)は、3つの球状ドメインからなるリンカータンパク質であり、Lmα1LN-LEaドメインとナイドジェン-1 G2-G3ドメインの融合から生じるロッドが介在している。LN球状ドメインは、重合ドメインである。G2はコラーゲンIVおよびパールカンに結合し、G3はLmα1-LEb3ドメインに結合して、短腕の交差点近くの遺伝子座に結合する人工腕を形成する。αLNドメインを欠く非重合ラミニンに結合すると、αLNNdはWTラミニンに悪影響を与えることなく、BMへの重合およびコラーゲンIV動員を可能にする。
【0041】
「治療する」または「治療すること」は、本発明のrAAV構築物のいずれかを含む組成物等の治療薬を、該治療薬が治療活性を有する、1つ以上の疾患症状を有する、または疾患を有することが疑われる、または疾患に罹患するリスクが高い対象または患者に、内的または外的に投与することを意味する。典型的には、そのような症状の後退の誘導によるか、または進行の阻害によるかにかかわらず、治療対象または集団における1つ以上の疾患症状を任意の臨床的に測定可能な度合で軽減するのに有効な量で薬剤が投与される。任意の特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療薬の量(「治療有効量」とも称される)は、患者の病状、年齢、および体重、ならびに対象における所望の反応を引き出す薬物の能力等の因子によって変化してもよい。疾患症状が軽減されたかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価するために医師または他の熟練した医療提供者によって典型的に使用される任意の臨床測定によって評価することができる。本発明の実施形態(例えば、治療方法または製品)は、すべての対象における標的疾患症状を軽減するのに有効ではないかもしれないが、例えばスチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン・ホイットニーによるU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール・タプストラ検定及びウィルコクソン検定などの当該技術分野で公知の任意の統計的検定によって決定されるような被験者の統計的に有意な数では標的疾患症状を軽減するはずである。
【0042】
「治療(treatment)」は、それがヒト、獣医学、または研究対象に適用される場合、治療的処置、予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段、研究及び診断的応用を指す。「治療」は、それがヒト、獣医学、もしくは研究対象、または細胞、組織、もしくは器官に適用される場合、ヒトまたは動物対象、細胞、組織、生理学的コンパートメント、または生理学的液体に適用される本発明のrAAV構築物または関連する方法のいずれかのトランスフェクションを包含する。
【0043】
「単離された核酸分子」とは、単離されたポリヌクレオチドが天然に見出されるポリヌクレオチドの全てもしくは一部と関連していないか、またはそれが天然では連結されないポリヌクレオチドに連結される、ゲノム、mRNA、cDNA、もしくは合成起源のDNAもしくはRNA、またはそれらのいくつかの組み合わせを意味する。本開示の目的のために、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は無傷の染色体を包含しないことを理解されたい。特定の核酸配列を「含む」単離された核酸分子は、指定された配列に加えて、最大10個もしくはさらには最大20個以上の他のタンパク質もしくはその一部もしくは断片のコード配列を含み得る、または列挙される核酸配列のコード領域の発現を制御する作動可能に連結された調節配列を含み得る、かつ/またはベクター配列を含み得る。
【0044】
「制御配列」という句は、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に適した制御配列は、プロモーター、任意選択的にオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを使用することが知られている。
【0045】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれた場合に「作動可能に連結する」。例えば、プレシーケンスまたは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結し、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結し、またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置された場合、コード配列に作動可能に連結する。一般に、「作動可能に連結された」とは、連結しているDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合、隣接し、かつ読み取り相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は、従来の制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、従来の慣例に従って合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが使用される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」という表現は互換的に使用され、全てのそのような名称は子孫を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という用語は、初代の対象細胞及びそれに由来する培養物を移入数に関係なく含む。故意または偶然の突然変異のために、すべての子孫が正確に同一のDNA含量を有するわけではないこともまた理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。明確な名称が意図される場合、それは文脈から明らかであろう。
【0047】
組換えAAV
いくつかの態様において、本発明は、単離されたAAVを提供する。AAVに関して本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、その天然の環境から(例えば、宿主細胞、組織、または対象から)単離された、または人工的に生成されたAAVを指す。単離されたAAVは、組換え法を用いて生成され得る。そのようなAAVは、本明細書において「組換えAAV」と称される。組換えAAV(rAAV)は、rAAVの導入遺伝子が1つ以上の所定の組織に特異的に送達されるように、組織特異的な標的化能を有することが好ましい。AAVキャプシドは、これらの組織特異的な標的化能を決定する上で重要な要素である。したがって、標的とされる組織に適切なキャプシドを有するrAAVを選択することができる。
【0048】
ラミニンアルファ2欠損の治療に関連して所望の組織を標的化するために、好ましいrAAVはAAV-DJキャプシドとAAV-2 Rep遺伝子バックボーンの組み合わせであり、本明細書に記載の様々なrAAVが得られる(配列リストを参照)。
【0049】
所望のキャプシドタンパク質を有する組換えAAVを得るための方法が記載されている(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、US2003/0138772を参照されたい)。いくつかの異なるAAVキャプシドタンパク質、例えば、G.Gao,et al.,J.Virol,78(12):6381-6388(June 2004);G.Gao,et al,Proc Natl Acad Sci USA,100(10):6081-6086(May 13,2003);US2003-0138772、US2007/0036760、US2009/0197338に開示されるものが記載されており、AAVキャプシドタンパク質ならびに関連するヌクレオチドおよびアミノ酸配列に関連するそれらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される構築物および方法の所望のパッケージングには、AAV-DJベクターおよびキャプシドが好ましい(配列番号17)。典型的には、方法は、AAVキャプシドタンパク質またはその断片をコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;AAV逆方向末端反復(ITR)および導入遺伝子からなる組換えAAVベクター;ならびに十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養して、組換えAAVベクターのAAVキャプシドタンパク質へのパッケージングを可能にすることを含む。
【0050】
rAAVベクターをAAVキャプシドにパッケージするために宿主細胞中で培養される成分は、宿主細胞にトランスで提供され得る。あるいは、必要な成分のいずれか1つ以上(例えば、組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)は、当業者に既知の方法を用いて必要な成分の1つ以上を含むように操作された安定な宿主細胞によって提供されてもよい。最も適切には、そのような安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で必要な成分(複数可)を含むであろう。しかしながら、必要な成分(複数可)は構成的プロモーターの制御下にあってもよい。さらに別の代替例では、選択された安定な宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下で選択された成分(複数可)を、また1つ以上の誘導性プロモーターの制御下で他の選択された成分(複数可)を含み得る。例えば、(構成的プロモーターの制御下でE1ヘルパー機能を含む)293細胞に由来するが、誘導性プロモーターの制御下でrepおよび/またはcapタンパク質を含む、安定な宿主細胞が生成され得る。
【0051】
組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、およびrAAVを生成するためのヘルパー機能は、任意の適切な遺伝要素(ベクター)を使用してパッケージング宿主細胞に送達され得る。選択された遺伝要素は、本明細書に記載されるものを含む任意の適切な方法によって送達され得る。例えば、K.Fisher et al,J.Virol.,70:520-532(1993)および米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0052】
いくつかの実施形態において、組換えAAVは、(例えば、米国特許第6,001,650号に詳述されるような(トリプルトランスフェクション法に関連する内容は、参照により本明細書に組み込まれる))三重トランスフェクション法を用いて生成され得る。典型的には、組換えAAVは、AAV粒子、AAVヘルパー機能ベクター、および補助機能ベクターにパッケージされる組換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)で宿主細胞をトランスフェクトすることにより生成される。AAVヘルパー機能ベクターは、生産的なAAV複製およびキャプシド形成のためにトランスで機能する、「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能的repおよびcap遺伝子を含むAAVビリオン)を生成することなく、効率的なAAVベクターの産生を支持する。本発明での使用に適したベクターの非限定的な例として、米国特許第6,001,650号に記載されるpHLP19、および米国特許第6,156,303号に記載されるpRep6cap6ベクターが挙げられ、それらはどちらも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。補助機能ベクターは、AAVが複製のために依存する、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞機能(すなわち、「補助機能」)のためのヌクレオチド配列をコードする。補助機能は、AAV複製に必要な機能を含み、それには、限定されないが、AAV遺伝子転写の活性化、段階特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物の合成、およびAAVキャプシドアセンブリに関与する部分が含まれる。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)、ワクシニアウイルス等の既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0053】
トランスフェクトされた宿主細胞に関して、「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために使用され、外因性DNAが細胞膜内に導入された場合に細胞は「トランスフェクト」されている。多くのトランスフェクション技術が当該技術分野で一般的に知られている。例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、およびChu et al.(1981)Gene 13:197を参照されたい。そのような技術を使用して、ヌクレオチド組み込みベクターおよび他の核酸分子等の1つ以上の外因性核酸を適切な宿主細胞に導入することができる。
【0054】
「宿主細胞」は、目的の物質を保持するか、または保持することができる任意の細胞を指す。多くの場合、宿主細胞は哺乳動物細胞である。宿主細胞は、AAVヘルパー構築物、AAVミニ遺伝子プラスミド、補助機能ベクター、または組換えAAVの産生に関連する他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用され得る。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、本明細書で使用される「宿主細胞」は、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞を指し得る。単一の親細胞の子孫は、天然の、偶発的、または意図的な突然変異に起因して、形態においてまたはゲノムもしくは全DNA相補体において、元の親と必ずしも完全に同一であるとは限らないことを理解されたい。
【0055】
細胞に関して、「単離された」という用語は、その自然環境から(例えば、組織または対象から)単離された細胞を指す。「細胞株」という用語は、インビトロで連続的または長期の増殖及び分裂が可能な細胞の集団を指す。多くの場合、細胞株は単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。自発的または誘発された変化が、そのようなクローン集団の保存または移入の間に核型において起こり得ることは当該技術分野においてさらに知られている。したがって、言及された細胞株由来の細胞は、祖先の細胞または培養物と正確に同一ではない可能性があり、言及された細胞株はそのような変異体を含む。本明細書中で使用される場合、用語「組換え細胞」とは、生物学的に活性なポリペプチドの転写またはRNAなどの生物学的に活性な核酸の産生をもたらすDNAセグメントなどの外因性DNAセグメントが導入されている細胞を指す。
【0056】
「ベクター」という用語は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオン等の任意の遺伝要素を含み、これらは適切な制御要素に関連付けられた場合に複製可能であり、細胞間で遺伝子配列を移動させることができる。したがって、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態において、有用なベクターは、転写される核酸セグメントがプロモーターの転写制御下に配置されたベクターであることが企図される。「プロモーター」は、遺伝子の特定の転写を開始するために必要な、細胞の合成機構、または導入された合成機構によって認識されるDNA配列を指す。「作動可能に配置された」、「作動可能に連結された」、「制御下」、または「転写制御下」という語句は、RNAポリメラーゼ開始および遺伝子の発現を制御するように、プロモーターが核酸に対して正しい位置および配向にあることを意味する。「発現ベクターまたは構築物」という用語は、核酸コード配列の一部または全てが転写されることが可能な核酸を含む任意の種類の遺伝子構築物を意味する。いくつかの実施形態において、発現は、例えば、転写された遺伝子から生物学的に活性なポリペプチド産物または阻害性RNA(例えば、shRNA、miRNA)を生成するための核酸の転写を含む。
【0057】
組換えAAVベクター
本明細書に記載の「組換えAAV(rAAV)ベクター」は、典型的には、最低でも、導入遺伝子(例えば、αLNNdΔG2’をコードする)およびその調節配列、ならびに5’および3’AAV逆方向末端反復(ITR)からなる。キャプシドタンパク質にパッケージされ、選択された標的細胞に送達されるのは、この組換えAAVベクターである。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、ポリペプチド、タンパク質、機能性RNA分子(例えば、miRNA、miRNA阻害剤)または他の目的の遺伝子産物(例えば、αLNNdΔG2’)をコードする、ベクター配列と異種の核酸配列である。核酸コード配列は、標的組織の細胞における導入遺伝子の転写、翻訳、および/または発現を可能にする方法で、調節成分に作動可能に連結されている。
【0058】
ベクターのAAV配列は、シス作用性の5’および3’逆方向末端反復配列を含み得る(例えば、「B.J.Carter,in”Handbook of Parvoviruses”,ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155 168(1990)を参照)。ITR配列は、典型的には約145bpの長さである。好ましくは、実質的にITRをコードする配列全体が分子内で使用されるが、これらの配列のある程度の微細な変更は許容される。(例えば、Sambrook et al,”Molecular Cloning.A Laboratory Manual”,2d ed.,Cold Spring harbor Laboratory,New York(1989);およびK.Fisher et al.,J.Virol.,70:520 532(1996)等のテキストを参照)。そのような分子の例は、導入遺伝子を含む「シス作用性」プラスミドであり、選択された導入遺伝子配列および関連する調節要素は、5’および3’AAV ITR配列に隣接している。AAV ITR配列は、現在同定されている哺乳動物AAVタイプを含む、任意の既知のAAVから得ることができる。
【0059】
組換えAAVベクターについて上記で特定された要素に加えて、プラスミドベクターでトランスフェクトされた細胞または本発明によって生成されたウイルスに感染した細胞における、その転写、翻訳および/または発現を可能にする様式で導入遺伝子に作動可能に連結された従来の制御要素も含み得る。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」配列は、目的の遺伝子に隣接する発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するためにトランスでまたは離れて作用する発現制御配列の両方を含む。発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(polyA)シグナル等の効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに、必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強する配列を含む。天然、構成的、誘導性、および/または組織特異的なプロモーターを含む、多数の発現制御配列が当該技術分野で既知であり、利用することができる。
【0060】
本明細書で使用される場合、核酸配列(例えば、コード配列)および調節配列は、核酸配列の発現または転写を調節配列の影響または制御下に置くような様式で共有結合される場合、作動可能に連結していると言われる。核酸配列を機能性タンパク質に翻訳することが望ましい場合、2つのDNA配列が作動可能に連結されたと言われるのは以下の場合である:5’調節配列へのプロモーターの導入がコード配列の転写をもたらす場合、および2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト変異の導入をもたらさない、(2)プロモーター領域がコード配列の転写を指示する能力に干渉しない、または(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力に干渉しない。したがって、プロモーター領域がそのDNA配列の転写をもたらすことができ、結果として生じる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得る場合、プロモーター領域は核酸配列に作動可能に連結されるであろう。同様に、2つ以上のコード領域は、共通のプロモーターからのそれらの転写がインフレームで翻訳された2つ以上のタンパク質の発現をもたらすように連結される場合、作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、作動可能に連結されたコード配列は、融合タンパク質を生じる。いくつかの実施形態において、作動可能に連結されたコード配列は、機能性RNA(例えば、shRNA、miRNA)を生じる。
【0061】
タンパク質をコードする核酸の場合、ポリアデニル化配列は、一般に、導入遺伝子配列の後、かつ3’AAV ITR配列の前に挿入される。本発明において有用なrAAV構築物は、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子との間に位置するイントロンも含み得る。1つの考えられるイントロン配列は、SV-40に由来し、SV-40 Tイントロン配列と言及される。使用され得る別のベクター要素は、内部リボソーム侵入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写産物から1つより多くのポリペプチドを生成するために使用される。IRES配列は、1つより多くのポリペプチド鎖を含むタンパク質を生成するために使用される。これらおよび他の一般的なベクター要素の選択は従来のものであり、多くのそのような配列が利用可能である(例えば、Sambrook et al、およびこれに引用される参考文献、例えば、3.183.26および16.1716.27ページ、ならびにAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,1989を参照)。いくつかの状況において、口蹄疫ウイルス2A配列がポリタンパク質に含まれてもよい:これは、ポリタンパク質の切断を媒介することが示されている小さなペプチド(約18アミノ酸長)である(Ryan,M D et al.,EMBO,1994;4:928-933;Mattion,N M et al.,J Virology,November 1996;p.8124-8127;Furler,S et al.,Gene Therapy,2001;8:864-873;およびHalpin,C et al.,The Plant Journal,1999;4:453-459)。2A配列の切断活性は、プラスミドおよび遺伝子治療ベクター(AAVおよびレトロウイルス)を含む人工的な系において以前に実証されている(Ryan,M D et al.,EMBO,1994;4:928-933;Mattion,N M et al.,J Virology,November 1996;p.8124-8127;Furler,S et al.,Gene Therapy,2001;8:864-873;およびHalpin,C et al.,The Plant Journal,1999;4:453-459;de Felipe,P et al.,Gene Therapy,1999;6:198-208;de Felipe,P et al.,Human Gene Therapy,2000;11:1921-1931.;およびKlump,H et al.,Gene Therapy,2001;8:811-817)。
【0062】
宿主細胞における遺伝子発現に必要な調節配列の正確な性質は、種、組織、または細胞型の間で異なるが、一般に、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列、エンハンサー要素等の、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列を含む。特に、そのような5’非転写調節配列は、作動可能に結合された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含むであろう。調節配列はまた、必要に応じて、エンハンサー配列または上流のアクチベーター配列を含み得る。ベクターは、任意選択的に、5’リーダー配列またはシグナル配列を含んでもよい。
【0063】
構成的プロモーターの例として、限定されないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択的にRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択的にCMVエンハンサーを伴う)(例えば、Boshart et al,Cell,41:521-530(1985)を参照)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、13-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEFlaプロモーター(Invitrogen)が挙げられる。
【0064】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物、温度等の環境因子、または特定の生理学的状態、例えば、急性期、細胞の特定の分化状態の存在によって、または細胞の複製においてのみ、調節することができる。誘導性プロモーターおよび誘導系は、限定されないが、Invitrogen、ClontechおよびAriadを含む、様々な商業的供給源から入手可能である。外因的に供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例として、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088)、エクジソン昆虫プロモーター(No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346-3351(1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossen et al,Pro.c.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossen et al.,Science,268:1766-1769(1995)、Harvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512-518(1998)も参照)、RU486誘導系(Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239-243(1997)およびWang et al.,Gene Ther.,4:432-441(1997))およびラパマイシン誘導系(Magari et al.,J.Clin.Invest.,100:2865-2872(1997))が挙げられる。この状況において有用であり得るさらに他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば、温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって、または細胞の複製においてのみ、調節されるものである。
【0065】
別の実施形態において、導入遺伝子のための天然プロモーターまたはその断片が使用される。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣することが所望される場合、天然のプロモーターが好ましい場合がある。天然のプロモーターは、導入遺伝子の発現が時間的もしくは発生的に、または組織特異的に、または特定の転写刺激に応答して調節されなければならない場合に使用され得る。さらなる実施形態において、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列等の他の天然の発現制御要素を使用して、天然の発現を模倣することもできる。
【0066】
いくつかの実施形態において、調節配列は、組織特異的な遺伝子発現能を付与する。場合によっては、組織特異的な調節配列は、組織特異的な様式で転写を誘導する組織特異的な転写因子に結合する。そのような組織特異的な調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー等)は当該技術分野で周知である。例示的な組織特異的な調節配列として、以下の組織特異的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない:ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター等のニューロンプロモーター(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503-15(1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.IDSA,88:5611-5(1991))、およびニューロン-特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,Neuron,15:373-84(1995))。いくつかの実施形態において、組織特異的プロモーターは以下から選択される遺伝子のプロモーターである:神経核(NeuN)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、大腸腺腫症(APC)、およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)。いくつかの実施形態において、プロモーターはCMVプロモーターである。
【0067】
導入遺伝子コード配列
rAAVベクターの導入遺伝子配列の組成は、結果として得られるベクターが使用される用途に依存する。例えば、ある種の導入遺伝子配列は、発現時に検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。別の例において、導入遺伝子は、治療用αLNNdΔG2’タンパク質または治療用機能性RNAをコードする。別の例において、導入遺伝子は、研究目的で、例えば、導入遺伝子産物の機能を研究するために、例えば、導入遺伝子を保持する体細胞トランスジェニック動物モデルを作成するために使用されることが意図されるタンパク質または機能性RNAをコードする。別の例において、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを作成するために使用されることが意図されるタンパク質または機能性RNAをコードする。適切な導入遺伝子コード配列は、当業者には明らかであろう。
【0068】
いくつかの態様において、本発明は、例えば、対象においてラミニンアルファ2ポリペプチド欠損をもたらす遺伝子欠損等の、哺乳動物におけるLAMA2遺伝子欠損(例えば、遺伝性遺伝子欠損、体細胞遺伝子変化)を予防または治療する方法において使用するための、特にラミニンアルファ2欠損を呈する対象において欠損の重症度または程度を治療または軽減するための、rAAVベクターを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、薬学的に許容される担体中の、1つ以上の治療用ペプチド、ポリペプチド、shRNA、マイクロRNA、アンチセンスヌクレオチド等をコードするrAAVベクターを、そのような障害を有するまたは有すると疑われる対象におけるLAMA2障害を治療するのに十分な量および期間で対象に投与することを含む。
【0069】
組換えAAVの投与
rAAVSは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の有害作用なく十分なレベルの遺伝子導入および発現を提供するのに十分な量で投与される。従来の薬学的に許容される投与経路は、限定されないが、選択された組織への直接送達(例えば、脳内投与、髄腔内投与)、静脈内、経口、吸入(鼻腔内および気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、および他の非経口投与経路を含む。必要であれば、投与経路を組み合わせてもよい。
【0070】
対象への特定のrAAVの送達は、例えば、対象の血流への投与によるものであってもよい。血流への投与は、静脈、動脈、または任意の他の血管導管への注射によるものであり得る。さらに、特定の例では、rAAVを脳組織、髄膜、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、オリゴデンドロサイト、脳脊髄液(CSF)、間質腔等に送達することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態において、組換えAAVは、定位注射などによる当該技術分野で既知の神経外科技術を用いて、針、カテーテルまたは関連デバイスを用いて脊髄または脳に直接送達され得る(例えば、Stein et al.,J Virol 73:3424-3429,1999;Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000;Davidson et al.,Nat.Genet.3:219-223,1993;およびAlisky and Davidson,Hum.Gene Ther.11:2315-2329,2000を参照)。特定の状況において、皮下、膵内、鼻腔内、非経口、静脈内、筋肉内、脳内、髄腔内、脳内、経口、腹腔内、または吸入のいずれかにより、本明細書に開示される適切に製剤化された医薬組成物中でrAAVベースの治療用構築物を送達することが望ましい。いくつかの実施形態において、米国特許第5,543,158号、同第5,641,515号および同第5,399,363号(それぞれ、参照によりその全体が具体的に本明細書に組み込まれる)に記載される投与モダリティを用いてrAAVを送達することができる。
【0071】
組換えAAV組成物
rAAVは、当該技術分野で既知の任意の適切な方法に従って、組成物中で対象に送達されてもよい。好ましくは生理学的に適合性のある担体(例えば、組成物中)に懸濁されたrAAVは、対象、例えば、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、または非ヒト霊長類(例えば、マカク)に投与されてもよい。特定の実施形態において、組成物は、rAAVを単独で、または1つ以上の他のウイルス(例えば、1つ以上の異なる導入遺伝子をコードする/有する第2のrAAV)と組み合わせて含み得る。
【0072】
適切な担体は、rAAVが対象とする適応症を考慮して、当業者により容易に選択され得る。例えば、1つの適切な担体は、様々な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)とともに製剤化され得る生理食塩水を含む。他の例示的な担体として、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、および水が挙げられる。担体の選択は、本発明の限定ではない。
【0073】
任意選択的に、本発明の組成物は、rAAVおよび担体(複数可)に加えて、防腐剤または化学安定剤等の他の従来の医薬成分を含み得る。適切な例示的な防腐剤として、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールが挙げられる。適切な化学安定剤は、ゼラチンおよびアルブミンを含む。
【0074】
所望の効果または「治療効果」を達成するために必要なrAAVビリオンの用量、例えば、体重1キログラム当たりのベクターゲノム中の用量の単位/(vg/kg)は、限定されないが、以下を含むいくつかの要因に基づいて変化する:rAAV投与経路、治療効果を達成するために必要な遺伝子またはRNA発現のレベル、治療されている特定の疾患または障害、ならびに遺伝子またはRNA産物の安定性。当業者は、前述の要因、および当該技術分野で周知の他の要因に基づいて、特定の疾患または障害を有する対象を治療するためのrAAVビリオン用量範囲を容易に決定することができる。rAAVの有効量は、一般に、対象当たり約109~1016ゲノムコピーを含む約10μl~約100mlの範囲の溶液である。他の体積の溶液が使用されてもよい。使用される体積は通常、とりわけ、対象のサイズ、rAAVの用量、および投与経路に依存する。例えば、髄腔内または脳内投与の場合、1μl~10μlまたは10μl~100μlの範囲の体積を使用することができる。静脈内投与の場合、10μl~100μl、100μl~1ml、1ml~10ml、またはそれ以上の範囲の体積を使用することができる。場合によっては、対象当たり約1010~1012のrAAVゲノムコピーの投与量が適切である。特定の実施形態において、対象当たり約1012のrAAVゲノムコピーが、CNS組織を標的とするのに効果的である。いくつかの実施形態において、rAAVは、対象当たり1010、1011、1012、1013、1014、または1015ゲノムコピーの用量で投与される。いくつかの実施形態において、rAAVは1kg当たり1010、1011、1012、1013、または1014ゲノムコピーの用量で投与される。
【0075】
いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、特に高濃度のrAAVが存在する場合(例えば、約1013 GC/ml以上)、組成物中のAAV粒子の凝集を低減するように製剤化される。rAAVの凝集を低減するための方法は当該技術分野で周知であり、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整等が挙げられる(例えば、Wright F R,et al.,Molecular Therapy(2005)12,171-178(参照によりその内容が本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0076】
本明細書に記載の特定の組成物を様々な治療計画で使用するための適切な投薬および治療計画の開発と同様に、薬学的に許容される賦形剤および担体溶液の製剤は当業者に周知である。典型的には、これらの製剤は、少なくとも約0.1%以上の有効成分を含み得るが、活性成分(複数可)のパーセンテージは当然変更されてもよく、好都合には全製剤の重量または体積の約1または2%~約70%または80%以上である。当然のことながら、各治療上有用な組成物中の活性成分の量は、適切な投薬量が化合物の任意の所与の単位用量で得られるようも調製され得る。溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与経路、製品の有効期間、および他の薬理学的考慮事項等の要因は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、したがって、様々な投薬量および治療計画が望ましい場合がある。
【0077】
注射用途に適した医薬品形態は、滅菌水溶液、または滅菌注射液もしくは分散液の即時調製のための分散剤および滅菌粉末を含む。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中でも調製され得る。通常の保存および使用条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含む。多くの場合、その形態は滅菌であり、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性である。製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらすことができる。
【0078】
注射用水溶液の投与の場合、例えば、溶液は必要に応じて適切に緩衝されてもよく、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は当業者に既知であろう。例えば、1回の投与量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mLの皮下点滴用輸液に添加するか、または提案された注入部位に注射することができる(例えば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580を参照)。宿主の状態に応じて、投与量に多少の変動が必然的に起こる。投与責任者は、いずれにしても、個々の宿主に適切な用量を決定する。
【0079】
滅菌注射液は、必要に応じて、本明細書に列挙される他の様々な成分とともに必要量の活性rAAVを適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに、様々な滅菌活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥技術であり、活性成分に加えて、予め滅菌濾過したその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。
【0080】
本明細書に開示されるrAAV組成物はまた、中性または塩の形態で製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)を含み、例えば、塩酸もしくはリン酸等の無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸とともに形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄等の無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基からも誘導することができる。製剤化されると、溶液は、投与製剤に適合する様式で、かつ治療的に有効であるような量で投与される。製剤は、注射液、薬物放出カプセル等の様々な剤形で容易に投与される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等を含む。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。補助的な活性成分も、組成物に組み込むことができる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されたときにアレルギー反応または同様の有害な反応を引き起こさない分子実体および組成物を指す。
【0082】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞等の送達ビヒクルは、本発明の組成物を適切な宿主細胞に導入するために使用することができる。特に、rAAVベクターによって送達される導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子等のいずれかにカプセル化して、送達のために製剤化され得る。
【0083】
そのような製剤は、本明細書に開示される核酸またはrAAV構築物の薬学的に許容される製剤の導入に好ましい場合がある。リポソームの形成および使用は、一般に当業者に知られている。最近、血清安定性および循環半減期が改善されたリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製物の様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号、同第5,552,157号、同第5,565,213号、同第5,738,868号および同第5,795,587号)。
【0084】
リポソームは、通常は他の手順によるトランスフェクションに抵抗性である多くの細胞型とともに順調に用いられてきた。さらに、リポソームには、ウイルスベースの送達系に典型的なDNAの長さの制約がない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射線治療薬、ウイルス、転写因子、およびアロステリックエフェクターを様々な培養細胞株および動物に導入するために効果的に使用されてきた。さらに、リポソーム媒介性の薬物送達の有効性を調べるいくつかの臨床試験が成功裏に完了している。
【0085】
リポソームは、水性媒体に分散されたリン脂質から形成され、自発的に多層同心二分子膜小胞(多層小胞(MLV)とも称される)を形成する。MLVは、一般に25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、コアに水溶液を含む、直径200~500Åの範囲の小単層小胞(SUV)が形成される。
【0086】
あるいは、rAAVのナノカプセル製剤が使用されてもよい。ナノカプセルは通常、物質を安定かつ再現可能な様式で封じ込めることができる。細胞内ポリマーの過負荷による副作用を回避するために、そのような超微粒子(約0.1μmのサイズ)は、インビボで分解できるポリマーを使用して設計するべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、使用のために企図される。
【0087】
上記の送達方法に加えて、以下の技術も、rAAV組成物を宿主に送達する代替方法として企図される。ソノフォレシス(すなわち、超音波)が使用されており、循環系への、および循環系を介した薬物透過の速度および有効性を高めるためのデバイスとして米国特許第5,656,016号記載されている。企図される他の薬物送達の選択肢は、骨内注射(米国特許第5779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼科用製剤(Bourlais et al.,1998)、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号および同第5,783,208号)およびフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)である。
【0088】
rAAV組成物の送達に関連する一般的な方法
本発明は、rAAVビリオンを含む安定な医薬組成物を提供する。組成物は、凍結/解凍サイクルに供された場合、およびガラスを含む様々な材料で作られた容器に保存された場合であっても、安定かつ活性な状態を維持する。
【0089】
目的の異種ヌクレオチド配列を含む組換えAAVビリオンは、遺伝子送達のために、例えば、遺伝子治療用途において、トランスジェニック動物の作成のために、核酸ワクチン接種、リボザイムおよびアンチセンス治療において等、ならびに様々な細胞型へのインビトロでの遺伝子送達のために使用することができる。
【0090】
一般に、rAAVビリオンは、インビボまたはインビトロのいずれかの形質導入技術を用いて対象の細胞に導入される。インビトロで形質導入された場合、所望のレシピエント細胞は対象から取り出され、rAAVビリオンで形質導入され、対象に再導入される。あるいは、同系細胞または異種細胞は、それらの細胞が対象において不適切な免疫応答を生成しない場合に使用され得る。
【0091】
形質導入された細胞を対象に送達および導入するための適切な方法が記載されている。例えば、細胞は、例えば適切な培地で、組換えAAVビリオンを細胞と組み合わせ、サザンブロットおよび/またはPCR等の従来の技術を使用して、または選択可能なマーカーを使用することによって、目的のDNAを保持する細胞をスクリーニングすることによってインビトロで形質導入することができる。次に、形質導入された細胞は、後にさらに十分に説明する医薬組成物に製剤化され得、該組成物は、例えば、カテーテルを使用して、または臓器に直接、筋肉内、静脈内、動脈内、皮下および腹腔内注射、または平滑筋への注射等の様々な経路で対象に導入される。
【0092】
インビボ送達の場合、rAAVビリオンは医薬組成物に製剤化され、一般に非経口的に、例えば、骨格筋への直接的な筋肉内注射によって、関節内に、静脈内に、または臓器に直接的に投与される。
【0093】
適切な用量は、他の要因の中でも、治療される対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類または他の哺乳動物)、治療される対象の年齢および全身状態、治療される状態の重症度、rAAVビリオンの投与様式に依存する。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0094】
したがって、「治療有効量」は、臨床試験を通じて決定することができる比較的広い範囲に入る。例えば、インビボ注射、すなわち対象への直接注射の場合、治療有効用量は、約105~1016のrAAVビリオン、より好ましくは108~1014程のrAAVビリオンである。インビトロ形質導入の場合、細胞に送達されるrAAVビリオンの有効量は、約105~1013、好ましくは108~1013のrAAVビリオン程である。組成物が、対象に戻される形質導入細胞を含む場合、医薬組成物中の形質細胞の量は、約104~1010細胞、より好ましくは105~108細胞であろう。当然のことながら、用量は、形質導入の効率、プロモーター強度、メッセージの安定性およびそれによってコードされるタンパク質等に依存する。有効投与量は、用量反応曲線を確立する日常的な試験を通じて当業者によって容易に確立され得る。
【0095】
投薬治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであってもよい。さらに、対象は、必要に応じて多くの用量を投与されてもよい。したがって、対象は、例えば、単回投与で105~1016rAAVビリオン、または集合的に、例えば、105~1016rAAVビリオンの送達をもたらす2、4、5、6またはそれ以上の用量で与えられてもよい。当業者は、投与する用量の適切な回数を容易に決定することができる。
【0096】
したがって、医薬組成物は、目的のタンパク質の治療有効量、すなわち問題の病状の症状を軽減もしくは改善するのに十分な量、または所望の利益をもたらすのに十分な量を産生するのに十分な遺伝物質を含む。そのため、rAAVビリオンは、1回または複数回の用量で投与された場合に治療効果を提供するのに十分な量で対象組成物中に存在する。rAAVビリオンは、凍結乾燥調製物として提供され、即時または将来の使用のためにビリオン安定化組成物に希釈され得る。あるいは、rAAVビリオンは、製造直後に提供され、将来の使用のために保存されてもよい。
【0097】
医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤も含む。そのような賦形剤は、それ自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘導せず、過度の毒性なしに投与され得る任意の医薬品を含む。薬学的に許容される賦形剤は、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール等の液体を含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、および、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩がそれに含まれてもよい。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等の補助物質が、そのようなビヒクル中に存在し得る。薬学的に許容される賦形剤の詳細な考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.1991)から入手可能である。
【0098】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、特定の核酸配列、RNAおよび/またはDNAが、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように増幅される手順または技術を指す。一般に、関心領域の末端またはその向こう側からの配列情報を使用して、オリゴヌクレオチドプライマーを設計する。これらのプライマーは、増幅される鋳型の反対側の鎖と配列が同一であるかまたは類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅された物質の末端と一致する可能性がある。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、および全細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージまたはプラスミド配列を増幅するために使用することができる。一般的にMullis et al.(1987)Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263;Erlich,ed.,(1989)PCR TECHNOLOGY(Stockton Press,N.Y.)を参照されたい。本明細書で使用される場合、PCRは、核酸試験試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応方法の例の1つであると考えられるが、唯一の例ではなく、該方法は、核酸の特定の断片を増幅または生成するために、プライマーとしての既知の核酸および核酸ポリメラーゼの使用を含む。
【0099】
核酸
本発明はまた、本明細書に記載のαLNNdΔG2’タンパク質をコードする特定の構築物および核酸を含む。配列番号1および配列番号24を含む配列リストに列挙される選択された配列を含む特定の構築物および配列は、本発明の実施形態において有用であり得る。
【0100】
好ましくは、核酸は、低、中、または高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし、生物学的機能を維持するαLNNdΔG2’タンパク質をコードする。第1の核酸分子の一本鎖形態が温度および溶液イオン強度の適切な条件下で第2の核酸分子にアニールすることができる場合、第1の核酸分子は第2の核酸分子に「ハイブリダイズ可能」である(上記Sambrookらを参照)。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。典型的な低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、55℃、5X SSC、0.1%SDS、ホルムアミドなし、または42℃で30%ホルムアミド、5X SSC、0.5%SDSを含む。典型的な中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、42℃で、40%ホルムアミド、5Xまたは6X SSCおよび0.1%SDSである。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、42℃または任意選択的により高い温度(例えば、57℃、59℃、60℃、62℃、63℃、65°または68℃)で、50%ホルムアミド、5Xまたは6XSSCである。一般に、SSCは0.15M NaC1および0.015Mクエン酸ナトリウムである。ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的な配列を含むことを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは、当該技術分野で周知の変数である核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、核酸がハイブリダイズできるストリンジェンシーは高くなる。長さが100ヌクレオチドを超えるハイブリッドの場合、融解温度を計算するための方程式が導き出されている(上記Sambrookら、9.50~9.51を参照)。より短い核酸、例えばオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの場合、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(上記Sambrookら、11.7~11.8を参照)。
【0101】
αLNNdΔG2’マウスポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。αLNNdΔG2’ヒトポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
図9に示されるように、マウスポリペプチドと87%の同一性を有する。アルゴリズムのパラメーターがそれぞれの参照配列の全長にわたりそれぞれの配列間で最大のマッチを与えるように選択されるBLASTアルゴリズムによって比較が行われる場合、本明細書(配列番号21~22)に提供されるαLNNdΔG2’アミノ配列と少なくとも約90%同一であり、最も好ましくは少なくとも約95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)同一であるアミノ酸配列を含むαLNNdΔG2’ポリペプチドが、ラミニン重合機能の回復に関して企図される。アルゴリズムのパラメーターがそれぞれの参照配列の全長にわたりそれぞれの配列間で最大のマッチを与えるように選択されるBLASTアルゴリズムによって比較が行われる場合、参照αLNNdΔG2’アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約90%類似し、最も好ましくは少なくとも約95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドも、本発明の構築物および方法に含まれる。
【0102】
配列同一性は、2つの配列を最適に整列させたときに、2つのポリペプチドのアミノ酸が同等の位置で同じである程度を指す。配列の類似性は、同一の残基と、同一でない、生化学的に関連するアミノ酸を含む。類似した特性を共有し、互換性であり得る生化学的に関連するアミノ酸については上で論じている。
【0103】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド配列間の、または2つのポリペプチド配列を最適に整列させたときのそれらの間の配列類似性を指す。2つの比較される配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおける位置がアデニンによって占められている場合、それらの分子はその位置で相同である。相同性のパーセントは、2つの配列によって共有される相同な位置の数を、比較される位置の総数で割り、100を掛けたものである。例えば、配列を最適に整列させたときに、2つの配列の10の位置のうち6つがマッチするかまたは相同である場合、その2つの配列は60%相同である。一般に、比較は、最大パーセント相同性を得るように2つの配列を整列させたときに行われる。。
【0104】
以下の参考文献は、配列分析によく使用されるBLASTアルゴリズムに関連している:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,”A model of evolutionary change in proteins.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,”Matrices for detecting distant relationships.”in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.”M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;and Altschul,S.F.”Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.”in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York。
【0105】
本発明はまた、様々な核酸を含む発現ベクターも提供し、ここで、核酸は、宿主細胞がベクターでトランスフェクトされると宿主細胞によって認識される制御配列に作動可能に連結される。また、組換えAAV-DJおよび特定のAAV-2配列、ならびにCMVプロモーターおよびCMVエンハンサーの指示下でαLNNdΔG2’を発現させるための核酸配列を含むビリオンも提供される。サイズが小さく、良好な発現を伴う高い活性を有するならば、代替のプロモーターを使用することができる。これらの構築物内で、rAAV2配列は5’および3’ITR配列、例えば、配列リストに記載される配列番号11および16ならびに他の配列に対応する。本発明においてラミニンα-2欠損に治療効果のあるビリオンを形成するために、これらの配列をAAV-DJキャプシドでパッケージングした。
【0106】
医薬組成物および投与
本発明の組成の医薬組成物または滅菌組成物を調製するために、AAV-DJベクターまたは関連する組成物を、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照されたい。
【0107】
治療薬および診断薬の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁液の形態の、許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより調製することができる(例えば、Hardman,et al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照)。
【0108】
単独でまたは他の薬剤と組み合わせて投与される治療用組成物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%の致死量)およびED50(集団の50%に治療効果のある用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数(LD50/ED50)である。特定の態様では、高い治療指数を示す治療用組成物が望ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータはヒト用途の投与量の範囲を処方するのに使用され得る。そのような化合物の投与量は、ほとんどまたは全く毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、用いられる剤形および投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。
【0109】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、医薬品便覧2003(Thomson Healthcare;第57版(2002年11月1日))に従って対象に投与される。
【0110】
投与方法は異なり得る。適切な投与経路は、経口、直腸、経粘膜、腸管内、非経口、筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、送気、局所、皮膚、経皮、または動脈内を含む。
【0111】
特定の実施形態において、組成物または治療薬は注射などの侵襲的経路によって投与することができる(上記参照)。本発明のさらなる実施形態において、組成物、治療薬またはその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、関節内(例えば関節炎の関節に)、腫瘍内、または吸入、エアロゾル送達によって投与される。非侵襲的経路(例えば、経口、例えば、丸剤、カプセル剤または錠剤)による投与もまた本発明の範囲内である。
【0112】
組成物は、当該技術分野において公知の医療機器を用いて投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、例えばプレフィルドシリンジまたは自己注射器を含む皮下注射針を用いた注射により投与することができる。
【0113】
本発明の医薬組成物は、例えば米国特許第6,620,135号、同第6,096,002号、同第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556号に開示されるデバイス等の無針皮下注射デバイスを用いて投与されてもよい。
【0114】
あるいは、AAV-DJベクターまたは関連化合物を、全身的にではなく局所的に、例えば、しばしばデポ製剤または徐放性製剤として、所望の標的部位に直接注射することにより投与してもよい。さらに、標的薬物送達系において、例えば、脳を標的とする、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて、組成物を投与することができる。リポソームは、所望の組織に標的化され、所望の組織によって選択的に取り込まれるであろう。
【0115】
投与計画は、治療用組成物の血清または組織代謝回転速度、症状のレベル、および生体マトリックスにおける標的細胞の到達性を含む、いくつかの要因に依存する。好ましくは、投与計画は、同時に望ましくない副作用を最小限に抑えながら、標的病態の改善に影響を与える十分な治療組成物を送達する。したがって、送達される生物製剤の量は、特定の治療用組成物および治療される疾患の重症度に一部依存する。
【0116】
適切な用量の決定は、例えば、治療に影響を与えることが当該技術分野において既知であるかまたは疑われるパラメーターまたは因子を用いて、臨床医によって行われる。一般に、用量は最適用量より幾分少ない量で始まり、その後、任意の負の副作用に対して所望のまたは最適な効果が達成されるまで少しずつ増加させる。重要な診断基準は、例えば、炎症の症状または産生される炎症性サイトカインのレベルを含む。一般に、使用される生物製剤は、治療の標的となる動物と同じ種に由来し、それによって試薬に対する任意の免疫応答を最小限に抑えることが望ましい。
【0117】
本明細書で使用される場合、「阻害する」または「治療する」または「治療」は、障害と関連する症状の発症の延期および/またはそのような障害の症状の重症度の低下を含む。当該用語はさらに、既存の管理されていないまたは望ましくない症状を改善すること、さらなる症状を予防すること、及びそのような症状の根本的な原因を改善または防止することを含む。したがって、これらの用語は、障害、疾患もしくは症状を有する、またはそのような障害、疾患もしくは症状を発症する可能性を有する脊椎動物対象に有益な結果が付与されたことを意味する。
【0118】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」、「治療有効用量」および「有効量」は、単独でまたはさらなる治療薬と組み合わせて細胞、組織または対象に投与されたときに、疾患もしくは状態の1つ以上の症状において、またはそのような疾患もしくは状態の進行において測定可能な改善をもたらすのに効果的である、本発明のrAAV-DJ-αLNNdΔG2’ベースの化合物の量を指す。治療有効用量はさらに、症状の少なくとも部分的な改善、例えば、関連する病状の治療、治癒、予防もしくは改善、またはそのような状態の治療、治癒、予防もしくは改善の割合の増加をもたらすのに十分な化合物の量を指す。単独で投与される活性成分を個体に適用したときは、治療有効用量はその成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、治療有効用量は、併用、連続的投与、または同時投与にかかわらず治療効果をもたらす活性成分の組み合わせた量を指す。有効量の治療薬は、少なくとも10%、通常少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の診断尺度またはパラメーターの改善をもたらすであろう。疾患重症度を評価するために主観的尺度が用いられる場合、有効量はまた主観的尺度の改善ももたらし得る。
【0119】
キット
本発明はまた、キットの形で本発明の組合せの成分を含むキットを提供する。本発明のキットは、限定されないが、本明細書に記載される薬学的に許容される担体および/または化学療法薬を含む1つ以上のさらなる成分と合わせて、限定されないが、本明細書で論じられるrAAV-DJ-αLNNdΔG2’ベースの化合物を含む1つ以上の成分を含む。rAAV-DJ-αLNNdΔG2’ベースの化合物もしくは組成物および/または治療薬は、純粋な組成物として、または医薬組成物中に薬剤的に許容される担体と組み合わせて製剤化され得る。
【0120】
一実施形態において、キットは、1つの容器(例えば、滅菌したガラスまたはプラスチックバイアル中)に本発明のrAAV-DJ-αLNNdΔG2’ベースの化合物/組成物またはその医薬組成物、ならびに別の容器(例えば、滅菌したガラスまたはプラスチックバイアル中)にその医薬組成物および/または化学療法薬を含む。
【0121】
本発明の別の実施形態において、キットは、任意選択的に、単一の共同容器中に、任意選択的に、一緒に製剤化される1つ以上の化学療法薬成分と組み合わせて、薬学的に許容される担体とともにrAAV-DJ-αLNNdΔG2’ベースの化合物を含む、本発明の組み合わせを含む。
【0122】
キットが対象への非経口投与のための医薬組成物を含む場合、キットはそのような投与を行うための装置を含むことができる。例えば、キットは、1つ以上の皮下注射針または上記のような他の注射装置を含み得る。
【0123】
キットは、キット中の医薬組成物及び剤形に関する情報を含む添付文書を含み得る。一般に、このような情報は、患者及び医師が同封の医薬組成物及び剤形を効果的かつ安全に使用するのを助ける。例えば、本発明の組み合わせに関する以下の情報:薬物動態、薬力学、臨床試験、効能パラメーター、適応症及び用法、禁忌、警告、注意、副作用、過剰投与、適正な用量及び投与、供給方法、適切な保管条件、参考文献、製造業者/販売代理店情報及び特許情報が添付文書として提供されてもよい。
【0124】
一般的な方法
分子生物学の標準的な方法は、Sambrook,Fritsch and Maniatis(1982&1989 2nd Edition,2001 3rd Edition)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA)に記載されている。標準的な方法はまた、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(第2巻)、複合糖質およびタンパク質発現(第3巻)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)について記載するAusbel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにも掲載されている。
【0125】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製の方法が記載されている(Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生成、精製、および断片化が記載されている(Coligan,et al.(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Harlow and Lane、上記参照)。リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coligan,et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照)。
【実施例】
【0126】
実施例1
AlphaLNNdDeltaG2short(αLNNdΔG2’)構構築物の開発
αLNNdpcDNA3.1 ZeoにおけるG2ナイドジェン-1ドメインの除去は、オーバーラップPCRで達成された。PCRの第1ラウンドで、1.2Kb-5’(F1noG2 1F 5’-ctgggtcactgtcaccctgg-3’(配列番号2)およびnoG2 2R 5’-atggattctgaagacagacaccagagacac-3’(配列番号3))および1.8Kb-3’(noG2 2F 5’-ctggtgtctgtcttcagaatccatgctac-3’(配列番号4)およびF1noG2 1R 5’-gaaggcacagtcgaggctgatcag-3’(配列番号5))生成物をαLNNdのG2ナイドジェン1ドメインの両側に作製した。それらを第2ラウンドのPCR(F1noG21FおよびF1noG21R)と一緒に3Kbの産物に縫い付け、EcoRIで2.4Kbに消化し、5.85KbのEcoRI αLNNd pcDNA 3.1 zeoベクターにライゲーションした(8.25Kb noG2 αLNNd pcDNA3.1 zeoプラスミドを作製)。オーバーラップPCR用プライマー(Bam shnoG2 1F 5’-cggcagcctgaatgaggatccatgcataga-3’(配列番号6)およびshnoG2 2R 5’-cacagtagttgatgggacagacacc-3’(配列番号7))および3’(shnoG2 2F 5’-gtctctggtgtctgtcccatcaacta-3’(配列番号8)およびsse shnoG2 1R 5’-gaggcacaaacatcccctgcagggtgggcc-3’(配列番号9)を用いてnoG2 αLNNDのさらなる2EGF(270bp)欠失を行い、それぞれ160bpおよび357bpの産物を生成した。第2ラウンドのPCR後、485bpのBamHI-SbfIで消化したインサートを、同様に消化したnoG2 αLNNd pcDNA3.1 zeoベクター(7.5Kb)にライゲーションした。短いnoG2αLNNdオープンリーディングフレーム(ORF)のN末端Mycタグを除去するために、1.5Kb BamHIインサートをF3-8mck-pA構築物からMCS-AAVベクター(4.6Kb Cell Biolabs、VPK-410-DJ)に移動し、6.1Kb AAV-5’F1タグなし-10プラスミドを生成した。短いnoG2αLNNDpcDNA3.1 zeoプラスミドをFseIおよびXhoIで消化して2.8 Kbインサートを作成し、同様に消化したAAV-5’F1タグなし-10ベクター(4.9Kb)にライゲーションした。最終的なベクターサイズは、3009bp(配列番号1)のalphaLNNdDeltaG2short(αLNNdΔG2’)のORFを含めて7.7Kbであった。
【0127】
実施例2
AAVウイルスの生成
αLNNdΔG2’-MCSプラスミドを、リン酸カルシウム一過性トランスフェクションの一般的な方法を使用して、AAV-DJ pHelper pHelperプラスミド(それぞれ配列番号1、17、20:
図6~
図8)(Cell Biolabs,Inc.、San Diego,CA)とともに接着HEK293に1:1:1の比率でトリプルトランスフェクトした。簡単に述べると、製造業者の指示(Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis,MO、カタログ番号CAPHOS)に従って、12.5ug/150mm皿(プレップあたり10~150mm皿)を75%コンフルエントなHEK293細胞に一晩かけて加えた。AAVpro精製キット(Takara Bio USA,Inc.、Mountain View,CA、カタログ番号6666)を用いて、96時間後に培養物からウイルスを回収した。細胞の凍結融解またはTriton-100溶解、それに続くPEG8000および/または塩化セシウム遠心分離を含む、代替の精製方法が利用可能である。ウイルス力価は、リアルタイムPCR(AAVpro滴定キット、Takara Bio USA、Inc.、Mountain View,CA、カタログ番号6233)を用いて決定した。
【0128】
実施例3
AAVで生成したαLNNdΔG2’タンパク質の発現および分析
安定してトランスフェクトされた411 HEK293細胞を、約6x10vg/6ウェル皿で感染させた。4日後、室温で1時間のa-flagアガロースビーズを用いた免疫沈降、続いてウエスタンブロット分析によって馴化培地を評価した。ウエスタンブロットを切り取り、1μg/mlの抗フラッグ(上)または抗G2-G2ナイドジェン(下)で染色した。結果を
図5Aに示す。さらに、馴化AAV 411 HEK293培地を高継代ラットシュワン細胞に1時間添加し、1ug/mlニワトリ抗α4および1:100抗ニワトリAlexa Fluor 647(Life Technologies、Carlsbad,CA、カタログ番号A-21449)を使用して、免疫蛍光法により411ラミニンアセンブリについて分析した。
図5Cおよび5Dに示すように、Lm411アセンブリの大幅な増加は、AAVで生成されたαLNNdΔG2’タンパク質に起因していた。
【0129】
AAVαLNNdΔG2’(ウイルス、約25μlで10
10vg)またはPBSバッファを1週齢のdy3K/dy3Kmagマウスに筋肉内注射した。2週間後、大腿四頭筋を採取し、切片化し、抗体で染色して、
図5Eに示すαLNNdΔG2’(赤)とラミニン(緑)を検出した。αLNNdΔG2’の∞1LNエピトープが四肢筋組織で検出され、リンカーが筋細胞膜に組み込まれたことが示唆された。
【0130】
実施例4
症状を示すマウスにラミニンα2を戻す
アグリンの小型化形態(
図3B)であるmag導入遺伝子(配列番号23)を発現するdy3K/dy3KマウスへのAAV-DJ-αLNNdΔG2’構築物の注射、およびαLNNd導入遺伝子を発現するdy3K/dy3KマウスへのAAV-DJ-αLNNdΔG2’構築物の注射を行って、ペアのリンカータンパク質の安定した既に特徴付けられた発現と併せて一度に1つのウイルス感染を評価し、各リンカータンパク質を個別に検証することで変動を最小限に抑える。最初の分析は筋肉に対して行われ、McKee,et al.,(2017)J Clin Invest 127(3):1075-1089;Reinhard,et al.,(2017)Sci Transl Med 9(396)に記載されている特定のリンカーおよびラミニン抗体を用いた免疫蛍光顕微鏡法を使用して、注射後の神経発現の程度および発現の持続性にしたがって、どの筋肉にαLNNdΔG2’およびmagが多く存在するかを決定する。
【0131】
最初の分析の評価にしたがって、dy3K/dy3Kマウスを両方のウイルス調製物に同時感染させる。注射は、ミエリン形成の周産期の時間経過を考慮して、出生後1日目または2日目に行われる(生後1週間で実質的に発生する放射状の選別により、出生前にSC増殖が開始する)。行われる表現型および組織学の分析は以下を含む:(1)生存率、体重、筋肉重量、垂直格子上での時間、握力、および異なる年齢での全体的な行動の測定、(2)横隔膜、肋間筋および横隔神経の検査、(3)H&EおよびSirius Red(コラーゲン)による骨格筋の分析:繊維のサイズ、数、再生(中心核を有する筋線維の割合)、炎症および線維症の形態計測的定量化による、異なる年齢での前肢橈側手根伸筋および横隔膜/肋間筋の組織学染色、(4)以下による末梢神経分析:免疫染色された神経および神経根を調べてリンカー-prot7ein発現の程度を推定し、ラミニンサブユニットにおける相対的な変化を検出する;電子顕微鏡を使用してメチレンブルー染色された半薄切片を調べ、軸索の分類、ミエリン形成、ミエリンの厚さ、および裸の軸索の割合を定量的に評価する;EdU/dapi比からSC増殖を決定し、qRT-PCRを使用してミエリン形成の成熟を評価する(例えば、Oct6、Sox2、cJun)。
【0132】
分析の結果は、送達を最適化し、機能をさらに改善する可能性のあるαLNNdΔG2’およびmagリンカータンパク質の変異体を評価するために使用される。
【0133】
実施例5
変異血清型キャプシドを有するAAVによるαLNNdΔG2’の発現
組織の特異性(例えば、骨格筋と心臓または主に肝臓のみ)を変更する目的で、異なるキャプシド血清型または複合血清型をコードするAAVベクターにαLNNdΔG2’DNAを挿入する。注:αLNNdΔG2’は、合成部位が標的細胞型である必要がない可溶性分泌タンパク質である。
【0134】
実施例6
ユビキチン化を低下させるように修飾されたAAVキャプシド配列
AAV-DJは、他のAAVと同様に、キャプシドにいくつかのリン酸化部位およびユビキチン化部位を含む。K137R、S503A、およびT251Aでのrep/capプラスミドの点突然変異は、インビトロおよびインビボでタンパク質発現を大幅に増加させることが分かった(Mao,Wang,Yan,Li,Wang and Li,2016,“Single point mutation in adeno-associated viral vectors -DJ capsid leads to improvement for gene delivery in vivo.BMC Biotechnology 16:1-8に記載されている)。AAVプラスミドは、この改善を導入するように容易に修飾することができる。
【0135】
実施例7
特殊なプロモーターを使用したAAVによるαLNNdΔG2’の発現
αLNNdΔG2’DNAを、(a)特異性の変更および/または(b)インサートの許容可能なオープンリーディングフレームの増加といった効果を有する異なるプロモーター/エンハンサーを用いてAAVベクターに挿入する。骨格筋および心臓におけるマイクロジストロフィンの発現を促進するために使用される例は、筋クレアチンキナーゼ遺伝子の基礎プロモーターおよび上流エンハンサーから改変された436bp CK8eプロモーター/エンハンサーである。CK8eプロモーター/エンハンサーは、J.N.Ramos et al.,2019,Molecular Therapy,27:623-635に記載されている。
【0136】
実施例8
代替シグナル配列を有するLmα1LNNdΔG2’の発現
タンパク質αLNNdΔG2’および関連タンパク質は、配列番号25のヌクレオチド配列を有し、かつ下の表2で文字コードAが与えられているBM-40シグナル配列を使用して、インビトロおよびマウスで発現されている。代替方法は、配列番号27のヌクレオチド配列を有し、かつ表2で文字コードA’が与えられている内因性α1サブユニットシグナルペプチドでタンパク質を発現させることである。
【0137】
表2は、BM-40シグナルペプチド、または通常、ラミニンN末端サブユニットの前にあるラミニン内因性シグナルペプチドのいずれかとともに使用できる、文字コードが割り当てられた全ての変異タンパク質配列のリストを提供する。これらのドメインを使用して、ラミニン重合を可能にするリンカータンパク質を作製することができる。重合を可能にするラミニン結合リンカータンパク質および内部的に縮小されたサイズのリンカータンパク質のマウスドメインには、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の両方について文字コードA、A’~Pが割り当てられている(配列番号25~58)。代替のN末端ドメイン、マウスおよびヒトには、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の両方について文字コードQ~Zおよびa~bが割り当てられている(配列番号59~106)。追加のC末端ドメイン、重合リンカータンパク質のナイドジェンラミニン結合G3ドメインに(5’から)C末端を融合できるマウスおよびヒトの非神経アグリンジストログリカン結合ドメインには、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の両方について文字コードc~jが割り当てられている(配列番号107~138)。
【0138】
表3は、表2に列挙される変異タンパク質配列のそれぞれについて、マウスおよびヒトのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を提供し、配列リストでこれらの配列に割り当てられている配列番号を提供する。
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【表3-14】
【表3-15】
【表3-16】
【0139】
実施例9
機能強化のためのLmαLNNdΔG2’の簡略化と修飾
現在評価されているAAV-DJ構築物には、オープンリーディングフレームを代表する3.1kBのDNAを含めることができる。既存または計画中の他の構築物は、より大きな包含を可能にすることができる。許容されるタンパク質サイズについてAAV-DJ制限を基準にすると、J.Takagi et al.,2003,Nature 424:963-974に記載されるように、LmαLNNdΔG2’のナイドジェンG3ドメインのサイズをプロペラドメインのサイズ(約270残基、810bp)に縮小し、ラミニン結合を保持できることに留意されたい。393bpの減少によりドメインの再配置が可能になり、G2のIV型コラーゲンおよびパールカン結合ドメインを含めることができる。新しい配置では、ラミニンの重合をコラーゲン/パールカンの結合と組み合わせることができる。例として、(a)αLNNdG2Propeller(3.08 kB)および(b)αLNNdG2Propeller-2(3.02kB)が挙げられる。これらのそれぞれのドメイン構成を、表2に提供した文字ドメインコーディングを使用して下の表4に示す。ドメイン構成に使用されるドメインのヌクレオチド配列およびタンパク質配列は、表3および配列リストに提供される。別の配置では、ラミニン重合をジストログリカン結合と組み合わせることができ、その例は、αLNNdPropellerAgrinLG(3.6kB)である。αLNNdPropellerAgrinLGのドメイン構成を、表2に提供した文字ドメインコーディングを使用して下の表4に示す。ドメイン構成に使用されるドメインのヌクレオチド配列およびタンパク質配列は、表3および配列リストに提供される。
【表4-1】
【表4-2】
【0140】
実施例10
重合欠陥のある他のラミニンの修復
ピアソン症候群は、眼の異常を伴う先天性ネフローゼ症候群であり、早期の末期腎疾患、失明および死をもたらす。原因は、ラミニンβ2サブユニットをコードするLAMB2遺伝子のヌル、インフレーム削除、またはミスセンス変異である。これらの変異は、サブユニットの発現を妨げるか、またはサブユニットの特性を変更する。ミスセンス変異のいくつかは、β2LNドメインにクラスター化される(Maatejas et al.,2010,Hum Mutat.38:992-1002およびK.K.McKee,M.Aleksandrova and P.D.Yurchenco,2018,Matrix Biology 67:32-46を参照)。LNドメインはラミニンの重合を媒介する。これらの変異の影響として考えられるのは、低/非分泌型であり得るドメインをフォールディングできないことと、変異体を重合できないことである。ピアソン症候群の2つの高度に保存された変異体(S80RおよびH147R)をβ1サブユニット(S68RおよびH135R)に配置した後でそれらを評価した。どちらの変異も重合を大幅に減少させ、βLNNd(β1LN-LEaドメインがナイドジェンG3との融合においてα1LN-LEaと交換された)は、ラミニンがβLNドメインを欠いていたために重合できなかった組換えラミニンを救済できることが分かった(K.K.McKee,M.Aleksandrova and P.D.Yurchenco,2018,Matrix Biology 67:32-46に記載)。βLNNdは、ピアソンの欠陥をインビトロで修復することができるため、より短いβLNNdΔG2を使用して疾患を治療できることになる。同様に、重合に影響を与えるラミニンLN変異による他の疾患は、対応するLN-LEaセグメントが融合タンパク質のα1LN-LEaセグメントに置き換わった関連するラミニンリンカータンパク質の発現によって治療可能であると予想される。これらのタンパク質(βLNNdΔG2’、βLNNdG2Propeller、γLNNdΔG2’、およびγLNNdG2Propeller)は、表3および配列リストに提供されるドメイン構成で用いられたドメインの配列とともに、表2および4のドメイン構成によって説明される。
【0141】
実施例11
ジストログリカン結合活性のαLNNdΔG2への直接付加
完全なG3ドメイン複合体の代わりに、ナイドジェンプロペラドメインを採用すると、(許容されるAAVインサートのサイズとの関連から)ジストログリカン結合ドメインを付加する余地が生まれる。このタンパク質はαLNNdΔG2PropellerAgrinLGと称される。ドメイン構成は、表3および配列リストに提供されるドメイン構成で用いられたドメインの配列とともに、表2および4のドメイン構成に示される。この場合、サイズが大きくなると、標準的なAAV-DJウイルスにおける使用が妨げられ、より小さなCK8eプロモーターを含むもの等の、より大きなインサートを許容するウイルスが必要となる。
【0142】
実施例12
非経口注射によるタンパク質の送達
LmαLNNdΔG2’タンパク質およびその代替形態のいずれかを非経口的に注射して(腹腔内、血管内、筋肉内経路)、ウイルスによって送達される体細胞遺伝子治療の代替として、タンパク質を目的の組織標的に送達することができます。
【0143】
コンストラクトのコドン最適化
製造プロセス中のウイルス力価を低下させる手段としてだけではなく、高濃度のウイルスに関連する安全性の懸念にも対応するように本明細書に記載の試験構築物の発現を最適化するために、αLNNdΔG2’導入遺伝子は、自由に利用可能なソフトウェアを使用したコドン最適化プロセスを用いて評価される(https://www.idtdna.com/CodonOpt)。さらに、必要に応じてコンセンサスコザックシーケンスが構築物に導入される。したがって、本明細書に記載される構築物または要素のいずれも、この様式でコドン最適化され得る。修飾された構築物のそれぞれは、マウスにおいて親コンストラクトと並行して試験される。簡単に述べると、構築物は側頭静脈を介して仔マウスに全身投与される。次いで、動物を2週間または3週間後に安楽死させ、各構築物からのタンパク質のレベルをQ-PCRおよびウエスタンブロット法によって決定する。最も迅速で高レベルの発現をもたらす構築物は、非ヒト霊長類研究における、また最終的にはヒト患者の臨床試験における最終的な使用について検討される。
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当業者には明らかであるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修正および変更を行うことができる。本発明は、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によって定義される。以下の実施例を含む本明細書に記載された特定の実施形態は、ほんの一例として提供され、それらの詳述によって本発明の範囲は限定されない。
【0145】
本明細書中に引用された全ての参考文献は、個々の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリー)、特許出願、または特許が具体的かつ個別に参考として援用されるのと同じ程度まで参考として援用される。参照によるこの援用の陳述は、出願人が、あらゆる出版物、データベースの登録(例えばGenbank配列またはGeneID登録)、特許出願、または特許に関する37C.F.R.§1.57(b)(1)に従っていることを意図し、たとえこれらの個別の引用が参照による援用宣言の陳述の直ぐ近傍になかったとしても、37CFR§1.57(b)(2)に従って明確に識別される。明細書の中に参照による援用の特別な記述があったとしても、それが参照によるこの一般的な援用の宣言を決して弱めることはない。本明細書中の参考文献の引用は、その参考文献が関連する先行技術であることを承認することを意図するものではなく、これらの出版物または文書の内容または日付に関していかなる承認も構成するものでもない。
【0146】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な改変は、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような修正は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0147】
前述の明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。本明細書に示され記載されたものに加えて本発明の様々な改変は、前述の記載から当業者に明らかとなりそして添付の特許請求の範囲内に入る。
【配列表】