(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】蒸気滅菌器
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20230330BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
A61L2/07
A61L2/24
(21)【出願番号】P 2021079829
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2016144652の分割
【原出願日】2016-07-22
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 大佑
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏史
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011858(JP,A)
【文献】特開2012-040185(JP,A)
【文献】特開2016-097190(JP,A)
【文献】特開平03-271019(JP,A)
【文献】特開平07-305384(JP,A)
【文献】特開昭49-043485(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0554443(KR,B1)
【文献】米国特許第03834872(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/07
A61L 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被滅菌物を収納可能なチャンバと、
前記チャンバ内に供給された液体を加熱するヒータとを備え、
前記ヒータの加熱により発生した前記液体の蒸気で前記被滅菌物を滅菌する、蒸気滅菌器において、
前記チャンバ内に供給される液体を貯留する貯液槽と、
前記チャンバへの給液時に前記チャンバから過剰な液体を排出するオーバーフロー管と、
前記オーバーフロー管を流れる液体の流動を検出するオーバーフローセンサと、
前記蒸気滅菌器の動作を制御する制御部と、を備え、
前記オーバーフロー管は、前記チャンバ内に開口する一端と、前記貯液槽内に開口する他端とを有し、
前記オーバーフローセンサは、
前記オーバーフロー管を経由して流れ前記他端から前記貯液槽内へ流れる液体の流動を検出するように前記貯液槽内に設けられており、
前記制御部は、前記オーバーフロー管を経由して流れ前記他端から前記貯液槽内へ流れる液体の流動を前記オーバーフローセンサが検出すると、前記チャンバへの給液を停止する、蒸気滅菌器。
【請求項2】
前記オーバーフローセンサは、前記貯液槽内の液面の上限値を検出する、請求項1に記載の蒸気滅菌器。
【請求項3】
被滅菌物を収納可能なチャンバと、
前記チャンバ内に供給された液体を加熱するヒータとを備え、
前記ヒータの加熱により発生した前記液体の蒸気で前記被滅菌物を滅菌する、蒸気滅菌器において、
前記チャンバに液体を移送して給液する給液ポンプと、
前記チャンバへの給液時に前記チャンバから過剰な液体を排出するオーバーフロー管と、
前記オーバーフロー管を流れる液体の流動を検出するオーバーフローセンサと、
前記チャンバへの給液時に前記チャンバに空気を供給するエアポンプと、
前記蒸気滅菌器の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記給液ポンプにより前記チャンバへの給液を開始してから予め定められた時間が経過した後に、前記エアポンプによる前記チャンバへの空気の供給を開始し、その後前記オーバーフローセンサが前記オーバーフロー管を流れる液体の流動を検出すると、前記チャンバへの給液を停止する一方で前記エアポンプによる前記チャンバへの空気の供給を継続する、蒸気滅菌器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧の蒸気により細菌類などの微生物を死滅させる蒸気滅菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気滅菌器は、医療用機材などの被滅菌物を収納するチャンバ内を密閉状態に保持し、チャンバ内に高圧蒸気を充満させることによって、被滅菌物の滅菌処理を行なう。従来の蒸気滅菌器は、たとえば、登録実用新案第3014425号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
登録実用新案第3014425号公報(特許文献1)には、滅菌タンクにオーバーフロー管が連結され、設定水位を超えると滅菌タンク内の水の一部がオーバーフロー管を通って原水貯槽へ流れる構成が開示されている。従来の構成では、滅菌タンク内の水位が設定値を下回らないようにできる点では良いが、滅菌タンク内に設定水位を上回る過剰な量の水が存在した状態で滅菌処理が開始される場合があり、この場合滅菌処理に必要以上に時間がかかることが考えられる。
【0005】
本発明の目的は、被滅菌物を収容するチャンバ内に供給される液体の量の均一性を向上できる、蒸気滅菌器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蒸気滅菌器は、被滅菌物を収納可能なチャンバと、チャンバ内に供給された液体を加熱するヒータとを備え、ヒータの加熱により発生した液体の蒸気で被滅菌物を滅菌する。蒸気滅菌器は、チャンバへの給液時にチャンバから過剰な液体を排出するオーバーフロー管と、チャンバへの給液時にチャンバに空気を供給するエアポンプと、を備えている。
【0007】
上記の蒸気滅菌器は、チャンバ内に供給される液体を貯留する貯液槽をさらに備えている。オーバーフロー管は、チャンバ内に開口する一端と、貯液槽内に開口する他端と、一端から他端へ向かう経路が上方に立上る上昇流形成部と、を有している。
【0008】
上記の蒸気滅菌器は、オーバーフロー管を流れる液体の流動を検出するオーバーフローセンサを備えている。
【0009】
上記の蒸気滅菌器は、チャンバ内に供給される液体を貯留する貯液槽をさらに備えている。オーバーフロー管は、チャンバ内に開口する一端と、貯液槽内に開口する他端とを有している。オーバーフローセンサは、オーバーフロー管の経路上に設けられている。またはオーバーフローセンサは、貯液槽内に設けられている。
【0010】
上記の蒸気滅菌器において、オーバーフローセンサは、貯液槽内の液面の上限値を検出する。
【0011】
上記の蒸気滅菌器は、蒸気滅菌器の動作を制御する制御部をさらに備えている。制御部は、オーバーフローセンサがオーバーフロー管を流れる液体の流動を検出すると、チャンバへの給液を停止する一方でエアポンプによるチャンバへの空気の供給を継続し、その後オーバーフローセンサがオーバーフロー管を流れる液体の流動を検出しなくなると、エアポンプによるチャンバへの空気の供給を停止する。
【0012】
上記の蒸気滅菌器は、チャンバに液体を移送して給液する給液ポンプをさらに備えている。制御部は、給液ポンプによりチャンバへの給液を開始してから予め定められた時間が経過した後に、エアポンプによるチャンバへの空気の供給を開始する。
【0013】
上記の蒸気滅菌器において、エアポンプは、被滅菌物の滅菌処理の終了後、チャンバに空気を供給する。
【0014】
上記の蒸気滅菌器において、オーバーフロー管は、チャンバの底面から上方に立上る立上り部を有している。
【0015】
上記の蒸気滅菌器において、立上り部の上端は、オーバーフロー管の一端を構成し、一端にはチャンバ内に開口する開口が形成されている。蒸気滅菌器は、一端に取り付けられ開口を覆うメッシュ部材をさらに備えている。
【0016】
上記の蒸気滅菌器において、メッシュ部材は、一端から凸状に膨出するドーム形状を有している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蒸気滅菌器によると、チャンバ内に供給される液体の量の均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1の蒸気滅菌器の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示すチャンバ内のオーバーフロー管近傍を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すチャンバ内のオーバーフロー管の断面図である。
【
図4】オーバーフロー管の配置を示す斜視図である。
【
図5】蒸気滅菌器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】蒸気滅菌器の各機器の動作を示すタイミングチャートである。
【
図7】時刻T1~T2における蒸気滅菌器の各機器の動作を示す模式図である。
【
図8】時刻T2~T3における蒸気滅菌器の各機器の動作を示す模式図である。
【
図9】時刻T3~T4における蒸気滅菌器の各機器の動作を示す模式図である。
【
図10】時刻T4~T5における蒸気滅菌器の各機器の動作を示す模式図である。
【
図11】時刻T6における蒸気滅菌器の各機器の動作を示す模式図である。
【
図12】乾燥工程における蒸気滅菌器の各機器の動作を示す模式図である。
【
図13】実施の形態2の蒸気滅菌器の構成を示す模式図である。
【
図15】実施の形態3の蒸気滅菌器の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態の蒸気滅菌器1は、ガーゼ、メスなどの医療器具に代表される被滅菌物100を収容可能なチャンバ10を備えている。チャンバ10は、開閉可能な開閉蓋11を含んでいる。開閉蓋11は、チャンバ10の側部に装着されている。開閉蓋11を開放することにより、チャンバ10内への被滅菌物100の搬出入が可能となる。開閉蓋11を閉じることにより、チャンバ10の内部は密閉状態に保持される。
【0021】
チャンバ10の底面10bの近傍には、ヒータ12が設置されている。ヒータ12は、チャンバ10の底面10bに沿って延びるように配置されている。ヒータ12は、チャンバ10内に供給された水を加熱して、蒸気を発生させる。蒸気滅菌器1は、ヒータ12の加熱により発生した水蒸気で、被滅菌物100を滅菌する。
【0022】
水は、滅菌処理のためにチャンバ10内に供給される液体の一例である。水は、常水(水道水)、井戸水、蒸留水または精製水であってもよい。チャンバ10内に供給される液体は、水に限られず、生理食塩水などの水溶液であってもよい。
【0023】
ヒータ12の上方には、被滅菌物100を載置可能な載置台13が、チャンバ10の底面10bに対して略平行に設けられている。
【0024】
チャンバ10の、開閉蓋11と対向する内側面には、チャンバ10内の温度を検出する温度センサ16が取り付けられている。温度センサ16は、チャンバ10内の気体の温度を計測する。
【0025】
蒸気滅菌器1は、貯水槽20を備えている。貯水槽20は、チャンバ10内に供給される水を貯留する。チャンバ10から排出される水は、貯水槽20へと戻る。貯水槽20は、チャンバ10から排出される水を貯留する。貯水槽20の内部空間には、水が存在する液相部21と、空気が存在する気相部22とが含まれている。貯水槽20の内部空間には、貯水槽20内の水位を検出するための水位センサ26が設置されている。
【0026】
チャンバ10と貯水槽20とは、給水経路30と、排出経路40と、オーバーフロー経路50とによって連通されている。給水経路30は、貯水槽20からチャンバ10へ水を供給するための経路である。排出経路40は、チャンバ10から貯水槽20へ水、水蒸気および空気を排出するための経路である。オーバーフロー経路50は、チャンバ10内の設定水位を超える量の水をチャンバ10から貯水槽20へ排出するための経路である。
【0027】
給水経路30は、給水管31と、給水ポンプ32と、給水電磁弁33とを含んでいる。給水管31の一端は貯水槽20内部に連結され、他端はチャンバ10に連結されている。給水ポンプ32は、給水管31の経路上の上流側(貯水槽20に近い側)に設けられている。給水電磁弁33は、給水管31の経路上の下流側(チャンバ10に近い側)に設けられている。
【0028】
給水ポンプ32は、貯水槽20からチャンバ10へ向かって流れる方向に水を移送して、チャンバ10内へ水を供給する。給水電磁弁33は、給水ポンプ32に対して給水経路30の下流側に配置されており、給水経路30を開閉する。給水電磁弁33は、貯水槽20からチャンバ10へ水が流れ得る開状態と、貯水槽20からチャンバ10への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0029】
排出経路40は、排水管41と、排気管42と、共通管43と、排出電磁弁44とを含んでいる。排水管41は、チャンバ10から排出される水が流れるための経路である。排水管41の一端は、チャンバ10の底面10bに接続されている。チャンバ10内の水は、排水管41を通ってチャンバ10外へ排出される。
【0030】
排気管42は、チャンバ10から排出される気体が流れるための経路である。排気管42の一端は、チャンバ10内の水面の最高位よりも上方の位置で、チャンバ10に接続されている。排気管42は、チャンバ10内に水が供給されたときの水面の位置よりも上方の位置で、チャンバ10に接続されている。チャンバ10内の空気、水蒸気またはこれらの混合気体は、排気管42を通ってチャンバ10外へ排出される。
【0031】
共通管43は、チャンバ10から排出され排水管41内を流れる水と、チャンバ10から排出され排気管42内を流れる気体と、の両方が流れるための経路である。共通管43は、気体が流れるための経路と水が流れるための経路とを、共通している。共通管43の一端は、排水管41および排気管42の両方と連通している。共通管43の一端と、排水管41の他端および排気管42の他端とが、継手により構成される連結部を介して、互いに連結されていてもよい。共通管43の他端は、貯水槽20の内部に配置されている。
【0032】
貯水槽20の内部において、共通管43は、コンデンサ部45を有している。コンデンサ部45は、貯水槽20内の液相部21に水没している。コンデンサ部45において、共通管43の内部を通過する高温の水および水蒸気から、貯水槽20内部に貯留された水へ熱伝達し、共通管43を流れる流体の温度が低下する。これによりコンデンサ部45は、水が貯水槽20内に排出されるときの騒音を低減する。コンデンサ部45は、蒸気滅菌器1の発生する音の大きさを低減する静音機能を有している。
【0033】
貯水槽20の内部において、共通管43は、屈曲部46を有している。共通管43は、コンデンサ部45から上方に立ち上がり、貯水槽20内の液相部21から気相部22にまで亘って延びている。共通管43は、屈曲部46において屈曲して、下方に向かって延びている。共通管43の他端は、貯水槽20内の液面に向いて配置されている。これにより、共通管43から貯水槽20の内部に排出される水または蒸気は、共通管43の他端から、貯水槽20内に貯留されている水に向かって流出する。
【0034】
共通管43には、排出電磁弁44が設けられている。排出電磁弁44は、貯水槽20の外部に配置されている。排出電磁弁44は、排出経路40を開閉する。排出電磁弁44は、チャンバ10から貯水槽20へ向かって流体が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への流体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0035】
オーバーフロー経路50は、オーバーフロー管51と、オーバーフロー電磁弁53と、オーバーフローセンサ54とを含んでいる。オーバーフロー管51は、管状の部材である。オーバーフロー管51は、チャンバ10に接続されている。オーバーフロー管51の一端は、チャンバ10内に配置されている。オーバーフロー管51の一端は、チャンバ10内の下部に開口している。
図2は、
図1に示すチャンバ10内のオーバーフロー管51近傍を拡大して示す斜視図である。
図3は、
図2に示すチャンバ10内のオーバーフロー管51の断面図である。
【0036】
図2に示すように、オーバーフロー管51は、チャンバ10の底面10bから上方に立上る立上り部52を有している。
図3に示すように、立上り部52の上端は、オーバーフロー管51の一端56を構成している。オーバーフロー管51の一端56には、開口57が形成されている。一端56の外周縁には面取り面58が形成されており、一端56の内周縁には面取り面59が形成されている。立上り部52の上端(オーバーフロー管51の一端56)には、メッシュ部材90が取り付けられている。メッシュ部材90は、オーバーフロー管51の一端56のうち、外周縁の内側であって面取り面58,59が形成されていない環状の面に取り付けられており、当該環状の面にたとえばろう付けにより溶着されている。
【0037】
メッシュ部材90は、網状の構造を有している。チャンバ10内の水は、メッシュ部材90を通過して、オーバーフロー管51内へ流入可能である。オーバーフロー管51の一端56に形成された開口57は、メッシュ部材90を介して、チャンバ10内に開口している。メッシュ部材90は、開口57を上方から覆っている。
【0038】
メッシュ部材90は、オーバーフロー管51の一端56から凸状に膨出するドーム形状を有している。メッシュ部材90の概略の外形は、球面の一部形状である。たとえばメッシュ部材90は、半球状の概略形状を有していてもよい。
【0039】
図1に戻って、オーバーフロー管51は、貯水槽20に接続されている。オーバーフロー管51の他端55は、貯水槽20の内部に配置されている。オーバーフロー管51の他端55は、貯水槽20の上部に開口している。オーバーフロー管51は、チャンバ10と貯水槽20内とを連通している。オーバーフロー管51を経由して流れる水は、他端55から貯水槽20内へ流出する。
【0040】
オーバーフロー電磁弁53とオーバーフローセンサ54とは、チャンバ10外に配置されている。オーバーフロー電磁弁53は、オーバーフロー管51の経路上の上流側(チャンバ10に近い側)に設けられている。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51の経路上の下流側(貯水槽20に近い側)に設けられている。
【0041】
オーバーフロー電磁弁53は、オーバーフローセンサ54に対してオーバーフロー管51の上流側に配置されており、オーバーフロー経路50を開閉する。オーバーフロー電磁弁53は、チャンバ10から貯水槽20へ水が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0042】
オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51を流れる水の流動を検知する。オーバーフローセンサ54は、チャンバ10内からオーバーフロー管51へ流入してオーバーフロー管51を経由して貯水槽20へ向かって流れる、水の流動を検知する。オーバーフローセンサ54は、たとえば、オーバーフローセンサ54を通過する水の流れによって移動するフロートユニットを有する仕様のセンサであってもよい。または、オーバーフローセンサ54は、水の誘電率と空気の誘電率との差に基づいて水の流れを検知する静電容量センサであってもよい。
【0043】
蒸気滅菌器1はまた、送風経路60を備えている。送風経路60は、送風管61と、エア電磁弁62と、エアポンプ63とを含んでいる。送風管61は、チャンバ10に接続された一端と、エアポンプ63に接続された他端とを有している。送風管61は、エアポンプ63とチャンバ10とを連通している。エアポンプ63は、空気の流れを発生する。
【0044】
エア電磁弁62は、送風管61に設けられている。エア電磁弁62は、送風経路60を開閉する。エア電磁弁62は、エアポンプ63からチャンバ10へ空気が流れ得る開状態と、エアポンプ63からチャンバ10への空気の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0045】
エアポンプ63は、送風管61の他端から一端へ向かう方向に空気を移送して、チャンバ10内に空気を供給する。チャンバ10内に空気が送り込まれると、チャンバ10内の水または水蒸気は、送り込まれた空気の圧力により、チャンバ10外へ排出される。
【0046】
蒸気滅菌器1は、圧力経路70をさらに備えている。圧力経路70は、圧力管71,73,75、継手72、圧力計74、および安全弁76を含んで構成されている。
【0047】
圧力管71は、チャンバ10の上面の近傍に接続された一端と、継手72に接続された他端とを有している。圧力管73は、継手72に接続された一端と、圧力計74に接続された他端とを有している。チャンバ10内の気体は、圧力管71、継手72および圧力管73を介して、圧力計74に到達する。圧力計74は、チャンバ10内の気体の圧力を計測する。
【0048】
圧力管75は、継手72に接続された一端と、安全弁76に接続された他端とを有している。安全弁76は、貯水槽20に設けられている。チャンバ10内の気体の圧力が過剰に上昇すると、安全弁76が開き、チャンバ10内の気体が圧力管71、継手72、圧力管73および安全弁76を順に経由して、貯水槽20内に排出される。これによりチャンバ10内の圧力が低下し、チャンバ10内の圧力が適切な範囲に維持される。
【0049】
図4は、オーバーフロー管51の配置を示す斜視図である。
図4には、
図1に示す蒸気滅菌器1の主な構成のうち、チャンバ10と、貯水槽20と、オーバーフロー経路50とが図示されており、他の構成は図示を省略されている。チャンバ10および貯水槽20は、共にベース部2上に搭載されている。
【0050】
オーバーフロー管51は、チャンバ10の底面10bから上方へ立ち上がり、貯水槽20の上部に接続されている。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51の途中に設けられている。オーバーフロー管51は、鉛直方向の上方へ向けて立ち上がる上昇流形成部51aを有している。オーバーフロー管51の一端56から他端55へ向かう経路が上方に立上って、上昇流形成部51aを形成している。上昇流形成部51aを流れる液体は、鉛直方向の上方へ向けて流れる。
【0051】
オーバーフローセンサ54は、上昇流形成部51aよりも下流側(貯水槽20に近い側)に設けられている。または、オーバーフローセンサ54は、上昇流形成部51aの途中に設けられていてもよい。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51がチャンバ10の底面10bから上方へ立ち上がった位置に配置されている。
図2,3を参照して説明した通り、オーバーフロー管51は、チャンバ10内の下部に開口している。そのため、オーバーフローセンサ54は、
図3に示すオーバーフロー管51の一端56よりも高い位置に配置されている。なお、オーバーフローセンサ54は、上昇流形成部51aよりも上流側に設けられていてもよく、オーバーフローセンサ54はオーバーフロー管51の一端56よりも低い位置に配置されていてもよい。
【0052】
図5は、蒸気滅菌器1の電気的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部80を備えている。制御部80は、温度センサ16、水位センサ26、オーバーフローセンサ54および圧力計74に電気的に接続されている。制御部80は、温度センサ16からチャンバ10の内部の温度に係る検出値の入力を受ける。制御部80は、水位センサ26から、貯水槽20内の水位に係る検出値の入力を受ける。制御部80は、オーバーフローセンサ54から、オーバーフロー管51を流れる水の流動の有無に係る検出値の入力を受ける。制御部80は、圧力計74からチャンバ10の内部の圧力に係る検出値の入力を受ける。
【0053】
制御部80はまた、入力部81を有している。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、加熱温度、滅菌時間および乾燥時間などの設定値を、入力部81から制御部80に入力する。制御部80はさらに、所定時間を計測するタイマ82を有している。タイマ82は、被滅菌物100の滅菌時間および乾燥時間を制御するために使用され、また、チャンバ10内への給水のタイミングの制御のために使用される。
【0054】
制御部80は、蒸気滅菌器1の各制御ステップに対応して、ヒータ12、排出電磁弁44、給水電磁弁33、エア電磁弁62、オーバーフロー電磁弁53、給水ポンプ32およびエアポンプ63などの、蒸気滅菌器1に含まれる各機器に制御信号を出力する。制御部80からの制御信号を受けて各機器が適切に動作することにより、蒸気滅菌器1による被滅菌物の滅菌処理が確実に行なわれる。
【0055】
以上の構成を備えている蒸気滅菌器1の動作について、以下に説明する。
図6は、蒸気滅菌器1の各機器の動作を示すタイミングチャートである。
図6に示すタイミングチャートに従って、蒸気滅菌器1による被滅菌物の滅菌のための各工程のうち、給水工程における蒸気滅菌器1の動作について、詳細に説明する。
【0056】
図6に示すように、時刻T0において蒸気滅菌器1の電源をオンにし、蒸気滅菌器1を起動する。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、給水を開始する以前に、チャンバ10の開閉蓋11を開放して、被滅菌物100を載置台13に載せ置き、被滅菌物100をチャンバ10内に収容する。操作者は、蒸気滅菌器1の電源をオンにするよりも前に、被滅菌物100をチャンバ10内に収容してもよい。
【0057】
蒸気滅菌器1を電源オフから電源オンに切り替えることにより、
図6に示すように、排出電磁弁44がオンになる。本実施の形態において、排出電磁弁44、給水電磁弁33、エア電磁弁62およびオーバーフロー(OF)電磁弁53はいずれも、オフ(非通電)状態で閉状態を保ち、オン(通電)状態で開く、常時閉仕様の電磁弁である。
【0058】
貯水槽20の気相部22は、大気圧に保たれている。排出電磁弁44を開くことにより、チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とが、排出経路40を介して互いに連通する。これにより、チャンバ10の内部空間が、気相部22と同じ大気圧に調整される。チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とが連通することで、チャンバ10内の空気圧と外気圧とが一定にされる。これにより、チャンバ10の開閉蓋11を容易に開閉できるようになる。
【0059】
次に時刻T1において、給水が開始される。
図6に示すように、給水電磁弁33およびオーバーフロー電磁弁53がオンからオフに切り換わる。排出電磁弁44はオンのままとされる。エア電磁弁62はオフのままとされる。これにより、排出電磁弁44、給水電磁弁33およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされ、エア電磁弁62が閉状態とされる。
【0060】
図7は、時刻T1~T2における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。
図7および後述する
図8~12中の各経路に示す矢印は、各経路を流れる流体(水、水蒸気または空気)の流れを示している。上述したように各電磁弁の開閉が設定された状態で、給水ポンプ32を起動することにより、給水が開始され、貯水槽20からチャンバ10へ水Wが供給される。チャンバ10内の空気は、排出経路40およびオーバーフロー経路50を経由して、チャンバ10から排出される。そのため、チャンバ10の内圧が上昇してチャンバ10への給水が妨げられることが回避されている。
【0061】
チャンバ10内の水面Wsがオーバーフロー管51の一端56(
図3)の位置よりも低いので、オーバーフロー管51の一端56は空気中に存在している。そのため、オーバーフロー管51を経由して空気が流れるが、オーバーフロー管51を経由して水Wが流れることはない。
【0062】
次に、給水ポンプ32によりチャンバ10への給水を開始する時刻T1から予め定められた時間が経過した後の時刻T2において、排出電磁弁44がオンからオフに切り換わり、エア電磁弁62がオフからオンに切り換わる。これにより、排出電磁弁44が閉状態とされ、給水電磁弁33、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされる。
【0063】
図8は、時刻T2~T3における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。上述したように各電磁弁の開閉が設定された状態で、エアポンプ63を起動することにより、チャンバ10内への空気の供給が開始され、チャンバ10内が加圧される。給水ポンプ32は運転を継続し、貯水槽20からチャンバ10への給水が継続される。排出電磁弁44が閉じられたため、チャンバ10内の空気は、オーバーフロー経路50を経由して、チャンバ10から排出される。
【0064】
チャンバ10内の水面Wsは、
図7よりも上昇しているがオーバーフロー管51の一端56の位置よりも未だ低いので、オーバーフロー管51の一端56は空気中に存在している。そのため、オーバーフロー管51を経由して空気が流れるが、オーバーフロー管51を経由して水Wが流れることはない。
【0065】
チャンバ10への給水をさらに継続して、チャンバ10内の水位がオーバーフロー管51の一端56を超えると、チャンバ10内の水Wがオーバーフロー管51へ流入する。オーバーフロー管51の一端56を超えた過剰な量の水Wがチャンバ10から排出され、オーバーフロー管51を流れる水流が発生する。オーバーフロー管51を経由してオーバーフロー管51を流れる水の流動は、オーバーフローセンサ54によって検出される。
【0066】
図6に示すように、時刻T3においてオーバーフローセンサ54がオフからオンに切り換わっている。チャンバ10内の水面Wsは、時刻T3の直前に、オーバーフロー管51の一端56を超えたと推定される。
図9は、時刻T3~T4における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。チャンバ10内の水Wがオーバーフロー管51に流入するため、オーバーフロー管51を経由して水Wと空気との混合流が流れる。チャンバ10への給水時に、エアポンプ63によりチャンバ10へ空気が供給されているので、チャンバ10からオーバーフロー管51への水の流出が促進されている。
【0067】
オーバーフローセンサ54がオンに切り換わる時刻T3から所定時間経過後の時刻T4において、給水ポンプ32が停止し、給水電磁弁33がオンからオフに切り換わる。これにより、排出電磁弁44および給水電磁弁33が閉状態とされ、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされる。
【0068】
図10は、時刻T4~T5における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。上述したように各電磁弁の開閉が設定された状態で、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給が継続される。オーバーフロー管51を経由して水Wと空気との混合流が流れている間は、オーバーフローセンサ54がオン状態を継続する。チャンバ10から水Wが流出することにより、チャンバ10内の水面Wsは次第に低下する。
【0069】
チャンバ10内の水面Wsが低下してオーバーフロー管51の一端56の位置にまで到達すると、チャンバ10からの水Wの流出が停止する。オーバーフロー管51を流れる水流が停止すると、オーバーフロー管51を経由してオーバーフロー管51を流れる水の流動を検出するオーバーフローセンサ54が、オンからオフに切り換わる。
図6に示すように、時刻T5においてオーバーフローセンサ54がオンからオフに切り換わっている。チャンバ10内の水面Wsは、時刻T5の直前に、オーバーフロー管51の一端56にまで低下したと推定される。
【0070】
図11は、時刻T6における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。オーバーフローセンサ54がオフに切り換わる時刻T5から所定時間経過後の時刻T6において、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53がオンからオフに切り換わり、エアポンプ63が停止する。これにより、チャンバ10への空気の供給が停止する。チャンバ10内の水面Wsは、オーバーフロー管51の一端56の位置に維持されている。このようにして、給水工程が完了し、加熱工程に移る。
【0071】
チャンバ10への給水中にオーバーフローセンサ54がオフからオンに切り換わり、チャンバ10への給水を停止した後にオーバーフローセンサ54がオンからオフに切り換わることで、チャンバ10内の水面Wsがオーバーフロー管51の一端56の位置にあることが検出されている。オーバーフローセンサ54は、被滅菌物100の滅菌処理のために必要な量の水がチャンバ10に供給されたことを検出するために、用いられている。
【0072】
時刻T6において、排出電磁弁44がオフからオンに切り換わる。これにより、排出電磁弁44が開状態とされ、給水電磁弁33、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53が閉状態とされる。チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とは、排出経路40を介して互いに連通し、これにより、チャンバ10の内部空間が大気圧に調整される。
【0073】
加熱工程においては、チャンバ10内の底面にあるヒータ12をオンにすることで、チャンバ10内に供給された水がヒータ12で加熱され、蒸気が発生する。同時に載置台13に載置された被滅菌物100も加熱される。チャンバ10内を滅菌処理のための必要温度に必要時間維持することにより、被滅菌物100の滅菌処理を行なう。
【0074】
滅菌処理が終了すると、チャンバ10内の水および水蒸気を貯水槽20に排出する排蒸が行なわれる。排蒸が完了すると、次にチャンバ10内の乾燥が行なわれる。
【0075】
図12は、被滅菌物100の滅菌処理の終了後の乾燥工程における、蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。乾燥工程においては、チャンバ10内のヒータ12をオンにする。このとき、排出電磁弁44およびエア電磁弁62を開くとともに、エアポンプ63を起動する。エアポンプ63により、チャンバ10内へ空気が供給される。このようにして、チャンバ10内の乾燥が所定の時間行なわれる。
【0076】
滅菌処理の終了後にチャンバ10の内部に空気を送り込むことにより、チャンバ10内に残留する水蒸気が、排出経路40を経由してチャンバ10外へ排出される。チャンバ10の内部の水蒸気を湿度の低い空気によって置換することにより、チャンバ10の内部を乾燥する。
【0077】
設定された乾燥時間を経過した後に、エア電磁弁62が閉じられ、ヒータ12およびエアポンプ63が停止される。これにより、被滅菌物100の滅菌処理のための全工程が完了となる。この状態で、ヒータ12はオフであり、チャンバ10と貯水槽20の気相部22とを連通する排出電磁弁44のみが開かれた、
図6に示す時刻T0~T1と同じ状態になる。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、安全に開閉蓋11を開けて、滅菌処理後の被滅菌物100をチャンバ10から取り出すことができる。
【0078】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。実施の形態2の蒸気滅菌器1は、貯水槽20の内部の構成およびオーバーフロー経路50の構成において、実施の形態1とは異なっている。
【0079】
具体的には、実施の形態2の貯水槽20には、その内部空間の一部が仕切られた小槽27が形成されている。小槽27は、貯水槽20の上部に形成されている。小槽27の天井面は、貯水槽20の天井面の一部により構成されている。オーバーフロー管51は、小槽27の天井面を貫通している。オーバーフロー管51の他端55は、小槽27の内部に配置されている。オーバーフロー管51の他端55は、小槽27内に開口している。オーバーフロー管51を経由して流れる水は、他端55から小槽27内へ流出する。
【0080】
小槽27の側面には、側面を貫通する貫通孔28が形成されている。小槽27の底面は、貯水槽20の底面から離れて配置されている。小槽27の底面には、底面を貫通する貫通孔29が形成されている。貫通孔28,29は、小槽27の内部空間と、小槽27の外部空間である貯水槽20の内部空間のうち小槽27を形成しない部分とを、連通している。オーバーフローセンサ54は、実施の形態1と異なり、オーバーフロー管51の経路上に設けられておらず、貯水槽20内に設けられている。より具体的には、オーバーフローセンサ54は、小槽27内に配置されている。
【0081】
水位センサ26は、貯水槽20内の底面付近に配置されている。水位センサ26は、貯水槽20内の水位の下限値を検出する下限水位センサとしての機能を有している。水位センサ26と、オーバーフローセンサ54とは、電極式またはフロート式の水位センサであってもよい。
【0082】
図14は、
図13に示す貯水槽20の部分拡大図である。
図14には、
図13に示す貯水槽20のうち、小槽27付近が拡大されて図示されている。
図14中の白抜き矢印は、オーバーフロー管51の他端55から流れ出る水を示す。
図14中の矢印は、貫通孔29を経由して小槽27から流れ出る水を示す。
【0083】
貫通孔29は、その開口面積が他端55の開口面積よりも小さいように、形成されている。他端55から小槽27内へ流れ出た水は、貫通孔29を経由して小槽27の内部から外部へ流れようとするときに、大きな抵抗を受ける。貫通孔29が小径に形成されていることにより、水が貫通孔29を通過するときの圧力損失が増大している。そのため、小槽27内へ流入した水は、直ちに貫通孔29から流れ出ることなく、小槽27の内部で一旦溜められる。
【0084】
チャンバ10内の水面Wsが上昇して、チャンバ10内の過剰な水がオーバーフロー管51から排出されると、オーバーフロー管51を通過して他端55から小槽27内へ水が供給される。小槽27内において水が溜められて水位が上昇し、オーバーフローセンサ54にまで水が到達すると、オーバーフローセンサ54がオフからオンに切り換わる。
図6を参照して説明した通り、オーバーフローセンサ54がオンの状態が所定時間継続すると、給水ポンプ32を停止して、チャンバ10への給水を停止することができる。
【0085】
チャンバ10への給水を停止した後、チャンバ10内の水面Wsが低下してチャンバ10からの水Wの流出が停止すると、小槽27内へ流れ出る水の流れも停止する。貫通孔29から水が徐々に流出することにより、小槽27内の水位が低下する。オーバーフローセンサ54の位置に水が存在しなくなると、オーバーフローセンサ54がオンからオフに切り換わる。オーバーフローセンサ54がオフの状態が所定時間継続すると、エアポンプ63を停止して、給水工程を完了することができる。このときチャンバ10内の水面Wsは、オーバーフロー管51の一端56の位置に維持されている。
【0086】
貯水槽20内において、オーバーフローセンサ54は、水位センサ26よりも上方に配置されている。貯水槽20内に手動で水を供給するとき、貫通孔28,29を経由して小槽27内へも水が流れる。小槽27内の水位が上昇してオーバーフローセンサ54がオフからオンに切り換わることを検出して、貯水槽20内の水位が上限に達したことを通知することができる。貯水槽20内の水位の上限値を検出する上限水位センサとしての機能を有するように、オーバーフローセンサ54を構成することができる。
【0087】
(実施の形態3)
図15は、実施の形態3の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。実施の形態3の蒸気滅菌器1は、オーバーフロー経路50の構成において、実施の形態1,2とは異なっている。
【0088】
実施の形態1,2のオーバーフロー管51は、一端56がチャンバ10内に配置され、チャンバ10内の下部に開口している。実施の形態1,2のオーバーフロー管51は、チャンバ10の底面10bから上方に立上る立上り部52を有している。これに対し、
図15に示すオーバーフロー管51の一端は、チャンバ10の側部に接続されており、チャンバ10内に配置されていない。
図15に示すオーバーフロー管51は、立上り部を有していない。オーバーフロー管51は、チャンバ10の側面に設けられている。
【0089】
このようにオーバーフロー管51を構成した場合でも、チャンバ10内の水面Wsがオーバーフロー管51の一端へ到達すると、チャンバ10内の水Wがオーバーフロー管51内へ流入する。これにより、チャンバ10内の水面Wsを、オーバーフロー管51の一端の位置に維持することができる。
【0090】
なお
図15は、オーバーフロー管51がチャンバ10に接続される側面が、開閉蓋11と対向する温度センサ16が取り付けられている側面であることを示すものではない。オーバーフロー管51は、チャンバ10の任意の側面に接続されて、一端がチャンバ10の任意の側面に開口するように、構成されていればよい。オーバーフロー管51は、開閉蓋11と対向するチャンバ10の側面に接続されていてもよく、開閉蓋11により開閉される被滅菌物100の搬出入口を形成するチャンバ10の側面に接続されていてもよく、開閉蓋11に接続されていてもよい。
【0091】
実施の形態の蒸気滅菌器1の構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。なお、実施の形態の構成に参照番号を付すが、これは一例である。
【0092】
本実施の形態の蒸気滅菌器1は、
図1に示すように、被滅菌物100を収納可能なチャンバ10と、チャンバ10内に供給された水を加熱するヒータ12とを備え、ヒータ12の加熱により発生した水蒸気で被滅菌物100を滅菌する装置である。蒸気滅菌器1は、チャンバ10への給水時にチャンバ10から過剰な量の水を排出するオーバーフロー管51と、チャンバ10への給液時にチャンバ10に空気を供給するエアポンプ63と、を備えている。
【0093】
チャンバ10への給水時に、エアポンプ63を起動してチャンバ10に空気を供給することにより、チャンバ10からオーバーフロー管51への水の排出が促進される。エアポンプ63を用いてチャンバ10から排水することにより、
図11に示すように、給水完了後のチャンバ10内の水面Wsを、オーバーフロー管51の一端56(
図3)の位置に一定に保つことができる。これにより、チャンバ10内に供給される水量の均一性を向上することができる。
【0094】
また
図3に示すように、オーバーフロー管51は、チャンバ10内に開口する一端56を有している。
図1に示すように、オーバーフロー管51は、貯液槽20内に開口する他端55を有している。
図4に示すように、オーバーフロー管51は、一端56から他端55へ向かう経路が上方に立上る上昇流形成部51aを有している。
【0095】
チャンバ10への給水時にエアポンプ63によりチャンバ10に空気が供給され、チャンバ10内に供給された空気によってチャンバ10内の水がチャンバ10外へと排出される。これにより、オーバーフロー管51が上昇流形成部51aを有していても、チャンバ10からオーバーフロー管51へ過剰な水を排出することができる。オーバーフロー管51を、一端56がチャンバ10内の下部に開口し他端55が貯水槽20の上部に開口する構成とできるので、チャンバ10と貯水槽20とを蒸気滅菌器1の筐体内部で横に並べて配置することができる。チャンバ10と貯水槽20との一方の少なくとも一部、好ましくは全部が、側方視において他方と重なる配置とすることにより、蒸気滅菌器1の筐体の上下方向の寸法を小さくすることができ、筐体を小型化することができる。
【0096】
また
図1に示すように、蒸気滅菌器1は、オーバーフローセンサ54を備えている。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51を流れる水の流動を検出する。チャンバ10への給水時に、オーバーフローセンサ54がオンになると給水を停止し、その後オーバーフローセンサ54がオフになるまでチャンバ10からオーバーフロー管51への水の排出を継続する。これにより、給水完了後のチャンバ10内の水面Wsを、オーバーフロー管51の一端56の位置に一定に保つことができる。
【0097】
チャンバ10への給水時における、給水ポンプ32の停止のタイミング(
図6に示す時刻T4)は、給水ポンプ32を起動してからの経過時間によって定められてもよい。エアポンプ63の停止のタイミング(
図6に示す時刻T6)は、給水ポンプ32を停止してからの経過時間によって定められてもよい。タイマ82(
図5)を用いて、時間の経過に従って給水ポンプ32およびエアポンプ63を適切に起動停止することによっても、給水完了後のチャンバ10内の水面Wsを、オーバーフロー管51の一端56の位置に一定に保つことができる。そのため、実施の形態の蒸気滅菌器1は、オーバーフローセンサ54を必ずしも備えなくてもよい。
【0098】
また
図1に示すように、蒸気滅菌器1は、チャンバ10内に供給される水を貯留する貯水槽20をさらに備えている。
図3に示すように、オーバーフロー管51は、チャンバ10内に開口する一端56を有している。
図1に示すように、オーバーフロー管51は、貯水槽20内に開口する他端55を有している。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51の経路上に設けられている。このようにすれば、オーバーフロー管51の経路上に設けられたオーバーフローセンサ54を用いて、オーバーフロー管51を流れる水の流動を検出することができる。
【0099】
また
図13に示すように、オーバーフローセンサ54は、貯水槽20内に設けられている。このようにすれば、貯水槽20内に設けられたオーバーフローセンサ54を用いて、オーバーフロー管51を流れる水の流動を検出することができる。貯水槽20外にオーバーフローセンサ54を配置するためのスペースが必要ないため、蒸気滅菌器1の筐体を小型化することができる。貯水槽20内に設けられたオーバーフローセンサ54は、貯水槽20内の液面の上限値を検出してもよい。オーバーフローセンサ54が貯水槽20の上限水位センサとして機能することにより、上限水位センサを別途設ける必要がなく、蒸気滅菌器1の構成を簡略化することができる。
【0100】
また
図5に示すように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部80をさらに備えている。
図6,10に示すように、制御部80は、オーバーフローセンサ54がオーバーフロー管51を流れる液体の流動を検出すると、チャンバ10への給液を停止する。一方で制御部80は、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給を継続する。
図6,11に示すように、制御部80は、チャンバ10への給液の停止後、オーバーフローセンサ54がオーバーフロー管51を流れる液体の流動を検出しなくなると、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給を停止する。オーバーフローセンサ54がオンになると給水を停止し、その後オーバーフローセンサ54がオフになるまでチャンバ10からオーバーフロー管51への水の排出を継続することにより、給水完了後のチャンバ10内の水面Wsを、オーバーフロー管51の一端56の位置に一定に保つことができる。
【0101】
また
図6,8に示すように、蒸気滅菌器1は、チャンバ10に水を移送して給水する給水ポンプ32をさらに備えている。制御部80は、給水ポンプ32によりチャンバ10への給水を開始してから予め定められた時間が経過した後に、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給を開始する。チャンバ10への給水を開始した直後はチャンバ10へ空気を供給しないように構成されており、チャンバ10への給水当初のチャンバ10の気圧は大気圧とされている。これにより、チャンバ10への給水当初における、給水ポンプ32の負荷を軽減することができ、迅速にチャンバ10へ給水することができる。
【0102】
また
図12に示すように、エアポンプ63は、被滅菌物100の滅菌処理の終了後、チャンバ10に空気を供給する。チャンバ10への給液時にチャンバ10に空気を供給するエアポンプ63を、被滅菌物100の滅菌処理の終了後の乾燥工程においてチャンバ10に空気を供給するために用いることにより、乾燥工程においてチャンバ10に空気を供給するためのポンプを別途設ける必要がなく、蒸気滅菌器1の構成を簡略化することができる。
【0103】
また
図2に示すように、オーバーフロー管51は、チャンバ10の底面10bから上方に立上る立上り部52を有している。チャンバ10内の水が、立上り部52の上端からオーバーフロー管51へ流れ込むように、オーバーフロー管51は形成されている。このようにすれば、オーバーフロー管がチャンバの側面に設けられる構成と比較して、チャンバ10が傾いて配置された場合の、給水完了後のチャンバ10内の水面Wsへの影響を小さくすることができる。
【0104】
また
図3に示すように、立上り部52の上端は、オーバーフロー管51の一端56を構成している。一端56には、チャンバ10内に開口する開口57が形成されている。蒸気滅菌器1は、一端56に取り付けられ開口57を覆うメッシュ部材90をさらに備えている。メッシュ部材90がチャンバ10内の水の界面のバランスを崩すことで、オーバーフロー管51の一端56における水の表面張力が低減される。これにより、表面張力の発生を原因としてチャンバ10内に過剰な量の水が滞留することを回避できるので、給水完了後のチャンバ10内の水面Wsを一端56の位置に一定に保つことができる。また、オーバーフロー管51へのごみの侵入を防止することができる。
【0105】
また
図2,3に示すように、メッシュ部材90は、オーバーフロー管51の一端56から凸状に膨出するドーム形状を有している。ドーム形状のメッシュ部材90を適用することにより、オーバーフロー管51の一端56における水の表面張力を、より効果的に抑制することができる。
【0106】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 蒸気滅菌器、10 チャンバ、10b 底面、11 開閉蓋、12 ヒータ、13 載置台、20 貯水槽、21 液相部、22 気相部、26 水位センサ、27 小槽、28,29 貫通孔、30 給水経路、31 給水管、32 給水ポンプ、33 給水電磁弁、40 排出経路、41 排水管、42 排気管、43 共通管、44 排出電磁弁、45 コンデンサ部、46 屈曲部、50 オーバーフロー経路、51 オーバーフロー管、51a 上昇流形成部、52 立上り部、53 オーバーフロー電磁弁、54 オーバーフローセンサ、55 他端、56 一端、57 開口、58,59 面取り面、60 送風経路、61 送風管、62 エア電磁弁、63 エアポンプ、70 圧力経路、80 制御部、81 入力部、82 タイマ、90 メッシュ部材、100 被滅菌物、W 水、Ws 水面。