(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】高感度免疫接合体、この製造方法、これを含む体外診断試薬及び体外診断キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230330BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G01N33/543 501J
G01N33/543 575
G01N33/545 A
(21)【出願番号】P 2021153367
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0091864
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520362561
【氏名又は名称】バイオメトリックス テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOMETRIX TECHNOLOGY INC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】キム タイスン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ケムソー
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンフン
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534006(JP,A)
【文献】特開2011-242263(JP,A)
【文献】特開2011-033613(JP,A)
【文献】特表2012-514202(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0111015(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0094035(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0114932(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1のナノ粒子-DNA結合体と、第一抗体-DNA結合体を含み、第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第一抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合した第1のナノ粒子免疫接合体
と、
b)第2のナノ粒子-DNA結合体と、第二抗体-DNA結合体を含み、第2のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第二抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合した第2のナノ粒子免疫接合体
と、を含む、
高感度免疫接合体
であって、
前記第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片は、バイオチップに固定されたDNAプローブと相補的結合力を有することを特徴とする、高感度免疫接合体。
【請求項2】
前記第一抗体は、標的物質の一部分に特異的に結合し、
前記第二抗体は、前記標的物質の他の部分に特異的に結合することを特徴とする、
請求項1に記載の高感度免疫接合体。
【請求項3】
前記第1のナノ粒子と第2のナノ粒子それぞれの表面は、
アミン基(-NH
2)、カルボキシル基(-COOH)又はアルデヒド基(-COH)のうち一つ以上の作用基を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の高感度免疫接合体。
【請求項4】
前記第1のナノ粒子と第2のナノ粒子は、
ラテックスビーズであることを特徴とする、
請求項1に記載の高感度免疫接合体。
【請求項5】
前記ラテックスビーズは、径が100~500nmであることを特徴とする、
請求項
4に記載の高感度免疫接合体。
【請求項6】
前記第2のナノ粒子は、蛍光物質を含有することを特徴とする、
請求項1に記載の高感度免疫接合体。
【請求項7】
前記第1のナノ粒子と第2のナノ粒子それぞれに15,000~40,000個のDNA断片が結合することを特徴とする、
請求項1に記載の高感度免疫接合体。
【請求項8】
(i)第1のナノ粒子-DNA結合体と、第2のナノ粒子-DNA結合体を製造するステップ
と、
(ii)第一抗体-DNA結合体と、第二抗体-DNA結合体を製造するステップ
と、
(iii)第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第一抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合し、第2のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第二抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合して、第1のナノ粒子免疫接合体及び第2のナノ粒子免疫接合体を製造するステップ
と、を含む、
高感度免疫接合体の製造方法
であって、
前記第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片は、バイオチップに固定されたDNAプローブと相補的結合力を有することを特徴とする、高感度免疫接合体の製造方法。
【請求項9】
前記第1のナノ粒子-DNA結合体と、第2のナノ粒子-DNA結合体は、
第1のナノ粒子と第2のナノ粒子それぞれの表面のカルボキシル基にDNA断片末端のNH
2基が結合したことを特徴とする、
請求項
8に記載の高感度免疫接合体の製造方法。
【請求項10】
請求項
1の高感度免疫接合体を含む、
体外診断試薬。
【請求項11】
請求項
1の高感度免疫接合体を含む、
体外診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度免疫接合体、これを含む体外診断試薬及び体外診断キットに関する。より詳細には、ナノ粒子を含み、標的物質との特異的結合効率を高めるとともに、信号を増幅し得る高感度免疫接合体、これを含む体外診断試薬及び体外診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
体外診断機器は、体外診断検査に使用される医療機器であって、用いられる試薬を含む機器を言い、体外で検査が行われるため、人体に直接挿入する医療機器よりも身体への負担が少ない。
【0003】
体外診断技術のうち免疫測定法は、血液、尿、体液などの人体に由来する物質を用いて、体外で標的物質を速かに測定して疾病を診断する技術であり、臨床的意思決定に重要な役割を果たして、患者の治療に必須な要素となっている。
【0004】
免疫測定法のうち最も代表的なものは、酵素免疫分析法(ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay)であって、免疫学的検定に対する効率性が検定された方法であり、経済的かつ簡単に免疫学的検定を行うことができ、現在まで人間及び動物の疾病診断に基本的に使用されている。
【0005】
通常、酵素免疫分析法は、酵素がマークされた抗体と、この酵素反応を通じて発色する基質を使って、一つの分析物質(analyte)又は標的物質(target substance)を検出する過程を含み、簡単な過程を経て疾病の診断が可能であるという長所があるものの、酵素が結合した抗体との二次反応が必要であることから、時間がかかり、二次反応に使用される抗体生産費により費用面でも負担になる問題点があった。また、一次反応及び二次反応における一部の反応が進められないこともあるため、診断の敏感度(sensitivity)の側面でも問題点がある。
【0006】
前記酵素免疫分析法(ELISA)の問題点を克服するために開発されたものが、蛍光免疫測定法(FLISA:fluorescence-linked immunosorbent assay)である。蛍光免疫測定法は、標的物質に結合する抗体に蛍光を結合させて、抗原-抗体反応が起こった程度に応じて蛍光の感度を測定する検査方式であって、二次抗体に蛍光物質を化学結合で付着させたことを検出用として使用した。最初は、ELISAのマーカーとして酵素を用いたが、その後、検出技術の開発によって現在は、蛍光物質が普く使用されている。かかる蛍光物質としては、アレクサフルオル(Alexa Fluor)系、キサンテン(xanthene)系、シアニン(cyanine)系蛍光物質を含む様々な蛍光分子が用いられている。
【0007】
酵素免疫分析法(ELISA)は、主にアミン基とアルデヒド基との反応を利用した化学的結合方式と、タンパク質を物理的に吸着させる方式などが使用されている。化学結合方式の場合、固定化後、時間が経過するにつれて固定化されたタンパク質の活性が減少して、高い敏感度の確保が難しい。物理吸着方式の場合、固定化されるタンパク質の方向性の制御と、固定化後、タンパク質の活性維持が難しくて、敏感度及び再現性を確保しにくいため、微量の定量分析が必要なタンパク質分析製品への適用が難しい。よって、かかる問題点の影響が比較的に少ない高濃度ターゲットを分析する用途の製品が主に開発されてきた。
【0008】
また、固体基質上に固定化されたタンパク質は、時間が経過するほど、固定化タンパク質の変性、非特異結合が発生するようになり、微量のタンパク質変化を繰り返して再現性ありに判読するには多くの限界が存在する。
【化1】
【0009】
酵素免疫分析法(enzyme-linked immunosorbent assay,ELISA)及び蛍光免疫測定法(FLISA:fluorescence-linked immunosorbent assay)は、固体基質上にタンパク質を直接固定化させる方式であって、固定化されたタンパク質は、時間が経過するほど、タンパク質の変性が発生して、抗原-抗体間の反応のほか、タンパク質間の非特異結合が発生する問題がある。そして、微量タンパク質(~100pg/ml)の測定時は、結果に非特異感度が含まれると、10~1000pg/mlなどと、高いか低い濃度と誤った結果を示す場合が発生する。かかる理由によりELISA、FLISAに基づく測定法は、ほとんど非特異によって濃度の影響を受けない高濃度水準のタンパク質分析には好適であるものの、非常に低い濃度分析では、非特異による実際の感度を分析しにくい限界があるため、再現性と繰り返し性の高い分析技術を確保しにくい実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国登録特許第10-1029343号(2011年4月13日付公告)
【文献】韓国登録特許第10-2046556号(2019年11月13日付公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の酵素免疫分析法(ELISA)及び蛍光免疫分析法における固体基質上にタンパク質を直接固定化することによって発生する非特異反応を除去して、結合特異度を高めるためである。
【0012】
本発明の他の目的は、信号の増幅によって極微量の標的物質を検出することのできる敏感度、正確性及び再現性の高い免疫接合体、この製造方法、これを含む体外診断試薬及び体外診断キットを提供することにある。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、以上に言及した課題に制限されず、言及していない他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、a)第1のナノ粒子-DNA結合体と、第一抗体-DNA結合体を含み、第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第一抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合した第1のナノ粒子免疫接合体;及びb)第2のナノ粒子-DNA結合体と、第二抗体-DNA結合体を含み、第2のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第二抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合した第2のナノ粒子免疫接合体;を含む、高感度免疫接合体を提供する。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記第一抗体は、標的物質の一部分に特異的に結合し、前記第二抗体は、前記標的物質の他の部分に特異的に結合することができる。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片は、バイオチップに固定されたDNAプローブと相補的結合力を有し得る。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記第1のナノ粒子と第2のナノ粒子それぞれの表面は、アミン基(-NH2)、カルボキシル基(-COOH)又はアルデヒド基(-COH)のうち一つ以上の作用基を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記第1のナノ粒子と第2のナノ粒子は、ラテックスビーズであってもよい。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記ラテックスビーズは、径が100~500nmであってもよい。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記第2のナノ粒子は、蛍光物質を含有するものであってもよい。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記第1のナノ粒子と第2のナノ粒子それぞれに15,000~40,000個のDNA断片が結合するものであってもよい。
【0022】
また、上記目的を解決するために本発明は、(i)第1のナノ粒子-DNA結合体と、第2のナノ粒子-DNA結合体を製造するステップ;(ii)第一抗体-DNA結合体と、第二抗体-DNA結合体を製造するステップ;及び(iii)第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第一抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合し、第2のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片と、第二抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片とが相補的に結合して、第1のナノ粒子免疫接合体及び第2のナノ粒子免疫接合体を製造するステップ;を含む、高感度免疫接合体の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の一実施例によれば、前記第1のナノ粒子-DNA結合体と第2のナノ粒子-DNA結合体は、第1のナノ粒子と第2のナノ粒子それぞれの表面のカルボキシル基にDNA断片末端のNH2基が結合したものであってもよい。
【0024】
また、上記目的を解決するために本発明は、高感度免疫接合体を含む体外診断試薬を提供する。
【0025】
また、上記目的を解決するために本発明は、高感度免疫接合体を含む体外診断キットを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高感度免疫接合体、この製造方法、これを含む体外診断試薬及び体外診断キットを提供する効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、固体基質と免疫接合体との間にDNA-DNA結合を導入することにより、従来技術で発生した非特異反応を除去して、結合特異度を高める効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、ナノ粒子又は蛍光ナノ粒子の表面に複数の抗体及び遺伝子のバイオマーカーを結合して、検出信号を増幅させることにより、敏感度、正確性及び再現性を高めて、ピコグラム(picogram)水準の極微量の標的物質を検出することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施例による高感度免疫接合体を示した模式図。
【
図2a】本発明の一実施例による第一抗体-DNA結合体の製造方法の模式図。
【
図2b】本発明の一実施例による第二抗体-DNA結合体の製造方法の模式図。
【
図3】本発明の一実施例による抗体-蛍光免疫接合体の製造方法の模式図。
【
図4】本発明の一実施例による高感度免疫接合体を含む体外診断キットの作用原理を示した模式図。
【
図5a】本発明の一実施例による酵素免疫分析法(ELISA)を利用した検出方法の模式図。
【
図5b】本発明の一実施例による酵素免疫分析法(ELISA)のトロポニンTの測定濃度範囲を示した図面。
【
図6a】本発明の一実施例による一次免疫接合体を用いた蛍光免疫分析法の模式図。
【
図6b】本発明の一実施例による一次免疫接合体を用いた蛍光免疫分析法のトロポニンTの測定濃度範囲を示した図面。
【
図7a】本発明の一実施例による二次(高感度)免疫接合体を用いた蛍光免疫分析法の模式図。
【
図7b】本発明の一実施例による二次(高感度)免疫接合体を用いた蛍光免疫分析法のトロポニンTの測定濃度範囲を示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使われた用語や単語は、通常的であるか辞書的な意味に絶対に限定して解釈されてはならず、本発明の発明者が自己の発明を最も最善の方法により説明するために、各種用語の概念を適宜定義して使うことができ、さらには、これら用語や単語は、本発明の技術思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0031】
すなわち、本明細書で使われた用語は、本発明の好ましい実施例を説明するために使われただけであり、本発明の内容を具体的に限定しようとする意図で使われたものではなく、これら用語は、本発明の様々な可能性を考慮して定義された用語である。
【0032】
また、本明細書において、単数の表現は、文脈上明確に他の意味に示さない限り、複数の表現を含んでいてもよく、複数で類似に表現されているとしても、単数の意味を含んでいてもよいことが分かるべきである。
【0033】
全明細書において、ある構成要素が他の構成要素を「含む」と記載する場合、特に逆の意味が記載されていない限り、任意の他の構成要素を除くものではなく、任意の他の構成要素をさらに含んでいてもよいことを意味し得る。
【0034】
また、以下では、本発明の説明において、本発明の要旨を曖昧にすると判断される構成、例えば、従来技術を含む公知の技術に関する詳細な説明は省略し得る。
【0035】
以下、本発明をより詳説する。
【0036】
本発明は、従来技術のELISA、FLISA法に基づく測定法において、低濃度タンパク質の分析時に現われる非特異の問題を解決するために、固体基質上に抗体タンパク質を直接固定化する方式に代えて、遺伝子を固定化した9G DNA固体基質と、ここに抗体-DNAが結合した抗体-DNA結合体がDNA-DNA反応で結合する方式を開発したものである。
【化2】
【0037】
このように、DNA単分子層からなる9G DNA基質は表面が親水性であるため、他のタンパク質と非特異結合がないし、固体基質のDNAと結合する抗体も遺伝子が結合した抗体-DNA結合体であるため、タンパク質による非特異がなくて、低濃度タンパク質の分析が可能である。
【0038】
しかし、依然として試料の中に存在する非常に低い濃度のバイオマーカー(biomarker)物質を、正確に再現性の確保された分析システムとして確立するためにはタンパク質非特異の問題のほか、依然として解決すべき部分がある。
【0039】
低い濃度を正確に検出するためには、分析マーカーとして使われる蛍光マーカーが安定的かつ強い信号を示さなければならないが、単一蛍光分子は、蛍光信号の強度及び蛍光半減期などによる測定方法に限界があり、かかる短所を克服し得る新しい信号の増幅に対する技術開発が求められている。
【0040】
分析信号を増幅して、検出敏感度を増加させ得る信号増幅技術のために、本発明者たちは、極微量のタンパク質を非常に正確に測定して分析し得るナノ粒子を用いた免疫接合体、及びこれを含む体外診断試薬及び体外診断キットを製造した。
【0041】
一方、蛍光ナノ粒子は、数十ミクロメーターの大きさを有する一般的な蛍光体と違って、1ミクロメーター以下の大きさを有し、これによる表面積/体積比の増加によりナノスケールで発生する多様な効果によって、単一蛍光体と異なる物性を示すようになる。蛍光ナノ粒子は、既存の他の蛍光物質に比べて優れた熱的、化学的安全性、光安全性及び高い蛍光強さなどの特徴を有する。
【0042】
かかる背景下で、本発明者たちは、蛍光免疫診断キットの蛍光信号を増幅させて、より少量の試料を使っても標的物質を効果的に検出することのできる方法を開発するために、単一蛍光分子の短所を補える蛍光ナノ粒子(nanoparticles)を媒介体として、抗体と遺伝子などのバイオマーカーを蛍光ナノ粒子と結合させて、高感度免疫接合体及びこれを含む体外診断試薬及び体外診断キットを製造した。
【0043】
高感度免疫接合体及びその製造方法
本発明の高感度免疫接合体は、a)第1のナノ粒子-DNA結合体と、第一抗体-DNA結合体を含み、第1のナノ粒子-DNA結合体と第一抗体-DNA結合体のDNAが相補的に結合した第1のナノ粒子免疫接合体;及びb)第2のナノ粒子-DNA結合体と、第二抗体-DNA結合体を含み、第2のナノ粒子-DNA結合体と第二抗体-DNA結合体のDNAが相補的に結合した第2のナノ粒子免疫接合体;を含む。
【0044】
本発明の高感度免疫接合体の製造方法は、(i)第1のナノ粒子-DNA結合体と、第2のナノ粒子-DNA結合体を製造するステップ;(ii)第一抗体-DNA結合体と、第二抗体-DNA結合体を製造するステップ;及び(iii)第1のナノ粒子-DNA結合体と第一抗体-DNA結合体のDNA断片が相補的に結合し、第2のナノ粒子-DNA結合体と第二抗体-DNA結合体のDNA断片が相補的に結合して、第1のナノ粒子免疫接合体及び第2のナノ粒子免疫接合体を製造するステップ;を含む。
【0045】
本発明の高感度免疫接合体は、第1のナノ粒子免疫接合体と第2のナノ粒子免疫接合体を含む。
【0046】
前記第1のナノ粒子免疫接合体は、第1のナノ粒子-DNA結合体と、第一抗体-DNA結合体を含み、第1のナノ粒子-DNA結合体と第一抗体-DNA結合体のDNA断片は、互いに相補的に結合することができる。
【0047】
前記第一抗体は、標的物質の一部分に特異的に結合し、前記第二抗体は、前記標的物質の他の部分に特異的に結合することができる。
【0048】
<第1のナノ粒子-DNA結合体>
第1のナノ粒子-DNA結合体は、第1のナノ粒子にDNA断片が結合したものである。
【0049】
前記第1のナノ粒子は、ミクロスフェア(Microspere)であって、ラテックスビーズ又はラテックス粒子であるのが好ましい。ラテックスビーズは、コロイドサイズの球状粒子であって、ポリスチレンのような無定形ポリマーから形成されうる。ポリスチレンチェーンがビーズに配列する方式であることから、表面は、特性が非常に疎水性であり、タンパク質のような物質の吸着に理想的な物質である。
【0050】
前記ナノ粒子の表面には、各種分子とタンパク質をビッドの表面に結合するために多様な表面変形を使用することができる。ナノ粒子の表面は、アミン基(-NH
2)、カルボキシル基(-COOH)又はアルデヒド基(-COH)のうちいずれか作用基を含んでいてもよい。例えば、
図1に示したナノ粒子は、粒子の表面にカルボキシル基グループを含むカルボキシルラテックスであって、ポリスチレンミクロスフェアで構成される。また、アミンラテックスは、ポリスチレンミクロスフェアで構成され、粒子の表面にはアミングループを含んでいる。かかる粒子の表面の作用基は、遺伝子、抗原、抗体の構成要素と共同結合のために使用されうる。ラテックスビーズの大きさは、径が20~1000nmであるものを用いることができ、径が100~500nmであるのが好ましい。
【0051】
前記ナノ粒子には15,000~40,000個のDNA断片が結合し得る。
【0052】
図1を参照すると、ナノ粒子の表面のカルボキシル基にNH
2-DNA断片が結合して、ナノ粒子-DNA結合体を形成する。よって、
図1には省かれているが、ナノ粒子-DNA結合体には15,000個以上の多くのDNA断片が結合されていてもよい。
【0053】
したがって、本発明による高感度免疫接合体は、従来のELISAに比べて検出敏感度が100倍以上増加し、単一蛍光免疫接合体に比べて検出敏感度が10倍以上増加する。
【0054】
<第一抗体-DNA結合体>
第一抗体-DNA結合体は、第一抗体にDNA断片が結合したものである。
【0055】
図2aを参照すると、第一抗体用のNH
2-DNA断片とスルホ-SMCCが化学結合で製造された第一抗体用のSMCC-DNA断片に第一抗体-SHを結合して、第一抗体-DNA結合体を形成する。第1のSMCC-DNA断片のDNA断片は、30~40mer大きさのオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0056】
前記第一抗体は、標的物質の精製、感知、測定の目的で対象バイオ分子に特異的に結合する免疫グロブリンである。
【0057】
前記標的物質は、検出しようとする特定タンパク質、自己抗体(autoantibody)、ウイルスファージ、核酸分子アプタマー(Aptamer)、ハプテン(hapten;DNP)などの生体分子をいずれも含むものであり、さらには上記記載の事項に特に制限されるものではない。
【0058】
<第1のナノ粒子免疫接合体>
図1を参照すると、第1のナノ粒子-DNA結合体と前記第一抗体-DNA結合体とが結合して、第1のナノ粒子免疫接合体を形成する。第1のナノ粒子-DNA結合体と前記第一抗体-DNA結合体のDNA断片は、互いに相補的な配列を含めており、混成化(hybridization)して結合することができる。例えば、表2の第1のNH
2-DNA断片(
図1の第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片)と、第1のSMCC-DNA断片(
図1の第一抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片)は、互いに相補的な塩基配列を持つ。
【0059】
<第2のナノ粒子-DNA結合体>
図1を参照すると、第2のナノ粒子-DNA結合体は、第2のナノ粒子が蛍光ラテックスであるものと、DNA断片の配列を除いては、第1のナノ粒子-DNA結合体の製造方法と同様であってもよい。
【0060】
第2のナノ粒子は、蛍光物質を含有する蛍光ラテックスであるのが好ましい。第2のナノ粒子には様々な蛍光染料が粒子の内部に含有されうる。蛍光波長は、(Ex/Em):Blue(365/415)、Yellow-green(505/515)、Nile red(535/575)、Orange(540/560)、Red-orange(565/580)、Red(580/605)、Crimson(625/645)、Dark red(660/680)、Infared(715/755)などの多様な蛍光を用いることができる。第2のナノ粒子の素材、表面の作用基と大きさなどは、第1のナノ粒子において説明したのと重複するため省略する。
【0061】
<第二抗体-DNA結合体>
第二抗体-DNA結合体は、第二抗体にDNA断片が結合したものである。
【0062】
図2bを参照すると、第二抗体-DNA結合体の製造方法は、DNA断片の配列と抗体を除いては、第一抗体-DNA結合体の製造方法と同様であってもよい。
【0063】
前記第二抗体は、標的物質の精製、感知、測定の目的で対象バイオ分子に特異的に結合する免疫グロブリンであって、特定タンパク質に対して第一抗体が結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する免疫グロブリンである。
【0064】
前記標的物質は、検出しようとする特定タンパク質、自己抗体(autoantibody)、ウイルスファージ、核酸分子アプタマー(Aptamer)、ハプテン(hapten;DNP)などの生体分子をいずれも含むものであり、さらには上記記載の事項に特に制限されるものではない。
【0065】
本発明における第一抗体は、標的物質の一部分に特異的に結合し、前記第二抗体は、前記標的物質の他の部分に特異的に結合することを特徴とする。
図4又は
図7aを参照すると、一つの標的物質の一部分に第一抗体が特異的に結合し、同じ標的物質の他の部分に第二抗体が特異的に結合する。前記標的物質は、検出しようとするターゲットタンパク質であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0066】
<第2のナノ粒子免疫接合体>
図1を参照すると、第2のナノ粒子の表面のカルボキシル基に第2のNH
2-DNA断片が結合した第2のナノ粒子-DNA結合体に、第2の抗体-DNA結合体(
図2bのように製造)が相補的に結合して第2のナノ粒子免疫接合体を形成する。
【0067】
第2のナノ粒子-DNA結合体と前記第二抗体-DNA結合体のDNA断片は、互いに相補的な配列を含めており、混成化(hybridization)して結合することができる。例えば、表2の第2のNH
2-DNA断片(
図1の第2のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片)と、第2のSMCC-DNA断片(
図1の第二抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片)は、互いに相補的な塩基配列を持つ。
【0068】
<高感度免疫接合体>
本発明の高感度免疫接合体は、前記第1のナノ粒子免疫接合体と第2のナノ粒子免疫接合体を混合して製造される。
【0069】
図7aを参照すると、検体と、本発明による高感度免疫接合体を反応させると、検体内抗原に第一次抗体と第二次抗体とが結合し、この混合物をDNAプローブが固定されたバイオチップ上に流すと、第一抗体に結合されたナノ粒子のDNA断片がDNAプローブに相補的結合(DNA-DNA結合)を行い、第二抗体が結合された蛍光ナノ粒子によって信号が検出される。前記第1のナノ粒子と第2のナノ粒子には15,000~40,000個のDNA断片が結合され得るため、蛍光信号が増幅して、標的物質を高感度に検出することができる。下記の実施例を参照すると、本発明による高感度免疫接合体は、従来のELISAに比べて検出敏感度が100倍以上増加し、単一蛍光免疫接合体(
図6a参照)に比べて検出敏感度が10倍以上増加する。
【0070】
体外診断試薬
本発明は、前記高感度免疫接合体を含む体外診断試薬を提供する。
【0071】
本発明による体外診断試薬は、本発明の技術分野における通常に用いられる物質をさらに含んでいてもよい。特に、抗原-抗体反応用の反応バッファー(reaction buffer)、反応後、洗浄に用いられる洗浄溶液(washing buffer)などをさらに含んでいてもよいが、これに制限されない。
【0072】
体外診断キット
本発明は、前記高感度免疫接合体を含む体外診断キットを提供する。
【0073】
本発明による体外診断キットは、本発明の技術分野における通常に用いられる装置と物質をさらに含んでいてもよい。特に、9G(9guanines)技術が適用されたバイオチップをさらに含んでいてもよく、蛍光免疫分析法を利用した側方流動方式(lateral flow)が好ましいが、これに制限されない。
【0074】
本発明による体外診断キットの一例として、
図4を参照すると、少なくとも2個以上の検出ライン(Test Line)を含む診断ストリップ及び診断ストリップを収容する診断キットボディを含み、前記診断ストリップは、標的物質を含む検体が注入されるサンプルパッド、前記サンプルパッドに連結される形態で第1高感度免疫接合体が特異的に結合する、第1のプローブ遺伝子が固定された第1の検出ライン、及び第2の高感度免疫接合体が特異的に結合する、第2のプローブ遺伝子が固定された第2の検出ラインを含み、第2の検出ラインは、前記第1の検出ラインから離隔した位置に固定されたガラス繊維検出膜を含む。
【0075】
ここで、前記ガラス繊維検出膜には、前記サンプルパッド側を基準に、前記第1の検出ライン、前記第2の検出ラインが順次に形成される。
【0076】
また、前記診断ストリップは、前記検出膜に順次に連結される形態で前記支持体部に付着して、前記検出膜を経た残存検体が吸収される吸収パッドをさらに含んでいてもよい。
【0077】
様々な標的物質に適用可能な広範囲な体外外診断キット内の診断ストリップに検体内の同一標的物質と特異的に結合する2個以上の検出ライン(DNAプローブ)を設けて、低濃度検体を用いて体外診断を行っても、検体内標的物質の定量化が高い信頼度を備えて行われうる。
【0078】
体外診断キット内の診断ストリップに、検体内の同一標的物質と特異的に結合する2個以上の検出ラインを設けて、正確な定量化が可能な検体の濃度範囲を低濃度から高濃度まで広範囲に適用することができる。
【0079】
本発明による体外診断キットは、姙娠診断、心血管疾患診断、炎症診断、癌診断などのような様々な診断に広範囲に適用することができる。
【0080】
実施例
以下では、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳説することとする。しかしなから、本発明による実施例は、種々の異なる形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0081】
下記の製造例、比較例、実施例及び図面における「一次免疫接合体」は、抗体-DNA結合体と抗体-蛍光結合体との組み合わせを意味し、「二次免疫接合体」又は「高感度免疫接合体」は、第1のナノ粒子免疫接合体と第2のナノ粒子免疫接合体との組み合わせを意味する。
【0082】
<材料>
以下、製造例及び実施例の免疫接合体に用いられた材料を表1に、免疫接合体に用いられたDNA配列を表2に示した。
【0083】
【0084】
【0085】
<製造例1> 抗体-DNA結合体
図2a及び
図2bは、第一抗体-DNA結合体及び第二抗体-DNA結合体の製造方法の模式図を示したものであり、第一抗体-DNA結合体と、第二抗体-DNA結合体の製造方法は、同一である。
図2a及び
図2bを参照すると、抗体-DNA結合体は、(1ステップ)NH
2-DNAでSMCC-DNAを製造、(2ステップ)抗体に-SH作用基の導入、(3ステップ)SMCC-DNAと抗体-SHの反応で抗体-DNA結合体を形成させて製造する。
【0086】
<製造例1.1> SMCC-DNAの製造
【化3】
NH
2-DNA100μl(35nmol)とスルホ-SMCC(10mg/ml)10μlを1.5mlチューブに入れて、常温で1時間反応させた。反応後、Sephadex LH20クラム精製によって反応せずに残ったスルホ-SMCCを除去して、SMCC-DNAのみを得た後に濃度を確認した。
【0087】
<製造例1.2> 抗体-SHの製造
【化4】
抗体100μl(0.5mg)と2-イミノチオランパウダー1mgをチューブに入れて、常温で1時間反応した。反応後、Sephadex LH20クラムで抗体-SHと反応した後に残ったイミノチオランを分離して、クラムを介して得られた抗体-SHの濃度を確認した。
【0088】
<製造例1.3> 抗体-DNA結合体の製造
【化5】
製造例1.1で準備したSMCC-DNA断片を投入したチューブに1XPBSを100μl入れて、vortex混合後、製造例1.2で準備した抗体-SHを1:1割合で入れた。常温で30分間反応させた後、Sephadex LH20クラムで精製して、抗体-DNA結合体を得た。
【0089】
<製造例2> ナノ粒子免疫接合体
図1は、ナノ粒子免疫接合体の製造方法の模式図を示したものであって、第1のナノ粒子免疫接合体及び第2のナノ粒子免疫接合体の製造過程は、同一であり、第2のナノ粒子が蛍光ラテックスである点でのみ相違する。
図1を参照すると、(1ステップ)ナノ粒子-DNA結合体を製造し、(2ステップ)ナノ粒子-DNA結合体に、製造例1で製造された抗体-DNA結合体を反応させて製造した。
【0090】
<製造例2.1> 第1のナノ粒子-DNA結合体の製造
【化6】
2%ナノ粒子100μlとNH
2-DNA(20nmole、50μl)をチューブに入れて、MESバッファーを200μl添加した。EDC(200mg/ml)を50μl入れて、常温で2時間反応させた。13000rpmで遠心分離した後、上層液を除去したうえで、ナノ粒子-DNA結合体をペレット状に得た。
【0091】
<製造例2.2> 第1のナノ粒子免疫接合体の製造
【化7】
製造例2.1の第1のナノ粒子-DNA結合体を1XPBS1mlに分散させて、vortexした後、製造例1で製造された第一抗体-DNA結合体(第一抗体-DNA結合体と第1のナノ粒子-DNA結合体のDNA断片は、相補的配列を持つ)を投入して、常温で30分間反応させた。
【0092】
<製造例2.3> 第2のナノ粒子免疫接合体の製造
第2のナノ粒子として蛍光ラテックスを用いたことと、DNA断片の配列及び抗体を除いては、前記製造例2.1~製造例2.2と同じく行った。
【0093】
<実施例1>一次免疫接合体
製造例1で製造された抗体-DNA結合体と、
図3のように製造された抗体-蛍光免疫接合体を1:1で混合して使用した。
【0094】
<実施例2>二次(高感度)免疫接合体
製造例2.2で製造された第1のナノ粒子免疫接合体と、製造例2.3で製造された第2のナノ粒子免疫接合体を1:1で混合して、二次(高感度)免疫接合体として使用した。
【0095】
<比較例1> ELISA(酵素免疫測定法)によるトロポニンTの検出
抗体-酵素免疫接合体を用いたELISA(酵素免疫測定法)方法により血液サンプル内のトロポニンTを検出した。
図5aに示したELISA方法と同様に行った。
【0096】
トロポニンTキャプチャー抗体(capture antibody)コーティング
1)トロポニンTキャプチャー抗体(capture antibody)をcarbonate/bicarbonateバッファー(ph9.6)を利用して、(1-10μg/mL)濃度で準備した後、PVCマイクロタイタープレートに分注した。2)プレート蓋を覆って、4℃で12時間培養した。3)コーティング溶液を除去して、200μL PBSで2回洗浄した。4)プレートを払い落として、残った洗浄溶液を除去した。5)残っている溶液は、ペーパータオルで気を付けて除去した。
【0097】
ブロッキング及びサンプル注入
1)残っているprotein-binding sitesをブロッキングするために、コーティングされたウェルプレートに200μLのブロッキングバッファー(5%non-fat dry milk/PBS)をそれぞれのウェルに入れた。2)常温で2時間インキュベーションした。3)試料サンプル#1~#7まで100μLずつウェルプレートに入れて、standards curveのためのサンプルを100μLずつウェルプレートに入れた。4)37℃で90分間インキュベーションした(未知の試料は、常にstandard curveと比較する)。5)サンプルを除去して、200μLのPBSで3回洗浄した。
【0098】
二次抗体及び検出のためのインキュベーション
1)希釈された二次抗体を100μLずつそれぞれのウェルに入れた。2)二次抗体が標的タンパク質に対してキャプチャー抗体と異なる部位に結合するか確認した。3)プレート蓋を覆って、常温で2時間インキュベーションした。4)PBSで4回洗浄過程を施した。5)ブロッキングバッファーで希釈した検出抗体を100μLずつウェルに入れた。6)プレート蓋を覆って、常温で2時間インキュベーションした。7)PBSで4回洗浄過程を施した。
【0099】
検出
検出用酵素としてホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)を用いて、検出抗体-HRP免疫結合体の吸光度を測定した。各ウェルにTMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)溶液を200μlずつ入れて、常温で30分間培養した後、停止液(2M H2SO4)を200μl入れて、450nmの吸光度を測定した。
【0100】
図5bは、上記ELISA方法により人の血液サンプル内の心筋トロポニンTを検出した結果である。これを参照すると、測定された心筋トロポニンTの濃度は、高濃度領域である10ng/ml(10,000pg/ml)以上から1000ng/ml水準の検出範囲で示すことが分かる。
【0101】
<実験例1>一次免疫接合体を用いたトロポニンTの検出
実施例1で製造された一次免疫接合体を用いて、
図6aの方法によりトロポニンTを検出した。1)血液プラズマサンプル#1~#7まで、それぞれ10μlをマイクロチューブに入れた。2)一次免疫接合体溶液(一次免疫接合体及び抗体-蛍光免疫接合体の混合物)を100μl入れて、常温で10分間培養した。3)Rバッファーを60μl入れて、側方流動方式のmembrane stripに170μlを10分間展開させた。4)洗浄溶液を170μl入れて、10分間洗浄した。5)Membrane strip専用スキャナー(BMT 1D scanner)でスキャンして検出した。
【0102】
図6bは、前記一次免疫接合体を用いた側方流動方式の免疫蛍光分析で人の血液サンプル内の心筋トロポニンTを検出した結果である。これを参照すると、測定された心筋トロポニンTの濃度は、高濃度領域である90pg/mlから2400pg/mlの検出範囲で示されており、既存の抗体-酵素結合体方式のELISAに比べて、LODが10倍以上増加することを確認した。
【0103】
<実験例2>二次(高感度)免疫接合体を用いしたトロポニンTの検出
実施例2で製造された二次(高感度)免疫接合体を用いて、
図7aの方法によりトロポニンTを検出した。1)血液プラズマサンプル#1~#7まで、それぞれ10μlをマイクロチューブに入れた。2)二次免疫接合体溶液を100μl入れて、常温で10分間培養した。3)Rバッファーを60μl入れて、側方流動方式のmembrane stripに170μlを10分間展開させた。4)洗浄溶液を170μl入れて、10分間洗浄した。5)Membrane strip専用スキャナ(BMT 1D scanner)でスキャンして検出した。
【0104】
図7bは、前記二次(高感度)免疫接合体を用いた側方流動方式の免疫蛍光分析で人の血液サンプル内の心筋トロポニンTを検出した結果である。これを参照すると、測定された心筋トロポニンTの濃度は、低濃度領域である1.2pg/mlから80pg/mlの検出範囲で示されており、既存の抗体-酵素結合体方式のELISAに比べて、検出LODが100倍以上増加することを確認した。
【0105】
今まで、本発明による高感度免疫接合体、この製造方法、これを含む体外診断試薬及び体外診断キットに関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から外れない限度内では、様々な実施変形が可能であることは自明である。
【0106】
よって、本発明の範囲は、説明した実施例に限って定めてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものなどによって定めなければならない。
【0107】
すなわち、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきであり、本発明の範囲は、詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到するあらゆる変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈しなければならない。
【0108】
<序列目録の説明>
序列番号1は、本発明の一実施例による第1のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片の配列である。
序列番号2は、本発明の一実施例による第2のナノ粒子-DNA結合体に含まれたDNA断片の配列である。
序列番号3は、本発明の一実施例による第一抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片の配列である。
序列番号4は、本発明の一実施例による第二抗体-DNA結合体に含まれたDNA断片の配列である。
【配列表】