(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】生体情報取得装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20230330BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20230330BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/026 120
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2022549905
(86)(22)【出願日】2022-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2022017972
(87)【国際公開番号】W WO2022224916
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2021070722
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520477429
【氏名又は名称】合同会社画像技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100186129
【氏名又は名称】滝川 水大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅人
(72)【発明者】
【氏名】津村 徳道
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/039923(WO,A1)
【文献】特開2010-194033(JP,A)
【文献】特開2011-045480(JP,A)
【文献】特開2017-217300(JP,A)
【文献】特開2002-123822(JP,A)
【文献】特開平10-269341(JP,A)
【文献】特開平1-145785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/03
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有し、体の皮膚部分と接触するとともに、前記皮膚部分と接触した際に前記皮膚部分から受ける圧力に応じて前記皮膚部分の形状に対応する形状に変形する接触部と、
前記接触部内に特定の波長の光を照射する照明部と、
前記照明部からの光が入射している前記接触部に接触した前記皮膚部分の画像情報を取得する画像情報取得部と、を備え、
前記画像情報取得部によって取得された前記皮膚部分の画像情報に基づいて被写体の生体情報を取得する生体情報取得装置であって、
前記接触部が前記皮膚部分と接触した際に前記接触部にかかる荷重を計測するロードセルを
備え、
前記接触部は、柔軟性が異なる複数の層から形成され、
前記照明部は、前記接触部が有する複数の層のうち、前記皮膚部分と接触する層の位置から前記特定の波長の光を前記接触部内に入射する、
ことを特徴とする生体情報取得装置。
【請求項2】
前記皮膚部分の画像情報に基づいて前記被写体の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、
前記生体情報取得部は、前記皮膚部分の画像情報を皮膚中のメラニン成分を表すメラニン画像、皮膚中のヘモグロビン成分を表すヘモグロビン画像、及び皮膚の陰影を表す陰影画像の各画像に分離し、分離した各画像のうちの前記ヘモグロビン画像に基づいて前記被写体の生体情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
前記接触部は、
接触した前記皮膚部分から受ける圧力に応じて前記皮膚部分の形状に対応する形状に変形すると変形した形状を保持する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の生体情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に基づき被写体の生体情報を取得する生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、体の皮膚部分を写した画像からその被写体の生体情報を算出することができることが知られている。例えば、足裏を写した画像から被写体の脈波などを算出することができることが知られている。
【0003】
そして、上述のように足裏を撮影する際には、足裏をライトなどの照明装置で照らして撮影することになる。しかし、ライトで足裏を照らしながら撮影する場合には、ライトの光に対して足裏の皮膚が鏡面反射を起こす、いわゆる「てかり」などと称される現象が生じてしまう。そのため、この「てかり」が生じた画像に基づいてでは正確な生体情報を取得することができないことがある。
【0004】
そこで、撮影時の「てかり」の発生を抑えるため、従来にあっては、撮影時に透明な板に足を載せて、その板の側面部から板の内部に光を入射させる。板の内部に入射した光は、反射しながら板の内部を進み、その光を足裏に反射させることで足を載せた透明な板の裏側から足裏を撮影するものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のような板に足を載せて足裏を撮影する場合には、例えば、土踏まずなど特定の部位について上手く撮影することができない。このように、撮影する皮膚部分の形状によっては上手く撮影することができないことがあり、当該皮膚部分の画像に基づき生体情報を取得できないことがある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決するために行われたものであって、撮影する皮膚部分の形状に影響を受けることなく皮膚部分の画像を取得でき、取得した画像に基づき被写体の生体情報を取得することができる生体情報取得装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明性を有し、体の皮膚部分と接触するとともに、前記皮膚部分と接触した際に前記皮膚部分から受ける圧力に応じて前記皮膚部分の形状に対応する形状に変形する接触部と、前記接触部内に特定の波長の光を照射する照明部と、前記照明部からの光が入射している前記接触部に接触した前記皮膚部分の画像情報を取得する画像情報取得部と、を備え、前記画像情報取得部によって取得された前記皮膚部分の画像情報に基づいて被写体の生体情報を取得する生体情報取得装置であって、前記接触部が前記皮膚部分と接触した際に前記接触部にかかる荷重を計測するロードセルを備え、前記接触部は、柔軟性が異なる複数の層から形成され、前記照明部は、前記接触部が有する複数の層のうち、前記皮膚部分と接触する層の位置から前記特定の波長の光を前記接触部内に入射することを特徴とする。
【0009】
また、前記皮膚部分の画像情報に基づいて前記被写体の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、前記生体情報取得部は、前記皮膚部分の画像情報を皮膚中のメラニン成分を表すメラニン画像、皮膚中のヘモグロビン成分を表すヘモグロビン画像、及び皮膚の陰影を表す陰影画像の各画像に分離し、分離した各画像のうちの前記ヘモグロビン画像に基づいて前記被写体の生体情報を取得する。
【0010】
さらに前記接触部は、接触した前記皮膚部分から受ける圧力に応じて前記皮膚部分の形状に対応する形状に変形すると変形した形状を保持する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、撮影対象の形状に影響を受けることなく撮影することができ、取得した画像に基づき被写体の生体情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置の構成を示す全体図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置の構成を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【
図3】第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置のA-A断面図である。
【
図4】第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置の接触部を示す図であって、(A)は足が載った状態の接触部の側面図であり、(B)は足が載った状態の接触部の背面図である。
【
図5】第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置で被写体の生体情報を取得する際の流れを示したフロー図である。
【
図6】(A)は、第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置の接触部の裏面側を示す図であって、(B)は、第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置とは異なる生体情報取得装置の接触部の裏面側を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置の構成を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【
図8】第2の実施の形態にかかる生体情報取得装置の構成を示す全体図である。
【
図9】第2の実施の形態にかかる生体情報取得装置の構成を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は生体情報取得装置のB-B断面図である。
【
図10】第2の実施の形態にかかる生体情報取得装置の接触部を示す図であって、(A)は、前腕が載った状態の接触部の側面図であり、(B)は前腕が載った状態の接触部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置1について
図1~
図7を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施の形態においての方向(前後方向及び左右方向)については、特に断りがない限り、被写体である足裏を撮影される人物からみた方向を基準とする。即ち、生体情報取得装置1に足を載せている状態の人から見た方向を基準として説明する。
【0014】
(生体情報取得装置の構成)
まずは、生体情報取得装置1の全体の構成について説明する。生体情報取得装置1は、
図1に示すように、本体部10、画像情報取得部20、載置部30、照明部40、及び生体情報取得部50を備えて構成されている。
【0015】
<本体部>
本体部10は、生体情報取得装置1の基部となるものである。そして、本体部10は、底板部11と柱部12とを有している。底板部11は、平面視で矩形形状に形成され、底板部11上には、画像情報取得部20であるRGBカメラが配置されている。柱部12は、直方体で形成された4つの柱12a,12b,12c,12dから構成されており、各柱12a,12b,12c,12dは、底板部11の四隅にそれぞれ配設されている。各柱12a,12b,12c,12dは、底板部11から上方側に向かって延設されており、載置部30を支持している。また、本実施の形態において底板部11及び柱部12は、ステンレスで形成されている。
【0016】
<画像情報取得部>
画像情報取得部20は、載置部30に載せられた体の皮膚部分を撮影するものである。また、本実施の形態では、第1のRGBカメラ20a及び第2のRGBカメラ20bの2台のカメラで画像情報取得部20が構成されている。そして、2台のRGBカメラ20a,20bは、底板部11の中央付近に並ぶようにして配置されている。なお、本実施の形態では、載置部30に被写体の両足Fを載せた場合を例として説明するものであって、体の皮膚部分として足裏S部分を撮影する場合を例として以下説明する。
【0017】
そして、第1のRGBカメラ20aは、左足LFの足裏Sを撮影するものであり、第2のRGBカメラ20bは、右足RFの足裏Sを撮影するものである(
図1参照)。ここでRGBカメラ20(以下、単にカメラという)とは、R(赤)、G(緑)、及びB(青)の各色に対応する波長領域の光強度に感度を有する検出素子を複数備え、画像情報を取得することができるものである。
【0018】
<載置部>
載置部30は、カメラ20で足裏Sを撮影するために、その足Fを載せるためのものである。そして、載置部30は、枠部31と接触部32とから構成されている。
【0019】
枠部31は、足裏Sと接触する接触部32を支持するものであり、枠部31は、
図2(A)に示すように、平面視で矩形状に形成されている。枠部31は、接触部32を嵌合させるために接触部32の形状に対応する形状の中空部31aがその内側に形成されている。また、枠部31には、
図3に示すように、前記中空部31aに嵌合させた接触部32を支持するための支持部31bが横方向に向かって突設されている。枠部31は、底板部11及び柱部12と同じようにステンレスで形成されている。そして、枠部31は、その四隅が柱部12を構成する4本の柱12a,12b,12c,12dに支持されている(
図1及び
図2(B)参照)。
【0020】
接触部32は、載置部30に足Fを載せた際に、足裏Sなどの皮膚部分を接触させる部分である。接触部32は、枠部31と同じように平面視で矩形状であって板状に形成されている(以下、接触部32ことを接触板という)。そして、接触板32は、枠部31に形成された中空部31aに嵌合するとともに、接触板32の側部側が枠部31の支持部31bに支持されるようになっている(
図3参照)。
【0021】
また、接触板32は、
図3に示すように、足Fが接触する上層部32aと、前記上層部32aを支持する下層部32bの上下2つの層から構成されている。接触板32の上層部32aは、上述のように足裏Sと接触する部分であり、熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomers)で構成されている。そして、熱可塑性エラストマーで構成された上層部32aは、一定の柔軟性及び弾力性を有している。また、上層部32aは、透明にできており、照明部40から照射される光Lが上層部32a内を透過するようにもなっている。
【0022】
接触板32の下層部32bは、アクリル板で構成されている。下層部32bを構成するアクリル板は、一定の硬度(剛性)を有しており、接触板32(上層部32a)上に人が乗ってもその形状が変化しないようになっている。このように、下層部32bは、上層部32aとは異なり柔軟性を有しておらず、また、下層部(アクリル板)32bは、透明にできており、照明部40のから照射される光Lが下層部(アクリル板)32b内を透過するようにもなっている。即ち、接触板32の全体が透明にできており、接触板32の内部を光Lが透過するようになっている。
【0023】
また、上層部32aと下層部32bとは一体に形成されている。これにより、上層部32a上に接する足裏Sなどについて下層部32bであるアクリル板を介してみることができるようになっている。即ち、接触板32の表面に接する足裏Sについて接触板32の裏面からみることができるようになっている(
図6(A)参照)。
【0024】
<照明部>
照明部40は、接触板32内を照らすものであり、本実施の形態ではLEDランプで構成されている。照明部40は、
図1及び
図3に示すように、接触板32(上層部32a)の後方側の側面部とその発光面が面する(接する)ように設けられている。このように、照明部40から照射される光Lは、接触板32の後方側の側面部から接触板32内に入射(入光)するようになっている。そして、接触板32内部に入射された光Lは、
図4に示すように、接触板32の内部を前方側に向かって反射しながら進むようになっている。
【0025】
<生体情報取得部>
生体情報取得部50は、カメラ20で撮像した画像情報から被写体(足裏Sが撮影された人物)の生体情報を取得(算出)するためのものであってパーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンという)50で構成されている(
図1参照)。パソコン50は、様々な情報の処理や記憶を行うサーバ装置51、様々な画像を表示する表示装置としてのディスプレイ52、及び図示はしないが操作装置としてのキーボードやマウスなどを有して構成されている。
【0026】
サーバ装置51には、カメラ20やディスプレイ52が接続され、サーバ装置51にはカメラ20から画像情報が入力されるようになっている。また、サーバ装置51には、図示はしないが、カメラ20やディスプレイ52以外にも上記キーボードやプリンターなど様々な装置が接続されるようにもなっている。
【0027】
また、サーバ装置51は、図示しないが、制御部や記憶部などを有して構成されている。制御部は、カメラ20及びディスプレイ52などサーバ装置51に接続された各装置の制御やサーバ装置51の自体の制御など、生体情報取得装置1全体の動作を制御するものである。また記憶部は、様々な情報について記憶するものである。
【0028】
そして、制御部は、プロセッサーであるCPU(Central Processing Unit)や、メモリであるROM(Read Only Memory)や、RAM(Random Access Memory)などを有して構成されており、また、記憶部は、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)またはHDD(Hard Disk Drive)などを有して構成されている。
【0029】
制御部は、様々な情報の処理や情報の記憶を行うようになっている。そして、本実施の形態では、カメラ20で撮影された足裏Sの画像に基づいて、被写体の生体情報を制御部が算出し、算出した生体情報を記憶部で記憶するようになっている。
【0030】
(生体情報取得装置の動作)
次いで、生体情報取得装置1を作動させて被写体の生体情報を取得するときの生体情報取得装置1の動作について
図5を参照しつつ説明する。
【0031】
本実施の形態では、足裏Sの画像から被写体の生体情報を取得することから、まずは、足裏Sをカメラ20で撮影する(STEP10以下、単にS〇〇という)。
【0032】
そして、本実施の形態において足裏Sを撮影する際には、載置部30に両足F(または片足F)を載せるようになっている。具体的には、両足Fの足裏Sを接触板32(上層部32a)の表面に接触させるようにして足Fを載置部30に載せる(
図1参照)。
【0033】
上述のように接触板32に両足Fを載せると、接触板32には、被写体自身の全体重、または、足F部分の重さなど、両足Fにかかる重さが接触板32を押し込む圧力となって伝わることになる。上述のように、接触板32を構成する上層部32aは、柔軟性などを有した熱可塑性エラストマーで構成され、また、上層部32aは、下層部32bである硬度を有するアクリル板に支持されている。そのため、上層部32aの足裏Sと接する部分は、両足Fからの圧力に応じて下方側に沈み込むようにして足裏Sの形状に対応する形状に圧縮変形するようになっている(
図4参照)。即ち、接触板32の表面側が足裏面の凹凸に対応する形状に変形する。
【0034】
例えば、足裏Sの部分が接触する接触板32(上層部32a)を、従来のように、足Fが載ってもその形状が変形しない硬いもの(例えばガラス板など)で構成した場合には、接触板32に足Fを載せても(接触させても)、土踏まずなど足裏Sで凹んでいる部分と接触板32とは接触しないことになる(
図6(B)参照)。即ち、接触板32の表面と足裏面との間で密着しない部分ができてしまう。しかし、上述のように、接触板32(上層部32a)の表面側は、足裏面の凹凸に対応する形状に変形するので、接触板32(上層部32a)の表面と土踏まずを含む足裏面との間は、
図4及び
図6(A)に示すように、隙間なく密着することになる。なお、接触板32に足を載せる際に足裏面に透明な液体を塗ると接触板32に足裏Sが接した際に足裏Sと接触板32との隙間がさらになくなるのでより密着度が上がって好適である。
【0035】
また、接触板32に両足Fを載せると両足Fからの圧力が上層部32aを介して下層部32bにも伝わることになる。上述のように、下層部32bは、一定の硬度を有したアクリル板から構成されている。そのため、下層部32bは、
図4に示すように、上層部32aを介して両足Fからの圧力を受けてもその形状が変化することはない。即ち、接触板32の裏面側については変形しない。
【0036】
また、接触板32に足Fを載せるときには、接触板32内にLEDランプ40からの光Lが入射された状態となっている。そして、接触板32(上層部32a)の後方側の側面部側から接触板32内に入射された光Lは、接触板32内でその表面及び裏面に反射しつつ進んでいく(
図4参照)。接触板32内を進む光Lの一部は、接触板32(上層部32a)上に接している足裏Sの接地面部に乱反射する。そして、乱反射した光Lの一部が下層部32bを介して接触板32の裏側面側から放射されることで、接触板32の裏面(下層部32bであるアクリル板)には、足裏Sの接地面部の形状が浮き上がるようにして映し出される。即ち、接触板32の裏面上に、LEDランプ40の光に照らされた足裏Sが見えることになり、本実施の形態では、土踏まずを含む足裏Sの略全ての領域が接触板32の裏面側からみえるようになっている(
図6(A)参照)。そして、足Fが接触板32から離れると圧縮変形していた接触板32(上層部32a)の表面は、元の平面形状に復元するようになっている。
【0037】
上述のように、接触板32の表面側に両足Fが載せられて、接触板32の裏面側に足裏Sが映し出されると、カメラ20によって接触板32に映る足裏Sが撮影される。
【0038】
カメラ20によって足裏Sが撮影されると、その画像情報は、パソコン50の制御部内のメモリや記憶部などに記憶され、パソコン50内に読み込まれる(S20)。
【0039】
そして、制御部内に足裏Sの画像情報が読込まれると、制御部では、その画像情報におけるRGB信号からG信号を抽出する処理が行われる(S30)。なお、ここでG信号とは、緑成分画像信号のことをいい、R信号が赤成分画像信号、及びB信号が青成分画像信号を意味するものである。
【0040】
そして、上述のように、G信号を抽出したのに伴って、制御部では、不要な信号を除去する信号の平滑化処理や、特定の周波数の信号を抽出する信号のフィルタ処理や、周期的に変化する信号のピークを検出する信号のピーク検出処理など各種情報処理が行われる(S40)。
【0041】
そして、制御部は、抽出したG信号に対して各種情報処理を行い、そこから得られた情報に基づき、例えば、被写体の脈派などの生体情報を算出する他、足裏Sの画像から被写体の血流の状態などを測定するようにもなっている(S50)。そして、ディスプレイ52には、算出された脈波などの生体情報に関するデータが表示されるようになっている。
【0042】
上述のように、足裏Sの部分と接触する接触板32を、柔軟性を有する熱可塑性エラストマー及び一定の硬度を有するアクリル板の上下2層で構成し、接触板32に足Fが載った際に足裏面の凹凸に対応する形状に接触板32が圧縮変形するようにしたので、土踏まずを含む足裏Sの全ての領域と接触板32(上層部32a)の表面とを密着させることができる。これにより、土踏まずを含む足裏Sの全ての領域に対して接触板32内に入射したLEDランプ40の光Lをあてることができるので、接触板32の裏面側に足裏Sの全ての領域を映し出すことができ、足裏Sの全ての領域について鮮明な画像を取得(撮影)することができる。例えば、ガラス板など柔軟性のない材質でのみで接触板を構成した場合には、その形状が変化しないことから土踏まずなどの足裏Sで凹んでいる部分と接触板とを密着させることができない。そのため、当該部分についての鮮明な画像を取得することができず、土踏まずなどから被写体の生体情報を取得することは難しくなってしまう。しかし、上述のように接触板32を構成することで、土踏まず部分でも被写体の生体情報を算出することができる。即ち、足裏Sの形状に影響を受けることなく足裏Sの画像を取得することができ、その画像に基づいて被写体の生体情報を取得することができる。
【0043】
また、接触板32の下層部32bを一定の硬度を有するアクリル板で構成したので、柔軟性を有する上層部32aを支持することができる。これにより、接触板32に足Fのみを載せる場合だけでなく、接触板32上に人が乗るなど接触板32に大きな圧力がかかるような状態となっても足裏Sを撮影することができ、また、接触板32に足裏Sを接触させた際に足裏Sの皮膚部分に圧力をかけやすくなる。この結果、足裏Sの皮膚部分の圧力のかけ方具合を変えやすくなり、血流の変化の状態を測定しやすくもなる。
【0044】
また、上層部32aを熱可塑性エラストマーで構成したので、例えば、ゴムなどの熱硬化性エラストマーで上層部32aを構成する場合と比して、接触板32の製造コストを抑えることができる。これにより、生体情報取得装置1全体の製造コスト自体についても抑えることができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、撮影した足裏Sの画像からG信号を抽出し、そのG信号に対して、平滑化処理やフィルタ処理やピーク検出処理などの各種情報処理を行うことで脈派などを算出するようにしたがこれに限らない。例えば、撮影された足裏Sの画像を皮膚中に含まれるメラニン成分を表すメラニン画像、皮膚中に含まれるヘモグロビン画像、及び皮膚の陰影を表す陰影画像の各画像に分離し、分離したヘモグロビン画像に基づいて脈波などを算出するようにしてもよい。何故なら、上述の本実施の形態のように、接触板32に入射した光Lで足裏Sを照らす場合では、光が足裏Sに均一にあたるわけではないため、直接足裏Sに光をあてて照らした場合と比して足裏Sに明るい所と暗い所との斑(以下、光の斑という)ができやすくなる。しかし、足裏Sに光の斑ができたとしても画像を上記3つの画像に分離して、その中から陰影画像を除去することで画像に生じた光の斑の影響を抑えることができ、その画像に基づき生体情報を取得することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、本体部10を底板部11と4本の柱からなる柱部12とで構成したがこれに限らない。例えば、底板と4枚の壁板とで構成されるものであってもよい。即ち、RGBカメラ20を配置することができるものであって、載置部30や照明部40を支持できるものであれば何れのものであってもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、足を載せるための載置部30を枠部31と接触板32とから構成したがこれに限らない。例えば、載置部30を接触板32のみで構成してもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、照明部40を接触板32(上層部32a)の後方側の側面部側に設けたがこれに限らない。例えば、接触板32(上層部32a)の前方側の側面部側や、接触板32(上層部32a)の前後及び左右側面部側に照明部40を設けてもよい。即ち、接触板32内に光Lを入射させることができれば何れの場所であってもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、2台のカメラ20a,20bを配置して、左足LFの足裏Sを第1のRGBカメラ20aで撮影し、右足RFの足裏Sを第2のRGBカメラ20bで撮影するようにしたがこれに限らない。例えば、1台のカメラで右足RF及び左足LFの足裏Sのそれぞれを撮影するようにしてもよい。即ち、足裏Sを撮影できるものであれば何れのものであってもよく、カメラの台数や配置する位置について自由に設定することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、上層部32aを熱可塑性エラストマーで構成したがこれに限らない。例えば、熱硬化性エラストマーで上層部32aを構成し、または、ポリマーネットワークゲルや、ポリアクリル酸塩や、水などを透明な袋に入れることで上層部32aを構成してもよい。即ち、透明性を有し、足裏Sからの圧力に応じて足裏Sの凹凸に対応する形状に圧縮変形するものであれば何れのものであってもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、柔軟性及び弾力性を有した熱可塑性エラストマーで上層部32aを構成し、足Fを接触板32(上層部32a)に載せると足裏の形状に応じて圧縮変形し、接触板32から足が離れると接触板32の表面は元の平面形状に復元するように構成したがこれに限らない。例えば、足裏Sに対応する形状に圧縮変形した接触板32(上層部32a)から足Fが離れても接触板32の表面が元の平面形状に復元しなくともよい。即ち、一度圧縮変形するとその形状が持続されるようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、足裏Sと接触する接触部32は板状で構成したがこれに限らない。例えば、接触部を球状で構成してもよい。即ち、足裏Sと接触することができる形状ならば何れの形状であってもよい。
【0053】
また、本実施の形態では下層部32bをアクリル板で構成したがこれに限らない。例えば、透明なガラス板で下層部32bを構成してもよい。即ち、一定の硬度を有し、接触板32上に足Fが載ったときに足F(上層部32a)を支持するできるものであれば何れのものであってもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、接触板32を熱可塑性エラストマー及びアクリル板の2層で構成したがこれに限らない。例えば、上層を熱可塑性エラストマーで構成し、中間層をガラス板で構成し、下層をアクリル板で構成するというように3層で接触板32を構成してもよい。即ち、接触板32の表面が足裏Sに対応する形状に変形するものであれば接触板32を何層で構成してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、可視光線を照射するLEDランプで照明部40を構成したがこれに限らない。例えば、紫外線を照射する紫外線ランプや赤外線を照射する赤外線ランプなど可視光線とは異なる波長の光を照射するランプで照明部40を構成してもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、RGBカメラ20で足裏Sを撮影するように構成したがこれに限らない。例えば、赤外線カメラなどで足裏Sを撮影するようにしてもよい。即ち、接触板32に載せられた足裏Sの画像を取得することができれば何れのものであってもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、生体情報として足裏Sの画像に基づき脈波を算出するようにしたがこれに限らない。例えば、近赤外線領域においてのオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収波長の違いを利用して、血液中の酸素飽和度を算出するようにしてもよい。即ち、被写体の生体情報に関するものであったら何れのものであってもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、接触板32に足裏Sを接触させ、その足裏Sの画像に基づいて被写体の生体情報を算出するようにしたがこれに限らない。例えば、額や胸の皮膚部分の画像に基づき被写体の生体情報を算出するようにしてもよい。即ち、体の皮膚部分であれば何れの部分でもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、皮膚部分として人の足裏Sから被写体である人の生体情報を取得するように構成したがこれに限らない。例えば、チンパンジーやマウスなど人以外の動物の皮膚部分からその動物の生体情報を取得するようにしてもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、床などに生体情報取得装置1を置き、載置部30に足Fを載せることで足裏Sを接触板32に接触させるようにしたがこれに限らない。例えば、生体情報取得装置1を手に持った状態で額や胸の皮膚部分を接触板32に接触させて被写体の生体情報を算出するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、枠部31の四隅について柱部12を構成する4本の柱12a,12b,12c,12dで直接支持するように構成したがこれに限らない。例えば、
図7に示すように、柱12a,12b,12c,12dと枠部31との間に荷重を電気信号に変化するロードセル(荷重変換器)60をそれぞれ設けてもよい。このように、枠部31の下にロードセル60設けることで、載置部30(接触板32)に足Fが載せられた際に、接触板32が足Fから受ける荷重(圧力)を計測することができる。これにより、例えば、足裏Sにおける血流の状態を計測する際に、足裏Sに加わる圧力を算出しながら血流状態を計測することができる。なお、接触板32に接する足Fからの圧力を計測することができることができれば何れの場所にロードセル60を設けてもよい。
【0062】
[第2の実施の形態]
次いで、本発明の第2の実施の形態について
図8~
図10を参照しつつ説明する。ただし、以下に説明する第2の実施の形態については、既に説明した第1の実施の形態と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成については同一の符号を付してその説明は省略するものとする。
【0063】
(生体情報取得装置の構成)
上述の第1の実施の形態にかかる生体情報取得装置1と同じように、第2の実施の形態にかかる生体情報取得装置1Aは、
図8及び
図9に示すように、本体部10、画像情報取得部20、載置部30、照明部40及び生体情報取得部50を備えて構成されている。しかしながら、生体情報取得装置1Aの載置部30を構成する接触板33は、
図9(B)に示すように、上述の生体情報取得装置1とは異なり熱可塑性エラストマーのみで構成されている。即ち、第2の実施の形態の接触板33は熱可塑性エラストマーのみの1層で構成されている。
【0064】
(生体情報取得装置の動作)
次いで、生体情報取得装置1Aを作動させて被写体の生体情報を取得するとき生体情報取得装置1Aの動作について説明する
【0065】
生体情報取得装置1Aにあっても、皮膚部分をカメラ20で撮影するため(
図5のS10)、撮影する体の皮膚部分を接触板33の表面に接触させる。なお、第2の実施の形態では、
図8に示すように、腕(前腕)Aの皮膚部分を接触板33に接触させる場合を例として説明する。
【0066】
接触板33の表面に前腕A部分を接触させると、接触板33には、例えば被写体の体重など前腕Aにかかる重さが接触板33を押し込む圧力となって伝わることになる。上述のように、接触板33は、柔軟性を有した熱可塑性エラストマー1層のみで構成されている。そのため、前腕Aからの圧力を受けると接触板33は、
図10に示すように、前腕Aと接する接触板33の表面が前腕Aの皮膚部分に沿うようにして湾曲する。即ち、接触板33は、前腕Aの皮膚部分と接する接触板33の表面側が前腕Aの曲面に対応する形状に変形するようになっている。
【0067】
そして、接触板33の裏面側には、接触板33内に入射された光Lによって接触板33の表面と接触する前腕Aの皮膚部分が浮き上がるようにして映し出される。当該部分をカメラ20で撮影し、撮影された画像情報について各種情報処理を行うことによって被写体の生体情報が算出されることになる(
図5のS20~50)。
【0068】
上述のように、接触板33について柔軟性を有する熱可塑性エラストマーのみで構成し、前腕Aからの圧力に応じて、その表面を含む接触板33の全体が前腕Aの曲面に沿うようにして曲がるので、前腕Aの広い領域の皮膚部分を接触板33の表面に密着させることができる。これにより、前腕Aの広い領域の皮膚部分をカメラ20で撮影することができ、その前腕Aの皮膚部分から被写体の生体情報を取得することができる。例えば、柔軟性のないガラス板などで接触板33を構成した場合には、前腕Aの皮膚部分の曲面に合わせてその形状を変形させることができない。そのため、ガラス板では、接触板33に接触させることができる前腕Aの皮膚部分の領域が限られてしまう(狭くなってしまう)。しかし、上述のように接触板33を構成することで、広い領域で前腕Aの皮膚部分を接触板33の表面に密着させることができ、前腕Aの皮膚部分の画像から被写体の生体情報を取得することができる。
【0069】
また、接触板33を熱可塑性エラストマーの1層のみで構成したので、例えば、接触板33をガラス板で構成した場合や、接触板33を複数の物質から複数の層で構成した場合よりも接触板33自体を軽量化することができるとともに、接触板33製造コストも抑えることもできる。これにより、生体情報取得装置1Aの全体について軽量化することができるので、例えば、生体情報取得装置1Aを持ち上げた状態で接触板33に皮膚部分を接触させるときの肉体的な負担の軽減も図ることができ、また、生体情報取得装置1Aの製造コストも抑えることもできる。
【0070】
なお、本実施の形態では、接触板33を熱可塑性エラストマーで構成したがこれに限らない。上述の第1の実施の形態と同様に、例えば、熱硬化性エラストマーで接触板33を構成し、または、ポリマーネットワークゲルや、ポリアクリル酸塩や、水などを透明な袋に入れることで接触板33を構成してもよい。即ち、透明性を有し、接触板33に前腕Aが接触したときに前腕Aからの圧力に応じて対応する形状に変形するものであれば何れのものであってもよい。
【0071】
また、第2の実施の形態にかかる生体情報取得装置1Aにあっても第1の実施の形態と同様に、例えば、柱12a,12b,12c,12dと枠部31との間に荷重を電気信号に変化するロードセル(荷重変換器)60をそれぞれ設けてもよい
【0072】
本発明を上述の実施の形態で説明したがこれに限定されるものではない。本発明の目的を達成し得る範囲内において、変形、変更、及び各構成要件の組み合わせの変更などを行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0073】
S 足裏(皮膚部分)
A 前腕(皮膚部分)
1,1A 生体情報取得装置
20 RGBカメラ(画像情報取得部)
32,33 接触部
40 LEDランプ(照明部)