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特許72533015-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物及び食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物及び食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4015 20060101AFI20230330BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230330BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230330BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61P43/00
A23L33/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023011026
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300022526
【氏名又は名称】TOWA CORPORATION 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 顕
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6537689(JP,B1)
【文献】特許第6578046(JP,B1)
【文献】特許第6962630(JP,B1)
【文献】特許第7134541(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物。
【請求項2】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる5-アミノレブリン酸産生促進用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinate Acid:ALA)の産生促進用の医薬組成物及び食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る医薬組成物及び食品組成物の有効成分たる5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン(5-Acetyl-1-benzylpyrrolidine-2-one)は、ピロリジンの5位に位置する炭素にアセチル基がついており、1位に位置する窒素にベンジル基がついており、2位に位置する炭素に酸素の二重結合がついている化合物である。
【0003】
この5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンについては、下記非特許文献1に合成化合物の一例として示唆されているが、存在が示唆されているにすぎず、具体的な属性については何らの開示も示唆もなされていない。
【0004】
また、下記特許文献1乃至4に示すように、本発明者は、既に5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンのPDE5阻害作用、エストラジオール産生促進作用、筋肥大促進作用及びキサンチンオキシダーゼ阻害作用を見出しているが、5-アミノレブリン酸産生促進作用については見出していなかった。
【0005】
なお、下記非特許文献2に示すように、5-アミノレブリン酸(ALA)の産生促進は、その合成酵素のアイソザイムであるALAS1遺伝子に起因することが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】DESKUS、外2名、「SYNTHESIS OF 5S-(1-OXOALKYL AND ARYL)-2-PYRROLIDINONE DERIVATIVES」、SYNTHETIC COMMUNICATIONS、アメリカ合衆国、Marcel Dekker,Inc.、1998年5月、第28巻、第9号、p.1649-1659
【文献】Judith A. Simcox、外11名、「Dietary Iron Controls Circadian Hepatic Glucose Metabolism Through Heme Synthesis」、Diabetes、アメリカ合衆国、American Diabetes Association、2015年4月、第64号、p.1108-1119
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6537689号公報
【文献】特許第6578046号公報
【文献】特許第6962630号公報
【文献】特許第7134541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンが5-アミノレブリン酸を産生促進する作用を有していることを開示又は示唆する文献はない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究の結果、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンがALAS1遺伝子の発現を亢進する作用を有し、ひいては5-アミノレブリン酸を産生促進する作用を有していることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物または5-アミノレブリン酸産生促進用食品組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物及び食品組成物は、ALAS1遺伝子の発現を亢進することによって5-アミノレブリン酸の産生を促進し、これにより、ミトコンドリア機能活性向上/抗老化、抗疲労、睡眠改善、運動効率向上、メンタルケア、血糖値上昇抑制、肌の保湿力・弾力向上等、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の改善、新型コロナウイルス(COVID-19)に対する感染抑制効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有する5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物に関する。本発明に係る医薬組成物は、ALAS1遺伝子の発現亢進に基づく5-アミノレブリン酸産生促進により、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の予防及び/又は治療に貢献する。
【0013】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンは、ピロリジンの5位に位置する炭素にアセチル基がついており、1位に位置する窒素にベンジル基がついており、2位に位置する炭素に酸素の二重結合がついている化合物であり、構造式は下記化1のとおりである。また、分子式はC1315NOである。
【0014】
【化1】
【0015】
5-アミノレブリン酸は体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸であり、ヘムと呼ばれるエネルギー生産に関与するタンパク質の原料となる重要な物質である。この5-アミノレブリン酸は加齢に伴い生産性が低下することが知られており、5-アミノレブリン酸の不足は最終的にヘムの枯渇につながる。
【0016】
本発明に係る医薬組成物は、この5-アミノレブリン酸の合成酵素たるALAS1遺伝子の発現を亢進することによって5-アミノレブリン酸の産生を促進して、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の予防及び/又は治療に貢献する。
【0017】
本発明に係る医薬組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができ、各種の形態とすることができる。これら医薬品又は医薬部外品は、例えば、散剤、丸剤、錠剤(例えば、コーティング錠、糖衣錠、チュワブル錠等)、カプセル剤(例えば、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤等)、顆粒剤、内服液剤(例えば、乳濁剤、懸濁剤、シロップ等)等の経口投与に適した剤形とすることができる。
【0018】
その他、例えば、坐剤等の直腸内投与に適した剤形、例えば、注射剤、輸液等の血管内投与、筋肉内投与、皮下又は皮肉投与等に適した剤形、例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤、又は液剤(点眼液、洗眼液等を含む。)等の局部的又は経皮的投与に適した剤形、すなわち非経口的投与に適した剤形とすることもできるが、好ましくは経口投与である。
【0019】
本発明の医薬組成物を錠剤、顆粒剤,カプセル剤、チュワブル錠の形態で用いる場合には、打錠加工助剤、顆粒加工助剤、カプセル加工助剤等をはじめとして既知の担体が用いられ得る。
【0020】
打錠加工助剤としては、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム、おから等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、粉末油脂類、グリセリン、脂肪酸エステル等の油脂類、又はチュワブル錠に使用する各種甘味料、各種酸味料、各種香料等の味付け素材、コーティング素材としてのシェラック、トウモロコシタンパク、酵母細胞壁、デンプン、還元麦芽糖水飴、シュガーレス糖衣、マルチトール、グリセリン、ソルビトール、HPMC、HPC等が例示される。ただし、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。
【0021】
また、顆粒加工助剤としても、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類等が例示される。
【0022】
また、カプセル加工助剤としても、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、ハードカプセルタイプのカプセルを調製するための、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類等が、ソフトカプセルタイプのカプセルを調製するための、食品油脂、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル等の内容物粘度調整剤等が、それぞれ例示される。
【0023】
錠剤は、通常、打錠機を使用して調製され得るが、錠剤に味付け素材をブレンドしてチュワブル錠にしたり、錠剤表面を、自動コーティング機、噴霧顆粒機、又は手掛けパンを用いてコーティングしたりしてもよい。顆粒剤の成形には、噴霧顆粒機タイプ、練りだし(押し出し)タイプ、又は高速撹拌顆粒機タイプの各種顆粒機が使用され得る。カプセル剤の調製には、カプセル助剤を混合してカプセル充填機(ハードタイプ及びソフトタイプ)が使用され得る。
【0024】
また、本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる5-アミノレブリン酸産生促進用食品組成物に関する。本発明に係る食品組成物は、ALAS1遺伝子発現亢進に基づく5-アミノレブリン酸産生促進によって、ミトコンドリア機能活性向上/抗老化、抗疲労、睡眠改善、運動効率向上、メンタルケア、血糖値上昇抑制、肌の保湿力・弾力向上等、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の改善、新型コロナウイルス(COVID-19)に対する感染抑制効果が期待できる。
【0025】
本発明の5-アミノレブリン酸産生促進用食品組成物は、食品、飲料又は動物用飼料として、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、美容食品又は栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。これら食品、飲料及び動物用飼料は、例えば、アイスクリーム、ゼリー、あめ、チョコレート、及びチューインガム等の既知の食品形態、お茶及びジュース等の飲料水としての形態であってもよい。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤又は錠剤等の形態であってもよい。
【0026】
本発明に係る5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物及び5-アミノレブリン酸産生促進用食品組成物の摂取量は、特に制限されないが、使用者若しくは患者等の摂取者又は摂取動物の年齢、体重又は症状等や剤形に応じて適宜選択することができる。また、摂取期間は、摂取者又は摂取動物の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【実施例
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
〈DNAマイクロアレイによるALAS1遺伝子の発現量の測定〉
本試験では、ヒト肝臓由来細胞 Hep G2を5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン存在下で培養した後、DNAマイクロアレイ解析を実施し、ALAS1遺伝子発現亢進作用があるか否かを確認した。
【0029】
〈肝臓由来細胞〉
ヒト肝癌株 Hep G2
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所より入手。
【0030】
〈検体の調製〉
1)5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン10 mg にDMSO を100 μL 加え溶解し,DMSO で被験物質の濃度が50 mMとなるよう段階希釈した。
2)さらに細胞培養用培地で被験物質の濃度が50 μMとなるよう希釈した。
【0031】
〈方法〉
〈Hep G2細胞の調製〉
1)Hep G2 細胞を2×105 cell/mL の細胞濃度で6 cm dish に5 mL ずつ播種した。
2)播種24 時間後に接着を確認し、細胞培養用培地を除去後、新たに被験物質(最終濃度50 μM)含有の細胞培養用培地を各5 mL ずつ添加した。
3)添加後24 時間培養し、細胞培養用培地を抜いて接着細胞をPBS で洗浄後、得られた細胞を下述のRNA 抽出→DNA マイクロアレイ解析に用いた。
【0032】
〈RNA 抽出〉
1)上述の細胞調製で得られた細胞から、RNAiso plus を用いてRNA を抽出し、RNeasy MinElute Cleanup Kitで精製した。
【0033】
〈DNA マイクロアレイ解析〉
1)RNA サンプルをLow Input Quick Amp Labeling Kit (Agilent) を用いてcDNA の合成、Cy3 ラベル化cRNA 合成と精製を行った。
2)Gene Expression Hybridization Kit (Agilent) を用い、それぞれのラベル化cRNA をフラグメンテーションし,Whole Human Genome Microarray Ver2.0 (Agilent) にアプライ、65℃で17 時間ハイブリダイゼーションした。
3)Gene Expression Wash Buffer 1 及び2 (Agilent) を用い、アレイスライドを洗浄
した。
4)マイクロアレイスキャナー (GenePix 4000B,Molecular Devices) でスキャンしたアレイ画像を、アレイ解析ソフトウェアGenePix Pro (Molecular Devices) で数値化した。蛍光強度値をノーマライズし、コントロールに対して被験物質添加群のRatioを算出した。
【0034】
〈結果〉
ALAS1遺伝子はヒト肝臓由来細胞株(HepG2)において5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン共存下では発現が2.86倍亢進した。よって、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンはALAS1遺伝子発現を亢進し、ひいては5-アミノレブリン酸の産生を促進すると考えられる。
【要約】
【課題】 5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物及び5-アミノレブリン酸産生促進用食品組成物の提供。
【解決手段】 本発明は5-アセチル-1ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなる5-アミノレブリン酸産生促進用医薬組成物及び5-アミノレブリン酸産生促進用食品組成物に関する。
【選択図】 なし