(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】巻上電動機の過負荷判定方法および巻上機の製造方法
(51)【国際特許分類】
B66D 1/58 20060101AFI20230330BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20230330BHJP
H02P 29/02 20160101ALI20230330BHJP
【FI】
B66D1/58 E
G01R31/34 E
H02P29/02
(21)【出願番号】P 2020556202
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2019044967
(87)【国際公開番号】W WO2020101033
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2018215998
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井戸 勇作
(72)【発明者】
【氏名】山野 正
(72)【発明者】
【氏名】一色 択真
(72)【発明者】
【氏名】戸部 愉
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特許第2593270(JP,B2)
【文献】特開昭51-033451(JP,A)
【文献】特開平05-229785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/58
H02P 29/02
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上電動機の過負荷を判定する過負荷判定方法であって、
基準とする巻上電動機に諸負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定するAステップと、
その測定値に基づいて、入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷判定閾値曲線を導出するBステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更するか否かを決定するCステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更しない場合には、前記基準過負荷判定閾値曲線に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定し、前記基準過負荷判定閾値曲線を変更する場合には、前記基準関数の切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線に基づき前記対象とする巻上電動機の過負荷を判定するDステップと、
を含むことを特徴とする巻上電動機の過負荷判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の巻上電動機の過負荷判定方法において、
前記Cステップで、前記基準過負荷判定閾値曲線を変更する場合には、第一負荷曲線と第二負荷曲線の各前記入力電圧における電流値の差に基づき、前記基準関数の係数と切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線に基づき前記対象とする巻上電動機の過負荷を判定すると共に、
前記第一負荷曲線は、前記Aステップで測定した前記基準とする巻上電動機の巻上動作を保証する下限負荷に設定する第一の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出され、
前記第二負荷曲線は、前記Aステップで測定した前記基準とする巻上電動機の巻上停止を保証する下限負荷に設定する第二の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出される、
ことを特徴とする巻上電動機の過負荷判定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の巻上電動機の過負荷判定方法において、
前記過負荷を判定する入力電圧領域を低電圧側入力電圧領域と、前記低電圧側入力電圧領域より高電圧の高電圧側入力電圧領域に分け、
前記低電圧側入力電圧領域では、前記Aステップ、前記Bステップ、前記Cステップ及び前記Dステップを含む方法により過負荷を判定し、
前記高電圧側入力電圧領域では、
前記Aステップと、
前記電流の測定値を基に、前記基準過負荷判定閾値曲線の代わりに、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷閾値直線を導出するB2ステップと、
前記基準過負荷判定閾値直線を変更するか否かを決定するC2ステップと、
前記基準過負荷判定閾値直線を変更しない場合には、前記基準過負荷判定閾値直線に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定し、前記基準過負荷判定閾値直線を変更する場合には、前記基準過負荷判定閾値直線を補正した補正過負荷判定閾値直線に基づき前記対象とする巻上電動機の過負荷を判定するD2ステップと、
を含むことを特徴とする巻上電動機の過負荷判定方法。
【請求項4】
巻上電動機およびマイクロコンピュータを備え、前記マイクロコンピュータによって前記巻上電動機の過負荷判定を行う機能を備える巻上機の製造方法において、
基準とする巻上電動機に諸負荷をかけた状態で、入力電圧と電流の関係を予め測定した測定値に基づいて入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した
基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能を、マイクロコンピュータに実装する実装ステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更するか否かを決定するCステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更する場合には、前記基準過負荷判定閾値曲線を、前記基準関数の切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線へと変更して前記マイクロコンピュータに実装する変更ステップと、
を含むことを特徴とする巻上機の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の巻上機の製造方法において、
前記変更ステップにおける前記補正過負荷判定閾値曲線は、第一負荷曲線と第二負荷曲線の各前記入力電圧における電流値の差に基づき、前記基準関数の係数と切片を補正したものであり、
前記第一負荷曲線は、前記基準とする巻上電動機に諸負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定すると共に前記基準とする巻上電動機の巻上動作を保証する下限負荷に設定する第一の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出され、
前記第二負荷曲線は、前記基準とする巻上電動機に諸負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定すると共に前記基準とする巻上電動機の巻上停止を保証する下限負荷に設定する第二の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出される、
ことを特徴とする巻上機の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の巻上機の製造方法において、
前記実装ステップは、低電圧側実装ステップと、高電圧側実装ステップとを有し、
前記低電圧側実装ステップでは、前記基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能を、マイクロコンピュータに実装し、
前記高電圧側実装ステップでは、前記低電圧側実装ステップよりも前記過負荷を判定する入力電圧領域が高電圧側において、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準過負荷閾値直線であって過負荷判定のための基準閾値としての前記基準過負荷閾値直線を導出する機能を、前記前記基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能に代えて、前記マイクロコンピュータに実装すると共に、
前記変更ステップは、低電圧側変更ステップと、高電圧側変更ステップとを有し、
前記低電圧側変更ステップでは、前記基準過負荷判定閾値曲線を、前記補正過負荷判定閾値曲線へと変更して前記マイクロコンピュータに実装し、
前記高電圧側変更ステップでは、前記低電圧側変更ステップよりも前記過負荷を判定する入力電圧領域が高電圧側において、前記基準過負荷判定閾値曲線を、前記基準過負荷判定閾値直線を補正した補正過負荷判定閾値直線へと変更して前記マイクロコンピュータに実装する、
ことを特徴とする巻上機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻上電動機の過負荷判定方法および巻上機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻上機には、過負荷による事故の発生や、モータ(巻上電動機)の損傷等を防止するための安全装置であるオーバーロードリミッタ(Over Load Limiter)が備えられている。OLLには所定の過負荷でクラッチがスリップすることで巻上げを停止させる機械式OLLや、モータ電流の値から過負荷を検出し電気的に巻上げを停止させる電子式OLLなどが存在する。機械式OLLと電子式OLLの両方が備えられた巻上機もあり、そのような巻上機では、通常、電子式OLLがまず作動し、機械式OLLがその補完(バックアップ)をするようになっている(定格荷重と機械式OLL設定値の間に電子式OLLの閾値が設定されている)。
【0003】
電子式OLLには、たとえば定格荷重(W)の1.1倍までは確実に巻上下動作を行わせ、定格荷重の1.25倍では確実に巻上動作を停止させることが求められる。そのため、電子式OLLの作動の要否を判定するためのモータ電流値に基づく過負荷の検出は重要であり、巻上機の出荷前には、巻上動作を停止させる過負荷閾値を初期設定するための出荷前検査が行なわれる。その際、巻上機の個体差に起因して過負荷閾値の設定の調整が必要になることがある。
【0004】
また、巻上機を貸与されたり購入した客先自身が、初期設定されている過負荷閾値をより安全方向に変更したい場合や巻上機の設置場所における電源事情(配電に伴う電圧降下など)により過負荷閾値を変更したい場合もある。
【0005】
従来、巻上電動機の過負荷検出については例えば特許文献1に開示される発明がある。この発明は、巻上電動機(モーター)の電源電圧-入力電力特性を直線で近似して過負荷を検出するものであり、過負荷をある程度の精度で簡易に検出できる点で大変優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、初期設定を特許文献1に記載の発明よりも実際の過負荷(閾値)に近似させることにより過負荷の判定精度(検出精度)をより良くしたい要請がある。また、過負荷閾値を変更しても引き続き判定精度を良くしたい。
【0008】
そこで、本発明は、判定精度の良い過負荷判定が可能で、過負荷閾値を変更しても引き続き判定精度の良い巻上電動機の過負荷判定方法および巻上機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点によると、巻上電動機の過負荷を判定する過負荷判定方法は、
基準とする巻上電動機に基準となる過負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定するAステップと、
その測定値に基づいて、入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷判定閾値曲線を導出するBステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更するか否かを決定するCステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更しない場合には、前記基準過負荷判定閾値曲線に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定し、前記基準過負荷判定閾値曲線を変更する場合には、前記基準関数の切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線に基づき前記対象とする巻上電動機の過負荷を判定するDステップと、
を含むことを特徴とする。
【0010】
ここで本発明の巻上電動機の過負荷判定方法においては、
前記Cステップで、前記基準過負荷判定閾値曲線を変更する場合には、第一負荷曲線と第二負荷曲線の各前記入力電圧における電流値の差に基づき、前記基準関数の係数と切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線に基づき前記対象とする巻上電動機の過負荷を判定すると共に、
前記第一負荷曲線は、前記Aステップで測定した前記基準とする巻上電動機の巻上動作を保証する下限負荷に設定する第一の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出され、
前記第二負荷曲線は、前記Aステップで測定した前記基準とする巻上電動機の巻上停止を保証する下限負荷に設定する第二の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出される、
ことが好ましい。
【0011】
また本発明の巻上電動機の過負荷判定方法においては、
前記過負荷を判定する入力電圧領域を低電圧側入力電圧領域と、前記低電圧側入力電圧領域より高電圧の高電圧側入力電圧領域に分け、
前記低電圧側入力電圧領域では、前記Aステップ、前記Bステップ、前記Cステップ及び前記Dステップを含む方法により過負荷を判定し、
前記高電圧側入力電圧領域では、
前記Aステップと、
前記電流の測定値を基に、前記基準過負荷判定閾値曲線の代わりに、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷閾値直線を導出するB2ステップと、
前記基準過負荷判定閾値直線を変更するか否かを決定するC2ステップと、
前記基準過負荷判定閾値直線を変更しない場合には、前記基準過負荷判定閾値直線に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定し、前記基準過負荷判定閾値直線を変更する場合には、前記基準過負荷判定閾値直線を補正した補正過負荷判定閾値直線に基づき前記対象とする巻上電動機の過負荷を判定するD2ステップと、
を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の第1の観点によると、巻上電動機およびマイクロコンピュータを備え、前記マイクロコンピュータによって前記巻上電動機の過負荷判定を行う機能を備える巻上機の製造方法は、
基準とする巻上電動機に諸負荷をかけた状態で、入力電圧と電流の関係を予め測定した測定値に基づいて入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準過負荷判定閾値曲線であって、過負荷判定のための基準閾値としての前記基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能を、マイクロコンピュータに実装する実装ステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更するか否かを決定するCステップと、
前記基準過負荷判定閾値曲線を変更する場合には、前記基準過負荷判定閾値曲線を、前記基準関数の切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線へと変更して前記マイクロコンピュータに実装する変更ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0013】
ここで本発明の巻上機の製造方法においては、
前記変更ステップにおける前記補正過負荷判定閾値曲線は、第一負荷曲線と第二負荷曲線の各前記入力電圧における電流値の差に基づき、前記基準関数の係数と切片を補正したものであり、
前記第一負荷曲線は、前記基準とする巻上電動機に諸負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定すると共に前記基準とする巻上電動機の巻上動作を保証する下限負荷に設定する第一の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出され、
前記第二負荷曲線は、前記基準とする巻上電動機に諸負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定すると共に前記基準とする巻上電動機の巻上停止を保証する下限負荷に設定する第二の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出される、
ことが好ましい。
【0014】
また本発明の巻上機の製造方法においては、
前記実装ステップは、低電圧側実装ステップと、高電圧側実装ステップとを有し、
前記低電圧側実装ステップでは、前記基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能を、マイクロコンピュータに実装し、
前記高電圧側実装ステップでは、前記低電圧側実装ステップよりも前記過負荷を判定する入力電圧領域が高電圧側において、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準過負荷閾値直線であって過負荷判定のための基準閾値としての前記基準過負荷閾値直線を導出する機能を、前記前記基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能に代えて、前記マイクロコンピュータに実装すると共に、
前記変更ステップは、低電圧側変更ステップと、高電圧側変更ステップとを有し、
前記低電圧側変更ステップでは、前記基準過負荷判定閾値曲線を、前記補正過負荷判定閾値曲線へと変更して前記マイクロコンピュータに実装し、
前記高電圧側変更ステップでは、前記低電圧側変更ステップよりも前記過負荷を判定する入力電圧領域が高電圧側において、前記基準過負荷判定閾値曲線を、前記基準過負荷判定閾値直線を補正した補正過負荷判定閾値直線へと変更して前記マイクロコンピュータに実装する、
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の巻上電動機の過負荷判定方法および巻上機の製造方法によれば、精度の良い過負荷判定が可能である。そして、過負荷閾値を変更する事情が生じた際にも、引き続き精度の良い巻上電動機の過負荷判定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、巻上電動機の過負荷判定装置(巻上機)のハードウエア構成を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、巻上電動機の過負荷判定装置の機能ブロックを示す図である。
【
図3】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、諸負荷における基準過負荷判定閾値曲線を示す図である。
【
図4】実施形態1に係る過負荷判定方法の処理フローを説明するための図である。
【
図5】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準過負荷判定閾値曲線の導出についての説明図である。
【
図6】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準過負荷判定閾値曲線を導出するフローを説明する図である。
【
図7】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準過負荷判定閾値曲線の変更に関する説明図である。
【
図8】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準過負荷判定閾値曲線の変更に関する処理フローを説明する図である。
【
図9】実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、補正過負荷判定閾値曲線に関する説明図である。
【
図10】実施形態2に係る過負荷判定方法を説明するための図で、巻上電動機の過負荷判定装置の機能ブロックを示す図である。
【
図11】実施形態2に係る過負荷判定方法の処理フローを説明するための図である。
【
図12】実施形態2に係る過負荷判定方法を説明するための図である。
【
図13】実施形態3に係る過負荷判定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の巻上電動機の過負荷判定方法および巻上機の製造方法について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の構造、外観等を厳密に反映したものではない。
【0018】
[実施形態1]
図1~
図9は実施形態1に係る巻上電動機22の過負荷判定方法を説明するための図である。
【0019】
まず、巻上機21全体について説明する。
図1は、実施形態1に係る過負荷判定方法に用いる巻上電動機22の過負荷判定装置24(巻上機21)のハードウエア構成を示す図である。なお巻上電動機22とは巻上機21に組み上げられた状態におけるモータを意味する。
ここで、「過負荷」とは、巻上電動機22にとって許容以上の負荷をいう。どの負荷を過負荷とするかは、必ずしも一義的に決まる訳ではなく、巻上電動機22(巻上機21)の製造者やユーザーが安全性や使用性等を総合的に判断して決定する。そのため、本明細書では、「負荷〇〇%」を、そのまま「負荷〇〇%」という場合もあれば「過負荷〇〇%」という場合もある。なお「負荷」とは、巻上電動機22のシャフト(軸)を回す力または軸の回転を止めようとする力をいい、主として荷重である。以下たとえば、定格荷重(W)を負荷100%、定格荷重(W)の1.1倍を負荷110%ということとする。
【0020】
巻上機21は電気チェーンブロックである。巻上機21は巻上電動機(モータ)22を備え、減速機構を介して巻上電動機22に繋がれたロードシーブを軸回転させることでチェーンを巻き取りつり荷等の負荷51を巻上げる。なお巻上機21は、ドラムを回転させてワイヤーロープを巻取るロープホイストやウインチであってもよい。
【0021】
巻上機21は、巻上電動機22の巻上、巻下を操作する操作スイッチ25、負荷51が過負荷であるかを判定する過負荷判定装置24、及び巻上電動機22を制動する制動装置26を備える。制動装置26としては、例えば、電源52と巻上電動機22との間の電路を開閉による巻上電動機22への給電遮断に伴いブレーキをかけるプルロータブレーキである。
【0022】
操作スイッチ25は押しボタンスイッチである。巻上ボタンスイッチが押されると、電源52から巻上電動機22に電力が供給され、負荷51を巻上げる。巻上スイッチが離されると、巻上電動機22への電力供給が断たれ巻上が停止する。
【0023】
過負荷判定装置24は、CPU29、ROM31、メモリー30及びセンサー23を備える。
【0024】
CPU29はマイコン(マイクロコンピュータ)に組み込まれ、CPU29に対する命令(処理)を記述したコンピュータプログラム(ソフトウエア)を読み込んで実行する。
プログラムは、予めROM31やRAM32に格納されている。
メモリー30は、ROM31、及びRAM32を備える。CPU29、ROM31、RAM32及びセンサー23はBUSで接続されマイコン(マイクロコンピュータ)を構成している。
【0025】
図2は、実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、巻上電動機22の過負荷判定装置24の機能ブロックを示す図である。
【0026】
過負荷判定装置24は、センサー23、メモリー30、過負荷判定手段61、基準過負荷判定閾値曲線導出手段62、基準過負荷判定閾値曲線変更判断手段63及び補正過負荷判定閾値曲線導出手段64を備える。
【0027】
センサー23は、電源52から巻上機21に供給される電力について、巻上機21(巻上電動機22)の入力電圧を検出する入力電圧検出器53と、巻上電動機22に流れる電流を検出する電流検出器54を備える。
【0028】
なお、「過負荷判定手段」61とは、プログラムを読み込み、過負荷を判定する機能を実行するマイコンをいう。
「基準過負荷判定閾値曲線導出手段」62とは、プログラムを読み込み、基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能を実行するマイコンをいう。
「基準過負荷判定閾値曲線変更判断手段」63とは、プログラムを読み込み、基準過負荷判定閾値曲線の変更を判断する機能を実行するマイコンをいう。
「補正過負荷判定閾値曲線導出手段」64とは、プログラムを読み込み、補正過負荷判定閾値曲線を導出する機能を実行するマイコンをいう。
メモリー30は、巻上電動機22の一定の(過)負荷における入力電圧と電流値を記憶する。
制動装置26は、巻上電動機22に制動指令をする制動指令手段71と、制動指令を受け制動する制動機構261を備える。
【0029】
[基準過負荷判定閾値曲線]
基準過負荷判定閾値曲線について説明する。
図3は、実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準負荷における基準とする巻上電動機22の基準過負荷判定閾値曲線を示す図であるが、これは同時に対象とする巻上電動機22における基準過負荷判定閾値曲線を示す図でもある。他の図でも同様である。
【0030】
ここで、「基準とする巻上電動機」とは、「測定等の拠り所となる巻上電動機」をいう。「対象とする巻上電動機」とは、「過負荷判定の対象とする巻上電動機」をいう。例えば、同じ型番の巻上電動機が複数ある場合、それらのうちで平均的な、あるいはモデルとなる巻上電動機を「基準とする巻上電動機」とし、入力電圧と電流の関係を予め測定し、巻上電動機の特性を求めておく。この測定結果を反映させて出荷前検査などで過負荷判定を行う対象とする巻上電動機を「対象とする巻上電動機」とする。これは同じ型番の巻上電動機22等の同種の巻上電動機22であれば、個々に測定する必要性が乏しく、基準とする巻上電動機22の測定に基づき基準過負荷判定閾値曲線1を導出して、対象とする巻上電動機22の過負荷を判定すればよいからである。
実施形態1を含めた以下の実施形態では、「巻上電動機22」は「基準とする巻上電動機」と「対象とする巻上電動機」とを厳密には分けていない。
【0031】
図3の基準過負荷判定閾値曲線1は、所定の負荷における、巻上電動機22の入力電圧と、巻上電動機22に流れる電流(値)との関係を示す。横軸が入力電圧(v)で縦軸が電流(i)である。
使用範囲の入力電圧は、340V(ボルト)~460Vである。この範囲の入力電圧が巻上電動機22の使用保証範囲である。定格電圧は400Vである。
【0032】
符号1の曲線は、基準とする負荷117.5%での各入力電圧(340V,360V,380V,400V,420V,440V,460V)と電流との関係を示す曲線であり、本実施形態ではこれを基準過負荷判定閾値曲線1とした。すなわち負荷117.5%を閾値とし、負荷117.5%以上の負荷は過負荷とする。
ここで、「閾値」とは、過負荷とする最小の値をいう。限界値または臨界値ともいう。閾値を117.5%としたのは、厳重に巻上げを禁止し安全を確保すべき負荷125%と、巻上が許容されている負荷110%との中間の値をとり、より安全性に配慮したためである。工場出荷時の過負荷閾値は負荷117.5%とするのが出願人の出荷標準である。ただし負荷117.5%は閾値の目安となるものであり、負荷110%以下で巻上げが停止することなく、かつ、負荷110%から負荷125%の範囲で巻上げが停止すればよく、厳密に117.5%の負荷で巻上げを停止させる必要はない。
【0033】
また
図3には、負荷117.5%(符号1の曲線)の他に、負荷100%、125%での入力電圧と電流(実測値)との関係をそれぞれ符号100の曲線及び符号125の過負荷判定閾値曲線で示した。各曲線から分かるように、各負荷での入力電圧-電流の増減傾向(モータ特性)を読み取ることができる。
実際には、負荷117.5%の二次曲線を予め求めるとともに、負荷100%、125%での、少なくとも入力電圧340V、400Vおよび460Vの電流値を実測しメモリー30に記憶しておく。これにより必要に応じて、負荷100%、125%での基準となる巻上電動機22のモータ特性の概略曲線を描くことができる。そして、負荷100%、125%の概略曲線を基に、例えば負荷110%での、任意の入力電圧におけるおおよその電流値を、負荷100%と負荷117.5%との差の比例関係から求めることができる。
【0034】
なお本実施形態では負荷117.5%を基準負荷としたが、工場出荷時の基準負荷(過負荷閾値)を例えば負荷115%にする場合には、上記と同様に実測値から予め求めた負荷115%の二次曲線を基準過負荷判定閾値曲線とする。
【0035】
[過負荷判定方法の処理フロー]
図4は、実施形態1に係る過負荷判定方法の処理フローを説明するための図である。
実施形態1の巻上電動機22の過負荷を判定する過負荷判定方法では、まず、基準とする巻上電動機22に基準負荷51(本実施形態では1.175W(117.5%)とする)をかけ、入力電圧と電流(値)の関係を予め測定する(ステップS1、Aステップ)。
入力電圧と電流の関係の測定は、入力電圧検出器53及び電流検出器54で行う。
測定結果は、メモリー30に記憶される。「測定」は実測で行った。測定値は実測値である。
【0036】
次に、基準過負荷判定閾値曲線導出手段62は、メモリー30に記憶された測定値を基に、入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷判定閾値曲線1(近似曲線)を導出する(ステップS2、Bステップ)。
ここで、「二次式」とは、巻上電動機22の電流を、入力電圧の次数2の多項式で表した式をいう。
【0037】
次に、基準過負荷判定閾値曲線変更判断手段63は、基準過負荷判定閾値曲線1を変更するか否かを決定する(ステップS3、Cステップ)。なおこの決定は、人的に行なわれるものであり、過負荷判定装置24が自動的に行なうものではない。変更を決定する場合とは、客先の要望により安全サイドに寄せたい場合などに意図的に閾値を引き下げるケースの他、巻上機個体のばらつきから、閾値を117.5%に設定しても負荷110%以下で巻上げが停止してしまう場合に閾値を引き上げ、または、負荷110%~125%の範囲で巻上げが停止しない場合に閾値を引き下げるケースが想定される。
【0038】
ステップS4(Dステップ)では、基準過負荷判定閾値曲線1(過負荷閾値)を変更しない場合には、基準過負荷判定閾値曲線1に基づき対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する(ステップS4-1)。
基準過負荷判定閾値曲線1(過負荷閾値)を変更する場合には、基準関数の切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線2に基づき対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する(ステップS4-2)。
過負荷判定手段61は、入力電圧検出器53で検出された入力電圧(値)及び電流検出器54で検出された電流値と、基準過負荷判定閾値曲線導出手段62で導出された基準過負荷判定閾値曲線1に基づき上記処理(過負荷判定)を行う。
【0039】
[基準過負荷判定閾値曲線の導出]
図5~
図6を用いて基準過負荷判定閾値曲線1の導出について説明する。
過負荷判定のための基準閾値は117.5%とした。
基準過負荷判定閾値曲線1の導出は、主として基準過負荷判定閾値曲線導出手段62が行う。
【0040】
図5に示すように、基準とする巻上電動機22で、基準負荷として117.5%の負荷を実際にかけ、巻上電動機22の各入力電圧と電流(値)との関係を測定した。具体的には入力電圧340V~460Vの範囲で、340Vから20V毎に測定した。121は各測定値である。この測定値121はメモリー30に記憶される。
そして符号1は、複数の測定値121から最小二乗法など数学的手法により求めた基準過負荷判定閾値曲線(近似曲線)を示す。
【0041】
図6は、実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準過負荷判定閾値曲線1を導出するフローを説明する図である。
【0042】
まず、基準過負荷閾値を決定する。ここでは、基準過負荷閾値を117.5%に決定した(ステップS21)。
【0043】
次に基準過負荷判定閾値曲線導出手段62は、二次式
i=a・v2 +b・v+c …(1)
i:電流(値)、v:入力電圧(値)、
a(係数、≠0)、b(係数)、c(切片):定数
を準備する(ステップS22)。
これは、入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準関数であり、過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷判定閾値曲線1を表す。
【0044】
次に、基準過負荷判定閾値曲線導出手段62は、基準閾値過負荷(117.5%)での入力電圧及び電流値の測定値121をメモリー30から読み出す(ステップS23)。
【0045】
次に、ステップ24で、上記の定数未定の二次式に、基準閾値過負荷(117.5%)での各入力電圧、電流値の複数の組み合わせを代入して、その近似曲線の定数a(係数)、b(係数)及びc(切片)を求め、二次式を作成する(ステップ25)。
【0046】
そして、上記の式(1)のように、入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる(過負荷判定のための基準閾値としての)「基準過負荷判定閾値曲線1」に基づき、対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する。具体的には一定の電源電圧において負荷51を吊り上げようとすると巻上電動機22に流れる電流値が一旦急激に上昇してから若干減少しほぼ一定の電流値に落ち着く。この一定の電流値がこの基準閾値を超えた場合には過負荷と判定し、電力の供給を遮断し巻上電動機22を停止させる。これにより使用範囲のいずれの入力電圧での使用においても、先行技術文献に記載した近似直線による閾値に基づく過負荷判定に比べより判定精度の良い過負荷判定が可能となる。
【0047】
[基準過負荷判定閾値曲線の変更]
図7~
図9を用いて、基準過負荷判定閾値曲線1を変更する場合について説明する。
【0048】
図7は、実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準過負荷判定閾値曲線1の変更に関する説明図である。
上記では
図5~
図6を用いて、過負荷判定のための基準閾値を117.5%とし、その基準過負荷判定閾値曲線1の導出について説明した。
しかし、客先のより安全性を高めたいとの要請で、基準閾値を例えば出荷後に115%に変更(補正)する場合を想定する。その場合には、基準閾値(負荷)を115%とする補正過負荷判定閾値曲線2(2-115)に基づき対象とする巻上電動機22の過負荷を判定することになる。
【0049】
図7には、基準閾値を117.5%としたときの基準過負荷判定閾値曲線1と、基準閾値を115%としたときの補正過負荷判定閾値曲線2(2-115)が示されている。
補正過負荷判定閾値曲線2(2-115)は、基本的には、
図7に示すように、基準過負荷判定閾値曲線1を、負荷115%、定格電圧(400V)の電流値を通るように、縦軸(y軸)方向に平行移動した曲線である。なお負荷115%(Z%)での定格入力電圧における電流値は、メモリー30に記憶しておいた負荷100%の電流値と負荷117.5%の電流値との比例関係から求められる。
図8は、実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、基準過負荷判定閾値曲線1の変更に関する処理フローをより詳しく説明する図である。
図9は、実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図で、補正過負荷判定閾値曲線2に関する説明図である。
【0050】
なお、基準過負荷判定閾値曲線1を変更(補正)する補正過負荷判定閾値曲線2の導出は、補正過負荷判定閾値曲線導出手段64が行う。過負荷判定は過負荷判定手段61が行う。
【0051】
図8のフローに沿って説明する。
まず、基準過負荷判定閾値曲線1(過負荷117.5%)の「過負荷」117.5%と、求めようとする補正過負荷判定閾値曲線2の「過負荷」Z%(変更後の過負荷%)判定閾値との差が一定範囲内(例えば、5%以内)かを判定する(ステップS41)。
YESの場合は、ステップ42に進む。例えば、一定範囲を5%とした場合、Z=115(過負荷115%)なら117.5-115=2.5(%)で5%以内である場合はYESである。
ステップ42では、基準過負荷判定閾値曲線1を、過負荷Z%における定格電圧(400V)での測定電流値を通るようにy軸方向(縦方向)に平行移動する(切片cを変更する)。
そして、基準過負荷判定閾値曲線1を平行移動した曲線を補正過負荷判定閾値曲線2(過負荷115%では補正過負荷判定閾値曲線2-115)とする(ステップ43)。
図7は上記処理を図示した図であり前述した。
【0052】
NOの場合(差が一定範囲内でない場合)は、ステップ44に進む。例えば、一定範囲を5%とした場合、Z=110(過負荷110%)なら117.5-110=7.5(%)で5%を超え、NOである。
ステップ44では、曲線1(過負荷117.5%)と曲線100(定格負荷100%)との間に、両者のy軸方向の間隔を(117.5-Z):(Z-100)で按分(比例配分)した曲線(按分した点を通る曲線)を引く。
そして、上記の按分した曲線を補正過負荷判定閾値曲線2(過負荷110%では補正過負荷判定閾値曲線2-110)とする。
【0053】
図9は、NOの場合(差が一定範囲内でない場合)の説明図である。求めようとする補正過負荷判定閾値曲線2(2-110)の過負荷が110%であり、基準過負荷判定閾値曲線1の過負荷117.5%との差は、5%を超える。
この場合、曲線1(過負荷117.5%)と曲線100(定格負荷100%)との間に、両者のy軸方向の間隔を(117.5-110):(110-100)=7.5:10で按分(比例配分)した曲線(按分した点を通る曲線)を引く。
図9では、入力電圧340V、400V及び460Vにおいて両者の曲線1、100間を7.5:10に按分した点を通る曲線とした。
そして、上記の按分した曲線を補正過負荷判定閾値曲線2(過負荷110%では補正過負荷判定閾値曲線2-110)とした。
【0054】
以上のような処理をするため、過負荷閾値を変更しても引き続き判定精度の良い巻上電動機22の過負荷判定が可能である。
【0055】
なお、このような過負荷判定が、上述したマイクロコンピュータによって可能な巻上機21を製造する製造方法は、以下の通りである。
すなわち、上述のAステップ(ステップS1)で予め測定した測定値に基づいて、上述のBステップ(ステップS2)で説明したような、入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準過負荷判定閾値曲線であって、過負荷判定のための基準閾値としての前記基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能を、上記のマイクロコンピュータに実装する(実装ステップ)。
【0056】
また、上記のCステップ(ステップS3)のように、基準過負荷判定閾値曲線を変更するか否かを決定する。
【0057】
そして、上記のCステップ(ステップS3)において、基準過負荷判定閾値曲線を変更する場合には、その基準過負荷判定閾値曲線を、上述のステップS4-2で説明したような、基準関数の切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線へと変更して前記マイクロコンピュータに実装する(変更ステップ)。
なお、上記のCステップ(ステップS3)において、基準過負荷判定閾値曲線を変更しない場合には、上記の基準過負荷判定閾値曲線を実装したままの状態とする。
【0058】
このようにすれば、上記のように判定精度の良い巻上電動機22の過負荷判定が可能な巻上機21を良好に製造することが可能となる。特に、巻上機21の出荷前に、過負荷判定のための曲線を、基準過負荷判定閾値曲線から補正過負荷判定閾値曲線へと変更することができるので、製品の固体ばらつきを良好に吸収した状態で巻上機21を出荷できるので、品質の安定化が図れる。
【0059】
[実施形態2]
図10~
図12を用いて、実施形態2に係る過負荷判定方法について説明する。
【0060】
実施形態2の過負荷判定方法は、実施形態1で説明した過負荷判定方法で、過負荷を判定する入力電圧領域を低電圧側入力電圧領域と、低電圧側入力電圧領域より高電圧の高電圧側入力電圧領域に分け、低電圧側入力電圧領域では、Aステップ、Bステップ、Cステップ及びDステップを含む方法により過負荷を判定し、高電圧側入力電圧領域では、Aステップと、電流の測定値を基に、基準過負荷判定閾値曲線の代わりに、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷閾値直線を導出するB2ステップと、基準過負荷判定閾値直線を変更するか否かを決定するC2ステップと、基準過負荷判定閾値直線を変更しない場合には、基準過負荷判定閾値直線に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定し、基準過負荷判定閾値直線を変更する場合には、基準過負荷判定閾値直線を補正した補正過負荷判定閾値直線に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定するD2ステップと、
を含む。
【0061】
入力電圧領域で入力電圧が高い高電圧側では、巻上電動機22の磁気飽和の開始等で、巻上電動機22を流れる電流値が、負荷を変更しても変化の程度が少ない場合がある。そこで、過負荷を判定する入力電圧領域を低電圧側入力電圧領域と、低電圧側入力電圧領域より高電圧の高電圧側入力電圧領域に分け、低電圧側入力電圧領域では基準過負荷判定閾値曲線に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定し、高電圧側入力電圧領域では基準過負荷判定閾値曲線の代わりに基準過負荷閾値直線により過負荷を判定する。
このようにすることで、過負荷の誤判定のリスクが低減される。
【0062】
図10は、実施形態2に係る過負荷判定方法を説明するための図で、巻上電動機22の過負荷判定装置24の機能ブロックを示す図である。
【0063】
図2の、実施形態1に係る過負荷判定方法を説明するための図(巻上電動機22の過負荷判定装置24の機能ブロックを示す図)と異なるのは、過負荷判定装置24は、センサー23、メモリー30、過負荷判定手段61、基準過負荷判定閾値曲線導出手段62、基準過負荷判定閾値曲線変更判断手段63及び補正過負荷判定閾値曲線導出手段64の他に、基準過負荷判定閾値直線導出手段65、基準過負荷判定閾値直線変更判断手段66及び補正過負荷判定閾値直線導出手段67を備える点である。その他、
図10に示す構成では、所定の音を発生させる発音装置27と、外部機器と接続して情報の送受信をするためのインターフェース28を備える点でも、
図2に示す構成と異なっている。
【0064】
ここで、「基準過負荷判定閾値直線導出手段」65とは、プログラムを読み込み、基準過負荷判定閾値直線3を導出する機能を実行するマイコンをいう。
「基準過負荷判定閾値直線変更判断手段」66とは、プログラムを読み込み、基準過負荷判定閾値直線3を変更するか否かを決定するマイコンをいう。
「補正過負荷判定閾値直線導出手段」67とは、プログラムを読み込み、補正過負荷判定閾値直線4を導出する機能を実行するマイコンをいう。
【0065】
図11は、実施形態2に係る過負荷判定方法の処理フローを説明するための図である。
図12は、実施形態2に係る過負荷判定方法を説明するための図である。
【0066】
まず、入力電圧領域を分割するか否かを決める(ステップS51)。例えば電源電圧が420V以上の場合には一律に入力電圧領域を分割すると決めてもよい。
入力電圧領域を分割する場合(ステップS51、分割する:YES)、低電圧側入力電圧領域と、高電圧側入力電圧領域とに分割する(ステップS52)。
実施形態2では、
図12に示すように、低電圧側入力電圧領域を340V~420V、高電圧側入力電圧領域で420V~460Vとした。420V付近で、巻上電動機22を流れる電流値が、負荷を変更しても変化の程度が少なくなり始めているためである。
【0067】
次に、入力電圧領域を低電圧側入力電圧領域と、低電圧側入力電圧領域より高電圧の高電圧側入力電圧領域に分ける(ステップS53)、それぞれで処理フローを異にする。
低電圧側入力電圧領域では、ステップS54~ステップS57の処理を行う。
高電圧側入力電圧領域では、ステップS58~ステップS61の処理を行う。
【0068】
低電圧側入力電圧領域では、まず、センサー23で、巻上電動機22の、一定の負荷51における、入力電圧と、電流との関係を測定する(ステップS54、Aステップ)。
【0069】
次に、基準過負荷判定閾値曲線導出手段62は、電流の測定値121を基に、入力電圧(v)の二次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷判定閾値曲線1(過負荷117.5%)を導出する(Bステップ)。
【0070】
次に、基準過負荷判定閾値の変更指令等に基づき、基準過負荷判定閾値曲線変更判断手段63は、基準過負荷判定閾値曲線1を変更するか否かを決定する(ステップS56、Cステップ)。
【0071】
次に、基準過負荷判定閾値曲線1を変更しない場合には、過負荷判定手段61は、基準過負荷判定閾値曲線1に基づき対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する(ステップS571、Dステップ)。
【0072】
基準過負荷判定閾値曲線1を変更する場合には、補正過負荷判定閾値曲線導出手段64が導出した、基準関数の切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線2に基づき対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する(ステップS57-2)。
例えば、過負荷判定閾値を過負荷117.5%から過負荷112.5%に変更する場合は、117.5%-112.5%=5%で5%以内であるから、曲線1(過負荷117.5%)を、定格入力電圧400Vにおける過負荷112.5%で流れる電流値を通るようにy軸方向に平行移動した補正過負荷判定閾値曲線2(2-112.5)に基づき判定する。
なお、
図12中に符号100で示すのは、定格負荷(100%)における負荷曲線である。
過負荷判定手段61は、入力電圧検出器53で検出された入力電圧(値)及び電流検出器54で検出された電流値と、基準過負荷判定閾値曲線導出手段62で導出された基準過負荷判定閾値曲線1に基づき上記処理を行う。
【0073】
高電圧側入力電圧領域では、まず、センサー23で、巻上電動機22の、一定の負荷51における、入力電圧と、電流との関係を測定する(ステップS58、A2ステップ)。
【0074】
次に、基準過負荷判定閾値直線導出手段65は、電流の測定値121を基に、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷判定閾値直線3を導出する(ステップS58、B2ステップ)。
【0075】
[基準過負荷判定閾値直線の導出]
基準過負荷判定閾値直線3の導出は、基準過負荷判定閾値直線導出手段65が行う。
基準過負荷判定閾値直線3は、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準関数よりなる過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷閾値直線であり、次式で表される。
i=d・v+e
但し、d(係数、≠0)、e(切片):(d、eをあわせて定数とよぶ)
なお、「一次式」とは、巻上電動機22の電流を、入力電圧の次数1の多項式で表した式をいう。
【0076】
基準過負荷判定閾値直線3は直線であるため、曲線である基準過負荷判定閾値曲線1に比較して容易に導出できる。
基準過負荷判定閾値直線3と、基準過負荷判定閾値曲線1とは、共に負荷117.5%であるため、低電圧側入力電圧領域(340V~420V)と、高電圧側入力電圧領域(420V~460V)との境である入力電圧420Vで同じ電流値として、両者が連続していなければならない。従って、基準過負荷判定閾値直線3はこの点を通る直線とする。
【0077】
もう1点が定まれば基準過負荷判定閾値直線3を導出することができる。高電圧側入力電圧領域(420V~460V)の最も高い電圧(460V)における電流値を決めることでも1点を決める。高電圧側入力電圧領域(420V~460V)における電流値特性を考慮して決まる。ここでは、基準過負荷判定閾値曲線1の入力電圧460Vにおける電流値以上の電流値とした。
【0078】
基準過負荷判定閾値直線3を変更しない場合には、過負荷判定手段61は、基準過負荷判定閾値直線3に基づき対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する(ステップS61-1、D2ステップ)。
基準過負荷判定閾値直線3を変更する場合には、補正過負荷判定閾値直線導出手段67が補正した(導出した)一次式よりなる補正過負荷判定閾値直線4に基づき対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する(ステップS61-2、D2ステップ)。
なお、
図9中に符号100で示すのは、定格負荷(100%)における負荷曲線である。
【0079】
[基準過負荷判定閾値直線の変更]
次に、基準過負荷判定閾値直線変更判断手段66は、基準閾値の変更等に伴い、基準過負荷判定閾値直線3を変更するか否かを決定する(ステップS60、C2ステップ)。
基準閾値が変更され、基準過負荷判定閾値曲線1が補正過負荷判定閾値曲線2に補正されると、多くの場合、基準過負荷判定閾値直線3も補正過負荷判定閾値直線4に補正される。
本実施形態では、基準過負荷判定閾値曲線1(負荷117.5%)が、曲線1を定格電圧400Vでの負荷112.5%の測定電流値を通るようにy軸方向に平行移動した補正過負荷判定閾値曲線2(2-112.5、負荷112.5%)に補正されたのに伴い、基準過負荷判定閾値直線3(負荷117.5%)も補正過負荷判定閾値直線4(負荷112.5%)に補正された。
【0080】
補正過負荷判定閾値直線4は直線であるため、曲線である補正過負荷判定閾値曲線2に比較して容易に導出できる。
補正過負荷判定閾値直線4と、補正過負荷判定閾値曲線2とは、共に負荷112.5%であるため、低電圧側入力電圧領域(340V~420V)と、高電圧側入力電圧領域(420V~460V)との境である入力電圧420Vで同じ電流値として、両者が連続していなければならない。従って、補正過負荷判定閾値直線4はこの点を通る直線とする。
【0081】
もう1点が定まれば基準過負荷判定閾値直線3を導出することができる。高電圧側入力電圧領域(420V~460V)の最も高い電圧(460V)における電流値を決めることでも1点を決める。高電圧側入力電圧領域(420V~460V)における電流値特性を考慮して決まる。ここでは、基準過負荷判定閾値曲線1の入力電圧460Vにおける電流値以上の電流値とした。
【0082】
過負荷判定手段61は、入力電圧検出器53で検出された入力電圧(値)及び電流検出器54で検出された電流値と、基準過負荷判定閾値直線導出手段65で導出された直線3、あるいは補正過負荷判定閾値直線導出手段67で導出された直線4に基づき過負荷であるか否かの判定を行う。
【0083】
入力電圧領域を分割しない場合(ステップS51、分割する:NO)、
図4の処理を行う。
以上のように行うため、実際の過負荷に、より近似した判定精度の良い過負荷判定が可能で、過負荷閾値を変更しても引き続き判定精度の良い巻上電動機22の過負荷判定が可能となる。
また、入力電圧領域を低電圧側入力電圧領域と、高電圧の高電圧側入力電圧領域に分け、それぞれ基準過負荷判定閾値曲線1と基準過負荷閾値直線により過負荷を判定するため、過負荷の誤判定のリスクをより低減できる。
【0084】
なお、このような過負荷判定が、上述したマイクロコンピュータによって可能な巻上機21を製造する製造方法は、以下の通りである。
【0085】
すなわち、上記の実施形態1で述べたような、実装ステップ、Cステップ、変更ステップを実行する。ここで、実施形態2では、上記の実装ステップは、低電圧側実装ステップと、高電圧側実装ステップとを有している。
そして、低電圧側実装ステップでは、基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能を、マイクロコンピュータに実装する。
一方、低電圧側実装ステップよりも前記過負荷を判定する入力電圧領域が高電圧側となる高電圧側実装ステップでは、上記のように、入力電圧(v)の一次式で電流(i)を定義した基準過負荷閾値直線であって過負荷判定のための基準閾値としての基準過負荷閾値直線を導出する機能を、基準過負荷判定閾値曲線を導出する機能に代えて、前記マイクロコンピュータに実装する。
【0086】
また、実施形態2では、上記の変更ステップは、低電圧側変更ステップと、高電圧側変更ステップとを有している。
そして、低電圧側変更ステップでは、上記の基準過負荷判定閾値曲線を、上記の補正過負荷判定閾値曲線へと変更してマイクロコンピュータに実装する。
一方、高電圧側変更ステップでは、低電圧側変更ステップよりも過負荷を判定する入力電圧領域が高電圧側において、基準過負荷判定閾値曲線を、基準過負荷判定閾値直線を補正した補正過負荷判定閾値直線へと変更してマイクロコンピュータに実装する。
【0087】
このようにする場合、実際の過負荷に、より近似した判定精度の良い過負荷判定が可能で、過負荷閾値を変更しても引き続き判定精度の良い巻上電動機22の過負荷判定が可能な巻上機21を製造することが可能となる。しかも、製造される巻上機21は、入力電圧領域が低電圧側入力電圧領域では、基準過負荷判定閾値曲線によって過負荷を判定する。一方、入力電圧領域が高電圧側入力電圧領域では、基準過負荷判定閾値直線によって過負荷を判定する。そのため、過負荷の誤判定のリスクをより低減できる巻上機21を製造することが可能となる。
【0088】
[実施形態3]
図13は、実施形態3に係る過負荷判定方法を説明するための図である。
【0089】
実施形態3の過負荷判定方法では、実施形態1で説明した過負荷判定方法で、基準過負荷判定閾値曲線1を導出する方法を変更した。
即ち、実施形態3では、Cステップで、基準過負荷判定閾値曲線1を変更する場合には、Aステップで測定した基準とする巻上電動機の巻上動作を保証する下限負荷に設定する第一の負荷および、基準とする巻上電動機の巻上停止を保証する下限負荷に設定する第二の負荷における、基準とする巻上電動機の各入力電圧における電流の測定値を基に、第一負荷曲線と第二負荷曲線を求め、両曲線の各入力電圧における電流値の差に基づき、基準関数の係数と切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線2に基づき対象とする巻上電動機の過負荷を判定する。
【0090】
図13で、符号13で示すのは、巻上電動機22の巻上停止を保証する下限負荷に設定する第一の負荷(負荷125%)における第一負荷曲線である。電流値がこの曲線以上となった場合は、巻上動作を必ず停止しなくてはならない。
符号14で示すのは、巻上電動機22の巻上動作を保証する下限負荷に設定する第二の負荷(負荷112.5%)における第二負荷曲線である。負荷112.5%では巻上動作が保証されており、巻上電動機22は巻上動作をしなければならない(停止してはならない)。
【0091】
これら第一負荷曲線13と第二負荷曲線14は、基準とする巻上電動機22の各入力電圧における電流の測定値121を基に求めた曲線である。
これらの曲線は、実施形態1で、
図5~
図6を用いて説明したと同様の方法で求めた。
【0092】
実施形態3では、両曲線13、14の各入力電圧における電流値の差に基づき、前記基準関数の係数と切片を補正した二次式よりなる補正過負荷判定閾値曲線2を導出し、その曲線に基づき前記対象とする巻上電動機22の過負荷を判定する。
【0093】
曲線13と曲線14との間には、
図13に示すように、差が生じている。そこでこれらの曲線13と曲線14との間を通る任意の曲線1Aを導出し、これを基準過負荷判定閾値曲線(負荷110%・125%間)とした。
【0094】
このようにすると、基準過負荷判定閾値曲線(負荷110%・125%間)1Aを容易に作成できる。また、この曲線1Aは、曲線13(負荷125%)・曲線14(負荷110%)間の曲線であるため、負荷110%では動作が保証され、負荷125%では動作が停止される。
【0095】
なお、このような過負荷判定が、上述したマイクロコンピュータによって可能な巻上機21を製造する製造方法は、以下の通りである。
すなわち、上記の実施形態1で述べたような、実装ステップ、Cステップ、変更ステップを実行する。ここで、実施形態3では、上記の変更ステップにおける補正過負荷判定閾値曲線は、第一負荷曲線と第二負荷曲線の各前記入力電圧における電流値の差に基づき、基準関数の係数と切片を補正したものである。
また、第一負荷曲線(
図13で符号13で示すもの)は、基準とする巻上電動機に諸負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定すると共に基準とする巻上電動機の巻上動作を保証する下限負荷に設定する第一の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出されたものである。
また、前記第二負荷曲線は、前記基準とする巻上電動機に諸負荷をかけ入力電圧と電流の関係を測定すると共に前記基準とする巻上電動機の巻上停止を保証する下限負荷に設定する第二の負荷における、前記基準とする巻上電動機の前記入力電圧における電流の測定値を基に算出されたものである。
【0096】
このようにする場合、上記のように、基準過負荷判定閾値曲線(負荷110%・125%間)1Aは、曲線13(負荷125%)・曲線14(負荷110%)間の曲線である。このため、負荷110%では動作が保証され、負荷125%では動作が停止されるような、巻上機21を製造することが可能となる。
【0097】
[実施形態4]
図13で、曲線13は実施形態3と同じく負荷125%の負荷曲線(絶対的に停止させる必要がある負荷)としたが、曲線14は負荷115%の負荷曲線とした。負荷115%は、巻上動作が保証されている負荷110%以上の負荷であり巻上電動機22の巻上動作を停止させてもよい負荷であることとする。これは、巻上機21の利便性、安全性等を考慮して、主として巻上電動機22(巻上機21)のメーカーやユーザーが決定する。
曲線14を変更しただけで、他は実施形態3と同様にし、基準過負荷判定閾値曲線1Aを負荷125%の曲線13と、負荷110%の曲線14との間の曲線とした。
基準過負荷判定閾値曲線1Aの一部が曲線13または曲線14と重なっていてもよい。
【0098】
このようにすると、基準過負荷判定閾値曲線1Bを容易に作成できる。
基準過負荷判定閾値曲線1Aによる過負荷判定が、厳密に負荷117.5%でなく、負荷110%と負荷125%の間のどこかでよい場合のユーザー要請に容易に応えることができる。
【0099】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1…基準過負荷判定閾値曲線(負荷117.5%)、1A…基準過負荷判定閾値曲線(負荷110%・125%間)、2…補正過負荷判定閾値曲線、2-110…補正過負荷判定閾値曲線(過負荷110%)、2-112.5…補正過負荷判定閾値曲線(過負荷112.5%)、2-115…補正過負荷判定閾値曲線(過負荷115%)、3…基準過負荷判定閾値直線(過負荷117.5%)、4…基準過負荷判定閾値直線(負荷112.5%)、13…第一負荷曲線(負荷125%)、14…第二負荷曲線(負荷110%)、21…巻上機、22…巻上電動機、23…センサー、24…過負荷判定装置、25…操作スイッチ、26…制動装置、29…CPU、30…メモリー、31…ROM、32…RAM、51…負荷、52…電源、53…入力電圧検出器、54…電流検出器、61…過負荷判定手段、62…基準過負荷判定閾値曲線導出手段、63…基準過負荷判定閾値曲線変更判断手段、64…補正過負荷判定閾値曲線導出手段、65…基準過負荷判定閾値直線導出手段、66…基準過負荷判定閾値直線変更判断手段、67…補正過負荷判定閾値直線導出手段、71…制動指令手段、100…負荷曲線(定格負荷100%)、121…測定値(実測値)、125…過負荷判定閾値直線(過負荷125%)、261…制動機構