(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】搬送機
(51)【国際特許分類】
B60V 1/02 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
B60V1/02
(21)【出願番号】P 2019089863
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 晃二
(72)【発明者】
【氏名】福原 正
(72)【発明者】
【氏名】中島 正実
(72)【発明者】
【氏名】深田 伸一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-213507(JP,A)
【文献】特開平11-349115(JP,A)
【文献】特開2019-056222(JP,A)
【文献】登録実用新案第3086364(JP,U)
【文献】特開平03-204367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60V 1/02
B60V 1/16
B65G 7/06
E04D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状のベースと、該ベースの上方側に設けられる送風機構部と、前記ベースの下方側に設けられ且つ前記送風機構部から空気が流入して方形状に膨張した後に流入した空気を外部に噴出する小径の多数の孔を有するスカート部とを備え、前記ベースの上面側には前記送風機構部からの空気を流入させる空気供給孔を有し、前記ベースの下面側には前記空気供給孔と連通し、該空気供給孔よりも大きな容積を有する空気溜め室を有すると共に該空気溜め室を常時は閉じ状態とする弁を有し、該弁は前記空気溜め室を常時は閉弁状態とし、前記空気溜め室に供給された圧縮空気により開弁してなることを特徴とする搬送機。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送機において、前記弁は、前記空気溜め室に供給された圧縮空気の一定圧力を超えることにより開弁となることを特徴とする搬送機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送機において、前記スカート部の中央箇所には、固定板が固着されると共に前記スカート部が膨張状態で中央箇所は上方に窪むことを
特徴とする搬送機。
【請求項4】
請求項1,2又は3の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは上方側の第1基板と、下方側の第2基板とを備え、前記第1基板に空気供給孔を有し、前記第2基板に前記空気溜め室を有し、且つ前記第1基板と、前記第2基板との間に前記スカート部の端縁が挟持されてなることを特徴とする搬送機。
【請求項5】
請求項1,2又は3の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは一体板とし、上面側に空気供給孔を有し、下面側に前記空気溜め室を有してなることを特徴とする搬送機。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは長方形としてなることを特徴とする搬送機。
【請求項7】
請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは正方形としてなることを特徴とする搬送機。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の搬送機において、前記送風機構部を駆動する動力源としてエンジンが使用されてなることを特徴とする搬送機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦状の面において、目的とする場所に物資,資材等の重量物を極めて小さな労力で円滑に搬送することができ、目的とする作業の効率を向上させることができる搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物資,資材等の重量物を一定の領域内で搬送するための機械として、エアパレット或いはエアキャスタと呼ばれるものが存在している。これは、重量物を載置可能な機体と、地面との間に空気層を形成し、地面を滑るようにして移動するものである。この種の一般的且つ代表的なものとして、下記特許文献1を掲げた。エアパレットの基本的な構成としては、基盤下のスカートに空気を注入し、スカートと床面の間に空気が漏れ出すことにより、空気の膜(空気フィルム)が形成される。これによって、機体は、地面から浮かんだ状態にすることになり、機体と地面との間の摩擦が少なくなり小さな力で重量物を移動させることができるものである。
【0003】
ところで、重量物の搬送は、建設現場でも頻繁に行われる。このような重量物として建設用の施工機器,発電機,建材,部品等であり、ほとんど金属製のものであり、極めて重量のあるものである。また、合成樹脂製等の建材も存在するが、これらも多数(量)となれば、極めて重量のあるものになる。建設現場において、これらの重量物は、クレーン等にて一定の高さの場所に搬送するが、その同一場所においてクレーンで重量物が一時的に配置された位置から、さらにその重量物が使用される目的位置までは、作業員の労力に任せられたり、或いは、手押し車等の人力で運ぶものであった。
【0004】
特に、建設物において、屋根,屋上或いはある程度完成された室内等では、地面,床がフラットな面に施工されていることがある。たとえば、シート状の材質によって施工される屋根、或いは防水シートを敷設して施工される屋上等は、フラットな面が施工され、その施工完了箇所では手押し車或いはキャスタ付パレット等が使用可能となる。しかし、これら手押し車,キャスタ付パレットは、積載した重量物の重量が車輪やキャスタに集中し、仕上げが完了したフラット面を傷つけたり、へこませたりするなどの損傷を与えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、前述したエアパレットや、エアキャスタを建設現場に使用することが考えられる。しかしながら、従来のエアパレットや、エアキャスタは、工場,倉庫等の建物の室内で、且つ床面が良好な平坦面であることが必要な条件であり、屋外での使用は想定されていない。そのため、屋外、特に屋根上での使用には以下の問題点がある。
【0007】
一般にエアキャスタ或いはエアパレットは、工場等敷地の広い場所で、且つ特殊なコーティングが施された専用の平坦状の床が備わった場所で使用される。つまり、機体と床との間に気密性ができる程度の平坦状の床が必要である。また、上記エアキャスタ或いはエアパレットには、大型のコンプレッサーや、このコンプレッサーを動作させるモータ等の大型且つ重量のある動力源が必要であった。しかしながら、建築現場ではそのような大型機械を持ち込むことは難しく、またそれらの重量のために、梁や母屋がその荷重に耐え切れずに曲がるおそれがあるため、屋根等の施工現場へ設置することができなかった。
【0008】
次に、建築現場によっては、施工期間が数日から数ヶ月にわたるため、屋根施工に使用されるシート材等に雨や露など水分が付着することになる。エアキャスタ或いはエアパレットには、空気が送られると、スカート部全体が膨らみ、該スカート部から圧縮空気を噴出して、機体の浮上を開始するが、建築現場では路面となる部位が粗く、床面からの浮上高さを均一にできず安定した走行が出来難くなる。さらに、床面が雨水等で濡れた状態の場合では、スカート部と床面との間の水分(水滴等)により密着状態となり、密着状の領域内にあるスカート部の微細孔からの圧縮空気の噴出が出来なくなり、停止(スタック)してしまうことになる。
【0009】
ところで、エアキャスタ或いはエアパレットにおけるスカート部を構成する材料は、密封性で且つ多数の微細な孔を有する繊維材が使用され、このような材料にて製造されたスカート部にエアコンプレッサ等の送風機にて圧縮空気を供給し、スカート部の微細な孔から圧縮空気を噴射して、機体を浮上させエアキャスタ或いはエアパレットが床面を円滑に走行するものである。
【0010】
そして、スカート部から噴出された空気は一部水膜で閉鎖され、一方スカートのシワ部分から多くの空気が吐出するというアンバランスが生じ空気層が全体的かつ均一に形成されないというだけでなく、床面に吸着(スタック)してしまうという現象が生じる。この場合、装置を一旦上に持ち上げて水分のない場所へ移動させることによりなんとか使用できるようになるものの、水滴のある箇所に行くと同じ現象が再度生じてしまうことになる。
【0011】
また、スカート部の水滴は、空気の排出により飛沫した状態、或いはしぶきが上がった状態となるが、新たな水滴がスカート部周辺に押し寄せるため、水滴の排出は、前述した吸着(スタック)の解消とはならない。つまり、この水滴は、スカート部と床面との間に水膜を形成するため、装置の移動に必要な均一の空気層の形成を妨げるため抵抗となってブレーキをかけたように重くなる。単に、水を排除しても水自体は回り込んでくるためこの抵抗が軽減されないのである。以上述べたように、種々の問題点が生じることとなる。
【0012】
本発明の目的は、屋根,壁等の施工現場で成形機にて形成された長尺の建設用板材を屋根,壁等の施工に関わる未葺成,未施工箇所付近まで搬送する搬送機において、その搬送移動の際に、極めて小さな力で且つ簡易且つ迅速に搬送することができること。さらに、施工位置で屋根板,壁板等の建設用板材を施工し易い状態で搬送し、配置させること。そして、さらに搬送工程において、雨水による水溜まりや、或いは初動のときに生じる地面との密着による浮上移動動作に対するスタック(停止)障害を防止し、しかも構造を極めて簡単にすることができる搬送機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、方形状のベースと、該ベースの上方側に設けられる送風機構部と、前記ベースの下方側に設けられ且つ前記送風機構部から空気が流入して方形状に膨張した後に流入した空気を外部に噴出する小径の多数の孔を有するスカート部とを備え、前記ベースの上面側には前記送風機構部からの空気を流入させる空気供給孔を有し、前記ベースの下面側には前記空気供給孔と連通し、該空気供給孔よりも大きな容積を有する空気溜め室を有すると共に該空気溜め室を常時は閉じ状態とする弁を有し、該弁は前記空気溜め室を常時は閉弁状態とし、前記空気溜め室に供給された圧縮空気により開弁してなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項2の発明を、請求項1に記載の搬送機において、前記弁は、前記空気溜め室に供給された圧縮空気の一定圧力を超えることにより開弁となる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2に記載の搬送機において、前記スカート部の中央箇所には、固定板が固着されると共に前記スカート部が膨張状態で中央箇所は上方に窪む搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは上方側の第1基板と、下方側の第2基板とを備え、前記第1基板に空気供給孔を有し、前記第2基板に前記空気溜め室を有し、且つ前記第1基板と、前記第2基板との間に前記スカート部の端縁が挟持されてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2又は3の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは一体板とし、上面側に空気供給孔を有し、下面側に前記空気溜め室を有してなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは長方形としてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。請求項7の発明を、請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の搬送機において、前記ベースは正方形としてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0017】
請求項8の発明を、請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の搬送機において、前記送風機構部を駆動する動力源としてエンジンが使用されてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0020】
請求項1及び請求項2の発明では、本発明の搬送機は、初期動作時における地面に対するスカートの密着現象によるスタック(停止)現象を防止できる。請求項3の発明では、地面における水溜りによるスタック(停止)現象を防止できる。請求項4の発明では、本発明における搬送機の製造を効率よくできる。請求項5の発明では、本発明の搬送機におけるベース部分の強度を強固にできる。
【0021】
請求項6の発明では、搬送機における積載物を多くすることができる。請求項7の発明では、本発明の搬送機をコンパクトなものにでき、小物類の搬送に好適となる。請求項8の発明では、送風機構部を駆動する動力源としてエンジンが使用されたことにより電源部が不要となり、積載量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(A)は本発明の搬送機におけるベースを長方形状とした実施形態の側面図、(B)は搬送機の底面図、(C)は搬送機の縦断正面図、(D)は(B)の(α)部拡大図、(E)は搬送機の縦断側面図である。
【
図2】(A)は
図1(E)の(β)部拡大図、(B)は(A)の(γ)部拡大図、(C)は(A)の(γ)部において別の構造とした拡大図、(D)は第2基板における空気溜め室部分の上方側から見た拡大斜視図、(E)は第2基板における空気溜め室部分の下方側から見た拡大斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の搬送機におけるベースを長方形状とした実施形態の斜視図、(B)はベースが第1基板と第2基板とから構成されたことを示す分離した斜視図である。
【
図4】(A)は本発明の搬送機におけるベースを1枚構成とした実施形態の縦断側面図、(B)は(A)の(δ)部拡大図である。
【
図5】(A)乃至(D)は本発明における搬送機の初動動作におけるスタック(停止)回避行程を示す要部縦断側面図である。
【
図6】(A)は水溜りを有する地面を走行する搬送機の縦断側面図、(B)は(A)の(ε)部拡大図、(C)は走行時に水平バランスを維持できることを示す一部省略した縦断正面図である。
【
図7】(A)は搬送機の搬送ベースに電源部が設置されない実施形態の一部断面にした側面図、(B)は搬送機の動力源としてエンジンが使用された実施形態の一部断面にした側面図である。
【
図8】(A)は本発明における搬送機のベースを正方形状とした実施形態の斜視図、(B)は(A)に示す搬送機の底面図である。
【
図9】(A)は本発明の搬送機における補強部材と別の送風機構部の部分を示す斜視図、(B)は補強部材と別の送風機構部の部分の平面図、(C)は補強部材と別の送風機構部の部分の正面図である。
【
図10】(A)は本発明の搬送機における補強部材の部分の構造を示す一部省略した正面図、(B)は補強部材,仕切り部材及び案内部材の一部切除した斜視図。
【
図11】(A),(B)は本発明における搬送機の送風機構部の設置位置の実施形態を示す一部省略した側面図、(C)は本発明における搬送機の送風機構部の設置位置の実施形態を示す一部省略した斜視図である。
【
図12】(A),(B)は本発明における搬送機の別の実施形態にて資材を搬送してシート状屋根を施工する行程を示す側面より見た略示図である。
【
図13】(A)乃至(D)は本発明の搬送機にて資材を搬送してシート状屋根を施工する行程を示す側面より見た略示図である。
【
図14】(A),(B)は本発明の搬送機にて資材を搬送してシート状屋根を施工する行程を示す上面より見た略示図である。
【
図15】本発明の搬送機にキャスタを設けた実施形態の縦断側面略示図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。本発明の搬送機は、平坦状の地面,路面或いは床面を浮上しつつ、重量物を積載して搬送するものであり、特に建設現場において、平坦状な面、例えばフラット状屋根,床の施工に好適である。本発明における搬送機は、
図1乃至
図3に示すように、ベース1と、送風機構部2と、電源部3と、スカート部4とを備えている。そして、ベース1の上方側に送風機構部2が設けられる。
【0028】
前記ベース1は、方形状で且つ板状のものであり、或いは長手方向に長尺とした細長状或いは平帯状の板形状である〔
図1,
図3,
図8(A),(B)等参照〕。ここで、方形状とは、長方形,正方形である。さらに、方形状には四辺形のものが含まれ、例えば台形状も方形状に含まれる。さらに、方形状の角部は円弧状又はアールが付加されたものも含まれる。
【0029】
以下の説明では、ベース1は、方形状の中で主に長手方向を長尺とした長方形状として説明する。ベース1は、この上方側に、送風機構部2,電源部3等の装置と、積載される重量物の載置スペースが具備される部位である。したがって、積載物の重量に十分耐える強度及び剛性を有しつつ、軽量であることが好ましく、木材,合成樹脂或いは金属等で形成される。
【0030】
ここで、ベース1の上方側とは、該ベース1の上面を含むその上の空間部分のことをいう。そこで、ベース1の上方部分の一定の高さの位置に、後述するハンドル等を介して設置されたり(
図1乃至
図3等参照)、前記送風機構部2は、ベース1の上面側に直接載置されるように設置されたりすることもある(
図7,
図9参照)。送風機構部2がベース1の上方部分の一定の高さ位置に設置される場合では、送風機構部2はベース1に直接接触することがなく、送風機構部2とベース1との間に空隙が存在することになる〔
図3(A),
図11参照〕。
【0031】
ベース1は、2つの板部材から構成される。2つの板部材は、2枚の板部材からなり、この2枚の板部材によって、上下方向に2層構造で構成される〔
図1,
図2(A),
図3(B)等参照〕。本発明においては、その2層構造とした上側の板部材を第1基板11と称し、下側の板部材を第2基板12と称する。第1基板11には、空気供給孔13が形成されている。また、第2基板12には空気溜め室14が形成されている。空気供給孔13は、第1基板11に貫通孔状とし形成されている。また空気溜め室14は、第2基板12に貫通孔状として形成されている。第1基板11と第2基板12とを上下に層状に重ねた状態で、空気供給孔13と空気溜め室14は連通する構造となる〔
図1,
図2(A),
図3(B)等参照〕。
【0032】
第1基板11と第2基板12は、略同一形状の方形状であり、長方形とした場合には、第1基板11と第2基板12とはサイズが略同一である。或いは第1基板11と第2基板12とは、若干そのサイズが異なるようにしても良い。つまり、後述するスカート部4は、主に第2基板12側によって支持固着されるものであり、スカート部4が送風機構部2からの空気供給によって膨張した状態が、第1基板11の外周からはみ出すようにする場合と、はみ出さないようにする場合とが選べるものであり、第2基板12のサイズを第1基板11よりも小さいサイズにするか、或いは大きいサイズにするか又は同一に設定すれば良い。
【0033】
ベース1の別の実施形態としては、
図4に示すように、1枚の板部材から構成されるものとしたもので、換言するならば第1基板11と第2基板12とを一体的に同体化させた単体としたものである。つまり、第1基板11と第2基板12とを重ねた厚さとなる1枚の単一板材としたものである。本発明では、この単一板材を単体基板1Aと称する。そして、単体基板1Aの上面側から厚さ方向の略中間まで空気供給孔13の領域とし、下面側から厚さ方向の略中間までを空気溜め室14の領域とする。この単体基板1Aにおける空気供給孔13と空気溜め室14とは、連通している(
図4参照)。
【0034】
次に、ベース1の空気供給孔13と、空気溜め室14について説明する。まず、空気供給孔13は、送風機構部2から供給される圧縮空気がベース1で最初に通過する通路である。空気供給孔13は、円筒状の貫通孔であり、ベース1の上面側における開口部の形状は円形状である。ベース1の上面側における空気供給孔13の開口部箇所には送風機構部2のホース状の空気供給管23と接続する部分である。この開口部には前記空気供給管23と接続するための接続フランジ23aが装着されることもある。
【0035】
空気溜め室14は、その平面積は、空気供給孔13の内径面積よりも大きく形成されたものである。空気溜め室14は、平面形状が長方形又は正方形等の方形状或いは、円形状等である。また、空気溜め室14は、空気供給孔13よりも容積が大きい。そして、ベース1が第1基板11と第2基板12とから構成される2層構造としたものでは、第1基板11の下面側と、第2基板12の上面側との間に防水性を有するシール材15が具備される〔
図1,
図2(A),
図3(B)等参照〕。該シール材15は、弾性を有する樹脂材等から形成され、長方形,正方形等の方形状、或いは円形状の環状としたものである。環状とした該シール材15は、空気供給孔13と空気溜め室14との連通する部分を共に水密状となるようにして包囲する。
【0036】
そして、シール材15は、第1基板11と第2基板12とを重ね合わせて両者間に挟持され、第1基板11と第2基板12とをボルト・ナット等の固着具にて接続することにより、シール材15には上下方向から圧力がかけられ、第1基板11と第2基板12とシール材15とにより、空気供給孔13と空気溜め室14との連通箇所における密封性を保持するものとした。また、単体基板1Aにおいては、空気供給孔13と空気溜め室14との連通箇所には、その構造上においてシール材15は不要である。
【0037】
ベース1の下面側で且つ空気溜め室14の下面側開口部には弁16が備わっている(
図1,
図2参照)。弁16は、ゴム,樹脂等の弾性を有す部材にて形成され、平板状である。弁16は、その端部箇所がベース1の下面側に固着されている。その固着構造は、接着剤16g又はボルト・ナット等の固着具16fによるものである〔
図2(B),(C)参照〕。そして、弁16は、その弾性にて、空気溜め室14の下面側開口を常時閉鎖している〔
図1,
図2(A)等参照〕。空気溜め室14と該空気溜め室14の下面側開口を閉鎖する弁16とによって、空気溜め室14は密封された空間となる。弁16は、送風機構部2から空気供給孔13を介して空気溜め室14に供給された圧縮空気が溜まり、一定の圧力を超えると弁16は開弁状態となる。
【0038】
ここで、ベース1が第1基板11と第2基板12とから構成される場合では、空気溜め室14を有する第2基板12に弁16が設けられる。また、ベース1が単体基板1Aとした場合では、該単体基板1Aの下面側に空気溜め室14の下面開口を閉鎖可能に設けられる。
【0039】
次に、送風機構部2は、スカート部4に空気を送り込む役目をなすものである〔
図1(B),
図2(C)参照〕。送風機構部2は、一般の空気ブロワと略同一構造であり、送風部21と、該送風部21を駆動するための動力源22とを備えている。送風部21は、略一般的なブロワが使用されることが多い。該送風部21は、一般の空気ブロワと略同一構造であり、内部にインペラが装着されたものである。
【0040】
送風部21を駆動する動力源22としてモータ部22a及びエンジン22bが存在する。モータ部22aが使用される実施形態では、モータ部22aに電気を供給する電源部3が備えられる。送風機構部2において、送風部21とモータ部22aとは一体化されたボディを有するものが多い。送風機構部2及びそのモータ部22aを駆動するための電源部3は、ベース1の上方側に設置される〔
図1(A),(C),
図3(A),
図11等参照〕。つまり、電源部3は、ベース1の上面に直接設置されたり、或いは、ベース1の上方側で一定の高さ位置に配置されることもある。
【0041】
そして、電源部3は、略一般の小型発電機が使用されることが多い。電源部3は、ベース1の送風機構部2から着脱自在な構成となっており、電源部3を交換できるようになっている。電源部3がベース1上に設置されることで、搬送機単独で、操縦操作ができ、扱い易くなる。また、電源部3は、充電可能な小型のパックタイプの電池が使用されることもあり、このタイプは、送風機構部2に交換自在に装着されるものである。したがって、この種のパックタイプの電源部3は、ベース1の上方側に設置された送風機構部2に装着されるものであり、ベース1の上方側の一定高さ位置に設置されることとなる。パックタイプの電源部3は、小型のために、作業員は、複数個を常時携帯しておくことで、電源部3を交換することによって、本搬送機を長時間に亘って使用し続けることができる。
【0042】
また、電源部3は、ベース1上には設置されず、作業現場の一定の位置に設置され、電源ケーブル31にて送風機構部2のモータ部22aと連結され、送風機構部2が駆動される〔
図7(A)参照〕。電源部3がベース1上に設置されないタイプでは、搬送機自体の重量を軽減することができると共に、搬送する建設用材9の積載量を増加できるという利点を有する。
【0043】
送風機構部2を駆動する動力源22としてガソリン又はヂーゼル等のエンジン22bが使用されることがある〔
図7(B)参照〕。該エンジン22bが使用される場合では、エンジン22bの出力軸がそのまま送風機構部2に直結され、送風するものである。よって、エンジン22bが使用される場合では、電源部3は不要となる。
【0044】
送風機構部2の送風部21は、ベース1の空気供給孔13の上面開口と接続する空気供給管23によって、空気供給孔13,空気溜め室14を介して圧縮空気が供給されるようにスカート部4と連通している。そして、送風機構部2によって生成された圧縮空気をスカート部4の内部に供給する。
【0045】
次に、スカート部4について説明する。まず、スカート部4を構成するシート材の素材は、合成樹脂製で微小又は微細な小径の孔4aが,多数或いは無数に形成されたものである。換言すると、スカート部4のシート材の多数或いは無数の孔4aを有する多孔性のシート材である。多数の孔4aは、スカート部4内に充填された圧縮空気の空気噴出口としての役目をなすものである。スカート部4の材質は、具体的には、高分子材料のもので、さらに具体的には、ナイロンタフタ,ポリエチレンタフタ,パラシュートナイロンクロス等の極めて、強固で耐久性のある素材が使用される。
【0046】
また、スカート部4の素材に使用される原材であるシート材における孔4aは、微小又は微細な小径の直径を有するものであり、具体的には、その直径は約0.5mm乃至約2mm程度であり、好適には約1mm乃至1.5mm程度である。そして、小径とした孔4a,4a同士の直径中心の間隔については、約10mm乃至約20mm程度であり、好適には約15mmである。孔の配列構成は、縦横方向で任意に隣接する孔が三角形を構成する千鳥配置である。又は縦横方向で任意に隣接する孔が正方形を構成する整列配置とすることもある。
図1(D)はスカート部4のスカートシート材4sに形成された孔4a,4a,…の拡大図であり、その配列の例として千鳥配置としたものである。
【0047】
スカート部4を構成するシート材は、その周端縁付近がベース1の下面側に固着され、スカート部4が略長方形状の袋状体となるように構成される。そして、前記スカートシート材4sの中心箇所は固定板45とボルト・ナット等の固着具46にてベース1の下面側に固着される(
図1,
図2等)。スカート部4の長方形の中心位置には、帯板状の固定板45が配置され、ベース1の下面側にボルト等の固着具46を介して固着される。
【0048】
また、ベース1が第1基板11と第2基板12によって構成される実施形態では、スカート部4は、第2基板12側に装着される。具体的には、スカート部4を構成する方形状のシート材が第2基板12の下面側に配置され、シート材の周縁が第2基板12の上面外周側にビス、接着剤或いは押え部材等を介して水密状に固着され、第2基板12の上面側のシート材を、第2基板12と第1基板11とで挟持するようにして収められるものである。また、ベース1が単体基板1Aの場合には、該単体基板1Aの外周にスカート部4を構成するシート材の外周縁部分がビス、接着剤或いは押え部材等を介して水密状に固着される。
【0049】
固定板45は、細長状の金属材等の平帯形状とした板材である。スカート部4は、その内部に、送風機構部2から空気供給孔13,空気溜め室14を介して圧縮空気が供給されると、スカート部4は、前記固定板45の部分がベース1の下面側の中心位置に固定されているので、スカート部4は、内部に圧縮空気が溜まると、ベース1の下面側から見て、略「ロ」字形状となるように膨張する。
【0050】
つまり、ベース1に固着された固定板45によってスカート部4は、固定板45の部分がベース1の下面側に密着し、これによって、スカート部4に圧縮空気が十分に充填されたときには、該スカート部4は長方形等の方形状の中心部で、上方に窪むようにして形成される。そして、圧縮空気によって膨張したスカート部4の中央箇所には固定板45の長手方向に沿った凹み状の空隙部Sが構成される。空隙部Sの全面には多数の孔4a,4a,…が設けられる〔
図1(E),
図2(A)等参照〕。前記固定板45は、スカート部4が膨張状態にあるときに、長方形状とした固定板45の角部からスカート部4を保護するために、固定板45の4個の角部はアール(円弧)を設けることが好ましい。
【0051】
そして、スカート部4によって囲まれた構成の空隙部Sには、多数の孔4a,4a,…から噴出した空気が溜まる。これによって、空隙部S内には多数の孔4a,4a,…から噴出された空気が溜まり、これが搬送機を地面から浮上させる浮力となり、搬送機を浮上且つ走行可能な状態とする。本発明における搬送機は地面から浮上するとともに走行可能な状態となる。
【0052】
また、空隙部Sに溜まった空気の圧力によって、例えば雨水等によって水溜りが生じた地面を本発明の搬送機が浮上しつつ走行しようとするときには、地面からの適正な浮上状態を維持することができ、水溜りによる水分によって浮上及び走行が妨げられないようになっている。つまり、搬送機の地面の水溜りにおけるスタック(停止)現象を防止することができる〔
図6(A),(B)参照〕。また、固定板45によってスカート部4は、正面から見て2つの空気袋部にわかれ、地面に対して略2点設置状態となり、安定走行が可能となる〔
図6(C)参照〕。
【0053】
スカート部4に設けられた多数の孔4a,4a,…は、スカート部4全面に設けられるものではなく、スカート部4が圧縮空気により膨張して、浮上且つ走行可能な状態となったときに、搬送機が走行するときの地面に対向する部分(領域)に孔4a,4a,…が設けられるものである〔
図1(B)参照〕。つまり、スカート部4が圧縮空気によって膨張したときの外周側面(外周壁状面と称しても良い)には孔4a,4a,…は設けられていない〔
図1(A),
図2(A),
図3(A)参照〕。
【0054】
つまり、スカート部4に設けられる孔4a,4a,…は、本発明の搬送機が地面より浮上するための浮力を発生するための部分(領域)だけスカート部4に設けられている。これによって、搬送機の地面からの浮力を生じさせるための圧縮空気による孔4a,4a,…からの空気噴出を浮力を極めて有効に作動させることができる。
【0055】
本発明は、搬送機が停止した状態、例えば初動状態或いは走行状態から一旦停止し、搬送機のスカート部4から空気が抜けてしぼんだ状態となって、該スカート部4が地面に密着してスタックした状態から再起動(始動)するときなどにおいて、円滑に走行可能な状態に移行できるものである。つまり、しぼんだ状態のスカート部4の多数の孔4a,4a,…が地面によって塞がれ、空気噴出をしにくくなってしまうことがある。これに対して、本発明の搬送機では、送風機構部2によってスカート部4に圧縮空気が送られて該スカート部4が膨張し、スタック(停止)した状態から円滑に安定した状態で浮上及び走行ができる構成を備えている。具体的に述べると、ベース1に設けられた空気溜め室14と弁16との働きによって、搬送機の初動作におけるスタック現象を防止しようとするものである(
図5参照)。
【0056】
このスタック現象は、地面の水溜りによるスタック現象ではなく、従来の通常の搬送機において地面と空気の抜けたスカート部4とが密着して、スカート部4が地面から離れなくなり、送風機構部2からの圧縮空気をスカート部4内に供給し難くなる状態である〔
図5(A),(B)等参照〕。つまり、スカート部4内に圧縮空気を供給しても、スカート部4の地面に密着していない部分の多数の孔4a,4a,…から供給された圧縮空気が漏れ出すために、スカート部4がなかなか膨張しないことになる。
【0057】
このようなときには、搬送機の一部を上方に物理的に持ち上げることで、スカート部4内に供給された圧縮空気が溜まり始めるものである。本発明における搬送機では、この持ち上げ動作を、空気溜め室14と弁16によって行うことができる。具体的には、送風機構部2からベース1の空気供給孔13に圧縮空気を供給すると、まず、弁16によって密閉された空気溜め室14に圧縮空気が溜まり始める〔
図5(A)参照〕。
【0058】
弁16は、空気溜め室14内に溜まった圧縮空気の圧力が一定の値を超えると開弁するように設定されている。そのために、空気溜め室14に流入した圧縮空気が充満しても、その圧力が一定の値を超えないところでは、弁16は閉弁状態を維持している〔
図5(B)参照〕。そして、空気溜め室14に圧縮空気がさらに流入し、該空気溜め室14に溜まった圧縮空気が膨張して一定の値を超えると弁16が開弁し、空気溜め室14に溜まった圧縮空気がスカート部4内に勢いよく流入し、その流入する勢いでスカート部4の一部が地面から盛上る〔
図5(C)参照〕。
【0059】
この搬送機におけるスカート部4の一部の盛り上がりによって、空気溜め室14内の圧縮空気は、スカート部4内に均等且つ安定した状態で供給され、スカート部4は地面から浮上且つ走行可能な状態になる〔
図5(D)参照〕。さらに、空気溜め室14内の圧縮空気が一定の値を超えることで、弁16の開弁動作が瞬間的且つ急開弁となることが好ましく、弁16の開弁動作がスカート部4内から地面を蹴り上げるようになり、より一層、浮上且つ走行動作に到る状態をより一層迅速にできる。
【0060】
ベース1には、ハンドル17が装着されることもある。ハンドル17は、作業員が手にして搬送体Aを移動させたり、或いは複数の搬送体A,A,…のハンドル17同士を連結して、複数の搬送体A,A,…を同時に移動させることもできる。ハンドル17は、ベース1に対して着脱自在とすることもある。
【0061】
なお、ハンドル17は、ベース1の端辺寄りの部分に装着され、作業員は、ハンドル17を手にして手押しすることになる。したがって、ベース1の長手方向において、ハンドル17が装着された側を搬送機の後方側とし、その後方側とは長手方向において反対側を搬送機の前方側とする(
図1参照)。但し、搬送機の前後方向は、使用する作業員によって適宜決定されるものであり、ベース1のハンドル17装着側を前方側とし、その反対側を後方側としても構わない。
【0062】
ハンドル17は、門形状或いは逆U字形状のものが使用される〔
図1(C),
図11(C)参照〕。また、ハンドル17は、ハンドル基部17aを回動中心とした畳みタイプとすることもある〔
図10(A),
図11(A),(B)参照〕。前述したように、ベース1の上方側に設置される送風機構部2は、ベース1の上面から一定高さ位置に設置される場合では、送風機構部2はハンドル17の任意の位置に装着されることになる。
【0063】
具体的には、ハンドル17には高さ方向中間箇所に補強板17bが設けられていることもあり、該補強板17bに送風機構部2をクランプ等の取付部材17cを介して装着されることになる〔
図1(C),
図11(C)参照〕。また、ハンドル17は、特に図示しないが、一本の支柱の上方で二股に分かれる自転車のハンドルタイプとするものを使用することもできる。
【0064】
したがって、ハンドル17が装着されたベースの端辺側を搬送機の後方側とし、その後方側端辺に対向する端辺を搬送機の前方側とする〔
図1(B)参照〕。但し、搬送機の前後方向は、使用する作業員によって適宜決定されるものであり、ベース1のハンドル17装着側の端辺を前方側とし、その反対側の端辺を後方側としても構わない。
【0065】
本発明の搬送機には、キャスタ18が設けられる実施形態も存在する(
図15参照)。キャスタ18は、ベース1の下面側の4つの隅角箇所にそれぞれの装着されている。キャスタ18は搬送機の移動時におけるスタビライザー(安定装置)としての役目なす。また、水滴による移動障害や吸い付き防止に対して有効である。また、一定の高さを保持しているために水溜りによるスタック現象時の緊急避難用の対策となる。
【0066】
本発明の搬送機のベース1は、前述したように、正方形状としたものが存在する(
図8参照)。この実施形態では、ベース1が第1基板11と第2基板12とから構成されるものでは、それぞれが正方形の板であり、スカート部4はそのスカートシート材4sも正方形であることが製造上好ましい。そして、ベース1を正方形状とした実施形態は、長方形状とした実施形態と構成は略同等である。したがって、第1基板11には空気供給孔13が形成され、第2基板12には空気溜め室14が形成されている。
【0067】
また、第1基板11上にはハンドル17及び送風機構部2が設けられている〔
図8(A)参照〕。さらに、搬送機の下面側で且つスカート部4の中央には固定板45が設けられ固着具46にてベース1の下面側に固着されている。このベース1を正方形状とした実施形態における固定板45は、円板形状の板を使用することが好ましい〔
図8(B)参照〕。この場合、空隙部Sは円形状ドーム状となり、安定且つ均一の浮力を生じさせることができる。また、固定板45は、ベース1と同様に、正方形状の板としてもよい。
【0068】
次に、本発明の搬送機の動作について説明する。まず、送風機構部2が始動されて、送風部21から空気供給管23を介してスカート部4に空気が供給される。スカート部4に空気が供給される。スカート部4の十分な膨らみにともない、スカート部4の多数の孔4a,4a,…から空気が吹き出し、揚力が発生する。また、同時に空隙部S内に溜まった圧縮空気の圧力も搬送機の浮揚に寄与する。この状態で地面(床面)と本装置との接触がなくなるため摩擦抵抗が極めて小さな値となり、小さな力で押すだけで本装置を移動させることができ、重量物の搬送ができる。
【0069】
次に、本発明の搬送機の使用例について説明する。建設現場におけるシート材によって、防水構造とした屋根,屋上或いは床等の施工に好適である。シート工法は、
図12乃至
図14に示すように、金属製のデッキプレート91上に断熱材92を敷き、その上に高分子材等の樹脂製のシート材93を貼着して屋根,屋上或いは床等のシート状外囲体を施工するものである。
【0070】
施工にあたっては、各工程ごと、事前に建築物の施工箇所に各種資材を揚上し、取り付け等を行う。まず、デッキプレート91が施工される〔
図12(A),
図13(A)参照〕。デッキプレート91上に断熱材92が敷設される。断熱材92はフラット板状であり、本発明の搬送機が稼動できる程度の面積まで、作業員の手作業にて敷設される。デッキプレート91上に断熱材92が全体に行き渡ったときには、平坦状の地面(路面)が完成し、本発明の搬送機が浮上しつつ移動できる。
【0071】
搬送機に、断熱板92を積載し、搬送機が移動可能な範囲内を移動し、積載された断熱材92を敷設してゆく。このようにして、搬送機にて断熱材92を一定位置に搬送しつつ、敷設を行い、多数の断熱材92による床状面を施工する。断熱材92による床状面が完成すると、搬送機は全面移動可能となる。この状態で搬送機にロール状に巻き付けられたシート材93を積載し、一定位置に搬送し、断熱材92による床状面上にシート材93を敷設してゆく(
図14参照)。これによって、建築物のフラットな面を施工することができる。
【0072】
補強部材81は、断面が略逆ハット形状の型鋼材が使用される。具体的には断面凹状の樋状部81aが形成され、該樋状部81aの幅方向上端箇所より略水平状の水平状片81b,81bが形成されている(
図10,
図11参照)。補強部材81は、その長手方向がベース1の長手方向に沿うようにして、2本がベース1の幅方向両側に位置するように配置される。
【0073】
そして、樋状部81aの底面がベース1に設置され、ビス等の固着具にてベース1に固定される(
図10,
図11参照)。2本の補強部材81は、その断面二次モーメントが大きなものが強度上好ましい。また、前記ハンドル17は、両補強部材81,81のそれぞれの水平状片81b,81b上に設置される。具体的には、ハンドル17のハンドル基部17aが水平状片81b上に設置固定される。
【0074】
次に、補強部材81は、仕切り部材82及び案内部材83が装着される構成とした実施形態も存在する(
図9,
図10参照)。この実施形態では、まずベース1の幅方向両側に装着された補強部材81,81の互いに向かい合い対向する水平状片81b,81bには、被係止部81c,81cが形成されている。それぞれの補強部材81の水平状片81bには複数の被係止部81c,81c,…が形成される。複数の被係止部81c,81c,…の間隔は、水平状片81bの長手方向において等間隔、又は略等間隔である。被係止部81cは、具体的には、線状の切欠きであり、該切欠きの線方向は水平状片81bの長手方向と直交する構成となっている。水平状片81bに形成された被係止部81cの内端側は外方に開放されている。
【0075】
仕切り部材82は、両補強部材81の被係止部81c,81cに着脱自在に係止する係止部82aを有すると共に前記ベース1上に直立状態となる仕切り板部82bを有する。係止部82aと、仕切り板部82bとの間には屈曲座部82cが形成されている。該屈曲座部82cは、前記係止部82aと仕切り板部82bに対して略水平状となる折返し状部分である。
【0076】
そして、仕切り部材82の係止部82aの幅方向両側は、両前記補強部材81,81の水平状片81b,81bに形成された対向する被係止部81c,81cに挿入するように係止される。そして、ベース1上を長手方向に沿って、任意の位置に仕切り部材82を設置し、ベース1の長手方向の任意の位置で積載スペースを区切ることができる〔
図12(A)参照〕。これによって、ベース1上の積載物が少なく、円筒状の建設用材9等がベース1上で不用意に転動してベース1から脱落することを防止できる。
【0077】
また、案内部材83は、ベース1の前端側の被係止部81cに着脱可能に係止する係止端縁83aを有し、前記ベース1に装着された状態で該ベース1の前端から前方側且つ下方に延びる傾斜案内部83bを有するものである。そして、案内部材83がベース1の補強部材81に適正に装着された状態で、前記傾斜案内部83bが緩やかな傾斜の案内板となり、円筒状等の建設用材9を衝撃なく安全にベース1から降ろすことができる〔
図12(B)参照〕。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明における搬送機は、前述したように、建築現場における重量物の搬送に使用するものとして説明したが、その他にも多くの分野で使用可能であり、例えば、行楽等のレジャーで、簡易乗り物として使用したり、簡単な荷物運搬の手段として使用することも可能である。
【0079】
本搬送機のベース1の上方には、補強部材81が装着される実施形態も存在する(
図10,
図11参照)。この実施形態では、長手方向に長尺であるベース上に重量のある建材が載置されたときに、その重量によってベース1が湾曲するように撓むことを防止して、安定した走行ができるようにするものである。
【符号の説明】
【0080】
1…ベース、13…空気供給孔、14…空気溜め室、16…弁、45…固定板、
11…第1基板、12…第2基板、17…ハンドル、2…送風機構部、
22a…モータ部、22b…エンジン、3…電源部、4…スカート部、81…補強部材、
82a…係止部、82b…仕切り板部、81c…被係止部。