(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】航空機の飛行支援システム、航空機の飛行支援プログラム及び航空機
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20230330BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20230330BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20230330BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230330BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G01C21/26 Z
B64C13/20 Z
B64D45/00 A
B64C13/18 Z
G08G5/00 A
(21)【出願番号】P 2019012643
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 巌
(72)【発明者】
【氏名】金田一 久美子
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165930(JP,A)
【文献】特開2017-126101(JP,A)
【文献】国際公開第2013/103002(WO,A1)
【文献】特開2018-195332(JP,A)
【文献】特開2017-019493(JP,A)
【文献】特開2018-165932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
B64C 13/20
B64D 45/00
B64C 13/18
G08G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空が航空機の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川の位置情報を保存する記憶装置と、
前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報に基づいて、前記航空機が目的地まで飛行するために、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置と、
を有し、
前記情報処理装置は、
無線信号に対応する情報として河川の水位を取得した場合に前記水位が許容範囲内であるか否かを判定し、前記水位が前記許容範囲外であると判定された場合には、前記水位が前記許容範囲外であると判定された河川上を回避する飛行経路を自動的に設定するように構成される航空機の飛行支援システム。
【請求項2】
航空機に搭載される飛行支援システムであって、
上空が前記航空機の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川の位置情報を保存する記憶装置と、
前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報に基づいて、前記航空機が目的地まで飛行するために、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置と、
を有し、
前記情報処理装置は、前記航空機を外部から管制する管制装置から発信され、前記航空機に備えられる無線機で受信された無線信号に対応する情報と、前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報とに基づいて、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを前記航空機の飛行中に自動判定するように構成され、かつ
前記航空機が飛行経路として設定された前記特定の河川上を飛行している場合に、前記特定の河川の水位を計測する水位計であって、前記水位の計測結果を前記水位の計測位置を特定するための情報とともに無線信号として発信する前記水位計から発信された前記水位の計測位置を特定するための情報を、前記航空機に備えられる無線機で受信した場合には、受信した前記水位の計測位置を特定するための情報に基づいて前記航空機の飛行位置を自動補正するように構成される航空機の飛行支援システム。
【請求項3】
河川の水位を計測し、計測した前記河川の水位及び前記水位の計測位置を無線機で発信する水位計に内蔵される航空機の飛行支援システムであって、
飛行中の航空機に備えられる無線機から無線信号として発信された前記航空機の所定の時刻における位置情報を、前記水位計に備えられる無線機を通じて取得する情報処理装置と、
取得された前記航空機の位置情報を保存する記憶装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、前記記憶装置に保存された前記航空機の位置情報を、前記航空機を外部から管制する管制装置又は別の航空機に備えられる無線機で受信できるように、前記水位計に備えられる無線機を通じて無線信号として発信するように構成される航空機の飛行支援システム。
【請求項4】
コンピュータを、
上空が航空機の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川の位置情報を保存する記憶装置、及び
前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報に基づいて、前記航空機が目的地まで飛行するために、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置、
として機能させる航空機の飛行支援プログラムであって、
前記情報処理装置は、
無線信号に対応する情報として河川の水位を取得した場合に前記水位が許容範囲内であるか否かを判定し、前記水位が前記許容範囲外であると判定された場合には、前記水位が前記許容範囲外であると判定された河川上を回避する飛行経路を自動的に設定する航空機の飛行支援プログラム。
【請求項5】
請求項1又は2記載の飛行支援システムを搭載した航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、航空機の飛行支援システム、航空機の飛行支援プログラム及び航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機を飛行させる際には、目的地と目的地に対応する飛行経路を定めることが必要である。そこで、航空機の目的地や飛行経路の設定を支援するための様々なシステムが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-211973号公報
【文献】特開2017-076302号公報
【文献】特開2017-126101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、航空機がより好ましい飛行経路に沿って飛行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る航空機の飛行支援システムは、上空が航空機の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川の位置情報を保存する記憶装置と、前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報に基づいて、前記航空機が目的地まで飛行するために、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置とを有し、前記情報処理装置は、無線信号に対応する情報として河川の水位を取得した場合に前記水位が許容範囲内であるか否かを判定し、前記水位が前記許容範囲外であると判定された場合には、前記水位が前記許容範囲外であると判定された河川上を回避する飛行経路を自動的に設定するように構成されるものである。
また、本発明の実施形態に係る航空機の飛行支援システムは、航空機に搭載されるものであって、上空が前記航空機の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川の位置情報を保存する記憶装置と、前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報に基づいて、前記航空機が目的地まで飛行するために、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置とを有し、前記情報処理装置は、前記航空機を外部から管制する管制装置から発信され、前記航空機に備えられる無線機で受信された無線信号に対応する情報と、前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報とに基づいて、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを前記航空機の飛行中に自動判定するように構成され、かつ前記航空機が飛行経路として設定された前記特定の河川上を飛行している場合に、前記特定の河川の水位を計測する水位計であって、前記水位の計測結果を前記水位の計測位置を特定するための情報とともに無線信号として発信する前記水位計から発信された前記水位の計測位置を特定するための情報を、前記航空機に備えられる無線機で受信した場合には、受信した前記水位の計測位置を特定するための情報に基づいて前記航空機の飛行位置を自動補正するように構成されるものである。
【0006】
また、本発明の実施形態に係る航空機の飛行支援システムは、河川の水位を計測し、計測した前記河川の水位及び前記水位の計測位置を無線機で発信する水位計に内蔵される航空機の飛行支援システムであって、飛行中の航空機に備えられる無線機から無線信号として発信された前記航空機の所定の時刻における位置情報を、前記水位計に備えられる無線機を通じて取得する情報処理装置と、取得された前記航空機の位置情報を保存する記憶装置とを備え、前記情報処理装置は、前記記憶装置に保存された前記航空機の位置情報を、前記航空機を外部から管制する管制装置又は別の航空機に備えられる無線機で受信できるように、前記水位計に備えられる無線機を通じて無線信号として発信するように構成されるものである。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る航空機の飛行支援プログラムは、コンピュータを、上空が航空機の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川の位置情報を保存する記憶装置及び前記記憶装置に保存された前記河川の位置情報に基づいて、前記航空機が目的地まで飛行するために、少なくとも前記航空機の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置として機能させるものであって、前記情報処理装置は、無線信号に対応する情報として河川の水位を取得した場合に前記水位が許容範囲内であるか否かを判定し、前記水位が前記許容範囲外であると判定された場合には、前記水位が前記許容範囲外であると判定された河川上を回避する飛行経路を自動的に設定するものである。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る航空機は、上述した飛行支援システムを搭載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る航空機の飛行支援システムを含む全体構成図。
【
図2】
図1に示す飛行支援システムの機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る航空機の飛行支援システム、航空機の飛行支援プログラム及び航空機について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る航空機の飛行支援システムを含む全体構成図であり、
図2は
図1に示す飛行支援システムの機能ブロック図である。
【0013】
飛行支援システム1A、1B、1Cは、航空機2の飛行経路ができるだけ安全性の高い河川上となるようにするための飛行支援を行うシステムである。河川の1つである川は、水の流れがある場所を指し、川のうち大きなものは河と呼ばれる場合もある。また、湖沼も水の流れがある場所に該当するため河川の一種である。明確な定義は無いが、湖沼のうち、比較的大きなものが湖と呼ばれ、比較的小さなものが沼又は池と呼ばれる場合が多い。
【0014】
これらの河川上には、通常、建築物が無く、山間部でなければ河川の水面は平坦である。また、河川上に人が存在する可能性は、地上に比べて飛躍的に低い。従って、航空機2から物が落下したり、航空機2の高度が減少しても人的被害を最小限に留めることができる。しかも、航空機2が着水可能であれば、地上に比べて起伏が少ない河川の水面上に離着陸することも可能となる。
【0015】
そこで、河川上を航空機2の飛行経路の選択肢として決定し、所望の条件を満たした場合に、河川上を航空機2の飛行経路に設定することができる。具体例として、航空機2が人や物を定期的に輸送する目的で使用される場合であれば、上空が定期的な航空機2の飛行経路の選択肢となり得る少なくとも1つの河川を予め決定しておき、所望の条件を満たした場合には河川上を定期的な航空機2の飛行経路に決定することもできる。
【0016】
飛行支援システム1A、1B、1Cは、上空が航空機2の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川の位置情報を保存する記憶装置3と、記憶装置3に保存された河川の位置情報に基づいて、航空機2が目的地まで飛行するために、少なくとも航空機2の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置4によって構成することができる。
【0017】
このため、飛行支援システム1A、1B、1Cは、航空機2の飛行支援プログラムを読込ませたコンピュータ等の電子回路で構成することができる。航空機2の飛行支援プログラムは、コンピュータを、飛行支援システム1A、1B、1Cの記憶装置3及び情報処理装置4として機能させるプログラムである。航空機2の飛行支援プログラムは、情報記録媒体に記録して、或いは、インターネット等のネットワークを介してプログラムプロダクトとして流通させることもできる。
【0018】
飛行支援システム1A、1B、1Cの記憶装置3は、上空が航空機2の飛行経路の選択肢となる単一又は複数の河川の位置情報を保存する河川データベースとして機能する。航空機2の飛行経路は、特定の河川の走行方向に沿った河川の上空に設定することが、河川上空の有効利用に繋がる。但し、河川上を横切る飛行経路を設定しても良い。
【0019】
実用的な例として、橋等の河川上の構造物を避けて河川上を横切る航空機2の飛行経路を設定しても良い。河川上において、河川の走行方向と異なる方向に航空機2の飛行経路を設定できるようにする場合には、河川の長さ方向のみならず、河川の太さ方向における位置を含む2次元マップとして河川の位置情報を記憶装置3に保存するようにしても良い。
【0020】
以降では、主に、河川上において河川の走行方向に沿った航空機2の飛行経路を設定できるようにする場合を例に説明する。その場合には、上空を航空機2の飛行経路の選択肢として決定した河川の長さ方向における位置情報を、少なくとも記憶装置3に保存すれば良い。
【0021】
但し、河川の走行方向に沿った航空機2の飛行経路を設定する場合においても、河川の太さ方向における位置を含む2次元マップを河川の位置情報として記憶装置3に保存すれば、河川の幅を考慮したより詳細な航空機2の飛行経路の設定が可能となる。例えば、できるだけ河川の中央付近を航空機2の飛行経路として設定したり、同一の河川上を逆方向に飛行する他の航空機2とすれ違うことができるように、航空機2の進行方向別に飛行経路を設定することが可能となる。
【0022】
飛行支援システム1A、1B、1Cは、航空機2、航空機2を外部から管制する管制センタ5及び河川近傍の少なくとも1つに備えることができる。
図1に示す例では、航空機2、管制センタ5及び河川近傍の全てに飛行支援システム1A、1B、1Cが備えられている。
【0023】
航空機2に搭載される飛行支援システム1Aは、航空機2の操縦支援システムの一部として機能させることができる。一方、管制センタ5に備えられる飛行支援システム1Bは、航空機2の管制装置6の一部として内蔵することができる。また、河川近傍に設置される飛行支援システム1Cは、管制センタ5に航空機2の管制装置6の一部として備えられる飛行支援システム1Bの一部を構成する端末又は独立した補助的な航空機2の管制装置6として機能させることができる。
【0024】
飛行支援システム1A、1B、1Cによる飛行支援対象となる航空機2は、人が搭乗しない無人航空機(UAV:Unmanned aerial vehicle)はもちろん、人が搭乗する有人航空機やOPV(Optionally Piloted Vehicle)であっても良い。OPVはパイロットが搭乗して操縦することも可能な無人航空機であり、有人航空機と無人航空機のハイブリッド航空機である。UAVはドローンとも呼ばれ、無人のマルチコプタやヘリコプタ等の回転翼航空機が代表的である。もちろん、有人又は無人の固定翼航空機を飛行支援システム1A、1B、1Cによる飛行支援対象としても良い。
【0025】
典型的な航空機2には、航法装置7及び無線機8Aを備えた通信装置8が備えられる。航法装置7は、航法装置7が搭載される航空機2の空間位置を求める装置である。一方、通信装置8は、管制センタ5に管制装置6として備えられる飛行支援システム1B、河川近傍に設置される飛行支援システム1C又は他の航空機2との間において、無線で一方向通信又は双方向通信を行うためのデバイスである。
【0026】
航法装置7の種類としては、慣性航法装置、全地球測位網(GPS:Global Positioning System)航法装置及びドップラ・レーダ航法装置が知られている。慣性航法装置は、姿勢の変化を検出するジャイロ及び速度の変化を検出する加速度計等の慣性計測センサを用いて航空機2の空間位置及び速度を検出する装置である。GPS航法装置は、
図1に例示されるように複数のGPS衛星9からの電波をGPS受信機で受信することによって航空機2の空間位置を検出するシステムである。ドップラ・レーダ航法装置は、地表に向けて発射した電波ビームの反射ビームの周波数がドップラ効果により変化することを利用した航法装置7である。また、航法装置7として電波高度計等の航法センサを併用してもよい。
【0027】
航法装置7で求めた航空機2の空間位置は時刻とともに通信装置8で無線信号として、管制センタ5に管制装置6として備えられる飛行支援システム1B、河川近傍に設置される飛行支援システム1C及び他の航空機2等に送信することができる。このため、各航空機2の各時刻における時系列の空間位置を、管制センタ5に管制装置6として備えられる飛行支援システム1Bや河川近傍に管制装置6として設置される飛行支援システム1Cにおいて収集することができる。
【0028】
航空機2の通信装置8を利用した通信は、通信衛星10や中継用の基地局11を介して行っても良い。通信衛星10や中継用の基地局11を介して無線通信を行うようにすれば、航空機2と管制センタ5が、十分な強度で電波信号を直接伝播させることが困難な程、離れている場合であっても、航空機2と管制センタ5との間で双方向通信を行うことが可能となる。
【0029】
また、携帯電話の通信規格であるLTE(Long Term Evolution)で使用される周波数を割り当てて航空機2と管制センタ5との間における通信を行うようにすれば、既存の携帯電話用の基地局を、航空機2と管制センタ5との間における通信用の基地局11としてそのまま利用することが可能となる。
【0030】
航空機2に飛行支援システム1Aが搭載される場合には、航空機2に河川データベースとして機能する記憶装置3と、記憶装置3に保存された河川の位置情報に基づいて、航空機2が目的地まで飛行するために、少なくとも航空機2の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定する情報処理装置4が航空機2に搭載されることになる。
【0031】
このため、航空機2に飛行支援システム1Aの情報処理装置4では、飛行支援システム1Aが搭載されている航空機2の飛行中において、飛行支援システム1Aが搭載されている航空機2の飛行経路を、特定の河川上にするべきか否かを自動判定することが可能となる。すなわち、飛行支援システム1Aによって、飛行中における航空機2の未決定の飛行経路を新たに設定したり、設定済の飛行経路を変更することが可能である。
【0032】
他方、管制センタ5や河川近傍に、管制装置6として飛行支援システム1B、1Cが備えられる場合には、河川データベースとして機能する記憶装置3と、情報処理装置4が管制センタ5や河川近傍に備えられる。そして、飛行支援システム1B、1Cを含む管制装置6によって単一又は複数の航空機2が外部から管制されることになる。
【0033】
具体的には、管制装置6として備えられる飛行支援システム1B、1Cの情報処理装置4において、記憶装置3に保存された河川の位置情報に基づいて、河川上を飛行経路の選択肢として飛行中の少なくとも1機の航空機2の飛行経路を、特定の河川上にするべきか否かを自動判定し、飛行中の少なくとも1機の航空機2の飛行経路を決定するための情報を生成することができる。そして、情報処理装置4で生成された情報を、飛行支援システム1B、1Cの構成要素として備えられる通信装置12の無線機12Aから無線信号として航空機2に向けて発信することができる。
【0034】
管制装置6又は管制装置6の一部として備えられる飛行支援システム1B、1Cでは、単一又は複数の飛行中の航空機2はもちろん、単一又は複数の飛行前における航空機2の飛行経路を設定することも可能である。すなわち、管制装置6として備えられる飛行支援システム1B、1Cでは、少なくとも1機の航空機2の飛行経路を航空機2の飛行前において自動設定することができる。その場合には、情報処理装置4において、記憶装置3に保存された河川の位置情報に基づいて、単一又は複数の航空機2を利用する輸送、観測或いは農薬散布等の任務が達成されるように航空機2の飛行前において航空機2の飛行経路を特定の河川上に自動設定することができる。
【0035】
航空機2の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かは、航空機2の安全性が確保できるか否かという観点や航空機2の任務を効率的に行えるか否かという観点に代表されるように、予め指定した任意の条件に基づいて決定することができる。そして、記憶装置3に保存された河川の位置情報に基づいて、航空機2が目的地まで飛行するために、予め決定した選択条件に基づいて河川上の飛行経路を選択できる場合には、1つの河川上の飛行経路を航空機2の飛行経路として決定することが河川上の有効利用に繋がる。
【0036】
実用的な例として、航空機2の安全性を表すパラメータの値が許容範囲内であれば、河川上を航空機2の飛行経路として決定することができる。更に、複数の河川上が航空機2の飛行経路として選択できる場合には、航空機2の安全性を表すパラメータの値及び航空機2を使用した任務を行う際の効率性を表すパラメータの値が最適な組合せとなる河川上を、航空機2の飛行経路として決定することができる。つまり、航空機2の安全性を確保しつつより効率的な飛行経路となるように、河川上を航空機2の飛行経路に決定することができる。
【0037】
航空機2の安全性を表すパラメータの具体例としては、雷、雹或いは濃霧の有無や程度を表す気象パラメータや噴火の有無等を表す地学パラメータが挙げられるが、航空機2の飛行経路の選択肢となる河川の水位や河川上における風況が代表的なパラメータである。河川上における風況は、風速及び風向をパラメータとして表すことができる。そこで、河川の水位、河川上の風速及び河川上の風向の少なくとも1つが許容範囲外となった場合には、対応する河川上を航空機2の飛行経路に設定しないことが適切である。
【0038】
河川の水位は、河川の随所に設置される水位計13で計測することができる。近年では、河川の水位を計測し、計測した河川の水位を水位の計測結果として水位の計測位置を特定するための情報とともに無線機14Aを備えた通信装置14で無線信号として発信するワイヤレス水位計が市販されている。一方、河川上空における風速及び風向は、気象用の観測装置を河川近傍に設置して計測する他、河川上空を飛行する航空機2に備えられる観測装置15で観測することもできる。
【0039】
典型的な航空機2には、大気速度等のエア・データを測定するために迎え角センサ、圧力センサ及び温度センサ等のセンサを含む観測装置15が備えられる。このため、航空機2に備えられる観測装置15で河川上空における風速及び風向を観測することができる。
【0040】
そこで、航空機2が、飛行経路として設定された特定の河川上を飛行している場合に、航空機2に備えられる観測装置15のセンサで測定された河川上における風向及び風速の少なくとも一方を、航空機2の位置に関連付けて無線信号として管制センタ5の管制装置6又は河川近傍に設置される他の管制装置6に、航空機2に備えられる無線機8Aで発信させることができる。
【0041】
このように、河川の水位や河川上における風況等の情報については、河川近傍に存在する水位計13や航空機2の観測装置15から観測データとして管制装置6に転送することができる。或いは、管制装置6を経由せずに、河川近傍に存在する水位計13や他の航空機2に搭載された観測装置15等から観測データを航空機2の飛行支援システム1Aに転送するようにしても良い。その場合、河川の水位や河川上における風況をリアルタイムに航空機2の飛行支援システム1Aに通知することが可能となる。
【0042】
特に、典型的なデジタル式の水位計13は、通信装置14のみならず、記憶装置16及び演算装置17等の電気回路を備えている。そこで、水位計13に備えられるコンピュータに航空機2の飛行支援プログラムをインストールすることによって、水位計13に飛行支援システム1Cとしての機能を付加することもできる。つまり、水位計13の演算装置17を飛行支援システム1Cの情報処理装置4として機能させる一方、水位計13の記憶装置16を飛行支援システム1Cの記憶装置3として機能させることができる。
【0043】
その場合、上空が定期的な航空機2の飛行経路の選択肢となる少なくとも1つの河川に水位計13を設置すれば、設置した水位計13に備えられる通信装置14、記憶装置16及び演算装置17を利用して、水位計13と、管制センタ5に管制装置6の一部として備えられる飛行支援システム1B及び航空機2に搭載される飛行支援システム1Aとの間で一方向通信のみならず、双方向通信を行うことが可能となる。
【0044】
特に、既存の水位計13を更新するタイミングで管制装置6及び飛行支援システム1Cとしての機能を付加した水位計13に置き換えれば、管制装置6及び飛行支援システム1Cの設置コストを低減することができる。換言すれば、水位計13が設置されていない箇所にのみ、新規に管制装置6として機能する飛行支援システム1Cを設置するのみで、河川上を飛行経路とする航空機2用のインフラストラクチャを整備することが可能である。
【0045】
水位計13と、管制センタ5に備えられる飛行支援システム1Bや航空機2に搭載される飛行支援システム1Aとの間で一方向通信を行う例としては、上述したように水位計13から河川の水位の計測値を、管制センタ5の飛行支援システム1Bや航空機2の飛行支援システム1Aに無線で送信する通信が挙げられる。このような一方向通信は、既存の単純な水位計測機能を備えた水位計13でも行うことができる。
【0046】
加えて、水位の計測位置を特定するための情報を、水位計13から航空機2の飛行支援システム1Aに無線で送信することもできる。水位の計測位置を特定するための情報は、水位計13の位置又は水位の計測位置を表す座標自体としても良いし、水位計13の識別情報と水位計13の位置又は水位の計測位置との関係を表すテーブルを参照して水位の計測位置を特定できるように、水位計13の識別情報としても良い。
【0047】
水位の計測位置を特定するための情報を、水位計13から航空機2の飛行支援システム1Aに送信する場合、水位の計測位置を特定するための情報を受信した航空機2の飛行支援システム1Aでは、航法装置7に加えて水位計13の位置又は水位の計測位置に基づいて航空機2の空間位置を自動的に特定することが可能となる。
【0048】
そこで、航空機2が飛行経路として設定された特定の河川上を飛行している場合において、特定の河川の水位を計測する水位計13から発信された水位の計測位置を特定するための情報を、航空機2に備えられる無線機8Aで受信した場合には、航空機2に搭載される飛行支援システム1Aの情報処理装置4により、受信した水位の計測位置を特定するための情報に基づいて航空機2の飛行位置を自動補正するようにしても良い。
【0049】
或いは、航空機2が有人航空機であれば、航空機2に備えられる表示装置18に、水位計13の位置又は水位の計測位置を表示させるようにしても良い。これにより、航空機2の搭乗者は、航空機2の現在の位置を容易に把握することができる。
【0050】
このように、水位計13を航空機2の飛行位置を確認又は補正するための電波標識として用いることができる。
【0051】
一方、航空機2の飛行支援システム1A及び管制センタ5の飛行支援システム1Bと、水位計13に内蔵される飛行支援システム1Cとの間で双方向通信を行えるようにすれば、所望の情報を水位計13に内蔵される記憶装置3に保存したり、逆に水位計13に内蔵される記憶装置3に保存されている情報を抽出して発信することができる。
【0052】
実用的な例として、飛行中の航空機2に備えられる通信装置8から無線信号として発信された航空機2の所定の時刻における位置情報を、水位計13の無線機14Aを通じて水位計13に内蔵される情報処理装置4で取得し、取得された航空機2の位置情報を水位計13の記憶装置3に保存することができる。
【0053】
そうすると、水位計13の記憶装置3には、水位の計測対象となる河川の上空を通過した航空機2の識別情報と、通過時刻を記録することができる。水位計13の記憶装置3に保存された各航空機2の通過時刻は、各航空機2が計画通り飛行しているかといった飛行状況の把握、各航空機2による任務の達成状況の把握及び航空機2間における適切な間隔の確保など、様々な目的で使用することができる。具体例として、航空機2による任務が貨物等の物品の輸送であれば、輸送物の現在位置の把握に役立てることができる。
【0054】
このため、水位計13の情報処理装置4には、記憶装置3に保存された航空機2の位置情報を、別の航空機2に備えられる無線機8A又は他の管制装置6で受信できるように、水位計13の無線機14Aを通じて無線信号として発信する機能を設けることができる。
【0055】
別の具体例として、航空機2の観測装置15で観測された風速及び風向等の観測データや最寄りの気象観測装置で観測された天候情報を水位計13に転送し、水位計13の記憶装置3に保存することもできる。その場合には、風速及び風向等の観測データや天候情報を、航空機2に備えられる無線機8A又は他の管制装置6で受信できるように発信することができる。
【0056】
管制センタ5や河川の近傍に設置される管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cにおいて、河川の水位、河川上の風速及び河川上の風向が収集されると、航空機2の安全性を表すパラメータの値として、管制装置6の飛行支援システム1B、1Cから無線通信によって、自律的に飛行する航空機2の飛行支援システム1Aに送信することができる。
【0057】
或いは、航空機2が管制装置6からの遠隔制御によって飛行する場合や航空機2の飛行前に飛行経路が設定される場合であれば、管制装置6の飛行支援システム1B、1Cにおいて、航空機2の安全性を表すパラメータの値に基づいて、安全性の低い河川上が回避されるように航空機2の飛行経路の自動設定を行うことができる。
【0058】
具体的には、管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cの情報処理装置4は、上空が航空機2の飛行経路の選択肢となる河川の水位及び航空機2の飛行経路の選択肢となる河川上における風況の少なくとも一方が許容範囲内であるか否かを閾値処理によって自動判定することができる。そして、水位及び風況の少なくとも一方が許容範囲外であると判定された場合には、水位及び風況の少なくとも一方が許容範囲外であると判定された河川上を回避する飛行経路を航空機2の飛行経路に自動的に設定することができる。
【0059】
航空機2を管制装置6からの遠隔制御によって飛行させる場合には、航空機2を飛行経路に沿って飛行させるための飛行プログラムを航空機2に送信して自動飛行させる飛行制御か、航空機2が飛行経路に沿って飛行するように遠隔から操縦するための制御情報を航空機2に送信して自動飛行させる飛行制御を採用することができる。
【0060】
従って、管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cの情報処理装置4では、航空機2の飛行経路を特定の河川上にするべきと判定した場合には、航空機2が特定の河川上を飛行するように航空機2の飛行経路又は航空機2を遠隔から自動操縦するための航空機2の制御情報を自動的に設定することができる。そして、管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cの無線機12Aから、情報処理装置4において設定された航空機2の飛行経路又は航空機2の制御情報を無線信号として航空機2に向けて発信することができる。
【0061】
航空機2の離陸地点と着陸地点との間を走行する全ての河川について、水位及び風況等の安全性を表すパラメータの値が許容範囲外となる場合のように、予め決定した河川の選択条件に基づいて河川上の飛行経路を選択できない場合には、飛行支援システム1B、1Cの情報処理装置4において、航空機2の飛行経路を特定の河川上にするべきではないと自動判定されることになる。そのような場合には、情報処理装置4において、陸上や海上の飛行経路のように、河川上でない飛行経路を航空機2の飛行経路として自動設定することができる。
【0062】
すなわち、管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cの情報処理装置4において、航空機2が目的地まで飛行するために、安全性の確保等の観点で予め決定した選択条件に基づいて河川上の飛行経路を選択できる場合には1つの河川上の飛行経路を航空機2の飛行経路として自動設定する一方、選択条件に基づいて河川上の飛行経路を選択できない場合には、河川上でない飛行経路を航空機2の飛行経路として自動設定することができる。
【0063】
また、航空機2の飛行前に航空機2の飛行経路を設定する場合や航空機2の離陸後であっても河川上が飛行経路の選択肢となる空域に進入する前であれば、自動車や鉄道等の陸上交通で貨物輸送等の任務を代替したり、航空機2を着陸させて一時的に待機した後、航空機2の飛行を再開する飛行計画を策定することも可能である。
【0064】
そこで、管制センタ5に設置される管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cの情報処理装置4には、航空機2の飛行経路として、予め決定した選択条件に基づいて河川上の飛行経路を選択できない場合には、陸上交通による任務の遂行を提案する情報又は航空機2を一時的に待機させることを提案する情報を管制センタ5に設置される管制装置6の表示装置19に表示させる機能を設けることもできる。これにより、例えば、河川の水位が高い場合には、航空機2による空輸を、トラックによる輸送に変更したり、航空機2による空輸の時期を延期することができる。
【0065】
他方、航空機2が管制装置6からの遠隔制御によらず自律的に飛行する場合には、飛行経路を河川上とすべきか否かを判定して飛行経路を設定するための情報を、管制装置6から航空機2の飛行支援システム1Aに送信することができる。すなわち、上述したように、河川の水位や河川上の風速及び風向等の安全性を表すパラメータの値を管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cの記憶装置3に収集して保存しておき、河川の特定情報とともに無線で航空機2の飛行支援システム1Aに送信することができる。
【0066】
そうすると、管制装置6を構成する飛行支援システム1B、1Cから発信された河川の水位等の情報が、航空機2に備えられる無線機8Aで無線信号として受信される。そして、航空機2に搭載される飛行支援システム1Aの情報処理装置4では、無線機8Aで受信された無線信号に対応する河川の水位等の情報と、河川データベースとして機能する記憶装置3に保存された河川の位置情報とに基づいて、航空機2の飛行経路を特定の河川上にするべきか否かを自動判定することができる。
【0067】
より具体的には、航空機2に搭載される飛行支援システム1Aの情報処理装置4では、管制装置6から無線信号に対応する情報として、河川の水位及び河川上における風況の少なくとも一方を取得した場合には、水位及び風況の少なくとも一方が許容範囲内であるか否かを閾値処理によって自動判定することができる。そして、水位及び風況の少なくとも一方が許容範囲外であると判定された場合には、水位及び風況の少なくとも一方が許容範囲外であると判定された河川上を回避する航空機2の飛行経路を自動的に設定する一方、水位及び風況が許容範囲内であると判定された場合には、水位及び風況が許容範囲内であると判定された河川上を航空機2の飛行経路として自動設定することができる。
【0068】
このように、航空機2に搭載される飛行支援システム1Aの情報処理装置4では、河川の水位及び河川上における風況の少なくとも一方が許容範囲外であるか否かを選択条件として、記憶装置3に保存された河川上の飛行経路を航空機2の飛行経路として選択できるか否かを自動判定することができる。
【0069】
更に、航空機2に搭載される飛行支援システム1Aの情報処理装置4は、航空機2の飛行経路を特定の河川上にするべきと判定した場合には、特定の河川上を航空機2の飛行経路として航空機2が飛行するように航空機2を自動操縦することができる。これにより、安全性が確認された河川上を航空機2の飛行経路として自律的に飛行させることが可能となる。
【0070】
このように、航空機2が目的地まで飛行するために、安全性の確保等の観点で予め決定した選択条件に基づいて河川上の飛行経路を選択できる場合には、航空機2に搭載される情報処理装置4において、1つの河川上の飛行経路を航空機2の飛行経路として自動設定することが河川の有効利用に繋がる。逆に、予め決定した選択条件に基づいて河川上の飛行経路を選択できない場合には、航空機2に搭載される情報処理装置4において、陸上や海上等の河川上でない飛行経路を航空機2の飛行経路として自動設定することができる。
【0071】
尚、河川の幅が狭く、同一の河川上を逆方向に飛行する2機の航空機2が高度方向も含めてすれ違うことが危険である場合には、いずれか1機の航空機2を河川上から離脱させることが適切である。また、同一の河川上を同一の方向に飛行する2機の航空機2間の間隔を確保するために後続する航空機2の飛行速度を減少させると、後続する航空機2が失速する恐れがある場合にも、いずれか1機の航空機2を河川上から離脱させることが適切である。
【0072】
従って、河川の水位や河川上の風況に加えて、或いは河川の水位や河川上の風況に代えて、飛行経路の選択肢となる河川上を飛行する他の航空機2の位置や飛行計画を、航空機2の安全性を表すパラメータとしても良い。他の航空機2の位置は、上述したように管制センタ5に収集して各航空機2に提供したり、航空機2間の通信によって取得することができる。
【0073】
航空機2の飛行経路は、上述したように安全性を表すパラメータの値のみならず、効率性を表すパラメータの値にも基づいて設定することができる。効率性を表すパラメータの具体例としては、航空機2が目的地まで飛行するための航空機2の航続時間、航続距離及び燃料消費量が挙げられる。
【0074】
航空機2の航続距離が同一であっても、風向や高度が異なれば、燃料消費量や飛行速度が変化する。特に、追い風となるように飛行経路を設定すれば、燃料消費量を低減することができる。また、前方を飛行する別の航空機2との間における間隔を確保するために航空機2の飛行速度が制限される場合もある。従って、航空機2の航続時間、航続距離及び燃料消費量は、風向や他の航空機2の飛行位置等をパラメータとして個別に評価するようにしても良い。
【0075】
安全性を表すパラメータの値が許容範囲内となる複数の河川上の飛行経路が候補として存在する場合には、1つの河川上の飛行経路を、航空機2の飛行経路として選択することが必要となる。そこで、安全性を表すパラメータの値のみならず、上述した効率性を表すパラメータの値を評価することによって複数の河川上の飛行経路の候補の中から1つの河川上の飛行経路を選択することができる。
【0076】
具体例として、航空機2、管制センタ5或いは河川近傍に備えられる飛行支援システム1A、1B、1Cの情報処理装置4において、航空機2が目的地まで飛行するために、予め決定した選択条件に基づいて複数の河川上の飛行経路を選択できる場合には、最も安全性が高い河川上の飛行経路、最も短時間で目的地に到着できる河川上の飛行経路、最も短い航続距離で前記目的地に到着できる河川上の飛行経路又は最も少ない燃料消費量で目的地に到着できる河川上の飛行経路のいずれかを航空機2の飛行経路として自動設定することができる。
【0077】
航空機2の飛行経路を、最も安全性が高い河川上の飛行経路に自動設定する場合には、上述したような河川の水位、河川上における風速及び風向或いは他の航空機2の位置や飛行計画等の安全性を表す所望のパラメータの値又は複数のパラメータの値の組合せが最適となる河川上の飛行経路を、航空機2の飛行経路に設定すれば良い。
【0078】
一方、最も短時間で目的地に到着できる河川上の飛行経路、最も短い航続距離で前記目的地に到着できる河川上の飛行経路又は最も少ない燃料消費量で目的地に到着できる河川上の飛行経路のいずれかを航空機2の飛行経路として自動設定する場合には、航空機2の航続時間、航続距離及び燃料消費量等の効率性を表す所望のパラメータの値又は複数のパラメータの値の組合せが最適となる河川上の飛行経路を、航空機2の飛行経路に設定すれば良い。
【0079】
また、航空機2の飛行経路は、航空機2を利用する任務が達成されるように設定することも重要である。具体例として、人や物の輸送、農薬散布、上空からの撮影或いは物理量の観測が航空機2の任務である場合において、任務の完了時間が指定されていれば、指定した時間までに任務が完了するように、飛行支援システム1A、1B、1Cの情報処理装置4において、航空機2の飛行経路を自動設定することが適切である。
【0080】
航空機2を利用する任務が達成されるようにするための情報処理装置4における飛行経路の自動設定は、航空機2の飛行前はもちろん、航空機2の飛行中においても実行することができる。具体例として、航空機2に搭載される飛行支援システム1Aの記憶装置3に保存された河川の位置情報に基づいて、情報処理装置4が複数の河川上の飛行経路を選択できると判定した場合には、指定した完了時間までに航空機2を利用する任務が達成されるように、航空機2の飛行経路を特定の河川上に自動設定することができる。
【0081】
航空機2の飛行前において、航空機2を利用する任務が達成されるように航空機2の飛行経路を設定する場合には、任務を達成するための条件に基づく最適化計算等の所望のアルゴリズムによって、特定の航空機2の飛行経路のみならず、航空機2の数や各航空機2のフライト数等の複数の航空機2を対象とする飛行条件についても情報処理装置4において自動設定することができる。
【0082】
具体例として、管制センタ5に備えられる飛行支援システム1Bの情報処理装置4で貨物の輸送を任務とする複数の航空機2の飛行経路を自動設定する場合であれば、指定した貨物量を目的地に輸送することを制約条件として、貨物の輸送を行うための航空機2の数、燃料、飛行距離、フライト数及び安全性を表す指標値の少なくとも1つを最適化する最適化計算によって各航空機2の飛行経路を自動設定することができる。もちろん、河川の水位等の安全性を表すパラメータが許容範囲内となることを制約条件として最適化計算を実行することもできる。
【0083】
これにより、河川上を飛行経路として飛行する航空機2を利用した安全かつ効率的な物流サービスを提供することができる。すなわち、貨物の積載量が少ない航空機2が生じないように貨物を複数の航空機2に最適分配して飛行経路を設定し、より少ない数の航空機2及び航空機2のフライト数で、目的とする貨物の輸送を行うことが可能となる。
【0084】
尚、航空機2を離陸させて実際に貨物の輸送等の任務が開始された場合には、上述したように、水位計13に管制装置6として内蔵される飛行支援システム1Cや河川周辺に専用の管制装置6として設置される飛行支援システム1Cに任務の達成状況を記録することができる。具体例として、貨物の輸送が任務であれば、航空機2が積載している貨物量を飛行支援システム1Cの記憶装置3に記録することによって、複数の航空機2を使用した任務全体の達成状況を管制センタ5等において容易に把握することが可能となる。
【0085】
また、航空機2が貨物の輸送を任務とする場合には、航空機2として着水可能な航空機2を使用し、貨物の積み上げ及び積み下ろしの少なくとも一方が河川上において実行されるように航空機2の飛行経路を決定することもできる。その場合、貨物の積み上げ及び積み下ろしを行うためのスペースとしても河川上を有効利用することが可能となる。もちろん、貨物の積み上げ及び積み下ろしに限らず、飛行中の航空機2に障害が生じた場合のように、着水機能を備えた航空機2を速やかに着陸させることが必要となった場合には、飛行支援システム1A、1B、1Cの情報処理装置4で河川上を航空機2の着水位置に自動設定することが可能である。
【0086】
(効果)
以上のような航空機2の飛行支援システム1A、1B、1C、航空機2の飛行支援プログラム及び航空機2は、安全性の観点からできるだけ河川上を航空機2の飛行経路として決定できるようにしたものである。
【0087】
このため、航空機2の飛行支援システム1A、1B、1C、航空機2の飛行支援プログラム及び航空機2によれば、凹凸が無い河川上の空間を航空機2の飛行経路として有効利用することができる。特に、河川の水位や河川上の風況等の安全性を表す指標を評価すれば、より安全性の高い航空機2の飛行経路を決定することができる。加えて、効率性を表す指標も評価すれば、効率的な航空機2の飛行経路を決定することができる。
【0088】
このため、例えば、物流分野では長距離トラックのドライバ不足が顕在化している中、無人航空機等の航空機2による輸送への代替が現実的となる。すなわち、航空機2による輸送を行ったとしても、家屋等が存在する陸上を飛行する頻度を低減できるため、安全性を確保することができる。
【0089】
また、河川に設置された水位計13に、河川上を飛行する航空機2の管制装置6としての機能を付与することができる。すなわち、水位計13に、航空機2への電波標識機能やデータ提供行うサーバとしての機能を付与することことができる。これにより、河川上を飛行する航空機2の管制システムを低コストかつ簡易に構築することが可能となる。
【0090】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0091】
1A、1B、1C 飛行支援システム
2 航空機
3 記憶装置
4 情報処理装置
5 管制センタ
6 管制装置
7 航法装置
8 通信装置
8A 無線機
9 GPS衛星
10 通信衛星
11 基地局
12 通信装置
12A 無線機
13 水位計
14 通信装置
14A 無線機
15 観測装置
16 記憶装置
17 演算装置
18 表示装置
19 表示装置