(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】給気口シールドを有する農業機械のキャビン用の屋根体
(51)【国際特許分類】
B60H 3/06 20060101AFI20230330BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20230330BHJP
B62D 25/06 20060101ALI20230330BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B60H3/06 611Z
B60H1/00 102S
B62D25/06 C
B62D25/06 A
B62D29/04 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018180626
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】102017000107690
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】502009646
【氏名又は名称】デンソー・サーマル・システムズ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】DENSO THERMAL SYSTEMS Spa
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・ダヴテル
(72)【発明者】
【氏名】レオーネ・コンテント
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210841(JP,A)
【文献】実開平05-044625(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0163747(US,A1)
【文献】米国特許第05921619(US,A)
【文献】米国特許第06361428(US,B1)
【文献】米国特許第06780097(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
B62D 25/06
B62D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャビン、特に農業機械のキャビン用の屋根体であって、
プラスチック製の筐体(10)と、前記筐体(10)内に収容された空調ユニット(20)と、
前記空調ユニット(20)に流体的に接続され、前記筐体(10)の外周部に配置された少なくとも1つの給気口(30)と、前記給気口(30)の下流側に配置されたフィルタ(31)と、を備え、
前記給気口(30)には、給気口シールド(40)が配置され、
前記給気口シールドは、前記筐体(10)の外周部に、前記給気口(30)を閉鎖するように取り付けられ、
前記給気口シールドは、互いに周囲が溶接され且つ前記フィルタの上流側に配置されたプラスチック製の一対のプレート(42、43)を有し、当該一対のプレートの間に、前記フィルタ(31)と前記屋根体の外側とに流体的に連通しているチャンバ(44)が形成されている
と共に、
前記給気口シールド(40)は、
前記チャンバ(44)と前記フィルタ(31)とを流体的に連通させる少なくとも1つの内窓部(45)と、
前記チャンバ(44)と前記屋根体の外側とを流体的に連通させる少なくとも1つの外窓部(46)と、を有し、
前記給気口シールド(40)は、前記外窓部(46)から前記フィルタ(31)まで延び、非直線経路を有する給気口通路(F)を形成するように構成された、屋根体。
【請求項2】
前記一対のプレートは、前記給気口(30)に閉鎖的に取り付けられた内側のプレート(42)と、前記内側のプレート(42)に周囲が溶接された外側のプレート(43)と、を備える、請求項
1に記載の屋根体。
【請求項3】
前記給気口シールド(40)の前記チャンバ(44)は、前記内側のプレート(42)を貫通して形成された少なくとも1つの内窓部(45)を介して前記フィルタ(31)と流体的に連通している、請求項
2に記載の屋根体。
【請求項4】
前記給気口シールド(40)の前記チャンバ(44)は、前記内側のプレート(42)及び前記外側のプレート(43)の少なくとも一方を貫通して形成された少なくとも1つの外窓
部(46)を介して前記屋根体の外側と流体的に連通している、請求項
2又は3に記載の屋根体。
【請求項5】
前記給気口シールド(40)の前記チャンバ(44)は、下方に向いている前記給気口シールド(40)の下部に形成された少なくとも1つの外窓部(46)を介して前記屋根体の外側と流体的に連通している、請求項1乃至
4の何れか1項に記載の屋根体。
【請求項6】
前記給気口シールド(40)は、前記外窓部(46)を越えて下方に延びるシールドバリア(47)を形成し、
前記シールドバリアは、前記外窓部(46)よりも離れた周囲の位置に配置されている、請求項
5に記載の屋根体。
【請求項7】
前記外窓部(46)は、前記内側のプレート(42)の下方に向いている下部に形成されている、請求項
4に記載の屋根体。
【請求項8】
前記給気口シールド(40)は、前記外窓部(46)を越えて下方に延びるシールドバリア(47)を形成し、
前記シールドバリアは、前記外窓部(46)よりも離れた周囲の位置に配置されている、請求項
7に記載の屋根体。
【請求項9】
前記シールドバリアは、互いに溶接された前記内側のプレート(42)及び前記外側のプレート(43)の下方の縁部によって形成されている、請求項
8に記載の屋根体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキャビン用の屋根体、特に、プラスチック製の筐体と、前記筐体内に収容された空調ユニットと、前記空調ユニットに流体的に接続され、前記筐体の外周部に配置された少なくとも1つの給気口と、前記給気口の下流側に配置されたフィルタとを備える、農業機械のキャビン用の屋根体に関する。
【背景技術】
【0002】
農業機械の分野では、キャビンの空調用の空気から汚染物質を除去するために、様々な種類のフィルタを使用することが知られている。そのようなフィルタは、一般的に、繊維材のフィルタリング部分を有し、その性能は、例えば、雨が降った場合や、より高圧又はより低圧の水で車両を洗浄するときなど、比較的大量の水と接触することによって大きく損なわれる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
給気口を閉じるようにドアに給気口を設け、給気口の下流側に配置されるフィルタを保護するという解決策が知られている。しかしながら、いくつかの状況下においては、給気口を閉じると、車両のキャビンの空調用の新鮮な空気の侵入を妨げ、キャビンの内側を十分な加圧状態にできないので、給気口を閉じることはできない。また、車両が高圧の水で洗浄される場合には、ドアはフィルタを保護するのに十分ではない可能性がある。したがって、フィルタは、機械を洗浄する前に取り外されることがある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、従来のシステムの限界を超えることを可能にする屋根体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的のため、本発明の主題は、冒頭に定義されたタイプの屋根体である。給気口には、給気口シールド(air inlet shield)が配置されている。給気口シールドは、筐体の外周部に、給気口を閉鎖するように取り付けられている。給気口シールドは、互いに周囲が溶接されたプラスチック製の一対のプレートを有し、一対のプレートの間にフィルタと屋根体の外側と流体的に連通しているチャンバが形成されている。
【0006】
本発明によれば、給気口シールドは、給気口の前方に2つの壁を設け、蛇行しているか、或いは少なくとも直線状ではないフィルタへの給気口通路を形成するように構成されている。このことは、雨の時や機械の洗浄時に、水がフィルタに達する確率を0にするか、或いは少なくとも減少させる。
【0007】
したがって、高圧であっても、フィルタに上述の問題を生じさせることなく、車両を洗浄することが可能である。したがって、機械を洗浄するためにフィルタを取り外す必要はなく、雨の時でも、機械及びその空調システムを使用することができる。
【0008】
給気口の前方に2つの壁を有することは、外側から空気を引き入れる窓を配置する場所の選択に関して、設計上の自由度を大きくする。
【0009】
本発明に係る屋根体の更なる特徴及び利点は、以下の本発明の実施形態の詳細な説明から明らかになる。例示的で非限定的な目的のみのために提供される添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係る屋根体を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図2は、農業用機械のキャビン用の屋根体を概略的に示している。当該屋根体は、プラスチック製の筐体10と、筐体10の内側に収容された空調ユニット20と、空調ユニット20に流体的に接続されるとともに筐体10の外周部に配置された少なくとも1つの給気口30とを備えている。空調ユニット20は、給気口30を介して外側から空気を取り入れ、当該空気を処理した後、公知の方法で、車両のキャビンの内側に空気を送り込む。
【0012】
給気口30の下流側であって空調ユニット20の上流側には、少なくとも1つのフィルタ31が、キャビンの内側に導入される空気から汚染物質を除去するように設けられている。
【0013】
図3を参照すると、給気口30には、筐体10の外周部に設けられた給気口シールド40が、給気口30上に密接に位置決めされるように配置されている。図示の例では、給気口30の縁部と給気口シールド40との間に挟まれたガスケット41によって、シールが得られる。
【0014】
給気口シールド40は、互いに周囲が溶接されているプラスチック製の一対のプレート42,43を有し、一対のプレート42、43の間に給気口と屋根体の外側とに流体的に連通しているチャンバ44が形成されている。したがって、プレート42,43は、チャンバ44を囲む内壁と外壁とを形成する内側の壁又はプレート42は、給気口30の縁部に閉鎖的に設けられている。一方、外側の薄板又は壁43は、内側の薄板又は壁42に周囲が溶接されている。
【0015】
給気口シールド40は、ツインシート熱成形によって作製することができる。この技術は、2枚の別個のプラスチック製の薄板を同時に加熱することを備えている。第1の金型部に対して薄板が引っ張られるとともに、真空アプリケーション(vacuum application)によって、第2の金型部に対して他のプレートが引っ張られる。2つの金型部は、2つの薄板をそれらの周囲で互いに押し付けることによって閉じられる。次いで、薄板の間に空気(又は他のガス状の流体)が吹き付けられ、その圧力によって、各薄板を各金型部の形状に一致させる。最終的に、このプロセスの成果物は、構造的に硬くて中空の部品となる。更なる処理は、給気口シールド40の最終形状を得ることを可能にする。
【0016】
給気口シールド40は、内側の薄板又は壁42に少なくとも1つの内窓部45を有し、チャンバ44は、内窓部45を通じてフィルタ31と流体的に連通している。給気口シールド40は、内側の薄板又は壁42、及び/又は、外側の薄板又は壁43に得られた少なくとも1つの外窓部46を更に有し、チャンバ44は、外窓部46を通じて屋根体の外側と流体的に連通している。給気口シールド40は、外窓部46からフィルタ31まで延び、非直線経路を有する給気口通路(
図3では矢印Fで表される)を形成する。
【0017】
図示された例では、給気口シールド40のチャンバ44は、下方に向いている給気口シールド40の下部、特に下方に向いている内壁42の下部に形成された少なくとも1つの外窓46を通じて、屋根体の外側に流体的に連通している。
【0018】
更に、給気口シールド40は、好ましくは、外窓部46を越えて下方に延びるシールドバリア47を形成する。このバリア47は、特に雨の場合に、水の浸透に対する更なる障害を提供する。シールドバリア47は、より離れた周囲の位置に、すなわち外窓部46よりも外側に配置されている。シールドバリア47は、互いに溶接された内側のプレート42と外側のプレート43との下方の縁部によって形成されていることが好ましい。