(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ギア装置
(51)【国際特許分類】
F16H 55/17 20060101AFI20230330BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20230330BHJP
【FI】
F16H55/17 A
F16H57/031
(21)【出願番号】P 2018190223
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】井土 耕平
(72)【発明者】
【氏名】永田 俊顕
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-070564(JP,A)
【文献】特開2014-213734(JP,A)
【文献】特開2011-033096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/17
F16H 57/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの開口部を覆うカバーと、
前記ハウジングに収容されるギアとを備え、
前記ハウジン
グは、前記ギアに向かって突出して前記ギアの回転軸心に沿う中心軸を有する突出部を有し、
前記ギアの中央部には、動力伝達部材が取り付けられる取付部が設けられ、
前記ギアにおいて前記回転軸心に沿う方向で一方の面には、前記突出部が入る凹部が設けられ、
前記ギアにおいて前記回転軸心に沿う方向で他方の面には、前記凹部と同軸の凸部が設けられ、
前記カバーは、前記ギアの前記凸部に接触する接触部を有し、
前記ギアの前記凹部は、前記取付部よりも径方向外側に設けられ、かつ、前記回転軸心に沿う方向において前記取付部付近の面よりも凹むように構成され、
前記ギアの前記凸部は、前記取付部よりも径方向外側に設けられ、かつ、前記回転軸心に沿う方向において前記取付部付近の面よりも突出するように構成される、
ギア装置。
【請求項2】
前記回転軸心に沿う方向から透視したとき、前記凸部の内周面と前記凹部の内周面とが重なり、前記凸部の外周面と前記凹部の外周面とが重なるように構成される
請求項1に記載のギア装置。
【請求項3】
前記ギアの前記凹部において前記突出部と摺接する第1摺接面は、前記ギアの前記凹部の内周面および外周面のうち一方の面に構成され、
前記ギアの前記凸部において前記接触部と摺接する第2摺接面は、前記ギアの前記凸部の内周面および外周面のうち、前記凹部において前記第1摺接面が構成された一方の面とは反対側の面に構成される
請求項1または2に記載のギア装置。
【請求項4】
前記ギアの
前記凹部は、円環状であり、
前記ハウジングの
前記突出部は、前記ギアの
前記凹部に入るように円環状に構成され、
前記ハウジングの
前記突出部の内周面が前記凹部に摺接する
請求項1~3のいずれか一項に記載のギア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアを有するギア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギア装置の一例として、特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載のギア装置は、モータに取り付けられる。ギア装置は、ギアを含む。ギアは軸部を有する。軸部は、ハウジングおよびカバーにより支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ギア装置において、ギアの軽量化の課題がある。従来構造に比べて、軽量なギアを備えるギア装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するギア装置は、ハウジングと、前記ハウジングの開口部を覆うカバーと、前記ハウジングに収容されるギアとを備え、前記ハウジングおよび前記カバーの一方は、前記ギアに向かって突出して前記ギアの回転軸心に沿う中心軸を有する突出部を有し、前記ギアは、前記突出部が入る凹部を備える。
【0006】
この構成によれば、ハウジングおよびカバーの一方に設けられる突出部と、ギアの凹部との係合によってギアが支持される。このように、ギアには凹部が設けられ、ギアの軸部を省略可能な構造となっていることから、ギアを軽量に出来る。
【0007】
(2)上記ギア装置において、前記ギアにおいて回転軸心に沿う方向で一方の面には、前記凹部が設けられ、前記ギアにおいて前記回転軸心に沿う方向で他方の面には、前記凹部と同軸の凸部が設けられ、前記ハウジングおよび前記カバーのうちで前記突出部が設けられていないものは、前記ギアの前記凸部に接触する接触部を有する。
【0008】
この構成によれば、ギアは、ハウジングおよびカバーのうちの一方に設けられる突出部と、ハウジングおよびカバーのうちの他方に設けられる接触部とによって支持されるため、回転が安定する。
【0009】
(3)上記ギア装置において、前記ギアの中央部には、動力伝達部材が取り付けられる取付部が設けられ、前記ギアの前記凹部および前記凸部は、前記取付部よりも径方向外側に設けられる。
【0010】
この構成によれば、ギアの中央部に、凹部および凸部が設けられる場合に比べて、凹部と突出部との接触部分の接触面積および凸部と接触部との接触部分の接触面積を大きくできる。これによって、凹部および凸部において局所で生じる摩耗を抑制できる。
【0011】
(4)上記ギア装置において、前記ギアの前記凹部において前記突出部と摺接する第1摺接面は、前記ギアの前記凹部の内周面および外周面のうち一方の面に構成され、前記ギアの前記凸部において前記接触部と摺接する第2摺接面は、前記ギアの前記凸部の内周面および外周面のうち、前記凹部において前記第1摺接面が構成された一方の面とは反対側の面に構成される。
【0012】
凹部の内周面と凸部の外周面とのペア、または、凹部の外周面と凸部の内周面とのペアは、プレス加工によって、高い寸法精度に形成され得る。したがって、上記構成によれば、ギアの形成にプレス加工を利用することができ、ギアがプレス加工品でもあっても、ギアの軸ぶれを抑制できる。
【0013】
(5)上記ギア装置において、前記ギアの凹部は、円環状であり、前記ハウジングの突出部は、前記ギアの凹部に入るように円環状に構成され、前記ハウジングの突出部の内周面が前記凹部に摺接する。
【0014】
この構成によれば、ハウジングの突出部の内周面が凹部に摺接する頻度が高く、突出部の外周面が凹部に摺接する頻度が低くなる。このことから、突出部の外周面の形状の自由度が高くなる。これによって、ハウジングにおいて、突出部の周辺の形状の自由度が増す。
【発明の効果】
【0015】
上記技術によれば、軽量なギアを含むギア装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図14】他の形態の駆動ギアの支持構造を備えるギア装置の断面図。
【
図15】他の形態の駆動ギアの支持構造を備えるギア装置の断面図。
【
図16】他の形態の駆動ギアの支持構造を備えるギア装置の断面図。
【
図17】他の形態の駆動ギアの支持構造を備えるギア装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ギア装置は、モータおよび各種アクチュエータに取り付けられる。一例では、ギア装置は、モータに取り付けられる。ギア装置を有する装置の一例として、モータユニットが挙げられる。
【0018】
図1は、モータユニット1の平面図である。例えば、モータユニット1は、車両のシートに取り付けられる。一例では、モータユニット1は、バックシートの傾斜角度を変更するためのアクチュエータの動力発生部を構成する。他の例では、モータユニット1は、バックシートを上下方向に移動させるためのアクチュエータの動力発生部を構成する。モータユニット1は、モータ2と、ギア装置10とを備える。本実施形態のギア装置10は、モータ2の出力軸の回転速度を小さくする。
【0019】
図1には、モータユニット1の一例が示されている。この例では、モータ2は、ブラシ付きモータである。モータ2は、出力軸の周りに給電部2aを有する。ギア装置10は、モータ2に対して給電部2a側に取り付けられている。
【0020】
図2~
図12を参照して、ギア装置10について説明する。
図2は、ギア装置10の斜視図であり、
図3は、ギア装置10の分解斜視図である。
図4は、ギア装置10の平面図である。
【0021】
図3に示されるように、ギア装置10は、ハウジング11と、ハウジング11に収容される少なくとも1つの円盤状のギア12と、カバー19とを備える。円盤状のギア12は、平歯車、斜歯歯車、および山歯歯車を含む。本実施形態では、ギア装置10は、ウォーム13と、ウォーム13に連動するウォームホイール14と、ウォームホイール14に連動する駆動ギア15とを備える。ウォームホイール14および駆動ギア15は、円盤状のギア12に含まれる。
【0022】
ウォーム13は、ハウジング11に配置される。具体的には、ウォーム13は、ハウジング11の第3収容部53に収容される。
ウォーム13は、ウォームギア部20と、ウォームギア部20の一方端に設けられる第1端部21と、ウォームギア部20において第1端部21と反対側に設けられる第2端部22と、ウォームギア部20と第2端部22との間に設けられるウォーム支持部23とを有する。
【0023】
図5に示されるように、ウォーム13の第1端部21は、ハウジング11に支持される。ウォーム13の第2端部22は、モータ2の出力軸に結合される。ウォーム支持部23には、ローラ25が取り付けられる。ウォーム支持部23は、ローラ25を介してハウジング11に回転可能に保持される。ウォーム13およびローラ25は、ハウジング11の第3収容部53に収容された状態において第3収容部53から抜けないように、留金26によって抜け止めされている。ウォーム13は、ウォーム回転軸心CAがモータ2の出力軸の回転軸線CXに沿うように、出力軸に結合される。
【0024】
図3に示されるように、ウォームホイール14は、第1回転軸心CBを有するホイール軸30と、第1ギア34と、第2ギア35とを備える。第1ギア34は、ホイール軸30に設けられて第1回転軸心CBを回転中心として回転する。第1ギア34は、ウォーム13に噛み合う。第2ギア35は、ホイール軸30に設けられて第1回転軸心CBを回転中心として回転する。第2ギア35の直径は、第1ギア34の直径よりも小さい。ホイール軸30は、第1端部31と、第2端部32とを有する(
図6参照)。第1端部31は、ハウジング11に支持される。第2端部32は、カバー19に支持される。
【0025】
駆動ギア15は、1または複数のギア12を含む。駆動ギア15は、第2回転軸心CCを回転中心として回転する。本実施形態では、駆動ギア15は、第2ギア35に噛み合う第3ギアとして構成される。
【0026】
図6に示されるように、駆動ギア15は、カバー19およびハウジング11に対して回転可能に支持される。駆動ギア15は、カバー19とハウジング11との間の空間に配置される。駆動ギア15は、第2回転軸心CCに交差する第1面15aと、第2回転軸心CCに沿う方向(以下、「第2方向DB」)において、第1面15aと反対側の第2面15bを有する。第1面15aは、ハウジング11の第2収容部52の第2底面67に対向する。第2面15bは、カバー19に対向する。
【0027】
図7および
図8に示されるように、駆動ギア15の第1面15aには、第2回転軸心CCを中心とする凹部16が設けられる。凹部16は、駆動ギア15の取付部15cよりも径方向外側に設けられる。凹部16は、取付部15cを囲むように環状に構成される。凹部16は、第2回転軸心CCを中心とする円柱面に沿う少なくとも1つの周面を有する。本実施形態のように、凹部16は、環状に構成されてもよい。この場合、凹部16は、内周面16aと、内周面16aの直径よりも大きい直径の外周面16bとを有する。凹部16は、後述の突出部80に摺接する第1摺接面16xを有する。第1摺接面16xは、凹部16の内周面16aおよび外周面16bのうち一方の面に構成される。実施形態では、凹部16の内周面16aに第1摺接面16xが設けられる。
【0028】
駆動ギア15の第2面15bには、第2回転軸心CCを中心とする凸部17が設けられる。凸部17は、第2回転軸心CCを中心とする円柱面に沿う少なくとも1つの周面を有する。例えば、凸部17は、駆動ギア15の取付部15cよりも径方向外側に設けられる。凸部17は、取付部15cを囲むように環状に構成される。凸部17は、内周面17aと、内周面17aの直径よりも大きい直径の外周面17bとを有する。凸部17は、後述の接触部85に摺接する第2摺接面17xを有する。第2摺接面17xは、駆動ギア15の凸部17の内周面17aおよび外周面17bのうち、凹部16において第1摺接面16xが構成された一方の面とは反対側の面に構成される。本実施形態では、第1摺接面16xが凹部16の内周面16aに設けられ、第2摺接面17xは、凸部17の外周面17bに設けられる。本実施形態とは異なり、第1摺接面16xが凹部16の外周面16bに設けられ、第2摺接面17xが凸部17の内周面17aに設けられてもよい。
【0029】
好ましくは、第2方向DBから透視したとき、凸部17の内周面17aおよび外周面17bと、凹部16の内周面16aおよび外周面16bとが重なるように構成される。このように凸部17と凹部16とが重なる構成は、板状部材をプレス加工することによって形成できる。
【0030】
駆動ギア15の中央部には、動力伝達部材60が取り付けられる取付部15cが設けられる。取付部15cには、第2回転軸心CCを有する軸孔15dを有する。軸孔15dには、動力伝達部材60が結合される。動力伝達部材60は、ギア装置10とは別の装置に動力を伝達するための部材である。動力伝達部材60は、駆動ギア15と一体に回転するように、駆動ギア15に取り付けられる。例えば、軸孔15dは、第2方向DBからみて、非円形、例えば、四角形または六角形に構成される。動力伝達部材60の断面は、軸孔15dの形状にあった形状にされる。
【0031】
図6に示されるように、ウォームホイール14と駆動ギア15とは、ホイール軸30の第1回転軸心CBと駆動ギア15の第2回転軸心CCとが平行となるように、配置される。駆動ギア15は、第2方向DBからみて、ウォームホイール14と、部分的に重なる。具体的には、駆動ギア15の一部分が、第2方向DBからみて、第1ギア34に重なっている。
【0032】
図5、
図6、
図9~
図12を参照して、ハウジング11の一例を説明する。
図11は、
図10のXI-XI線に沿う断面図である。
ハウジング11は、ウォームホイール14、駆動ギア15、およびウォーム13を収容する。
【0033】
図9に示されるように、ハウジング11は、ウォームホイール14を収容する第1収容部51と、駆動ギア15の少なくとも一部分を収容する第2収容部52と、ウォーム13を収容する第3収容部53とを備える。
【0034】
好ましくは、ハウジング11は、さらに、モータ取付部54を備える。例えば、モータ2が、ブラシ付きモータである場合、モータ取付部54は、コミュテータおよびブラシを含む給電部2aを収容する。モータ2の給電部2aがモータ取付部54に収容された状態で、モータ取付部54がモータ2の給電部2aに締結部材によって締結されることによって、ハウジング11は、モータ2に固定される。
【0035】
図6および
図9に示されるように、第1収容部51は、第1底壁61と、第1周壁62とを備える。第1収容部51において、第1回転軸心CBに沿う方向(以下、「第1方向DA」)における第1底壁61の反対側の端部は、開口し、第1開口部51aを構成する。第1開口部51aは、第1ギア34が挿入できる大きさに構成される。
【0036】
第1周壁62は、第1ギア34の歯面および第2ギア35の歯面に面するように、筒状に構成される。第1底壁61は、第1ギア34に対向する第1底面63を有する(
図6参照)。第1底壁61には、ホイール軸30の第1端部31を受ける第1ホイール軸受64が設けられる。第1ホイール軸受64は、ホイール軸30の第1端部31が挿通する挿通孔64aを有する。
【0037】
図9~
図11に示されるように、第2収容部52は、第2底壁65と、第2周壁66とを備える。第2収容部52において、第2方向DBにおける第2底壁65の反対側の端部は、開口し、第2開口部52aを構成する。第2開口部52aは、駆動ギア15が挿入できる大きさに構成される。第1開口部51aと第2開口部52aとは、繋がっている。第1開口部51aと第2開口部52aとによってハウジング11の開口部18が構成される。
【0038】
図10に示されるように、第2底壁65は、第2方向DBからみて、第2回転軸心CCを中心とする第1円から、第1回転軸心CBを中心とする第2円と第1円との重なり部分が切り欠かれた形状に、構成される。
【0039】
第2底壁65は、駆動ギア15に対向する第2底面67を有する(
図6参照)。第2周壁66は、駆動ギア15の歯面に面するように構成される。第1周壁62において第2周壁66内に入る部分は切り欠かれている。第2周壁66において第1周壁62内に入る部分は切り欠かれている。第1周壁62および第2周壁66において切り欠かれた部分(以下、「切欠部59」)において、第1収容部51と第2収容部52とが繋がる。駆動ギア15の一部分は、切欠部59から第1収容部51側に出て、第2ギア35と噛み合う。
【0040】
図6に示されるように、第2底面67は、第1方向DAにおいて、第1ギア34の対向面34aよりも第2ギア35寄りに配置される。第1ギア34の対向面34aは、駆動ギア15に対向する面を示す。これにより、駆動ギア15が第1ギア34に干渉することが抑制される。第2底壁65には、動力伝達部材60が挿通する挿通孔68が設けられる。
【0041】
図10および
図12に示されるように、第3収容部53は、第1収容部51の第1周壁62に接するように設けられる。
第3収容部53は、連通部70を介して第1収容部51に繋がる(
図12参照)。ウォーム13は、連通部70から第1収容部51側に露出して、第1ギア34と噛み合う。第3収容部53は、ウォーム回転軸心CAに沿う方向に向かって開口するウォーム開口部71を有する(
図5参照)。本実施形態のようにハウジング11にモータ取付部54が設けられている場合、ウォーム開口部71は、モータ取付部54に繋がる。第3収容部53には、ウォーム回転軸心CAに沿う方向においてウォーム開口部71の反対側には、ウォーム13を受ける軸受72が設けられる。軸受72には、ウォーム13の第1端部21を受ける軸受部材72aが設けられている。
【0042】
図2および
図3に示されるように、カバー19は、ハウジング11の開口部18を覆う。カバー19は、締結部材90によってハウジング11に取り付けられる。カバー19は、第1収容部51の第1開口部51aを覆う第1カバー部74と、第2収容部52の第2開口部52aを覆う第2カバー部75とを有する。第1カバー部74には、ホイール軸30の第2端部32を受ける第2ホイール軸受76が設けられる(
図6参照)。第2ホイール軸受76は、例えばブッシュ76aにより構成される。第1カバー部74には、ブッシュ76aが取り付けられるブッシュ取付孔79が設けられる。第2カバー部75には、駆動ギア15に接触する後述の接触部85が設けられる。
【0043】
図13を参照して、駆動ギア15を回転可能に支持する構造およびその作用を説明する。
駆動ギア15は、第2回転軸心CC方向においてカバー19とハウジング11との間に配置される。駆動ギア15の第1面15aは、ハウジング11に摺接し、第2面15bは、カバー19に摺接する。
【0044】
ハウジング11およびカバー19の一方は、突出部80を有する。具体的には、ハウジング11およびカバー19のうちで駆動ギア15の凹部16に対向するものが、突出部80を有する。
【0045】
突出部80は、駆動ギア15に向かって突出する。突出部80は、第2回転軸心CCに沿う中心軸CDを有する。突出部80は、中心軸CDを中心とする円柱面に沿う少なくとも1つの周面を有する。本実施形態のように、突出部80は、環状に構成されてもよい。突出部80は、駆動ギア15の凹部16に入るように構成される。突出部80の周面は、駆動ギア15の凹部16の周面(内周面16aまたは外周面16b)に摺接する。
【0046】
本実施形態では、ハウジング11の第2底壁65の第2底面67に環状の突出部80が設けられる。突出部80は、内周面80aと外周面80bとを有する。突出部80の内周面80aは、駆動ギア15の凹部16の内周面16aに摺接する(以下、「内側摺接」)。また、突出部80の外周面80bが駆動ギア15の凹部16の外周面16bに摺接する(以下、外側摺接)。好ましくは、内側摺接と外側摺接とのうち一方の摺接の頻度が高くなるように、突出部80および凹部16が構成される。突出部80の内周面80aおよび外周面80bの少なくとも一方は、円柱面に構成される。また、凹部16の内周面16aおよび外周面16bの少なくとも一方は、円柱面に構成される。内側摺接の場合、突出部80の外周面80bおよび駆動ギア15の外周面16bは、精確に円柱面に構成されなくてもよい。例えば、第1収容部51と第2収容部52との配置において、第1収容部51が突出部80の外周面80bに干渉するように、第1収容部51と第2収容部52とを接近させてもよい。この場合、突出部80の外周面80bに凹面80cが形成される。凹面80cは、第1収容部51の第1周壁62の内周面の一部分を構成する(
図9参照)。本実施形態では、内側摺接の頻度が高くなるように、駆動ギア15の凹部16の内周面16aに、突出部80に摺接する第1摺接面16xが構成される。
【0047】
ハウジング11およびカバー19のうちで突出部80が設けられていないものは、駆動ギア15の凸部17に接触する接触部85を有する。具体的には、ハウジング11およびカバー19のうちで駆動ギア15の凸部17に径方向に対向するものが、接触部85を有する。
【0048】
接触部85は、駆動ギア15の凸部17に接触する。接触部85は、駆動ギア15の凸部17に接触することによって、駆動ギア15の回転を安定させる。接触部85は、第2回転軸心CCに沿う中心軸CEを有する。接触部85は、第2回転軸心CCを中心とする円柱面に沿う少なくとも1つの周面を有する。接触部85は、駆動ギア15の凸部17の周面(内周面17aまたは外周面17b)に摺接する。
【0049】
本実施形態では、カバー19の第2カバー部75において、動力伝達部材60が挿通する挿通孔77の周縁に接触部85が設けられる。例えば、接触部85は、挿通孔77の縁に沿う周壁86として構成される。本実施形態では、周壁86の内周面86aが、駆動ギア15の凸部17の外周面17bに摺接する。したがって、本実施形態では、駆動ギア15の凸部17の外周面17bに、接触部85に摺接する第2摺接面17xが構成される。
【0050】
本実施形態の効果を説明する。
(1)ギア装置10において、ハウジング11およびカバー19の一方は、突出部80を有する。突出部80は、駆動ギア15に向かって突出して駆動ギア15の第2回転軸心CCに沿う中心軸CDを有する。駆動ギア15は、突出部80が入る凹部16を備える。
【0051】
この構成によれば、ハウジング11およびカバー19の一方に設けられる突出部80と、駆動ギア15の凹部16との係合によって駆動ギア15が支持される。このように、駆動ギア15には凹部16が設けられ、駆動ギア15の軸部を省略可能な構造となっていることから、駆動ギア15を軽量に出来る。
【0052】
(2)上記ギア装置10において、駆動ギア15において第2回転軸心CCに沿う方向で一方の面には、凹部16が設けられる。駆動ギア15において第2回転軸心CCに沿う方向で他方の面には、凹部16と同軸の凸部17が設けられる。ハウジング11およびカバー19のうちで突出部80が設けられていないものは、駆動ギア15の凸部17に接触する接触部85を有する。この構成によれば、駆動ギア15は、ハウジング11およびカバー19のうちの一方に設けられる突出部80と、ハウジング11およびカバー19のうちの他方に設けられる接触部85とによって支持されるため、回転が安定する。
【0053】
(3)上記ギア装置10において、駆動ギア15の中央部には、動力伝達部材60が取り付けられる取付部15cが設けられる。駆動ギア15の凹部16および凸部17は、取付部15cよりも径方向外側に設けられる。この構成によれば、駆動ギア15の中央部に、凹部16および凸部17が設けられる場合に比べて、凹部16と突出部80との接触部分の接触面積および凸部17と接触部85との接触部分の接触面積を大きくできる。これによって、凹部16および凸部17において局所で生じる摩耗を抑制できる。
【0054】
(4)好ましくは、駆動ギア15の凹部16において突出部80と摺接する第1摺接面16xは、駆動ギア15の凹部16の内周面16aおよび外周面16bのうち一方の面に構成される。駆動ギア15の凸部17において接触部85と摺接する第2摺接面17xは、駆動ギア15の凸部17の内周面17aおよび外周面17bのうち、凹部16において第1摺接面16xが構成された一方の面とは反対側の面に構成される。
【0055】
凹部16の内周面16aと凸部17の外周面17bとのペア、または、凹部16の外周面16bと凸部17の内周面17aとのペアは、プレス加工によって、高い寸法精度に形成され得る。したがって、上記構成によれば、駆動ギア15の形成にプレス加工を利用することができ、駆動ギア15がプレス加工品でもあっても、駆動ギア15の軸ぶれを抑制できる。
【0056】
(5)好ましくは、駆動ギア15の凹部16は、円環状である。ハウジング11の突出部80は、駆動ギア15の凹部16に入るように円環状に構成される。ハウジング11の突出部80の内周面80aが凹部16に摺接する。
【0057】
この構成によれば、ハウジング11の突出部80の内周面80aが凹部16に摺接する頻度が高く、突出部80の外周面80bが凹部16に摺接する頻度が低くなる。このことから、突出部80の外周面80bの形状の自由度が高くなる。これによって、ハウジング11において、突出部80の周辺の形状の自由度が増す。例えば、本実施形態のように、第1収容部51が第2収容部52に近づけられて、突出部80の外周面80bに凹面80cが形成される。
【0058】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に変更のない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0059】
・本実施形態に示される、駆動ギア15とハウジング11またはカバー19との係合に基づく駆動ギア15の支持構造は、ギア12の機能に関わらず適用できる。本実施形態では、駆動ギア15は、ギア装置10の外部に回転駆動力を伝える。実施形態の支持構造は、駆動ギア15に回転動力を伝達する中間ギアにも適用できる。また、実施形態の支持構造は、ウォーム13から回転動力を受けるギア12にも適用できる。また、実施形態の支持構造は、円盤部を有するギア12に適用できる。
【0060】
・
図14を参照して、駆動ギア15を回転可能に支持する他の例を説明する。
図14に示される例では、駆動ギア15の凹部16の外周面16bに第1摺接面16xが設けられる。駆動ギア15の凸部17の内周面17aに第2摺接面17xが設けられる。カバー19の接触部85は、駆動ギア15の凸部17の内周面17aに接触するように、鉤状に構成される。接触部85は、挿通孔77の縁に沿う周壁87として構成される。周壁87は、駆動ギア15に向かって突出する。周壁87の内周面87xが駆動ギア15の凸部17の内周面17aに接触する。
【0061】
・
図15を参照して、駆動ギア15を回転可能に支持する他の例を説明する。
図15に示される例では、駆動ギア15の凹部116の周面116aに第1摺接面16xが設けられる。駆動ギア15の凸部117の周面117bに第2摺接面17xが設けられる。駆動ギア15の凹部116は、第2回転軸心CCを中心とする円形の窪み部として構成される。駆動ギア15の凸部117は、第2回転軸心CCを中心とする円形の突出部として構成される。動力伝達部材60が取り付けられる取付部15cの軸孔15dは、凹部116および凸部117を貫通する。
【0062】
・
図16を参照して、駆動ギア15を回転可能に支持する他の例を説明する。
図16に示される例では、駆動ギア15は、複数のギアを有する。駆動ギア15は、連結部材120によって結合される第1駆動ギア121と第2駆動ギア122とを備える。第2駆動ギア122は、ギア装置10に設けられる追加ギア123に噛み合う。第1駆動ギア121において、ハウジング11の底壁124に対向する面に凹部126が設けられる。ハウジング11の底壁124には、凹部126に入る突出部127が設けられる。第2駆動ギア122において、カバー19に対向する面に凸部128が設けられる。カバー19には、凸部128に接触する接触部129が設けられる。
【0063】
・
図17を参照して、駆動ギア15を回転可能に支持する他の例を説明する。
図17に示される例では、駆動ギア15においてハウジング11の底壁134に対向する面に凸部136が設けられる。駆動ギア15においてカバー19に対向する面に凹部137が設けられる。ハウジング11の底壁134には、駆動ギア15の凸部136に接触する接触部138が設けられる。接触部138は、底壁134に環状の溝として構成される。カバー19には、駆動ギア15の凹部137に入る突出部139が設けられる。
【符号の説明】
【0064】
CA…ウォーム回転軸心、CB…第1回転軸心、CC…第2回転軸心、CD…中心軸、CE…中心軸、CX…回転軸線、DA…第1方向、DB…第2方向、1…モータユニット、2…モータ、2a…給電部、10…ギア装置、11…ハウジング、12…ギア、13…ウォーム、14…ウォームホイール、15…駆動ギア、15a…第1面、15b…第2面、15c…取付部、15d…軸孔、16…凹部、16a…内周面、16b…外周面、16x…第1摺接面、17…凸部、17a…内周面、17b…外周面、17x…第2摺接面、18…開口部、19…カバー、20…ウォームギア部、21…第1端部、22…第2端部、23…ウォーム支持部、25…ローラ、26…留金、30…ホイール軸、31…第1端部、32…第2端部、34…第1ギア、34a…対向面、35…第2ギア、51…第1収容部、51a…第1開口部、52…第2収容部、52a…第2開口部、53…第3収容部、54…モータ取付部、59…切欠部、60…動力伝達部材、61…第1底壁、62…第1周壁、63…第1底面、64…第1ホイール軸受、64a…挿通孔、65…第2底壁、66…第2周壁、67…第2底面、68…挿通孔、70…連通部、71…ウォーム開口部、72…軸受、72a…軸受部材、74…第1カバー部、75…第2カバー部、76…第2ホイール軸受、76a…ブッシュ、77…挿通孔、79…ブッシュ取付孔、80…突出部、80a…内周面、80b…外周面、80c…凹面、85…接触部、86…周壁、86a…内周面、87…周壁、87x…内周面、90…締結部材、116…凹部、116a…周面、117…凸部、117b…周面、120…連結部材、121…第1駆動ギア、122…第2駆動ギア、123…追加ギア、124…底壁、126…凹部、127…突出部、128…凸部、129…接触部、134…底壁、136…凸部、137…凹部、138…接触部、139…突出部。