(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】サイドバイザー
(51)【国際特許分類】
B60J 3/00 20060101AFI20230330BHJP
B60J 10/88 20160101ALI20230330BHJP
【FI】
B60J3/00 L
B60J10/88
(21)【出願番号】P 2018223980
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314014184
【氏名又は名称】DNP田村プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】堀井 昭宏
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-061324(JP,U)
【文献】実開昭50-074017(JP,U)
【文献】特開昭63-279925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0001640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/00
B60J 10/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓枠に取り付けられるガラスランに配置される板状の取付部材と、
前記取付部材によって前記ガラスランに沿って取り付け可能な鍔部と前記鍔部に沿って形成される庇部とを備えたバイザー本体とからなるサイドバイザーであって、
前記ガラスランは、
下方へ開口する開口部を有した断面コ字状に形成されるガラスラン部を備え、前記開口部の内側及び外側の端縁に前記ガラスラン部の内部方向へ向けて延設されるシールリップを備え、さらに、前記ガラスラン部と各前記シールリップとの間にそれぞれ引掛手段を備え、
前記取付部材は、
前記ガラスランとの組付状態における車体側の端部に
、前記引掛手段に係止される引掛部を
備え、
外側の端部に
、前記バイザー本体が取り付けられるサイドバイザー取付部を
連結部を介して備え、さらに、前記引掛部と前記サイドバイザー取付部との間で、前記連結部と共に前記ガラスランの長手方向に沿って配置され、外側方向へ向いた第2の引掛部を備え、
前記取付部材と前記ガラスランとの組付状態において、外側の前記シールリップが、前記第2の引掛部の内側と、前記連結部の外側とを交互に通過するように配置されることを特徴とするサイドバイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車窓枠のガラスランに沿って取り付けられるサイドバイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
サイドバイザーの飛散防止を図るために、一端をドアフレームとガラスランの間に差し込み、他端をサイドバイザーに固定する取付金具を用いた取付手法がある(特許文献1)。しかし、該取付金具は、ドアトリム部とガラスラン部が一体に形成されたガラスランへは取り付けられず、仮に取り付けようとする場合には、ガラスランに切り込みを入れる等の加工が必要となる。そのような中、ドアトリム部とガラスラン部が一体に形成されたガラスランを利用した車両の窓枠へのサイドバイザー取付方法として、ドアトリム部底壁と車外側側壁の外面に形成した表皮膜に両面接着テープを貼着してサイドバイザーを取り付ける方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-230459号公報
【文献】特開2015-67126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載されるような方法でサイドバイザーを取り付けた場合、両面接着テープの経年劣化により、接着力が低下し、サイドバイザーのガラスランへの取り付けが不十分となる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、従来のような取付部材を用いた取り付けが行えない自動車であっても、取付部材を用いた取り付けにより飛散防止が可能なサイドバイザーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両の窓枠に取り付けられるガラスランに配置される板状の取付部材と、取付部材によってガラスランに沿って取り付け可能な鍔部と鍔部に沿って形成される庇部とを備えたバイザー本体とからなるサイドバイザーであって、ガラスランは、下方へ開口する開口部を有した断面コ字状に形成されるガラスラン部を備え、開口部の内側及び外側の端縁にガラスラン部の内部方向へ向けて延設されるシールリップを備え、さらに、ガラスラン部と各シールリップとの間にそれぞれ引掛手段を備え、取付部材は、ガラスランとの組付状態における車体側の端部に、引掛手段に係止される引掛部を備え、外側の端部に、バイザー本体が取り付けられるサイドバイザー取付部を連結部を介して備え、さらに、引掛部とサイドバイザー取付部との間で、連結部と共にガラスランの長手方向に沿って配置され、外側方向へ向いた第2の引掛部を備え、取付部材とガラスランとの組付状態において、外側の前記シールリップが、第2の引掛部の内側と、連結部の外側とを交互に通過するように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ドアトリム部とガラスラン部が一体的又は同一部材により形成されたガラスランを利用した車両の窓枠であっても、取付部材による取り付けが可能となり、サイドバイザーの飛散防止を図れる。また、ガラスランに加工をせずに取付部材による取り付けが可能となる。
また、ガラスラン部に延設されるシールリップを利用し、取付部材の引掛部を係止させて取付部材を取り付けるため、ガラスランを加工せずに取付部材によるサイドバイザーの取り付けが可能となる。
さらに、引掛部に加えて、第2の引掛部もガラスランに係止するため、より安定して取付部材をガラスランに取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】窓枠にサイドバイザーが取り付けられた状態を示す全体図である。
【
図3】
図1における丸枠Aに囲まれた部分の拡大斜視図である(バイザー本体及びガラスランの一部を破断して示す)。
【
図4】(a)は、
図3におけるB-B断面図、(b)は、C-C断面図である。
【
図5】取付部材の変形例1の取付状態を示す
図3におけるB-B位置での断面図である。
【
図6】(a)~(c)は、取付部材のその他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車用外装品であるサイドバイザー1は、鍔部2aと庇部2bとを備えた帯状部材のバイザー本体2が、後述する取付部材5と両面テープ16とを介して車両3の窓枠4に取り付けられた後述するガラスラン10に取り付けられる。
【0010】
図2に示すように、取付部材5は、略板状に形成されると共に、内側端部に引掛部6が設けられ、取付部材5の内外中央付近前後両端部に外側方向へ向いた第2の引掛部7,7が設けられ、第2の引掛部7,7の間の連結部9を経て、外側端部にサイドバイザー取付部8が設けられている。
一方、ガラスラン10には、窓枠4に形成されたフランジ部4aが挿入される内向きに開口した断面略コ字状のドアトリム部11と、ドアトリム部11の下方で、ドアトリム部11と一辺を共有する下向きに開口した断面略コ字状のガラスラン部12とが形成されている。
【0011】
ドアトリム部11は、トリム部上壁11aと、トリム部外壁11b及びトリム部下壁11cとを備え、トリム開口部11dが形成されている。窓枠4に形成されたフランジ部4aをトリム開口部11dへ挿入することで、ガラスラン10は窓枠4に保持される。
一方、ガラスラン部12は、トリム部下壁11cと一体的又は同一部材で形成されるガラスラン部上壁12aと、ガラスラン部内壁12b及びガラスラン部外壁12cとを備え、ガラスラン開口部12dが形成されている。ガラスラン部内壁12b及びガラスラン部外壁12cの先端からガラスラン開口部12dの内部方向斜めに、それぞれ外側シールリップ13aと内側シールリップ13bとが延設されている。加えて、ガラスラン開口部12dの内部で、ガラスラン部上壁12aとガラスラン部内壁12bとからなる角には、ガラスラン開口部12dの内側方向斜めに延びる内部シールリップ13cが設けられている。
【0012】
取付部材5を用いたバイザー本体2の窓枠4への取り付けは以下のように行う。
まず、取付部材5を、
図2の矢印に沿って、ガラスラン開口部12dへ下方から挿入する。挿入された取付部材5は、
図3に示すように、取付部材5の内側端部に設けられた引掛部6が、引掛手段であるガラスラン部内壁12bと内側シールリップ13bとの連結部14bに係止し、取付部材5の中央付近に設けられた第2の引掛部7,7が、同じく引掛手段であるガラスラン部外壁12cと外側シールリップ13aとの連結部14aに係止する。この時、外側シールリップ13aは、第2の引掛部7,7と連結部9との間を縫うように配置される。すなわち、
図4(a)に示すように、
図3のB-B断面において、取付部材5の引掛部6はガラスラン部内壁12bと内側シールリップ13bとの連結部14bに、第2の引掛部7,7はガラスラン部外壁12cと外側シールリップ13aとの連結部14aに係止し、取付部材5を支える。一方、
図4(b)に示すように、
図3のC-C断面において、取付部材5は、連結部9がガラスラン開口部12dの内側から外側シールリップ13aに当接しながら、ガラスラン部外壁12cの下面を経て、サイドバイザー取付部8がガラスラン10よりも外側に位置するように配置される。このように、取付部材5を用いることで、ドアトリム部11とガラスラン部12とが一体的又は同一部材で成形されたガラスラン10に対しても、ガラスラン10を加工することなく取付部材5を配置することができる。さらに、取付部材5は、引掛部6及び第2の引掛部7,7によって、引掛手段であるガラスラン部内壁12bと内側シールリップ13bとの連結部14b及びガラスラン部外壁12cと外側シールリップ13aとの連結部14aに3箇所で係止するため、取付部材5をガラスラン10に安定して配置することができる。
【0013】
ガラスラン10へ取付部材5を配置した後、バイザー本体2の内側に設けられた貼着面15をガラスラン10の外側表面10aに両面テープ16で貼着すると共に、バイザー本体2の内側へ突出したボス17をサイドバイザー取付部8へ挿通し、抜止部材18による抜け止めを施すことでサイドバイザー1は窓枠4に固定される。このように、バイザー本体2は、両面テープ16に加え、ガラスラン10に配置された取付部材5によって窓枠4に固定されるため、バイザー本体2の飛散を防止することができる。この時、バイザー本体2の自重により取付部材5の連結部9に外側方向への力が働き、外側シールリップ13aが連結部9によって外側方向へ倒れこむように押されるが、第2の引掛部7,7によって内側方向へ外側シールリップ13aが押し戻されるため、外側シールリップ13aの変形を最小限に留めることができる。
【0014】
上記形態のサイドバイザー1は、車両3の窓枠4に取り付けられるガラスラン10に配置される板状の取付部材5と、取付部材5によってガラスラン10に沿って取り付け可能な鍔部2a及び鍔部2aに沿って形成される庇部2bを備えたバイザー本体2とからなるサイドバイザー1であって、ガラスラン10は、引掛手段(連結部14a,14b)を備え、取付部材5は、一方の端部に引掛手段(連結部14b)に係止される引掛部6を設け、他方の端部にバイザー本体2が取り付けられるサイドバイザー取付部8を設け、取付部材5が、引掛部6とサイドバイザー取付部8との間に、サイドバイザー取付部8方向へ向いた引掛手段(連結部14a)に係止される第2の引掛部7,7を備えている。
このように構成されたサイドバイザー1によれば、ドアトリム部11とガラスラン部12が一体的又は同一部材で形成されたガラスラン10を利用した車両3の窓枠4であっても、取付部材5による取り付けが可能となり、サイドバイザー1の飛散防止を図れる。また、ガラスラン10に加工をせずに取付部材5による取り付けが可能となる。さらに、引掛部6及び第2の引掛部7,7によってガラスラン10に3箇所で係止するため、取付部材5をガラスラン10へ安定して取り付けることが可能となる。さらにまた、引掛部6に加えて第2の引掛部7,7もガラスラン10に係止するため、より安定して取付部材5をガラスラン10に取り付けることが可能となる。加えて、取付部材5によって外側へ押される外側シールリップ13aを、第2の引掛部7が内側へ押し戻すため、外側シールリップ13aの形状変化を最小限に抑えることが可能となる。
【0015】
図5は、本発明の実施の形態の取付部材の変形例1の取付状態を示す断面図である。但し、
図4と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
取付部材5aは、
図1-4で示した取付部材5よりも短手の板状に形成される。
ガラスラン開口部12dへ下方から挿入された取付部材5aは、取付部材5aの内側端部に設けられた引掛部6が、引掛手段であるガラスラン部上壁12aと内部シールリップ13cとの連結部14cに係止し、取付部材5aの中央付近に設けられた第2の引掛部7,7が、同じく引掛手段であるガラスラン部外壁12cと外側シールリップ13aとの連結部14aに係止する。
【0016】
上記変形例1のサイドバイザー1によれば、
図1-4の効果に加え、内部シールリップ13cを有効に利用することができ、窓ガラス(図示せず)を閉めた際に、窓ガラスと取付部材5aとの間に内部シールリップ13cが介在するため、取付部材5aと窓ガラスの接触による傷つきや異音の発生を防止することができる。
【0017】
図6(a)は、本発明の実施の形態の取付部材の変形例2の斜視図である。但し、
図2と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
取付部材5bは、取付部材5bの内外中央付近後端部に外側方向へ向いた第2の引掛部7が設けられ、第2の引掛部7の前方の連結部9を経て、外側端部にサイドバイザー取付部8が設けられている。
【0018】
上記変形例2のサイドバイザー1によれば、
図1-4の効果に加え、取付部材5bの前後方向の幅を狭く形成できるため、コスト低減を図れる。また、第2の引掛部7が後端部のみに形成されるため、バイザー本体2の前後端部に近い位置に取付部材5bを配置することが可能となる。その場合、取付部材5bが目立ちにくくなるため、外観の向上を図れる。なお、第2の引掛部7と連結部9の前後関係は、取付部材5bを配置する位置に合わせて入れ替えても良い。
【0019】
図6(b)は、本発明の実施の形態の取付部材の変形例3の斜視図である。但し、
図2と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
取付部材5cは、取付部材5cの内外中央付近前後中央に外側方向へ向いた舌片状の第2の引掛部7aが設けられ、第2の引掛部7aの前後両側の連結部9を経て、外側端部にサイドバイザー取付部8が設けられている。
【0020】
上記変形例3のサイドバイザー1によれば、
図1-4の効果に加え、取付部材5cの配置に係る作業は、第2の引掛部7aのガラスラン部外壁12cと外側シールリップ13aとの連結部14aへの係止回数が1回になるため、作業性を向上できる。
【0021】
図6(c)は、本発明の実施の形態の取付部材の変形例4の斜視図である。但し、
図2と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
取付部材5dは、取付部材5dの内外中央付近前後中央に外側方向へ向いた前後方向へ連なる突起状の第2の引掛部7bが設けられ、第2の引掛部7bの外側の連結部9を経て、外側端部にサイドバイザー取付部8が設けられている。
【0022】
上記変形例4のサイドバイザー1によれば、
図1-4の効果に加え、取付部材5dの配置に係る作業は、引掛部6をガラスラン部内壁12bと内側シールリップ13bの連結部14bへ係止するだけで良いため、作業性を向上できる。なお、突起状の第2の引掛部7bは、バイザー本体取り付け後、自重により、引掛手段であるガラスラン部上壁12a又はガラスラン部内壁12bに食い込み係止される。
【0023】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、取付部材は、1つのバイザー本体2に対し、1つだけ用いても、複数用いても良い。また、取付部材の下面略中央の窓ガラス上端縁が当接する位置に、緩衝材を設けることで内部シールリップと同等の効果を持たせ、窓ガラスの傷つきや異音の発生の防止を図っても良い。さらに、引掛部及び第2の引掛部の形状は、ガラスラン部への取り付けが可能な形状であれば、上述の形状に限定されない。さらにまた、内部シールリップ13cを設ける位置は、ガラスラン部上壁12aとガラスラン部内壁12bとからなる角に限定されず、ガラスラン部上壁12a又はガラスラン部内壁12bの任意の位置であっても良い。引掛手段は、上述の形状に限定されず、引掛部及び第2の引掛部による取付部材のガラスラン部へ係止が可能な形状であれば良い。加えて、バイザー本体2のサイドバイザー取付部8への取り付け方法は、バイザー本体2の取り付けが可能な形状であれば、上述の形状に限定されない。
【符号の説明】
【0024】
1・・サイドバイザー、2・・バイザー本体、5・・取付部材、6・・引掛部、7,7a,7b・・第2の引掛部、8・・サイドバイザー取付部、10・・ガラスラン、11・・トリム部、12・・ガラスラン部、13a・・外側シールリップ、13b・・内側シールリップ、13c・・内部シールリップ。