(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 37/02 20060101AFI20230330BHJP
F01N 13/10 20100101ALI20230330BHJP
【FI】
F02B37/02 H
F02B37/02 B
F01N13/10
(21)【出願番号】P 2018229975
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】堀川 政人
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-058142(JP,A)
【文献】特開平03-151519(JP,A)
【文献】特開2009-103084(JP,A)
【文献】特開2016-169641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00- 41/10,
F01N 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列型8気筒4サイクルのエンジン本体と、
上記エンジン本体に接続された排気路に設けられたタービンと、
上記エンジン本体に接続された吸気路に設けられ、上記タービンにより駆動されるコンプレッサと
を備え、
上記排気路は、上記エンジン本体の8つのシリンダのうちの4つからなる第1シリンダ群の各排気口を上記タービンの第1入口に接続する第1排気管と、上記8つのシリンダのうちの残りの4つからなる第2シリンダ群の各排気口を上記タービンの第2入口に接続する第2排気管と
で構成され、
上記8つのシリンダの着火順序に基づいて、上記第1シリンダ群の排気パルスが上記第1シリンダ群のバルブオーバーラップの期間と重ならないように、かつ、上記第2シリンダ群の排気パルスが上記第2シリンダ群のバルブオーバーラップの期間と重ならないように構成され
、
上記エンジン本体と上記タービンとの間において、上記第1シリンダ群の排気パルスと上記第2シリンダ群の排気パルスとが互いに合流しないように、上記第1,第2排気管が設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
上記第1シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が1番目、4番目、5番目、8番目のシリンダであり、
上記第2シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が2番目、3番目、6番目、7番目のシリンダであることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
上記第1シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が1番目、2番目、5番目、6番目のシリンダであり、
上記第2シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が3番目、4番目、7番目、8番目のシリンダであることを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のエンジンにおいて、
中速の回転速度で運転されることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列型8気筒4サイクルのエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとしては、動圧過給方式の6気筒のエンジンがある(例えば、特開2005-16313号公報(特許文献1)参照)。上記エンジンでは、過給機の近傍で2つの排気配管を絞り部を介して合流させ、その下流にディフューザ部を設けることにより、排気干渉を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のエンジン構成を直列型8気筒4サイクルのエンジンに適用した場合、6気筒のエンジンに比べて応答性が劣ると共に、8気筒の特性上、排気パルスとバルブオーバーラップが重なって排気干渉が生じるという問題や、排気干渉による気筒毎の影響が異なるために排気温度がばらつくという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、簡単な構成で排気干渉や排気温度のばらつきを抑制でき、応答性や効率を向上できる直列型8気筒4サイクルのエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るエンジンは、
直列型8気筒4サイクルのエンジン本体と、
上記エンジン本体に接続された排気路に設けられたタービンと、
上記エンジン本体に接続された吸気路に設けられ、上記タービンにより駆動されるコンプレッサと
を備え、
上記排気路は、上記エンジン本体の8つのシリンダのうちの4つからなる第1シリンダ群の各排気口を上記タービンの第1入口に接続する第1排気管と、上記8つのシリンダのうちの残りの4つからなる第2シリンダ群の各排気口を上記タービンの第2入口に接続する第2排気管とで構成され、
上記8つのシリンダの着火順序に基づいて、上記第1シリンダ群の排気パルスが上記第1シリンダ群のバルブオーバーラップの期間と重ならないように、かつ、上記第2シリンダ群の排気パルスが上記第2シリンダ群のバルブオーバーラップの期間と重ならないように構成され、
上記エンジン本体と上記タービンとの間において、上記第1シリンダ群の排気パルスと上記第2シリンダ群の排気パルスとが互いに合流しないように、上記第1,第2排気管が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、エンジン本体の8つのシリンダのうちの4つからなる第1シリンダ群の各排気口を第1排気管によりタービンの第1入口に接続すると共に、残りの4つからなる第2シリンダ群の各排気口を第2排気管によりタービンの第2入口に接続しているので、排気路などの構成を簡略化できる。さらに、8つのシリンダの着火順序に基づいて、第1シリンダ群の排気パルスが第1シリンダ群のバルブオーバーラップの期間と重ならないように、かつ、第2シリンダ群の排気パルスが第2シリンダ群のバルブオーバーラップの期間と重ならないように構成することにより、排気干渉や排気温度のばらつきを抑制でき、応答性や効率を向上できる。
【0008】
また、一実施形態のエンジンでは、
上記第1シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が1番目、4番目、5番目、8番目のシリンダであり、
上記第2シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が2番目、3番目、6番目、7番目のシリンダである。
【0009】
上記実施形態によれば、8つのシリンダを2つのシリンダ群に分けて、第1シリンダ群と第2シリンダ群を第1排気管と第2排気管でそれぞれタービンに接続することで容易に排気干渉を抑制できる。
【0010】
また、一実施形態のエンジンでは、
上記第1シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が1番目、2番目、5番目、6番目のシリンダであり、
上記第2シリンダ群は、上記8つのシリンダのうちの着火順序が3番目、4番目、7番目、8番目のシリンダである。
【0011】
上記実施形態によれば、8つのシリンダを2つのシリンダ群に分けて、第1シリンダ群と第2シリンダ群を第1排気管と第2排気管でそれぞれタービンに接続することで容易に排気干渉を抑制できる。
【0012】
また、一実施形態のエンジンでは、
中速の回転速度で運転される。
【発明の効果】
【0013】
以上より明らかなように、本発明によれば、簡単な構成で排気干渉を抑制でき、応答性や効率を向上できる直列型8気筒4サイクルのエンジンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態のエンジンの構成を示す概略図である。
【
図2】第1比較例および第1,第2実施形態のエンジンの排気パルスとバルブオーバーラップの期間を示す図である。
【
図3】第2比較例のエンジンの構成を示す概略図である。
【
図4】上記第2比較例のエンジンの排気パルスとバルブオーバーラップの期間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のエンジンを図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面において、同一の参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものである。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態のディーゼルエンジン1の構成を示す概略図である。
【0017】
第1実施形態のディーゼルエンジン1は、
図1に示すように、直列型8気筒4サイクルのエンジン本体2と、エンジン本体2の排気路12に設けられたタービン3と、エンジン本体2の吸気路11に設けられ、タービン3により駆動されるコンプレッサ4と、吸気路11に設けられたインタークーラ5とを備えている。エンジン本体2,タービン3,コンプレッサ4およびインタークーラ5が吸気路11および排気路12により流体的に接続されている。
【0018】
コンプレッサ4は、吸気口4aから周囲の空気を吸気して圧縮し、吐出口4bから圧縮空気を吐出する。吐出口4bには吸気路11が接続されており、吸気路11はエンジン本体2に接続されている。コンプレッサ4により圧縮された空気は、吸気路11を通じてエンジン本体2に供給される。
【0019】
また、コンプレッサ4は、タービン3により駆動されるようにタービン3と回転軸10を介して機械的に接続されている。タービン3とコンプレッサ4と回転軸10で過給機を構成している。
【0020】
インタークーラ5は、吸気路11のコンプレッサ4とエンジン本体2との間に設けられ、吸気路11内の圧縮空気を冷却する。本実施形態のインタークーラ5は、熱交換器であり、吸気路11中の空気と冷却水とで熱交換して空気を冷却する。インタークーラ5への冷却水の供給量を調整することで空気の冷却量を調整する。
【0021】
エンジン本体2は、圧縮された空気に燃料を噴射して爆発させることで回転動力を発生させる。エンジン本体2は、8つの第1~第8のシリンダC1~C8を有する。第1~第8のシリンダC1~C8は、シリンダC1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8の順にエンジン本体2に直列に並んで配置されている。本実施形態では、第1~第8シリンダC1~C8の着火順序を、
1番目:C1
2番目:C3
3番目:C2
4番目:C5
5番目:C8
6番目:C6
7番目:C7
8番目:C4
としている。
【0022】
第1~第8のシリンダC1~C8の上流であってインタークーラ5の下流の吸気路11には、圧力センサP1および温度センサT1が設けられている。圧力センサP1は、第1~第8のシリンダC1~C8内の燃焼室に供給される圧縮空気の圧力を検出する。温度センサT1は、第1~第8のシリンダC1~C8内の燃焼室に供給される圧縮空気の温度を検出する。圧力センサP1および温度センサT1の検出信号は、制御装置(図示せず)に出力される。また、エンジン本体2に接続される負荷(例えば発電機)から検出される出力値は制御装置に入力される。
【0023】
エンジン本体2は、排気路12を介してタービン3と接続されている。エンジン本体2で燃焼された排出ガスは、排気路12を介してタービン3に導入される。
【0024】
排気路12は、第1排気管12aと第2排気管12bとを有する。第1排気管12aは、エンジン本体2の第1,第4,第5,第8のシリンダC1,C4,C5,C8からなるシリンダ群A(第1シリンダ群)の各排気口E1,E4,E5,E8をタービン3の第1入口3aに接続している。第2排気管12bは、残りの第2,第3,第6,第7のシリンダC2,C3,C6,C7からなるシリンダ群B(第2シリンダ群)の各排気口E2,E3,E6,E7をタービン3の第2入口3bに接続している。
【0025】
タービン3は、第1排気管12aを通じて第1入口3aに導入された排出ガス、および、第2排気管12bを通じて第2入口3bに導入された排出ガスにより駆動される。
【0026】
排出ガスにより駆動されたタービン3の回転を回転軸10を介してコンプレッサ4に伝達して、タービン3によりコンプレッサ4を駆動する。タービン3に導入された排出ガスは、タービン3を駆動させた後、出口3cから外部に排出される。
【0027】
この第1実施形態のディーゼルエンジン1は、100%のエンジン負荷において、300rpm~1200rpmの回転速度で運転する中速のエンジンである。
【0028】
図2は、ディーゼルエンジン1の排気パルス噴出期間とバルブオーバーラップの期間を示している。
図2において、横軸はクランク角0deg~720degを表している。ここで、例えば第1のシリンダC1内のピストンは、クランク角0degと360degで上死点にあり、クランク角180degと540degで下死点にある。他の第2~第8のシリンダC2,C3,C4,C5,C6,C7,C8内のピストンは、90deg毎にシリンダC3,C2,C5,C8,C6,C7,C4の順に位相が遅れる。
【0029】
ここで、直列型8気筒4サイクルの中速のディーゼルエンジン1において、排気パルスは、90deg毎に第1~第8のシリンダC1~C8の夫々の排気弁が開いた時点から60degの期間、第1~第8のシリンダC1~C8の排気口からパルス状に噴出される排気であり、バルブオーバーラップは、第1~第8のシリンダC1~C8の夫々において、排気行程から吸気行程に移行する過程で排気弁と吸気弁とが同時に開いている状態のことである。
【0030】
なお、
図2において、斜線部分が排気パルス噴出期間を示し、黒塗り部分がバルブオーバーラップの期間を示している。
【0031】
図2(a)は、第1比較例のモジュラーパルス方式のディーゼルエンジンにおける排気パルス噴出期間とバルブオーバーラップの期間を示しており、この第1比較例のモジュラーパルス方式のディーゼルエンジンは、本発明を分かりやすく説明するためのものであって本発明ではない。
【0032】
また、
図2(b)は、第1実施形態のディーゼルエンジン1における排気パルス噴出期間とバルブオーバーラップの期間を示しており、
図2(c)は、後述する第2実施形態のディーゼルエンジンにおける排気パルス噴出期間とバルブオーバーラップの期間を示している。
【0033】
図2(a)に示す第1比較例のモジュラーパルス方式のディーゼルエンジンは、8つの第1~第8のシリンダC1~C8が1本の排気路に接続されている構成のエンジンである。第1~第8のシリンダC1~C8の着火順序を、
1番目:C1
2番目:C3
3番目:C2
4番目:C5
5番目:C8
6番目:C6
7番目:C7
8番目:C4
としている。
【0034】
第1比較例のモジュラーパルス方式のディーゼルエンジンでは、シリンダ毎の排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なっている。具体的には、第1のシリンダC1の排気パルス噴出期間が第7のシリンダC7のバルブオーバーラップの期間と重なっている。第2のシリンダC2の排気パルス噴出期間が第1のシリンダC1のバルブオーバーラップの期間と重なっている。第3のシリンダC3の排気パルス噴出期間が第4のシリンダC4のバルブオーバーラップの期間と重なっている。シリンダC4の排気パルス噴出期間が第6のシリンダC6のバルブオーバーラップの期間と重なっている。第5のシリンダC5の排気パルス噴出期間がシリンダC3のバルブオーバーラップの期間と重なっている。第6のシリンダC6の排気パルス噴出期間が第5のシリンダC5のバルブオーバーラップの期間と重なっている。第7のシリンダC7の排気パルス噴出期間が第8のシリンダC8のバルブオーバーラップの期間と重なっている。第8のシリンダC8の排気パルス噴出期間が第2のシリンダC2のバルブオーバーラップの期間と重なっている。
【0035】
上記第1比較例のモジュラーパルス方式のディーゼルエンジンでは、シリンダの排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なって排気干渉が生じるため、応答性や効率が低下する。
【0036】
これに対して、本発明の第1実施形態のディーゼルエンジン1は、
図2(b)に示すように、第1排気管12a(
図1に示す)に接続された第1,第4,第5,第8のシリンダC1,C4,C5,C8からなるシリンダ群Aにおいて、第1,第4,第5,第8のシリンダC1,C4,C5,C8の夫々の排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なっていない。同様に、第2排気管12b(
図1に示す)に接続された第2,第3,第6,第7のシリンダC2,C3,C6,C7からなるシリンダ群Bにおいて、第2,第3,第6,第7のシリンダC2,C3,C6,C7の夫々の排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なっていない。
【0037】
また、
図3は、第2比較例のディーゼルエンジン101の構成を示す概略図である。第2比較例のディーゼルエンジン101は、排気路112を除いて第1実施形態のエンジン1と同様の構成をしており、パルスコンバータ方式のディーゼルエンジンである。この第2比較例のディーゼルエンジン101は、本発明を分かりやすく説明するためのものであって本発明ではない。
図3において、110は回転軸、P101は圧力センサ、T101は温度センサである。
【0038】
第2比較例のディーゼルエンジン101は、
図3に示すように、直列型8気筒4サイクルのエンジン本体102と、エンジン本体102の排気路112に設けられたタービン103と、エンジン本体102の吸気路111に設けられ、タービン103により駆動されるコンプレッサ104と、吸気路111に設けられたインタークーラ105とを備えている。エンジン本体102,タービン103,コンプレッサ104およびインタークーラ105が吸気路111および排気路112により流体的に接続されている。
【0039】
排気路112は、エンジン本体102の第1,第8のシリンダC1,C8の各排気口に接続された第1排気管112aと、第2,第7のシリンダC2,C7の各排気口に接続された第2排気管112bと、第3,第6のシリンダC3,C6の各排気口に接続された第3排気管112cと、第4,第5のシリンダC4,C5の各排気口に接続された第4排気管112dとを有する。第1排気管112aと第2排気管112bは、タービン103近傍で連結されてタービン103の第1入口103aに接続されている。また、第3排気管112cと第4排気管112dは、タービン103近傍で連結されてタービン103の第2入口103bに接続されている。
【0040】
図4(b)は、上記第2比較例のパルスコンバータ方式のディーゼルエンジン101の排気パルス噴出期間とバルブオーバーラップの期間を示す図である。ここで、
図4(a)に
図2(a)の第1比較例のモジュラーパルス方式のディーゼルエンジンの排気パルス噴出期間とバルブオーバーラップの期間も合わせて示している。
【0041】
第2比較例のパルスコンバータ方式のディーゼルエンジン101では、
図4(b)に示すように、第1排気管112a(
図3に示す)に接続された第1,第8のシリンダC1,C8からなるシリンダ群Aにおいて、第1,第8のシリンダC1,C8の夫々の排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なっていない。同様に、第2排気管112b(
図3に示す)に接続された第2,第7のシリンダC2,C7からなるシリンダ群Bにおいて、第2,第7のシリンダC2,C7の夫々の排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なっていない。
【0042】
しかしながら、第1排気管112aと第2排気管112bとはタービン103手前で連結されているため、第1のシリンダC1の排気パルス噴出期間が第7のシリンダC7のバルブオーバーラップの期間と重なって若干ながら排気干渉が生じる。同様に、第8のシリンダC8の排気パルス噴出期間が第2のシリンダC2のバルブオーバーラップの期間と重なって排気干渉が生じる。第3排気管112cと第4排気管112dに接続された第3,第4,第5,第6のシリンダC3,C4,C5,C6についても同じように、排気干渉が生じる。
【0043】
また、第2比較例のパルスコンバータ方式のディーゼルエンジン101では、排気路112を4本の第1~第4排気管112a,112b,112c,112dで構成しているため、排気路112やタービン103の構造が複雑になり、コストが高くなる。
【0044】
上記第1実施形態のディーゼルエンジン1によれば、排気路12を2本の第1,第2排気管12a,12bで構成するので、排気路12を簡略化でき、コストを低減できる。さらに、8つの第1~第8のシリンダC1~C8の着火順序に基づいて、シリンダ群Aの排気パルスがシリンダ群Aの各バルブオーバーラップの期間と重ならないように、かつ、シリンダ群Bの排気パルスがシリンダ群Bの各バルブオーバーラップの期間と重ならないように構成することにより、排気干渉を抑制でき、応答性や効率を向上できる。
【0045】
また、上記1実施形態によれば、一般的な着火順序のディーゼルエンジンに対して排気干渉を抑制することができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態のディーゼルエンジンは、シリンダ群A,Bの組み合わせを除いて第1実施形態のディーゼルエンジン1と同一の構成をしている。
【0047】
この第2実施形態のディーゼルエンジンにおける排気パルス噴出期間とバルブオーバーラップの期間を
図2(c)に示している。
【0048】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1~第8のシリンダC1~C8の着火順序を、
1番目:C1
2番目:C3
3番目:C2
4番目:C5
5番目:C8
6番目:C6
7番目:C7
8番目:C4
としている。
【0049】
エンジン本体2の第1,第3,第6,第8のシリンダC1,C3,C6,C8からなるシリンダ群A(第1シリンダ群)の各排気口を、第1排気管12aを介してタービン3の第1入口3aに接続している。残りの第2,第4,第5,第7のシリンダC2,C4,C5,C7からなるシリンダ群B(第2シリンダ群)の各排気口を、第2排気管12bを介してタービン3の第2入口3bに接続している。
【0050】
第2実施形態のディーゼルエンジンは、
図2(c)に示すように、第1排気管12a(
図1に示す)に接続された第1,第3,第6,第8のシリンダC1,C3,C6,C8からなるシリンダ群Aにおいて、第1,第3,第6,第8のシリンダC1,C3,C6,C8の夫々の排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なっていない。同様に、第2排気管12b(
図1に示す)に接続された第2,第4,第5,第7のシリンダC2,C4,C5,C7からなるシリンダ群Bにおいて、第2,第4,第5,第7のシリンダC2,C4,C5,C7の夫々の排気パルス噴出期間が他のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重なっていない。
【0051】
上記第2実施形態のディーゼルエンジンは、第1実施形態のディーゼルエンジン1と同様の効果を有する。
【0052】
〔第3実施形態〕
上記第1,第2実施形態では、第1~第8シリンダC1~C8の着火順序をシリンダC1,C3,C2,C5,C8,C6,C7,C4としたが、本発明の第3実施形態のディーゼルエンジンは、着火順序を、
1番目:C1
2番目:C2
3番目:C4
4番目:C6
5番目:C8
6番目:C7
7番目:C5
8番目:C3
とする。
【0053】
この場合、第1,第3,第6,第8のシリンダC1,C3,C6,C8からなるシリンダ群A(第1シリンダ群)の各排気口E1,E3,E6,E8を第1排気管12aに接続し、第2,第4,第5,第7のシリンダC2,C4,C5,C7からなるシリンダ群B(第2シリンダ群)の各排気口E2,E4,E5,E7を第2排気管12bに接続する。
【0054】
なお、第1,第2,第7,第8のシリンダC1,C2,C7,C8からなるシリンダ群Aの各排気口E1,E2,E7,E8を第1排気管12aに接続し、第3,第4,第5,第6のシリンダC3,C4,C5,C6からなるシリンダ群Bの各排気口E3,E4,E5,E6を第2排気管12bに接続してもよい。
【0055】
上記第3実施形態のディーゼルエンジンは、第1実施形態のディーゼルエンジン1と同様の効果を有する。
【0056】
上記第1~第3実施形態では、ディーゼルエンジン1について説明したが、ディーゼルエンジンに限らず、ガスエンジンなどの他のエンジンに本発明を適用してもよく、直列型8気筒4サイクルのエンジンであればよい。
【0057】
また、上記第1~第3実施形態では、インタークーラ5を備えたディーゼルエンジン1について説明したが、インタークーラを備えていないディーゼルエンジンに本発明を適用してもよく、他の構成の直列型8気筒4サイクルのエンジンに本発明を適用してもよい。
【0058】
上記第1~第3実施形態では、第1~第8シリンダC1~C8の着火順序をシリンダC1,C3,C2,C5,C8,C6,C7,C4およびシリンダC1,C2,C4,C6,C8,C7,C5,C3としたが、着火順序はこれに限らず、他の順序で着火する場合はその着火順序に基づいて、一のシリンダの排気パルスが二のシリンダのバルブオーバーラップの期間と重ならないように、直列型8気筒4サイクルのエンジンを構成すればよい。
【0059】
本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上記第1~第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…ディーゼルエンジン
2…エンジン本体
3…タービン
3a…第1入口
3b…第2入口
3c…出口
4…コンプレッサ
4a…吸気口
4b…吐出口
5…インタークーラ
10…回転軸
11…吸気路
12…排気路
12a…第1排気管
12b…第2排気管
A…シリンダ群(第1シリンダ群)
B…シリンダ群(第2シリンダ群)
C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8…第1~第8のシリンダ
E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7,E8…排気口
P1,P101…圧力センサ
T1,T101…温度センサ