(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】回転電気機械のローター及び関連する製造プロセス
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20230330BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20230330BHJP
H02K 15/09 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K3/28 J
H02K15/09
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018247100
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2018-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ-ルイ、エラーダ
(72)【発明者】
【氏名】カンタン、オブゴ
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0065022(US,A1)
【文献】特開平07-220843(JP,A)
【文献】特開平07-211360(JP,A)
【文献】特開2015-002616(JP,A)
【文献】特開2011-055655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/050025(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/368078(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/28
H02K 15/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電気機械のローター(1)であって、
- 円柱形中央コア(5)と、前記円柱形中央コア(5)から半径方向外向きに延びる円周方向の複数のアーム(B1…B18)と、を備える本体(3)であって、回転
軸の周りを動くことができるように設けられることが意図されている本体(3)と、
- 巻線の巻き付け及びコイル(C1…C9、C1’…C9’、C1’’…C9’’、C1’’’…C9’’’)の少なくとも1つのシリーズの形成によって作られるコイルセットであって、コイル(C1…C9、C1’…C9’、C1’’…C9’’、C1’’’…C9’’’)は前記本体の少なくとも2つのアーム(B1…B18)の周りにおいて所定数の巻線を具備し、シリーズの2つの隣り合うコイル(C1…C9、C1’…C9’、C1’’…C9’’、C1’’’…C9’’’)は部分的なオーバーラップを有しつつお互いから角度的にオフセットされているコイルセットと、を備え、
前記ローターは、少なくとも2つのアーム(B1…B18)の周りに巻かれた少なく1つの追加の保持
巻線(S1、S1’、S2、S2’)を備え、当該少なくとも2つのアームのうちの少なくとも1つは、半径方向に最も外側に位置する少なくとも1つのシリーズの最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)が周りに巻かれているアーム(B1…B18)と共通し、当該少なくとも2つのアームのうちの少なくとも1つは、前記最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)が周りに巻かれているアームとは異なっており、それによって前記少なくとも1つの追加の保持
巻線(S1、S1’、S2、S2’)は前記最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)の前記巻線と部分的にオーバーラップ
し、
前記ローターは、回転軸に関してお互いに対して180°で配置されたコイルの2つのシリーズを備え、
前記コイルの2つのシリーズの各々は前記少なくとも1つの追加の保持巻線を含み、前記少なくとも1つの追加の保持巻線の各々は、前記コイルの2つのシリーズの一方のシリーズから、前記コイルの2つのシリーズの他方のシリーズに延びるローター(1)。
【請求項2】
コイルの1つのシリーズは、コイルの2つのシリーズの最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)の巻線と部分的に重なる少なくとも1つの追加の保持巻線(S1、S1’、S2、S2’)を含む、請求項
1に記載のローター(1)。
【請求項3】
コイルの少なくとも1つのシリーズの少なくとも1つの追加の保持巻線(S1、S1’、S2、S2’)は複数のアーム(B1…B18)間に作られ、
前記複数のアーム(B1…B18)
は、前記シリーズの前記最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)が周りに巻かれる
第1アームと、コイルの他のシリーズの前記最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)が周りに巻かれる
第2アームと、を含み、コイルの前記シリーズの少なくとも1つの追加の保持巻線(S1、S1’、S2、S2’)は、コイルの前記シリーズの前記最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)の前記巻線と部分的に重なる請求項
1又は2に記載のローター(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの追加の保持巻線(S1、S1’、S2、S2’)は、シリーズの前記最後のコイルの前記巻線の方向に対し、360°が前記回転機械の極の数によって割られた角度に実質的に等しい方向に延びる請求項1~
3のいずれか一項に記載のローター(1)。
【請求項5】
4以上の数の極を備える前記回転電気機械のステーターと協働するように構成されている請求項1~
4のいずれか一項に記載のローター(1)。
【請求項6】
コイル(C1…C9、C1’…C9’、C1’’…C9’’、C1’’’…C9’’’)が周りに巻かれる前記アーム(B1…B18)によってカバーされ
る角度は、360°が前記回転電気機械の前記ステーターの極の数によって割られたものに実質的に等しい請求項
5に記載のローター(1)。
【請求項7】
複数のターミナル(V1…V18)が設けられるスリップリング(11)であって、前記ローター(1)の前記コイル(C1…C9’’’)に電力を供給するように構成されているスリップリング(11)を備え、前記追加の保持
巻線は、前記スリップリング(11)の2つのターミナルを接続する接続ワイヤ(L1’)である請求項1に記載のローター(1)。
【請求項8】
円柱形中央コア(5)と、前記円柱形中央コア(5)から半径方向外向きに延びる複数のアーム(B1…B18)の円周方向の交代と、を備える本体(3)であって、回転
軸の周りを動くことができるように設けられることが意図されている本体(3)を備える回転電気機械のローター(1)を製造する方法であって、
- 前記本体(3)の少なくとも2つのアーム(B1…B18)の周りにコイルセットの所定の数の巻線を巻き付けて、コイル(C1…C9、C1’…C9’、C1’’…C9’’、C1’’’…C9’’’)の少なくとも1つのシリーズを形成する連続するステップ(102…110、102’…110’)であって、前記巻き付けステップは、シリーズの2つの隣り合うコイルが少なくとも1つの共通のアーム(B1…B18)及び少なくとも1つの異なるアーム(B1…B18)の周りに巻かれ、シリーズの2つの隣り合うコイルが部分的に重なりつつお互いから角度的にオフセットされるように、行われる、連続するステップ(102…110、102’…110’)と、
- 前記本体(3)の少なくとも2つのアーム(B1…B18)の周りに前記コイルセットの少なくとも1つの追加の保持巻線(S1、S1’、S2、S2’)を巻き付ける追加のステップ(111、111’)であって、当該アーム(B1…B18)のうち、少なくとも1つは、半径方向最外側に位置するシリーズの前記最後のコイル(C9、C9’)が周りに巻かれるアーム(B1…B18)に共通し、他のアーム(B1…B18)は、シリーズの前記最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)が周りに巻かれる前記アームとは異なり、前記少なくとも1つの追加の保持巻線(S1、S1’、S2、S2’)は前記最後のコイル(C9、C9’、C9’’、C9’’’)の巻線と部分的に重なる、追加のステップ(111、111’)と、
を含
み、
前記ローターは、回転軸に関してお互いに対して180°で配置されたコイルの2つのシリーズを備え、
前記コイルの2つのシリーズの各々は少なくとも1つの追加の保持巻線を含み、各追加の保持巻線は、前記コイルの2つのシリーズの一方のシリーズから、前記コイルの2つのシリーズの他のシリーズに延びる、方法。
【請求項9】
前記連続的な巻き付けステップは、前記回転
軸に関して対称的であるコイルの2つのシリーズを形成するように、前記本体(3)上の第1の場所と、前記第1の場所と径方向に反対にある前記本体上の第2の場所とで2つが同時に行われる請求項
8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両において、例えば例えば歯車付きモータユニットにおいて、使用されることが意図された回転電気機械、特に電動モーター、に関し、とりわけ巻線形ローターを備える回転電気機械に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ある電動モーターにおいて巻線形ローターを使用することは、知られている実践である。これらの巻線形ローターは一般に、積層体の積み重ねによって作られる本体であってアームを具備する本体を含んでおり、当該アームの周りに巻線が巻かれてコイルを形成し、当該コイルはステーターの極と相互に作用することが意図されており、当該ステーターは磁石を使用して又はコイルを使用して作られうる。ローターのコイルへの電力の適用は、ローターを回転させるようにステーターの極との相互作用を可能にする。ローターへの電力の適用は、例えばブラシを使用して実現される。
【0003】
ローターの種々のコイルはお互いに角度的にずれており、特に重ね合わせられうる。その場合、最後のコイルの巻線は、アームの端部の周りに巻かれて保持され、回転機械の寿命の間に巻線の脱落の重大ではない可能性があり、後者の誤動作を引き起こす可能性がある。すなわち、回転機械のサイズを制限するように(車両における使用をより容易にするように)、ローターの径をできる限り制限する必要があり、こういうわけで巻線の脱落を防ぐためにアームのサイズを大きくすることができない。
【0004】
したがって本発明は、ローターの径を増大させることなく、ローターのコイルの最後の巻線が脱落することを防ぐことを可能にする解決策を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明は回転電気機械のローターに関し、当該ローターは:
- 円柱形中央コアと、当該円柱形中央コアから半径方向外向きに延びる円周方向の複数のアームと、を備える本体であって、回転軸Xの周りを動く能力を備えて取り付けられるように意図されている本体、
- 巻線の巻き付け及び少なくとも1つのコイルのシリーズを形成することによって作られるコイル、本体の少なくとも2つのアームの周りの所定数の巻線を備えるコイル、部分的に重なり合って互いから角度的にオフセットされているシリーズの2つの隣り合うコイル、を備え、
ローターは、少なくとも2つのアームの周りに巻かれた少なくとも1つの追加の保持ループを含み、当該少なくとも2つのアームのうちの少なくとも1つは、半径方向最外側に位置する少なくとも1つのシリーズの最後のコイルが巻かれるアームと共通であり、当該少なくとも2つのアームのうちの少なくとも1つは、前記最後のコイルが周りに巻かれるアームとは異なっており、少なくとも1つの追加の保持ループは、前記最後のコイルの巻線と部分的にオーバーラップする。
【0006】
またローターは、以下の追加の態様のうちの1つを有しうる:
追加の保持ループは、少なくとも1つのコイルのシリーズの追加の保持巻線である。
【0007】
ローターは、回転軸Xに関してお互いに対して180°で配置される少なくとも2つのコイルのシリーズを含みうる。
【0008】
1つの単一のコイルのシリーズは、2つのシリーズの最後のコイルの巻線と部分的に重なる少なくとも1つの追加の保持巻線を含む。
【0009】
2つのコイルのシリーズは、それぞれ少なくとも1つの追加の保持巻線を含む。
【0010】
少なくとも1つのコイルのシリーズの少なくとも1つの追加の保持巻線は、複数のアーム間に作られ、当該複数のアームのうちの少なくとも1つはコイルのシリーズのうちの最後のコイルが周囲に巻かれるアームであり、少なくとも1つは他のコイルのシリーズのうちの最後のコイルが周囲に巻かれるアームであり、コイルのシリーズの少なくとも1つの追加の保持巻線は、コイルのシリーズの最後のコイルの巻線と部分的にオーバーラップする。
【0011】
少なくとも1つの追加の保持巻線は、シリーズの最後のコイルの巻線の方向に関して回転機械の極の数によって360°が割られた角度に実質的に等しい方向に、すなわち4つの極を含む機械において最後のコイルの巻線の方向に対して実質的に垂直な方向に、延びる。
【0012】
少なくとも1つの追加の保持巻線は、実質的に180°に等しい角度をカバーする本体の複数のアームの周りに巻かれている。
【0013】
少なくとも1つの追加の保持巻線は、本体のアーム間に巻かれており、当該アームのうちの1つは、シリーズの最後のコイルが周囲に巻かれる本体のアームに隣り合っており、他のアームは、前記最後のコイルが周囲に巻かれる本体のアームに共通している。
【0014】
少なくとも1つの巻線が、モータトルクの増大に対応する巻き付けの方向に巻かれる。
【0015】
本体のアームはTの全体形状を有し、当該Tの全体形状の基部は回転軸Xに向けられ、当該Tの全体形状の自由端は2つの突出巻線保持戻り部を形成する。
【0016】
ローターは、4以上の極の数を有する回転電気機械のステーターと協働するように構成される。
【0017】
コイルが巻かれるアームによってカバーされる角度は、360°を回転電気機械のステーターの極数で割ったものに実質的に等しい。
【0018】
本体は少なくとも10個のアームを含む。
【0019】
本体は18個のアームを含み、コイルは、本体の4つのアームの周りに巻かれた巻線によって形成されている。
【0020】
コイルにおける巻線の数は30巻きである。
【0021】
ローターは、複数のターミナルが設けられ、ローターのコイルに電力を供給するように構成されたスリップリングを含み、追加の保持ループは、スリップリングの2つのターミナルを接続する接続ワイヤである。
【0022】
また本発明は、上記のようなローターを含む回転電気機械に関する。
【0023】
また本発明は、円柱形中央コアと、円柱形中央コアから半径方向外側に延びるアームの円周方向交代(circumferential alternation)とを含む本体を備える回転電気機械のローターを製造する方法に関し、本体は回転軸Xの周りを動く能力を有するように取り付けられることが意図されており、当該方法は、以下のステップを含む:
- 本体の少なくとも2つのアームの周りにコイルセットの所定数の巻線を巻き付けて少なくとも1つのコイルのシリーズを形成する連続的なステップであって、その巻き付けステップは、シリーズの2つの隣り合うコイルが少なくとも1つの共通のアーム及び少なくとも1つの異なるアームの周りに巻かれるように行われ、シリーズの2つの隣り合うコイルは部分的にオーバーラップしつつお互いに対して角度的にずらされている連続的なステップ、
- 少なくとも1つのコイル保持巻線を本体の少なくとも2つのアームの周りに巻く追加のステップであって、当該少なくとも2つのアームのうちの少なくとも1つは、半径方向最外側に位置するシリーズの最後のコイルが周りに巻かれるアームに共通であり、他のアームは、シリーズの最後のコイルが周りに巻かれるアームとは異なり、前記少なくとも1つの保持巻線は前記最後のコイルの巻線と部分的にオーバーラップする、追加のステップ。
【0024】
また方法は、以下の追加の形態を有しうる。
【0025】
連続する巻き付けステップは、回転軸Xに関して対称な2つのコイルのシリーズを形成するように、本体上の第1の場所で及び第1の場所と径方向に反対にある本体上の第2の場所で二つに且つ同時に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、例として与えられ且つ決して限定するものではない以下の説明を読むことからより明確になるであろう。
【
図2】
図2は、ローター本体の回転軸X上の概略図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図4】
図4は、スリップリング側から見た
図3の巻線形ローターの図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図8】
図8は、第5の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図9】
図9は、第6の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図10】
図10は、第7の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図11】
図11は、第8の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図12】
図12は、第9の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図13】
図13は、第10の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図14】
図14は、第11の実施形態による巻線形ローターの図である。
【
図15】
図15は、本発明による巻線歯付きローター18の製造における種々のステップのフローチャートである。
【
図16】
図16及び
図17は、第1及び第2の巻き付け構成によるローターの概略投影平面図である。
【
図17】
図16及び
図17は、第1及び第2の巻き付け構成によるローターの概略投影平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
全ての図において、同一の要素は同じ参照番号を有する。
【0028】
以下の複数の実施形態は例である。説明は1又は複数の実施形態に言及しているが、これは各参照が同じ実施形態に関連すること、又は特徴が1つの実施形態だけに適用されることを、必ずしも意味しない。他の実施形態を作り出すために、様々な実施形態の一つ一つの特徴は組み合わせられること、又はお互いに入れ替えられることもできる。
【0029】
図1は、電動モーターなどの回転機械のローター1の本体3の概略斜視図である。本発明との関連で、回転機械は、ステーター(図示せず)に配置された少なくとも4つの極を備える。それらの極は、例えば永久磁石を用いて又はコイルを用いて作られる。本体3は円柱形の全体形状を有し、その周辺の周りに分布した1又は複数のコイルのシリーズを受けることが意図されている。本体3は、円柱の中心軸に対応する回転軸Xの周りで動くことができるように取り付けられることが意図されている。
【0030】
本体3は、円柱形中央コア5と、この例では18個がB1、B2…B18(
図1ではアームB16、B17及びB18は隠れている)で示されている複数の周方向のアームと、を備え、それは円柱形中央コア5から半径方向外側に延びる円柱形中央コア5の外周上に複数のアームが配置されること示すことを意味する。アームB1…B18は、円柱形中央コア5の全体の外周の周りに均等に分布し、コイルセットの巻線の巻かれたものを受け入れることが意図されたノッチによって分離されている。もちろん、発明は、ローター3のアームB1…B18の均等な分布に限定されない。この例では、本体3は18個のアームを備えるが、本発明はこの数のアームに限定されず、任意の数に、好ましくは10を超える数に限定される。さらに、モーターの極の数は4とは異なっていてもよい。
【0031】
本体3の回転軸X上の図を示す
図2に最もよく見られるように、本体3のアームB1…B18は、例えばその回転軸Xにベース7が向けられているTの全体形状であって、その自由端が巻線保持をアシストする2つの突出戻り部9を形成するTの全体形状を有する。
【0032】
本体3は、例えば、互いに集められた積層体の束によって形成され、各積層体は、円柱形中央コア5及び複数のアームB1…B18を含む本体3の1つの“スライス”に対応する。しかしながら、他のタイプの本体3が、例えば一体型本体が、同様に可能である。
【0033】
図3は、ローター1の図を示し、ローター1の巻き付けたものは、本体3のアームB1…B18上に分配された2つのコイルのシリーズC1…C9及びC1’…C9’を含む。コイルは、本体の2つのアームB1…B18の周りに巻かれた複数の巻線によって作られ、且つ単一のワイヤから作られる。ワイヤは、例えば銅線である。またローター1は、
図4に示すようにコイルに電力を供給することを可能にするスリップリング11を含む。
図4はスリップリング11の側方から見た
図3のローター1を示し、コイルC1…C9’の2つの端部はそれぞれスリップリング11の所定のターミナルに接続されており、ローター1を回転させるように所望の瞬間に電力がコイルに供給されることを可能にする。スリップリング11は、例えば、V1…V18で示された18個のターミナルを備えており、コイルC1…C9’に電力を供給するために当該18個のターミナルに対してブラシ(図示せず)に擦り合う。第1のブラシが正の電力供給部に対応し、第2のブラシが負の電力供給部に対応し、第1のブラシが第1のターミナル、例えばV1、に接触し且つ第2のブラシが第2のターミナル、例えばV5、に接触する場合に、V1とV5との間に直列に接続されたコイルに電力が供給される。電動モーターを作動させるために、スリップリング11のターミナルV1~V18へのコイルC1~C9’の接続に関して様々な可能な構成がある。
【0034】
しかしながら、本発明は、2つのコイルのシリーズを含むローターに限定されず、異なる数のコイルのシリーズ、例えば
図13及び
図14に示されるような90°離れて配置された4つのコイルのシリーズを含むローター1に及ぶことに留意されるべきである。明確さのために、
図13及び
図14のコイルのいくつかは参照されていない。
図3の実施形態のように、第2のシリーズのコイルC1’…C9’は第1のシリーズのコイルC1…C9に面して位置しているが、ローター1はまた第3のシリーズC1’’…C9’’に面して位置する第4のシリーズC1’’’…C9’’’を含み、様々なシリーズが90°離れて位置する。
【0035】
2つのシリーズのコイルの位置は回転軸に関して対称になっておりしたがっていかなる追加の不均衡も生じないので、2つの径方向に対向するコイルのシリーズを含むローター1の使用は、(単一のコイルのシリーズを含むローター1と比較して)よりバランスのとれたローター1を得ることを可能にする。
【0036】
コイルのシリーズの数は回転機械の極数に特に依存する。巻き付けステップを実行する機械がいくつかの巻き付けアームを備える場合、様々なシリーズのコイルが同時に作られることができ、それによってより迅速にローター1のコイルセットを形成することが可能になる。
【0037】
機械がちょうど1巻きの巻き付けアームを有する場合、コイルのシリーズは交互に作られてもよい。後者の場合、各シリーズの第1のコイルC1、C1’、C1’’、C1’’’が巻かれ、各シリーズの第2のコイルC2、C2’、C2’’、C2’’’が続き、もろもろが続き、各シリーズの最後のコイルC9、C9’、C9’’、C9’’’に至るまで続く。コイルのシリーズの数は極数に特に依存する。一般に、コイルのシリーズの数は、1つ、極数、又は極数の半分、に等しい。したがって、4つの極を備えるモーターの場合、コイルのシリーズの数は1つ、2つ又は4つである。
【0038】
図3の状況において、2つのコイルのシリーズは実質的に同一であり、180°離れて配置され、それは、1つのコイル、例えば第1のシリーズの第1のコイルC1が、他のシリーズの同じコイル、我々の例では第1のコイルC1’、の反対側に位置することを意味する。この場合、各シリーズは、第1のシリーズの場合ではそれぞれC1、C2…C9によって示され、第2のシリーズの場合ではC1’、C2’…C9’によって示される、9つのコイルのセットを形成する。しかしながら、各シリーズにおいて異なる数のコイルを有することも同様に可能である。好ましくは、ローター1をバランスがとれた状態に保つために、様々なシリーズは同じ数のコイルを有する。
【0039】
したがってコイルは、本体の少なくとも2つのアームの周りにおける所定の数の巻線、例えば30の巻線、の巻かれたものによって形成される。様々なコイルの巻き数は、好ましくは、一連の全てのコイルC1…C9’について同じである。
【0040】
コイルが周りに巻かれるアームの数は、極ピッチと実質的に等しいか、わずかに小さくなるように選択される。極ピッチは、360°がモーターの極の数で割られたもの等しい角度に対応する。このケースでは、モーターは4つの極を備え、極ピッチは90°に等しい。ローター3は18個のアームを含むので、実質的に90°の角度をカバーするコイルを得るためには、極ピッチより小さい角度をカバーするように、巻線が巻かれるべき4又は5に等しい数のアームを、好ましくは4に等しい数のアームを、選ぶ必要がある。
【0041】
したがって
図3の状況において、コイルC1…C9’は、4つのアームの周りにおける巻線の巻かれたものによって形成され、すなわち、本体の4つのアームは、コイルC1…C9’の巻線の中央に配置され、その巻き付けは、最も離れてスペースが空けられている4つのアームのうちの2つに隣り合うノッチにおいて行われる。しかしながら、コイルC1…C9’は、4以外の多数のアームの周りに均等に巻かれてもよい。
【0042】
したがって、コイルC1を形成する巻線がアームB9、B10、B11及びB12の周りに巻かれる一方で、次のコイルC2の巻線がアームB10、B11、B12及びB13の周りに巻かれる(1つのアームだけ又は1つのシリーズの2つの隣り合うコイル間で20°だけのオフセット)。したがって、コイルC2の巻線は、アームB10、B11、及びB12上のコイルC1の巻線とオーバーラップする。そのため1つのシリーズの2つの隣り合うコイルは、部分的に重なり合いつつ互いに対して角度的にオフセットされている。さらに、巻線を巻き付ける方向は、シリーズの様々なコイルについて同じであること(シリーズにおけるすべてのコイルについて時計回り又は反時計回りの方向に巻き付けること)に留意されるべきである。またこの方向は、異なるシリーズの様々なコイルについても同じである。この場合、1つのシリーズの2つの隣り合うコイル間のオフセットは、20°に対応する1つのアームの単位でのオフセットに対応する。部分的なオーバーラップのために、この場合にお互いに対して180°で配置される2つのシリーズの存在と相まって、巻線は、ローター1の外縁に対して及びアームB1…B18の突出戻り部9に対してますます近接して配置される。
【0043】
シリーズの最後のコイル、この例におけるコイルC9及びC9’、すなわち半径方向に最も外側のシリーズにおけるコイル、の巻線が脱落するのを防ぐために、少なくとも1つの追加の保持ループが本体の少なくとも2つのアームの周りに巻かれ、当該少なくとも2つのアームのうちの少なくとも1つは、シリーズの最後のコイルが周りに巻かれるアームのうちの1つであり、当該少なくとも2つのアームのうちの少なくとも1つは、前記最後のコイルが周りに巻かれるアームとは異なる。
【0044】
第1実施形態によれば、保持ループは、コイルC1…C9’のシリーズのうちの1つの追加の保持巻線に対応する。それによって、少なくとも1つの追加の保持巻線は、最後のコイルC9、C9’の巻線と部分的に重なる。追加の保持巻線は、シリーズのコイルの巻線の巻き付けの(時計回り又は反時計回りの)方向と、同じ方向又は異なる方向に巻かれてもよい。1又は複数の追加の保持巻線はシリーズの最後のコイルと連続して巻かれ、スリップリング11の第1及び第2の所定のターミナルに最後のコイルが接続される必要がある場合に、最後のコイルの第1の端部が第1のターミナルに接続され且つ1又は複数の追加の巻線の端部が第2のターミナルに接続される。
【0045】
図3の場合に、コイルセットは、最後のコイルC9、C9’の巻線の方向に対して実質的に垂直に延びる追加の保持巻線を含む。すなわち、最後のコイルC9がアームB17、B18、B1、B2の周りに巻かれ、追加の保持巻線S1がアームB11、B12、B13、B14、B15、B16及びB17の周りに巻かれる。最後のコイルC9の巻線の方向と実質的に垂直な方向に延びる保持巻線は、最後のコイルC9の巻線の効果的な保持を可能にする。
【0046】
さらに、
図3の場合のようにコイルの2つのシリーズを含むローターの場合、好ましくは、2つの最後のコイルC9及びC9’と部分的に重なるように追加の巻線が巻かれる。コイルC9’はアームB8、B9、B10及びB11の周りに巻かれ、第2のシリーズのコイルの最後の巻線S1’はアームB2、B3、B4、B5、B6、B7及びB8の周りに巻かれる。したがって、追加の巻線S1及びS1’は各々、最後のコイルC9及びC9’と部分的に重なり合い、したがって最後のコイルC9及びC9’の巻線の位置を保持するのに寄与する。好ましくは、最後のコイルのC9、C9’の保持を最適化するために、追加の巻線S1及びS1’はそれぞれ、例えば最後のコイルC9、C9’の一方の側及び他方の側に対応する最後のコイルC9、C9’の第1及び第2の部分にオーバーラップする。
【0047】
あるいは、シリーズのコイルのうちの1つのみが、1又は複数の追加の巻線を含み、この又はこれらの追加の巻線が、コイルの2つのシリーズの最後のコイルの巻線と部分的に重なる。
【0048】
図5~
図10は、追加の保持巻線の他の可能な構成を示す。すべてのこれら構成において、コイルC1…C9’が周りに巻かれているアームB1…B18の数が異なっていても、コイルC1…C9’は
図3におけるのと同じやり方で配置されている。
【0049】
図5は、追加の保持巻線が本体3の4つのアームの周りに巻かれている構成を示す。したがって、最後のコイルC9はアームB1、B2、B3及びB4の周りに巻かれ、この最後のコイルC9に関連づけられてラインにより示されている追加の保持巻線S1はアームB16、B17、B18及びB1の間に延びる。あるいは、点線で概略的に示されているように、追加の保持巻線S1はアームB4、B5、B6及びB7の間に同様に延びてもよい。
【0050】
対称的に、コイルの他のシリーズについては、最後のコイルC9’がアームB10、B11、B12及びB13の周りに巻かれ、この最後のコイルC9’に関連付けられる追加の保持巻線S1’が、アームB13、B14、B15及びB16の周りに又はアームB7、B8、B9およびB10の周りに巻かれる。
【0051】
図6は、本体3の5つのアームの周りに追加の保持巻線が巻かれている構成を示す。したがって、最後のコイルC9はアームB1、B2、B3及びB4の周りに巻かれており、ラインで示されている追加の保持巻線S1はアームB15、B16、B17、B18及びB1の間で延びる。あるいは、点線で概略的に示されるように、追加の保持巻線S1はアームB4、B5、B6、B7及びB8の間で同様に延びていてもよい。
【0052】
対称的に、コイルの他のシリーズについては、最後のコイルC9’がアームB10、B11、B12及びB13の周りに巻かれ、追加の保持巻線がアームB12、B13、B14、B15及びB16の周りに又はアームB7、B8、B9、B10及びB11の周りに巻かれる。
【0053】
図7は、本体3の6つのアームの周りに追加の保持巻線が巻かれている構成を示す。したがって、最後のコイルC9はアームB1、B2、B3及びB4の周りに巻かれ、ラインで示される追加の保持巻線S1はアームB14、B15、B16、B17、B18及びB1の間に延びる。あるいは、点線で概略的に示すように、追加の保持巻線S1はアームB4、B5、B6、B7、B8及びB9の周りに同様に巻き付けられてもよい。
【0054】
対称的に、コイルの他のシリーズについては、最後のコイルC9’がアームB10、B11、B12及びB13の周りに巻かれ、追加の保持巻線がアームB11、B12、B13、B14、B15及びB16の周りに又はアームB7、B8、B9、B10、B11及びB12の周りに巻かれる。
【0055】
図8は、本体3の7つのアームの周りに追加の保持巻線が巻かれている構成を示す。したがって、最後のコイルC9はアームB1、B2、B3及びB4の周りに巻かれ、ラインで示される追加の保持巻線S1はアームB13、B14、B15、B16、B17、B18及びB1の間に延びる。あるいは、点線で概略的に示されるように、追加の保持巻線S1はアームB4、B5、B6、B7、B8、B9及びB10の間に同様に延びていてもよい。
【0056】
コイルの他のシリーズに関し、追加の保持巻線のための巻きつけの解決策は、コイルの第1のシリーズに関するのと同じである。そしてこれは、描かれた2つの位置に対応する2つの追加の保持巻線がある状況である。
【0057】
図9は、本体3の8つのアームの周りに追加の保持巻線が巻かれている構成を示す。したがって、最後のコイルC9はアームB1、B2、B3及びB4の周りに巻かれ、ラインで示される追加の保持巻きS1はアームB13、B14、B15、B16、B17、B18、B1及びB2の間に延びる。あるいは、点線で概略的に示されるように、追加の保持巻線S1はアームB4、B5、B6、B7、B8、B9、B10及びB11の周りに同様に巻き付けられていてもよい。あるいはまた、追加の保持巻線S1はアームB12、B13、B14、B15、B16、B17、B18及びB1の周りに、あるいはさらにアームB3、B4、B5、B6、B7、B8、B9及びB10の周りに、巻き付けられていてもよい。
【0058】
コイルの他のシリーズに関し、追加の保持巻線のための巻きつけの解決策は、コイルの第1のシリーズに関するのと同じである。そしてこれは、描かれた2つの位置に対応する2つの追加の保持巻線がある状況である。
【0059】
図10は、本体3の9つのアームの周りに追加の保持巻線が巻かれている構成を示す。したがって、最後のコイルC9はアームB1、B2、B3及びB4の周りに巻かれ、ラインで示される追加の保持巻線S1はアームB12、B13、B14、B15、B16、B17、B18、B1及びB2の間に延びる。あるいは、点線で概略的に示されるように、追加の保持巻線S1がアームB3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10及びB11の周りに同様に巻かれていてもよい。
【0060】
コイルの他のシリーズに関し、追加の保持巻線のための巻き付けの解決策は、第1のコイルのシリーズに関するのと同じである。そしてこれは、記述された2つの位置に対応する2つの追加の保持巻線がある状況である。
【0061】
あるいは、
図10の場合、2つのシリーズC9及びC9’の最後の2つのコイルを保持するために、記述された2つの位置のうちの1つに基づく単一の追加の保持巻線を使用することができる。
【0062】
また本発明は記載された構成に限定されず、最後のコイルC9、C9’の巻線と部分的に重なる少なくとも1つの追加の保持巻線であって、それにより回転電気機械が使用されている場合にこれらが脱落するのを防ぐ少なくとも1つの追加の保持巻線を含むすべての構成をカバーするように、拡張することに留意されるべきである。実施形態のうちの1つの特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられることができる;したがって、コイルC9に関連する追加の巻線S1は、
図4に示すように4つのアームの周りに巻かれることができる一方で、コイルC9’に関連する追加の巻線S1’は、
図5に示すように5つのアームの周りに巻かれてもよい。
【0063】
コイルのシリーズは、いくつかの追加の保持巻線を、例えば2つの追加の保持巻線を、2つの追加の巻線がS1及びS2で示される
図11に示すように、同様に含むことができる。その例において、
図12に示すように、第1の追加の巻線を第1位置において有し且つ第1のものとは異なる第2位置において第2の追加の巻線を同様に可能であるが、2つの巻線S1及びS2は同じ複数のアームの周りに同じ巻き付けの方向に巻かれる。したがって、追加の巻線は、最後のコイルC9、C9’の巻線が脱落するのを防止することを可能にする他の位置と同様に、
図4から
図9までに描かれた位置のうちの1つを採用することができる。また追加の巻線の数は2より多くてもよい。さらに、単一の追加の保持巻数を含む先の実施形態に関し、使用されるコイルのシリーズのうちの1つの追加の保持巻線のみが、シリーズの最後のコイルC9、C9’の巻線を保持することが可能である。先に示したように、2よりも大きい数のコイルのシリーズを、例えば90°離れて配置された4つのシリーズを、含むローターを有することも同様に可能である。その場合、追加の1又は複数の巻線は、2つのシリーズの最後のコイルの巻線と部分的に重なってもよい。
【0064】
前述のように、ローター1のコイルのシリーズの数は必ずしも1又は2に限定されず、より多くの数であってもよい。
図13は、C1…C9、C1’…C9’、C1’’…C9’’及びC1’’’…C9’’’によってそれぞれ示され、90°離れて配置されたコイルの4つのシリーズを含むローター1を示す。各コイルC1…C9’’は、ローター1の4つのアームB1…B18の周りに巻かれている。コイルの各シリーズは9つのコイルを含み、1つのシリーズの隣り合うコイルは、上述の実施形態におけるように、部分的なオーバーラップとともに角度的にオフセットされている。第2のシリーズのコイルC1’…C9’はそれぞれ第1のシリーズのコイルC1…C9とは径方向に反対にある一方で、第4のシリーズのコイルC1’’’…C9’’’はそれぞれコイル第3のシリーズのコイルC1’’…C9’’とは径方向に反対にある。さらに、追加の1又は複数の巻線は、2つのコイルのシリーズの最後のコイルの巻線に少なくとも部分的に重なるように配置されてもよい。
【0065】
図13の場合、ラインT1及びT2によって示されるように、径方向に反対側の最後のコイルの巻線が周りに巻かれているアームの周りに1又は複数の追加の保持巻線が巻かれてもよい。
【0066】
あるいは、
図14においてラインT1’及びT2’によって示されるように、2つの隣り合うシリーズの最後のコイルの巻線が周りに巻かれるアームであって、そのコイルセットが他の点では
図13のコイルセットと同じであるアームの周りに、1又は複数の追加の保持巻線が巻かれていてもよい。
【0067】
様々なシリーズの最後のコイルの巻線の保持を可能にする追加の1又は複数の巻線に関する他の配置も同様に可能である。
【0068】
第2実施形態によれば、追加の保持ループは、スリップリング11のターミナルV1…V18のうちの2つを接続するように意図された接続ワイヤによって作られる。すなわち、先に示したように、コイルC1…C9’’’はスリップリング11のターミナルに接続され、これらに電力が供給されるようにする。しかしながら、たった2つのブラシを有する4つ以上の極を備える電動モーター1の場合、すべての極のコイルに電力を供給するために短絡が使われる。これらの短絡は、2つのブラシが同時に同じ電力を供給することになるスリップリング11のターミナルV1…V18間の接続である。例えば、90°離れて配置された4つのブラシを含むモーターの場合、2つの径方向に対向するブラシは同じ電圧を供給し、したがってこれら2つのブラシのうちの1つを省くことができ、“ストラップ”としても言及される接続ワイヤを伝導することによって径方向に対向するスリップリング11のターミナルを接続することができる。
【0069】
図16は、ローター3の平面投影図を示す。図の上部はローター3のアームB1…B18を示し、下部はスリップリング11のターミナルV1…V18を示す。コイルの巻線の配置は矢印線で示されており、矢印は巻線の巻き付けの方向を示す。しかしながら、コイルは部分的にしか示されていない(スリップリング11のターミナルへの接続は最後のコイルC9及びC9’についてのみ示されている)ことに留意されるべきである。
図16の場合、第1のシリーズの最後のコイルC9はアームB12、B13、B14及びB15の周りに巻かれ、第2のシリーズの最後のコイルC9’はアームB3、B4、B5及びB6の周りに巻かれる。さらに、2つの最後のコイルC9とC9’はスリップリング11のターミナルV10及びV11の間に直列に接続されている(そのシリーズの同等の(第1の、第2の…)コイルは全てスリップリング11の2つのターミナル間に直列に接続されている)。またコイルC1…C9’はスリップリング11の2つのターミナル間に並列に接続されてもよいことに留意されるべきである。
【0070】
さらに、ローター3は、スリップリング11の対向するターミナルを接続する接続ワイヤL1、L2…L9を備える。接続ワイヤL1はターミナルV1とターミナルV10を接続し、接続ワイヤL2はターミナルV2とターミナルV11を接続し、…接続ワイヤL9はターミナルV9とターミナルV18を接続する。接続ワイヤは、使用されるブラシの数を減らすことを可能にする。
【0071】
したがって、そのような構成では、1以上のシリーズの最後のコイルC9、C9’の巻線に少なくとも部分的に重なりこれらの巻線の位置を保持するように、これらの接続ワイヤL1…L9のうちの少なくとも1つをローターの少なくとも2つのアームの周りに通すことが可能である。そのような実施形態は、接続ワイヤL1’(点線で示される)によって
図17に示され、そしてその接続ワイヤL1’はワイヤL1(同様に点線で示される)を置き換える。接続ワイヤL1’は、最後のコイルC9’の巻線とオーバーラップするようにアームB4とB5との間を通過し、最後のコイルC9のアームとオーバーラップするようにアームB13とB14との間を通過する。明らかに、接続ワイヤL1’の他の配置を使用することが可能であるが、ただしこれらの配置が、最後のコイルC9、C9’のうちの少なくとも1つの巻線の部分的な重なりを可能にするという条件がある。接続ワイヤL1’は、
図16の接続ワイヤL1のようにスリップリングのターミナルV1及びV10を接続する。他の接続ワイヤL2…L9は、
図16の接続ワイヤL2…L9と同じままである。しかしながら、いくつかの接続ワイヤを使用することによって最後のコイルC9、C9’の巻線を保持するためのループを作ることが可能である。
【0072】
さらに、図示されていない代替実施形態によれば、接続ワイヤL1’によって形成されるループは、少なくとも2つのアームの周りに2つの巻き付けを形成してもよく、その2つの巻き付けはお互いに反対の方向に巻き付けられ、接続ワイヤL1’によって形成されるループの非対称性の結果として引き起こされるテンションを補っている。好ましくは、1又は複数の保持ループは、ローター1の多数のアームB1~B18の周りに巻かれて、2極ピッチに実質的に等しい角度を、すなわち18個のアームB1…B18を含むローター1及び4つの極を備える電動モーターの場合には8個のアームと10個のアームB1…B18の間を、カバーする。
【0073】
保持ループはまた、少なくとも1つのシリーズの最後のコイルの巻線と少なくとも部分的に重なり、最後のコイルの巻線の位置を保持するようにその端部でスリップリング11に固定されることができる任意のワイヤ又は要素によって形成されてもよい。取り付けは、はんだ付け取り付けに限定されず、当業者に知られているあらゆる種類の取り付けをカバーする。
【0074】
図15は、ローター1の製造における様々なステップを示す。
【0075】
第1のステップ101は、本体3を製造することである。前述のように、この本体3は一緒に接合された複数の積層体の積み重ねから作られることができる。第1のステップは、例えば、特に本体3のアームの数に応じて、積層体を所望の形状に切断する第1のサブステップと、例えばクリッピング、はんだ付け又はボンディングによって、複数の積層体を一緒に固定する第2のサブステップとを伴う。
【0076】
その方法は次に、コイルセットを作り出すための一連のステップ102~110を含み、各ステップは、コイルC1…C9’’’を形成するための複数のアームの周りにおける所定数の、例えば30の、巻線の巻き付けに対応する。コイルセットがたった1つのシリーズのコイルを含む場合、2つの隣り合うコイルが部分的オーバーラップしつつお互いから角度的にオフセットされるように、少なくとも1つの共通アーム及び少なくとも1つの別個のアームの周りにおいて2つの連続する巻回ステップが行われる。様々なコイルに対応する様々な巻き付けは、同じ巻きつけ方向に行われる。従って、ステップ102は、例えば(
図3に示すように)アームB9、B10、B11及びB12の周りにおけるコイルC1の創作に対応し、ステップ103は、例えばアームB10、B11、B12及びB13の周りにおけるコイルC2の創作に対応する。したがって、コイルC2の巻線は、アームB10、B11、及びB12上のコイルC1の巻線とオーバーラップする。
【0077】
加えて、ローター1がコイルのいくつかのシリーズを、特に
図3のローターの場合のように2つのシリーズを、具備する場合、その方法は第2の一連のステップ102’~110’を含み、当該第2の一連のステップ102’~110’はそれぞれステップ102~110と同時に実行可能である。したがってステップ102’は(
図3に示すように)アームB18、B1、B2及びB3の周りにおけるコイルC1’の創作に対応し、また、したがってステップ103’はアームB1、B2、B3及びB4の周りにおけるコイルC2’の創作に対応する。したがって、コイルC2’の巻線は、アームB1、B2及びB3上のコイルC1’の巻線とオーバーラップする。コイルのいくつかのシリーズを同時に作ることは、ローター1のコイルセットを製造するのに必要とされる時間を短縮することを可能にするが、いくつかの巻線巻き付けアームを備える機械を必要とする。
【0078】
あるいは、ステップ102’~110’は、ステップ102~110に対して時間的にオフセットされてもよい。
【0079】
さらに、コイルのいくつかのシリーズが、例えば
図3におけるコイルの2つのシリーズが、たった1つの巻き付けアームを備える機械を使用して作られてもよい。その場合、様々なシリーズのコイルが交互に形成され、その方法は、第1のシリーズの最初のコイルを形成するステップ102、そして第2のシリーズの最初のコイルを形成するステップ102’、そして第1のシリーズの第2のコイルを形成するステップ103、そして第2のシリーズの第2のコイルを形成するステップ103’、などを、すべてのコイルに関して含む。ローターの本体上のコイルの位置決めは、2つの巻き付けアームによって同時に作られるコイルの2つのシリーズを有する場合と同じままである。同様に、より多数のコイルのシリーズを、
図13及び
図14に示すように例えば4つのシリーズを、得ることが可能である。
【0080】
その方法はまた、上記のように少なくとも1つの追加の保持巻線を巻き付けるステップ111を含む。追加の巻線の数は、例えば、1つの巻線S1であり、当該1つの巻線S1は、例えば、ステップ110で形成された最後のコイルの巻線に対して実質的に直角を成す方向に巻かれる。少なくとも1つの追加の巻線の巻き付けの方向(又はコイル巻き方向)は、好ましくは、最後のコイルとは反対の方向である。
【0081】
同様に、コイルの第2のシリーズに関連する1つ(又は2つ以上)の追加の巻線S1’を形成するために、ステップ111’もまた実行されてもよい。2つの巻き付けアームを備える機械の場合、ステップ111及びステップ111’は同時に行われてもよい。
【0082】
追加の巻線S1及びS1’は、例えば、2つのシリーズの最後のコイルC9及びC9’の巻線と部分的に重なるように配置される。
【0083】
コイルの4つのシリーズを含むローター1の場合、追加の巻線(
図13及び
図14におけるT1、T2、T1’及びT2’)は、2つのシリーズの最後のコイルC9、C9’、C9’’、C9’’’の巻線と部分的に重なるように、配置されてもよい。
【0084】
したがって、少なくとも1つの追加の保持巻線の使用は、シリーズの最後のコイルの巻線が脱落することを回避することを可能にし、それによって電動モーターの正しい作動を確保するのと同時に低減された径のローターを維持することを可能にする。さらに、ローターがコイルのいくつかのシリーズを具備する場合に、2つの最後のコイルの巻線を保持するように追加の巻線が使われることができる。