(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】モータ歯車箱組立体
(51)【国際特許分類】
B60K 1/02 20060101AFI20230330BHJP
B60G 3/20 20060101ALI20230330BHJP
B60K 6/00 20071001ALI20230330BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20230330BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20230330BHJP
【FI】
B60K1/02
B60G3/20
B60K6/00
F16H1/06
F16H57/04 E
F16H57/04 J
(21)【出願番号】P 2018559363
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(86)【国際出願番号】 US2017031056
(87)【国際公開番号】W WO2017196633
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-11
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518397733
【氏名又は名称】ニコラ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NIKOLA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】4141 East Broadway Road, Phoenix, Arizona 85040, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ミルトン,トレバー アール.
(72)【発明者】
【氏名】リンク,ケヴィン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヒートン,アンソニー エー.
(72)【発明者】
【氏名】マッケルプラン,モルガン
(72)【発明者】
【氏名】ジェネス,スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ホーキンス,エイドリアン
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】藤井 昇
【審判官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180492(JP,A)
【文献】特開平2-306828(JP,A)
【文献】特開平5-147445(JP,A)
【文献】特開2010-48379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0132039(US,A1)
【文献】特開2007-216786(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/02
B60K17/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の両側に2つの車輪を有する前記車輪用のモータ歯車箱組立体において、
それぞれが電気モータおよび関連した歯車列を含む2つの独立駆動システムであって、各駆動システムは、前記車輪の一方を独立して駆動するように構成される、2つの独立駆動システムと、
前記車両の前方から見たときに当該車両の横方向において、2つの前記歯車列が少なくとも部分的に2つの前記電気モータの間に位置付けられるように、2つの前記電気モータおよび2つの前記歯車列を収容する共通の1つの筐体とを含み、
一方の駆動システムの少なくとも一部は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、前記他方の駆動システムの少なくとも一部に対して、前記車両の長手方向に概ね反対方向を有して、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、一方の独立駆動システムの少なくとも一部と他方の独立駆動システムの少なくとも一部とが、前記長手方向に互いにずれており、
前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、2つの前記電気モータが前記長手方向に互いにずれており、
2つの前記歯車列は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されて当該車両の前方から見たときに、少なくとも部分的に互いに前記車両の横方向に重複することを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ歯車箱組立体において、2つの前記電気モータは、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、互いに対して、前記長手方向に概ね反対方向を有することを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項3】
請求項1に記載のモータ歯車箱組立体において、一方の歯車列の少なくとも一部は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、他方の歯車列の少なくとも一部に対して、前記長手方向に概ね反対方向を有して、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、一方の歯車列の少なくとも一部と他方の歯車列の少なくとも一部とが、前記長手方向に互いにずれていることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ歯車箱組立体において、各歯車列は中間歯車を含み、2つの前記中間歯車は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、互いに対して、前記長手方向に概ね反対方向を有することを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ歯車箱組立体において、各歯車列は出力歯車を有し、2つの前記出力歯車は互いに軸方向に位置合わせされていることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ歯車箱組立体において、2つの前記電気モータは、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、互いに対して、前記車両の前記長手方向にずれていることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項7】
請求項1に記載のモータ歯車箱組立体において、前記車両は制御アームを有するサスペンションシステムをさらに含み、前記筐体は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、前記筐体が前記制御アームを支持するように前記制御アームに連結されるように構成されることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項8】
請求項1に記載のモータ歯車箱組立体において、各駆動システムは、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、前記車両において前記駆動システムの対応する電気モータと同じ側に配置されたそれぞれの車輪を駆動するように構成されることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項9】
請求項1に記載のモータ歯車箱組立体において、前記筐体は、潤滑油を受領するための入口、前記入口に連結された主経路、ならびに前記主経路に連結された第1および第2の経路の配置を有し、各経路の配置は、前記電気モータの一方および各歯車列の少なくとも一部に潤滑油を供給するように構成されることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項10】
車両の両側に2つの車輪を有する前記車輪用のモータ歯車箱組立体において、
それぞれが電気モータおよび関連した歯車列を含む2つの独立駆動システムであって、各駆動システムは、前記車輪の一方を独立して駆動するように構成される、2つの独立駆動システムと、
前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されて当該車両の前方から見たときに、当該車両の横方向において2つの前記歯車列が少なくとも部分的に2つの前記電気モータの間に位置付けられるように、および前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されて当該車両の前方から見たときに、2つの前記歯車列が少なくとも部分的に互いに前記車両の横方向に重複するように、2つの前記電気モータおよび2つの前記歯車列を収容する共通の1つの筐体とを含み、
前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着
されたときに、2つの前記電気モータが前記車両の長手方向に互いに
ずれていることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項11】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、各歯車列は出力歯車を含み、2つの前記出力歯車は互いに軸方向に位置合わせされていることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項12】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、2つの前記電気モータは、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、横方向に延在する中心面に対して概ね反対方向を有することを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項13】
請求項12に記載のモータ歯車箱組立体において、各電気モータは中心軸を中心に位置合わせされ、一方の電気モータの前記中心軸は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、第1の距離だけ前記中心面の前方に配置され、他方の電気モータの前記中心軸は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、第2の距離だけ前記中心面の後方に配置され、前記第1および第2の距離は同じであることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項14】
請求項12に記載のモータ歯車箱組立体において、各歯車列は中間歯車を含み、前記中心面は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、2つの前記中間歯車の間に延在することを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項15】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、各歯車列は中間歯車を含み、2つの前記中間歯車は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、少なくとも部分的に互いに横方向に重複することを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項16】
請求項15に記載のモータ歯車箱組立体において、前記中間歯車は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、2つの前記中間歯車が前記車両の長手方向に位置合わせされるように、互いに完全に重複することを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項17】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、各電気モータはモータ軸を中心に回転可能な回転子を含み、各歯車列は、歯車軸を中心に回転可能である中間歯車を含み、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、2つの前記モータ軸は第1の距離だけ前記車両の長手方向に離間され、2つの前記歯車軸は、前記第1の距離より大きい第2の距離だけ前記長手方向に離間されることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項18】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、2つの前記歯車列は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、2つの前記電気モータの間に横方向に配置されることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項19】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、各駆動システムは、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、前記車両において対応する電気モータと同じ側に配置された前記車輪の一方を独立して駆動するように構成されることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項20】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、前記車両は制御アームを有するサスペンションシステムをさらに含み、前記筐体は、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、前記筐体が前記制御アームを支持するように、前記制御アームに連結されるように構成されることを特徴とする、モータ歯車箱組立体。
【請求項21】
車両用のモータ歯車箱およびサスペンションの
組立体において、
前記車両の車輪を駆動するための駆動システムであって、前記駆動システムは電気モータおよび前記電気モータに関連した歯車列を含む、駆動システムと、
前記車両のさらなる車輪を駆動するためのさらなる駆動システムであって、当該さらなる駆動システムはさらなる電気モータおよび当該さらなる電気モータに関連したさらなる歯車列を含む、さらなる駆動システムと、
前記電気モータ、前記歯車列、前記さらなる電気モータ、および前記さらなる歯車列を収容して取り囲む筐体であって、
前記組立体が前記車両に装着されて当該車両の前方から見たときに、当該車両の横方向において、前記歯車列および前記さらなる歯車列が、前記電気モータと前記さらなる電気モータとの間に少なくとも部分的に配置されている筐体と、
前記車両の車輪に関連する突起に連結されるように構成された第1の端部、および前記筐体に枢動可能に直接的に連結されるように構成された第2の端部を有する、サスペンション制御アームと、を含み、
当該組立体が前記車両に装着されたときに、前記電気モータと前記さらなる電気モータとが前記車両の長手方向に互いにずれており、
当該組立体が前記車両に装着されたときに、前記歯車列と前記さらなる歯車列とが、少なくとも部分的に前記車両の長手方向に互いに重複しており、
当該組立体が前記車両に装着されて当該車両の前方から見たときに、前記歯車列の歯車と前記さらなる歯車列の対応する歯車とが、前記車両の横方向に互いに重複していることを特徴とする
組立体。
【請求項22】
請求項1に記載のモータ歯車箱組立体において、2つの前記電気モータと2つの前記歯車列とが前記共通の1つの筐体に取り付けられて、2つの前記電気モータと2つの前記歯車列と前記共通の1つの筐体とが1つのパッケージとして前記車両に取り付け可能であり、前記共通の1つの筐体が2つの前記電気モータと2つの前記歯車列とを支持していることを特徴とするモータ歯車箱組立体。
【請求項23】
請求項2に記載のモータ歯車箱組立体において、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、鉛直方向および横方向に延在する平面が両方の前記電気モータを通るように前記2つの電気モータが配置されていることを特徴とするモータ歯車箱組立体。
【請求項24】
請求項4に記載のモータ歯車箱組立体において、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、2つの前記中間歯車が前記車両の横方向に互いに重複していることを特徴とするモータ歯車箱組立体。
【請求項25】
請求項10に記載のモータ歯車箱組立体において、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、2つの前記電気モータが、鉛直方向および横方向に延在する平面に対して概ね反対方向を有しており、前記モータ歯車箱組立体が前記車両に装着されたときに、前記平面が2つの前記電気モータを通ることを特徴とするモータ歯車箱組立体。
【請求項26】
請求項21に記載の車両用のモータ歯車箱およびサスペンションの
組立体において、
当該組立体が前記車両に装着されたときに、鉛直方向および横方向に延在する平面が両方の電気モータを通るように前記電気モータと前記さらなる電気モータとが配置されていることを特徴とする
組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年5月9日に出願された米国仮特許出願第62/391,745号明細書の利益を主張し、本出願の開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は車両とともに使用するためのモータ歯車箱組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の車両駆動システムは、米国特許第8,678,118号明細書および米国特許出願公開第2010/0025131号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によれば、モータ歯車箱組立体は、車両の両側に2つの車輪を有する車両のために提供される。組立体は、2つの独立駆動システムを含み、2つの独立駆動システムは、それぞれが電気モータおよび関連した歯車列を含み、各駆動システムは、車輪の一方を独立して駆動するように構成される。組立体は、歯車列が少なくとも部分的にモータの間に位置付けられるように、モータおよび歯車列を受領する一般的な筐体をさらに含む。一方の駆動システムの少なくとも一部は、モータ歯車箱組立体が車両上に装着されるときに、他方の駆動システムの少なくとも一部に対して、車両の長手方向に概ね反対方向を有する。
【0005】
本開示の別の態様によれば、車両の両側に2つの車輪を有する車両用のモータ歯車箱組立体は、2つの独立駆動システムを含み、2つの独立駆動システムは、それぞれが電気モータおよび関連した歯車列を含み、各駆動システムは、車輪の一方を独立して駆動するように構成される。組立体は、歯車列が少なくとも部分的にモータの間に位置付けられるように、およびモータ歯車箱組立体が車両上に装着されるときに、歯車列は少なくとも部分的に互いに車両の横方向に重複するように、モータおよび歯車列を受領する一般的な筐体をさらに含む。
【0006】
本開示のさらに別の態様によれば、車両用のモータ歯車箱およびサスペンションの配置は、車両の車輪を駆動するための駆動システムを含み、駆動システムは電気モータおよびモータに関連した歯車列を含む。配置は、モータおよび歯車列を受領する筐体、ならびに車両に連結されるように構成された第1の端部、および筐体に連結されるように構成された第2の端部を有する、サスペンション制御アームをさらに含む。
【0007】
例示的実施形態が示され開示されているが、このような開示は特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。様々な修正形態および代替設計が、本開示の範囲から逸脱することなく行われてもよいことが認識される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、車輪を駆動するために本開示による、6つの車輪に連結された3つの車軸対および3つのデュアルモータ歯車箱組立体を含む、車両のシャーシ組立体の上面図であり、各車輪は車両の前面などにおける単輪、または車両の後面などにおける双輪対であってもよい。
【
図3】
図3は、本開示によるフロントおよびリアサスペンションシステムを示す、シャーシ組立体の底面図である。
【
図4】
図4は、外部筐体を含むモータ歯車箱組立体の1つの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のモータ歯車箱組立体の斜視図であり、筐体は第1および第2の独立駆動システムを示すために除去されており、各駆動システムは電気モータおよびモータに連結された関連した歯車列を含む。
【
図6】
図6は、筐体内に形成された潤滑油経路配置の詳細を示す、筐体の斜視断面図である。
【
図7】
図7は、潤滑油経路配置のさらなる詳細を示す筐体の断片斜視図である。
【
図8】
図8は、潤滑油経路配置のさらなる詳細を示す筐体の断片側面斜視図である。
【
図9】
図9は、
図5の第1および第2の駆動システムの上面図である。
【
図10】
図10は、低歯車比モードで作動している
図9の第1の駆動システムの斜視図である。
【
図11】
図11は、高歯車比モードで作動している
図9の第1の駆動システムの斜視図である。
【
図12】
図12は、本開示によるフロントサスペンションシステムを示す、車両の前部の正面斜視図である。
【
図13A】
図13Aは、フロントサスペンションシステムの追加の詳細を示す、車両の前部の側面斜視図である。
【
図13B】
図13Bは、フロント駆動シャフトと位置合わせされたフロントサスペンションシステムの空気バネ緩衝器組立体およびヨーク装着部を示す、車両の前部の断片側面図である。
【
図14】
図14は、モータ歯車箱筐体に連結されたフロントサスペンションシステムの様々な構成要素を示す、フロントサスペンションシステムの代替実施形態の正面斜視図である。
【
図15A】
図15Aは、本開示によるリアサスペンションシステムを示す、車両の後部の底面斜視図である。
【
図16】
図16は、リアサスペンションシステムの追加の詳細を示す、車両の後部の側面斜視図である。
【
図17】
図17は、リアサスペンションシステムの突起および右後輪付近で突起に連結された上部および下部サスペンション制御アームを示す、車両の後端面図である。
【
図18】
図18は、リアサスペンションシステムならびに2つの後輪および関連したタイヤの間に位置付けられたデュアルモータ歯車箱組立体のさらなる詳細を示す、車両の後端の上面斜視図である。
【
図19】
図19は、モータ歯車箱筐体に連結されたリアサスペンションシステムの様々な構成要素を示す、リアサスペンションシステムの代替実施形態の底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
必要に応じて、詳細の実施形態が本明細書に開示されているが、開示された実施形態は例示に過ぎず、様々な代替の形が利用されてもよいことを理解されたい。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、一部の図面は特定の構成要素の詳細を示すために誇張され、または最小化されることがある。したがって本明細書に開示された特定の構造および機能の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、当業者に教示するための代表的根拠に過ぎないと解釈されるべきである。
【0010】
本開示による車両は、乗用車、トラック、その他などのあらゆる適切な車両であってもよい。
図1は、NIKOLA ONE(商標)と呼ばれる電気駆動のクラス8セミトラック10である例示車両を示す。一実施形態では、トラック10は停車場間が約1,200マイル、または停車場間が1,200マイルを超える場合であっても、総重量80,000ポンドを引くように構成されてもよい。
図1に示されたトラック10は空力運転室12、6つの回転可能な車輪14、ならびにすべての車輪(6x6)における電気モータおよび関連した歯車列(例えば二段歯車減速をもつ歯車列)を有し、そのモータおよび歯車列は、以下にさらに詳細に記載されるように、モータ歯車箱組立体を形成するために対にグループ化されてもよい。
図1に示された実施形態では、4つの後輪14はそれぞれが双輪対(一緒に回転する2つの車輪)を含む。
図2および3に示された実施形態では、後輪14はそれぞれが比較的大きい車輪および関連したタイヤ(例えばスーパーシングルホイールおよびタイヤ)を含む。各電気モータはあらゆる適切な馬力(HP)、例えば100~400HPを生成するように構成されてもよい一方で、一実施形態では、各モータは、6つのモータを組み合わせたトラック10が約2,000HPおよび歯車減速前に3,700フィート・ポンド(ft.lb)を超すトルク、また歯車減速後にほぼ86,000ft.lbの瞬時トルクを出力し得るように、335HPを生成するような大きさにされてもよい。トラックの6つの電気モータは、現在路上の他のクラス8トラックを超える優れた馬力、トルク、加速度、牽引および停止力を生成することができる。トラック10は、独立サスペンションシステム、例えば以下でさらに詳しく記載するような6つの車輪14のそれぞれのための、短/長アーム(SLA)サスペンションシステムをさらに含んでもよい。
【0011】
図2および3を参照すると、トラックの重い構成要素のほとんどは、シャーシのフレーム16のフレームレールまたは車両支持構造17に、またはその下に着座するように配置されてもよく、それによって数フィートだけ重心が下がり、対横転性能が向上する。またこれは、例えば典型的なクラス8トラックに関連したディーゼルエンジンおよび変速機を取り除くこと、およびより軽いがより強い炭素繊維板から運転室12を製造することによって、部分的に達成されてもよい。ディーゼルエンジンを取り除くことの利点は、温室効果ガスの排出の劇的な低減、より大きくより多い空圧運転室、および著しく静かな乗車を含むことがある。さらにすべての操作者または運転者は、トラック10を走らせ、また停止させるために、アクセルまたは電動ペダルおよびブレーキペダル(シフティングまたはクラッチはない)を使用する必要があることがある。トラックの操作を単純にすることにより、新しい運転者の群全体に長距離市場を広げることができる。
【0012】
トラックの電気モータは、あらゆる適切なエネルギー貯蔵システム(ESS)18、例えばあらゆる適切な手法で充電されてもよい再充電可能な電池パックによって電力供給されてもよい。例えばESS18は、冷却液320kWhのリチウムイオン電池パック(30,000を超すリチウムセル)を含んでもよく、リチウムイオン電池パックはタービン組立体20の搭載タービンによって充電されてもよい。タービンは、必要なときにESS18の電池を自動的に充電し、常に「差込口」の必要性を取り除くことができる。タービンはほぼ400kWのクリーンエネルギーを生成し得、例えばこれはトラック10が65MPHにおいて最高重量で6%の勾配を上ることができるように十分な電池電源を提供し得る。下るとき、トラックの6つの電気モータは、一般に失った制動エネルギーを吸収し、それを電池に送達して戻すように構成されてもよく、それによって部品寿命、1ガロン当たりのマイル、安全性、および輸送効果が増加する一方で、エンジンブレーキの騒音を除去し、トラックが暴走する可能性を低減する。
【0013】
典型的なクラス8ディーゼルトラックと比較すると、トラック10のタービンははるかに清潔でより効率的であることがある。またタービンは燃料に拘らなくてもよく、これはガソリン、ディーゼルまたは天然ガスで走ることができることを意味する。
【0014】
上記の構成は各車輪14に電気モータを含むので、トラックの制御装置(以下でさらに詳細に記載する)は各車輪14に動的制御を提供してもよい。これは「トルクベクタリング」と呼ばれてもよく、これはいかなる瞬間でも6つの車輪14のそれぞれの速度およびトルクを互いに独立して制御することによって達成される。このような6x6のトルクをベクタリングする制御システムにより、現在のクラス8トラックよりコーナリングが安全になり、停止力が増加し(例えば停止力を倍にする)、牽引が向上し、タイヤの摩耗が良好になり、また部品寿命が長くなることが可能であり得る。
【0015】
トラック10の運転室12は、典型的な運転室より著しく大きくてもよく(例えば30%大きい)、さらに典型的な運転室より空圧が多く、より低い空気抵抗係数を有してもよい(例えば空気抵抗係数は市場の現在のトラックに比べてほぼ5%低くてもよい)。また運転室12は、接近および安全性を向上するための中間引戸、標準サイズの冷蔵庫および冷凍庫、電気で温度制御された車室、タッチ画面表示装置(例えば15インチのタッチ画面表示装置)、4G LTEインターネット、無線でのソフトウェアの更新、パノラマ式フロントガラス、サンルーフ、2つの標準サイズのベッド、電子レンジ、および大型画面のテレビ(例えば42インチのテレビ)などの、様々な快適な、かつ/または便利な特徴も含んでもよい。これらの特徴のすべてはESS18によって電力供給されてもよく、それによって個別の発電機をアイドリングまたは走らせる必要性を軽減する。
【0016】
またトラックのハードウェアおよび/またはソフトウェアは、未来の無人車両との互換性を提供するように構成されてもよい。このような技術により、単一運転者が「コンピュータ上で」繋ぎ、無線車両網および自動運転技術を通して最高5台までの無人トラック10を導くことができることがある。この技術は運転者の不足、および長距離輸送業界が直面している運送費の増加を解決することができる。
【0017】
モータ歯車箱の説明
図2、4および5を参照すると、上述された電気モータ(
図5の参照番号22で特定されている)は対にグループ化され、各対は、デュアルモータ歯車箱組立体またはデュアルモータ歯車箱26を形成するために、各モータ22に対して関連した歯車列25とともに一般的なモータ歯車箱筐体24内に装着される。各モータ22および関連した歯車列25は、パワートレイン、駆動組立体、または駆動システム28と呼ばれてもよい。上記の構成で、単一筐体24は2つの独立した電気モータ22および関連した歯車列25を包囲または受領し、歯車列25は独立した速度および/または方向で筐体24の両側に車輪14を駆動出力することができる。さらに筐体24は、フレーム16、またはフレーム16に取り付けられたサブフレームもしくはサスペンションクレードルなどの車両支持構造17の他の一部の上に装着されてもよい。
【0018】
デュアルモータ歯車箱26の上記の構成は、軸受、歯車、電気モータ回転子および固定子を構造的に支持し、対向する車輪14および
図2に示されたようにトラック10の車輪14がその上に装着された関連した車輪ハブの間に適合するように設計された、より小さいパッケージ内の機構要素をシフトすることによって、電気パワートレインのための全容積をより小さくさせることができる。デュアルモータ歯車箱26のパッケージ設計および独立した性質により、差動装置の必要性を除去し、モータ22の出力は駆動シャフトを直接駆動する半シャフトを介して駆動車輪14に直接結合することができる。大きい駆動シャフトおよび差動装置を除去することによって、より大きい機構効率が達成されることがあり、トラック10はより軽く作成されることがある。
【0019】
またこの設計は、典型的な駆動シャフトの異なる組合せを使用し、このような組合せを独立したサスペンションに適合するときに起きるはずである一部の重量および機構の複雑性なしに、各車軸でサスペンションが完全に独立することも可能にする。本開示によるフロントおよびリア独立サスペンションシステムは、以下に項目「フロントおよびリア独立サスペンション設計」および「リア独立サスペンション設計」のそれぞれの下で詳細に説明される。
【0020】
特定のモータ歯車箱26の2つの駆動システム28は、強制流体(例えば油)冷却および潤滑油システムならびに筐体24の構造特性が共有されることを除いて、互いに完全に分離してもよい。
図4を参照すると、筐体24は、潤滑油(例えば油)を受領するために筐体24の上部付近に入口29を有してもよく、潤滑油は筐体24内の構成要素の上に分配され、次いで筐体24の底部またはその付近で収集されてもよい。筐体24は、様々な経路および機械加工された開口、または別法として以下により詳細に説明されるように、筐体24内の所望の場所に潤滑油を経路指定するために、その中に形成されてもよい。潤滑油は、1つまたは複数の出口30を通って筐体24から出て、次いで冷却および濾過組立体31(
図3に示されている)を通って経路指定されてもよく、冷却および濾過組立体31は、適切な経路または導管を通って筐体24に戻される前に、冷却設備およびフィルタを含んでもよい。
【0021】
図6~8を参照すると、潤滑油の流れを可能にするまたは促進するために、筐体24の例示的構成の追加の詳細が示されている。
図6を参照すると、潤滑油は、入口29から主経路32を通って第1および第2の経路配置のそれぞれ34および36に流れ、第1および第2の経路配置34および36は潤滑油を第1および第2のモータ容器のそれぞれ38および40に供給し、第1および第2の歯車列容器のそれぞれ38および40はそれぞれがモータ22を受領し、第1および第2の歯車列容器42および44のそれぞれに潤滑油を供給し、第1および第2の歯車列容器のそれぞれ42および44はそれぞれが少なくとも部分的に歯車列25を受領する。第1および第2のモータ容器のそれぞれ38および40は、筐体中心壁46の第1および第2の対向する側面のそれぞれの上に配置され、第1および第2の歯車列容器のそれぞれ42および44は、少なくとも部分的に筐体中心壁46の両側面上に配置されてもよい。
【0022】
次に第2の経路配置36についてより詳細に記載し、第1の経路配置34は同じまたは類似の構成を有してもよいが、長手方向に逆向きまたは一部が逆向きであることが理解される(例えば第2の経路配置36の後方に延在する経路は、第1の経路配置34の一方の前方に延在する経路に対応してもよい)。第2の経路配置36は、筐体壁内に形成された複数のチャネルまたは経路、および筐体壁内の複数の開口を含んでもよく、これらにより経路はモータ容器38および40内のモータ22の一方または両方、ならびに歯車列容器42および44内の歯車列25の一方または両方に潤滑油を提供することができる。例えば第2の経路配置36は横経路48を含んでもよく、横経路48はY字型の長手方向に延在するマニホールドまたは経路50に連結する。Y字型経路50は下方に延在するチャネルまたは経路52に潤滑油を送り込み、経路52は、1つまたは複数の筐体壁内に形成された複数の開口を通って第2の歯車列容器44と連通する。加えてY字型経路50は別の横経路54に延在し、横経路54は湾曲した筐体壁58内に形成された1つまたは複数の開口56を通って第2のモータ容器40と連通し、筐体壁58は少なくとも一部が第2のモータ容器40を画定する。
図7を参照すると、Y字型経路50または横経路48と連通する別の経路は、V字形の長手方向に延在する経路またはマニホールド60にも潤滑油を送り込んでもよく、マニホールド60は、
図8に示されたように、筐体中心壁46内に形成された1つまたは複数の開口62を通って、筐体中心壁46の第1の側面上に配置された第1の歯車列容器42と連通する。さらにV字形マニホールド60は、
図4に示されたようにプレート64によって覆われてもよい。
【0023】
上記の構成で、各経路配置34、36は、筐体中心壁46の両側の上に潤滑油を供給するように構成される。加えて各経路配置34、36は、モータ22の一方および各歯車列25の少なくとも一部に潤滑油を供給するように構成される。さらに潤滑油は、モータ22および関連した歯車列25を潤滑化し、かつ/また冷却するために圧力および/または重力により各経路配置34、36を通って移動されてもよい。
【0024】
図5を参照すると、各歯車列25は複数の歯車を含んでもよく、複数の歯車は、それぞれのモータ22からそれぞれの車輪14にトルクを伝達するために一緒に咬合するように構成される。さらに各歯車列25は複数の(例えば2つの)速度で走ることができてもよく、歯車列25は構成要素、および歯車比の間を互いに独立してシフトする機能を有することがある。例えば各歯車列25は、電子制御装置によって制御される適切なシフト機構72を含んでもよく、電子制御装置は車両制御装置(例えばコンピュータ)によって駆動され、または別法として車両制御装置と連通してもよい。上記の構成で、自動シフト事象は、以下にさらに詳しく説明するように、シフト中に電力の低減を制限するために各車輪に対して別個に起動することができる。また電子制御装置および/または車両制御装置は、モータ22および/またはモータ歯車箱26の他の構成要素も制御してもよい。
【0025】
上述された各制御装置は、適切なハードウェアならびに/あるいはソフトウェア、例えば制御装置が本明細書に記載された機能および/もしくは作動によって表された特定のアルゴリズムを実行できるように、1つもしくは複数のプロセッサによって実行可能なコンピュータ可読プログラム命令を含む、1つもしくは複数の記憶装置もしくは媒体と連通する、または連通するように構成された、1つまたは複数のプロセッサ(例えば1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、マイクロ制御装置および/もしくはプログラマブル・デジタル信号プロセッサ)などを含んでもよい。また各制御装置も、1つまたは複数の特定用途向け集積回路、プログラマブル・ゲート・アレイもしくはプログラマブル・アレイ・ロジック、プログラマブル・ロジックデバイス、またはデジタル信号プロセッサを含んでもよく、あるいはそれらの代わりであってもよい。
【0026】
トラック10の対向する車輪14の間に適合することができる、モータ22および歯車列25を筐体24内にパッケージにすることにより、類似配置は車両10に沿って各車軸対に適用することができる。これは、すべてのモータの間の駆動荷重を駆動することにより、個々のモータ22に必要な電力を効率的に低減する。結果として、機械損失がほとんどない数個のより小さいモータが、損失がより多い単一の大きいモータの代わりに使用されることが可能である。さらにこれらのモータの独立した制御を組み合わせると、固有の制御および性能の向上が利用可能になる。
【0027】
次に
図9を参照して、パワートレインまたは駆動システム28の追加の詳細について記載する。
図9は、筐体24が取り除かれたモータ歯車箱26の第1および第2の駆動システムのそれぞれ28aおよび28bを示す。第1の駆動システム28aは第1のモータ22aおよび関連した第1の歯車列25aを含み、第2の駆動システム28bは第2のモータ22bおよび関連した第2の歯車列25bを含む。また各駆動システム28a、28bは、(例えばESS18から)電力および/または制御信号を受領するために、また電力および/または制御信号を関連したモータ22a、22bおよび/またはシフト機構72に提供するために、適切な入力または連結具73a、73bも含む。加えて歯車列25aおよび25bは、モータ22aと22bとの間に少なくとも部分的に位置付けされてもよい。
図9に示された実施形態では、歯車列25aおよび25bは、モータ22aと22bとの間に全体が横方向に配置されている。さらにずれた分割線74は、駆動システム28aおよび28bの一般的分離または分割を大まかに示す。
【0028】
図9に示されたように、駆動システム28a、28bの少なくとも一部は、トラック10の長手方向75に、また横方向に延在するモータ歯車箱26の中央面76に対して、概ね反対方向を有してもよい。換言すると、駆動システム28aまたは28bの一方の少なくとも一部は、他方の駆動システムの少なくとも一部に対してトラック10の長手方向75に概ね反対方向を有してもよい。例えばモータ22aおよび22bは、互いに対して長手方向75に概ね反対方向を有してもよく、かつ/または歯車列25aおよび25bの一部またはすべては、互いに対して長手方向75に概ね反対方向を有してもよい(例えば一方の歯車列25aの少なくとも一部は、他方の歯車列25bの対応する少なくとも一部に対して長手方向75に概ね反対方向を有してもよい)。
図9に示された実施形態では、モータ22aおよび22bは、互いに対して長手方向75にずれており、互いに対して概ね反対方向を有し、第1の歯車列25aの複数の歯車はそれぞれが第2の歯車列25bの対応する歯車に対して概ね反対方向を有する。その点について
図9に示された実施形態では、モータ22aのモータ軸または中心軸77aは(例えばその軸を中心にモータ22aの回転子は回転可能である)、距離d
1だけ中央面76の前方に配置されている一方で、モータ22bのモータ軸または中心軸77bは(例えばその軸を中心にモータ22bの回転子は回転可能である)、距離d
2だけ中央面76の後方に配置されている。同様に歯車列25aの中間歯車78aは中央面76の前方に配置されている一方で、歯車列25bの対応する中間歯車78bは中央面76の後方に配置されている(例えば中央面76は中間歯車78aと78bとの間に延在する)。示された実施形態では、中間歯車78aは歯車軸79aを中心に回転可能であり、歯車軸79aは距離d
3だけ中央面76の前方に配置されており、中間歯車78bは歯車軸79bを中心に回転可能であり、歯車軸79bは距離d
4だけ中央面76の後方に配置されている。さらに
図9に示された実施形態では、距離d
1は距離d
2に等しく、距離d
3は距離d
4に等しい。しかし歯車列25aおよび25bの出力歯車80aおよび80bは、中央面76に沿って位置合わせされてもよく、また対応する車輪14が軸方向に位置合わせできるように、軸方向にも位置合わせされてもよい。したがって出力歯車80aおよび80bは互いに位置合わせされてもよい一方で、駆動システム28aおよび28bの他方の対応する構成要素は、互いに対して長手方向75にずれてもよい。一部の実施形態では、駆動システム28aおよび28bの対応する構成要素は、互いに対してずれてもよいが、中央面76に対して異なる距離だけ離間されてもよい。
【0029】
図9にさらに示されたように、歯車列25aおよび25bの一部の対応する構成要素は、互いに対して長手方向75にモータ22aおよび22bより大きい距離だけずれてもよい。例えば
図9に示された実施形態では、モータ22aおよび22bの中心軸77aおよび77bは、d
1およびd
2の合計に等しい第1の距離だけ離間されている一方で、中間歯車78aおよび78bの歯車軸79aおよび79bは、d
3およびd
4の合計に等しい第2の距離だけ離間されており、第2の距離は第1の距離より大きい。
【0030】
また各駆動システム28aおよび28bは車輪14を独立して駆動するように構成され、車輪14は、モータ歯車箱26がフレーム16または車両支持構造17の他の部分の上に装着されるときに、対応するモータ22a、22bと同じトラック10の側面上に配置されることにも留意されるべきである。
図9を参照すると、第1の駆動システム28aはモータ22aの付近に、かつモータ22bの左に位置付けられた車輪14(図示せず)を駆動するように構成されている一方で、第2の駆動システム28bはモータ22bの付近に、かつモータ22bの右に位置付けられた車輪14(図示せず)を駆動するように構成されている。その点について、出力歯車80aは、第1の駆動シャフトまたは駆動半シャフト(図示せず)により、モータ22aの左に配置された車輪14に連結されてもよく、出力歯車80bは、第2の駆動シャフトまたは駆動半シャフト(図示せず)により、モータ22bの右に配置された車輪14に連結されてもよい。
【0031】
また
図9にも示されたように、歯車列25aおよび25bは、モータ歯車箱26全体の横幅が低減され得るように、互いに少なくとも一部がトラック10の横方向81に重複してもよい(例えば歯車列25aの少なくとも一部は歯車列25bの少なくとも一部と重複してもよい)。換言すると、歯車列25aおよび25bの一部は、筐体24内で共有する容積82を占有してもよい。例えば中間歯車78aおよび78bは、少なくとも一部が互いに横方向に重複してもよい。
図9に示された実施形態では、中間歯車78aおよび78bは、中間歯車78aおよび78bが長手方向75に位置合わせされるように、互いに完全に重複している。
【0032】
上に記載された構成で、モータ歯車箱26は小型設計を有することができる。結果としてまた上述されたように、本開示によるモータ歯車箱26はトラック10の各車軸に位置合わせされてもよい。
【0033】
モータ歯車箱の制御機能
上述されたように、本開示によるモータ歯車箱の設計は、各歯車列25および関連した出力車輪14を複数の(例えば2つの)歯車比で走らせることができる。各駆動車輪14に対する出力歯車比は、すべての他の車輪14を独立して効率的にシフトさせることができる。
図10は、低歯車モードまたは低歯車比モードで作動する第1の駆動システム28aを示し、矢印はモータ22aの回転子および歯車列25aの歯車の回転方向を示し、
図11は、高歯車モードまたは高歯車比モードで作動する駆動システム28aを示し、矢印はモータ22aの回転子および歯車列25aの歯車の回転方向を示す。またモータ22aの回転子は、
図10および11に示された方向と反対方向に回転されてもよく、それによって歯車列25aの歯車は、
図10および11に示された方向に比べて反対方向に回転する。上述されたように、歯車列25aは、歯車比モードの間で歯車列25aをシフトするための適切なシフト機構72を含んでもよい。例えばシフト機構72は、回転装置またはリニアアクチュエータによって作動される円筒カム83を含んでもよく、リニアアクチュエータは、モータ歯車箱26の外側に少なくとも一部が配置され、上述された電子制御装置によって制御されてもよい。円筒カム83は、回転され、または別法として動かされて、1つもしくは複数のシフト選択フォーク84を直線的に動かし、それによって1つまたは複数のドグ歯車85、86が歯車比モードの間で歯車列25aをシフトするために隣接した歯車を係合または係脱させてもよい。
【0034】
図10に示された低歯車比モードでは、ドグ歯車85は係合された状態であり、ドグ歯車86は係脱された状態である。さらに低歯車比モードでは、モータ22aの回転子の第1の方向への回転は入力歯車87を同様に第1の方向に回転させ、入力歯車87は第1の中間または被駆動歯車88を係合し(例えば咬合し)、第1の被駆動歯車88を第1の方向と反対の第2の方向に回転させる。ドグ歯車85は係合された状態であるので、第1の被駆動歯車88は第2の中間または被駆動歯車89を同様に第2の方向に回転させる。第2の被駆動歯車89は第3の中間または被駆動歯車90を係合し(例えば咬合し)、第3の被駆動歯車90を第1の方向に回転させ、また第3の被駆動歯車90は中間歯車78a(中間歯車78aはまた被駆動歯車、例えば第4の被駆動歯車と呼ばれてもよい)を係合し(例えば咬合し)、中間歯車78aを第2の方向に回転させる。中間歯車78aは、中間歯車78aの第2の方向への回転が第5の被駆動歯車91も第2の方向に回転させるように、第5の中間または被駆動歯車91に結合される。第5の被駆動歯車91は出力歯車80aを係合し(例えば咬合し)、出力歯車を第1の方向に回転させる。
【0035】
図11に示された高歯車比モードでは、ドグ歯車85は係脱された状態であり、ドグ歯車86は係合された状態である。さらに高歯車比モードでは、モータ22aの回転子の第1の方向への回転は入力歯車87を同様に第1の方向に回転させる。ドグ歯車86は係合された状態であるので、入力歯車87は、第6の中間または被駆動歯車92を同様に第1の方向に回転させる。第6の被駆動歯車92は中間歯車78a(例えば第4の被駆動歯車)を係合し(例えば咬合し)、中間歯車78aを第2の方向に回転させる。中間歯車78aは、上に説明されたように第5の被駆動歯車91も第2の方向に回転させ、第5の被駆動歯車91は出力歯車80aを係合し(例えば咬合し)、出力歯車を第1の方向に回転させる。
【0036】
典型的な車両で変速機シフト中に、車両の全電力はクラッチを使用して変速機/ドライブトレインから切り離す必要があるはずである。これにより、このシフト事象の間に電力を瞬時に完全に損失する。本開示のモータ歯車箱の設計により独立してシフト制御ができ、車両のシフト事象は、車両の周囲の独立した歯車列の中で交互に生じることが可能である。例えば3つのモータ歯車箱26(車軸毎に1つ)および6つの独立したモータ22(出力車輪14または双輪対毎に1つ)が存在するところに、交互のシフトによりこれらの6つの歯車列25の1つを一度にシフトさせ、次いで他の歯車列を通して続けることができるはずである。このことは、シフト中に電力を全損失の代わりに、シフト事象の間はいつでも電力の6分の1のみを低減するはずであることを意味する。結果としてトラック10がシフトする際にわずかに低減するが、一定の電力が存在する。さらに上記の構成で、シフト事象は、それが起きたと運転者が感じることなく効率的かつ円滑に制御することができる。
【0037】
また車両横滑り防止装置(ECS)または牽引制御は、スリップを防ぎ牽引を向上するために車輪14にブレーキをかける、または電力を低減することによって行ってもよい。すべての車輪14の速度およびトルク制御が独立して、牽引を有し、他の車輪14のスリップを防ぐために速度を維持する車輪14に、より多くのトルクを提供することができる。また回転または高速を回避している間に完全なトルクベクタリングを提供することもできる。これは、これらの操作の間に必要なところにトルクを分配することによって、より大きい安全性およびコーナリング機能を提供することがある。
【0038】
この設計の結果として独立したモータ22を車輪14に結合することにより、車輪14の独立した回生ブレーキまたは減速も可能になる。このことは、ブレーキ力/トルクが発電機として車輪モータ22を使用して各車輪14に独立して分配することができることを意味し、車輪モータ22は電池またはエネルギー貯蔵システム(例えばESS18)に電力を提供して戻してもよい。さらにモータ歯車箱26は、トラック10のタイヤの摩擦限界でまたはその付近で回生ブレーキおよび減速を提供するように制御することができる。これは車輪速度および方向センサを使用することにより可能になることがあり、方向センサは各モータ歯車箱26内に組み込まれ、特定の車輪14に直接結合された各歯車列25内で歯車の速度および/または方向を検知する。例えばモータ歯車箱26の各駆動システム28a、28bは、関連した中間歯車78a、78bの付近に位置付けられた(例えば中間歯車の外周付近で関連した軸に概ね横に配向される)主歯車速度および方向センサ93、ならびに関連した中間歯車78a、78bの側面上に位置付けられてもよい副歯車速度センサ94を含んでもよい。
【0039】
フロント独立サスペンションの設計
図2、3および12~13Bを参照すると、トラック10は、車両10の前輪14を駆動するように意図された、フロントモータ歯車箱26および駆動半シャフトの周囲に設計されたフロント独立サスペンションシステム95をさらに含む。典型的なクラス8トラックは前輪駆動を有さないので、駆動、ステアリングおよび独立サスペンションができるために独自の設計が開発された。さらにフロントサスペンションシステム95は、前輪14にブレーキをかけるために使用される、エアブレーキシステム(例えばエアディスクブレーキシステム)を収納するように設計されてもよい。前輪14の一方に対するフロントサスペンションシステム95は
図12~13Bに示されており、トラック10は他方の前輪14に同じまたは類似のフロントサスペンションを含んでもよいことが理解される。
【0040】
図12を参照すると、前輪駆動機能を加えることにより、前輪14の近くで同じ空間を取り合う動く構成要素の数に起因して複雑性が加わる。このような構成要素は、例えばエアブレーキシステム構成要素(例えばエアブレーキチャンバ96およびエアブレーキチャンバ96によって作動されるブレーキキャリパ組立体97)、前輪をステアリングするためのステアリングシステムのステアリングアームまたはリンク98、フロントサスペンションシステム構成要素(例えば上部および下部の独立サスペンション制御アームのそれぞれ99および100)ならびに駆動半シャフト102および対応する等速(CV)継手を含んでもよい。それらの構成要素を前輪14に連結する、または別法により関係づけることができるために、カスタム前部支持部材または突起104はフロントサスペンションシステム95のために開発された。突起104は前輪14および関連したハブを回転可能に支持し、様々な構成要素に対する直接もしくは間接的な連結または支持領域としての機能を果たしてもよい(例えば突起104は様々な構成要素を支持するように構成されてもよい)。例えばステアリングアーム98は、枢動部材(例えばピボット玉)およびピボット軸受(例えばピボットソケット)を含む突起装着部を用いるなど、あらゆる適切な手法で突起104に枢動可能に連結されてもよい。同様にフロントサスペンションシステム95の制御アーム99および100は、それぞれが枢動部材(例えばピボット玉)およびピボット軸受(例えばピボットソケット)を含む突起装着部を用いるなど、あらゆる適切な手法で突起104にそれぞれが枢動可能に連結されてもよい。別の例として、エアブレーキチャンバ96は突起104上またはブレーキキャリパ組立体97上に装着されてもよく、ブレーキキャリパ組立体97は突起104上に装着されてもよい。さらに
図13Aおよび13Bを参照すると、エアブレーキチャンバ96は、すべてのステアリングおよびサスペンション操作の状況の間に(例えば前輪14のサスペンションの全移動およびステアリングの全移動を通して)、駆動半シャフト102およびCVブーツ106(CVブーツ106はCV継手を覆う)、ステアリングアーム98、ならびにサスペンション制御アーム99および100との接触を避けるために、前輪14および関連したハブの中心(例えば回転軸105)の後方、ならびに前輪14の外周の付近または外方に装着されてもよい。
【0041】
図13Bを参照すると、エアブレーキチャンバ96は前輪14および関連したハブの回転軸105の上にも装着されてもよい。同様にエアブレーキチャンバ96は、エアブレーキチャンバ96が前輪14の上中心部の後方に装着されるように、前輪14の回転軸105および上部を通過する垂直面107の後方に装着されてもよい。例えばエアブレーキチャンバ96は、エアブレーキチャンバ96の中心点が、垂直面107および軸105に対して10度~90度(より具体的には30度~75度)の範囲の角度で位置付けられるように、垂直面107の後方に装着されてもよい。
【0042】
図12~13Bを参照すると、フロントサスペンションシステム95は、気体(例えば空気)バネおよび緩衝器組立体109などのサスペンション装置を下部制御アーム100に取り付けるための独自の支持部材またはヨーク装着部108をさらに含む。バネおよび緩衝器組立体またはバネ緩衝器組立体109は、気体バネ110(例えば空気バネ)および気体バネ110と軸方向に位置合わせされ、気体バネ110の下に位置付けられた緩衝器112を含んでもよい。ヨーク装着部108は、第1および第2の脚のそれぞれ113および114を含み、第1および第2の脚113および114は、バネ緩衝器組立体109が駆動半シャフト102(例えば駆動半シャフト102の軸)の上に位置付けられ得るように、その間に駆動半シャフト102を受領するように構成される。このような構成で、駆動半シャフト102(例えば駆動半シャフト102の軸)は、
図13Bに示されたように駆動半シャフト102およびバネ緩衝器組立体109をそれらの理想的な位置合わせに保つために、ヨーク装着部の軸およびバネ緩衝器組立体の軸と位置合わせされてもよい。またヨーク装着部108の脚の一方(例えば第1の脚113)も、駆動半シャフト102とステアリングアーム98との間に延在するように構成されてもよい。ヨーク装着部108はあらゆる適切な手法でバネ緩衝器組立体109に連結されてもよい一方で、
図13Aおよび13Bに示された実施形態では、第1および第2の脚113および114は、バネ緩衝器組立体109に第1および第2の離間したそれぞれの場所に固定して連結される。さらにバネ110はフレーム16または車両支持構造17の他の部分(例えばサブフレームもしくはサスペンションクレードル)に連結されてもよい。
【0043】
別法として、上述されたサスペンション装置は、線形または非線形の動的サスペンション部材などのあらゆる適切なサスペンション装置であってもよい。例えばサスペンション装置は、コイルバネ、磁気サスペンション部材および/または電磁サスペンション部材を含んでもよい。
【0044】
またフロントサスペンションシステム95は、フロントモータ歯車箱26の周囲に適合するように構成され、フロントモータ歯車箱26はサスペンションクレードル内の中心に置かれる。これは、独立したフロントサスペンションを有することを可能にする一方で、また前輪14の間に配置された電気デュアルモータ歯車箱26を独立して使用して、左右の前輪14を直接駆動することもできる。
図13Aに示された実施形態では、制御アーム99、100の内側端部は、モータ歯車箱26およびトラック10の中心付近で車両支持構造17(例えばサスペンションクレードルまたはフレーム16)に枢動可能に連結されてもよい。
【0045】
別の実施形態では、フロントモータ歯車箱26の筐体24は、フロントサスペンションシステム95の一方または両方の制御アーム99および100の少なくとも1つに連結されてもよい。
図14に示された実施形態では、例えばフロントモータ歯車箱26’は拡大された筐体24’を含み、左右のフロントサスペンションシステム95の制御アーム99および100は筐体24’に連結されている。示された実施形態では、筐体24’の上部の左右の側面のそれぞれは2つの上横に突出部116を有し、特定の上部制御アーム99は突出部116に枢動可能に連結されている。さらに筐体24’は拡大された下部118を含み、下部118の左右の側面のそれぞれは2つの下横に突出部120を有し、特定の下部制御アーム100は突出部120に枢動可能に連結されている。筐体24’は車両支持構造17’(例えばフロントサスペンションクレードルもしくはフレーム16)に連結されてもよく、筐体24’が上記の構成要素を支持できるように、金属(例えばアルミニウム)、炭素繊維強化プラスチックまたは他の複合材料などの適切な材料から作成されてもよい。このような構成で、フロントサスペンションクレードルの一部は、車両の全重量が低減され得るように省略されてもよい。加えてフロントサスペンションクレードルは、車両の重量をさらに低減するために、
図14に示されたように筐体24’と(例えば一緒に溶接されて)一体形成しされてもよく、またはサスペンションクレードルは筐体24’から分離して形成されて筐体24’に取り付けられてもよい。
【0046】
リア独立サスペンションの設計
図3および15A~18を参照すると、トラック10は、リア独立サスペンションシステム122および各後輪14に独立サスペンションを提供するように構成された関連するクレードルをさらに含む一方で、また2つの後車軸位置のそれぞれにおいて車輪14の間に配置されたデュアルモータ歯車箱26を使用して、後輪14を直接独立して駆動することもできる。またリアサスペンションシステム122は、駆動半シャフト102rが水平方向に位置付けられたときに、各リアモータ歯車箱26の出力歯車80が対応する後輪14と同軸に位置合わせされるように、各リアモータ歯車箱26に連結された駆動半シャフト102rの正確な位置合わせ(例えば同軸の位置合わせ)ができるように構成されてもよい。このような構成で、リアサスペンションシステム122は向上したサスペンション移動および感覚を提供することがある。後輪14の1つに対するリアサスペンションシステム122が
図15A~16に示されており、トラック10は各後輪14に同じまたは類似のリアサスペンションを含んでもよいことが理解される。
【0047】
図15A~16を参照すると、リアサスペンションシステム122は上部および下部制御アームのそれぞれ124および126を含み、上部および下部制御アーム124および126は、完全な跳ね上がりから跳ね返しまで(すなわち全上下運動)最も正確なサスペンション移動が可能であるために、(関連したモータ歯車箱26の周囲で)可能な限りトラック10の中心に接近して配置された内側枢支点または車軸を有するように構成されてもよい。同様に以下に詳しく説明するように、制御アーム124および126は、また可能な限り関連した後タイヤに接近して外側枢支点または軸も有するように構成されてもよい。加えてリアサスペンションシステム122は、気体サスペンション部材または空気バネ128などの1つまたは複数のサスペンション装置を含んでもよく、空気バネ128はそれぞれが直立軸130(例えば中心軸)に沿って配向され、車両支持構造17(例えばサスペンションクレードルもしくはフレーム16)に連結される。別法として各サスペンション装置は、線形または非線形の動的サスペンション部材などのあらゆる適切なサスペンション装置を含んでもよい。例えば各サスペンション装置は、コイルバネ、磁気サスペンション部材および/または電磁サスペンション部材を含んでもよい。
【0048】
図15A~16に示された実施形態では、上部制御アーム124は2つのアームを有する第1のすなわち内側部、および単一アームとして形成された第2のすなわち外側部を含む。上部制御アーム124の内側端部は、それぞれがモータ歯車箱26の外部の周囲で、トラック10の中心付近の場所にクレードル装着部132(例えば枢動部材もしくはロッドおよびピボット軸受)などを用いて、車両支持構造17(例えばサスペンションクレードルもしくはフレーム16)に枢動可能に取り付けられる。上部制御アーム124の外側部は、2つの空気バネ128の間、および/または空気バネ128の関連した直立軸130の間を通過してもよい。
図16に示された実施形態では、上部制御アーム124の外側部は、空気バネ128の直立軸130の間の中心に置かれる。加えて上部制御アーム124の外側部は、後部支持部材または突起136内の開口134の中に延在し、2つの空気バネ128は突起136に装着される。外側部は、単輪側端部または外側端部をさらに含み、外側端部は、突起136の外側付近の場所で(例えば可能な限り対応する後輪に接近して)突起装着部138(例えば枢動部材もしくはロッドおよびピボット軸受)などを用いて、突起136に枢動可能に取り付けられてもよい。例えば上部制御アーム124の外側端部は、突起136の外側面に枢動可能に連結されてもよい。より詳細な例として、上部制御アーム124の外側端部は、ピボットロッドなどの枢動部材を含む突起装着部138を用いて突起136に枢動可能に連結されてもよく、ピボットロッドは突起136の外側面内に形成されたチャネルまたは切欠き内に固定して受領され、上部制御アーム124は突起136を中心に枢動可能である。
【0049】
下部制御アーム126は、2つの内側端部を有する内側部を含み、2つの内側端部は、それぞれがモータ歯車箱26の下の場所でクレードル装着部140(例えば枢動部材またはロッドおよびピボット軸受)などを用いて、車両支持構造17(例えばサスペンションクレードルまたはフレーム16)に枢動可能に取り付けられる。
図15Aに示された実施形態では、下部制御アーム126のクレードル装着部140は、上部制御アーム124のクレードル装着部132よりトラック10の中心に接近して配置される。このような構成は、向上したサスペンション応答を提供することがある一方で、また向上したサスペンション移動も提供する。加えて下部制御アーム126は、2つの車輪側面または外側連結場所を有することがある外側部を含み、外側連結場所は、それぞれが突起装着部142(例えば枢動部材もしくはロッドおよびピボット軸受)などを用いて、突起136によって支持され、(例えば突起136の下端部において)突起136に枢動可能に取り付けられる。
【0050】
図15Aを参照すると、突起136はまた後輪14(例えば双輪対)を回転可能に支持するように構成される。例えば突起136は砥石軸144に取り付けられてもよく、砥石軸144は後輪144を支持する(例えば砥石軸144はハブに取り付けられてもよく、後輪14はハブの上に装着される)。
【0051】
図16に示された実施形態では、突起136は上部および下部のそれぞれ145および146を含む。さらに突起136は、単一片または複数片として作成されてもよく、複数片は溶接などにより一緒に接合される。突起136の上部145は、下部146に対して外方に突出する支持部148を含んでもよく、突起136内に形成された開口134は、上部145の中心部を通って支持部148の間に延在してもよい。突起136の構成は、2つの空気バネ128または他のサスペンション装置を突起の上部(例えば上部145)に装着させることができ、さらに上部制御アーム124の第2の部分を突起136の大部分またはすべてを通過して、突起136の外側または外側面に通過させることができる。加えて上部制御アーム124の第2の部分は、突起136の中心垂直軸ならびに車輪14の軸および関連したハブと位置合わせされてもよい。
【0052】
リアサスペンションシステム122は、下部制御アーム126とサスペンションクレードルまたはフレーム16などの車両支持構造17との間に連結された1つまたは複数の吸収器または緩衝器150をさらに含んでもよい。
図16に示された実施形態では、緩衝器150は空気バネ128および突起136の後方に位置付けられる。
【0053】
上記の構成で、リアサスペンションシステム122は著しい負荷を処理できる一方で、低い輪郭を維持する。例えば空気バネ128は大きい負荷を効率的に処理するように協働することができるが、それでも各空気バネ128はフレーム16のフレームレールおよび関連した後タイヤの間に適合する大きさにすることができる。さらに上部制御アーム124および突起136は、関連した後駆動半シャフト102r上に中心に置かれた負荷を保つように協働することができる。
【0054】
図17を参照すると、上部および下部制御アームのそれぞれ124および126の外側部または端部は、後タイヤ152および関連した車輪14付近で突起136に枢動可能に連結されてもよい。例えば制御アーム124および126の外側端部は、可能な限りタイヤ152に接近して(例えばタイヤ152の内側面の15cm以内、またはタイヤ152の内側面の10cm以内)突起136に枢動可能に連結されてもよい。さらに突起136と制御アーム124および126の外側部の連結場所(例えば枢支点または枢軸の場所)は、概してトラック10の長手方向75に見て互いに垂直に位置合わせされてもよい。換言すると、突起136と制御アーム124および126の外側部の連結場所は、概して垂直面154内に収まってもよく、垂直面154はトラック10の長手方向75に配向される。例えば上部制御アーム124の外側装着部138は、上部制御アーム124の外側装着部138および下部制御アーム126の外側装着部142が垂直面154内に配置されるように、長手方向75に見て下部制御アーム126の外側装着部142と垂直に位置合わせされてもよい。突起136ならびに制御アーム124および126への対応する連結部の上記の構成で、タイヤ152および関連した車輪14は、リアサスペンションシステム122の全移動範囲を通って路面に対してほぼ垂直配向に維持することができることがある。結果としてリアサスペンションシステム122はタイヤ152の向上した追跡を提供することがある。
【0055】
図18は、トラック10およびモータ歯車箱26の中心付近で車両支持構造17(例えばサスペンションクレードルまたはフレーム16)に枢動可能に連結された、上部および下部制御アームのそれぞれ124および126の内側部または端部を示す。別の実施形態では、特定の後車軸に対する各リアサスペンションシステム122の制御アーム124および126の一方もしくは両方の内側部または端部は、関連したモータ歯車箱26の筐体24に枢動可能に連結されてもよい。
図19に示された実施形態では、例えばモータ歯車箱26’’は拡大された筐体24’’を含み、位置合わせされたリアサスペンションシステム122の制御アーム124および126が筐体24’’に連結されている。示された実施形態では、筐体24’’の上部の左右の各側面は2つの上横に突出部156を有し、特定の上部制御アーム124は突出部156に枢動可能に連結されている。さらに筐体24’’は拡大された下部158を含み、下部制御アーム126は下部158に枢動可能に連結されている。筐体24’’は車両支持構造17’’(例えばサスペンションクレードまたはフレーム16)に連結されてもよく、筐体24’’が上記の構成要素を支持できるように、金属(例えばアルミニウム)、炭素繊維強化プラスチックまたは他の複合材料、その他などの適切な材料から作成されてもよい。このような構成で、サスペンションクレードルの一部は、車両の全重量が低減され得るように省略されてもよい。加えてサスペンションクレードルは、車両の重量をさらに低減するために、筐体24’’と(例えば一緒に溶接されて)一体形成されてもよく、またはサスペンションクレードルは筐体24’’から分離して形成されて筐体24’’に取り付けられてもよい。
【0056】
例示的実施形態が上に説明されているが、これらの実施形態は本開示によるすべての可能な形を記説明することを意図するものではない。本明細書に使用された用語は、限定よりむしろ説明のための用語であり、様々な変更が本開示の精神および範囲から逸脱することなく行われてもよいことが理解される。加えて様々に実施する実施形態の特徴は、本開示によるさらなる実施形態を形成するために組み合わされてもよい。